ZENSHIN 2001/03/19(No1997 p06)

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週刊『前進』(1997号3面1)

給食の民間委託やめよ “保護者は同意してない”
 杉並区議会 けしば区議と区民が追及

 二月二十八日に杉並区議会文教委員会が開かれ、学校給食調理業務の民間委託新年度実施に反対する請願・陳情の審議が行われた。都政を革新する会のけしば誠一区議は、九十人の傍聴者とともに終日、保護者と給食調理員、栄養士の切実な願いを背に闘いぬいた。この日の審議によって民間委託が、安全でおいしい給食と公教育の破壊であり、それを「保護者の理解を得られた」として進めている杉並区当局の不当性が完全に明らかにされた。追いつめられた与党勢力、推進派議員は午後五時過ぎに自民党議員の動議で審議打ち切りを強行、けしば議員と傍聴者が強く抗議する中、二十二本の請願と陳情のすべてを不採択とする暴挙を行った。この日集まった区民、保護者、労働者は、審議打ち切り、請願不採択の無効を宣言し、これからますます反対運動を広げていくことを誓いあった。

 2万6千人の反対署名の力

 この間の「杉並区の学校給食を考える会」や都革新の運動によって、民託反対の声は大きく区民の間に広がり、二月二十八日までに区議会に提出された民託化の中止・見直しを求める請願と陳情は二十二本、署名数は二万六千人を超えた。
 推進派が多数を占める区議会も、こうした区民の声に追いつめられて、けしば区議の要求により請願・陳情審議の委員会を開いた。
 午前十時から始まった委員会では、まず請願・陳情提出者である保護者、栄養士、区民ら六人が補足説明を行い、これをめぐる議員からの質問と応答が行われた。
 まず保護者が率直な不安、中止を求める意見を表明した。
 「子どもの給食と教育を犠牲にして、財政再建を優先させるという区の方針は認められない」
 「営利追求の民間業者では、職員の頻繁な入れ替わりも避けられず、給食の質が下がることは明らか。教育委員会はわれわれの不安にこたえていない」
 「『保護者の理解が得られた』という区の主張はおかしい。説明会でも、みな納得した雰囲気ではなかった。保育園、幼稚園児の親は説明会への出席を認められなかった。仕事を持つ保護者も参加できなかった。再度の説明会を求めたが拒否された」
 栄養士は「栄養士一同」の区議会議長あての要望書を読み上げた。そして、「区は現場の栄養士に九月に一度、一時間の説明をしただけで、現場の声を一度も聞かずに強行しようとしている」「民託化は調理現場に混乱をもたらすだけでなく、安全でおいしい食事を子どもたちに提供する学校給食の役割を変質させてしまう」と訴えた。
 民間委託を実施している他区の例が区民から紹介され、「手を包帯でぐるぐるまきにした人が仕事に出て来た。なんで来たと聞いたら『会社から人数合わせのために出勤しろと言われたから』と答えた」という事例などが暴露された。
 さらに、審議の中で、九九年度の区職労との合意によって、来年度に十一人が定年退職しても人員配置の変更で現状の給食業務は可能であること、したがって民間委託化の来年度七千二百万円の予算は、まったく余計な支出であることがはっきりした。「経費節減と言いながら、なぜわざわざ余計金のかかることをやるのか」という、けしば区議の追及に、区側はまともに答えられなかった。
 追いつめられた区は、「転職など(実際には退職に追い込むこと)によって最大限、委託効果が出るようにする」などと、ただただ現業労働者の切り捨て、労働組合の破壊と、学校給食を民間資本の利潤追求の場に「市場開放」することが狙いであることをさらけ出した。
 あらゆる角度から見て、民託化が給食と教育の破壊であり、子どもと給食労働者を犠牲にする暴挙であることが突き出されると、自民党議員は「おいしいものを食べさせるだけが教育ではない。まずいものを食べさせるのも教育だ」などと発言し、傍聴者の失笑を買った。公明党議員は、けしば区議と傍聴者の一体となった闘いに打撃を受けて、「署名運動が選挙活動や組合活動に利用されている」などと敵意むき出しの暴言を繰り返した。

 審議打ち切りの暴挙は無効

 午後五時過ぎ、追いつめられた与党側は自民党議員の動議で審議打ち切りを強行した。
 けしば議員は審議打ち切りに強く抗議し、意見表明の中で「これほどの重大問題なのに、まだ議論が尽くされていない。もっと議論すべきだ」「労働条件の水準が労働の質を決める。公務労働の質が、これまでの杉並学校給食の水準をつくってきた。民託化はそれを破壊するものだ」「保護者の理解などとうてい得られていないのに、『得られた』として事を進める杉並区の強硬な姿勢に強く抗議する」「どうして栄養士さん、調理員さんからもっと話を聞かないのか」と、怒りを込めて弾劾した。
 けしば区議が「強行採決は無効だ。これからも委託阻止に全力を尽くす」ときっぱり述べて意見表明を締めくくると、傍聴席から大きな拍手がまき起こった。
 委員会に詰めかけた保護者、労働者は、傍聴席に入りきれず、隣の会議室で放送に聞き入った。区や推進派議員の暴言のたびごとに、思わず怒りの声が上がった。
 その後、二十二本、署名数二万六千人を超える請願・陳情のすべてを「不採択」とする暴挙が強行された。自民、公明、民主の反動派とともに生活者ネット所属の樋口蓉子議員は、文教委副委員長として質疑打ち切り―採決強行、請願不採択を積極的に推進し、リストラ行革推進派としての生活者ネットの反動的正体をあらわにした。
 区側は「予定どおり四月から実施したい」と言いながら、民間委託される対象校も、委託業者も、まだまったく決められないでいる。区民の運動と労働組合の粘り強い交渉が区を追いつめている。
 新年度実施は粉砕できる。七日から二十一日に至る予算委員会で「経費節減のため」という大うそをさらに追及し、委託業者に利益を与えるためだけの委託費を予算案から削除させよう。
 「日の丸・君が代」押しつけ反対、戦争賛美教科書採択反対の運動とともに、地域の保護者と労働者の団結した闘いで、大リストラと学校給食破壊の民託化攻撃を打ち破ろう。

【解説】

●杉並区の職員削減計画と学校給食民託化

 山田区長が昨年十一月に発表した「スマートすぎなみ計画」は、新年度から十年間で千人(初年度から三年間は毎年七十人)の区職員を削減する大リストラ計画である。削減の対象となっている業務の九五%が、福祉、教育、保健衛生など区民生活に直接かかわる現業部門である。これにより学校から区の職員が消える。学校給食調理員の削減はその中心環であり、区は手始めに二〇〇一年度から小学校二校、中学校一校で民間委託を強行しようとしている。学校給食調理から区の労働者をなくし、民間業者による「安上がり、使い捨て」の労働力に置き換えようというのである。
 これは、不可避的に学校給食の質を低下させ、これまで調理員、栄養士が、子どもたちや保護者とともに築いてきた杉並区の「安全でおいしい学校給食」の地平を崩壊させるものである。
 区当局は、昨年九〜十月の各学校説明会をもって「保護者の理解を得られた」と強弁し、来年度民間委託化を十一月に決定した。だが、説明会によってかえって保護者の不安は高まり、昨年十二月の杉並区小学校PTA協議会のアンケート調査でも「賛成」はわずか三%、「反対」二四%、「不安」一五%、「不安だが仕方がない」五二%という結果であった。「保護者の理解を得られた」というのは大うそである。

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