第8期 第6課目 レーニン『国家と革命』(下)後半講義概要 講師 丹沢 望 2 『国家と革命』の内容の現代的復権(つづき)●第5章 国家死滅の経済的基礎 この章は、共産主義の発展と国家の死滅との関連の分析がテーマです。 ●第6章 日和見主義者によるマルクス主義の卑俗化 この章の核心は、第2インターの日和見主義的な「マルクス主義者」の帝国主義戦争への協力、国益の擁護、労働者階級の国際連帯の大義の裏切りの根底には、「国家に対する日和見主義」「社会革命に対する国家の関係という問題からの逃げ腰の態度」があるという点です。 3 労働組合の革命論的意義−レーニンの労働組合論から学ぶ−@プロ独論の発展 レーニンは『国家と革命』の基本思想をロシア革命において実践的に貫徹しようとした。したがって、ロシア革命の実践的経験との関係で『国家と革命』の基本思想をより豊かなものとしてつかみなおしていく作業はきわめて重要です。とりわけ、ロシア革命の全過程においてきわめて重要な役割を果たした労働組合の革命論的位置づけを明確にさせることは核心的な課題です。レーニン自身はこの課題の重要性を自覚しながらも、革命の渦中で忙殺され、ついに実現しえなかった。現代革命を実現する実践的立場に立つわれわれこそ、ロシア革命の経験の総括を通じて、レーニンにかわってこの課題を達成しなければならない。また、それができるのはわれわれしかいない。 A労働運動を重視したレーニン レーニンは、「労働組合は資本の侵害に対する抵抗の中心としておおいに役立つ」が、「賃労働制度そのものと資本の支配を廃止するための組織された力としてよりいっそう重要」だとしたマルクスの立場を継承した。この立場から、レーニンは労働組合がプロレタリアートのもっとも広範な階級組織であり大衆組織であり、プロレタリアートの偉大な歴史的使命を実現する主要な組織だとした。プロレタリア革命が労働者自己解放の闘いであり、労働者階級自身の課題である以上、このような階級組織である労働組合は革命において必然的に重要な役割を担う。 B労働組合の創設と発展 1890年代中ごろからロシアでは労働運動が活発化し、労働組合がない中で自然発生的なストライキの大波が押し寄せた。ツァーの政府はこれに対処するために反動的な官製労働組合を組織して労働運動を管理しようとした。 C反動期のボルシェビキの闘い 05年から17年にいたる過程は、労働運動をいかなる質を持ったものとして展開するかをめぐる激しい党派闘争の連続でした。 D10月革命と労働組合 2月革命によってソビエトが形成されたが、社会革命党とメンシェビキの代表がソビエト指導部の多数派を占めた。多数派はブルジョア臨時政府に屈服し、プロレタリア革命を放棄した。 E戦時共産主義期の労働組合 10月革命後の武装した反革命勢力の反乱、帝国主義諸国による反革命干渉戦争、ドイツ革命の失敗と国際的孤立などの困難の前に、1億4000万人の総人口のうち400万に満たない数の労働者の独裁は、重大な危機に陥る。だがレーニンは、このような困難を前に屈せず、労働組合に依拠しつつプロ独を実現する立場を貫徹し、『国家と革命』で明らかにしたパリ・コミューンの革命的原則をストレートに貫徹する闘いを開始した。 F「労働組合は共産主義の学校」論 こうしてレーニンは、一方で新経済政策(ネップ)を導入し、余剰農産物の貨幣による商品交換を認めて労農同盟を修復するとともに、他方で、当面任命制の「単独責任制」のもとで生産の混乱を立て直そうとした。 G労働組合と国家の融合論 レーニンの「労働組合は共産主義の学校」論は、(世界革命的展望の下で)プロ独の発展と国家の死滅を射程に入れたものだった。 |
討論から●E 今日の学習なんですけども、自分の問題意識とは結構かみ合っている、内容そのものについては。レーニンがあらゆる困難を乗り越えて階級の指導部として登場している、これがやっぱり決定的かなと。要は、階級の指導部、革命家ならどういうふうに行動するかとかそういうのを、徹底的に労働者に依拠して闘っているレーニン、これをはっきりさせているのが決定的で、そういう意味から言ったら、「結論」がちょっと違う、僕は。実践的には3・16だし、労働組合論から徹底的に学ぶというのもそうなんですけど、要は、全員がレーニンになるということ。階級の指導部になるということはそういうことだと思う。 ●R 基本的に労働者階級自己解放闘争に依拠したというあり方で、もう一回見直すという意味では非常に整理させられたというか、よく分かった。ただ、今日の前半、『国家と革命』の内容で、共産主義というのはある種、本当に簡単にできるんだという自信が湧くんです。だけど後半の方で、これは新しい試みなんだと思いますけど、労働組合論というね。これ自身もちろん勉強になったし、講師が自己解放論ということでやれば必ず解決できるというか、レーニンが超人じゃなくて、ちゃんと分析すれば誰もができる課題なんだというね。だけどいかんせん非常に困難というのは結構生々しいなと。 ●講師
まず最初の困難性という問題なんですけど、あの時代のロシアの特殊性というのがある。遅れて発展した帝国主義ということで、労働者階級の歴史がまず非常に若い。それから数、質という点で、西欧の労働者階級とちょっと違う。それから、孤立ですよね、帝国主義に包囲され、すさまじい反革命戦争を仕掛けられたという、その辺の困難性の問題。それから、ロシア内の党派関係。そういうものが、すべて襲いかかってきた。国際的には、第2インターが崩壊して、国際的支援を得られないという問題があった。 ●Z 労働組合の革命論的意義ということをガッチリ据えて、土台にして、その中に『国家と革命』をあらためて位置づけていくという、そういうわれわれ全体のもう1歩の踏み出しが問われている。今日の講師の提起は、そこに向かっての1個の試みだと思う。 ●L
実践的には、今回の学習会を終えて、労働組合運動にドンドン入っていって階級の指導部になっていくということに踏み出していかなきゃならないと思ってます。 |
受講レポートから ★『国家と革命』(下)のレポートです。【S】 2月革命の後、7月反動を経て革命をまさに目の前にして書かれた著作。来るべき革命の鼓動がビンビン伝わってくる。 【G】 『国家と革命』をやるうえで、あらためて労働組合の決定的意義がはっきりした。党−ソビエト−労働組合の関係性を歴史的に、実践的にはっきりさせられました。労働者細胞として、一つにまとめあげられていくという意見は重要でした。労働組合を、職場闘争を闘うための武器だけではなくて、革命の勝利、国家の死滅にむけた、「共産主義の学校」としての労働組合を、今階級的労働運動路線として実践している。 【U】 今日の第5章と党、労働組合、ソビエトの領域で、ロシア革命と格闘したレポートは、ものすごく迫力ありました。 【F】 ☆『国家と革命』をプロ独の実現をめざした階級的労働運動路線の実践の立場から学ぶことは、塩川一派打倒の闘いの観点からも重要である。塩川一派は、労働者の階級性など頭から信用していない。動労千葉労働運動は否定するけれども、プロ独は支持するということなどありえない。現実の労働現場では、労働者の置かれた厳しい現実からわれわれの階級的立場が問われる。 【Z】 (1)<労働組合の革命論的意義>をしっかりと土台=軸にすえて、『国家と革命』をとらえ返すことが、今日的には、死活的に重要だと思います。 【E】 労働組合論的に国家と革命を位置づけることの決定性がはっきりしたことが重要。 【I】 *討論の中でも出された、“労働組合運動の革命(論)的意義(もしくは意味)”について、単に“現在的な地点”すなわち、プロ独樹立に向けたたたかい、という中“だけ”で見るのではなく、共産主義社会建設・国家死滅の過程の中においても決定的な意義を持つものとして明らかにしていく作業は重要で、この点で党建設論とも結びついてもいて、ものすごく触発されました。 【J】 労働者階級は、自らの党と共に職場・生産点を拠点として、ブルジョア階級を打ち倒し、自らのプロレタリア独裁権力を打ち立てます。すなわち、労働者階級は、ブルジョアジーから奪取した生産手段を共同で管理・運営します。 【R】 「プロレタリア独裁」については、パリ・コミューンとして歴史上はじめて発見され、闘いとられてきたものだが、今、我々に必要なことは、パリ・コミューンになり変わるような闘いを再度実現し、ロシア革命をひきつぎ、乗りこえる闘いを何としても実現し、青年と共に我々を一挙に革命の現実性にたたき込んでいくことだと思う。それは、動労千葉労働運動の中にすでに開始されていることを明らかにすることであり、また、マルクス、レーニンの苦闘を同時に検証しながら、「労働運動で革命を!」「7月テーゼ」を実践していくことだと思う。 【L】 今回の提起は、今後労働組合運動を闘っていくうえで、青年労働者の闘いをどうとらえ、一体になって闘っていくのか、という点で、学ぶべきものがありました。それは、今日の青年労働者が派遣会社などで組合もなく、労働力の再生産さえも破壊されている現実のなかから、組合をつくって闘いを開始していますが、ここで一様に「団結すれば勝てる」「賃労働と資本は非和解」「労働者こそ社会の主人公」と言っていることの意味を、レーニンの『国家と革命』、革共同の「労働組合の革命論的意義」の中でふれられた具体的な経験と教訓にてらして見ると、やはり、ものすごい革命的エネルギーを秘めていることがはっきりすると思います。確かに、党員として、階級の指導部になっていくことはすさまじい飛躍ですが、資本家と体制内指導部との激烈な攻防を青年労働者と一体で闘えるということこそが本当に、真の意味で革命的な闘いなのだと思います。この闘いに全身を投じて闘います。 【Q】 どうやって革命を成功させることができるのか、ということにレーニンが徹底的に実践的にアプローチしたんだということ。『国家と革命』『なにをなすべきか』にあふれているその精神と問題提起を学びとろうということが大切だと思う。 【X】 『国家と革命』後半で、レーニンの労働組合論の提起がなされ、討論があって、その討論が重要だったと思う。学生の「全員がレーニンになる、田中委員長になる」と3月合宿で討論したという報告もすばらしい、胸ふくらむ思いだ。 【P】 第5章というと、プロ独と国家の死滅という面に問題意識が行きがちだったのですが、民主主義という政治の問題と、経済・社会の土台のプロレタリアートによる支配、管理、統制の下での根本的改造という問題を一体で見る必要があるという指摘が重要であると思いました。プロ独による資本家の反抗の粉砕、一部の富者のための民主主義から人民の大多数のための民主主義−真の完全な民主主義−国家の死滅というのはとてもスッキリした展開で、良くわかります。対して、共産主義の第1段階では「労働に応じて」の分配、高次の段階で「必要に応じて」とマルクスを引用し、「国家の完全な死滅の経済的基礎は、精神労働と肉体労働との対立が消滅するほどに…共産主義が高度の発展をとげること」という説明はイメージ的で弱いと言えます。 【N】 ブルジョア革命にしても、革命と反動をくり返し、70年がらみの闘争の末に封建制を打倒してきた。プロレタリア革命は、ロシア革命をもって開始され100年がらみの闘争として、今現在闘い抜かれている。そういう立場、認識から『国家と革命』に肉迫していくことが問われているのだと思う。 |