第5課目 レーニン『国家と革命』前半講義概要 講師 川武信夫 『国家と革命』は、何を提起しているか レーニンが本書につけたサブタイトルは、「マルクス主義の国家論と革命におけるプロレタリアートの任務」です。『国家と革命』は、労働者階級がみずからの階級的自己解放のために、国家に対してどのように考え、行動すべきかを提起しているのです。 第1章 階級社会と国家本書全体の総論的な章です。エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』(1884年、以下『起源』)を出発点に、マルクス主義国家論の再建・展開が行われています。 1 階級対立の非和解性の産物としての国家 @「国家は、階級対立の非和解性の産物であり、その現れである」(『国家と革命』研究会版p18)−支配階級と被支配階級に分裂した社会において、この2つの階級の利害は、相対立する(=階級対立の非和解性)。これが国家の生まれる必然性です。 2 武装した人間の特殊な部隊、監獄その他 国家の特徴は@「国民を地域によって区分する」、A「自分を武装力として組織する住民とはもはや直接には一致しない一つの公的権力をうちたてる」(『起源』)です。 3 被抑圧階級を搾取する道具としての国家(民主的共和制とボナパルティズムなど)略。解説本p34〜48参照。 4 国家の「死滅」と暴力革命 @プロレタリアートは、国家権力を掌握し生産手段を国有財産に転化させ、「プロレタリアートとしての自分自身とともに、あらゆる階級の区別と階級対立を廃絶し、国家としての国家をも廃絶する」(同p32)。 第2章 国家と革命 1848〜1851年の経験レーニンは、マルクス主義国家論の基本的論点と構造が、「1848〜51年の経験」をつうじてどう検証され、発展させられていったかを検討します。 1 革命の前夜 レーニンは、マルクス国家論が、1848年以前の段階で到達していた地平(同p43〜45参照)を踏まえた上で、以下のことを確認しています。 2 革命の総括 この節は、『共産党宣言』で打ち出した国家論・革命論を、マルクスがどう発展させていったかを『ブリュメール18日』(1852年)をつうじて検討し(同p50〜59参照)、次のように集約しています。 3 1852年におけるマルクスの問題提起 ここでレーニンは、マルクス主義国家論、革命論におけるプロレタリア独裁の決定的・中心的な位置を再確認しています。 |
『国家と革命』をどう読み返すか? −討論から−【H】 国家ができるというのは膨大な官僚なり、常備軍が形成される。マルクスの『フランスの内乱』なんかでそこら辺具体的に書かれてて、改めて読んでみて、そこら辺の新しい革命勢力に対する国家の現実的な形成過程を学ぶ必要を感じた。 【講師】 2つあると思うんですね。1つは、国家がこんなに肥大化してきたのは、18世紀、19世紀、とりわけ19世紀後半になって加速してこうなってきた。昔の国家というのは、こんなに膨大な何十万の軍隊、何十万の官僚がいたわけじゃない。 【O】 今杉並の選挙で、犯罪被害者支援条例問題ってありますよね、あれにどういう立場をとるのかということで、それは国家暴力なんだと。被害者を助けるというような形で、ある種公的な権力として打ち出してきているけども、実際はブルジョア独裁を支えるための突破口なんだと。 【E】 ここで今日言ったような、労働者大衆を一般的にはブルジョアジー、とりわけ帝国主義ブルジョアジーの影響から解放する闘いは、国家にたいする日和見主義的偏見と闘うことなしには不可能である、結局突き詰めていけば、国家をどう見るかということが決定的な分岐点になるということは明らかだと思うんですね。しかし、愛国心について言っても、左と言ってるような部分だってできないというか。「あなた愛国心ないんですか」って言われたら、いや、「あなたの言うような愛国心じゃない」という、いわゆる郷土愛みたいな話でごまかす。あと選挙で政権を取るというようなね。この本を共産党の党員が読むというのは禁止になっているんですかね。 【講師】 まず彼らは階級的に、党として屈服しているということが大前提だとおもう、大きくは。それがあって、それを美化していくためになんだかんだ言う、今の共産党は。戦後革命を否定して、どうやって生き延びていくかということで、言葉の上ではごまかしてきたけども、一回たりとも労働者階級の中で戦闘的大衆的に闘ったことはない。核心は、基本的に労働者階級の持っている革命性に対する恐怖だと思うんです。 【H】 関連して、とくに日共は今回、動労千葉とは一切組むな、あるいは、1047名闘争闘うなというところまでエスカレートした。だから、今の国鉄闘争の局面というのは、本当に1047名問題、大きな転機をむかえてます。若い人は全労連の現場でも、動労千葉を支持する、中核派の問題も含めて。そうやって日共の伸びすぎた手を徹底的に叩いていくという局面に入っているわけですよ。 【O】 やっぱり今のわれわれの新指導路線からいくと、さっき出されたブルジョアジーを打倒することはプロレタリアートによってのみ可能であると。ここに本当に信頼というか、絶対的確信をもつかどうか、今それが職場闘争、現場で問われている。 【E】 今労働組合に行くと職場闘争というのはほとんどないわけです。じゃあ何をやっているのかと、交渉ですよね。4大産別的に言えば、平和フォーラムなんか組織されていて、反戦平和闘争はやるわけですよ。もう一つは、選挙ですよね。だけど、はっきりしていることは、基地闘争に自治労や日教組が決起してくるというのは重要なんだけど、じゃあそれで勝てるのかということね。そこはそうはいかないわけですよね。結局、職場における闘いということをとおして、たたかう労働組合として形成されていく、階級として形成されていく、そういう闘いを抜きにしてはないわけですよ。職場闘争をやらない代償として基地闘争なんかをやっている、悪く言えば。現実には今、資本とはまったく闘わないで、アリバイ的な基地闘争はやる。それにしかすぎない。だから、そこがやっぱり、たたかう階級的労働運動をつくり出していくということの根幹をなしている、そこのところの根幹に、今日の国家論、やっぱり階級支配をどう覆すのかを抜きにして、労働者の社会など形成されないということを徹底的に明らかにしていかなきゃいけない。 【O】 愛国主義をぶち破るようなイデオロギーというのは、なかなかできないですよね。自分の生活と家族を守りたいというような気持ちは、すがりつくようにあると思うんだよね。それを本当にぶち破っていくというのは、やっぱり労働者が動労千葉のようにストライキを打つということ。生産は自分たちのものなんだ、俺たちがやったら資本は止まると。ストライキのできる職場を作り出すこと。それが一番今の秩序を破っていくこと。 【N】 地区で活動しているんですけど、この間権力が組合に介入してきているんですよ。一定程度運動が盛り上がると、必ず権力がちょっと介入して、そしてブルッちゃうわけですよ。僕の実感として、労働組合までやっている人というのは、幻想なんかあんまり持っていないですね。むしろ恐怖ですね。権力の方から何か来るとブルッちゃう。むしろ、署名運動なんかやってくれている普通の大衆というか、労働組合とかあまり関わっていない人の方が幻想を持っているというか、そういう実感がありますよね。 |
受講レポートから ★『国家と革命』(上)のレポートです。【N】 『国家と革命』は、プロレタリア独裁、暴力革命、武装闘争の思想、考え方を教えてくれる重要な論文です。これは、ボルシェビキが多くの職場で権力を握り、職場支配権を確立している中で書かれました。2重権力状態の中で「一切の権力をソビエトへ」と掲げたレーニンの結論としての権力奪取は、まさに資本との闘いを一切の土台としてあるわけです。このことが、今日われわれが『国家と革命』を読む場合にハッキリさせなければならない留意点だと思います。 【H】 第2章「1848−51年の経験」は、今回の講義をうけて、ある種興奮をおぼえた。理論的には、われわれがこれまで『ドイツ・イデオロギー』の新訳と『国家と革命』第1章・レーニン主義を徹底的に主体化する作業の上で、それを検証し、唯物論にかきあげた。とくに第2章は、マルクス主義国家論の骨格として再度、われわれのものにしていくために提起された。そして、見事に成功している。 【J】 1.討論で、『国家と革命』の今日的・現実的な貫徹という課題に関しての討論は、とても有意義だった。 【C】 職場生産点における支配権を労働者が握ることなしに革命はありえない。しかし、支配権力をとった労働者は、国家の問題をそれまでとは違った感覚でとらえるだろう。 【O】 1)『国家と革命』は、レーニンがそうであった様に、「戦争と民営化」が吹き荒れる時代に決定的な実践の書として書き抜かれている。このいま自分が住み、生活している国家を粉砕したらどうなってしまうのか。また、日帝の戦争(北朝鮮・中国への侵略戦争)攻撃に対して、祖国敗北主義(=内乱)を対置する根底的・原則的たたかいで労働者階級人民を組織できるのか。本当に重いテーマが襲いかかってくる内容をもった学習会です。これで職場に切りこんでオルグできるのか。この学習会で武装したたかいぬく決意で党学校に臨んでいます。 【F】 「階級対立の非和解性の産物としての国家」は、階級社会の歴史的発展の段階において、それぞれの国家形態をとります。資本主義社会は、資本家と賃金労働者が対立する社会であり、国家はブルジョア国家です。マルクス・エンゲルスは、1848−51年のヨーロッパの内乱、パリ・コミューンを総括し、『フランスにおける階級闘争』『ゴータ綱領批判』『家族・私有財産・国家の起源』を著し、労働者階級がプロレタリア独裁権力のもとで、共産主義社会の建設すべき方向を明らかにしました。それは、共同の社会的生産と結びついたコミューン4原則の着手と実現です。 【E】 革命的情勢の急接近という今日の情況の中で、『国家と革命』の中で出されている国家の問題は、理論的のみならず、実践的、政治的な面でも、重要性を増している。 |