第8期 第5課目 レーニン『帝国主義論』(上)前半講義概要 講師 柴田 之雄 【0】われわれは、『帝国主義論』から何を学ぶのか 11・4全国労働者総決起集会―階級的労働運動路線と職場生産点での実践は、1917年ロシア革命が切り開いたプロレタリア世界革命を今日的に復権し継承していく闘いそのものです。この確信を深めるために、レーニン『帝国主義論』を学んでいきたい。 【1】第1章 生産の集積と独占 『帝国主義論』は最初から最後まで、「独占」を軸に展開されている。独占とは生産力と市場がほんの数個の独占体によって支配され、分割されつくしているということ。レーニンは、この「独占の段階に移行した資本主義」を「帝国主義」と規定し、この段階の資本主義を「最高の発展段階」と言った。次に来るものは没落しかない、プロレタリア革命をとおして「より高次の社会」=共産主義にとって代わられるしかないということを、独占論を基軸にしながら明らかにしたのです。 【2】第2章 銀行とその新しい役割 銀行でも集積・独占・巨大規模化が19世紀後半から急速に進み、それまで「控えめな」「地味な」業界だった銀行が支配的な地位に立つようになる。 【3】第3章 金融資本と金融寡頭制 鉄工業などの重工業で生産の大規模化が進行し、生産設備(固定資本)が巨大化していくと、巨額の資金が必要となる。ここから独占的な大企業=大銀行が株式会社制度を使って全社会から資本をかき集めて、資本に変えることがおこなわれるようになる。これが金融資本的蓄積様式です。 【4】第4章 資本の輸出 金融寡頭制の支配を形成するまでにいたった少数のいわゆる先進資本主義国は、他のすべての国家にたいして優越し、「資本の蓄積が巨大な規模に達し」(同p102)ます。 【5】第5章 資本家団体のあいだでの世界の分割 19世紀末から20世紀の初めにかけて、資本の輸出とともに、国際カルテル、国際トラストといった独占団体による世界の分割が進行した。これは独占の究極の段階です。レーニンはこれを「資本と生産との世界的集積の新しい段階であり、過去のものとはくらべものにならないほど高い段階である」(同p112)と指摘している。そういうレベルまできた資本主義の現実のなかに、共産主義社会に向けて生産手段や労働力を世界的規模で分配し、労働者が調和的な生産を組織していくことが十分可能な客体的条件がつくり出されているということです。 【 6】第6章 列強のあいだでの世界の分割 資本主義が帝国主義段階に入った19世紀末〜20世紀初め、すでに全地球の領土的分割はほぼ完了していた。レーニンは20世紀は再分割の時代だと言っている。 |
●F 『帝国主義論』は、レーニンが、17年革命を準備していく過程で書かれたということで、かなり実践的な課題を含んでいる。今日のわれわれにとっても、帝国主義をぶっ倒すためにどういうふうに闘うべきなのか、帝国主義の攻撃の総体に対して、どういうふうにわれわれが立ち向かうべきなのか、ということを、かなり実践的に展開していると思う。 ●講師 今の党内闘争と一緒です。体制内的な思考とか思想ということは、労働者党といえども無縁ではない。革命の決定的なチャンスが来たときに、体制内的なものと対決・決別するのか、それとも共存しながらやるのかということが問われる。すなわち、ブルジョアジーの側に立つのか、プロレタリアートの側に立つのかという。その時、根本的には自分の小ブル的立場ということを温存した者が、あたかも労働者の中でマルクス主義的な言葉で資本主義を批判したりとか、革命ということも言ってみたりとか、ということじゃないですかね。 ●Z 自分の勉強した範囲内ですけど、今の論議にかかわってみると、3つくらいある。 ●I 『共産主義者』152号、153号の秋月論文もそうなんですけど、カウツキーに代表される、革命的情勢のときに出てくる日和見主義というか、反動分子というか、これとの格闘ということが、かなり念頭に置かれて『帝国主義論』は書かれている。 ●L 今の意見で言われたことで、学ばなきゃいけないと思ったのは、レーニンが、なぜ『帝国主義論』を提起しえたのかということにかかわることで、今年の木崎論文(『共産主義者』152号所収)に出ていたような、革命の現実性というのは、革命家の執念の中にあるんだということ。今、彼が言ったことはそういうことにかかわることだと思う。 ●R 『帝国主義論』というのは、今まで勉強してきたのは、世界戦争の必然性を論証する、という観点からだけだった。しかし、現実に戦争が始まっている中で、レーニンは必死に、これは蜂起に至る革命しかない、その主体は労働者だと。現実に戦争が起こっていても、ある種そういう侵略などにまみれていても、労働者は立ち上がるという呼びかけを死守している。あらためて『帝国主義論』というのは、そういうものなんだということを感じた。 ●F 塩川一派は、7月テーゼに全面的に反対する。「資本主義を倒そう」という青年労働者のスローガンには帝国主義論がない、自国の資本主義を倒せばそれでいいというものじゃない、血債の立場がない、ということを言って。つまり、労働者は世界的な存在なんだということが、彼らの主張にはまったくない。労働者階級が主体となって帝国主義を打倒していく中に、民族・植民地問題も解決されていくんだという立場がないから、血債主義を振りかざす議論になっていく。 ●Z そこにかかわって、まずは、帝国主義段階に入るときに、それまでの経済も社会も、階級闘争もそうだけど、まったく一変する情勢に入った。それがマルクス主義陣営にはどういうふうに現れたのかと言うと、ベルンシュタインがいち早く資本主義は変わった、革命はもう必要ない、とマルクス主義の修正を要求する。そういう形で現れた。それに対してカウツキーは、「正統派マルクス主義」の立場から、いろいろ変わったかのように現象しているんだけど、『資本論』は貫かれているんだというのが、ベルンシュタインとカウツキーの、修正主義者と「正統派マルクス主義者」間の論争だった。 ●N 「労働運動のこの分裂が帝国主義の客観的諸条件とむすびついていること」は、「『奴隷の』ことばで語らなければならなかった」と書いてありますけど、この間、党の革命、塩川一派との闘いということが、この問題をめぐって、労働運動の分裂ということをわれわれの側からつくり出しているわけですよね。「労働運動の力で革命をやるんだ」というものとしてつくり出してきて、これは帝国主義の問題なんだと。それと結びついたものとして必然的なものとしてあるんだということを、われわれは奴隷の言葉で語る必要はないわけだから、徹底的にはっきりさせていく。今の党の革命をめぐる闘争も、そういうものとして積極的に、路線的にはっきりさせるということが、絶対に必要だなと思いました。 ●講師 『帝国主義論』って読む者の立場によって読み方が全然違うということをすごく思った。労働運動における実践ということと一体で、マルクス主義ということもつかまれないと歪んだものになると思うんです。 |
受講レポートから ★『帝国主義論』(上)のレポートです。【G】 革命的情勢の接近、世界戦争の時代に、マルクス主義や労働者階級の側でありながら、カウツキーのような体制内派、社会排外主義者に対する闘いとして、レーニン『帝国主義論』が書かれているということが重要です。今日の11・4の地平から、レーニン帝国主義論をとらえ返し、プロレタリアートが革命の主体であるということがよくわかる。ややもすると、レーニン帝国主義論が、現代の世界が帝国主義段階なのか、そうでないのか? 世界戦争が起きるか、起こらないのか? という本として読まれてきたと思う。 【F】 いままでの『帝国主義論』の読み方とは違った、より実践的な読み方ができた学習会だったと思います。それは、「小泉改革」以降、とくに04年のイラク侵略戦争以降、日帝の攻撃が全面化し、革命情勢が切迫しつつあることに規定されているということで、良いことだと思っています。 【N】 ○戦時下における労働運動の分裂が、帝国主義の客観的諸条件と結びついていることを徹底的にはっきりさせることが、「労働運動の力で革命をやろう」と訴え、闘いを開始した我々にとって、非常に重要な課題であることを再認識しました。 【Z】 (1)講師の提起は、最末期帝国主義の今日的諸データを意識的に持ちこんでいて、大変な努力が払われていて、労作となっていた。 【E】 激動期情勢の中での『帝国主義論』を学習するということの意義がはっきりさせられたという点で、今回の学習会は非常によかったと思います。 【R】 帝国主義戦争が、実際に階級的立場から様々に語られている時代に、レーニンは、帝国主義が「死滅しつつある資本主義」であり、それは「プロレタリア革命の前夜」であるから、労働者は帝国主義を打倒しようと正しくも呼びかけた。 【C】 今日の『帝国主義論』の学習会に参加してつかんだ点を、以下に述べたいと思います。 【A】 資本主義が帝国主義段階に推転し、ついにその矛盾が世界戦争として爆発する。その時代にレーニンは、この事態こそ、世界革命の時代であることを論証し、実践し、そしてロシア革命を世界革命の端緒として勝利させた。 【I】 * 『帝国主義論』の捉え方、読み方、向かい方については、討論でも出したところですが、あらためて、この『帝国主義論』の「序文」にある「イソップの言葉でもって…これらの個所を読みかえすことは、苦痛である」という、まさにこの部分の「苦痛」を解き放つことこそが、この文献(原典)の核心中の核心であろうと思います。下部構造−上部構造の解明、あるいは“学問”としての「疑う余地のない厳格さ」をもった帝国主義の実態の暴露も、詰まるところ、革命を永遠の彼方に追いやるカウツキーetc.の「沼地派」との結着のためであることをはっきりさせることだと思います。 【J】 レーニン『帝国主義論』は、第1次帝国主義戦争(1914年8月〜18年11月)のさなかに書かれた。すなわち『帝国主義論』は1916年の1〜6月にかけて書かれ、1917年ロシア2月革命−ロシア革命情勢の4月に発刊されたのです。 【L】 今回の『帝国主義論』の学習会は、11・4の全国労働者集会の歴史的地平をしっかり確認し、階級的労働運動を推し進めていく立場が貫かれていました。 【P】 動労千葉の中野顧問がよく言われることですが、時代認識を明確にする、時代認識で一致することが、われわれの闘いにおいて土台をなすと思います。その意味で、レーニン『帝国主義論』を正しく読みとり、現代世界・時代を鋭角的に把握することが不可欠の闘いとなることは明らかです。 【S】 爽やかなレクチャーでした。 【X】 大学で活動を始めたとき、経済・社会学部合同で社会思想史を教えていた良知力という教授がいた。知っている人は知っているとおもう。初期マルクスの本を何冊も出していた。大教室での授業であったが、この先生は「自治会です。時間をください」というと、席のいちばん前に座ってアジを聞いていた。大変、静かな、まじめな先生でした。 |