第8期第5課目 レーニン『帝国主義論』(下)後半講義概要 講師 柴田 之雄 【0】はじめに(U) 今回は、『帝国主義論』の第7章から第10章の提起になりますが、「日和見主義潮流との闘いが革命の成否を決する」という、帝国主義論の核心的な部分に入ります。あえて言えばレーニンも、この日和見主義・社会排外主義の潮流ときっぱりと決別し打倒していく闘いの不可避性・死活性をはっきりさせるために『帝国主義論』を書いたと言える。『帝国主義論』全体をとおして、資本主義の最高の発展段階としての帝国主義と労働運動における日和見主義潮流との関係を明らかにし、カウツキー主義などの日和見主義潮流をぶっ飛ばしてプロレタリア革命を実現するんだと訴えきったわけです。 【7】第7章 資本主義の特殊の段階としての帝国主義●自由競争から独占へ
「資本主義的な自由競争」が「資本主義的な独占」にとってかわられたこと、これが資本主義の帝国主義段階への移行を示す経済的な指標である。しかも独占は、「資本主義からより高度の社会=経済制度への過渡」すなわち共産主義社会の物質的諸条件の成熟としてあるんだということが、繰り返し強調されています。 ●帝国主義の定義略。岩波文庫版p145〜146、『共産主義者』153号秋月論文p127〜128参照 ●「新自由主義にたいしてはプロレタリア革命しかない」!略。『共産主義者』155号島崎論文参照 ●今でも大勢いるカウツキーの類
カウツキーは、第1次世界大戦の真っただ中で超帝国主義論を主張した。これは、国際的独占体が「1個の世界的独占体」となり、矛盾と争闘もなくなり、平和的に「社会主義の条件」ができあがるという、プロレタリア革命への敵対宣言です。 ▽『俺たちは鉄路に生きる2』(中野洋著)から
●戦争をもたらす帝国主義の不均等発展
レーニンが直面していたのはイギリスとドイツという2大帝国主義国家の不均等発展。先行して「世界の工場」として資本主義的発展をとげ、世界に広大な植民地を確保していたイギリスに対して、遅れて出発しながら急速に資本主義的発展をなしとげ、生産力においてはイギリスを追い抜いたドイツ。この不均衡を根拠にして、実際に、世界の再分割をかけた第1次世界大戦に帝国主義全体が突入していった。 【8】第8章 寄生性と資本主義の腐朽化●「金利生活者国家」への変貌
帝国主義がどんなに腐朽化し寄生的な存在になっているかは、「金利生活者国家」と呼ばれるようなあり方に端的に示されています(前出、秋月論文p137〜138参照)。 ●労働運動における日和見主義者の支配をぶっ飛ばして闘おう!
「帝国主義は、プロレタリアートの上層を買収する経済的可能性をつくりだし、これによって日和見主義を培養し、形成し、強固にする。だが、ただ一つ忘れてはならないことは、一般的には帝国主義にたいして、特殊的には日和見主義にたいして、反抗しつつある勢力のあることである」(岩波文庫版p169) 【9】第9章 帝国主義の批判帝国主義の危機と世界再分割の闘争が熾烈化すればするほど、「つくる会」のような公然たる帝国主義イデオロギーがふりまかれます。この「帝国主義的イデオロギーは労働者階級のなかへもしみこんでいる」(同p177)。だからこそ、職場生産点における資本との闘い、職場闘争が決定的です。日々洪水のように流される帝国主義イデオロギーと意識的に徹底的に闘い、賃労働と資本の非和解性をはっきりさせ、労働者の誇りと団結を取り戻していく闘いが決定的なのです。 ▽『俺たちは鉄路に生きる2』から
▼カウツキー主義批判は現在に通じる普遍的課題帝国主義と一体化した日和見主義、これとのプロレタリアートの融合を試みるカウツキー主義を打倒・一掃しなければならない。この闘いなしに労働運動を再生させ、マルクス主義を再生させて、プロレタリア革命の道を切り開くことはできない。カウツキー主義批判は過去のものではなく帝国主義段階における労働運動―革命運動の普遍的な課題です。 【10】第10章 帝国主義の歴史的地位●死滅しつつある資本主義
独占の段階にまでいたった資本主義は、もはや「より高度の社会=経済制度」すなわち共産主義にとって代わられるしかない。「労働運動の力で革命をやろう」 ▽『俺たちは鉄路に生きる2』から
●資本家の時代は終わった。労働者に権力をよこせ!
「死滅しつつある資本主義」と言えるのは、プロレタリアの革命的決起が不可避であることに確信をもっているから。労働運動の日和見主義的な指導部を打倒して、プロレタリアートの怒りを全面的に解き放って革命的団結を組織すれば、資本主義は今すぐぶっ倒せる、革命の現実性が圧倒的にある――このことがレーニン帝国主義論の核心だ。 ▽『俺たちは鉄路に生きる3』から
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討論から…●E 講師が、労働学校を各所で組織し、ここにいる全員が講師となっていくという実践的立場に立つと言われて、すごい納得した。自分もそういう立場でやっていきたい。 ●N 自分の地区の現状を話すと、マル青労同に結集している青年を階級的労働運動をやるところにまだ獲得しきれていない、労働運動をやろうと本人は頑張っているんだけど。問題は、僕自身が体制内的あり方を突破し切れていないというところだと。この過程、マル青労同や学生の闘いから教えられるところは、そこだと思ってます。講師の提起も、レーニン主義の核心が体制内労働運動の打倒にある、そこを実践的にはっきりさせるということでピタッときたというのは、僕もまったく同様の感想。自分たちが始めた労働学校を、次はこの内容でやりたい。 ●G 僕としては、10章が重要だと思う。独占がプロレタリアート=墓掘り人をつくり出したということが、10章にガーンとある。生産の社会化ということが、圧倒的多数のプロレタリアートを成長させているということを押さえる必要があると思う。 ●I 今日の提起にあったとおりですけど、労働者が社会の主人公で、自分たちには革命ができるんだと誇りと団結を取り戻していく。そのために、インチキなカウツキーの「理論」をこてんぱんに粉砕するんだと思います。だから、そこに「特化」して『帝国主義論』を読み貫いていくべきだと。 ●R いろんな分断や差別、職場での能力主義やいろんな攻撃にさらされてますよね、労働者は。その中で塩川一派は、敵の攻撃しか言わない。われわれは団結とか仲間を見いだす。そこが決定的に違うのかなと。そのことがマルクス主義じゃないか。 ●Z 秋月論文(『共産主義者』152、153号所収)でプロレタリアートの上層の買収の可能性ということをゴリゴリ強調している問題意識・意図は、われわれの帝国主義理解の要でもある。つまり、血債主義者・糾弾主義者が、帝国主義本国のプロレタリアートはとことん腐っててダメだと絶望論を振りまくのに対して、帝国主義国のプロレタリアートをブルジョアジーが丸ごと買収し切るなんてことができるはずがないと。「上層の買収可能性」はあるけど、プロレタリアートは絶対に買収なんかされない、存在そのものとして、ということを明確に対置させるものとしての「可能性」であって、逆に言えば「可能性」でしかないということが強調されていると思う。 ●E 連合の高木とかって買収なんですかね。何も貰ってないのに屈服している感じで、僕は疑問に思うんです。 ●Z 財政的・経済的基盤の問題で言えば買収ということだけど、講師が提起の中で強調した点は、それよりも役割だよね。体制内労働運動はだんだんどうでもいい、役立たずになっていくんじゃない。どんどんそうなっていくんだけど、そうであればあるほど上層部・体制内の連合指導部は、逆に反革命の先兵、予防反革命として意識的にブルジョアジーの主要な社会的支柱として、「労使は運命共同体である」というイデオロギーでゴリゴリやってくる。それとどう激突できるのか、どうぶっ飛ばしていくのか、ということが切実な問題になっている。 ●講師 そういうものに対する意識的闘い、革命への意識性をもって対決して闘っていくことが重要だと思います。買収というのは、帝国主義として倒されないためには何だってやるということ、危機になればなるほど。高木とか森越、現場の労働者の怒りと闘いが始まっていることに追い詰められて、自分がそれによって打倒されるというふうにますますとらえていくという感じなんじゃないか。 ●N われわれが今、階級的労働運動、体制内労働運動の打倒と言ったときに、マルクス主義とか、階級的と言っているその主体自身が、階級的とか革命的とか、体制内労働運動と言っている内実をはっきりさせて、マルクス主義というのはこうなんだよということを、われわれがここでつかみ取って出したということが、決定的だなと思いました。本質論的に帝国主義による「上層の買収」という問題と、それを打倒しようというマルクス主義を実践する者が、そういうものとして階級的な中身をとらえていく、そこを軸に実践していくということを、ここでつかんだということの意味は大きいかなと。 ●講師 『帝国主義論』との関係で、部落解放闘争の革命的再確立というのは、時間が追いつかなくて宿題にした。 ●E 賃労働と資本の関係で分断攻撃として出されている、それが部落差別であり、女性差別であり、「障害者」差別である。一切はここに集約されるというマルクス主義の基本的な立場、ここをはっきりさせていくことが団結になっていく。塩川一派は「労働者と団結できない」と言う、差別にまみれていて。論争的にも、そこが一切の核心かなと思います。 ●Z 私も、『帝国主義論』の論理構造で言うと、第10章の「帝国主義の歴史的地位」、つまりプロレタリア革命の前夜で死滅しつつある資本主義、その帝国主義の階級支配、階級政策、分断というところに、まずはガッチリ位置づけることが核心だと思う。 ●C 『帝国主義論』の学習会全体をとおして、何がどうよかったのかと言うと、『帝国主義論』を現代帝国主義論、そして世界革命論として読んでいくことが大事だということです。 ●E 現代帝国主義論とか世界革命論とか明らかにしたということは重要だと思うんですけど、あえて言えば、その立場に立って講師が提起したということが重要だと思う。そういうところを一人ひとりが主体化していくことが必要なんじゃないかと思いました。 ●V 今の彼の提起というのは、実践的にはすごく大事じゃないか、やっぱり立場、スタンスですよね。今結論的に言えることは、本当に党一丸となって、階級的労働運動を何としても前進させるという立場に立つかどうかということじゃないかと思う。 ●講師 全党総講師化、できるはずだと僕は思います、そこでやりきるんだというのがあれば。絶対反対論と階級的団結論、それを貫いて職場で、キャンパスで実践していく、ここかなとすごく思います。『帝国主義論』を現場で貫いていくという場合の具体的なことは、結局そういうこと。そのことをはっきりとこの過程でつかんで、闘いを開始しているということはすごいことで、われわれは共産主義者として誇り高く団結して闘うんだということで、僕はいいんじゃないかなと思います。それでやっていきましょう。 |
受講レポートから ★『帝国主義論』(下)のレポートです。【S】 帝国主義論を労働運動路線から読みとる、という、一見乱暴なやり方でレクチャーをされたが、これは結構イケテるな、と思いました。 【G】 カウツキー主義批判を、現代のカウツキー主義者=塩川一派と規定して闘っていくということが良かった。カウツキー批判が、単なる論争や労働者階級の外側にある問題ではなく、我々の内側や党の内側から生まれて来る問題だということです。 【Z】 (1)講師の提起は、『共産主義者』155号島崎論文をもう1つの軸において提起をつらぬいた点で、成功したと思います。 【N】 『前進』新年号でうちだした「塩川一派を打倒し階級的労働運動の白熱的実践かちとれ」のたたかいを実践していくにあたって、とても有意義な提起、討論でした。 【E】 今回の党学校は、今までで一番よかったと思います。 【I】 レーニン『帝国主義論』の核心が、「マルクス主義」をかたったカウツキーらの「革命情勢ではない」論との徹底的な党派闘争であることを、今日の塩川一派粉砕のたたかいと完全に重ね合わせて明らかにしたことは『帝国主義論』を“生きた”ものとして現在に復権させる上で非常に重要で、その点で大成功していると思います。 【C】 『帝国主義論』の後半を聞いての感想を述べると、つぎの点です。 【V】 『帝国主義論』は、どういう立場に立って読むのかで、とらえ方が全然違ってくる。まさに立場性が問われるということだと思う。今回の「日和見主義潮流との闘いが革命の成否を決する」という観点から主体的に『帝国主義論』を読むということが、まさにその立場性を、どれだけ本気で革命をやろうとしているのか、はっきりさせるものになると思う。 【J】 『帝国主義論』は、第1次大戦の最中、資本主義国イギリス、フランス、ドイツ等の経済的基礎を解明することで、資本主義の自由競争が独占に転化していることをつかみ出し、「世界戦争に行きつく独占論」を鮮明にした。帝国主義の侵略戦争・帝国主義間戦争の不可避性を明らかにした。 【L】 今回の『帝国主義論』の学習会に参加して、実は、率直にいって「良かった」という面と、それ以上に自分としては、圧倒されたという面がありました。「圧倒された」のは、どういうことなのかと自分でふり返りながら討論を聞いていました。やはり、講師が昨年12月から今年1月現在までの闘いの圧倒的地平に立ち、プロレタリア世界革命を実現する時代が来たという時代観、塩川一派打倒し、階級的労働運動の白熱的実践に突進しようという攻撃的立場をとことん貫いていたところです。 【P】 これまでは『帝国主義論』を「帝国主義の不均等発展−帝国主義戦争としての爆発」「帝国主義=社会革命の前夜」という視点で読んできたのですが、むしろ実践的問題として、レーニンが日和見主義潮流との闘いを革命の死活がかかったものとして重視し、それとの闘いを訴えていることをつかむことができました。 【R】 帝国主義は、全世界を資本主義化し、分割−再分割戦争にまでうったえている。帝国主義とは「最高に発展し、死滅しつつある資本主義」であり、階級闘争を2大階級の闘争として、最も単純化してきた。その観点から、民族・植民地問題や、農業・農民問題の矛盾の解決も、結局はプロレタリアートがブルジョア独裁を打ち倒して、プロレタリア社会主義革命を実現するなかで達成されることにある。(社会的被差別人民との連帯も、これを基本にして考えるべき。) 【X】 『帝国主義論』後半の報告も、原典を詳読されたうえで、今日的な問題意識にふまえて、述べるべき点は他文献なども引用されてとことん敷衍されていて、大変勉強になった。 【U】 レーニンが「イソップの言葉」と言っている点についてですが、ではイソップの言葉をはぎ取って、今日的に表現したらどうなるのか、ということを感じています。 【Q】 実践的党学校の確立という本講座のテーマの革命性が、この『帝国主義論』学習会でかなり深化されたと思う。 |