ZENSHIN 2011/05/23(No2488 p06)
|
週刊『前進』(2488号1面1)(2011/05/23 )
福島原発メルトダウン
6・5国鉄闘争集会の大成功から全原発の停止・廃炉、菅政権打倒へ
三里塚仮執行つき判決弾劾 5・29緊急現地闘争
6・5国鉄集会への大結集をかちとり、大成功させよう。ここにこそ、闘う労働組合と労働運動を再生させ、腐りきった資本主義・帝国主義を打倒し、プロレタリア革命の勝利をもってこの社会を根本から変革していく道がある。福島原発は1号機、2号機、3号機のメルトダウンという、衝撃的な新事態への突入がはっきりした。大恐慌下で、震災解雇・大失業への怒り、原発事故への怒りなど、労働者人民のあらゆる怒りを6・5日比谷公会堂に結集し、大爆発させよう。5・20三里塚現闘本部裁判控訴審での仮執行つき反動判決と大量不当逮捕を徹底弾劾し、5・29緊急現地闘争(午後1時半)に全力結集し大反撃しよう。震災解雇・大失業粉砕、すべての原発の停止と廃炉、日帝・菅政権打倒へ突き進もう!
(写真 青年・学生先頭に350人が国際通りデモ 「原発なくせ! 基地なくせ! 辺野古新基地建設とめよう」との訴えに飛び入りが続出【5月14日 那覇市】)
被災地の闘いと一体で
6・5集会は、何よりも宮城や福島を始め被災地現地で闘う労働者の怒りと全国の労働者の怒りが結びつき、労働者が生き抜くために団結する集会だ。6・5集会から巨大な反失業・反原発の闘いを巻き起こし、新自由主義と対決する労働運動をつくり出そう。
3・11大震災と原発事故は、国家と資本による大犯罪である。資本主義が延命すれば労働者が殺される。金融独占資本の利潤がすべてという新自由主義が、労働者の命と生活を破壊した。「殺されてたまるか!生き抜いてやる!」という根底的な怒りと闘いが被災地を先頭にわき上がっている。この怒りと闘いこそが資本主義を打倒し、労働者が主人公の新しい社会をつくり出す力だ。被災地の怒りに全国の労働者人民の怒りが結びついた時に、資本主義を根本からひっくり返す巨大なエネルギーが爆発するのだ。
被災地で闘う労働者は「職場で闘いを起こすことが最大の被災地支援だ。大震災と原発事故を引き起こした新自由主義を倒そう!」と訴えている。被災地の闘いに応え全人類の未来をかけ6・5集会をかちとろう!
被災地では、破壊された生活基盤の再建などで膨大な労働者が必要であるにもかかわらず、数十万人の労働者が解雇されている。岩手・宮城・福島の3県だけで震災後に失業手当の受給手続きを行った労働者がすでに10万人を超える。圧倒的な人手不足の中での膨大な失業者。資本主義の転倒した姿がここにはむき出しだ。この転倒した社会をひっくり返す力は労働運動にある。被災地では、未曽有の大失業・震災解雇に立ち向かい、労働組合をつくり闘っている。6・5集会を突破口に反失業・反原発闘争の大爆発へ闘おう。
6・5集会は、反失業と同時に、原発に対する怒りを爆発させる集会だ。原発大事故で恐るべき事態が新たに起きている。3・11大震災当日、福島第一原発1号機は原子炉が空だき状態となり、核燃料の大部分が溶け落ち(炉心溶融)、溶けた燃料が圧力容器や格納容器をも破壊するメルトダウンに突入していたのだ。これにより何十万dもの放射能まみれの汚染水が、海や土地に垂れ流しとなった。2号機、3号機も同じ状態だ。原子炉建屋は放射線量が高く、今も近づけない。政府や東電は一貫して情報を隠し、「直ちに人体に影響はない」と言って労働者人民に被曝(ひばく)を強制しているのだ。絶対に許せない!
原発事故に新たな怒り
5月14日には、福島第一原発で働いていた労働者が被曝し、殺された。体調不良を訴えたが2時間も放置され、殺されたのだ!政府や東電は被曝労働を強制しながら、医師を常駐させていなかった。こんなことが許されるのか! しかも死因を「心筋梗塞(こうそく)」などと言い、被曝との関係を抹殺しようとしている。そもそも1976年以降、原発労働者が労災認定されたのはたった10人だ。膨大な労働者が被曝労働で亡くなっているにもかかわらず、闇から闇に葬ってきた。
今も福島第一原発では、内部被曝の検査を受けている労働者が全体のわずか1割だ。原発労働者の放射線管理手帳に書くべき被曝線量の記載もあいまいにされている。劣悪な食事と雑魚(ざこ)寝の状態。労働者に最低限の敬意も払わない政府や東電。これこそ腐りきった資本主義の行き着いた姿である。
本来、労働は人間の生命力の発現であり、人間が生きる行為そのものだ。だが原発労働は被曝を不可避とし、命を削る。最初から自然と人間の関係が断ち切られ、安全など存在しない。核兵器・原発と労働者、全人類は非和解であり、絶対に共存できない。
しかも、原発労働者の9割以上が非正規雇用だ。電力会社は外注企業を通して原発労働者を卑劣な手段でかき集め、その原発労働者から不当にピンハネし、過酷に搾取している。失業した労働者、新自由主義で生活を破壊された農漁民などが、やむなく原発労働者となっている。原発労働者の現実は、非正規職でギリギリの生活を強いられている青年労働者と同じだ。この労働者を人間として扱わない資本主義など、ぶっ倒して当然だ!
菅政権はなんと、放射性廃棄物の最終処分場を、日米共同でモンゴルに建設することを極秘で進めていた。資本主義は腐りきっている! 全原発を直ちに停止し廃炉にせよ! そこにしか労働者と人類の未来はない。
解雇・賃下げに大反撃を
6・5集会は、菅政権と資本家たちの「復興」と称したあくなき金もうけと労働者への大攻撃=階級戦争に怒りを爆発させる集会だ。
福島原発事故は、歴代政権、電力会社、原発製造メーカー、ゼネコン、裁判所、マスコミ、御用学者、そして電力総連や連合などが、腐りきった利権集団=「原子力村」を形成している事実をあばき出した。この国家的犯罪者集団はグルになって、原発は「絶対安全」「クリーン」と大ウソをつき、国家暴力で人民の怒りと闘いを抑え込み、労働者から搾り取って利益をむさぼってきた。この腐った構造を革命的に転覆しひっくり返さなければ、労働者は生きていけない。
菅政権と資本家階級は大震災と原発大事故の責任をまったく取らず、居直り、破綻した新自由主義をさらに激しく進めようとしている。民主党幹事長・岡田は「東通原発を再稼働させる」、日本経団連副会長・中村芳夫は「東北地方に先行的に道州制を。民間が自由闊達(かったつ)に活動できる環境を整備する」、宮城県知事・村井嘉浩は「漁業特区をつくって、民間資本参入を」などと言っている。
この期に及んでも彼らは原発推進を掲げ、「復興」と称した金もうけを狙っているのだ。復興構想会議は、復興財源のために消費税や所得税などの大増税を前面に押し出した。菅政権は、東電が被害者に賠償を支払う資金に公的資金(税金だ!)を投入することや、電気料金の値上げも認めようとしている。
また菅政権は「復興」を口実に、国家公務員の賃金1割削減を労組に提案した。これは労働3権の否定と憲法停止を意味する大攻撃だ。これを許せば、民間で働く労働者に対する首切りや賃下げ、非正規化攻撃も激化する。さらには日米安保の強化や改憲攻撃へと直結する。「復興」と称した階級戦争と真っ向から対決して闘おう。
関生支部大弾圧粉砕を
6・5集会は何よりも、全労働者の怒りを結集し、国鉄1047名解雇撤回をかちとる集会だ。新自由主義攻撃の突破口であった国鉄分割・民営化との闘いに勝利せずして労働者の勝利はない。連合や全労連などの資本主義擁護の労働運動を打倒し、国鉄1047名解雇撤回をかちとる国鉄全国運動の発展こそ闘う労働運動再生の道だ。
反原発デモに立ち上がった青年労働者は、「原発を止めるためにはどうしたらよいのか。デモだけで止まるのか」と言っている。青年労働者や子どもをもつ母親が、自分の命や子の未来のために、原発を止めるために立ち上がっている。この怒りと結びつき、ともに闘う時こそ今である。
かつて電産中国は反原発ストを闘い、地域の労働者や農漁民とともに、山口県の豊北原発建設を中止に追い込んだ。全原発を停止・廃炉にさせ、失業のない社会をつくり出せるのは労働者であり、労働運動だ。「闘いなくして安全なし」。反合理化・運転保安闘争路線をもって車両の検査修繕業務の全面外注化を10年にもわたって阻止してきた動労千葉のように闘い、勝利の展望を切り開こう。
国家権力と資本家どもは、関西生コン支部の産業別ゼネストの闘いが、反失業・反原発で闘う労働者の怒りと結びつくことに恐怖し、闘う労働組合への大弾圧をかけてきている。これに怒りを爆発させて、6・5集会への大結集で関西生コン支部への大弾圧を打ち破ろう! 職場で、組合で、街頭や大学で仲間を組織し、6・5集会に大結集しよう!
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2488号1面3)(2011/05/23 )
前進速報版から
▼鉄道運輸機構に解雇撤回申し入れ▼動労千葉鉄建公団訴訟、結審策動を弾劾▼「ムセベニ大統領は退陣せよ」とウガンダ大使館デモ
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2488号3面5)(2011/05/23 )
自治労中央委闘争アピール
国鉄-反失業・反原発闘争へ
1割賃下げにストライキを
大恐慌下の大震災と原発事故、未曽有の階級決戦情勢の到来の中、5月26〜27日に奈良市で自治労第142回中央委員会が開催される。
「震災復興」の名による階級闘争の圧殺、労働組合運動の最後的解体・変質と極限的な新自由主義政策の続行を許すのか。それとも連合路線をぶっ飛ばして闘う労働組合を再生させ、国鉄闘争を基軸に資本主義を打ち倒す反失業・反原発の大闘争を職場生産点から巻き起こしていくのか。6・5国鉄大集会を前に今次自治労中央委員会は重大な路線的激突の場となった。
「震災非常時」掲げ憲法停止
3・11東日本大震災は階級情勢を一変させた。原発事故と放射能汚染の拡大、震災解雇攻撃の激化は本格的な階級決戦の到来を告げ知らせている。
国鉄分割・民営化に始まる新自由主義の横行が、大震災による3万人を超す死者・行方不明者を生み出し、被災地・全国で数百万人規模の大失業をもたらし、若者の未来を奪い、土地も海も大気も放射能によって汚染され続けるという未曽有の事態を引き起こした。
それだけではない。菅民主党政権は、存亡の危機に立つ資本主義の護持と巨大資本の最大利潤確保のために、「震災復興」を掲げた新自由主義の極限的な階級戦争を開始した。資本主義・新自由主義がつくり出した大惨事であるにもかかわらず、「震災非常時」と称して憲法停止・労働法制廃棄に等しい震災解雇、賃下げ・非正規職化、大増税・公共料金値上げと社会保障制度解体、道州制・「復興特区」なる規制緩和・民営化、漁業権・耕作権剥奪(はくだつ)、そして原発政策の継続と日米安保・沖縄米軍基地強化に一挙に踏み出そうとしている。それら総体が新たな人殺し攻撃だ。
国と資本によって奪われた命を返せ。原発止めろ。職を返せ。生活を返せ。住む土地を、農地を、漁場を返せ。青年の未来を返せ。被災地を先頭に労働者人民の怒りは根底から噴出しつつある。
もはや資本主義の支配のもとでは労働者人民の未来はない。資本主義の存続による地獄か、プロレタリア革命によるその打倒か。ロシア革命のスローガン「パンと平和」の問題が再び全労働者人民に問われる壮大な階級決戦が始まっている。
自治体労働者はいかなる立場と路線でこの情勢に立ち向かうべきか。
スト禁止の公務員制度改革
「震災非常時」を口実に争議権(スト権)を剥奪したままでの公務員制度改革と労使交渉による公務員1割賃下げをどうして認めることができるか。国家公務員賃金1割引き下げとともに出されようとしている国家公務員制度改革関連法案では、労使交渉決裂時でもストライキ禁止のまま中央裁定機関によるあっせん命令をもって大幅賃下げを強制される。
これは、労働基本権の制限と引き換えに形だけは確認されていた公務員の身分保障を撤廃し、首切りを全面的に自由化するということだ。「国鉄型」=「社保庁型」全員解雇・選別採用攻撃が何の制約もなく全公務員に襲いかかる。長期の闘いの中でかちとられてきた「整理解雇4要件」の廃棄、無際限の首切りが全社会化するのだ。
「憲法停止」の一大攻撃との決戦が始まった。道州制=公務員360万人首切り、全労働者の総非正規職化に直結する大攻撃との決戦だ。奪われたスト権を取り戻し、被災地をはじめとしてわき起こる全労働者の怒りの先頭でストライキに打って出よう。公務員1割賃下げ絶対反対、震災解雇・雇い止め粉砕、全原発の即時停止へ、全国で闘いを巻き起こそう。
自治労本部は菅政権の手先
連合・自治労本部は「挙国一致」の「震災復興」を掲げる菅民主党政権の手先となっている。
今次中央委員会議案を見よ。公務員制度改革法案を丸のみするとともに、資本主義の擁護、国と地方の財政再建の立場から公務員大幅賃下げ交渉に応じ、「社会保障と税の一体改革」による社会保障制度解体・消費増税、納税者番号制度導入、幼保一体化=30万人首切りに直結する「子ども・子育て新システム」導入を提唱し積極的に進めようとしている。
同時に今次中央委員会は、自治労共済の全労済への統合で、組合活動を支えてきた組合書記の大量選別解雇を強行しようとしている。いったいこれが労働組合の方針か。自治労中央委員会議案は粉砕あるのみだ。
「震災復興」をめぐる階級決戦は、連合・自治労本部を打倒すること、被災地を先頭に全国で闘う労働組合を再生させることをぬきにありえない。青年部結成に向け奮闘する青年労働者を先頭に国鉄闘争全国運動6・5大集会の成功をかちとり、国鉄・公務員決戦の勝利へ闘いぬこう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2488号4面6)(2011/05/23 )
三里塚裁判傍聴を
◎市東さん行政訴訟
5月24日(火)午前10時30分 千葉地裁
◎市東さん農地法裁判
5月24日(火)午前11時10分千葉地裁
(同日に同じ法廷で連続して開かれます)
※傍聴券抽選のため9時半に集合を
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2488号5面3)(2011/05/23 )
〈焦点〉 天皇使い被災地慰撫狙う
「戦後巡幸」の再現許すな
天皇・皇后は、3月30日の東京・武道館を皮切りに、埼玉、千葉、茨城、宮城、岩手、福島と被災地を訪問し、避難所などを回っている。自衛隊機を使い、皇太子夫妻や秋篠宮夫妻も含めて総掛かりで強行している。これは、未曽有の危機にあえぐ日本帝国主義の救済のためであり、天皇制を押し出した労働者人民に対する激しい階級圧殺攻撃である。
天皇は3月16日、まず「ビデオメッセージ」の形でテレビに登場し、「苦難な日々をみなが分かち合っていくことが大切」と述べた。天皇が「直接国民に語りかける」のは66年前の「終戦の詔勅(玉音放送)」以来のこと。皇室の存続にとっても「世紀の一大事」だということだ。
この攻撃は何よりも、巨大地震と大津波と原発事故による大災害が、日帝の新自由主義攻撃によってもたらされた階級的災害であることを押し隠し、これに対して労働者、農民、漁民、自営業者が階級的大反撃に立ち上がることを押しとどめ、受忍する(耐え忍ぶ)ことを強要するものである。自らを超階級的存在であるかのように装い、その「慈悲」の前に労働者人民を平伏させようとしているのだ。「日本はひとつ」「日本は強い国」という愛国主義、民族主義のキャンペーンとともに、天皇制イデオロギーで階級闘争を圧殺しようとしているのだ。
そもそも特定の家系に生まれたがゆえに特別に尊いという天皇制自身が、<法の下の平等>を根本的に踏みにじっている。天皇のもとにすべての国民は平等であるという虚偽のイデオロギーをもって、現実の階級対立を塗り隠しているのだ。しかし、天皇自身が東京電力の株主であることが示すように、資本家階級と共通の利害をもっているのだ。天皇制を頂く日帝国家こそ、大震災と原発事故を引き起こした元凶ではないか。
戦後、憲法9条と引き換えに天皇は免責され、「象徴天皇制」として延命した。それは何よりもプロレタリア革命の予防のためだった。昭和天皇は足かけ9年間の「全国巡幸」で戦後革命圧殺の先頭に立ち、失地回復を図った。
昭和天皇はかつて広島、長崎への原爆投下について「戦争中のことであるのでやむを得ない」と原爆を容認し被爆者を切り捨てた。表現は違うが今日、天皇夫妻がやっていることは、やむを得ない天災だから、誰かを恨んだり憎んだりするなということだ。
今、日帝の絶望的危機の中で天皇が必死に立ち現れているのは、菅政権と日帝の支配体制そのものに労働者階級の根底的な怒りが噴出しているからだ。原発、大失業への怒りが爆発しているのだ。こうした革命の現実性の前に支配階級は動転し恐怖して、天皇を使って被災地を慰撫(いぶ)し闘いを封じ込めようとしているのだ。
だが、天皇が「巡幸」よろしく回ることで労働者人民の苦難が少しでも解決するのか。痛みは和らぐのか。とんでもない。労働者人民の怒りは根底的であり、資本家階級を打倒して自らの権力を打ち立てるまでとどまることはない。
この許し難い階級圧殺攻撃に対する怒りをバネに、労働組合再生の力で被災地救援、反失業・反原発の闘いの発展をかちとろう。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2488号5面4)(2011/05/23 )
〈焦点〉 あたご無罪を弾劾する
海自の傍若無人を合法化
千葉県沖で2008年2月、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と地元のマグロ漁船清徳丸が衝突し、漁船の親子2人が死亡した事故で、横浜地裁は5月11日、業務上過失致死罪などに問われた当時のあたごの当直士官2人に無罪を言い渡した。自衛艦側の監視不十分が主な原因だったと裁決した09年の海難審判(横浜地方海難審判所)を覆す判決で、法廷は遺族や関係者の怒号に包まれた。
すでに、「あたご」は漁船団の存在を認識しながら、衝突直前まで自動操舵(そうだ)を続けるなどのずさんな運航実態が明らかになっており、横浜地方海難審判所の裁決は、あたごの監視態勢が不十分だったことが事故の主な原因だと、安全指導の徹底を海自に勧告した。本来、艦橋の両脇の甲板にいるべき見張りを、艦橋内に立たせていたことも表面化した。また見張りの当直責任者同士が「漁船は停船している」と誤った引き継ぎをした事実が認定され、海上衝突予防法が定める包括的な注意義務に違反することも明らかだった。防衛省の事故調査委も、回避義務はあたご側にあり見張りが不適切だったとの報告を出している。
今回の地裁判決はこれらを強引に覆したのだ。漁船が積んでいたGPS(衛星利用測位システム)の水没で不可能になった航跡の確定を裁判所が独自に推定し、それに基づき「非は漁船にあり」と決めつけた。商業紙も「検察側立証が十分かどうかをチェックする裁判所本来の使命を逸脱」(朝日)などと論評するほどの強引さだ。
浮かび上がったのは一方で自衛官を起訴した検察「捜査」のずさんさと、他方での大震災情勢で大規模な日米統合運用に踏み込んだ自衛隊そのものへの批判を封殺しようとする権力側の意志である。自衛隊を「国防軍」とする9条改憲を主張する産経新聞などは、今回の判決で「自衛隊バッシングの海難審判」が崩されたこと自体に快哉(かいさい)を叫んでいる。1988年の潜水艦「なだしお」と大型釣り船の衝突事故や、71年の全日空機と自衛隊戦闘機との空中衝突事故なども引き合いに出し、「十分な検証を待たずに自衛隊側が指弾されてきた」などと、多くの死者を出した過去の自衛隊事故まで擁護している始末だ。
一方で民主党は10日、党の憲法調査会(会長・前原誠司)を設置し、幹事長の岡田は「これで衆参の憲法審査会が動き出す」と公言した。菅政権はこの大震災情勢に乗じて改憲攻撃そのものを始動させようとの思惑だ。今回のあたご判決で自衛隊の犯罪を消し去ろうとする権力意志の背後で、このような政治反動がうごめいていることを軽視してはならない。
そもそも危険回避の責任はまずもって海自側にある。あたごの事故後も、海自艦船との接触事故は続いており、千葉県の漁師は「事故直後は漁船を避けていた海自の大型船が、最近は事故前と変わらない操舵をするようになった」という(信濃毎日新聞)。東京湾入り口に近く、多くの船舶で混雑する海域で傍若無人にふるまう自衛隊イージス艦の犯罪的行為を擁護した判決への漁民たちの怒りはまったく正当である。今回の判決を強く弾劾しなければならない。
---------------------------------------------------
週刊『前進』(2488号5面5)(2011/05/23 )
法大裁判に集まろう
★暴処法弾圧裁判
第24回公判 6月2日(木)午後1時30分
東京地裁429号法廷
12時30分に傍聴券配布所に集合
---------------------------------------------------
裁判闘争日程
八尾北明け渡し弾劾裁判
5月25日(水)午後2時半
大阪地裁202号大法廷
住宅明け渡し弾劾控訴審
5月31日(火)午後2時
大阪高裁202号大法廷
---------------------------------------------------