ZENSHIN 2007/10/22(No2316 p06)

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週刊『前進』(2316号1面1)(2007/10/22 )

 沖縄と連帯し11・4日比谷へ

 対テロ新法粉砕・福田打倒を

 学生・青年は1万決起の先頭に

 革共同中央学生組織委員会

 全国の青年労働者、学生のみなさん。10・17法大弾圧(記事別掲)に怒りを爆発させ、11・4全国労働者集会1万人結集−青年労働者1千人・学生1千人結集をかちとろう。警視庁公安部と法大当局は10月17日、クラス討論中の学友3人を「建造物侵入」容疑でデッチあげ逮捕した。こんな弾圧で法大生や全国学生の決起を押しつぶせると思ったら大間違いだ。逆に11・4の1万人決起の突破口を切り開く大チャンスだ。弾圧は団結と怒りを強め、闘いを爆発させる。沖縄人民12万人の日帝への怒りの決起に続き、11・4首都・東京でプロレタリア革命への突破口を開く闘いを実現しよう。対テロ新法粉砕、福田政権打倒へ闘おう。

 9・29で情勢は変わった!

 10・17弾圧は、11・4大結集運動に対する反動だ。支配階級は11・4が日本階級闘争の大焦点となることに恐怖し、なんとかこれを押しとどめようと必死になっているのだ。9・29で情勢が変わった。歴史の歯車がまわった。何よりも、歴史教科書の書き換えに対する沖縄人民12万人の怒りが革命の現実性を圧倒的に示した。
 自治労・沖教組・高教組が地域の軸となって全島を疑似ゼネスト状態にたたき込み、教育労働者が政府決定をぶっ飛ばして歴史偽造教科書の使用拒否の闘いに立ち上がる――まさに労働者階級がこそ社会の主人公であることを真っ向から宣言したのだ。
 10月15、16日の2日間、沖縄代表団が上京し、福田政権はこの迫力に圧倒されてグラグラになっている。ここに21世紀プロレタリア革命への火柱が立った。
 沖縄の歴史的闘いと一体で東京では青年労働者・学生を先頭に「労働者に権力よこせ」を掲げてワーカーズアクションが打ち抜かれた。「生きさせろ」「革命やろう」という戦闘的デモが池袋の街を解放し、続々と飛び入りが生まれた。
 この闘いは根っこの部分でつながっている。資本主義の下ではもはや労働者は生きていけない。沖縄の失業率は本土の2倍だ。農業も切り捨てられている。他方で青年は「2人に1人がフリーター」の中で未来に希望を持つことすらできない。揚げ句の果てには沖縄への新基地建設と改憲だ。
 「過労死で死ぬか戦争で死ぬか。どちらかを選べ」――ふざけるな! この腐りきった資本主義のあり方に対する怒りが9月29日に一気に噴き出したのだ。労働者はひとつだ。沖縄−本土を貫く怒りでつながった時、それは日米安保と日帝の階級支配を全部ひっくり返す革命へと発展していく。それをまさに11・4労働者集会で実現しようとしているのだ。
 国家権力は、全学連が法大において日本階級闘争のうねりを体現し、資本と非和解で闘う「革命の学校」としてキャンパスを11・4結集運動で席巻していることを憎悪し、いたたまれなくなって弾圧に踏み込んだ。
 上等だ! われわれは、権力の憎しみを一身に引き受け、弾圧を11・4への1万人結集に転化していくテコにする。
 11・4労働者集会には、9・29沖縄闘争を担った核心的な仲間が大合流する。11・4は、9・29から始まった革命情勢を本当に革命そのものへと発展させる、胸躍る闘いになる。だから、労働者・学生・農民に問われていることはまったく同じだ。「11月4日、自分はどこで何をしているのか」――全国の労働者・学生・農民のみなさん。あらゆる体制内的制動や分断を打ち破ってこの歴史選択に真っ向からこたえよう。

 青年・学生に革命の現実性

 権力が法大闘争の前進におびえ、弾圧に踏み出さざるをえなくなっている。なぜなら、大学は帝国主義支配の矛盾の集中点であり、学生はキャンパスから資本の支配をひっくり返す決定的な力を持っているからだ。
 1995年、日本帝国主義は日経連「プロジェクト報告」で、終身雇用制を解体し、労働者階級からあらゆる権利や団結を奪いとることを宣言した。2千万人の労働者のクビを切り、9割を非正規雇用にしてブルジョアジーだけは生き残ろうということだ。
 国立大学も04年に独立法人化され、私立大学とともにサバイバル地獄の中で、資本にどこまでも奉仕することで延命の道を見いだそうとしている。教育はサービス、学生は商品、大学の価値は資本への貢献度で決まるということだ。その結果が、今の大学キャンパスの殺伐たる状況ではないか。
 「本当に強い大学ランキング」(10月13日付『東洋経済』)などと称して、経常利益率や競争的資金獲得額、揚げ句の果てには就職率やOBの30歳時年収で大学の価値が計られている。この腐りきった大学の資本価値をさらに高めるために、学生は高い学費を払って仲間を蹴落とし、自由を奪われ、進んで奴隷になっていかなければならない。このままでは本当に殺されてしまう。
 こういう状況の中で、大学当局は学生の自治と自由を奪い、寮を解体し、サークル活動を破壊し、ブルジョアジーにこびを売って就職率を競い合う、おぞましい姿をさらしている。その最先端にいるのが法政大学だ。
 資本の攻撃に屈し、学友と政治討論をすれば警察に売り渡す大学はもはや監獄である。粉砕の対象でしかない。さながら「法政刑務所」の現状に対する3万法大生の根底的な怒りの爆発こそが法大闘争であり、それは資本の大学支配をぶっ飛ばし、真の団結を取り戻し、労働者階級の闘いと連帯して大学を人間解放の場に変える闘いだ。
 「革命の現実性」は青年・学生、つまり95年以来のロストジェネレーションの人間としての怒りの中にある。それを敵は百も承知し恐怖しているからこそ、11・4破壊のために法大弾圧に突っ込んできたのだ。
 われわれの回答はただひとつ、どこまでも革命の扇動にこだわりぬき、11・4に学生1千人、青年労働者1千人の大隊列をつくりだすことだ。

 自らの力で歴史を変えよう

 「弾圧や処分は勝利なんです。ブルジョアジーや大学当局は、労働者や学生を取り込もうと一生懸命やってきたわけです。だけど『もう取り込めない』とあきらめるのが処分です。だから処分が拡大するたびに仲間が増えた。新井君と友部君が起訴された時も『勝利だ』と言いきってきた。処分なんてしょせん見せしめ。ということは処分されたやつが元気なだけで、この処分はもう粉砕されているってことなんですよ。弾圧をのりこえて闘う学生が一人また一人と出てくる中で、敵に敗北を強制している」(織田陽介・全学連委員長の9・29発言)
「弾圧は団結拡大のチャンスだ。それは、敵階級によって、お前とは非和解だと認められるという問題だからだ。これは自分にとって本当に喜びなんです。そのことで全国学生の団結がつくられ、法大生の団結は拡大してきたじゃありませんか。この法大攻防の中に革命の現実性があるんだ。だから法大は『革命の学校』なんです」(全学連大会での法大被処分者・内山佳久君の発言)
 ここにわれわれの運動の真髄(しんずい)がある。闘いの中でつかみ取った教訓がある。労働者や学生が団結して権力への屈服を拒否した時、敵に打つ手はない。だから、この3同志への弾圧を500人、1千人の学生革命家の創出へと爆発的に発展できるかどうかに一切がかかっている。
 その環は、周りの学生をすべてマルクス主義学生同盟・中核派の仲間として確信し、その仲間に響く宣伝・扇動の力で勝負することにある。
 全国の革共同・マル学同・マル青労同の同志のみなさん。自らの手で革命党をつくる、そこにかけきることが11月1万人結集を実現する最深の力だ。自らの「壁」をぶち壊し、職場やキャンパスで革命家として胸を張って登場しよう。11・4集会に結集する仲間、討論になった仲間を直ちに同志として迎え入れ、連日連夜の組織建設で破竹の進撃をつくりだそう。
 11月4日、自分たちの力で歴史を変えよう。青年・学生が1千人の規模で都心に登場したら、それはストレートに暴動だ。街頭の怒りと結合した時、権力・機動隊の制動なんか問題にもならない。そういう闘いをやろうじゃないか。
 青年労働者・学生はそういう歴史的・決定的な存在だ。これが10・17弾圧に対するわれわれの回答だ。11月4日までの最後の2週間、自己の存在の一切をかけて闘おう。全国の活動家は弾圧への怒りの火の玉となろう。3同志を今すぐ取り戻し、学生1千人結集を絶対に実現しよう!

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週刊『前進』(2316号1面2)(2007/10/22 )

 教科書検定 沖縄行動団が中央要請行動

 島ぐるみの反乱が福田政権揺るがす

沖縄の闘いと連帯し検定意見撤回を要求して国会前で闘う労働者・学生に、手を振り、ガッツポーズでエールを送る沖縄行動団(10月16日 議員会館前)

 10月15、16日の両日、沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)の日本軍強制の記述が削除・修正された問題で、教科書検定意見撤回と記述回復を求める沖縄行動団が大挙して東京を訪れ、中央要請行動を展開した。
 12万人を超える人びとが行動した9・29県民大会。ついに「県民のマグマが噴火した」(座間味村出身の戦争体験者)。このマグマ噴出の動輪こそ沖教組、高教組の教育労働者であり、自治体労働者、バス労働者だ。この労働者の団結が「沖縄から日本を変える」闘いを組織した。
 この島ぐるみの反乱に震え上がった福田政権は即座に仲井真知事らを東京に呼び、「撤回・回復」なき事態収拾を飲ませようと躍起になった。
 県民大会実行委員会は「教科書会社の『訂正申請』による記述復活では、未来に禍根を残す」「県民の総意はあくまで検定意見の撤回、教科書をもとに戻すことだ」と動揺する仲井真知事や一切の懐柔工作をはねつけ一路東京へ飛び立った。
 一行167人に先行して上京していた40人が合流、同行のマスコミ各社など、総勢200人を超える大部隊となった。誰もが12万県民大会の代表であり、日本政府を動かしてやるという自負に燃えていた。
 しかし、福田のみならず町村官房長官も渡海文科相も面会を拒絶。15日午後から首相官邸で行われた大野官房副長官との面談もわずか10人に限定された。第1グループ約百人の行動団は「何のために高い金を使って東京に来たのか。全員で首相官邸に行こう」と怒りの声をあげて大型バスで駆けつけた。これに対しても警察部隊が警備と称して弾圧、「通行人のじゃまになるな」と暴力的に襲いかかった。これが日帝の正体だ。あくまで沖縄に米軍基地を集中し、沖縄戦の史実を抹殺、再び戦火でじゅうりんしようというのだ。抑え難い怒りに火が着いた。
 「沖縄行動団とともに闘うぞ! 検定意見撤回まで闘うぞ! 福田政権打倒!」――9・29沖縄県民大会とリンクして集会・デモを闘ったワーカーズアクション実行委員会の青年労働者、学生が国会前で叫ぶ。さらに百万人署名運動や沖縄―本土を結ぶ労組連絡会などが15日に国会前、文部科学省前などで検定意見撤回を求める街頭宣伝を展開し、16日は国会前に座り込んで沖縄行動団とともに闘った。
 沖縄の決起と結合し、11・4東京で労働者1万人決起を実現しよう。今や沖縄−本土を貫き、国境も越えた労働者大闘争が音を立てて始まった。
 (関連記事5面)

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週刊『前進』(2316号1面3)(2007/10/22 )

 爆取裁判 上告棄却の大暴挙

 地裁差し戻し許すな

 最高裁判所第1小法廷(泉徳治裁判長)は10月17日、須賀武敏、十亀弘史、板垣宏の3同志に上告棄却の決定を下した。この暴挙は断じて許せない。3同志は直ちに異議申立をたたきつけ、不屈の反撃に立っている。
 3同志は無実である。迎賓館と米軍横田基地へのロケット弾戦闘に一切関与していない。国家権力による凶暴な爆取デッチあげ弾圧に対して、3同志は16年に及ぶ獄中闘争、1審17年に及ぶ死闘の裁判闘争で無罪判決をかちとった。
 ところが高裁は検察の控訴趣意書を丸飲みし、調べてもいない「証拠」を根拠に「事実誤認」と言い、17年も争った裁判に「審理不尽」というデタラメで逆転差し戻し判決を下した。これを最高裁が露骨な国家意思で全面的に認めたのだ。
 安倍政権が倒れ、沖縄では12万人の県民集会が爆発し、労働者階級の怒りが革命を求めて噴出し始めている。上告棄却決定は、法大3学生不当逮捕と一体の日帝の恐怖と凶暴化にほかならない。上告棄却に怒りを爆発させ、11・4へ怒涛(どとう)の進撃をかちとろう。3同志の無実・無罪を絶対にかちとろう。

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週刊『前進』(2316号1面4)(2007/10/22 )

 法大3学生の不当逮捕弾劾

 法政大学で10月17日、またしても学生3人が不当逮捕された。これで昨年3・14法大弾圧以来、法大で不当逮捕された学生は45人だ。断じて許すことができない。
 今回の政治弾圧は、11・4全国労働者総決起集会への結集を呼びかけるクラス討論が行われていた最中に行われた。安東学生部長などの教職員が教室に突入し、3人の学生を暴力的に教室から排除し、学内に乱入した公安警察に身柄を引き渡して不当逮捕したのだ。クラス討論中での不当逮捕など前代未聞だ。学生が集会やデモの参加をめぐって討論することも許さないというのか!
 日本帝国主義は、沖縄12万人県民大会によって始まった革命のうねりが11・4労働者集会1万人決起として爆発することに心底恐怖している。日帝は、革命の現実性に震え上がっているのだ。
 弾圧こそ団結拡大のチャンスだ。法大闘争はこの1年半、弾圧を逆に大衆決起へと転じてきた。法大弾圧への激しい怒りを、11・4労働者集会1万人結集へと転じよう! 警視庁公安部は、逮捕した学生3人を今すぐ釈放せよ!

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週刊『前進』(2316号3面1)(2007/10/22 )

 日帝・福田政権打倒へ11・4日比谷に労働者の怒りの結集を

 全国の全逓労働者に訴える

 郵政民営化はすでに破綻した労働者に職場支配権をよこせ

 10・1郵政民営化に対して全国の全逓労働者は超勤拒否で闘い、勝利者として登場している。すでに破綻(はたん)している民営化攻撃に職場から大反撃をたたきつけよう。10・22JP労組結成=産業報国会運動と全面対決し、11・4労働者集会に全逓労働者の大隊列を登場させよう。
【写真】 超勤拒否を闘った全国の全逓労働者が三里塚全国集会で勝利宣言を発した(10月7日 成田市)

 勝利しているのは労働者だ

 はっきりさせよう。10・1郵政民営化によって、政府や郵政当局のもくろみは成功しているのか。職場から労働運動や階級的なもののすべてを一掃し、一切の矛盾や犠牲を現場労働者に押しつけて資本間競争に勝ち抜こうという狙いは、少しでも貫徹されているのか。まったくノーだ。
 全国で全逓労働者が超勤拒否という画期的な闘いに立ち上がり、すべての郵政労働者に大きな勇気と希望を与えている。この闘いに追い詰められた当局による報復処分を受けた労働者は、怒りをバネに逆に意気高く職場で闘っている。超勤のない労働者は新作業服着用拒否の闘いに立ち、「処分が出るまでやめない」と宣言している。
 これこそまさに動労千葉労働運動の実践だ。動労千葉派が職場の核となり、民営化を破綻(はたん)に追い込んでいる。
 一方、職場は大混乱し、当局は誰も責任をとれない状況が続いている。そもそも連日の4、5時間の超勤とは一体なんだ! しかもこれだけの超勤を強制し、その結果おこる事故やミスはすべて現場に押しつけてきている。なんで入金ミスによる不足金を現場労働者が負担しなければいけないのか。ふざけるな!
 これだけ深刻な要員不足が現場を直撃しているにもかかわらず、当局は逆に郵便内務の切り捨てに走っている。そして集配の労働者に携帯端末を持たせ、書留や金銭授受などのコンピューター入力をすべて担わせるという新たな労働強化を強制している。結局、当局がやっていることはただひとつ、民営化の破綻の一切の責任を現場労働者に押しつけているだけじゃないか。そんな当局なんかいらない。西川社長はただちにクビだ。
 われわれは“郵政民営化は破綻した”とはっきり言い切ることができる。10・1をもってわれわれの闘いは飛躍し、団結は一層固まった。勝利しているのはわれわれ全逓労働者だ。
 休憩・休息時間は当然の権利としてとる。超勤はやらない。この闘いを意識的に貫き、増員要求をたたきつける。安全に郵便を届け、料金のミスが起こらないように職場を回す。こうした職場の闘いを、資本・当局と全面的に激突して貫くということだ。その闘いが本物の団結を生み、職場支配権を労働者と労働組合の手に取り戻す。超勤拒否闘争とはこの職場支配権を奪い返す闘いだ。
 労働者に職場をよこせ! 権力をよこせ! 職場のことはすべて労働者に決める権利がある。今や民営化絶対反対を貫く動労千葉派の労働者こそが、職場支配権を握る時がやってきたのだ。
 この闘いのすべてを11・4労働者集会1万人決起につなげよう。そしてその力で、労働者が権力をとろう。

 JP労組は産業報国会だ

  全逓労働者は10・22全逓解散―JP労組結成を絶対に許さない。このJP労組こそ正真正銘の産業報国会運動だ。
 そもそも完全に破綻している郵政民営化にもかかわらず、10・1にまでなんとかたどり着いたのは、連合JPU本部が職場の闘いを徹底的に押しつぶし団結を破壊してきたからだ。そのJPU本部が全逓労働運動のすべてを清算し、全郵政のもとに進んで組み敷かれようとしている。
 このJP労組はその組合綱領に「左右の全体主義を排除し、自由にして民主的な労働組合の発展をめざして行動する」を掲げている。階級的なもののすべてを壊滅し、職場の団結をトコトン破壊する宣言だ。さらに「労使の信頼関係に立脚し、……産業民主主義の原則に立って生産性運動を推進する」と言っている。労働者としての権利や立場を投げ捨てて資本家どもの生き残り競争の中にすべてを託し、利潤追求のために全力をあげるというのだ。ふざけるな!
 戦前、国家総動員体制のもとで「全勤労者をして創意と能力を最高度に発揮せしめると共に勤労者の育成・培養、適切なる配置を計り、以て勤労動員の完遂を期」す、という要綱を掲げたのが産業報国会運動だ。この官製の運動に対して、体制内労働運動が「労働組合もこれに協力すれば地位を守れるのではないか」として、労働組合を自主的に解散し、積極的に産業報国会への加入戦術をとった。
 まさにJPU本部がやっていることはこの産業報国会運動そのものだ。帝国主義の最末期の危機のもとで、ついに体制内労働運動が極限的反動化をたどろうとしているのだ。
 これは打倒された小泉―安倍路線の継承をうたう福田政権による民主党・連合の取り込みの動きと完全に一体だ。これこそが形を変えた改憲攻撃として全労働者階級に襲いかかっている。そしてその最大の戦場こそが4大産別なのだ。今後、同じ攻撃が自治労や教組などにかけられてくる。全逓をめぐる攻防はその最先端である。
 しかしこんな運動は初めから破産している。すでに破綻している郵政民営化を、こんな労働者支配によってのりきれるはずがない。職場における資本・当局との非和解の闘いと団結の力が、産業報国会運動をぶっ飛ばす闘いとして始まった。この職場からの闘いこそが福田政権を打倒し、改憲攻撃を粉砕する力だ。
 “労働者に権力をよこせ”という青年労働者を先頭とした新たな労働運動のうねりが始まっている。9・29沖縄12万人の決起は、教育労働者や自治体労働者、そしてマスコミ労働者の決起が切り開いた革命以外に出口のない根底的な決起だ。
 われわれ全逓労働者はこうした闘いと一体となり、11・4集会にすべてをかけて決起する。郵政民営化という帝国主義の最大の矛盾点に食らいつき、全労働者の一大反撃の最先頭で闘おう。11・4労働者集会1万人決起で、闘う労働組合が歴史の最前線に登場しよう。
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 資本への全面屈服を誓う新組合の綱領

「反共産主義」で賃金奴隷宣言
  「私たちは……左右の全体主義を排除し、自由にして民主的な労働組合の発展をめざして行動する」〈綱領〉

生産性向上運動の手先に
 「私たちは、労使の信頼関係に立脚し、……産業民主主義の原則に立って生産性運動を推進する」〈綱領〉
 「生産性運動の精神に立脚し、郵政関連企業の成長・発展に寄与します」〈運動の基本目標〉

 (日本郵政グループ労働組合「綱領」および「運動の基本目標」より抜粋)

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週刊『前進』(2316号4面1)(2007/10/22 )

 韓国経済10年前と同じ危機に

 元凶は米日帝による収奪

 島崎 光晴

  韓国経済は、97年経済危機とまったく同じ構造の危機に陥っている。それは、アメリカ帝国主義と日本帝国主義が韓国経済への侵略と支配を強めるなかで起きている。〈再植民地化〉と言うべき、帝国主義による収奪が行われているのだ。帝国主義の世界支配を打ち倒す以外にどんな道もない。7月に改悪非正規職法が施行され、非正規職労働者の解雇の嵐が吹き荒れ、これに対する労働者の反撃が不屈に闘われている。各国で労働者を極限的に搾取する新自由主義政策を、日韓米労働者の国際的団結の力で打ち破ろう。

 非正規職法で解雇が激増 来年は中小企業でも強行

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韓国の非正規職の割合(%)

  2001年 2005年
  全賃金労働者に占める割合 非正規職に占める割合 全賃金労働者に占める割合 非正規職に占める割合
正規職 44.3   43.9  
非正規職 55.7 100 56.1 100
一般臨時職 30.7 55.1 21.4 38.1
期間制雇用 7.8 14.0 17.1 30.4
その他 17.2 30.9 17.6 31.5

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 非正規職法が7月1日から施行された。「非正規職保護」をうたうこの法で「非正規職に関して2年経過後、事業主に直接雇用を義務づける」と規定された。しかし、2年経過後に解雇しても企業側はなんら法的制裁を受けない内容だ。7月から施行されたのは300人以上の大企業と公共機関に限る。08年7月1日から100人以上〜300人未満の中小企業に、09年7月1日からは5人以上〜100人未満の企業に適用される予定。
 法の施行で実際には何が起きているか。非正規職の解雇、正規職の非正規職化だ。
 流通大手のイーランド―ニューコアでは、非正規職化のもっともむき出しの攻撃が襲いかかり、労働者が反撃に立ち上がっている。イーランドグループは90年ごろまでは中堅のアパレルメーカーだったが、00年以降に百貨店のニューコアなどを次々に買収して、一大流通企業グループになっている。このイーランド―ニューコアは、なんと雇用して2年になる前日に非正規職を解雇した。しかも、すでに正規職だった労働者まで外部委託に変え、いつでも解雇できるようにした。さらには契約期間1日の、あるいは白紙の勤労契約書の作成を強要してきた。同社の3千人の労働者のうちすでに1千人を解雇し、残る2千人も外部委託にするという。
 6月以降、非正規職と正規職が「ニューコア―イーランド一般労組共同闘争本部」を結成して、必死の闘いを展開している。今やここが、非正規職闘争をめぐる攻防の一大焦点となっている。
 7月に2年を経過した非正規職を正規職にしたのは、ほんの一部の企業に限られる。正規職にする場合でも、賃下げしている例が多い。300人以上の大企業ですらこうなのだ。来年に施行される中小企業の場合は、財務内容がより劣悪だから、もっとひどくなる。しかも、545万7千人の非正規職のうち実に93・2%もが300人未満の中小企業に勤めている(06年8月調査)。
 東亜日報の中小企業に対する調査では、来年7月に「正規職にする」と回答したのは18%にすぎない。「正規職に転換しない職務をどうするのか」という問いに、46%が「2年ごとに非正規職に転換する」、16%が「非正規職をなくし外部委託にする」と回答している。来年7月には何百万人もの非正規職が職を失いかねないのだ。労働者が生きていくには、非正規職法の廃止、非正規職の撤廃しかない。
 韓国の非正規職が急増したのは、97年の経済危機以降である。

 20代の42%が働けない状態

 当時のキムデジュン(金大中)政権は、韓国経済を帝国主義に売り渡し、新自由主義政策を強行した。特に「労働市場の改革」と称して整理解雇制を導入し、失業者と非正規職を激増させた。
 非正規職が雇用者全体に占める割合は、約56%、女性の場合は69・5%にも及ぶ(05年)。臨時職のなかで雇用契約期間が決められているのが「期間制雇用」、決められていないのが「一般臨時職」。この両者で非正規職の7割近くを占める(表)。特に近年は「期間制雇用」が増えている。これは雇用契約を反復して更新しているためと見られる。非正規労働者の月平均賃金は正規労働者の62・8%にとどまる(06年)。
 非正規職がこれほど増えるなか、青年労働者の働き口がなくなっている。就職をあきらめた「非経済活動人口」(就業者にも失業者にも計算されない)は、20代で236万人。20代のうち実に35%もが無職に落としこめられている。これ以外に失業率は7・6%だから、実に20代の42・6%もが働けない状態だ。「最高学府」とされるソウル大学を卒業しても3割が就職できない。韓国版のロストジェネレーションである。資本主義は世界中どこでも、労働者を食わせられなくなっているのだ。
【写真】 売り場を占拠して座り込んだイーランド一般労組の非正規職労働者(9月16日午前1時)

 20%が貧困層赤字世帯30%

 働いている労働者も超過酷だ。韓国の労働者はOECD加盟国の中でも最も長時間の労働を強いられている。
 賃金も低い。労働者全体の平均賃金は187万ウォン(約24万円)。販売・サービス業種の労働者では174万ウォン(22万円弱)にとどまる。イーランド―ニューコア労働者の月給は、その半分にも満たない78万ウォン(約10万円)。法律で定められた最低賃金よりわずか50ウォン(約6円)多いだけだ(民主労総ソウル本部の8・15集会あいさつ。これ以外の統計数字は政府統計)。
 こうした結果、労働者の貧困化と格差拡大が一層進んでいる。貧困層(月平均所得が全国世帯の所得の中間値の半分未満)は、全世帯の20%をも占める(06年上半期)。月所得はおよそ80万7千ウォン(10万5千円)。しかも、全国世帯の30%が、所得より支出が多い「赤字世帯」となった(07年1〜3月期)。特に所得下位30%の階層では、赤字世帯が55%にも及ぶ。
 一方、金融資産が100万j(1億円超)以上の富豪は9万9千人もいる(06年)。上場企業100社の取締役の月平均給与は5千万ウォン(約650万円)を超えた(07年上半期)。うちサムスン電子はじめ12社が1億ウォン(1300万円)以上だ。議員、企業幹部、局長以上の政府高官の平均月所得は398万ウォン(52万円弱)(06年)である。

 日中の狭間で矛盾が集中 製造業の輸出構造崩れる

 韓国の労働者に対する強搾取の大本にあるのは、韓国経済の停滞と構造的危機、そしてアメリカ帝国主義・日本帝国主義などによる侵略と支配の強まりである。
 韓国経済は70年代以降、重化学工業化によって成長してきた。しかし、97年危機以降は停滞に陥っている。企業の設備投資の増加率をみると、危機前の91〜96年は年平均11・1%だったが、01〜05年は1・1%と10分の1に下がった。そして今年1〜3月期の製造業の生産能力増加率はわずか1・5%に低下した。経済危機以降でも1%台は初めてだ。もはや製造業が韓国経済を牽引(けんいん)する状況ではなくなっている。これは、輸出が構造的に行きづまっているからだ。
 97年危機以降、韓国経済はますます輸出に依存してきた。GDPに占める輸出の割合は、96年の25%から06年は58%に倍増している。特に03年以降は、中国が最大の輸出先となっている。半導体などの電子部品や鉄鋼関連などが輸出の中心で、韓国は中国への部品供給基地という性格を強めた。対中輸出は91年の約10億jから06年には695億jに急拡大した。
 しかし、そうした輸出依存の構造が完全に崩れつつある。@まず、ここ数年、ウォン高が進み、韓国製品の国際競争力が低下した。ウォン高によって、米市場、日本市場、中国市場という韓国の3大主力市場で苦戦を強いられている。すでに米国の輸入に占める韓国のシェアは88年の4・6%から05年の2・6%に急低下した。
 Aしかも、中国との関係でも競争力が低下している。繊維・靴・履物のような労働集約型の部門だけでなく、自動車・携帯電話・鉄鋼関連部品などでも競争力が低下し、IT分野でも技術格差が縮まっている。むしろ、中国からの輸入が増加し、韓国の最大輸入相手国は日本から中国に変わった(07年上半期)。注意しなければならないのは、中国の輸出入の中心は中国に進出した日米欧の外資であることだ。
 Bさらに、日本資本が、サムスン電子など韓国企業への巻き返しに出ている。日立・松下・ソニー・東芝・NECなど日本の9大電子企業は、06年に3兆円もの設備投資をした。韓国との競争で失った薄型テレビと半導体の市場を取り戻すためだ。さらに、電子部品関連で日本の部品・素材企業が韓国への直接投資を増やしている。

 経常黒字急減赤字化の恐れ

 もともと韓国の戦略は”中国が作れないものを、日本が競争できないような低価格で作る”というもの。しかし今や、
「中国が追い上げ、日本は先を行く。韓国はサンドイッチ状態」(サムスングループ会長イゴンヒ)となってしまった。このため、経常収支(貿易収支とサービス収支の合計)の黒字が05年、06年と2年続けて半減しており、07年は赤字に陥る可能性がある。
 これは、97年の経済危機とまったく同じ構図だ。10年たってまた同じ限界性にぶちあたってしまった。「中国の追い上げ」というが、その担い手は中国に進出した外資である。つまり、「日本と中国とのサンドイッチ」とは、帝国主義の生産力による支配に組み敷かれ、そこから抜け出せないということだ。新植民地主義体制諸国すべてに共通する構造である。帝国主義による支配、民族抑圧、産業的・金融的な収奪、経済的従属化、総じて言うと帝国主義の世界支配をふっ飛ばさないかぎり解決しないのだ。

 FTAで階級関係を大再編

 実際、帝国主義の韓国経済への支配はますます強まっている。 
 米帝は4月に韓国とのFTA(自由貿易協定)に合意した。相互の関税撤廃が中心だが、米帝は自動車、通信、金融サービスなどで攻勢を強めようとしている。また、韓国の制度・法律を米国式標準に改編することも狙っている。一方、日韓FTA交渉は04年末に中断したままであり、日帝にとって米韓FTAは大きなダメージとなる。日帝は韓国をはじめアジアを”生命線”とする以外にないが、そう簡単には行かず、帝国主義の「最弱の環」としての姿をさらけだしていかざるをえない。
 米日帝とのFTA交渉こそ、韓国の労働者・農民に対する最大の攻撃となっている。FTAによって階級関係と産業構造を大再編すること、これこそ米日帝と韓国の資本家階級の狙いだ。
 韓国は輸出すればするほど、日本から機械や部品を輸入せざるをえない。半導体の製造装置、携帯電話・自動車・液晶パネルなどの部品の6割〜7割を日本などに依存する。65年の日韓条約以降、韓国産業は日本の機械・部品に依存する構造となってきた。だから、韓国の生産力が高度化しても、それにつれてますます対日依存が深まってきた。
 06年の場合、韓国の貿易黒字は161億jだが、対日貿易赤字は254億jと過去最大。韓国が世界市場で稼いだ黒字の半分以上を日本に貢いでいるかっこうだ。
 また、経済危機以降、米欧資本は韓国企業の株式を買いあさり、支配下に置いてきた。06年の外国人株主への配当金は75億8千万jと、経常黒字額をも上回った。
 日本のように主に貿易という形であれ、米欧のように株式投資という形であれ、いずれも帝国主義による植民地主義的な収奪そのものだ。まさに帝国主義による〈再植民地化〉にほかならない。
 韓国の労働者階級は、こうした帝国主義の侵略・支配と、財閥資本・ノムヒョン政権の強権に対して、果敢に闘いつづけている。帝国主義の世界支配を転覆する以外に労働者階級の解放はない。11・4集会を跳躍台とした日韓米労働者の闘いで、必ずや世界革命を切り開こう。

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週刊『前進』(2316号5面1)(2007/10/22 )

 怒りのマグマを11・4日比谷へ

 労働者階級の団結の力発揮し沖縄から日本革命の扉開こう

 革共同沖縄県委員会

 9・29沖縄県民大会は11万6000人という空前の大結集を実現し、福田政権に巨大な衝撃を与えた。その先頭には、沖教組・高教組、自治労を始めとする沖縄の闘う労働者、労働組合が立った。ついに日本階級闘争を塗り替える地殻変動的な闘いが始まったのだ。沖縄から噴出した怒りのマグマは、日本全国―全世界で始まった階級的激動と完全にひとつだ。11・4集会への怒りの1万人結集を実現し、「9・29」で始まった日帝打倒にむかう新たな情勢を勝利者として突き進もう。
【写真】 9・29沖縄県民大会

 準ゼネスト状態生んだ県民大会

 12万人の決起についてマスコミは「復帰後最大」と表現しているが、1970年前後も含めてこれほど集まったことはない。1995年10・21県民大会(8万5000人)をはるかに上回り、”1950年代の土地闘争以来ではないか”という人もいる。それほどの歴史的出来事だ。
 文字どおり、老若男女の島ぐるみ総決起である。沖縄県民人口の10分の1が、ある日・ある時間にひとつの場所・宜野湾市海浜公園に集まるということは、社会全体がストップし、ある種のゼネスト状態になる。
 この結集を実体的に支えたのは自治労と教職員組合だ。役場と学校が地域の拠点となり、各自治体が行政無線放送で参加を呼びかけ、「役場に来れば乗せていく」とバスを配置した。自治体労働者は、借り上げた観光バスと自治体所有車両をフル動員して住民を会場へ、会場へと運んだ。運動会や文化祭、野球の試合を午前中で切り上げ、教育労働者と生徒が学校単位で参加した高校も多い。バス会社は県民大会参加者無料乗車券を発行(地元紙に掲載。切り抜くかコピーして使う)。路線バスは始発時点で満杯になり、途中のバス停でつみ残されて2時間も待った人もいる。多くは歩いて会場に行き、見ず知らずの参加者を自分の車にのせたドライバーもたくさんいた。大会終了時にやっと会場に着いた人も少なくない。

 “これで国を動かせる”

 12万人にも及ぶ大集会は、参加した人びとにものすごい感動と勇気を与え、「やればできる」という実感、自信を生み出している。マスコミのインタビューで多くの人が「自分と同じ気持ちの人がこんなにいる」と一つに団結することの感動を語り、ある高校生は「これで国を動かすことができる」と述べた。「絶対に政府・文科省の検定を撤回させる」――誰もが国との戦(いくさ)を考え、国が決めたことを自分たちの力で本気でひっくり返す、ひっくり返せるという決意と実感を異口同音に語っている。そういうレベルの膨大な決起が、活火山のごとく始まったということだ。
 9・29の12万人決起とはいったい何か。一言でいえば、国家と革命の問題をはらんだ巨大な階級的決起が起こったということだ。「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」を実現しなければ結実することのない沖縄の労働者人民の怒りと闘いが大爆発したのだ。米兵による少女暴行事件に怒り、基地撤去を要求した95年10・21「10万人決起」の後、10年あまりの歳月をかけて沖縄を圧殺・制圧しようとしてきた日帝の攻撃は一挙にぶっ飛んだ。
 より本質的に言えば、日帝・小泉、安倍―御手洗らによる戦争と民営化路線のもと、生きることそのものを圧殺されている労働者階級人民の根底からの怒りのマグマが、沖縄(安保・沖縄)という日本帝国主義の弱点・矛盾を突き破り、その地殻の裂け目から大噴火を始めたということだ。
 重要なことは、沖縄という火山から噴き上げたマグマは、地殻の下ではひとつにつながっているということだ。労働者階級は世界的にひとつだ。9・29の沖縄での決起は、参院選での自民党・安倍政権打倒や、さまざまに始まった労働者の決起と完全につながっている。いや、一体のものなのだ。この不動の確信を土台に据えよう。
 階級情勢は「9・29」の前と後ではまったく違う段階に入った。そして階級的労働運動路線こそ、この情勢に根底から対応していく唯一の路線だ。実践的結論は11・4労働者集会の勝利だ。

 闘う労働組合の渾身の決起が軸

 9・29県民大会の爆発を可能にしたものは何か。それはいかに準備されたのか。ここをしっかりつかむことが重要だ。
 高校歴史教科書の検定で、沖縄戦時の「集団自決」における日本軍強制の記述削除が強要され、教科書会社が書き換えさせられたことが明らかになったのが3月30日。これに対する沖縄の怒りは半年間で燎原(りょうげん)の火のごとく燃え広がり、9・29島ぐるみ決起まで突き進んだ。
 9・29県民大会の成功は「保革をこえた政党の努力」「超党派」ゆえに実現した、というようなものではない。9・29にいたる全過程は、激しい党派闘争と階級対立、左右の激突であった。
 自民党・仲井真保守県政は最初から一貫して敵対し、なんとか怒りの爆発を押しとどめようとした。彼らが実行委員会に加わっているのは、そうしなければ人民から打倒されるからであり、嫌々入っているにすぎない。
 他方、既成左翼や連合ダラ幹も、この9・29に向けて何もしていない。日本共産党は終始一貫、運動をセクト的に囲い込むことしか考えていなかった。日共は相当数の宣伝カーを持っているが事前にはまったく動かさずビラも出していない。
 日教組本部は、この大運動が政府との全面激突となって文科省もろともぶっ飛ばされることを恐れ、沖縄の教科書闘争を徹底的にネグレクト、サボタージュしてきた。
 9・29決起は、こうした左右の既成政治勢力、体制、枠組みとはまったく関係ないところから、あえて言えば彼らの支配や制動が崩壊しつつあるからこそ、真に主体的な大決起として実現した。ここが95年の決起をも超える、まったく新しい情勢なのだ。
 最も核心的な存在は労働組合だった。とりわけ沖教組、高教組に結集する労働者の決意と闘いが、12万人の空前の決起を切り開いた。沖教組、高教組は、この歴史教科書検定「絶対阻止」を目標に、組織の存亡をかけて闘いぬいた。改悪教基法のもとでこの教科書検定を実行させたら、間違いなく「教え子を再び戦場に送る」ことを強制されるようになること、それは「労働組合(教職員組合)の死」以外の何ものでもないという正しい危機感からだ。この労働者の不退転の決意、本気さ、正義性、沖縄の大義が全人民をとらえた。それは、労働組合が原則を貫き、本気になって闘えばどれほどの力と可能性を持っているのかを衝撃的に示すものとなった。
 もちろんこの過程で、「集団自決」の当事者、遺族、関係者が、もしこういう事態がなければ一生封印していたかもしれない歴史の真実(日本軍の自決命令の存在)を、自らの全存在をかけて明らかにしたことが決定的な力となった。

 政府・文科省との全面激突貫け

 いま日帝は決定的に追いつめられている。そして恐怖している。
 政府・文科省は検定を撤回することはできない。それは、彼らが正直に吐露しているとおり、検定制度の崩壊、改憲と戦争国家化攻撃のとん挫、そして日帝の体制的な死を意味するからだ。産経新聞や反共雑誌、「新しい歴史教科書をつくる会」が、「集まったのは1万人」などと9・29県民大会の意義を否定し、傷つけようとけたたましい悲鳴をあげてかみついていることはそれを逆証明している。まさに痛快の極みだ。
 9・29に決起した労働者人民は、単に過去を問題にしているのではない。「再び戦争をやろうとしているからこんな検定をやった」「この検定の先に再び三度の沖縄戦がある」ことを自覚し、現在と未来をかけて決起した。福田政権打倒闘争であり、「沖縄戦・集団自決を再びやれ」という国家との総対決なのだ。
 同時にそれは、米軍再編・辺野古新基地建設に対する積もりに積もった怒りと完全に一体だ。95年「10万人決起」、日本帝国主義の全体重をかけた圧殺攻撃、大田知事の屈服と敗北以来10年あまりのやり方に対する根底からの怒りがあるのだ。
 カクマルは「反安保のスローガンがない」などと、もはや化石と化した主張をつぶやいてはじき飛ばされている。
 県民大会参加者の検定撤回の要求は不退転であり根底的だ。誰もがこの「非和解性」を完全に自覚し、要求の絶対貫徹を決意している。そこには既成政党、体制内政治勢力、いやそもそも国会や選挙などという議会主義的なものへの幻想や他力本願的な依存など微塵(みじん)もない。自力自闘で「沖縄から日本を変えてやる」という気概が満ちあふれている。プロレタリア的な自己解放性がしっかりと土台にあるからだ。
 9・29県民大会に結集した労働者人民は、革共同の「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の綱領的スローガンを直ちに実行することを党と階級に訴えている。9・29と同規模、同質の階級的決起を心から求めているのだ。沖縄問題の観念的理解や解釈、日本・沖縄関係の学者的解釈の開陳を求めているのではない。集会当日のマスコミ・インタビューでも「本土でも闘って欲しい」という声が数多く発せられた。そこには、沖縄現地の闘いが爆発した時にアリバイ的に「参加」することで真の階級的責任をすり抜けるあり方への根底的批判が込められている。9・29県民大会翌日、沖縄の地元紙に、これと連帯して東京で闘われたワーカーズアクションの集会・デモが報じられた理由もそこにある。
 われわれの実践的結論は11・4労働者集会だ。労働者の怒りを爆発させ、11・4集会の1万人結集を必ず実現しよう。
 検定意見を撤回させる闘いはいよいよこれからが本番だ。
 政府・文科省は「政治が介入して教科書を書きかえたら戦前のようになる」などというタワゴトを口にして、あくまで検定意見撤回の要求を拒否している。こんなふざけた理由で9・29県民大会を足蹴(あしげ)にする首相官邸・文科省など怒りの炎で燃やしてしまえ!
【写真】 国会前で連帯行動に立つ(10月16日)

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週刊『前進』(2316号5面2)(2007/10/22 )

 “撤回は譲れぬ要求”

 県民大会実行委 200人が東京行動

 

 

 「一致団結してガンバロー!」――握るこぶしは気迫に満ちていた。16日夕、県民大会実行委員会の大行動団は衆議院第二議員会館での記者会見後に報告集会を開き、県民大会決議の要求である検定意見撤回と記述回復まで闘う方針を全員で確認した(写真右)
 15日の大野官房副長官と行動団との会談はわずか20分、中身は「重く受けとめる」との言葉以上のものはなかった。官邸前では抗議のアピールが続いた(写真左)。翌16日は数グループに分かれて国会議員730人、各政党、教科書会社などを訪問。午後2時半には文部科学省の池坊副大臣と会談した。しかし、政府・文科省の返答は「言葉は美しいがなんの内実もない」ものだった。
 記者会見でしつこく落とし所をたずねる記者団に対し、県民大会実行委の仲里利信委員長(県議会議長)は、「いずれにしても検定意見の撤回と記述の回復は譲れない」と何度も断言した。
 教科書印刷期限が迫っているのではという質問にも「なぜ4月1日から(教科書を)変えなくちゃいけないのか。結着するまで旧来の教科書でいいじゃないか」とおおらかに対応した。さらに仲里氏は、82年「日本軍の住民虐殺」削除、97年家永教科書裁判最高裁判決、今回と、教科書攻撃が10年ごとに繰り返されてきたと指摘、「私も戦争体験者の一人。後世にまた起こらんように今回で結着させる」と強い決意を示した。
 全員が「そうだ!」と拍手でこたえた。これが137万沖縄県民の譲れない決意なのだ。

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週刊『前進』(2316号5面3)(2007/10/22 )

 10・15東京 “真実伝えよ”

 総決起集会に700人

南部商業高校の生徒95人の寄せ書きを広げる沖縄行動団(10月15日 東京・星陵会館)

 10月15日夕、沖縄から大挙上京した要請団を迎え、「教科書検定意見撤回を求める10・15総決起集会」が永田町の星陵会館で開かれた。会場は通路も2階席も埋め尽くす700人の超満員となった。主催は東京沖縄県人会と「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」。
 集会には各党国会議員が多数参加した。東京沖縄県人会でひめゆり同窓会東京支部副会長の上江田千代さんが「ひめゆり学徒の沖縄戦体験」として地獄のような戦場体験を語り、「軍の命令は随所に思い出される」「教科書は正しいこと、真実を伝えるべきだ」と強調した。そして百万人署名運動として文科省に要望書を提出したことを報告した。
 参議院議員の山内徳信氏は自身の体験を語り、「沖縄は何度殺されればいいのか」と怒りをあらわにした。糸数慶子氏は、沖縄平和ガイドの体験から、沖縄戦を正しく伝えていくことの意義を語った。
 沖縄にこたえる首都圏での意見書採択の取り組みとして、三鷹、国立、鎌倉、小金井の各市の住民、議員が報告した。
 集会の最後に、沖縄からの行動団が壇上にのぼり、代表して沖縄高教組の松田寛委員長が、95人の高校生から託された抗議の寄せ書きを広げ、明日の文科省抗議で手渡したいと発言、「9・29集会は、私たち主権者が声をあげることによって社会を変えることができるのだということを示したかった」と勝利の展望を明らかにした。

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週刊『前進』(2316号5面4)(2007/10/22 )

 沖縄戦と教科書 @

 崎浜秀俊さんに聞く

 悲劇を生んだ「教育」

 9・29沖縄県民大会は沖縄戦の史実を後世に伝え、戦争と改憲を阻む強固な意志表示だった。「教科書と沖縄戦」をテーマに語っていただいた。(編集局)
 9月29日に11万6000人が県民大会に集まった。今回、保守革新問わず結集したことはすばらしい。僕も県民大会の参加を呼びかける百万人署名運動のビラを、きょうは宜野湾高校、昨日はコザ高校、その前は中部商業と連日まきましたよ。
 僕は1937年に神戸で生まれた。敗戦の時は9歳で小学校3年生、その翌年、家族8人で父親の郷里の名護に引き揚げてきました。
 北部には戦争中、南部からたくさんの人たちが逃げて来て、食料もみんなで分けあって生き延びたが、南部のような激戦地ではなかった。
 それでも名護の許田にいた僕の家内などは何度も僕に「日本兵が一番怖かった」と話す。なぜかというと、スパイだと疑われた人が山に連れていかれ、木にくくられて殺されていたという。家内は僕より2歳下でありながら、生々しく覚えているということは相当な恐怖じゃなかったかと思う。
 沖縄の皇民化教育という場合、他府県との違いとして沖縄差別と言葉の問題がある。今日のように標準語が使えない人が多く、それが悲劇を生んでいます。日本の兵隊も沖縄の方言がわからないから、自分らの悪口を言ってはいないかと疑う。そして自分たちのやることはすべて天皇の言葉、天皇の行動だと「食料を出せ」とやった。本来は「供出」なのかもしれないが、実際には強奪ですよ。
    ◇
 8月15日、神戸で玉音放送があった時、僕は母に「負けたんだから戦車でひき殺されるのか」と聞いた。母は、「戦争で負けたからといって住民を殺しはしない」と僕に言い聞かせた。紡績で働いていた時に世界史で学んだというが、そういう知識をみんなが持っていれば「集団自決」などは起きなかったと思う。
 おふくろが沖縄から川崎の紡績工場に働きに行ったのは、まだ関東大震災で死んだ人骨が残っていたというから1923年かその翌年かだろう。工場はちょうどストライキの真っ盛り。おふくろはそれを知らんと仕事をしようとしたら、男の人に木剣で尻をつつかれた。おふくろが「なんで働きに来たのに働かさないんだ」と文句を言ったら、ストだと。ストライキは「労働条件をよくするために仕事をボイコットするんだよ」と聞かされて納得して、ストを覚えたと話していた。ストが終わったら食事がよくなり、休憩時間もきちんととられるようになったというんだね。
    ◇
 僕は安倍首相がつぶれてよかったと思う。同情はちょっぴりもない。
 だって首相になったとたんに戦争に関連する法律が、あれもこれも通ったでしょ。そして「自由主義史観」が亡霊のごとくよみがえってきた。戦後レジームは終わったんだと、今後はまた戦争のできる新しい日本をつくるんだと、それを「美しい日本」なんてもってのほかですよ。
 悔しいことにはね、この沖縄の痛みを全国の人たちが知らないことだ。なんでこのぐらいのことを沖縄は騒ぐんだという気持ちが他府県の人たちにはあるんじゃないか。しかし、これが沖縄の痛みだと全国に知らさんといけないですよ。ヌチドゥ宝、命こそ宝だという教えが沖縄には染み込んでいる。それが「捕虜になって辱めを受けるな」という戦陣訓が沖縄の人たちに植え込まれていった。そういう教育がなければ「集団自決」はなかったはずです。「美しい国」なんていう言葉、概念でごまかされないように努力しましょう。究極は沖縄も日本も世界も平和であることです。
【写真】 崎浜秀俊さん・沖縄県高等学校障害児学校退職教職員会会長/とめよう戦争への道!百万人署名運動沖縄の会

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