ZENSHIN 2006/09/11(No2261 p06)

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週刊『前進』(2261号1面1)(2006/09/11)

 改憲阻止の学生ゼネストを

 安倍の登場と対決し国会決戦へ

 全学連大会への大結集を訴える

 革共同中央学生組織委員会

(写真 都教委包囲・首都圏ネットワークの8・30都教委包囲デモには闘う教育労働者を先頭に400人が集まった。都庁で石原・都教委を包囲・糾弾した【8月30日 新宿】)=記事2面

 すべての労働者、学生のみなさん。動労千葉など3労組が呼びかける11・5全国労働者総決起集会に集まろう。1万人結集−全国学生1千人結集を実現すれば、戦争と改憲は阻止できる。プロレタリア革命勝利の展望がここにある。闘う学友は、9月14日〜16日の全学連大会に総結集しよう。全学連大会は、11月労働者集会への全国学生1千人決起と法大を先頭にした改憲阻止ゼネストに突き進む決戦態勢を確立する歴史的な大会だ。安倍政権の登場と対決し、臨時国会での改憲4法案(教育基本法改悪案、共謀罪新設、国民投票法案、防衛省格上げ法案)を廃案にたたき込もう!

 戦争の歴史をくり返すな

 小泉が8月15日に靖国神社参拝を強行したことは、日帝による新たな朝鮮・中国・アジア侵略戦争宣言だ。靖国参拝に異論を唱えた加藤紘一衆院議員の自宅と事務所が右翼に焼き討ちされた。日本の労働者階級と学生は、1930年の浜口首相暗殺と31年柳条湖事件からの15年戦争突入の情勢に比すべき、歴史の分岐点に立っている。1930年代、日帝・支配階級は分裂しながらも、反動的エネルギーを吸収し、労働者階級の闘いをたたきつぶして帝国主義戦争に突入していった。この歴史を繰り返してはならない。
 小泉の靖国参拝以後、情勢は激しく進展している。何よりも、小泉後継として登場してきている安倍は、戦争と改憲に突き進むことを公言している。
 安倍は、集団的自衛権を行使できるように憲法解釈を変え、首相官邸に日本版国家安全保障会議を設置し、自衛隊派兵恒久法を制定せよと言っている。何よりも、憲法改悪と教育基本法改悪を政権公約として戦後史上初めて真っ向から掲げて登場するのだ。安倍は、敵基地先制攻撃論をとなえ、02年の官房副長官時代にも「核兵器使用は違憲ではない」などと発言している極右政治家だ。著書『美しい国へ』では特攻隊を全面美化している。そして「自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在する」「日本という国の悠久の歴史が続くこと」を願って特攻隊の若者は死んだと言っているのだ。安倍が言う教育改革とは、国のために命を投げ出す戦争教育だ。
 また安倍の「再チャレンジ」も絶対に許せない。安倍は次のような労働者の怒りの声をよく聞け。「暮らしに困らない人が、いわゆる『落伍』した人々を見下して、手を差し伸べ、『頑張れ、仕事を与えてやろう』と言っている意味合いに思えてならない。『格差社会ありき』が前提の『再チャレンジ』を、得々と述べる政治家の気が知れない」(東京新聞の投書)
 なぜ、安倍は「再チャレンジ」と言っているのか。「貧しい労働者が増えれば、怨嗟(えんさ)の声は日増しに大きくなり、やがてそれは国家にむかう。社会の不安定化は暴動を誘発し、革命にまで発展することもありうる」「やみくもに小さな政府を求めるのは、結果的に国をあやうくする」(『美しい国へ』)。要するに安倍は、小泉「構造改革」が労働者階級の生活を破壊し、労働者階級の革命的な行動が開始されていることに革命の現実性を感じ、怒りと闘いが爆発することに恐怖しているのだ。
 だが安倍は、労働者階級の生活をさらに激しく破壊する。安倍政権の登場は、小泉政権5年間の矛盾の噴出を加速させ、青年労働者や学生の怒りに爆発的な火をつける。9条改憲阻止の闘いを大爆発させ、60年安保闘争の時に何十万もの労働者や学生が安倍の祖父・岸信介を包囲した以上の闘いをたたきつけてやろうではないか。

 青年はお国のために命などささげない!

 さらに小泉や安倍は、特攻隊を美化して、青年労働者や学生を侵略戦争に動員しようとしている。しかし、青年労働者や学生は、国のために命をささげようとはまったく考えていない。青年労働者や学生に再び「死のイデオロギー」を強制することは簡単なことではないのだ。
 だからこそ、安倍は、今秋臨時国会で教育基本法を改悪して暴力的に愛国心や国を愛する態度をたたき込めば、国のために命をささげる若者を育成できると考えているのだ。そのために日教組などの教育労働者の闘いを解体しようとしているのだ。ふざけるな。
 教育基本法改悪の核心は、「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す」(衆院議員・西村真悟)ことにある。政府の教育基本法改悪案では、「国を愛する態度を養うこと」が「教育の目標」になる。国を愛することを態度で示すとは、安倍が言うように、「自分の命をなげうっても国を守る」ということなのだ。
 だが、「国を愛せ」「国を守れ」というが、その国とは何か? 大銀行やトヨタなどの大企業が労働者階級から搾取して金もうけするために、資本家階級が労働者階級を支配している国家ではないか。労働者の年金、医療、介護などを切り捨て、増税して収奪している国家ではないか。戦争と改憲に反対する立て看板の撤去に抗議しただけで、逮捕する国家ではないか。青年労働者や学生は、国のために命をささげるどころか、自分たちを抑圧している国家に対して激しい怒りを燃やし、こんな国家を一刻も早く打倒しようと思っているのだ。
 国を守るための自衛戦争だと? ふざけるな。巨大資本の利益のための強盗戦争ではないか。15年戦争でも、三菱や三井などの財閥の利益のための侵略戦争をやり、今度はトヨタやキヤノンが中国人民から強盗的利益を上げるための侵略戦争をやるというのか。そのために、朝鮮や中国に対する排外主義なんか扇動するんじゃない!
 日本帝国主義は、第2次世界大戦で完膚無きまでに大敗北した。再び戦争をくり返すことなど断じて許さない。15年戦争では、日帝の強盗的利益のために、2千万人ものアジア人民を虐殺し、310万人もの日本の労働者人民も死んだ。小泉や安倍は国のために死んだと言って美化するが、戦場に行った労働者や学生のほとんどは、餓死で死んだのだ。7bの棒の先に爆弾をつけて、潜水服を着て、敵艦船に体当たりさせるという無謀な特攻作戦、伏竜特攻隊を見ろ。日帝は、青年労働者や学生を消耗品のように扱ったのだ。人間扱いしなかった。そしてまた国のために戦えだと? 冗談ではない。

 労働者と学生を使い捨てにする日帝資本

 今、青年労働者や学生に対しては、同じような攻撃が始まっている。青年労働者の非人間的現実を見よ。いつでも解雇できるような非正規雇用にたたき込み、労働安全上の責任や使用者責任もあいまいにし、人材派遣会社などがわずかな賃金さえもピンハネしているではないか。労働災害で死に追い込まれている青年労働者がいるではないか。今また特攻隊と同じ使い捨ての消耗品扱いではないか。
 学生に対する反動的支配も同じだ。大学当局は、サークルなど学生による自主的創造的活動を弾圧する一方で、「社会に求められる人材の育成」「就職支援」(法大・平林総長)などと称して、日本商工会議所などのブルジョア経済団体と結託して、資本の役に立つ人間を育成することが大学の役割だとぬかしている。教育基本法改悪案では、「社会の発展に寄与する」=帝国主義の強盗的利益のために大学を動員するとしている。大学当局は、学生を人間と見ていない。資本に売り込む「商品」と思っているのだ。こんな大学に存在価値はない。こんな大学はぶちこわし、改憲阻止・日帝打倒の砦(とりで)にしようではないか。
 労働者や学生の闘う武器は、団結だ。団結すれば勝てる。それを示しているのが動労千葉の闘いだ。職場の団結を武器にして、資本による安全破壊をうち破り、国際連帯にまで団結を広げている動労千葉の闘いに続こう。労働者と学生の団結した力で、自分たちを非人間扱いし、侵略戦争に動員しようとする日帝を打倒し、労働者や学生が主人公の新しい社会をつくろう。

 労働者の怒りと結び闘う

 帝国主義は、破局的な危機を爆発させている。米国における住宅バブルの崩壊は始まっている。1929年型世界大恐慌は不可避だ。米帝は、イラク軍事占領が完全破産し、イスラエルを使ってレバノン侵略戦争へと戦火を拡大した。これもヒズボラを先頭にした中東人民の闘いによって、大破産した。さらにイランなどに侵略戦争を拡大しようとしている。
 この帝国主義による侵略戦争・世界戦争を阻止できるのは労働者階級による帝国主義打倒の闘いだ。とりわけ、日本の労働者階級と学生の闘いが重要な位置をもっている。
 米・日帝国主義は、「新世紀の日米同盟」によって、沖縄米軍基地を始めとする在日米軍基地を中東からアジアに対する侵略出撃基地として大再編しようとしている。
 これと一体で、日帝は、憲法第9条第2項の「戦力不保持・交戦権の否認」を破棄して、自衛軍の保持とあらゆる帝国主義戦争を可能にする9条改憲に突き進んでいる。9条改憲は、日帝が世界戦争の放火者として歴史の前面に登場するということだ。これに対する日本とアジアの労働者階級の闘いは激しく燃えあがる。戦後革命期に問われた日帝打倒の情勢が来たのだ。
 それは現実に始まっている。6千万労働者階級は、資本による極限的な搾取や収奪、生存破壊の攻撃や、戦争と改憲攻撃に対して闘いを開始した。自民党の中川政調会長が「次期政権の最大の抵抗勢力は官公労だ」と叫んでいるように、日帝は4大産別の労働者の闘いを解体できていない。8月自治労大会では、改憲阻止決戦に立ち上がるべきだという組合員の発言が続出した。日帝が「城内平和」なき侵略戦争に突入したことによって、4大産別を先頭にした労働者階級の闘いが爆発すれば、日帝を最後的に崩壊にたたき込むことができるのだ。
 その中で、学生運動の位置は決定的だ。学生は、3・14法大弾圧以来、国家権力と法大当局が一体となった計37人もの不当逮捕を粉砕し、退学処分・停学処分の強行を法大生の全学的決起へと転じてきた。法大を先頭にして、学生の積もりに積もった怒りが帝国主義に向かって爆発を開始した。法大決戦の革命的息吹が全国300万学生に急速に波及している。60年、70年を超える学生運動の嵐のような登場が、青年労働者を始めとした労働者階級の激しい怒りと結合して、マグマのように爆発を開始しているのだ。
 青年労働者と学生の闘いが「戦争か革命か」の時代を決する。かつては青年労働者や学生が戦争に動員された。だが、今や、青年労働者と学生が戦争を阻止し、プロレタリア革命の先頭に立って闘っているのだ。
 世界では、フランス、アメリカ、ドイツ、イギリスなど帝国主義諸国で、中東や韓国で、労働者階級と被抑圧民族人民の世界革命に向けた自己解放的な決起と反乱が巻き起こっている。もはや、世界革命に向けた労働者階級の闘いを押しとどめることは絶対にできない。
 戦争と革命の時代に勝利するのは労働者階級だ。勝利をかちとる現実的闘いが、11月労働者集会の1万人結集、そこへの全国学生1千人の大結集だ。全国学生は、法大での全学ストライキを爆発させ、11・5労働者集会への1千人結集をかちとろう。
 闘うすべての学友は、マルクス主義学生同盟に結集しよう。前半期の勝利的前進の中で、多くの学友がマル学同への結集を開始している。マル学同に結集した同志が直ちにマル学同拡大の先頭で闘っている。君もぜひマル学同に結集して、ともに革命勝利に向かって闘おう。
 闘うすべての学友は、9・14〜16全学連大会に総結集しよう。

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週刊『前進』(2261号1面2)(2006/09/11)

 「防災の日」 “戦争協力拒否を”

 東京足立 治安訓練をデモで弾劾

 9月1日、「総合防災訓練」と称して行われた治安出動訓練に対して、反戦共同行動委員会は弾劾闘争に立ち上がった。石原都知事は今年のメイン会場を足立区に設定し、自衛隊に加え在日米軍の部隊や艦船・ヘリまで出動させてこれを実施した。まさに戦争態勢づくりそのものだ。反戦共同行動委は憲法改悪阻止の固い決意をこめて、訓練会場周囲に弾劾の声をとどろかせた。
(写真 織田全学連委員長を先頭にしたデモの「戦争動員訓練許すな!」の訴えが沿道からの熱い注目と共感を呼んだ【9月1日】)
 午前7時過ぎ、北千住駅西口前での街頭宣伝から、この日の闘いは始まった。「戦争協力を拒否しよう」の横断幕が広げられ、通勤通学途中の人びとに訓練を弾劾するビラが次々とまかれた。
 8時半から中居町公園で集会が開かれた。普段は静かな住宅街に、警察車両や機動隊、私服警官が大挙押し寄せる中、50人の結集で集会が始まった。付近の住民も激励を寄せ注目している。
 とめよう戦争!隊員家族と元自衛官連絡会の小多基実夫さん、青年アジア研究会、婦人民主クラブ全国協議会、都政を革新する会の北島邦彦事務局長、東京労組交流センター、全学連の織田陽介委員長がそれぞれマイクを握り、石原都政と小泉政権による戦争へ向けての攻撃を許さない決意を表明した。特に織田委員長は、この日、安倍が自民党総裁立候補を広島で行おうとしていることを強く弾劾し、「改憲の安倍を許さない。秋の臨時国会へ突き進もう」と力強く訴えた。
 9時にデモ出発。沿道の人びと、デモを見守る住民にビラが手渡された。みな熱心に読み、宣伝カーからのアピールに聞き入っている。
 足立区は在日朝鮮人が多く居住し、荒川河川敷には今も関東大震災で虐殺された朝鮮人・中国人の遺骨が眠っている。今回の「防災訓練」が、北朝鮮のミサイル実験などを口実とした排外主義の洪水の中で、在日を標的として設定されたものであることは明らかだ。デモ隊は怒りをたぎらせて「訓練」の主会場である荒川の土手(写真下左)・西新井橋のたもとに迫った。この時から機動隊と私服刑事の動きがにわかにあわただしくなり、会場に近づけまいと暴力的な弾圧を加えてきたが、デモ隊はこれをはね返し、雨の中闘志にあふれるデモをやり抜いた。

 

 石原の要請で米軍が初参加

 北千住駅前も、この日の訓練の主会場となっていた。人だかりができ、「高所ビル救出」などを想定した大々的な訓練が行われていた。迷彩服の自衛隊員が物々しいいでたちで動き回っている(写真上右)。小さな子どもたちがおそろいの防災ずきんをかぶせられ、「避難誘導訓練」に引き回されている。デモ終了後、北千住駅を利用したデモ参加者たちはこうした光景にあらためて怒りをかきたてられた。
 ここで駅まで陰湿な尾行を続けてきた私服刑事たち20人余りの弾圧に全学連を先頭に猛然たる抗議闘争が闘われ、「防災訓練」一色だった駅前・駅構内が、「戦争動員訓練弾劾」アピールで一気に塗り替えられた。
 今回の訓練では荒川河川敷を主会場に陸上自衛隊が中心となり、堤防復旧訓練や仮設橋設置訓練が行われた。さらに東京都・石原の要請で米軍が初めて「帰宅困難者の輸送」「医療物資の輸送」を名目に横須賀基地(神奈川県)のフリゲート艦と横田基地のヘリを動員し、訓練に加わった。首相官邸では小泉も参加して「総合防災訓練」が行われた。
 この間、東京、首都圏、さらに全国各地で「国民保護計画」の発動として「戦争」「テロ」を想定した訓練が住民を巻き込んで次々と行われている。9・1に続き、自治体労働者を先頭に戦争協力・戦争動員を拒否する闘いを貫こう。

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週刊『前進』(2261号2面3)(2006/09/11)

 デモが石原・都教委包囲

 首都圏ネット “教基法改悪阻止するぞ”

 8月30日午後、「教育基本法改悪を阻止するぞ! 『日の丸・君が代』処分を撤回しろ! 東京オリンピック反対! 教育と福祉に金を回せ!」――東京・新宿にそびえ立つ都庁第2庁舎に向け教育労働者を先頭とする400人余のデモ隊がこぶしを上げた。
(写真 「国会に直接出向いて阻止しよう」と教基法改悪との闘いを訴える大内さん【8月30日 新宿】)
 「石原・中村都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圏ネット」が主催した石原・都教委糾弾8・30包囲デモは、今秋臨時国会へ向けた教育基本法改悪絶対阻止の“第1弾の闘い”となった。包囲ネットの5台の宣伝カーも、都庁から新宿駅周辺で街頭宣伝をした後、都庁第2庁舎前に勢ぞろいし、都庁を包囲していた教育労働者たちとともにデモ隊と合流、「石原知事よ、都教委よ、よく聞け!」とシュプレヒコールに力が入った。甲州街道から新宿駅南口を通り明治通りへ。沿道の女子中学生たちから「先生たち頑張れ! 『日の丸』反対! 一緒に闘うぞ!」と熱い声援が飛び、デモ隊の教育労働者も笑顔で手を振った。
 午後3時半、デモに先立ち新宿・柏木公園で行われた集会では、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人の三宅晶子さんが「あきらめず、こわがらず、奪われつつある憲法、教育基本法の1条1条を奪い返そう」と呼びかけた。
 同日夜、新宿文化センターで交流集会が開かれた。全国連絡会呼びかけ人の大内裕和さんが講演した。「自民党はすでに『国家戦略としての教育改革』を発表し、秋の臨時国会では教基法改悪成立を至上命題としている」と指摘、07年予定の教員免許更新制法案や全国学力テスト実施などを具体的に批判し、「国鉄分割・民営化で国労をつぶし、郵政民営化で全逓を、闘う労働運動を解体し、なんとか憲法を変えようとしてきた。今の教育改革や公務員制度改革の狙いも明らかだ。支配層は階級的利害で攻撃している。こっちも階級的闘いで反撃しなければならない」と訴えた。「毎日毎日を闘い、10月の衆院通過を止め、全国連絡会の11・12集会(日比谷野音)の成功を」と提起した。
 同じく全国連絡会呼びかけ人の小森陽一さんも自民党の改憲案を批判し、「公務員は上を向くな。主権者である国民の方を向け」と力説。「労働組合の闘いが重要。労働者としての階級性そのものが問われている」と結んだ。
 集会では続いて、9月21日に判決を迎える予防訴訟を進める会、7・21再発防止研修の実態を暴露した今春の不起立者、被解雇者の会、不採用裁判原告など、東京の闘う教育労働者が次々と発言に立った。
 今春3度目の不起立で停職3カ月となった根津公子さんは、「各自が工夫して闘い、来年3月にはみんなで不起立しよう。大勢でやればそれだけ力になる」と訴えた。
 さらに「つくる会」教科書や共謀罪、防災訓練との闘いの報告があり、全国各地からの参加者、鉄建公団訴訟を闘う国労闘争団などが発言した。最後は闘争宣言、行動提起、団結ガンバローを行った。8・30包囲行動は今秋国会攻防へ力強く第一歩を踏み出す闘いとなった。

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週刊『前進』(2261号3面3)(2006/09/11)

 黒田寛一の恥多き死

 日本主義・国粋主義への転落

 カクマルの歴史的敗北を刻印

  (一)

 ファシスト・反革命党派、カクマルの頭目である黒田寛一が6月26日に死亡していたことが明らかになった。革命的共産主義運動から脱落・逃亡し、ファシスト反革命としてあらゆる極悪非道をなしてきたカクマル頭目の恥多き死である。黒田の死とともに反革命カクマルも組織的死を刻印された。
 われわれは、三十数年にわたるカクマルとの闘いの勝利の到達点を力強く確認すると同時に、カクマル完全打倒・一掃まで徹底追撃することを宣言する。
 本多延嘉書記長虐殺の75年3・14反革命を頂点とする革共同および闘う労働者に対する数限りない白色テロルのすべての指揮者は黒田である。権力と闘う革命党派を背後から襲撃することを路線化したカクマルは、国際階級闘争に類例のないファシスト反革命である。
 われわれは、71年のカクマルの武装襲撃以来、全党・全軍、闘う人民の死力を尽くした闘いを展開し、カクマル戦闘力を粉砕してきた。この闘いが黒田を追いつめ、ついに打倒したのだ。

   (二)

 黒田を神聖不可侵な唯一者に押し上げ、あがめてきたカクマルは、黒田の死に直面して完全に方向を失い、判断停止状態に陥ってしまった。6月26日に最終的に死んでから、8月10日の朝日新聞朝刊で暴かれるまで、カクマルは超長期の死の沈黙を続けた。
 8月12日に開いた記者会見で、カクマルは「同志黒田のたっての意志とわが党組織の国家権力にたいする防衛の観点から、彼の逝去の事実の公表を今日までひかえてきた」と弁解したという。笑止千万ではないか。黒田は「1カ月半は公表するな」と遺言したのか。「防衛の観点」とは何だ。死亡届は出さなかったのか。火葬はしなかったのか。権力には知られてもいいが、社会的には知られたくないと隠しただけではないか。8月6日のカクマル「国際反戦集会」でも、黒田死亡がカクマル内ですでに知られているのに、なかったかのように振る舞ったのだ! いったい何を恐れ動転しているのか!
 やっと夏休み明けの反革命通信『解放』8月28日付で朝倉、西條ら4幹部が、5n分を使って「追悼文」を書いているが、50年前の黒田がいかにすごかったかを賛美する言葉ばかりで、その末路がどうであったかを誰も見据えられない。「革命党派」としてどのように闘っていくかという路線と展望は皆無である。

   (三)

 わが革共同は、01年の第6回大会で壊滅的にカクマルを批判し、対カクマル戦争の歴史的勝利を確認した。6回大会はカクマル黒田を打倒した歴史的な大会であった。
 そこで黒田・カクマルの歴史的破産の指標として4点を指摘している。
 第一は、カクマルの綱領的破産の決定的深化。91年ソ連スターリン主義の崩壊は同時に黒田・カクマルのエセ「反帝・反スタ」の最後的崩壊だったということ。
 第二は、謀略論路線の大破産。74年以来30年以上にわたって政治と社会の諸現象を「権力の謀略」と説明する観念論的倒錯は、「権力万能」神話の黒田自身が主導したカクマル基本路線であった。最末期の神戸謀略論運動では、住居侵入や盗聴にまで踏み込み、完全に破産した。カクマル自身の謀略党派化とその末路である。
 第三は、JR総連路線の破産である。国鉄分割・民営化の積極推進派として中曽根の先兵になったのは、黒田の決断による。その破産がカクマル労働運動の最大実体である松崎・JR総連との分裂となって現れた。それは黒田の組織現実論の完全破産を示すものだ。
 第四は、「黒田哲学」の反革命的正体の暴露とその破産の宣告である。この中にすべてが集約されている。黒田哲学が裏返しのヘーゲル主義に転落し、唯物論の大地から昇天してしまったものでしかないことを完膚なきまでに暴き出した。
 そして、黒田哲学の行き着いた先が黒田の「最後の大著」『実践と場所』である。そこには日本礼賛と反米国粋主義が満展開していることを壊滅的に批判したのだ。
 カクマル黒田は6回大会に完全に打ちのめされ、一言半句の反論もできず、敗北を自認した。

   (四)

 黒田の遺書『自撰歌集・日本よ!』は、黒田の行き着いた果ての惨状を自白している。なんとファシスト石原の産経新聞連載エッセイと同じタイトルで、石原と国粋主義、愛国主義を競っているのだ。しかも、どれひとつとして歌の水準に達しない、黒田の嘆きと呪いの垂れ流しである。そこにはもはやマルクス主義の要素はかけらもない。黒田はこうして自らの総破産をさらけ出しつつ死んだ。まさに恥多き死を強制したのだ。
 われわれは、ここにカクマルの死とわが革共同の勝利を高らかに宣言し、マルクス主義を復権させ、新指導路線のもと労働運動の戦闘的再生をかちとり、その中で黒田の片割れ=松崎とJR総連を解体・打倒し、プロレタリア世界革命に向かって強大な労働者党を建設することを宣言する。

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週刊『前進』(2261号4面1)(2006/09/11)

 教育基本法改悪阻止 教育労働者先頭に総決起を!

 全国の職場から国会闘争へ

次期首相として登場している安倍晋三が、改憲と教育改革(教育基本法改悪)を公約の柱に掲げ、教基法改悪を秋の臨時国会で成立させようとしている。安倍は教育基本法改悪を、戦争と改憲に突進する突破口と位置づけているのだ。戦後60年以上手をつけられなかった憲法と教育基本法に日帝・支配階級がいよいよ手をつけてきた今、労働者の力で、戦後最大の闘いをたたきつけよう。すべての労働者が今秋国会闘争に立ち上がり、教基法改悪をなんとしても阻止しよう。教育労働者は、日教組本部の屈服を突き破る闘いを職場・単組から巻き起こし、闘いの先頭に立とう。

(写真 「日の丸・君が代」強制に不起立で闘った仲間の「再発防」上研修」に抗議する被処分者ら【7月21日 水道橋】)

 第1章 「教育改革」を叫ぶ安倍

 特攻賛美する国粋主義者 「臨時国会で成立」と公言

 命を超えた価値

 安倍は著書『美しい国へ』で「教育の再生」という章を設け、教育改革の推進を叫び、学力テストの実施、教員免許更新制、学校評価制度、ボランティア活動の義務化などを提唱している。
 中でも重要なのは、公約に掲げた首相直属の「教育改革推進会議」設置である。小泉政権下の経済財政諮問会議の教育版と言うべきものである。強力な権力機関によるトップダウンで、「教育改革」をどしどし実行に移そうというのだ。しかも、改悪教基法に新たに盛り込まれようとしている教育振興基本計画を策定する機関を、教基法が改悪されることを前提にして設置しようとしているのだ。
 そしてもう一点、決定的なのは、安倍が特攻隊の生きざま(死にざま)を全面的に美化していることである。
 安倍は前述の著書で、戦死した特攻隊員の日記の「はかなくも死せりと人の言はば言へ/我が真心の一筋の道」という一節を引用し、「とりわけわたしの胸に迫ってくる」と絶賛している(別掲)。そして「この自由や民主主義をわたしたちの手で守らなければならない」「わたしたちの大切な価値や理想を守ることは、郷土を守ることであり、それはまた、愛しい家族を守ることでもある」などと続けている。ここに記してはいないが、特攻隊を賛美する安倍の一番の本音が“国家と天皇・天皇制こそ、自分のいのちをなげうっても守るべき価値”と押しつけることであるのは間違いない。

 朝鮮侵略を扇動

 安倍晋三は1954年生まれの51歳。70年安保・沖縄闘争や総評労働運動の全盛期を政治家として過ごしてきた60代半ばの小泉や民主党・小沢らとはまったく異なる世代である。
 衆院議員に初当選したのは93年7月。つまり当選と同時に自民党は野党に転落し、細川政権が発足した。90年代以降の十数年は、世界史的に言えば91年にソ連スターリン主義が崩壊し、帝国主義間の争闘戦が本格的に爆発し、世界戦争の時代が始まった時である。そして戦後の日本経済の「右肩上がり」に終止符が打たれて、資本家階級が労働者に大量首切りと賃下げ、終身雇用制の解体の攻撃で襲いかかった過程である。こうした時代に、弱肉強食の論理を平然と振りかざして、労働者を見殺しにしてきた人物なのだ。
 その中でも、安倍がとりわけ突出して立ち回ってきたのは、日本人拉致問題やミサイル問題、日本軍軍隊慰安婦問題や歴史教科書問題などをめぐる、北朝鮮敵視と排外主義政策であった。
 歴史教育をめぐっては、「新しい歴史教科書をつくる会」とまったく同じ価値観の持ち主だ。中学校の歴史教科書から「従軍慰安婦」の記述を削除するためにつくられた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」事務局長を務め、「つくる会」教科書へのアジア人民の批判を「日本の教科書であり、明らかに内政干渉だ」と非難し、抗議行動に公然と敵対を重ねてきた。
 また「神道政治連盟」の中心人物として靖国神社参拝を重ねてきた、根っからの国粋主義者、天皇主義者である。
 安倍が掲げる「教育改革」とは、特攻隊のように「国のために命をささげる」死生観をたたき込み、北朝鮮・中国侵略戦争に突き進んでいくための「教育」への大転換なのだ。断じて許してはならない。
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 「はかなくも死せりと人の言はば言へ/我が真心の一筋の道」(戦死した特攻隊員の日記の一節)
 今日の豊かな日本は、彼らがささげた尊い命のうえに成り立っている。だが、戦後生まれのわたしたちは……国家のためにすすんで身を投じた人たちにたいし、尊崇の念をあらわしてきただろうか。
 たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか。
(安倍晋三著 『美しい国へ』第3章「ナショナリズムとはなにか」)

 第2章 愛国心と能力主義教育

 「1%のエリート」育成と侵略戦争担う兵士づくり

 教育基本法改悪の核心的な狙いは、言うまでもなく、愛国心教育の徹底である。
 政府改悪案では、新設する第2条〈教育の目標〉に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する……態度を養うこと」と盛り込み、すべての教育の中心に愛国心教育を置いた。憲法を改悪して公然と軍隊を保持し、侵略戦争へと突進していくことを前提として、“国のため・天皇のために生き、侵略戦争を進んで担い、命を投げ出す”青少年を育成しようとしているのだ。
 また、改悪案では「義務教育9年」「男女平等」など一切の「平等」は消し去られた。格差の拡大と階層化を前提とした「公」教育に転換しようとしているからだ。
 愛国心教育の徹底と、能力主義教育、差別・選別教育の画然たるエスカレーションは、表裏の関係にある。それは、日帝ブルジョアジーの労働者政策と直結している。

 非正規化に対応

 日帝ブルジョアジーの総本山・日本経団連は、05年1月に出した教育改革提言「これからの教育の方向性に関する提言」において、「教育は国の発展の基盤である」と宣言した。そして戦後教育を「戦後から最近に至るまで、学校教育の現場では……郷土や国を誇りに思う気持ち(国を愛しむ心)を自然に育んでこなかった」と総括し、「こうした状況を放置したままでは……21世紀の国際競争を勝ち抜き、国際社会に貢献していくことはできない」と危機感をあらわにして、教基法の改悪を求めた。
 愛国心教育と能力主義教育は、激化する帝国主義間争闘戦の中で日帝ブルジョアジーが生き残るための労働力を育成するものであり、大量首切りと賃下げ、非正規雇用化攻撃と一体である。教育現場は「外への侵略戦争、内への階級戦争」の最前線なのだ。
 日帝・支配階級はこの十年余、1995年の日経連プロジェクト報告「新時代の『日本的経営』」が打ち出した“常用雇用は1割、残る9割は非正規雇用にたたき落とす”という方針にのっとって、非正規雇用化の攻撃を推し進めてきた。その結果、今や労働者全体の3人に1人、1600万人余りがパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用労働者にたたき落とされた。若者の半分は、生涯賃金が正規雇用の約4分の1というフリーターにしかなれない。しかも支配階級はこの格差をさらに拡大していこうとしている。
 この現実に輪をかけて、教基法改悪によって、画然たる能力主義教育、差別・選別教育に大転換しようとしているのだ。「能力」によってあらかじめ子どもたちを「ほんの一部のエリート層」と「能力なき者」に振り分け、「能力なき者」には9年の義務教育すら保障しないということだ。

 競争原理の導入

 教育現場に資本の論理が続々入り込んでいる。学校選択制、通学区域の自由化などの競争原理の導入や、「規制緩和」による民間の参入(株式会社や公設民営型)などが動き出している。
 しかも今、親の所得が子どもの教育に直結するという傾向に、ますます拍車がかかっている。都市部では私立中学・国立中学に進学する小学生が3分の1を超えている。そのため、大半の小学生が連日の塾通いとテストづけで競争にたたき込まれている。そこでは、財政的に塾通いや中学受験をさせられない労働者家庭の子どもたちはあらかじめ排除されている。
 そして来年4月、40年ぶりに全国一斉学力テストが強行されようとしている。小学6年生と中学3年生が対象だ。県ごと、市区町村ごと、学校ごと、クラスごとにテスト結果が発表されれば、教育労働者も子どもたちも、点数を上げるためだけの競争にますます追い立てられていく。学校選択制とも結びついて学校の序列化を推し進め、学校評価による予算配分などで格差をさらに拡大していくものだ。
 「エリート教育」とは、“1%のための教育を重視する”というだけのものではない。かつて「ゆとり教育」の答申をまとめた三浦朱門(中教審教育課程審議会・元会長、作家)は、「(エリートは)百人に一人でいい。非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」と語った。残る99%の子どもの教育は切り捨てて、「実直な精神」、つまり進んで戦場におもむき侵略戦争を担う愛国心だけをたたき込もうというものなのだ。
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 「いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺伝情報に見合った教育をしていく形になっていきますよ」(江崎玲於奈)
 「労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。百人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」(三浦朱門)
(斎藤貴男著「機会不平等」)

 第3章 職場支配権めぐる攻防

 「教え子を戦場に送るな」 聖職教師にならない決意

 教基法改悪をめぐる最大の攻防は、教育労働者の支配と統制、日教組つぶしである。教基法に「国を愛する態度」を盛り込もうと、能力主義の徹底をうたおうと、子どもたちの教育を実際に担うのは現場の教育労働者である。現場労働者が戦争教育を拒否して団結して闘う限り、戦争教育を貫徹することは絶対にできないからだ。
 そのため、「教育は、不当な支配に服することなく」として国家・教育行政による教育支配を禁じた現行法10条を解体しようとしている。また新設した9条〈教員〉では、「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とした。「崇高な使命」とは、愛国心教育を始め国家が定めた教育目標に忠実に遂行せよ、ということであり、その「使命」をまっとうしない者は排除するということだ。

 新勤評・新職攻撃

 教基法改悪に先駆けて、戦後60年間、教育現場をめぐって争われてきたことがすべて、あらためて攻防になっている。
 1950年代、日教組がストライキで立ちはだかった勤務評定が、人事考課制度―教員評価システムとして新たに登場し、全国で攻防が続いている。1956年から実施された全国一斉学力テストは、日教組の刑事処分を含む激烈な闘争で66年に中止に追い込まれたが、来年4月、40年ぶりに実施されようとしている。1975年に制度化された主任制をめぐっては、「任命主任」を許さず主任手当拠出や職場民主化闘争に取り組み管理職化を阻んできたが、その現実をひっくり返すため、全国で「主幹」「総括教諭」など新職設置の攻撃がかけられている。
 これらはすべて、教育現場を教育労働者が支配するのか国家が支配するのかをめぐる激突だ。
 そして「日の丸・君が代」強制もまた、職場の支配権を組合員から国家へ奪うための攻撃だ。しかし、職務命令と処分という強権によってしか強制できないことは「日の丸・君が代」攻撃の最大の弱点でもある。10条を解体する教基法改悪は、それを突破する攻撃でもあるのだ。

 教員免許更新制

 こうした中で、教基法改悪と並行して大変な攻撃が準備されている。教員免許更新制の導入の動きである。08年度からの導入をめざして、来年の通常国会における法改悪が策動されている。
 免許更新制とは、国鉄分割・民営化において国鉄労働者にかけられた攻撃、郵政民営化によって全逓労働者にかけられようとしている攻撃とまったく同じく、「いったん全員解雇し、選別して再雇用する」ということだ。しかもそれが1回だけでなく、10年ごとにやってくる。国の教育政策に従わない者から教員免許を剥奪(はくだつ)し、闘う教育労働者を現場から根絶やしにしようというのだ。

 日教組解体狙う

 敵の側は、民営化や免許更新制の狙いが労働組合つぶしであると公言している。国鉄分割・民営化当時の首相・中曽根康弘は「国鉄民営化は、国労の崩壊、総評の崩壊、社会党の崩壊のため」と言い、森喜朗は「(郵政民営化も)全逓をつぶし、民主党を支える連合の左派中心勢力である日教組、自治労をつぶし、民主党を大きく変化させるためのもの」と言い放っている(『文芸春秋』05年12月号)。
 さらに中川自民党政調会長は8月19日、「次期政権の最大の抵抗勢力は官公労だ」と宣言した。
 労組全体の組織率が20%を切り、多くの労組が御用組合化しているのに、なぜ彼らはここまで労組つぶしに躍起になるのか? 労組のもとに労働者が団結した時、ブルジョアジーの支配を崩壊させる力を持つことを、敵こそが最も自覚しているからだ。
 教育現場にはいまだに30万人の日教組組合員が存在し、全体の50%はなんらかの組合に組織されている。日教組本部が文部科学省との「パートナー路線」に変質しているとは言っても、現場労働者は、日教組の存在意義は〈平和と民主主義教育〉だと誇りを持って職場を守っている。日帝ブルジョアジーはいまだに教育現場を完全に制圧することができていないし、この現場労働者の怒りに火がつき、反乱がまき起こることを何よりも恐れているのだ。
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教育基本法

第六条(学校教育) 2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
 2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

政府改悪案

第九条(教員) 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
第十六条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

 第4章 全面屈服の日教組本部

 政府案より悪い民主案を批判せず闘いの抑圧者に

 日教組本部が教基法改悪に対して掲げているスローガンは、「改悪阻止」ではなく「教育基本法を守り、生かす運動」である。そのもとで実際に行っているのは「衆参両院に教育基本法調査会を設置すること」を求める請願署名である。組合員から「改憲勢力が3分の2を占める翼賛国会に対して、改悪を前提にした調査会設置を求めるのはおかしい」「改悪反対の署名を集めるべき」と批判されても、「この署名なら連合も取り組んでくれる。この署名なら民主党も紹介議員になってくれる」と開き直るありさまだ。
 さらに重大なのは、政府改悪案以上に「愛国心教育」を露骨に記した民主党改悪案の取りまとめに、日教組の森越委員長が全面協力したことである。5月に民主党改悪案をめぐって日教組の組織内議員である日政連議員約10人と森越委員長が対応を協議した際、森越は「(大事なのは)政府案成立阻止だ」と言って民主党案に同意した。
 民主党はすでに昨年4月には愛国心を前文に盛り込んだ党草案を発表している。日教組本部はとっくの昔に、愛国心教育に合意していたのだ。日教組本部が進める「調査会設置要求」運動も、その実態は新教育基本法制定運動にほかならない。
 今春通常国会をめぐっては、現場の怒りに突き上げられ、5月に全国から代表派遣で約10日間の座り込みを設定したが、「継続審議」が報道されると、第2次座り込み行動は中止した。国会闘争を継続すれば、現場の怒りがますます高まり、「政府案も民主党案も廃案に」という闘いが大きく燃え上がることに恐れをなしたのだ。

 平和基本法方針

 教基法改悪に対する屈服は、憲法改悪に対する全面屈服と一体のものである。日教組の森越委員長はすでに昨年春、雑誌で新右翼・一水会顧問の鈴木邦男との対談に応じ、「憲法についても、不磨の大典ではないと思っています。未来永劫(えいごう)変えてはいけない、というものではない」(『論座』6月号)と述べている。
 さらに今年2月に日教組憲法論議対策委員会が発表した「憲法論議に関する日教組の基本的考え方(中間報告その2)」では、「平和基本法」制定方針を打ち出した。その核心は、自衛権とその発動としての戦争を容認し、自衛隊を容認する点にある。日教組本部は今や、「改憲阻止」の旗を自ら引き降ろして、改憲推進勢力への道を突き進もうとしているのである。

 職場闘争の放棄

 日教組本部のこの現実は、ここ十年余、職場闘争の放棄を公言し、とりわけ「日の丸・君が代」闘争を放棄してきたことと連なっている。
 日教組は1995年に職場闘争5項目(「日の丸・君が代」強制反対、主任制反対、官制研修反対、教育課程の自主編成、職員会議の最高議決機関化)を棚上げした。それ以来10年間、現場組合員は大変な苦闘を強いられてきたが、その最たるものが「日の丸・君が代」闘争であった。
 組合費は払っているにもかかわらず、組合員が不利益処分を受けても賃金回復はされなくなった。教組が掲げる「『日の丸・君が代』強制反対」の中身は、いつの間にか「個人の思想・信条の自由、内心の自由を守れ」へとすり替えられた。戦争教育に反対する労働者としての階級的闘いではなく、「個人の内心の自由」=人権闘争に限定されたのだ。そして、団結を守りぬく組織的闘争から個人の組合員の人権闘争へ、闘いを分断する口実となっていった。
 表向きは「(「君が代」斉唱時の起立を命ずる)職務命令を校長に出させない取り組み」を掲げるが、その実は「職務命令が出されたら従う」という全面屈服方針。それでも組合員が「職務命令には従えない」と不起立して処分を受けると、「組合の方針でない」と言い、「組合の統一と団結に反する」として、闘う者を排除する口実にもされた。不起立した組合員を、教育委員会よりも先に組合役員が呼び出して、「なぜ座ったんだ」と問いただすというケースまである。
 組合執行部は組合員には「職務命令には従え」と言いつつ、「子どもの内心の自由を守る取り組みを」と言うが、そんな主張は現実にはまったく無力だ。東京では生徒の不起立を理由とした「厳重注意」に続いて、今年3月には生徒指導の新たな通達まで出された。教育労働者が自分自身への強制を拒否して体を張って行動することこそ、子どもの内心の自由をも守るのだ。
 しかし、日教組本部や教組既成指導部が現場組合員の闘いを「組合」の名で鎮圧しようとすればするほど、現場組合員の怒りに火をつけ、既成指導部の屈服を突き破る決起が次々とまき起こっている。この力こそ、階級的労働運動を現場からつくり出す展望をすべての労働者に指し示し、教育労働運動だけでなく、すべての労働者の闘いの展望を切り開いている。
 教育労働者の中に積もりに積もった怒りに火をつけることができれば、腐敗した既成指導部を吹き飛ばし、教基法改悪阻止闘争を爆発させることは絶対に可能だ。
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戦死せる教え児よ 竹本源治

    逝(ゆ)きて還らぬ教え児よ
   私の手は血まみれだ!
    君を縊(くび)ったその綱の
    端を私も持っていた
 しかも人の子の師の名において
       嗚呼(ああ)!
「お互いにだまされていた」の言訳が
     なんでできよう
  慚愧(ざんき)、悔恨、懺悔(ざんげ)を重ねても
   それが何の償いになろう
   逝(い)った君はもう還らない
  今ぞ私は汚濁の手をすすぎ
  涙をはらって君の墓標に誓う
   「繰り返さぬぞ絶対に!」

1952年、高知教組の機関誌「るねさんす」第44号に発表された。同詩の額は、日教組本部のある日本教育会館3階ホールのロビー壁面に今も掲示されている。

 第5章 「不起立」が決定的な力

 「日の丸・君が代」闘争勢力先頭に闘う日教組再生を

 日教組本部の屈服を突き破って国会闘争を巻き起こすために、何よりも「日の丸・君が代」闘争勢力が先頭に立とう。
 「日の丸・君が代」強制をめぐる攻防は、99年の「国旗・国歌法」制定から7年たつ今も、まったく決着はついていない。それどころか、ますます強固に、広がりをもって発展している。
 1985年に文部省が「日の丸・君が代」指導徹底通知を出して以降、処分を受けた教育労働者は1000人をはるかに超える。そして03年「10・23都教委通達」以降、かつてない厳しい処分と激突してきた東京の教育労働者は、今春、3年目の不起立闘争を断固としてたたきつけた。
 さらに「東京を孤立させるな!」と全国各地の教育労働者が陸続と立ち上がり、北海道から沖縄まで全国で数万人の教育労働者が不起立闘争を闘いぬいている。この闘いは、「教え子を再び戦場に送るな!」を掲げる教育労働者にとって、けっして譲れない闘いなのだ。
 不起立闘争は、日教組の屈服方針ゆえ後退を強いられてきた教育労働運動において、攻守ところを変える決定的な力を持った。「処分で脅せば従うだろう」などと教育労働者を見くびっていた石原と都教委の思惑を、完全に吹き飛ばしたのだ。
 「日の丸・君が代」闘争は、教育の国家統制を許さない、教基法改悪阻止の闘いそのものである。それは「日の丸・君が代」闘争が職場からの戦争協力拒否闘争だからだ。陸・海・空・港湾労組20団体が呼びかける、有事法を「完成させない、発動させない、従わない」闘争そのものである。教基法の条文を書き換え愛国心を盛り込もうとも、全国で30万日教組組合員が処分を恐れず「日の丸・君が代」不起立闘争を闘うならば、まったく無力となるのだ。

 民主案も廃案へ

 しかも、「日の丸・君が代」闘争は、階級的労働運動の再生へ向けて、労働運動の地図を塗り替える闘いである。東京の被処分者は、組合大会で処分撤回闘争を組合の課題に押し上げ、役員選挙で執行部に被処分者を送り込み、闘う日教組再生に向けた拠点をつくり出してきた。首をも賭けて闘い続ける被処分者がその先頭に立ち、闘う教育労働者を鼓舞している。教基法闘争をめぐっても、日教組本部の足元から、本部の完全屈服を突き破る「政府案も民主党案も廃案へ」という闘いがまき起こっている。この力こそ、日教組を現場組合員の手に取り戻し、闘う日教組を再生させ、政府・支配階級の日教組つぶしをうち破る力である。
 また、「日の丸・君が代」闘争が爆発したことで、05年夏の日教組大会においても改憲方針を正面からうち出せなくさせた。この闘いが自治労組合員の闘いと相まって、05年10月の連合大会では改憲推進方針を提案できないという力関係を生み出したのだ。
 「日の丸・君が代」を闘う教育労働者の潮流が組合員を牽引(けんいん)する指導部になることこそ、日教組を再生していく具体的道筋である。その闘いは、今年3年目となった8・6ヒロシマ教育労働者全国交流集会の大成功によって、ますます着実に広がっている。
 9月22日に開会されようとしている臨時国会の会期は2カ月余。各単組執行部を突き上げ、日教組本部を突き上げ、全国闘争指令を出させよう。
 さらに、日教組本部の指令がなくても、各単組から、各職場から、手弁当で仲間とともに続々駆けつけよう。

 職場闘争がカギ

 何よりも、職場から闘いを巻き起こそう。国会闘争をめぐっても、一切の土台は職場における闘いである。国会闘争に駆けつけるためにも、学校現場での極限的な多忙化との闘いが欠かせない。
 動労千葉の労働運動も、一切の土台は職場闘争である。資本の合理化攻撃と闘わなければ、自分たち労働者が殺される――この現実に怒りを燃やして、職場において資本・当局と徹底的に闘うことが出発点だ。
 それは、極限的多忙化によって現職死亡や病休、早期退職へと追いやられている教育労働者も、まったく同じだ。教基法を改悪して「教え子を戦場に送る」帝国主義戦争の先兵になることを強制するものと、教育労働者を極限的な労働強化によって死にいたらしめるものの根っこは一つだ。
 教育を戦争の道具とし、教育労働者をその手先にする国家こそおかしいのだ。そんな国家は打ち倒して、労働者の社会をつくろう。帝国主義体制と真っ向から対決し、国家体制を揺るがす闘いをやろう。
 自己保身と体制の維持を図るだけの既成指導部を吹き飛ばして、現場から、教育労働者の未来を開くため、教育労働者の解放をかちとるために闘おう。
 今秋、改悪案成立をなんとしても阻もう。ただちに国会闘争へ向けて闘おう!

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週刊『前進』(2261号7面1)(2006/09/11)

  「改憲」が「政権公約」は戦後初

 派兵「恒久法」で掃討作戦も

 日本版NSC 大統領型権力づくり

図 「安倍政権」下で準備されている攻撃 安倍官房長官はこの間の講演で、憲法改悪と並んで海外派兵「恒久法」制定、武器使用基準の全面的緩和、集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更などについて相次いで発言している。その内容は、小泉政権下で激しく進められてきた自衛隊の侵略軍隊化をもはるかに超える恐るべきものだ。とりわけ自衛隊の海外での活動に、掃討作戦も可能とする「治安維持活動」を加えると言っていることはきわめて重大だ。安倍は、イラクで米英軍が展開している殺し・殺される戦闘に自衛隊を突入させようとしている。9条改憲を待たずどんどん侵略戦争をエスカレートさせ、また、それをもテコにして改憲を強行する情勢をこじ開けようとしているのだ。
 「憲法改正と教育改革」を政権公約の柱に掲げる「安倍政権」下で、戦争への具体的・全面的な攻撃が準備されている。その一つひとつが歴史を画する重大攻撃だ。
 @日本版NSC(国家安全保障会議)の創設
 安倍は22日の講演で、日本版NSC(国家安全保障会議)を創設する構想を明らかにした。安全保障担当の首相補佐官を置き、安全保障会議の専従スタッフを大幅拡充して情報収集・分析や政策立案の機能を持つ新組織にする。安倍は日本版NSCの創設で、絶大な権限が集中する大統領型の統治形態への転換を狙うとともに、首相官邸と米ホワイトハウスとを直結して定期的な戦略対話を行い、日米同盟を飛躍的に強化することを狙っている。大変な攻撃だ。
 A海外派兵「恒久法」の制定
 自民党防衛政策検討小委員会(石破茂委員長)が8月30日、自衛隊の海外派兵をいつでも可能にする「恒久法」の原案をまとめた。その内容はきわめて重大だ。原案は、名称を「国際平和協力法」とし、国連決議や国際機関の要請がなくても多国籍軍に参加できるよう派兵要件を緩和し、紛争当事国からの要請がない場合の派兵も認める。そして海外での「治安維持活動(安全確保活動)」「警護」「船舶検査」の3活動を新たに追加し、いずれの場合にも武器使用を認める。
 これは、無制限・無制約の侵略派兵参戦に道を開く超重大攻撃だ。とりわけ「治安維持活動」は、家屋への立ち入りや住民の一時拘束も認め、相手が武器を持っている「疑い」があり暴行・脅迫の「高い蓋然(がいぜん)性」があると判断すれば殺傷しても構わないという内容になっている。米軍がイラクでやっている「テロ掃討作戦」を自衛隊自身がやることを可能とするものだ。
 安倍は25日の講演で、「恒久法を作ることで機動的な対応も可能となる」とし、同小委の案を軸に政府として法案化にむけた調整に入る考えを示した。自民党は、この法案を07年通常国会に提出しようとしている。 
 B解釈改憲で集団的自衛権行使へ
 安倍はこの間の講演で「一緒に活動する外国軍隊が攻撃されたとき、黙って見ていなければいけないのか」と述べ、憲法解釈の見直しで集団的自衛権の行使ができるようにする方針を示した。
 安倍は、明白な集団的自衛権の行使にあたる戦闘行為を、個々のケースごとに「個別的自衛権の発動」や「正当防衛」と強弁して突破しようとしている。例えば、「他国の軍隊と自衛隊が共同で活動中に他国軍が攻撃を受けた」時、自衛隊が反撃することは集団的自衛権の行使となるが、これを「正当防衛による武器使用」と認定する。あるいは、「米軍艦船と海上自衛隊が共同行動し、米艦船がミサイルなどで攻撃を受け、1`離れた海自艦船も射程に入っている」というケースでは、海自の敵国への反撃は集団的自衛権の行使そのものだが、自衛隊艦船も射程に入っているのだから「個別的自衛権の発動」として認められないかなどとしている。
 このようにこじつけていけば、あらゆるケースが該当することになる。事実上の集団的自衛権の解禁そのものだ。
 その上で安倍は、現行憲法9条を破棄して集団的自衛権を全面解禁することを狙っている。

 自衛隊を殺し・殺される戦闘に

  日本版NSC創設、海外派兵「恒久法」制定、集団的自衛権の解禁は、三つにして一つのことを指している。イラクで米英軍がやっているように、自衛隊と米軍が最前線で一緒になって戦闘に突入することが想定されているのだ。
 小泉政権の5年間で自衛隊の侵略軍隊への変貌(へんぼう)が激しく進められてきた。しかし安倍がやろうとしている攻撃は、小泉政権下の動きすらエピソードにしてしまうような恐るべきものだ。米英軍が強行しているイラク侵略戦争、イスラエルがレバノンやパレスチナで強行している無差別虐殺を日帝・自衛隊がやるのだ。その断絶性・飛躍性を徹底的にはっきりさせよう。
 しかし、小泉と比べても安倍の危機性・脆弱(ぜいじゃく)性は明らかだ。日帝の危機と矛盾は、これからいよいよ全面的に爆発する。総力を結集して、安倍の登場と対決し打倒しよう。
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以下、上の図(「安倍政権」下で準備されている攻撃)のテキスト版

「安倍政権」下で準備されている攻撃

@日本版NSC(国家安全保障会議)の創設
A世界中へいつでも侵略派兵できる海外派兵「恒久法」の制定
 →07年通常国会での提出を狙う
B集団的自衛権の解禁
 →解釈改憲での突破から明文改憲での全面的解禁へ
C防衛庁の「省」格上げと海外派兵の本格的任務化
 →6月に国会提出。臨時国会での成立を狙う
D敵基地攻撃能力の保有
 →自民党国防部会での具体的検討に着手
E核武装
 →安倍は「核兵器使用は違憲ではない」(02年5月、早稲田大学での講演)と主張する核武装論者

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週刊『前進』(2261号7面2)(2006/09/11)

 06年防衛白書 侵略戦争が“本来任務”に

 日米枢軸強化で破滅の道

 8月1日に閣議で了承された06年版防衛白書は、こうした「安倍政権」下での戦争政策の歴史的エスカレーションを準備するものだ。白書の内容は、完全に改憲を先取りしており、名実ともに本格的な侵略軍隊へと自衛隊を作り変える宣言となっている。

 自衛隊を侵略軍に大改造

 06防衛白書の第一の特徴は、防衛庁の「省」格上げと海外派兵の本来任務化を前面に押し出していることだ。額賀防衛庁長官は巻頭言で「防衛庁は、真の政策官庁として生まれ変わろうとしています」と述べ、高揚感すらみなぎらせている。
(写真 日米共同訓練で戦闘訓練をする陸上自衛隊員【2月22日 岡山県日本原演習場)=米海兵隊ホームページより)
 06防衛白書は、まず新防衛大綱について詳述した上で、「新たな役割を果たしうる組織へ」と題して「省」格上げと本来任務化について大きなスペースで解説している。
 日帝は戦後、「必要最小限の基盤的な防衛力を保有し、侵略を未然に防止する」という「基盤的防衛力構想」という考え方に立ってきた。しかし、04年策定の新防衛大綱は、91年「9・11」後の国際情勢に対応するために、安全保障の二つの目標として、「@わが国に直接脅威が及ぶことを防止・排除すること」(日本防衛)と「A国際安全保障環境を改善しわが国に脅威が及ばないようにすること」を掲げた。
 新大綱で「国際的な安全保障環境の改善」を日本防衛と並ぶ”安全保障の2大目標”に据えたことは、「専守防衛」という戦後的な安保防衛政策から最後的に決別する大転換であった。日帝は、この転換を「抑止力重視から対処能力重視へ」とか「存在する自衛隊から機能する自衛隊へ」(石破元防衛庁長官)と表現してきた。
 要するに、「国際的な安全保障環境を改善する」と称してどんどん海外派兵し、他国に軍事介入することが「日本防衛」になると言っているのだ。これは”脅威が現実となる前に先制攻撃する”というブッシュの「先制攻撃戦略」とまったく同じ考え方だ。
 06防衛白書は、この「新たな任務」を実行しうる組織へ防衛庁を反動的に飛躍させるために、「省」格上げと海外派兵の本来任務化がぜひとも必要だとしている。日帝は本格的な帝国主義軍隊としての「建軍」とも言える大転換をやろうとしているのだ。
 こうした中で、必然的に浮上してきているのが「敵基地攻撃能力の保有」論なのだ。7月5日の北朝鮮のミサイル発射をきっかけにして、安倍官房長官、額賀防衛庁長官らが「敵基地攻撃能力の保有を検討すべき」と相次いで発言した。これを受けて、自民党防衛政策検討小委員会が8月4日の会合で「敵国」のミサイル発射基地などへの攻撃能力保有に関して具体的な議論に着手した。きわめて重大な踏み込みだ。
 政府は、先の通常国会に防衛庁の「省」格上げ法案を提出し、継続審議に持ち込み、秋の臨時国会での成立を狙っている。法案は、@防衛庁を「防衛省」に格上げする防衛庁設置法の改定とA自衛隊の海外での活動を付随的任務から本来任務に格上げする自衛隊法の改定を一括して進めるものだ。成立を絶対に阻止しなければならない。

 北朝鮮・中国の「脅威」扇動

 06防衛白書の第二の特徴は、「日米安保体制の強化」(4章)を初めて独立した章立てとして設け、米軍再編合意を「速やかに、かつ徹底して実施する」ことを強く確認していることだ。
 白書は4章の冒頭で、「同盟に基づく日米間の緊密な協力関係」は「世界における多くの安全保障上の困難や課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしている」と述べ、6月29日の日米首脳会談での合意文書「新世紀の日米同盟」の意義について詳しく解説している。日帝は、米帝ブッシュ政権の世界戦争戦略にとことん食らいつき、世界戦争にむけた日米反動枢軸を形成しようとしている。イラク・中東侵略戦争を継続・激化させるとともに、地球的規模で米軍と自衛隊がどんどん侵略戦争を発動していくと言っているのだ。
 さらに白書は、米軍再編に関する日米合意の内容と具体的再編計画について32nにもわたって詳述、米陸軍第1軍団の座間移転、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への新基地建設、神奈川県横須賀基地への原子力空母移駐も含めて全面的に記述し、どんな反対があっても強行する姿勢をあらわにしている。
 自衛隊は、今年3月から陸海空3軍の統合運用体制に移行している。司令部を頂点とする米軍と自衛隊の「融合・一体化」をとことん進め、沖縄と神奈川―日本全土を最前線の出撃基地・兵站(へいたん)基地にすると言っているのだ。
 重要なことは、こうした日米枢軸の形成が、北朝鮮と中国に対する侵略戦争計画の具体化としてリアルに進められていることだ。白書は、中国の軍事動向(11n)、北朝鮮動向(7n)に多くの紙幅を割いて分析し、「中国の脅威」「北朝鮮の脅威」を国家的に扇動している。そして、ミサイル防衛(MD)の強化、ゲリラ・特殊部隊への対応、島嶼(とうしょ)部侵攻への対処、南西海域での中国・北朝鮮に対する警戒強化を強く押し出している。日帝は、対中国・対北朝鮮の侵略戦争においてはむしろアメリカに先んじて軍事的対抗の前線に出ることすら狙っている。
 とりわけ、MD体制の強化が突出している。防衛庁は07年度予算の概算要求で、各省庁が予算縮減を求められる中、今年度当初予算比1・5%増の4兆8636億円という強気の要求を出している。とりわけ、ミサイル防衛関連予算は56%増と際立っている。
 そのほか、概算要求では在日米軍再編関連でキャンプ座間への陸自中央即応集団司令部の移設(調査費)や、横田基地への空自航空総隊司令部の移設(施設整備費)などに計159億円を計上している。

 臨時国会闘争から11月へ!

 06防衛白書と「安倍政権」の登場は、この間進められてきた「新世紀の日米同盟」宣言や米軍再編、米軍と自衛隊の一体化が、いったいどこに向かうものなのかを鮮明に突き出している。米帝がイラクで強行している一大侵略戦争、無差別虐殺戦争の最前線に自衛隊が躍り出るということだ。断じて許すことはできない。「防衛省」法案、海外派兵「恒久法」を絶対に阻止しよう。臨時国会闘争に立ち、11月総決起へ進撃しよう。

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週刊『前進』(2261号7面3)(2006/09/11)

 名護新基地 “戦時使用”と海兵隊司令官

 建設計画策定−着工阻止を

 米軍再編を「速やかに、かつ徹底して実施する」とした06年版防衛白書はあらためて沖縄米軍基地の半永久的な固定化を宣言するものでもある。
 白書は「沖縄は、東アジアの各地域に対して、米本土やハワイなどからよりも距離的に近い位置にある」ため、東アジアの各地域への迅速な展開が可能であるとし、在日米軍の75%が集中する沖縄の現実を真正面から正当化している。
 また、普天間代替施設の移設先についても、在沖米海兵隊が実際の運用において相互に連携しあう必要があるから「沖縄県内に設ける必要があるとの認識に至り、その上で検討を行った」と記述している。県外移設や国外移設の選択肢は最初から除外していたと平然と述べているのだ。白書は「普天間飛行場は沖縄県外、日本国外には移転できないのですか?」と題するコラム欄をわざわざ設け、そこでも「(米海兵隊は)1つのまとまりとして迅速に展開し、様々な事態に柔軟に対応しなければなりません」と県外移設の要求を踏みにじっている。怒りなしには読めない代物だ。
(写真 キャンプ・シュワブ兵舎地区【名護市辺野古】)

 “第2ラウンド”の攻防が本格化

 11月沖縄県知事選の情勢をにらみながら、名護新基地をめぐる”第2ラウンド”の激突が本格化している。
 8月23日、在沖米海兵隊基地司令官のジョセフ・メデーィナ准将が、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に建設が狙われている新基地の滑走路が1800bである理由について「有事の際、C130(輸送機)やMV22オスプレイ(垂直離着陸機)が使用するために必要な長さだ」と説明した。
 今年5月に公表された米軍再編のロードマップは、名護新基地から「戦闘機を運用する計画を有していない」と明記していた。またもや日本政府の許しがたいペテンが明らかになったのだ。これについて防衛庁の守屋事務次官は28日、「日本防衛のために米軍が必要なもの(航空機)がやってきたときに『小型の航空機しか認めない』という話にはならない」と述べ居直っている。
 メディーナ准将はまた、MV22オスプレイを2014年〜16年の間に普天間飛行場所属ヘリの後継機として配備する計画を明らかにした。オスプレイは、現在の主力機に比べて2倍の速度、5倍の航続距離、3倍の積載能力を持ち、格段に戦闘能力が高い。また、従来機とは比較にならない騒音をまき散らし、試験段階から死亡事故を繰り返している欠陥機だ。名護新基地が地元にとってはとんでもなく危険でうるさい基地になり、何よりも朝鮮・中国人民虐殺の最前線の侵略出撃基地になることはいよいよ明らかなのだ。

 建設予定地の兵舎移設に着手

 政府はこの間、新基地建設予定地(陸上部分)にある海兵隊兵舎移設に関連して、年内にも基地内の文化財調査を行う意向を明らかにした。10月までに日米間で代替施設の建設計画を決定、文化財調査を経て、来年1月にも兵舎移転工事を始めようとしている。
 また、自民党の中川秀直政調会長は8月24日、普天間飛行場に関する沖縄県及び北部市町村との協議機関設置の条件として「政府は基地問題の解決と(北部振興策を)リンクさせたい」と発言した。露骨な兵糧攻めで沖縄を圧殺しようとしているのだ。
 新基地建設をめぐる攻防が激化し、その中で9月沖縄地方選―11月県知事選が行われる。極反動「安倍政権」下での新たな激突に絶対に勝利しよう。沖縄―本土を貫く闘いで米軍再編を粉砕し、名護新基地建設を阻止しよう!

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