●(12月1日) 旧運輸省/関空増便の試算隠す(12/1朝日夕刊)
関西空港の発着可能回数について、旧運輸省(現国士交通省)が「運用次第で公表値の年間16万回から22万回以上に増やせる」との試算を2年前にまとめながら、公表を控えていたことが1日明らかになった。関空では試算の直前、2本目の滑走路をつくる2期工事が始まっており、公表すれば拡張不要論がでかねないと判断した。無駄な公共事業を減らし、既存施設を有効活用するという建前とは逆の空港行政が明らかになったことで、2期工事の中止や中断を求める声が強まることも考えられる。
旧運輸省は、有識者や航空会社などを交えた空港処理容量検討委員会を設け、羽田空港の発着枠拡大などを盛り込んだ報告書を99年秋にまとめた。この過程で関空についても新たに試算していた。
新試算によると航空機に発着許可をだす管制のタイミングを改善したり、陸上で発着間隔を詰める運用をしたりすることにより、年間の発着回数を4割程度増やせる。また航空機が空港に進入する速度を一定にするよう指導することなどで、さらに2割増やせることも分かった。
関係者によると、同省は報告書をまとめる段階になって、2期工事への影響を考え公表の見送りを決めた。羽田空港については、同様の試算に基づき、00年夏と02年夏の2度に分けて発着枠の拡大を決め、すでに00年分は実施されている。
データを公表しなかったことについて、同省幹部は「国際線が多い関空は、発着がスケジュールからずれる場合も多く、管制上の時間的余裕が必要だ。新たな数字が独り歩きしても困ると判断した」と説明している。
関空では99年夏、07年に2本目の滑走路を増設する計画で総事業費1兆5600億円の2期工事が始まった。00年度の発着実績は12万4千回強。同省や、空港を運営する関西国際空港会社はこれまで、07年までに1本目の滑走路が満杯になると説明してきた。
【本紙の解説】
「さらに2割増やせる」とすると、年間25万回になる。この便数拡大の方式の安全性は確かめられてはいない。しかし、このデータで二期工事が10年先でも必要がないことははっきり示されている。これで関空二期工事の目的が将来の航空需要とはおよそ無関係であることが明白になった。ゼネコン救済であり、国交省の権益拡大のための公共事業である。
先月の28日に、国交省が関空新滑走路供用の3年程度の延期を検討していると報道された。事実上、二期工事を中止する内容である。その上で、国交省が旧運輸省時代の関空データをみずから暴露してきた。理由は、羽田空港、成田空港の民営化を国交省がどうしても拒否したいからである。民営化を拒否しきれないことで、国交省は苦肉の策として、羽田をのぞき、成田、関空、中部の3国際空港の民営化案をだしてきた。しかし、この案が関空の赤字救済だとマスメディアその他から批判され、見送られそうになっている。そのために関空の赤字額の削減を打ち出しているのである。つまり、国交省の目的である羽田、成田の民営化阻止のために、関空の二期工事の権益を投げ出した格好である。
●(12月5日) 成田・羽田一体で民営化/行革断行評議会提案(12/6読売)
石原行政改革担当相の私的諮間機関「行革断行評議会」は5日、特殊法人の新東京国際空港公団(成田空港)を国営の羽田空港と一体化して完全民営化する案をまとめ、小泉首相に提出した。両空港が機能を相互補完することで利便性を向上させるのが狙い。将来は成田空港が国内線および遠距離の国際線、羽田空港は国内線および近距離の国際線を担うことを想定している。
国際空港の改革については、国土交通省がすでに、成田、関西国際空港、中部国際空港の整備部門を統合し、公的機関が運営するとの案をだしているが、「関空の赤字を成田の料金収入で埋めるためではないか」との批判もでていた。
同評議会案では、赤字経営の関空と他の空港を切り離し、国際競争力の維持を図ると明記した。
【本紙の解説】
空港民営化についての論議が振り出しにもどった。今年の9月8日、石原伸晃行革担当相が「成田と羽田をひとつの会社にして民営化するのが望ましい」との発言から成田空港の民営化論議は本格化した。
それまでに、空港公団は民営化につては消極的な意見を述べていた。一方、大阪府の太田房江知事は、関空と成田の経営統合をすでに国に要望していた。国交省は今年7月に開かれた成田空港地域共生委員会で「同省としては成田の民営化は考えていない」と答えている。
石原行革担当相の民営化発言に対して、小幡国交相事務次官は9月10日の記者会見で、「羽田・成田両空港の統合民営化はすぐにはできない」と述べ、反対の立場を表明した。しかし、国交省は空港民営化反対だけを言っていたのでは、逆に民営化の波に押されてしまうと考え、9月14日に成田、関空、中部の3国際空港の上下分離案の民営化を発表した。国交省の民営化論の本質は、羽田を民営化から外し、国交省の成田権益を維持し、なお、関空の赤字経営を救済するという国交省にとって虫がよすぎるものなのだ。
また、空港民営化のスキームもさまざまな意見がある。経済財政諮問会議は「管制業務を国に残し、空港の整備、運営はすべて民営化」。与党行財政改革推進協議会(座長・山崎拓自民党幹事長)は、「民営化した会社が国に利用料を支払って空港施設を使用する長期リース方式」。国交省の上下分離案は与党改革推進協議会と似ている。
現在の空港民営化論の中心は国交省の3空港統合民営化論になっている。しかし、これは関空救済だとの批判が高まり、実現の可能性が遠のいている。国交省はその対策に関空の赤字を減らすことを画策しはじめた。関空二期工事の3年延長という事実上の中止案である。
この間の空港民営化の対立の構図を整理すると、空港整備権益の護持を目的とする国交省と、航空行政に一知半解な政府・経済財政諮問会議という形での攻防になっている。
これとは別に、関空の二期工事の実施をめぐって、与党・自民党内部の争いがある。与党行財政改革推進協議会は、関空二期工事計画の予定通りの実施である。一方、自民党行革推進本部は、関空二期工事の完全中止である。これは空港民営化とは別次元の利権争いである。
この政治構図のなかで、行革断行評議会が羽田と成田を統合し、完全民営化案をだしてきた。国交省の民営化論と真っ向から対立する案である。政府・自民党・当該省庁のバラバラな案が飛び交い始めたのである。これは、政策そのものを中止するときの政府・自民党の常套手段のひとつだ。空港民営化もそうした道をたどりそうである。
●(12月5日) 関空平行滑走路/2007年度供用開始で一致(12/6読売)
扇国土交通相と塩川財務相は5日、関西国際空港の二期工事について会談し、現在建設中の平行滑走路の供用開始時期を当初の計画通り、2007年度とすることで一致した。
会談で扇国交相は「平行滑走路の2007年度の供用開始は国際公約だ」と主張した。また、塩川財務相は、同日の記者会見で「予定通りに(工事)をやっていくのが一番良い」とし、2002年度予算についても、2007年度に平行滑走路を供用する前提で取り組む意向を示した。
関空は、国内の景気後退に加え、割高な着陸料を敬遠する国内航空各社が、関空発着の国際線を、成田空港の暫定平行滑走路が供用開始となる来年度以降、成田発着に切り替えようとする動きが広がっている。
関空の二期工事をめぐっては、昨年12月、扇運輸相(当時)と、宮沢蔵相(当時)が、2001年度の埋め立て工事を縮小し、二期工事の対象を滑走路、誘導路などの最小限の施設に限定することを条件に、平行滑走路の完成時期は計画通りの2007年度とすることで合意した。しかし、その後、2008年の大阪五輪の招致に失敗したことなどから、予想通りの需要の伸びが期待できない事態に陥っていた。
【本紙の解説】
国交省の3空港統合・民営化案のために、関空二期工事の事実上の中止案がでたことで、関西中心の自民党・公明党・保守党議員が飛び上がって動き始めた。
関西の選出で関空利権に関わる代表的議員である塩川財務相が先頭になって、扇千景国交相に関空二期工事計画通りの実施をねじ込み始めた。扇千景国交相も関西が選出母体であり、国交省のこれまでの経過を無視して受け入れることになった。
11月28日に関空新滑走路供用を3年程度延期することを検討中と、国交省が発表した矢先の二期工事完全実施表明である。扇大臣と国交省の見識が問われる事態だ。いずれにしろ空港民営化も関空二期も、航空事業発展のための空港整備という本質からかけ離れ、利権争いだけがむき出しになってきた。
●(12月8日) 反対同盟テスト飛行阻止闘争
同盟・支援勢力が100人が集まり、東峰―天神峰をデモした。闘争後、天神峰で忘年会を行った。詳細は本紙参照。
●(12月8日) 財務省/成田新高速鉄道の調査費見送りか
財務省は、成田新高速鉄道の調査費1億円を来年度予算から見送ることを決め、国土交通省と最終調整に入った。10年後の成田空港の旅客が1・5倍になるという国土交通省の予測が、9・11以降の航空需要の後退により、難しくなったというのが理由だ。成田新高速鉄道はJR総武本線と競合することになるので、財務省が採算性に疑問があると見ている。
【本紙の解説】
この調査費見送り問題は、最終的に予算化されたとしても、成田空港の将来性がないことを暴露した。
公団によると、成田空港の現在の発着回数は年間13万3千回、旅客数は2520万人だが、5年後の旅客数は約1・3倍の17万回、3270万人と予測。10年後の2010年には20万回、3800万人と推測している。財務省はこの10年後の予測が9・11以降の航空需要の急激な落ち込みで達成できないと判断し、成田新高速鉄道の採算は取れないので、建設そのものの中止を含む「調査費見送り」を決めた。
単独事業で採算が取れないことは初めから明らかだったが、成田空港の国策的必要性だけで建設計画が進められてきた。しかし、今日の経済情勢や航空需要動向がその根拠を崩壊させた。
具体的には、「都心と成田空港を36分で」というが、「現在52分の日暮里―成田空港第2ビル間を36分で結ぶ」ものだ。日暮里は都心とは言い難い。東京駅から日暮里まで実車で11分かかる。乗り換え時間を10分とすれば、東京―成田空港間は57分になる。JRの成田エクスプレスは東京駅―成田空港第2ビル間を現在53分で結んでいる。時間的にはJRの方が早い。JRは15両連結であり、増発も可能で輸送力増強の余地がある。
この財務省見解で打撃をうけているのは堂本千葉県知事である。堂本知事はこの成田新高速鉄道の建設と引き替えに羽田空港の国際化を承認した。従来、千葉県は羽田国際化に強く反対していた。それを押さえ込んだのは、この成田新高速鉄道の早期実現と政府の無利子融資を持ち込んだことによる。その支えを財務省と国交省に奪われてしまうことになる。
●(12月8日) 暫定滑走路、米航空会社が初の定期路線計画(12/9読売)
米国大手航空会社のノースウエスト航空は、来年4月から供用開始される成田空港の暫定滑走路を利用し、台湾の高雄、韓国の釜山行きの新定期路線を開設する方針を固めた。離着陸距離が短い小型旅客機エアバスA320型機(148席)3機を同空港に常駐させ、効率的な運用をする構想だ。
成田空港に乗り入れる主要航空会社で、暫定滑走路を使った具体的な路線計画が明らかになるのは初めて。また、外国の航空会社が日本の空港に旅客機を常駐させるのは例がないという。
同社は現在、成田空港を経由するアジアの8路線では、米国本土から飛来するジャンボジェット機(367―418席)を使っている。A320型機は、暫定滑走路を利用する新路線の高雄、釜山便に使用するほか、現在4000メートル滑走路を使ってジャンボ機を就航させている台湾・台北便にも、ジャンボ機に代えて利用する方向だ。同社では、成田でA320型機の飛ぶ各路線に乗客を振り分け、空席の少ない効率的な運用が可能となるとしている。
同社は「米国内のテロや日本の景気低迷の影響はあるが、アジア重視の姿勢は変わらず、効率的な運用で社の利益と乗客の利便性を確保したい」としている。
【本紙の解説】
ノースウエスト航空は10月末に暫定滑走路供用に際して、1日あたり5往復の増便を計画すると発表していたが、その内容が明らかになった。
エアバス320機を成田空港に常駐させるという内容であった。このような例は今までない。国内線に外国航空会社が乗り入れることをカボタージュというが、その一歩手前まで、米国メガキャリアのひとつであるノースウエストが乗り込んでくることになった。米国の航空会社への政府援助、資本規模からして、日本の航空会社では太刀打ちできなくなる。
9・11以後、太平洋路線のダンピングは異常なまでに進行している。それがアジア路線に持ち込まれることになる。しかし、航空需要は冷え込んでおり、日米航空会社の共倒れになる可能性も高い。中国系航空会社も増便を計画している。日航、全日空も不振の太平洋路線、欧州路線を減便し、アジア路線への振り替えを計画している。そのためにアジア路線が供給過多になることは明らかである。アジア路線も旅客の絶対数は減少している。太平洋路線や欧州路線と比較して減少率が低いだけだ。そこで日本、米国、アジアの航空会社が激しい増便競争を行うことの結末は明らかである。
また、この暫定滑走路でのアジア路線の増便には、「2500メートル滑走路が完成した時に備え既得権益を確保したい」との思惑が各航空会社にはある。発着枠は、一度獲得し一定量の運航を続ければ、既得権として引き継がれる。これを「ヒストリック」という。
暫定滑走路は暫定に止まり、絶対に2500メートル、3300メートルの滑走路にはならない。この動かぬ現実を、三里塚闘争は強烈に明示しなければならいない。
●(12月11日) 空港公団民営化に「理解」(12/12読売、毎日各千葉版、千葉日報)
特殊法人改革の一環としての空港公団の民営化問題について、堂本暁子千葉県知事は11日の県議会一般質問で、「民営化は世界的な流れで、基本的には理解すべきものだと考えている」としつつも、民営化受け入れの条件として、2500メートルの平行滑走路の実現や成田新高速鉄道の早期完成など4項目を挙げた。
4項目は、以下のとおり。(1)当初計画の2500メートルの滑走路を整備し、十分な機能を有する国際空港として完成させる。(2)都心と空港とのアクセス時間を国際標準の30分台にするために、成田新高速鉄道を早期に完成させる。(3)暫定滑走路の供用開始後に騒音実態調査を行い、現行の滑走路を含め、共生の理念に基づく騒音対策を継続する。(4)国と空港公団が地域に約束した地域振興策、地域共生策を確実に実施する。
一方、財務省が成田新高速鉄道の建設に否定的な見解を示したとの一部報道について、堂本知事は「国土交通省に確認したところ、省の重点事業として全力を挙げて(予算)要求しているとのことだった。県としては、国、空港公団、関係市町村などと緊密に連携し、最大限の努力をしていきたい」と述べた。
【本紙の解説】
堂本知事は、羽田の国際化も承認し、成田空港の民営化も承認する。その代わり、成田暫定滑走路を当初計画の2500メートルに整備してくれと常に叫んでいる。三里塚闘争と地権者へのこれほどまでの圧殺者はこれまで存在しなかった。「地権者の納得と承認」とは決して言わない。あくまで「真摯な話し合い」で農民を追放するとしか言っていない。
それにしても、成田新高速鉄道の調査費見送りには驚いた様子だ。国交省の「省の重点事業として全力を挙げて要求している」との返答で安心しているようだ。しかし、財務省と各省庁との最終調整に上がっている予算案件は、各省庁にとって見送られても良いものだけになっている。
国交省は千葉県が羽田国際化を承認したことで、JRに対抗してあえて不採算鉄道に手を染めることはないと考えているのか。
調査費はⅠ億円程度であり、最終的には千葉県をたてて予算化されるのではないか。だが、成田新高速鉄道の行き先は暗雲がたれこめているようだ。
●(12月11日) 成田空港圏自治体連絡協/「民営化は成田単独で」(12/12朝日、読売、毎日各紙千葉版、千葉日報)
成田空港周辺の1市7町1村で構成する「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長・小川国彦成田市長)は11日、成田市内のホテルで会合を開き、国土交通省が提案している成田、関西、中部の三国際空港を一括して扱う改革案に対し、「成田単独民営化」を求めていくことで全会一致し、要望書をまとめた。
要望書では、「世界の空港と競争していくためにも、成田の収益は成田に振り向けられるべきだ」「民営化は理解できるが、下物管理(空港整備や騒音対策など)については、国の関与と責任で共生事業の諸施策を講じるよう要望する」としている。
国交省案が明らかになって以来、成田空港周辺の自治体からは「他空港の債務を負担させられる上、騒音対策など、これまでの約束がうやむやになるのではないか」と不安の声が上がっている。
【本紙の解説】
周辺自治体の3国際空港の民営化反対、成田単独民営化要望は、空港整備、空港の安全性を求めたものではない。直接的には、公団から空港周辺の自治体にでている「成田空港周辺対策交付金」を減額させないためである。また、防音対策費や道路その他の見返り公共事業をいままでどおり確保したいということである。
民営化は時流であり反対できない。しかし、成田の利益が関空に流れることだけは反対するというものにすぎない。
●(12月12日) 成田暫定滑走路 飛行検査が終了(12/13読売、毎日千葉版、千葉日報)
来年4月に供用開始が予定されている成田空港の暫定滑走路完成に伴う航空無線や灯火施設などの飛行検査が12日に終了した。これまでのところ特に大きな問題は報告されていない。国土交通省は結果を詳細に分析し、年明けにも合否判定を出す予定だ。
飛行検査は10月15日にスタートした。検査機YS―11で空港周辺を周回飛行し、地上との無線、電波のやりとりなどのチェックを行ってきた。最終日の飛行検査では、ILS(計器着陸装置)のモニター試験のため、完成後初めて誘導路を通り、滑走路上にでた。
検査期間中、暫定滑走路南端から約400メートル離れた農家宅の上空40メートルを検査機が低空飛行した。100デシベルを超える騒音値を記録した。反対派農家は反発を強めているが、供用後はなお一層の騒音が予想される。
【本紙の解説】
公団は飛行テストを、予定より半月ほど早く始めて、早く終わった。理由は4月18日の供用開始を確実にするための前倒し実施である。もう一つの理由は、YS11機の頭上40メートルの騒音を実際に地権者に体感させ、追い出すためであった。
しかし、その狙いは完全にはずれた。むしろ怒りをかき立て、農家の反発をいっそう強めただけで終わった。実際の騒音は激しい。人が生活している真上を頭上すれすれに航空機を飛ばすことを国益のためと称して行っている。このことが明らかになった。しかし、地権者たたき出しの政治的意図は完全にはずれた結果になった。
また、今度の飛行テストではなぜか、開港後に実際に飛ぶボーイング767機、777機は使われなかった。プロペラ機とジェット機の騒音のレベル(音質)の違いがあり、どちらの方がよりうるさいとはいえない。しかし、飛行方式の違いはある。ジェット機は離陸時にエンジンを全開し、強烈な騒音をつくりだす。プロペラ機の比ではない騒音である。しかし、着陸ではジェット機はランディング直前にエンジン出力を絞り込む。ランディング後はエンジンを逆噴射させ轟音を再び発し、スピードを落とす。滑走路直下ではない周辺での騒音は、間違いなくジェット機の方がひどい、音質も、プロペラ機より低周波と高周波が入り混じり、耳と身体に響く。このジェット騒音への反発を開港前に周辺住民から買わないために、今回はジェット機の飛行は行わなかったのである。
●(12月12日) 民営化は単独で県議会の自民空港特別委が意見書案(12/13読売新聞千葉版)
空港公団民営化問題で、県議会会派の自民党・空港対策特別委員会(中村九蔵委員長)は12日、「成田空港の民営化に関する意見書案」をまとめた。
意見書案では、空港公団の民営化について、「民営化の流れは理解する」としたうえで、「民営化は成田単独で進めるべきだ。成田空港、関西国際空港、中部国際空港(の3団体)を一体化する案については、疑念を持たざるを得ない」として、国が的確な対応をするよう要望している。さらに、空港公団の民営化を議論する条件として、「国が責任を持って、完全空港化、アクセス整備、騒音対策、域振興を確実に実行すること」を求めている。意見書案は18日の県議会に提案、採決される見通し。
【本紙の解説】
前日の11日に成田空港単独民営化を決議した成田空港圏自治体連絡協議会が12日、県庁を訪れ、県も同一歩調をとるよう求める要望者を堂本知事に提出した。
この動きに連動して、千葉県の自民党・空港対策特別委員会が動いたものである。意見書の内容は空港自治体連絡協の成田単独民営化論と堂本知事の民営化受け入れの条件としての4項目を合わせたものである。
堂本知事、千葉県自民党、地元自治体の完全に一致した動きである。その内容は、地元利益、見返り事業の要求だけだ。ここに「環境派」をかかげる堂本知事の政治的立場と姿勢がもっとも強く現れている。堂本知事の政治的本質は度し難い地元利益追求型の旧来の保守政治家である。
●(12月12日) 成田空港南側シャトルバス/現ルートの見直し希望(12/13読売千葉版)
芝山町の相川勝重町長は12日、12月定例町議会の一般質問で、同町など空港南側の四町村を結ぶシャトルバスの発着地点について、「来年10月開業予定の芝山鉄道の新駅を始発地点にしたい」と答弁し、現在のルートを見直したい考えを明らかにした。
シャトルバスは、4町村でつくる芝山鉄道延伸連絡協議会が今年4月から運行し、横芝町の「横芝海のこどもの国」から蓮沼村、松尾町、芝山町、成田空港の第1旅客ビルを経て第2旅客ビルまでを結んでいる。
答弁で、相川町長は「今後、協議会に(ルート変更を)提案したい」と語り、同鉄道の開業に合わせて発着地点を旅客ビル手前の芝山鉄道・芝山千代田駅にしたいとした。
ただ、シャトルバスの利用者は空港勤務者が大半を占め、同鉄道への乗り換えで通勤が不便になることも予想されるため、相川町長は「利用者の利便性も考えなければならない」と慎重な姿勢も示した。
【本紙の解説】
暫定滑走路の開港で芝山町の過疎化、廃村化は加速度的に進行している。相川は、自らの裏切りで招いた過疎化の現実をごまかすために躍起になっている。
シャトルバスの利用を千代田駅を発着地点して、芝山鉄道の利用者を増やそうとしている。だが、そうしたらシャトルバスの利用者がいなくなってしまう。シャトルバスが今まどおりの発着地点ならば、芝山鉄道の利用者が少なくなってしまう。そもそもシャトルバスも芝山鉄道も空港勤務者が最大の利用者であり、空港勤務者以外の住民の利用者はほとんどいない。芝山鉄道の需要予測では「1日の利用客数が5400人(空港勤務者4000人、住民1400人)」となっている。しかし「住民の1400人」はあり得ない。芝山町の全人口は8000人であり、成田、東京方面の職場、学校に通う人を全部合わせても届かない。芝山以外の周辺地域からの利用者を見込んだ期待値にすぎない。
芝山町の発展は、空港反対を貫き、農業と農村を守っていく以外になかったのである。空港と芝山町の「共生」とか「共存共栄」などということはあり得ないのだ。空港建設を認め、その補償、代償を受け取ったことと引き替えに過疎化、廃村化は不可逆的に進んでいる。これが内陸型巨大空港の本質なのだ。反対同盟を裏切り推進派に転向した相川町長の責任はあまりに重大である。
●(12月12日) 全日空、成田発着枠拡大に対応、アジア路線に重点(12/12日経)
全日本空輸は国際線のうち需要増加の見込めるアジア路線を拡充する。成田空港の発着枠拡大に合わせ、来春にも同空港発着の国際線に占めるアジア路線の便数比率を現在の3割強から6割前後に引き上げる。日本航空と日本エアシステムの経営統合や米同時テロなど経営環境の変化に対応、アジアへのシフトで競争力を高める。成田空港の新滑走路が2002年4月に予定通り開業すれば、全日空の発着枠は現行の週90便強の1.5倍程度に増えるとみられている。増枠分を活用し、現在は週30便前後のアジア路線の便数を80~90便に増やす。
路線別では香港(現在週7便)、北京(同)線をそれぞれ1日2便・週14便体制とするほか、成田発着の青島、天津線などを新設する方向で検討している。週4~5便を運航しているシンガポール線を週7便とし、9・11後に臨時措置として週1便から7便に増やしたソウル線は増便体制を維持する方針。週60便前後を運航している欧米路線については9・11以降、旅客の減少が目立っており、路線の一部見直しを検討する。
【本紙の解説】
日航と日本エアシステムの会社統合で全日空は窮地に立っている。日航・日本エアシステムに国内主要路線で6割から7割のシェアを占められ、全日空の国内線優位が揺らいでいる。太平洋路線、欧州路線では、現在の航空需要の後退と日航との競争に太刀打ちしうる基本方向として撤退を決めた。全日空の唯一の生き残り策がアジア路線の拡大となった。しかし、ここも供給過多の大激戦となっている。
アジアは欧米線にくらべて旅客数の減退率は低いが、絶対数としては前年比を割っている。各国の航空会社は日本―欧米線の40パーセント近い減退により、日本―アジア線への振り替えを余儀なくされている状況だ。日航だけでなく、米ノースウエスト航空も成田にA320を常駐させ、アジア路線の拡大を狙っている。さらにアジア各国の航空会社も、アジア―北米線の激減で、アジア―日本に振り替えようとしている。中国の航空会社だけでも週50便近い航空会社が乗り入れようとしている。
巨大資本の米航空会社とコストで優位に立つアジアの航空会社を相手にして、全日空も苦戦を強いられそうだ。
しかし、大不況と航空需要の減退傾向は数年間つづく。この中での航空戦争も長続きはしない。実需にあった便数にすぐに落ち着くであろう。
●(12月13日) フーリガン対策徹底を(12/14読売、東京千葉版)
来年5月に日韓で共同開催されるサッカー・ワールドカップでの受け入れ態勢を話し合うため、「ワールドカツプ成田空港内関係者連絡会議」が13日、成田空港内の空港公団本社ビルで開かれた。
連絡会議は今年5月に空港公団のほか、東京税関成田支署や国土交通省新東京空港事務所など空港内の公的機関で作られた。今回の会議は3回目。W杯出場の32カ国のチームがでそろい、対戦の組み合わせが決まったことを受けて行われた。
会議では、各国代表チームの来日時期が5月中旬以降に集中すると予測。これに合わせて報道陣やファンも多数来日するため、そのスムーズな対応をさらに検討していくことが確認された。また、サッカーに熱中して興奮するあまり暴力行為などを引き起こすフーリガンの対策を徹底することも大きな課題として挙がった。空港公団は今後、航空会社や大手旅行会社、JRなども会議に加わってもらい、検討を深めていきたいとしている。
●(12月14日) 成田、関空を「民営化」/政府行革事務局素案 組織形態は先送り(12/15各紙)
政府の行革推進事務局は14日、特殊法人などに関する「整理合理化計画」素案で「民営化に向けて検討中」とされていた新東京国際空港公団(成田空港)について「民営化する」、関西国際空港株式会社については「さらなる民営化を図る」と明記する方針を固めた。民営化後の具体的な組織形態については先送りする形だが、扇千景国土交通相は「それでは先送りになるだけ」と反発している。
石原伸晃行革担当相が同日、扇国交相と電話会談した結果を踏まえたもので、取り扱いが注目されていた関西空港の二期工事については「事業スキームの見直しに加え、コスト削減努力など一層の経営改善を図り、収支採算性のさらなる改善を図る」とされた。石原行革相は記者会見で、「整理合理化計画」では両法人の民営化後の組織形態に言及せず、与党内の議論を見守る方針を示したうえで、関空会社については「『さらなる民営化』といえば、特殊会社から完全民営化を図る」と指摘した。
一方、成田、中部、関西の3国際空港について空港ビルなどの管理・運営部門のみを民営化する「上下分離方式」を提案している扇国交相は14日、国交省案を明記するよう求める考えを表明。しかし、政府・与党内に異論が強く、計画に盛りこむのは困難な状況だ。
【本紙の解説】
成田空港の民営化は本決まりになったようだ。しかし、上下分離案や空港の統合などのスキームは政府与党内に意見が分かれており、先送りされた。
空港は民営化になじまない。代替するものがない公共的交通機関は民営化すべきではない。とりわけ、航空は未完成な交通手段であり、民営化では安全性が保証されない。
国際空港は、空港建設の位置とその規模について政府が決定権を持ち、さらに、航空管制と諸外国との乗り入れ交渉権も政府の所管になっている。このような空港が民営化されたとしても、それはビルのテナント貸しのようなものすぎない。その上利益優先となり、コスト削減が至上命令になる。まず人件費が削られ、空港の安全性は間違いなく損なわれる。
また、空港整備は20年先、30年先を見越して建設されるものであり、資本による目先優先の経営にはなじまない。
国交省は民営化の時流には逆らえないとして、3空港統合・上下分離案を提案している。それは民営化という形をとりながら、官僚的権益をそのまま維持するものだ。また、民営化されることで、政府機関ならば贈収賄にあたる行為が事件性を免除され、公然と行われる。
国交省は、政府・自民党内に関空救済となる3空港統合案に反対する意見が高まっていることに対し、空港整備の現実性から上下分離案を対置して官僚的権益を守ろうと躍起になっている。
●(12月14日) 成田空港で周辺首長ら/単独民営化、国に要望
(12/15千葉日報)
成田空港の民営化問題で、成田空港圏自治体連絡協議会(会長、小川国彦・成田市長、1市7町1村)と成田空港周辺市町村議会連絡協議会(会長、相川堅治・富里町議会議長、1市9町1村議会)は14日、首相官邸や国土交通省を訪れ、小泉純一郎首相や石原伸晃行革担当相、扇千景国土交通相らあてに「成田空港の単独での民営化」を求める要望書を提出した。
小川会長は同省の深谷憲一航空局長に「成田空港は来年4月に暫定平行滑走路供用を迎え、これから共生策を進めようという段階。(3空港を下物法人1つとする)民営化案では共生策がどのようになるのか、不安が不信へとなりかねない。民営化は成田単独とし、下物管理は国の責任で行うように」と強く要望した。
要望を受けた深谷航空局長は「貴重な意見として受け止める。政府・与党で結論に達していないが、結論に沿ってみなさんの意見を十分踏まえて対応を考えていく」と答えた。
【本紙の解説】
成田空港の周辺自治体が政府や国交省に訪れるのは、いままで「羽田国際化反対」であったが、それは影をひそめた。そのかわりが「成田の単独民営化」である。しかし、政府の成田空港の見返り事業の維持・拡大のためということは同じである。
空港が民営化され、「下物管理」も民営化されると、いままでの空港周辺地域対策費がどうなるか不安なのである。内陸型空港は、その周辺から人を追い出し廃村化するもので、本来、周辺自治体が歓迎できる性格のものではない。しかし、周辺対策交付金、見返り事業、経済的波及効果などに誘われて空港を受け入れてきた。民営化するかどうかは別に、こうした自治体の責任がこれから問われることになる。
●(12月15日) 都心―成田36分/来年度予算で国費1億円計上(12/16産経)
国土交通省と財務省の来年度予算折衝で15日までに、成田新高速鉄道調査費1億円の計上が固まった。
新ルートは、京成上野―高砂間(京成)、京成高砂-印旛日本医大間(北総・公団線)の既存路線を利用。新たに印旛日本医大駅から成田市土屋地区まで10・7キロの新線を建設する。土屋地区から成田空港までの8・4キロは、すでに一部をJRが使用しており、JR線に並行して線路や架線敷設などの改良工事を行う。
来年度に設立する第三セクターが建設・管理し、完成後は京成電鉄が第三セクターに線路使用料を支払って運営する「上下分離方式」を採用。
現在、都心成田空港間は「成田エクスプレス」(JR)や「スカイライナー」(京成)で1時間弱。新ルート完成後、京成は「スカイライナー」の経路を新ルートに変更し、最高時速130キロで日暮里―空港第2ビル間を最速36分で結ぶ計画だ。将来は、新ルートから都営地下鉄浅草線を経由し、羽田空港や東京駅(日本橋駅から地下新線を建設)を直結させる案もある。来春、国と千葉県の予算が成立した後、千葉県や沿線自治体、新東京国際空港公団、金融機関などが出資して第三セクターを設立し、環境アセスメント(事前調査)などの作業に入る。
【本紙の解説】
成田新高速鉄道の解説は先週12月8日に詳しく書いた(同日付日誌参照)。調査費1億円が付いたとしても、成田新高速鉄道は実現しない事業である。そもそも、成田空港の建設過程で東京―成田間の「成田新幹線」が決定しかけていた。それが見送られることになったとき、別の交通手段の建設が要望された。それが成田新高速鉄道となった。しかし、正式決定したのは、昨年2000年1月の運輸政策審議会答申であった。完成目標は2015年になった。つまり、約30年もの間放置されていたわけだ。また、わずか「10・7キロの新線」の建設にもかかわらず、完成目標は15年後となった。
事業スキームは「上下分離方式」で、整備は第三セクター、運行は京成電鉄となっている。しかし、京成本線、北総・公団線、成田新高速鉄道線、成田空港高速線にまたがる四者乗り入れ路線となるため、経営スキームや運賃設定、施設使用料など、まだ数多くの未決定事項がある。営業ベースで成り立たない路線ゆえ、だれも経営責任を負いたがらない。
原案提示にあたって、財務省がたかが1億円の調査費「見送り」を主張したことに、この鉄道の本質がある。ふたたび店晒(たなざらし)の運命になることを示唆しているのだ。運行主体を引き受けている京成電鉄が一番、消極的なのである。
●(12月17日) 年末年始成田旅客/前年比20パーセント減93万人(12/17読売)
空港公団は、年末年始の旅行シーズンに海外旅行などで成田空港を利用する旅客推計を発表した。期間中の旅客は約93万人と、前年同期にくらべ20%減少しているものの、9・11などの影響で同32%減と開港以来最大の落ち込みを記録した10月よりは持ち直している。
推計は、航空会社の予約状況をまとめたもので、期間は今月21日から来月7日までの18日間。
期間中、出発客は昨年度の約60万人に対し、今年度は約48万人。到着客は同約56万人に対し、約45万人でいずれも前年同期にくらべ約20%減。
航空会社によると、方面別では欧州が人気だが、米国も一時の落ち込みからは回復しているという。旅客数の持ち直しについて同公団は「アフガニスタン空爆が終息段階に入ったことと、旅行会社が旅客の回復のために低価格ツアーを提供したことが大きい」としている。
【本紙の解説】
航空業界、旅行業界は、航空需要落ち込みは年末年始で回復すると期待していた。しかし結局は、前年比20パーセント減となりそうだ。業界は、これで落ち込みの底は打ち、後は上昇だと期待している。
しかし、30パーセント台の落ち込みが20パーセントに戻ったからといって、回復基調とは到底いえない。例年の年末年始は予約できない人も多かった。実際の需要落ち込みは回復していない。
また例年の年末は、格安運賃ツアーも通常の4~5倍あったが、今年はダンピング気味の「激安」運賃で、なおかつ20パーセント減。実情は回復とは程遠い。
推測データもいろいろある。JTBが発表した年末年始(2001年12月23日~2002年1月3日)の旅行動向では、海外旅行人数は前年比33.3%減の43万7000人。前年を21万8000人程度下回る見込みだ。
それにしても、年末年始も米国方面の出国は依然として激減状態だ。成田出国で3~4割減、関空出国ではいまだ前年の5割以下である。
航空需要の回復は当面、望めない。
●(12月17日) 「成田民営化」は先送り/02年中に結論で合意(12/18各紙)
小泉純一郎首相は17日、自民、公明、保守の与党3党と特殊法人改革の焦点となっていた政府系金融機関8法人の改革案決定を先送りし、年明けから経済財政諮問会議で検討することで合意した。一方、新東京国際空港公団(成田空港)、関西国際空港株式会社、中部国際空港については民営化の方針までは固まったが、保守党が3空港一体で建設部門と管理部門を分離する「上下分離方式」を強く主張。同日夜の与党行財政改革推進協議会で「3空港一体とした上下分離方式を含めて民営化に向け2002年中に結論を得る」という表現になり、結論を先送りした。
【本紙の解説】
国交省および塩川財務相を含む関西系議員らの猛烈な巻き返しで「上下分離案を含め、02年度中に結論」との表現になった。(一部)政治家と官僚の権益を死守する国交省案を、候補としては残すというわけだ。査定する立場の財務相が国交省に関空二期の断行を迫るという異常なやり取りの末の結論である。日本の支配権力の源泉たる建設利権をめぐる争いゆえ熾烈なのである。
小泉「構造改革」は、不況下の国際的争闘戦に生き残り、戦時型国家への転換を図るため、労働者の権利や戦後的獲得物を一掃することに本質がある。民営化をめぐる与党の争いは、その過程で不可避となる権力構造再編の表現だ。
「効率化」と称するむき出しの資本の論理と、利権の奪い合いが交錯する。公共交通機関の安全性などは二の次だ。これが資本主義の本質的限界である。
●(12月18日) 羽田国際線週70便(12/8朝日)
国土交通省は17日、東京・羽田空港の国際線機能を高めるため、来年度中に約10億円を投じて、国際線旅客ターミナルや駐機場を拡張する方針を固めた。これに先駆け、来年4月から、現在週2便に限定している深夜・早朝の国際チャーター便枠を週70便に拡大する。同5月に開幕するサッカー・ワールドカツプ(W杯)の期間中は、昼間の国際線発着も検討しており、羽田の国際化が加速する可能性がある。
計画では、成田空港の新滑走路の供用開始後に、羽田を利用している台湾・中華航空とエバー航空便を成田へ移転させ、4月末に着工する。羽田の国際線ターミナルは搭乗橋が1機分しかない。ターミナル運営会社がこれを2機分にし、国は税関、入管、検疫場などを拡張する。その整備費として、同省は今年度2次補正予算案に約10億円を盛り込んだ。
また、税関などの審査・検疫要員の拡充にめどが立ったことや航空会社の要望などを受けて、国際チャーター便の発着枠を、1日当たり70便に増加する。午後11時から午前6時までの発着時間帯は変更しない。
一方、来年のW杯の期間中は、国内開催地へのアクセスが成田よりも便利なことから、同省は需要に応じて、昼間も羽田を国際線に開放する方向で検討している。
【本紙の解説】
今年の8月(8月3日付け日誌参照)に国交省として決定した国際線ターミナルの増築工事費用10億円が今年度の補正予算に盛り込まれたことと、2002年度予算に「深夜・早朝」のCIQ体制(税関、出入国管理、検疫)が取れたことの発表だ。
この時期の発表の意味は、日韓W杯の輸送体制で羽田を全面的に使えることを航空会社と旅行業者に明かすことである。国交省はW杯を羽田国際化の跳躍台にしようとしているからだ。
週70便とは1日10便。W杯開催中はすべて韓国路線にして、深夜早朝のシャトル便化を考えている。昼間も国際線チャーター便を認めると、24時間の日韓シャトル便となる。
成田暫定滑走路着工の口実は日韓W杯だった。しかし、日韓シャトル便は羽田になる。欧州、南米、アフリカ、中東など諸外国からの来日客も成田暫定には降りられず羽田に来る。暫定滑走路は、中型機でも遠距離便は離陸できない。結局「W杯のための暫定滑走路」は、着工の口実でしかなかった。
●(12月19日) W杯定期協議/テロ警戒し日韓飛行規制を確認(12/20東京、千葉日報)
来年に日韓共同で開催するサッカー・ワールドカップで、両国の警備当局は19日、東京・霞が関の警察庁でテロやフーリガン(暴力的なファン)対策について協議した。日本側は、警察庁など9省庁でつくる「安全対策部会」から警察庁・田中節夫長官ら30人が、韓国側は「安全対策統制本部」のクォン・ジンホ本部長ら約10人が出席した。
テロ対策としては、情勢に応じた会場周辺での飛行規制(制限や禁止)、競技場での図上演習などによる生物・化学テロ対策、出入国管理体制の強化などで、両国が協力を継続することを確認した。
【本紙の解説】
空港公団は一昨年末、W杯日韓共同開催を口実に、成田暫定滑走路の着工を地権者の同意なしに強行し、軒先での工事を進めてきた。工事による営農環境の破壊で地権者農家を屈服させ、反対闘争を解体することが目的だった。
「安全対策部会」は9つの省庁が集まっている。90年天皇即位時の警備以上の厳戒体制である。この体制は、アフガニスタン侵略戦争への日本の参戦に対応した国内警備治安体制の構築という性格が強い。
●(12月19日) 羽田再拡張/B滑走路平行案に(12/20東京、千葉日報)
羽田空港に4本目の新滑走路を造る再拡張問題で19日、扇千景国土交通相は記者会見し、従来の計画より滑走路の位置を南に約300メートルずらす国交省の案で、石原慎太郎東京都知事と合意したことを明らかにした。
廃棄物の処分場計画への影響から難色を示していた都側も受け入れた。これで羽田の国際化を視野に入れた新滑走路の建設計画が本格的に動きだす。国交省は工期を10年程度、建設費約1兆円を見込んでいる。計画案は空港南東沖に現在のB滑走路と平行して2500メートル級の新滑走路を建設。
国交省の従来案では、東京湾内に東京都が計画中の大規模なごみ焼却施設「新海面処分場」の敷地面積を削ったり、湾内を航行する船舶の航路を大きく曲げたりする必要があり、都や海運業界が反発していた。
このため国交省は新滑走路の位置を計画より約300メートル南側に移動させることで、処分場や船舶航行の影響を最小限にとどめる。多摩川の河口の延長上に約300メートルはみ出す形になるが、川の水流も妨げないようにする。
【本紙の解説】
羽田のD滑走路は03年の着工で工期10年。2013年頃には完成する予定となった。国交省は羽田拡張で生まれる余剰枠は国際線に回すとなっている。2010年以降の航空需要予測はいろいろあるが、発着枠の余裕はかなりあると判断できる。
国交省の検討ではD滑走路が完成した場合、発着回数は年間40.7万回程度に拡大する。国内線の旅客需要予測は2015年頃に約7900万人。これに必要な発着回数は37.3万回。約3万回の余裕枠が生まれる計算だ。
この予測は、今年7月に開かれた第6回首都圏第3空港調査検討会でのものである。つまり「D滑走路を建設しても首都圏第3空港が必要」と主張するための報告であり、余裕枠を少なく見積もっている。航空需要が右肩上がりで上昇し続けることも前提にしたものだ。
羽田D滑走路建設で、成田のアジア便はほとんど羽田に移行する。となると成田新高速鉄道(およそ同時期に完成予定)はますます無意味な交通機関と化す。JR、京成との三つどもえの競合で、本四連絡橋に匹敵する無残な公共工事となることは明白だ。暫定滑走路の運命もまた同じである。
●(12月19日) 羽田国際チャーター便/W杯期間、昼間も容認(12/20毎日、読売、東京)
国土交通省は19日、現在、深夜・早朝のみの羽田空港への国際チャーター便乗り入れを、来年5月に開催されるワールドカップサッカー(W杯)大会の期間に限って、昼間も認めることを決めた。全国10会場へのアクセスが成田空港より羽田の方が便利な点もあり、同省は今後、各航空会社に国内線発着枠の一部をチャーター便枠へ振り替えるよう求めていくとしている。
羽田空港の深夜・早朝国際チャーター便の便数は、来年4月から週70便に拡大する。W杯期間中に観光客の増加が見込まれることから、これとは別枠で昼間の便数拡大を決めた。
W杯の組み合わせが決まり、同省は観光客数の試算を進めており、これに基づく需要予測から必要な便数をはじき出し、各航空会社に国内線発着枠の一部をチャーター便に振り替えるよう求めていく。国際線の拠点空港である成田空港がある千葉県も、国際チャーター便の昼間乗り入れについては、W杯期間に限定したものとして了承しているという。
【本紙の解説】
羽田空港の国際空港化がW杯から事実上始まる。深夜・早朝のチャーター便枠も週2便から70便に増える。これだけで年間約7000回以上の発着回数になる。暫定滑走路がガラ空き状態の成田では国内線を1万回増やすのに躍起だが、増便は難しい。これに対して羽田の国際線は、深夜・早朝でもチャーター便申し込みが抽選になるくらいの人気がある。
千葉県は「W杯期間中に限って」昼間の国際線チャーター便を許容した。理由さえあれば羽田の国際線拡大は許容される前例を作った。かつて千葉県は、国際線ビジネス機が深夜羽田を利用するのを阻止するため、成田の飛行禁止時間に特例を作ってまで着陸させた。その千葉県が態度を一変させ、羽田国際化の“抵抗勢力”はいなくなった。
国交省は、W杯にあわせて羽田国際化を進めてきた。しかし、そのW杯を口実に、同省は地権者の反対を押しつぶすようにして、成田暫定滑走路の着工を強行したのだ。恥知らずな二枚舌である。
羽田は事実上国際空港となった。また、第3空港の代替としての羽田D滑走路も本決まりだ。成田の国際空港としての位置は確実に低下している。貨物専用空港に変貌するのも、そう遠くはないようだ。
●(12月20日) 政府予算・財務省原案/都市再生手厚く配分(全紙)
20日内示された2002年政府予算の財務省案は、一般歳出規模が4年ぶりに減少する厳しい財政状況のなか、都市再生などの重点分野に手厚く配分する内容となった。空港関連は成田新高速鉄道の新規着工も認められなど、空港とその周辺にも弾みがつく。
空港関係では、首都圏第3空港の調査費が前年度を1億円上回る13億円が計上された。羽田の再拡張も本決まり。増大する国内線の需要を満たすとともに羽田の本格的な国際化にもつながりそうだ。
羽田空港関連ではこのほか、東旅客ターミナルに関連する施設整備などに1288億円も盛り込まれた。
成田空港関連で注目を集めたのは、「成田新高速鉄道」の整備推進費約1億円。成田新高速については収支予測もあわせて公表しており、開業時には1日3万7400人が利用、累積損失は開業後26年目で解消するとした。
このほか新東京国際空港公団事業費として689億円を計上。第1旅客ターミナルビルの改修や貨物施設の整備などにあてる。
【本紙の解説】
「空港とその周辺にも弾みがつく」というが、空港整備は本年度比で10・6パーセント減の1460億円。成田暫定滑走路の工事も終了し、関空二期の事業費も14パーセント減。地方空港整備も15パーセント減。空港整備計画全体が転換期を迎えたといえる。
第3空港の調査費は羽田再拡張の調査費と第3空港の位置決定の調査費に振り分けられる。しかし来年度は、そのほとんどが羽田再拡張の調査に向けられる。
成田新高速鉄道の収支予測は「開業時に1日3万7400人利用」となっているが、およそ実現不可能な数字だ。
この予測データの出所は、今年の6月に千葉県企画部交通計画課が公表した「成田新高速鉄道事業化推進に関する調査」である。「2010年で1日当たり37,400人、2015年では1日あたり41,400人を予測」というもの。しかしこの予測は羽田再拡張決定前のもので、その影響が度外視されている。航空需要と都市内需要を合わせた数字なので、羽田国際化が進んだ分だけ航空需要分は減少する。
羽田再拡張と国際化が本決まりになったのに、過去の予測データを元に予算をつけるとはお粗末すぎる。
●(12月23日) 羽田再拡張/都にも負担要請へ(12/24朝日)
国土交通省は23日、羽田空港に4本目の滑走路を新設する再拡張事業費について、東京都に対して一部の負担を求めていく方針を固めた。羽田の再拡張事業は総額1兆円規模。羽田など、大都市にあり国際線が飛ぶ第1種空港の整備は、空港整備法によって国が全額を負担することになっているが、同省は、公共投資のあり方の見直しのなかでこの法律を改正し、国際線の利用がしやすくなる地元に対しても負担を求める制度に改めたいとしている。
羽田空港については、15年までに4本目の滑走路を整備・供用する方針が決まっている。すでに韓国などへ国際チャーター便が飛んでいるが、新滑走路の供用に合わせて定期国際便の就航が期待されており、東京都民にとっても成田空港まで行かなくても、羽田から海外に飛び立つ機会が増える。このため、国交省は、都に対して負担を求めていく方向になったもので、同省は今後、負担割合や都以外の近隣の自治体にも負担を求めるかどうか検討していく。
東京都も、国から要請があれば前向きに検討するとみられるが、あらたな財政負担に直結するだけに、負担の割合の割合が今後の焦点になってきそうだ。
【本紙の解説】
第1種空港の整備は国が全額を保証する現行の空港整備法を改正し、地元に負担を求めるとしている。これで羽田再拡張がイコール国際定期便受け入れになることを法制的に確定することになる。
しかし、法改正での地元負担というが、羽田以外は適用できない法改正で、実際は空論になりそうだ。成田、関空、中部の民営化方針が決まったが、「上下分離案」でなければ、「下物」である空港整備も民営となる。国の負担どころではない。また、成田空港の今後の整備費を千葉県に負担しろといっても、実現不可能だろう。
国交省は、羽田再拡張に国際空港化を紛れ込ませたいのだが、その意図が見え見えだ。
●(12月26日) 成田空港で避難騒ぎ、煙がフロアに充満(12/27全紙)
26日午後零時20分ごろ、成田空港の第1ターミナルビル「第4サテライト」内の「動く歩道」付近から煙が上がり、一時炎も確認された。煙はフロアに充満し、新東京国際空港公団は、旅客らに避難するよう館内放送で呼びかけ、同サテライトを一時立ち入り禁止とした。公団によると、逃げ遅れやけが人はない。消火作業は午後1時前後には終了した。消防や警察が原因を調べている。
公団などは、電気系統のトラブルか、モーターの摩擦熱が原因で煙が上がったと見ている。煙の充満したサテライト内はオレンジ色の制服を着た消防隊や、ハンカチで口元を押さえた公団職員らが慌ただしく行き交い、一時騒然とした雰囲気に包まれた。同サテライトの利用者が少ない時間帯で、航空機の運航にも支障はなかったが、空港内には緊張が走った。関係者は「出発、到着便が集中する夕方に起きていたら、客があふれパニックになっていたかもしれない」と話していた。
【本紙の解説】
公団によると、78年開港以来、成田空港の火災は今回で10回目とのこと。大火災にまではなっていないが、公共施設としても多いのではないか。警備問題の比重が過多になっていて、肝心の保安問題が置き去りにされている。
9・11以降、航空機や空港内の事故報道が多い。しかし実際は航空機の事故は一貫して多発している。それが「ゲリラでは?」との憶測により報道が増えているにすぎないのだ。
●(12月26日) 国内線充実へ推進協議会設置(12/28千葉日報、朝日、毎日、日経)
成田空港の国内線充実に向けて協議してきた「アクセス充実検討会」と「成田空港需要創出検討会」の最終会合が26日、開かれ、新たな機関をそれぞれ設置することなどを提言にまとめた。新たな機関は「魅力ある成田空港推進協議会(仮称)」として県が主体となって国内線の誘致やPRを行う予定。年明けにも発足させる。また、新東京国際空港公団は安定的に国内線発着枠を確保するため、国内線着陸料を羽田空港並みに値下げすることをIATA(国際航空運送事業協会)に示し、理解を求めていることを明らかにした。
アクセス充実検討会では新たな機関設置のほか「アクセス時間の短縮、交通手段の多様化、乗り換え駅などのバリアフリー化」などを、また国内線需要創出検討会では、推進協議会発足のほか「東京ディズニー・リゾートと連携した観光需要の創出、国内線のPR」などをそれぞれ提言としてまとめた。
「魅力ある成田空港推進協議会」は、県が運営主体となり、空港公団とともに事務局を務める。構成メンバーには周辺市町村や旅行業界代表などを予定している。
【本紙の解説】
成田空港国内線充実対策検討会の全面破産の結果を千葉県が引き継ぐことになった。国内線充実対策検討会は、成田空港の国内線を現状の年間約5000回から2万回に増便させるために昨年2001年の2月に設立された。しかし、国内線の着陸料だけを値下げしろという主張以外に積極的な主張はなく破産した。検討の結果、成田空港の国内線の充実は難しいとなった。
その理由は、成田へのアクセスが悪いことに加え、千葉県は観光の魅力がないことが致命的との結論だった。そのため、検討会のもとにワーキンググループとして「アクセス充実検討会」と「成田空港需要創出検討会」がつくられた。この二つのワーキンググループも成果を上げられず終わった。
しかし、千葉県がどんなにがんばっても、「成田空港の需要創出」は無理だ。日本中から空路で押し寄せるような「魅力」ある観光資源や施設は千葉県にはない。つまり、運輸省(当時)が肝いりで発足させた成田空港国内線充実対策検討会の破産を千葉県に押しつけたのである。
千葉県の堂本知事は、経過もよく理解せず引き受けている。知事は空港問題に関わるために自分の提案で四者協を設置したが、用地問題への関わりを公団から禁止されてしまった。その代替手段として今回の「魅力ある成田空港推進協」を引き受けたという顛末である。
●(12月29日) 年末年始の海外出国ピーク/成田は前年比2割減(12/30日経)
年末年始を海外で過ごす人たちの出国ラッシュが29日、ピークを迎え、成田空港は家族連れなどで混雑した。この日の推計出発客は約3万7700人。9・11の影響で大幅減が続いていた同空港の利用客数は回復したものの、12月21日から来年1月7日までの利用客数は、前年比2割減の約93万人にとどまる見通しだ。
【本紙の解説】
空港、航空会社、旅行業界は航空需要の落ち込みがこの年末年始で回復することを期待していた。しかし結果は約20パーセント減になり、落ち込みの回復とは言い切れなかった。その実体は、空前の格安運賃でようやく20パーセント減に止まったというものだ。通常の年末年始料金なら、前年比30パーセント減は確実だったという。また渡航先は、太平洋路線ではなく、料金も安いアジア路線の比重が圧倒的に高まっている。アジア路線の運賃の安さ(飛行距離が短い)と、格安運賃の設定で、航空会社の営業収入は前年から半減しているのではないか。この統計はまだ出ていない。
●(12月30日) 全日空が国際線テコ入れ、赤字圧縮へ(12/31読売)
全日空は、業績不振に陥っている国際線事業のテコ入れに乗り出す。2002年以降、採算が良い欧米の主要ビジネス路線とアジアの近距離路線に特化する。米同時テロで欧米路線の需要が半減し、日本航空と日本エアシステム(JAS)が経営統合する結果、競争の激化が予想されるため、国際線で利益を確保できる体制を目指す。
欧米路線の見直しは、2002年4月をめどに成田―ウィーン線の自社運航から撤退する。さらに、9・11後、3月まで暫定的に休止している成田―シカゴ線の休止措置を継続。また、パック旅行などで人気の高いハワイ路線は、成田空港の新滑走路の供用開始に伴い、4月から現在の週4便を週7便に増便する。
【本紙の解説】
「国際線事業のてこ入れ」とはいっているが、いままで運休あつかいになっている路線からの撤退表明である。アジア路線に特化するというが、アジア路線で旅客が増えているわけでない。過当競争の中で赤字を拡大するだけだ。また、北米便の一部をハワイ路線の増便に振り替えるというが、旅客減のなかで、ハワイ路線は競争が最も過酷な路線である。全日空が米メガキャリアに勝てるはずもない。
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