第2課目 レーニン「帝国主義論」講義概要 講師 秋月丈志
独占論 第1章 〈独占〉は『帝国主義論』の全体を貫くキーワードです。 ●独占の生成と発展 独占は、きわめて高度の発展段階にある生産の集積から発生し、その生産の集積・大規模化は、鉄鋼など重工業や原料資源の採掘・生産を中心に徹底的に進みました。 金融資本と金融寡頭制 第2章〜第3章 独占の形成、その真の力と意義は、銀行の役割を抜きに考えることはできません。銀行の資本の集積とその取引高の増加にともなって、銀行は、単なる「仲介者」から「資本家と小経営主との総体の貨幣資本のほとんどすべてと、またその国やいくたの国々の生産手段および原料資源の大部分とを自由にする、全能の独占者」(同p51)に成長転化します。 ●銀行と産業資本の融合 銀行業の発展にともなう銀行と産業との緊密な結びつきの結果、「銀行にたいして産業資本家がますます完全に従属するようになる」(同p68〜69)。銀行と産業との「人的結合」が、政府との「人的結合」によって補足され、発展します。 ●金融寡頭制 資本主義的独占体の「支配」の下では、「不可避的に金融寡頭制の支配になる」(同p78)。 資本輸出と世界分割 第4章〜第6章 独占が支配している最新の資本主義にとっては、植民地的超過利潤の獲得や資源の独占をめざす資本の輸出が典型的となります。 帝国主義と世界戦争 第7章 レーニンは、「独占と金融資本との支配が成立し、資本の輸出が顕著な意義を獲得し、国際トラストによる世界の分割がはじまり、最大の資本主義諸国による地球上の全領土の分割が完了した」(同p146)とまとめられる「5つの基本的標識」(同p145)を挙げ、帝国主義を、「資本主義の発展の特殊の段階」と定義しました。この定義は、〈独占〉を軸にした「基本的な純経済的概念」(同p146)から導き出された定義です。 寄生性と労働運動の2つの潮流 第8章 寄生性論=「労働運動の内部における2つの基本的傾向と帝国主義との関係」論は、独占論とならぶ帝国主義論の要です。 カウツキー批判 第9章〜第10章 レーニンにとって、「カウツキー主義」批判は、日和見主義・カウツキー主義の労働者、労働運動への影響を断ち切るための、最も差し迫った実践的課題でした。 ●まとめと結論 レーニンは、独占という帝国主義の経済的本質から、帝国主義戦争の必然性、寄生性と日和見主義の発生の問題を解明し、「より高度の社会=経済制度(共産主義)への過渡」「死滅しつつある資本主義」「プロレタリアートの社会革命の前夜」という帝国主義の歴史的地位に関する定義をしています。 講義は、第1章〜第6章と第7章〜第10章の上・下2回に分けて行われましたが、一括して掲載しました。 |
コラム 野口正敏レーニン独占論と宇野弘蔵の帝国主義論について レーニンの『帝国主義論』をどう読むのかは、われわれが日本共産党、スターリン主義と決別して革共同をつくってくる過程で、さらにカクマルと決別し、今日のわれわれをつくりあげてくる過程で、この理論的作業なしには今日の革共同の綱領的立場はないといっていいほどに決定的な理論的作業でした。 |
受講レポートから ★レーニン『帝国主義論』下のレポートです。【T】 本日の提起で、8、9章にポイントを置いて読みかえし、「独占論」と並ぶ帝国主義論の要として、日和見主義との闘いを据え直すことができて、大変良かった。 【A】 ◇帝論が、反戦運動ではなく、プロレタリア革命の綱領としてあることが大切。 【O】 われわれとの関係で、実践的観点の立場に立ってのレポート。 【M】 「宣言」のあたりから徐々に鮮明になってきていたが、やはり帝国主義論に至って明確な転換(正置)がはっきりしたと思う。(実際には、「党の革命」の実践によってブレークスルーしたということだと思う。) 【Y】 1.自分としての「帝論」の読み方が変わった。かつて(学生の頃か)は、帝国主義戦争の不可避性についての理解にポイントがあった。今回の中では、と同時に、労働運動の中における日和見主義との闘いについて論じていることが分かった。 【W】 『帝国主義論』がカウツキー主義・日和見主義的潮流と闘うことの重要性が、新指導路線の立場からハッキリさせた学習会だと思いました。 【C】 『帝論』について「まっとうなマルクス主義の観点からおさえる」ことの重要性がわかった。日和見主義者との闘争が大きく出されていることの意味はかなりわかった気がする。たしかに『国革』と『帝論』は「反戦闘争のため」に読まれていたという感じだ。 【G】 今日の学習会では、レーニンが、労働運動もっと言えば労働組合権力を支配している日和見主義・社会排外主義を完全に打倒して、革命的プロレタリアートのヘゲモニーをかちとっていくのかという問題意識を貫いて『帝国主義論』を書いたのだということが、新鮮につかめました。『帝論』におけるカウツキー批判、第2インター批判も、これまでは一般的な党派闘争の次元で読んでいたが、そうではなくて労働運動(労働組合運動)における党派闘争として行われているのだということ。第7〜第10章での論争的展開は、今日の連合指導部との闘争、日共スタとの闘争でも、その核心点において完全に通用すると思いました。 【D】 ☆帝国主義段階というものが、世界体制としての段階として規定されているということは、なるほど。解放派との論争で「当時ロシアは帝国主義ではない」というものがあった。それをもってレーニン主義=革共同を否定するような。それはスッキリした。胸をはって「お前はスタか!」と言い返そう。 【H】 今回の8、9、10章、日和見主義、カウツキー主義との闘いを、今日、現実の闘いにふまえて、より豊かにしていくものとして勉強になった。 【U】 「帝国主義」論の読み方の深化。カウツキー批判、労働運動の日和見潮流批判の観点から読むことが提起、討論されたが、これはまったく同感。カウツキー批判は、本文の論点だけでなく、カウツキー自体、ドイツ革命とワイマール体制下の役割(「第二インター崩壊」論など)と合わせて提起すると、さらにわかりやすいのではないか。 【K】 討論の中心にもなりましたが、日和見主義との闘いということ、改めてこれまでの受けとめ方の転換を迫れるという点、新鮮な感動をおぼえました。 【F】 (1)目の前の帝国主義間戦争・侵略戦争の爆発に対して、マルクス主義者・労働者階級はどういう態度をとるべきか!! レーニンは労働者階級自己解放の立場から、独占論を明らかにし、世界革命に向かって、今こそプロレタリア革命の前夜であると闘った。(2)その闘いは、カウツキー主義−第二インターの崩壊にあって、その日和見主義・社会排外主義と徹底的に闘うことなくして世界革命・ロシア革命はない!!と決断し、帝国主義戦争を内乱へ!として闘った。 【E】 レーニン「帝国主義論」を現代的によみがえらせていくことの決定的重要性を改めて認識した。 |
一言解説カルテル(「連合」の意)は、価格や生産量などを協定し、独占価格を社会に押しつける独占団体。カルテルは、参加企業の抜け駆けを防ぎ協定をより強固にするためにシンジケート(注文・生産・利潤を分配する共同の中央事務機関)を生み出す。さらに独占が進むと諸企業は一つの新しい企業の内に解消される→トラスト(企業合同)。 |