ZENSHIN 2001/02/26(No1994 p06)

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週刊『前進』(1994号2面1)

今春「日の丸・君が代」闘争爆発へ 教育関連6法改悪阻止を
森政権打倒・教育改革粉砕し 闘う日教組運動を再生しよう
 マル青労同教育労働者委員会

 昨年十二月の教育改革国民会議最終報告を受け、文部科学省は一月二十五日、「二十一世紀教育新生プラン」を打ち出した。首相の私的諮問機関にすぎない国民会議の「教育を変える十七の提言」を政府の公式の政策として採用し、スケジュールつきで具体化したのである。文科省は、通常国会で改悪法案を六本に大くくりして提出するとし、予算関連についてはすでに国会に提出した。改憲・教育基本法改悪を先取りする教育反動立法を断じて許すな。森政権打倒・教育改革攻撃粉砕の決戦へ総決起を訴える。

 奉仕活動導入狙う「教育新生プラン」

 「二十一世紀教育新生プラン」の狙いは、第一に、学校内外での奉仕活動の推進である(学校教育法・社会教育法改悪など)。十八歳奉仕活動義務化についても中教審で検討するとし、町村文科相は「大学入試を九月にし、高卒後の三−四カ月を奉仕期間とする」「自衛隊への体験入隊でしゃきっとする」と導入に執念を燃やしている。
 奉仕活動導入は徴兵制の布石であり、憲法一八条に違反し、教育基本法の「個人の尊厳」「人格の完成」を踏みにじるものである。
 第二に、高校学区制廃止、大学入学年齢制限撤廃、習熟度別学習推進などエリート養成のための能力主義の強化である。「問題を起こす児童・生徒」の出席停止措置など、差別選別体制に順応できず反抗する子どもの切り捨てである。「教育を受ける権利」を解体し、公教育を「国家有為の人材育成」のための制度に変えるものである。
 「定数改善」(義務標準法・高校標準法改悪)は、「少人数学級」ならぬ習熟度別指導の誘導策であり、正規教員を非常勤講師に置き換える不安定雇用化政策である。
 第三に、「不適格教員」免職・転職制度(地方教育行政法改悪)である。闘う教育労働者に「不適格教員」「指導力不足」のらく印を押して研修所に送り、「改善の余地なし」として退職勧告・分限免職する教労版「人活センター」「清算事業団」送りである。
 すでに「指導力不足等教員」制度が導入されている東京都では、平和教育に取り組んできた教師が研修所に送られ、「日の丸・君が代」被処分者にも発動されようとしている。教員の身分保障をはく奪し、教育行政による「不当な支配」の武器となるものである。
 教育基本法改悪をめぐっては、一月六日、教育関係審議会を統合した新・中教審が発足、教基法改悪を審議する教育制度分科会が新設された。会長に就任した鳥居泰彦慶応義塾大学長は、「教育基本法改正は憲法問題」「あらゆるものを改革しないと日本の将来はない。教育はその一環」と表明した。委員には今井、梶田、森ら国民会議で教基法見直しの急先鋒(せんぽう)だった面々が横滑りし、横山日教組前委員長、高木ゼンセン同盟会長らも名を連ねた。文科省は、六月にも法案要綱の形で教育基本法見直しを中教審に諮問し、来年の通常国会での改悪を狙っている。

 石原は教基法改悪の最先兵

 ファシスト石原は、一月に都の教育目標を五年ぶりに大改訂し、「わが国の歴史や文化を尊重し国際社会に生きる日本人の育成」を打ち出した。従来の基本方針から「憲法・教育基本法の精神に基づき」の文言を削除し、人権教育を奉仕活動に差し替えた。道徳教育公開講座、奉仕活動の教育課程への導入、高校学区制廃止や「公設民営高校」設立、人事考課制度と「指導力不足等教員」制度、主任制の抜本的強化による管理体制強化と組合つぶしなど、教基法改悪と教育改革攻撃をすべてにおいて率先実施しようとしている。
 石原は「周りから恐れられる国になる。……その地位を得るためにはどういう人間が必要か。その設定さえはっきりすれば、他の子どもは脱落しても構わないからすごいエリートを育てるという形でやればいい」(産経新聞一月一日付)と語ってはばからない。
 その石原が「日本の教育改革の突破口」として位置づけているのが、「日の丸・君が代」のない卒入学式を続けてきた国立の教育への攻撃である。
 十七人の教職員が処分された国立では、都教委の是正指導を受け、市教委が各学校長に「管理運営規程」「職員会議細則」を策定させた。その内容は、職員会議は校長の管理運営方針や法令・通知の周知徹底の場だとし、指導主事や行政機関の出席、司会の校長選任、会議録の校長による検閲と加除訂正まで規定したものである。校長会で国旗・国歌実施の職務命令が出され、職員会議に指導主事が出席して教職員の発言を逐一チェックしている。
 被処分者や組合活動家への異動強要、強制異動、学校現場から引きはがして研修所に送るなどの組織破壊攻撃も強まっている。
 人事考課制度・「指導力不足等教員」制度のもとで「日の丸・君が代」強制は教育労働者の思想的選別・パージの踏み絵として使われている。それは教育改革攻撃、日教組解体攻撃の凶暴な切っ先なのである。

 侵略戦争賛美する教科書採択許すな

 教科書攻撃も重大な局面を迎えた。この間、「新しい歴史教科書をつくる会」など右翼反動勢力は、地方議会での請願・意見書採択運動を繰り広げ、産経新聞のキャンペーンをもテコに「つくる会」教科書の検定合格工作を展開し、歴史担当の検定審議委員が解任される事態となっている。
 「つくる会」の歴史教科書は、教育勅語や神風特攻隊を賛美、侵略戦争を「大東亜戦争」と呼び「アジア解放戦争」として美化する代物であり、公民教科書も「核兵器廃絶は絶対の正義か」「生命尊重は最高の価値か」(コラムの表題)などという内容だ。文科省は、この教科書を検定合格させる方針を固めたという。
 八二年の教科書検定にアジア人民の怒りが爆発した際、文部省は近現代史記述につき、いわゆる「近隣諸国条項」を検定基準に盛り込んで収拾を図った。だが、今や日帝は、朝鮮・中国−アジア人民の抗議を逆手にとって排外主義・愛国主義をあおっている。
 検定合格が出されれば、八月まで「つくる会」教科書の採択運動が各自治体でさらに大々的に展開されるだろう。石原・都教委は二月八日、学習指導要領の「我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」という目標を区市町村教委に採択観点として指示、学校票制度や教育委員会の下部機関による絞り込みを禁止する通知を出した。杉並区では、昨年十一月に山田区長が任命強行した右翼支配の教育委員会が、「つくる会」教科書の採択を狙っている。

 戦前型教育への回帰を策す

 教育の理念と目標は明示に転換され、制度、課程、方法すべてが戦前型へと回帰しようとしている。
 戦前、中国侵略戦争への突入とともに教員への思想統制が強化され、「日本精神に立つ教育」が提唱され、三五年「国体明徴」運動、三七年「国体の本義」発行をメルクマールに日本的教学理念が確立された。高度国防国家の建設と総力戦を担う人材づくりに向けて、三七年には戦前最大規模の教育審議会が設置され、小学校の国民学校への改編、青年学校義務化、教科再編などの一大教育改革が次々と打ち出された。
 これに先立って、日本共産党、全協、学生運動への治安維持法弾圧が吹き荒れ、中国侵略戦争に教壇実践で抵抗した教育労働者組合には、三一年から三三年にかけて「教員赤化事件」弾圧が猛威を振るった。
 以降、学校教育にはすべて「皇国ノ道ニ則リ」という目的規定が掲げられ、教育方法は儀式行事や訓練活動を軸とする「錬成」が重視された。国民学校令施行規則は、「教育勅語ノ趣旨ヲ奉体シテ教育ノ全般ニ亘(わた)リ皇国ノ道ヲ修練セシメ特ニ国体ニ関スル信念ヲ深カラシメルベシ」「我ガ国文化ノ特質ヲ明ナラシムト共ニ東亜及世界ノ大勢ニ付テ知ラシメ皇国ノ地位ト使命トノ自覚ニ基ヅキ大国民タルノ資質ヲ啓培スルニ力(つと)ムベシ」と端的にその狙いを述べている。
 国民会議最終報告は、「人格の完成」「平和と真理を希求する人間の育成」に代えて「日本人の育成」を「新時代の教育基本法」の教育目標に掲げようとしている。そして「個人の力を超えたものに対する畏敬の念を持ち(=天皇制を崇拝し)、伝統文化と社会規範を尊重し、郷土や国を愛する心に態度を持」つ「日本人像」を打ち出し、教育を愛国主義、排外主義に染めあげようとしている。
 国旗・国歌法制定と「君が代」政府見解は現代の「国体明徴決議」であり、国民会議の「日本人の育成」論は、新たな日本的教学理念である。儀式的行事での敬礼・起立・斉唱の強制、道徳教科化、奉仕活動は、学校を再び「国民道徳の錬成場」と化すものだ。「日本人の育成」を掲げた「国家戦略としての教育」とは、争闘戦に勝ちぬく人材づくり、アジア勢力圏と侵略戦争の担い手づくり以外の何ものでもない。

 改憲阻止の壮大な決戦へ突破口開け

 二〇〇一年は、森政権打倒・教育改革粉砕の階級決戦、教労決戦の年となった。教育が戦争国家化・改憲をめぐる階級攻防の焦点に押し上げられ、日教組運動の存在そのものがその最大の激突点となっている。
 教育労働運動の展望は、何よりも第一に、教育基本法−改憲をめぐる壮大な階級決戦を最先頭で切り開くことの中にある。
 今や文科省は、敬礼、起立、斉唱を「儀式規程」として強制し、新たな臣民づくりの舞台装置とし、道徳教育、奉仕活動など、学校教育全体を「天皇を崇拝する日本人」「国家に奉仕する日本人」づくりの場と化そうとしている。
 他方、帝国主義間争闘戦を担うエリートの選抜養成を軸に教育制度を再編し、荒れる子どもや不登校児童・生徒を切り捨てようとしている。町村は「不登校は自由のはき違えが原因」と言い、東京都は学級編成基準から不登校者を除外、広島では授業料滞納による出席停止が始まっている。
 教育行政を牛耳り、私物化し、平和教育を攻撃し、皇国史観の教科書を押しつけようとしているのは、金権腐敗にまみれた極右政治家どもである。再び「お国のために」子どもを差し出せという攻撃に、労働者人民の怒りは、すでに至る所から火を噴き始めている。
 通常国会の教育反動立法を阻止し、あらゆる水路から教育基本法改悪阻止闘争を切り開こう。都議選決戦を森・石原打倒、教育改革粉砕の闘いとして闘おう。
 第二に、日教組運動の階級的再生に向けて新しい潮流運動の大発展をかちとることである。
 三重県教組は、二月四日の臨時大会で賃金返還請求を拒否し、県教委と対決する方針を決定した。広島両教組の徹底対決の闘いに続き、三重県教組一万五千の怒りの決起が始まった。教育労働者の権利意識と団結を解体し、侵略教育の先兵とする攻撃に対して、教育労働者の自己解放をかけた決起は必ず爆発する。
 人事考課制度=「不適格教員」攻撃、時間内組合活動の権利はく奪と賃金返還請求などの教労解体攻撃は、戦争国家化攻撃の切っ先であると同時に企業再編リストラ、公務員制度改悪などの国家的リストラ攻撃の一環でもある。
 国鉄決戦は、国労続開大会の攻防を経て、四党合意との非和解的激突の中から階級的労働運動の新しい潮流を生み出そうとしている。この闘いと結合し、階級的潮流の力で闘う日教組運動の再生をかちとろう。
 第三に、「日の丸・君が代」攻撃を不退転の構えで迎え撃ち、卒入学式闘争を大爆発させることである。
 処分や職務命令による強制に対して、職場の団結を防衛強化しつつ、あらゆる創意工夫をこらした抵抗と意思表示を貫こう。拠点地域と拠点校を防衛するとともに、すべての地域・学校で抵抗線を再構築し、一歩でも押し戻す闘いを展開しよう。「日の丸・君が代」闘争を新たな教育闘争の戦略的展望のもとに位置づけ、保護者・子どもと一体となった闘い、地域の労組、市民団体、在日アジア人民、部落大衆との共同闘争として闘おう。
 二〇〇一年卒入学式闘争こそ、教育をめぐる階級決戦−教育基本法改悪阻止闘争を切り開く導火線である。攻撃が強まれば強まるほど、抵抗と不服従が拡大する構造をつくりだし、「日の丸・君が代」闘争の永続的発展を切り開こう。

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