ZENSHIN 2002/11/18(No2078 p06)

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週刊『前進』(2078号1面1)

有事3法案絶対阻止! 教育基本法−憲法改悪粉砕! 12・8日比谷野音大集会へ
米帝ブッシュと日帝・小泉のイラク・北朝鮮攻撃阻止を
 1047人闘争勝利・国労大会決戦へ

 米中間選挙が上下両院とも共和党の勝利に終わり、米帝ブッシュはイラク侵略戦争の開戦に向けた準備をいよいよ強化している。6日、米英は、国連安保理に対イラク最後通牒(つうちょう)というべき決議案を提出した。フランス、ロシア、中国も含めて8日にも採択しようとしている。急迫する米帝(国際帝国主義)のイラク攻撃を絶対に阻止せよ。全世界の人民と連帯して11−12月イラク反戦闘争―在日米軍基地闘争に立とう。陸・海・空・港湾労組20団体と宗教団体が呼び掛ける12・1大集会に合流しよう。反戦共同行動委員会が主催する12・8闘争に全国から総力結集し、イラク反戦・有事立法粉砕闘争を全力で闘おう。同時に、11・10全国労働者総決起集会を新たな起点に、危機を深める日帝の大資本攻勢と対決し、来春闘の階級的高揚に向けて闘いを強めよう。そして、5カ月余に迫った来年4月統一地方選挙闘争への決戦に突入することを訴える。

 第1章 国労5・27臨大弾圧粉砕へ総決起せよ

 現下の最大の闘いは、5・27国労臨時大会闘争に対する大弾圧との攻防である。ここに国鉄労働運動の存亡、国労の組織的防衛と階級的再生をかけて全力で闘いぬこうではないか。
 日帝権力は、10月7日、闘争団員2人を含む国労組合員5人と支援の3人の計8人を不当逮捕し、10月28日、支援の2人を除く6人を「暴力行為等処罰法」で不当にも起訴した。さらに翌29日には、国労組合員2人を追加逮捕する暴挙に出てきた。闘う国鉄労働者に対する不当極まりない攻撃であり、国鉄労働運動破壊に権力が直接乗り出したという点では、1949年松川事件のフレームアップ弾圧以来と言っていい重大弾圧である。
 それは、闘争団への統制処分を強行決定した国労本部に反対して、ビラまきと説得活動を行ったことを「暴力行為」とするものであり、正当な組合活動に対する大弾圧だ。ここにおいて、国労本部・東京地本酒田一派が組合員を権力へ売り渡す大裏切りを行った。
 この攻撃は、イラク侵略戦争参戦、有事立法攻撃を進める日帝・小泉が、国鉄決戦の中に革命のヒドラを見たこと、荒々しい労働運動の発展を感じたことを告白するものであり、だからこそ国鉄闘争圧殺に襲いかかってきたのだ。
 日帝権力は、革共同の91年5月テーゼ以来の労働運動路線、95年19全総以来の国鉄決戦路線が、闘う国鉄労働者の中に物質化され、現実化していることに恐れおののいているのである。
 だから、権力は「中核派だから弾圧していい」と叫び、過激派キャンペーンによって闘う国鉄労働者を委縮させ、闘いの骨格をたたき折ろうとしているのだ。
 だが、このような弾圧で革共同に打撃を与え、国鉄労働運動を壊滅できると思ったら、大きな誤算だ。なぜなら、権力がやっていることは、戦闘的・階級的労働運動のあり方に対するむき出しの弾圧であり、闘うすべての労働者、労働組合に対する公然たる弾圧宣言であるからだ。今回の攻撃は、日本の労働者の階級的な戦闘的意識を呼び覚まし、必ず火を付ける。
 松川弾圧に対する闘いは当初の日本共産党の逃亡をのりこえ、本人、家族、支援が総評に働きかけて一大国民運動をつくりあげていった。このように、この国労組合員への弾圧に対する反撃を全労働者の中に広げ労働運動を塗り替えるような闘いに発展させよう。
 国労弾圧をはね返し、国労大会決戦を闘いぬこう。
 10・27「団結まつり」は、1047人闘争の当該である闘う国労闘争団、全動労争議団、動労千葉争議団の3者が手を組む画期的な闘いとなった。
 今や4党合意路線は完全に破産した。国労本部高嶋・寺内執行部を退陣に追い込み、国労の戦闘的再生をかちとろう。
 そして国鉄決戦を軸に日帝の一大資本攻勢と闘う陣形をつくろう。日帝経済の危機は、世界経済の29年型恐慌への本格的突入の中で、デフレスパイラルと金融危機の一層の深刻化となっている。小泉・竹中の「総合デフレ対策」は、独占と金融資本が延命するためのものである。「不良債権処理の加速」「構造改革の加速」は、恐慌と倒産ラッシュとリストラ、大失業を不可避とする。資本攻勢との闘いへの総決起が待ったなしに求められている。
 今日の資本攻勢は、@大失業、A賃下げ、B終身雇用制の解体と不安定雇用化、Cアウトソーシング(業務の外注化)、D解雇ルールの法制化など労働法制改悪、労働者の基本的権利破壊、治安弾圧強化、E戦後社会保障制度の解体など全面的である。
 連合、全労連の資本攻勢への全面屈服と、カクマル中央派とJR総連カクマルの敵対を粉砕し、11・10労働者集会から03春闘に向かっての闘いを構築しよう。

 第2章 国連決議とイラク開戦情勢の超切迫

 11〜12月イラク反戦・有事立法粉砕闘争の大衆的爆発をなんとしてもかちとるために、まず米帝ブッシュが、ブッシュ・ドクトリン=新帝国主義宣言をもって、イラク侵略戦争開戦、遅くとも1〜2月開戦に向かって突進していることをはっきりさせよう。
 米軍は空母5隻をペルシャ湾岸周辺に集結しつつある。米英が提出した新しい国連安保理決議案は、イラクの国家主権をまったく認めず、帝国主義に全面屈服することを求めるものである。何よりも、国連決議にイラクが応じない時は、米帝単独でもイラク攻撃に踏み切ることが予定されている。この攻撃は、純然たる侵略戦争であり、帝国主義的強盗戦争そのものだ。
 米英帝のイラク侵略戦争の切迫に対して、全世界で闘いが巻き起こっている。その規模はベトナム反戦闘争以来の巨大さになっている。しかも、ベトナムの時は、米帝の敗勢が明らかになり米兵の犠牲も甚大になってからだったが、今回は開戦前からすでに巨大な規模で、開戦を阻止する勢いで燃え上がっている。
 さらに、ロシアのモスクワで起こったチェチェン人民の民族解放・革命戦争の特殊的=極限的形態の決起は、プーチン政権の残虐極まる虐殺を受けたが、それによってチェチェン人民の民族解放闘争を根絶することは絶対にできない。それはロシアの労働者人民に血債の問題を問い、民族抑圧・大虐殺の上に成立しているプーチン政権を打倒する課題を突き付けている。ロシアの反スターリン主義・第2革命の問題が強烈に提起されたのだ。
 今や世界中でムスリム人民の決起が起こっている。何よりもパレスチナ人民の不屈の闘いが続いている。まさに国際的内乱の火の手が世界中で上がっているのである。イラク反戦闘争を、米日帝に対する労働者階級人民の壮大な反乱として爆発させよう。

 対北朝鮮重圧

 日帝は、テロ対策特措法に基づいてアラビア海に派兵している海自の派遣期間を19日からさらに半年再延長することを決定した。米帝のイラク攻撃の発動に対して、新たな法的措置を含めて、共同的・競合的に参戦しようとしている。自衛隊の恒常的出兵を弾劾して猛然と反戦・反軍闘争に決起しよう。
 また、この闘いは米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争に対する闘いと一体のものである。イラク侵略戦争が、北朝鮮攻撃の情勢を決定的に加速している。この間の沖縄米軍の演習のすさまじさは、イラクへの出動準備であるとともに、北朝鮮との戦争を想定したものだ。
 4日付の東京新聞によると、航空自衛隊が、米軍の空中給油機を借りて来年4月にも空中給油訓練を行う。発注した給油機が届く4年後を待たずに、米軍機を使って、九州西方の東中国海上空で行うというのだ。空自幹部は、「米国によるイラク攻撃が始まれば北朝鮮がどう出るかわからない。……必要な事態もあり得るので訓練を前倒しする」と述べている。きわめて重大な事態だ。日米帝はイラク攻撃準備と同時に、北朝鮮攻撃シフトにすでに入っているのだ。
 この中で、拉致問題を口実にした排外主義キャンペーンが振りまかれ、拉致問題と核問題を侵略戦争の格好の口実とした戦争外交が展開されているのだ。有事立法の「予測事態」を前面に出した修正論議が進められているのも、イラク攻撃に連動した北朝鮮侵略戦争を想定しているからだ。
 10月26日のメキシコ・ロスカボスでの日米韓首脳会談の共同声明はきわめて重大である。ここにおいて日米帝の側の対北朝鮮の対応を転換させると表明した。すなわち、共同宣言で「3首脳は、今や北朝鮮と国際社会との関係は、北朝鮮が核兵器開発計画を撤廃するために迅速かつ目に見える行動をとることにかかっていることで一致した」とし、北朝鮮との関係が戦争になるかどうかは北朝鮮の対応いかんにかかっていると述べている。
 つまり、「イラクの次は北朝鮮」という米帝の世界戦争計画に沿って、対北朝鮮の国際包囲網をつくるということがそこでの基本的確認となったのである。
 日帝の日朝国交正常化交渉は、ブッシュ・ドクトリンのもとで、拉致問題と核開発問題を口実とし、テコとして、北朝鮮に侵略戦争を仕掛ける戦争外交だ。拉致事件は、北朝鮮スターリン主義=金正日政権の反革命的反人民的政策であり、断罪されなければならない。しかし、今行われていることは、それを口実に「拉致と核が優先議題だ」と北朝鮮に迫ることをつうじて、北朝鮮政権を転覆する戦争を構えるものである。日帝・小泉は、米帝の世界戦争計画を推進するプロセスとして戦争外交に突っ走っているのである。

 有事立法攻撃

 有事立法3法案が、3年前に成立した周辺事態法と完全にリンクしつつ、ブッシュ・ドクトリンのレベルにバージョンアップした日帝自身の北朝鮮・中国侵略戦争法案であることはますます明らかだ。政府は11日にも、有事法制特別委員会の審議を行うとしており、今国会で修正協議も含めて、成立への動きを加速させている。
 武力攻撃事態法案の修正論議は、「予測」段階での侵略戦争をストレートに合法化するものだ。国民保護法制は、国民の保護などとはまったく逆に、「国民の権利剥奪(はくだつ)法案」であり、「地方自治体の権限中止法案」であり、「隣組制度復活法案」「戦争動員拒否処罰法案」だ。
 個人情報保護法案は報道・言論統制法案であり、有事立法の不可分の一環である。民主党は修正協議に応じるとしており、一気に成立が図られようとしている。絶対粉砕しよう。それと一体の住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)=国民総背番号制度への怒りが広がっている。
 そして、人権擁護法案は、報道・言論統制の悪法であると同時に、差別糾弾闘争の禁止法案であり、部落解放同盟全国連つぶしの攻撃だ。11月7日に審議入りしており、きわめて重大な情勢だ。
 さらに重大なことは、憲法改悪に向けての動きが決定的に進められていることだ。衆院憲法調査会は11月1日、発足後今日までの調査の経過をまとめた「中間報告書」を賛成多数で議決し、同会長の中山がこれを衆院議長に提出した。第9条について、「解釈改憲は問題だ」という主張を前面に置くことで、9条改憲を主張している。改憲への重大攻撃である。さらに、この憲法調査会の動きには野党民主党が完全に同調している。中野寛成幹事長は「論憲から創憲」と言って改憲を支持し、公明党は「加憲」なる造語で改憲派に加わった。改憲へさらに事態は進んだのである。
 教育基本法改悪攻撃は改憲攻撃そのもの、その重大な一環である。キーワードは「愛国心」であり、戦争に動員する国民づくりが目指されている。麻生自民党政調会長は「通常国会で教育基本法改正を」と発言し、闘いは待ったなしの状況に入った。各地での「1日中教審(公聴会)」に対する闘いを取り組もう。
 有事立法粉砕闘争の一環として、沖縄を米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争の最前線出撃基地にする攻撃と全力で闘わなければならない。SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)最終報告貫徹・名護新基地建設の攻撃を真っ向から粉砕しよう。沖縄を、イラク侵略戦争阻止、有事立法粉砕の最前線の闘いにしよう。17日投票の沖縄県知事選で稲嶺打倒・新基地建設阻止の実現のために吉元政矩(まさのり)候補に投票を集中しよう。
 三里塚では、暫定開港の強行によって敷地内農民をたたき出そうとした攻撃が不屈の闘いによって打ち返され、「北側延伸」攻撃も行き詰まっている。北朝鮮侵略戦争の出撃基地としての三里塚空港を粉砕し、廃港をかちとろう。

 第3章 03年統一地方選挙勝利へ闘い強化を

 03年統一地方選挙闘争に向かって全力で体制を強めるよう訴える。03年4月27日の統一地方選まで残り半年を切った。杉並区議選を始めとする各地の選挙闘争必勝の陣形を築こう。何よりも「イラク侵略戦争反対、有事立法粉砕」を掲げ、反戦闘争の渦を巻き起こすことである。同時に、介護保険闘争をさらに強化して闘うことである。
 選挙闘争は権力、カクマルとの闘いに打ち勝って初めて勝利する。権力は卑劣な組織的妨害と弾圧を仕掛けてくる。カクマルもまた、自らの組織的危機を選挙妨害でのりきるべく敵対行動を開始している。
 ファシスト・カクマルは頭目・黒田寛一の「9・11ジハード自爆万歳」論を貫徹できず、路線的にグラグラである。「謀略論」路線に舞い戻りを策している。大衆闘争への介入と破壊策動を粉砕して、カクマルを打倒・一掃しよう。
 分割・民営化に率先協力したJR総連カクマルは、労資結託体制を維持しようと躍起である。JR総連を追い詰め、打倒する闘いとして、4党合意路線を完全に粉砕する国鉄決戦に勝利しなければならない。
 日本共産党は、9・11以来「テロ根絶」論を振り回して帝国主義に屈服し、労働者人民の闘いに敵対してきた。彼らの反革命路線の核心は「全世界の労働者階級と被抑圧民族人民は連帯して帝国主義を打倒しよう」という思想と闘いに全面敵対し、帝国主義の支配を永続的に容認していることにある。帝国主義が危機を深め、世界大恐慌と世界戦争に向かって進んでいる時に、帝国主義の最後の番兵になり下がった日本共産党を許すことはできない。
 長期獄中同志奪還の闘いを一層強め、とりわけ爆取デッチあげ4同志を即時奪還するためにさらに奮闘しよう。1億円保釈金カンパを今こそ集めよう。
 年末一時金カンパに全力を集中するときだ。闘いの中で、党勢倍増闘争をどん欲に追求しよう。そのためにも、「機関紙活動の手引き」を学習し、機関紙拡大闘争に恒常的に取り組むことを訴える。機関紙を読み、持ち込み、拡大することが日常的な活動であるような作風を打ち建てよう。
 イラク反戦・有事立法粉砕と国鉄決戦を軸とする資本攻勢との闘いの嵐(あらし)のような大進撃の中でこそ、社・共をのりこえる労働者党を建設するのだ。

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週刊『前進』(2078号2面1)

4党合意にしがみつく本部打倒へ 国労定期大会決戦へ総決起を
 弾圧粉砕し権力・資本と闘う路線と執行部を確立しよう

 11月24、25日の国労第70回定期全国大会に向けて、攻防の核心はいよいよ明らかになってきた。日帝国家権力は、国労組合員らへの10・7―29弾圧をもって大会に向けた攻防に露骨に介入し、国労と1047人闘争の解体を策している。他方、国労本部、チャレンジ一派、反動革同、東京地本・酒田一派は、この弾圧に積極的に加担し組合員を売り渡すことで4党合意にしがみつき、闘争団切り捨てと国労の自己解体の道を突き進んでいる。定期全国大会の課題は、この国労弾圧を粉砕する闘いと一体のものとして、国労本部の現執行部を打倒し、4党合意を完全に葬り去り、権力・資本と原則的に闘う路線と執行部を打ち立てることだ。もって国労の階級的再生をかちとり、1047人闘争の不屈の前進をつくり出すことである。そのために、国労組合員と支援の総決起を訴える。

 国労破壊狙った松川事件型の弾圧に完黙非転向で対決

 10月28日、日帝権力・東京地検は、10・7弾圧で逮捕された8人のうち国労組合員5人全員と支援1人を不当にも起訴した。翌29日には、西日本エリアの国労組合員2人を新たに逮捕する第2次弾圧を強行した。起訴された6人を守り抜き、即時釈放をかちとるとともに、新たに逮捕された2人の防衛と奪還の闘いに総力を挙げなければならない。そして、裁判闘争を一大労働運動裁判としてかちとるための陣形をつくり出さなければならない。
 この弾圧は、「暴力行為等処罰法」という戦前来の労働運動弾圧法を持ち出して、正当な組合活動を弾圧し、国労内の路線対立に介入したものである。この前代未聞の弾圧の中に、国鉄労働運動の前進に対する国家権力の恐怖を見ることができる。イラク侵略戦争の切迫、有事立法攻撃、大失業攻撃の激化の中で、国鉄労働運動の前進が日本労働運動の荒々しい発展を切り開くことを恐れ、これをたたきつぶそうとして大弾圧をしかけてきたのだ。
 この弾圧は、5・27臨大の闘いが組合運動そのものであるにもかかわらず、「中核派=過激派による暴力行為」として押し出して強行された。国家権力は、労働者階級の闘いを押しつぶすために、このような形の弾圧を常套(じょうとう)手段とするのだ。
 それは、50年朝鮮戦争と軌を一にして戦後革命を押しつぶすために強行された国労への弾圧をほうふつとさせる。定員法による首切り攻撃の中で、1949年に「下山」「三鷹」「松川」の三大フレームアップ事件が起こった。いずれも「国労と共産党の仕業」と宣伝され、三鷹事件、松川事件では国労組合員らに対する弾圧が強行された。
 これに対して、当初、日本共産党も国労も、真正面から対決できず、定員法による10万人首切り攻撃とレッドパージに対する有効な闘いを組めなかった。
 しかし、松川事件の弾圧を打ち破る闘いは教訓的である。松川事件とは49年8月に福島県の東北線松川駅付近で列車が転覆し乗務員3人が死亡した事件だ。この事件で国労と東芝労組の組合員ら20人がデッチあげ逮捕され、翌50年12月には福島地裁が死刑5人、無期5人を始め、全員の有罪判決を出した。
 その後、被告・家族が先頭に立って法曹界や学者・文化人、総評とその傘下の労働組合に支援を訴えた。この過程は、50年に朝鮮戦争での「国連軍支持」を掲げて結成された総評が「平和四原則」で「ニワトリからアヒルへ」転換し、戦闘的に発展する時期である。
 総評傘下の労組で判決に抗議する決議が上がり始め、53年の国労大会は「公正裁判要請」を決議、総評大会でも決議が上がる。そして国民的運動が発展し、58年には松川事件対策協議会が結成され、60年安保・三池闘争の高揚の中で、63年には最高裁で全員の無罪確定をかちとったのだ。
 重要なことは、当時の日共の制動や無方針をのりこえて、被告と家族が必死に頑張り、国労や総評に働きかけて大衆的反撃をつくり出したことだ。それが、国労・総評労働運動の戦闘的発展と結びついて勝利をかちとったのである。
 労組つぶしを狙った弾圧に対しては、ひるまず反撃することこそが、弾圧を打ち破り、その労組の発展につながるということだ。

 組合員を売り渡し執行部に居座り策す高嶋らを許すな

 今回の国労弾圧も、まさに国労つぶし、国鉄闘争つぶしを狙った弾圧である。獄中の闘争団員を始めとする組合員と家族は、国労の誇りをかけて不屈に闘っている。この決起は、弾圧を根幹において打ち破っている。全力で支え抜き、国労と国鉄闘争支援陣形の総反撃をたたきつけることが求められている。
 国労本部は本来なら、この前代未聞の権力の介入に対決し、組合員を守るために闘わなければならない。
 だが、高嶋委員長らは、抗議声明を出してほしいという組合員の要請に対して「逮捕は機関の指示に基づく行動の中で起こったことではない」などと言って、弾圧への加担を居直っている。
 彼ら本部のチャレンジ一派と反動革同、東京地本・酒田一派こそ、この弾圧を引き出した張本人である。
 5・27臨大では、会場を機動隊が完全に包囲し、代議員らは宿舎からバスで会場に乗り付けた。傍聴からも閉め出された組合員は、大会参加者へのビラまきや説得を行うためには、この宿舎に駆けつける以外になかった。それは組合員の正当な権利であり、正義の闘いだ。団結を守るためのギリギリの決起である。それに対して国労本部は、「暴行を受けた」などという「被害届」を大会警備の組合員に出させ、権力のデッチあげ弾圧に加担したのだ。
 このような弾圧への加担は、彼らの4党合意路線=「政治解決」路線の行き着いた先である。
 4党合意による「政治解決」とは、「JRに法的責任なし」を大会を開いて決定せよ、裁判を取り下ろせ、などという政権与党などの不当な介入を受け入れ、権力やJR資本に「人道的解決」を懇願するものだ。それは国家的不当労働行為との闘いを全面的に投げ捨て、解雇撤回闘争を放棄するものだ。
 国家権力は、この4党合意を強制し、国労を解体することを狙った。だが、闘争団を先頭とする1047人の不屈の闘いがこれを打ち破り、4党合意による「解決」を破産させた。
 追いつめられた国家権力が与党3党声明を突きつけ、闘争団の除名処分などを迫り開催させたのが5・27臨大だった。それでも、闘争団を屈服させることができなかった。それどころか、逆に鉄建公団訴訟や1047人闘争陣形の発展という新たな闘いを生み出してしまった。
 国労本部は、鉄建公団訴訟原告の闘争団員を査問委員会に送致したが、査問委の審議も進まず、定期大会での除名処分発動は不可能だ。8月末には国労が「雇用対策」を行うという方針を出し、闘争団へのオルグを行ったが、闘争団の怒りを買っただけだ。
 このままでは、4党合意の最後的な破産を確認し、本部は責任をとって総辞職する以外にない。
 こうして、どん詰まりに追いつめられた国家権力は、定期大会に向けて、反対派組合員を逮捕する10・7弾圧を強行したのだ。国労本部も、完全に八方ふさがりになる中で、定期大会をのりきるために、国家権力の弾圧に自らの延命を託したのである。
 これが、4党合意以来、国家権力に全面的に依存し、懐深く抱え込まれてしまった国労本部の行き着いた姿である。そして、それは国労本部の一貫した「和解路線」―「政治解決路線」の帰結でもあるのだ。
 今や高嶋―寺内執行部の唯一の方針は、「政府は4党合意に基づく解決案を示せ」などと言って、あくまでも4党合意の破産を塗り隠し、自らの責任を棚上げして本部に居残ることだ。
 反動革同も、「4党は、採用差別問題の具体案を示す責任がある」などと言っている。日共中央のペテン的な「4党合意依存路線からの転換」=「再構築路線」の正体がこれだ。
 彼らは結局、「一部闘争団の勝手な行動が解決を妨害している」(運動方針案第1次草案)と責任を転嫁し、何がなんでも闘争団を切り捨てようとしている。そうして、国労を自ら解体し、JR連合に合流しようとしているのだ。
 この本部執行部を今こそ打倒しなければならない。

 全動労への超反動判決弾劾1047人の不屈の団結を

 この間の闘いの前進は、ついに1047人闘争の新たな発展をつくり出している。10・27団結まつりや各地の「連鎖集会」では、国労闘争団、全動労争議団、動労千葉争議団の三者がそろい、被解雇者の団結を軸とした新たな共闘陣形がつくられつつある。これがイラク反戦・有事立法阻止、大失業攻撃粉砕の闘いと結びつき、アメリカや韓国の労働者と連帯した国際的な闘いに発展している。
 10・7―29国労弾圧は、こうした闘いを抑え込むためのものだったが、逆にこの反動を押し返して闘いが発展しているのだ。
 いまひとつ、1047人闘争に対する反動として、10月24日の全動労JR採用差別事件での東京高裁判決がある。
 判決は、「採用手続きの過程に不当労働行為があったときは、JRは不当労働行為責任を免れない」としながら、不当労働行為の存在を否定し、中労委の救済命令を否定した。国鉄分割・民営化反対の行動によって全動労組合員が劣位に評価され、採用率が低かったのは、「国鉄の再建という当時の特別な状況下における労働者の団結権の保障と企業の採用の自由の調和点として、不当労働行為に当たるとはいえない」と断じているのだ。
 要は、国策に反対するなら、組合つぶしも解雇も当然だというのだ。断じて許せない超反動判決だ。
 国労事件の判決は、国鉄改革法を盾に取り、仮に国鉄が不当労働行為をやっても、その責任はJRに及ばないとした。今度の判決は、国鉄分割・民営化過程における不当労働行為はなかったと言い放っている。
 なんとしてでも1047人闘争を解体するという政治的意図に貫かれた悪らつな判決である。
 この判決が示すことは、政府・JR資本と徹底的に原則的に対決する以外に勝利はないということである。動労千葉のようにJR資本・JR総連カクマル結託体制と実力で闘い、その本体の闘いと争議団・闘争団の闘いが一体となって進むことこそ勝利の道なのである。
 そのためにも、なんとしても国労定期大会で、4党合意を破棄し、極悪執行部を打倒し、国労の再生をかちとらなければならない。国労弾圧粉砕の闘いの成否をもかけて、定期大会決戦に勝利しよう。

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週刊『前進』(2078号2面2)

全金本山年末物販アピール 完全勝利へさらに攻勢を

 全金本山労組の闘いは32年目にして最大の正念場を迎えている。全金本山闘争の勝利をかちとるため、年末物販・カンパ闘争に決起することを心から訴える。
 本山資本は争議の張本人である大株主・本山一族が経営陣から逃亡して以降、団交すら開かないで逃げ回り続けてきた。これに対して全金本山労組は、本社門前闘争、東京支店闘争、メインバンクのみずほ銀行闘争、ユーザー企業への申し入れ行動など闘争を強め、今年10月10日には団交をかちとり、いよいよ争議責任からの逃げを許さない状況に資本を追いつめている。
 全金本山闘争の完全勝利とは、青柳充氏、熊谷春男氏の2人の被解雇者の解雇撤回と、ロックアウトされている組合員29人をあわせ31人全員の就労である。
 2人の解雇について、本山資本は「(反動判決で)決着済み」と団交で取り上げることも拒んできたが、今では団交でも地裁の和解協議でも「争議解決時には2人の解雇を撤回する」と表明せざるをえないところにまで追いつめられている。
 そして就労問題では、仙台地裁での別棟就労をめぐる裁判がこの12月に結審を迎える。この裁判で本山労組は、就労問題が解決しないのは会社側の就労拒否にあることを暴ききった。
 本山資本は口では「全面解決したい」と言いつつ、地労委や地裁の和解の場で自ら示した就労条件を「賃金月14万円」「日当」「アルバイト扱い」とどんどん後退させ、あげくに経営悪化を口実に全員退職を求めるなど就労を拒み続けてきた。また裁判の準備書面では、本山闘争の本質は「全金本山労組の闘争至上主義」という主張をまたもくり返している。しかしそんな中傷で、1972年12月のロックアウトから30年、本山労組の組合員であるという一点で労働者を職場から排除してきたことを正当化することはできない。
 さらに仙台地裁の責任も厳しく問わなくてはならない。そもそも73年7月の「別棟就労」を不当と訴えた裁判が今日までたなざらしになってきたのは、仙台地裁が74年12月、別棟就労は「不当労働行為の意思を持ってなされたとは認められない」という仮処分決定を行ったからだ。
 別棟就労とは、200人の全金本山支部(当時)組合員だけを有刺鉄線と金網で隔離された小さな工場に押し込め、暴力ガードマンの監視下において、組合脱退か退職に追いこもうとした組合つぶしの攻撃である。実際、76年3月には仙台地労委が「別棟就労命令は不当労働行為であり、即刻原職に戻すべき」とする命令を出した。
 ところが総評・全国金属は仙台地裁の反動判決に飛びつき、別棟就労を支部に強要し、上からの分裂を持ち込んだ。佐藤満男組合員は、自らの命を絶ってこれに抗議した。まさに労働者の命がけの団結で労働組合を守りぬいてきたのだ。
 労働者の怒りで仙台地裁を包囲し、大株主・本山一族、みずほ銀行の責任を徹底追及し、全金本山闘争の完全勝利をかちとろう。
 そして今こそ本山闘争に学び、闘う労働運動を荒々しく復権させる時だ。
 全金本山労組は今年10月4日、県内の連合傘下労組役員などとともに「STOP! 有事法制/はねかえせ! 首切り・リストラ宮城県集会」を呼びかけ、90人を超える仲間が結集した。本山労組と地域の労組が公然と合流するという画期的なことが実現されたのは、闘う団結と共闘が真に求められているからだ。
 JAM定期大会でも「(合理化と闘えないままでは)労働組合の体をなしていない。行動方針を出せ」「未組織労働者の生活を守るための運動を強化せよ」と、本部を追及する意見が続出した。有事法をめぐっても左右の意見が激突した。旧総評系の全国金属機械に原水禁からの脱退まで強要して結成されたJAMからついに怒りの反乱が始まった。
 今、多くの仲間が呼びかけを待っている。本山物販闘争をとおして「一人の首切りも許さない」という労働組合の原点を持ち込み、闘う団結をつくり出そう。

 ◇販売品目◇
(円)
1
札幌ラーメン
1,000
2
稲庭うどん
2,800
3
飛騨高山ラーメン
1,000
4
讃岐うどん
1,000
5
博多ラーメン
1,000
6
信州五割そば
1,300
7
りんごジュース
1,100
8
梅干し
1,500
9
ヨーロピアンコーヒー
670
10
即席みそ汁
1,200
11
釜出し一番石けん
1,100
12
黒糖ドーナツ棒
1,500
13
とうもろこしホワイトチョコ
1,000
14
ビーフカレー
750
15
Q・B・Bチーズ
870
16
ヨーグルトレーズン
1,000
17
玉ねぎスープ
1,300
18
マカダミアナッツ
950
19
松前漬
900
20
いかチーズサンド
900
21
丹波産大黒豆
1,000
22
しん農大黒飯
1,000
23
ほたて貝柱
850
24
スモークドチキン
1,300
25
黒ごまピーナツ
950
26
ウーロン茶
500
27
梅エキス
1,500
28
牛たんの干し肉
1,000
29
チーズかつお
900
30
梅にんにく
1,300
31
焼のり
400
32
野菜たまごスープ
1,100
33
ワンピースカレンダー
1,200
34
とっとこハム太郎カレンダー
1,100
35
千と千尋の神隠しカレンダー
1,500

申込先 全金本山労働組合
TEL 022(274)0843 FAX 022(233)5971

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週刊『前進』(2078号2面3)

国労の誇りかけ (9) ●インタビュー 国労闘争団
 北海道I闘争団 Dさん
   国労の主導権を握るために
   問われているのは指導部。路線を曲げず闘う

 3組合共闘の力

 ――組合員・闘争団員が逮捕・起訴されました。
 D 国労本部が警察と結びついて、僕ら反対派への報復に出てきたってことだよね。全然関係ない法律を持ち出して弾圧したわけでしょ? さらにこれからも考えられないような攻撃をかけてくるかもしれない。本当にひどい話だよね。
 でも他方で、国労・全動労・動労千葉の3組合が「1047名の解雇撤回を求める。JRの不当労働行為を許さない」という一点で一致して共闘できた。15年間かけてやっとここまでくることができたことはすごく大切なことだし、これは、これから支援の仲間も含めて、日本の労働運動全体の前進に大きくつながる動きだと思っています。
 ――4党合意賛成派の闘争団の中で闘い抜いてこられて、今のお気持ちは。
 D 賛成派闘争団の中の反対派は今、どこも大変だよね。団の役職からも降ろされて、闘いの前面に立てず、悶々(もんもん)とする気持ちもないわけじゃない。運動にさける時間が少なくなったからね。そこは耐えながら、闘う闘争団を中心に、全国の支援の仲間を信頼して、信念を曲げることなく貫きとおすことが重要だと思っています。
 闘争団の賛成派はいまだに「4党合意で解決を求める」という意見が多い。共産党が路線転換を打ち出しても、今さらがらっと変えて「4党合意に反対」とは言えないんじゃない? だって、十数年間も支援してくれた人たちに対して、露骨に「解決の妨害勢力だ」と言ってきたわけだから。

 支援を裏切らぬ

 僕は割と単純なんです。団の結成からずっと各地に行って「この闘いは直接は自分のクビの問題だけど、やはり日本の労働運動全体にかかわる問題だ」と訴え、それに共鳴して支援してもらってきたわけです。そして4党合意が出たことに対して支援者が「理解できない」と言う。私は当然、その意見を無視できないし、裏切ることはできない。
 しかし賛成派は、いきなり「解決の妨害者だ」と言った。僕が「『妨害グループ』ってどこだ」と聞いたら、支援してきてくれた労組、支援者だと言った。そこまで言うのは、もう完全に一線を越えてるよね。
 だから問題は、賛成派についている団員や組合員が目覚めるように努力していくことです。団員でも真実を知らない人はいるし、そういう動きは徐々に出ています。7月の甘利への要請行動で、賛成派の家族の人が「腹が立って途中で出ていこうかと思った」と言っていた。そういう人がどう変わっていくかだよね。
 ――4党合意の破産は今や明らかですよね。
 D 反対派の闘いが前進する中で、4党合意の本質がさらけ出されてきたし、甘利も本音を言わざるをえなくなった。われわれが鉄建公団訴訟を開始して、もう強固な闘いが継続することがはっきりしたからね。
 今や本部が目指しているのは闘争の終結です。もし4党合意で闘争団が始末できたら、全国単一体を解体し、国労の名前も変え、JR組合員を引き連れてJR連合に行こうとしていた。
 でも、敵にとっては国労という名前を残すわけにいかないんだよね。今の執行部やチャレンジが連合に行くだけでは、国労は残ってしまうわけです。国労をなくすためには、国労として「国労をなくす」と決めなきゃいけない。問題はその時に、主導権をわれわれが握れるかどうかですよね。
 ――4党合意とは労働運動全体への攻撃ですね。
 D 分割・民営化後、国鉄方式の首切りを進めてきたけれど、しかし十数年の闘いをとおして、リストラに対抗する反撃方法もつくられてきた。やはりそれをつぶしたいんでしょう。

 スト決起を訴え

 僕は、地域の仲間と交流して「うちでストライキなんてやったら倒産しちゃうよ」と言われると、「倒産覚悟で闘うしかないよ。倒産したら自分たちで事業を起こしていくしかない。そうしたら支援の仲間が絶対にできる。そういう腹を持たないともう中小の闘いなんてできないよ」と言う。
 他方、公務員や大企業などの大きな労組に行くと、「断固ストライキを打って闘ってくれ。そうしない限り、日本の労働者の全体の底上げはないんだ」と。公務員は「民間は賃金が低いんだから」と攻撃されているけど、それで公務員の賃金が下がったら、また民間も下がる。だから公務員や大企業は賃金も労働条件もよくならなきゃいけない。「そのために闘ってくれ」って言うんです。
 ――本部はなぜここまで行き着いたのでしょうか。
 D 直接には98年に東京地裁で負けて、当時の指導部が闘いの展望をなくしたってことです。「4党合意でJR採用になるかもしれない。2千万円出るかもしれない」と言われたら、団員がぐらつくのはある意味で当然なんだよ。ただ問題は指導部が、そこで「この道をとるとつらいぞ。だけどこの道しかないんだ。もうひと踏ん張り頑張ろう」と言えるかどうかですよ。
 国労が修善寺大会でもったのも、それ以降もったのも、やはり指導部の問題です。僕は組織とはそういうものだと思う。組合員を引っ張っていくのが指導部の役割で、それだけ幹部の決意や努力が必要なんです。
 ――最後に大会へ一言。
 D われわれが路線を曲げないできっちり闘うことで、それを理解する組合員、団員を引き寄せていくことが必要です。国鉄闘争共闘会議も全国各地でできて、大きな力になってきている。今こそ、有事立法を頂点にして、物の本質をちゃんと見抜いて闘う労働者をつくり、組織的に闘えるようにしていかなければならない時だと思ってます。
 (聞き手/本紙・上原祐希)

 ◎取材メモ

 Dさんのお連れ合いはとても明るい笑顔の人。「私は闘争団になって十数年、つらいと思ったことはなかったの。でも4党合意で団の役職から降りることになった時だけはつらかった。彼の考えは最初から何も変わってなくて、変わったのは賛成派の人たち。『なのになんでこんな仕打ちを受けるの?』って」。しかし闘う仲間との共闘が広がる中で、ご夫妻の明るい笑顔は今も消えない。

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週刊『前進』(2078号3面1)

国労5・27臨大弾圧粉砕へ 8人の即時釈放を
 権力の介入に怒り拡がる 獄中の仲間、完黙で闘う 全力で守り支えぬこう

 国労5・27臨大弾圧で不当逮捕された8人の仲間は、怒りに燃えて不屈の獄中闘争を闘い抜いている。自らの闘いが国労と国鉄闘争、日本の労働運動の命運を決める位置にあることを自覚し、人生をかけた闘いとしてこの弾圧を打ち破ろうと決意している。弾圧によって国労組合員の闘う意志を封殺しようとした権力の思惑は、日々の激しい攻防によって粉砕されつつあるのだ。全力でこの闘いを支えよう。

 卑劣きわまる転向強要との攻防を貫いて

 10月29日の第2次弾圧で逮捕された2人の国労組合員は、「取り調べ」と称する権力の執拗(しつよう)な転向強要に立ち向かい、全力で闘っている。
 卑劣にも権力は「完黙すると不利になるぞ」「事実だけしゃべって罰金で終わったらどうか。なんとかしゃべって(起訴された)6人を救ってくれ」と供述を強要し、「弁護士を代えろ」という恫喝まで加えている。さらに、親族が職場でのけ者にされているかのようなデマを用いて、本人の動揺を誘おうとした。
 公安刑事どもは、「今度の国労大会で国労共闘は除名される。国労の最後の大会に出なくてもいいのか」と放言している。弾圧が国労への不当きわまる権力の介入であることを、自ら暴露するものだ。獄中の仲間は、裏切り者となることを拒み、こうした攻撃と必死で闘い抜いている。
 不当に起訴された6人の仲間も、理由のない勾留と対決し、非転向を貫いている。今日に至るも権力は6人への接見禁止を続けている。重い持病を抱える国労組合員に対しても、主治医の医療接見さえ認めていないのだ。この暴挙を徹底弾劾する。また、公安刑事は、仲間の1人をだまして取調室に連行し、起訴後の違法な取り調べを強行しようとした。仲間はこれを拒否したが、断じて許すことのできない攻撃だ。
 起訴された6人は、国家的不当労働行為と闘う国鉄闘争の原点にあらためて立ち返り、権力との激しい攻防の中で必ず勝利する決意を打ち固めている。獄中から、国労大会決戦の勝利、国鉄闘争の勝利を全身で訴えかけている。なんとしてもこれにこたえよう。

 家族の痛切な訴えを本部は無視するのか

 不当逮捕された国労組合員の家族たちも、懸命の闘いに立っている。家族たちが呼びかけた「即時釈放を求める署名」は、瞬く間に4000筆を突破した。
 闘争団員の家族は、10月24日、国労本部に次のような申入書を提出した。
 「十五年前、国労組合員というだけで解雇され、国労を信じて今日まで不当解雇撤回・JR復帰を願い闘ってきました。どうして長年一緒に闘ってきた仲間を裏切るような事をするのですか? 労働組合が同じ組合員を警察に売り渡すというような事があっていいのでしょうか。私達家族は今回の弾圧に決して負けることなく闘っていく覚悟です。……一日も早くお父さんを取り戻すために被害届を取り下げて下さい」
 「私は、夫の16年前の首切りの時からずっと元の職場にもどれるように願ってきましたが、その願いがかなわないまま今度は組合の幹部の方から『首切り』を宣告されたと同じことです。……一日も早く夫が釈放されるように、被害届を取り下げてください」
 十数年にわたる国鉄闘争を夫とともに闘い抜いてきた家族が、国労本部によって夫を売り渡され、獄中に奪われたのだ。これが組合幹部の被解雇者家族に対する仕打ちか! 家族の苦しみと怒りから目をそらすことは、断じて許せない。
 不当逮捕された西日本エリアの組合員の家族は、11月3日、大阪・扇町公園で行われた団結まつりの場で、即時釈放を求める署名を訴えた。闘争団を始め、まつりに参加した多くの国労組合員、支援の労働者が、弾圧への怒りをともにし、署名を寄せた。家族は交流を深め、互いに支え合って闘うことを誓った。
 獄中の闘いと一体をなす家族の闘いを支えよう。

 国労解体攻撃を打ち破り大裁判闘争へ

 この弾圧との闘いは、間違いなく国鉄闘争と日本の労働運動の命運を決するものとなる。また、そうしたものとして闘い抜くことによってのみ、弾圧を粉砕することができるのだ。
 5月27日の国労臨大で闘争団への統制処分発動を強行決定した本部に反対して、ビラをまき説得をしたのは、国労組合員、とりわけ闘争団員として当然のことであり、正当な組合活動だ。しかも、大会会場が機動隊に封鎖され、組合員が排除される中で、説得の機会は宿舎の前しかなかったのだ。ところが権力はそれを「暴力事件」にデッチあげ、国労本部と東京地本・酒田一派は弾圧に加担して組合員を売り渡した。
 国労本部を籠絡(ろうらく)し、自己の先兵に仕立て上げた権力は、本部の裏切り方針に反対を貫く組合員を逮捕・起訴することで、国労解体へ最後の歩を進めようとしている。この事態は、資本・権力と闘う組織として労働組合が存立し得るのか否かをすべての労働者に問うている。イラク侵略戦争・有事立法情勢の中での露骨な労組絶滅攻撃を断じて許すな。
 必死の反撃を貫けば、弾圧は権力にとって取り返しのつかない失点に必ず転化する。8人の即時釈放をかちとろう。弾圧粉砕の広大な戦線をつくりあげ、一大労働運動裁判を闘おう。国労大会決戦に勝利し、組合員を権力に売り渡した国労本部を打ち倒して、闘う国労を再生しよう。

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週刊『前進』(2078号3面2)

ダブル削減・期間延長阻止 都労連スト貫徹を

 公務員労働者の秋季賃金闘争が本番を迎える中、11月1日、都労連は第4波総決起集会を開催した。都庁第2庁舎前に約4千人の組合員が結集し、賃下げ攻撃への怒りがあふれた。
 東京都の2年間の4%給与削減措置は今年3月で終了したが、都当局は今年8月からさらに1年間の4%削減を強行している。そして都人事委員会勧告による1・64%削減を加えた「ダブル削減」を狙っている。さらに能力・業績主義への人事給与制度の改悪、時間内組合活動の規制(ながら条例の見直し)など、団結破壊、労働組合破壊の攻撃を画策している。
 集会に先だって都労連と都当局の団体交渉が行われた。都労連が年末一時金の要求書を提出し「ダブル削減は断じて認められない」と表明したのに対し、福永副知事は「勧告を踏まえ、ベースダウンはもちろんのこと、職員給与の取り扱い、人事給与制度の抜本改革が求められている。給与削減措置について、03年8月以降も含めて取り扱いを検討する必要がある。内容が固まり次第提案する」と言い放った。都当局は、「ダブル削減」に加えて、4%削減措置を再々延長することを宣言したのだ。
 都労連が席をけって、交渉は完全に決裂した。今秋闘は、都当局との全面激突以外にない局面に入った。都労連は、すでに10月30日の単組代表者会議で、ヤマ場の11月19日に2時間ストを構えて闘う方針を決定した。都庁職がこの数年で最高の批准率でスト権を確立するなど、各単組でスト決行の気運が高まっている。
 集会では、「都側が理不尽に都職員の生活を破壊する横暴を認めることはできない。都労連は、6単組の力と組合員の怒りを総結集して、『ダブル削減』『削減期間延長』を阻止し、都労連要求実現まで闘う」とする「抗議声明」を採択。集会後、参加者は都庁を包囲するデモ行進を行い、石原都知事に対する徹底抗戦の意志を示した。
 都労連の秋闘は、全国の公務員賃金闘争の最大の焦点となった。全国でマイナス人勧や賃金カットが相次いでいるが、東京都の攻撃は最も激しい。宮城県は、マイナス人勧を実施するが、給与削減は停止した。京都市は、すでに給与削減を実施しているため、勧告を見送った。東京都の「ダブル削減」や「削減期間延長」など言語道断である。この攻撃は、03春闘での全労働者への賃下げ攻撃に拍車をかける。日本労働運動の命運をかけて闘わなければならない。
 国鉄闘争、イラク反戦・有事立法阻止闘争と結合し、断固として11・19都労連ストを貫徹しよう。

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週刊『前進』(2078号3面3)

年末一時金カンパのお願い
イラク反戦・有事立法粉砕へ闘う革共同に絶大な支援を
 革命的共産主義者同盟

 米帝の世界戦争計画との対決を

 『前進』読者のみなさん。支持者のみなさん。同志のみなさん。革共同は年末一時金カンパへのご協力を心より訴えます。
 今にも数十万人のイラク人民が虐殺されようとしています。アメリカ帝国主義および国際帝国主義は、イラク人民の頭上に爆弾の雨を降らせる準備を続けています。この侵略戦争を阻止することは、全世界労働者人民の責務です。
 すでに全世界でベトナム反戦を超える闘いが爆発しています。革共同は必ずやこの日本の地で全世界の労働者階級人民、被抑圧民族人民と連帯し、ベトナム反戦をはるかに超える闘いを組織します。
 年末一時金カンパへの絶大な協力をお願いする最大の理由は、全世界人民の未来を決する重大情勢が訪れているからです。
 昨年の9・11反米ゲリラ決起とそれを引き継ぐ民族解放・革命戦争の特殊的・極限的な闘いは、米帝国主義を始めとする国際帝国主義の血塗られた本質を暴き出しました。同時に私たちはこれを帝国主義足下の労働者人民ひいては革共同自身のあり方に対する糾弾として受け止め、これにこたえようとこの1年間を必死に闘ってきました。
 米帝国主義はブッシュ・ドクトリン(米国家安全保障戦略)において、「必要とあれば単独行動をためらわず先制攻撃する」「イスラムはテロの温床」と打ち出しました。これはイスラム人民が米帝国主義に屈服しない限り、体制転覆・人民虐殺の侵略戦争を全イスラム諸国―全世界で展開するという宣言にほかなりません。
 そして今、米帝国主義は、イラク侵略戦争から北朝鮮・中国侵略戦争への道筋をつけ、第3次世界大戦に踏み出しています。
 この米帝の世界戦争戦略に共同的=競合的に参戦し、人民虐殺に手をそめようとしているのが日本帝国主義・小泉政権にほかなりません。小泉政権はイラク攻撃に率先して賛成し、協力しようとしています。同時に北朝鮮(中国)侵略戦争に向け、有事3法案の今臨時国会成立を強行しようとしています。
 その戦争に人民を動員するため、北朝鮮スターリン主義によるそれ自身は反人民的な拉致問題を排外主義宣伝に利用し、他方で日本帝国主義による拉致=強制連行・植民地支配を居直り、補償を経済協力=経済侵略にすりかえようとしています。イラク・北朝鮮への侵略戦争に参戦しようとする小泉政権を、人民の怒りで打倒しなければなりません。
 革共同は広範な人民決起をつくりだし、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕決戦の大爆発を必ずやかちとる決意です。この決意を共同の決意として、革共同への熱烈な闘争資金の集中を心よりお願いします。
 年末一時金カンパへの協力をお願いするもうひとつの理由は、21世紀革命に勝利する真の労働者党として、革共同の飛躍をかけた闘いの時が訪れているからです。

 国労弾圧の暴挙に大反撃しよう

 10月28日、日帝国家権力は、10・7国労弾圧でデッチあげ逮捕した8人のうち6人を起訴し、さらに翌29日、新たに国労組合員2人を逮捕するという暴挙を行いました。
 この国家権力の大弾圧は、世界戦争突入情勢下での労働運動解体攻撃です。闘う国労の中に息づく階級的な考え方と運動・組織を根だやしにするために、国家権力が国労指導部を屈服・変質させ、権力の手先として使う攻撃をかけてきたのであり、日本労働運動の歴史を画する一大弾圧です。
 「闘争団を除名するな」と、同じ組合員を説得することが、なぜ犯罪になるのか! この前代未聞の大弾圧を絶対に許さず、捕らわれている8人を必ず奪還し、国鉄闘争の大爆発で権力と裏切り執行部をうちのめし、闘う国労の再生と1047人闘争の発展をかちとる決意です。
 同時にこの弾圧は、日本帝国主義・小泉政権にとって労働運動が治安問題化しつつあることを意味しています。小泉改革とは、一切の犠牲を労働者人民に押しつけ、一部の大企業・大銀行が延命するための攻撃にほかなりません。
 そのような中、連合指導部は率先して春闘を解体し賃金闘争を放棄しています。膨大な労働者が怒り、苦しみ、闘いの方針を求めています。今こそ国鉄決戦を突破口に、階級的労働運動の発展をかちとり、戦争・大失業と闘う新しい潮流をつくりだしましょう。
 全世界で爆発するイラク反戦運動も、その主体はムスリム人民とともに労働組合と労働者です。不当なロックアウトに抗して闘う国際港湾倉庫労組(ILWU)の闘いは、米軍需産業を危機にたたきこみました。団結した労働者の力は戦争を止められるのです。
 革共同は91年5月テーゼの決断以降、社・共に代わる労働者党に飛躍するために苦闘してきました。この闘いはあと一歩で全面開花するところまできています。
 賃闘放棄・有事立法賛成の連合支配を打ち破り、階級的な労働運動の再生をかちとりましょう。とりわけ青年労働者のみなさん。わが革共同とともに進みましょう。
 熱意に満ちた一時金カンパを心より要請するものです。

 世界革命勝利を切り開くために

 革共同は国家権力と不屈・非妥協に闘う党であり、そのことを最大の誇りとしています。だからこそ国家権力の弾圧も集中し、多くの同志が獄中に捕らわれています。とりわけ爆取デッチあげ弾圧被告に対して未決勾留16年目という攻撃がかけられています。この弾圧は、小泉政権による戦時型予防拘禁そのものです。1億円保釈金基金を達成し、保釈奪還をかちとりましょう。
 爆取デッチあげ弾圧被告の4同志、星野同志を始めとする全獄中同志を奪還するために、ぜひともご協力をお願いします。これらすべての成否が年末一時金カンパにかかっています。
 今こそ世界革命の実現へ闘おうではありませんか。
 膨大な生産力はわずかな資本家のみを肥え太らせ、数十億の人民が搾取・貧困・飢餓に苦しみ続けています。高度な技術は侵略戦争に用いられ、幾千万人民が虐殺されています。こんな社会は今すぐにでも終わりにし、帝国主義の命脈を明日にでも断ち、共産主義社会を実現しましょう。革共同はそのために闘う革命党です。
 革共同は昨年第6回大会を闘いとり、対カクマル戦の基本的な勝利を確認するとともに、「21世紀の早い段階で反帝国主義・反スターリン主義世界革命―日本革命の課題を達成する」ことを決意しました。わが革共同は、破防法弾圧を粉砕する中央指導部の非公然体制、精鋭的に堅持されている革命軍、そして何よりもマルクス主義・レーニン主義の思想と理論を武器に、必ずやこの歴史的大事業を実現します。治安弾圧、国労弾圧を粉砕し、革共同とともに進まれることを心から訴えます。
 闘いの中にこそ人民の未来があります。いただいたカンパは1円たりとも無駄にしません。闘い、そして勝利する革共同に、カンパの集中をお願いします。

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週刊『前進』(2078号3面4)

胎動するアメリカ労働運動 スト禁止法と対決する港湾労組
 ブッシュの労組破壊に反撃しイラク反戦闘争の先頭に立つ

 反戦闘争の伝統を持つILWU

 今、アメリカの労働運動において、日本の国鉄決戦と同じ質を持った重大な決戦が闘われている。ILWU(国際港湾倉庫労働組合)をめぐる闘いがそれである。
 ブッシュ政権は、経営側がアメリカ西海岸の29港湾をロックアウトし、1万500人もの港湾労働者を締め出していたことに対してタフト・ハートレー法を発動し、争議の80日間の中断を命令した。
 タフト・ハートレー法は戦闘的労組活動家から「奴隷労働法」として断罪されている。ブッシュは、24年ぶりのタフト・ハートレー法の発動でイラク反戦闘争の先頭に立つILWUを壊滅しようとしているのだ。
 フランス、オーストラリア、スウェーデンなどの組合とともに、日本でも全港湾と海員組合がILWU支持を表明している。全世界のイラク反戦闘争と連帯し米帝ブッシュのILWUへの攻撃を粉砕しよう。
 現在、アメリカにおいてイラク反戦闘争が大きく高揚している。10月26日には、ワシントン20万人、サンフランシスコ10万人を先頭にアメリカ中で大規模な反戦デモが闘われた。
 この反戦闘争の高揚の背景には、81年のレーガンによるPATCO(航空管制官組合)つぶしに始まる労働運動圧殺攻撃に対して、95年のAFL−CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)の転換以降、反転攻勢に立ち上がったアメリカ労働運動の高揚がある。
 ブッシュの反テロ宣言へのジョン・スウィーニー執行部の屈服にもかかわらずローカルと呼ばれる支部段階では、多くの組合がイラク反戦の決議を上げ、デモに参加している。アメリカ西海岸とカナダの港湾労働者約6万人を組織しているILWUは、その戦闘的な中核をなしている。
 アメリカ西海岸のデモでは、ILWUが常に先頭に立っている。横断幕には「一人の傷は、みんなの傷」と書かれている。この言葉は20世紀初頭、御用組合であったAFLを批判して、アナルコサンディカリストや共産主義者によって組織されたアメリカ最初の産業別労働組合連合体であるIWW(世界産業別労働者組合)のスローガンであった。それをILWUが自らのスローガンに採用した。IWWは第1次世界大戦にも反対して闘い、弾圧された。この一事をとってもILWUが戦闘的な伝統を持つ労働組合であることが分かる。
 ILWUは1934年にサンフランシスコでゼネストに決起、全市を掌握し、州兵や警察権力との銃撃戦をも闘いぬいた。この闘いは多くの労組の連帯ストをも生みだし、勝利した。
 この時の教訓から、ILWUは組織目標の第一に、宗教、人種、信条、皮膚の色、性別、政治的所属、国籍を問わず一つの組織に団結することをあげている。一切の差別が労働者の団結を破壊するものであることを知りぬいているのだ。また、指導部を一般組合員の直接選挙で選ぶなど、組合民主主義を貫徹していることでも知られている。
 ILWUの下部には根強い新潮流運動が存在する。ローカル10と呼ばれる支部においては、昨年の9・11反米ゲリラ戦争以後の闘いについて、きわめて戦闘的な議論が行われている。その一部を紹介しよう。
 「ベトナム戦争に反対したり、イラクでの『石油のための戦い』を批判したら、それだけで『危険人物』として扱われ、波止場の仕事から追い出されていいのか。われわれは、テロとの戦いを口実にわれわれの組合員を犠牲にするようなことを許さない」
 「あのような自爆攻撃の動機は何か。それは、パレスチナ人民を悲惨な難民キャンプに屈辱的に追い込み、主権を否定し、多数の死者を産み出してきたイスラエルの残虐な政策を、米国政府が陰で支援してきたからではないのか。また、……アメリカの経済封鎖によってイラクで毎日5千人もの子どもたちが死んでいる事実が重要だ」
 ILWUに発動されたタフト・ハートレー法は、第2次大戦後に多発したストライキ弾圧のために、1935年制定のワーグナー法の抜本改悪を狙って47年に制定された反動立法だ。労働団体による不当労働行為が規定され、冷却期間をおくと称して、その間、労働者の争議権を否定し、それに反すれば刑事弾圧をするという反動立法である。
 さらにブッシュは、ILWUを、労組法の対象から外して鉄道労働法の対象とし、政府が直接ストを中止できるようにすることすら狙っている。

 組合支配権破壊、大合理化と闘う

 ILWUは34年のゼネストの勝利以来、カリフォルニア州サンディエゴからワシントン州シアトルまで29の主要港で、経営者団体であるPMA(太平洋海事協会)と統一労働協約を結んできた。PMAには船会社やスーパーマーケットなどが加盟、労組と3年ごとに協約改定交渉を行ってきた。交渉は春に始まったが協約期限の7月1日以降も合意に達しなかった。PMAが9月27日、「労働者が荷揚げ作業をわざと遅らせた」として、29港の施設を一方的にロックアウトし、武装ガードマンを配置したのが今回の争議の発端だ。
 交渉の争点は新技術の導入と雇用保障の問題だと言われている。PMAは港湾労働に、バーコードやスキャナーなどコンピューター化された新技術を導入し、業務を大幅にアウトソーシング(外注化)しようとしている。港湾におけるコンテナ化により、アメリカ西海岸では71年以降、10万人いた労働者が1万500人にまで削減されている。今回、さらなる合理化で大量の労働者をたたき出そうとしているのだ。
 しかも、経営側は新しい業務の労働者をILWUに入れないと主張している。ILWUは34年の勝利の結果、ハイヤリング・ホール(労働者就労あっせん所)を組合の手で運営し、港湾労働特有の雇用の変動に対して資本や手配師などの介入を阻止し、労働条件を維持してきた。今回の攻撃は労働市場での組合支配権の破壊を狙うものであり、「規制緩和」の名のもとに全世界で巻き起こっている港湾労働者の不安定雇用化攻撃の一環なのだ。
 雇用保障では、労働者が獲得している経営側の基金拠出による医療福祉制度、年金制度、賃金保障制度など各種の社会保障制度を大改悪しようとしている。
 米帝ブッシュは、ILWUへの攻撃を突破口に、戦闘的労働運動の一挙的解体と、それをとおした労働者階級の戦争動員を狙っている。これはまさに、10・7国労弾圧と同じ質を持った攻撃そのものだ。闘うILWUと連帯し、国鉄決戦を基軸に日本での新潮流運動を今こそ大きく広げよう。80日間の「冷却期間」の切れる1月上旬からILWUは決戦に突入する。03春闘をILWUへの国際連帯の闘いとして断固闘おう。
 (湯村宏則)

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週刊『前進』(2078号4面1)

“学生がイラク反戦の先頭に” 全国の大学で闘い広がる キャンパス丸ごとの決起へ

 イラク反戦闘争の高揚の実現へ全学連が全国の大学で奮闘している。劣化ウラン弾の放射能に苦しむイラクの現実を学ぶ講演会や写真展、米大使館や領事館への抗議行動、デモや署名。キャンパス丸ごとの学生決起を生みだすために全学連は必死だ。この学生の闘いに連帯し、イラク侵略戦争阻止、有事立法粉砕の闘いへ総決起しよう。

 米大使館に抗議行動 首都圏

 法政大署名実行委員会を始めとする首都圏の大学の学生は10月31日、東京・赤坂のアメリカ大使館に対する抗議行動を行った。10・26アメリカ―10・31イギリスの大行動と連帯し、イラク侵略戦争の発動を阻止しようと、それぞれが思い思いのメッセージボードをつくって参加した。
 大使館に向かう路上で、警察権力が「ゼッケンを外せ」などの妨害を行ってきたが、一同はこれをはねとばして大使館正面に迫り、徹底抗議をたたきつけた。大使館に出入りする人びとも「DON’T ATTACK IRAQ」のスローガンに注目している。シュプレヒコールがくり返される中、法大署名実と全学連は、大使館に対する申し入れを行った。
 さらに大学キャンパスでの闘いを拡大し、大使館や米軍基地に対して抗議行動をたたきつけ、数万数十万の学生・労働者の決起で、イラク侵略戦争を絶対に阻止しよう!
 (東京 K・H)

 写真展と講演に反響 東北大

 東北大学では、10月19日のフォトジャーナリスト豊田直巳さんの講演会や10月31日の国際連帯集会やデモをうちぬき、キャンパス総決起に向けた闘いが前進しています。
 10月19日の豊田さんの講演会は、東北大学学生自治会など4大学5団体の共同呼びかけという画期的陣形で開催され、東北地方の多くの学生が結集しました。
 東北大学では秋の開講以降、イラクの現実に肉薄し、帝国主義の不正義な支配の実態を暴露することで学生への反戦決起を呼びかけてきました。講演会に先立って行った豊田さんの写真展には300人以上の学生が訪れ、「困窮にあえぐイラクに一方的な攻撃をしかけようというアメリカは許せない」という訴えがどんどん広まっていきました。
 講演会でも「私たち日本にも責任があるのです! この現実をあなたは黙ってみていられますか?」という豊田さんの訴えに、参加者全員が強く共感し、反戦の決意を新たにしました。
 デモへの学生の飛び入り参加や市民からの注目も高まり、直接行動の重要性はますます増してきていると感じます。
 10月31日には、イギリス、アメリカでの闘いと連帯して、キャンパスでの昼休み集会と再びの仙台市内デモへ出ました。自らの闘いが全世界で爆発する国際反戦闘争の一翼であることを実感した時、その力は2倍にも3倍にも高まります。留学生の飛び入りも含めた50人の結集で、キャンパスそして街頭で熱烈な呼びかけを行い、さらなる運動の発展を誓いました。
 (東北大 T・U)

 大阪の領事館を弾劾 関西

 私たち全学連関西ブロックは、10・21国際反戦デー闘争の1日行動として、大阪のアメリカ領事館前で、断固とした抗議行動をたたきつけました。
 関西ブロックの会議での討論を積み重ねる中で、敵にもっとも打撃を与える闘いとして、直接行動をガンガンやろうということが決まりました。
 アメリカ領事館前に登場した全学連に対して、警察権力が妨害を加えてきました。しかし、私たちはこれをはねのけて「イラク侵略戦争阻止」と書かれた日本語や英語のプラカードを並べて弾劾。「米帝のイラク侵略戦争を阻止するぞ」「イラク人民・中東人民と連帯して闘うぞ」と抗議行動を貫徹しました。さらに沿道で通行人、領事館職員に対してビラをまき、アジテーションで、アメリカのイラク侵略戦争への踏み切りを強く弾劾し、イラク侵略戦争を阻止する反戦闘争への決起を熱烈に呼びかけました。
 プラカードは圧倒的注目で、通りかかった若い会社員が「君らがこの日本を変えるんや。がんばってや」と激励していきました。また10・13三里塚闘争で不当逮捕された2人の仲間を取り戻そうという訴えも、沿道の人びとに行いました。
 (関西 K・K)

 1年生中心に実行委 広島大

 10月23日、広島大学学生自治会主催でフォトジャーナリストの豊田直巳さんの講演会を行いました。講演会に向け、劣化ウラン弾によるイラクの子どもたちの放射能被害を撮した写真展やクラス討論、学習会を重ねました。イラク攻撃が切迫する中、イラクの人びとの現実を知ろうと、約50人が集まり大成功でした。
 豊田さんは講演とスライド上映を行いました。豊田さんはまず、世界中で紛争が起こっている現実があるが、互いに異なる宗教や民族があるから対立するわけではない、そこには、宗教や民族という概念を利用して戦争と対立をあおるものがいる――と語りました。 アフガニスタンやイラクのスライドを上映しながら、マスメディアが報じない現地の現実が語られました。
 劣化ウラン弾による被害の痛ましい写真を前に「なぜイラクに生まれたというだけでこんな目に会わなければならないのか、この子たちに何の罪があるのか」という豊田さんの訴えに、イラクに放射能をまき散らした帝国主義に対する怒りを押さえることができませんでした。
 イラク侵略戦争が切迫する中で、広島大学でイラク攻撃反対の大規模な行動をやろうと学生自治会が提起しました。早速数日後、講演会に集まった1年生を中心に実行委員会が結成され動き始めています。
   (広島大 M・R)

 米領事館抗議と街宣 九州大

 九州大学学生自治会の学生は10月31日、福岡市内にあるアメリカ領事館に対し、アフガニスタン侵略戦争とイスラエルに対する軍事支援、そしてイラク侵略の即時中止を申し入れる抗議行動をたたきつけました。
 イラクの子どもたちの大きな写真を使った「Don’t Attack IRAQ」「No Blood For Oil」などと書かれたプラカードは周辺住民の注目を集めました。「イラク侵略戦争を許さないぞ」「イラク人民を一人も殺させないぞ」と怒りのシュプレヒコールをたたきつけ、申入書を読み上げて領事館に受け取らせました。通常を倍する警備体制をとっていた福岡県警の妨害を一切許さず最後まで抗議行動を貫徹しました。
 10月26日にはワシントン20万人、サンフランシスコ10万人など全米各地、そしてドイツ、ベルギー、スウェーデン、スペイン、イタリアなど世界各地で国際統一行動が闘われました。九大自治会は26日に天神で街頭宣伝を行い、多くの署名やカンパを集めました。
 (九州大 S・T)

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週刊『前進』(2078号4面2)

いなづまの帰還を弾劾 呉基地

 今年7月に海自呉基地からインド洋に出撃した護衛艦「いなづま」が10月29日午後、約4カ月ぶりに帰港した。9月17日に同じく呉から派兵した「ひえい」「さみだれ」と交替しての帰還である。
 広島反戦共同行動委は、呉基地前のアレイからすこじま公園に結集し、入港する「いなづま」の乗員と歓迎式参加の自衛官、家族に声を限りに弾劾した。「アフガニスタン人民の虐殺弾劾」「イラク人民の虐殺に手を染めるな」「自衛官は侵略の銃を取るな」と怒りの声を上げた。
 アフガニスタン侵略戦争への自衛隊の参戦を来年5月まで延長した最中の帰還だ。アフガニスタンでは今でも空爆も地上戦も続いている。「いなづま」は4カ月間にわたり、米英艦船とともにアフガニスタン人民の虐殺を続けたのだ。
 広島反戦共同行動委は呉を侵略出撃基地にすることを許さない。イラク攻撃阻止、有事立法粉砕へ決起する。

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週刊『前進』(2078号4面3)

“徴兵カードやめろ” 住基ネットで福岡市追及

 10月25日、有事立法粉砕実行委員会・福岡の労働者や学生、市民25人は、「私たちの住民票コードを消して下さい。福岡市は、住基ネットから離脱せよ」の要求を掲げて福岡市に対する申し入れ行動に決起した。
 福岡市役所の市長応接室で、市の担当課長以下3人を相手に申し入れを行った。呼びかけ人の石崎昭哲さんが申入書を読み上げ、次々と市当局を追及した。 「アメリカでは、ICカードを持たされている。それには健康保険や年金などの情報もすべてインプットされている。韓国では、兵役に就くための情報もICカードに書き込まれている。民間の情報もすべて国家のもとに集中されるのではないのか」「総務省の構想では、登録項目は、いくらでも増やせるようになっている」
 あわてた市当局は「あくまでも住民基本台帳法にのっとって運営されている。住民票がどこでも取れるようになる。将来的には、自宅のパソコンから電子申請ができるようになる」と説明した。
 追及は続いた。「電子申請とはどういうことか。本人確認はどのようにやるのか」「ホストコンピューターは、どこに設置されているのか。何台の端末を使っているのか。管理責任はどうなっているのか」
 課長がしどろもどろに答弁した。「市役所内に1台設置されている。場所は言えない。端末は、13台ある。管理責任は市長」。厳しい追及に課長はついに居直った。「住基ネットは必要だ。個人情報保護法の早期成立が求められる」
 ここで九大学生自治会の学生が立った。「韓国の若者が、住基ネットは徴兵カードだといって反対している。僕らは、背番号が付いて国家の奴隷になることがイヤなんだ」。
 部落解放同盟全国連の若者が続く。「漏れたら大変なことになる。住基ネットで部落と刻印されるとどうなるのか。これは人名総鑑だ。ただちに削除していただきたい」
 最後に「私たちの住民票コードを消去して下さい。福岡市は直ちに住基ネットから離脱せよ」の2点の回答を求めてこの日の抗議申し入れ行動を終了した。

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週刊『前進』(2078号4面4)

有事立法徹底批判 (7)

 国会事前承認原則を後景化
 自衛隊法改正案 A 防衛出動規定を改悪

 国会承認緩める

 自衛隊法改正案は、防衛出動を規定する第76条の大改変に踏み込んでいる。
 現行の自衛隊法第76条の規定では、「わが国を防衛するため必要と認められる場合には、国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる」となっている。しかし改正案は、この「国会の承認を得て」の部分が削除され、「わが国を防衛するため必要があると認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる」となっている。
 そしてその後に、以下の規定が加えられている。「この場合においては……(武力攻撃事態法)第9条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない」。さらに現行法の「緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで出動を命ずることができる」というただし書きが削除されている。
 実はここで、現行第76条と改正案第76条は根本的な転換が行われている。現行の防衛出動の規定では、原則として、国会の承認を得て自衛隊の出動を命ずるとなっている。その上で例外規定(ただし書き)があるのだ。事前承認が原則であることは明白だ。
 しかし改正案第76条は、「わが国を防衛するため必要があると認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる」となっており、ストレートに“必要なら、ただちに出動命令が可能”という文章になっている。しかも「緊急の必要がある場合には」という例外規定の文言が削除されているので、緊急か否かにかかわらず、“必要なら、ただちに出動命令が可能”という文章になっているのである。
 そして改正案第76条で国会承認は、武力攻撃事態法第9条の規定で行うとなっている。第9条は「対処基本方針」に定める事項として@武力攻撃事態の認定A対処に関する全般的な方針B重要事項――の3つを規定している。防衛出動命令の国会承認はB重要事項の中のひとつでしかない。
 〈防衛出動命令の国会承認〉という自衛隊法の中では最大級の位置を持つ事項が、有事3法案の中では、きわめて希薄化・後景化させられているのである。
 ところで武力攻撃事態法案は「武力攻撃事態が予測されるに至った事態」というかなり早い段階から対処基本方針を定めて閣議決定し、実施に移すことが可能だ。したがって対処基本方針が閣議決定された段階で平時から有事に移行し、対処基本方針はドンドン実施に移されていくのである。
 それでは防衛出動命令を含めて対処基本方針の国会承認についてはどうなっているのか。前述のように現行の自衛隊法の防衛出動については、国会の承認を得てが原則だ。しかし武力攻撃事態法案第9条では、対処基本方針の閣議決定後、国会に承認を求める手続きをすればOKで、承認を得るのは事後でも良いのだ。
 以上のように武力攻撃事態法案と一体となった自衛隊法第76条の改正は、自衛隊にとって大きなハードルとなってきた防衛出動命令の国会承認問題を決定的に緩め後景化させている。

 防衛出動前倒し

 これに加えて防衛出動の前倒しを画策している条文がある。改正案で新設されている第77条の2「防御施設構築の措置」だ。これは防衛出動命令が予測される段階で「展開予定地域」内における防御施設の構築を可能にする規定だ。しかもその際の武器の使用を合法化している。新設第92条の3「展開予定地域内における武器の使用」の条文だ。
 ここで注意を要するのは防衛出動命令が予測される場合の「予測」と武力攻撃が予測されるに至った事態の「予測」を対応させることによって、防衛出動命令が出されるはるか以前の段階でも、政治的に「武力攻撃への発展が予測できる」と判断されれば、第77条の2が発動され、自衛隊が動き始めるということだ。
 つまり「武力攻撃が予測される事態」の段階から、その「展開予定地域」に自衛隊が大々的に展開し、塹壕(ざんごう)や防塁、対空ミサイル基地などをいたる所に建設し、臨戦態勢をとるのだ(第77条の2)。しかもその際、「隊員の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には」「合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」(第92条の3)ので、「敵」が現れれば直ちに戦闘行動=戦争が始まるのである。
 この「敵」には住民なども含まれる。陣地構築など戦争準備に住民が抵抗した場合に、武器を使用することを規定しているのだ。
 これは防衛出動の第1段階とほとんど同義だ。第77条の防衛出動待機命令は、あくまで自衛隊内部での準備行動にすぎない。平時の自衛隊は、いや防衛出動待機命令を受けた自衛隊でさえも、基本的には基地や演習場の中から出てこない。武器を使用できるのも、演習場内の訓練だけだ。
 しかし、法改悪されれば、その自衛隊が堂々と武器を携行して、公然と日本中に展開し、陣地構築その他の戦争準備を始めるのだ。防衛出動待機命令とは天と地ほどの違いがあるのである。しかもその際、抵抗する住民や「敵」に対して、武器の使用も可能――これが第77条2と第92条の3の規定なのだ。
 (つづく)
 (片瀬 涼)

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週刊『前進』(2078号4面5)

日誌 '02 10月29日〜11月5日
 空自が米機で空中給油訓練 改憲を押し出した中間報告

●カタール司令部12月始めに始動 米中央軍のフランクス司令官が、カタールのアルウデイド空軍基地に建設中の新司令部について、12月初めに運用を開始すると述べた。同司令部は、米フロリダにある中央軍の本部の司令部に準じる機能を持つ。(29日)
●個人情報保護法案、民主が修正協議容認
民主党が、与党から申し入れがあれば修正協議自体には応じる方針を確認した。(31日)
●対イラク戦反対34% 米でイラクとの戦争に反対する声が34%に達していることが、米ピュー研究センターの世論調査で明らかになった。反対は8月下旬の21%から2カ月で13%増えた。(31日)
●沖縄知事選が告示 沖縄県知事選が告示された。無所属新人で元副知事の吉元政矩候補=社民、社大推薦、無所属新人の新垣繁信候補=共産推薦、無所属現職の稲嶺恵一候補=自民、公明、保守推薦など4人が立候補を届け出た。投票は11月17日。(31日)
●特措法改悪訴訟、地主側が逆転敗訴 強制使用期限が切れた後も暫定使用できるよう改悪された米軍用地特措法は違憲だとして、知花昌一さんら反戦地主8人が国に損害賠償を求め、一審で一部勝訴した訴訟の控訴審判決が福岡高裁那覇支部であった。楚辺通信所の一部土地を国が占有したのは違法としたが、約48万円の損害賠償を命じた一審判決の地主勝訴部分を破棄した。特措法改悪については合憲とした。(31日)
●自衛隊が民間地に航空燃料施設 航空自衛隊が那覇基地に航空燃料貯油施設などの建設を計画、那覇防衛施設局が同基地に隣接する民間地約4万平方bと賃貸借契約したことがわかった。(31日)
●衆院憲法調査会が中間報告 衆院憲法調査会が、00年1月の設置以来の審議を「中間報告」にまとめ、綿貫衆院議長に提出。まえがきは、外国では随時、改正が行われているなどと改憲指向を示している。(1日)
●対北朝鮮の経済協力「兵力維持なら困難」 安倍官房副長官は、北朝鮮への経済協力について「百万人の軍隊を維持するのでは問題は解決しない」と述べ、現行兵力を維持したまま経済協力はできないとの考えを示した。(1日)
●ミサイル防衛「開発」へ ミサイル防衛計画の日米共同技術研究について、石破防衛庁長官が10月21日にケリー米国務次官補と東京で会談した際、「現在の研究から開発段階へ早急に移行したい」との意向を示していたことがわかった。(2日)
●自衛艦修理でインド洋に民間人 米軍支援でインド洋周辺で展開中の自衛隊艦艇を修理するため、防衛庁が今年7〜8月に、民間技術者12人を現地に派遣していたことがわかった。テロ対策特措法は、自衛隊を支援する民間人の派遣を想定していない。(3日)
●米監視飛行機が爆撃訓練 イラク南部の飛行禁止空域を監視飛行する米軍艦載機が、監視飛行の際に対イラク武力攻撃に備えた攻撃訓練を行っていることをニューヨーク・タイムズ紙が報じた。(3日)
●サウジがあらためて基地使用拒否 サウジアラビアのサウド外相が、国連安保理がイラク攻撃を容認する決議を採択しても、米軍に対して国内基地の使用や領空通過を認めない考えを明らかにした。(3日)
●米機使い空中給油訓練 航空自衛隊は今年度予算で発注した空中給油機の到着を待たず、米機を利用した空中給油訓練を来年4月にも前倒しで開始する。北朝鮮への監視強化が狙いとみられる。(4日)
●石破長官、イージス艦派遣に意欲 石破防衛庁長官が衆院安保委員会で、「対空でも対水上でも情報収集能力が格段に優れている」と述べ、イージス艦のインド洋派遣に意欲を示した。(5日)

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週刊『前進』(2078号5面1)

「予測事態」段階で戦争突入 修正案
国民保護 実態は権利圧殺と戦争動員
 臨時国会で有事立法阻止へ

 与党3党が10月29日、有事3法案の修正案を決めた。武力攻撃事態法案について、@「武力攻撃事態」の定義の見直し、A武装不審船事件や大規模テロも対象に含め、対処措置を明記する――ことが主な内容だ。
 同時に国民保護法制の「輪郭」が示された。
 政府・与党はこの修正案を11月11日に臨時国会の衆院有事立法特別委員会に提出し、民主党を取り込み、可決・成立を策している。すでに民主党は個人情報保護法案については修正案協議に応じる方針を確認している。
 小泉政権は、北朝鮮の拉致問題や核開発・弾道ミサイル問題で「北朝鮮脅威」論をすさまじい物量で扇動している。「徴兵制や集団的自衛権は合憲」と吹聴する拉致議連前会長の石破茂を防衛庁長官に据え、有事3法案成立の強行突破を狙っているのだ。イラク侵略戦争阻止の闘いと一体で有事3法案粉砕を全力で闘うことを強調したい。

 2段階規定

 武力攻撃事態の定義の修正は以下のとおりだ。
 原案では「武力攻撃事態」を「@武力攻撃(A武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態またはB事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」と定義している。
 これに対し修正案は、原案の3つのケースのうち、A「おそれのある場合」という表現を削除して、@「武力攻撃が発生した事態」を新たに(A)「武力攻撃が発生した事態、または発生する明白な危険が切迫していると認められる事態」と拡張修正し、同時にB「予測されるに至った事態」を(B)「武力攻撃予測事態」と命名し、その二つのケースをもつものとして「武力攻撃事態」を定義し直すというものである。
 右の修正による実際の条文がどう整理されるか不明な点があるが、少なくとも第一に、修正案(A)「武力攻撃事態」は、原案@に比べてその範囲が恣意(しい)的な基準にまで大幅に広げられ、したがって発生の段階が時間的により早い段階を含めるものとなっていることは重大な改悪である。
 第二に、(B)「武力攻撃予測事態」をクローズアップすることによって、「予測」の段階から日帝が積極的、能動的に北朝鮮・中国侵略戦争を行っていくという性格がむしろ浮き彫りになっている。
 修正案の「予測事態」のケースでは、政治的に「武力攻撃が予測」されれば、ただちに自衛隊は防衛出動待機に入り、自衛隊法改正案第77条の2「防御施設構築の措置」によって、「展開予定地域」に自衛隊が展開し、対空ミサイル基地や塹壕(ざんごう)、陣地構築など戦闘準備を行い、いつでも戦争=戦闘行動に入ることができるのだ。武器の使用も認められている。「武力攻撃が予測される」という形で軍隊を動かし、臨戦態勢をとり、緊張を高め、日帝の側から積極的、能動的に戦争を始めていくのだ。

 テロも対象

 加えて、新たに武装不審船やテロも武力攻撃事態法案の対処の対象と明記し、@情報集約・分析・評価、A対処方針の策定、B警察、海上保安庁などと自衛隊の連携強化――などを明示した。原案では「必要な施策を講ずる」とだけされていたものだ。不審船やテロをも実質的・形式的に「武力攻撃事態」にリンクさせるものである。つまり有事立法の対象および発動時点が大幅に広がっているのだ。

 強制と命令

 今回「輪郭」が示された「国民保護法制」は、武力攻撃事態法案第22条1項の「国民の生命、身体及び財産を保護」「国民生活及び国民経済……影響が最小となるようにするための措置」を法制化しようというものだ。
 名前とは正反対に国民保護法制とは、日帝が北朝鮮・中国侵略戦争を遂行するのための労働者人民の権利剥奪・非協力処罰法と言うべきものである。
 具体例をあげれば、自衛隊や米軍が自由に移動・展開するために外出制限や交通規制を行い道路を軍用に確保する(避難の指示など)、自衛隊や米軍に必要な燃料や物資を確保するために、一般人の石油の使用を制限したり、自衛隊・米軍への石油の提供や生産を業者に義務づけ、買い占めや売り惜しみをする業者に売り渡しを強制する(生活関連物資の価格安定などの措置)、外出禁止、集会・デモの禁止、ストライキの禁止(社会秩序の維持)――などがその正体だ。
 武力攻撃事態法案では、有事の際に閣議決定する対処基本方針に、自衛隊の武力行使(防衛出動)と並んで「国民保護」関連の対処措置が規定されている。国家総動員と治安維持を図ることが目的だ。
 政府が与党に示した「輪郭」では民間人に対する物資保管や業務従事、土地提供の命令権を国・自治体に付与するとしている。災害対策基本法を下敷きにしたというが、実際は、災害対策基本法が自治体に一義的な権限を与えているのに対して、国民保護法制は「国が主導的な役割を担う」としている。国の方針を自治体が拒否した場合などに国が直接、代執行できる。災害対策基本法とは逆の構造なのだ。
 内閣に設置された「武力攻撃事態対策本部」を頂点にして、都道府県や市町村に「対策本部」が設置され、上意下達で人民統制が実施される。さらに平時から民間、警察、消防などによる「協議会」を設け、訓練を行うことも検討されている。そのために「国民の協力」を明記し、禁止事項や罰則も盛り込んでいる。隣組制度の再来だ。
 以上のように「国民保護法制」とは「国民保護」などとは正反対なのだ。継続審議となっている有事3法案とセットで有事立法の恐るべき全容が明らかになるのである。「有事立法に国民保護法制がないのが問題」という批判はまったく的はずれである。「国民保護法制」と串刺しで有事3法案粉砕へ闘いぬこう。

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週刊『前進』(2078号5面2)

人権擁護法案を廃案に
報道・言論の締めつけと差別糾弾闘争の圧殺狙う

 日帝・小泉は今秋臨時国会で有事3法案、個人情報保護法案と並んで、人権擁護法案の成立をたくらんでいる。7日から参院先議で審議が開始された。法務省は、法案のいわゆる「メディア規制」部分を一定期間「凍結」し、3年以内をめどとした見直し規定を入れた修正案で野党の屈服を取りつけようとしている。そして反対闘争の戦線をマスコミ・出版労働者・作家などと分断し、解同本部派の屈服をテコとして、差別糾弾闘争弾圧法として特化させて、成立を狙っているのだ。断じて許すな。成立絶対阻止へ闘おう。

 「一部凍結」のペテンで戦線分断を策す

 日帝権力は、マスコミなどの度はずれた取材・報道による犯罪被害者らの生活・プライバシーの侵害に対して、これを法律的に規制する必要があるということを口実にして、とんでもない大悪法を制定しようとしている。犯罪被害者やその家族に関わる取材・報道の問題と、権力側の要人・政治家・高級官僚らの不正・腐敗の徹底追及・取材の問題を「人権侵害」という一般項でいっしょくたにして、それに網をかぶせようとしている。
 不正・腐敗の当の本人とその家族は別の人格だという議論をテコに、「家族の人権の防衛」の名のもとに取材や情報入手の活動を抑圧しようとしているのである。これも個人情報保護法案などと同様、日帝の危機と腐敗の深まり、北朝鮮・中国侵略戦争体制づくりの中で、報道や言論への規制・統制を決定的に強めようとする攻撃である。
 また、この攻撃は悪質な経営者や会社役員宅に抗議行動を行う労働組合の活動などを圧殺することにも完全につながる攻撃である。
 「メディア規制部分を凍結」すれば問題がなくなるかのような議論は、まったくのペテンであり、闘う戦線の分断を狙ったものだ。部落解放闘争圧殺法、差別糾弾闘争圧殺法、労働運動弾圧法としての狙いはまったく変わらずに貫かれている。また、法律を制定してしまえば、あとで「凍結」部分を「解凍」すればよい、というのが日帝権力の魂胆なのだ。絶対粉砕あるのみである。
 さらに、この攻撃は部落解放同盟全国連合会を先頭とする闘う部落大衆が、激しい怒りと危機感をもって弾劾しているとおり、部落解放闘争および一切の差別糾弾闘争を全面的に圧殺することを狙った大攻撃である。断じて許すな。

 人権委員会が強い権限持ち糾弾闘争介入

 日帝はこの法案で、法務省の外局として人権委員会を設置し、部落差別を始めとするすべての「人権侵害」に「中央集権的」に対処しようとしている。
 法案によると、人権委員会は5人で構成され、そのもとに事務局、地方事務局、全国約2万人の人権擁護委員を置くとしている。人権委員5人のうち3人は非常勤である。人権委員は総理大臣が任命するのであり、国家権力そのものである。法務省の外局すなわち公安調査庁などと同じ位置に、部落大衆の支配のための新たな権力機関が設置されると言ってもよい。
 そのために人権委員会には非常に大きな権限が与えられる。「人権侵害」の認定、救済、その予防のための措置、啓発、調査、罰則適用などである。「差別か差別でないか」は、これからは人権委員会という国家機関が決めるというのだ。
 この人権委員会の任務の核心こそ、89年法務省見解の実践にほかならない。「法務省見解」は、「確認・糾弾会は……行き過ぎて被糾弾者の人権への配慮に欠けたものになる可能性を本来持っている」「被糾弾者の人権擁護に対する手続き的保障がない」と差別糾弾闘争への敵意をあらわにした。そして、「法務省の人権擁護機関は、差別をしたとされる者(は)……『確認・糾弾会には出席すべきではない』と指導している」としたのである。
 人権擁護法案は、この「法務省見解」の狙いを完全に法律化しているのだ。差別者=被糾弾者の「人権」を守るが、差別された部落民の人権にはまったく配慮しない、差別糾弾闘争を国家権力の手でつぶすというものなのである。
 そのために法案は「不当な差別、虐待」と区別して「その他の人権侵害」を「人権侵害」規定に潜りこませている。そして、その弾圧手段として「調査」「告発」「調停、仲裁、訴訟参加」を定め、「予防」措置まで盛り込んでいる。この調査は人権擁護委員だけでなく警察や公安調査庁に「嘱託することができる」としているのである。
 人権擁護法案が成立すれば具体的にはどうなるか。差別事件が起き、部落大衆が差別糾弾闘争に立ち上がると、まず人権擁護委員が警察が調べた解放運動団体の事務所や組織名簿などの資料を受け取り、「調査」を行う。そして差別した者ではなく、差別された部落大衆に事情聴取したり、あるいは「調査」と称して解放運動を闘う団体の事務所に来て、事実確認書や糾弾要綱や動員指示書や機関紙やビラを見たりして、その結果を人権委員会に報告するのである。
 これを受けて人権委員会は「差別でないものを差別だと糾弾している。これこそ人権侵害だ」と決めつけ警察に告発したり、差別を受けた部落民のところに押しかけて、「調停」「仲裁」と称して、糾弾闘争を妨害するのである。
 それだけではない。この法案のいまひとつの側面は、部落大衆が差別糾弾闘争に立ち上がる前に、差別事件そのものをもみ消したり、差別糾弾闘争に発展することをあらかじめ解体することを目的にしている。

 「未然防止」と称して部落を日常的に監視

 すなわち、「人権侵害は……継続又は集団的に発生することから、侵害を未然に防止することは優れて救済としての意義を有する」(人権擁護審議会)として「予防を図るための活動を行う」と定め、そのために「啓発」「情報収集」「調査」を行うと規定しているのである。
 これはどういうことか。解同全国連を始めとする部落大衆とすべての部落を日常的に人権擁護委員や嘱託された警察が監視し、「啓発」と称して「糾弾したら捕まえるぞ」と威圧を加えたり、スパイ化工作も行えるようにするということである。
 そして、差別事件を起こした差別者は「糾弾を受ける恐れがある」と人権委員会に「救済」を申し立て、「予防してほしい」と泣きつく。すると「人権委員会は、当該申出に係る人権侵害事件について、遅滞なく必要な調査をし、適当な措置を講じる」というのだ。
 人権擁護委員は差別者を「立ち入り調査」して差別事件の証拠を確保し、それを「プライバシー」を口実にして隠蔽(いんぺい)するのである。他方で差別を受けた部落民に対しては「これは差別ではない」「調停もしてやる。訴訟もすればいい。慰謝料もとってやる」「だから糾弾闘争などするな」と説得するのである。
 まさに糾弾主体としての部落大衆の存在と闘いを否定するものである。
 以上から明らかなようにこの法案は差別糾弾闘争を内と外から解体し、部落解放闘争をたたきつぶし、解同本部派を帝国主義的融和運動に最後的に転向させる治安立法である。
 日帝の体制危機と戦争への動きの中で、解同本部派の屈服をテコに部落差別攻撃が決定的に強まっている。同和対策事業の全廃、部落を襲う大失業、賃下げ、生活破壊の大攻撃。そして相次ぐ差別事件の続発など。これに対する部落大衆の怒りと闘いの爆発は不可避である。
 にもかかわらず、解同本部派は日帝の部落差別攻撃と対決するどころか、部落大衆の怒りの爆発、差別糾弾闘争への決起を押さえつけている。本部派は人権擁護法案を推進する勢力となり、「人権委員会を法務省でなく内閣府の外局に」「人権問題の専門家も入れろ」などの修正案で「今秋国会での成立を」と必死になっているのだ。
 こうした状況の中で解同全国連と部落解放共闘会議は、10・27狭山中央闘争で人権擁護法案の廃案を要求する決議を断固として採択し、廃案に向かって全力で闘うことを誓った。
 人権擁護法案の攻撃は今日の有事立法、国労解体攻撃と完全にひとつの攻撃である。侵略戦争突入のために報道・言論への規制を決定的に強め、また部落解放闘争、差別糾弾闘争を圧殺し、階級闘争の根絶を狙う大攻撃である。そうして労働者階級人民を排外主義と差別主義で腐敗させ、イラク・北朝鮮・中国侵略戦争に総動員しようとしているのだ。今臨時国会での成立を絶対に阻止しよう。

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週刊『前進』(2078号5面3)

狭山再審めざしデモ 10・27中央闘争 無罪戦取へ奮起誓う

 10月27日、「寺尾判決28カ年糾弾! 特別抗告審闘争勝利! 狭山中央闘争」が、部落解放同盟全国連合会主催、部落解放共闘会議共催で開かれた。全国から370人が結集し、東京・千代田区の星陵会館での決起集会の後、最高裁〜JR市ケ谷駅まで1時間のデモを意気高く打ち抜いた。
 午後1時半から行われた決起集会では、冒頭、主催者を代表して村上久義全国連副委員長があいさつし、「憎むべき寺尾無期判決から28年、心新たに石川一雄さんの無念を引き受け、再審をかちとるために全力で闘おう」と呼びかけた。
 連帯のあいさつのあと、中田潔書記長が基調報告を行った。中田さんは、「全国連は2〜3年のうちに、戦前の高松闘争をこえる全国大行進を実現し、東京に攻め上る。決死の行動隊を編成し、差別裁判徹底糾弾の火の玉となって全国6千部落、労働組合、あらゆる大衆団体、街頭に分け入り、演説し、署名を集め、集会を行う。その途中で新たな仲間をどんどん増やし、差別裁判の牙城(がじょう)・東京の権力中枢に攻め上る」と、狭山闘争勝利の大展望を打ち出した。
 この大目標を柱にして、再審無罪をかちとるための本格的な取り組みを全国連の責任で開始すること、狭山闘争委員会を全支部に立ち上げることなどの具体的な方針を提起し、奮起を呼びかけた。また、有事立法阻止・イラク反戦闘争に立ち上がろうと訴えた。
 さらに狭山闘争本部の小森勝重事務局長が「最高裁・最高検徹底糾弾の要請行動へ」と題する特別報告を行い、とりわけ最高裁段階(特別抗告審)で新証拠の開示を要求する闘いの決定的な意義を強調し、翌日の最高裁・最高検要請行動への決起を呼びかけた。
 全国から参加した青年、さまざまな世代の部落大衆、共闘の労働者がそれぞれの思いを込めて石川さんへの連帯と狭山勝利の熱い決意を表明した。最後に差別糾弾闘争圧殺を狙う人権擁護法案成立阻止の特別決議をあげ、戦闘的熱気のうちに集会を終了した。
 デモは、アピール性のあるデモをやろうと工夫をこらし、黄色のメガホン隊が編成され、大きな声を響かせた。またシュプレヒコールを工夫して沿道の市民にアピールし、参加者の勝利の執念と怒りにあふれた戦闘的デモが打ち抜かれた。

 最高検に証拠開示迫る 28日

 翌28日、40人余りが最高裁・最高検要請行動に立ち上がった。証拠を隠し持つ最高検察庁に対して初の要請行動だ。
 早朝街宣の後、午前10時から星陵会館で集会を行った。要請文を読み合わせ、各支部・団体が決意を表明、全員で最高裁前までデモを行った。
 午後1時から最高裁要請行動に入った。20人の要請団が入構し、全国連本部を始め各支部・団体が要請文を読み上げ、「検察庁に証拠開示命令を出せ」と強く迫った。要請団は担当官の不誠実な態度に怒りを爆発させ、徹底糾弾した。
 さらに午後2時45分から最高検に移り、1階の会見室で22人の要請団が3人の検察事務官を前に要請行動を行った。会見室の周りでは要請行動参加者がガラス越しにつぶさに見守った。
 要請団は、全国連中央を始め、各地の代表、共闘団体が証拠開示要求の要請文を読み上げ、事務官に渡した。その上で検事を厳しく追及する質問を浴びせた。
 「なぜ狭山だけ証拠開示しないのか? 部落差別ではないか」「証拠リストは出せるのではないのか」「国連人権委員会が証拠を開示しないのは弁護権の侵害だとする勧告を出しているのを知っているのか」と不当性を追及した。
 最後に「一審で検察は、石川さんは貧しくて学校へ行けず、遵法(じゅんぽう)精神がない地区で育ったから犯行に及んだという部落差別の論告求刑を行った。このことにどういう見解をもっているか」とただした。
 参加者は、検察事務官の「検事に伝える」という責任逃れの対応を弾劾して、初の最高検行動を戦闘的に闘い抜いた。

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週刊『前進』(2078号5面4)

 

DON'T ATTACK IRAQ 闘うムスリム人民 世界の人民と連帯して 米帝がイラくを支援し武器供与
 イラン革命圧殺へイラン・イラク戦争

 米帝のイラク侵略戦争強行の狙いには、中東・石油支配の危機の突破、再編のためにイラクを直接米帝の支配下に置こうとすることがある。その米帝中東支配の危機の根幹にあるのが、軍事基地国家イスラエルの危機であり、79年イラン革命の転覆のためのイラン・イラク戦争の失敗である。
 イラン革命が米帝の中東支配に与えた衝撃は巨大なものであった。米帝は、イラン・パーレビ体制を米帝中東支配の先兵とするために膨大な兵器を輸出して巨大な軍事国家とした。ペルシャ湾の憲兵として湾岸産油国を軍事力で組み敷く体制をとっていた。

 クーデター

 イランでは、19世紀以来イギリスとロシアが南北から侵略を進めていたが、第1次大戦後の1921年、英帝がレザー・ハーンを擁したクーデターでカジャール朝を打倒し、パーレビ王朝がつくられた。そして第2次世界大戦の過程から米帝がイランへの軍隊の駐留を進めた。だが戦後のモサデクを中心とした国民戦線の闘いの高揚と石油国有化の中で国王パーレビが国外に脱出せざるを得なかった。これに対し米帝は、53年CIAのクーデターでモサデク政権を倒し、パーレビが帰国したのである。
 パーレビは闘う人民を暗殺し、逮捕しては拷問し、長期投獄して極限的な抑圧体制を敷いた。米帝の中東支配の先兵としての役割を担ったのである。イラン人民は幾多の虐殺や逮捕・投獄をのりこえて次々と闘 いに決起し、ついに79年2月9日武装蜂起によって旧体制を最後的に打倒した。
 このイラン革命は、米帝の中東支配の決定的な危機であった。軍事基地国家を失っただけでなく、帝国主義の新植民地主義支配に対する人民の民族解放闘争への決起ののろしになる危機に直面したのである。そして米大使館占拠闘争を頂点として米帝との対立は不可避に深まっていった。こうした中で79年11月にはサウジアラビアの首都メッカで数千人がサウジアラビアの反動政府打倒・反米帝を掲げて武装蜂起するという情勢がつくり出された。
 イラン革命は、石油支配という点でも、産油国の石油国有化の動きと73年第4次中東戦争に対するOAPECの石油戦略の発動によって石油支配の危機に直面していた中での米帝の石油支配の先兵の崩壊であり、決定的であった。

 イラク使い

 これに対して米帝が着目したのが、フセイン政権に交代して米帝との接近を図ろうとしていたイラクであった。フセインは、国内に住む多数のシーア派イスラム教徒の決起を恐れたことと、イランの革命後の混乱に乗じて地域的な覇権を築こうとしていたことから米帝が決定的にけしかけることで80年9月イランに侵攻し、戦争を開始した。米帝はイラク・フセインを取り込み、使うことによってイラン革命を圧殺しようとたくらんだのである。
 だが、イラクの戦争での初期的な優位は長くは続かず、2年後の82年6月には逆にイランがイラク南部に侵攻する事態となった。米帝は、イラクのテロ国家指定を解除し、武器輸出禁止を解いた。83年にはレーガン大統領の特使としてラムズフェルド(現国防長官)をバグダッドに派遣し、フセインと固い握手を交わして「関係改善の必要性」を話し合った。
 それ以降、米帝はイラクに対してイラン軍の軍事情報を提供し、経済援助を与え、秘密裏に軍事援助も行ってきた。炭疽(たんそ)菌などの生物兵器を製造できる培養基を輸出し、化学分析装置、偵察用テレビカメラ、ヘリコプターなどを輸出した。さらにはアメリカの戦車をエジプトに送り、エジプトの戦車をイラクに送ったとも言われている。こうした中でソ連、フランス、中国、ドイツ、イギリスもイラクに武器を輸出し、イラクの対イラン戦争を支えた。
 イラン・イラク戦争は完全に泥沼化し、ペルシャ湾をめぐるタンカー攻撃に発展し、87年に至って米海軍がペルシャ湾内にまで乗り込んだ。そうした中で88年に米帝がイランに国連の停戦決議を飲ませることによって戦争は終結した。この戦争によってイラクは、石油輸出代金で膨大な武器を購入し、軍事力を圧倒的に増強した一方、経済的には極端に疲弊(ひへい)し、ソ連やフランスなどに多額の借金を抱えることになった。そのことが90年のイラクによるクウェート侵攻につながっていくのである。

 元凶は米帝

 イラン・イラク戦争でイラン革命を転覆できなかっただけでなく、イラクのクウェート侵攻につながったことは、米帝の中東支配の決定的な危機であった。米帝はこれに対して凶暴なイラク・中東侵略戦争(91年湾岸戦争)を強行し、イラク軍民30万人を虐殺したが、それによって米帝の中東支配がけっして安定したわけではない。何よりもパレスチナ人民を始めとした中東・イスラム諸国人民にとって、米帝こそが侵略支配の元凶であり、人民虐殺の元凶であることがあらためてはっきりと突き出された。米帝を打倒することなしにパレスチナ・中東・ムスリム人民の真の解放があり得ないことが鮮明になったのである。
 米帝ブッシュは、イラクの大量破壊兵器を理由に侵略戦争を強行しようとしているが、イラクのいわゆる“軍事強国”化の元凶は米帝自身なのである。米帝の軍事援助によってイラクは化学兵器や細菌兵器を持つに至ったのであり、しかも米帝は、イラクがイランに対して化学兵器を使った際も、また国内のクルド人を化学兵器を使って大虐殺した際も、これを不問に付したのである。
 ブッシュはイラクの大量破壊兵器を口実として凶暴な侵略戦争に突入しようとしているが、それは完全にためにするものでしかない。米帝の軍事力で中東支配を貫き、イラクの石油を強奪しようとしているのだ。この極悪の侵略戦争を絶対に許してはならない。
 (秋原義明)

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週刊『前進』(2078号6面1)

マルクス主義講座  C

 『賃労働と資本』を読む(下)
 働いても働いても豊かになれないのはなぜなのか

 2章以下では、商品、資本とは何かを考えることをとおして資本主義社会の原理的仕組みが明らかにされます。そして、その中での利潤と賃金の関係、言い換えれば資本家階級と労働者階級の絶対的対立関係が明らかにされていきます。ブルジョアジーやその御用学者が、「資本家と労働者の利害は同一だ」「資本家あってこそ労働者は生きていけるのだ」という、資本にとって都合のよいイデオロギーを振りまいて労働者階級の闘いを押さえつけようとすることに対して、マルクスは明快な論理をもって粉砕しているのです。

 需要・供給の関係から商品の価格を考える

 2章から順番に内容を見て行きましょう。第1章では、人間労働力が資本主義社会では商品として売買されていること、賃金とは「労働の成果の分け前」ではなく、この労働力商品の価値=価格であることを見てきました。では、商品の価格はどのように決まるのだろうか。それを考えるために、まず一般的に商品の価格は、何によって決定されるのかを見ていきます。
 マルクスは、市場における需要と供給という関係から入っていきます。
 「一商品の供給がその商品の需要よりも少なければ、売り手たちの間にはわずかの競争しか行われず、あるいは全然競争が行われない。この競争が減少すればするほど、買い手たちの間の競争が増大する。その結果は商品価格の多かれ少なかれ著しい騰貴である」
 これと逆の場合もある。「需要を超える供給の著しい過剰――売り手たちの間での捨て鉢的な競争。買い手の欠乏――二束三文での商品の投げ売り」
 このように、需要と供給の関係で商品の価格が変動し決定されることを、まずマルクスは指摘します。
 しかし、さらに考えてみると、価格の上昇や下落とか、需要・供給の関係はいったい何によって規定されているのか。中間的結論は、その商品を生産する資本の利潤です。
 では、利潤の大きさは何によって決まるのか。商品の生産費です。この生産費が基準となって、資本が他の資本より多くの利潤を得るために競争し、商品価格が変動するのです。
 ここでの生産費は、費用価格〈生産設備+原料+労賃〉に平均利潤を加えた概念として使われています。
 生産費を上回って価格が上昇すれば、利潤は増えるので、資本家はこの商品の生産を増やす。価格が下がれば利潤は減るので、資本家は生産を減らす。生産が縮小すれば供給が減り、再び価格は上がり利潤が増える。利潤の多いところへの資本の流入、少ないところからの逃避という資本の運動がなされる。
 そうして「供給及び需要の変動は、商品の価格を、繰り返し生産費まで連れ戻す」ことになるのです。 
 以上のように、商品の価格が「生産費」によって決定されるということは、価格は商品の生産に必要な労働時間によって決定されるということに等しい。なぜならば、「生産費」を構成する原料と生産設備の摩耗分は、その生産に一定の労働時間を要した生産物であり、一方、このような原材料や労働手段を使って新たな生産物をつくる労働−これは資本の側からは労賃に代表されるのですが−も具体的に一定時間の労働として行われるものだからです。
 ひとまずここで得られた結論は、商品の価格を決めているのは、その生産物の生産に必要な人間労働の量であり、それは「生産費」に等しいということです。
 商品一般の価格を規制する法則は、賃金をも規制します。賃金もたしかに、他の商品と同様に需要と供給の関係によって変動するし、この変動を規定しているのは、労働力の生産費―再生産費です。
 しかし、そうは言っても労働力は、労働過程において生産されるものではない。労働力は、労働者の食う、休む、寝るという日常生活の中で再生産される。そうすると、労働力の生産費とは何か? それは、労働者が生存するために必要な生活手段の生産のための労働時間によって規定されるのです。労働力は特殊な商品(人間の血と肉を容器とする奇妙な商品)ですから、その価値はこのように特殊な間接的規定となるわけです。
 ところで、人間は、生存のために直接に必要なものを生産するための労働時間を超えて労働することができます。これは、ただ生存のためにだけ自然と関わる動物とは違って、自然力(自然の法則性)を意識的に利用する人間労働の社会的な生産力を根拠としています。生きるために直接に必要なものを超えたものをつくり出す人間の能力、この能力が、階級社会の中で剰余労働として支配階級に搾取されてきたのです。この能力自身は人間の労働生産活動のもつ本質的な力であると言えます。
 労働を行う能力の大きさの問題は、労働力の価値の大きさ、つまり自分が生きるための生活手段の生産に要する労働時間(大きさ)とは、まったく別なものです。【カクマルはこのあたりのことがまったく分かっていません。だから、剰余価値の解明ができないのです。解説本112n〜を参照】

 労働者の剰余労働を搾取し資本家が利潤

 第3章では、資本について解明していきます。
 まず大きく押さえなければならないことは、機械や労働用具などの生産手段そのものが資本なのではないということです。結論的に言えば、「資本とはある特定の社会的生産関係にほかならない」のです。
 マルクスは、火器という新武器の発明とともに、必然的に軍隊の組織が変化し、種々の軍隊の相互関係も変化したことを例に挙げて、この問題を展開しています。
 「個々人がそのうちで生産する社会関係、すなわち社会的生産諸関係は、物質的生産手段、生産力が変化し発展するのにつれて、変化し変動する。生産諸関係はその総体において、社会的諸関係・社会と名づけられるものを、しかも一定の歴史的発展段階における社会、独自な・別個な性格をもつ一社会を形成する」
 生産力の発展段階に規定される生産関係という概念がここで明確に登場しています。資本(関係)は、ひとつの歴史的に特殊な社会的生産関係です。古代の奴隷制社会や封建制社会とは異なる、独特の生産関係、それが資本(関係)です。
 労働力の売り買いをとおして成り立っている生産関係、これが諸生産物(労働用具・原料など)を資本たらしめるものです。ですから、「労働能力以外に何ももたない一階級の存在は、資本にとって必要な一前提である」ということです。
 では、資本家と賃労働者の交換においては何が起きているか。
 「労働者は、自分の労働力と交換して生活手段を受け取るが、資本家は、彼の(労働者の)生活手段と交換して労働を、労働者の生産的活動を、創造的力を受け取る」「これによって労働者は……蓄積された労働(資本)に対し、それが以前に持っていたよりも大きな価値を与えるのである」
 ですから、賃金は二重の仕方で消費されると言うことができます。資本にとっては生産的に、労働者にとっては不生産的にです。賃金労働者は、絶えず自分自身を裸の自分としてつくり出す。パンのために資本家のもとで働いて、パンを食ってはゼロに帰る。明日また、資本家のもとで働く。その繰り返しです。
 他方、資本家にとって労働力商品の使用価値は、単にものを生産するということにあるのではない。資本家のために剰余価値を生み出すということにこそあるのです。労働力商品とは、使用価値の消費がその商品の価値を超える価値を生み出すような特殊な商品なのです。
 ここでマルクスは、ブルジョアジーのインチキな議論に反論して次のように言います。
 「資本の利害と労働者の利害とが同一だということは、資本と賃労働とは一個同一の関係の両面だということを意味するにすぎない。一方が他方を制約することは、高利貸しと浪費者とが相互に制約し合うのと同じである」
 「賃労働者が賃労働者である限り、彼の運命は資本に依存する。吹聴される労働者と資本家との利害の共通というのは、このことである」
 つまり、労働者は、資本の支配そのものを覆し資本を消滅させることなしには、賃金奴隷である自己を解放しえないのです。労働者の賃金奴隷制からの解放とは、資本の支配そのものを覆し、社会のあり方をその基礎から根本的に変革するということなのです。
 日共スターリン主義の「資本主義の枠内の民主的改革」路線は、「資本主義の枠内で、平和で、豊かで、人間らしい生活を送れる日本をつくる」というものですが、これは、資本の支配のもとで労働者は幸福になれるという考え方です。「前衛党」ならば、労働者階級の苦難が資本主義体制そのものに根源を持つことをはっきりさせ、プロレタリア革命への決起を訴えていかなければならないのに、日本共産党は資本主義の中でも労働者は“ハッピーになれる”と宣伝しているのです。

 階級社会なくすため競争ではなく団結を

 マルクスは第4章「賃金と利潤の関係」において、生産的資本が増大し、ある程度賃金が上がっても、本当は搾取が強まっているんだということを明らかにしています。
 ある研究者の試算では、今日の搾取率は700%ぐらいになっているといわれます。8時間労働のうち自分の生活のために働く時間は1時間で、あと7時間の労働は資本家のために働いているということです。ものすごい搾取率です。生産力の発展につれて、労働力の価値は大きく低下し、社会的な相対的尺度で見た時の賃金はとてつもなく下がってきたということです。
 同時に、労働の密度は激しくきつくなり、肉体的にも精神的にも労働者の消耗は激しくなります。資本の利益のための生産力の発展でしかないのです。
 さらに第5章で、マルクスは資本と賃労働の関係を、工場内での搾取関係にとどまらないで、〈階級と階級の関係〉として見ていきます。
 「ブルジョア社会の生産的資本が全体として増大すれば、労働の一層多面的な蓄積が起こる。もろもろの資本の数と規模が増大する。資本の数が増えれば、資本家の間の競争が増える」「資本家たちの間では、分業および機械を増加し、それらをできるだけ大規模に利用しようとする全面的な競争が生ずる」
 資本間の競争の激化は、労働者間の競争を一層激化させます。
 「生産的資本が増大し、分業と機械の使用が拡大すればするほど、労働者間の競争はそれだけ拡大し、彼らの賃金はますます低下する」「空高く差しのばして仕事を求める腕の森はますます繁ってゆき、腕そのものはますますやせてゆく」
 労働者があくせく働いても暮らしが豊かになれないのはどうしてなのか。どうして、いつも首切りの恐怖に脅え、惨めな境遇から抜け出せないのか。どうして仕事がきつくなり、過労死や労働災害で殺されるような現実が強まっているのか。――『賃労働と資本』には、その理由が実に分かりやすく書いてあります。
 資本主義社会では労働者階級は、資本に雇われ、資本のために働かされる。労働者は働けば働くほど、自分を支配・搾取する資本の力を強め、賃金(労働力の価値)は低下し、労働者間の競争は激化し、労働はますます不満で不快なものになっていく。
 こうした関係を断ち切り、労働者が本当に人間らしく労働し、生きる道は「階級対立を伴う旧来の社会の転覆」にこそあること、そのために労働者階級は団結して闘うべきことを、マルクスは本書の結論としています。
    (水井省一)
(『賃労働と資本』解説本は、前進社発行「マルクス主義基本文献学習シリーズ2」定価1100円です)

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週刊『前進』(2078号6面2)

部落解放と労働者階級 (3)
 「来民開拓団」の悲劇 敗戦時に全員が集団自決
  西村豊行

 「満蒙開拓」は中国侵略政策

 日本帝国主義の中国への侵略と植民地支配は、「焼き尽し、殺し尽し、略奪し尽す」三光政策といわれる暴虐を加え、2千万人をこえる中国人民を虐殺したのであった。「満蒙開拓」は国策として、植民地支配の環をなしていた。本格的な移民の送り出しは、1930年の大恐慌の甚大な打撃を受けた、貧窮の農村を対象に計画された。「過剰人口問題の解決」と称して推進され、部落には融和事業として持ちこまれたのである。
 多くの開拓団は集団自決の苛酷(かこく)な末路を強いられたが、熊本の「満州来民(くたみ)開拓団」の場合は他に例をみない、開拓団が全滅となる苛烈(かれつ)な最期を遂げたのである。朝鮮・中国=全アジアへの侵略戦争拡大に向けた国家総動員攻撃のもとで、労働者階級が屈服・敗北した結果の極限の惨禍と悲劇を、部落大衆が受けねばならなかった痛恨の歴史を証明しているのではないだろうか。
 「満州開拓団」を送り出す前の来民地区は、全戸数138戸、813人の集落であった。そのうち80戸は農業で、自作農はわずか2、3戸である。平均耕地面積は一般農民が1町7反であるのにくらべ、4反5畝にしかすぎず、田植えのできない下田や湿田もあり、しかも大部分が小作であった。残りの58戸は行商や日雇い、出稼ぎである。それぞれ、この地方特産の団扇(うちわ)や草履(ぞうり)作り、養蚕に使う七島網などの内職をして凌(しの)いだという。
 1930年の世界大恐慌の一環の「昭和恐慌」は、都市において膨大な労働者を失業に追いこみ、農村では繭(まゆ)の価格と米価の暴落を中心に農業恐慌として直撃した。来民地区は33年から村をあげて、部落経済更正運動に立ちあがってゆく。しかし人口に比して耕地面積が圧倒的に狭く、抜本的な解決にはとうていおよばず、223人の転出者をだしていた。

 天皇制融和主義への屈服

 日本帝国主義は、「満州」侵略から上海侵略を経て、32年に「満州国」の傀儡(かいらい)国家建国を宣言し、中国への侵略戦争をさらに拡大し、やがて37年7月7日の蘆溝橋事件によって全面戦争へとのめりこんでゆく。その一方で、全国水平社の融和主義的懐柔と帝国主義融和運動の育成にのりだしていた。32年の第59回帝国議会で、「水平運動を穏健にし、国内融和の実をあげなければ、朝鮮人・台湾人との融和もゆかない」と主張し、「融和事業の徹底に関する建議案」を採択したのである。
 中央融和事業協会は、「融和時報」65号紙上(32年4月)で、「人口問題は、わが国全体としても重大問題である、同時に部落としてもそれ以上の重大問題である。部落の積極的な経済対策として満蒙の移住問題は重要性をもつ」と、「満蒙移民」策を示唆するのである。広田弘毅内閣は36年8月25日、「満州開拓」政策の大綱によって、20カ年100万戸500万人の送り出しを決定した。本格的な入植はここから始まるのである。
 「満州開拓」とはいえ、軍事的・政治的目的を秘めていた。入植地の9割は、重要河川沿岸部、「南満州鉄道」沿線、軍用鉄道沿線、ソビエト国境周辺部に集中している。関東軍の食料調達はいうまでもない。それ以上に対ソ防衛上の見地と、抗日運動に備える立場から関東軍に協力して、「満州国」の治安維持に努めるというものである。
 「土地其ノ資源乏シク人口著シク稠密(ちょうみつ)ナル融和事業関係部落ニ於テハ、人口資源ノ関係ヲ調整シ、之ニ基キ、現下国策ニ即応シテ、満州移住並ニ時局産業ヘノ進出」に取り組むとして、中融協は40年6月25日、第一次全国融和事業協議会を開催し、資源調整事業を決定したのである。「満州開拓」はこのあと融和政策の中心的事業となったのだ。
 来民地区は熊本県内の45地区の一つであり、集落の規模は熊本市内の都市部のC地区(300戸、1594人)に次いで2番目に大きく、141戸、733人で、農村の集落である(35年の調査)。全国の部落からリストアップされ、資源調整特別指導地区が指定されると、全国25カ所の部落の1つとして指定を受けることになったのである。
 「満州にいけば部落差別はない。それに生活も楽になる」と来民地区の部落大衆は、日本帝国主義の融和主義攻撃によって、「満州」へ移民として送りこまれた。本格的な入植の時期は、太平洋戦争が始まり、全国水平社が「思想結社」として、「言論・出版・集会・結社等臨時取締法」にもとずく「解散届」の提出を強いられ、42年1月20日をもって「自然消滅」した時期と、くしくも時を同じくしていた。
 入植先は吉林省扶餘県五家站であり、41年5月17日の先遺隊から45年4月の第5次まで継続され、4年間の移民生活である。「来民開拓団」は敗戦時の45年8月15日時点で、82戸316人が生存していた。そのうち現地での応召者35人、病人5人の40人はその日、開拓団を離れている。
 1人を報告者として帰国させて残った275人の開拓団は、ソビエトの対日参戦による中国領土への侵攻や、日本の敗戦による中国人民の一斉蜂起を前に、悲愴(ひそう)な覚悟のもとに全員が集団自決の道を選択したのである。命日は45年8月17日であった。

 差別への憤怒と遺族の誓い

 遺族を中心とする兄弟姉妹たちは実に50年近くも経たあとで、集団自決への非道な差別暴言に向きあわねばならなかった。「来民開拓団は犠牲者ぶっとるばってん、部落のもんだけん、幼い子どもや女、親を殺すようなむごいことができる」と。これは死者たちをなぶりものにするばかりでなく、生きて供養する縁者やきょうだいたちへの、同じ他の開拓団が受けることのない、侮蔑(ぶべつ)の極まりだと断じなければならない。
 そして遺族たちは堪えがたい憤怒の思いを動機として、植民者であった歴史への自己批判をこめて、証言集を刊行した(注参照)。集団自決の絶大な犠牲をあがなって獲得した、アジアへの侵略戦争を二度と起こしてはならない、との誓いと決意をしっかり据えたドキュメントである。(部落解放理論センター所長)

【注】
 『赤き黄土―地平からの告発・来民開拓団』の重い一巻の記録は、異国の地の収骨できない分身を回想するだけではなく、苛烈な最期を遂げた死者たちとともに、中国への侵略戦争と植民地支配の加害責任を問うことで、中国人民との友好の礎にならんとする意志にあふれていて、多くの教訓を明らかにしてくれている。88年10月14日の発行である。

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週刊『前進』(2078号6面3)

弁護士900人がデモ 有事3法案の廃案求め

 10月23日昼、日本弁護士連合会900人が、有事法制3法案の廃案を求める国会請願パレードに立ち上がった(写真)。正午すぎに弁護士会館前の日比谷公園霞門を出発、手に持った色とりどりの風船には「私たちは有事法制3法案の廃案を求めます」と書かれている。このような日弁連の行動は、20年前の国家機密法反対運動以来のことだ。
 国会議事堂近くで一斉に風船を空に放って有事法制廃案をアピールした後、衆参両院に向かい請願を行った。国会前では、集会中の陸・海・空・港湾労組20団体や宗教者ネット、百万人署名運動などが拍手で迎え、エールを交換した。

 めざす会が院内集会

 「憲法と人権の日弁連をめざす会」(代表・高山俊吉弁護士)は、日弁連のパレードに参加した後、衆院第2議員会館で院内集会を開いた。川田悦子衆院議員、保坂展人衆院議員が参加、有事法制反対の闘いと同時に、ロースクール法案を始めとする司法改悪と闘うことを誓い合った。
 「めざす会」は、臨時国会開会日翌日の10月19日の朝日新聞朝刊に全国一斉の意見広告「今こそ力を合わせて、日弁連を憲法と人権の砦(とりで)に!戦争国家を許さない運動を!/私たち弁護士は、たたかいの先頭に立ちます」を掲載し、「▼有事3法案の廃案を強く要求します。▼有事法制と一体の司法改悪に反対します」とアピール。
 院内集会で高山代表は、「侵略戦争の時代には司法が変わり、それを担う弁護士へと変えられる。有事法制に真っ向から勝負を挑み絶対に許さない闘いを大きくつくろう」と訴えた。
 力強く主張し、行動する弁護士の闘いに勝利の展望を感じた。
(投稿 A)

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