第3課目 マルクス『賃金・価格・利潤』第1回講義概要 講師 岩谷芳之 今なぜ『賃金・価格・利潤』を学ぶのか●マルクス主義の「労働組合原論」 『賃金・価格・利潤』は、マルクスが労働者階級の基礎的団結体である労働組合と、労働組合の日常的闘争の中心課題としての賃金闘争=経済闘争の意義を正面から論じた書物です。 ●労働運動再生に向けての核心的テーマ ウェストンが主張したような「賃金闘争は労働者階級にとって有害無益」という主張は、今でも労働運動の実践に踏み込めば、必ず激しい論争の焦点となるテーマです。 ●同志的に討論を進めたマルクス ところで、マルクスが論戦の相手としたウェストンを、連合幹部と同列に扱うことはできません。 ウェストンの議論の誤り解説本 第1章 ウェストンの議論をごく簡単に言ってしまえば、「名目賃金が上がっても物価が上昇するから実質賃金は変わらない」ということです。 商品の価値は何によって決まるのか解説本 第2章「六、価値と労働」●経済学の根本問題 ウェストン批判をとおして、マルクスはここで積極的に「商品の価値とは何か」「それはどう決定されるのか」(同p54)という根本問題を提起します。 ●商品の価値は、その生産に要した社会的労働の大きさで決まる 生産された物の自然的性質はさまざまですから、「共通の実体」は社会的なものであるはずです。それは労働、しかも社会的労働としての労働です。 ●価格は価値の貨幣的表現 では、価値と価格の関係はどうなっているのでしょうか? |
講師の感想 今回、党学校の講師を初めて務めさせていただきました。私自身、改憲阻止闘争と4大産別決戦下での労働運動・労働組合運動の実践的立場から『賃金・価格・利潤』を読んだらどうなるのかという問題意識でレジュメを準備し、講義に臨んだのですが、討論やレポートで、受講者の皆さんそれぞれから「労働者の問題意識に即した提起を」「現場的な話と結びつけた内容を」と指摘されています。それは、新指導路線の実践者としてマルクス主義を原点からとらえ返したい意欲と受け止めています。実際に講義を行って、実に学ぶことが多いと実感しています。 Q&A 受講レポートの質問に答えます。(事務局)Question 【F】 ある商品は他の商品の使用価値によって、自らの価値(社会的労働量)を表現するのですから、ある商品に何時間の労働時間が対象化されているかということは、他の商品によって間接的にしか表現できない、ということでよいのでしょうか? Answer 商品の価値はあらかじめ前提ではなく、交換(購買=販売)の結果として「実証」されるしかないものです。価値の実体は確かに「社会的労働」ですが、厳密には、それが表現されるのではありません。商品価値は〈他の商品の一定量と等しいあるもの〉としてしか表現できないのです。「社会的労働」を直接に把握できるのは、社会的な仕方(私的生産を止揚した共同的生産の中で)においてのみです。 Question 【G】 マルクスとウェストンの議論の時代背景として、「イギリスのスト破りに、フランスやベルギーの労働者が送り込まれるような事態」があったと説明されているが、このことがウェストンの立論に相当の影響があったのだろうか? Answer それとウェストンの主張は直接関係はないでしょう。ウェストンの主張の核心は、正しい賃金制度による根本的社会改革(それによる労働者救済)ということです。労働者の国際的連帯それ自身は、当時の社会主義者や第1インターの関係当事者にとっては、共通の考え方であり、前提です。しかし、ウェストンらは階級的国際連帯の意味をブルジョアジーとの闘いとして突き詰めて考えてはいなかったでしょう。 |
受講レポートから ★『賃金・価格・利潤』第1回のレポートです。【T】 講師の方には失礼になると思いますが、今日のお話の中では、レジメp1〜4の冒頭部分の内容が面白く感じました。これは決して「テキスト本文の学習が初めてでない為、私の興味が薄れている」からではありません。 【D】 今までになく面白かった。自分のバイトや職場での経験をどう説明するのかでギロン。自分がスッキリきたのはブルジョアジーはもうけられればいいと思っているということ。価値がどう決定されているかなど、どうでもよいと思っているということ。労働者階級は、こうしたブルジョア学者も含めて論破して、搾取構造を怒りをこめて断罪し、自分達の労働こそが社会を動か 【H】 『賃金・価格・利潤』を逐条的に学習する事が出来ることを何よりも、喜びとしたいと思いました。 【F】 1860年代、イギリス−大陸では労働者階級が決起していた。マルクスは、ウェストン(イギリス−大陸)の賃金(闘争論)を『賃金・価格・利潤』で批判した。闘う労働運動・労働組合をつくりだすために、第1インターで講演したのである。 【C】 ウェストン君の見解は、現代においても多少違った形ではあれ根強く残っていると思う。このウェストン君をどのように批判し、ひっくり返していくかの論理展開を再度理解していくことが重要というか核心だと思います。 【K】 ▽(質問に出したとおり)レジュメp14にある「商品の価値とは社会的労働の大きさによって決まる」(=労働価値説)の意義を、自分なりにつかみ直せたことが、最大の収穫でした。 【N】 討論の中で労働価値説についての意見や質問が出ましたが、古くて新しい議論として活発な展開がされたと思います。とりわけ商品の価格は需要供給で決まるのか労働時間で決まるのか、という議論はどこに本質があるのか−
−。これに対して、本質論と現象形態ということだけでなく、社会の根本的なあり方を捉えるのかどうかというところに本質的な違いがあるとのイケンが出ました。そのとおりだと思います。 【O】 1)この「賃・価・利」を経済学の入門書として学ぶだけでなく、労働組合運動の原理・原則として戦闘的(=究極的勝利)労働運動の手本として学ぶこと。 【G】 商品の価値が社会的労働によって決定されるということを説明すること自体が、相当困難を要するということは、少なくとも以前には、生コンや鉄筋のトン当たりの値段が労賃も含めて設定されていた時代に比べて資本自体が全く余裕=余力を失っていることの現れではないのだろうか? 【A】 ○「商品の価値とは何か?」という所に、「賃・価・利」の議論も、今回の学習会の議論も重きが置かれている。この議論は大切なのだろうけれど、労働者(とりわけ青年労働者)の問題意識に即して考えていくべきだと思う。今の青年労働者(学生も含めて)にとって、「自分の賃金は何で決まっているのか?」が最大の問題意識としてあるはず。「自分の価値」がないがしろにされているのが、今の青年労働者の現実。「我々がオルグした青年労働者・学生が、更に『賃・価・利』(やマルクス主義の理論)を武器として、オルガナイザーになる」ことを目指すのだし、ありのままの青年労働者は「モノの値段は何によって決まるのか」よりも、自分の賃金の方に興味(というより、切実な現実の問題意識)があるのは間違いがないのだから。今、9条改憲阻止署名を街頭で集めているのだけど、そこで青年労働者に聞いてみたいと思う。 【U】 1)導入部のところの説明。現在の賃闘をめぐる攻防から説明したのは良かった。 【M】 前置きから、かなりわかりやすい語り口でよかったと思います。現実の闘いの立場からの問題意識で提起されていることもよい。
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一言解説『賃金・価格・利潤』は、1865年6月20、27日の第1インターナショナル中央評議会でのマルクスの講演。4月6日の中央評議会でウェストンが、@一般に、賃金を高くするという方法によって、労働者階級の社会的・物質的幸福は増大されるか? Aある業種で賃上げが行われれば、その結果、他の産業に悪影響を及ぼすのではないか? という問題を討議に付すことを求めた。まだマルクス主義が労働者階級のものではなかった中、生まれたばかりの労働者階級の国際的団結の存続、労働者階級自己解放の闘いの未来をかけて、マルクスは講演を行った。 |