SANRIZUKA 日誌 HP版  2000/05/01〜31      

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 2000年5月1日〜31日
                         〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕

                                    週刊『三里塚』
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5月2日 木の根ペンション移設問題で、元熱田派(脱落派)事務局長・石毛が”取り潰し”を求める声明
・熱田派(柳川英夫世話人ら)が、C滑走路予定地内にある木の根ペンション(土地所有者はすでに権利を売却し移転済)について、芝山鉄道の迂回ルートと重なるため、同予定地内の加瀬勉氏所有地(通称「溜め池」)へ移設することを検討していたことに対し、熱田派元事務局長の石毛博道が「法的に移設は不可能である」との声明を出し、ペンション解体を求めた。反対運動の継続自体が許されないというのが石毛の主張。
 木の根ペンションは元々は団結小屋。1988年に当時熱田派メンバーで大工である石毛自身が建て替えた。シンポ・円卓会議(91〜94年)で運輸省と熱田派が談合し”和解”した後は、和解しきれず残った熱田派メンバーの会合等でたまに使われていた。
・ペンション移設問題は、公団による反対運動つぶしの一環。木の根地区の加瀬氏所有地と一坪共有地に阻まれ、開通不可能となっていた芝山鉄道の「迂回ルート」を、芝山鉄道(空港公団出資の第三セクター)側がペンション上にぶつける手段を講じた。鉄道開通を希望する「町民の要望」を盾に、熱田派に屈服を迫っていた。転向した石毛は、「移転」では反対運動継続となるので、取り潰すべきだと、公団サイドの意志を最も強く代弁していた。
・ペンションの元の地主は小川一彰。6月で売却から2年がすぎるが、これまでに土地が更地にならないと、移転時の土地売却が非課税となった「買い替え特例」の適用が撤回され、正規の税を支払う義務が生じる。公団はこの問題を使って熱田派にペンション撤去を迫っていた。

5月8日 木の根ペンション移設開始、芝山鉄道開業にめど立つ
・芝山鉄道のルート変更案(反対運動つぶしの口実)を阻んでいた木の根ペンションの移転を熱田派が承認、移設を開始した。芝山鉄道はこれで部分的開通のめどが立った。
・空港公団と芝山鉄道に協力した熱田派(脱落派)の行為は裏切りである。「一彰に迷惑がかかる」という理由だが、法外な移転補償を受けて移転した当人が、税金を支払えば済むことだ。芝山鉄道に協力する理由にはならない。鉄道の迂回ルートはわざわざペンションにぶつけなくても解決可能な問題。それをぶつけてきた公団の意図を熱田派自身も承知していたはずだ。
・芝山鉄道は、芝山町の反対運動を買収するための見返り事業。運輸省の試算ですら、50年営業しても黒字にならないという、でたらめ極まりない計画だ。芝山町も芝山鉄道会社に出資している。赤字のツケは結局、住民が払うはめになる。この財政危機のおりに鉄道を認可した運輸省の意図は、ただ一点、C滑走路予定地・木の根地区の一坪共有運動解消だ。
・移転先が、同じC滑走路予定地内の未買収地であるとはいえ、ペンション移転に協力した公団側の意図を熱田派は受け入れた。許されることではない。
・それにしても声明まで出して「取り潰し」を要求した石毛だが、盟友となったはずの公団側に無視されてしまった。転向者・石毛は、かつてシンポ・円卓会議を取り仕切り、反対運動終結のキーマンとして運輸省に奉られた。しかし熱田派全体を解散させることはできず、ましてや三里塚闘争全体を破壊することなどできず、結局、運輸省からも公団からも見放された格好になった。

5月13日 反対同盟 三里塚第一公園で春のイベント
・戸村一作彫刻展、三里塚闘争パネル展、フリーマーケト、ゲーム、野菜即売会、抽選会など。抽選会参加者は地元住民を中心に260人にのぼり大成功。
・反対同盟は同日の記者会見で「平行滑走路計画は最終的に破産した」と宣言した。平行滑走路の本来計画は3300〜3700bの軍用滑走路。暫定滑走路は2180bで大型機が発着できず、国際空港として使いものにならない。
 また反対同盟は「公団は暫定滑走路工事を農家の軒先まですすめて営農と生活を妨害し、追い出そうとしている」と、地上げ屋のような公団の一方的な工事を弾劾した。天神峰部落では、ジェットブラスト対策の防音壁計画もなく、市東さん宅でのジェット騒音被害が予想される。また天神峰の市道(通称団結街道)がつぶされ、現闘本部の隣にある畑(市東方)との通行も阻害される。これらの事実も明らかにされた。

5月15日 熱田派の木の根ペンション移設完了
・木の根ペンションの移設が完了した。これで芝山鉄道会社は、2002年中の開業を目指し、工事計画変更の認可申請を急ぐ方針とされる。 熱田派は「空港見返り事業の芝山鉄道に協力した訳ではない」との苦しい弁明。

5月16日 羽田空港の沖合移転跡地の利用について
・東京商工会議所は7月をめどに、羽田空港の沖合移転跡地の開発に向けた民間の推進組織「東京国際空港周辺開発推進機構」を設立する。沖合移転は完了したが、約200ヘクタールの跡地活用方法は決まっていない。その活用を推進する考え。(日経)

【本紙の解説】
 羽田空港の国際化を前提にした話。羽田国際化が実質的に確定していることの現れ。成田空港の〃地盤沈下〃は避けられない。

5月16日 周辺市町村議会連絡協 羽田国際化反対を決議(商業各紙)
・成田空港周辺市町村議会連絡協議会は16日、総会を多古町で開催し「羽田国際化に反対」「成田空港の早期完全空港化と過激派集団によるテロ行為の排除を求める決議」「成田空港周辺道路の整備に関する決議」「成田空港周辺道路の整備に関する決議」を採択した。長年、運輸省の利益誘導政策にむらがってきた連中が、空港利権の一部を東京に奪われることに反発していることが背景。
・議事の後、運輸省新東京国際空港課長・長田太が講演。「さまざまな陳情を受けているが、運輸省は羽田を国際化するとは言っていない。将来的にも『成田は国際、羽田は国内』の区分けを破るつもりはない」と同省の建前をくりかえした。一方で、羽田空港が24時間運航化されたことで、「羽田の空いている時間帯で成田が閉まっている午後11時から午前5時の間、羽田を使ってもいいという論議があることも事実」として、羽田国際化の検討が実質的に始まったことも報告。「成田の位置はそのままで、羽田をどう活用するか勉強している。何が国際化なのか議論を詰め、地元に相談する」と理解を求めた。

【本紙の解説】
 羽田国際化での運輸省の基本見解である。深夜早朝の羽田国際化は「成田は国際、羽田は国内」の取り決めに抵触しないとして、7月からの羽田国際化を確定させた。「将来的」にも取り決めは破らないとしているが、実績を積み上げて羽田国際化を全面的にすすめる方針。有力案として、首都圏第3空港を国際空港として東京湾内に建設、羽田と連携させ、羽田の全面的国際化に道を開くことが運輸省のプランである。

5月17日 成田空港、A滑走路の脱出誘導路新設へ(産経)
・空港公団は、A滑走路の過密運航を緩和するため、着陸した航空機が少しでも早く滑走路から出られるように新しい脱出誘導路(タキシーウェイ)を整備中。新しいタキシーウェイを利用すると、滑走路にいる時間が十秒間短縮できるという。
・新脱出誘導路は以前から計画されていたが、平行滑走路の用地取得が難航し、暫定滑走路に変更となったため、その必要性が高まる結果となった。暫定滑走路が完成しても、A滑走路の離発着便は減便されず現状維持となる。平行滑走路が本来計画で完成すれば、A滑走路は一日の離発着回数を現行の370回から299回に減らす予定だった。

【本紙の解説】
 暫定滑走路から平行滑走路(3300〜3700メートルの本来計画)への再変更が事実上、棚上げになったことの反映である。

5月17日 米ボーイング社拡張型ジャンボ機(七百人乗り)開発
・米ボーイング社は15日の記者会見で、世界で最も大型のB747型旅客機(ジャンボ=416人乗り)をさらに拡張した最大700人乗りの新型機開発に着手すると正式に発表した。欧州のエアバス・インダストリーが555人乗りの超大型機「A3XX型機」開発を決めたため、対抗機種投入で航空機市場での優位を保つ狙い。(日経)

【本紙の解説】
 航空機産業(航空・宇宙産業)は航空運輸業とならび、資本主義(帝国主義)の市場・勢力圏争いと軍事力の水準にかかわる戦略分野。アメリカはこの分野での優位性確保を絶対的な政策としている。

5月20日 W杯にむけ工事順調(商業紙)
・暫定滑走路は農家の所有地や共有地などの未買収地を避けているため、完成することは確実。いまのところ「工事は順調に進んでいる」(空港公団)という。完成後、飛行検査や習熟飛行などを経て、開港24年周年となる2002年5月20日前後に運用が開始される予定だ。(産経)
・暫定滑走路直下に自宅をもつ島村昭治さんは、自宅周辺で測量を始めた公団職員に激しく抗議、「ウチは出ていかない」と語気を強めた。この島村さんの抗議につて公団幹部は「目の前で工事が実際に始まった現実を直視したことから、あのような行動となったのだろう」とみる。(同)

【本紙の解説】
 公団幹部の傲慢な〃軒先工事〃の考え方を示した。公団は「工事を開始すれば島村氏は動揺する」と考えて暫定案を提示、昨年12月3日に着工したのである。公団総裁の中村徹は「暫定滑走路ができれば地権者宅の上空40b(メートル)をジェット機が飛ぶことになる(だから条件交渉に応じろ)」と公言することで地権者農民を脅迫している。二期工事着工当時の公団総裁(松井和治)は「反対派の軒先まで工事を進め、お見せして『話し合い』を迫る」と公言し、これが「軒先工事」という新語を生んだ。国家ぐるみの地上げ行為。ダンプカーを民家に突っ込ませ、立ち退きを強要する暴力団の地上げと同じ考え方である。

5月25日 公団総裁定例記者会見
・中村公団総裁は25日の定例会見で、暫定滑走路の南北両側での防音フェンス(工事用フェンス)設置などの工事を20日までに終えたを明らかにした。
・また、公団内にハイジャックや航空機爆破などテロ対策を担当する「航空保安対策課」を新設したことを明らかにした。体制は課長以下5人。
・暫定滑走路の供用や、航空会社間で進むコードシェア(共同運航)便などへの対応について、事務的な協議を来月中旬ぐらいから開始すると述べた。

5月27日 成田国際物流複合基地の完成時期、2007年度に延長(読売)
・千葉県企業庁が成田空港の北側で進めている「成田国際物流複合基地」事業が完成が遅れている。今年度の完成予定を断念、2007年度まで7年の期限延長を決めた。2年後の暫定滑走路供用開始にも間に合わず関係者困惑。
・原因は用地買収の遅れ。企業庁内陸建設課によると、これまでの買収契約成立は、全体の71%にあたる約55ヘクタール。地権者の代替地探しが難航しているのが原因である。今年度中に測量など準備にはいるが、本格的造成工事は未買収地が虫食い状で残るために無理。
・成田空港の貨物取扱量は、アジア経済の一定の回復で昨年度には開港以来最大になった。世界中で進むIT革命が物流の量をさらに加速させることも確実。
・今年の夏に第五貨物地区で倉庫を増築するほか、市川市原木にある貨物取扱会社の大型施設の再活用も検討している。

【本紙の解説】
長年三里塚農民を苦しめてきた農地取り上げ政策のツケが回った。成田空港関連の用地買収は、空港本体以外も容易ではなくなっている。

(5月28日) 反対同盟、平行滑走路建設阻止で現地デモ
 昨年12月3日の暫定滑走路着工以来、反対同盟は現地支援連絡会議(中核派、解放派、戦旗派、蜂起派)とともに建設工事粉砕のデモを月1回のペースで行っている。公団は4月17日には反対同盟農民の居住区である天神峰・東峰地区をすべて鉄板フェンスで囲い込む工事に着手。公団の手法は暴力団の〃地上げ〃と変わらない。
 デモに先立つ集会で、北原鉱治・反対同盟事務局長は「フェンスは敷地内を監獄状態にして農民を追い出そうとするものであり許せない」と訴え、「沖縄の闘いと連帯し、軍事空港を粉砕しよう」と呼びかけた。

(5月29日) 「グリーンポート2000」成田で開催
 世界の国際空港の管理者で組織する国際空港評議会(ACI)、国際定期航空会社で つくる国際航空運航協会(IATA)が共済する「グリーンポート2000」が二十九日に成田空港近くのホテルで300人が参加して始まった。グリーンポート2000」はACI環境委員会が企画したもので、昨年オランダのアムステルダムで第1回が開かれた。2回目の今回からIATAとの共催になる。今回のテーマは「地球上で共に生きる」。
 参加者は成田空港の太陽光発電システムなど成田空港のエコ・エアポート構想に基づく取り組みを視察。ジョナサン・ハウACI事務総長は「成田空港の環境対策は世界でも最も先進的で高度だ」と述べた。(5/30各紙報道)

【本紙の解説】
 農家の軒先まで滑走路を造って追い出しをはかる「軒先工事」が強行されている現実をかくすもの。成田空港の「環境対策」とは、こうした平行滑走路建設に伴う農民殺し、農業環境破壊を覆いかくすベールにすぎない。今回のようなイベント自体が偽善的。騒音の脅威を突き付けられて生活する建設予定地の農民たちや良心的住民の怒りを買っていることを知るべきである。
 農民切り崩し方策の一環としてスタートした「エコ・エアーポート構想」も同じ。空港使用電力の百万分の一を太陽発電に切り替えて「環境にやさしい(?)」とは欺まん。ゴミの堆肥化も同じだ。空港からでる生ゴミのわずか千分の二、0・25%を2000万円もかけて堆肥化し宣伝用に使っているだけだ。成田空港の存在自体が自然破壊であり、今も暫定滑走路工事の見切り発車で農業環境に極限的な圧迫を与えている事実にかわりはない。

●(5月29日) 芝山鉄道、ルート変更を申請
 芝山鉄道は29日、ルート変更に伴う工事計画変更申請書を運輸省関東運輸局に提出した。ルート上に反対派所有地や共有地が残っていたために、一部区間(二百二十b)で工事が中断していたもの。未買収地を避けた迂回ルート上にも熱田派の「木の根ペンション」があったが(公団が意図的にぶつけた)、同派が移設要請に屈服し16日に移設を実施したので、この日の申請になった。

【本紙の解説】
  芝山鉄道をテコに一坪共有地を解消し、横風滑走路=C滑走路の用地問題を解決しようとした公団のねらいはこれで潰れたといえる。成田空港の完成(3本の滑走路)は永遠のかなたに。

●千葉日報が「羽田国際化反対」の全紙意見広告(5月31日・水)
 「羽田の国際化は、新たな騒音、成田空港の空洞化、地元経済の地盤沈下などを考えると、到底容認できない」として、市町村議会、自民党、公明党、保守党、民主党、社民党の政党千葉県組織、経済団体、空港関係企業などが意見広告。千葉日報社が取りまとめ、全紙大で掲載した。

【本紙の解説】
  千葉日報社が新聞社の公的性格をかなぐり捨て、「千葉の権益」だけを主張する内容。不景気による広告収入減少も背景にあるが、成田空港建設35年の挫折の責任が、自分たちが進めてきた住民無視の利権追及政策にもあることを無視するもので見るに耐えない。

(5月31日) 航空大手決算「空の需要拡大で『営業増益』」
 日本航空、全日本運輸、日本エアシステムの航空大手の2000年三月期連結決算が31日、出そろった。三社とも「リストラが功を奏して(毎日)」営業黒字を計上。全日空は賞与見直しで人件費コストを前年比80億円圧縮。日航は低コスト運航のジャルエクスプレスなどグループ会社への不採算線移管で算向上をはかった。首切りや賃下げによる数字上の増益である。ただし「財務体質改善策」の影響で最終損益は依然低迷。全日空は3期連続の最終赤字。

【本紙の解説】
  航空各社も、2002年春のオープンスカイ導入をにらんだ競争激化と景気低迷で混迷を続けている。営業利益も、総人件費圧縮による増加が基本。80年代のアメリカ航空業界とよく似た様相だ。アメリカでは78年に始まる航空規制緩和による競争激化の業界再編で人件費が圧縮され、これが航空機事故の異常な増加の原因となった。最終的には人の命より資本の利潤を優先する資本主義の宿命ともいえる。

(5月31日) 成田空港連絡協、周辺道路整備など要望
 成田市などの周辺9市町村でつくる「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長小川国彦・成田市長)は31日、運輸省と建設省と県を訪問し、空港周辺の道路整備などを要望した。暫定滑走路が運用開始される二〇〇二年には深刻な道路渋滞が懸念されるとして、空港圏環状・放射状道路網の早期実現などを要望した。

【本紙の解説】
  成田財特法による地元への補助金上乗せが2002年までで打ち切られ再延長はない。そのため暫定滑走路の運用開始を理由に、見返り要求を強めている。しかし暫定滑走路が完成しても国際線としては使用に耐えず、利用客は増えない。また羽田空港の国際化の動きも本格化している。成田の旅客はむしろ減少すら予測される。

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