ZENSHIN 2006/06/26(No2251 p06)

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週刊『前進』(2251号1面1)(2006/06/26)

 「検問はやめろ!」の大コール

 法大生1000人が当局追及

  織田全学連委員長ら4人逮捕許すな 国会へデモで進撃 

退学処分と逮捕に怒りが爆発 文学部生3人への退学処分、学生4人の不当逮捕に怒り、全学生への学生証チェックを強行した張本人=安東学生部長(中央ネクタイ)を包囲し追及する法大生(6月15日)

 6月15日昼休み、法政大学キャンパスは再び人、人、人で埋め尽くされた。「退学処分撤回」「教基法改悪粉砕・改憲阻止」を掲げた6・15法大集会に1000人を超える学生が集まった。集会の爆発を恐れた法大当局は、前夜から泊まり込みで構内を封鎖し、正門での学生証チェック体制を敷いて集会圧殺を図った。警察権力は、早朝から抗議した学生4人を不当逮捕した。しかし、5月26日の集会をはるかに上回る学生が結集し、警察と大学当局の集会圧殺策動は完全に打ち破られた。29人逮捕の3・14弾圧以来の倒すか倒されるかのやり合いに勝ち抜き、壮大な改憲阻止決戦の号砲がうち鳴らされたのだ。(関連記事3面
 開構時間の午前8時、法政大学は異様な緊張に包まれた。正門以外の入り口はすべて封鎖、正門には「検問所」のテントが建てられ全員に学生証チェックが強行されている。法大前の道路は200bにわたって数十台の警察車両が埋めつくし公安刑事どもが弾圧の機会をうかがっている。まさに戒厳令だ。
 5・26集会の爆発に恐怖した法大当局は、前夜から泊まり込み体制をとって大学を封鎖し、警視庁公安部と連絡を取り合いながら絶対に集会をやらせない体制で臨んできたのだ。
 登校する学生に対して、ビラまきが始まる。
 9時20分。学生には検問をしながら、警視庁の公安刑事どもはフリーパスで学内に入れていることを学生が摘発した。これに対して抗議を始めた被処分者の法大生や織田陽介全学連委員長を始めとする学生に対し、警視庁公安一課が襲いかかり、「暴力行為」「建造物侵入」容疑をデッチあげて4人を不当逮捕した。暴行したのは法大当局の方だ。4人逮捕は、法大当局と警視庁が仕組んだ第2のデッチあげ大弾圧だ。
 10時過ぎには大量の警察部隊が正門前に殺到し、門前で抗議していた学生に「市ケ谷駅まで退去しろ」と通告。駅前の公園まで暴力的に排除し、周りを取り囲んで拘束までしてきた。集会破壊のために法大当局が警察を呼んだのだ。
 11時。警察の包囲をうち破って、法大正門前に再結集した学生は、全国から駆けつけた学生と合流。国会前でビラを受けとった労働者もたくさん駆けつけている。誰もが「この大学は本当にむちゃくちゃだ」と、口々に法大当局の異常きわまりない姿に怒りをあらわにしている。集会発言と監視弁護にやってきた山本志都弁護士(立川反戦ビラ弾圧弁護人)、法大OBのコメディアン松元ヒロさんも職員によって入構を阻止された。山本弁護士は「弾圧監視に来た弁護士まで排除するとはあまりにおかしい」と当局を弾劾した。
 12時半の授業終了とともに、法大生が続々とキャンパス中央に集まってきた。校舎の窓という窓、屋上からも学生が鈴なりになって集会に注目している。
 集会中、検問体制に抗議し、学生証提示を拒否した大学院生に対して、法大当局は羽交い締めにし、暴力的に学外に追い出そうとした。この暴挙に、キャンパスに集まった学生の怒りが爆発した。1000人の学生が、安東学生部長などを包囲し弾劾の嵐を浴びせる。キャンパス全体から「通せ、通せ!」の大コールがまき起こった。学生証提示を拒否した大学院生はマイクをとり、「法大はこんな大学じゃなかったんですよ。なんだ、この警備員の数は!」と激しく当局を弾劾した。
 退学処分を受けた学生がマイクをとった。
 「私を退学処分にして大学から排除したら、次は学生証チェックの検問ですよ。しかも今朝、検問に抗議しただけで4人も学生が逮捕された。こんなことを許したらサークルも何もかもできなくなってしまう。
 そこに立っている教職員のみなさん! 法大は、もっと自由な大学じゃなかったんですか。こんな法大でいいんですか。なんで学生証チェックなんかやってるんだ! あんたら教授失格なんだよ! 言論を一方的に封じておいて抗議したら逮捕、退学。こんな大学は一回ぶっ壊した方がいいんだ。大学を変えられるのは学生の力だけです。退学処分の再審査も却下されたけれど、私は毎日ここにきて徹底的にやります。学生が主人公の大学に法大をつくり変えよう!」。この熱いアピールに、キャンパスの学生が一つになった。
 集会の最後には松元ヒロさん扮する「小泉首相」が登場。「学生のみなさん、国会で会いましょう!」と国会デモへの参加を呼びかけた。

 国会へデモ

 午後1時半、集会を終えた学生300人は、「不当逮捕弾劾」「退学処分撤回」「教基法改悪・共謀罪・改憲反対」を掲げて国会デモに出発した。沿道の注目も圧倒的だ。
 この日は、60年安保闘争を闘った人びとがつくる「9条改憲阻止の会」が「6・15」を期して国会請願デモを計画していた。デモ解散地の日比谷公園に到着したデモ隊は、このデモに合流。新旧の「全学連」が一つになり国会前まで元気にデモをやり抜いた。
 国会前の総括集会では、法大など首都圏5大学、東北大、山形大、弘前大、富山大、京都大、広島大の学生が、それぞれ勝利感あふれる発言をした。法大の被処分学生は「今日は、たくさんの法大生が決起してくれたし、全国からも来てくれて、本当に素晴らしい一日だった。今の大学を変えるためには、学生が立ち上がるしかない」と訴えた。
 闘う法大生は、文学部生3人の退学処分撤回、法学部生2人への処分策動粉砕へさらに闘いを強め、断固たる裁判闘争にうって出る。不当にも逮捕された4人の学生の即時奪還を! 警視庁と法大当局に、猛烈な抗議を! 法大救援会にカンパを集中しよう!

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週刊『前進』(2251号1面2)(2006/06/26)

 国会闘争の地平から夏秋へ

 9条改憲絶対阻止を訴え 労働者階級の全力決起を

 第1章 教基法改悪と共謀罪攻撃を押し返したぞ

 通常国会は6月18日に閉幕した。
 この国会闘争において、とりわけ共謀罪と教基法改悪に反対する闘いが高揚し、採決を阻んで押し返したことはきわめて大きな意義がある。共謀罪に対しては、ジャーナリストや国会議員に働きかけを強め、大きな反対世論を形成するまで闘いが粘り強く継続された。そして度重なる強行採決のたくらみを阻み、今回も成立を阻止した。「現代の治安維持法」に対する労働者人民の怒りが壮大な革命的闘いに発展することに小泉ら支配階級は恐怖し、強行を断念したのだ。
 さらに、教育基本法改悪に対しては、日教組の国会前座り込み闘争の割り当て動員を超えて、北海道を始め全国から闘う教育労働者が結集し、闘った。日教組・森越委員長は、超反動的な民主党案を支持し、国会闘争も途中で放棄したが、こうした日教組中央の屈服をものりこえる力が確実に存在しているのだ。
 一方、今国会で小泉政権は、許しがたいことに行政改革推進法(5月26日成立)や医療制度改悪関連法(6月14日成立)、改悪入管法(5月17日成立)などの成立を強行した。
 さらに、自民、公明、民主の3党は国会最終盤になって、「北朝鮮人権法」なる排外主義立法をたくらみ、質疑もなしに採決、成立させた。委員長提案による国会提出から、参議院での可決・成立までわずか3日。これは北朝鮮の内政に踏み込んで制裁を加え、米帝と共同して北朝鮮侵略戦争を強行するための法律だ。断じて許せない!
 5〜6月国会闘争の地平を踏まえ、今こそ日本の労働者人民は改憲阻止闘争の本格的な爆発に向かって闘いを巻き起こす時だ。改憲と戦争への日帝権力・支配階級の反革命攻撃の嵐は、これに対する労働者階級・人民の怒りの爆発と闘いの力を生み出している。
 日本帝国主義の危機の深まり、労働者階級の闘いの高まりは、革命的情勢の接近である。改憲攻撃が日程に上ってきたことは、戦争か革命かが問われる情勢だ。支配階級がこれまでどおりにやっていけなくなっており、それを打倒する主体の側の飛躍が問われているのだ。労働組合をめぐる苦闘をとおして、連合や日本共産党の制動を打ち破る労働運動の地平を切り開き、階級決戦に躍り出る時が来た。
 憲法闘争の最大の主体として、教育労働者、自治体労働者、全逓労働者、国鉄労働者の4大産別の労働者を始め、労働者階級が立つことが勝利のかぎだ。日教組と自治労における改憲勢力化を阻めば、労働者階級の総決起を生み出し、連合の改憲勢力化を阻止することができる。
 戦後労働運動の柱となってきた公務員労働運動を解体しなかったら、日帝にとって戦争に突入することは問題にもならない。逆に言えば、公務員労働者が階級的に決起するならば、改憲攻撃は決定的に打ち破ることができる。その闘いの道筋はすでに動労千葉労働運動が鮮明に指し示しているのである。
 小泉とともに5年間にわたって二人三脚で戦争と民営化の攻撃を推し進めてきた奥田に代わって、キヤノンの御手洗冨士夫が日本経団連の会長になった。就任あいさつで奥田路線の継承を宣言した御手洗は、格差拡大を「経済活力の源」と開き直り、より一層新自由主義的な弱肉強食社会をつくり上げようとしている。
 しかし、それがもたらしているのは、ライブドア・堀江や、村上ファンド・村上のような金もうけのためなら何でもやるという人間の横行である。堀江や村上の存在は、小泉改革の民営化・規制緩和と市場万能主義が生み出したものだ。
 改憲と民営化・労組破壊の攻撃を継続する御手洗経団連と対決し、闘おう。

 第2章 労働者の力で8月反戦反核闘争の高揚を

 8月6日の広島、9日長崎の原爆投下から61年の闘い、8月15日の日本帝国主義の敗戦から61年の闘いは、今年はとりわけ重要だ。教育基本法改悪と憲法改悪が図られている中で、あらためて「あの戦争」は何だったのかをとらえ直し、現実の戦争の切迫と対決しよう。改憲阻止闘争の最大の焦点は9条改憲だ。憲法の前文と9条を覆し、戦争を繰り返そうとする攻撃に断固対決しよう。
 広島、長崎の原爆は、大量破壊兵器が大都市の住民を大量に虐殺した人類史上繰り返してはならない戦争犯罪だ。今日、広島、長崎の何万倍もの威力を持つ核兵器を帝国主義が独占し、米帝は常に先制攻撃において核を使用することを選択肢に入れている。日帝もまた、核武装の道を狙っている。9条改憲は核武装に行き着く。8・6広島、8・9長崎反戦闘争は、今日のイラク反戦闘争、北朝鮮・中国侵略戦争反対闘争、そして何よりも改憲阻止闘争の重要な一環としてある。
 また、小泉が今度こそとばかり8月15日の靖国神社参拝を強行しようとしていることは絶対に許せない。これまで5回にわたり、日時をずらして参拝してきた(これ自体が挑戦的攻撃だ)小泉は、中国政府や韓国政府が何と言おうと、またアジアの人民の闘いがどれほど爆発しようと、8・15靖国参拝を強行しようとしている。それは、あの戦争で死んだ兵士を「英霊」としてたたえることは、次の戦争を準備している日本帝国主義として譲れない一線だと宣言するものである。そして、これはポスト小泉政権が、この靖国参拝路線を継承することを求める行為でもある。つまり小泉は、自分があくまで靖国参拝を貫くことで、戦後政治を完全に転換しようとしているのだ。
 昨年以上の決意と態勢で8・15闘争を闘いぬこう。
 それは同時に、韓国・民主労総を始め、アジア人民、アメリカ人民との国際連帯の闘いでもある。

 第3章 沖縄と三里塚軸に米軍再編粉砕の闘いへ

 米軍再編と対決する闘いを沖縄を始め各地の闘いを軸に、新たな安保・沖縄闘争、一大反戦・反基地闘争として爆発させよう。
 座間、横田、横須賀の首都圏に陸・海・空軍の司令部機能、出撃機能が集中し、そこに自衛隊も完全に一体化するという米軍再編は、実に重大な攻撃だ。
 防衛庁の「省」昇格は、自衛隊の海外派兵の本来任務化と一体となった攻撃であり、米軍再編に対応した日帝軍隊の態勢をつくることを狙ったものだ。
 また、沖縄に関しては、これまでのSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)路線の完全な破産の中で、むしろこれを公然と開き直り「SACOの破棄」として、新たな攻撃を加えてきている。6月23日の沖縄戦終結の日の追悼式典への小泉の参列を許すな。
 6・26小泉訪米、日米首脳会談を粉砕しよう。
 また、米軍再編は、全国の民間空港を米軍が自由に使うことと一体の攻撃だ。三里塚闘争は40年間、軍事空港建設に対する闘いでもあった。今こそ、この原点を明確にし、6・25東京集会、7・2三里塚現地の闘いに大結集しよう。

 第4章 小泉後継選びの反動キャンペーンと対決

 秋の自民党総裁選に向け、5月24日、安倍晋三官房長官は事実上の出馬表明をした。安倍はそこで「憲法改正は次の内閣の課題」「アジアの自由主義陣営を結んだ戦略対話の枠組みを提唱する」と言い、小泉と同様に米帝ブッシュの対中国戦略(在日米軍再編)に一体化して改憲を遂行する決意を表明した。
 そもそも小泉後継選びの過程は、重大な反革命政治攻撃だ。自民党内のどの人物が「小泉改革」を続行するか、改憲へ突っ走るかが焦点であるかのような世論誘導のキャンペーンがマスコミによって展開される。この大反動を打ち破り、小泉後継政権と闘おう。
 教基法改悪との闘いは今秋の最大の決戦だ。教基法改悪は改憲攻撃そのものである。絶対に阻止しよう。
 通常国会での成立を阻んだ諸法案は、改憲のための国民投票法案を含めて、すべて自民党総裁選後の秋の臨時国会に持ち越された。
 それゆえ今秋の闘いは、戦争と改憲をめぐる5〜6月以上の大決戦となる。この戦後を画する攻撃との闘いを貫き、今年の11月労働者総決起に上り詰めよう。60年安保、70年安保・沖縄闘争を超える大闘争への突破口をこじ開けよう。
 フランス、ドイツ、イギリスなどで大規模な労働者人民の闘いが爆発した。帝国主義の体制が行き詰まり、労働者が階級的に真っ向から対決する世界史的な闘いの時代が始まったのだ。日本でもそれが現実化し始めている。「日の丸・君が代」強制と闘う教育労働者を見よ。「闘いなくして安全なし」を掲げて運転保安闘争に立つ動労千葉を見よ。そして処分攻撃と闘う法政の学生を見よ。巨大な闘いの季節が始まった。
 法政大では、6・15にまたしても4学生逮捕の弾圧が襲いかかったが、学生千人の決起と国会デモが闘い抜かれた。権力と法大当局の大弾圧は、改憲阻止の学生運動の爆発に対する恐怖の現れだ。敵はすでに墓穴を掘っている。
 労働者・学生の階級的総決起へ全力を挙げよう。

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週刊『前進』(2251号2面1)(2006/06/26)

 職場から闘いを巻き起こそう

 教基法改悪の狙いは何か 教育労働者は絶対に阻む

 日帝・小泉政権は、通常国会に教育基本法改悪案、国民投票法案など改憲に直結した諸法案を提出し、新憲法制定に踏み込んできた。しかし労働者の闘いは連合指導部の制動をうち破って大きく広がり、その力が確実に情勢を突き動かした。共謀罪新設はまたも阻止され、教基法改悪に対しては全国の教育労働者が日教組本部の制動を突き破って立ち上がり、今国会成立を阻んだのである。闘いは今秋の臨時国会へと引き継がれた。7〜9月を反撃に向けた組織化の時とし、連合指導部を突き動かす闘いを職場から猛然と巻き起こそう。教育労働者を先頭に8・6ヒロシマ大行動を成功させ、臨時国会闘争に攻め上ろう。
(写真 被処分者を先頭に「教育基本法改悪を阻もう」と渋谷をデモ【6月9日】)

 「国家による国家のための教育」へ転換

 教基法改悪案は、与党が3年間、計70数回も議論を重ねた法案である。その一つひとつの条文に巧妙な狙いが隠されている。改悪反対運動を巻き起こすためには、先取り実施されている教育現場の実態と必死で苦闘している教育労働者が、暴露と批判を展開することが重要である。
 教基法改悪案の第一の核心は、「国家による国家のための教育」への大転換である。これは自民党新憲法草案が国家と人民の権利・義務規定を逆転させたのと一体である。
 新憲法草案は前文冒頭で「象徴天皇制は、これを維持する」とし、続けて「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有」するとうたい、愛国心と国防を「国民の責務」と規定した。戦争国家に向けた総動員体制づくりそのものだ。教基法改悪は新憲法草案と車の両輪であり、その核心は教育労働者の戦争動員である。
 改悪案は愛国心を軸に、以下の柱で国家主義教育を貫徹しようとしている。
 (1)まず教育基本法と現行憲法との一体性を破棄し、教育勅語同様の教育原理の復権を狙っている。
 教育基本法は、戦前の帝国憲法=教育勅語体制のもとでの皇民(臣民)教育との決別の上に成立したものである。それゆえ、前文で「(日本国憲法の)理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と、憲法との一体性を強調したのである。
 改悪案はこの言葉を削除し、それに代わって「公共の精神を尊び」ということを前面に押し出し、「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育」を打ち出した。改悪案が強調する「伝統・文化の尊重・継承」とは、天皇制イデオロギーにもとづく「国民道徳」である。かつて戦時体制を支えた国民学校教育の復活を狙うものである。
 (2)改悪案は第2条を新設し、五つの「教育の目標」を打ち出した。@豊かな情操と道徳心を培い、健やかな身体を養う、A個人の価値・能力を伸ばし、勤労を重んじる態度を養う、B公共の精神に基づく社会貢献、C生命を尊び自然・環境の保全(社会的安寧秩序のこと)に寄与する態度を養う、D「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」。総じて「滅私奉公」と「実直かつ従順な国民」づくりを意図したものだ。
 中でもDの「愛国心」の明文化を徹底的に弾劾する。多くの論者は「法律による強制はなじまない」と論評しているが、問題はそれだけではない。愛すべきとされる国や郷土は抽象的な存在ではない。今後突き進んでいこうとしている戦争国家の国や郷土を含んでいる。それは私たちが生活する場であり、階級対立や矛盾を抱えた現実の存在である。それゆえ国や郷土に対する価値観は個々人にとって多様なものである。このような価値観を「愛国心」を強制して組み敷こうとしているのである。
 格差を拡大させ、労働者から生きる権利まで奪い取る、こんな国を誰が愛せるか。沖縄や三里塚・北富士の人民に愛国心を強制することは、国益優先の名により戦争協力を迫ることを意味する。一般的な「内心の自由」論ではなく、戦争協力を拒否する職場闘争・地域闘争こそ、愛国心強制と対決する闘いである。
 (3)改悪案が明示する五つの「教育の目標」の末尾は「態度を養うこと」となっている。すなわち、内心の領域だけに限らず、具体的な態度表明を要求し、それを「評価」の対象としようとしているのだ。
 すでに現場では観点別評価が導入され、愛国心を始めすべての評価項目に「意欲・関心・態度」が設けられている。これはまず何よりも教育労働者に対する攻撃である。愛国心指導が教育労働者の「職務」とされ、日常から愛国心指導を率先垂範しているかどうかが点検と評価の対象とされる。「指導力不足」「不適格」と認定されれば、教員免許更新制により10年ごとの更新時に免許が奪われる。「日の丸・君が代」強制と同じく、愛国心の強制は教育労働者にその矛先が向けられているのである。
 今でも「愛国心」を通知票の評価項目とした学校が13都府県に190校もあることが明らかになっている。教基法が改悪されれば、全校で「国を愛する態度」が評価をもって強制されることになるのだ。
 (4)「教育の目標」の「5」には、愛国心とともに「国際社会の平和と発展に寄与する態度」が並記されている。これは、新憲法草案が現行憲法9条の「戦争放棄」条項を解体し、集団的自衛権による海外派兵も可能にしようとしていることと一体である。
 「国際社会の平和と発展」とは、帝国主義の国益擁護のための世界秩序の安全確保のことだ。日米軍事同盟の強化と東アジア・中東侵略戦争発動に死活をかける日帝にとって、愛国心は戦争動員の要なのだ。それは軍事的貢献の実践につながるものだ。「日の丸」を掲げて「君が代」を歌い、「我が国」に誇りと忠誠心を持って侵略戦争を担う「実直な精神を持った日本人」の育成こそ、改悪教基法の核心なのだ。

 競争原理や能力主義による差別と選別

 教基法改悪案の第二の核心は、「教育の目的」を、国家と資本に役立つ「人材育成」に純化させたことである。競争原理や能力主義を徹底させ、差別・選別教育を推し進めるものだ。
 条文の各所に「能力、資質、自立、社会への寄与」の言葉が組み込まれ、他方で「9年の義務教育」条項と「男女共学」条項を削除した。「大学の目的」は、学問の自由を前提とした「応用的能力を展開させること」(学校教育法52条)から、「社会の発展に寄与するもの」に純化された。「社会教育」は、「個人の要望や社会の要請にこたえ」るためとして、自己責任論に立った「生涯教育の理念」に組み入れられた。
 さらに現行法7条(社会教育)は「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」として、「勤労の場所」を社会教育の機会の一つとして位置づけてきたが、改悪案は「勤労の場所」を意図的に削除した。労働者が職場で社会問題や労働問題を学習し、自己解放の主体として立ち上がっていくことを恐れているのだ。改悪教基法は労働運動に対する抑圧の意図を持ったものだ。
 また6条「学校教育」では「規律を重んずる」「学習に取り組む意欲を高める」ことを「教育を受ける者」に求めている。現行の「義務教育」概念を逆転させ、国家のための教育に従わない者は排除・追放しても当然という論理なのだ。

 教育を通じた人民支配と地域の制圧

 教基法改悪案の第三の核心は、教育を通じた人民支配・地域制圧を確立しようとしていることである。 改悪案は、新たに「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」の条文を新設した。「家庭教育」では「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と規定し、「生活のために必要な習慣」や「心身の調和」にいたるまで教育行政が干渉しようとしている。不登校や問題行動をする子どもは親(家庭)の責任とするこの発想は、戦時中の発想とまったく同じである。
 「幼児期の教育」では「生涯にわたる人格形成の基礎」と位置づけ、「良好な環境の整備」「適当な方法によって、その振興に努め」るとした。優生思想にもとづく能力主義による早期選別・分離教育の推進を打ち出したのである。
 「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」が新設された意味は大きい。「等」の一文字に警察や自衛隊、行政や民間資本を含め、学校を地域支配の拠点にしようとしているのだ。「防犯」に名を借りた治安維持、「奉仕活動」に名を借りた教育労働者と子どもたちの戦争動員、さらには国策の宣伝の場としての学校を想定している。学校における「日の丸」掲揚は国家権力による地域制圧のシンボルでもある。
 さらに「宗教教育」は、「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養」となった。この条項は、靖国参拝を始めとした国家神道と教育の関係が問われる部分である。新憲法草案は、信教の自由に関して「社会的儀礼又は習俗的行為」は国及び公共団体が行うことも許されるとした。改悪教基法が言う「寛容・一般的な教養」とはまさにこれと一体である。”国民的習俗だから、内心の自由に踏み込むものではない”として、靖国参拝を始めとする神道的行為が強制されようとしているのだ。

 教育労働者の支配・統制と日教組の解体

 教基法改悪案の第四の核心は、教育労働者の支配・統制、日教組運動解体である。改悪法案は「教員」の条文を新設し、徹底した教員統制システムをつくり出そうとしている。
 現行法6条の「教員は、全体の奉仕者であって」の言葉を削除し、新たに「自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とした。教員が国家意思の忠実な体現者となることを要求し、愛国心教育・能力主義教育がその職務とされ、その実践に応じて身分と待遇を保障するというのだ。
 すでに中教審は教員免許更新制の08年度実施へ動き始めた。日案・週案・授業観察で日々点検され、人事考課で査定を受け、官製研修に追われ、行事ごとに「日の丸・君が代」の踏み絵を踏まされ、そして10年ごとに免許が更新されるかどうかのふるいにかけられる。多忙化地獄の中で、職場の団結が解体されれば、考える時間も語る時間も奪われる現実がある。こうした中で改悪案は、教育労働者から民主主義的価値観を一掃して日教組運動を解体することを宣言し、教育労働者に再び「死の手配師」になれと迫っている。
 改悪案の第五の核心は、教基法の柱である10条の改悪である。教育全体を教育行政が全面的に支配するフリーハンドを握ろうとするものである。
 現行法10条は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」とし、2項で「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」と教育内容への介入を排除した。
 改悪をめぐる議論の中では当初、1項の主語を「教育行政は」に置き換えようとしたが、最終的に改悪案16条では「教育は、不当な支配に服することなく」の言葉は残し、「国民全体に対し責任を負って行われるべき」を削除、新たに「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき」と加えた。
 さらに2項を全面改悪し「国は……教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」に変更し、これを受けて17条「教育振興基本計画」を新設、予算措置を背景に教育全般を統制・支配しようとしている。教育振興基本計画とは、〈計画―評価―強制〉をシステム化し、政府が定めた計画を貫徹することを教育労働者に無条件に強制するものだ。
 この10条改悪は文字どおり教基法に対する死刑宣告である。教基法改悪の後には学校教育法を始めすべての教育関連法規を改悪し、法律の名によって支配・統制しようとしている。

 主流派として大胆に闘おう

 重大なのは、「教育振興基本計画」を要求してきたのが日教組本部だということだ。03年に中教審が「教育基本法の見直し」最終答申を出して以降、日教組本部は「改悪反対」を掲げもせず、「教育振興基本計画については……財源措置の伴った実効ある教育改革をすすめるものとすること」という請願署名運動を組合員に押しつけてきたのだ。
 この現実に対して、「教え子を再び戦場に送るな」を胸に刻んで闘う現場組合員の怒りが噴き出している。今こそ、少数派から多数派に転じる大胆な闘いで、主流派へ躍り出て、闘う日教組を再生しよう。4大産別を軸に労働者の底からの決起を巻き起こそう。
 教基法改悪の問題点を全面的に暴露して、改悪阻止を教育労働者はもとより父母、地域住民、労働者、宗教者、生徒・学生との共同闘争課題へ押し上げよう。
 (山崎哲生)

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週刊『前進』(2251号3面1)(2006/06/26)

 模擬投票で次々“共謀罪廃案”

 6・10 「一億二千万、共謀の日」 全国で一斉行動に立つ

 6月10日、「一億二千万、共謀の日」と銘打っての共謀罪廃案の多彩な行動が全国各地で繰り広げられた。共謀罪の「息の根を止める」まで手をゆるめず闘いぬこう。

 ●有楽町

  

(写真左 シール投票で圧倒的多数が「反対」【有楽町】) (写真右  「デモやめろ」と挑発する右翼を弾劾【数寄屋橋】)

 東京・有楽町マリオン前では午前11時から街宣と模擬投票が行われた。宣伝カーから道行く人に共謀罪反対の訴えが行われる中、共謀罪の賛否を問うシールによる「投票」が呼びかけられた。約1時間後の投票結果は、反対88に対し賛成はわずか4。よって圧倒的多数で共謀罪の「廃案」が決まった。

 ●日比谷公園

 

「共謀の日記念」弦楽四重奏(日比谷)

 午後1時半から日比谷公園内のカフェテラス「グリーンサロン」で「一億二千万・共謀の日記念/室内楽演奏会」が開かれ、モーツァルト、シューマンなどの弦楽四重奏の美しい調べが人びとを魅了した。曲の合間には演奏家から「音楽は演奏者同士の呼吸を合わせた『共謀』によってこそ成り立つ。音楽家と共謀罪は相いれない」との納得の発言があった。

 ●秋葉原

 秋葉原では午後1時から表現者を中心に街頭宣伝と模擬投票が行われた。すでに共謀罪反対の街頭行動ではおなじみとなった「自給自足ミュージシャン」ZAKI氏が、「へんな共謀罪」をギターを弾いて歌いまくった。
♪変な共謀罪だから
 へんな共謀罪
 相談しただけで
 逮捕される
 裏切って自首すりゃ
 自分は無罪になる
 はっきり言って
 密告制度だろう!
 またメイド服コスプレの「アンチ共謀罪ガールズ」のアピールを中心ににぎやかに盛り上がり、ここでもシール投票は113対7の圧倒的多数で共謀罪の「廃案」が確定した。
 万世橋警察署の警官がパトカーで乗りつけ「道路交通法違反だ」といちゃもんをつけてきたが、弁護士を先頭に「ビラ配りは憲法21条で保障された権利だ」と猛然と抗議すると、結局すごすごと逃げ帰った。
 午後4時半から水谷橋公園で集会が開かれた。司会の救援連絡センター事務局は「今国会の成立を阻止したが、政府・与党はまだあきらめていない。夏から秋、さらに大衆的な闘いを広げて、共謀罪を永久に葬り去ろう!」と訴えた。国際共同署名運動の呼びかけ人を代表して、関東学院大学教授の足立昌勝さんは、「廃案に向け、外に出ていろんな共謀をやろう」と呼びかけた。
 動労千葉の川崎昌浩執行委員は千葉駅頭の「ビラまき共謀」で1時間に1千枚のビラがはけたことを報告し、さらにこの間の安全運転行動に対し当局が事情聴取で「組合の中でどういう議論をしてきたのか」などと聞いてきたことを取り上げ、「組合への介入であり争議権の否定だ。共謀罪につながる攻撃がすでに始まっている」と弾劾した。
 午後5時には日比谷公園に向かってデモ出発。途中、デモ隊列に向かって右翼の宣伝カーががなりながら突っ込んできて周囲は一時騒然となったが、参加者は右翼の挑発行為を一蹴し、デモをやり抜いた。

 ●渋谷

 渋谷では午後2時、若者を中心とした街頭宣伝が行われた。
 以前イギリスでタクシーの中でパンクバンド「クラッシュ」のヒット曲「ロンドンコーリング」を聴いていた青年が、その歌詞の中に「戦争が宣言された、闘いが始まる」という一節があったことから運転手によって「テロリスト」と疑われ警察に通報され尋問されるという事件があった。このニュースに危機感を募らせた若者が、「日本もこのままでは音楽も自由に聴けない社会になる。表現の自由と社会的弱者の団結を訴えたい」と呼びかけたもの。渋谷のハチ公前でロックを爆音でかけながら、共謀罪廃案を訴えた。

 ●大阪

 大阪ではこの日、連帯労組関西地区生コン支部の2台の車がそれぞれ外環から大阪府下と大阪市内一円を昼から夕方まで、ZAKIさんの「へんな共謀罪」をがんがん流してアピールしながら走りまわった。
 また門真市議会議員の戸田ひさよしさん(連帯労組近畿地本委員長)の「共謀罪反対」で派手にデコレーションされた宣伝カーが、難波から大阪駅および守口、門真などを流し、人びとの注目を集めた。
 百万人署名運動関西連絡会が主催する共謀罪反対街頭宣伝がJR大阪駅前で行われた。
 反戦団体のA&U大阪も加わり、「本日、一億二千万共謀の日。みんなで国会突入し共謀罪をぶっつぶそう」と書かれた横断幕を掲げ「へんな共謀罪」をBGMに、「今日は共謀の日でーす」とビラを配り、注目度は満点だった。

 ●全国で

 

廃案署名が各地で(神奈川・橋本駅)

その他、国立、埼玉、千葉、神奈川、和歌山、京都、岡山、広島、福岡など全国各地の街頭で大中小のユニークな「共謀」企画が企まれ、実施された。またインターネット上の無数のホームページ、ブログなどでこの日にちなんだ「共謀罪反対」のアピールが行われた。
 「共謀の日」は全国津々浦々で1億2千万人が“共謀する”こと抜きには毎日の生活と闘いが成り立たないことを浮かび上がらせた。まさに共謀罪は、警察が労働者民衆の日常のすみずみまで監視・抑圧し、声を出すことを封じるような超治安弾圧体制をつくろうとしているのである。

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週刊『前進』(2251号3面2)(2006/06/26)

 6・13東京 廃案めざし集会 国会議員と市民が共闘

 6月13日夕、東京・千代田区の日本教育会館で「共謀罪の新設に反対する/超党派国会議員と市民の大集会」が開かれた。共謀罪の今国会での未成立は確定したが、継続審議を許さず法案の息の根を止めようと、300人が参加した。
 集会では冒頭、民主党、日本共産党、社民党の5人の国会議員があいさつした。「大衆運動の力がなければ、採決の強行は阻止できなかっただろう」「秋の臨時国会に向けて共謀罪廃案の世論を大きくしていこう」と決意が語られた。
 続いて発言に立った刑法学者の足立昌勝さん(関東学院大教授)は、「政府案はずたずたになった。もう審議することはない。継続審議なんて許せない。絶対廃案にしよう」と呼びかけた。
 日本ジャーナリスト会議の丸山重威さんは、「私たちの会は、“ふたたび戦争のためにペン、カメラ、マイクをとらない”と誓って結成された」と原点を語った。そして治安維持法弾圧で60人が逮捕され、30人が有罪とされ、4人が獄死した戦争中の横浜事件の大弾圧を語り、今、共謀罪に反対して闘うことの重要性を訴えた。
 このあと連合、全労連、市民運動団体の代表が発言した。また全労協の参加が紹介された。この間の反対運動の成果を確認し、秋の臨時国会決戦に向かって共謀罪の反人民的な正体をさらに多くの人民に訴え、労働者を先頭とした広範な統一戦線を発展させていこうと誓いあった。
(写真 「絶対に廃案へ!」と誓い合った【6月13日 東京】)

 (解説) 闘いの陣形一層拡大を

 6・10「一億二千万、共謀の日」行動は全国で繰り広げられ、共謀罪に対する怒りと危機感は全国に広がっている。
 今国会で6度もの強行採決の危機をはね返し、また国会最終段階で「民主党案丸飲み」の自民党のもくろみを粉砕した力も、根源的には「破防法・組対法に反対する共同行動」を始めとするこの間の大衆運動の力であることを確信しよう。
 追い詰められた政府・自民党は継続審議の手続きをとり、次の臨時国会で成立させることを狙っている。だが、この間の法務委員会審議では政府・自民党が答弁できずに立ち往生してしまう場面もしばしばであり、さらには答弁で一貫して否定してきた民主党案を丸飲みするなど、彼らの論理は完全に破綻している。継続審議など絶対に認められない。
 共謀罪の起源をたどれば中世のイギリスの絶対王制の時代にさかのぼり、18〜19世紀にかけては労働組合の弾圧に使われた。
 この歴史からも明らかなように、「共謀」とは「団結」のことであり、「共謀罪」とは「団結禁止法」なのだ。
 6・13集会では、現行法のもとでも「共謀」概念がどんどん拡大され、「こんなことまで共謀とされるのか」と専門家も驚くような最高裁判決が出されている事実が報告された。ましてや共謀罪が創設されたら、どんどん拡大適用され、労働者人民の弾圧に使われることは明らかである。
 さらに、闘いの陣形を強固に打ち固めよう。

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週刊『前進』(2251号3面3)(2006/06/26)

 法政大 法学部で処分阻む

 6・15の圧殺狙い 門を封鎖し検問

 当局に学生の怒り

  法大キャンパスでは、6・15闘争の高揚にむけて、激しい攻防が闘い抜かれた。連日、クラスやサークルで、国会デモをめぐって真剣な討論が交わされ、「デモに行く」という学生が次々と現れた。あるクラスでは、全員が処分反対署名を行った。ある学生は「デモに行こう」と呼びかける文章を書き、キャンパスでビラまきとアジテーションに決起した。

当局が検問のため用意したテントと資材(6月14日)

 文教授会は再審査却下の暴挙!

 6月12日には法学部生2名への処分決定を阻む重大な勝利をかちとった。
 この日、2名の法学部生を先頭に、法学部の教授会の会場となる80年館の前に終日陣取り、「処分決定するな」と訴え続けた。ビラを配り、マイクで訴えると、学友が次々と応える。法学部教授会が処分を決定するのか否か、全学生が注目している。
 当該学生の怒りの訴えの前に、法学部教授会は長時間に及ぶ議論によってもこの日の処分決定を出すことができず、「2週間後の教授会で継続審議」としたのだ。
 平林総長ら法大当局中枢は、学部長会議などを通じ、この日の教授会で「退学処分」を決定するよう、ゴリゴリと圧力を加えていた。そして、6・15闘争を迎える前に、5人全員を「学外者」としてキャンパスから追放することを画策していたのだ。この日の決定を阻んだことは決定的だ。さらなる処分反対の闘いで、6・26教授会では、「いっさいの処分はしない」との決定をかちとろう。
 一方、14日、文学部教授会はまったく不当にも3名の文学部生の再審査請求を却下する暴挙を行った。3名はそれぞれ詳細な異議申立書を提出し、退学処分決定が「業務妨害」の内容すら明らかにできないまま「結論ありき」で行われたことを徹底的に弾劾した。しかし、文学部の教授らはその訴えに一切耳を傾けることなく、処分決定を居直ったのだ。
 かつての法大が、三木清教授を大学から追放し、侵略の先兵の道を進んでいったのとまったく同じ道を進んでいるのだ。文学部教授会の暴挙を、全学生と全人民の怒りの声で追及しよう。腐り果てた教授会を弾劾し、大学を学生の手に取り戻そう。

 改憲攻撃の先兵平林総長打倒へ

 法大当局は、6・15闘争の爆発に心底脅えていた。12日からは、「最近学内で不審者が発見されます。学生のみなさんも注意してください。また、学内では常に学生証を携帯してください」という構内放送が繰り返し流され、当然にも学生や教員の間からは「あの放送はなんだ!」という怒りの声があがった。被処分者の学生を「不審者」といいなす許しがたいキャンペーンであると同時に、15日当日に、全学生に対し学生証チェックを行うことをあらかじめ宣言していたのだ。
 6・15前日の14日には、入学試験時のようなテントが門に設置された。当日の集会圧殺のために、門をすべて封鎖し、正門にバリケードを築いて、40人の教職員で検問と学生証チェックを行うためだ。学生に向けた事前の告知すら一切なされなかった。
 そして被処分者ばかりか、改憲・戦争の先兵へと転落した法大当局に怒りを燃やして駆けつけた法大卒業生や全国の学生をたたき出し、キャンパスを教職員が暴力的に制圧して、キャンパスの法大生の決起を弾圧すると同時に集会そのものを破壊してしまおうとしたのだ。本当に許せない! これが大学のやることか。集会圧殺のために門を封鎖するなど、法大の歴史始まって以来の暴挙だ。
 しかし、弾圧のエスカレートは、恐怖の裏返しだ。平林総長らがどれほど6・15の爆発に戦々恐々としていたかを示してあまりある。そして現実の6・15闘争の大高揚がますます学生の怒りに火をつけ、法大当局への怒りをかき立てた。平林総長は自らの墓穴を掘ったのだ。
 6・15闘争の大勝利に続き、さらに小泉と平林を串刺しにし打倒する闘いに猛然と立ち上がろう。

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週刊『前進』(2251号3面5)(2006/06/26)

 「小泉改革」が生んだ腐敗

 村上ファンド事件の核心問題

 村上ファンドの村上世彰が証券取引法違反(インサイダー取引)で逮捕された。ライブドアがニッポン放送株を大量に買う情報を知って自ら大量の株を買い集め、高くなった段階で売り抜けて巨額の利益を上げた。このことがインサイダー取引に問われた。
 この事件で、村上と小泉政権−小泉改革の一体性も浮き彫りになってきた。
 小泉政権の民営化・規制緩和と市場万能主義のもとで、株の売買で「めちゃくちゃもうけた」(村上記者会見)連中が、村上を始めとしてたくさんいる。
 村上ファンドは、7年間で2000億円の利益を上げた。投資資産は設立時の40億円から今年春で4300億円に膨れあがった。村上ファンドの運用資金は海外からが83%だが、国内の生命保険会社の資金が、海外の投資ファンドを経由して大量に入っているといわれる。利益の源泉は、元をたとれば労働者階級から搾り取ったものだ。
 小泉改革にのっかり、巨利を得た村上やライブドア堀江の姿は、労働者階級の苦しい現実の対極にある。多くの労働者が朝早くから夜遅くまで働いても毎月かつかつの賃金しか得られず、賃下げや首切りの恐怖の中で長時間過密労働に駆り立てられている。その対極で、資本家どもは労働者から搾り取り、マネー・ゲームで巨額の利益を上げているのだ。
 村上逮捕で示されたことは、そうした我慢のならない「格差社会」の、氷山のほんの一角である。

 福井、宮内、牛尾らが出資し巨利

 村上の犯罪は小泉改革、小泉=奥田路線と一体だ。そのことは実体的にみると一層はっきりする。
 小泉改革を率先して進めてきた宮内義彦・オリックス会長、牛尾治朗・ウシオ電機会長、福井俊彦・日銀総裁らが村上ファンドに投資し、利益を上げていた。
 宮内は、村上の最大の支援者だった。村上ファンドの最初の運用資金(40億円)の大部分(30億円)を出資した。その後さらに積み増して200億円の運用を委託してきた。
 その宮内は、政府の規制改革・民間開放推進会議の議長である。91年に初めて行革審の委員になって以来一貫して、規制緩和の旗を振ってきた。タクシー業界の規制撤廃、労働者保護規制の撤廃、民営化攻撃、公務員リストラ、賃下げ攻撃の先頭に立ってきた。過労死・過労自殺、労働災害が続出するような過酷な状況に労働者を追いやってきた元凶だ。しかも宮内自身は、自ら推進した「規制緩和」の波に乗って巨額の利益を上げ、会社を大きくしてきた。
 牛尾は村上ファンドに17億円出資して利益を上げてきた。牛尾は経済財政諮問会議の民間委員であり、トヨタ自動車の奥田とともに、郵政民営化、行財政改革、公務員リストラ、社会保障解体を強力に主張し推進して来た。
 さらに、あろうことか日銀総裁の福井までもが、村上ファンドに1千万円を投資して2千万円もの利益を上げてきたのである。
 また村上の出身官庁である経済産業省の官僚は、組織的に1口100万円単位で資金を募り、村上ファンドに投資していた。
 また自民党自体が村上を「モノ言う株主」「改革の旗手」と持ち上げ、関係をつくってきた。自民党法務部会は昨年2月に村上を呼んで講演会を行っている。さらに官房長官・安倍晋三は、村上と「食事をともにする仲」(村上)だったという。
 こうして「小泉改革」に群がり、利益を上げたブルジョアジーから、巨額のカネが自民党森派に流れ込んだと言われる。政財官一体の腐りきった日帝の姿だ。

 民営化・規制緩和と対決しよう!

 ところがここにきて、日帝国家権力・検察は、村上をスケープゴートにして資本の動きを一定程度抑えることに踏み切った。それは、体制的危機を深める日本帝国主義の体制を、プロレタリア革命の大波から守り抜くためである。そこにはまた、支配階級内部の利害対立や、それを反映し自民党総裁選に向かって激化する自民党内部の抗争もあり、今後村上問題がどのような展開をたどるかは、予断を許さない。
 だが、はっきりしているのは日帝が未曽有(みぞう)の危機を深めていることである。日帝・検察は「公正な競争を守る」とか「一般投資家を保護する」とか、きれいごとを言っているが、日本資本主義、帝国主義そのものがどうしようもなく腐りきっているのだ。
 小泉を打倒し、ポスト小泉での戦争と民営化・規制緩和攻撃と徹底対決しよう。
 労働者の力で日本帝国主義を打倒し、労働者が主人公の社会をつくろう。

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