ZENSHIN 2009/03/23(No2384 p06)
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週刊『前進』(2384号1面1)(2009/03/23 )
”オバマと麻生の戦争とめろ”
動労千葉先頭にストとデモで立つ
1047名解雇撤回へ勝負の時
農地死守! 決戦の3・29三里塚へ
(写真 3・20イラク反戦6周年 全世界一斉行動 権力圧倒し渋谷の街を進撃)
「労働者のストライキと国際的団結で戦争とめよう」のメインスローガンのもとに、ワーカーズアクション実行委主催のイラク反戦6周年3・20集会と渋谷デモがかちとられた。青年労働者・学生を先頭に1850人が結集し、大恐慌と戦争の帝国主義の危機に対して、プロレタリア世界革命をめざして闘う階級的労働運動の力強いメッセージを全世界に発信した。3・20デモの大成功に続き、3・29三里塚現地闘争に総決起しよう。09春闘から第2次国鉄決戦勝利、道州制・民営化粉砕の一大闘争へ進撃しよう。
4者4団体派との対決貫き
冒頭、司会の動労水戸の木村郁夫書記長が「動労千葉とともに18日、ストを貫徹した。動労総連合の仲間も続々とストに立っている」と報告、大きな拍手と歓声の中で集会は始まった。
動労千葉の田中康宏委員長が「302人が3日間のストをやり抜いた。いよいよ国鉄闘争の決着をつける時がきた。ここで全情勢が動く」と提起した。そして、大恐慌と戦争情勢の深まりで、労働運動全体が産業報国会に転落した戦前と同じ分岐点に立たされていることを強調し、4者4団体派との党派闘争に労働組合の路線の根幹がかかっていることを訴えた。
三里塚芝山連合空港反対同盟の北原鉱治事務局長は「農民が命の糧を生産し、労働者が機械を動かす。この大きな労働者・農民の連帯があれば、今の政治はいらない。搾取のない時代をつくろう」と、3・29全国集会への結集を訴えた。
憲法と人権の日弁連をめざす会の森川文人弁護士は「いま最も暴力支配が露呈している場所は法政大学だ。ビラまき禁止の仮処分策動を粉砕する」「反戦は革命だ」と訴え、4・21の裁判員制度粉砕集会への参加を呼びかけた。
民営化賛成で反戦は闘えぬ
主催者として全逓の青年労働者が基調報告を提起した。「労働運動の力で革命をやろうと訴えて2年が経過した。労働組合の再生に勝利の一切がかかっている。世界金融大恐慌で『会社あっての組合』という連合の労働者支配は成り立たなくなった。4者4団体派は本日、WPN(ワールド・ピース・ナウ)の集会に合流した。民営化に賛成して反戦は闘えない。資本主義の支配は完全に終わった。労働者が取って代わろう」と訴えた。
次に全学連の織田陽介委員長がアピール。法大当局が「情宣活動禁止命令仮処分申立」を出したことについて「ついに集会・表現の自由まで否定した。これぞ改憲攻撃であり道州制攻撃だ」と弾劾した。また反戦闘争の路線について「全米鉄鋼労組が軍縮に反対し、欧州の労組が愛国ストをやった。日本でも民営化賛成のグループがWPNの集会に集まっている。資本の延命に手を貸して反戦は闘えない。11月1万人結集への路線を打ち立てよう」と訴えた。
さらに全国の仲間が決意表明を行った。
国労5・27臨大闘争弾圧裁判を闘う国労小倉地区闘争団の羽廣憲さんは「論告求刑は、立証もなく『労働運動に関与し国家転覆をもくろむ者は有罪にせよ』というふざけた内容だ。6月からの最終意見陳述が国鉄闘争を決する」と語った。また鉄建公団訴訟控訴審の3・25判決について、今こそ1047名闘争の勝負の時だと訴えた。
(写真 代々木公園B地区野外ステージに1850人が結集し、集会の終わりにインターを熱唱)
全国から闘う報告と決意
解同全国連西郡支部の岡邨洋さんは「2・26強制執行阻止決戦に勝利した。労働者階級として住宅闘争を闘う。敵は資本と橋下だ」と訴え、八尾北医療センター労組の灰垣美佐子さんが「全社労のストとともに八尾北で民営化反対ストを打ち抜いた。道州制反対の先陣を切った」と報告した。
さらに大阪・豊中の自治体労働者が、道州制粉砕・橋下打倒を掲げた3・6大阪府庁前行動の勝利の大きさを強調し、公立病院の民営化攻撃が強まる中で「民営化推進の本部派と激しく激突している。原則を貫き、階級的団結をめざして闘おう」とアピールした。
広島の青年教育労働者は「2月の教研集会で日教組本部のビラ禁止・反対発言禁止の屈服強要を拒否して闘った。圧倒的な手ごたえです」と確信にあふれて報告。沖縄・うるまユニオンの富田晋さんは、辺野古の体制内派がオバマに「基地撤去を頼んで」破産した惨状を暴露し、「沖縄反戦運動の旗を労働者階級のもとに取り戻す」と決意表明した。
東京北部の医療現場で闘う精研労組の仲間は「2・28ストを貫徹した。第2の動労千葉を目指している。資本救済の4者4団体派を打倒し09春闘を闘おう」と訴えた。関西合同労組技能育成センター分会の仲間は、「森精機で3波のストと2度の抗議闘争をぶち抜いた。全国ゼネストに発展する闘いだ」とアピールした。
決意表明の最後に法政大学文化連盟副委員長の恩田亮君が登壇。「法大は新自由主義で監獄大学になった。おれたち学生は黙っていない。4・24に学生蜂起を闘う」と意気高く宣言した。
動労千葉の川崎昌浩執行委員の行動提起を受けて、集会参加者は渋谷の街へデモに出発。大挺団が機動隊を圧倒して、街にあふれる労働者・学生と合流した。
3・20闘争は、体制内労働運動との鮮明な路線的対決となった。道州制・民営化攻撃に総屈服した4者4団体派は、WPNの集会に全部あわせて400人という大破産をさらけ出した。
さらに3・29三里塚と4月闘争へ進撃しよう。
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週刊『前進』(2384号1面2)(2009/03/23 )
動労千葉 春闘全面スト打ちぬく
3日間、3百人以上が突入
動労千葉は3月17〜19日、社会全体に満ちあふれる怒りの最先頭に立ち、全組合員を対象とする全面ストに決起した。3日間で300人以上の組合員がストに突入した。この間、自動車部品を始めとする貨物輸送量が激減し、重大な激突情勢に突入している貨物支部でも地上勤務者がストに入った。
スト初日の17日には午後6時から千葉市民会館地下小ホールで動労千葉総決起集会が開かれた。スト突入者を先頭にして各職場から組合員が続々と集まり、支援もあわせて320人が会場を埋めた(2面に集会詳報)。2年ぶりの全面ストに全組合員の表情は輝き、会場は熱気に満ちた。
当局の弾圧破り
スト2日目の18日には各職場門前での早朝ビラまき、スト破り監視・弾劾行動、支部ごとのスト集会が開かれた。こうした一連の行動に対してJR千葉支社は、スト破りの業務命令を他労組の労働者に乱発するとともに、なによりも平成採と動労千葉を分断するために必死に弾圧態勢をとった。”手応えあり”だ。
田中委員長は、幕張支部のスト集会で「当局の動きのすべては、平成採獲得を阻止するためのもの。動労千葉の組織拡大が今のJR体制をグラグラに揺さぶるインパクトを持っていることが、今回のストであらためてよく分かった」と語った。
(写真 スト破り監視・弾劾行動に決起した動労千葉の組合員。庁舎入り口を閉鎖して弾圧態勢をとる当局に怒りの抗議【3月18日 千葉運転区前】)
「労使共同」粉砕
動労千葉の3日間にわたる全面ストは、ベアゼロ、一時金の大幅削減、定昇凍結=賃下げのための労使共同宣言体制を突き破り、労働運動復権にむけた決定的闘いとして打ち抜かれた。ストを貫徹した動労千葉は、翌日の3・20渋谷デモを全力動員体制で取り組んだ。
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週刊『前進』(2384号2面1)(2009/03/23 )
“ストライキ復権の時だ”
動労千葉 スト総決起集会に320人
青年組合員が力強く牽引
動労千葉はスト初日の3月17日、「09春闘勝利! ストライキ貫徹!」を掲げて総決起集会を開催した。
冒頭、司会の関道利執行委員が「うれしい知らせがあります」と切り出し、国労組合員がスト破りの業務命令を拒否して動労千葉に加入したことを伝えた。幕張支部の山田支部長に紹介された当該組合員があいさつ。会場は一気に沸き立った。
(写真 各支部代表、青年組合員の発言を受け、繁沢副委員長がまとめを提起。壇上には韓国・民主労総から贈られた横断幕が掲げられた【3月17日 千葉市民会館】)
“水泥棒”の責任転嫁に怒り爆発
あいさつに立った田中康宏委員長はまず、JR東日本本社が16日に「争議行為中止の申し入れ」を行ってきたことを報告した。その文書ではなんと「(信濃川発電所における不正取水事件を巡って)お客さまや地域の皆さまの信頼回復に全社員が一丸となって取り組んでいる状況にあるにもかかわらず争議行為を実施することは、信頼回復に取り組んでいる全社員を欺くもの」などと書かれているという。本当に腐りきった会社だ。会場から激しい怒りの声があがり、集会はさらにヒートアップした。
田中委員長は、この盗っ人たけだけしいJR資本の申し入れを徹底弾劾するとともに、「今こそストライキを復権すべき時だ。今回のストは、労働組合とは本当はすばらしいものであり、決定的な意味を持っていることを全労働者にアピールする闘いだ。今や分割・民営化型の攻撃に全社会がたたき込まれ、200万人の労働者が首を切られようとしている。国鉄分割・民営化反対闘争の原点に戻って闘う時だ。動労千葉が最先頭に立ち、全労働者の怒りを結集しよう」と訴えた。
1047名闘争の先頭に
翌18日にストライキに決起する動労水戸の辻川慎一副委員長、動労千葉を支援する会の山本弘行事務局長が熱い連帯のあいさつ。JR貨物・JR東日本との交渉報告、家族会からの檄布(げきふ)贈呈に続いて、重大情勢に突入した国鉄1047名闘争の勝利にむけ動労千葉争議団の高石正博団長が決意を述べた。
基調報告に立った長田敏之書記長は、とりまく情勢を「資本主義の終わりの始まりだ」と断じ、「労働者にとって決定的チャンスが到来している。全社会に労働者の怒りがあふれている。これに水をぶっかけているのが連合であり全労連だ。なんとしても怒りに着火しなければならない。それができるのは労働者の力を信頼して闘ってきた動労千葉だけだ。動労千葉の訴えが響く時が来ている」と述べ、今春闘ストの大きな意義を明らかにした。さらに、38000円の大幅賃上げ獲得、業務外注化−ライフサイクル提案の白紙撤回を始めとする課題を全面提起した。そして「4者4団体の屈服和解路線を打ち破り、動労千葉こそ1047名闘争の新たな発展の先頭に立とう。最大の課題は組織拡大だ。平成採の仲間に『スト破りをするな。この時代に労働組合は何をやるべきか』を真正面から訴えてオルグしてほしい」と組合員に呼びかけた。
最後に、各支部の代表と6人の平成採組合員が登壇してストライキ貫徹への決意を表明した。青年組合員は、やんやの歓声が上がる中で「自分にとっては今年がスト元年」「幕張で先輩が加入してくれてうれしい。ストライキこそ組織拡大の武器だ」「一人でも多く組合員を獲得し、悪くなる一方の労務管理をつぶす」「これから新たな動労千葉の歴史を俺たちの手で作っていく」と次々と発言した。青年部結成へ奮闘する青年組合員が、09春闘をとおして動労千葉の新たな牽引(けんいん)車として登場しつつあることを感じさせた。
繁沢敬一副委員長が集会のまとめを提起、田中委員長の音頭で団結ガンバローを行い、きわめて意気高く集会をかちとった。
(写真 集会の最後に、09春闘勝利、ストライキ貫徹、組織拡大へ向けて「団結ガンバロー」を三唱)
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週刊『前進』(2384号3面1)(2009/03/23 )
3・29三里塚の大爆発で農地死守へ
現闘本部裁判の結審に怒り
裁判官忌避下で開廷強行
仲戸川裁判長 現場検証、最後まで拒否
天神峰現闘本部裁判で千葉地裁・仲戸川隆人裁判長は3月12日、三里塚反対同盟不在のまま開廷を強行し、証人を別室に入れて「ビデオリンク方式」による証人尋問を行い、反対同盟側の証人調べを打ちきって強引に結審を強行した。日帝権力は、三里塚闘争を破壊するために、法の建前をかなぐり捨てたのである。
3・29三里塚全国総決起集会に結集し、現闘本部と市東孝雄さんの農地を死守する労働者・農民・学生・人民の戦闘態勢を構築しよう。
3月12日、仲戸川が一方的に期日指定したこの日の午前9時、反対同盟と支援の労働者・学生は裁判所近くの葭(よし)川公園に結集した。「裁判長は実地検証を行え」と大書きされた横断幕の前で決起集会。北原鉱治事務局長がマイクを握り「昨日、再び仲戸川裁判長に忌避を申し立てたが簡易却下してきた。かたくなに本部建物の検証を拒否し、一方的に裁判を進めることをこれ以上許さない」と訴えた。
全学連の倉岡雅美副委員長は「ビデオリンク方式での証人調べなど絶対に認められない。人民の共有財産である現闘本部や市東さんの畑を奪おうとしておいて、何が『精神的な苦痛』か。3・20渋谷デモから3・29三里塚の総決起へ!」と渾身(こんしん)のアピールを行った。
集会後、千葉市内デモを貫徹し、午前10時10分、反対同盟は裁判官忌避の不当な簡易却下に対する即時抗告を申し立てた。この時点で、訴訟手続きは民訴法334条に基づき執行を停止しなければならない。反対同盟と弁護団は地裁の民事第5部書記官室に赴き、本日の開廷をやめるよう強く申し入れた。
「開廷は違法だ」「簡易却下を取り消せ」と書記官室に怒りの声が響いた。だが裁判長は姿を現さず、別室からかたくなに執行停止を拒否し、書記官を通じて「口頭弁論を開いて説明する」と一方的に通告、被告・反対同盟と弁護団が不在のまま開廷を強行した。
「証人調べを直ちにやめろ! そのような違法な開廷に対し、出廷はできない」と申し渡し、反対同盟と弁護団は弁護士会館で記者会見と抗議集会を開いた。
(写真 反対同盟を先頭に千葉地裁を包囲するデモ【3月12日】)
逮捕も辞さず実力で闘う!
仲戸川裁判長は被告・反対同盟と弁護団不在の法廷で、ビデオリンク方式による石橋恵美子証人の尋問を強行し「この陳述書は本人のものに間違いないか」と聞くなど、形ばかりのやりとりを2〜3分で済ませた。そして、決定していた反対同盟側証人の北原事務局長、萩原進事務局次長ら3人の証人採用を理由も示さず取り消し、結審を宣言した。さらに一方的に期日を指定していた4月23日に「最終弁論をするならしろ」と言い放ったのだ。6月25日の弁論期日指定も取り消した。
この報が抗議集会に届くと、会場は怒りのるつぼと化した。葉山岳夫弁護士を始め弁護団は「忌避の申し立てを受けた裁判官が自分でそれを却下し、即時抗告されても証人調べや期日指定などの訴訟行為を行うのは完全な違法行為だ。裁判所が無法な権力機関と化した」と弾劾した。現闘本部裁判を支援する会代表世話人の戸村義弘さん、動労千葉の滝口誠さんらの怒りの発言が続いた。
萩原進事務局次長が「怒りが収まらない。この暴挙を粉砕する。逮捕も辞さない実力闘争に立ち上がることをこの場で決意しよう。仲戸川裁判長が腹を決めたのなら、それを上回る気迫で立ち向かおう!」と渾身の決起を訴えた。最後に全員で団結ガンバローを行った。
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弾劾声明 三里塚芝山連合空港反対同盟
現闘本部裁判の不当結審強行に対する反対同盟の弾劾声明。以下全文。
◇
3月12日、千葉地裁民事第5部・仲戸川隆人裁判長は、反対同盟不在の欠席裁判を強行し、突如、証人調べを打ち切って事実上の結審を宣言した。わが三里塚芝山連合空港反対同盟は、仲戸川裁判長による前代未聞の暴挙を満身の怒りを込めて弾劾する。
裁判官忌避の即時抗告が出された以上、裁判手続きは即刻停止されなければならない。仲戸川裁判長は、忌避申立に対する配点原則を破って自ら却下し、これに対する即時抗告を受理していながら法を破って開廷を強行した。
そして被告・反対同盟不在の法廷で、その必要性を認めて決定したはずの被告側3人の証人調べを理由無く取り消し、次回を最終弁論とすると一方的に指定して、弁論がなければ結審だと宣告した。
憲法と民事訴訟法破壊の欠席裁判におけるこの所行は、反対同盟の立証活動を剥奪する暴挙であり、偏った審理の暴走であって断じて認めることができない。
仲戸川裁判長の訴訟指揮は、始めから原告・空港会社に与する不当なものである。最大争点である地上権の成否について、これを証明する登記物権(木造建物)の検証をかたくなに拒否し、決定的な立証活動を闇に封じた。
不当かつ強権的な指揮を乱発し、過剰警備による不当逮捕を引き起こした。
「犯罪被害者保護」の要請から刑事裁判に導入された例外的な方式(ビデオリンク)を、建物撤去・土地明け渡しの本件に適用し、最重要証人の偽証を許す訴訟指揮に踏み切った。これらに対する正当な権利行使に追いつめられ、なりふり構わず証人調べを打ち切り結審を宣言した。
一人としてまともな証拠調べをせず、実地検証もしないで、どうして公正な判決が書けるのか。この裁判は暫定滑走路北延伸と市東さんの農地強奪のための収用攻撃であり、国策裁判である。裁判員制度に象徴される司法制度改悪と一体の攻撃であり、必ずうち破らなければならない。
反対同盟は決意も新たに不屈の実力闘争を宣言する。この裁判闘争を徹底的に闘いぬく。3・29全国集会に怒りの大結集を呼びかける。
2009年3月13日
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週刊『前進』(2384号5面1)(2009/03/23 )
4・21日比谷野外音楽堂へ
裁判員制度5月実施を阻止しよう
「憲法と人権の日弁連をめざす会」代表 高山俊吉さんが語る
「裁判員制度はいらない!大運動」が、“みんなで5月実施を阻止しよう”と、4・21日比谷野音集会と銀座デモを呼びかけている。裁判員制度の狙いとその時代背景、反対運動の高揚などについて、「憲法と人権の日弁連をめざす会」代表の高山俊吉弁護士にお話をうかがった。全国から4・21集会に大結集し、5月実施阻止へ闘おう。(編集局)
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高山俊吉弁護士
1940年、東京都に生まれる。東京弁護士会所属。青年法律家協会議長、日本民主法律家協会副理事長などを歴任。交通法科学研究会事務局長を務め、市民の立場から交通事故や道交法など交通分野を追究。同時に「憲法と人権の日弁連をめざす会」代表として改憲と司法制度改革に反対し、運動を続けている。昨年2月の日弁連会長選挙に立候補し、7043票対9402票で大善戦。
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裁判員制度は改憲そのもの
『裁判員制度はいらない』の文庫版が講談社から2月19日に出版されました。単行本を出したのが06年9月です。5刷を重ね、裁判員制度の本としては異例の売れ方でした。
制度推進の本はいろいろ出ているけれど、一向に売れないという記事を新聞で読みました。“裁判員の仕事は簡単だ、何も準備はいらない、安心して裁判所に来てくれ”という調子の宣伝が盛んに行われていました。本なんか買わなくていいと裁判所が言っているようなものだから、売れなくて当たり前、それとも裁判は本当は難しかったのかい、と私は皮肉を言いましたね。
文庫版は、旧版の各章にその後の情勢を書き加え、新しい章も設けた改訂新版です。平積みで並べている本屋もたくさんあるらしく、うれしい状況です。
最高裁がやった世論調査でも、82%を超える人が裁判員制度に消極です。大半の市民が疑問や懸念を抱いている。それがこの本の売れ行きにも影響しているし、全体の動向を決める大きなベースにもなっています。ぜひ読んでください。
意見がいくらか違っていても、裁判員制度をつぶしてから、どうして国がこんな制度を推進したのか、じっくり議論することにして、今はまず、つぶすことに精力を集中しましょう。
憲法9条を絶対に変えるな
労働者、労働組合に今最も訴えたいことは「改憲絶対反対、憲法9条を変えてはならない」ということです。
改憲はなぜ許されないのかを一番よく理解できるのは労働者、労働組合です。「侵略戦争阻止」の意味を最も正確に把握できる立場にいるからです。資本が国と一緒になって、労働者、民衆に対する搾取、収奪をとことん進めていき、ついに資本は海外にも拠点を築き、そこで搾取、収奪を始める。そして、軍隊との連携、軍隊による庇護(ひご)を求めるようになる。
そのとき、国内の労働者、労働組合がそれを了解すれば、それは排外労働運動になってしまう。かつて日本の労働運動はその道を歩んだ。それを再び許してはならないということです。
海外の労働者が搾取、収奪されることは、日本の労働者が搾取・収奪されることと本質的に同じことだ。海の彼方のどこかの国の労働者の首を切り落とす刃(やいば)は、私たちの心臓を貫く同じ刃だということに気づいたら、その野望をサポートする侵略戦争を絶対に許してはいけないということになる。
そしてそのことは、資本の行き場、新しい侵略の展開を許さないことによって、資本主義の矛盾を誰の前にもあからさまにさせることにつながる。そして、労働者、労働組合は、搾取、収奪する資本の側に立つのか、それともそのもくろみと闘う側に立つのかが問われる。そういう構造になるのだと思います。
労働者、労働組合が、資本や国が自分たちを苦しめるのと同じことを世界的な規模で展開することを許さない、その闘いが改憲阻止闘争です。
(写真 3月8日の動労千葉結成30周年集会で、高山さんは組合員を前に記念講演を行った)
“国守る気概”を民衆に強制
実は、裁判員制度の問題は改憲をめぐって存在するのです。裁判員制度は改憲そのものだということです。
この国が海外で武力を使える状態にするためには明文改憲も解釈改憲もいとわない。そうしなければこの国はもう成り立たないと国も資本も考えている。
しかし、「憲法9条はこのままでいいじゃないか」という意見が国民の間に相当ある。その突破策は資本や国にとって重大な課題です。国民が公(おおやけ)を大事だと考える、そのような社会のルールをなんとしてもつくり出したいのです。
一人ひとりの国民に、悪いことをした者には厳しいペナルティが科されるべきだと考えさせたい。その先にあるのは“国の秩序が大事だ、この国を守る気概が大事だ”というものの考え方を定着させることです。
第2次世界大戦の中では、隣組とか国防婦人会とか、国民総動員を社会の末端で担う組織がつくられました。弁護士までが翼賛報国会をつくった。この国の支配層は今、その歴史から必死に学ぼうとしています。90年代以来、この国が確実に危機に突入することを見据え、国を守る気概を一人ひとりの民衆の心に植え付けようと考えたのです。
立法、行政、司法の三権分立とよく言います。司法は、行政や立法と一定の距離を置き、時に彼らの誤りをただす。それが一国の平穏な維持の上で大事だというチェック・アンド・バランスの思想ですね。
この論の立て方は、近代国家ではある種の常識ですが、この国の支配層は今、これを突破しようとしている。三権分立なんていうきれいごとを言っていられる時じゃない、ということです。それが次にお話しする司法制度改革の狙いです。
「司法改革」攻撃の三つの柱
司法制度改革審議会が2001年に出した意見書は、「立法と行政は動脈、司法は静脈」と言い、「司法は公共空間を支える柱」とも言いました。司法は、立法や行政としっかりつながっているひとつの「血流」であり、国を支える主柱だということを意識せよ、というのです。
分かりやすく言えば、国が危機に直面していることをしっかり自覚する司法でなければだめだということです。近代憲法原理のあからさまな否定とも言えます。
国の危機はけっして仮定の話ではありません。80年代半ばから新自由主義攻撃が吹き荒れ、構造改革、規制緩和がどんどん進められました。司法制度改革審議会の意見書は、「司法改革は、政治改革、行政改革、規制緩和などの経済諸改革の最後の要である」とまで言いました。
どうして司法改革が最後の要かといえば、とことん「優勝劣敗の論理」で競争していくと、紛争が激発する。そして、そういう紛争に終止符を打たせる弁護士がたくさん必要になる。弁護士を「おくりびと」として登場させる必要がある。だから弁護士は激増させねばならない。弁護士の激増は弁護士を食えなくもさせる。食えなくなれば、「司法はこれでいいのか」なんて言わなくなり、ますます最終処理人の仕事にはまりこんでいく。そういう狙いが激増政策にはあります。
司法改革の柱は三つです。ひとつは弁護士激増。もうひとつは司法支援センターという第二日弁連づくり。そしてもうひとつは裁判員制度です。
弁護士激増と司法支援センターは、弁護士、弁護士会という憲法擁護勢力を根底から破壊する政策の産物であり、裁判員制度はお国が大事と考える民衆をつくる国民改造政策の産物です。弁護士も民衆も権力側に立つ司法の担い手にしてしまう政策です。
権力や資本にとって未曽有の危機の時代に、その危機を隠しつつ自分たちの側に引き込んで突破しようという策です。
「市民参加」はナチスに先例
「市民の司法参加」政策は、今回初めてお目見えした奇策ではありません。1930年代にナチスが推進した政策にプロトタイプ(原型)があります。主権者としての国民に自ら行動させることにより、国のあり方を変えてゆく国家政策の手始めとして、ナチスは「市民の警察参加」を展開しました。
今、「市民の司法参加」はすばらしいことだと言い募っているのが日弁連執行部であり、日本共産党、社民党です。
「共産党はどうして裁判員制度に反対しないのか」と支持者から強い批判を浴びている、そう私に訴えてきた党員がいました。その苦労が集積して、党中央に「延期」論を発表させるところまでいったのでしょう。社民党も状況は同じだと思います。
民主党も一時期、代表や幹事長が見直し論を言いましたが、その直後に連合から「われわれが一生懸命推進しているのに、何を言うんだ」とねじ込まれたようで、急に話がどこかに飛んでいってしまった。この党の議員も多く反対していますけれども。
推進側は「安全・安心な社会を実現するために、市民の一人ひとりが変わっていこう」と言っています。それは「今日からはこの国を守る気概を持つ人間になろう」ということです。私は『裁判員制度はいらない』の本で、「小さな利欲、不平、ぐち、怒りを捨てよう」という高村光太郎の詩を紹介しましたが、あの思想です。その議論のペテンを見抜かなければいけない。
82%の人びとが「反体制」に
自民党、民主党、共産党など全政党が一致して進めている裁判員制度に国民の82%以上が首を傾げたり反対したりしているというのは大変なことです。特大活字を使っても言い足りないぐらいです。だって、体制内勢力がひとつになってしまったのに、国民がノーと言っているということは、比喩(ひゆ)的に言えば、国民が反体制になってしまったということですから。
危機に直面した支配層が登場させたのが裁判員制度だったのですが、その裁判員制度が国民を「反体制」に追い込んでしまった。「国民の代表」の国会が決めたことなのに、圧倒的な民衆がイヤだと言う。仕方がないと言わない、あきらめない。
この力の大きさを私たちはしっかり見たい。支配側が断崖(だんがい)絶壁に追い詰められている。それは「衆参ねじれ現象」などというちっぽけなレベルの話じゃない。今の政治のありように、国民の大多数がノーを突きつけている。この大きさを私たちがどう運動のベースにできるかが問われています。
私たちの力を妙に過小評価する人がいるけれど、正しくない。新しい状況が生まれている。そのあたりをちらりと見せたのが昨年2月の日弁連会長選挙でした。論が本当に正しければ、支持する人たちはけっして少なくならない。必ず増える。今日の歴史状況が結論を決める基本的な座標軸になっている。座標軸は“今まさに変革の時”です。世の中がひっくり返る時。そのことを「裁判員制度は問題だ」という82%超の数字に見よう。私たちの闘いはそこにある。
(写真 昨年11月22日の裁判員制度廃止の全国一斉行動。東京のデモの先頭に立つ高山さん【中央】)
立ち上がる労働者と民衆
支配の危機や破綻を見ぬけない諸潮流、諸政党は、裁判員制度に反対しない、反対できません。
危機になって、世の中の矛盾がさらけ出されるのはいいことじゃないかと、私は思います。「世の中よく見えてきたぞ、誰が悪者で、誰が被害者かがよく分かるようになった」ですよ。そのように見られない人たちを「体制内」というのでしょう。
世の中、折り合いをつけて生きていこうよという人も確かにいる。でも、行動に立ち上がる人びとも出てくる。私に裁判員制度に関する新聞の切り抜きをせっせと送って下さる方、なんとしてでも集会に足を運んで下さる方。その皆さんはこれまで運動の経験なんて何もない方々です、おそらく。でも、今は自分から立ち上がっている。これを本当の“市民の司法参加”と言うのでしょう。
昨年11月に東京で行われた裁判員制度反対のデモには、東京・下町のご年配の町内会長さんが参加されました。6`の長い長いデモを完歩されたので、「お元気ですね」と声をかけたら、「行軍で鍛えましたから」と言われました。そういう人たちも立ち上がっているのです。
なんとかこの社会を暴走させないようにしよう、暴走しなければいいんだっていう、そういう議論にとどまるのか、それとも労働者と民衆の力で新しい社会をつくろうと、大きく踏み出すのか。
私たち自身、長く頭の芯(しん)まで微温的な発想に浸かってきましたから、考え方の転換は容易ではない。でも時代は大きく変わろうとしています。私たち自身が、うかうかしていたらみんなにのりこえられてしまう時代かも知れませんね。
若い学生の皆さんが、先日、裁判員制度に関する私の話を聞いて、「よく分かった」と言ってくれました。そこには、学生の皆さんが今闘っている闘いのあり方が反映していると思います。それがそういう言葉になって表れたのではないか。「私たちは正しい運動をやってる」という思いの中に、私の話とつながる何かがあったのでしょう。うれしいですね。
よれよれの麻生政権のもとで、14日には海上自衛隊がソマリア沖に派兵されました。私たちの足元で戦争への動きが始まっている。資本・権力がソマリア沖に向かうのは、彼らが強いからではなく、それしか生き残る道がないからです。支配層が仕掛ける攻撃にひそむ危機と矛盾を、私たちはしっかり見抜きたい。
きょうは、私が裁判員制度と改憲について言いたかったことを率直に話させていただきました。勝機は確実にあります。4月21日にはぜひ東京・日比谷野外音楽堂でお会いしましょう。
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裁判員制度/ここが問題
■「裁判員制度」とは、強盗致傷、殺人、現住建造物等放火、傷害致死、強姦致死傷、強制わいせつ致死傷、強盗致死、強盗強姦などの重大犯罪の刑事裁判(年間約3000件)に市民を参加させ、裁判官と一緒に審理に当たらせて評議・評決を行わせ、有罪・無罪を決めさせるほか、有罪の場合には刑罰も判断させる裁判制度。
原則として裁判官3人と裁判員6人で行う(争いのない事案では、裁判官1人と裁判員4人で行うことがある)。裁判員裁判が実施されるのは一審だけで、控訴審や上告審は従来と同じく職業裁判官だけで行う。検察官は無罪判決に対して控訴できる。
一人の被告人が複数の犯罪を犯した疑いで起訴されている場合、先行する裁判の事件ごとに部分判決が言い渡され、最後に審理する裁判所が最終判決を言い渡す。
■有罪・無罪の判定も量刑の判定も多数決で行う。最高裁は、3日以内に7割、5日以内に9割の判決が言い渡されると言う。被告人は裁判員の参加を絶対に拒絶できず、自分の判決に関わった裁判員の名前を知らされない(誰に有罪判決を言い渡されたのか知り得ない)。裁判員制度は被告人のための制度ではないとされている(司法制度改革審議会意見書)。公判で取り調べる証拠や主張は基本的に事前に整理され(公判前整理手続き)、公判はその手続きに拘束される。その結果、公判開始後に被告人・弁護人が新たな証拠調べを請求することが基本的にできないことになる。
■裁判員に指名された者は正当な理由なく出頭しないと処罰され、裁判長の質問に虚偽の回答をすると処罰される。人を裁きたくないというのは正当な辞退理由にならない。裁判員を特定できる情報を公にすることは禁止される(裁判員自身も自分が裁判員やその候補者になっていることを公にしてはならない)。裁判員を経験した者は評議の秘密その他職務上知り得た秘密を漏らすと6カ月以下の懲役などの処罰を受ける。
■陪審裁判は陪審員だけで評議・評決を行い、被告人が無罪を主張した場合しか開かれず、陪審員は量刑判断を行わない。有罪には原則として全員一致を必要とし、陪審員辞退は事実上広範に認められ、被告人は陪審員の裁判を受けるか否かを自由に決められる。検察官は無罪の判決に対して控訴できない。米国憲法は陪審制を被告人のための制度と規定している。裁判員裁判を陪審裁判に似たものというのは欺まんである。
(この裁判員制度批判は高山弁護士がまとめたものです)
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今売れている話題の本!
『裁判員制度はいらない』
高山俊吉著
講談社 +α文庫
定価/本体743円(税別)
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日程 4・21日比谷全国集会と銀座デモ
裁判員制度実施をみんなで阻止しよう!
4・21日比谷全国集会と銀座デモ
●日時 4月21日(火)午後6時開場/6時半開会 午後8時デモ出発
●会場 日比谷野外音楽堂
●主催 裁判員制度はいらない!大運動
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