ZENSHIN 2007/04/23(No2292 p06)

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第2292号の目次

(写真 改憲投票法案阻止、300人が怒りのこぶし 「九条改憲阻止」の白たすきの「憲法と人権の日弁連をめざす会」や60年安保闘争世代を中心とする「9条改憲阻止の会」を先頭に国会闘争に立つ【4月11日】)

1面の画像

 

 

 

(1面)
おれたちは奴隷じゃない!労働者の手で社会を変えよう  職場から怒りの大反乱を
07年メーデー/青年労働者のアピール
労働運動の力で革命やろう  日米首脳会談粉砕・改憲投票法案阻止へ
記事を読む  
統一地方選 杉並・相模原を先頭に  闘う候補 全国で奮闘 記事を読む  
(2面)
団結固め勝利した動労千葉  田中康宏委員長に聞く
今こそ労働運動再生の時
記事を読む  
資本攻勢&労働日誌 2007 3・30〜4・13
労働関連法案に次々修正要求
記事を読む  
(3面)
4〜5月国会闘争に立とう  9条改憲へ一直線の攻撃
改憲投票法案絶対阻止を
記事を読む  
4・13尼崎 事故2周年で集会  “安全破壊のJR資本と対決”(4月13日) 記事を読む  
学力テスト 全国各地で反撃の闘い  非協力・抵抗闘争を 記事を読む  
公務員制度改革で政府・与党合意  新たな「天下り促進法」
能力・実績主義導入許すな(4月13日)
記事を読む  
2007年日誌 4月11日〜17日
米陸軍イラク駐留交替期間延長  米軍再編特措法案が衆院通過
記事を読む  
日程 国労5・27臨大闘争弾圧公判日程 記事を読む  
(4面)
米帝の「イラク新戦略」に反撃を
労働者階級と被抑圧民族が生きる道は帝国主義の打倒=世界革命だ
イラク・中東人民と連帯し闘おう
記事を読む  
(5面)
帝国主義世界経済のバブル化と29年型大恐慌爆発の深刻な危機
世界同時株暴落と労働者の立場
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5・15沖縄闘争に結集を  辺野古新基地建設阻止しよう 記事を読む  
(6面)
団結ひろば 投稿コーナー
青年労働者や学生は革命を欲している 東海・青年労働者 須賀川直哉
改憲投票法案の衆院通過弾劾し緊急街宣 大阪 大原 剛
伊藤長崎市長銃撃で戦争への道阻む決意 長崎 水沢 耕
「管理専門職」の名で違法に搾取する会社 I・S
当局の規制はねのけ新入生にビラまき 仙台・学生 佐々木裕子
記事を読む  
関西で入管交流集会
鈴木弁護士 改憲阻止へ熱い講演(本紙・森田友美)(4月15日)
記事を読む  
厳罰化で小学生でも少年院に  少年法の改悪阻止を(吉田まゆ) 記事を読む  
星野文昭同志釈放へ  バースデーカード送ろう 記事を読む  
一億二千万共謀の日4へ 記事を読む  

週刊『前進』(2292号1面1)(2007/04/23 )

 おれたちは奴隷じゃない!労働者の手で社会を変えよう

 職場から怒りの大反乱を

 07年メーデー/青年労働者のアピール

 労働運動の力で革命やろう

 日米首脳会談粉砕・改憲投票法案阻止へ

(写真 改憲投票法案阻止、300人が怒りのこぶし 「九条改憲阻止」の白たすきの「憲法と人権の日弁連をめざす会」や60年安保闘争世代を中心とする「9条改憲阻止の会」を先頭に国会闘争に立つ【4月11日】)

 「8時間は労働を、8時間は眠りを、そしてあとの8時間はわれわれの自由に」――1886年5月1日、全米で1万5千を超える工場の労働者約40万人が8時間労働制を要求してストライキを闘い、こう叫びました。これがメーデーの始まりです。現代の私たちの要求も同じです。労働者が人間らしく、誇りを持って生きていくために徹底的に闘おう。そのために労働組合はあるのです。今春闘でJRや港湾、航空労働者がストに立ち、教育労働者が「日の丸・君が代」強制に対し不起立を闘いました。非正規雇用労働者が職場に組合をつくり、ストで闘っています。職場から資本や当局への大反乱を起こそう。4・26〜27安倍訪米―日米首脳会談粉砕、改憲投票法案絶対阻止に立ち上がろう。

 許せぬ労働者の使い捨てこれ以上がまんできない

 資本の攻撃が私たち青年労働者の怒りを目覚めさせています。われわれは奴隷じゃない。ストライキは労働者として当然の反乱であり、叫びです。これ以上何を我慢しろというのか。
 汗水たらしてまじめに働いても年収200万円以下のワーキングプア、まんが喫茶で暮らすネットカフェ難民、電話1本で呼び出されるワンコールワーカー。いまや青年労働者の2人に1人は非正規雇用。超低賃金で不安定、社会保険や年金もなく、その日暮らしです。トヨタやキヤノンといった日本を代表する大企業が私たち青年労働者を使い捨てにしているのです。資本主義のもとでは、もう青年労働者は生きていけないのです。
 自治体や教育現場の労働者も同じです。公務員制度改革と民営化で、自治体労働者200万人がワーキングプアに転落すると言われています。教育労働者も査定昇給、教員免許更新制の導入で、賃下げと首切りが狙われています。郵政民営化の過程で正規職員の人員大削減と非正規化が進んでいます。JRは、尼崎事故を何ひとつ反省せず、さらなる合理化を進めています。
 こんな現状におとなしく従うことはできない。資本や当局に屈服する腐った生き方はできない!

 ストで労働者の誇り取り戻そう

 ストライキは「労働者が社会を動かしている」という誇りをとり戻す闘いです。JRの労働組合である国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)が3月17〜19日の3日間、ストに立ちました。組合の拠点職場である館山運転区、木更津支区の廃止を阻止する闘いです。
 「こういう時代だからストライキが必要だ」と乗客、地元住民からも圧倒的支持の声が寄せられました。何よりストに立った組合員が本当に生き生きと闘いました。「廃止を止められず悔しい。しかし、動労千葉は勝利した。より強い組合に生まれ変わった」。動労千葉の田中委員長はこう総括しています。動労千葉は当局にお願いするようなことは絶対にやらないのです。
 「不当配転をしたらストをやるぞ」と団体交渉に組合員50人が駆けつけ、当局を追及しました。ストライキを頂点に9カ月、やれる闘いは全部やり切った。JR東当局はこの闘いに「動労千葉の希望を最大限尊重します」と言わざるを得なかった。組合の団結が強まった。これが勝利なのです。
 「現場の区長を取り囲んで不当配転をやめろと徹底的に追及した。区長の引きつった顔を見てすっきりした」−−指導部を先頭に組合員が実力闘争を日常的にたたきつけたのです。
 動労千葉は、指導部が先頭になって、現場の組合員と討論をして方針を決めます。普段おとなしい組合員も見違えるように闘う。「当局がつくったルールなんか全部ぶっ壊してやろう。労働者が一番働きやすいルールを実力でつくろう」。これぞ動労千葉の闘いです。これが労働者の自己解放です。
 職場の仲間を信じ、原則的に闘って徹底的に団結を守り抜けば必ず展望は出てきます。動労千葉はJR資本と非和解で闘うことで検修・構内業務の外注化を阻止し、強制配転者の職場復帰をかちとり、2度と尼崎事故を繰り返さぬよう40`のレール交換を実現させました。
 動労千葉が強いのは、反合理化闘争を原則的に闘っているからです。安全を脅かす元凶は、資本や当局による人減らし、規制緩和、スピードアップ、利潤追求を目的とした合理化です。これと闘わずして安全の確保はあり得ません。労働者の生活は守れません。
 合理化を認めないということは、もうけ優先の資本主義のあり方を否定することです。だから合理化を阻止する力は戦争阻止の力です。戦争と改憲の時代に労働者はいかに闘って勝利するのか、動労千葉の闘いはこのことを実践的に指し示しています。

 市場・資源・権益の争奪へ戦争に突き進む帝国主義

 いまこそ労働組合が本来の力を発揮する時です。労働組合の本来の力とは、戦争の時代に革命で支配階級を打ち倒し、労働者が団結して社会を運営する、その力です。
 イラク戦争は、石油利権をめぐる資本家たちの戦争です。イラク政府は今年1月、「新石油法」を議会に提出しました。世界第2位の埋蔵量を持つイラク石油を民営化(現在はイラク国営)して、米英日の国際石油資本が独占しようとしています。石油利権のために戦争を続けるしかないのです。
 一方で、2〜3月の世界株価同時暴落は、労働者に犠牲を転嫁し、住宅を投機の対象にしてバブル経済を膨らませてきたアメリカ経済、そして金利の操作や株売買で大資本と銀行を救済してきた日本経済の崩壊の始まりです。
 資本家階級は、私たち労働者の労働とその力を、自分たちの利益を生み出すためだけに使ってきました。資本家は、1円でも多くもうけるために労働者の首切り、賃下げ、労働強化を競うと同時に、資本・商品輸出の市場や石油・天然資源、より安い労働力の確保をめぐって国家間の生き残りをかけた戦争を世界中で激化させています。こうした社会のあり方はもう限界です。
 戦争も民営化も、支配階級の生き残りをかけたものであって、私たち労働者にはよりいっそうの搾取と収奪をもたらすものでしかありません。だから逆に、戦争をなくし、人間がモノのように扱われるこの社会を終わらせる存在が労働者なのです。
 「労働組合はいまや労働者階級の組織の中心として労働者階級の完全な解放という大きな利益をめざして活動することを学ばなければならない」「労働組合は労働組合の活動が狭く利己的なものではなく、踏みにじられている幾百万の人民の解放をめざしているのだということを全世界に十分に納得させなければならない」
 マルクスが書いた「労働組合、その過去・現在・未来」からの引用です。140年前から、全世界の労働組合にとって資本主義の危機に対する唯一の回答は革命なのです。「資本家と労働者は非和解だ」「労働者に国境はない」というマルクス主義の立場、そして第1次世界大戦でレーニンとロシアの労働者が革命をやった時の立場――「世界戦争は帝国主義強盗同士の戦争だ。全世界の労働者は団結して帝国主義を打ち倒そう」――この立場で闘うことこそが勝利の道です。

 職場の団結と闘いが勝利の道

 私たち日本の労働者の存在が決定的です。安倍や御手洗は「このままでは延命できない」と悲鳴を上げ、「これまでのあり方をぶっ壊す」と言っている。それが戦争・改憲と規制緩和・民営化です。
 しかし、改憲も民営化も破産しています。逆に私たち労働者には勝利の展望がある。国鉄分割・民営化から20年、戦争・改憲・民営化攻撃と闘い、その攻撃の核心において阻止し続けてきた誇るべき歴史が私たち日本の労働者階級にはあるのです。
 高度経済成長の行き詰まりと国家財政の危機、アジア市場をめぐるアメリカとの争いの中で、国鉄分割・民営化は、現行憲法に象徴される日本の「戦後政治」を根本から転覆して戦争のできる国家へ大改造する攻撃でした。実際、当時の中曽根首相は「国労と総評をつぶして新憲法をつくる」と言っています。
 しかし、87年の国鉄分割・民営化と89年連合結成によっても、日本労働運動をまったく闘えなくすることはできなかったのです。国鉄では、動労千葉が2波のストで真っ向から闘い抜き、1047名の解雇撤回闘争が厳然と存在します。国鉄闘争を軸に日教組や自治労、全逓でも、指導部の屈服に抗して現場労働者はその戦闘性を維持してきたのです。
 連合指導部は、日本の労働者の闘いと戦闘性を制圧できていません。その中で支配階級は95年の日経連プロジェクト報告路線、すなわち9割の労働者を不安定雇用に向かわせざるを得なかったのです。
 安倍や御手洗の危機は、もはや青年労働者になんの希望も幻想も与えることができないことです。
 逆に、多くの青年労働者が不安定で低賃金、超長時間労働などの奴隷状態の中から、労働組合とその闘いに展望を見出し始めています。労働組合に結集したり、自ら組合をつくり始めています。労働組合のすばらしさが復権されつつある。労働組合が正規・非正規、職場、産別をこえて団結して闘えば、この状況を覆して、革命です。
 労働組合が民営化や合理化をのんできた結果、仲間の命を奪われ、安全が破壊され、社会は崩壊しています。そして改憲と戦争に直面している。「労働者の生活や仲間の命より労使関係がそんなに大事なのか!」――これが私たちの怒りです。
 闘う労働運動を現場からつくり出そう。団結こそ労働者の生きる道です。革命をやって労働者は生きよう。「労働者が社会を動かしている。この誇りが奪われたら戦争だ」――動労千葉はどんなに困難な時でも胸を張ってこう訴え続け、職場で仲間を組織してきた組合です。動労千葉のように闘う組合をあらゆる職場につくり出そう。

 資本主義には未来がない労働者が闘う時代が来た

 もはや安倍やブッシュの叫ぶ改革にはなんの魅力もない。“革命をやろう!”これしかありません。
 彼らの「改革」は、世界を戦争と破局へと引きずりこむものでしかありません。他方で、全世界で労働者の荒々しい闘いが復権されつつあります。昨年のメーデーでは全米で1千万人の移民労働者がボイコットとデモに立ちました。フランスでは青年労働者と学生300万人が26歳以下の労働者をいつでも解雇できるCPEを国会で撤回させるゼネストとデモを闘いました。
 今年のメーデーは、イラク戦争に反対して、サンフランシスコの港湾をストップさせた全米最強の労働組合ILWU(国際港湾倉庫労働組合)が再び、港湾をぶっとめるメーデーを闘います。日本の労働者も連帯しよう。
 衆院で4月13日、改憲のための「国民投票法案」が採決強行されました。日米政府は、今年秋までに朝鮮侵略戦争の作戦計画を完成させる作業を行っています。安倍やブッシュは本気で朝鮮侵略戦争を狙っているのです。沖縄や首都圏で配備が始まったミサイル防衛システムも本気で戦争をやるための準備です。そのための改憲なのです。
 この社会を動かしている労働者階級の力こそが戦争をストップさせ、戦争を必要とする政府を倒す力を持っているのです。職場で資本・当局と徹底的に闘って、社会の真の主人公である労働者の力と誇りを取り戻そう。
 日米枢軸と世界戦争への会談となる4・26〜27日米首脳会談を弾劾し、改憲投票法案絶対阻止に立とう。教育改革関連4法案を粉砕しよう。
 沖縄の名護市辺野古では新基地建設の事前調査が強行されようとしています。労働者の決起こそが基地建設と戦争を止める力です。5・15沖縄闘争に職場の仲間と一緒に行こう。沖縄の労働者の闘いに安倍やブッシュは追い詰められています。沖縄と本土の労働者が労働者としてひとつに団結すれば基地建設も戦争も止められるのです。
 革命をやって労働者は生きよう。労働者の本当の勝利は、職場を労働者の手に取り戻し、その力で国家権力を打ち倒し、労働者が主人公の社会をつくっていくことです。この闘いを勝利させるために、私たち労働者自身の革命組織が必要です。共産党も社民党も、労働者を信じ、仲間の持つ可能性を引き出して革命に向かって団結をつくり出す困難さから逃げてきたのです。
 あらゆる弾圧をはね返し、困難をチャンスに変え、賃金奴隷からの労働者の解放に向かって、人生をかける労働者の党をこの闘いの中でつくり出そう。革命的共産主義者同盟、マルクス主義青年労働者同盟はその先頭で闘います。青年労働者こそ革命運動の先頭に立とう。

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週刊『前進』(2292号1面2)(2007/04/23 )

 統一地方選 杉並・相模原を先頭に 闘う候補 全国で奮闘

 

(写真左 JR西荻窪駅頭で訴える北島邦彦候補【19日】)
(写真右 JR相模原駅頭で訴える西村あやこ候補【19日】)
 

 4月統一地方選の後半戦を、闘う候補は全国で戦争・改憲・労組破壊と対決して奮闘してきた。
 杉並区議選(東京都)では「都政を革新する会」の北島邦彦候補が立候補し、力強く選挙戦を闘いぬいた。定数48人に69人が立候補した激戦。
 連日、朝のおはようあいさつから始まり、昼は宣伝カーが区内をくまなく回り、夕方には各駅頭で街頭演説を行い、マイクが使えない夜8時以降も駅頭に立って、帰宅する労働者に肉声で支持を訴えた。北島候補の演説に支持者が駆け寄って握手する。立ち止まって聞いている区民には、候補自身が駆け寄った。
 15日の出陣式には、三里塚芝山連合空港反対同盟の市東孝雄さん、鈴木謙太郎さんが応援に駆けつけた。
 北島候補は訴えの中で何よりも山田区長が進める杉並の丸ごと民営化を激しく弾劾し、「みなさんの怒り、思いを私に託して下さい」「一緒に区議会に乗り込んで民営化をぶっつぶしましょう」と熱烈に訴えた。
 相模原市議選(神奈川県)では「さがみはら革新市政をひらく会」の西村あやこ候補が4選をめざして奮闘した。相模原選挙区の定数46人に60人が立候補、うち新人が28人の激戦となった。
 「3人乗車を断固支持します! ともに頑張りましょう」。18日、清掃事務所の前に立った西村候補が一斉に出発する清掃車に呼びかけた。3人乗務を減らそうとする市の攻撃をはね返して闘っている労働者たちだ。車から元気に手を振っていく。感動的交流に西村候補が叫んだ。「労働者こそ社会の主人公です。万国の労働者万歳!」
 「労働者が団結して立ち上がれば戦車も止められます」。西村候補を軸に労働者、市民の大きな決起が巻き起こった。

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週刊『前進』(2292号2面1)(2007/04/23 )

 団結固め勝利した動労千葉

 田中康宏委員長に聞く

 今こそ労働運動再生の時

(写真 全支部からの決起で組合員80人以上が集まり館山運転区庁舎前で抗議集会。拠点破壊攻撃に怒りのこぶしを上げた【2月4日 千葉県館山市】)

 4月1日で国鉄分割・民営化から20年、25日で尼崎事故から2年を迎える。動労千葉の田中康宏委員長に、9カ月間に及んだ基地統廃合攻撃との闘いと春闘ストライキを振り返りながら、重要局面を迎えた国鉄闘争と11月1万人結集にむけた課題と展望をうかがった。(本紙・沢井隆)
(写真 勝浦市議選・水野正美候補の出陣式であいさつする田中委員長【4月15日】)

 (1)基地廃止めぐる攻防 “絶対反対”の路線で勝負 

 ――館山運転区・木更津支区廃止攻撃の大きさについて改めてうかがいます。
 昨年7月の提案当初から国鉄分割・民営化以来最大の組織破壊攻撃であり、ひとつ間違えば動労千葉がつぶされかねない攻撃だと受け止めました。それは組合員もみんな同じです。
 分割・民営化の過程で成田運転区がつぶされ、大規模な業務移管という形で津田沼運転区、千葉運転区への拠点つぶしの攻撃が加えられた。その後も勝浦運転区、佐倉機関区が廃止されています。これだけの組織破壊攻撃を受けてなお団結を守り抜いていること自体が奇跡的なわけでね。
 しかも、一人ひとりの組合員にとっては直接生活にかかわる問題そのものです。うちの組合員の場合「血を流して守ってきた俺たちの職場だ」という感覚が強烈だし、人間関係も深い。それをすべてぶっ壊されることへの怒りですよね。
 ――勝利の一番のカギはどこにあったとお考えですか?
 核心は、やはり館山・木更津両支部を始めとして組合員の一糸乱れぬ団結を固めきったことにつきます。ここが揺るがなかったから本部はありとあらゆる方針を出せた。
 この中で肝心だったのは、提案当初から「確かに厳しい攻撃だけど廃止のその日まで絶対反対でいこう。条件闘争になんかしたら『俺はどこに行きたい』とか団結がバラバラになる」と訴え、何度も何度も討議したことです。ここがやはり土台になるんです。
 もう一つは、「とにかく執行部が組合員と徹底的に討論して、みんながどういう思いでいるかを把握しよう」という議論ですよね。当局の脱退工作だって当然起こるし、様々な局面でやはり揺れ動くわけですから。基地廃止絶対反対を貫くと同時に、組合員の思いを具体的に実現していかなきゃいけない。矛盾することだけどこの二つを同時にやれなかったら勝負にならない。そんなことを何度も議論して、両支部の執行部が先頭に立ちきってくれた。
 ――その後の闘いの経過は?
 夏に地域オルグを何十カ所も行い、当局には廃止計画を撤回しろという交渉をやっていきます。
 その中で、市長や観光協会、商工会議所などから「それは大変なことだ。自分たちは何をすればいいんだ」という反応が返ってきた。9月24日の館山地域集会では保守系の市長が「民営化は間違っていた」とまで発言するし、議会への誓願には観光協会や商工会議所なども全部のって、地域の新聞が1面トップで取り上げた。ちょっとうまくいきすぎた(笑)。この過程で組合員の雰囲気も変わりましたよね。
 年末・年始の過程で、基地廃止を前提にした希望調査が始まる。ここで足並みが乱れたら当局に足元を見られる。だから自分が行きたい所を一カ所だけ書く”一本書き”の方針をとりました。
 実はこの議論が一番大変なんですよ。「第2希望書かないで、行きたくないとこに行かされたらどうすんだ」「いや結果がどうなるかは敵の出方次第であって、勝負するしかねぇじゃねぇか」という議論を何回も重ねて一人残らず一本書きの方針を貫徹した。これは大きかったですね。
 ――そこから2月下旬の山場の団交に向かっていくわけですね。
 「職場から現場長が悲鳴上げるぐらいまで徹底的に闘争を起こそう」という討論を重ね、年明けから休日勤務拒否などの職場闘争に入ります。
 当局はこれへの報復として、旅行を予定してるのに年休を取り消すという攻撃をかけてきた。これがまた大議論になるわけです。「それだけは認めてやんないとかわいそうだ」「いや、そんなこと言い始めたらバラバラになるじゃねぇか」と。これも支部自身が真剣に議論して原則を貫いた。「申し訳ないけど旅行取り消しになってもガマンしてくれ」って。
 デスティネーションキャンペーンに対しても、「全力で抗議行動をやろう」「いやぁ、そんなことしたら地域を敵に回しちゃうんじゃないか」とかね。これも現場の議論で「よし徹底的にやろう!」となった。
 ――すべてが職場の力になっていった、と。
 この段階では、現場が徹底的にやる気になってましたよね。水面下の脱退工作があったんですがこれも本部に報告が来て「俺は頑張るよ」となってましたから。
 2月の詰めの団交の段階では配転問題にしぼって勝負をかけ、「所定以外の業務は一切やらないという非協力闘争の方針でいこう。大変な方針だけどやれるか」と提起したんですが、現場は「ここまで来たらやるしかあんめぇ」となった。”ここまで来たら、どうなろうが勝ちだな”という感覚は持ってましたよね。
 2月27日の団交には50人の組合員が集まり、当局には「お前らの判断ひとつでガタガタになるぞ!」と言って「異動については希望を尊重する」と言わせた。
 ――動労千葉の闘いを外から見ると、その戦術だけを見がちですが、実際には戦術はすごく柔軟ですよね。
 最初から「どう団結を作っていくのか」の一点ですからね。例えば地域展開についても、地域オルグに主眼があったんじゃなくて、展開する中で支部の団結が固まるというのが核心でね。
 もう一つは、戦術で勝負するんじゃなくて基地廃止絶対反対、合理化絶対反対の路線で勝負することの重要性です。労働組合として、あるいは一人の労働者として原則と誇りを最初から最後まで貫きとおす。本部がこの原則を曲げずに現場と納得するまで話し合う。これが大事なんです。ここが揺るがなければどんな闘いもできるんです。

 (2)労働組合軸に大反乱 膨大な労働者決起の火花

 ――闘いの中で、地方切り捨ての厳しい現実を痛感させられましたね。
 そこは強烈に感じました。「これほどのものなのか」と。格差社会の矛盾は、もちろん若者と高齢者に集中的に表れている。だけどもう一つは地域ですよ。現実のほうがはるかに進んでいて、われわれ自身が敏感になりきれてないと痛感させられました。
 ――労働組合が果たしうる役割が動労千葉の闘いをとおして見えてきたような気がしますね。
 怒りの持って行き場がないわけです。しかも自治体や公的部門を全部民営化する攻撃は、これから本格的に始まる。
 だけど9カ月間の闘いで、この大民営化攻撃と闘う方向が見えてきた気がします。全国各地から反乱を起こしちゃえばいいんですよ。市長だろうとなんだろうと「民営化して切り捨てでいいのか」「俺たちと一緒に闘うのかどうか」と突きつけ国と大げんかを始めようじゃないか、と。
 本当に時代は激変しています。階級的な労働組合が軸になれば大反乱が起きる状況です。
 館山運転区をめぐる闘争も、動労千葉の主張が当局よりも圧倒的な正当性をもって地域に浸透したことは大きいですよ。組合員と地域を回ると、反応がいいから物おじしなくなる。タメ口たたくみたいにね(笑)。「市長は偉い人」なんて思っているうちはダメなわけです。会社が地域のために何もやってないことがハッキリしてくる中で組合員が「だったら内房線は俺たちに任せろ」となった。みんな「当局なんかいらねぇ。あいつらがいるから悪くなるんだ」「こんなやつらに負けてたまるか」と普通に思ってますからね。
 ――平成採の青年労働者も、ついにスト破り拒否に立ちました。
 基地廃止の狙いが動労千葉の団結破壊にある以上、本質的には組織を拡大する以外に決着がつかないということは当初から議論してきました。こうした中で、平成採の中からスト破りを拒否する部分が出てきたのは大きいですよね。これも組合員を大いに勇気づけた。
 ――やはりライフサイクルや、異常な労務支配への怒りが大きい?
 それもありますが、単にライフサイクルだけじゃない。やはりこの間の動労千葉の闘いを見ていることが大きいですよ。幕張構内事故の問題や安全運転闘争などを直接職場で経験して、動労千葉にシンパシーを持っている中で起こっていることなわけです。スト破り拒否までいかなかった部分も含めて気持ちの上では、みんな圧倒的に動労千葉シンパですから。
 誰でも異常な労務支配の現実は見えてきてるけど、それだけじゃ反乱は起きない。誰だって今の社会はおかしいと思っているけど、その中で生きざるを得ない。やはり現実の闘いに触れ、団結することのすばらしさを感じないとダメですよ。
 ――当局にとっては脅威ですね。
 激震ですよね。職場の支配秩序が崩壊したわけですから。つまり、地域の怒りが組織されたこと、職場の団結が一切揺るがなかったこと、平成採の反乱の始まり、その全体が当局を包囲して「ここで下手なことはできない」という関係に持ち込んだ。このことが希望が100%通るという勝利になったわけです。
 ――今年のストライキには激励の声ばかりだったと聞きましたが。
 安全運転闘争から反応がガラッと変わりましたね。憤りが渦を巻いていて、やっぱり労働組合に期待している。「労働組合がほんとにダメになった中で、動労千葉のような組合があったことが自分たちの希望だ」なんてメールが何百と来る。これも情勢激変ですよ。
 ――この時代の中で動労千葉がストライキを打ち抜いている意義はやはり大きいですね。
 第2の分割・民営化攻撃が始まって6年、毎年ストライキをやってますがやはりこれ自身が大変なことでね。動労千葉だって全体の労働運動の総屈服状況の中に置かれているのは厳然たる事実ですから。ストライキやるときは、いつもひとつ間違えばたたきつぶされるという関係の中で、とことん討論を重ねて初めて打ち抜ける。しかしこれが結局、当局との力関係になっていくんです。
 他方でこの時代は、打てば響くようなすごく大きな可能性をもった時代でもあります。今回のストライキは、非常に大きな歴史の分岐点での闘いでした。教育基本法改悪が通り、改憲攻撃が本格的に始まる。他方で、世界的には労働者の大反乱が始まっている。
 こうした中で僕が組合員に繰り返し訴えたのは「去年のストライキと今年のストライキの意味は、まったく変わっている」ということです。動労千葉の闘いは小なりとはいえ、間違いなく響き始めている。膨大な労働者決起への火花となる闘いとして今年のストライキを闘おう、と。

 (3)11月1万人大結集へ 3・18の地平で職場闘争を

  ――4月1日で分割・民営化20年、25日で尼崎事故から2年です。
 JRは今、あらゆる面から矛盾が吹き出し「民営化が完全に破綻(はたん)した」と言っていい状況です。国鉄分割・民営化とその後の20年は、すさまじい大合理化の連続です。業務を全面的に外注化し、安全も何も全部ドブに捨てている。
(写真 72時間の春闘ストに決起し3・18集会に合流した動労千葉の組合員【3月18日 数寄屋橋交差点】)
 国家と資本が生き残るためなら、あらゆることをなぎ倒して進むのが大民営化攻撃です。ここで問題なのは民営化に対する労働組合の闘いです。ある意味で問題は、ここに尽きると言っていい。
 なぜ動労千葉は、民営化攻撃と今でもいい勝負になっているのか。敵の矛盾を突いて、団結を固めて立ち向かえば、敵もぎりぎりの状況なわけだから必ず展望が開ける。この程度の大きさの組合だって民営化に立ち迎えるということを現実の闘いで示してきたつもりなんですよ。その核心は、労働者の階級性に本当に依拠しきれるのかどうかです。結局はすべてがここに行き着く。
 ――「労働組合、労働者は本来、そういう大きな力を持っているんだ」と繰り返し訴えておられましたね。
 例えば、分割・民営化反対闘争では、文字どおり全組合員がクビをかけてストに立った。中野顧問は悩みに悩んで決断したと『俺たちは鉄路に生きる2』で提起していますが、やはり「本当にそこに踏み切るのか」という逡巡(しゅんじゅん)が執行部に出てくる。
 去年の幕張構内事故をめぐる闘争も典型的にそうですよね。動労千葉が「徹底的に闘う」と構えたら、「だったら首にしちまえ!」と支社で言ってるのが聞こえてくるわけだから。そうすると逡巡がやはり生まれるわけですよ。だったら当局に頭を下げて、情状酌量をお願いするのか。そんなことばっかりやってたら労働者はいつまでたっても奴隷のままですよ。中野顧問が「迷ったら左」と言っているところです。やはり本当に現場の力に依拠しきる、そういう立場に立ちきれるかどうかの勝負なんです。
 そのためには「非和解的な闘いに入ってさらなる攻撃を受けても、俺たちの誇りを捨てるわけにいかない」という団結を、日常の闘いの中で形成できているのかが勝負になる。これは抽象論の話じゃなくて日々の具体的な話でね。
 第二の分割・民営化攻撃が始まってから6年の闘いは、現場との激論も含めてこうした格闘の連続でした。この中で、新執行体制と職場の団結を固め、当局との力関係をつくってきた。その地平の上に初めて、今回の基地廃止反対闘争の勝利もあると感じています。
 ――1047名解雇撤回闘争の危機を突破するカギも同じところにあるように感じます。
 1047名闘争は国労本部や全労連だけじゃなく、原告団も含めた主体的危機の中で大変な状況です。「政治解決」なんて言って、自民党と話をつけようというところにすべて収斂(しゅうれん)する。しかも政府には解雇撤回を取り下げた統一要求を出しておきながら、支援には「あくまで解雇撤回なんだ」なんてウソついて。みんな、連合支配下の大変な状況の中で「1047名闘争だけはつぶしちゃいけない」と20年間も支援し続けてくれているわけです。この一番信頼すべき労働者たちの思いを完全に踏みにじってしまっている。
 原告団の人たちは、既成の枠組みだけから見て、その組み合わせでなんとかなると考えてしまっている。それと一体の問題として、労働者が本来持っている力にとことん依拠して展望を開こうという立場がまったくない。職場での資本との闘いの厳しさに負け、現場と格闘しながら団結を必死でつくっていく大変さへのたじろぎ、敗北主義があるわけです。これは今に始まったことではなくて体制内労働運動の路線的破産の問題です。
 いま改憲と大民営化の攻撃の中で、民営化と闘う団結の中心軸として1047名闘争が持つ位置はかつてなく大きい。その先頭に立つ勢力が1047名の中から出てこないといけない。原則的な路線と戦略的展望を語れる指導部ですよね。
 ――最後に、11月1万人大結集への課題と展望は、どこにあると考えておられますか。
 何よりも大きいのは3・18集会の大成功です。青年労働者たちが「労働運動の力で革命をやろう」と言ってケンケンゴウゴウの議論をやり、そこからすごいエネルギーが生まれてきている。これは社会変革の始まりであり、労働運動復権の大きな一歩ですよ。
 しかも、マルクス主義がこれほど生き生きと青年労働者の思いとひとつになってとらえられ始めたのも何十年ぶりのことです。”生きていけない”という現実が闘う力になり、さらにマルクス主義を豊かにしていくという動きが始まった。
 こういう闘いが、この間動労千葉とかかわった青年労働者の中から出てきたことが本当にうれしいですよね。しかも職場での日々の格闘を土台に、非常に説得力をもって提起されてきている。
 1万人結集のカギは、この3・18で切り開いたものを徹底的・爆発的に押し広げていくことにあると思います。
 「爆発的に」という意味は、3・18の地平でもう一度職場にこだわってほしいということです。動労千葉だって反合・運転保安闘争にこだわりきって闘ってきたことで、国鉄分割・民営化と対決しぬける団結を作ってきたわけですから。職場で起きる様々な具体的問題も、革命の立場、階級的な立場に立たないと、この社会の中では解決がつかないわけですからね。そういう意味でも、3・18がつくったものはものすごく大きい。
 この確信に立って職場で徹底的に闘う、職場の仲間を組織する、何度でも壁に突き当たって何度も乗り越える。こうした地道な努力の先に間違いなく労働運動の再生が始まると思っています。

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週刊『前進』(2292号2面2)(2007/04/23 )

資本攻勢&労働日誌 2007 3・30〜4・13

 労働関連法案に次々修正要求

パートの時給、平均15円上げ 連合が発表した今春闘でのパートの時給引き上げ額は15.4円で前年同時期より2.6円増えた。(3月30日)
民放労連が放送法改定案に反対 民放労連は放送法改定案に反対する声明を発表した。4月11日には、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)も反対声明を発表。(30日)
各団体が労働関連法案に修正要求発表 自由法曹団が3月30日に、連合、全労連、日本労働弁護団などが4月2日にかけて労働関連法案に修正要求を発表。(30日)=要旨別掲
アジアで雇用300万人 経産省が発表した海外事業活動基本調査によると、日本企業がアジアで雇用している従業員の数が06年3月時点で前年度比10.1%増の305万人となり、増加分のほとんどを中国が占めた。(30日)
アルバイトの平均時給「首都圏」で前年比19円増 アイデムは、同社発行の新聞折込求人紙から06年のパート募集時の平均時給を公表。「東日本エリア」は925円(前年比19円増)となっている。(4月2日)
日タイ経済連携協定に署名 安倍首相とタイのスラユット首相は日タイ経済連携協定(EPA)に署名した。両国での批准を経て発効する。(3日)
労働市場改革専門調査会が第一次報告書 経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会が「ワークライフバランス憲章」の策定を求める第1次報告を提出。労働市場の規制緩和策を打ち出している。(6日)
企業規模間の賃金格差拡大 社会経済生産性本部は06年度「能力・仕事別賃金実態調査」の結果を発表。大企業と小企業の月例賃金格差は一般職層で4000円拡大し1万4000円に。(6日)
全国港湾と港運同盟、24時間スト 全国港湾労働組合協議会(全国港湾)と全日本港湾運輸労働組合同盟(港運同盟)が24時間ストライキに突入。大規模なストは8年ぶり。(8日)
全日空4労組がスト突入 全日空グループ会社の「エアーニッポン乗員組合」など4労組は、2年連続となる24時間ストライキを行った。(11日)
公務員制度改革で政府・与党が合意 政府・与党は、公務員制度改革に関する協議会を首相官邸で開き、改革案を正式了承した。(12日)
年金一元化法案を閣議決定 政府は共済年金を厚生年金に一元化する年金一元化法案を閣議決定した。(13日)
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 各団体の労働関連法案修正要求

●連合
・労基法:週40時間超に割増率50%
・労働契約法:対象労働者の範囲拡大
●全労連
・労基法:連合と同じ
・労働契約法:就業規則による不利益変更の削除
●日本労働弁護団
・労働契約法:就業規則による不利益変更「就業規則が一定の機能を果たしている現実からすればやむをえない」
「可能な限り合意原則に」
●自由法曹団
・労働契約法:「当然のことを法文化したにすぎない」。就業規則による不利益変更の削除

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週刊『前進』(2292号3面1)(2007/04/23 )

 4〜5月国会闘争に立とう

 9条改憲へ一直線の攻撃

 改憲投票法案絶対阻止を

 改憲とはクーデターと戦争

 安倍政権と自民・公明の与党は、4月12〜13日に、衆院の憲法調査特別委と本会議で、改憲投票法案を強行採決した。これは日帝が現行憲法9条を撤廃し、米帝と一体化して朝鮮侵略戦争―世界戦争に突入していくための、クーデター的な暴挙である。 
 しかも安倍と与党はさらに、4月16日には早くも参院本会議で法案の審議入りを強行した。
 だが、与党案提出者の保岡興治(自民)が「衆院での議論を踏まえ、足らざるところが集中的に審議される」などと発言したことに、野党が「参院軽視」と抗議して、審議は敵の思惑どおりには進んでいない。しかし与党は連日、集中的な国会スケジュールを強行している。そして26〜27日の安倍訪米=日米首脳会談とそれに続く中東5カ国歴訪をはさんで、5月が一大決戦になる情勢となっている。
 改憲阻止の闘いは、戦後史上最大の階級決戦だ。反革命クーデターか革命か、戦争か革命かをかけた巨大な闘いだ。その前半戦の一番の山場をなす4〜5月国会闘争に、自治労・日教組の組合員を先頭にして、全労働者階級と人民は総決起していこう。
(写真 4月11日、「憲法と人権の日弁連をめざす会」が呼びかけた改憲投票法案反対の一日行動が闘われた。夜の集会後、800人余りが都心をデモ)

 公務員・教育者の運動禁止

 改憲投票法案は改憲(=9条改憲)に向け一直線でレールを敷くための法案だ。その中身は「公正」とか「中立」の見せかけすらもかなぐり捨てた、とんでもない内容である。
 例えば衆参両院に「憲法審査会」や「合同審査会」を設けて国会での改憲の発議をやりやすくしているとか、「最低投票率」の規定がないため40%とかそれ以下の投票率でも成立し、全有権者の20%かそれ以下の賛成で改憲が行われることになるということも、確かに大問題だ。しかしそれらと比較にならない決定的問題は、以下の2点である。
 第一は、公務員労働者・教育労働者の反対運動、労働組合の組織的反対運動を、徹底的に禁止・弾圧するものだということだ。
 @「公務員等及び教育者」は「地位利用」による改憲反対の発言と運動が禁止され、違反すれば懲戒処分などの行政罰を受ける。
 A国家公務員法・地方公務員法で定める公務員の「政治的行為の制限」が改憲国民投票にも適用される(修正案の「適用除外」を削除)。
 B「組織的多数人買収及び利害誘導罪」の規定により労働組合や政治団体の組織的な反対運動が禁止・弾圧される。
 国と地方の「公務員等及び教育者」は500万人以上である。その反対運動が禁止され、動員費を出したり、弁当やパンフを配ったりという労働組合の組織的運動も弾圧されるのだ。しかもそのことによって、自治労・日教組を始め、労働組合の壊滅と労働者の団結を解体することが狙われている。戦争・改憲とそれに抵抗する労組をつぶすことは、完全に一体なのである。

 メディアを改憲賛成で制圧

 第二は、新聞、テレビ・ラジオなどのメディアが改憲推進派によって圧倒的に制圧され、改憲世論が形成されてしまうことだ。
 @自民・民主などが主導する「国民投票広報協議会」が国会につくられ、メディアで改憲と改憲案の宣伝を行う。
 A資金力のある改憲推進派の大政党やブルジョアジーは新聞、テレビ・ラジオで改憲の広告・宣伝をどんどん流すことができる。
 B国民投票の2週間前からは一般の広告は禁止されるが、国会に議員をもつ「政党等」は「無料」で意見広告を出すことができる。
 すなわちメディアが改憲推進派によって事実上制圧され、改憲の大々的なキャンペーンが戒厳令下のように展開され、「国民投票」の以前の段階ですでに改憲が「あたり前」のようになってしまうということだ。
 実際には、このようにして改憲と戦争動員のための「世論」が誘導される。それが改憲投票法案のもう一つの正体なのである。

 連合中央や日共の屈服弾劾

 民主党は根っからの改憲政党だ。昨年12月までは自民党と二人三脚で改憲案・修正案を作成してきた。ところが安倍が7月参院選で改憲を争点にすると公言し、小沢が対抗上慎重姿勢に転じたことで、現状は自民・公明の与党が安倍の強硬路線で突っ走っている。
 しかし民主党と連合中央指導部は、労働者階級の戦後革命以来の戦争絶対反対の意志を踏みにじり、裏切っている。国会への「民主党案」の提出は改憲を促進する反労働者的策動であり、断じて許しがたい。
 日本共産党も、改憲投票法案に絶対反対ではなく、「公正中立なルールづくり」を要求しているにすぎない。そして国民投票で過半数を取ればいいというのが、彼らの基本的な立場だ。これは改憲阻止決戦の爆発の闘いへの裏切りであり、敵対である。
 改憲阻止決戦は、敵が戦争と反革命クーデターの攻撃をかけてきている以上、「護憲」では闘えない。日帝打倒と革命勝利の立場から徹底的に闘うことが求められる。
 自治労・日教組の現場組合員を最先頭に、改憲投票法案絶対阻止へ、民主党や連合既成指導部を断固のりこえ、打倒して、職場から4〜5月国会闘争に総決起しよう。

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週刊『前進』(2292号3面2)(2007/04/23 )

 4・13尼崎 事故2周年で集会

 “安全破壊のJR資本と対決”

 4月13日、尼崎市内で「尼崎、羽越線、伯備線、津山線事故弾劾!4・13尼崎集会」が開かれた。「JR尼崎事故弾劾・国労有志の会」と鉄建公団訴訟原告が主催し、国労を始め関西の労働者90人が集まった。
 107人の死者を出した2年前のJR尼崎事故は、まさに国鉄分割・民営化の帰結だった。関西の国労組合員有志は、現場労働者の立場から尼崎事故の責任を追及する集会を05年6・26集会以来、毎年続け、職場から反合・安全闘争をつくり出すための議論と実践を積み重ねてきた。
(写真 JR尼崎事故から2年、職場から反合・安全闘争をつくり出す決意を固めた【4月13日 尼崎】)
 基調報告に立った国労奈良電車区分会の組合員は、「尼崎事故の責任は国鉄分割・民営化にある。安全は労働者の闘いによって資本に強制する以外にない」と声を強めた。また「労使の信頼関係なくして安全なし」と叫んで労使安全会議に参加し、会社の就業規則を丸のみする「総合労働協約」を結んでJRに屈服した国労西日本本部を鋭く批判、1047名の解雇撤回闘争と安全確立に向けたJR本体の闘いの一体性を強調し、国労再生へ5・27臨大闘争弾圧を打ち破ろうと訴えた。
 国労兵庫保線分会の組合員は、職場での安全確立の闘いについて報告した。JRでは、鉄道と道路の立体交差個所で、鉄道の下をくぐる道路から鉄道橋までの高さが不足し、トラックなどが鉄道橋に衝突する事故が何度も起きている。兵庫保線分会の組合員は、この問題を分会の闘いとして徹底追及すると宣言した。
 07春闘を3波のストで闘った動労西日本から、大阪事業所と広島・五日市駅の組合員が発言し、「分割・民営化の最大の矛盾は安全問題。動労西日本は反合・運転保安闘争を復権させるために職場から闘った」とストライキの意義を述べた。
 鉄建公団訴訟原告は「1047名の解雇撤回がなければJRの安全もない。さらに闘いを広げ解雇撤回を実現したい」と決意を表明した。
 全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の武谷新吾執行委員は、関生支部にかけられた弾圧と闘い、産業政策運動を発展させた春闘の成果について報告した。また「シャブコン」と呼ばれる劣悪なコンクリートの使用に反対する闘いの重要性を訴えた。全国金属機械港合同の辻岡尚執行委員は、「中曽根発言弾劾の労働委員会闘争を国鉄闘争、日本の労働運動のど真ん中に打ち立てよう」と力強く呼びかけた。
 さらに国労千葉地本のOB、福知山地区本部や新潟地本、新橋支部品川事業所分会、国労米子地本の組合員の発言が続いた。羽越線事故や伯備線事故を居直るJR各社への怒りと、「包括和解」でJR資本との闘いを放棄した国労本部を打倒して職場から闘いをつくり出す決意が語られた。
 参加者は、職場から闘いを巻き起こし、安全を破壊するJRと対決する意志を固めた。
 (投稿/関西合同労組S・T)

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週刊『前進』(2292号3面3)(2007/04/23 )

 学力テスト 全国各地で反撃の闘い

 非協力・抵抗闘争を

 4月24日、全国学力・学習状況調査(全国一斉学力テスト)が強行されようとしている。小学6年生と中学3年生の約200万人を対象に、@教科調査(国語と算数・数学)とA質問紙調査(生活習慣や学習状況)を行うというものである。
 これは改悪教育基本法のもとで、学校と教員、児童・生徒をますます国家の統制のもとに組み敷くことが目的であり、戦争・改憲のための一大攻撃である。何よりも日教組解体、教育労働運動解体の大攻撃である。
 これに対し、各地で反撃の闘いが巻き起こっている。北海道教組を始め教職員組合が反対の声を上げ、教育委員会に「実施するな」の申し入れを行っている。愛知県の犬山市教委は、全国の教育委員会で唯一、不参加を決めている。また京都府の小中学生9人が、テストを実施しないよう求める仮処分を京都地裁に申し立てた。私立学校では4割が不参加だ。
 反対運動の高まりの中で、文科省は固有名詞を記入しない「氏名・番号対照方式」を認め一定の動揺を示しているが、あくまで強行する構えだ。

 教育の国家統制

 全国一斉学テは、かつて1961年から何回か強行されたが、この時は日教組の大闘争が闘われ、また成績競争の弊害が社会問題化したこともあって、数年後に実質的に中止に追い込まれた。その学テを、文部科学省は体制危機と帝国主義間争闘戦の激化の中で復活させようとしている。来年以降も毎年4月下旬に行おうとしている。
 その狙いは第一に、教育に対する国家統制の強化だ。今国会に提出されている教員免許法など教育4法改悪、教育労働運動解体の攻撃と一体だ。
(写真 1961年10月の全国一斉学力調査に対し、学テ反対闘争が激しく闘われた【東京・文京区】)
 第二に、あらゆる場面で競争をあおり、差別を強め、学校、教員、児童・生徒を序列化し、「優勝劣敗」の価値観を社会に植え付けるためである。それは国家間競争、究極的には戦争に動員するものであり、労働者階級の「団結の思想」と真っ向から対立する。
 文科省が「序列化や過度の競争をあおるものではない」などと言い訳しようが、学校別結果の公表と学校選択制が結びつけば、小中学校の序列化は一気に進行する(東京ではもう現実!)。教育再生会議では「成績優秀校には重点的な予算配分を」などという議論が公然と行われている。
 日帝支配階級は、一握りの支配階級の育成のためにこれまで以上に金を注ぎ込む一方、ワーキングプア化する大多数の労働者には「読み書き、算数、道徳さえやればいい」というむき出しの階級別教育をもくろんでいる。全国一斉学テは、そのための決定的攻撃だ。

 個人情報も国に

 第三に、国家が全国の小学6年生、中学3年生200万人の個人情報(家庭の状況なども)を手にすることは、一層の管理強化である。
 質問紙調査の内容は、昨年暮れの予備調査では「家には本が何冊あるか」とか「1週間に何日、学習塾に通っているか」「インターネットを利用しているか」などという90項目だ。こんなプライバシーに踏み込んだ質問が行われる。
 第四に、全国一斉学テは、採点・集計業務を民間会社に行わせ、巨額の利益を上げさせる。
 業務は、小学校はベネッセコーポレーション、中学校はNTTデータ(旺文社グループと連携)が行う。数十億円の税金と膨大な個人データが民間に流れる。ベネッセは全国学テの業務受託を宣伝に使って自社テストを売り込んでおり、怒りと批判が集中している。
 教育労働者は職場を拠点に団結し、非協力・抵抗闘争を闘おう。新たな学テ反対闘争の中から“闘う日教組”を再生させよう。

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週刊『前進』(2292号3面4)(2007/04/23 )

 公務員制度改革で政府・与党合意

 新たな「天下り促進法」

 能力・実績主義導入許すな

 地方自治解体、道州制導入へ

 4月13日、政府・与党は公務員制度改革案について正式に合意した。合意に基づく国家公務員法改悪案を4月24日に閣議決定し、今国会での成立を狙っている。その上で来年の通常国会に国家公務員制度改革基本法案を提出しようとしている。
 公務員制度改革の狙いは、国民投票法案、社会保険庁解体法案、教育改革関連法案とともに、自治労、日教組を始めとする4大産別―公務員労働運動の解体、それをてことする地方自治の解体と道州制の導入、改憲と戦争国家づくりにある。
 中川秀直自民党幹事長は公務員制度改革について「戦後レジームからの脱却の中核をなす改革」「明治以来の官僚制度にも絡む」と言っている。
 自治体労働運動は自らの存亡をかけて公務員制度改革と闘わなければならない。
 今回の公務員制度改革案の柱は、@「官民人材交流センター」(新人材バンク)設立による「再就職規制」とA「能力・実績主義の導入」だ。
 さらに、B首相のもとに公務員制度に関する有識者会議を設け、「幹部職員の公募制導入」「専門スタッフ職の創設」「定年延長」「労働基本権と人事院のあり方」などを検討し、公務員制度総体の改革の基本方針として国家公務員制度改革基本法案を作る。
 この意味で今回の改革案は本格的な公務員制度改革の突破口である。
 改革案によれば、@新人材バンクについて、退職国家公務員の再就職あっせんを担う官民人材交流センターを2008年に設置し、同センター設置後3年以内にセンターにあっせんを一元化する。センター職員は出身省庁の職員の再就職あっせんを行わない。省庁は営利企業にも非営利企業にも退職者の再就職をあっせんすることを禁止される。
 しかし、改革案は「センター職員は省庁人事当局と必要に応じて協力する」と盛り込み、センター設置後の制度見直しをも規定した(17日、設置5年後の見直しで政府・自民党が合意)。この結果、今回の公務員制度改革案は「天下り規制法」ではなく新たな「天下り促進法」となった。
 Aの能力・実績主義の導入こそ、今回の改革案の最大の攻撃だ。渡辺喜美行革担当相は17日、2009年までを目標に能力・実績主義を導入する考えを示した。

 地方公務員法改悪案も射程

 改革案は「能力、実績などの人事評価に基づいて人事管理を行わなければならない」と言っている。年功序列を排し、能力・実績を評価して昇進や昇給に反映させる新しい人事・給与制度の導入だ。労働者間に競争、格差、差別、分断を持ち込み、団結を破壊し、公務員労働運動を解体することが狙いだ。
 菅義偉総務相は4月13日、「今国会に地方公務員法改正案を提出できるように全力で取り組む」と表明し、地方公務員にも天下り規制や能力・実績主義を拡大する意志を表明した。

 専門調査会の討議の意味

 もともと国家公務員法は「公務員=全体の奉仕者」という規定によって公務員労働者の労働基本権(労働3権)を奪ってきた。その代わりに人事院を介入させることで、解雇(免職)はそう簡単にできないなど、公務員に一定の身分保障を与えてきた(地方公務員法もこれに準じてきた)。
 公務員制度改革は、こうした公務員の身分保障を取り払って、民間会社と同様に解雇や大幅賃下げを自由にできるようにし、能力・実績主義に基づく人事評価で労働者を管理し、国家に忠誠を尽くす公務員を育成しようという攻撃だ。その一方で労働基本権とりわけスト権を絶対に与えず、公務員の政治活動の全面的禁止も継続する。
 連合事務局長や自治労委員長が加わる行政改革推進本部専門調査会は、労働基本権をめぐる討議と引き替えに身分保障を剥奪(はくだつ)する公務員制度改革を労組にのませるための場となっている。連合―自治労中央はここに全力投入することで労働者をたぶらかそうとしているのだ。
 自治体労働者の隊列を国会前に登場させ、動労千葉、教育労働者とともに改憲投票法案、教育改革関連法案、公務員制度改革法案・社保庁解体法案の廃案へ闘おう。

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週刊『前進』(2292号3面5)(2007/04/23 )

日誌'07 4月11日〜17日

 米陸軍イラク駐留交替期間延長

 米軍再編特措法案が衆院通過

●麻生「オスプレイ沖縄配備も」 麻生外相は衆院外務委員会で、米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの沖縄配備について「新しいヘリが開発されないなら、オスプレイが完成品になった段階で置き換えられることは十分に考える必要がある」と将来の配備の可能性を明言した。閣僚がオスプレイ沖縄配備の可能性を認めたのは初めて。(11日)
●日中首脳会談 安倍首相は、日本を公式訪問した中国の温家宝首相と首相官邸で会談した。東中国海ガス田開発問題では、双方が受け入れ可能な「比較的広い海域」で共同開発を行うことで合意した。日本側の説明によると、靖国神社参拝や日本軍軍隊慰安婦問題は話題に上らなかった。翌12日、中国の首相として初めて国会で演説し、日本による侵略戦争について、日本側の「反省とおわび」を中国政府が「積極的に評価している」と明言した。(11日)
●米陸軍、イラク駐留延長 ゲーツ米国防長官は、イラク駐留米軍の増派戦略を維持するため、イラク・アフガニスタンに派遣される陸軍部隊の駐留期間を現行の12カ月から15カ月へ、3カ月延長すると発表した。延長は、予備役を除く陸軍部隊すべてが対象。(11日)
●「米迎撃艦9割を太平洋に配備」 米国防総省高官は、弾道ミサイル迎撃能力を持つ米海軍のイージス艦をめぐり、09年初めまでに配備を計画している計18隻のうち16隻を、日本やハワイなど「太平洋地域に配備する」と述べた。理由として、北朝鮮や中国など「北東アジア情勢」のほか、中東地域への展開が容易である点をあげた。(12日)
●国民投票法案、衆院で採決強行
国民投票法案の与党修正案が前日の衆院憲法調査特別委員会での採決強行に続き、衆院本会議で賛成多数で可決、参院に送られた。(13日)
●米軍再編特措法案も衆院通過 在日米軍再編計画に協力する自治体への交付金制度を創設する米軍再編特別措置法案が衆院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決された。同法案は、米軍再編に伴う米軍基地や訓練などの負担を受け入れる市町村に「再編交付金」を配分する新制度と、在沖縄海兵隊の移転先となるグアムの施設整備費用を負担するため、国連協力銀行(JIBC)の業務に特例を設けることを柱としている。(13日)
●オスプレイをイラク派遣 米海兵隊のコンウェー司令官は、垂直離着陸機MV22オスプレイを9月にイラクへ派遣すると発表した。事故が相次ぎ開発が遅れていた同機の初の実戦配備となる。途中で沖縄に立ち寄るかは明言しなかった。(13日)
●アフガン復興支援チーム「不参加」 安倍首相は、アフガニスタンで活動するNATO(北大西洋条約機構)の軍民一体型の「地域復興支援チーム」(PRT)について、「自衛隊を参加させることは考えていない」と述べ、自衛隊の参加を見送る考えを表明した。政府は自衛隊の海外派遣について新たに包括基準を定める一般法でのPRT参加を検討していた。しかし、海外での武力行使につながる可能性があるとして、実現は難しいと判断したものとみられる。(16日)
●普天間「事前調査」を不開示 沖縄県は、米軍普天間飛行場移設先の環境現況調査(事前調査)の海域使用に関し、那覇防衛施設局が沖縄県に提出した申請書と関連書類すべての不開示を決定した。文書には海域調査の地点や手法などが具体的に記されているとみられる。公開によって外部からの圧力や干渉などの影響を受ける恐れがあるため、と説明している。(17日)

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週刊『前進』(2292号3面6)(2007/04/23 )

 日程 国労5・27臨大闘争弾圧公判日程

 第75回 5月9日(水)/第76回 5月30日(水)
 第77回 6月13日(水)/第78回 6月27日(水)
 ※いずれも午後1時15分から、東京地裁

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週刊『前進』(2292号4面1)(2007/04/23 )

 米帝の「イラク新戦略」に反撃を

 労働者階級と被抑圧民族が生きる道は帝国主義の打倒=世界革命だ

 イラク・中東人民と連帯し闘おう

 はじめに

 帝国主義の基本矛盾、歴史的矛盾がますます激しく爆発している。それが今日の内外情勢、階級情勢の基本をなしている。具体的には、基軸国であるアメリカ帝国主義の没落が止めようもなく進んでいる。米帝の没落は帝国主義間争闘戦、大国間争闘戦の激化を引き起こす。さらに帝国主義間(大国間)争闘戦の激化は、すでに帝国主義的戦争へと転化している。その動きはますます加速度を増している。いまや帝国主義世界は、この世界史の巨大な力によってどんどん押し流され、帝国主義侵略戦争の拡大・激化と世界戦争の道にのめり込んでいる。最末期の帝国主義の死の苦悶(くもん)そのものである。これに断を下すことができるのは、世界史的存在としてのプロレタリアートによる世界革命以外にはない。
 こうした中で、イラク侵略戦争の動向の占める世界史的な位置はきわめて大きなものがある。大変な困難の中でイラク人民は、プロレタリア世界革命の一環としての民族解放・革命戦争を、米帝を始めとする国際帝国主義の全重圧をはねのけて、血みどろになって闘っている。その闘いによって、帝国主義世界−全世界の反動的支配体制を根底から揺さぶっているのである。
 国際プロレタリアートは、アメリカの労働者階級が開始しているように、侵略する自国帝国主義を内部から転覆する闘いをとおして、このイラク人民・中東人民と連帯し団結していかなければならない。

(写真 【左】南部のバスラで州政府庁舎を包囲する抗議デモ【4月16日】。【右】イラク警察部隊への爆弾ゲリラ【4月15日 バグダッド】)

 内外の激しい危機の中で出された“戦争拡大計画”

 イラク侵略戦争情勢は今日、米帝ブッシュのもとでさらに新しい段階に突入している。米帝ブッシュが1月10日に発表した「イラク新戦略」は、米帝をさらに抜き差しならぬ大敗北へと追い込むことは必至である。しかもそれは米帝を、また日帝や諸帝国主義(諸大国)を一層深々とイラク=中東侵略戦争へ引きずり込むものである。さらにそれは、アジアでは北朝鮮侵略戦争=朝鮮侵略戦争、さらには中国侵略戦争へとつながっていくものである。
 03年に始まった米帝のイラク侵略戦争は、06年においてついに米帝が決定的敗北−敗勢に突入する段階に至った。その政治的な鋭い表現が昨年11月の米議会中間選挙における上下両院でのブッシュ・共和党の大敗であった。これはイラク侵略戦争がまさにイラク人民の激しい怒りと戦いを巻き起こすものとなり、《侵略戦争下のイラク国内の内戦の爆発》という未曽有の事態に陥り、決定的な敗北−敗勢に陥ってしまった現実に規定されたものであった。
 さらに言えば、イラク人民を3年余りで6万5千人(国連発表)も虐殺し、米兵からも3千人を超える死者を出し、何万人もの負傷者・傷病者をつくり出して、なおかつ戦争を続行しようとする帝国主義への、米国プロレタリアートの怒りの爆発に規定されたものである。中間選挙の結果は、この現実が二大政党的、反動的選挙制度の枠内で、共和党の大敗として表現されたのである。
 まさにブッシュ政権、いや米帝そのものが決定的な危機に陥ったと言える。米帝ブッシュにこの危機から逃れ出る道はあるのか。ない。イラク侵略戦争はそんなに根の浅い根拠に基づくものではない。イラク侵略戦争は、米帝が超大国としての歴史的没落を巻き返すために、その強大な軍事力を行使して中東石油の米帝的独占支配=再支配を狙い、01年「9・11」(ムスリム人民の反米ゲリラ戦)を絶好の口実として、アフガニスタン侵略戦争の外見的・初期的勝利の勢いに乗じて、あらゆるペテンを弄(ろう)して突入していったものである。だから、昨年以来、明白になってきた米帝の敗北や、米議会中間選挙での大敗があったからといって、イラクからの撤退という選択をすることは、米帝が帝国主義である限り、そう簡単にはできないのである。

 中東全面失陥と世界革命の影におびえる

 ブッシュの「イラク新戦略」はこのことをきわめて鮮明に示した。ここでブッシュが最も強調したこと、民主党を含む支配階級に訴え、かつ恫喝したことは次のような内容であった。
 「イラクにおける失敗はアメリカにとって大災害としてあるということだ。失敗の結果がどうなるかは明白である。ラディカルなイスラム過激派は強力になり、新たな応募者を獲得するだろう。彼らの位置はさらに有利になって、穏健な政府を転覆したり、地域に混乱をもたらしたり、石油収入を彼らの野心のために使ったりしやすくなるだろう。イランはさらに核武装を追求していくだろう。わが国の敵は聖域を獲得し、そこから人民を攻撃したり、そこでの計画を立てたりするだろう。2001年9月11日、われわれは地球の裏側の過激派の隠れ家が、わが国の諸都市に何をもたらすかを経験した。わが国の人民の安全のために、アメリカはイラクで成功しなければならない」(1月10日)
 ここには、イラクでの敗北をこのまま認めることが何を引き起こすかについての米帝支配階級の恐怖が端的に示されている。ムスリムを先頭とする民族解放・革命戦争、ひいては世界プロレタリア革命の影におびえきった帝国主義者の恐怖がはっきりと示されている。帝国主義の立場から言えば、米帝は超大国として、また基軸帝国主義国としての圧倒的地位を守り、石油の独占的支配をかちとり、巨大な帝国主義的な利益をむさぼり続けるために、なんとしても「イラク失陥」を避け、中東支配体制をたて直すこと、そのためだったら、なんでもしなければならないということである。

 米帝の大虐殺戦争が「内戦化」の原因だ

 ブッシュの「イラク新戦略」の主な内容、筋立ては次のような構造をなしている。
 @05年のイラクの国民議会選挙は「驚くべき成功であった」。このままいけばアメリカは多くの兵力を引き揚げることも可能だった。
 A「(この国民議会選挙の結果に対して)アルカイダのテロリストとスンニ派反乱者は、イラクの選挙が彼らの目的にとって死の危険をもたらすものであることを認識し、罪のないイラク人に対する言語道断な殺人行為でこたえた。彼らは、シーア派の最も神聖な場所のひとつであるサマラの黄金のモスクを爆破した。これはシーア派住民を挑発して復讐させるように計算されたものだった」
 B「ラディカルなシーア派分子は、そのある者はイランに支持されているが、殺人部隊をつくった。そして、その結果は宗派間暴力の悪循環であり、それが現在まで続いている」
 これが米帝ブッシュのイラクの現状把握である。まったく盗人たけだけしい得手勝手なものだ。米帝ブッシュは、イラク・フセイン政権を「大量破壊兵器を製造・保有している」とか、「アルカイダと結託している」とか言いなしてイラク侵略戦争に突入した。しかし、それらは、今日すべてうそであったことが米国自身によって証言されている。結局、アメリカは石油支配と中東支配のために、イラクに帝国主義侵略戦争を行ったのだ。
 ブッシュは05年の総選挙をまるで理想の極致のように言っているが、この総選挙がファルージャを始めとしてイラク人民を大虐殺し、人口の多数派であるシーア派(とくにシスターニ派)をとり込んで、スンニ派に一切の犠牲を押しつける形で、かいらい政権をデッチあげるものだったことは明白である。だからこそ、スンニ派人民を先頭として、06年の激しい反撃が爆発していったのだ。
 ブッシュは「宗派間暴力の悪循環」などと言うが、米帝こそ、総選挙の強行とかいらい政権のデッチあげによって、イラクを内戦的対立に突入させた張本人ではないか。「黄金のモスク」の爆破が内戦の一切の原因であるかのように言っているが、それに先行する米帝とシーア派系の結託のもとでのスンニ派に対する大虐殺(掃討戦)と暗殺攻撃こそが、サマラ・モスクの爆発へとつながったのだ。内戦化の一切の原因は米帝のイラク侵略戦争であり、すべては米帝(帝国主義)の責任なのだ。

 首都とアンバル州の制圧を狙う「第2次侵略戦争」

 前述のブッシュ発言は、現状の責任を「アルカイダとスンニ派反乱者」や「ラディカルなシーア派分子」に押しつけている。だが、階級的真実は、イラク侵略戦争に対してイラク人民があらゆる困難をこえて民族解放・革命戦争に決起し、首都バグダッドを中心に内戦化の状況をつくりだし、アンバル州などで解放区・半解放区的状況をつくり出したということである。
 この現実が米帝に迫っているものは、このままではイラク侵略戦争は大敗北し、イラクを失陥するということである。そうならないためには、軍事戦略をエスカレートして、03年3月のイラク侵略戦争突入時に次ぐ「第2次イラク侵略戦争」というべきものに突入するしかないということである。ブッシュ「新戦略」は、米帝がいま一度イラクを軍事占領しようという戦略なのである。
 ブッシュは次の二つのことを軍事目標として提起している。
 第一は、「宗派間暴力を鎮圧すること」、とりわけ「宗派間暴力」の80%は首都バグダッドのそれであるとして、バグダッドをなんとしても抑え込むこと。
 第二は、「アルカイダのホームベースはアンバル州だ」として「いったんつぶしたら、アルカイダの聖域の再建を絶対にさせないこと」。
 つまり、バグダッドは内戦の泥沼にあり、アンバル州はアルカイダ系やスンニ派系民兵の解放区・半解放区状況を呈している現状を米帝の「失敗」として認めた上で、これを米軍事力によって制圧するということである。
 そして、まずバグダッドについて、「これまでの米軍の取り組みの失敗の二つの理由」をあげている。
 ひとつは「テロリストおよび反乱者を掃討すべき地域に、十分なイラク軍および米軍の部隊が存在しなかったこと」。つまり、米軍の兵力が不十分だったと総括している。端的に言えば、掃討戦で制圧した後に部隊を張り付けておくことができなかったことが失敗だった、これからは制圧体制を続けるということである。
 米軍の「失敗」のいまひとつの理由は、「米軍の部隊にあまりにも多くの制限が課せられていた」ことだとしている。これは、”バグダッド周辺で多発する宗派間対立にこれまで介入しないようにしてきたが、これからは介入する”ということである。
 これについてブッシュは、「宗派間暴力を育んでいる地域に入ることは政治的・宗派的干渉のために妨げられてきたが、今回は入るための青信号を得ている」と言って、マリキ首相から承認をとりつけたとしている。(このことは、問わず語りにこの間の「宗派間暴力」=内戦化の主軸が、イラク治安部隊と一体化あるいは連携したシーア派民兵によるものだったことを示している。米帝・米軍もこれに無関係だったわけではない。かいらい政権の維持のため、シーア派系のテロルを承認し促進してきたのだ。)
 このような新しい軍事目標のために、今回、米軍2万1500人(その後3万人に拡大)の増派が打ち出された。その大半の5個旅団1万7150人はバグダッドに投入する。この部隊は、18個旅団にまで増強されるイラク軍・治安部隊の「そばで働き、彼らの編成に組み込まれる」。さらに「米軍は単独でも戦闘可能な編成をなす」と言っている。これは米帝が主導してイラク軍をも率いて戦闘行為を行うということである。

 バグダッドから抜け出せず一層の泥沼に

 以上のことは、米軍が(イラクの「政府」治安部隊とともに)バグダッド市内に展開し、軍事的に制圧するということなのである。
 03年のイラク侵略の直後には一時期そうしていたが、ゲリラ戦での米兵の被害があまりにも多く出たためにとりやめたのである。このやり方を再びやるということだ。まさに再占領方式だと言っていい。しかし、バグダッドのような大都市において、2万1500人レベルの増派でこの制圧が実効的にできるのか。絶対に不可能である。
 また、米軍の軍事制圧と選挙を利用した「かいらい政権のデッチあげ」方式自体が、スンニ派に対する一方的な抑圧体制である以上、アルカイダ系、スンニ派系の民兵の民族解放・革命戦争を鎮圧することなど、けっしてできないのだ。
 また、シーア派系にしても帝国主義的外国軍の力の前に抑えつけられることによる矛盾は本質的には蓄積する。米軍の制圧下に組み敷かれることは、かつてのフセインの代わりに米軍権力がとって代わるにすぎないからだ。
 重要なことは、こうした米軍のバグダッド軍事制圧方式は、それ自体無理があるとともに、いつまでも米軍がバグダッドから抜け出せなくなるということである。仮に米軍戦死者の多発からバグダッドから引き揚げることになれば、それはもはや全面的瓦解(がかい)となる。
 要するに、米帝ブッシュの「新戦略」は、新たな第2次イラク侵攻であるとともに、それから抜け出せず、ますますイラクの泥沼にのみ込まれていく戦略なのである。これは民主党への政権移行によっても、けっして解決できる問題ではない。米軍はいまひとつ決定的にイラク=中東侵略戦争の泥沼に深々とはまり込んだのだ。

 米帝はせいぜい「点と線」しか確保できない

 米帝ブッシュの「新戦略」の第二の軍事目標は、アンバル州がアルカイダ系やスンニ派部族系の民兵の聖域と化すことをなんとしても阻止することである。
 ブッシュは、この間アンバル州はアルカイダ系の「ホームベースであった」と言い、「アルカイダはアンバル州を支配し、イスラム帝国を建設する意図をもっている」などということを、ことさらに押し出している。ブッシュは、アルカイダ系は外国人流入者が主体であり、地元のスンニ派部族とは矛盾があると強調し、この「矛盾」を新戦略の中心にすえて、次のように言っている。
 「アンバル州の米軍部隊はアルカイダのリーダーを殺し、捕虜にし、地元住民を保護している。最近、地元のリーダーたちがアルカイダと戦う意志を示し始めた。その結果、わが軍の司令官たちはテロリストに重大な打撃を与える可能性があると信じるようになった。したがって、私はアンバル州に4000人の米軍部隊を増強する命令を出した」
 しかし、この論理こそ帝国主義的侵略戦争の泥沼化・長期化をつくりだし、帝国主義を死の淵にたたき込むものである。
 米帝ブッシュは、自らのイラク侵略戦争こそがスンニ派とシーア派の内戦的対立をつくりだし、さしあたりスンニ派系勢力に一方的な打撃と矛盾を押しつける構図をつくりだしていることを、あえて無視している。だが、何よりもイラク人民の怒りは、侵略者・米軍にこそ向けられるのだ。
 米軍事力の一時的投入で一定のゾーンを制圧したとしても、アンバル州は広いし、また中部のディアラ州にも、さらに北部諸州にもスンニ派反乱者勢力は存在している。米軍は結局、この広大な地域の中で、せいぜい点と線の支配を確保することしかできないのである。ブッシュは、「アフガニスタンではアルカイダから聖域を奪った」などと自賛しているが、今日すでにそれは突き崩されているではないか。
 米帝は、かつて中国侵略戦争にのめり込んで危機と没落を深めた日本帝国主義・日本軍のように、深々とイラク侵略戦争にのめり込んでいって逆に行きづまり、没落を早めていくコースを確実に歩んでいるのである。

 米帝のイラクでの敗北は世界戦争情勢を加速する

 以上のように、米帝ブッシュの「イラク新戦略」の概容と本質をつかみとることが大切だ。このことは、新戦略に基づいてこの間進められてきたいわゆる「法の執行作戦」が、どのように展開されているかを理解する上で重要なカギとなる。
 第一に注目すべきことは、今回の「新戦略」には単なる増派以上のもの、つまりバグダッドおよびイラク全土の再占領・再制圧の要素が強くあるということである。したがって米軍はさらなる増派へとのめり込んでいくだろう。事実、1月10日の新戦略発表時には2万1500人の増派計画だったのに、その後次々と追加増派が行われている。すなわち、
@後方支援部隊2400人増派
A軍警察部隊 2200人増派
B陸軍航空旅団2600人増派
 以上のように、3月21日の時点までに合計2万8700人の増派が実行に移された。
 第二に、米軍増派部隊の到着とともに、2月14日から「法の執行作戦」なるものが実行された。この作戦では米軍とイラク治安部隊の合計9万人がバグダッドに投入された。そしてバグダッドに軍事拠点を建設しつつある。3月下旬段階で、@合同治安本部25カ所以上、A戦闘前哨拠点約50カ所が建設されたと報道されている。

 米軍「法の執行作戦」の1カ月間の「戦果」

 3月14日に「法の執行作戦」の1カ月間(2月14日〜3月13日)の結果なるものがイラク軍から発表された。次のような内容である。
 バグダッド市民の死者は作戦前の1カ月間と比べて82%減少、負傷者は76%減少、自動車爆弾は36%減少、仕掛け爆弾は37%減少、殺害した「テロリスト」は作戦前19人→作戦中94人、逮捕者329人→1865人というものである。
 これらの1カ月間のデータは、それ自体キャンペーン目的であり、眉唾(まゆつば)ものだが、ここからさえ透けて見えるものがある。
 この1カ月間は、米軍(とイラク治安部隊)が鳴りもの入りでバグダッドに「のり込んできた」時期だ。この期間は、スンニ派系、アルカイダ系武装勢力も、またサドル派民兵も、いわば軍事の常道として、米軍のバグダッド展開がどんな内容・形態で行われるかをまず見る段階である。サドル派の場合、組織的にさしあたり米軍から避難したことがすでに確認されている。
 したがって、ここから「内戦は沈静化した」「軍事作戦の効果は上がった」などと結論づけるのはあまりにも早計である。むしろ、厳重警戒態勢のもとにありながら、自動車爆弾攻撃(56台→36台)、ロケット砲攻撃(204発→109発)、仕掛け爆弾(163件→102件)などは、イラク軍の発表によっても半減にも達していないことである。やはりいくらでもスキはあることが逆に示されたのだ。
 実際3月10日には、イラク安定化国際会議の会場となったイラク外務省にロケット砲弾が命中し屋内で爆発した。3月22日には国連事務総長・潘基文(パンギムン)とマリキ首相の記者会見中にロケット砲攻撃があり、すさまじい爆発音で会見が中止された。3月23日には、厳戒下のバグダッド中心部にあるイラク政府副首相ザウバイの自宅が爆破された。そして4月12日には、バグダッド中枢の米軍管理区域グリーンゾーン(政府庁舎や外国大使館が集中)の中にある国民議会ビルの中で爆破戦闘が敢行された。また同日朝、バグダッド市街を流れるチグリス川のサラフィヤ橋の上で爆弾を積んだ車が爆発し、橋が完全に破壊された。このように、米軍の新戦略をうち破るように、大ゲリラ戦が次々と闘いとられている。最近の半年間の米兵の死者は過去最高になっている。4月はさらに死者が増加している。
 また、ブッシュ「新戦略」の第二の目的にからんで言えば、アンバル州でのアルカイダ系と地元部族との対立などが報道されているが、こうした動きは長時間の経過を見ないと事実を正しくつかめない。重要なことは、侵略している米帝・米軍とイラク人民とりわけスンニ派系人民との間には絶対的・非和解的な対立関係があり、これを政略や買収などで解決したり打開できるものではない、ということである。
 結局、実行に移された米帝ブッシュの米軍増派戦略が、逆にどれほど重大な危機と泥沼的敗北を米帝・米軍にもたらし、米帝の体制的危機と歴史的没落を深める決定的水路になっていくかは、今後数カ月から1年をとおして、一層はっきりしていくだろう。

 朝鮮侵略戦争に突き進む日帝打倒しよう

 最後に、以上のように詳しくイラク情勢と米帝ブッシュの新戦略を分析した理由を、あらためて確認したい。
 それは01年「9・11」→アフガニスタン侵略戦争→イラク侵略戦争が、ここまで全面的な米帝の侵略戦争とイラク人民・ムスリム人民の民族解放・革命戦争として発展してきたこと、それが米帝を敗勢にたたき込み、ついにブッシュ「新戦略」によって米帝はもはや引き返しのきかない侵略戦争の拡大→世界戦争の過程に突入したことの重要性を、世界革命の視点から、がっちりとつかみとるためである。
 北朝鮮の核問題をめぐる6者協議で、米帝がこれほどまでのたうち回っていることも、イラク情勢の泥沼化に規定されている。また、このようなイラク情勢であればこそ、米帝・日帝の北朝鮮侵略戦争=朝鮮侵略戦争を引き寄せずにはおかないのである。
 イランをめぐる攻防戦もこの「イラク新戦略」のもとで一挙に激化している。3月24日には国連安保理がイラン追加制裁を全会一致で決議した(決議1747)。3月23日には領海を侵犯した英海軍兵15人がイランによって拘束された(その後、全員を送還)。イラン情勢は極度に緊迫化している。
 そして、これらはすべて米帝の急没落→帝国主義間(大国間)争闘戦の激化→世界戦争の流れの決定的な一環としてある。だからこそ、われわれは日帝の戦争・改憲・労組破壊の攻撃に対して、「帝国主義戦争を内乱へ転化する」立場から対決し、生産点での労働者組織の建設、労働組合建設を軸に、階級的労働運動を全力で闘いぬくことが求められているのである。

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週刊『前進』(2292号5面1)(2007/04/23 )

 帝国主義世界経済のバブル化と29年型大恐慌爆発の深刻な危機

 世界同時株暴落と労働者の立場

 2月末〜3月中旬にかけての2波にわたる世界株価暴落は、今日の帝国主義世界経済がどれほど深刻な危機を抱え込んでいるかを突き出した。4月13日に開かれた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、世界経済について「過去30年間で最強」と強調する共同声明を発表した。だが、その陰では世界大恐慌の再来の恐怖におびえている。帝国主義は今や、ロシアや残存スターリン主義=中国をも巻き込んで、争闘戦の非和解的激化−世界戦争の道を突き進んでいる。この危機はプロレタリア世界革命によってしか突き破ることができないものだ。その闘いの前進のために、ここであらためて2月末から世界を襲った世界同時株価暴落の意味するものを明らかにしたい。(本紙1月15日付2278号の論文「米帝の没落と世界戦争危機」、同2月5日付2281号の論文「安倍・御手洗路線と対決を」を併せて学習していただきたい)

図 日経平均株価の推移 上海での大暴落が引き金に 帝国主義経済のもろさ露呈

 2月末〜3月初めに発生した世界同時株安は、「株安」などという生やさしいものではなく、急落、暴落である。2月27日の中国・上海での8・8%もの暴落から始まって、香港、EU(ロンドン、パリ)、ニューヨーク(NY)、そして東京の大暴落へと発展した。アジア諸国、中南米諸国でも同じく暴落した。
 3月5日まで7営業日の間に、NYダウは581jも下落した。日経平均の下落幅は1573円という大幅なものだった。その後、回復したことから、「一過性」「調整局面」などと御用エコノミストたちは強弁した。
 だが、最初の暴落から約2週間後の3月13日、今度はニューヨークを震源地にして、かなり深刻な「第2波」が発生した。NY株式市場は242jの暴落、これをうけた14日の東京株式市場は501円の大暴落となった。香港、上海、ASEAN諸国、オーストラリア、欧州各国の株式市場も全面安となった。
 2度の世界同時株価暴落のつき出した意味は、けっして小さくない。それはまず、世界経済がわれわれの想像をも大きく超えてバブル化していることを突きだした。世界経済はすでに29年型大恐慌になってもおかしくない危機的状況であり、帝国主義の野放図な金融財政政策によって世界経済のバブル化が生じ、かろうじて景気が「維持」されてきたのだ。
 さらに、このような世界経済のバブル化構造が今や完全に行きづまり、破綻(はたん)する過程に突入したのである。

 中国スターリン主義の危機

 今回の世界的株暴落に関して第一に確認すべきことは、今回の世界的な大暴落が中国株式市場におけるバブル的ブームの急崩壊から始まったことである。これはいくつかのことを示している。
 ひとつは、今日の帝国主義経済が、中国の経済に深々と依存するに至っていることである。中国がいかに資本主義化政策を大々的に推進し巨大経済市場をつくりだしているとしても、体制としては残存スターリン主義そのものである。この中国の経済に大きく依存せざるをえないこと自体が、本質的には帝国主義として最末期の状態を示すものである。
 しかも、今回中国から暴落問題が始まったのには、ある意味で必然性がある。それは中国がスターリン主義体制下で沿海部を軸にして資本主義化政策をとっているが、これが本来的な資本主義的メカニズムとしては十分に機能せず、大きくはスターリン主義的官僚制の統制のもとにあるということである。
 たとえば、明らかに政治的観点から元安政策(中国の通貨=人民元の対ドルレートを安く抑える政策)を依然としてとっている。このために中国には膨大な外資が積み上げられ、そのもとで国内に資金が膨大にだぶついて、株式市場に激しい投機的性格を与えている。それも個人の資産家が膨大に生まれ、株式市場などでの利殖、金もうけに走っているのである。
 いまひとつは、スターリン主義体制だからといって中央が一切を仕切れるものではないということである。むしろ、スターリン主義体制だからこそ、経済外的な論理で各地方政府などが独自に動くことが不可避であり、中央的制御が利かないのである。だから中国経済は過剰投資・重複投資の温床になる。そして、その過程は汚職・腐敗の横行と重なる。依然として大きい国有財産部門については官僚層のお手盛りの「私有化」が行われやすい。つまり、一面では好き勝手な資本主義化政策が物質化しているが、資本主義的経済のルールで経済が有機的に動いているわけではないのである。
 今回の場合も、こうした中国経済の現状――野放図なバブル化や投機化に対して中央政府が一定のブレーキサインを出したことがきっかけとなって株式の投げ売りが生起した。このサインとは3月5日からの全国人民代表大会(全人代)で「株式譲渡益課税」の具体化が行われるのではないかという情報だった。そこから株式の売りが始まり、一挙に大暴落へと突っ走ったのである。
 帝国主義は、残存スターリン主義=中国の「巨大経済」をかかえ込むことで延命しようとしているが、まさにそのゆえに、そこから世界同時株暴落の引き金がひかれる事態となった。しかもこのことは、今回で終わりということではないのだ。むしろ、これからさらに中国経済の激しい矛盾の爆発の影響を受けて、帝国主義の世界経済はグラグラになっていくだろう。

 株暴落の最大の主役は日帝 「円借り取引」がバブル促進

 第二に確認すべきことは、やや意外なことに見えるが、今回の世界的株暴落の最大の主役は、実は日帝だということである。超低金利政策のとめどない続行が、いわゆる「円借り取引」(注)をとおして巨大な投機資金を世界中にばらまき、世界経済のバブル化を加速しているのである。しかも2月21日に日銀がコール金利(短期資金の無担保コール翌日物の金利)を0・25%から0・5%に引き上げたことが、むしろ円借り取引を一挙に加速したと言われている。
 つまり0・5%の短期金利は、5・25%、3・75%という米・EUの金利と比較すればただ同然なのである。しかも、この0・5%がさらに(参院選挙などがあり)最低秋以降まで続くということである。
 円借り取引の問題は、ドルの暴落を抑制するため、米金利を日本の金利よりも高水準にすることで投資資金を米帝に吸引し、もって資本収支の黒字化―ドル価格を維持するという脈絡において、この間把握されてきた。だが、今回暴露されたことは、円借り取引は、米帝のみならず実はEUや東欧、ロシアなどに対してもインフレ輸出的に作用し、住宅バブルなどを各地につくり出してきたということである。
 つまり、帝国主義の最弱の環である日帝が、バブル崩壊後の超長期の不況からいまだに脱却できない危機の中で超低金利政策を続け、円安を続け、輸出産業を軸に世界のバブルにのっかっていく延命方法が、実は全世界を投機資金でダブダブにし、世界中にインフレや住宅バブル等を輸出しているという、とんでもない構図がはっきりしたのである。
 今回の株暴落の激しさは、いったん株式市場が崩れればヘッジファンド(注)は円借り取引から引き揚げ、そうすると世界の株式市場から一挙に巨大な資金が引き揚げられ、株価は暴落し、それをなかなかリカバー(回復)できないということである。今回の暴落が世界を一巡〜一巡半すれば回復するというパターンをとらず、二巡三巡して、少なくとも2月27日〜3月5日の7営業日も続いたことは、この要素を考慮しないと理解できない。帝国主義世界経済は、いよいよ末期的症状を呈してきたということである。

 基軸国=米帝の歴史的没落 ドル暴落に脅える支配階級

 第三に確認すべきことは、これがある意味で決定的なのだが、今回の過程こそが基軸帝国主義としての米帝の危機の深さをまざまざと暴き出したこと、いや危機そのものを激化・深化させたことである。
 ひとつは、米帝経済における住宅バブル崩壊の重圧の強さがつき出された。円借り取引からの巨大な投機資金の皮を一枚むいて経済の実体を見れば、米帝経済の地力の反発力には実は自信がない―これがNY株式市場が一気に回復できなかった理由なのだ。あえて言えば、アメリカの住宅バブルの崩壊は、日本の1980年代末から90年代初めのバブル崩壊の時以上に深刻なものだとも言えるのである。
 いまひとつは、NY株式市場の暴落は円高ドル安の流れをつくり出したことである。この間、円借り取引の横行が、NYを始め世界の主な株式市場で株高をつくり出してきた。ところが、上海市場での急落を機に株への警戒感が増幅し、ヘッジファンドなどが株式を売却し、より安全性が高い債券市場などに資金を振り向けたり、資金返済のためにドルを売って円に交換(円買い)する資金の逆流が起きたのである。急速な円高ドル安と株安の進行は巨額の資金逆流の結果である。
 こうした事態の経過は、世界経済全体をバブル化の波におぼれさせる中でかろうじて維持されてきたドル防衛のあり方(ドル暴落の危機の回避構造)が、このままではもう続けられないことをつき出したのだ。
 今回の株暴落からの一定の回復があったとしても、基軸国米帝の住宅バブル崩壊=バブル経済崩壊のすう勢はおさえがたいものがあり、それは必ず一定の段階でドル暴落を引き起こす。
 われわれがこの間、いわば綱領的に確認してきた〈基軸帝国主義=米帝の一挙的没落→争闘戦の死闘化→帝国主義侵略戦争への転化→国内階級戦の決定的激化→革命的情勢への突入>という世界情勢の動きが、今回の世界同時株式暴落によって決定的に確証された。世界戦争と革命的情勢への突入の動きは、これによって一層促進されていくのだ。

 住宅バブルの崩壊の重大性

 第四に確認すべきことは、第2波の暴落が米国発で生じたことの意味である。この暴落はストレートに住宅バブルの崩壊の進行の中で、いわゆるサブプライム・ローンの問題に火がついたことから始まった。
 サブプライム・ローンとは、低所得や破産歴などで普通の銀行では借金できない層(サブプライム層)を対象とする高金利のローンであり、一般にバブル経済の末期的症状として展開されるものである。米経済の場合、このサブプライム・ローンが住宅ローン全体の14%となるに至っていた。また、新規契約ローンの20%に達していた。
 これが、住宅バブルの崩壊が始まって返済できなくなる者が続出し、延滞率が上昇した。これによって大手のローン会社の経営が悪化したのだ。
 さらに進行すれば、こうした大手のローン会社に融資していた大手銀行の損失を拡大することは必至である。日本のバブル崩壊過程で生じたこととそっくり同じである。こういう危機が始まったことが、第2次の株暴落を引き起こした。
 3月13日の株暴落以降、米帝のマスコミ、エコノミストが動員されて、「住宅ローンにおけるサブプライム・ローンの規模はそれほど大きくない」とか、「不良債権化の度合も大きくない。処理可能な範囲内だ。心配はいらない」というキャンペーンがされている。NY株式市場がひとまず「回復」したのは、そうした情報を基礎にしてのことだった。
 しかし、こうした言説にはまやかしがある。そもそも住宅バブルというものは、狭義の住宅産業だけのものではない。
 もとはと言えば、ブッシュ政権による歴史的な低金利政策と大減税(=財政赤字の放置)の野放図な展開によって、03年以来の超長期の住宅バブルが生み出された。それがいわゆる「資産効果」をとおして個人消費を拡大し、住宅関連のみならず全産業の需要拡大と設備投資などをもたらしていった。自動車販売などもこの流れに乗って、一定程度拡大した。これが米帝経済の全体的バブル化である。
 だから、金融機関によって貸し出された債権の質の低下は、住宅関連を超えてすべての経済領域に広がって潜在していると見るべきである。金融システムの面でも、住宅ローンの債券の証券化が進行し、それが投資の対象になる形で、金融システムのさまざまなところに不良債権化の種は、ばらまかれてきたのだ。
 住宅バブル(一般には不動産バブル)の崩壊は一定の遅行性をもつと言われるのも、上記のことに関連している。また、多くの御用論者は「住宅バブルのパンクはソフトランディング(軟着陸)することがはっきりした」などと言って“株式ブーム”を延長させようと懸命になっている。だが、この「ソフトランディング」説にもペテンがある。実際には米帝ブルジョアジーは、財政金融政策では決定的な引き締め政策をとっていない。いわばバブル維持型のスタンスである。だからこそ、FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレ懸念などをつねに問題にしているのだ。
 米帝支配階級は、金利のさらなる引き上げなど、少しでも度を超した引き締め政策に訴えたら、文字どおりバブルの大崩壊となる危機感に震えているのである。だから、住宅バブルの崩壊は基本的に「もう終わった(ソフトランディングした)」のではなく、これから全貌(ぜんぼう)をあらわすのである。
 上海発で始まった世界同時株暴落が、以上のような米帝の経済構造に打撃を与え、ついにはっきりした形で住宅バブルにおけるサブプライム・ローンの深刻な現実を引きだした。それが第2次暴落の引き金となったと言えるのである。

 制御不能な過剰資本の流動 帝国主義の危機を革命へ!

 第五に確認すべきことは、帝国主義世界経済が過剰資本・過剰生産力状態にぶちあたっていることがますますはっきりしたことである。
 この間、日帝の超低金利政策や米帝・日帝の野放図な天文学的赤字財政の満展開をとおして、超「金あまり」状態、大変なスケールの過剰流動性の状態にある。1兆5千億j(約180兆円)のヘッジファンド、5千億j(約60兆円)のオイルマネーなどが金融、資本市場に流れ込んでいる。ほかにもさまざまな短期資金が世界中を動き回り、急激な株式市場の活況をもたらすかと思えば同時株式暴落を引き起こすというような事態になっているのである。
 このような状態は、単なる経済現象としてのみ、自立的にあるのではない。中国スターリン主義や、ロシアなどの政治的・社会的危機の爆発などがからんで、一挙に世界危機が爆発することもありうる。また、イラク侵略戦争や、北朝鮮をめぐる情勢がどのように発展するか、それが帝国主義間(大国間)争闘戦にどうはね返るかによって経済危機自体が一気に爆発することもありうるのである。
 最もインパクトの強いものは労働者階級の闘い、とりわけ体制を転覆するレベルの階級的闘いが爆発するかどうかである。30年代国際階級闘争、ひいては1917年のロシア革命のインパクトと29年型恐慌の大爆発は、無関係なものではなかった。帝国主義間争闘戦の形態を規定するという形で、階級闘争の力は働いていくのである。
 要するに、こうしたすべての動きがからみあって、全一体として世界の帝国主義の崩壊的危機−争闘戦−世界戦争の危機は展開し、革命的情勢への突入はいよいよ本格化していくのである。
 これに対して、闘う労働者階級は、職場生産点から階級的労働運動と労働者党建設の闘いを一体的に推し進め、帝国主義の危機をプロレタリア世界革命に転化するために闘わなければならない。
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■注
 円借り取引
 超低金利の円を借りて、金利が高い他国の通貨に替え、その国の株式や債券などに投資する取引
 ヘッジファンド
 少数の投資家から大口資金を集め、世界的規模でハイリスク・ハイリターン型の運用を行う投資組合

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週刊『前進』(2292号5面2)(2007/04/23 )

 5・15沖縄闘争に結集を

 辺野古新基地建設阻止しよう

 米軍再編推進法案つぶそう

 1972年のペテン的な沖縄「返還」から35年の5・15闘争を全力で闘おう。
 4月13日、国民投票法案とともに衆院本会議で米軍再編推進特措法案の採決が強行された。
 米軍基地を押し付けるための「アメとムチ」法である米軍再編推進法案は、米軍再編に関連する特定の防衛施設を指定し、当該市町村に「再編交付金」を支払うというものであり、基地受け入れの度合いに応じた「出来高払い」とすることで、政府の思うがままに地方自治体、とりわけ反対運動が根強い沖縄を牛耳ろうとするものだ。
 沖縄と全国に新たな米軍基地を押しつけ、沖縄をますます「基地の島」として打ち固めるための攻撃であり、絶対に許すことはできない。参院段階で絶対に粉砕しよう。
 普天間飛行場移設をめぐるSACO(日米特別行動委員会)最終報告に向けた日米の事務レベル会合(1996年10月)で、垂直離着陸機MV22オスプレイの配備を前提にして、滑走路の長さや施設規模などについて具体的に協議していたことが明らかになった。
(写真 SACOで日米政府がオスプレイ配備で合意していたことを報じる沖縄タイムス【4月5日付】)
 それを示すメモには、日本側が「県民に滑走路の長さをどう説明したらよいか」と米側に尋ね、オスプレイ配備について@何も言わないA具体的に伝えるB現在使用機種に合わせて建設し、後でMV22配備発表の時に延長−−の三つの選択肢を示して米側に助言を求めていた事実が記されていた。
 政府はその後の県民の追及には「知らない」と言って、県民をだましつづけてきたのだ。本当に許せない。
 このような重大事態が暴露されたにもかかわらず、米軍再編推進法案の採決を強行したのだ。
 またキャンプ・シュワブ沿岸域へのV字型滑走路建設へ向けた「環境現況調査」(事前調査)のため、那覇防衛施設局が沖縄県に提出した申請書と関連書類すべてについて、沖縄県は「不開示」を決定した。市民が情報公開を求めていたものである。不開示の理由を県当局は、“開示によって外部からの圧力や干渉などの影響を受けるため”と説明した。
 だが、脅かされているのは沖縄県民の命であり、絶対に新基地建設を許すわけにはいかない。切迫する事前調査をなんとしても阻止しよう。

 安倍の訪沖は基地押しつけ

 4月15日、安倍首相は就任後初めて沖縄を訪問し、沖縄戦の激戦地である嘉数高台から米軍普天間基地を見学した。その後に行った参院沖縄選挙区補欠選挙の応援演説では、「街の中にあり、危険を伴う普天間飛行場を1日も早く移設しなければならない。知事や地元の意見に耳を傾けていく」「県民の負担を減らすのは私の責任だ」などとウソ八百を並べ立てた。そのために辺野古は文句を言わず犠牲を甘んじて受けろと言うのだ。これこそ思いのままに沖縄県民を分断し、懐柔できるという思い上がりだ。
 さらに沖縄県北部の国頭村、東村にまたがる北部訓練場の一部返還に伴うヘリパッド(着陸帯)の移設問題も絶対に許せない。東村高江区に従来からある15カ所に加えて、新たに直径45bのヘリパッドを6カ所建設するという計画である。住民の居住区を21カ所のヘリパッドが取り囲むことになる。
 この攻撃は、辺野古への新基地建設と一体である。すでに60年代から、辺野古の海上基地建設は、空母入港も可能な水深の大浦湾を軍港とし、弾薬庫など兵站(へいたん)を備えたキャンプ・シュワブと、広大な北部演習場がセットで計画され、米軍にとって「使い勝手のいい」基地として構想されてきたのだ。
 自然豊かなヤンバル(山原)が破壊され、住民は昼夜、騒音にさらされ、生命さえも日常的に脅かされている。新たなヘリパッド建設を絶対に粉砕しよう。

 5・13嘉手納基地包囲闘争へ

 また政府・文科省は、高校教科書の検定で「集団自決」が日本軍による強制であった事実を教科書から抹殺する暴挙を行った。沖縄戦の犠牲の中から「軍隊は住民を守らない」「命こそ宝(ヌチドゥタカラ)」の教訓をつかみ取った沖縄人民の強固な抵抗闘争をつぶそうとするものである。
 しかし、こんなことで歴史を偽造することはできない。沖縄の教職員組合はこぞって反撃に立ち上がっている。
 辺野古では新たな決戦を前に4・28キャンプ・シュワブ包囲闘争が呼びかけられている。「V字形沿岸案反対、違法事前調査許すな/座り込み3周年キャンプ・シュワブ『人間の鎖』行動、海上抗議行動」がヘリ基地反対協主催で闘われる。総力で結集しよう。
 5・15沖縄闘争−5・13嘉手納基地包囲を沖縄の労働者人民とともに闘おう。沖縄から日本革命の炎を燃やそう。

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週刊『前進』(2292号6面1)(2007/04/23 )

団結ひろば 投稿コーナー

 青年労働者や学生は革命を欲している 東海・青年労働者 須賀川直哉

 3月18日に東京・日比谷で行われた「イラク反戦4周年全世界一斉デモ」に愛知、岐阜、三重の3県から意気高く参加しました。今春、労組交流センターに青年労働者が1名新たに結集しました。革命を欲しているのは学生であり、青年労働者です。「労働運動の力で革命やろう!」というスローガンや発言に私は心を打たれました。おそらく彼も同じだったと思います。参加した人たちの声を紹介します。
 警察とライン闘争をやりながら右翼とも闘い、充実感でいっぱいです/これから仲間を増やしていきましょう/労働者の職場からの大きな決起が戦争をとめる力/掲げるだけの革命から近づく革命を感じた/地元で闘うのは大変ですが、できるだけのことをやっていきたい/失業者や「障がい者」と一緒にやれる労働運動をやろう/時代が変わった/地元では見られないデモで感激した/「君が代不起立」上映会を地元でやるが、壁を作らずにすべての人に訴えていきたい/高揚し充実したいい集会だった。
 安倍・御手洗は「美しい国」だとか「希望の国」だとか装って、戦争をする国家につくりかえようとしています。
 沖縄戦では幾多の住民が日本軍の「軍命」によって自決を迫られ、いまだに基地があります。安倍は、それらを覆い隠した教科書を全国に流布し、米軍再編によって基地を強化しようとしています。基地や教科書に対する沖縄のおじい、おばあ、すべての労働者民衆の怒りは安倍の改憲・戦争をする国づくりの本質を見抜いています。
 5月の沖縄闘争には、3・18集会に参加した仲間、新しい仲間とともに参加したいと思います。

改憲投票法案の衆院通過弾劾し緊急街宣 大阪 大原 剛

 改憲投票法案が衆院で強行採決された4月13日、仕事を終えた私たち地区の労働者党員は最寄りの駅頭に登場し、この暴挙を徹底弾劾する緊急街宣に立ちました。
 「革共同」として登場し、地区委員会署名のビラを配りました。改憲阻止闘争を今後爆発させ、労働者階級の革命党として認知をかちとり、党への結集を組織していくためには、革共同が公然と登場し、鮮明な闘争方針をうちだす必要があると決断したからです。
 そうしてこそ、労働組合は階級的労働運動として革命党の方針に労働運動の方向から限りなく接近していくと思います。
 アジテーションでは、強行採決は憲法9条破棄=戦争に向けたクーデターだと訴えました。
 国会前では60年、70年安保闘争を闘った世代を中心に多くの人びとが闘っている。改憲と戦争を阻止する力は私たちの中にある。労働者・学生・農民が団結し、かつての安保闘争を上回る巨大な実力闘争をつくろう。
 競争・対立、不平等と貧困を強制し、そして侵略戦争へと私たちを動員しようとするこの社会に未来はない。資本家どもとその政府が改憲と戦争へ突き進むなら、私たち労働者はそんな国家は打倒する革命に立ち上がる以外にない。4・24大阪扇町闘争から国会闘争へ、青年・学生は立ち上がろうと訴えました。
 闘いはこれからです。疾風怒濤(しっぷうどとう)の決戦の時代が始まったのです。それは革共同が躍進する時代です。

伊藤長崎市長銃撃で戦争への道阻む決意 長崎 水沢 耕

 伊藤市長銃撃事件の背景として、いろいろなことが言われています。過去のトラブルへの逆恨みとか。しかし伊藤市長が核廃絶を訴えてきたことも事実です。
 きっかけは何であれ、右翼の跋扈(ばっこ)は、やはり今の改憲情勢と一体の流れであると思います。長崎でも、東京などでも、改憲反対派や朝鮮総連のデモに右翼が街頭宣伝車を多数繰り出して妨害することが起きています。
 考えてみれば戦前もそうでした。戦争へ社会が向かおうとする時にこうした事件が多発するのだと思います。
 そういう意味で今回の事態は大変な事態だと思います。この事件を引き起こしたのは、来週中にも国民投票法案を成立させようとしている安倍政権だとも言えます。
 だからこそ絶対に、国民投票法案を通してはならない。戦争への道を止めなければならない。安倍政権を倒さなければならない。そんなことを今感じています。

「管理専門職」の名で違法に搾取する会社 I・S

 私が勤務する会社は、ソフトウェア受託開発や日立やNTTなどに作業請負として労働者を派遣しています。訴えたいことが3点あります。
 @会社の残業手当、休日出勤手当の不払い。
 当社には役職無しの「管理専門職」という非常に奇妙な制度があります。管理職という位置づけになっていますが、部下無し、したがって部下の人事権無し、出退勤時間の本人裁量無しです。一般にいう管理職の要件を満たしていません。
 その一方で役職者並みの売上ノルマ、収益ノルマを課せられます。
 作業請負という業務形態が多く、客先での作業時間が売り上げを左右するので、管理専門職は派遣先での長時間労働を強要されます。
 長時間労働=当社の売上増です。かつ管理専門職への残業手当・休日出勤手当の不払い=当社の利益増です。業務量が少ない時期は「何かしている振りをし勤務時間を増やせ」と命じられます。
 また当社の自社内受託開発の場合でも、一般労働者は定時通りに帰宅させ、代わりに管理専門職に残業、休日出勤を強要しています。異を唱えると人事考課で不利益をこうむります。
 搾取の結果、経営者の年間報酬は数千万円に迫ります。役員は、退職金の代わりに会社の株をタダ同然で受け取れます。 このような役員の行為は許されるでしょうか?
 A休日に無給で会社行事出席を強要。
 当社の創立記念行事が4月21日の土曜日に東京で開催されます。業務ではないとして休日出勤手当は支払われません。
 文書には残さず、口頭で出席を強要されます。拒否すれば人事考課で不利益をこうむります。
 全国各地に勤務する者も出席を強要されています。日帰りで、出張の日当も支払われません。11時集合、18時解散なので地方の者は早朝に家を出、深夜に帰宅します。
 これは労基法違反ではないでしょうか?
 B偽装請負。
 当社は大手IT元請企業や一般顧客企業へ業務請負の形態で労働者を多数出向させています。
 業務請負でありながら、実態は出向先企業の従業員から指示・命令を受けます。
 出勤・退勤・休憩時間が当社と出向先で異なる場合、出向先の勤務体系に従わなければなりません。また出向先での作業場所で当社従業員は一人ひとりバラバラに座らされ、隣や向かいの出向先企業従業員から常に作業指示・命令が出されます。時には退社時間間際に大量の作業指示を受け、深夜残業、徹夜になることもあります。
 会社の労働者への不当行為、搾取をこのまま放置してよいでしょうか?

当局の規制はねのけ新入生にビラまき 仙台・学生 佐々木裕子

 今、キャンパスは新歓で盛り上がっています!!
 東北大学当局は、入学式の日に初めてサークルへのビラまき規制を行ってきました。が、サークル員たちは、そんなことおかまいなしに、元気にビラまきを行いました。今日もキャンパスはたくさんのサークル員と新入生でにぎわっています。
 でも去年とは違う新歓期の風景も見られます。それはクラスが解体され、語学が選択性になったことです。それによって、満員の語学の授業もありますが、一人ひとり離れて座っている人たちが多い授業もあります。
 またクラスが解体されたことで教科書の共同購入ができなくなっています。教科書を個人で買う1年生たちの長蛇の列は途切れることはありません。1年生にとっても、教科書を販売する人にとっても大変な状況です。
 このような団結破壊を打ち破って1年生と知り合うために、日々奮闘し
ている最中です。

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週刊『前進』(2292号6面2)(2007/04/23 )

 関西で入管交流集会

 鈴木弁護士 改憲阻止へ熱い講演

 4月15日、第16回外登法・入管法と民族差別を撃つ関西研究交流集会が京都大学法経4番教室で開かれました。在日朝鮮人や中国人、イラン人、ビルマ人など在日・滞日外国人を含む300人が参加し、安倍政権が進める「戦争をする国」づくり、差別・排外主義攻撃と闘う共同闘争の場となりました。
 冒頭、神戸の在日研究フォーラムの李相泰(イサンテ)さんが主催者あいさつ。「在日朝鮮人に対する差別は日本社会がゆがめられているから。むしろ在日の闘いが日本社会をよくしてきた」と指摘し、中学生の時に見た韓国映画の中で日本統治下の若い女性教師の「知ることは力なんだ」という言葉に勇気づけられたと語り、「日本の社会を変えないことには自分自身の人権もアイデンティティも守れない。知って理解して行動に移すことだ」と訴えました。
 在日韓国・朝鮮人高齢者の年金訴訟原告の女性は「80歳の今日まで差別と人権侵害で年金ももらえません。無年金差別を訴えました」と語りました。尼崎入居差別裁判を闘った在日韓国人青年は入居差別は憲法違反という判決をかちとったと報告しました。
(写真 鈴木達夫弁護士が「日本とアジアの人民連帯で改憲阻止を」と題し講演した【4月15日 京都大学】)
 北朝鮮バッシングの中で1月28日に「電磁的公正証書原本不実記録容疑」を口実に不当捜索を受けた滋賀初級学校から「弾圧を受けて誰が私たちを消そうとしているのか、誰が守り支えようとしているのかが分かった。子どもたちの笑顔を守るための拠点として民族学校の未来がある」と力強く提起しました。
 「消せない歴史―日本軍『慰安婦』」のビデオが上映され、「この問題はまだ解決していません。私がやらなくて誰がやるんだと取り組んでいます」と在日朝鮮人女性が問題提起しました。
 企業の強制連行責任を問う不二越第2次訴訟の原告、李福実(イボクシル)さんは、強制連行された12歳の体験を証言、炎天下での軍隊式訓練や、24時間動き続ける軍需工場で脅されて涙を流しながら働いたことなどを語りました。
 鈴木達夫弁護士が講演で憲法改悪阻止を訴えました。鈴木弁護士は、日帝が国体=天皇制護持のために敗戦を引き延ばして迎えた8・15、「その1時間後には強制連行されていた鉱山で在日朝鮮人がストライキに入る。全国で9万にものぼる朝鮮人・中国人が立ち上がった。これと日本人労働者の闘いが合流し、今こそ日本帝国主義を倒そうという戦後革命の状況でした」と熱く語り、だからこそ改憲攻防は革命かクーデターかの攻防、安倍政権の国民投票法案―新憲法の攻撃は「日本が帝国主義として再び侵略戦争に出るため。これは日本に住む者の共通課題」と改憲阻止の共同闘争を呼びかけました。
 「辺野古に基地をつくらせない大阪行動」がアピール。大阪・茨木の西日本入管センターと茨城県の牛久入管センターで面会行動などに取り組んでいる運動体が報告。
 反「入管法」運動関西交流会事務局の基調報告の後、関西合同労組、大阪府立高校の教育労働者、とめよう戦争!百万人署名運動、自衛官家族と元自衛官連絡会が闘う決意を表明しました。
 最後に、5月13日に横浜で開かれる「第18回外登法・入管法と民族差別を撃つ全国研究交流集会」(日時/5月13日<日〉午後1時開会、正午開場、場所/横浜市開港記念会館、主催/外登法・入管法と民族差別を撃つ全国研究交流集会実行委員会)への結集が呼びかけられました。
 戦争への道を歩む安倍政権を今こそ倒す時だと確信しました。
 (本紙・森田友美)

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週刊『前進』(2292号6面3)(2007/04/23 )

 厳罰化で小学生でも少年院に 少年法の改悪阻止を

 今国会で継続審議されている少年法の改悪案が4月18日に衆院法務委員会で強行可決され、19日に衆院本会議で可決、参院に送られた。少年法改悪は、憲法改悪、教育基本法改悪、共謀罪新設と一体であり、戦争と暗黒の警察国家化に向けた大変な攻撃だ。少年法改悪を労働者階級の課題として闘おう。全労働者の団結の力で少年法改悪の今国会成立を阻止しよう。

 14歳未満の少年に強制捜査

 今回の少年法改悪案は2000年の改悪を引き継ぎ、より一層警察権限を強化し、子どもを警察の監視下に置き、少年の育成・保護という少年法の理念を完全に踏みにじった。子どもをとおして労働者(保護者)、学校、地域を警察の支配のもとに置く。現行刑法の適用外である14歳未満の子どもにも、少年法の名で刑法を適用し、労働者子弟すべてを犯罪者視する、とんでもない治安攻撃だ。断じて許すわけにはいかない。
 少年法改悪案の主な内容は、@14歳未満の触法少年の事件で、警察に捜索・押収などの強制調査権を付与、A触法少年と疑うに足りる相当の理由がある場合、警察の任意調査権を明記、B少年院送致の下限年齢を現行の14歳から「おおむね12歳」に引き下げ、C保護観察中の遵守事項を守らない少年を少年院などに送致、D身柄を拘束された少年に国費で弁護士(付添人)を選任できる制度を導入、などだ。
 法務省は、今回の改悪案の提案理由を「少年非行の現状にかんがみ、これに適切に対処するため」としている。しかし、触法少年(14歳未満で刑法犯に問われる行為をした少年)事件や虞犯(ぐはん)少年(将来罪を犯すおそれのある少年)事件が増加しているという事実はない(図参照)。デマゴギーで少年法、児童福祉法の理念を後退させ、厳罰が必要だとして警察の調査権限拡大を狙っているのだ。
 @について。まず現行法では、触法少年の行為は犯罪にあたらないとされ、触法少年を警察が「捜査」することはできない。警察が触法少年を発見した時は、児童相談所に通告し、児童相談所が調査してきた。
 児童相談所が少年に対して適切な福祉的働きかけをする前提として家庭裁判所の調査、審判を経ることが望ましいとした場合のみ、審判を求めることができた。
 だが改悪案は、警察に触法少年に対する強制調査権を与えた。刑事責任を問えない触法少年事件で、警察は家宅捜索、押収をすることが可能となったのだ。少年を呼び出して質問することもできると明記した。
 Aについて。「触法少年であると客観的な事情から合理的に判断して疑うに足りる相当の理由がある者」への警察の任意調査権が明記された。
 だが、大人や弁護士が立ち会わない警察署の密室で、強権的な警察官に対置させられた小学生や中学生が一個の主体的な人間として取り調べに立ち向かうことはきわめて困難だ。警察・検察の自白強要が横行し、大人ですらうその自白をさせられている今日、少年法改悪で少年の冤罪事件が増えることは確実となる。
 Bについて。小学生も少年院へ送致・収容することが可能になる。

 「やむを得ない」と賛成する安倍

 長勢甚遠法相は衆院法務委の質疑で「おおむね」の幅について「1歳程度」と答弁。処分を決める家庭裁判所の判断次第では、11歳の小学5年生も少年院に送られる。
 現行法では家庭裁判所の決定で少年院に送致される少年は14歳以上だ。
 少年院は、一般社会とは異なる集団的規律を強制し、少年に規範遵守の精神を育てることを目的としている。
 重大事件を起こすに至った少年ほど、人格形成の過程で自分が一人の人格として尊重される経験を経ておらず、対人関係を形成・維持することが不得意であることが多い。一般社会で生活をする中で人格形成の過程を自然にたどりながら、自分と社会との関係を振り返るという経験こそが必要である。だが、軍隊的な規律が重視される人工的な環境の少年院では、そのような経験はまったく不可能である。
 このような配慮を投げ捨て、直ちに少年院に送致するというとんでもない処置を加えるのが少年法改悪案だ。小学生も少年院送致の対象になることについて安倍首相は18日、「少年犯罪が非常に凶悪化する中、被害者の気持ちを考えれば、やむを得ない」と肯定した。
 Cについて。「非行を犯すおそれがある」とまでは言えないのに、保護観察中の遵守事項=約束を守らず、警告に従わなかったというだけで、家裁決定で少年院に送致される可能性が出てくる。「約束を守らなければ少年院に送致する」という脅しで、保護司と少年の信頼関係を切断しようとしているのだ。

 2000年にも少年法改悪

 少年法は2000年の改悪で、刑事責任を問いうる年齢が16歳から14歳に引き下げられた。それまで家庭裁判所送致が原則だったが、検察官送致(あらかじめ起訴されることを見越している)が新設された。実際、検察官送致が増加し、少年の身柄の拘束も長期化し、刑事裁判で実刑となり、少年刑務所に送られる少年が急増している。
 また、被害者に配慮した規定が設けられ、被害者の意見、感情が処分決定に影響を与える枠組みが作られた。
 少年を犯罪に至らせた真相を、少年を中心において時間をかけて解き明かし、少年の将来のために内省を深める伴走者として大人が関与するという、少年法の理念は破壊されつつある。
 1922年、「旧」少年法が成立した。1948年7月1日、「新」少年法が公布された。新少年法によって、行政機関である少年審判所は廃止され、少年に対する保護処分は司法機関である家庭裁判所が行い、旧法の検察官先議、刑事処分優先をやめ、裁判官先議・保護処分優先にし、適用年齢を18歳未満から20歳未満に引き上げた。
 少年事件に対する検察官権限は大幅に縮小されたことになるが、これに対する反対意見は根強く、1999年に「少年法の一部を改正する法律案」が国会に提出され、2000年に改悪された。5年後に見直すという付帯決議がつき、今回の改悪案が提示された。

 根本問題は資本主義の打倒

 今回は、2003年7月に起こった12歳の少年による「長崎幼児殺害事件」などをセンセーショナルに取り上げることで大改悪を狙っている。
 03年7月、政府の青少年育成推進本部副本部長、防災・構造改革担当大臣・鴻池祥肇は「打ち首」発言で資本家階級の思想を明らかにした。
 「少年犯罪はまず親の責任である。14歳未満の子どもが犯罪者として扱われないのであれば、犯罪を行った子どもの親を全市中引き回しの上、打ち首にすればよい。それが道徳教育になる」
 少年犯罪の背景となっている社会の問題について1ミリの思慮もない。支配階級としてふんぞり返り、労働者の子ども、労働者家族、労働者階級をいかに従順にさせ支配するかということだけに意識が向いている。今回の少年法改悪案は、階級支配の危機と破産を警察権力の強化で糊塗(こと)し、のりきるために出されているのだ。
 少年犯罪は、帝国主義社会、資本主義社会の抑圧、暴虐、差別、虚偽、欺瞞(ぎまん)の中で苦しみ悩む少年の怒りの暴発として引き起こされている。こうしたことは少年に限らない。戦争動員の始まり、大失業、低賃金・長時間・過重労働、貧困が家庭の崩壊、親による子どもの虐待などを生み出している。
 犯罪の根源は帝国主義にある。命脈の尽きた帝国主義、最末期の帝国主義、腐臭を放つ帝国主義にとどめを刺さなければ何も問題は解決しない。
 極右安倍政権―日本帝国主義を打倒し、労働者階級・労働者家族の解放をかちとろう。改憲阻止・日帝打倒! 少年法改悪反対・共謀罪新設阻止!
 (吉田まゆ)

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週刊『前進』(2292号6面4)(2007/04/23 )

 星野文昭同志釈放へ

 バースデーカード送ろう

 星野文昭同志は、この4月27日、61歳の誕生日を徳島刑務所で迎える。星野同志がまたも獄中で誕生日を過ごすことは、われわれにとって痛恨の極みである。
 1月以来、星野同志、家族、救う会の人びとは、一時的な「刑の執行停止」を求めて闘ってきた。重病の母・美智恵さんへのお見舞いを実現させようと、全国から寄せられた上申書署名は3000筆を超えた。再審請求10万人署名も、9万8000筆に達している。この力で東京高検と徳島刑務所、裁判所を追い詰めてきたが、まだ刑の執行停止をかちとるには至っていない。
 3月14日、最高裁は不当にも特別抗告を棄却した。裁判所がどう決定しようが、星野美智恵さんの病状は良くなっていない。執行停止によるお見舞いの必要は、ますます大きくなっている。絶対に、このまま引き下がることはできない。次の闘いに向けて準備を進めよう。全国で闘う人びとと力を合わせ、なんとしても星野同志の執行停止をかちとろう。
 4月27日の誕生日に向けて「バースデーカード」を送ろう。執行停止、再審―無罪、即時釈放の決意をカードに込めよう。
 特に、星野同志とともに闘った同世代の同志に訴える。多忙な中でも、半日を星野文昭同志を考える日とし、その思いをカードに託して送ってほしい。もちろん、若い同志のカードも重要だ。
 4月27日、色とりどりのカードで徳島刑務所を塗り替えよう。

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週刊『前進』(2292号6面5)(2007/04/23 )

 一億二千万共謀の日4へ

 4月28日、「一億二千万共謀の日4」行動で、現代の治安維持法=共謀罪の新設を阻もう。
●行動方針
12時〜JR秋葉原駅中央口
12時〜東武東上線朝霞駅前
14時半〜有楽町マリオン前リレートーク

 

 

 

 

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