第3課目 マルクス『賃金・価格・利潤』第3回講義概要 講師 岩谷芳之 受講生C同志からの「生徒自身がレポートするようにしては」との提起を積極的に受け止め、新たな試みとして、解説本の第4章の最後の部分(p173〜178)と補論(一)、(二)をC同志が担当しました。p3〜5にその提起と補足を掲載します。 (事務局) 今日は、『賃金・価格・利潤』の第13節からです。解説本では第4章にあたる部分をやります。 第13節 賃上げの企て、または賃下げ阻止の企ての主要な場合●生産力の変動と賃金略。解説本p117〜123参照。 ●労働時間の延長と賃金 より多くの剰余労働を搾取するため、資本は常に労働時間を延長しようとする。労働者は、自分自身と階級を守るために、労働時間規制を始め、合理的限界内での労働条件を資本家に守らせるために闘わなければならない。 ●労働の強度の増大労働強化が限度を超えれば労働力の再生産は不可能となる。労働強化に対しても、抵抗しなければならない。 ●資本主義の循環運動と賃金 景気循環の中で、諸商品の市場価格は変動するが、全循環を平均すれば、それはその価値によって規制されている。労働力も商品である限り、その価値は価格の循環的変動をとおして実現される。したがって好況期には可能な限り賃金を上げるために闘い、恐慌や不況期にはできる限り賃下げに抵抗して闘うことが、労働力の価値を維持するためにも必要となる。 第14節 資本と労働との闘争とその結果●労働者は平均すれば自分の労働力の価値を受け取るだけ 「他のすべての商品と同じように、労働についてもその市場価格は、長期間にはその価値に適応するであろう。したがって、あらゆる騰落にもかかわらず、また労働者が何をしようと、彼は平均的には彼の労働の価値だけを受け取るであろう」(岩波文庫版p104) ●労働力の価値は、生理的要素と歴史的・社会的要素によって決定されるが、究極的な限界を決定するのは生理的要素である略。解説本p141〜145参照。 ●利潤の現実の程度は、資本と労働との絶えざる闘争によってのみ定まる資本家は常に賃金をその生理的最小限に引き下げ、労働日を生理的最大限に拡大しようとしており、労働者はそれを反対方向に押し返そうとしている。事態は闘争者たちのそれぞれの力の問題に帰着する。 ●生産力の高度化と相対的過剰人口の生産略。解説本p150〜151参照。 ●資本の有機的構成の高度化略。解説本p152〜155参照。 ●実践的結論@日常的闘争の徹底的な貫徹 標準賃金獲得のための労働者の闘争は、賃金制度と不可分の事象であり、賃上げを求める労働者の闘いのほとんどは、労働の価値を維持しようとする努力にほかならない。もし労働者階級が資本との日常闘争を貫かなければ、労働者階級はより大きな運動を起こすための能力も失ってしまう。 A労働者の究極的解放を根幹に据える 日常闘争において労働者は、結果と闘っているのであって、原因と闘っているのではない。労働者階級は、資本の絶え間ない侵略や市場の変動から生じる不可避的なゲリラ戦に没頭してはならない。資本主義は、労働者に窮乏を押しつけるが、同時に、社会の経済的改造に必要な物質的条件と社会的諸形態をも生み出している。 以上のような実践的結論を定式化して、マルクスは第1インター中央評議会に次の3つの決議を採択するよう求めた。 第1 賃金率の一般的騰貴は一般的利潤率の低落を生じるであろうが、だいたいにおいて諸商品の価格には影響しないであろう。
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C同志の提起概要●「労働組合、その過去・現在・未来」の労働組合論 「労働組合、その過去・現在・未来」は、1866年第1インターナショナルの決議です。第1インターナショナル自身は、下からの文字通り労働者の怒りの澎湃たる決起ということにたいして、マルクス、エンゲルスなどの闘う人々が、それに必死に食らいついていって結成に至る。その中で、労働組合について、これまでの総括と現在、そして目標という形で、決議が上がったということです。『賃金・価格・利潤』の中身に沿った決議だと思います。 ●補論(一)−賃金の現実の支払形態と賃金闘争 賃金は、まず第1に時間賃金という形態をとる。これ自身がすでに賃金の本質を隠ぺいするものになっている。 ●補論(二)−マルクスの労働組合論とレーニンの組織論 マルクスは、労働運動と政党との関係について、労働組合的団結と政治的組織化のプロセスを一個二重のものとして提起していた。これ、すごい重要だと思うんです。『共産党宣言』での規定そのものが、イギリスの労働運動とチャーティスト運動との関係の総括だった。労働運動の推進を軸にして革命的労働者党を組織化していこうとしていたとマルクスの闘いをとらえていくということだと思います。 C同志の提起より「レーニン的地平を反プロレタリア的に完全に歪めたスターリン主義」(解説本p196)。ここは私には展開できないので、補足を。 【R】 単純化を恐れずに言えば、19世紀中盤すぎまでは労働者階級が歴史的に登場し、組織された勢力としてだんだん大きくなるにつれ、そのまま階級的にも強くなるという関係だった。 |
●生徒C 今日は自分でレジュメを切って提起させてもらいました。人の話ばかり聞かされるのではなくて、自分で提起すると勉強しますし、非常にためになりました。「日々の賃金闘争、経済闘争をやり抜かずに、より大きな政治的課題で闘えるはずがない」というのは、非常に重要だと思いました。職場で労働者を支配することに資本は最大の力を投入するわけで、そこで労働者が勝ち抜いていく、労働条件や賃金をめぐって闘っていくことは、大変ですけれど、重要だと思いました。 ●生徒1 帝国主義の支配は、労働者階級の団結をいかに先制的に粉砕していくかということからすべての政策が行われている。それに根底的に対決しない限り、労働者階級の団結、労働組合の団結もできない。 ●講師 例えば今、「政治解決」路線に迷い込んでいる国労闘争団を批判することは重要な課題ですけれど、首を切られて20年も闘ってきた人たちに「あなたたちの路線は間違っています」と言い切ることは、そんなに簡単なことじゃない。でも言わなければならない。それは、動労千葉の闘いがあるから言えるんです。動労千葉は、『賃金・価格・利潤』で提起されていることを本当に実現しようとして苦闘してきた労働組合です。これは間違いなくそうです。それがあるから国労闘争団に対して「動労千葉と同じ道を、あなたたちは行くんですか、どうですか」というふうに問題を出せる。これは、『賃金・価格・利潤』でマルクスが提起した、労働者階級の究極的解放のために闘うのかどうか、ということとストレートに結びついている。そういうことを真剣に提起すれば通じる時代がようやく来たなと感じています。 ●生徒1 今回の『前進』夏季特は、動労千葉の立場に立ちきって、そこで革命の展望と可能性をきちっとつかみ取ろうと言い切った点で画期的だったと思います。「労働者階級は絶対に勝てるんだ」という革命的な勝利の展望を物質化したものとして、動労千葉がある。もちろん、これからも幾つもの試練をくぐるだろうけど、「具体的に勝利できる労働運動がここにある」というわれわれの確信の度合いによって、今後の闘いが決まってくると思います。だから、国労の問題というより、われわれ自身が本当にそこをつかみきれるかどうかが問われていると思います。 ●生徒2 これまでの講義で剰余価値や労働力の問題を押さえた上で、今回は「標準労働日の創造の闘い」とか、日常的な闘争を貫徹する問題、労働者の究極的解放を根幹に据えての労働組合の団結という問題が出されて、いろいろイメージがわきました。 ●講師 今の労働組合幹部は国労にしろ自治労、日教組にしろ、やっていることがあまりにもひどすぎる。だから、いくらでも批判することはできるんだけど、その批判の仕方が、かつての総評労働運動の枠内にとどまっている限り、本当の批判にならない。それでは11・5労働者集会への結集には結びつかないと感じています。『賃金・価格・利潤』でマルクスが提起したものがわれわれの中にあるのかないのかによって、11・5への結集はかなり違ってくると思います。 ●生徒3 この間、労働組合の革命論的意義の確立の議論や、「労働者階級と党はイコールである」という議論を深めてきていますし、『前進』夏季特でも、動労千葉は戦後労働運動を越えるものを貫いてきたんだと提起されています。「体制内労働運動の総破産と動労千葉の闘い」ということが言われましたが、その中身をもうちょっと考えていく必要があると思います。 ●講師 国家権力や資本が「労働組合なんかつぶすぞ」と決断してかかってきた時に、「権力や資本が本気になったら労働者はかなうはずがない」と屈服してきたのが体制内労働運動です。 ●生徒4 『賃金・価格・利潤』で提起されていることは、労働者の究極的解放からとらえ返して日常闘争も闘い抜かなくちゃいけないんだということです。労働者階級に対する信頼とか労働者自己解放ということを徹底的に貫いて労働組合運動も革命党の形成もやっていく。動労千葉はそこを貫いたから国鉄分割・民営化と真っ向から闘って勝利していると思うし、連合がなぜ連合なのかと言えば、それを徹底的に否定し破壊して、現場の労働者は主人公でもなんでもないという感じになっているからです。4大産別決戦をプロレタリア自己解放を徹底的に据えて闘うことが、改憲を打ち破る力をも形成していくと思います。 |
受講レポートから ★『賃金・価格・利潤』第3回のレポートです。【C】 改めて、日常闘争と職場闘争(動労千葉労働運動)の重要性がよく分かった。日常闘争をきっちり闘い抜く、職場を守り抜いていく闘いの中で団結を固めていく、というイメージがわいた。 【Y】 労働者階級自己解放ということをはっきり貫いて『賃・価・利』を読むのが重要だと思いました。そうすると、提起にあった「労働者の究極的解放を根幹にすえる」とか「資本との日常闘争」などの意味が、自分の中ですごくはっきりしたような気がしました。 【H】 今回、第3回目は、圧巻だった。 【O】 1)今回(『賃・価・利』全体)の学習会の直接テーマは、「資本主義の賃金制度」の革命的暴露であり、労働力商品化の非人間性を全面的に明らかにした。賃金闘争の重要性とともに、究極的勝利の立場に立ったたたかいの死活性を鮮明にさせた。 【K】 ▽この間の労働組合論の革命論的確立の中から、われわれは、〈労働組合、党、ソビエト〉の関係を立体的にとらえ返してきた。その地平から、今一度、『賃・価・利』の賃金闘争論、労働組合論を読み返し、学び直していくことが、非常に重要だと感じました。 【F】 『賃金・価格・利潤』の第3回の講義は、資本主義・その資本攻勢と根底的に対決する、労働組合の戦略的位置を鮮明にしています。 |