ZENSHIN 2004/02/23(No2138
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週刊『前進』(2138号1面1)(2004/02/23)
陸自派兵阻止から3・20へ
動労千葉ストライキと連帯し3・6春闘集会に総決起しよう
小泉=奥田の賃下げ・年金改悪粉砕を
日本帝国主義・小泉政権の自衛隊イラク派兵の強行に対して、すべての労働者階級人民の怒りを爆発させ、3・20日比谷野外音楽堂への総結集をかちとろう。日本中の労働者人民のすべての怒り、すべての反戦の意志を3・20首都に根こそぎ集めよう。日帝が新たな15年戦争に突入する歴史的なこの時に立ち上がらなかったら、人民の闘いは圧殺されてしまう。3・20の10万人大結集によって、日帝国家権力、ブルジョアジーと労働者階級人民の力関係を逆転し、闘いの新しい時代を切り開くのだ。そしてこの3・20大爆発を切り開くものとして、2〜3月、旭川を始めとする自衛隊出兵阻止の現地闘争を闘いぬこう。小泉=奥田路線と対決し、動労千葉のストライキを先頭に、3・6東京の首都圏春闘討論集会に総結集しよう。春闘の階級的戦闘的爆発をかちとり、3・20大結集に向かおう。
第1章 大量破壊兵器は完全なウソ
米英日帝国主義によるイラク侵略戦争の開戦「3・20」から1年目を前にして、イラク人民・ムスリム人民の民族解放闘争、反米ゲリラ戦争は一層強まっている。それは、米帝の侵略戦争と軍事占領がいかに理不尽で反人民的なものであるかを日々告発している。
米帝がイラク攻撃開始の最大の口実とした「大量破壊兵器(WMD)の存在」はまったくウソだったことが今やあまりにもはっきりした。米政府の調査団長だったデビッド・ケイが「WMDの証拠は一切なく、保有していると判断した米情報当局の分析は誤りだった」と米上院軍事委公聴会で証言したのだ。ケイは、「WMD疑惑」の破産がはっきりした昨年6月になってブッシュが送り込んだ新たな調査団だ。そんな工作までしても、ないものを「ある」とねつ造することはできなかった。
こんな途方もないウソで米帝は開戦に踏み切り、小泉は「問題は大量破壊兵器を保持するイラクの脅威にどう対峙するかだ」と言って真っ先に米帝を支持したのだ。そしてその結果起こったことは何か。米英帝の大量破壊兵器をフル動員して、イラク人民の頭上に雨あられと爆弾を降り注ぎ、何千人、何万人もの人民を大量虐殺したのである。
日帝・関東軍による柳条湖事件、ベトナム侵略戦争でのトンキン湾事件など、いつも侵略戦争強行の結論が先にあり、そのためにどんな卑劣なデッチあげも平然とやるのが帝国主義というものだ。
まさにこの戦争は、帝国主義の侵略戦争である。フセイン政権を転覆し、イラクを植民地支配し、中東石油支配を独占するための戦争である。何の正義性もない。帝国主義間の対立を極限化し、ついには世界戦争にいたる戦争の始まりなのである。それは、帝国主義として延命するためには不可避の戦争である。帝国主義を打倒することによってしか阻止することはできない。だから、どんなに破産しても、ベトナム以上の泥沼化がはっきりしていても、米帝はイラクから手を引くことはできないのだ。
米帝の、北朝鮮に対するあらゆる排外主義宣伝も、スターリン主義の反人民性を逆手にとった、北朝鮮侵略戦争を強行するためのウソとデマである。
第2章 空前の国際反戦闘争爆発を
このイラクに、日帝は自衛隊を次々と送り込んでいるのだ。2月8日、陸上自衛隊本隊第1陣がサマワに入った。9日には参議院でイラク派兵承認案が可決された。ついに日帝は、泥沼的な侵略戦争、世界戦争の過程に深々と突入した。
小泉がいくら「人道復興支援だ」とか「戦争ではない」と取り繕おうとも、自衛隊がCPA(米占領当局)のもとで、占領軍の一翼としてイラク侵略戦争に参戦し軍事占領に加わることは明白である。
日帝は陸海空の3自衛隊をさみだれ的に出兵させることで、なしくずし的に人民に押しつけようとしているのだ。これ自体が派兵阻止闘争の高揚におびえる日帝のこそくなやり方だ。
出兵する自衛隊幹部が「誇らしげに」マスコミに登場し、愛国主義をあおり「日の丸」の旗に送られて出兵することが演出されている。実に戦慄(せんりつ)すべき事態だ。かつての15年戦争と同じ光景だ。
小泉は、この出兵にあわせて、靖国神社参拝を強行し、「A級戦犯合祀は問題ない」と発言し、「憲法は現実に合わせて変えた方がいい」と国会で答弁している。さらに、日露戦争開戦百周年として、中曽根や鳩山由紀夫ら超党派議員が集団で明治神宮を参拝し、日露戦争をたたえている。だが、旅順でロシアの艦隊と衝突した1904年2月8日の同じ日に、日本軍は韓国・仁川に上陸し、朝鮮植民地支配の一歩を印しているのだ。明らかに日本とロシアの帝国主義戦争であった日露戦争を賛美することは絶対に許されない。まさに今、日帝が米帝に加担して侵略戦争に参戦しつつあるからこそ、侵略戦争、帝国主義戦争の歴史の賛美が帝国主義者どもによって行われているのだ。
日帝のイラク派兵が、朝鮮・中国・アジア人民にとって、どれほど恐るべき脅威として受けとめられているかを想像してみよ。
日帝は、北朝鮮侵略戦争に突入していくためにも、また中東における石油利権、支配権を求めるためにも、帝国主義であるかぎり他の選択肢がないものとして、イラク出兵に踏み切ったのだ。日帝は、今国会で「国民保護法制」など有事関連7法案の強行を図り、有事法制を完成させて北朝鮮に対する米日帝の侵略戦争に伴う戦争動員体制を整えようとしている。イラク侵略戦争と国民保護法制は一体のものであり、絶対に粉砕しなければならない。
北朝鮮侵略戦争に向かっての攻撃は、排外主義宣伝とともに激化している。外国為替法改悪は、北朝鮮への経済制裁法であり、侵略戦争の開始そのものだ。国会では社民党も含めて挙国一致的に賛成して成立した(社民党は衆院で賛成、参院で棄権)。特定外国船舶入港禁止法案も提出予定だ。また、入管法が今国会で再改悪されようとしている。戦時下の入管体制が圧倒的に強められている。
日帝・小泉はそれがどんなに理不尽で、大義がなくても、これ以外の道がないものとして、侵略戦争に突入した。だとするならば、戦争をやらなければ延命できない帝国主義権力は、労働者人民が決起して打倒する以外にないではないか。
イラク侵略戦争、自衛隊派兵に反対する3・20大行動は、米英占領軍と不屈に闘うイラク人民、イスラエルによる壁建設と虐殺に抗して闘うパレスチナ人民と連帯した、全世界労働者人民の共同の国際反戦大統一行動だ。アメリカでもイギリスでも、そして戦闘部隊が増派されようとしている韓国でも、昨年2・15大ウエーブを上回る闘いが巻き起ころうとしている。
この闘いとしっかり結びつき、国際連帯を一層強め、米帝ブッシュ、英帝ブレア、日帝・小泉を打倒する闘いとして、3・20への根こそぎの決起を実現しよう。この闘いに労働者階級の全力を投入することで、階級的力関係の大転換をかちとろう。
第3章 経労委報告と対決し04春闘に決起しよう
今、この不正義の侵略戦争に対して、全国いたるところで、闘いの息吹が高揚し、闘いのうねりが巻き起こり始めている。それは地殻変動的な流動情勢と言える。昨年8月の自治労大会での「21世紀宣言」否決、11・9労働者国際連帯集会の高揚、12・23教育基本法改悪反対集会への5000人大結集、そして今年1・25日比谷野音の6000人大集会への労働組合の大挙結集。さらに呉(海自)、小牧(空自)、旭川―北海道(陸自)の出兵拠点での、自衛隊兵士・家族を揺るがし、市民を巻き込んでの大衆的な反撃の闘い。
これらは、労働者階級人民の中に猛然と怒りと危機感が高まり広がっていることを示している。歴史的な侵略戦争突入の中で、国論は真っ二つに割れ、政府が「大義」を語れずに立往生し、いわば「銃後」は騒然たる抗議に包まれている。日帝のカクマルを使った労働者支配、連合を使った労働者支配は完全に崩壊した。階級支配の危機の中で、労働者階級の側に、千載一遇のチャンスがある。
この大衆的な闘いの高揚の始まりは、日帝・小泉と日本経団連・奥田を先頭とするブルジョアジーの資本攻勢の激しさに対する怒りと結びついている。
日帝は「外への侵略戦争」と同時に「内への階級戦争」を推し進めているのだ。侵略戦争に突入する帝国主義は、国内の階級支配の完成と「挙国一致」に全力を挙げてくる。
日本経団連経営労働政策委員会が昨年末発表した「04年版経労委報告」は、「東アジア自由経済圏の確立」を真っ向から叫んで北朝鮮・中国・アジア侵略をあおるとともに、労働者に向かっては定昇廃止とベースダウンを押しつけ、「春闘の終焉(しゅうえん)」を宣言する、むき出しの資本の要求を並べたものである。
春闘においても、戦争に突入したブルジョアジーとして、奥田は居丈高に定昇解体、賃下げ、生活水準の見直しを打ち出している。
政府は10日、年金改革法案を閣議決定し、国会に提出した。大幅賃下げと同じ質の攻撃が年金においても加えられている。日帝・ブルジョアジーはもはや労働者階級を食わせていくことも、生活させることも、年金を維持することもできなくなり、自らの延命にのみきゅうきゅうとしている。そして、日帝は労働者の団結権の解体、闘う労働組合の破壊に全力を挙げ、戦時下の労働運動の産業報国会化をめざしている。
その最も激しい攻撃が今、動労千葉に襲いかかっている。定年を間近にした運転士の強制配転攻撃、士職登用拒否の差別攻撃に対する怒りの反撃が始まった。このJR当局のあからさまな動労千葉つぶしの攻撃に対して、10日から指名ストと非協力闘争が始まった。反合運転保安闘争として3・13ダイヤ改定をめぐる攻防に突入している。全労働者の先頭に立って闘いをリードする動労千葉に学び、「動労千葉のように闘おう」を合言葉に、労働者の総決起をかちとろう。
さらに、1年3カ月もの未決勾留をついに打ち破って国労5・27臨大闘争弾圧の8被告が奪還されたことは、国鉄決戦にとって、労働者の階級的反撃にとって、素晴らしい積極的な意味をもっている。関西の国労組合員5人の仲間は、保釈後直ちに職場復帰をかちとり、国労組合員だけでなく他組合の労働者からも大歓迎され、不屈非転向の労働者としての圧倒的な権威をかちとっている。
この8被告を先頭に無罪戦取・国労再生に向かっての闘いが新たに始まったのだ。原則的、階級的、国際的に闘うものにのみ勝利の展望が開ける。このことに確信をもって闘おう。3・6春闘集会の大成功、3・20の10万人総決起の実現へ全力で前進しよう。3・20へ労組の組織動員をかちとろう。イラク派兵反対の署名を広げよう。街宣に立って決起を訴えよう。
闘う青年労働者は、マルクス主義青年労働者同盟に結集し、労働運動の戦闘的再生に向かって最先頭でともに闘おう。闘う学生は3・20に全国から総決起し、全人民の先頭に立とう。
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週刊『前進』(2138号1面2)(2004/02/23)
動労千葉 指名ストに断固突入 不当配転粉砕の“総力戦”へ
国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)は2月10日、指名ストライキと全本線運転士などを対象にした「非協力闘争」に突入した。03春闘の先陣を切り、3・13ダイヤ改定の山場を待たずに1カ月前倒しして「総力戦突入」を決断したのだ。
指名ストの対象者は千葉運転区のH運転士。Hさんは、2月2日に千葉運転区から幕張電車区木更津支区への異動の事前通知を受け、これを断固として拒否し、動労千葉の争議通知に基づいて、10日午前0時を期して断固としてストに突入した。Hさんは58歳で1年半後には定年を迎える。電車運転士であるHさんに、定年間際になって、気動車(ディーゼル車)の運転をさせようというのだ。まったく不当な強制配転であり、組織破壊攻撃だ。動労千葉は、新たな不当配転の事前通知が行われた場合や、運転士資格保有者の士職発令が行われない場合などには、ストライキを拡大する、とJR千葉支社に通知している。動労千葉に対する差別、不当な労務政策への総反撃の闘いである。
この闘いは、イラク戦争下で小泉=奥田路線と真っ向から対決する「戦時下の労働運動」の最も鋭い切っ先であり、国鉄―JR労働運動の地殻変動的情勢に躍り込み、JR資本とJR総連カクマルの結託体制を打倒し、国鉄1047名闘争の勝利を切り開く闘いだ。動労千葉の断固とした闘いに連帯し、04春闘に総決起しよう。動労千葉主催の3・6首都圏討論集会へ、何よりも3・20日比谷の国際反戦闘争の空前の大結集へ、ともに闘おう。
(本紙・大沢 康、2面に関係記事)
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週刊『前進』(2138号2面3)(2004/02/23)
動労千葉指名スト 組合に体を預ける 配転拒否者が強い決意
業務命令拒否し 次々突入
04春闘と3・20総決起へ先陣
許せない定年間際での配転
動労千葉は、スト突入を目前にした2月9日午後6時から千葉市内のDC会館で緊急総決起集会を開催した。100人を超す組合員が駆けつけ、緊迫感が満ちた。
「本部の方針によって敢然と明日0時から指名ストに入らせていただきます」
集会でスト突入者のHさんが力を込めて語ると、大きな拍手が起きた。
「2日に区長に呼ばれ、1枚の紙切れを持っていたので、『ふざけんじゃねえ』と拒否した。区長は『転勤が決まりました。事前通知を申し上げます』と。すぐに本部に来て、委員長に『もう頭に来た。組合に体を預ける』と言った以上、引き下がれない。3日が最後の乗務になった。こんなことをされたら、いつ事故を起こすか分からない。私が黙って木更津に行けば問題は先送りとなる。ここで闘わなければ。よろしくお願いします」
労働者の誇りがにじむ。Hさんは、国鉄時代からずっと千葉運転区に勤務する電車運転士だ。10年前に2カ月間、木更津に助勤で行ったことがあるが、気動車運転はその時だけ。運転は自らと乗客の命を預かる大切な業務だ。JRは、それをも顧みずに、しかも「55歳以上は配転の対象としない」と言い続けてきたにもかかわらず、ただただ動労千葉の要求を押しつぶすために、このような理不尽な配転通知を強行したのだ。
木更津支区では、1月22日に1人の労働者が亡くなり、欠員が出た。木更津には、運転士資格を持っていながら20年間も運転士に発令されない予科生の組合員がいる。動労千葉は直ちにその組合員の運転士発令を求めた。だが、千葉支社は「車掌を経験してから」というJR発足後の昇進制度を理由にして拒否した。
今回の木更津の欠員は予測できない事態だったが、今後、定年退職が続出し、要員を補充しなければ業務そのものが維持できなくなる。特に幕張電車区などの検修職場では3年間で3分の1が退職する「大量退職時代」に入る。国鉄分割・民営化攻撃以来、当局は、カクマルとの結託体制のもとで、動労千葉組合員を運転職場からはずす強制配転や、士職に登用しないなどの不当な労務政策を続けてきた。しかし動労千葉の団結が維持されているため、検修職場に「平成採」を入れることができす、技術力を持った労働者が退職すれば、技術継承もできない。気動車運転士の養成もしていないため、欠員が出れば動労千葉の組合員から補充せざるを得ない。このことは、動労千葉にとっても大変な事態であるが、それ以上に、資本にとっての危機なのである。
昨年12月15日の習志野電車区廃止に際して、動労千葉がストに立ったため、千葉支社は強制配転者の原職復帰などを「検討する」と言わざるを得なかった。
だが、千葉支社は、あくまでも不当な労務政策を続けようというのだ。だから動労千葉は、今回の不当配転を「宣戦布告」ととらえ、反撃の総力戦を決断したのだ。別掲の「争議行為に関する通知」のとおり、場合によっては、全組合員を対象にストを拡大するという方針だ。
「長期闘争」も辞さない構え
田中康宏委員長は、「この闘争は、分割・民営化に決着をつける闘いだ。当局は、1047名の解雇撤回と並ぶ17年間の懸案要求を拒否した。分割・民営化に対して首をかけて闘ったように、腹を据えて闘う。われわれは血を流すことを恐れない。あいまいにしない。新たな配転の事前通知があれば、さらに指名ストに入れる。全面ストをも辞さない。この闘争の渦中で戦争と大失業の時代に通用する団結をつくりたい。万全の闘争体制をとってほしい」と、並々ならぬ決意を披瀝(ひれき)した。
10日、Hさんの指名スト突入に続いて、千葉運転区で2人の運転士が指名ストに入った。これは、総武快速線が東京に乗り入れる際に、従来のATC(自動列車制御装置)からATS―P(自動列車停止装置)に替わるため、その取り扱いの訓練を予備勤務者にやらせる業務指示を出したためだ。11日にも館山運転区で3人が指名ストに入った。当局が休日労働を指示してきたためだ。追いつめられたJRは「運休が出るかもしれない」と駅に掲示せざるを得なくなっている。
動労千葉は、あえて長期闘争も辞さない構えで総力戦に入った。動労千葉にとっても、かつてない闘いだ。そのような闘いができるのは、固い団結を維持してきたからだ。資本の激しい攻撃も、「大量退職時代」も、資本の側の危機だと見抜き、動労千葉にとってチャンスととらえ、反転攻勢に立つのだ。
さらに、動労千葉が04春闘の最大の山場に設定した3・13ダイ改阻止に向けた反合・運転保安確立の闘いである。(前号2面参照)
国鉄闘争情勢を転換させる
そして、動労千葉がこうした総力戦を決断したのは、04年がイラク侵略戦争―世界戦争の開始という情勢の中で歴史的な階級戦の年となっているからである。ついに始まった労働運動の地殻変動情勢の中で3・20国際反戦闘争に10万人の大結集がかちとられようとしている。ここに階級的力関係を変える転換点がある。
動労千葉の2〜3月闘争は、この労働者階級の新たなうねりに巨大なインパクトを与え、3・20大統一行動を促進するものとなる。そこに動労千葉も勝負をかけている。
さらに、国鉄1047名闘争を堅持・発展させる闘いである。JR総連カクマルの分裂が決定的段階に入り、一方で、1・31国労中央委をとおして国労の危機が進行している。
このような中で、動労千葉の闘いは、1047名闘争と国鉄労働運動を再生させる闘いなのだ。保釈・就労をかちとった国労5・27臨大闘争弾圧被告を先頭とする反弾圧闘争と、この動労千葉の闘いを武器に、今こそ国労を再生させよう。
今回の動労千葉の闘争は、1人の労働者の配転をきっかけとした闘いだが、まさに「一人は万人のために、万人は一人のために」という労働組合の原則を貫く闘いである。同時にそれは、賃労働と資本の対立をはっきりさせ、階級的団結の強化・拡大を総括軸にして闘うという、マルクス主義に基づいた労働運動の真骨頂をなすものである。
動労千葉の2〜3月総力戦闘争を断固支援し、連帯し、ともに04春闘勝利、3・20国際反戦闘争に総決起しよう。
争議行為に関する通知
1.争議行為の日時
2004年2月10日午前零時以降当分の間。
2.対象者及び形態
(1)千葉運転区・H君を対象とした指名ストライキ
(2)全本線運転士及び、幕張電車区木更津支区・館山運転区・銚子運転区の交番担当、指導員を対象として、休日及び時間外労働、勤務変更、所定以外の作業は一切行わない。
3.なお、次の場合は、直ちに前項の(1)及び(2)の対象者を拡大する。ストライキの拡大については、全組合員を対象とすることを含む。
(1)新たな不当配転の事前通知が行われた場合。
(2)早急に運転士資格保有者の士職発令が行われない場合。
(3)勤務変更や所定以外の業務に関する業務命令が行われた場合。
(4)職場からの排除、警察権力の導入、組織破壊行為、不当労働行為及びストライキ妨害行為が行われたと判断した場合。
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週刊『前進』(2138号2面1)(2004/02/23)
国労弾圧 8被告を迎え全国集会
無罪かちとり国労再生へ 「コクロウ・エイト」に熱い拍手
2月10日、国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会は、東京・文京区民センターで「保釈から無罪、国労再生へ!2・10全国集会」を開催した。被告の保釈後初の全国集会は喜びと熱気に包まれた。完全黙秘・非転向を貫く不屈の戦士として世界に名をはせた「コクロウ・エイト」が勢ぞろいし、国労再生―労働運動の階級的再生への出発点を築いた。265人の参加者は無罪獲得への決意を固めた。
集会には、この日の公判闘争を闘いぬいた8被告全員が参加した。被告が弁護団とともに会場に姿を現すと、熱い拍手がわき上がった。闘病のためしばらく公判出廷を控えていた東元(あずまはじめ)被告も明るい顔を見せている。
壇上に並んだ8被告は、自分たちを権力に売った国労本部を弾劾し、国労再生の本格的な闘いに立つ決意を述べた(発言別掲)。保釈を実現した勝利の上に、さらなる闘いへの熱意に燃える被告たちは、まさに日本の労働運動が生みだした誇るべき労働者だ。
富田益行被告、原田隆司被告、向山和光被告の家族が支援へのお礼を述べた。「涙、怒り、苦しみの長い1年3カ月だったが、家族も強くなった」「こういう問題が起きて自分も成長し、歩む道を見いだした」という発言が参加者の胸を打った。被告家族の闘いは、獄中の被告と反弾圧闘争を支えた原動力だった。
集会の冒頭には、国鉄闘争支援者が「事件現場」を撮影し、杉並で押収されたビデオテープが上映された。そこに映っているのは、被告たちの真剣な説得活動だ。参加者はあらためて被告の無実を確信した。
許さない会呼びかけ発起人で弁護団長の佐藤昭夫さんがあいさつに立ち、「本日は被告を迎えて全国集会が開かれ、本当にうれしい」と切りだした。1月31日の国労中央委員会に際して、被告たちが国労本部に申し入れに行った時の本部側の不誠実な対応を弾劾し、「許さない会の目的のひとつである被告の保釈は実現できた。無実・無罪をかちとる、弾圧の不当性を広く訴えるという二つの目的が残っている。弾圧は国労本部が仕組んだことははっきりしている。これを広く知らせ、無実・無罪をかちとり、国労を立て直そう」と呼びかけた。
同じく呼びかけ発起人の宮島尚史弁護士が「ビデオを初めて見たが、被告の行為は暴力行為とはほど遠い。これからが闘いの本番だ」と発言した。
呼びかけ発起人で国労九州本部前書記長の手嶋浩一さんが「この弾圧を許せば、全日本の労働者が根こそぎ立ち上がれなくされる。絶対に無罪を」と熱を込めて訴えた。
一瀬敬一郎主任弁護人が、この日の公判で勝利に向けての大きな足がかりを築いたことを報告し、「弁護団は無罪に責任を持つ。そのために全力を尽くしたい。だが主戦場は法廷外。許さない会が広がれば勝てる」と奮起を促した。
国労新橋支部の吉野元久さんが「8人がわれわれとともにいる。情勢は一変した。闘いの広がりで酒田執行部に引導を渡す」と宣言した。動労千葉の滝口誠共闘部長は、この日から動労千葉が指名ストに入っていることを報告した。デッチあげ弾圧と闘う全金本山の中野七郎書記次長が、ともに闘い、自らの無罪をかちとる決意を述べた。関西から駆けつけた全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の高英男(コヨンナム)副委員長が「弾圧すればするほど運動は激しくなると権力に分からせる闘いを」と檄(げき)を飛ばした。
集会のまとめをした許さない会の山川博康事務局次長は「8名の保釈を実現した勝利を確認したい。無罪をかちとるためには壮大な闘いが必要だ。そのためにも時代を一変させる闘いとして3・20日比谷野音に総決起しよう。許さない会の発展もその中にある」と当面の行動方針を提起した。
被告の発言 「職場復帰し闘っている」
■松崎博己被告(九州本部小倉地区闘争団)
自分の組合から売られ、自分で頑張るしかなかった時に、許さない会を結成していただき、大きな力になりました。しかし、許さない会をさらに広げないと弾圧は打ち破れません。
関西では、被告が職場に帰ったら仲間が握手してくる。われわれは闘ったからだ。JR総連は7人が逮捕され保釈されたが、職場復帰していない。彼らは資本と闘っていないからだ。
弾圧の中で、家族は今までやったこともないのにマイクを握り署名をとった。彼女たちに学び、国労再生へ、今までやれなかったこともやっていく決意です。
■羽廣憲被告(九州本部小倉地区闘争団)
これからが本番の勝負です。国労を闘う国労につくりかえることに人生をかける。許さない会をもっと大きくすれば必ず勝利できます。全力で闘います。
■橘日出夫被告(南近畿地本奈良電車区分会)
職場復帰し、組合を問わず大歓迎されています。職場の仲間に励まされ、連日飲み会が続いています。自分が職場に行くと周りが明るく元気になる。そういう存在と自覚しています。
勝利の展望は無罪と国労再生以外にない。日本の労働運動全体をつくり変える闘いに踏み出します。
■原田隆司被告(近畿地本豊岡分会)
今日も2、3回、涙を流しました。闘争団の闘いのビデオは涙なくして見られない。藤保さんの決起に負けない覚悟で頑張りたい。
家族には1年迷惑をかけたが、息子は弾圧があって自分も成長できたと言ってくれて、涙が出ました。
■富田益行被告(近畿地本兵庫保線分会)
一日一日勝利して帰ってきました。革同が強い職場だが、その人たちも「よく頑張った」と握手を求めてきます。まだ国労は腐っていない。だが酒田執行部では本当に腐ってしまう。これを打倒し、国労再生の闘いの先頭に立ちます。
n■東元被告(近畿地本環状地域分会)
一番苦しかったのは起訴の前ごろ。子どもがいじめられていると毎日言われ、落ち込んだ。面会に来た弁護士から「私もうつ病の経験がある。あなたには二つの道がある。しゃべっても頑張ってもいい」と言われ、突き放されて、おれも頑張らなあかんと思った。病気とも闘いながら、仲間とともに全力で闘います。
■小泉伸被告(近畿地本貨物分会)
皆さんのおかげで保釈をかちとりました。無罪をかちとり、国労の再生と世界の労働運動の階級的発展のために闘います。
■向山和光被告(国鉄闘争支援者)
勝利のために必要なのは、原則的に筋を曲げず闘うことです。7人の国労組合員の闘いを見てつくづく思いました。イラク戦争に日本が参戦したが、3・20で情勢を変える。その先頭で闘うことを決意します。
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週刊『前進』(2138号2面2)(2004/02/23)
国労弾圧公判 検察立証は破産した 「中核派が演壇占拠」で墓穴
この日、東京地裁刑事第10部(青柳勤裁判長)で行われた国労5・27臨大闘争弾圧裁判の第19回公判は、「被害者」として出廷した石井勝幸・国労本部会計監査員の証言をめぐって激しい攻防の場になった。
冒頭、佐藤昭夫弁護人が「被告の4党合意反対の活動が国労を重大な変質から救った」と意見を述べた。
富田益行被告が「酒田執行部は警察権力と一体となり、国労を警察労働運動に転落させている。国労組合員として、正当な権利としての組合活動を続ける」ときっぱりと宣言した。
弁護団は、被告の無罪を立証するため、また石井証人への反対尋問に必要だとして、00年7・1臨大、8・26続開臨大、10月定期大会を記録したビデオプレス制作の3本のビデオテープを証拠申請した。検察官も異議を述べず、裁判長は証拠採用を決定した。
さらに弁護団は、検察側が「被害者」として証人に立てている石井勝幸、池田久幸、江田雄次の各証人について、弁護側からも証人申請し、国鉄分割・民営化以降の経過についての証言を求めると申し立てた。裁判長は判断を留保した。
被告の正義示す7・1臨大ビデオ
証拠採用された3本のビデオのうち、7・1臨大を記録した『国労第66回臨時大会ドキュメント』が上映された。被告・傍聴者はもとより裁判官も食い入るように画面に見入った。音威子府闘争団家族の藤保美年子さんが演壇から訴えるシーンになると、涙をぬぐう被告もいた。4党合意に反対して闘ってきた被告たちの正義は、このビデオによっても明白になった。
裁判長が石井証人の尋問に入ると述べると、古田浩史検事が証人尋問の時間を短縮したいと言い始めた。「犯行に至る経緯等」について聞く予定だったが、7・1臨大のビデオが上映されたからその必要はなくなったというのだ。
だが、7・1臨大ビデオで検察側立証を代替できるわけがない。検察側の冒頭陳述には「犯行に至る経緯等」として「中核派は……闘争団の一部を取り込み、国労全国大会会場内で演壇を占拠するなどの議事妨害をした」と書かれている。
弁護団がすかさず追及の手を上げた。一瀬敬一郎主任弁護人が「冒頭陳述の『犯行に至る経緯等』はどう立証するのか」と問いただした。検事は「『国労50年史』、大会議事録などで立証する」と居直った。だが、それではこの立証は不可能だ。大口昭彦弁護人が「検事の訴訟態度は卑劣千万。冒頭陳述の『犯行に至る経緯等』は全面削除せよ」と怒りをぶつけた。
その勢いに押された青柳裁判長は、「犯行に至る経緯について、今後どう立証するのか明らかにせよ」と検事に命じた。だが、検事は立証計画を明らかにできない。検察側の描くストーリーは、もはや崩壊寸前の惨状を呈している。
組合員売り渡し居直る石井証人
石井証人が入廷した。被告たちの鋭い視線を浴びてうなだれている。石井証人は検事に誘導され、「富田君にネクタイをつかまれ引っ張り回された」とか「東君に右腕を首に巻き付けられて引っ張られた」とか言い張った。その暴行場面が写っているとして、検事は鈴木勉法対部長が撮影したビデオと杉並から押収されたビデオを再生した。だが、映像からは暴行の事実は分からない。
検事が最後に、石井証人に被告への感情を述べさせた。彼は「考えが違うからと暴力を振るうことは絶対あってはならない。これは組合の内部問題ではない」「国労方針への外部からの介入は絶対に許せない」と言い放った。だが、警察への組合員の売り渡しこそ暴力だ。自民党に言われて闘争団を処分し、機動隊を大会に引き入れるのは、外部介入そのものだ。法廷は強い怒りに包まれた。
この日、本部派は鈴木法対部長がただ一人、傍聴券抽選所に現れたが、法廷にも入れずに引き揚げた。
次回公判(2月24日)は石井証人への反対尋問が行われる。8被告の無罪獲得へさらに闘いを強めよう。
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週刊『前進』(2138号4面1)(2004/02/23)
有事7法案絶対阻止へ 米日帝の北朝鮮侵略戦争を大前提とした「国民保護法」
今国会に「国民保護法案」「米軍支援法案」など有事関連7法案、3条約・協定が一括提出されようとしている(表参照)。これは日帝の北朝鮮侵略戦争への参戦のための超重大な攻撃である。法案粉砕の闘いの死活性を喚起したい。
03年の武力攻撃事態法につづき 有事立法の「完成」狙う小泉
有事法制とは何か。それは差し迫る北朝鮮侵略戦争に、日帝が米帝と共同=競合しながら参戦する態勢をつくる法律だ。強調するならば、それがギリギリ最低限のものであろうと、どんなことをしても日帝が自ら積極的に北朝鮮侵略戦争に参戦する態勢をひとまずつくりきるところに有事法制攻撃の核心点がある。
小泉政権は、北朝鮮侵略戦争に日帝が自ら積極的に参戦できる法律をつくり、実際に現実の戦争に突入し、それを通して今日の日本の社会や階級関係などすべてを根本的に転換させていこうとしているのだ。有事法制をめぐる小泉政権との攻防の軸はここにある。
01年9・11反米ゲリラと03年3・20イラク侵略戦争で戦後史は一変した。米英帝国主義のイラク侵略戦争が示すものは何か。米帝ブッシュは、大量破壊兵器の脅威を取り除くという虚偽の戦争目的をデッチあげ、イラクと中東の石油を支配するために、国連や国際法も完全に無視して、一方的な先制攻撃で虐殺と破壊の侵略戦争を行った。米帝ブッシュは、世界戦争戦略を確立し、イラク侵略戦争を全世界に拡大しようとしている。世界史は、第1次世界大戦や第2次世界大戦で最も顕著となった力による世界の分割・再分割の時代に再び入ったのである。
すなわち侵略戦争のできない帝国主義は、帝国主義としての死を意味する。だからこそ9・11―3・20以降の日帝・小泉政権の攻撃の本質は、侵略戦争への具体的かつ実際の参戦なのである。
有事法制の問題もイラクへの自衛隊派兵もこの点を鮮明にさせる必要がある。有事法制とは、このリアルな戦争への日帝の必死のキャッチアップであり、日帝は、ともかくギリギリ最低ラインであろうとも有事法制の法的な整備をひとまず完成させ、実際にその具体的参戦に突入し、それを通して国家体制の根本的転換を狙っているのだ。
昨年6月に成立した武力攻撃事態法など有事3法は、「武力攻撃事態」という新たな概念を導入することで対北朝鮮(中国)の侵略戦争を可能とする法律である。今国会に提出予定の有事関連7法案の成立を許すならば、ガイドライン関連法(周辺事態法など=99年5月)とあわせて、北朝鮮侵略戦争に最低限必要な法律がそろうことになる。
今国会で小泉政権は「日本に直接攻撃がない段階でも、米軍が攻撃されれば日本への攻撃の着手と判断し、反撃することは憲法上可能」とする政府見解を明らかにするという。これは日本海などで米軍艦船などが攻撃された場合、武力攻撃事態法に基づく「武力攻撃事態」と認定し、直ちに日帝自身が北朝鮮侵略戦争へ参戦するということだ。有事法制阻止の闘いは、まさに北朝鮮侵略戦争への日帝の参戦そのものをめぐる階級決戦なのだ。
攻撃すれば相手から反撃がある 「国民保護」とは戦争動員だ
小泉政権は昨年11月に国民保護法制の「要旨」を発表した。@総則A避難に関する措置B救援に関する措置C武力攻撃災害への対処に関する措置Dその他E財政上の措置等F罰則(番号は引用者)。
@総則は冒頭で「目的」として次のように言う。
「武力攻撃事態等における国、地方公共団体等の責務、国民の協力等に関する事項を定めることにより、国全体として万全な態勢を整備し、国民の保護のための措置を総合的に推進」
「国民の保護」などと、あたかも「国民」を戦争から保護する法制のように見せかけているが、これは偽りである。冒頭に「武力攻撃事態等における」と書いているように、すでに「国民」は戦争の渦中にあるのだ。しかもそれは、米日帝による北朝鮮侵略戦争が遂行される中で、相手国が必死で反撃していることを前提にしている。具体的にはミサイル被弾やゲリラ戦争が想定されているのだ。つまり、人民にとって、日帝が北朝鮮侵略戦争を開始し、それによって引き起こされた戦火にさらされることが前提とされるのだ。
そもそも「国民保護法制」という言い方そのものが、あたかも日帝は攻撃しないが外敵が攻撃してくる、さらには北朝鮮の金正日政権が何をするか分からないから備えておく必要があるという排外主義的なキャンペーンとしてある。また日帝の戦争の侵略性を隠ぺいし、人民を侵略戦争に組織する攻撃としてある。
日帝は国民保護法制という形式で、その実、相手国からのミサイル攻撃やゲリラ戦争について、あたかも不当な相手国からの攻撃のように問題をすり替えている。しかし実際には、米日帝が北朝鮮をイラクのように国家として抹殺しようとして侵略戦争を仕掛けるからこそ、こうした事態が発生するのであって、もし日本人民に被害が発生するとしたら、真の責任者は日帝そのものなのである。
以上が「国民保護法制」の核心問題である。その上で、狭い意味でこの「国民保護法制」が直接問題にしているのは、「避難」「救援」「武力攻撃災害への対処」――の3点である。
「要旨」でいよいよはっきりしてきたのは、こうした諸活動への国民動員の強制的、強権的性格である。マスコミは知事権限の拡大を指摘するが、実際は市町村長レベルの権限の事実上の剥奪(はくだつ)である。国家権力が知事、警察、自衛隊と一体となって、強制的に人民を動員したり、物資を強制収用したり、土地・家屋などを強制的に使用できる。
侵略戦争で自国民も犠牲
これらは、戦争への国民動員という点から、次のように言える。
▼日帝は北朝鮮侵略戦争に「国民」を義務として動員する▼この侵略戦争の結果として生ずる戦災に「国民」がさらされる▼その上で、ミサイル被弾やゲリラ発生からの避難、救援などの活動を、国家が知事、自衛隊、警察を動員して「戦争の論理」で強制的、強権的に強行する――つまり侵略戦争遂行の一環として、戦争勝利のために、一切の犠牲を人民に強要するものとして「国民保護法制」は発動されるのだ。
@総則は、国民の保護に関する方針決定とその実施体制などについても規定している。国民の保護に関する基本方針を国が決定し、それに基づいて都道府県、市町村、指定公共機関などが、それぞれの「計画」や「業務計画」などを策定し、それらを実行するために国のレベルで「武力攻撃事態等対策本部」が設置され、さらにその下に都道府県対策本部、市町村対策本部などが設置される。
つまり戦争遂行の一環としての「国民保護措置」の遂行のための政治的、軍事的なヒエラルヒーがつくられるのである。この中で、国家権力機構とそれと一体化した都道府県知事の権限が大きく強化され、市町村はひたすらそれに従う構造になっている。
また、国民保護措置の規定で「国は……大規模または特殊な武力攻撃災害への対処などの国民保護のための措置を行う」としている。この「大規模または特殊な武力攻撃災害」という言い方の中に、この法制が北朝鮮侵略戦争のためのものであり、その中で必然化するミサイル被弾、ゲリラ戦争を想定していることが強く示されている。原発被弾などの大問題が発生しうることも想定に入れており、こうした巨大な犠牲を人民に押しつけることも辞さずに侵略戦争を遂行しようとしている。
@総則の最後は、「訓練」となっている。この条項は重大である。訓練において、北朝鮮からのミサイル攻撃やゲリラの着上陸とゲリラ戦、原発災害の発生などをおどろおどろしく想定して、繰り返し住民を訓練に動員して、排外主義をあおり、戦意高揚を組織しようとしているのである。
国・知事が強権的に避難指示
A避難に関する措置の中で「警報の発令」は、対策本部長=首相の権限となっている。これはたんに警報を発するにとどまらない。「武力攻撃事態等の現状及び予測」の発表が行われる。これはかの「大本営発表」にあたるものだ。ここでは指定公共機関である放送事業者は、この警報の内容(政府の戦況発表の内容を含む)を放送することが義務づけられる。
さらにこのA避難に関する措置は主として「避難」についての規定が行われている。避難については、まず対策本部長=首相が、都道府県知事に対して避難を指示する。そして直接には「都道府県知事が市町村を通じて避難を指示する」ことになっている。つまり最終的には知事権限で住民を避難させる。そして市町村長は、知事の指示で避難住民を誘導する。
ところがこの規定の大半は▼市町村長は警察、自衛隊などに住民の誘導を要請できる▼知事は誘導において市町村を補助・支援▼知事の指示に市町村長が従わない時は、知事が職員を動員して避難住民を誘導する――となっているのだ。
これは重大な問題を示唆している。ようするに住民避難を指示し実施する主体は、あくまで国や知事だけということが浮かび上がる。市町村は誘導役とされ、しかもこの場合の市町村の誘導には、警察、自衛隊または知事の介入が強く規定されている。これは住民の避難が、きわめて強権的に上からの強制として行われることを示している。つまり、住民の意思に影響を受けやすい市町村は、実質的には避難強制の主体たりえないケースが基本的に想定されているのだ。「避難に関する是正措置」の規定でも、誘導が適切に行われない場合は、内閣総理大臣が是正措置を講ずる。
B救援に関する措置で規定する「救援」とは、避難住民、被災者の救援のことで収容施設・食品・生活必需品の供与、医療の提供などを指す。運送業者の緊急物資の運送もこれに含まれる。この救援については対策本部(政府)が都道府県知事に指示し、知事が実施することが明確に打ち出されている。知事が実施主体として救援のための強権が与えられている。自衛隊法103条のような強権が知事に与えられる。▼「緊急物資についての保管命令」が出せる。また売り渡し要請ができる。拒否すれば収用できる▼「収容施設、臨時医療施設の開設のため、土地、家屋、物資の使用」ができる▼医療関係者に医療の実施を要請または指示できる――この救援においても内閣総理大臣は、適切に行われていない時は「是正措置を講ずる」とされ、最終権限を保持している。
C武力攻撃災害への対処に関する措置は、いわゆる戦災への対処を規定しているが、その内容は対ミサイル、対ゲリラに偏向して書かれている。
「要旨」の最後に、「武力攻撃事態に準ずる大規模テロ等が発生した事態においても、国民の保護のための措置に準じて必要な措置を講ずることを検討する」と書かれている。国会に提出する法案には▼原子力発電所の破壊▼生物・化学兵器によるテロ▼航空機による自爆テロなどが予測される場合を「緊急対処事態」と名づけ、武力攻撃事態に準じた対応をとる。この問題は日帝のイラク侵略戦争参戦という情勢下では決定的意味を持つものである。
船舶臨検や米軍支援も自衛隊は武器先制使用
※外国軍用品等輸送規制法案
これは北朝鮮侵略戦争の際に、日本領海や日本周辺の公海で船が所属する「旗国」の同意なしに停戦を命じ、積み荷などを検査する「臨検」を実施できるようにするものだ。現在は周辺事態の場合には、旗国の同意を条件に船舶検査法に基づく検査ができるが、正当防衛や緊急避難を除いて射撃はできず、物資の押収もできなかった。この法案では警告を無視した場合には射撃ができるようにし、物資押収のために日本に寄港させることができる。法案には自衛隊の武器先制使用を明記している。
今国会で対北朝鮮の経済制裁を可能とする改悪外為法がすでに成立し、さらに特定船舶入港規制法案の国会提出も準備されている。対北朝鮮の経済制裁―海上封鎖―臨検(船舶検査)という流れの中で、自衛隊の武器先制使用の規定は重大な意味を持つ。
※米軍支援法案×自衛隊法改正案
自衛隊と米軍が物品や役務を融通する「日米物品役務相互提供協定(ACSA)」を有事にも使えるように改定し、自衛隊法改正案で提供の手続きを定める。現在のACSAでは共同訓練や周辺事態の際に食料や水、燃料などを提供し、輸送や通信を行うが、武器・弾薬の提供は含まれていない。この法案では有事の際に武器・弾薬も提供できるようにする。また、米軍の部隊が民間の土地を通る際に塀や小屋などの工作物を壊すなどした場合の国の補償を盛り込む。
米軍行動円滑化法案などとも称しながら、米軍による民有地の使用や通行などに関する権限は、今回の法案ではまったく規定されていない。つまり日米安保を盾に超法規的に米軍が展開するということだ。法案では、その際の補償を規定しているだけだ。
※交通・通信総合調整法案
有事の際の港湾や空港、道路、電波などの利用法を規定する。空港と港湾を、米軍と自衛隊が優先利用できるよう調整する仕組みを定める。港湾や空港、道路を管理する自治体、電波を管理する民間事業者などが調整に従わない時は、緊急の場合は強制権のある「指示」の規定も設ける。
※捕虜等取り扱い法案×非人道的行為処罰法案
捕虜等取り扱い法案はジュネーブ条約に沿う形で捕虜の保護や待遇、抑留の際の条件、収容所の設置手順などを定める。重大な条約違反に対する罰則は非人道的行為処罰法案で定める。
ジュネーブ条約とは戦争の際に、傷病兵や捕虜、民間人の人道的な取り扱いを定めたもの。4条約と2つの追加議定書からなり、日本は2つの追加議定書は批准していない。2つの追加議定書は、戦闘方法や民間人・捕虜の保護を定める。批准すると、民間救助にあたる要員は特定のラベルなどを身につけ、日本に侵入した外国軍隊も、その要員の保護を義務づけられる。
ジュネーブ条約は、国際人道法とも言われるが、要するに戦争を行う際の(一応は)世界共通のルールともいうべき戦争法だ。日帝がジュネーブ条約をすべて批准することは、国際法レベルで戦争主体として登場することを意味する。
10万人デモで7法案粉砕へ
有事法制が9・11―3・20以降の現代世界における日帝の北朝鮮侵略戦争への参戦法案としてあり、今国会の有事法制関連7法案がそれをめぐる直接の闘いとなっている。だが日帝・小泉政権も万全の態勢で北朝鮮侵略戦争に突入するわけではないのだ。すでに成立した有事3法も日帝が北朝鮮侵略戦争に参戦できることを可能とするギリギリのものでしかなく、国民保護法案や米軍支援法案など各種の関連法制の策定なしには実際には発動できない。
陸海空港湾労組20団体の「有事法制を完成させない、発動させない、従わない」など労働者の戦争動員を打ち破る職場闘争的抵抗が始まっている。3・20で階級闘争の力関係を変える10万人反戦デモを実現し、有事7法案を粉砕しよう。
表 今国会に提出予定の有事関連法案とすでに成立している法案(★は今国会に提出予定の法案)
周辺事態法
船舶検査法
武力攻撃事態対処法
★国民保護法案
★米軍支援法案
安全保障会議設置法案
★自衛隊法改正案
★日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定
★外国軍用品等海上輸送規制法案
★非人道的行為処罰法案
★捕虜等取り扱い法案
★交通・通信総合調整法案
★外為法改悪(今国会で成立)
★特定船舶入港阻止法案
解説 武力攻撃事態法
有事法制の関連法としてはすでに昨年6月6日に国会で成立した「武力攻撃事態法」「改正自衛隊法」「改正安全保障会議設置法」の3法がある。
武力攻撃事態法の最大の特徴は、「武力攻撃(予測)事態」といういくらでも拡大解釈できる新たな概念を導入し、武力攻撃事態への対処という形で日帝の対外的な武力行使を規定していることだ。武力攻撃事態に対する対処措置として自衛隊の武力行使が明示に規定されている。一方的に武力攻撃事態(予測)事態を宣言し、逆に日帝の側から先制的に戦争へ突入することを合法化している。
実際の手続は、閣議で武力攻撃(予測)事態を認定すれば、直ちに自衛隊を出動・展開させ、対策本部を設置して各種機関を総動員しての戦争突入が可能だ。戦争遂行に必要な各種権限が首相に集中し、地方自治体や公共機関に協力義務を課し、対処措置=戦争が行われる。
改正自衛隊法は、実際の戦争を想定して、その時に自衛隊に必要なさまざまな権限を与えるために改悪された。@民有地などの使用・収用や建築・輸送・医療労働者などの業務従事命令を出す際の手続きの簡素化、A防衛出動命令が出される前でも、展開予定地域で自衛隊が陣地などの防御施設を構築できる、B消防法、麻薬及び向精神薬取締法、墓地・埋葬等に関する法律、医療法、建築基準法、港湾法、森林法、道路交通法などの関係法律の特例――などを規定した。
改正安全保障会議設置法は、武力攻撃事態の認定などを新たに審議対象に加え、安保会議をたんなる諮問機関ではなく、首相を最高指導者とする戦争指導機関として位置づけ直した。
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週刊『前進』(2138号4面2)(2004/02/23)
イラクへの兵員輸送 日航・全日空が断る
防衛庁が昨年秋、自衛隊員のイラクへの輸送を日本航空と全日空に打診したところ、両社が断ったことが分かった(2月1日付産経新聞)。
両社は、@テロのおそれがあるA乗員組合の反対が懸念される――などを理由に断ったという。このために、政府・自衛隊は兵員輸送に外国航空会社や政府専用機を使うしかなかった。有事立法と民間航空の軍事利用に反対する航空労働者の闘いが、政府・自衛隊を窮地にたたき込んだのだ。
この事実は、労働者の闘いが戦争遂行に大打撃を与える展望を示している。
かつて第2次大戦で、戦争に動員された民間船舶の船乗りは6万人も殺され、海の底に沈んだ。国家による「使い捨て」だった。
このような歴史を二度と繰り返さないと陸・海・空・港湾労働者は立ち上がっている。1・19国会院内集会で航空安全会議の大野則行議長は、「国際線の機長として危険を背に、冷や冷やしながら飛んでいる」と派兵中止を訴えた。
また海員組合の藤丸徹さんは、「ペルシャ湾には常時百隻の日本商船がいる。そこで働く船乗りは『自衛隊派兵でますます危険が迫る』と戦々恐々としている。自衛隊に戻ってほしい。米英軍も撤退を」と大抗議行動を呼びかけた。
産経新聞は輸送拒否を「テロの脅しにたじろいだ」と非難している。だが反戦を貫くことで「非国民」「卑怯者」と非難されるのは、労働者の誇りだ。3・20闘争に大結集を。
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