ZENSHIN 2006/02/13(No2233
p08)
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週刊『前進』(2233号1面1)(2006/02/13)
今や小泉打倒の時が来た
「日の丸・君が代」不起立 全国で
動労千葉先頭に06春闘の爆発を 郵政民営化貫きJPU臨大へ
06年は冒頭から日帝・小泉=奥田と労働者階級人民の激突が火を噴いている。戦闘的労働者は1月26、27日の自治労臨時大会と、28日の国労中央委闘争を全力で闘いぬいた。教労・自治体・全逓・国鉄の4大産別決戦が、完全に日帝支配階級の〈戦争・改憲と民営化=労組破壊〉攻撃との激突の戦場となっている。2〜3月の闘いに06年決戦全体の成否がかかっている。2・9−10JPU臨大、2・16国鉄集会、3・21日教組臨大は4大産別決戦の重大な攻防である。教育労働者を先頭に全国で「日の丸・君が代」拒否の卒業式闘争を大爆発させよう。同時に、動労千葉の反合・運転保安闘争を先頭に、06春闘の戦闘的大爆発をかちとることが決定的だ。また行革推進法案、国民投票法案、共謀罪法案、教育基本法改悪との闘いは待ったなしの決戦である。さらに3・5沖縄県民集会を10万人大決起として実現し、全国で米軍再編粉砕の新たな安保・沖縄闘争、反基地闘争を巻き起こそう。
第1章 帝国主義の矛盾爆発と革命情勢の本格的到来
この間の階級攻防が示していることは、第一に、帝国主義の危機が全世界で一層深まり、革命的情勢が本格的に到来しつつあることである。
何よりも、イラク情勢である。ここにおいて米帝は、イラク・中東人民の反帝国主義・民族解放戦争のゲリラ戦に軍事的にも敗北を重ねている。前線兵士の士気は低下しハイテクの巨大な軍隊が消耗を深め、巨額の軍費が米帝の財政危機を加速している。米国内も2200人を超える戦死者、数万人の傷病兵士の帰還によって、3・20のイラク開戦3周年に向かって、反戦闘争が高まっている。
さらに貧富の差の拡大、失業者や貧困家庭の増大、GMやフォードの経営不振、大リストラなどが吹き荒れ、AMFA(航空整備士労組)やニューヨーク都市交通労働者のストライキなど、米国内はまさに戦時下の内乱的な階級闘争に突入している。
米帝ブッシュは1月31日、一般教書演説を行った。ブッシュは、危機感をむき出しにして「米国の将来の安全は、圧制の終結にかかっている」「われわれの世代は、断固とした敵との長い戦争の中にいる」と述べ、北朝鮮やイラン、シリアなど5カ国を名指しして、対イラクに続く帝国主義侵略戦争の継続を宣言した。米帝は内外で体制的危機を深めれば深めるほど、国内階級支配の維持のためにも排外主義をあおり立て、侵略戦争にのめり込む以外にないのだ。
またパレスチナ評議会選挙でのファタハの敗退、ハマスの勝利は、帝国主義の中東支配を根底から揺るがしている。
韓国・民主労総は、ノムヒョン政権および帝国主義の圧殺攻撃と対決し、存亡をかけた闘いを展開している。
帝国主義の危機の中で、労働者と被抑圧民族人民の生活と生存をかけた闘いがこうして全世界で爆発しており、帝国主義はこれを絶対に根絶できない。さまざまな紆余(うよ)曲折、試練と困難があろうとも、世界革命の勝利までやむことのない闘いが前進しているのである。
ライブドアと小泉
この間の階級攻防が示していることは第二に、日帝・小泉改革の破綻(はたん)が突き出され、小泉を打倒できる情勢が到来していることである。
日帝・小泉政治の危機と矛盾が、あたかもブルジョア社会の底が抜けたかのように噴出し始めている。JRの大事故の頻発、耐震強度偽装、堀江・ライブドアの巨額の不正行為、米国産牛肉輸入問題、防衛施設庁や成田空港の官製談合など、政・財・官の腐りきった結託が、労働者人民の血税を食い物にし、生活と生存を脅かしている。これこそが帝国主義の腐りきった、末期的な姿なのだ。
ライブドア問題は、小泉の戦争と民営化・規制緩和の政策が、社会に何をもたらすかを突き出した。ライブドア堀江の「カネこそすべて」は、資本主義の正体そのものではないか。小泉は、この堀江を小泉改革のシンボル、「若者の模範」とはやしたて、競争万能主義をあおりたて、総選挙に利用したのだ。
その一方で小泉改革は、早朝から深夜まで働いても、生活保護水準以下の賃金しか得られないような低賃金労働者をたくさん生み出した。そうして「格差社会」や「二極化」の進行が、深刻な社会問題となるような状況が生まれてきた。
だが小泉は、1日の参院予算委で、小泉改革で社会格差が拡大したとの批判に「格差が出るのは悪いことではない。成功者をねたむ風潮は慎まないと社会の発展はない」と開き直った。労働者が首を切られ、病気になろうと飢え死にしようと知ったことではない、金持ち中心の社会で何が悪い、と開き直ったのだ。
同じことを日本経団連も言っている。労働問題責任者の柴田昌治・副会長(日本ガイシ会長)は「格差があるのが資本主義の原点。連合は二極化とよく言うが、この程度の格差は当然だ。飢えて死ぬような人がたくさん出るのはいけないが、そこまでひどい格差ではない」(朝日新聞1・14付)などと言っている。
ふざけたことを言うな! 自殺者が年間3万人を超え、栄養失調や病気になっても医者にかかれずに死んでいく労働者、高齢者がたくさん出ているのだ。鉛筆やノートも満足に買えず、給食や修学旅行の費用の援助を受けている子どもたちが、どんどん増えているではないか!
日帝・検察は、あまりの社会的不公正(資本主義の本性だ)のむき出し化が労働者階級の怒りに火をつけ、プロレタリア革命に転化することへの恐怖におびえて、ライブドアの不正の摘発に踏み切った。そうすることで日帝ブルジョアジーの本体をあくまでもプロレタリア革命から守り抜こうとしているのだ。
だが、ライブドア堀江の不正など氷山の一角である。トヨタや三菱や三井住友などの独占的な金融資本は、国家権力を最大限に利用して、労働者階級をとことん搾取・収奪し、バブル期をも超える空前の利益を上げている。日本経団連会長・奥田らは、自分たちは潔白であるかのように言っているが、とんでもない。彼らこそ、労働者人民の血と汗を搾り取る大悪党だ。権力を持つ大資本家は政治家を使って、自分たちに有利なように法律をねじ曲げ、利益をむさぼっているのだ。
小泉や日帝・資本家どもへの怒りを、今こそ大爆発させようではないか。帝国主義への怒りを大結集し、労働運動の圧倒的強化で大反撃に立とう。
労働者は、資本のもとで仲間と競争するのではなく、ともに団結して資本家に立ち向かってこそ未来がある。労働者を人間とも思わず奴隷的に搾取しこき使う帝国主義と徹底的に対決し、その打倒をめざす闘いにこそ、青年・学生、労働者の未来がある。このことを鮮明にアピールして仲間を広げよう。そのことができるのは、動労千葉などの闘う労組を先頭とする「11月労働者集会」派だけである。
第2章 公務員制度改革と改憲に全面屈服の連合中央
この間の階級攻防が示していることは第三に、4大産別決戦が日帝・小泉と真っ向から激突する闘いであり、労働運動の未来を決める最大の決戦場だということである。革共同の新指導路線とそのもとでの4大産別決戦方針が、完全に現在の階級攻防の核心をとらえており、鋭い攻撃性をもっていることが、1月攻防でいよいよ鮮明となった。
中曽根・森発言は重大
そのことを敵の側から明らかにしているのは、『文芸春秋』12月号での自民党の中曽根・森発言だ。ここで中曽根は「国鉄民営化は、国鉄労組を崩壊させました。国鉄労組の崩壊は総評の崩壊、つまり社会党崩壊につながります。……もちろん私はそれを認識して実行に移しました」と、実に許せない発言をまた繰り返している。それを受けて森が「(郵政民営化は)全逓、全郵政にかかわることです」「連合の左派中心勢力は、日教組と自治労の二つです。この二つがつぶれたら、民主党は大きく変化せざるを得ません」と述べている。
要するに中曽根と森は、一連の攻撃の狙いが、4大産別労組の破壊・解体にあることをあけすけに述べているのだ。
国家的不当労働行為を自認する発言であり、実に許せない。だがこれは、全逓や自治労、日教組などの4大産別から闘いが巻き起こることを、日帝権力・自民党がどれほど恐れているかを示している。労組中央をどれほど腐敗・堕落させて権力の懐に抱き込もうとも、現場組合員は健在である。こうした組合を残している限り、いつ戦闘化するかもしれない。国家権力機構内の労働者の団結体の存在は日帝支配階級にとって「獅子(しし)身中の虫」である。改憲・戦争に突き進むためには4大産別労組の解体が不可欠であるとして、政府・自民党は決戦的な攻撃に出てきているのだ。
4大産別の労働者は、日帝の労組破壊攻撃を絶対に許してはならない。現場労働者の下からの総決起で、腐敗した労組中央執行部を打倒し、闘う労働組合につくりかえよう。改憲阻止闘争の勝利もまた、この攻防にかかっている。
1・19連合中執会議
この間の階級攻防が示していることは第四に、連合中央と日共スターリン主義の反労働者性を大衆的に暴露し、その闘争破壊策動を粉砕することが、絶対に不可欠だということである。
連合は、今年の最大の決戦課題である公務員制度改革の攻撃に完全に屈服し、その先兵に転落した。公務員の総人件費削減に反対してきたこれまでの方針を大転換し、政府の「行政改革の重要方針」を大筋で承認し、1月16日から政府との政労協議を再開した。当然、岡部自治労委員長(連合副会長)も加わっている。「協議の行方によっては、自ら削減案を打ち出すことも検討する」としている。労働組合の自殺行為に等しい裏切りだ。
さらに1月19日に開いた中央執行委員会で、改憲への決定的な攻撃である「国民投票法案」について、「早急に、民主党とも協議しながら具体的な対応を図っていく」と意思統一した。民主党はすでに国民投票法案賛成−9条改憲賛成の立場で自公両党と協議している。したがって「民主党とも協議しながら」とは、連合が国民投票法案に、民主党とともに賛成するということにほかならない。それは9条改憲賛成に向かっての決定的なステップである。
同時に公務員制度改革についても政労協議の再開を確認し、今通常国会に提出される行政改革推進法案や市場化テスト法案など、公務員労働者に対する重大なリストラと労組破壊攻撃に全面屈服する方針を確認しているのである。
日本共産党の「赤旗」1月20日付号は、この1・19連合中執の決定を報道して、まるで連合が「7・14改憲見解」を引っ込めたかのように報道しているが、それは誤りであり、連合の裏切り方針のとんでもない美化である。連合が国民投票法案の推進を決めたことは、「7・14改憲見解」の線で自治労中央も日教組中央も突き進め、組合内の反対運動を押さえつけろと、号令をかけているのだ。
森越日教組委員長(連合会長代行)や岡部自治労委員長は、当然にも連合中執メンバーである。彼らがこうした国民投票法案や公務員制度改革に関する中執決定に賛成し、これを組合員に押しつけようとしているのである。この裏切りは絶対に許せない。
連合中央は日本経団連の先兵となってリストラ、賃金制度改悪、労働条件の切り下げ、スト圧殺に全面協力してきた。
「国際競争力」論をあおり立て、労働者に競争して働くことを強制し、過労死や自殺者が続発するまでの長時間過密労働に駆り立てているのは連合中央だ。
統一戦線破壊の日共
また日本共産党スターリン主義の反労働者的な分裂策動も断じて許せない。米帝ブッシュ、日帝・小泉の世界戦争への攻撃と闘うことが労働者階級の重要な課題となっている時に、24回党大会で「平和をめざす流れが地球的規模で発展している」というとんでもない武装解除の米帝・日帝美化論を振りまき、「自衛戦争賛成」「自衛隊承認」によって米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争の動きを擁護し、改憲阻止闘争の統一戦線の敵対者・破壊者として登場している。
だが、これには日共内部からも怒りと批判の声が上がっている。不破議長が退陣して党的求心力を一層失った日共・志位−市田体制は、早くも内部から動揺と危機を深めている。日共スターリン主義の反革命的影響力を階級闘争から一掃し、闘う労働運動を再生・発展させることをとおして、多くの戦闘的労働者を革共同のもとに結集しよう。その重大な情勢が到来しているのである。
第3章 4大産別決戦軸に改憲阻止・米軍再編粉砕へ
この2〜3月、4大産別決戦の勝利へ総力で闘おう。
1・26〜27自治労臨大闘争は、公務員制度改革が国民投票法・改憲と直結しており、それゆえ自治体労働運動をめぐる攻防が教労と並ぶ4大産別決戦の中心的闘いであることを突き出した。
自治体労働者は、1月自治労臨大の闘いの地平を発展させ、公務員制度改革粉砕・改憲粉砕へ闘おう。今国会での行政改革推進法案、市場化テスト法案などの反動諸法案を絶対に粉砕しよう。
4大産別決戦の最先端の闘いが、「日の丸・君が代」不起立闘争である。
1日には教育基本法与党検討会も再開され、法案提出に向けての調整を進めるとしている。「日の丸・君が代」強制阻止の闘いは、この憲法改悪・教基法改悪を阻止する最前線の闘いであり、日教組をつくりかえ、職場支配権を確立する労働運動そのものである。
処分されても首をかけて階級的正義を貫く教育労働者の闘いは、労働運動の進むべき道をはっきりと示している。2〜3月卒業式闘争に決起しよう。全国で数千、数万人の教育労働者が不起立で闘いぬくならば、改憲など完全に吹っ飛ばすことができる。
全逓労働者は「郵政民営化絶対反対」を掲げ、2・9〜10JPU臨大(日本青年館)に総結集して闘おう。JPU菰田(こもだ)執行部は、郵政民営化法が成立したことをもって完全に屈服し、「現実を冷静に受け止め」(大会議案)などと現場組合員の怒りの決起に戦々恐々としている。そして、アクションプラン2の大合理化を受け入れ、「働こう」運動を強制し、改憲にも全面屈服しようとしているのだ。菰田執行部を組合員の怒りで打倒しよう。職場での団結を打ち固め、超勤拒否、物ダメ・ストライキの実現に向かって、職場生産点での闘いをつくりあげよう。
「階級的原則を貫いて、組合の団結を大切にして闘えば、必ず勝利の展望が開かれる」。この固い信念で国鉄分割・民営化攻撃に対して組織の存亡をかけてストライキを打ち抜き、団結を保持してきた動労千葉の闘いを教訓化し、それを郵政職場で実践しよう。
公共部門の民営化の最初は、20年前の国鉄分割・民営化だった。20万人の国鉄労働者が首を切られた。だが、その国鉄戦線で、動労千葉と国労の戦闘的労働者が絶対に屈服しないで20年間闘い続けることによって、強制配転者の運転職場復帰などの勝利を次々にかちとり、今やついに反転攻勢の時を迎えつつある。
分割・民営化の矛盾が悲惨な死亡事故として続発している中で、動労千葉の反合・運転保安闘争はJR資本の安全無視をぶち破る大勝利を切り開いている。そうした中で2・16国鉄労働者大集会が、初めて1047名総体の統一陣形でかちとられる。大結集し1047名闘争の勝利へ新たな戦闘宣言を発しよう。5・27国労臨大闘争弾圧を粉砕し、動労千葉の反合・運転保安春闘と連帯し、大幅賃上げ要求を掲げて06春闘を戦闘的に闘いとろう。闘えば勝てる! 国鉄闘争の前進は、4大産別決戦の勝利の展望を明々と照らし出している。
国民投票法案粉砕へ
改憲闘争の発展は待ったなしである。攻撃の核心が9条2項(戦力不保持、交戦権否認)の破棄にあり、労働者人民を侵略戦争に動員するための改憲であることをとことん暴いて、国民投票法案粉砕を改憲阻止闘争そのものとして闘おう。
敵階級にとって改憲は国論二分的な状況で僅差(きんさ)で可決・成立ということではだめなのである。そこで日帝は、国民投票法案による公務員の運動禁止や公務員制度改革などによって、4大産別労組を解体し、改憲反対闘争の労組的基盤を解体することに全力を挙げている。日共スターリン主義の制動をうち破り、9条改憲阻止の一点で広範な統一戦線を形成し、絶対に改憲を阻もう。
思想弾圧、労働運動弾圧、革命党弾圧の治安立法=共謀罪を粉砕しよう。
3・5県民大会爆発を
相模原で自衛隊の移駐を阻止する勝利の展望をこじ開けつつある。岩国では米空母艦載機の岩国移駐反対の市民の意思を住民投票で示す全市的な取り組みが進んでいる。そして、沖縄では3・5県民大会で米軍再編、辺野古崎への新基地建設反対の怒りの総決起がかちとられようとしている。米軍再編・日米安保粉砕へ、全国で反戦・反基地闘争を闘おう。
帝国主義が危機にあえぎ、戦争と民営化(労組破壊)に深々とのめり込んでいる情勢は、一面では党と労働者階級にとって、厳しい試練ではある。だが他面では、プロレタリア革命の現実性が生き生きと働き始める情勢なのである。反帝国主義・反スターリン主義世界革命、その一環としての日本プロレタリア革命という革共同の革命戦略・路線が、真価を発揮するときが来たのだ。労働者階級の自己解放闘争の革命的な爆発力を確信して前進しよう。
『前進』を労働者階級の中に圧倒的に拡大しよう。今こそ、闘う青年・学生、すべての労働者、労組活動家は革共同に総結集し、プロレタリア革命に勝利する労働者党をともに建設しよう。
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週刊『前進』(2233号1面2)(2006/02/13)
“東部方面隊の派兵 許すな” 朝霞と三里塚でデモ
1月28日、陸自東部方面隊のイラク派兵に反対する闘いが朝霞と三里塚で圧倒的に闘い抜かれた。
朝霞
陸上自衛隊東部方面隊の司令部が存在する陸自朝霞駐屯地に対して、抗議デモと派兵中止の申し入れが、約200人の労働者市民の結集で行われた。
朝10時から、朝霞駐屯地の最寄り駅にあたる東武東上線和光市駅南口に集まってフリートークが行われた。昨年から「止めよう戦争! 埼玉県連絡会」や、「止めよう戦争! 隊員家族と元自衛官連絡会」が陸自への請願・申し入れ、和光市駅頭街宣を行ってきたが、抗議行動をやろうという実行委員会が組織されるまでに広がったものだ。
フリートークを聞きながら通る市民の反応は良い。署名の呼びかけに40分程度で50人近くの市民が応じた。クラスの半分近くが自衛官の子どもたちという学校もある街だからだろう。
11時からデモに出発した。市街を抜け、自衛隊の官舎にさしかかる。元自衛官の小多基実夫さんが宣伝カーのマイクを握って自衛官と家族に呼びかける。「小泉首相は先日、関西で、今回の派兵で自衛官に犠牲が出ることは覚悟している、と言いました。本当に許せません。小泉は、危険な所だから自衛官に行ってもらうと言うが、イラクが危険な所になったのは、自衛隊を占領軍として派兵したからです。災害救援とはわけが違います」。
1500人近くが居住する官舎の窓には、デモ隊を見ている家族の姿も見える。デモ隊は、「自衛官よ、命を粗末にするな!」という大文字のメッセージボードを掲げた。「自衛官のみなさん! 労働者とともに立ちあがろう」とデモ隊が呼びかけた。
この官舎では昨年8月末、男性自衛官が自殺した。その数年前にも自衛官の飛び降り自殺があった。
デモ隊は、基地内に届くシュプレヒコールを繰り返しながら、朝霞駐屯地の朝霞門に到着、ここで請願・申し入れ行動を行った。実行委員会代表が請願文と要望書を読み上げ、「要望書は自衛官一人ひとりに渡して下さい」と申し添えて渡した。その後、「止めよう戦争! 隊員家族と元自衛官連絡会」と「止めよう戦争への道! 百万人署名運動」などが請願文を読み上げ、百万人署名運動は1337筆の署名を提出した。
抗議行動の翌29日、反対運動を避けるようにして、練馬駐屯地で隊旗授与式が行われ、その日の夕方、第1陣が羽田空港から派兵された。
小泉は、「5月には英豪軍とともに撤退する」などと言い出しているが、それほどイラク現地情勢が深刻な泥沼状態にあるのだ。さらに即時撤退を求めて、自衛官への呼びかけを継続しよう。
(投稿・O)
(写真 朝霞駐屯地で東部方面隊のイラク派兵を中止するよう申し入れた【1月28日】)
三里塚
1月28日「成田空港からの自衛隊イラク派兵阻止」を掲げ、三里塚芝山連合空港反対同盟主催の集会とデモが、成田市で闘いとられ、120人の労農学が結集した。
この日の集会場は、85年10・20戦闘以来21年ぶりの三里塚第一公園だ。
伊藤信晴さんの司会で集会が始まり、北原鉱治事務局長が発言に立った。
「21年ぶりの集会でここに立ち、時代の変化を感じて感無量だ。61年前は戦争一色の時代だった。天皇制によって国民が総動員され、アジアの人びと2千万人を死に至らしめた歴史を振り返る時、自衛隊が成田空港からイラクに出兵することなど絶対に許せない」
次に成田市民の会の伊藤全明さんが、「発端はブッシュが大量破壊兵器を口実に戦争をしかけたことだ。先の大戦で死の苦しみを強いられたわれわれはイラク派兵を許さない」と発言した。
続いて動労千葉の滝口誠特別執行委員が、JRで相次ぐ大事故を民営化による安全崩壊の結果として弾劾し、3月春闘への決意を表明した。婦人民主クラブ全国協議会代表の西村綾子・相模原市議は、相模原市での米軍再編との闘いを報告、また都政を革新する会の北島邦彦事務局長は、杉並区での「つくる会教科書」撤回運動を報告した。内海佑一全学連副委員長は、学生の力で85年10・20戦闘をも超える闘いを実現する、と決意表明した。
集会後、反対同盟を先頭に市内デモに出発した。出兵阻止と暫定滑走路北延伸攻撃粉砕の宣伝カーからの訴えかけは、三里塚地域すみずみに響き渡った。戸外でデモを見守る人も多い。
派兵部隊は、29日に羽田空港からこっそりとイラクへ出発した。反対運動の力が、成田出兵を断念させたのだ。反対同盟の闘魂にこたえ、3・26現地集会に全国から総結集しよう。
(写真 市東さん【左】、北原さん【右】を先頭に三里塚第一公園からデモ【1月28日】)
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週刊『前進』(2233号2面1)(2006/02/13)
不起立闘争の継続・強化・拡大へ
「日の丸・君が代」強制拒否闘争
“東京とともに”合言葉に広島の教育労働者は闘う
06年春、いよいよ階級決戦最大の勝負の時を迎えた。ヒロシマの教育労働者は処分を恐れず「戦争教育絶対反対、『日の丸・君が代』強制拒否=不起立・不服従闘争の継続・強化・拡大」の闘いに職場の仲間とともに総決起する。動労千葉労働運動の実践者として、退路を断って立ち上がる。
教育現場荒廃させた元凶に責任とらせる
教育現場は今や労働監獄だ。広島では、これまで取り組んできた平和教育・解放教育とはまったく逆の教育を強要されることへの絶望感から自ら命を絶った仲間を始め、勤務中に生徒や保護者の目の前で突然亡くなったり、毎夜遅くまで勤務が続き朝家族が起こしに行った時にはすでに冷たくなっていた人など、現職死亡が相次いでいる。ニトロ(心臓発作時の薬)を口に含んで授業に赴く人、自分が過労死した時のために時間外勤務の時間を克明に記録している人、研究発表会の前日まで連日夜10時まで働かされ続けたために流産した人。さらに多くの通院・入院・病気休職・早期若年退職せざるを得なかった仲間がいる。まさに誰がいつ死んでも不思議でないほど、今の学校現場は教育労働者の生存と生活そのものを脅かし、疲弊と死を強制する地獄に激変しているのだ。こんな学校にしたのは誰だ!
98年以来の文部省(当時)の「是正指導」によって、「日の丸・君が代」の強制を始め、あらゆる権利剥奪(はくだつ)と管理強化が激しく進んでいる。職場・組合の団結破壊を狙った人事評価制度―校長の立てた学校目標に対する自己目標と自己評価(自己申告書)の強制、週案の記入・提出の強制。そして、人事評価とリンクした査定給(差別賃金)導入の攻撃が襲いかかっている。
また「研究指定校」「一校一研究」と称して公開授業・研究発表会の強制、さらに年度当初の超忙しい時期に「シラバス」という名の年間指導計画の作成に数十時間費やさざるを得ないという矛盾。研究発表会における指導案は何回も書き直しを命じられる。揚げ句の果てには、研究会の実践報告集の量の厚さを競い合う。教育委員会の学校訪問時には近隣校の教頭がクッキーを焼き、その味を競い合う。教育委員会から2人来校するというのでスリッパ2足をそろえていたところ、3人来校してスリッパが不足し、教頭を目の前でしかり飛ばした校長など、おごり高ぶる教育行政と阿諛追従(あゆついしょう)に走る管理職どもによって、おぞましい光景が日常的に繰り返されている。
このような教育現場の破壊を許すことは絶対にできない。その元凶・張本人に今こそ責任を取らせなければいけない。「まどえ!」(広島弁で「償え」という意味)。積年の恨み、晴らしてやる! 「まどえ!」
元凶は日帝そのものであり、小泉=奥田の戦争・改憲と民営化(労組破壊)の攻撃だ。「是正指導」以来の反動教育行政によるヒロシマ教育つぶし=平和教育・解放教育つぶし=日教組(広教組・広高教組)つぶしの攻撃によって、教育現場が破壊されてきた。
それだけではない。この現実をつくり出したいま一方の元凶は、職場闘争を圧殺してきた日教組本部だ。日教組本部は95年パートナー路線以来、文部省の協力者に転向し、職場闘争5項目(「日の丸・君が代」強制反対、主任制反対、官製研修反対、教育課程の自主編成、職員会議の最高議決機関化)を投げ捨てた。「日の丸・君が代」強制に対して「職務命令が出たら従え」「処分されても支援しない」と公言して恥じない組合指導部こそが、ヒロシマ教育つぶし攻撃をますますのさばらせ、教育労働者にあらゆる犠牲と困難を押しつけているのだ。
労働組合とは、闘うことをとおして団結を強めるものだ。職場の仲間たちは、闘いの中で深めた絆(きずな)で組合加入を図ってきたのである。組合として守り強化する道は、「教え子を再び戦場に送るな」という日教組のスローガンを実践することにある。
今や学校現場には、吹きすさぶ反動と組合指導部の裏切りに対する激しい怒りが渦巻き、闘いを求める声が充満している。命を奪われ、病気休職、早期退職を余儀なくされた多くの仲間の無念をそそぐ時が来た。「今に見ておれ」と歯を食いしばって頑張ってきた現場の教育労働者が団結して、反転攻勢―日教組再生の主人公として力強く登場する時がついに来たのだ。
不起立闘争が日教組の改憲勢力化阻んだ
05年の「日の丸・君が代」闘争は、東京の仲間の不起立闘争を頂点に全国に拡大して高揚し、全反動に痛打を浴びせた。
それは東京・杉並を頂点とする「つくる会」教科書採択阻止闘争として引き継がれている。
また、05年都高教7月定期大会では闘う方針(修正動議)が可決され、連合執行部に事実上の不信任を突きつけた。東京の教育労働者は石原・都教委との対決を貫きつつ、8・6ヒロシマ大行動―全国教育労働者交流会に全力で駆けつけ、11・6全国労働者集会に合流した。東京・広島の闘う教育労働者の血盟が固く結ばれた。
広島では「東京とともに闘おう」を合言葉に、広教組・高教組組合員のべ45人(卒業式30人+入学式15人)が不起立で闘った。青年部の仲間が続々と決起し、不起立闘争の拡大を牽引(けんいん)した。それと一体で〈白バラ・コサージュ〉〈ピース・リボン〉〈退場〉〈年休行使〉などの創意工夫をこらして、分会ぐるみ・職場ぐるみの不服従闘争が200人を超えて広範に展開された。高校生・中学生も不起立で反撃し、多くの労働者・市民が保護者として来賓として不起立を闘いぬいた。
「是正指導」以来7年の苦闘に耐えてきた広島の教育労働者は、04年春の東京の教育労働者300人の闘いに励まされ、「05年こそ東京の仲間とともに」の思いを込めて決起し、反転攻勢の第一歩を切り開いた。
この闘いの勝利の核心は、組合の路線をめぐる激突に現場の労働者がかちぬいたことである。日教組本部の転向=改憲路線に身も心も一体化した組合指導部の闘争圧殺策動を、「動労千葉のように闘えば必ず勝てる」と団結した現場の力ではね返したのだ。岡山・香川など中四国各県でも教育労働者の不起立・不服従の闘いが拡大した。鳥取では、1人の教育労働者の決起に40人の高校生が呼応して不起立した。
05年「日の丸・君が代」闘争は、現場教育労働者の実力闘争を復権した。「闘う日教組」再生への新たな胎動が始まった。それが日教組の7月全国大会で改憲路線への反動的転換を阻止し、連合の改憲勢力化を阻む力となった。日本のすべての労働者が自己解放をかけて改憲を阻止し、侵略戦争絶対阻止を貫く闘いへ発展した。その力が11・6労働者集会の4600人の結集に結実したのである。
職場の団結を基礎に全国で総決起しよう
「ひとりの力は小さいかもしれません。しかし、決して無力ではありません。一人がまず始めなければゼロであり、無です」
これは「ヒロシマ平和カレンダー」に掲載された原爆資料館前館長の高橋昭博さんの言葉である。ヒロシマの教育労働者は被爆者の怒りを全身で受けとめ、今春「日の丸・君が代」決戦に総決起する。全反動と対決し、不起立・不服従の継続・強化・拡大を渾身(こんしん)の決起で切り開く。権利を奪われ、体をむしばまれ、命までも奪われる教育現場の現実を、06年「日の丸・君が代」決戦で根底から覆そう。
06年「日の丸・君が代」決戦は、教育基本法改悪阻止・改憲阻止の成否を決する闘いだ。日教組を先頭に4大産別の労働組合を戦争と改憲阻止の最強の砦(とりで)として再生しよう。既成野党と連合・全労連の裏切りと敵対をはねのけ、現場労働者が主人公となって闘いを組織しよう。日教組の戦闘的・階級的再生がここにかかっている。「日の丸・君が代」闘争を全国統一闘争として闘おう!
私たちは、どんなことが待ち受けていようとも「七転び八起き」の精神で団結して闘いぬき、必ずや小泉=奥田を「七転八倒」させるであろう。ヒロシマの教育労働者は、動労千葉の「闘いなくして安全なし」の闘いに徹底的に学び、「闘いなくして教育なし」「闘いなくして平和なし」を合言葉に総決起する。
全国の教育労働者のみなさん! 職場の団結を基礎にして、全国・全労働者の団結、労働組合の連帯の力で、06年「日の丸・君が代」闘争を全国統一闘争で闘おうではありませんか!
〔川口 梓〕
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週刊『前進』(2233号2面2)(2006/02/13)
“自分の行動は正しいと確信”
東京の「日の丸・君が代」被処分者3人に対し、昨年7月「再発防止研修」時のゼッケン着用や「受講拒否」を口実とした再度の「再発防止研修」が強行された。冷たい雨をものともせず被処分者らが会場前で都教委を弾劾した。研修終了後、受講した被処分者は「自分の行動は正しいと確信を深めた」と話した(2月1日 水道橋)
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週刊『前進』(2233号2面3)(2006/02/13)
国労中央委 「鉄建公団訴訟支援」を決定
1047名陣形強化へ 2・16大結集の風穴が開く
1月28日の国労第176回拡大中央委員会は、国鉄1047名闘争が大きな発展過程に突入したことを指し示した。国鉄闘争への内部からの破壊策動を重ねてきた国労本部の反動は、ついに大崩壊に至ろうとしている。中央委員会で国労本部は、「鉄建公団訴訟支援」の方針を掲げざるを得なくなった。2・16総決起集会を大成功させ、国鉄闘争こそ小泉=奥田体制打倒、改憲阻止の決戦の最先頭に立つ時が来た。
国鉄闘争は国鉄分割・民営化以来19年の闘いを経て、ついに1047名全体を糾合しての統一陣形を生み出した。国労闘争団の鉄建公団訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団と全動労争議団の原告団、動労千葉争議団の原告団に、国労闘争団全国連絡会議が加わって、この5者の共催のもとに2・16総決起集会が開かれる。鉄建公団訴訟を軸に形づくられてきた1047名の統一陣形は、「未提訴闘争団」をも巻き込んで、いよいよ解雇撤回・JR復帰に向けての巨大な歩みを開始した。
昨年の7・15全国集会以来、1047名の大同団結に向けて大きなうねりが始まった。この中で国労本部は、今中央委員会に「2・16集会を中心とする大衆行動に総力をあげて取り組む」「鉄建公団訴訟等に対して、傍聴など可能な支援を行っていく」とした「当面の闘争方針案」を提案するところに追い込まれた。
これまで国労本部は、鉄建公団訴訟原告への統制処分を強行し、生活援助金の支給を凍結するなど、鉄建公団訴訟に対するあらゆる敵対と妨害を繰り返してきた。さらには、鉄建公団訴訟原告への統制処分手続きを決定した02年5月27日の国労臨時大会で抗議のビラまき・説得活動を行った国労組合員を、警察に売り渡す暴挙にまで手を染めた。国労本部に居座るチャレンジ一派や上村革同は、こうした裏切りを貫くことで、国家権力やJR資本からその存在を認められてきたのである。
その国労本部が、鉄建公団訴訟支援を中央委員会決定とし、2・16集会への動員指令を下ろしている。これはきわめて重大な事態である。小泉政権は、自治労、JPU(全逓)、日教組を改憲路線に転向させ、連合総体を改憲翼賛勢力に引き入れようと全力を挙げている。そのためにも国鉄闘争を跡形もなく粉砕しようと、これまで執拗(しつよう)な攻撃をかけてきた。これに国労内部から呼応してきた反動の一角が大きく崩壊し始めたのだ。
自治労臨大を皮切りに4大産別が激しい決戦攻防に入った今、2・16集会の成功は「日の丸・君が代」強制と闘う教育労働者の決起と並び、階級闘争を根底から激変させるものになる。
この情勢を切り開いたのは、あらゆる苦難に耐えてきた1047名の闘い、とりわけ鉄建公団訴訟原告団の闘いだ。9・15判決は、解雇撤回を否定し、わずか500万円の慰謝料しか認めず、1047名陣形を破壊しようとした反動判決だったが、国鉄が不当労働行為を行った事実は認定した。統制処分に屈せず訴訟を貫いた原告団の闘いが、国家的不当労働行為をやみに葬り去ろうとした国家権力とJR資本の策動を打ち破ったのだ。これが国労本部の裏切りを暴き、彼らの言う「政治解決」なるものの虚構と破綻(はたん)を突きつけた。
さらに、動労千葉の反合・運転保安闘争が1047名の統一陣形形成の原動力になった。JR体制は尼崎事故、羽越線事故、伯備線事故と重大事故を立て続けに引き起こしている。これに対する動労千葉の闘いの圧倒的な正義性は、今や誰も否定できない。「動労千葉排除」の策動は打ち破られ、1047名全体の団結を求める声は、いかなる反動によっても抑えることができなくなった。
また、国労5・27臨大闘争弾圧に対する粘り強い闘いが、国労本部の警察権力との癒着・結託を鋭く暴き出している。
これらの闘いによって、国労弁護団は中央委に姿も見せず混乱を露呈し、国労本部は反動を正面から貫けない窮地に陥ったのだ。
「リセット完了」と裏切り居直る
中央委員会では、佐藤勝雄委員長が「(この間の組織の混乱の収拾へ)これですべてリセットいたしました」と言い放った。だが、国労本部は、これまでの敵対・裏切りの数々を何も自己批判してはいない。「総団結」「大同団結」の美辞麗句で自己の免罪を要求し、居直りを決め込もうとしているのだ。国労本部に「リセット完了」などと言わせておくわけにはいかない。国鉄闘争勝利のためには、闘争団を統制処分し、組合員を警察に売った現執行部を打倒して、闘う組合員が執行部を握らなければならない。権力や資本からの独立は、労働組合の存立にかかわる原則だからだ。
佐藤委員長はまた、JR東日本における昇進差別事件の和解について「労使間に信頼関係を築くことによって大きな前進を獲得することができる」と自己賛美し、「和解は……株式市場においても好感をもって受けとめられています」とまで言ってのけた。まさにチャレンジ路線そのものだ。
質疑・討論では、チャレンジや上村革同もこぞって「2・16集会と1047名の大同団結を歓迎する」と発言した。中央委員会前日に開かれた全国代表者会議で、彼らは「動労千葉争議団が名を連ねる2・16集会に国労がなぜ取り組むのか」と叫び立てたという。だが、彼らもそれを中央委員会であからさまに口にすることはできなかった。
他方、高崎地本や東京地本・新橋支部、北海道本部・旭川地区本部の中央委員などが、「本部は鉄建公団訴訟原告団への扱いを反省すべきだ」「組織として行わなかった裁判に取り組んだ原告団に敬意を表し、その総括をすべきだ」「処分されながら訴訟に打って出たことで9・15判決が出た。本部はけじめをつけるべきだ」と論陣を張った。また、国労本部が言う「新たな訴訟」についても、鉄建公団への地位確認を求める訴訟として早急に提起すべきことを主張した。
集約答弁で吉田進書記長は、「新たな訴訟の最終決断は7月の全国大会」「全国大会までの間は国会対策、政治対策に全力を挙げる」と言い張った。本部方針はあくまで「9・15判決を機に政治解決を図る」というものであり、1047名全体を敗北必至の政治解決=和解路線に引き入れようというのが、彼らの狙いなのである。
国労5・27弾圧粉砕を軸に
JR体制は重大事故を続発させ、安全を根底から崩壊させている。中央委員会では、これが小泉政権による規制緩和とJRによる大合理化=人員削減の結果であることを誰もが口にした。問われているのは労働組合としての闘う路線である。反合・運転保安闘争を闘い、JR資本に真っ向から立ち向かうことこそ、労働組合がとるべき道だ。
ところが佐藤委員長は「労使の信頼関係」を叫び立て、上村革同は「労使安全会議をリードした」と自己の裏切りを吹聴した。だが、資本との闘いを放棄して安全を守れるはずがない。それは羽越線事故や伯備線事故が示している。
動労千葉は06春闘を「反合・運転保安春闘」として闘いぬく方針だ。安全確立へ労働組合としてどう闘うか、職場から徹底した議論を起こし、動労千葉とともに06春闘に立ち上がろう。
2・16集会を現場組合員の力で成功させよう。ここから国労と日本労働運動の階級的再生は始まる。4大産別決戦の土台をなす国鉄闘争は、4党合意以来の苦闘を経て、ついにその道をこじ開けた。だが、闘争団を統制処分にかけ、組合員を売り渡した現国労執行部を打ち倒してこそ、勝利の路線は確定できる。その軸は5・27臨大闘争弾圧粉砕の闘いだ。国労中央委の攻防は、国労再生に向けた決戦の火ぶたを切った。
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週刊『前進』(2233号2面4)(2006/02/13)
伯備線事故 民営化が元凶だ!
「安全性向上計画」を拒否し反合理化・運転保安春闘を
−動労西日本が緊急声明−
1月24日、JR西日本の伯備線で3人の保線労働者が特急列車にはねられ死亡する重大事故が発生した(前号既報)。これに対して動労西日本が発した緊急声明を同労組の了承を得て転載し紹介します。(編集局)
緊急声明
1月24日午後1時20分頃、鳥取県江府町武庫のJR伯備線根雨−武庫間で保線作業中のJR西日本・米子保線区所属の労働者7人のうち4人が、岡山発出雲市行き下り特急電車「スーパーやくも9号」にはねられ、3人が死亡し、1名の労働者が負傷するという触車死亡事故が発生した。JR西日本は一切の責任を現場責任者の労働者に押しつけようとしている。動労西日本は満腔の怒りをもってJR西日本を弾劾する!
伯備線事故は起こるべくして起こった事故だ
伯備線事故は起こるべくして起こった事故だ。JR西日本は、100`以上で走行する高速列車が通過する線路上で、それも雪で見通しが悪い中、騒音のでる砕石を固める作業を「線路閉鎖」をせずにやらせていた。列車に遅れが出てダイヤが乱れたら作業中止にするべきであり、やむをえない時は見張り員を増員して常時両側に見張り員を配置するべきである。そうした労働者の要求を無視して作業を強制している安全無視のJRの規程が事故を起こしたのだ。
伯備線は山間でトンネルも多く天候も不安定で列車が遅れやすく、新幹線との乗り継ぎ問題や、単線区間を100`以上で走行させる特急列車によって事故が多発している区間だ。1969年2月13日に触車事故で作業中の労働者6名が死亡し、1998年2月10日には線路巡回中の保線労働者が死亡している。単線区間で列車ダイヤが乱れているのに、特急を100`以上で走行させ、その中で保線作業をさせるなど言語道断である。JRは労働者の命を虫けらのようにしか考えてないのだ。
また国鉄時代には配置されていた駅の運転取り扱い要員の廃止も事故原因の一つである。国鉄時代は作業責任者は直接駅の運転取り扱い要員に電話をかけて列車の通過を確認してから作業していた。それがJRになって合理化によって駅の運転取り扱い要員が全て廃止された。ローカル線はほとんどが無人駅になった。駅こそ安全運転の要なのに!である。運転指令は米子CTC(運行管理システム)の画面を見て指示しているがそれで安全が確保できるはずがない。この事故は安全無視・営利優先の経営施策を一貫してとりつづけてきたJR西日本にすべての責任がある。昨年の4月25日の尼崎事故、12月25日の羽越線事故と同じく、国鉄分割・民営化にいっさいの原因がある。3人の仲間は、JR西日本によって殺されたのだ!
87年国鉄分割・民営化と労組破壊のもとで、労働組合つぶしの国家的不当労働行為が行われ、20万人の労働者が首を切られ、200人をこえる仲間が自ら命を絶った。そして、JR体制になって極限的な要員合理化を行い、「安全」が完全に破壊された。不当労働行為を繰り返し労働組合つぶしを最優先し、「安全」など「儲け」にならないと徹底的に排斥してきたのが、JR西日本をはじめとするJR各社である。
教育で労働者に事故責任をおしつけ、合理化を強行する「安全性向上計画」を拒否しよう
一切の原因はJR西日本と「安全性向上計画」にある。現在でも保線業務の合理化は極限状態なのに、JR西日本は昨年11月8日、施設関係業務の見直しとして、保線△60名、土木△40名、建築△40名、合計140名にも上る人員削減を提案してきている。これまでJR社員で行ってきた検査業務の責任体制を「事業者認定制度」によって、下請け会社に丸投げしようとするものだ。この提案では、検査業務という安全の根幹を制する業務を、下請けに安い単価で丸投げし、「判断業務」だけJR社員が行うという。担当線区の線路状態を熟知した者が検査業務を行うという体制が廃止されるのだ。国鉄以来、現場に蓄積されてきた鉄道固有の技術力は、この外注化によってバラバラに解体される。そして、下請けから孫請けへと、次々と安全責任が転嫁され、安い下請け単価によって要員の切りつめ、労働強化が下請け・孫請け労働者に強いられていくのだ。まさに伯備線事故が再び繰り返されようとしているのだ。これが「安全性向上計画」の下で行われようとしているのだ。保線だけではない。JR西日本は全職場で要員削減・合理化をすすめている。
「安全性向上計画」を守らせたら今回のような事故は起きないのか? 否だ! 「安全性向上計画」こそ、JR資本の利潤追求(搾取)の源泉である要員削減、過密ダイヤ、動乗勤改悪、労働強化、外注化など、安全の根幹部分について何ひとつ改善しようとせず、「利潤追求の聖域」として労使一体の下で護持しようとするものだ。「安全を最優先する企業風土」といううたい文句で労働者への「安全教育」を強化し、これによって労働者に安全責任を転嫁し、資本の安全責任を拒否しようとしているのだ。まさに、「安全性向上計画」は「安全性破壊計画」なのだ。利潤追求によって安全を破壊するのが本性の資本と闘わないで、労働者や乗客の命を守ることも安全を確保することもできるはずがないではないか。
職場から反合理化・運転保安闘争にたとう
闘いなくして安全なし! 労働者の命を奪い、線路という安全基盤を根底から破壊する、JR西日本資本の施設関係業務の要員削減・外注化攻撃に対して、全職場から闘いをまき起こそう。安全の確立は、労働組合の責務である。われわれが幾度となく訴え、そして闘い続けてきたとおり、そもそも資本主義社会である限り、企業は直接的利益を生まない保安部門への設備投資や保安要員の配置などを軽視、無視し続ける。とくに、現在のように、政府・財界をあげて競争原理が囃し立てられ、弱肉強食の論理で社会全体がローラーをかけられようとしている状況のもとでは尚更のことだ。だからといって、安全を軽視無視することは絶対に許されない。
労働者の闘いや抵抗や労働組合の闘いがあってはじめて「安全」を資本に強制することができるのだ。その闘いは、鉄道に働く労働者、労働組合の責務だ。労働組合・労働者が階級的に団結していれば、安全を無視した資本の理不尽な命令・指示をはねのけることはできる。
現に動労千葉は、レール破断と尼崎事故に対して、@無理な回復運転はしない、A制限速度は遵守する、B危険なときは勇気をもって列車を止める、C走行中に運転通告受領券を書かない、Cレール破断区間での減速運転などの運転保安行動を、連日運転席に二人の職制が乗り込んで業務命令を乱発する中で3ケ月間にわたって貫徹し、ついに22`にわたるレール交換を実現し、今も運転保安行動を継続している。
また、動労千葉は、この5年間の闘いで、検修業務の全面的な外注化攻撃を千葉支社だけは今も阻止し続けるという大きな成果を実現し、この闘いで強制配転者の検修区復帰をかちとり、そして今年、シニア制度による再雇用からの差別攻撃もついに打破した。矛盾をついて、ハラをすえて闘えば、JR体制を揺るがすことができることを具体的に示しているのだ。
今こそ、職場から反合理化・運転保安闘争を強化しよう。動労西日本は06春闘を「反合・運転保安春闘」として闘う。ともに闘おう!
2006年1月26日
国鉄西日本動力車労働組合
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週刊『前進』(2233号3面1)(2006/02/13)
自治労臨大 国民投票法粉砕へ激闘
公務員制度改革容認許さぬ 本部に現場の怒り噴出
小泉への屈服を狙った臨大
1月26〜27日、自治労第77回臨時大会が東京・厚生年金会館で開かれた。4大産別の1〜3月臨時大会・中央委員会決戦の皮切りだ。闘う自治体労働者は臨大で、連合中央と結んで自治労を改憲勢力へ転換させようとする自治労中央の策謀を暴露・弾劾し、その破綻(はたん)を満場に突き出した。4大産別をめぐる攻防は改憲攻撃との当面する最大の激突点だ。
しかし自治労中央本部は、あくまで5月25〜26日中央委員会(新潟県長岡市)で自衛権と戦力を認める平和基本法=改憲方針をまとめ、8月大会(さいたま市)で決定しようとしている。絶対に阻止しよう。自治労組合員の圧倒的多数は改憲反対、戦争反対である。闘う陣形を強化し、1月臨大決戦を突破口に5月中央委〜8月大会決戦を闘い、自治労の改憲勢力化を阻止しよう。自治労を階級的労働運動として再生させよう。
臨時大会は、地公3単産(自治労、全水道、都市交)の組織統合を目的に掲げて開かれた。だが組織統合は、民営化攻撃と闘わない自治労が組合員数を減らし、影響力を低下させてしまうことを他単産との統合で隠蔽(いんぺい)しようとするものでしかない。
臨大の最大の狙いは自治労の改憲勢力化なのである。自治労中央は連合路線のもと、小泉の1・20施政方針演説に賛成を表明するために臨大を開いたのだ。
(写真 労組交流センターは自治労臨時大会の代議員に国民投票法案阻止・改憲阻止、公務員制度改革反対、闘う方針を打ち立てようと訴えた【1月26日 東京・厚生年金会館】)
民営化推進の連合中執決定
1月16日、連合中央と政府代表との政労協議で、連合は労働基本権協議と引き換えに公務員の定数・総人件費削減、公務員制度改革(能力・成績主義導入、身分保障撤廃など)をのむことを政府に約束した。
1月19日の連合中執会議は「公共サービス・公務員制度のあり方に関する連合の考え方」を発表し、「有効かつ効率的な政府」「信頼と安心の行政・公共サービス」を掲げて地方自治破壊と民営化への協力を表明、能力・成績主義的人事・賃金制度を提案した。同時に連合中執会議は「国の基本政策に関する連合の見解(案)=7・14見解=の取り扱いについて」を決定した。7・14見解=改憲方針を「3役会のまとめ」として残し、民主党と協議して国民投票法案を推進する方針を提起している。
1月20日、小泉首相は施政方針演説で今通常国会に国民投票法案、行革推進法案―公務員制度改革、市場化テスト法案を提出すると言明した。小泉政権5年間の矛盾が爆発し、規制改革・民営化路線の大破綻があらわになる中で、小泉=奥田はなおも改憲と戦争、民営化と労組破壊の攻撃をエスカレートさせると宣言したのである。この攻撃の最大の標的が自治労と日教組、国労、全逓の4大産別労働組合なのだ。
労組交流センター自治体労働者部会は2日間にわたって情宣を展開し、大会討論を牽引(けんいん)した。1日目は、ビラで大会の第2号議案「当面の闘争方針(案)」の「憲法問題への取り組み」(別掲)に批判を集中し、平和基本法制定方針の撤回・削除をかちとり、国民投票法案阻止・改憲阻止、公務員制度改革絶対反対の闘う方針を打ち立てることを訴えた。また経済同友会が昨年11月4日に出した「地方公務員制度改革への10の提言」を全面的に批判し、動労千葉のように闘おうと訴えたリーフレットも配布した。
大会討論は1日目から白熱化した。香川、岩手、茨城の代議員が地域給、給与削減、査定昇給など給与構造見直しの大攻撃との闘いを訴えた。茨城の代議員は特に指定管理者制度が首切りにつながることを指摘、闘わない本部を厳しく追及した。静岡の代議員は「国民投票法案は憲法9条改悪につながる。法案そのものに反対を」と要求した。
本部の金田書記長はのらりくらりとした答弁で批判をかわしつつ、国民投票法案については「改憲が日程に上っていない今の段階でその手続き法である国民投票法は必要ない」と述べた。しかし改憲と国民投票法案への怒りも危機感もなく、本部がなんら反対していないことが明らかとなった。また金田書記長は、平和基本法問題について「論議を重ね、5月中央委員会で論議する」と答え、8月大会で最終決定・承認に持ち込むことを示唆した。
民営化、賃下げ、公務員制度改革と真っ向から対決する方針を提起できない自治労本部は、改憲、戦争ともまともに対決できず、自治労を組合として衰退させている。それを組織統合でごまかそうとしている。自治労を現場からつくりかえ、闘わない自治労本部を打倒しなければならないことが明らかになった。
2日目の労組交流センターのビラは、特に1・19連合中執決定を鋭く暴露し、この決定に同意した自治労本部中執を連合中央とくし刺しにして批判した。
1・19連合中執決定の核心は、憲法を始めとする「国の基本政策」にかかわる問題について「さらに検討を深め……その都度対応する」とし、「国民投票法案については民主党とも協議しながら具体的な対応を図っていく」と方針提起していることだ。自治労中央は、改憲に向けてこの連合中執決定を忠実に実行に移そうとしているのである。
カクマルが「連合の改憲支持方針をついに葬り去った」(1・26ビラ)と「勝利宣言」を発したことは、武装解除を組織する許し難い行為である。「9条『改正』集約せず 連合 加盟労組の批判で変更」と1・19決定を『赤旗』で絶賛した日本共産党スターリン主義も同罪である。
改憲勢力化絶対阻止しよう
労組交流センターは、民営化攻撃との闘いの核心として市場化テスト法案絶対反対も呼びかけた。市場化テスト法は、あらゆる職場を丸ごと民間に売り渡す大民営化推進法である。行政職も現業職も職場から追い出され、自治体事務が民間資本の利潤追求の手段に変わる。公共性、安全性はないがしろにされ、労働条件も破壊的なものとなる。
ところが自治労中央は「質のよい公共サービス」を対置し、「市場化テスト法に雇用の確保を明記せよ」と求める300万署名運動を提起している。市場化テスト法の成立を前提にした屈服方針でしかない。
大会討論では、このような労組交流センターの暴露、訴えに呼応して代議員が次々と質疑に立ち、本部を追及・弾劾した。
高知の代議員は地方行革との闘いを宣言し、自治労、日教組をつぶすという『文藝春秋』12月号森発言について本部の見解を求めた。秋田、群馬、福島、愛媛、沖縄、山形の代議員は、地域給、査定昇給・能力実績主義の給与構造見直しに強い反対を表明し、全国統一闘争を訴えた。
また長野、山形の代議員は「政労協議ではなく、闘って労働基本権をかちとるべきだ」と原則を対置した。秋田の代議員は「ヤミ専」キャンペーンと闘う方針を出せと迫った。
富山、愛知、山形、新潟、長野、北海道の各代議員が市場化テスト法案、指定管理者制度など民営化との闘いの強化を主張した。
全国一般評議会の代議員は「連合の『国の基本政策』議論に積極的に参加する余地はあるのか」「国民投票法案が拙速でなければ賛成するのか」と質問した。山形、広島、沖縄の代議員も、改憲と戦争のための国民投票法案に反対した。
また多くの代議員が、改憲をめざし労組を敵視する前原民主党を支持し続ける自治労本部を弾劾した。
答弁に立った金田書記長は「連合の国の基本政策検討委との議論を継続する」と述べた。また「この機を逃せば労働基本権の実現はない」と言い、政労協議での公務員制度改革への屈服を正当化した。これらの問題に関しては植本副委員長も同様の答弁をした。金田書記長は「ヤミ専」問題で活動家に屈服を迫り、市場化テスト法案については300万署名運動方針をあくまで押し通した。また植本副委員長は、森発言に関して労働組合として団結を固めて反撃する構えがない姿をさらけ出した。前原民主党支持を明言し、国民投票法案について「拙速だから反対」とし、民主党と協議して国民投票法案がつくられれば賛成することを示唆した。本部答弁は臨大議案と連合中執決定そのままの繰り返しに終始した。
連合路線のもと、裏切りと屈服を深める自治労中央を弾劾しよう。闘う自治体労働者は、自治労の改憲勢力化・翼賛組合化を阻み、闘う労働運動の新たな潮流をつくりだそう。自治体労働運動の命運をかけて5月中央委に向かって闘い、8月大会決戦の勝利を切り開こう。
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第2号議案 当面の闘争方針(案)
【憲法問題への取り組み】自民党の「新憲法草案」の発表、憲法改正の世論づくりの動きを注視し、平和基本法についての検討を進め、5月中央委員会をメドに自治労としての考え方をまとめます。また、連合の国の基本政策議論に積極的に参加します。国民投票法案については、拙速な法制定には反対の立場で、自治労国会議員団との協議、協力政党への働きかけなどの国会対策を強めます。
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週刊『前進』(2233号4面1)(2006/02/13)
帝国主義の自衛権を承認し改憲阻止の統一戦線に敵対
日本共産党24回大会を批判する
川武信夫
日本共産党は1月11〜14日、第24回党大会を開いた。前大会(04年1月)で、革命の主体である労働者階級を追放した新綱領を決定した日本共産党は、その後の2年間、小泉=奥田体制への屈服路線を徹底化させてきた。その結果が、党内外での矛盾の爆発と不破議長の退陣である。日本共産党の裏切りに次ぐ裏切り、底なしの転向を体現してきた不破体制を引き継ぐ志位委員長のもとで、このスターリン主義者の党には、帝国主義への一層の屈服の道しかない。大会決議と路線は、運動の現実との矛盾をますます激化させる。闘う労働者人民、そして党員大衆からも、激しい怒りと厳しい批判が爆発している。以下、大会決議の核心問題を批判する。
不破体制の破産と終えん 党組織の危機は一層深刻
今回の大会での大きな出来事は、長く日本共産党のトップに立ってきた不破哲三が議長を退任し、一常任幹部会員に降りたことである。これは日本共産党の歴史的な危機と破産を表す決定的な事態である。
不破は、1960年代の宮本顕治書記長体制のもと、いわゆる「自主独立」路線の確立過程で急速に頭角を現し、70年に書記局長に就任、以来三十数年にわたって日本共産党中枢指導部に居座り続けてきた。
82年に委員長、2000年には議長に就任し、名実ともに第一人者になってきたが、この過程は、世界的なスターリン主義の歴史的破産の進行の中での、居直りと裏切りの歴史であった。ソ連スターリン主義の崩壊に際して、それが世界革命の裏切りと一国社会主義論の必然的な帰結であることを認めず、それが自らの破産にほかならないことを覆い隠して、帝国主義への一層の屈服の路線の中に組織的な延命の道を見出していった。
特に不破は、マルクス主義の世界革命論、プロレタリア独裁論、プロレタリア自己解放論に完全に敵対し、「科学的社会主義」に関する膨大なペテン的「理論的」作業を行い、党内で他の追随を許さない地位を確立してきた。宮本が実権を失って以後は、完全にワンマン体制として党を牛耳ってきたのだ。だが何十冊の本を著しても、ペテンはペテンである。マルクス主義の背教者としての本性を覆い隠すことはできない。
この不破体制のもとで、90年代以降の底なしの屈服路線が推進されてきた。98年の「暫定政権(よりまし政権)に入るためには安保廃棄の方針を凍結する」、99年の「国旗・国歌法」制定の提唱、00年の22回大会での「自衛隊の有事活用」方針、「労働者階級の前衛党」から「日本国民の党」に転換した党規約の改定、04年の23回大会での「労働者階級」を一掃した綱領改定などなど。これらすべてが不破の指導のもとで行われてきたのである。
一言で言えば、不破は「資本主義の枠内での民主的改革」の名のもとに、資本主義の体制を壊さない範囲での改良要求をもって党勢を拡大しようとしてきた。これは、現に帝国主義が危機を深め、外に向かっての侵略戦争と内に向かっての階級戦争を強め、労働者階級に犠牲を集中してきている時に、これを打倒する闘いを抑圧・圧殺する意味をもっていた。
だが、この路線は、現実には党内に残っている戦闘的な要素をすべて抑圧し、排除するものであるために、逆に党勢を弱体化させ、国政選挙での連戦連敗を結果し、党員数、『赤旗』読者数の激減をもたらすものでしかなかった。今日の党勢の現実そのものが、議会主義政党としての日本共産党の完全な破産を証明していると言える。そして、その責任を明らかにしないまま、不破の退任発表となったのである。
日本共産党の指導体制として、不破の次が24歳下の志位であるということが、彼らの前途の展望のなさを示している。1950年世代の不破に続く60年安保世代、70年安保世代の指導部がいない、「新日和見主義」の後にやってきた世代の志位しかいないことの危機性である。つまり、60年安保闘争、70年安保闘争の世代は、すべて革命的左翼に席巻されて日共は世代的に陥没しているのだ。だから不破は、無理を承知でその不足を埋めるべく党を引っ張ってきたのである。だが、それもすべて破産したということだ。
帝国主義打倒のプロレタリア革命に徹底的に反対を貫くことを使命としてきた不破の末路がここにある。日共は、ますます党的求心力を失い、危機を深める。完全に打倒し、のりこえる時だ。日本共産党との闘いの大きな転機がやってきたのだ。
「世界は平和に向かう」?! 米日帝の戦争政策に屈服
日本共産党大会決議の第二章は、「二一世紀の世界の構造変化と日本共産党の立場」というタイトルを掲げ、世界は平和に向かいだした、と言っている。この時代認識、世界認識は『赤旗』新年号での渡辺治氏との対談でも、志位がしきりに強調していることである。この「世界の構造変化」とは、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす流れが、地球的規模で希望ある発展(をとげている)」ということである。
さらに志位は、アメリカ・ブッシュ政権の政策が平和の方向に変わってきたとさえ言っているのだ。すなわち「軍事力一本やりでは対応できない状況に直面して、米国政府のなかに、国際問題を外交交渉によって解決することを模索する動きがおこっている」、それを実証しているのが、北朝鮮の核問題解決のための6カ国協議の継続と米中会談の開催(05年11月)で、「中国との平和共存」を追求し出したと言うのだ。
どうしてこれが、世界の平和の流れへの構造変化なのか。日本共産党が大会を開いている最中でもその後でも、アメリカ帝国主義のイラク占領とイラク人民虐殺は続いているし、ブッシュは核開発問題をめぐって「イランには戦争も辞さない」と宣言し、「不安定の弧」、とりわけ中国と北朝鮮への侵略戦争の陣形である米軍トランスフォーメーションを、沖縄を重要拠点に強行しつつある。こうした世界戦争への過程が進み、アメリカ労働者人民に対する戦時下の盗聴・監視体制は、ますます強化されつつあるのが現実だ。
ところが、日本共産党は、ブッシュ政権が「軍事戦略」に代わって「外交戦略」をとりだした、という「リアルな分析」をできるようになったのは、新綱領で「アメリカの独占資本主義体制が将来にわたって帝国主義であると固定的に特徴づけているわけではありません」「また、現在の局面でも一国覇権主義が、いつでもどこでも、アメリカの対外政策の不動の特徴になるという機械的立場に立つものでもありません」(志位報告)ということを明らかにしたからだ、と言う。そして、これが「新しい綱領の帝国主義論の発展」だと言うのだ。これは、アメリカが「帝国主義」でなくなる時が、労働者階級人民の決起=革命によって打倒されることなしに来る、現在でも、アメリカの政策は帝国主義的な覇権主義一本やりというわけではないという、とんでもない議論である。アメリカの労働者人民に、帝国主義打倒の闘いをやめろと言うことだ。
そもそも帝国主義とは、資本主義の歴史的発展の一段階であり、金融独占資本を物質的社会的基礎として、必然的に世界市場の分割・再分割をめぐる争闘戦が世界戦争にいたる極限性をもって闘われる時代なのである。それを、日本共産党は、政府・支配階級の意思次第で変更できる「政策」としてとらえる、という根本的な帝国主義論のねじ曲げをやって、帝国主義の凶暴性、破壊性をおし隠し、平和的な幻想を労働者人民の間に植え付けようとしてきた。しかも今やそうしたまやかしの帝国主義論そのものさえ「修正」して、そもそもこの世に、帝国主義とか帝国主義による搾取と戦争と侵略がなくなりつつある、というとんでもない議論を、この帝国主義の危機のただ中で、叫び出したのである。
日本共産党が、世界が平和に向かっていると言うことの、もう一つの根拠は、「世界各地で、国際秩序の新たな担い手として、自主的な地域の平和共同体の動きが発展している」ことであるという。その例として、東南アジア諸国連合(ASEAN)などをあげている。帝国主義支配のもとでなぜ、こうした機構が「自主的な平和共同体」などと言えるのか。それは米日欧の帝国主義が相互に争闘戦を強めつつアジアを侵略し、自らの勢力圏としてつくりあげようとしている「足場」ではないか。
こうした諸機構を、日本共産党が「国際秩序の新たな担い手」などとして持ち上げる真の意図は、日本経団連・奥田の東アジア自由経済圏構想の後押しを申し出るためだ。
共闘拒否するセクト主義 11・5声明が党大会決定に
24回大会決議の何よりも実践的な特徴は、「憲法擁護闘争」において、「国際テロリズムを賛美する集団による妨害を許さないこと」が「党の積極的役割」であると言っていることである。日本共産党は、闘う労働者人民の改憲闘争を始めとする日本階級闘争のさまざまな重要な分野における統一戦線の前進に恐怖し、その破壊に全力をあげることを宣言したのだ。
改憲阻止闘争は、06年から07年にかけての日本階級闘争の死活をかけた課題である。現在、自民党と日本経団連が一体化して強行しようとしているのは、現憲法の部分的改定などではなく、国家全体を、民主主義のひとかけらもない、徹底したブルジョア独裁国家としてつくり変え、侵略戦争への総動員を思うままにやっていこう、それ以外に日本帝国主義の生き延びる道はない、という階級的意志をもった攻撃だ。言うまでもなく、その焦点は、国家としての軍隊の保持と武力行使を放棄した第9条、とりわけその2項である。
日本共産党が今回の大会決議で掲げている「憲法改悪反対」の内容は、どんなものか。
「アメリカの先制攻撃の戦争に参戦するために、自衛隊を『戦争のできる軍隊』にし、日本を『戦争をする国』につくりかえること―ここに憲法九条改変の最大の核心がある」「『アメリカとともに海外で戦争する国づくり』という憲法改定の『正体』」
日本共産党の改憲論の反動的核心の第一は、「アメリカの先制攻撃の戦争に参戦するため」だから反対と言っていることである。すべては、アメリカのためだから賛成できない、言い換えれば、「日本のための軍隊」「日本のための戦争」なら賛成だ、ということだ。だが、現在の日本の「平和と安全」とは、日本帝国主義のための平和と安全であり、日本のための軍隊、戦争とは、帝国主義の軍隊、帝国主義戦争以外にはありえない。
9条2項をめぐる攻撃において、日帝が初めて公然と「侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立及び国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する」(自民党新憲法草案)と「自衛軍=軍隊の保持」を明記し、また「帰属する国や社会を愛情と責任感をもって自ら支え守る責務を共有し」(同)と「防衛義務」を打ち出したことを、日本共産党は正面から批判しようとさえしていない。
それはなぜか。日本共産党自身が、「自衛権承認」「自衛隊の有事活用」論に立っているからだ。日本共産党は、すでに第22回党大会(00年11月)決議で、「憲法九条は、国家の自衛権を否定していない」「必要に迫られた場合には、自衛隊を国民の安全のために活用することは当然である」(同)と打ち出し、9条改憲への屈服を開始していたのだ。このような「アメリカのためでなく日本のために」という日本共産党の立場は、「日本の安全と平和を守るための」「自衛戦争」の名のもとに強行されていく日帝のアジア侵略戦争を排外主義的に容認するものだ。
「グローバル化の流れというのは避けることのできない流れですけれども、それが覇権主義を押しつける流れではなくて、本当に対等平等の民主的関係を築いていくということを構想することが、じつは日本の経済界、企業にとっても大局的にはプラスになるんです。その最大の資産が九条で、最大の障害物が靖国問題」(新春対談の志位発言)
なんと日本共産党は、日帝のアジア侵略の推進のために9条を有効に使え、とブルジョアジーに提言しているのだ! これが、日本共産党が今大会で打ち出した改憲運動の本質だ。
こうした「自衛戦争賛成」「自衛隊承認」の立場に立つ日本共産党は、「憲法改悪を許さない運動」を実際には、どのように推し進めようとしているのか。
「日本共産党は、憲法改悪反対の一点で国民的多数派を結集する運動、米軍基地強化を許さないたたかいなど、一致する要求で立場の違いをこえた共同をつくりつつ、日米安保条約解消の国民的世論を広げるために奮闘するものである」
日本共産党にとって、改憲阻止の闘いは、自民党・日本経団連=日本帝国主義ブルジョアジーのアジア侵略戦争へむけた大攻撃、国家の大改造攻撃を、労働者階級人民を中軸に、根本から打ち破る闘いではなく、「国民的多数派」を結集する運動なのだ。
日本共産党のいう「国民的多数派」の結集とは、資本家階級とともに一緒に進めるものである。
大会決議は、「わが党は、この運動(九条の会)が、立場の違いをこえて広く発展するように、その一翼をになって積極的な役割をはたす」(第三章)などとしているが、そのすぐ後に、「改憲勢力の『論理』を打ち破り、憲法擁護闘争の大義と展望を明らかにするために、党独自の積極的役割を発揮して奮闘する。国際テロリズムを賛美する集団による妨害を許さないことは、憲法擁護闘争が、国民的・国際的大義をもって発展するうえでも重要である」と叫んでいる。日本共産党のセクト的、党的利害のもとに、「テロ支持」なる口実をつくり上げ、闘う勢力を排除し、統一戦線を破壊し、改憲阻止闘争の発展を押しとどめようとしているのだ。
05年から06年へかけての日本階級闘争において、「外に向かっての侵略戦争、内に向かっての階級戦争」という日本帝国主義の攻撃の激化に対して、さまざまな産別、職場、学園、地域、戦線、領域で、闘う労働者人民は、既成指導部(連合・全労連などのナショナルセンター、社共などの野党諸政党)の制動を突き破り、壁を打ち崩して、多様な形の統一行動を闘い、統一戦線を形成してきた。「日の丸・君が代」攻撃、「つくる会」教科書との対決において、国鉄1047名闘争において、そしてまた、沖縄・辺野古を先頭とする米軍基地との闘いにおいて、文字どおり「立場の違いをこえて」共通の闘いに合流してきた。
この流れは、06年において、国鉄鉄建公団訴訟闘争における強力な統一戦線の結成、すでに開始されつつある「日の丸・君が代」闘争において、歴史的な歩みを踏み出しつつある。
こうした労働者人民の嵐のような闘いの前進に、ブルジョアジー・国家権力とともに震え上がったのが、労働者階級の革命的決起を何よりも恐れるスターリン主義の党=日本共産党だった。とりわけ国鉄戦線において、教育労働者戦線において、その他さまざまな領域での闘いにおいて、闘う部分の合流がかちとられることを、先頭になって妨害してきたのが、日本共産党だった。
その日本共産党の破壊工作のきわめつきが、昨年の『赤旗』11・5声明だ。「憲法運動は無差別テロ支持勢力にどういう態度をとるべきか」と題したこの声明は、「危険な勢力を共同に加えるわけにはいきません」と言って、運動の分断を図ったのだ。
しかし、この声明は、現実に小泉=奥田の攻撃と階級的戦闘的大衆的に闘う現場から、手厳しい批判を受けた。また、大会直前に、日本共産党が新社会党からの「政党間共闘」の申し入れさえも拒否したことに対して、弁護士戦線を始め、日共党内からも、激しい抗議の声がたたきつけられている。
大会決議での統一行動破壊の文言は、昨年11・5声明を「党大会の決定」に高めたものである。
「自衛権承認」「自衛隊活用」論の日本共産党に、改憲阻止闘争とその統一戦線を解体させてはならない。労働者人民の決起を押さえこもうというスターリン主義党の策動を、闘う労働者人民の力で打ち破り、憲法阻止闘争の勝利をかちとろう。
日本共産党内外で、闘う統一戦線のために悪戦苦闘する労働者のみなさん。今こそこのような日共指導部と決別し、のりこえて、革共同とともに闘おうではありませんか。
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週刊『前進』(2233号7面3)(2006/02/13)
ハマスが選挙で圧勝 パレスチナの重大情勢
包囲重圧強める米欧日帝 問われる戦う路線の堅持
米帝の中東和平策動を痛撃
1月25日に行われたパレスチナ評議会(国会に相当)議員選挙でイスラム政治勢力のハマス(イスラム抵抗運動)が過半数の議席を獲得したことによって、パレスチナ情勢は新たな激動局面に突入した。
自爆戦闘を始めとして激しい武装闘争を展開してきたハマスの圧勝は、米帝とイスラエルに衝撃を与え、恐怖にたたき込んでいる。米帝・イスラエルは、自治政府指導部を屈服させて武装解放闘争を放棄させる一方で、すさまじい軍事弾圧でパレスチナ人抹殺攻撃を長期間に渡って展開してきた。にもかかわらず、パレスチナ人民がそれに屈せず、自治政府指導部の屈服と腐敗を弾劾し、米帝・イスラエルと徹底的に対決して戦う決意を鮮明に示したからだ。
それは米帝の一連の中東「和平」策動と中東戦略を根底から粉砕する破壊力を秘めている。だからこそ米帝とイスラエルは、新たなパレスチナ解放運動破壊攻撃に打って出ようとしている。恐るべき弾圧と苦難の中にありながら、帝国主義の中東支配を打ち砕く闘志をみなぎらせて民族解放・革命戦争を貫徹しようとしているパレスチナ人民と連帯し、今こそ決起しよう。
(写真 指導部の辞任を求めて自治政府にデモするファタハ支持者【1月18日】)
ハマスはなぜ支持されたか
ハマスの勝利は圧倒的であった。パレスチナ評議会の総議席132のうち、ハマスは過半数を越える74議席を確保し、ファタハの獲得した議席数45をはるかに上回った。初の評議会選挙参加で、30〜40%の支持率という選挙前の予測を大きく覆した。これによってハマスは議会で単独過半数を占め、首相と内閣員を選出し、「ハマス政府」を形成することが可能になった。
だが、ハマスの勝利はパレスチナ人民がイラン型のイスラム国家を選択したことを意味しない。中東では最も世俗的で宗教勢力の影響力が弱いと言われるパレスチナ人民がハマスに投票したのは、米帝とイスラエルに屈服して武装解放闘争を放棄し、汚職と腐敗にまみれた旧世代が支配するファタハ主導の自治政府を打倒しなければ民族解放の展望はないと感じているからだ。パレスチナ人民は、イスラエルとパレスチナの相互承認に基づくペテン的な「和平」プロセス推進を拒否し、2000年のインティファーダ以来、60件近くの自爆戦闘を始め激しい武装抵抗闘争を主導してきたハマスが自分たちの闘う意志を代弁しているとして選択したのだ。
これに対してハマスの指導部は、米帝とイスラエルの攻撃を跳ね返しながら、パレスチナ人民の強烈な闘争意志を受け止める闘争路線の構築を迫られている。米帝やEU帝国主義、日帝などは、ハマスが武装闘争を継続する限りハマス主導の自治政府を承認せず、一切の経済援助を断絶すると脅迫している。現在の自治政府予算の3分の2近くがこれら諸国からの援助であり、これが停止されればすでに失業率30〜40%のパレスチナ経済は一挙に崩壊の危機に直面する。
これに加え米帝やイスラエルはハマス政府の樹立を阻止するために、武装闘争を継続するならばハマス指導部の暗殺を含めて徹底的な軍事的弾圧を加えることを公言している。またイスラエルは、ハマスとの対話の条件として、@ハマスの武装解除、Aイスラエルせん滅を盛り込んだ綱領の破棄、Bイスラエル・パレスチナ間のすべての合意事項の受諾を明示することなどをあげ、ハマスに屈服を迫っている。
こうした中で現在、ハマス指導部は予想以上の圧勝にとまどいながらも、公式には武装闘争継続を表明している。しかし他方で、第三者を仲介としたイスラエルとの対話の可能性や長期停戦を示唆し、とりあえず67年の第3次中東戦争以前の領土回復を目指す「現実的方策」の選択も考慮に入れている。米帝とイスラエルからのすさまじい重圧の中でハマスが米帝・イスラエルと対決して闘う路線を堅持できるか否かが問われている。
若手活動家の決起の始まり
評議会選挙でのファタハ旧世代指導部の敗北と、選挙後の一部のハマス最高指導部の動揺に対し、両組織内で武装解放闘争を継続する決意を固めている新世代の指導部と活動家が激しい危機感を燃やして決起し始めている。
26日には、各地域で指導的立場にあるファタハの若手活動家数百人がラマラに結集し、自治政府元首相のクレイの関連会社が、イスラエルによる分離壁建設に関与し利権追求に走るという破廉恥極まりない汚職・腐敗を繰り返していたことを激しく弾劾した。同時に、ファタハの現指導部あてに選挙敗北の責任を問う書簡を送った。これらの若手活動家は、これまで旧世代の指導部を支えて日常活動や選挙活動の中軸を担ってきた部分だと言われており、その反乱は旧世代指導部にとって決定的な打撃となる。
27日にはガザで数千人のファタハ支持者が現指導部弾劾の大デモを展開し、28日には西岸の自治区のラマラでも数千人のファタハ支持者がデモで自治政府議長府や評議会議場を取り囲み「敗北の原因は執行部の腐敗だ」と弾劾した。また同日、ファタハ系の武装組織のアルアクサ殉教者旅団のメンバー数十人が評議会の建物を占拠し、ファタハ中央委員会の指導者の辞任を要求した。西岸のナブルス・トルカレムなどでも同様のデモが行われた。
第1次から第3次のインティファーダを闘ったファタハとハマスの新世代の人びとは、米帝やイスラエルの支配と抑圧、民族抹殺政策を粉砕するために真剣に武装解放闘争を展開してきた。その闘いの成果が、パレスチナの伝統的名家などの出身である旧世代指導部の米帝とイスラエルへの屈服政策で破壊されようとしていることに激しい怒りを感じているのだ。
ファタハの新世代指導部は、米帝とイスラエルに屈服しつつ利権のみを追求する旧世代指導部の打倒なしに、これ以上民族解放闘争の発展はないことをはっきりと認識し、自らがとってかわって指導部に躍り出ようとしていのだ。
闘う統一戦線の形成がカギ
またハマスの新世代指導部も、04年の精神的最高指導者ヤシン師とその後をついだランティシ師のイスラエルによる暗殺などの相次ぐ暗殺以後、自爆戦闘を控え、武装解放闘争路線を後退させ始めたムスリム同胞団出身の一部の旧世代指導部に不満を感じている。
彼らは87年12月に始まる第1次インティファーダ以来、自治政府指導部が放棄した地域の医療、教育、職業訓練活動、弾圧の犠牲者の救済などの活動を基礎にして急速に大衆的基盤を固めながら、ファタハの新世代指導部と連携して対イスラエル武装闘争を組織してきた。また彼らは、旧世代指導部にはパレスチナ社会のイスラム化という方針しかなく、階級社会の解体と真の民族解放を実現するための戦略的展望も方針も持たないことに大きな不満を抱いていた。
パレスチナ解放闘争の展望は、これらの新世代指導部とその背後にいる膨大な層のインティファーダ経験者が握っている。彼らがパレスチナの解放のためにそれぞれの旧世代指導部の限界をのりこえ、また諸困難を克服して新たな統一戦線を形成し、真の前衛へと飛躍することによってのみパレスチナ解放運動の爆発的発展は可能になる。
これに対しファタハの旧世代指導部は、自治政府の形成で背景に退いたPLOを再活性化させ、PLOを通じたイスラエルとの対話路線に転換することで危機を乗り切ろうとしている。またハマスやファタハの新世代指導部のもとにある軍事力と対抗するため、アッバス議長のもとにパレスチナ警察・治安機関員6万人を掌握しようとしている。
だがファタハの旧世代指導部が米帝やイスラエルと連携しながら、パレスチナ解放運動の戦闘的発展に制動をかけようとしても、今回の選挙で突きつけられた人民大衆の怒りはますます強まり、旧世代指導部の打倒が不可避な情勢がいっそう成熟していくであろう。
パレスチナと連帯し闘おう
わずかな利権と引き換えに自治政府を屈服させ、ペテン的「和平」プロセスに巻き込むことでパレスチナ解放闘争を鎮静化させ、民族抹殺を推進しようとする米帝とイスラエルの目論見が、ハマスの選挙圧勝とファタハの旧世代指導部の決定的後退を契機とする新たな激動期への突入で全面的に崩壊するのは必至だ。
米帝とイスラエルに屈服し続けた旧自治政府指導部の没落によって「和平」策動が崩壊する中で危機にあえぐ米帝とイスラエルは、いっそうパレスチナ民族抹殺の攻撃を激化させるであろう。とりわけイスラエルは、シャロンの事実上の死亡とガザ撤退問題をめぐるリクード党の分裂、エジプトの国会議員選挙でのムスリム同胞団の大躍進(15議席から88議席になり第2党となった)という事態の中で、パレスチナ解放運動の高揚に対する激しい危機感からさらに凶暴な攻撃に打って出るであろう。
だが民族解放を自らの力で闘い取ろうとするパレスチナ人民の熱情は、決して衰退していないことが今回の選挙であらためて鮮明となった。パレスチナ人民は新たな指導部を選択し、そのもとに断固たる武装解放闘争に決起するだろう。旧世代指導部を打倒し、米帝・イスラエルと対決するという二重の困難な闘いに勝利し、パレスチナ人民の闘いはさらに激しく燃え上がるだろう。
英雄的に闘うパレスチナ人民と連帯し、イラク人民・ムスリム人民と連帯して、今こそ決起しよう。4大産別決戦を軸とする今春決戦の中で、イラク反戦闘争を爆発させ、世界革命へ進撃し闘おう。
〔丹沢 望〕
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