ZENSHIN 2004/10/18(No2170
p06)
|
週刊『前進』(2170号1面1)(2004/10/18)
ブッシュ打倒のワシントン百万人デモとともに 10・17MWM−11月大集会へ
日米韓の国際連帯の旗のもと青年労働者を先頭に総決起を
米軍再編・安保強化を粉砕しよう
アメリカ労働運動と国際労働運動の新時代を切り開く10・17MWM(ミリオン・ワーカー・マーチ)まであと1週間となった。ILWU(国際港湾倉庫労組)ローカル10のランク・アンド・ファイル(現場組合員)の呼びかけから始まったこの運動の画期的な意義を明らかにし、MWMへの連帯と共同行動に総結集しよう。そして、「日本でもMWMを実現しよう」と訴えて11・7労働者集会の労組賛同を広げ、教育労働者、青年労働者を先頭に万余の大結集をかちとろう。韓国では民主労総が11月ゼネスト闘争に立とうとしている。米韓労働者の闘いと国際連帯のスクラムを組み、戦争と民営化の攻撃をはね返そう。普天間基地のヘリ墜落に続く米軍F15戦闘機の空中接触事故と緊急着陸を弾劾しよう。沖縄人民の闘いと固く結んで、普天間基地即時撤去、名護新基地建設阻止へ闘おう。
第1章 不死鳥のように闘うアメリカ労働者階級
MWM参加禁止命令まで出したAFL―CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)の反動的指導部の制動と敵対をのりこえ、全米の主要な戦闘的労組が続々とMWMに大合流している。AFSCME(アメリカ州・郡・市従業員労組)のニューヨークなど主要な地区協議会・支部、教員組合の全国教育協会、アメリカ郵便労働者組合、ニューヨークの都市交通の2大組合、AFL―CIOカリフォルニア州連盟、世界産業別労組(IWW)など総計数百万人の組合員を擁する労働組合がMWM賛同を決定している。
さらに8月29日に50万人が結集した反ブッシュ闘争の呼びかけ団体であるANSWER連合や平和と正義のための連合(UFPJ)などの諸団体が、また個人では、米議会でただ一人イラク開戦に反対したバーバラ・リー下院議員、俳優のダニー・グローバー氏、ノーム・チョムスキー教授、歴史家のハワード・ジン氏などの著名人が賛同し、すそ野を広げている。海外からは日本の動労千葉とイギリスの鉄道・海運・運輸労組(RMT)が賛同し、合流する。
「われわれ自身の計画表にもとづき労働者を動員する時が来た。特権を持つ少数者への従属を断ち切り、アメリカの政治過程における彼らの独占に終止符を打とう」(MWM組織委員会)―ついにアメリカ労働者階級が民主・共和の二大政党支配による究極のブルジョア独裁支配(ブッシュかケリーかという二者択一の枠)をうち破り、自分たち自身の利害を表したスローガンを掲げ、アメリカ・プロレタリア革命の主体として歴史の表舞台に登場しようとしている。そのスローガンは「国民皆保険」「権利としての医療保障」「最低賃金と年金の保障」という切実な要求に始まり、現代のアメリカ労働者階級とすべての被抑圧民衆の死活的な利害がかかったものである。そのすべての要求が、アメリカ帝国主義・ブルジョアジーの階級的利害と非和解的に対立しており、現代アメリカ社会の根底的変革に直結している。本質的にアメリカ革命の過渡的綱領そのものだ。
アメリカの労働組合運動は、80年代のレーガン反革命以来の官民一体の労組絶滅攻撃と、AFL―CIO既成指導部の底なしの屈服・帝国主義の完全な手先化のもとで後退を重ねた。しかし、そのどん底から不死鳥のようによみがえったのである。01年9・11以後の戦争と民営化、社会保障のすさまじい解体、愛国者法T・Uによる戦時下の治安弾圧の激化が、労働者階級の憤激を底の底から爆発させ、AFL―CIOの日和見主義・排外主義の潮流と決別した新たな階級的潮流をつくりだしたのだ。そこには「マルクス主義のベース」を保持し、戦闘的階級的原則を貫いてきたILWUローカル10などのランク・アンド・ファイル運動があったのだ。
連合支配下の日本の労働組合・労働運動の現状は確かに「惨たんたるもの」がある。そして日帝・小泉=奥田の戦争と民営化、治安弾圧攻撃は、一切の労働組合と労働者党を絶滅しようとする激しさをもって襲いかかっている。しかし情勢が絶望的だというのはまったくの間違いだ。AFL―CIO支配下のアメリカ労働運動は、もっと最悪の帝国主義労働運動に制圧されていたのであり、労働組合組織はもっとひどい打撃と困難の中にあった。戦争と民営化の攻撃も治安弾圧も日本の比ではない徹底性をもって遂行されてきた。しかし、その中でILWUローカル10を始めとする戦闘的組合の下部一般組合員が踏ん張りぬいたことによって一気に情勢は塗り替えられていったのだ。つまり日本の労働者だってやれるということだ。
11・7労働者集会を呼びかけている動労千葉、全日建運輸連帯労組関西生コン支部、全国金属機械労組港合同の3労組は、まさに日本のILWUローカル10そのものの位置にある。この3労組の呼びかけと闘いを支持し、ともに闘おう。ここに日本におけるMWMの実現、数百万単位での新たな階級的労働運動の潮流を生み出す限りない可能性、現実性がある。このことを確信して10・17MWM連帯行動へ、11・7へ労働組合の大結集を実現しよう。
第2章 米帝のイラク侵略戦争の凶暴化と泥沼化
MWMはアメリカ帝国主義打倒のプロレタリア革命の現実性を示す。米帝打倒・国際帝国主義打倒のもうひとつの決定的な戦線が、イラクの反米レジスタンス闘争である。
10月1日から3日にかけ、米軍はイラク中部の都市サマラにF16、F14戦闘爆撃機を投入して大規模な無差別空爆を行い、地上からは5000人の部隊を侵攻させた。ファルージャにも空爆を行った。従来にもまして残虐で大規模なものだった。サマラでは未明から8時間にわたって空爆を行い、3万9千個もの対人クラスター子爆弾をばらまき、高熱の火炎で周囲を焼き尽くすナパーム焼夷弾などを数トンも投下した。米軍は「武装勢力125人を殺害」などと「戦果」発表をしているが、大半の犠牲者は多数の子どもを含む市民である。
この軍事的凶暴性は米軍の優位性を示すものではなく、逆にその敗勢の決定的深まりを示している。米軍の占領支配は根底的な崩壊の危機に直面し、かいらい暫定政府による来年1月の「国民議会選挙」を全土で行うことなどおよそ不可能になっている。
レジスタンス勢力は、互いの協力態勢を固め大攻勢を開始した。9月25日から10月1日の1週間で、レジスタンス勢力は総計609もの攻撃作戦を実行した。9月29日にはバグダッド南部の米軍基地にレジスタンスが大規模攻撃をかけ、米軍は基地を放棄して逃走した。撤退する米軍に自爆戦闘が追い打ちをかけ15人の米兵が戦死した(レジスタンス側の情報サイト通信員の報告)。米軍はこうしたレジスタンス勢力の大攻勢に追いつめられて、サマラ、ファルージャへの見境のない報復攻撃に出てきたのである。
米軍は一切の展望を喪失し、米兵士の大量脱走・反乱情勢が進行している。しかし、米帝・米軍はイラクから撤退することはできない。撤退すればイラクのみならず中東全域の失陥、独仏・EU帝国主義との石油争奪・市場再分割をめぐる争闘戦における決定的敗北を招き、米帝の世界支配全体も崩壊してしまうからだ。まさに「死地」と化したイラクで立ち往生する米帝をアメリカ労働者階級を先頭とする世界の労働者階級とイラク人民とがともに手を取って打倒する、世界革命の決定的チャンスがいま到来しているのだ。
第3章 日米枢軸こそ侵略と戦争の最大の元凶
米帝ブッシュの最大の同盟者こそ日本帝国主義・小泉政権だ。ブッシュ=小泉の「日米枢軸」こそ世界に侵略と戦争の災禍をまきちらす最大の元凶である。10月4日、小泉の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」は、新「防衛大綱」のベースとなる報告書を提出した。それは、対テロ戦争を日米同盟の柱として位置づけ、それに対応して新たな「日米安保共同宣言」、新たな「ガイドライン」を策定すべきだと提言している。「専守防衛」などという概念は完全に吹き飛ばし、先制攻撃能力の形成、海外派兵の「本来任務化」「恒常化」、武器輸出三原則の見直しと弾道ミサイル防衛開発、集団的自衛権をめぐる憲法問題の早期解決(9条改憲)などを打ち出している。
そしていよいよ全面的に米軍トランスフォーメーションが動き始めた。まったく許せないことに小泉は、沖縄の相次ぐ事故をもトランスフォーメーション推進のテコにし、「沖縄の負担軽減」などと言いながら、沖縄―本土の米軍基地・自衛隊基地のより実戦的な統合・再編・強化を推し進めている。小泉はその中心として普天間基地の辺野古移設をあくまで強行しようとしている。沖縄のあいつぐ事故は、沖縄がイラク戦争出撃基地となり戦場と直結しているからだ。宜野湾市街地をファルージャやサマラなどに見立てて低空飛行訓練を繰り返していたから、あのヘリ墜落の大事故が引き起こされたのだ。
ブッシュ=小泉の日米枢軸は、危機の突破をかけて侵略戦争の世界大的拡大へ突き進もうとしている。トランスフォーメーションはその体制づくり以外の何ものでもない。沖縄、岩国、佐世保、北富士、横須賀、横田を始め全国で反基地闘争を高揚させよう。
帝国主義の体制末期的危機から発している〈戦争と民営化>の攻撃を粉砕する道は、米韓労働者とともに帝国主義を打倒する階級的労働運動の新潮流を力強く登場させることにある。MWMが全米の労働者階級に希望を与え、新たな潮流の結集軸となっていったように、11・7労働者集会を日本のすべての闘う労働者に勝利への展望と確信を与える場としよう。「日の丸・君が代」攻防、郵政民営化阻止決戦、都労連を始め自治体の大リストラ・大民営化攻撃との闘い、国鉄1047名闘争の4大産別決戦の勝利を切り開こう。あと4週間、あらゆる組合に大胆に分け入り、11・7労働者集会への賛同と結集を呼びかけよう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号1面2)(2004/10/18)
普天間閉鎖、新基地阻止へ 県民大集会 小泉・稲嶺に怒り
沖縄・那覇で3500人
辺野古移設を進めながら「基地の本土移転」とは! 小泉のペテン発言に怒り充満(10月2日 与儀公園)
10月2日夕、沖縄・那覇市の与儀公園で「普天間基地の即時閉鎖・辺野古移設反対! 県民大集会」(主催・基地の県内移設に反対する県民会議)が開かれ、3500人が結集した。小泉は1日、「米軍基地の本土移転を進める」が「辺野古は堅持」と発言、どこまで沖縄県民をペテンにかけるのか! 集会では日米両政府への怒りが噴出した。
名護市辺野古の「命を守る会」のおじい、おばあが真ん中に陣取った。都市型戦闘訓練施設建設と闘う金武町伊芸区からも多くの住民がのぼり旗・はちまきで参加。伊江島の旗も翻っている。普天間で辺野古で金武町で地元住民とともに闘う自治労、教組など多くの組合員が結集した。
県民会議の山内徳信共同代表は、「ヘリ墜落事件は沖縄が米軍の軍事植民地であることを示した。反基地闘争は宜野湾市民の闘いのように闘わなければならない」と訴えた。
続いて伊波洋一宜野湾市長が「9月12日の3万人の結集が普天間を動かす。稲嶺県政が辺野古移設という間違ったメッセージを発している限り、県民の本当の声は日米両政府には伝わらない」と訴えた。
ヘリ基地反対協の大西照雄共同代表は、沖縄担当相に就任した小池百合子が「沖縄島民の皆さん」と発言したことを批判、167日となった辺野古の座り込み闘争の意義を訴えた。「私たちの闘いは花火のように華やかではないが、蚊取り線香のように継続していく闘い。この座り込みが世論を動かしていく」
池原政文伊芸区長は、「戦後60年近く米軍基地に土地の80%近く取られてきた。改善するからがまんしろと言うが、もうがまんできない」と訴え、施設撤去まで闘うと断言した。キャンプ・ハンセン前での抗議行動も130日を超えた。
続いて11月14日の那覇市長選に立候補する高里鈴代さんが、辺野古移設阻止・普天間基地閉鎖を闘う決意を明らかにした。
集会決議では、@那覇防衛施設局によるボーリング調査強行実施糾弾! 即時中止、A普天間基地の辺野古への移設反対! B米軍ヘリ墜落事故糾弾! 原因究明と情報公開、被害者への完全補償、C普天間基地の即時閉鎖と無条件返還、D金武町キャンプ・ハンセンへの都市型戦闘訓練施設建設の即時中止の5項目が提案され、参加者の総意で採択された。最後に、県民会議の佐久川政一共同代表の音頭で団結ガンバローを三唱し、国際通りから県庁前までデモ行進を行った。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号1面3)(2004/10/18)
沖縄・厚木の闘いと連帯 原子力空母母港化に反対 青年労働者が大挙結集
10月2日午後、神奈川県横須賀市のヴェルニー公園で、「原子力空母横須賀母港化を許さない10・2全国集会」が開かれた。原子力空母横須賀母港化を許さない全国連絡会が主催した集会には秋晴れのもと、3800人が集まった。
自治労は全国動員で結集した。700人の大隊列で登場した神奈川県本部、その半数が「ヨコスカ原子力空母母港化阻止/自治労神奈川青年部」の大横断幕で登場した青年部組合員。日教組、私鉄総連、東交、全水道、全逓(JPU)、国労など林立した組合旗が光に透けてまぶしい。神奈川労組交流センターは、11・7労働者集会と10・17東京行動を呼びかけるビラ4000枚をまききった。
集会では、主催者の宇野峰雪共同代表が「73年のミッドウェーも当初3年だけと言われた。原子力空母の母港化を認めたら50年、100年続く。なんとしても2008年の原子力空母の母港化を阻止しよう」と訴えた。沖縄から駆けつけた平和運動センターの山城博治事務局長は、沖縄での同日集会を紹介し、「もし大惨事や有事が起きれば米軍当局は装甲車や戦車を動員して住民を排除する。これが戦争だとヘリ墜落事故が示した。戦争への道を進む小泉内閣を打ち倒そう」。
横須賀から原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会共同代表の呉東正彦弁護士、各政党、原子力資料情報室の沢井正子さんが口々に原子力空母の危険性を暴露した。連帯あいさつでは、岩国基地へのNLP(夜間発着訓練)移転反対やイラクからの自衛隊撤退が訴えられた。
同時刻、米軍厚木基地への最新鋭戦闘攻撃機FA18スーパーホーネット追加配備に対して緊急闘争に決起した厚木基地爆音防止期成同盟・第3次厚木爆音訴訟団からアピールが届いた。「心を一つにして闘いぬこう」との呼びかけに満場の拍手がこたえた。
日本政府、米軍への申し入れ文を登坂自治労青年部長が提案、横須賀港に原子力空母を配備しないこと、普天間基地即時返還、辺野古への代替基地建設反対、低空飛行や夜間発着訓練の中止など6項目が拍手で確認された。その後、基地の街にデモ行進に出た。
基地ゲート前では立ち止まってシュプレヒコール、米兵たちにイラク戦争をやめろと呼びかけた。ピースサインで応じる米兵家族。沿道では中学生たちがこぶしを突き上げて「基地ハンターイ」。沖縄と連帯する横須賀闘争が新たな一歩を力強く踏み出した。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面1)(2004/10/18)
動労千葉定期大会 JR体制打破、組織拡大へ熱気
原職復帰の勝利に確信
長田書記長を選出 11・7総決起体制確立
国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)は10月3〜4日、第33回定期大会を千葉市のDC会館で開催した。「反合・運転保安闘争を強化し、第二の分割・民営化攻撃打ち砕こう! JR体制を打破し、組織拡大を! 労働者の国際的団結で、大失業と戦争の時代に反撃を! 新世代の動労千葉を創造し、05年を闘う労働運動の復権―高揚の年にしよう!」をメインスローガンに掲げ、熱気あふれる討論で闘う運動方針を決定。また、長田敏之書記長代行を書記長に選出し、11・7労働者集会への総決起体制を確立した。
「堤防決壊」の展望を開いた
君塚正治副委員長が「小泉構造改革の流れは国鉄分割・民営化から始まっている。われわれはこれとずっと闘い続け、今春闘で一定の風穴を開けた。この実を結ぶのが今大会の課題だ」と開会を宣言した。
田中康宏委員長があいさし、「この1年間で、一つは、中村書記長を失い、大きな困難に直面した。しかし動労千葉は困難に直面するたびに強くなってきた。長田書記長代行が中心軸になる大きな勝利をかちとった。もう一つは、17年目にしてついに分割・民営化体制の厚い壁に穴を開け、強制配転者を原職復帰させる勝利をかちとった。アリの一穴から堤防決壊させる展望を開いた」と述べると拍手がわき起こった。
動労千葉は、春闘ストライキのさなかに1人、9月に2人が検修職場に原職復帰し、駅や売店をたらい回しにされてきた組合員が今後、さらに原職復帰する予定だ。田中委員長は「労働組合の可能性と動労千葉の路線の正しさ、社会の主人公である労働者の力を確信した」と語った。4年間の春闘ストや、シニア制度で差別され定年後の仕事を奪われることに対して、これを拒否して闘った結果、検修・構内業務の外注化を阻止し、要員問題、安全問題、カクマル問題という危機と矛盾を敵の側に強制する中でかちとった成果だ。
田中委員長はさらに力を込めて訴えた。
「動労千葉の闘いが労働運動全体の嵐の目となる状況をつくってきた。労働運動の分岐・流動や高揚が始まり、そのキャスティングボートの位置に動労千葉がいる。3・20イラク開戦1周年の統一行動にストでインパクトを与え、教育労働者が石原都政に対して立ち上がった。1047名闘争でも、4月13日、動労千葉争議団、国労闘争団、全動労争議団が団結した集会に3500人が集まった。そして、国際連帯が実のあるものに発展しつつある。10月17日にはILWU(国際港湾倉庫労組)ローカル10などの呼びかけでワシントンで百万人労働者行進(MWM)が行われる。日本でも、憲法改悪や教育基本法改悪、有事立法の発動、日米安保のエスカレーション、骨太方針による郵政民営化、公務員に対する大民営化、非正規雇用化などの攻撃に対して労働者の新しい闘いが始まり、歴史が動く情勢が来た。この時に1047名闘争を3争議団・闘争団の団結を基礎に発展させなければならない」
その上で、最後に3点について強調した。「@何より一切を組織拡大にしぼることだ。これは絶対に可能であり、日本労働運動の再生に大きなインパクトを与える。A第二の分割・民営化攻撃に対し反合・運転保安闘争を強化し、1047名闘争勝利に向けて闘うことだ。B闘う労働運動の再生を本格的な規模で実現するため、11・7労働者集会をアメリカ、韓国の労働者と連帯して成功させよう」
1年間の経過を繁沢敬一副委員長が報告。運動方針案を長田書記長代行が提案し、特に「チームプレーで『平成採』の労働者に真摯(しんし)に声をかけ、組織拡大に最大限の取り組みを」と強調した。
反合・運転保安闘争の強化へ
討論では、本線運転士への原職復帰や組織拡大の実現に向けた意見が相次いで出された。また、レール破断などの安全の危機や乗務員などの要員不足の問題に対する反合・運転保安闘争、シニア制度撤廃・定年延長や、貨物の賃金制度改悪、基地の統廃合などに対する闘争の強化を求める意見などが出された。分割・民営化の矛盾が噴き出し、組合員が活性化していることを感じさせた。
鉄建公団訴訟の準備を提起
田中委員長は、総括答弁で「われわれにとってチャンスだ。カクマルと当局の結託体制を今こそ突き崩そう」と訴えた。また、MWMで動労千葉が海外代表として発言すること、鉄建公団訴訟の準備を進めていることを明らかにし、「動労千葉は11・7に勝負をかける」と締めくくった。
運動方針を満場一致で決定し、「武力攻撃事態法に基づく『指定公共機関』160法人の指定に強く抗議する!」と「教育基本法―憲法改悪阻止、小泉反動内閣打倒に向けた決議」を採択した。そして、スト権を満票で確立し、恒常的なスト体制で闘うことを確認した。満票で信任された長田書記長が「重責が肩にのしかかっているが、今こそ労働者が立ち上がる時だ。全組合員の総決起を訴える」と述べると、参加者は大きな拍手でこたえた。
大会には多くの来賓が駆けつけ、三里塚芝山連合空港反対同盟の北原鉱治事務局長、弁護団の葉山岳夫弁護士、都政を革新する会の長谷川英憲元都議、スタンダード・ヴァキューム石油自主労組、動労水戸、動労千葉家族会、水野正美勝浦市議、中村俊六郎御宿町議らがあいさつした。
動労千葉とともに、11・7全国労働者総決起集会への大結集をかちとろう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面2)(2004/10/18)
国労鶴見駅事件 解雇撤回の勝利判決 元職復帰をJRに命じる
9月27日、東京地裁民事第36部(難波孝一裁判長)は、国労鶴見駅分会不当労働行為事件で、中労委命令の取り消しを求めるJR東日本の請求を棄却する判決を下した。
この国労完全勝利判決は、解雇撤回を掲げて原則的に闘いぬくことの勝利性と展望を鮮やかに示した。
この事件は、90年11月、国労鶴見駅分会の組合員が同駅首席助役による侮辱的言動に怒ってもみ合いとなったことを口実に懲戒解雇され、それを前後して分会副委員長、書記長がベンディング事業所に強制配転されたというものだ。国労はこれを分会への組織破壊として救済を申し立て、神奈川地労委および中労委の全面勝利命令を得ていた。
今回、東京地裁は「解雇などは国労を弱体化する目的でなされた」と認定してJRの訴えを全面的に退けた上、緊急命令を付して中労委命令の即時履行をJRに迫っている。その内容は懲戒解雇の撤回と強制配転者の元職復帰だ。命令不履行の常習犯であるJRは、厳しく断罪されたのだ。
JR発足後の事件で、解雇撤回の判決が出されたのは初めてである。JRの首切り責任は明白になった。
また判決は、国労バッジ着用などを口実とした分会役員のベンディング事業所への配転についても、明確に不当労働行為と断じた。
この勝利は、何よりも不当に解雇・配転された当該組合員の団結と不屈の闘いによって切り開かれた。採用差別に対して解雇撤回闘争を続ける1047名と並び、JR本体の国労組合員にも不屈の労働者魂は脈々と受け継がれている。国労再生の展望はここにある。
採用差別に始まる国家的不当労働行為は、JR職場では大量の配属差別や理由なき処分の乱発として襲いかかった。判決は、不当な懲戒解雇の口実となったもみ合いが、助役による国労組合員への侮辱的発言によって引き起こされたことを明確に認定した。セクシャルハラスメントに類する挑発的言動を用いてまで組合員を解雇に追いやったJRの所業は暴かれた。JR体制下で幾多の辛酸をなめさせられてきた多くの国労組合員にとって、この判決は胸のすくようなものであることは間違いない。
4党合意の受け入れ以来、国労本部は闘争団の切り捨てに走るとともに、配属差別などについてもJRの責任追及をことごとく投げ捨てている。その典型が01年12月に国労東日本エリア本部が強行した東京7電車区事件など配属差別4事件の東京地裁での「和解」だった。中労委の救済命令を自ら放棄する「和解」によって、配属差別された組合員はなんら救済を受けることなく切り捨てられた。今年9月16日にも、東日本本部は配属差別12事件について「紛争案件をなくし労使正常化を図る」と称して屈服的和解を強行した。これらはJRに不当労働行為を居直らせているだけだ。
今や国労本部=酒田・革同執行部は連合合流路線を露骨にし、西日本の革同は「1047名は鉄道復興支援のためイラクに行け」と叫んでいる。JR資本への屈服の先にあるのは侵略戦争への協力なのである。
だが、今やJR体制の矛盾は臨界点に達しつつある。動労千葉は春闘3波ストを頂点とした職場からの闘いを貫き、分割・民営化以来の不当配転者の原職復帰を確定させる闘いに入っている。JR総連カクマルとJR資本の結託は崩壊の時を迎えている。
こうした情勢下でかちとられた鶴見駅不当労働行為事件の勝利判決は、何よりも鉄建公団訴訟を闘う闘争団員への限りない激励だ。今こそ国労闘争団・全動労争議団・動労千葉争議団の1047名が団結を固めて鉄建公団訴訟に立つ時だ。
国鉄闘争をめぐる分岐と流動はこの勝利によって一層加速される。当該組合員の闘いを支持しよう。11・7労働者集会への国鉄労働者の大結集をかちとり、勝てる闘いを敗北に押しやる酒田執行部を打倒して国労再生の道を押し開こう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面3)(2004/10/18)
福岡 国労弾圧粉砕へ 不当逮捕2年を迎え集会
10月3日、許さない会・九州は福岡市の福岡建設会館で国労5・27臨大闘争弾圧不当逮捕2周年の集会を開きました(写真)。労働運動の大先輩や不当労働行為と全力で闘う労組など100人が参加しました。
司会は国労闘争団員と教育労働者が行いました。
許さない会・九州の岩崎隆次郎代表が主催者あいさつをし、「ビデオを見たら裁判官も失笑せざるをえない。暴行などなかった。政府に反対する者は圧殺するという攻撃を打ち破ろう」と訴えました。基調報告をした手嶋浩一事務局長は、「この弾圧がやみに葬られたら大変なことになる。裁判の中でデッチあげを明白にしてきた。無罪をかちとることが戦争への道を阻む」と訴え、「許さない会の会員の組織化、無罪要求10万人署名を一層強化しよう」と呼びかけました。弁護団の大口昭彦弁護士が、検察側が証拠申請したビデオの映像を指して「あれが刑事事件に値するのか」と声を強め、「国家権力と国労本部の考えは構造的にまったく同じ」「この裁判は労働運動の再生に直結している」と述べて、11・7労働者集会への参加を呼びかけました。
地元・福岡の井下顕弁護士が「憲法改悪と労働運動」と題して講演し、「憲法改悪が俎上(そじょう)に上った今ほど労働者の団結権を守ることが必要な時はない」と訴えました。
被告団長の松崎博己さんは「アメリカでは『革命』が起きている。日本でも続こう。小泉の攻撃に血を流して闘うことが大事だ」と強調しました。被告の羽廣憲さんは「裁判闘争勝利の中に国労の再生、労働運動の再生がある。勝利まで闘う」と決意を述べました。
被告の家族、三つの闘争団、高教組などの教育労働者、自治体労働者、北九州と長崎の許さない会、民間の二つの労組がアピールをし、闘争団員は国労手帳にある「国労綱領」と「弾圧への心得」を読み上げ、これを裏切る国労本部を徹底批判しました。
集会は、分岐・流動・再編・高揚情勢に入った労働運動の結集軸として大きな注目を集めました。11・7労働者集会への総決起を誓い合う場になりました。
(投稿/九州 I・S)
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面4)(2004/10/18)
鉄建公団訴訟 “一審勝利”へ決意 分割・民営化を撃つ証言
鉄建公団訴訟は10月7日の口頭弁論から原告側証人立証に入った。一審勝利判決に向けて、国鉄分割・民営化を撃つ重大な攻防を迎えた。7日は、国労本部元書記長の宮坂要さん、帯広闘争団の樋口浩二さんと前田浩則さん、姶良(あいら)・伊佐闘争団の溝口松男さんが証言に立った。宮坂さんは国鉄分割・民営化当時の国労に対する組織破壊攻撃の全体像を暴き、樋口さん、前田さん、溝口さんはそれぞれに自らが体験したJR不採用を怒りを込めて弾劾し、清算事業団の「就職あっせん」はなんら実質的内容のないものだったことを告発した。
東京地裁には傍聴を求めて延べ300人が集った。
これに先立つ6日、国鉄闘争共闘会議は中野ZERO小ホールで「うつぞ鉄建!リストラの原点をあばく総決起集会」を開いた。
主催者としてあいさつした国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長は、「鉄建公団訴訟に建交労、動労千葉も続こうとしている。1047名の統一の強化に総力であたる」と述べ、「国鉄闘争に勝利し日本の労働運動を再生させよう」と訴えた。
鉄建公団訴訟主任代理人の加藤晋介弁護士が「勝利判決を取る意欲がなければ勝利への展望は開けない」と奮起を促した。
全動労争議団(建交労)の渡部謙三副団長が「政府、鉄建公団を相手とした訴訟に出ることを8月の争議団臨時総会で確認した。一日も早く訴訟に入って皆さんとともに闘いたい。1047名の大同団結なくして勝利はない。必ず勝ちたい」と決意を述べた。
翌日の証人尋問を控えた宮坂さん、樋口さん、10月18日の口頭弁論で証人に立つ函館闘争団の佐々木勉さんが発言し、「一丸となって勝利を」と呼びかけた。
1047名が団結して鉄建公団訴訟を闘う道は大きく切り開かれつつある。
鉄建公団訴訟原告団の酒井直昭団長の音頭で団結ガンバローをし、翌日の訴訟から始まる攻防に臨む決意を固めた。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面5)(2004/10/18)
『教育労働者の戦争協力拒否宣言』を読もう(下)
動労千葉に学び、帝国主義と対決する教育労働運動を
元教育労働者 石崎彰彦
帝国主義批判を貫いて闘う
本書は、教育労働運動に帝国主義批判を貫こうと提起しています。教育問題を教育という視点だけから見るのではなく、帝国主義の攻撃全体の中でとらえること、今進められる「教育改革」も帝国主義の危機ゆえの攻撃だという視点をしっかり持つことが重要です。
帝国主義の危機は、今や世界戦争をしなければ延命できない、労働者を食わせてもいけないところまで深まっています。こうした帝国主義の危機ゆえに「教育改革」攻撃が吹き荒れている。その方向性は大きく二つ。一つは、日本を戦争国家に改造するための侵略教育への抜本的な転換です。
教育基本法改悪の核心は「お国のために命を投げ出せ」という戦前同様の教育の復活です。そのためには教育労働者の抵抗を完全に封じ、侵略教育の積極的な担い手にさせなければならない。「日の丸・君が代」攻撃も、教育労働者を子どもたちを戦場に送り出す先兵にするための攻撃です。
もう一つは、資本が必要とする労働力を養成するために差別・選別教育、能力主義教育を徹底するということです。
戦後の経済成長期には安価で同質の労働者が大量に必要とされた。それを今、ほんの一部のエリートだけを選別し、それ以外は切り捨てる教育に大転換しようとしています。元文化庁長官の三浦朱門が「落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。百人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。非才、無才には実直な精神だけを養ってもらえばいい」と言っているとおりです。
教育労働者には、1人のエリート育成のために99人の子どもたちを切り捨てる教育を担うのかということが突きつけられています。
襲いかかる全面的な「教育改革」攻撃と対決するために、帝国主義に対する徹底した批判と弾劾の立場が不可欠だということを、本書からぜひ学んでほしい。
労働者の決起に確信持って
本書の結論である「おわりに」は、教育労働者の闘いの勝利のために、動労千葉の労働運動から学ぼうと提起しています。
動労千葉の労働運動から何を学ぶのか。一つめに、戦後の民同労働運動・体制内労働運動をのりこえた階級的労働運動、つまり〈資本主義社会を打ち倒して、労働者の社会をつくろう〉という立場に立った労働運動ということです。
命脈尽きた帝国主義が戦争と民営化の全面攻撃を開始した今、「お前ら資本家の時代は終わった。労働者に権力をよこせ」という立場に立った階級的労働運動以外に、労組が要求のひとつもかちとることはできなくなっています。
「日の丸・君が代」闘争も、日帝が侵略戦争に突っ込んでいく中では、帝国主義による戦争動員と激突して「倒れるべきは帝国主義だ」と血を流して闘いぬく以外に闘いは貫けません。
帝国主義と対決する教育労働運動を全国でつくり出そう。それが動労千葉に学ぶべき核心だと思います。
二つめに、労働者の階級的団結をいかに強化・拡大するのかという立場と実践を貫いた労働運動です。
教育労働者は、団結することがなかなか困難な産別です。子どもの前には支配者として立つ労働だからです。それゆえなおさら意識性を持って、分会・職場を基礎にいかに教育労働者の階級的団結をつくり上げるかという立場を貫くことが、非常に重要です。
三つめに、教育労働者が闘う力を持っていることに絶対的な信頼と確信を持って闘おうということです。
今、日教組の活動家にも「教育労働者は立ち上がらないんじゃないか」という敗北主義があります。しかし今春「日の丸・君が代」闘争で組合本部が圧殺しようとしても数百人が立ち上がった。ここに教育労働者の闘う力が示されています。勤評闘争を始めとする数々の闘いの歴史も、それを十分示しています。これからますます全国の教育労働者は立ち上がる、このことに不動の確信を持とう。
動労千葉の労働運動には日本の労働者階級の決起への確信があります。ここを本当に学んでほしい。そして今、開始された教育労働者の闘いが、日教組運動の再生、日本の労働運動の再生へ必ずつながるということに確信を持ってほしい。
11・6−7万余の結集実現を
最後に本書は、11・7全国労働者集会に教育労働者の総決起を訴えています。
アメリカの百万人労働者行進と連帯して、日本でも11・7集会を成功させ、教基法改悪と改憲、民営化と闘う労働運動の新しい潮流をつくりだそう。「日の丸・君が代」闘争と教基法闘争の発展は11・7集会の大成功にかかっています。
11・6―7連続闘争の先頭に教育労働者が立とう―
―これが本書の結論です。
◆著者/鈴木一久・二本柳実・松田勲◆発行/労働者学習センター(1500円)
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面6)(2004/10/18)
9・18〜10・1
公務員制度改革案提出見送り
民間賃金6年連続の減少/「成果主義」大企業8割
●プロ野球で初めてのスト 労働組合プロ野球選手会は、日本のプロ野球史上初のストライキを18、19の両日行った。(9月18日)
●日本経団連、社会保障2割カット提言 日本経団連は「社会保障制度等の一体的改革に向けて」と題する提言を発表。社会保障全体の給付の20%程度抑制と個人番号制を求めている。(21日)
●民間賃金が6年連続減 民間企業の労働者が昨年1年間に受け取った1人当たりの平均賃金は443万9000円と、前年比3万9000円減で6年連続減少。国税庁「民間給与の実態調査」の結果。(24日)
●国労3組合員に勝利判決 懲戒解雇や配置転換になった国労所属の組合員3人を元職に戻すことを命じた中労委救済命令の取り消しをJR東日本が求めていた訴訟で、国労全面勝利判決。(27日)
●奥田が小泉改造内閣支持 日本経団連の奥田会長が第2次小泉改造内閣について「税・財政・社会保障の一体的改革、郵政改革、三位一体の地方制度改革などを推進し、小泉改革の成果を国民に示すことが求められる」などと全面支持した。(27日)
●不払い残業代、約239億円支払い 厚労省は労基署の是正指導の結果、03年度に全国の1184社が労働者19万4653人に賃金不払い残業(サービス残業)への割増賃金として総額238億7466万円を支払っていると発表。(27日)
●連合と民主党、基礎年金の税方式化などで合意 連合と民主党は、基礎年金部分の全額税方式による一元化や、納税者番号制度の早期導入などで合意。日本経団連提言とほぼ同じ内容。(28日)
●公務員制度改革法案、臨時国会への提出見送り 政府、自民党は臨時国会への提出を目指していた公務員制度改革関連法案の提出を見送る方針を固めた。10月6日に自公でも確認。(29日)
●成果主義、大企業の8割で導入
「成果主義」が大企業を中心に広まっていることが厚生労働省発表の「04年就労条件総合調査」で分かった。(30日)=要旨別掲
●「有給休暇」取得率が過去最低を更新 03年1年間に正社員が取得した年次有給休暇の平均日数は1人当たり8.5日で、与えられた日数に対する取得率は47.4%と過去最低を更新したことが厚労省の調査で判明。(30日)
●8月の完全失業率4.8% 総務省発表の8月労働力調査の結果では、完全失業率は4.8%で前月比0.1ポイント低下。厚労省発表の一般職業紹介状況では、8月の有効求人倍率は0.83倍で前月と同じ水準だった。(10月1日)
●厚生年金保険料値上げ 10月1日から厚生年金保険料が引き上げられた。平均的年収の労働者で、年間約1万円の負担増。(1日)
成果主義に関する厚労省調査の概要
賃金への「成果主義」の導入割合(%)
管理職 管理職以外
平均 48.2 50.5
1000人以上 82.2 78.8
300〜999人 71.7 69.5
100〜299人 58.8 59.4
30〜99人 41.7 45.0
成果主義が「うまく機能している」は16%、「手直し・改善が必要」が75%。
課題として、「部門間の評価基準の調整」54.5%、「評価者の訓練」50.5%、「格差がつけにくい」36.3%、「評価に手間がかかる」24.5%、「チームワークのため個人の評価がしづらい」19.0%。
問題点として、「評価について本人の納得が得られない」31.4%、「勤労意欲の低下を招く」23.8%、「評価システムに納得が得られない」16.8%など。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号2面7)(2004/10/18)
国労5・27臨大闘争弾圧裁判公判日程
第30回 10月19日(火)
第31回 11月8日(月)
第32回 11月29日(月)
午後1時15分、東京地裁
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号3面1)(2004/10/18)
闘う女性は11・7に大結集を
労働者階級の団結こそ帝国主義の差別と抑圧の社会を打ち破る
深沢史子
アメリカの労働者階級と被差別・被抑圧人民は10月17日、首都ワシントンDCを揺るがす百万人労働者行進(MWM=ミリオン・ワーカー・マーチ)を実現しようとしている。イラク戦争がもたらした災厄と、帝国主義の絶望的危機の中での民営化攻撃による権利の剥奪(はくだつ)と生活破壊に対し、「必要なのは体制変革だ」「世界の労働者は団結せよ! 労働者はブッシュ以外に失うものは何もない」と叫んで立ち上がり、米全土にまったく新しい、既成の運動を超える闘う労働運動の歴史を刻もうとしている。この10・17の闘いは、必ずや全世界を揺り動かす闘いに発展するだろう。日本の労働者階級と被差別・被抑圧人民も10・17に連帯して闘おう。「日本における10・17」は、全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉の3労組が呼びかける11月7日の全国労働者総決起集会だ。ここに05年から07年の日本階級闘争を切り開く決定的なかぎがある。全世界で反戦と生存のための闘いの先頭にはいつでも女性労働者や労働者家族を始めとした女性たちの隊列があった。3労組の呼びかけに賛同し、婦人民主クラブ全国協議会など女性団体が、女性労働者、労働者家族、すべての女性に11・7への大結集を呼びかけている。日比谷野音の半分を女性が占めようではないか。
侵略戦争下で女性たちの命がけの決起が始まった
2001年9・11以来の3年間で世界は一変した。
帝国主義(およびロシア・プーチン)は対テロ戦争を掲げ、全世界で戦争を引き起こし、被抑圧民族人民を虐殺しながら自らその侵略戦争の泥沼にはまり込んでいる。「大量破壊兵器の情報は間違っていた」(パウエル米国務長官)としながら、石油と軍需産業のためにイラク戦争と軍事占領をなおも続ける米帝ブッシュ、英帝ブレア。これに賛同し、多国籍軍派兵をさらに1年間延長し、憲法9条の解体をもくろむ日帝・小泉政権。命脈の尽きた帝国主義は、世界に戦争を拡大していく以外に生き延びることができない。
全世界で5千万人と言われる人びとが戦争によって住居を奪われ、その75%から80%が女性と子どもたちだという統計がある。戦争地域の女性たちは、極限的な死と隣り合わせで食糧・水・燃料を調達し、子どもや老人の世話をしなければならず、レイプや虐待の犠牲にもなっている。
これに対して、イラク、アフガニスタン、パレスチナ、チェチェンを始め多くの被抑圧民族人民が、帝国主義とスターリン主義のもとではけっして生きていくことができないと、極限的な決起を続けている。
6月イラク暫定政権の誕生以降も、収まることなくイラク人民の抵抗・決起が続いている。9月に起きたロシア・北オセチアにおけるチェチェン人民、特に「黒服の女たち」と呼ばれる女性たちの極限的な決起は、ロシア軍によって民族の人口の4分の1が虐殺される事態の中で、夫や兄弟や息子を殺され、残された女性たちが、自らの体を武器と化し、命をかけて決起したのである。この女性たちのやむにやまれぬ決起は民族まるごとの決起を象徴している。
チェチェンだけではない。繰り返し、不屈に永続的に、帝国主義打倒・スターリン主義打倒までやむことのない闘いが今、世界中で起こっているのだ。
また、9・11以降の3年間の中で、全世界の被抑圧民族人民の極限的決起と本質的に連帯する帝国主義国の労働者階級人民の決起が爆発的に始まっている。
とりわけ、帝国主義の総本山である米帝足下でのMWMの闘いは決定的地平を切り開きつつある。「外への侵略戦争」と「内への階級戦争」は一体であることが明らかになり、労働者階級の生きるための闘いに発展している。全米の労組、社会的共同体、被差別・被抑圧人民の団体、反戦団体などに百万人の労働者大行進が提起され、AFL―CIOなど既成労組ナショナルセンターの制動をうち破って全米から結集するよう呼びかけ、それにこたえて巨大な隊列が生み出されようとしているのだ。
南朝鮮・韓国での民主労総の闘いは、イラク撤兵と非正規雇用の労働者の権利を求め、労働者の団結を固めつつ、さらに農民や市民の闘いとも連動して爆発し、盧武鉉(ノムヒョン)政権を揺るがしている。
日本も例外ではない。17年間国鉄分割・民営化と営々と闘って労組の団結をうち固めてきた動労千葉の闘いは、戦争と民営化攻撃に対決し勝利する階級的労働運動の姿を全世界に指し示している。この動労千葉のストライキを始め、東京の教育労働者の「日の丸・君が代」強制反対闘争の爆発が、日本の労働運動・労働組合運動の中に大流動を引き起こしている。沖縄の米軍ヘリ墜落事故と名護新基地建設強行攻撃に対して、沖縄の労働者人民の根底からの怒りが爆発し、95年を超える闘いに発展している。
世界と日本で、戦争か革命かの階級的な大激動が始まっているのだ。
パート賃金は正規の6割妊娠すれば即解雇の現実
帝国主義の戦争と民営化攻撃が全労働者に向かう中で、とりわけ女性、高齢者、子どもたちが切り捨てられている。これらは世界共通だ。
米帝ブッシュ政権下での恐るべき生活破壊の現実がある。ブッシュはイラク戦争開戦から1年半でイラク人民を4万人以上虐殺し、自国の兵士も1千人以上を犠牲にしてきた。イラク占領費に毎月40億j(2カ月で1兆円だ!)を費やす中で、福祉や教育予算を大幅削減してきたのだ。資本は熾烈(しれつ)な競争に勝つために数百万人の労働者を解雇し、長時間・不安定雇用に切り替えている。そのため労働者は社会保障を失い、貧困が増大するという現実に直面している。
ブッシュ政権以降、失業者は新たに最大で210万人増加した。医療保険を受けられない人が4500万人、家族を含めると6千万人と言われる。過去2年間で、ホームレス化と飢餓は35〜45%増加した。現在350万人のホームレスがおり、そのうちの39%が子どもという現実がある。また新規にホームレスになる人の60%が子どもを連れた母親だというのだ。人種差別と排外主義があおりたてられ、女性差別による女性の貧困化が深まっている。
若者と女性に犠牲が集中
日本ではどうなのか。小泉内閣は、イラク占領費に1日1億円使い、防衛費の上限制限を撤廃するとし、資本・財界の求めに応じて武器輸出三原則の見直しも打ち出している。他方で、小泉構造改革で「1千万人の労働力移動」を叫び、07年郵政民営化―公務員制度改革を打ち出している。
郵政民営化は、国家公務員労働者の3分の1、28万人の郵政労働者をいったん全員解雇、選別再雇用する攻撃だ。労働者の9割を不安定雇用化し、「年収200万から100万円、時給500円時代」などということが日本経団連・奥田ら財界によって叫ばれているが、郵政民営化攻撃はその突破口を開くものだ。労働者の団結を奪い、賃下げ・リストラ攻撃をこれまで以上に推し進めていくために狙われている攻撃だ。
実際にこの間、260万人が正規雇用からたたき出され、195万人の非正規雇用が増えた。フリーターが217万人。若者の失業率は13%。若者の無業者が52万人となっている。就職難がわかっていても離職する若者が増えている。休みもなく、深夜までやりがいのない過酷な仕事にかり出され、健康を害したためという理由が最も多い。教育も受けられず、安価な労働力として使い捨てられた青年たちは傷つけられ、将来設計を描けず、自立も結婚も出産も望めなくなっているのが現実だ。
派遣は213万人で、3年で倍加した。派遣会社の売り上げは2兆円を突破したが、労働者の受け取る賃金は5年間で時給にして240円も下がっている。
女性労働者ではどうか。「女性の能力の活用」「仕事と家庭の両立ができる社会」をうたい文句に、膨大な女性が不安定雇用・パート・派遣・非常勤職員に追い込まれている。賃金は大幅に引き下げられ、低所得者層が増えている。平均では男性の賃金の65%だが、女性の雇用労働者の4割を占めるパート女性はさらに、正規雇用の女性の65%、派遣では54%の賃金にしかならない。
「少子化対策」の大ペテン
職場では妊娠を理由にした解雇が急増している。全国の雇用均等室が乗り出した事例だけで、01年の1・6倍に上る件数となっている。パートへの変更を強要されて賃金が半分以下、社会保険も外すと言われるなど嫌がらせも多い。資本は妊娠・出産にかかわる会社負担のコスト削減を平然と語っている。女性労働者は仕事を失うことを恐れて子どもを産むことすらできない現実がある。
資本による利益追求・効率・成果・競争優先社会の中で、昨年の自殺者は3万4427人。倒産・失業・負債・勤務問題などを苦にした働き盛りの自殺が増加した。自殺者は30歳代へと広がり、高校生で3割増、小中学校の児童・生徒ではなんと6割増と、若者にとっても未来に希望のない社会が映し出されている。
「少子高齢化」が叫ばれ「少子化対策基本法」が制定され「次世代育成支援」がうたわれているが、このような現実こそ、資本が推進する男女共同参画社会論の実際の姿にほかならない。資本の本音はあくまでも「企業の発展と国際競争に勝てる労働力の確保」、すなわち終身雇用の解体と賃金の大幅切り下げ、戦後的諸権利の剥奪にある。そのための労働者階級の団結の解体、男女労働者の分断にある。一方で労働者の家族に子どもを産めず、産んでも育てられない現実を強制しておきながら、兵士と労働力は確保したいという現代版の「産めよ増やせよ」政策に、怒りを向けなくてはならない。
階級的労働運動の再生で小泉と奥田を打ち倒そう
この怒りをどこに結集して闘えばいいのか。階級的労働運動の再生による、小泉=奥田路線との真っ向からの対決以外にない。
日帝・小泉政権は、07年を射程に入れて改憲攻撃を構えている。9月の日米首脳会談で、米軍再編(トランスフォーメーション)に取り組むことを約束し、日米安保を決定的にエスカレートさせることを反動的バネにして改憲への大がかりな攻撃に踏み切った。その推進力となっているのが日本経団連であり、帝国主義の生き残りをかけて、国家のありようを根本から変えることを小泉政権につきつけているのだ。
小泉=奥田路線とは戦争と民営化、改憲の大攻撃であり、一握りの資本家階級が生き延びるための徹底した弱肉強食の社会をつくりだす攻撃だ。基本的人権や労働三権、生存権など、戦争放棄とともに戦後憲法の中に盛り込まれている規定とはまったく逆さまの現実を強制するものだ。家族生活における個人の尊厳と両性の平等を規定した憲法24条を解体し、戦前の家族制度を実質的に復活させることさえ狙っている。
しかし、実際に具体的な改憲攻撃となると容易ではない。何よりも労働者階級人民の決起が不可避だからだ。だからこそ今、教労・全逓・自治体・国鉄の4大産別をめぐる労働運動・労働組合解体の攻撃に全力をあげている。また、1割の企業エリート創出と9割の国家と資本に従順な「群」を作り出すための教育へむけて、教育基本法改悪攻撃が進められ、さらに社会保障制度の全面解体の攻撃が狙われている。
これらの攻撃と全面対決し、教労を始めとした4大産別決戦を、全労働者階級人民の総反撃の突破口として爆発させていこう。
女性労働者の多くは組合に組織されていない。03年組合加入者は01年より16万人も減り、組織率は13・4%にすぎない。しかし、団結から排除されてきた女性労働者が「もうがまんできない」と立ち上がり始めている。これを抑えつけているのが連合中央だ。
連合の笹森会長は「政労使が総力戦で国家崩壊の危機を打開しなければならない」と言い、賃上げ要求をやめ、職務・職種型賃金、成果主義賃金を容認し、正規雇用の労働者のリストラ・首切りを進めている。唯一の方針が「未組織の組織化」だが、中身は非正規雇用の労働者の決起を抑えつけるものでしかない。
連合や全労連指導部の裏切りと屈服のもとで苦しんできた労働者に、ランク・アンド・ファイル(現場から)の闘いを呼びかけ、4大産別決戦に勝利し、闘う労働組合のネットワークを全国全産別に、さらには国境を越えて広げることで勝利しようではないか。すべての労働者階級人民、被差別・被抑圧人民の命と生活と権利を守りぬく闘いも、その最大のかぎがここに託されているのだ。
闘う3労組が呼びかける11・7全国労働者総決起集会に全力で結集しよう。11・6教育基本法改悪反対全国集会と11・7集会をともに労働者大行動としてかちとろう。国際連帯の闘いを強めよう。女性労働者、闘う女性はその先頭に立とう。女性の手で社会を変革する闘いの巨大な突破口を切り開こう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号3面2)(2004/10/18)
『国際労働運動の新時代』 浜田茂夫著 前進社刊 2000円
ILWUと民主労総軸に新潮流運動の成長を描く
10・17アメリカ百万人労働者行進(ミリオン・ワーカー・マーチ=MWM)と11・7労働者集会を前にして、このたび前進社から浜田茂夫同志著の『国際労働運動の新時代 日韓米の国際連帯――戦争・民営化との対決』が発刊された(B6判320頁、定価・本体2000円)。
11・7への武器
11月労働者集会の直前に本書が発刊された意義はきわめて大きい。すべての読者の皆さんが、11・7集会組織化の武器として本書を徹底的に活用することを心から訴えたい。
本書は、序文と2部構成の本文からなる。序文では、03年3月20日の国際反戦共同行動をへて現在に至る日韓米の階級的労働運動の国際連帯の出発点、精神、交流と発展が具体的に述べられている。
第1部「帝国主義侵略戦争への突入と国際労働運動の前進」では、ILWU(国際港湾倉庫労働組合)や民主労総など、11・7集会で連帯を一層深めていこうとしている当の労働組合とその闘いが詳しく展開されている。第2部「アメリカ労働運動の階級的再生」では、第1部で検討された闘いに先立つ80〜90年代の前史が述べられている。
とくに序文と第1部については、できるだけ11月集会の前までに読み終えることを勧めたい。
米新潮流の前進
第1部は、5つの章と付論で構成されている。
第1章では、01年9・11の衝撃とそれを契機とする帝国主義的排外主義・愛国主義・人種差別主義の大洪水、そしてブッシュの世界戦争戦略の発動に抗して、アメリカ労働運動の新潮流が、苦闘しつつもついにパレスチナ・中東・ムスリム人民との連帯を前面に押し出した反戦デモや、戦時下のストライキに踏み出していった経緯が述べられている。
そのうえで、アメリカ労働運動の新潮流が、@戦争と不況下での全階級的課題の登場と向き合い、AAFL―CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)指導部の民主党依存路線の克服を課題とし、B30年代のようなゼネストをも視野に入れて闘いを展望していることが語られている。現在のMWMにつながる重要な闘いが、9・11直後から模索され開始されていたことがわかる。
第2章は、ILWUの02年労働協約改定闘争を紹介している。
ブッシュは9・11からイラク侵略戦争に突き進む過程で、アメリカ最強の労働組合であるILWUの決定的弱体化に全力をあげた。ILWUが1934年のサンフランシスコ・ゼネスト以来守りぬいてきた労働協約の解体に焦点を当て、全体重をかけた強硬な攻撃に出た。タフト・ハートレー法(80日間ストを禁止するなどの労働組合弾圧法)を発動し、海軍導入の恫喝をかけた。この中でILWUは、6カ月間の長期闘争を闘いぬき圧倒的な高揚をつくりだしながらも、一定の後退を強いられる。
この闘いの教訓として、ILWUの中で最左派を形成するローカル10(第10支部)の戦闘的指導者ジャック・ヘイマン氏らは、ILWUをランク・アンド・ファイル主義(一般組合員第一主義)にもとづき原則的・階級的に再武装・再強化することと、国際連帯の戦略的強化によって対政府・対資本の闘いで勝利をめざすことの2点を、今後の方向として提起した。
この教訓こそ、動労千葉との国際連帯に向かったILWUの側からの切実な動機だったのだ。この第2章は、本書のハイライトの一つである。
第3章は、動労千葉が03年3月末の72時間ストライキに決起したのと同じ頃、サンフランシスコの対岸にあるオークランド港で闘われた封鎖闘争について語っている。この闘争に対して警官隊が木製弾で銃撃し、デモ隊とILWUに多くの重軽傷者・逮捕者が出るという大弾圧が加えられる。これはILWUの戦闘的部分の解体を狙う鋭い攻撃であったが、ローカル10はこれに不屈・強靱に反撃し、この弾圧を粉砕した。
03年春の動労千葉のストライキとILWUローカル10のオークランド闘争は、イラク戦争の開戦に反対するという共通の旗印のもとに生産点でうち抜かれた闘いとして、日米の国際連帯を急速に深める具体的きっかけとなったのである。
03年韓国の闘い
世界最強と言われる韓国民主労総との連帯は、国際労働運動の新潮流形成にとって特に重要な意味をもっている。それは、世界危機の今一つの焦点である米日帝による北朝鮮・中国侵略戦争切迫情勢との関係でも明らかだ。本書は第4章と第5章で、民主労総のこの間の闘いに迫っている。
第4章は、民主労総の03年前半の闘いに焦点を当てる。ペダルホ氏の焚身抗議闘争を受けて大爆発した斗山(トウサン)重工業闘争から、安全闘争を軸に爆発した鉄道民営化阻止闘争、物流を止めて世の中を変えた貨物連帯闘争などが克明に描かれる。
それを受けた第5章では、03年夏闘における金属労組の闘いとそこにおける企業別労組から産別労組への形態転換の階級的意義が述べられ、さらに壮絶な11月ゼネスト闘争から04年4月選挙闘争(民主労働党が10議席を獲得)までが展開される。
そして結論として、韓国ではすでに「労働者階級が情勢決定の最大の主体的要素であり、みずからを支配的階級に組織する課題が韓国労働者階級に提起されていること」、またそうした「韓国労働運動が反戦・反資本の国際労働運動の最前衛を形成していること」が明確に突き出される。4章・5章は、本書のもう一つのハイライトと言えよう。
西欧労働運動についての付論は、イラク開戦前夜までを対象にしたものだが、労働運動の新潮流の著しい台頭が、世界的な規模で開始されていることをはっきりと確認できるものとなっている。アメリカのMWMには国外からの賛同団体として、日本の動労千葉と並んでイギリスのRMT(鉄道海運運輸労組、7万人)が真っ先に名乗りを上げたが、このRMTの左派労働組合としての闘いについても述べられている。
実践の書として
本書を読んでわかることは、第一に、イラク侵略戦争の継続・激化・拡大の中で、世界中いたるところで「外への侵略戦争と内への階級戦争」が共通の問題となっていることだ。第二にそうした中で、〈現場組合員に依拠し、反戦闘争・職場闘争を基礎に既成労働運動を下から階級的に塗り替えるために闘う>ランク・アンド・ファイル主義もまた、全世界共通の課題となっていることである。
しかも第三に、そのような新潮流がごく一部の左派労働運動の域をはるかに超えて、今や圧倒的な主流派として成長しつつあることだ。それは、間違いなく明日の日本の新潮流労働運動の姿でもあるだろう。
本書には、労働者階級の自己解放性に満ちた闘いとその階級性=国際性があふれている。まさにその意味で、革共同第6回大会で提起された「21世紀の早い段階での反帝・反スターリン主義世界革命」の現実性を具体的に照射するものとなっている。このことに確信を深め、文字どおりの「国際労働運動の新時代」を切り開こう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号4面1)(2004/10/18)
ベスラン事件 ロシアのチェチェン侵略が元凶
大虐殺戦争に決死的な反撃 ロシア軍撤退と独立を要求
藤沢明彦
9月1―3日、ロシア・北オセチア共和国で発生したイスラム武装組織によるベスラン学校占拠人質戦闘は、ロシア特殊部隊の強行突入・武装制圧作戦によって、人質340人以上の死亡、700人以上の負傷、武装部隊32人の死亡という惨劇となった。学校占拠人質戦闘は、ロシアの2次10年にわたるチェチェン侵略戦争・軍事占領に対するチェチェン人民の民族解放闘争の特殊的極限的な形態である。プーチン政権は直ちに停戦し、ロシア軍をチェチェンから撤退させよ!――チェチェン人民のこの正当な民族自決の要求を断固支持しよう。ロシアと世界のプロレタリアートの任務は、不屈に闘うチェチェン人民と連帯し、ロシアのチェチェン侵略戦争を国際的内乱に転化し、ロシアとロシアを擁護する帝国主義を打倒することだ。
占拠部隊総せん滅を狙い大惨事招く
チェチェンとその周辺
|
|
9月1日朝、チェチェン武装勢力のバサエフ司令官が指導するイスラム武装組織30人余りがロシア連邦北オセチア共和国のベスラン第1学校を占拠し、1200人以上の人質をとり、チェチェン共和国からのロシア軍の撤退とチェチェン共和国の独立を要求した。
この戦いは、94年以来2次10年にわたるロシアのチェチェン侵略戦争と軍事占領、25万人の大虐殺、40万人の難民という苦難にたたき込まれたチェチェン人民の決死の大反撃である。
チェチェンを占領支配するロシア軍は、テロリストに対する「掃討作戦」と称して、村々を包囲し、空爆・砲撃で徹底破壊し、家々に踏み込んで略奪、暴行、レイプなどを繰り返している。老若男女を無差別に連行し、穴牢や「選別収容所」に閉じ込め、拷問し、虐殺し、死体を遺棄している。生きていれば数十万円の身代金を家族から奪取する。チェチェンでは相当な大金だ。ロシア軍やFSB(連邦保安局)軍の気にさわれば簡単に射殺される。
年400万d生産できる石油の富もロシア軍とマフィアがぐるになって盗み取っている。チェチェンは無法地帯、ロシア軍は強盗集団と化している。命を長らえられたら幸運だ。戦闘能力のある男性はただではチェチェンに帰れない。ゲリラとなって戦うしかない。
パレスチナにも比すべきこうした恐るべき状況を覆すには、どんな非常手段をとってでも世界にチェチェンの現状を訴える必要があったのだ。
これに対して、ロシア・プーチン政権は「テロリストと一切妥協しない」(イワノフ国防相)と強硬な姿勢を示し、占拠部隊との交渉拒否を宣言した。現地ではロシア特殊部隊が学校を包囲、強行突入・占拠部隊せん滅の機をうかがった。
その中で交渉も行われた。プーチンの立場からすればこれは突入作戦準備のための時間稼ぎだった。1日正午には、占拠部隊の政治的要求がロシア側に伝えられた。ロシャリ医師がイングーシ、チェチェンまでの移動路の保証、人質の子どもから大人への交代などを提案したが、占拠部隊はこれを拒否した。プーチンの指示によるロシア軍の撤退開始という条件が提示されない以上、当然だ。
2日午後、アウシェフ前イングーシ共和国大統領が仲介役となって占拠部隊との間に交渉が始められた。その結果、午後5時ごろ、女性と幼児ら26人の人質が先行して解放された。交渉はまだ続いていた。
3日午後1時すぎ、占拠部隊との合意の上で校内に入った遺体運搬車の陰からロシア特殊部隊、民兵が学校内に強行突入し、銃撃を開始した。その中で連続爆発(自爆)が起き、混乱の中で人質たちが一斉に逃げ出した。銃撃戦が本格化し、深夜まで続いた。
結局、人質が340人以上死亡し、700人以上が負傷するという大惨事に至った。交渉を一方的に中止し、攻撃を開始したのはロシア側だ。惨劇は、プーチンが交渉と妥協を拒否し、占拠部隊せん滅の方針を最優先させた結果なのだ。
実際、占拠部隊には子どもたちを殺すつもりなどなかった。彼らは、特殊部隊が強行突入し銃撃を開始するやアウシェフ前大統領に電話で「子どもたちを殺す気か。やめてくれ」と攻撃中止を要求していた。これはアウシェフ前大統領の証言である。
プーチンは2日に「最も重要な課題は人質の命と健康を救うことだ」と述べていたが、エリツィンでさえ行った人質解放交渉をする素振りさえ見せなかった。2002年10月のモスクワ劇場占拠人質事件で特殊部隊を強行突入させ、130人を犠牲にして武装制圧したことを成功と総括し、教訓化していたからだ。
対テロリストせん滅戦宣言
プーチンは事件が惨劇に終わった後の4日早朝、ベスランで「特殊部隊の突入は計画的作戦ではなかった」と強調・弁解した。これは、突入のタイミングや戦闘が作戦計画どおりに行かず、思ったより犠牲者が多くなったという意味でしかない。340人もの死者を出したことへの責任逃れだ。病院で30分、けが人を形式的に見舞い、同日のテレビ演説で治安体制強化の方針を提起した。
結局プーチンは開き直った。「ウラジカフカスはロシアのとりで」「北カフカス地方を混乱に陥れるテロリストの扇動に屈する者は共犯者とみなす」と脅した。北カフカスを軍事拠点にチェチェン侵略戦争を激化・拡大し、民族解放闘争に立ち上がるチェチェン人、イングーシ人らをせん滅するという宣言だ。
民族自決の要求を抹殺したプーチン
占拠部隊の出した政治的要求を見れば、プーチンがこれにこたえてロシア軍のチェチェン撤退を指示すれば、人質は解放され、大惨事は起こらなかったと断言できる。しかし、プーチンは交渉も譲歩も拒否し、占拠部隊が政治的要求を文書でプーチンに提出していることさえ隠していた。
9月17日、バサエフ司令官がウエブサイト「カフカスセンター」に送ったメールが発表され、ムスリム戦士がベスランの現場で出した要求とバサエフのプーチンに対するアピールの内容が判明した。
まず、ムスリム戦士の要求の第一は、「ロシア軍がチェチェンでの戦争を直ちにやめ、撤退が実施されることを要求する」である。以下、▼プーチンの大統領辞任▼人質のハンガーストライキ実施▼停戦と撤退が開始されれば人質に水と食事を与える▼山岳地帯からの撤兵が開始されれば10歳以下の子どもを解放する▼ロシア軍の撤退が完了すれば他の人質を解放する▼プーチンが辞表を出せば戦士はチェチェンに戻る――などを要求した。段階的な人質解放の条件を提示していたのだ。
武装部隊は以上のような自分たちの要求とバサエフ司令官のプーチン大統領へのアピールとを仲介者のアウシェフ前イングーシ大統領に託した。
次に、バサエフはプーチンへのアピールで「(チェチェン)独立と引き換えの安全保障」という原則を提示し、和平を提案した。そして、ロシアが撤兵しチェチェンの独立を承認することと引き換えに、次の諸点を保証すると述べた。すなわち▼ロシアへの攻撃をしない▼CIS(独立国家共同体)に加盟する▼ルーブル圏にとどまる▼集団安全保障条約署名もありうる▼信教の自由――などである。最後に「チェチェン民族は自由と独立を獲得し保持するための民族解放闘争を行っている。ロシアを侮辱し、破壊するためではない」とし、チェチェンとロシアとの平和的・建設的な関係を求めている。
またバサエフは、占拠部隊の人数は33人で、チェチェン人14人(うち女性2人)、イングーシ人9人、ロシア人3人、オセット人2人、アラブ人2人などからなると明らかにした。占拠部隊にアラブ人が10人いるというロシア当局の断定はうそだった。
カフカスの要衝チェチェン
プーチンは、ムスリム戦士やバサエフ司令官の譲歩を含む提案と要求を無視し、拒否した。
「大ロシア」の大統領が非公式の一野戦司令官の提案にとりあうことなどないという権威主義もあるが、根底的には「ロシア帝国主義」としてチェチェンというカフカスの要衝を失うことはありえないという点にある。そのためには150人以上の子どもを含めて300人以上の犠牲も構わないという冷酷な思想だ。
ロシアは伝統的にウラジカフカス(「カフカスを征服せよ」の意)やモズドク(ロシア連邦軍の北カフカス合同司令部がある)を拠点にしてカフカスを侵略・征服してきた。その場合、北カフカスの最大民族で独立・自由の民族精神にあふれるチェチェン人を屈服させ制圧することがカフカス征服の最大のかぎをなす。
ロシア軍が撤退したら再びチェチェンは事実上の独立状態に戻る。そうなればチェチェン侵略戦争におけるロシア軍の民族大虐殺、無数の戦争犯罪、人権侵害が全世界に暴かれるだろう。その最大の責任者はプーチンだ。マスハドフ大統領は国際戦犯法廷の設置を提案している。
プーチンには、10万のロシア軍をチェチェンから完全撤退させることは、あらゆる意味でできない。5月に死んだカドゥイロフの後任「大統領」のアルハノフのようなロシアの傀儡(かいらい)政権を次々デッチあげては取り換える以外に統治=自治の形式を作り出すことはできない。
チェチェン人民の自由・独立の精神は不滅である。ロシアがチェチェン人民の民族解放闘争、ゲリラ的抵抗戦争を根絶することは不可能だ。ロシアのチェチェン侵略戦争・軍事占領がますます破綻(はたん)し、長期化・泥沼化することは不可避だ。チェチェンのロシア軍はイラクの米軍と同じ運命にある。
マスハドフのバサエフ批判
ところで、バサエフ司令官の聖戦思想、自爆攻撃戦術は、マスハドフ大統領の非宗教的なゲリラ抵抗戦術と対立している。
9月2日、マスハドフ大統領はチェチェン共和国政府の公式ウエブサイト「チェチェンプレス」をつうじて声明を発表した。人質戦術を批判しながら、「責任はすべてプーチン個人とその取り巻きにある」と弾劾し、「チェチェンに対するクレムリンの虐殺的戦争と犯罪的政策こそがカフカス全域の不安定化の元凶であり、(占拠部隊を)今回のような絶望的行為に走らせている」と指摘した。
9月22日にもマスハドフはバサエフのベスラン事件実行声明を厳しく批判し、自らが指揮するチェチェン軍はそのような「テロリズム」とは無関係とした。そしてロシアの戦争犯罪を含めて戦後に国際戦犯法廷を開いてバサエフを裁くことを提案した。
マスハドフは、バサエフと一線を画し、ゲリラ的抵抗路線で戦うことを訴える一方、バサエフらの「テロリズムはロシア軍による25万人のチェチェン人(4万2千人の子どもを含む)を虐殺した侵略戦争の結果である」と指摘し、「戦争が続く限りこうしたテロリズムの激化は不可避である」と警鐘乱打している(ロシア側はこうした言い方を取り上げ、マスハドフがバサエフのテロと「共犯関係」にある証拠とする)。
最後にマスハドフは「民族自決という合法的な権利の実行」と「チェチェン―ロシア紛争の政治的解決」を追求することを提案している。
マスハドフとバサエフの路線対立は根強いが、チェチェン人の自由・独立への希求、ロシア軍による虐殺、侵略、犯罪に対する激しい怒りを共通の基盤とする限り、すべてのチェチェン人民が再び強固に団結してロシアと戦う日が来ることは確実である。
大統領独裁と治安強化の破綻は必至
プーチンは9月4日のテレビ演説で、ベスラン事件を「国民全体に対する攻撃」として非難し、テロの続発について「社会体制に潜む危険な兆候を見逃していた」と自らの「危機管理」の不備を認めた。
プーチンは、8月29日に「チェチェン共和国大統領選」をデッチあげて「チェチェンが平和と安定に向かっている」という虚構を作ろうとしたが、チェチェン人民の捨て身の反撃で見事に破産してしまった。プーチンは敗北感をあらわにせざるをえなかった。
その上でプーチンは「テロの脅威」にもっと効率的に対処できるよう治安体制を強化し、法整備を急ぐことを表明した。プーチンの問題意識は、チェチェンを始めとするムスリムの民族解放戦争、ゲリラ・テロリズムを力で抑え込むことであり、そのための治安・軍事体制を中央集権的に強化することに集中している。
また、プーチンは9月13日、「国際テロ」に対する戦時下にあるという認識を示し、「テロを撲滅し、国民の安全を確保する体制の確立を目指す」として、地方自治体首長任命制の導入を始め、国家機構を中央集権的に再構築する反動方針を表明した。9・11後のブッシュにならい、ベスラン事件をロシアの国家安全保障を脅かした「衝撃」と位置づけ、これを契機に大統領独裁体制、暗黒の治安体制を一挙に強化しようとしているのである。
しかし、ムスリム部隊がベスランに向かう過程で警察(内務省)を買収し検問を通過したことが示すように、ロシアの軍・警察、治安機構の腐敗と崩壊はすさまじい。イングーシ、ダゲスタンなどロシア・プーチンへの反発の方が強い北カフカスでは、プーチンがいくら締め付けても治安態勢はすきだらけだ。ゲリラ戦闘、テロリズムが爆発することは不可避だ。
8日のロシア軍のバルエフスキー参謀総長の先制攻撃発言に続いて、プーチンも「外国にいるテロリストも撲滅できる」と述べた。直接にはグルジアのパンキシ渓谷にあるとされるチェチェン武装勢力の拠点を越境攻撃することを意味する発言であり、米帝に傾斜するグルジアとの緊張を激化させる。
さらにプーチンは、ますます報道管制、言論弾圧を強めている。チェチェンの敗勢、軍事占領の破綻、ロシア軍の腐敗・犯罪などを隠蔽(いんペい)するためだ。チェチェンを封鎖しているのは、ジャーナリストが真実を暴くことを恐れているためだ。テレビはいずれもプーチン政権の意をくんだ放送をするようになった。残るは新聞だ。イズベスチヤ紙の編集長はベスラン報道を機に解任された。ノーバヤガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者はベスランに向かう飛行機内で毒を盛られ重体になった。
だが、FSBを使った暗黒支配、言論弾圧は、人民の闘いと真実の前に必ず破綻する。
最大の援軍は国際連帯闘争
帝国主義諸国は軒並みプーチンのベスラン武力制圧、大虐殺を擁護した。
9月1日、ブッシュはプーチンに電話で「この種のテロを最大限に非難する。ロシアが必要とする支援に応じる」と励ました。
9月2日、国連安保理は、ロシアの要請に基づき「憎むべきテロ行為」として占拠事件を非難し、人質の即時無条件解放を求める議長声明を採択した。
9月3日、米政府は、ロシア政府による学校占拠事件の武力制圧を断固支持すると声明を発表した。そして「人命の悲劇的犠牲の責任はテロリストにある」とロシアを擁護、「米政府はロシア政府とともに地球規模の対テロ戦に立ち向かう」と米ロ提携を強調した。ブッシュ大統領自身も「テロリストたちが文明世界を脅かしている現実をあらためて想起させる」と排外主義をまきちらした。
独仏英中の政府・首脳も同様の立場を表明した。
帝国主義諸国は、ロシアに同調して「反テロ戦争」を大合唱することで自らのイラク・アフガニスタン―中東侵略戦争、国内ムスリム弾圧の激化・拡大を図り、帝国主義間争闘戦に生き残ろうとしているのである。
今こそ国際プロレタリアートの反撃の時だ。10・17百万人労働者行進(MWM)、11月労働者大行動の爆発で労働者の国際連帯を発展させ、帝国主義打倒、世界革命に向かって前進しよう。この闘いこそチェチェン人民の民族解放闘争への最大の援軍となる。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号4面2)(2004/10/18)
『チェチェン やめられない 戦争』
世界が見過ごした現実 密着取材で真実に迫る
アンナ・ポリトコフスカヤ著 NHK出版 2400円+税
著者はロシアのノーバヤガゼータ紙の記者だ。第2次チェチェン侵略戦争をチェチェン現地で取材してまとめたのがこの著書である。プーチン政権の報道管制とチェチェン封鎖の中で、チェチェン内部に入って住民の証言を世界に伝えてきたのは、ほとんど唯一著者だけである。先入観をもたず、民衆に密着取材し、自ら現認した事実の中から真実を追求するスタイルを貫いている。
著者は、2002年のモスクワ劇場占拠人質事件の時、息子とともに劇場内に入ってチェチェン戦士と交渉した。ベスラン事件の時は、飛行機内で出された紅茶を飲んだところ意識不明の重体に陥り、現地に行けなかった。プーチンに最も強く憎まれ恐れられているのが彼女だ。
本書は、何よりもチェチェン駐留ロシア軍の「掃討作戦」の恐るべき残虐非道さを生々しく暴露している。プーチンの「対テロ作戦」はチェチェンの全住民を標的にした民族抹殺のテロリズムだ。
ロシア軍は、村々を包囲・砲撃・破壊し、家々を襲撃し踏み込み、老若男女を問わず無差別に暴行・略奪・レイプし、拉致し、穴牢に監禁し、拷問を加え、虐殺し、死体を遺棄する。生きていれば身代金と引き換えだ。奪った物をやみ市場に流す。強盗ビジネス集団だ。著者も拉致・監禁された。掃討作戦以外でもロシア軍はいたるところで恣意(しい)的にチェチェン人を射殺する。
チェチェンの人びとは一日一日を生き延び、生きていることを互いに確認しあっている。他方、ロシア軍の腐敗にまみれ、精神をむしばまれた兵士たちも、故郷に帰っても乱暴狼藉(ろうぜき)を働いている。
また本書は政治指導者の人間性を鋭く暴いている。
親ロシアかいらい政権の行政長官、大統領となり、今年5月爆殺されたカドゥイロフは、ロシア軍の犯罪行為を知りながら、完全に容認してきた。チェチェン住民の嫌われ者だった。もうひとり、プーチンの後押しでイングーシ共和国の大統領となったFSB将軍ジャジコフは、チェチェン難民を強制送還して賞を受けた。アナン国連事務総長は、総長を2期務めるためにプーチン批判を避け、ロシア票を当てにしていた。
真摯(しんし)で誠実な指導者がいることもインタビューで伝えられる。アウシェフ・イングーシ大統領(92―02年)は、プーチンの圧力と妨害をはねのけて、自国の人口に迫る20万人以上のチェチェン難民を受け入れた。イギリスに亡命中のザカーエフ・チェチェン大統領特別代表は「この戦争には英雄はいない」と、民族の悲惨への自らの責任を認めつつ、ロシアへの抵抗を貫いている。
さらに、誰が戦争で利益を得、戦争を必要としているのかを追究している。
チェチェンの油井とパイプラインは、連邦―共和国の石油複合体による公式の管理からロシア連邦軍とマフィアの非合法支配に落ちた。ロシア軍が警備し、マフィアが採掘・抜き取りし、精製・販売する。連邦軍とマフィアを潤すチェチェン戦争は「やめられない戦争」だ。
悲惨を嘆くだけはなく、和平の希望も探っている。
著者は分析している。自爆もいとわない勇猛なワッハーブ派に影響を受けたバサエフ司令官らを「アラブ派」と名付け、マスハドフ派を「西洋派」と呼ぶ。さらに「アラブ派」に対抗する個々のゲリラ勢力を「血の復讐派」と呼んでいる。
錯綜(さくそう)しているようだが、「ロシア軍対チェチェン住民」の対立関係は明確だ。マスハドフ大統領が住民ゲリラ勢力の糾合に成功すれば、情勢は決定的に転換するだろうと著者は予測している。
ベスラン事件は衝撃だったが、本書の伝えるチェチェンの現実ももうひとつの衝撃だ。著者の叫び声が聞こえてくる。“チェチェンを見過ごしてはならない”
(藤沢明彦)
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号4面3)(2004/10/18)
9月29日〜10月5日
安保・防衛懇が報告書提出
小泉が「基地本土移転」発言
●墜落と同型機が試験飛行再開へ 在日米軍司令部は、沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学で墜落事故を起こしたのと同型の大型輸送ヘリCH53Dの試験飛行を普天間飛行場で再開すると沖縄県に連絡した。(29日)
●海自派兵を半年延長 日本政府は、テロ対策特別措置法に基づくアラビア海への海上自衛隊の派兵期間を11月1日から半年間延長し、米艦船に対する海上給油を無償で継続する方針を固めた。7月末に発効した改定日米物品役務相互提供協定(ACSA)で有償とすることも可能だが、在日米軍再編問題などに与える影響を考慮し見送るという。派兵期間の延長は今回で6回目となる。(29日)
●稲嶺「飛行ルート、海域に限定」 沖縄県議会の9月定例会で、稲嶺知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移転について「飛行ルートを海域に設定することなどで、危険性を最小限にする必要がある」と述べ、沖国大への米軍ヘリ墜落事故を受け、地域住民の生活への影響を最小限にするため、飛行ルートの限定を求める考えを示した。(30日)
●沖縄米軍基地「本土移転」と小泉 小泉首相が東京都内で講演し、沖縄県への在日米軍の集中について「沖縄以外の都道府県のどこに持っていくか、日本政府は考えて、自治体に事前に相談しなきゃいけないこともあるかもしれない。自治体がOKした場合には日本はこういう考えをもっているということで、米国と交渉する」と述べた。同時に普天間飛行場の辺野古移設は変更がないとの考えを示した。(1日)
●イージス艦、北朝鮮近海に配備 イングランド米海軍長官が、米ミサイル防衛の一環として、広範囲のレーダー探索能力のあるイージス艦を北朝鮮近海の日本海に配備したことを明らかにした。(1日)
●公明「9条も加憲対象」 公明党は、憲法9条についても新たな条項を加える「加憲」論議の対象とする運動方針案をまとめ、10月末の党大会に提案する方針を固めた。同党は、改憲について、新しい権利などを加える「加憲」の立場だが、9条についてはこれまで「堅持」としていた。(2日)
●パレスチナ自治政府が非常事態宣言 イスラエル軍が9月28日から開始したパレスチナ自治区ガザ北部への大規模攻撃で、パレスチナ側の死者は50人を超え、パレスチナ自治政府は「非常事態」を宣言した。(2日)
●厚木基地にスーパーホーネット 在日米海軍厚木基地に最新鋭戦闘攻撃機FA18Eスーパーホーネット10機が追加配備された。配備予定13機、残り3機は3日以降に。(2日)
●安保・防衛懇が報告書 小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」が今後の日本の安全保障政策に関する報告書を小泉に提出した。新たな安全保障戦略の目標として「日本防衛」に加え「国際的安全保障環境の改善」を設定。日米同盟を最大の柱に位置づけ、新たな「日米安保共同宣言」「日米防衛協力の指針」の策定を求めている。武器輸出3原則を見直し、少なくとも米国に対しては規制を緩和するよう提言。政府は、11月末か12月初めまでに新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を策定する。(4日)
●ポーランドがイラク撤兵の意向 ポーランドのシュマイジンスキ国防相は同国軍のイラク撤退完了時期を05年末と表明。(4日)
●2米軍機が接触し損傷 沖縄本島近海の上空で訓練中の米空軍F15戦闘機2機が接触事故を起こし、双方とも機体が損傷した。2機とも、沖縄本島中部にある米空軍嘉手納基地に相次いで緊急着陸した。(4日)
●公明、武器輸出3原則の例外認める 公明党の「21世紀の防衛のあり方検討委員会」は、米国と共同研究のミサイル防衛(MD)関連に限定して、武器輸出3原則の例外を認める見解をまとめた。(5日)
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号5面1)(2004/10/18)
資本攻勢と社会保障解体に労働者の怒り爆発させる時
日本経済危機の深刻化について
島崎 光晴
アメリカのMWM(百万人労働者行進)のような大運動を日本でも作りだそう。11・6−11・7はその突破口をなす闘いだ。MWMのスローガンの第一は皆保険制度の要求である。米労働者階級は、生きていけないことに怒りを爆発させて決起しているのである。日本の労働組合も、資本攻勢と社会保障解体に対する積もりに積もった怒りを解き放つ時が来た。小泉=奥田路線を労働者人民の力で吹っ飛ばそう。以下、資本攻勢と社会保障解体の現状を簡潔にみた上で、その背景にある日本経済の危機を明らかにする。
労働者犠牲に最高益
労働者人民の生活はますます厳しくなっている。
「雇用回復」などというブルジョアマスコミの宣伝とは裏腹に、本格的な大失業が襲いかかっている。
03年度平均の完全失業率は5・1%で、90年度以来13年ぶりに前年度からの低下となった。しかし、24歳未満の男性の完全失業率は11・6%と過去最悪となった。また、03年の常用雇用者数は前年比0・5%減と5年連続の減少である。03年の非正規雇用は全体の34・6%、10年前より11・8ポイントも上がった。高卒者はパートやフリーターになる比率が4割弱、大卒者も4人に1人がフリーターの道しかない。日本帝国主義は、未来を担う青年を働かせること、食わせることができなくなっているのだ。
賃下げも続いている。民間企業の労働者の一人当たり平均給与は03年まで6年連続のダウンだ(国税庁調査)。特に給与に占める賞与の割合が18・8%と、1956年以来の低水準となった。賃金体系でも、職種別賃金制度への転換が強行されつつある。9月には武田薬品工業が、来春から職種別賃金体系に改編することを決めた。製造部門や一般事務職の賃金を引き下げ、それで浮かせた分を研究開発部門に回して優遇する。「医薬産業での国際競争に対応するため」と露骨に言っている。
このようなリストラ、不安定雇用化、賃下げによって大独占企業は「人件費」を減らし、利益を回復させている。今年3月の全国上場企業1638社(金融除く)の連結経常利益は20兆円強で、3年ぶりに過去最高を更新した。売上高はわずか1・1%しか伸びていないのにだ! それでなぜ最高益になるのか。リストラで企業の損益分岐点が下がっているからだ。03年度の損益分岐点売上高(損益がゼロになる売り上げ額)は、251兆円である。92年度には334兆円だったから、10年強で実に80兆円もの余裕が生まれたことになる。年間の国家予算=一般会計に匹敵する額だ。この10年強で売上高は2割減ったにもかかわらず、損益分岐点が下がったことで事業利益は4割も増えた。激しい資本攻勢と労働者の徹底搾取によって、資本家階級としての利益をせしめているのだ。
なお、この3月期決算で連結経常利益が1千億円を超える企業は前年より10社増え、過去最高の38社となった(表)。38社合計の利益は、上場企業全体の利益の半分以上を占める。これこそ日本の資本家階級の中枢だ。これこそ日本帝国主義の根幹をなす大独占だ。小泉=奥田路線は、この資本家階級のためのものである。わずか38社の利益のために労働者が極限的に搾取され、そのための国策が次々に強行される、こんなことが許されていいのか。
消費税率2けた社会保障20%減
社会保障の解体もますます急ピッチになっている。10月1日から厚生年金保険料が上がった。また配偶者特別控除などの税控除の廃止や社会保険料の引き上げなど、今後1年の家計の負担増はすでに決まっている分だけで1兆3千億円にも上る。国民1人当たり1万円もの負担増だ。
さらに9月に、日本経団連が年金・医療・介護など社会保障制度の一体的改革を求める提言を出した。消費税率を15〜16%にまで引き上げることをあらためて強調した。しかも、年金・医療・介護など社会保障全体の給付を現行水準より20%削減しろと言っている。かつてのような“社会保障費のために消費税を上げる”という話ではない。消費税を2けたにした上で社会保障も5分の1をカットするというのだ。貧しい者はどうやって生活していけばいいのか。
いや、すでに現在ですら生活できなくなっている。03年末の家計は、統計開始の1954年以来初めて、収入より支出が多い赤字となった。所得が減る一方で、住宅ローンや教育費など固定経費は減らず、やむなく預貯金を取り崩している。一方で、貯蓄なしの世帯は全世帯の21・8%に上る。貯蓄なし世帯と貯蓄減の世帯の両方を合わせると、全世帯の6割強にも達する。こんな状態が何年も続けられるはずがないではないか。
資本家階級は今や、長引くデフレと恐慌下でなんとか生き残ろうと、ひたすら労働者人民を搾取し収奪する以外になくなっているのだ。しかも、帝国主義間争闘戦はますます激化しており、争闘戦でなんとか優位に立とうと、好き勝手に搾取・収奪ができる国家・社会に大改造しようとしている。そのために労働組合を破壊し、社会保障制度を解体することに死活をかけて突っ込んできている。これが小泉の「骨太方針4」に示された小泉=奥田路線の核心をなす。だから4大産別決戦こそ、日本の労働者人民が生活し生きていくための歴史的な課題を担った闘いにほかならない。
米・中のバブルに依存
小泉=奥田路線の背景には、日本経済の激しい危機と日帝の没落がある。「景気回復」などと宣伝されているが、その実態は恐慌下の一時的な浮揚にすぎない。
昨年10〜12月期の成長率は実質で6・4%増で、13年半ぶりの成長となった。これが「景気回復」と持ち上げられたが、名目では前期比0・7%増にすぎず、やっと水面上に浮上した程度だ。しかも、この一定の浮揚の最大要因は大企業の輸出増加にある。米経済のバブル引き延ばしと中国経済の大バブルに依存したものでしかない。03年の輸出総額は前年比2・6兆円増加したが、うち中国・台湾・香港向けが9割を占めた。04年上半期には鉄鋼、石油化学原料のエチレン、紙など素材の生産も歴史的な高水準となったが、これも中国向け輸出の恩恵を受けている。
しかし、04年春〜夏から米経済が個人消費の頭打ち、利上げへの転換、原油価格の高騰などによって減速し始めた。また、中国経済も銀行融資の規制、行政指導による投資抑制などによって成長が鈍化している。
米・中経済の鈍化の影響で、日本の輸出は昨年10〜12月期をピークに伸びが鈍ってきている。このため、名目成長率は4〜6月期に5四半期ぶりのマイナスとなった。名目成長率が若干のプラスとなったのは、わずか1年強だ。さらに原油高が米経済と中国経済を直撃しつつあり、日本の輸出はさらに鈍化する。“原油価格が1バレル10j上昇すると、輸出の鈍化で日本の実質GDPは0・4%下がる”との試算もある。
今後、米経済バブルが全面崩壊していくと、中国経済も対米輸出の激減によってバブル崩壊が加速する。米経済は大統領選に向かって無理を重ねてきており、大統領選後に大きな転機を迎えざるをえない。米バブルの本格的崩壊と中国バブルの崩壊は必ず連動していくだろう。日本経済はこの両方から大ダメージを受ける。日本の恐慌の再激化・本格化は必至だ。
デジタル家電の投資も過剰に
なお、設備投資は4〜6月期まで5期連続の増加となった。しかし、その実態は液晶ディスプレー用のガラス基板、プラズマテレビ、半導体などに集中している。つまりデジタル家電(薄型テレビ・デジタルカメラ・DVDプレーヤー)と携帯電話に限られた設備投資でしかない。国内での大型の製造業投資が相次ぎ、「製造業の国内回帰」などと言われているが、デジタル家電向けが中心だ。
しかし、デジタル家電向けの設備投資は、恐慌を脱出させるほどの質・量は持っていない。
@もともとアナログ家電からの買い替えであり、市場規模自体は大きくならない。デジタル家電の内需・外需合計の総需要は03年で約2兆円にすぎず、電子部品の13・2兆円、パソコンなど企業向けIT(情報技術)機器の10・2兆円に比べて市場規模は小さい。
Aしかも、家電のデジタル化は異業種からの参入を容易にし、過当競争を促進している。デジカメではパソコンメーカーから精密機械、家電メーカーにいたる内外三十数社がしのぎを削っている。機能向上と製品陳腐化で販売価格が低下し、デジタル家電の販売増が必ずしも収益増加につながらない。
Bさらにデジタル家電の市場はすでに飽和化しつつある。デジカメの世帯普及率は今年3月末に50%を超えた。液晶テレビの在庫も増加しており、年末以降は過剰生産になる見通しだ。
このデジタル家電向け設備投資はむしろ、生産能力の過剰状態を一層深刻にするものとなる。各社は「秋口から需要が鈍化する」との見通しで、設備投資を前倒しして実施してきた。半導体や液晶などの新工場が来年にかけて一斉に稼働する。しかし、需要はすでに頭打ちになりつつあるため、過剰設備となるのは必至である。デジタル家電関連の設備過剰という、新たな不況促進要因が加わるのだ。再び設備投資が落ち込むのは避けられない。すでに05年度の設備投資計画は製造業も全産業もマイナスになっている。日本経済は今秋から来年にかけて、米・中経済のバブル崩壊と国内での投資減退という二重の破壊的な影響を受けることになるのだ。
国債暴落すれば破滅
銀行の不良債権問題もなんら解決していない。政府は大手銀行に対し、来年3月までに不良債権比率(総与信残高に占める不良債権の比率)を半減させることを課している。しかしUFJ銀行は、3月を待たずして9月中間決算も乗り切れない惨状に陥った。UFJは不良債権比率が10%を超しており(6月末)、不良債権残高も約4兆円と4大銀行グループの中では最も多い。このUFJを救済するのを主眼として、8月に三菱東京グループとの経営統合が決まった。9月に三菱東京はUFJに7千億円の資本増強の支援をした。
しかし、UFJグループはもともとUFJ信託銀行を三井住友グループに売却することを決めていた経緯があり、三井住友はUFJとの統合をあくまで追求し続けている。さらには外資も日本の大手金融機関の買収を狙っている。国内外入り乱れた大銀行の争奪戦、金融市場の再分割に突入しているのである。
三菱東京とUFJの経営統合で、総資産190兆円の世界最大の金融機関が生まれる見込みである。しかし、UFJ銀行の最大の大口融資先であるダイエー(融資残高4千億円)については再建策が決まっていない。大口融資先以外にも多くの中堅・中小の不振企業への融資を抱えたままである。しかも、統合銀行の不良債権残高と不良債権比率は、3大銀行で最悪となる。共倒れとまでいかないにしても、経営統合がむしろマイナスに働く可能性も強い。
いずれにしろ、三菱東京とUFJの経営統合で不良債権問題が解決するわけではない。むしろ、不良債権比率半減の目標を課した結果、大手銀行は体力を使い果たしてしまった。しかも、すべての大手銀行が本来業務である貸し出しで利ざやがとれない。それほど収益力が低い状態に陥っている。そこに米・中のバブル崩壊が襲いかかろうとしているのだ。バブル崩壊以降の15年間はまだ“前史”にすぎない。これから本当の危機がやってくるのだ。
借換債100兆円も消化しきれるか
日帝は97年秋からの恐慌突入に対して、銀行への公的資金の注入、何次にも及ぶ経済対策の発動、金融の量的緩和という帝国主義史上でも例のない恐慌対策をとってきた。しかし、それによって恐慌の激化を防ぐことはできたにしても、恐慌から抜け出すことなどできなかった。いや、むしろこの恐慌対策は国債の大増発という、より深刻な矛盾を引き起こしてしまった。
今年6月末の国債・借入金・政府短期証券を併せた「国の借金」は729兆円強で、うち国債が8割を占めた。国の借金は国民1人当たり570万円に相当し、04年度の国の税収見込額の17・5倍に達した。かりに税収をすべて借金の返済に充てたとしても17年以上もかかるという絶望的な額だ。98年度以降の恐慌対策がこのような破滅的な事態を招いたのである。
銀行は国債漬けになっている。銀行の国債保有額は100兆円を突破し(5月末)、資産運用残高に占める国債の比率は20%弱に達した。98年までは5〜6%だったから、この間に一挙に国債保有を増やしている。その結果、株価だけでなく国債価格の変動にもろい経営に転じた。昨夏以降の国債価格の下落(金利の上昇)によって、ほとんどの銀行が債券含み損に転じた。“10年物国債の金利が1%上昇すると、大手行だけで業務純益の約半分に当たる2・2兆円の損失が発生する”との試算もある。
また、長期金利が上昇すると、国の国債利払い費は年1・2兆円増え、相続税収入の1年分を吹き飛ばしてしまう。過剰債務を抱えたままの企業も、金利が1%上昇すると利益の7割が吹き飛ぶ見込みだ。国債急落=金利急騰は、国、銀行、企業のすべて、つまり日本経済の総体に大ダメージとなる。
はたして国債暴落をいつまで防げるか。05年度には借換債(借金を返すための借金)の発行額が100兆円を突破する。90年代後半に大量発行された国債が次々と満期を迎え始めており、08年度まで借換債の増加が続く。それほどの国債を市場で消化しきれるか。日本国債への信用がさらに低下すると、内外から投げ売りされる可能性がある。すでに米系ヘッジファンドは、消費税率引き上げ→日本経済の失速→財政赤字の増大→国債価格の下落という事態を想定して、売りを仕掛け始めた。
日帝は郵政民営化を強行しようとしているが、郵便貯金については従来どおりに国債を保有させようとしている。すでに、民営化後の郵貯について、民営化法案に「国債中心」と明記することを検討し始めた。郵貯は国債残高のうち15・38%を保有している。「官から民へ」などと言いながら、民営化後の郵貯を国債消化機関として保持しようというのだ。郵政民営化の階級的狙いが労働組合解体にあることは、この点からも明白である。
以上、日本の恐慌の再激化・本格化は不可避であり、不良債権問題に加えた国債問題は日本経済を破滅に引きずり込まずにはおかない。こうした危機の中で日帝は、労働者人民に対する搾取・収奪を極限的に強めつつ、侵略戦争によってなんとか延命しようとしている。このような日帝は絶対に打倒しなければならず、必ず打倒できる。この精神をみなぎらせて、11・6−11・7大行動に万余の結集をかちとろう。
利益1000億円超の企業
社名 連結経常利益
トヨタ 17,657( 44)
NTT 15,273( 9)
ドコモ 11,011( 6)
日 産 8,096( 14)
ホンダ 6,419( 5)
キヤノン 4,481( 36)
武 田 4,460( 10)
東京電力 3,077( 14)
KDDI 2,745(2.4倍)
日 立 2,371(2.4倍)
JR東日本 2,253( 11)
JFE 2,183(2.1倍)
日本たばこ 2,135( 23)
イトーヨーカ堂 2,007( 6)
デンソー 1,962( 18)
関西電力 1,873( 7)
中部電力 1,849( 8)
ボーダフォン 1,812( ▲33)
新日鉄 1,728(2.5倍)
松 下 1,708(2.5倍)
セブンイレブン 1,700( 11)
ブリジストン 1,672( 13)
富士写真 1,649( 37)
NEC 1,605(2.6倍)
三菱商事 1,502(2.5倍)
東 芝 1,450(2.7倍)
ソニー 1,440( ▲42)
リコー 1,430( 16)
イオン 1,313( 3)
東京ガス 1,310( 43)
JR東海 1,310( 26)
信越化学 1,256( 3)
花 王 1,226( 4)
京セラ 1,150( 51)
九州電力 1,144( 30)
シャープ 1,116( 36)
東北電力 1,104( 5)
住友商事 1,090(3.8倍)
(注)04年3月末。単位億円。カッコ内は前年度比増減率、%、▲は減。
国債価格と金利
例えば100万円の国債を買い、1年後に105万円になるとする。満期は1年、額面は100万円、利息は5万円、利率(これを表面利率という)は5%。国債は市場で売買されており、価格は変動する。国債が不人気で、かりに95万円で買ったとすると、1年後の利益は105−95で10万円になる。この場合の利率は10÷95×100で10・5%となる。価格が下がると金利が上がる。この金利が流通利回り。
満期10年の国債の流通利回りが長期金利(1年以上)の基準となる。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号5面2)(2004/10/18)
第8部 戦後の出発(3) 朝鮮・中国人民の闘い
米占領下で革命的決起を主導
花岡などで蜂起
日帝は、朝鮮・台湾植民地支配、中国−アジア侵略戦争において皇民化政策、軍隊慰安婦政策、三光作戦、731細菌戦などを始め暴虐非道な虐殺、破壊、略奪の限りを尽くした。だが、朝鮮・中国−アジア人民はけっして屈服することなく、幾多の犠牲を乗りこえて抗日民族解放闘争を闘いぬき、45年8・15をかちとった。日帝は、米・英との帝国主義間戦争に敗北しただけでなく、アジア人民との闘いにも敗れたのだ。
8・15当時、日帝によって強制連行された人びと、あるいは植民地支配下で生活の糧を奪われ、やむをえず日本に渡ってきた人びとなど、数百万人の朝鮮・中国人民が存在した。それは、「未だ朝鮮独立の悪夢より醒(さ)めず、依然として不穏策動を続け」(44年1月、内務省警保局「在日朝鮮人の取締」)、あるいは「各地に於て集団暴行事件その他の紛争議を惹起(じゃっき)し又は職場を抛棄(ほうき)して逃走する者等が続出」(同)と言うように、日帝の国家総動員体制を根幹から脅かす存在だった。植民地支配・侵略戦争の泥沼的な展開の中で、日帝はその胎内に膨大な反乱勢力を抱え込んだ。
そして、こうした人びとが日本における戦後革命の先頭で闘った。45年6月30日、中国から強制連行され秋田県の花岡鉱山で強制労働させられていた中国人が「日本帝国主義打倒、中国解放万歳」を叫んで武装蜂起した。汗の一滴まで搾りつくす労働と虐殺に耐えぬいた中国人戦士は、自らを抗日別働隊と名づけ、日帝と鹿島組(当時)に怒りをたたきつけた。と同時に、「8・15」前に敢行されたこの蜂起は、全国各地の強制連行された朝鮮・中国人民の決起の口火を切る闘いであった。
とりわけ、北海道の美唄(びばい)や夕張を始めとする全国の炭坑では、8〜9月にかけて約9万人の朝鮮人・中国人が一斉に立ち上がった。「早期帰国、食糧増配、日本人との格差賃金の支払い、退職金、帰国までの生活費」を要求し、美唄での中国人労働者の闘いに続き、10月5日には夕張で朝鮮人労働組合が結成され、ストに突入した。
また福島県の常磐炭坑では、9月に在日朝鮮人会が作られ、早期帰国を求めて就労拒否闘争に入った。米占領軍(GHQ)は「進駐軍のために石炭を増産すること」を強要したが、これを拒否し10月8日からストに入った。この闘いでは、「敵は天皇制だ、朝鮮人も日本人も共同の被害者だ。日本人も朝鮮人の闘争を理解し、支援してほしい」と連帯が呼びかけられた。
帰国者への抑圧
日帝の敗戦は、アジアにおける帝国主義的支配の空白をもたらし、朝鮮や中国を始め巨大な戦後アジア革命の雷鳴がとどろいた。日本における朝鮮人・中国人の闘いはその一環だった。
日帝の敗戦=「8・15解放」を迎え、朝鮮人民は一日も早い帰国を望んだ。だが日帝は日本人の引き揚げには力を注いだが、朝鮮人民の帰国問題には取り組もうとしなかった。多くの人びとが下関や博多港などに集まり、自ら漁船をチャーターし、自力で帰国を始めた。8・15から45年末までに240万人の朝鮮人民のうち約55万人が帰国したが、台風や触雷による犠牲も多かった。しかも、政府による被強制連行者の帰還事業において、8月24日には舞鶴港で浮島丸が爆破され死者800人以上を出す大惨事が引き起こされた。
11月1日のGHQ指令によって、ようやく本格的輸送が始まったが、帰国者一人につき所持金1000円、荷物250ポンドという厳しい制限がつけられた。それは、故郷に生活基盤のない朝鮮人民には過酷な条件だった。実際、朝鮮に帰ったものの、米軍支配下の圧政によって再び渡日を余儀なくされる人びとや、帰国を断念せざるを得ない人びとが生み出され、結局、約60万人が在日朝鮮人として日本に残った。
各地で民族団体
朝鮮人を先頭にした獄中政治犯奪還の闘いにより、10月10日、獄中非転向で闘った金天海や李康勲らが徳田球一、志賀義雄らとともに府中刑務所から釈放された。出迎えた朝鮮人約400人(日本人は20〜30人)を前に、金天海は「日本帝国主義と軍閥の潰滅(かいめつ)、天皇制の撤廃、労働者・農民の政府樹立、朝鮮の完全な独立と民主政府の樹立」を呼びかけた。
こうした人びとが中心となり、朝鮮人民は全国各地で民族団体を結成した。10月、朝連(在日本朝鮮人連盟)中央本部の結成大会が開かれ、「帰国同胞の援助、生活権の確保、祖国の中央政府樹立促進」などが決議された。日帝の植民地支配・民族抑圧に対する積年の怒りをバネに、日本における朝鮮人民の民族解放闘争が本格的に始まった。
再建された日本共産党のもとで、46年4・27幣原内閣打倒人民大会や戦後初の5・1メーデー、さらに25万人が結集した5・19食糧メーデーに、朝鮮人民は先頭で決起した。
GHQは、朝鮮人・中国人を「解放人民」とする一方で、自らの日本占領政策に都合がいいように「非日本人」「日本国民」「敵国人」などとデタラメに規定し、その存在と闘いの圧殺を図った。それは、アメリカ占領軍が日本に代わってアジアを支配しようとしたからにほかならない。
46年2月17日の「朝鮮人、中国人、琉球人および台湾人の登録に関する覚書」と、47年4月28日の外国人登録令をもって、GHQと日帝は朝鮮・中国人民を大弾圧した。帰国=祖国往来を規制し、日本への再入国を図る人びとを逮捕し、長崎県大村収容所に収容・強制送還した。さらに在日朝鮮・中国人民には「居住証明」(後の外国人登録証)の所持を義務づけ、徹底的に治安管理・弾圧の対象にした。
こうした中で日本共産党は、米占領軍(GHQ)を解放軍と規定し、階級闘争の革命的発展を押さえ込み、戦後革命を敗北に導いた。日本共産党はスターリン主義として日帝打倒−世界革命の闘いを放棄し、労働者階級と朝鮮人・中国人の国際連帯闘争を裏切ったのだ。一方、ソ連スターリン主義と朝鮮や中国のスターリン主義も、帝国主義による朝鮮半島の南北分断に加担した。スターリン主義の裏切りという困難を強いられつつ、戦後の在日朝鮮・中国人民の闘いは不屈に続けられてきた。
(五十嵐茂生)
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号5面3)(2004/10/18)
臨界事故5年で集会 労働者虐殺に怒り新た
99年9月30日、茨城県東海村JCO(ウラン燃料加工施設)で臨界被曝(ひばく)事故が発生し、2人の労働者が虐殺され、667人の関係者・住民が被曝し、31万人が自宅などに待避した。
5周年目の9月30日、9・30臨界事故5周年東京圏行動実行委員会の主催で、霞が関の経済産業省(原子力安全・保安院)への抗議行動と「美浜原発事故とJCO臨界事故講演集会」が行われた。
午前10時30分(事故発生時刻)、経産省別館前に約40人が集まり、原子力事故で無念にも亡くなった労働者(臨界事故で2人、美浜原発事故で5人)を追悼した。そして、労働者にすべての責任を押しつけ、資本を免罪し自らの責任も居直る原子力行政を弾劾する集会を行った。(写真上)
参加した団体から、「臨界事故の原因と責任を明らかにせよ」「核のない社会をつくろう」などの訴えが行われた。8・6広島−8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会も発言し、「8・9長崎闘争に参加したが、その日、美浜原発事故を知った。労働者が5人も犠牲になった。政府の核政策こそが事故の元凶だ。アジア人民と連帯して核と戦争のない社会をつくろう」と訴えた。
集会後、原発推進の経産省と原子力安全・保安院への申し入れを行った。
午後6時、講演集会が渋谷勤労福祉会館で行われた(写真下)。主催者は基調報告で、原発事故多発時代に突入した現状に警鐘を乱打した。
続いて、JCOから120bの自宅で被曝した両親を原告として、JCOと親会社の住友金属鉱山を被告に民事裁判を闘っている大泉実成さんの講演が行われた。大泉さんは、母親のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を「デマだ」などと宣伝し居直る被告を弾劾し、裁判支援を訴えた。
さらに、「臨界事故の原因は核燃機構の40g均一化注文にある」ことを暴露する報告と「JCO事故の教訓が生かされないから美浜事故は起きた」ことを弾劾するアピールが行われた。
最後に講演に立った映画「ヒバクシャ」監督の鎌仲ひとみさんは、劣化ウラン弾や原発がまき散らす放射性物質による体内被曝・低線量被曝の危険性を訴えた上で、制作中の「六ケ所村ラプソディー」を紹介した。
核と人類は共存できないという原点に立ったすばらしい集会だった。
(投稿/大石文雄)
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号6面1)(2004/10/18)
11月労働者集会の成功へ!
民営化阻止の潮流が鬨の声を上げる集会 関東・自治体労働者 林原広幸
11月労働者集会への結集を訴えるときに何が重要でしょうか。われわれ労働者が資本家に負けない迫力を身につけること、現代世界の矛盾を解決するのはプロレタリア自己解放の思想と闘いであること、生命力を終えて死につつある帝国主義の攻撃をトータルにとらえて、これに人間的・根源的怒りを爆発させて訴えることができるかどうかだと思います。
11月労働者集会に来てくれというオルグではなく、小泉・奥田の戦争と民営化攻撃をわれわれと一緒に打ち破ろう、帝国主義の世界体制を根本から変える闘いをともにやり抜こう、そのための11月集会だということを、どれほどの根底性をもって、情熱と確信をもって相手に伝えられるかだと思います。
集会賛同をとるのが一番
困難そうな支部の人が、私の話を聞いて、「よく分かった。その内容で執行委員会で提起できる」と言ってくれるようなオルグをどうやるのか。それは、われわれの根本からにじみ出る迫力をもって、相手に真正面から訴えていく以外にありません。
11月労働者集会はまた、4大産別の民営化阻止共闘の全国結集闘争という意義をもつ集会です。民営化を阻止する潮流が鬨(とき)の声を上げる集会です。
私たち自治体労働者の立場から言えば、郵政の民営化はその攻撃をとおして自治体の民営化を一層推し進めるものであり、そうして公務員労働運動の息の根を止める攻撃です。2007年4月に郵政民営化をやると言っています。そうするとこれから4年、5年のうちに公務員に何が起きるか。「全員解雇、選別再雇用」というような攻撃が必ず起きるだろう。それを絶対に許さない。この決戦をやるために、私たちは11・7集会を闘うのです。11・7に結集した力でもって、民営化を阻止する全国ネットワークをつくっていくんだと訴えていきたい。
私の組合の青年労働者を、機関決定をてこに全員決起させたい。11・7集会に自治労の旗を林立させたい。そのために全力で闘います。
「11月集会派」として単組オルグを決意 関東・自治体労働者 田所幹夫
今の時代に私たちに要求されている闘いは、周りをしこしこ固めるとか、ひとりでも仲間が増えればよいとか、機会があったら登場したらいいとか、そういうレベルの活動ではないと思います。そうではなくて、労働者が今、本当に闘いを求めていることを確信し、思い切った闘いにうって出ることが大事だと、この間の経験から思います。
明日のわが身も分からないという、この厳しい世の中で、労働者は真に闘い、勝利する方針を求めているし、そのような道を示してくれる政治勢力を求めているのです。私たちがそのような労働者を信頼して、闘いを呼びかけることがとても大切だと思います。
今まで、私は自治労運動、県本部運動の中でそれなりの役職で活動してはきましたが、自らを「11月集会」派、動労千葉派として登場させ、11月集会に単組をオルグするという闘いはしてきませんでした。この秋の闘いでは、そうしたことをためらうことなく提起しオルグすることが求められています。その飛躍をぜひともやり抜きたいと思います。
たとえば、国鉄1047人闘争を支援している単組、分会の委員長を、直接、私の名前を出してオルグする闘いをぜひやりたい。「世の中を変えたい」と思っている仲間・同志が同じような気持ちでやれば、11月集会に県内から大結集をかちとることは必ずできると思います。
「イラク写真展」開き多くの人と接点もつ 東京・民間労働者 林田さゆり
「イラク写真展」の取り組みを3・20国際反戦闘争に向けて始めたが、さらに半年間継続する中で11月集会とマル青労同建設の展望を生み出しています。
写真展をやりながら、トークの時間をとります。私の活動人生の中でも「革命」と言えるような成功をかちとっています。やるたびに来場者が増えています。会場の入り口でビラをまいているのですが、ビラを見てどんどん入って来ます。仕事が終わってから来る人もいます。
アンケートを書いてもらうのですが、多くの人が書いてくれます。「なんでマスコミはこういう事実を知らせないのか」「頑張ってほしい」「どうしたらいいのか」という声で満ちあふれています。
若い人たちは、政治や世の中の動きに無関心だと思っていたら、大違いです。見たい、知りたいとみんな思っていて、人生観が変わるぐらいの驚きをもって受け止めてくれます。人びとの流動化の現れだと思います。私たちはそれに見合った運動のあり方を工夫すれば、多くの人と接点ができます。若い人も年配の人も、みな同じです。すべての人たちが何かしたいと思っているはずです。
私の職場は小さい職場ですが、気軽に誘えば、何の抵抗もなく参加します。新規採用で入ったばかりの若い女性労働者も、身近な人がやっているということで、親近感をもって受け止めてくれます。
もっともっと多くの人びとと結びついて、11月集会の成功にもつなげていきたいと考えています。
『前進』で三役オルグし分会決議をめざす 東京・全逓労働者 木戸和夫
全逓委員会で討議した内容が『前進』(2167号)の全逓委員会論文として出されました。郵政分割・民営化絶対阻止へ、04年から07年の3年間をわれわれがどう闘っていけばいいのかという道筋がはっきりと示されていると思います。闘えば勝てるという展望を労働者階級が持つことがものすごく大事です。
僕自身が職場での活動律にしている言葉は、「労働者階級の分岐・流動・再編・高揚情勢にわれわれがかみ込むんだ」ということです。分岐・流動は、われわれがいなくても明らかに起きている。だけど、職場では再編・高揚はまだなかなか見えない。郵便局の職場の中で再編・高揚をつくり出すことを自分自身の基準にしています。
支部では、早くからフラクをつくって活動していますが、情勢はそれ以上のものを求めている。われわれの闘い方が突きつけられる、待ったなしに闘いを始めなければいけない。分会、支部の権力を取ることが求められている。分会決議を取るためには、分会三役の政治傾向を分析し、どう付き合っていくのかを検討しなければならない。
今回の11月集会に向けては、たじろがずに思い切って『前進』を読んでもらい、この中身で分会の三役と話し、党派選択を迫っていく。それなしには一歩も進まない状況です。
去年の倍の動員を実現するためには、支部のメンバーで討論していくことが必要です。去年は全組合員にチケットを売ろうと総当たりしました。本気で国際連帯を訴えると、「行く」という人が出てきます。去年以上の組織体制を固めて頑張りたいと思います。
定期大会で11・7を組合員に直接訴える 東京・医療労働者 三嶋治
今こそ、帝国主義の打倒が求められているし、労働者階級を労働組合に結集させ、革命に向かって組織していく闘いに立ち上がらなければいけないと思います。小泉=奥田路線との対決が重要だと思います。それは労組破壊に向かっており、革命党の破壊につながっていく。これとの闘いだと認識しています。
医労連傘下の労組で、思い切って動労千葉労働運動を持ち込む闘いをやってきました。昨年の動労千葉が呼びかけた春闘集会への賛同に始まって11月集会にも賛同し、今年の3・20にもつながってきました。
今年は、9月の執行委員会で、昨年に続いて11・7集会に賛同しようと提起しました。それに対して執行部の三役が猛然と反対してきました。いったん保留ということになっています。
それは、4・13国鉄集会以降の反動が反映していると思います。「動労千葉排除」の論理が、日本共産党系の労組で渦巻いています。それとの全面的な対決になったと思います。結局、組合の権力を握る闘いだと位置づけて闘いたいと思います。
動労千葉の今春の3波のストの意義を訴えたことに対して、三役が言っていることは、「違和感を感じる。乗客のことを考えているのか。大衆の支持があるのか」という許しがたい論理です。だから自分の労組ではストはやらないと言うような状況です。「昨年は、間口を広げるために賛同したけれど、君からいろいろ情報をもらう中で、不一致点が拡大した」と言うわけです。彼らはNPB(日本プロ野球機構)とまったく一緒で、ストを抹殺する対応に出てきている。
しかし、11・7の国際連帯をかけた闘いに、すべての労働組合が集まって反撃を開始していく。そのことを真剣に訴えて、扉をこじ開けるために頑張りたいと思っています。
非組合員の人たちにも「ストを否定することはおかしいんじゃないか。労働組合はスト権があるんだ」という反応が出ています。僕は、11・7オルグをしながら、組合の定期大会に現場の組合員に結集してもらい、そこで直接に訴えて、11・7に組織する闘いをやりたいと思っています。
辺野古で闘う2日間絶対勝てる!と確信 東大阪・自由業 滝しんじ
9月23日、那覇バスターミナルから約2時間、昼前には辺野古のバス停に降り立った。
川に沿って少し歩くとすぐに座り込み部隊のブルーシートが見えた。気持ちよく迎えてもらい、とりあえず座り込む。今日は秋分の日とかで防衛施設局は来ないし、海にも調査船は出ていないとのこと。数限定販売の弁当を食べ、昨日から配給されているカキ氷をいただき(最高!うまい!)、今までの闘争経過などを聞いたり写真や記録資料を見たり、涼しい風で少しウトウト。
そのとき「ドーン」と腹に響くいやな重低音、なんだなんだいきなりイクサでも? 周りの人から「またやりやがった」「廃弾処理だよ、ホラ煙が上がってきた」。見ると黒茶色の煙がモクモクと、その日は計2回、次の日は海の上からも1回確認した。信じられないような場所で毎日行われている廃弾処理。これが米軍の基地がある沖縄の現実、そして目の前には大きく広がる青い青い辺野古の美しい海がある。緑の山と大地、そこに暮らす人たちや他の生き物たち、そのすべてを犠牲にして米軍の手先となり、日本政府は海上基地建設へと加速度を増している。今ここで止めなければの思いをいっそう深くする。
休日だから日ごろより訪れる人が多いとか。バスで来る団体もあるし、個人で数時間でもいいから座りたいと来る人もいる。初めての人も連日の人も、皆それなりに何かを感じて行動に移している。
交流会も終わり、時間も来たのでテントをたたみ宿舎へと向かう。明けて24日、私は調査船による潜水調査を阻止する抗議船に乗り込むことにした。カヌー部隊も考えたが、実は前日離島で行われた運動会に参加し、障害物競走のアンカー引きで腰をひねりかなりキツイ状態。詳しい報告は他の人に譲るとして、とにかくこの戦いは絶対勝つ!勝てる!と確信した2日間でした。
次回は必ず体調を整え全力で長期戦い抜く決意で辺野古を後にした。後ろ髪を引かれながら。
カヌー隊で施設局の作業船を追い払う 首都圏・学生 上山一郎
追いつめられた防衛施設局は9月30日から、ついにカヌー隊が「座り込む」リーフ内への強行突破をかけてきました。
調査船や警戒船は、いつもより2時間も早い朝7時過ぎに出港。カヌー隊も、朝のミーティングを中断し、一斉に海上に飛び出しました。
まず施設局が狙ったのは、カヌー隊の押さえていない最東端ポイントです。平行に並んだ2隻の作業船が、船首と船尾をそれぞれロープでつなぎ、潜水スポットを囲う。しかし駆けつけたカヌーは、警戒船から遠巻きに叫びたてる施設局をしり目に次々にロープをかいくぐります。ぼくは「調査をただちに中止しなさい!」「基地建設をやめなさい!」と作業船を追及。「これは民意だ」と開き直る作業の責任者。こうしてぼくらは延々2時間ロープの中に居座り、調査をボロボロにしました。
施設局は午後にはおそるおそる隣のポイントに近づいてきました。しかし、これには1隻のカヌーが追いつき、先回りしてポイントを占拠。遅れて駆けつけたカヌーもわれ先に作業船を取り囲み、完全に動きを封じました。これをなんとか振り切った作業船が再度ポイントに近づこうとしましたが、ぼくがカヌーで立ちはだかると、たまらず逆噴射。またカヌーが群がる。作業船が離れる。こうしてどんどん船をポイントから遠ざけ、ついには追い返してしまいました。
10月2日の県民大会の中で反対協の大西さんは「打ち上げ花火はきれいだが一瞬。私たちの闘いは、蚊取り線香のように施設局を追い払うまで燃え続ける」と語りました。カヌー隊はまさに蚊取り線香です。一瞬の華やかさはありませんが、海から施設局を追い払うまで一日一日闘い続けていきたいと思います。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号6面2)(2004/10/18)
共謀罪阻止決戦を宣言 10月国会闘争へ 東京で全国集会
10月3日午後、「一切の治安弾圧許すな、自衛隊はイラクから撤退しろ−共謀罪を廃案へ! 10・3全国集会」が東京・文京区民センターで開催され、200人が参加した。主催は、破防法・組対法に反対する共同行動など4団体。集会前にJR山手線全駅での街宣が100人で行われた。
日帝・小泉政権は、侵略戦争を遂行できる戦争国家づくりを目指している。そのためには、革命党の解体を始めとして労働運動や反戦運動を絶滅することが必要となる。警察がフリーハンドで労働者人民を弾圧できる治安法として、共謀罪新設が狙われているのだ。
共謀罪法案は、過去3国会で、法案提出−継続審議、総選挙で廃案、新法案の提出−継続審議となっている。10月12日開会の臨時国会では、法案の成立に総力を挙げてくるだろう。 集会は、10月20日〜22日の国会前ハンストを軸に共謀罪阻止決戦に立ち上がることを宣言する場となった。
各団体からの連帯のあいさつは、JCA・NETおよびレイバーネットジャパン、統一獄中者組合、漫画規制反対運動に取り組む漫画家、憲法と人権の日弁連をめざす会の西村正治弁護士からおこなわれた。
海渡雄一弁護士が講演に立ち、共謀罪を「社会の中の貧困層や民族的少数派、社会的反対派の抑圧のための道具となる」と厳しく批判した。
「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会の教育労働者は、「40秒間不起立」を理由とした解雇の不当性を訴えた。立川自衛隊監視テント村の女性は、ビラまきで3人が逮捕された弾圧を「国家が襲ってきた」と弾劾した。
国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会の精神科医は、「医療観察法は監視国家をつくる」と訴えた。クルド人難民2家族を支援する会の青年は、難民認定を求めるクルド人家族への支援を呼びかけた。山谷労働者福祉会館活動委員会からは、野宿者の生存権と最下層労働者の権利を守りぬく決意が述べられた。自衛隊の海外派兵に反対する会は、自衛隊をイラクから撤退させようと呼びかけた。
組対法に反対する全国ネットから九州で闘う労働者が発言し、10・17MWMに参加する5人が登壇し決意を述べた。救援連絡センター事務局の青年、ACA反資本主義行動の青年、私鉄の労働者、組対法に反対する全国ネットに参加する京都の青年がそれぞれアメリカの労働者との連帯闘争の決意を語った。不当な長期勾留をやめさせるために!十万人保釈署名運動事務局の青年は、戦争と民営化に反対する米労働者とともに闘う決意を述べた。スティーブ・ゼルツァーさんからのメッセージが紹介された。動労千葉を支援する会の労働者は、訪米団が動労千葉を先頭に20人になったことを報告した。
主催者からの基調報告では、共謀罪阻止決戦が宣言された。「共謀罪新設反対声明」が読み上げられ、参加者の拍手で採択された。国家賠償請求ネットの土屋翼さんが「広がりを持った闘争となった」と集会のまとめを行った。
最後に当面の行動方針として、@訪米団へのカンパを呼びかけること、A10月20日〜22日の国会前ハンストの支援・連帯に立つことが呼びかけられた。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号6面3)(2004/10/18)
6・12私文書弾圧控訴審 控訴棄却を弾劾する
全学連M同志に対する私文書偽造デッチあげ弾圧控訴審は、9月30日に東京高裁第10刑事部(須田裁判長)で判決公判が開かれ、控訴棄却となった。この不当判決は、科学的論理に反する暗黒の政治判決、戦時治安弾圧である。徹底的に弾劾する。
M同志は、完全黙秘・非転向で卑劣な弾圧を粉砕し戦線復帰を果たし、控訴審闘争に決起した。そして、
弁護団とともに1審中谷判決が証拠に基づかない政治判決であることを、論理学、統計学、数学を駆使して全面的に明かにした。また、01年6月12日の逮捕から1審中谷判決に至る過程のすべてが転向強要を目的とした治安弾圧であること、01年東京都議選での革命的議員創出への妨害であること、三里塚反対同盟の不屈の闘いをふみにじり、成田軍事空港を侵略戦争拠点とする攻撃であることを明らかにした。
控訴審判決は、警視庁を始め全国の警察が裏金作りに奔走していながら「文書偽造」での刑事告発が1件もないことを「法の不平等」と弾劾したことに関して、「被告には直接被害がないから関係ない」と「判断」した。警察の裏金づくりを容認する戦時裁判の腐敗堕落があらわとなったのだ。
次に、本裁判闘争の意義を2点提起したい。第一に、判決の論理は聖域ではないこと、判決は客観的論理性によって担保されるべきであり、論理学の専門家が疑問を呈するような中谷判決は、判決として通用しないことを本裁判の争点として明らかにした。控訴審判決で「1審判決の論理性」そのものの検討を強いたのである。
第二に、指掌紋鑑定を始め裁判鑑定の非科学性を明らかにしたことである。特に、現在の法廷で公認されている「12点法」の根拠とされる「指紋鑑定基準(案)について(昭和54年12月13日付)」とする警視庁鑑識課文書を開示させたことの意義は大きい。それは、表紙に「取扱注意」と記され25年間一般公開されず秘匿されていた代物である(同時に、警察は25年間これ以上の研究を一切しなかったことも判明)。今回、弁護団が情報公開請求で初めて開示をかちとり、控訴審で証拠請求したが、検察は不同意にした。権力自らがこの文書の信用性を否定したのだ。
控訴審判決は、現行鑑定方法で問題はないと居直ったが、しかし、鑑定の科学性を徹底検証する足場を打ち固めたのである。裁かれるべきは警察と裁判所であり、国家である。転向強要と治安弾圧という敵の狙いは完全粉砕された。さらに進撃しよう!
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2170号6面4)(2004/10/18)
藤本敏夫同志を追悼する
81年の労働者革命家 人生の軌跡に学ぶ
革共同関西地方委員会
革共同兵庫県委員会
革共同の兵庫県党を創始から担い、労働者革命家魂そのものであり続けた藤本敏夫(大徳闘志夫)同志が8月31日午後4時31分、神戸市長田区の神戸共同病院で膵臓癌(すいぞうがん)により逝去した。享年81歳。彼が闘いの日々を送り愛した〈長田〉労働者街の真ん中での、志と力を燃やし尽くした最期だった。
藤本同志は、5カ月間に及ぶ驚異的な闘病の末、献身的に看病を尽くされた最愛のつれあい久子さん、県党の同志・親族ら5人と、医師・看護師さんらに見守られながら旅立った。
9月2日正午から告別式が行われた。彼が好きだった音楽が流れる中で、無宗教・友人葬として進められた。雨の中、彼の軌跡をたたえる100人以上の家族、同志、住民の方々により葬儀が行われ、悲しみの中にも感動をもって彼は送られた。
藤本同志は、筑豊田川での共産党細胞の創設を口火に、1960年には神戸労働者ブントを結成し、革共同に結集して労働者革命家として生涯を全うした。その彼の足跡をしっかりと受け継ぎ、闘っていかなければならない。
阪神工業地帯の中心であり、藤本同志の闘いの地であった長田・神戸に、95年の震災以来、今本格的に労働者細胞建設が芽吹きつつある。それをさらに進めプロレタリア革命の拠点とする大きな任務がある。これは藤本同志からしっかり託された仕事だ。彼の遺影とともに歩もう。われわれはそれを力にして必ず日本プロレタリア革命に勝利する。そのことを彼の霊前に固く誓う。
1923年生まれの藤本同志の81年にわたる生涯は、日本の貧農出身労働者がいかにして共産主義の党に接し、党をつくったかの手本であり、また労働者革命家のたくましさ、厳しさ、豊かさ、楽しさ、温かさを、労働者自己解放を全身で示し教えてくれている。その生き方が自然のうちに多くの同志を育てた。
今、新指導路線を歩むわれわれにとって、藤本同志の闘いの軌跡は深く学ぶべき対象としてある。
45年8月、藤本同志は奈良の海軍航空隊軍属として敗戦を迎えた。父親の死もあり生活の困窮から筑豊三井田川炭坑で働き始め、23歳で日本共産党田川細胞の結成に加わった。27歳の時、兵庫県養父郡の郷里に戻って製材労働者となり、共産党但馬地区委員として、山村工作隊活動を先頭で担った。『新日本文学』の投稿者でもあった。明延鉱山でのビラまきで不当逮捕され、「モクヒ35号」として有罪となった。56年、33歳の時に神戸・長田に居を移し、共産党神戸西地区委員として全日自労運動に参加した。57年に久子さんと結婚した。
59年安保闘争の日本共産党の方針に疑問を持ち、共産主義者同盟(ブント)に加盟した。安保闘争後、ブント分裂の過程で61年革共同と接触し、革共同の隊伍で60年代を闘った。68年、神戸反戦青年委員会の結成を組織し、三菱重工神戸造船所の過酷な下請け日雇い労働の中で様々な闘いを担い、青年労働者を闘いの担い手に育てた。70年闘争の「二つの11月決戦」での20人を超える神戸反戦の逮捕者・負傷者のすべてが、藤本同志に育てられた労働者だ。その後、脳梗塞の発病で一線から退いたが59歳まで労働者生活を全うした。一貫して党と同志を熱く援助し、重要な任務を担った。昨年2月のイラク開戦阻止の神戸反戦デモには車椅子で参加した。革共同の5月テーゼ路線への転換を本当に歓迎し、期待し、第6回大会の成功を喜んだ。
労働者革命家としての彼の軌跡をしっかりと受け継ぎ、花咲かせる任務が、残されたわれわれに課されている。今、青年労働者たちの鮮烈な決起がここ兵庫の地でも大きく始まっている。この姿を大徳さんにも見せたかった。同志が担った戦後革命、60年、70年安保闘争以上の激動情勢の目前で同志は逝った。
大徳さん、安らかに眠ってください。私たちはその遺志を実現するために闘います。必ず勝利します。
---------------------------------------------------