ZENSHIN 2003/01/01(No2084 p16)

ホームページへ週刊『前進』月刊『コミューン』季刊『共産主義者』週刊『三里塚』出版物案内販売書店案内連絡先English

週刊『前進』(2084号9面1)

4月統一地方選 〈反戦と介護〉掲げ必勝を

 侵略戦争下での闘いの前進へ革命的議員団の登場は不可欠
 北島さん×新城さん×けしばさん 大いに語る

 イラク反戦を自分の言葉で 北島
 3人当選で山田区政と対決 新城
 住民と共に行動する政党を けしば

 北島邦彦さん

 ◎新人。都政を革新する会事務局長。1959年山口県岩国市生まれ、43歳。中央大学に在学中反戦・反核運動にかかわり、85年から都政を革新する会に参加。イラク反戦の先頭に立ち奮闘中。

 新城せつこさん

 ◎杉並区議会議員、2期8年。62年沖縄県久米島生まれ。95年に区議初当選。保育・介護・福祉・教育を中心に活躍してきた。沖縄出身者として反戦・反基地運動の先頭に立っている。

 けしば誠一さん

 ◎前杉並区議会議員、3期10年つとめた。都政を革新する会代表。1947年横浜生まれ。70年ベトナム反戦闘争、全共闘運動などで活躍。現在、東京反戦共同行動委員会事務局長の重責を担う。

 03年前半期の最大の決戦は、4月統一地方選の闘いである。東京・杉並区の3人の当選を始めとして、全国で全候補の勝利を絶対にかちとらなければならない。「反戦」と「介護」を真っ向から掲げて、全党、全人民は総決起しよう。杉並区議選に立候補する北島邦彦さん、新城せつこさん、けしば誠一さんに、必勝への決意と展望を大いに語り合っていただいた。(司会・本紙編集局) 

 横須賀闘争が爆発 新たな激動始まる

 ――イラク反戦闘争は統一地方 
 選の最大の政策テーマですね。
 けしば 12月には自衛隊イージス艦「きりしま」出兵阻止の横須賀闘争が、市民と合流し、全学連を先頭に爆発しました。
 イラクへの攻撃の始まりや有事立法情勢の中でどうやって日本で反戦闘争の大衆的高揚を開くのか。どうやって侵略戦争を阻止するのか。これは大きな課題でした。実際に権力の弾圧を恐れず実力で決起した全学連の中に、自分たちの力で切り開いた確信、それができるという自信がみなぎり始めた。これはとてつもなく大きな力ですよ。
 新城 労働者や市民の隊列も全学連の闘いに続きました。労働者たちは学生たちを弾圧する機動隊や私服警官に弾圧をやめろ、逮捕者を返せとつかみかかった。デモ隊全体が戦闘的気運に満ち、沿道で注視する横須賀市民や米兵、自衛隊員、その家族との合流の場となりました。
 北島 出港前後の横須賀中央駅での街宣も情勢を変えました。「きりしま」の乗組員が「ハローワークで仕事を探してもないから仕方なく行くんだ」と話してくれたり、米兵が住所を「キティホーク」と書いて署名した。横須賀市民や兵士とイラク反戦闘争をつうじて呼吸しあい、心が通じ合った闘いでした。
 けしば 反戦共同行動委員会は、91年の自衛隊海外派兵に反対し、もう二度と侵略戦争をしないことを誓ってスタートした。今、イラク反戦闘争として必要な闘いを切り開いたと言える。まさに新たな「激動の7カ月」が始まったと実感しています。まだ数は少ないかもしれないが、流れは確実に開かれた。そこで勝利感を共有した人が、周りの10人、20人を動かしていくようになる。
 この歴史的な飛躍が問われる転換点の年に、イラク侵略戦争をとめる闘いを必ずつくり出します。
 このイラク反戦闘争の中で迎える統一地方選は、イスラム諸国、米欧や韓国など世界のすべての闘う人たちと連帯する議員を生み出す闘いであり、その議員の登場が一層の闘いを促すものになる。そういう選挙戦になります。

 日本でも世界と連帯し闘いの胎動

 新城 ちょうど私が最初の選挙に出たのが91年の湾岸戦争の時でした。自民党から日本共産党まで全部が、フセイン悪玉論に流されて、真っ正面からアメリカ帝国主義を批判するのは私たちしかいなかった。今、世界と呼応して、日本でも労働者人民の決起の胎動が始まっています。
 北島 12月1日に陸・海・空・港湾労組20団体と宗教者が呼びかけた集会があり、2万5千人が参加しました。ここで特徴的だったのは、20労組の一角に国労闘争団が登場したことです。
 11月29日に4党合意が破棄されるという中で、あらためて国鉄をめぐる労働運動の動きがすごく重要ですね。それとイラク侵略戦争、有事立法との闘い、誰が闘いを担う主体になるのか、鮮明に現れた構図だったと思うんです。
 けしば 国労闘争団を軸に、連合、全労連を変えていくような労働運動の新しい流れ、その潮流を柱にして有事法制反対の一点でつながろうという20労組陣形が登場しました。また福祉切り捨てや大失業時代の到来に、それを超えていくような労働者や高齢者の闘いがスタートした。去年スタートした闘いがどこまで歴史を変える力に成長するかどうか、その勝負をかけた決戦として、杉並での3人当選をかちとる決意です。
 北島 今の時代状況の中で、闘いの鮮明な方針を打ち出すことが求められていると思うんです。9月の日朝首脳会談以降、拉致問題をめぐる報道がものすごい。北朝鮮に対する排外主義キャンペーン、北朝鮮への敵意をあおる宣伝が洪水のように流されています。
 北朝鮮・金正日政権が引き起こした拉致事件は、反人民的で絶対に許せないと思います。だが、ブッシュが「悪の枢軸」「テロ国家」として、イラクの次は北朝鮮だと世界戦争政策を推し進めている中で、小泉は米帝に後れを取ってはならないと、拉致問題で北朝鮮敵視をあおり、戦争準備に徹底的に利用しようとしています。今の拉致問題の核心はここにあります。
 杉並区のある団地で懇談会に参加した時のことですが、十数人集まって、介護保険の話から始まって15分ぐらいすると、すぐに北朝鮮の問題はどうなっているんだ、イラクに戦争をしようとしているけれどどうなんだという激論になった。
 小泉政権の進める有事立法が労働者を戦争にかり出すものであり、実際にイラクの次は北朝鮮侵略戦争を狙っているんだと、私たちの階級的立場を臆せず正しく、かつ分かりやすく打ち出していくことが、多くの人たちの心を打ち、ともに行動に立ち上がっていくことにつながる。
 新城 これは私の確信なんですが、一昨年の9月11日に起きた反米ゲリラ事件は、日本と世界の関係をもう一度とらえ返すことを迫る痛烈な批判でした。アメリカを始めとする世界の帝国主義が、パレスチナやアフガニスタン、イラクなどイスラム諸国の人民に対して何をしてきたのか。私たちはこれを知ろうともせず、見すごしてきたのではないか。この批判にこたえる道は何かをかけて去年1年間の闘いがあったと思います。
 一方で、大失業に抗して闘おうという11・10全国労働者総決起集会では、今の戦争や失業の時代にどう労働者がそれに立ち向かって闘うのかという大方針が打ち出されたと思うんですね。
 11月区議会では、職員の給与の条例改定に反対しました。「民間が苦しんでいるのに公務員がこんな高い給与をとってどうするんだ」と、すべての政党が賛成に回ったんです。でも宮城県の町議会ではこれに反対しているし、新潟県の県職労などはストで闘いぬいているんです。
 北島 9・11以降の過程で、「テロにも反対、報復戦争にも反対」という論が出されました。だけど僕らはその論には立たなかった。イスラム諸国人民の文字どおり死をかけた自爆決起を「テロ」と言う帝国主義の言葉で排除することなど許されないですよ。僕らは9・11を受けとめて、イスラム諸国人民の存在、その歴史的な、現在的な存在と帝国主義の侵略という問題、そこに自分たち日本人がどうかかわってきたのかを考えた。9・11は、やはり世界を変えたと同時に、われわれ自身を変えた。
 毎朝、僕はJRの駅前でビラをまいているんですが、ちょうど9・17日朝会談のころは夏服のチマ・チョゴリだったんです。その女子高生が会談以後、体操服を着て学校に通い始めた。それは今も続いています。今、在日朝鮮人・中国人、滞日・在日イスラム諸国人民との連帯の内実をつくり出さなければなりません。杉並でも支援・防衛の闘いを強めていきたいと思っています。
 新城 9・11事件後、日本共産党は「テロにも反対、報復戦争にも反対」と言ってきたんですが、そこで共産党が引き出すのは国連決議なんです。ところが今回、共産党はブッシュがイラクに戦争を仕掛けるというのは国連決議に反すると言うわけ。それに対して、国連決議に則してやっていると批判されると、共産党は何にも言えない。イラクへの査察団の派遣など国連決議で進んでいますし、これではイラク侵略を阻むことはできないわけです。

 日本が率先し侵略戦争やる有事立法

 ――日本共産党はブッシュの戦争に巻き込まれるのは反対と主張していますね。
 新城 日本はアメリカの従属国になっているという主張ですね。アメリカの戦争に巻き込まれるどころか、日本が率先してやろうという内容が有事立法です。アメリカの戦争に巻き込まれ論では有事立法も批判できません。
 北島 イラクに対する侵略戦争と日本の有事立法は、完全にリンクしているという見方、考え方が必要だと思います。
 新城 沖縄基地の現実を見ても、小泉の言う「備えあれば憂いなし」なんてとんでもないと思います。軍事基地があり、軍事を備えることによってかつての沖縄戦、唯一の地上戦もあった。今も戦後50数年にわたる基地被害が連綿として起こっているんです。
 基地・軍隊の存在は、一つはその土地の人たちに対する人権侵害、人権じゅうりんを引き起こすということ、もう一つは、それ自身が他国の人びとの命を奪っているということです。その歴史を一つひとつ確かめ、教訓化していく作業が必要です。今、韓国では米兵による2人の女子中学生殺害をめぐって数十万人が立ち上がり、反米闘争が爆発しています。沖縄でも米軍幹部による女性暴行未遂事件が大問題になっています。米軍・米兵の犯罪はイラク侵略の動きと連動していますね。
 ――けしばさんの学生時代は、ベトナム反戦闘争でしたね。
 けしば 私たちは、日本の参戦国化反対というスローガンを掲げて闘いました。当時の佐藤栄作首相は直接南ベトナムの首相に会いに行った。アメリカを支援することを水路に、日本が東南アジアにコミットしていくことに踏み出したわけです。
 日本が再び参戦国になるのかどうかをかけた闘いだったんです。それが原動力だったし、日本共産党の限界を突き破った新しい力をつくり出しました。
 当時の日本共産党はベトナム戦争反対とは言っていましたが、それは日本がベトナム戦争に巻き込まれることに反対だと。今も共産党がなぜ、イラク反戦と言えないのかと言えば、やはり日本の国益論でしょう。私たちは国家や企業の立場ではなく、闘う民衆とどう結びつくのか、そこで考えますから、共産党とは全然違います。
 当時は今よりも社会党や共産党の力がはるかに強かった。総評集会とか、社共共闘の集会の動員力にはなっていたけど、逆に社共の力が強い分だけ、いざ闘おうとするとそれがブレーキになる。今よりも制動が大きかった。67年10・8羽田闘争を闘いぬいた全学連は全国動員で300人ぐらいでしょう。ベトナム人民が命懸けで米軍と闘っている時に、全学連こそ命をかけてベトナム人民にこたえようと、立ち上がった。
 新城 70年ごろ、沖縄では在日米軍、特に海兵隊が、とても荒れていたんです。毎日のように白人と黒人の抗争があった。ベトナム戦争の重圧を受け、軍隊内の差別などが噴き出していた。
 昨年10月26日、アメリカから発信された国際反戦デーの呼びかけにこたえて、私は高円寺駅前でイラクに対する戦争反対を訴えました。ベトナム戦争の時に沖縄では、戦争に行きたくないと軍から脱走した米兵を住民がかくまったことなどを話しました。そうしたら、若い人たちの反応がすごくよくて、署名もいつもの倍でした。  
 前沖縄県知事の大田昌秀さん(現参議院議員)が、国が求める平和と人民が求める平和は違うんだと書いています。私たちが国とはなんぞやと考える時、沖縄の位置というのは結構大きい。国に対して、沖縄の未来は自分たちが決める、人民の自己決定権が存在するという、そこが沖縄の教訓ではないでしょうか。
 けしば 今、私たちの力が本当に燃え上がって、情勢を打開する闘いに踏み出したら、そこから運動が広がる。限りなくあらゆる人たちと連帯していくんだけど、まず自分たちの力で情勢を切り開こうという気概ぬきには始まらない。
 新たな「激動の7カ月」の精神はそこだと思います。自力で、自分たちの路線と闘いで情勢を切り開くことは可能なんだという精神です。

 イラクの現実知り衝撃と大衆的決起

 北島 イラクの子どもたちの現状を知ることで、イラク侵略戦争に反対する運動を起こしていこうという写真展が杉並区内を巡回しています。10年前の米軍による劣化ウラン弾の放射能障害で白血病、ガンになって死んでいっているのです。僕も写真を見ましたが、そこに告発されている事実に衝撃を受けました。写真展を見た中高生や大学生、若い人たちが、自分に何ができるだろうかと、行動を始めています。
 僕が生まれ育った山口県岩国市には、米軍の海兵隊の岩国基地があります。岩国は人口が10万人の街ですが、今でも米軍が家族を含め5千人ぐらい駐留しています。多い時は3万人ぐらい。
 小学校で郷土の地理という授業がある。岩国市の白い地図に「川を水色に塗って」とか、その時に右上に広大な真っ白なところがある。それが米軍基地でした。それが子ども心に軍隊とか戦争を認識したきっかけなんです。
 けしば 劣化ウラン弾が10年間にわたってイラクの子どもたちを苦しめ、殺してきた。アメリカが劣化ウラン弾を使った張本人だけれど、そのためのお金を一番多く出したのが日本なわけです。イラクの子どもたちの写真展の運動は各地に広がってますが、その担い手たちが第2の原水禁運動のような気概をもって進めていますね。
 ――選挙運動自身が反戦闘争の高揚をつくり出す過程になりますね。

 基地反対一本で市議選トップ当選

 新城 その点では、名護の宮城康博さんの闘いが象徴的です。昨年2月の市長選も、9月の市議選もそうなんですが、共産党は選挙の時に反戦を正面から言わないんです。福祉一般など住民の日々問題になっている課題でないと票にならないと思っている。
 でも宮城さんは、有事立法下でしかもイラク侵略戦争の切迫という情勢のもとで、名護新基地建設反対に焦点を絞って、「いのちの海に軍事基地を造らせてはならない。名護市民は97年の住民投票で基地はいらないと結論を出したのに、日本政府や稲嶺県政はどこまで沖縄の声を踏みにじるのか」と必死に訴えました。反戦一本で、基地反対一本で選挙戦を闘って、市議選ではトップで当選しました。
 北島 選挙は民衆と一番身近に接触していくわけで、その水路をとおしていろいろ議論していくことが反戦運動を広げていく上でものすごく大事だと思うんです。
 今あらゆる人が、政治について発言し、行動を始めていると思います。僕は朝夕この1年ぐらい毎日街頭に立って訴えました。訴えかける対象は千差万別、あらゆる階層の人たちです。イラク侵略戦争や有事立法が何なのか、自分たちの言葉で語ることが問われていると思うんです。
 労働者の中へ、そして人民の中へと言われますが、選挙は必然的にフィールドの広さが求められる闘いです。そこで格闘して多数を獲得した時に選挙の勝利があるわけです。
 けしば 選挙にしても議会にしても、一部の支配階級がその支配を貫くための道具であることははっきりしています。だけどそれは4年に一回、地方選も含めれば繰り返し、民衆、労働者全体が選択を迫られる政治の争いの場になる。その機会をとらえて労働者階級の党、あるいはそれをめざしている勢力が、選挙闘争を闘うという場合、既成政党との根本的な違いがあるんです。
 かつてドイツで第1次世界大戦にたった一人でも反対したカール・リープクネヒトのような議員が必要なんです。
 これだけの時代になれば、イラク戦争反対という人が少ないはずはありません。問題は、反対している人たちがそもそも選挙に行かないとか、投票しないことです。議会とか選挙に全然幻想を持っていない人たちが、闘いに確信をもって、私たちを選択してくれれば、勝機もある。
 ――アメリカ中間選挙でのバーバラ・リーさんの大勝が実例ですね。
 北島 街頭でこんなことがありました。折り畳みの机を持っていって、署名用紙を置いて、マイクで宣伝活動をしているんですが、50代の男性に絡まれて困った。そこで「小泉政権の戦争政治に反対して、有事立法反対の署名活動をしているんです。そこに立っていられると署名をしたくてもできない人がいるからどいてください」とマイクで音を出して話をしたら、次々に人が署名板の前に並び始めるわけ。妨害している人を押し退けて署名をする。そして「妨害に負けないで頑張って下さい」「周りからいつも見ているからね」と言うんですよ。
 新城 私たちの闘いは民衆がともに立ち上がってこそ、私たちの闘いにもなるんです。戦争反対に労働者人民は絶対に立ち上がるんだという確信のもとに私たちは呼びかけるわけです。
 だから共産党とは全然違うわけです。具体的には在日人民や部落民、沖縄出身者、「障害者」、女性、労働者や高齢者、その個々の人間を見ながら「一緒に闘いましょう」と呼びかけているんです。
 けしば 選挙運動は、いま闘う場を失っている大衆の行動の場であり、一番かかわりやすい大衆運動です。それを単なる1票に押しとどめるのか、それとも選挙という大衆行動の中からともに行動する力として手をつなぐことができるのか。その違いで選挙戦は全然違ったものになります。

 必要な介護実現へ頑張るのは都革新

 ――イラク反戦と並ぶ、もう一つの柱は介護保険闘争ですね。
 北島 この間、「介護と福祉を要求する杉並住民の会」の八木ケ谷妙子代表とお話する機会があったんです。今住民の会は、介護保険に関する3項目を要求する請願署名を始めている。一つは4月からの保険料の値上げに反対する、二つは低所得者への保険料の減免措置を求める、三つめは保険料の未納者への罰則適用をするなというものです。私たちもこの請願署名に全力で取り組んでいこうと思っています。
 八木ケ谷代表は「高齢者とはどういう存在なのかを今もう一回考え直す必要がある。死を待つだけの寂しい、弱い存在なのか。そんなことはない。長い人生を生きてきて、智恵もあれば人生経験もある。そういう高齢者が、もっと強く生きていける、前向きに生きていける社会をつくるのが高齢者福祉だろう。しかし今、介護保険はまったく逆のことをやっている。だからますます老後について不安になる、希望がない、絶望する、こういうのが介護保険制度だ」と話された。そして「もし高齢者が自分の人生経験をもっと活かしていけるような社会になれば、豊かな社会になるはずだ」とおっしゃったんです。
 これは高齢者問題だけではなく、福祉の原点だと思います。
 けしば 介護保険実施以来3年間、高齢者は介護を奪われ、介護を受けようとすればお金を取られ、あるいは介護保険料さえ払えないという人が杉並区内だけでも2600人以上もいます。
 いわばいのちの叫びである@保険料値上げ反対、A減免実施、B罰則適用反対という、この請願署名を決断して全政党・党派を回ったそうです。ところが共産党も含めて全部、介護保険はすでに決まっていることだからできないと断られたそうです。これで怒って、こんな議会だったら必要ないと、都政を革新する会に一人でも多く議員を出してもらって、少なくとも自分たちの当たり前の要求を議会の中で最低限表現できるようにしてほしいということになった。それで絶対に都革新の3人を通せということになった。
 今回3人の立候補を決めたのは、もう社民党や共産党ではだめ、新しい民衆の政党をつくろうという区民の切実な要求があったからです。
 新城 ある女性議員から、新城さんが質問する時には議場の空気ががらりと変わる、当局がとても緊張する、新城さんの存在は重要だと言われました。議員である私は一人ではなくて、住民のいろいろな闘いを背景にした存在なんだとあらためて感じています。
 3人というのは、一つの会派として認められて幹事長会にも出たり、議会運営委員会でもいろいろ発言ができる。
 北島 杉並区という街において、区民・住民とともにさまざまな運動に取り組んでいく、大きくつくっていく、3人の議員団はその決定的な力になる。住民の会が求めている「必要な人に必要な介護を」ということも実現できると思うんです。
 新城 3人になることは力が何倍にもなる。一方では責任がすごく重くなります。直接的には選挙の直後から教科書問題をめぐって、教育委員の選任から闘いが始まります。この間、「新しい歴史教科書をつくる会」が一人の教育委員の拉致問題での言質をとらえて、辞任要求運動を展開し始めているんです。区に対する抗議、嫌がらせの電話が60数件、本人への嫌がらせも殺到している状況です。
 今回の選挙には「つくる会」推薦の女性候補が出ます。それを唯一応援しているのが山田区長なんですよ。
 けしば 杉並区には51万数千人の区民がいます。北の杉並病から南の放射5号線、東西南北、区内にさまざまな問題があって、一つの政党になるということはこの杉並51万区民全体に責任をもつことなんです。
 あらゆる意味で住民と行動をともにする政党が、議会政治の中にできた場合、議会が変わり、政治が変わる。有事立法でも自治体の戦争動員が狙われていますが、戦争協力を拒否し、地方自治体から反乱を起こしていくことも可能になります。
 北島 労働者とか労働組合との関係も劇的に変えていくことができますね。今の大失業時代の中で 杉並区内の中小の会社だって次々に倒産している。よるべない状況に労働者は置かれている。
 僕らは労働者とともに、労働組合とともに歩む議員団として、物質力をもって地方自治に挑戦していけると思うんです。
 山田区政は「スマートすぎなみ計画」で、民間委託問題を始めとした膨大な区職員のリストラ攻撃をかけています。それとの対決は単に自治体労働者だけじゃない、民間労働者の問題でもある。それと3人の議員が全力で対決していったら、東京都の労働運動も一変していくと確信しています。

 弾圧と妨害に怒りとファイト燃やし

 新城 5・27国労臨大弾圧は、国鉄労働運動の分断と解体を狙った弾圧ですよね。この国労弾圧に対して一大大衆運動を起こして松川事件のように闘おうと佐藤昭夫さんたちがアピールしています。この呼びかけにこたえ、ともに闘いぬく決意です。
 けしば 長谷川さんの都議選以来、繰り返し弾圧や妨害を受けてきた。今回の国労弾圧でも、国労組合員が不当逮捕されたその日、10月7日早朝に都革新に家宅捜索が入りました。建物を破壊して突入するというまったく許しがたいものです。弾圧の強まりに、怒りとファイトを新たにしました。
 国労弾圧を自分たちの問題として真っ正面から受けとめて、これと闘うことをあらためて決意しました。今回の家宅捜索についても国家損害賠償請求訴訟に踏み出すことを決めました。
 北島 僕らも区内の国労の分会に国労共闘の仲間とともに闘いのニュースを届けに行っています。
 新城 JRの駅前に立つ時はいつも、「国鉄労働組合の皆さん」と呼びかけ、国労の闘いを自分に引き寄せてエールを送ってきました。
 北島 その国労の労働者に今度の選挙で僕らが何をやろうとしているのか提起していった時には、真摯(しんし)な対話ができるという確信を持っています。
 ――北島さんは、国鉄分割・民営化に反対して闘いぬいたんですね。
 北島 もう17年前、国鉄分割・民営化に反対して闘った浅草橋戦闘に、当時26歳で決起しました。それから6年半ぐらい獄中で闘いました。その国鉄分割・民営化にかけた日本帝国主義の狙いは、闘う国労闘争団や動労千葉の存在と闘いでみごとに打ち破られています。4党合意も粉砕されました。そして一方で当局の先兵となった動労カクマル、現在のJR総連の分裂と解体も進んでいます。
 けしば 区内の労働者や住民と一緒に選挙戦を闘い抜くという新しい選挙戦です。イラク反戦闘争や介護保険闘争、そのほかさまざまな地域の課題をめぐっても、区民、住民との共同闘争を実現していくということです。
 ――山田杉並区政についてどうですか。
 新城 山田区長は個人情報保護法案について、「確固たる個人情報保護」という言い方をしていて、個人情報保護法制が整ったら住基ネットも接続するつもりです。住基ネットがスタートしたのは昨年8月ですが、準備段階の6月議会で私は質問に立ったんです。「確固たる」とは何かと問いただして、住基ネットには絶対参加すべきではないと主張しました。杉並区は8月に不参加を打ち出すんですが、ところが山田区長は、6月段階で51万区民の全情報を東京都と情報指定処理センターに全部送ってしまったんですよ。
 9月議会で、区民情報を送った問題についてどう責任をとるんだと追及しましたが、まったく答えられないですよね。
 北島 住基ネットについて希望選択制の法改正を求めると唐突に言い始めています。要は「不参加」から山田区長のスタンスが変化し始めているんです。希望選択制というのは横浜方式です。だけどこれは基本的には住基ネットへの参加方針だと思うし、そこは議会でもがんがん攻めて、今の不参加方針を絶対に守らせる必要があります。山田区長のペテン的すり替えを許さないということです。
 けしば 山田区長の危険性であり、一番の問題点は、彼が有事立法賛成だということです。
 実際に、有事立法の最大の核心は、しかも住基ネットの稼働と軌を一にして進めようと狙っているのは国家統制でしょ。有事立法に賛成して、住基ネット反対なんて言っても、それはペテンです。

 日本共産党は反動区政のブレーン

 ――いま区議会で山田区政を批判する政党はほかにあるんですか?
 新城 無所属で野党的なスタンスの議員はいますが、そういう人でも住基ネットなどでは山田を評価しています。われわれが唯一の山田批判勢力です。生活者ネットは与党。社民党は完全に与党、予算・決算も全部賛成ですから。
 生活者ネットは女性議員だし、市民の側に立っているんじゃないかという幻想がありますが、給食の民間委託に生活者ネットは賛成なんです。それを話すと、生活者ネットへの幻想が崩壊しますね。
 けしば 実は、山田区政のブレーンは共産党なんです。もともと山田区政は自民党政権を倒して登場した。そのために共産党を取り込まないと政策立案できない。それを山田区長も十分承知している。表向き反対、実は裏で一番支えているのが、共産党なんですよ。
 こういう中で都革新が、山田区政の鋭い、しかもわかりやすい批判をして、山田が今進めようとしているのは区政まるごと有事体制化だと訴えなければならない。杉並で初めて防災訓練に自衛隊を動員したのは山田ですからね。とにかく山田になってからよくなったことは一つもない。石原都知事と同じデマゴギー政治なんです。

 夢と希望をもって腐った政治変える

 ――最後に抱負と決意を。
 北島 これまで選挙にはさまざまな形でかかわってきましたが、自分が候補として闘うのは初めてです。いよいよ待ったなしの段階なんで、これまでの経験を生かし、そのすべてを投入して、必ず当選をかちとる決意です。
 この勝利が、今獄中で弾圧されている星野さん、爆取弾圧の4人、そして何よりも国労弾圧で獄中にいる8人の闘いにこたえていく道でもあると思っています。
 新城 闘いが生まれつつある中で、政治不信も強まると思うんです。前回の選挙では政治不信がある中で、2、3倍ぐらいの女性議員が登場した。期待は大きかったんですが、結果は今までの腐った与党議員と変わらなかった。この中で唯一、闘う労働者、住民に根ざした議員がどういう姿勢を貫き、どういう立場で闘うべきなのかを示す選挙戦として闘っていきたいと思っています。
 激しい闘いです。私自身は3期目への挑戦となります。8年間の実績を踏まえつつ、自分自身の原点を貫いて、これからも毅然と闘いぬいていきます。
 けしば 都革新後援会の実方精一会長が、この3人立候補について、都革新の機関紙である「コスモス」で「夢と希望をもって前進しよう」と訴えています。杉並から今の腐り果てた政治を変える、新しい政党の登場が切実に待望されています。
 これまでどんな弾圧や妨害にも屈しない、本当に勇気ある住民が私たちを支え、そして新しい期待をつないできているわけです。その支えてくれた人たちと手を携えた新しい政党が、紛れもなく杉並で台頭したという現実を今度の選挙の中でつくり出そう。それが日本と世界を変える力になるのです。
 ――新たな「激動の7カ月」の闘いですね。
 けしば そうです。10・8羽田闘争として切り開かれた勝利は、すさまじい反動の壁にぶちあたって、誰もが無理だと思うようなことでも、「第2、第3の羽田闘争を実現しよう」と全学連は言い切って前進した。今われわれの前にあるさまざまな困難、これを突き破った時に勝利があるんだと思います。
 ――勝利をかちとりましょう!

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号10面1)

相模原から反戦叫び3期目の市議選闘う
 相模原市議会議員 婦民全国協代表 西村綾子さん

 4月の相模原市議会議員選挙で3期目に挑戦する西村綾子市議から新年の決意をいただいた。イラク反戦闘争を巻き起こし、全国各地から闘う議員を当選させよう。(編集局)
 米帝ブッシュの世界戦争戦略のもとで、三度目の世界戦争の危機がさし迫っています。闘うムスリム人民、闘うアジア人民と連帯し、戦争をしなければ生きていけないような帝国主義の社会を根底的に変えなければならない時が来ました。
 「世界中のテロ撲滅」などという身勝手な論理を旗印にして、イラクを、北朝鮮を、武力でねじ伏せる、石油の権益や市場を奪う、そのために核兵器まで使って大量殺戮(さつりく)をする、そのどこに正義があるというのでしょうか。
 全世界13億のムスリムの人びとを敵視して、パレスチナ、アフガニスタン、イラクを始め大量無差別殺戮(さつりく)を続けるアメリカこそ断罪されなければならないし、イギリスに次いでこの非道な侵略戦争に賛成し参加しようとしている日帝・小泉政権を倒すことは、私たち日本の労働者人民の緊急な責務だと思います。
 イージス艦派遣は、小泉政権の死を宣告されて当然の犯罪行為です。帝国主義の生き残りをかけた侵略戦争に対して、労働者階級としての国際連帯の力で阻止して、今こそすべての人間の解放をつくり出すことを歴史的使命としなければなりません。
 「イラクの子どもたちを殺すな」「石油のために戦争をするな」「NO WAR」がついに世界の労働者人民の共通スローガンとなりました。問題は日本の私たちでしょう。“有事法制廃案! イラク侵略戦争阻止!”をなんとしても実現しましょう。
 確かに反動は激しいし、私たちの力は小さく見えます。でも帝国主義の墓掘り人たちの力を甘く見てはいけません。なぜならもう私たちは、自分たちの生活や環境を守ることと戦争を止めることは一緒だと知っていますし、三里塚農民や北富士のお母さんたちの闘いが、不屈の勝利を保証してみせています。そして動労千葉や1047名闘争団や闘う国鉄労働者の存在があります。再び出撃基地として戦火を強制されている沖縄の闘いが、その正義が誰にも否定できない高さで行く道を照らしています。
 拉致問題を排外主義宣伝と戦争外交に利用して、戦争準備に躍起となっている小泉政権に対して、「二度とまつろわぬ民」として生きる決意を全労働者のものにしましょう。
 昨秋ストライキに立ち上がったアメリカ西海岸の労働者のスローガンに、「新しい世界をつくることは可能だ」とありました。絶望を希望に変えて組織しましょう。
 4月の統一地方選で3期目、必勝を期して闘います。基地の街、相模原。朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争……そして今またイラク侵略戦争のための軍事物資がすでに運び出されている街で、子どもたちの未来、労働者人民の未来のために、戦争と戦争協力を拒否する労働者市民とともに先頭に立つ議員の地位を確かなものにしたいと思います。
 たった一人の革新無所属議員として精一杯8年間闘ってきました。市民の支持を信じています。
 みなさまの力強いご支援を心からお願い申し上げます。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号10面2)

沖縄の闘う議員から

 沖縄から3人の闘う議員に新年のメッセージをいただいた。沖縄をイラク出撃基地にするな。名護新基地建設阻止へ、ともに闘おう。(編集局)

 あきらめず、前に進み戦争とめよう 沖縄反戦地主 読谷村議会議員 知花昌一さん

 「戦後最悪の政治状況だ」と言われている。まったく同感である。小泉首相のパフォーマンス的構造改革、長引く不況、リストラ、自公保の数による政治の独占、民主党のていたらく、社民、共産の無力さ、その事で有権者の政治離れの加速、等々……恐ろしいほど日本は「戦争への道」を突っ走っている。攻撃型イージス艦を米軍補給の護衛として派遣するなど参戦そのものだ。
 この「最悪の状況」「戦争への道」を止めるためにはどうしたらいいだろうか。
 答えは簡単だ。労働者・学生の大衆的な決起があれば止められる。多くの無関心層の政治参加があれば今の政治状況は変えられる。だれでもわかっていることだ。
 だが彼らの進行速度とわれわれの動きの高揚が遅々として見えてこないことでイライラし、悶々(もんもん)とし、時には「あきらめ」や「無力感」が襲ってくる。
 だがまてよ。為政者はわれわれ民衆の「あきらめ」「無力感」を待っているのでは。私だけでも彼らの思うつぼにはならないぞ。あきらめず、壁を押しつづけ、前に進もう。
 何時の年も、正念場的状況がわれわれの前にあるが、2003年は特にそうであるだろう。精一杯自分の思いを表現し続けることが今の流れを止めることにつながると思う。

 新基地建設阻止へ「連帯」で未来開く 名護市議会議員 宮城康博さん

 ブッシュの戦争の動機は石油であり、アメリカが戦争を組み込んだ国家財政の仕組みであることも自明のごとく知られている。にもかかわらず、アメリカ型市場原理主義がグローバルスタンダードとして地球を席巻しようとしている。それは「にもかかわらず」ではなく「であるからこそ」なのかもしれない。少なくとも米日の帝国主義的同盟関係ではそうだ。
 このような社会の中で犠牲を強いられている人びと(労働者・女性・子どもたち・障害を有している者・マイノリティ・いまだ現れていない未来の人びと)の数は、明らかに一握りの支配層と恩恵に預かることのみを行動原理にする人びとより圧倒的に多い。その厳然たる事実の前に、「連帯」こそが力であることを私たちは知る。
 沖縄のジュゴン保護を訴え新基地建設阻止の闘いの末席にいる私は、「環境」という観点から闘いを思う。グローバリズムは国民国家の枠を超えて、地域社会を破壊し尽くす悪しき力を有しているが、環境問題は国民国家の枠を超えて、地域社会を蘇生(そせい)する力の顕現を促すはずだ。状勢はなんら楽観的でないが、しかし絶望的に悲観的な状況でもない。世界中で戦争機械の駆動を止める多様な動きが、グローバリズムに抗する創造的な闘いが行われている。新基地建設反対・ジュゴン保護の闘いもその多様重層的な戦線を構成する一つであることを私は確信する。
 「連帯」の力で未来を切り開いていこう。それは歴史に課せられた私たちの責務である。

 二度と沖縄を戦争に使わせない決意 北中城村議会議員 宮城盛光さん

 全国の闘う仲間のみなさん!
 去年は本当に大激動の一年間でした。今年も大変な激動の年となることはまちがいありません。イラク侵略戦争、北朝鮮侵略戦争に対する闘いもいよいよ正念場です。有事立法を葬り去り、なんとしても勝利の年にしていきましょう。
 沖縄においても名護新基地建設をめぐる闘いはこれからが本番です。私が住んでいる北中城村(きたなかぐすくそん)は普天間基地の着陸コースの真下にあります。昨年、宜野湾市民による爆音訴訟の闘いも始まりました。
 アメリカは今もアフガニスタンの人びとを殺し続け、さらにイラク侵略戦争で何十万人という人びとを殺そうとしています。沖縄の基地が人殺しのための基地として使われることにも、また沖縄が戦場となることにも、もう我慢がなりません。
 私は昨年の6月23日の沖縄県全戦没者追悼式典で有事法制反対を訴え、「小泉帰れ」の弾劾行動をやりました。なぜなら小泉のやろうとしていることは沖縄を破滅へと導くものだからです。二度と沖縄を戦争のために使わせないという声をあげなければならないのです。
 沖縄県知事選挙ではっきりしたことは沖縄革新共闘が崩壊したことです。もう古いものには頼ることはできません。自分たちの力で闘いを切り開いていくことです。
 ともに頑張りましょう。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号10面3)

イラク反戦・新基地阻止へ沖縄闘争の戦略的構築を
 革共同沖縄県委員会

 アメリカ帝国主義(国際帝国主義)のイラク侵略戦争を絶対に阻止せよ! 日帝の参戦を断じて許すな!
 イラク侵略戦争は、11月の国連安保理決議と査察団のイラク入りをもって事実上始まっている。同時に、米日帝の朝鮮侵略戦争攻撃が激しく進行している。全世界を第3次世界大戦へとたたき込む恐るべき過程が始まったのだ。
 こうした歴史的事態の到来に対して、革共同は新たな「激動の7カ月」決戦突入を宣言した。今こそ、社・共に代わる労働者党への飛躍をかけて勝負に出なければならない。沖縄県委員会はこの方針を断固受けとめ、沖縄からイラク侵略戦争阻止、有事立法阻止・北朝鮮侵略戦争阻止の反戦闘争の嵐(あらし)を巻き起こしていく。
 沖縄は米帝のイラク侵略戦争の最大の出撃拠点である。一昨年9・11反米ゲリラ戦闘の爆発以降、沖縄の米軍基地をめぐる情勢は一変した。嘉手納基地を始め、すべての基地において、実戦さながらの軍事訓練・演習が激化している。北朝鮮への空と海からの監視体制も強化された。今や沖縄基地はかつてないほどに強化されている。それに伴い、米軍による事件・事故および基地からの被害が頻発している。
 そうした戦争突入情勢に対して、沖縄人民の基地撤去の闘いは、既成左翼の無力化と革新共闘崩壊をのりこえる、新たな発展過程に入りつつある。名護への新基地建設阻止を始め、イラク侵略戦争と対決する闘いが下から巻き起こってきている。
 11月に起こった米軍少佐による女性暴行未遂事件は、沖縄人民の95年以来の根底からの怒りと決起を引き出しつつある。南朝鮮・韓国人民の少女轢殺(れきさつ)弾劾・米軍基地撤去・地位協定改定の闘いと連帯・結合して新たな本格的な闘いの発展がかちとられようとしている。
 今こそ、帝国主義の暴虐な侵略戦争に対して命がけで闘うムスリム人民と連帯し、闘う南北朝鮮人民と連帯し、愛国主義・排外主義と徹底対決して、国際主義的連帯の闘争をつくり出さなければならない。
 2002年、われわれは復帰30年目の現実をしっかりと踏まえ、米帝ブッシュの新帝国主義的世界戦略と日帝・小泉の沖縄圧殺攻撃を見据え、これと本格的に対決する沖縄闘争の戦略的再構築の闘いを開始した。
 われわれは、革共同第6回大会路線の具体化としてのこの大方針のもとで、この1年、2月名護市長選、4月沖縄市長選、9月県内統一地方選における名護、読谷、北中城の市議選・村議選を闘いぬき、また、党として県知事選方針を真っ向から打ち出して闘った。同時に、国鉄決戦と結合し連帯しながら、沖縄の労働戦線における前進をかちとるために全力で闘った。
 この中で、われわれは、反革命カクマルの存在と敵対を大きく打ち破り、党的な本格的発展の基礎をしっかりと打ち固めた。
 情勢全体が、われわれの主流派的な組織的前進をギリギリと求めている。沖縄県委員会はこの歴史的要請に断固としてこたえることを決意する。
 03年、われわれの第一の任務はイラク反戦闘争の革命的爆発を沖縄の地からつくり出すことである。これは、米帝ブッシュの世界戦争を国際的内乱に転化する闘いそのものである。さらにわれわれは、空前の反米軍基地闘争に立ち上がった南朝鮮人民と連帯し、日米帝の北朝鮮侵略戦争阻止を闘い、これと結合して沖縄闘争を戦略的に再構築していく。
 沖縄闘争の戦略的再構築の柱は、普天間基地撤去=名護新基地建設阻止の闘いである。着工阻止をめぐる4年間決戦に勝利しよう。沖縄労働運動の階級的再生こそがすべての原動力となる。
 4月統一地方選挙の勝利のために総決起しよう。全国の同志諸君、ともに前進しよう。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号11面1)

農地と生活守り戦争反対鮮明に闘う 今年は決戦の年。三里塚の出番
 反対同盟から新年アピール

 暫定滑走路の閉鎖へ「今年は決戦の年」と意気軒高と闘いを続ける三里塚芝山連合空港反対同盟に新年の決意を語ってもらった。反対同盟の決意にこたえ3・30全国総決起集会に集まろう。(編集局)

 未来のために立つ 事務局長 北原鉱治さん

 国家権力の暴政と37年闘い続け、反対同盟は今なお健在です。昨年は、暫定滑走路の開港をめぐる激しい激突の中で、闘えば勝てる勝利の道を切り開いたと自負しています。
 正義と真実はひとつしかない。何をやっても良いとばかりに、住民の権利と生活を簡単に暴力で破壊する国家権力をどうして許せるか。当然の抵抗の権利として闘いは必然だ。
 成田空港は、暴力による多数の犠牲の上につくられてきた矛盾空港である。いまだに当初の事業計画がまったく完成しないことは何を物語っているのか。
 2180bの短縮滑走路しかできず、アジア便の大半が羽田空港へ移行する話が出ている。暫定滑走路のメリットはなく、不必要との見解も出てきている。今日の大型ジェット機の時代で2180bの暫定滑走路は不必要との意見が出ても不思議ではない。
 国際情勢を見た時、米国がイラクに対し侵略戦争を行う方向に進んでいる。この中には資源、石油の獲得問題がある。その次は北朝鮮を侵略する意図も見える。日本もアジア侵略の道へと進もうとしている。
 日本の国会では小泉政権が、有事3法案を虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。かつて日本はアジア侵略で2千万人のアジアの人びとを死に追いやった。あの悲惨な痛恨の歴史をくり返してはならない。
 日本の将来をどうするのか。悲惨な戦争の道を選択するのか。反戦平和を目指すのか。未来のために立ち上がらなければならない時代が来た。一人ひとりが何をなすべきか。今こそ、今の時代だからこそ、全国のみなさんに訴え続けます。
 3月30日に行う全国集会への結集を訴えます。

 やりがいある闘い 本部役員 鈴木幸司さん

 今日の情勢は、捨てておけば戦争になる。若い人が本当に頑張る時だ。私は若いころ、戦争へ行き靖国神社に祭られることしか考えていなかった。間違った教育は本当に恐ろしい。戦争阻止はわれわれの責務だ。
 イラクの問題を見ても、米国は自らは核を大量に持っているくせにイラクを非難し侵略戦争をやろうとしている。何でもテロを口実にして大本営発表のような報道だ。しかし、テロにはそれなりの理由がある。虐げられてきた者の苦しみや怒りがある。
 37年前、三里塚闘争がここまで発展するとは思っていなかった。支援の学生や労働者の生の声を聞き、考え闘ってきた。空港反対運動と戦争・戦後の抑留生活の経験から、本当に戦争に反対するようになった。37年前と同じ考えなら、ここまで闘えなかった。闘いによって人はつくられるということだ。闘う思想を身につけてきた。
 今年は決戦の年。なぜ完全でない暫定滑走路を開港したのか。国家権力なら何をやってもいいのか。反対同盟は身をもって、正義を体現して闘う。
 これ以上やりがいのある闘いはない。今年は本格的に決戦の年という感じを与える闘いをやっていく。有事立法によって戦争が目の前まで来ている。戦争をやるために有事立法をつくろうとしている。今年は全国に駆けつけ、三里塚闘争を広げていく。

 治安維持法忘れぬ 本部役員 三浦五郎さん

 37年間の闘いを反対同盟や全国の同志とともに進めてきました。政府や空港公団は、B滑走路2500bが、反対同盟の闘いで不可能になり、2180bの暫定滑走路を造った。しかし、そこには反対同盟の仲間の農地が多数あります。反対同盟の同志がもっている一坪共有地が厳然と暫定滑走路の中にあります。
 このような無様な形の暫定滑走路しかできなかったのは、反対同盟と全国の支援のみなさんの果敢な闘いの成果だと思います。
 今、政府は、有事立法を提唱して、戦争政策に入ろうとしています。私たちがかつて経験した「昭和時代」初期の治安維持法や国家総動員法を思い出す時、有事立法がどんなに恐ろしく、国民を弾圧するものかが思い知らされます。
 戦争に反対する人たちを治安維持法で大弾圧したことを、絶対に忘れることはできない。しかもあのような弾圧を許した結果、あの悲惨な、国民を巻き込んだ戦争になったことを痛感する。
 私たち三里塚農民は、空港阻止は言うまでもなく、戦争反対の闘いとして三里塚闘争を闘う。侵略戦争に突き進んだ過去の歴史の教訓を生かし、有事立法とあらゆる戦争政策に反対する。それが私たちの使命だと自覚している。
 働く者を中心とした団結のもとに、今年も頑張りましょう。私も老齢ながら闘う決意です。

 家新築し永住する 本部役員 郡司一治さん

 反対同盟への攻撃を強めるほど、暫定滑走路は破産していく。向こうがやるなら、こっちもやる。反対同盟は闘い続ける。これからはじわじわと暫定滑走路を追いつめていく。反対同盟は、国家権力の農民いじめと37年闘ってきた。ここまできたら意地だよ。向こうがどうにもならんと言う最後の日まで反対同盟は闘う。
 家の上空を飛ぶジェット機を見ていても、暫定滑走路を使う便は予想以上に少ない。今度できた芝山鉄道は、誰も利用せず、なんの利用価値もない。金をばらまくことだけが目的だ。
 イラクへの侵略戦争が始まろうとしているが、戦争だけはやってはならない。日本は半世紀前、ひどい侵略戦争をやった。今は自衛隊だが、再び徴兵制になったら大変だ。戦争は体験したものしか分からない。戦争は演習とは違う。本当に弾が飛んでくる。自分の軍隊生活では、行軍の苦労がつらかった。特攻隊は、帰る燃料もなく、爆弾を積んで、出撃させられた。戦場へは最初、歓呼の声で送られるが、最後は本当にみじめなものだ。
 今、家を新築している。建てる以上、ここに永住するということです。

 権力を相手に運動維持した 鈴木謙太郎さん

 菱田では、ここ十年くらいで集団移転が進んだ。成田用水は反対運動の買収だった。農業基盤整備と称して、結局は買収されて移転。それで上空に飛行機が飛ぶようになった。
 しかし、成田空港のアジア便を全部、羽田空港に移そうという話もある。もう暫定滑走路はいらない。開港はいったい何だったのか。とどめが空港公団の民営化だ。もう周辺にばらまく買収金もない。
 反対同盟も、長い間の攻撃で組織が小さくなったことは事実だ。だけど攻撃をしのぎ切って運動を維持してきた。国家権力を相手に最後までつぶされなかった。三里塚は権力が力でねじ伏せられなかった唯一の住民闘争。物事には勝ち負けがある。ここまで来たら最後まで見届ける。

 戦争阻止するのは民衆の力 木内秀次さん

 反対同盟は最後まで負けなかった。37年間の攻撃を全部“受けきった”感じがする。三里塚では権力の横暴は許されない。権力といえども悪い奴は罰せられる。暫定滑走路が破綻(はたん)して完全に流れは変わった。三里塚闘争はこれからだ。敷地内の仲間もいる。三里塚には今も反戦勢力が集まっている。
 有事法制が制定され戦争になれば空港の倉庫は軍事物資で一杯になる。成田は名実ともに軍事空港になる。こういうのに抵抗するには既成政党では問題にならない。今こそ三里塚の出番だと思う。
 イタリアの反戦デモに百万人が集まった。ロンドンでも40万人。一気に火がついて広がっている。三里塚の出番だ。戦争を阻止するのは民衆の力だ。

 有事立法阻止と反戦を闘う 伊藤信晴さん

 暫定滑走路とは、敷地内農家を追い出すだけが目的だった。当初計画の2500bの平行滑走路をつくるための手段だった。空港公団は「開港すれば農民は必ず出ていく」と公言していた。敷地内がここまで頑張り抜くとは想定してなかった。それが開港の真相だ。
 滑走路を2180bに短くして開港して誘導路も曲がり一方通行で渋滞している。当然、採算もとれない。「暫定滑走路はない方がいい」という声も管制官から出ている。
 それでも公団は暫定から飛行機を飛ばしている。イヤガラセだ。
 今年の課題は、現地的には、市東さん宅のジェット排ガス対策と飛行阻止だ。そして有事法制と戦争阻止の闘いだ。いよいよ、三里塚の出番だ。

 許せぬ小泉の福祉切り捨て 宮本麻子さん

 暫定滑走路の開港そのものが反対同盟をつぶすのが目的。危険きわまりない暫定滑走路で、先日の接触事故は起こるべくして起きた。反対同盟は昨年、頑張りぬいて暫定滑走路をつぶす展望を開いた。反対同盟が意気高く闘い続ける限り、最後は必ず向こうが負ける。全国の仲間のみなさんと連帯して闘っていく。
 小泉政権の福祉切り捨ては本当に許せない。弱い人にしわ寄せする。介護保険は、高齢者が介護を減らしたり、労働者が自分を犠牲にしてカバーするなど大きな矛盾がある。また小泉政権は、米国のイラク侵略戦争を支持し参戦しようとしている。イラクでは子どもが病気や飢餓で苦しんでいる。弱者が犠牲になる。戦争を止めるために帝国主義を倒さなければならない。

------------------------TOPへ---------------------------

 三里塚教会信徒代表  国際連帯の運動を 戸村義弘さん

 8月に市東孝雄さんを教会に招いて話を聞きました。三里塚の地に帰ってくるには、相当な覚悟があったと想像していたのですが、語る言葉には力みがなく、心の発露とでもいう深みを感じました。あらためて感動し、心の中に眠っていたものが覚醒した感がします。三里塚闘争の持つ根強さを再確認しました。
 暫定滑走路の開港で、毎日、巨大なジェット機が排ガスや騒音をまき散らして航行するわけですから、大変な生活環境だと思います。しかし「権力のいやがらせには断じて屈しない」と反対同盟は追い出し攻撃をうち返しました。三里塚闘争の強さをあらためて見た気がします。
 しかし戦前に戻ってしまうかのような戦争への動きに危機感はひとかたではありません。戦前の教会は、天皇制権力に抵抗の跡すら示すことができず屈服しました。あの過ちを二度とくり返してはなりません。
 米日のイラク・朝鮮攻撃の動きは「帝国主義」としかいいようがない。「軍事空港反対」のスローガンが現実性を帯びてきた。成田の軍事使用は危惧の段階を通り越しています。
 アメリカやヨーロッパでまき起こる数十万、百万人規模の反戦デモに激励され、日本でも国際的に連帯する運動を今年こそ起こしたいと思います。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号11面2)

 敷地内の決意 滑走路延長は絶対不可能

 廃港も夢ではない 事務局次長 萩原進さん

 昨年4月の暫定滑走路開港の攻撃に対し、反対同盟は6カ月決戦を宣言して闘ってきた。
 政府や空港公団はジェット機を飛ばして住民を追い出し、反対運動を沈静化しようとした。しかし、東峰部落の住民は東峰神社裁判を提訴し闘った。この裁判は本当に廃港まで闘うことを意味する。何十年も変わらぬ農民殺しの攻撃に対し、あくまでこの地で生き抜くことを示した。
 これらの闘いで、暫定滑走路は、結局「暫定」でしかないことが露呈してきた。短縮された滑走路、曲がった誘導路など国際空港としてまったく通用しない滑走路をつくるしかなかった。結局、農民を追い出すためだけにジェット機を飛ばした。
 ジェット機の騒音や排ガス、嫌がらせや収容所的環境の中でも頑張りぬいた。われわれが動かないかぎり滑走路の延長は絶対に不可能だ。敵を絶望的なところまで追い込んだ。
 国際空港として成田空港は破産寸前だ。アジア便などは将来的に羽田へ移行する。アジアにおけるハブ空港の競争での大敗北だ。アジアの中で、成田空港は乗り継ぎ空港の位置しかなくなる。
 バブル期と違い財政もなく国も財政難。民営化も避けられない。成田空港はもうからない。どんどん首が絞まる構図だ。国の出資金2000億円の返還問題を、地元自治体も含めて醜い争いをしている。
 地元の経済も空港に依拠してきたが、空港自体が将来、財政ひっ迫要因となる。芝山鉄道がいい例だ。空港行政の過疎化の中で投資しても損失を招く。空港に頼れば頼るほど自分の首を絞める。暫定滑走路自体が彼らの足かせになっている。成田空港本体を葬り去ることもけっして夢ではない。
 今の社会は、戦争以外に選択の余地がない状況がある。その中で有事立法や治安法改悪がある。現代の戦争は空港の存在抜きに考えられない。農地と生活を守る闘いと、戦争反対の闘いの正しさを鮮明化させる。

 公団思い知ったか 天神峰 市東孝雄さん

 暫定滑走路の開港の狙いは敷地内に住む農民の追い出しです。あくまで2500bの平行滑走路をつくるための開港で、これ以上の脅しはない。うちも排気ガスで大変だけど、家の真上40bを飛ぶ農家もある。空港公団は、滑走路をつくってしまえば出て行くと考えていたんでしょう。
 黙っていたら家の前まで滑走路になって、嫌でも出て行かなければならない状況になる。家の周りを機動隊が取り囲み、子どもまで脅す。これが「話し合い」の正体なんです。三里塚の37年の歴史は、そういうことの連続だった。
 機動隊やガードマンが家を24時間監視している。家の出入りを監視して尾行したりする。畑仕事もチェックしている。こういうことが許されるのかと思う。奴らの横暴を抑止するために、時には力をもって闘うことが必要だ。
 しかし、天神峰と東峰の用地買収はもう不可能だ。いよいよ公団も思い知ったか、と思う。37年もかけて、この滑走路は立ち枯れ寸前だ。民営化すれば延長なんか不可能だ。欠陥空港どころではない。
 暫定滑走路の開港から今年の4月で1年となる。一気に廃港とはいかないが、暫定滑走路の「閉鎖」という方向性は見えてきた。もっともっと闘ってやろうと意欲が高まっている。
 イラクへの戦争や有事法制が問題化している。子どものころは、戦争の時代なんて想像もできなかった。それは過去のものだと思ってた。有事法制では徴用・徴発という問題も出てくる。戦争にかこつけて人の家を撤去してしまうとか。
 民衆の力以外に権力を止められない時代だ。三里塚のような運動が大切だ。全国のいろんな運動の力がひとつになれば必ず勝てる。
三里塚の闘いを世間に知らしめる努力が必要だ。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号12,13面1)

各界から闘う新春メッセージ
 イラク侵略戦争を阻もう 国際連帯の新時代開こう

 米帝・国際帝国主義のイラク侵略戦争切迫の中で迎えた2003年、イージス艦派兵で全面参戦に踏み出した日帝・小泉との対決と国際連帯の闘いがまったなしに問われている。ともに闘う各界の人士、議員から寄せられたメッセージを紹介します。(編集局)

 帝国主義と闘い社会主義へ前進を 反戦共同行動委員会代表 全国労組交流センター代表 佐藤芳夫さん

 年頭にあたり、親愛なる「革共同」のみなさんにあいさつを送る。
 私は体調不良のまま75歳を迎える。そこで、今年は日頃考えていることを語りたい。
 今日、帝国主義に抑圧されている世界の民衆は、あまりの怒りにけいれんしている。人間的に生活できる最低限の物さえなく、爆弾と飢餓におびえている。民衆には食物を生産する豊かな土地と自然と石油があるのに、何億という人がホームレス状態だ。
 今や非難しているだけでは問題の解決にならない。私たち一人ひとりが帝国主義と闘うことだ。その武器こそ、社会主義革命への前進だ。いわゆる社会主義は(旧ソ連・中国のように)崩壊したと言われる。確かに、一国社会主義理論による革命の歴史的栄光を悪用したスターリン主義と、わい曲したマルクス主義イデオロギーは凋落(ちょうらく)した。反面、米・日帝国主義と中南米の資本主義は、完全に失敗している。
 私は、真の社会主義・共産主義社会実現のため「革共同」の皆さんは献身的闘いをとおし、巨大な前進をしていると思う。
 私たちは、人間らしく生きるため、考えを自由に述べ、搾取されたりすることなく、全ての人間が平等になる日のため帝国主義と闘わなければならない。
 まず、日帝・ファシストと闘うことが重要だ。「兵器を外国に売ればいい」(石原都知事)、「徴兵制を否定する国は、国家の名に値しない」(石破防衛庁長官)と叫ぶファシストらと断固闘おう!

 イラク反戦・弾圧粉砕、労働者決起へ 東京反戦共同行動委員会代表 三角忠さん

 2003年が明けた。
 全国の闘うすべての仲間に「イラク侵略戦争阻止、有事法制廃案、戦争のための治安弾圧粉砕」の新春メッセージを送る。
 米・日両帝国主義のイラク侵略戦争がついに始まろうとしている。今や、全世界の労働者階級を殺しあわせ、被抑圧民族を虐殺してきた過ぐる二度の大戦を上回る第三次世界大戦への道が、その第一歩をしるそうとしているのである。
 こうした強盗帝国主義のなりふりかまわぬ侵略戦争突入は、1929年以上の恐慌必至というアメリカ帝国主義が、石油利権の中東支配再確立によってその危機を打開しようとすることから生まれる。
 日本の小泉政権もまた同様の危機を侵略戦争によって打開しようとし、「拉致問題」を口実に侵略戦争を推進する排外主義をあおり、北朝鮮侵略戦争への道をひた走ろうとしている。
 しかし、このような「戦争と大失業時代」への突入は、かえって日本の労働者階級が自らの解放が労働者と被抑圧民族との国際的連帯とそれに裏打ちされた階級的団結の強化によって達成されることを教えてくれるものだ。
 国労の闘う労働者への弾圧や国際的組織犯罪条約の批准=共謀罪の新設など治安弾圧は究極的にはこうした階級的団結の破壊にある。私自身、足元の三一書房闘争を勝利するためにも、こうした闘いの先頭で闘う決意を固めている。ともに勝利をめざし奮闘しよう。

 広範な出会い求め困難恐れず闘おう とめよう戦争への道! 百万人署名運動 小田原紀雄さん

 何の根拠も示さずアフガニスタンのタリバン政権とアフガニスタン民衆を敵と断じて、空爆のみならず地上軍投入により大量の殺りくをほしいままにし、傀儡(かいらい)政権を樹立した。
 今度は埋蔵する原油が欲しいが故にあれこれの難癖をつけてイラク侵略戦争を開始しようとしている。
 この歴史上かつてないほどの暴虐極まりないアメリカ帝国主義に随伴してすでにアフガニスタン空爆以来「参戦」している小泉政権は、2003年の通常国会において有事法制の制定と、あらゆる抵抗運動を根絶やしにしようとする意図をもってする治安法の強化を画策している。
 他方、政府の無策・失策というより弱肉強食という資本主義の絵に描いたような図式そのままの経済政策によって、労働者は塗炭の苦しみの中に放置され、中小企業の未組織労働者は今にも息の根を止められようとまでしている。
 再出発しよう。こういう状況をこのままにしておくことはできない。自分たちがつくってきた運動を総点検しなくてはならないのではないか。
 最も困難を強いられている人びととの心からの共感を基礎とした共闘関係を築き直し、広範な人びととの新しい出会いを求めて、これまでの闘いのスタイルを一変するほどの大胆さを持たなければならない。
 困難など恐れることはない。これまでいつでも困難だったではないか。

 むらがる反動と闘って展望開こう 反対同盟顧問弁護団事務局長 動労千葉弁護団代表 葉山岳夫さん

 新年のごあいさつを申し上げます。
 ブッシュ・ドクトリンによるイラク侵略戦争は本格化してきました。ファシスト小泉政権によるイージス艦派遣は、明白な共同作戦行動です。
 イラク人民、パレスチナ人民、イスラム人民そして全世界の労働者人民と連帯して、イラク侵略戦争反対、戦争加担の小泉内閣打倒のために、私の持ち場で全力をあげる決意です。
 イラク侵略戦争反対の闘いと、通常国会での有事立法粉砕の闘いは、不可分一体です。そして小泉首相が国家戦略と位置づけたまやかし司法改革は、戦争のできる国をめざす有事体制と一体です。
 裁判の拙速事務処理、適正手続を否定した裁判員制度の導入、人権擁護の理念をつき崩し、弁護士の粗製乱造をもたらすロースクール制度の導入等戦時司法化を狙っています。
 有事体制への人民総動員のためには刑事罰の強化が不可欠です。実行行為なき「共謀罪」の新設、依頼者を裏切ることを弁護士に強要するゲートキーパー(門番)法を権力は成立させようとしています。
 闘う国鉄労働者は四党合意を粉砕しました。その報復としての国労5・27臨時大会弾圧に対しては、裁判闘争に勝利します。
 改憲阻止闘争は正念場を迎えます。むらがる反動と闘ってこそ展望は開けます。
 ともにがんばりましょう。

 危機を人民の壮大な決起に転じよう 反戦共同行動委事務局長 滝口誠さん

 21世紀を全世界の労働者階級と被抑圧民族人民の解放の世紀とするのか、それとも帝国主義者どもによる第三次世界強盗戦争への道を許してしまうのか、その分水嶺(ぶんすいれい)が今年03年の闘いにかかっていると思います。
 勇気をふるってこの時代−情勢を見据え、それに挑みかかることをまず決意します。
 私の背中を押してくれているのは、国労7人の仲間を始め、獄中で不屈に闘っているすべての仲間とそれを懸命に支えておられるご家族の怒り、奮闘です。
 ほんの一握りの帝国主義者・支配者どもが石油と世界支配のためにどれだけ数多くの人びとの命を奪い、血と涙が流され、阿鼻叫喚(あびきょうかん)があったことか。
 今こそ「危機」を、労働者階級人民の壮大な決起に転化しよう。今、広範な労働者人民が、働きかけを待っている。勝利の指針を求めています。これにこたえるために全力をつくすことだと思います。
 アメリカ帝国主義足下を始め世界各地で開始している新たな反戦闘争、労働運動と固く連帯し、「イラク侵略戦争反対」「有事立法廃案」のために職場・地域・学園に軸を据え、広範な統一行動をつくり出そうではありませんか。
 戦争と差別・排外主義との本格的な闘いは、日本労働運動の再生・発展をも必ず実現させると確信しています。
 03年の勝利のためにともに闘いましょう。

 「核に殺されてたまるか」の精神で闘う 反戦被爆者の会会長 大槻泰生さん

 あの残酷で悲惨な戦争が終結して早57年の時が流れました。しかし、私たち被爆者にとって、戦後はありませんでした。私たち被爆者は二度とあのような悲惨を繰り返すことのない人類の恒久平和を願わずにはおられません。しかし、私たちが迎えた2003年はこの私たちの願いとは裏腹な新たな世界戦争情勢です。
 私は、先の戦争を「聖戦」と信じ、若さにまかせて排外主義・差別思想をむきだしに、強制連行されてきた朝鮮の人たちを迫害し、自ら進んで戦争に協力・加担してしまいました。そのあげくの果ての結果が被爆でした。
 私はこの反省の上に立って、二度と侵略のための銃はとらないことを決意したのです。以来、ヒロシマ・ナガサキをくり返すな!を自らの原点として闘ってきました。
 また、被爆部落民である私にとって、戦争は最大の差別でもありました。差別主義や排外主義による分断支配を許しておいて闘争の勝利はありません。私はこれからも反戦・反核、反差別の闘いを全力で闘いぬいてまいります。
 しかし、現実は厳しくもあります。私も、先日皮膚ガンと告知され入院をよぎなくされました。原爆症は容赦なく私達に襲いかかります。しかし、私は負けません。「核に殺されてたまるか」。この精神で、闘病に必ず勝利し、イラク侵略−有事立法阻止、福祉切り捨て反対を皆さんとともに闘いぬいて参ります。

 新しき年の初めを寿(ことほぎ)て
  亡妻(つま)と語りぬ
   同志(とも)の
    幸福(いやさか)

 世界人民の団結で平和共生の世界を 在日台僑 元日本兵 林歳徳さん

 ◎中国を支配する者は世界を支配する夢
 19世紀から20世紀まで200年間に中国は露・英・日・米・独・仏・伊・墺の列強帝国主義達に侵略蹂躙(じゅうりん)された戦場であり、地獄であった。この間数千万の中国人民が殺戮(さつりく)され、生活基盤は完全に破壊し尽された。中国人民は自力で刻苦奮闘して地獄から這(は)い上がり、2001年の中国GDPは世界第6位になった。
 過去の日帝田中義一首相が天皇に世界支配法を上奏し、中国を70年間侵略した。その戦勝賠償金3億5575万両(当時の日本国家予算の20カ年分相当)と強奪した資源で近代日本帝国を建国した、即ち近代日帝は中国人の血肉で造築された「肉城」であった。この暴虐日帝の行為は、人従天不従の天誅(てんちゅう)で1945年敗戦、世界支配は儚(はかな)い夢に終わった。
 現在の新日帝小泉純一郎首相(田中義一の化身)は日米同盟して日米英露と握手で世界支配の夢を実現するため、侵略魔殿靖国神社へ拝んでいる。
◎戦う世界人民よ、団結して日米英露四覇の地球制覇を粉砕しよう!!
◎21世紀は日米英露四覇の墓場にさせよう。
 宇宙は諸行無常である。地球上の人間及び人間のつくった物は儚いものである!! 生者必死、無道暴虐者必滅のが天理である。被圧迫人民が団結し、勇気と信念の臨機応変で戦えば必ず、この四覇の野望を粉砕できます!!
 私達戦う世界人民の団結鉄鎖で四覇を絞め殺し300年の乱世を平和共生の世界になるよう、戦う友よ!頑張りましょう!! 希望と信念と勇気の熱で敵の砲火に向かって突進しよう!!
 二〇〇三(癸未)年 元旦

 荊冠旗を掲げ国際反戦闘争に合流す 部落解放同盟全国連委員長 東大阪市議会議員 瀬川博さん

 闘う仲間に、慎んで新年のあいさつをいたします。
 イラクに対する「査察」に始まり、さらに北朝鮮への戦争策動と、帝国主義の世界戦争が始まっています。これに対してイスラム諸国人民が不屈の抵抗を続け、全世界の労働者人民が反戦闘争に立ちあがっています。
 私たち全国連も荊冠旗を掲げ、この国際反戦闘争に合流し、「イラク攻撃をやめろ!」「ブッシュを倒せ」「小泉を倒せ」の大きな叫び声をあげました。今年こそ、私たちは「有事立法」「人権擁護法案」の息の根をとめます。そして、小泉による世界戦争への参戦を阻止し、「日本の反戦闘争ここにあり!」を全世界にむかって示します。
 一方で昨年の同和対策法の期限切れ、狭山再審の棄却など権力の部落解放運動つぶしの攻撃と解同本部派の屈服が、悪質な差別事件をよびおこしています。これは、たしかに部落民にとって非常にきびしい情勢であります。しかし、それ以上に、私たち「差別徹底糾弾の全国連」に圧倒的な部落大衆が結集する時代の幕開けでもあります。
 全国連は昨年以来、「この2〜3年で全国連を5万人にする」と宣言し、「モノにかわる新たな団結」「部落差別とたたかう村の団結をつくろう」を合言葉に実践をつみあげてきました。全国連は、この成果のうえにさらに大きな飛躍をかちとる決意です。
 全国連は3月2日〜3日の第12回全国大会で、その具体的方針を明らかにします。皆さんの結集を訴えます。

 失業攻撃と戦争に働く権利掲げ闘う 阪神被災地・雇用と生活要求者組合代表 長谷川正夫さん

 2003年、新しい闘いの幕が切り落とされました。
 昨年私たちは、激しい実力闘争を闘い、4回の被災地反失業総行動を闘いました。その中で、失業攻撃と戦争は同じものとして受け止めて、総行動で初めて県行政に対して有事3法案や、住基ネット、国民保護法制への非協力を要求しました。被災体験を利用した自衛隊との共同防災訓練や、神戸空港の建設をやめ、非核神戸方式を守ることを、県民の生命を守る県行政の責任として要求したのです。
 これは被災者が生きるために、戦争政策に反対する要求を、対行政闘争として始めたもので、その意義は重要だと思います。被災労働者の働く権利を要求し、イラクやアフガニスタン、北朝鮮侵略戦争に反対し、「軍事都市神戸」にさせない闘いです。これが反失業・反戦総行動の新しい闘いです。
 今年は、震災を受けた1月17日のその日、殺された5千人を超える被災者の恨みを晴らすため、初めて長田の地で、第17回被災地反失業総行動1・17集会を開催します。戦争と大失業のただ中で被災地労働者が働く権利、生きる権利を掲げて、闘う仲間の先頭で闘います。
 イラク反戦、有事法案反対を信頼と団結を固めて闘いましょう。
 4月の統一地方選挙は杉並を始め全国の勝利を祈りまして年頭の決意といたします。

 自衛官を反戦運動に獲得する闘いを 反戦自衛官 小多基実夫さん

 読者の皆さん。本年もよろしくお願いします。
 12月7日、イラクが国連に報告書を提出した。9日から、米軍は湾岸地域での全軍を指揮するためにカタールに設置した中央軍司令部のイラク全面攻撃を指揮する大演習「インターナル・ルック」に突入した。9日間にわたるこの演習をもっていつでも開戦に踏み切れる体制が完成したということになる。事実、空爆をはじめ攻撃の先陣をきる主力の空母態勢もアラビア海にリンカーン、ワシントン、コンステレーションの3隻が集結した。
 日本政府は、この戦争に海上自衛隊所有の最強最新の軍艦であるイージス艦の派兵を決定した。イージス艦の派兵は、単に今までよりも広範囲のレーダー情報を収集して米軍に提供するというようなものではなく、前線において米英をはじめとする連合軍全体を統制・指揮する司令部機能の一角に事実上食い込んでいくことを意味します。
 さらに「掃海艇の派兵を準備中」との発表もあった。戦争がほぼ決着した段階で「遺棄、廃棄された機雷と見なす」と称して、派兵した前回の湾岸戦争での掃海艇部隊とは異なり、今回はこれから始められようとしている米軍の海からの攻撃に対処するためのイラクの備えである機雷を撤去し、イラクを丸裸に武装解除して、米軍による攻撃の先導役を果たすという意味がある。
 私たち日本の闘いは、この自衛隊を送り出しているという現実と、イラクの人びと、アラブの人びとがどんな恐怖の中でこの年末―年始を過ごしているのであろうか、という思いの双方からひと時も目をそむけることなく闘っていく必要があると思います。
 自衛官と家族をわれわれ民衆の反戦運動の仲間として包み込み、獲得し、侵略戦争の恐怖から救出できる運動を構築したい。皆さん、ぜひ力を寄せてください。

 戦争か平和か、選択が今問われている 沖縄民権の会 座覇光子さん

 昨年の暮れ、関西に良い旅をしてきた。一つは、関西の民権講座に参加し、沖縄民権の父、謝花昇のような闘いが今こそ必要との思いを強くした。謝花の周りには60名余の共に闘う同志がいたという。最後は、一人になっても自信を持って闘う意志を持つことだと励まされた。
 関西の沖縄人がクブングヮ(くぼみ)というスラムのような街からさえも追いやられたわが同胞の中に謝花は甦(よみがえ)るべきだと言った人もいる。
 ある沖縄二世の青年は、現地沖縄の人が、稲嶺を勝たせてしまっているような沖縄のテーゲー主義(いいかげん)なんてよくないと、絶望に近かった。しかし彼の問いは、真の沖縄の人間になりたいという願いであるように、聞こえた。
 東京でも年末に、古波津英興さんが主宰していた「沖縄民権のつどい」を復活させ、民権講座を始めた。沖縄から若いジャーナリストを招き、在沖米軍基地について勉強した。
 イラク攻撃を前に、米軍基地は縮小どころか、強化されて事件・事故が続発している。米軍少佐が起こした女性暴行未遂事件では、米軍が身柄の引き渡しを拒否して、戦争のためには人権や身の安全などどうでもよいという態度だ。
 戦争か平和かの選択が、今問われていることを実感します。
 お互いに知り合うことで豊かに解放の糸口がつかめるよい手ごたえを実感し、今年こそ意義ある年にしたいものです。

 北富士忍草母の会 イラク侵略演習に梨ヶ原を使わせぬ 事務局長 天野美恵さん

 全国のみなさん、今年もよろしくお願い致します。
 昨年11月24日、沖縄海兵隊の北富士での実弾演習に対し、私たちの忍草国有入会地守る会の天野重知会長は、93歳の高齢で、着弾地に15時間の座り込みを行い、入会地奪還・演習場撤去の決意を小泉内閣にたたきつけました。
 北富士演習場とされている、富士山麓梨ケ原は、先祖伝来の私たち忍草農民の入会地です。私たちは、入会地から草を刈り、まきを採り、生活の8割を依存して生きて来ました。梨ケ原に忍草の入会権があるということは、かつて政府も東京地裁も認めたことです。私たち入会権利者は、米軍にも自衛隊にも、梨ケ原を貸したことはありません。
 この不法をごり押しするために、政府は農民のなかに分裂を持ち込み、演習場賛成派をつくり、彼らに違法な金をばらまいて演習場を維持しているのです。
 私たちは、入会地梨ケ原が、米軍や自衛隊のイラク、朝鮮侵略戦争の演習に使われることを絶対に許すことはできません。また、小泉が通常国会で強行しようとしている有事立法は、この梨ケ原無断使用をいっそう固定化するものとなり、絶対に反対です。
 私たちは、三里塚、沖縄などの反基地の闘い、動労千葉を始めとする全国の労働者人民、全世界の闘う人びとと連帯して今年も闘います。よろしくお願い致します。

 全関西実行委員会 軍事空港絶対反対の決意は確固不動 代表世話人 淡路町空港反対同盟代表 永井満さん

 今、この原稿を書いている時点で、国連及び国際原子力機構によるイラクの査察は4日目を迎え、査察はイラク側の協力を得て計画通り順調に進んでいると報ぜられている。この査察を世界は息をのむ思いで注目している。
 一方アメリカは中東地域へ続々と兵力を投入し、いつでも攻撃を開始できる態勢にある。査察はアメリカにイラク攻撃の大義名分を与えるために行われているかのようである。そして小泉首相はインド洋への自衛艦派遣の延長を決め、イージス艦の投入もありうることをほのめかし、「後方支援」から実戦参加に踏み出そうとしている(編集局注 =日帝は12月16日、イージス艦「きりしま」の派兵を強行)。アラブ諸国はもちろん、ロシアを含むヨーロッパ諸国が、アメリカのイラク攻撃に批判を強める中、わが国がアメリカの戦争に協力する姿勢がひとり際立っている。国を挙げて戦争動員態勢をもくろむ有事法制の国会審議も新年早々の成立を目指して大詰めを迎えようとしている。
 このような緊迫した内外の情勢下、私たち三里塚を共に闘う関西の仲間は有事法制制定を絶対に許さない闘い−署名運動、集会、デモ−を全力で闘い抜いてきた。一方、三里塚反対同盟は4月の「暫定滑走路」開港の攻撃をはねかえし、2500b滑走路建設をもくろむ国の企画を完全に粉砕し、天神峰、東峰を先頭に非妥協・不屈に闘い抜いている。この同盟と固く連帯し、「三里塚決戦勝利」「関空二期=軍事空港反対」「闘う動労千葉支援」を掲げて闘う私たち関西の住民の決意はますます確固不動である。

 反戦闘争爆発させイラク戦争止める 泉佐野市議会議員 泉州住民の会事務局長 国賀祥司さん

 2003年年頭のあいさつをおくります。
 昨年は5月市議選へのご支援ありがとうございました。おかげで5期当選を果たすことができました。
 今回の選挙戦は地元支持者と組織が総決起し、その力と議員が結びついて勝利をかちとる典型的な選挙戦をやることができました。有事立法反対闘争・関空の軍事使用反対を基軸に、地域でさまざまな種類の懇談会を開き、住民の要求を聞き、ともに決起していく選挙戦に努めました。その結果、支持者が決起し、支持を拡大し、宣伝を担い、事務所を運営するなど、熱気あふれる選挙を闘うことができました。この経験は今後の選挙と運動に大きな教訓を残したと確信しています。
 今年は、戦後最大の反戦闘争を爆発させ、戦争を止めるときです。ムスリム人民始め世界の労働者人民と連帯し、イラク反戦闘争を日本で爆発させましょう。
 アメリカ帝国主義のイラク査察=侵略戦争に対し、ムスリム人民が世界中で命をかけたすさまじいゲリラ戦に決起しています。欧米では労働者人民が数十万〜百万人単位で決起しています。アメリカが昨年アフガニスタン侵略戦争で始めたこの戦争はイラクから世界戦争に行き着く、このことに対する危機感と怒りの決起です。
 私は闘う議員として、関西反戦共同行動委事務局長として、泉州住民の会事務局長として、泉佐野、大阪、全国で反戦闘争を爆発させる決意です。
 みなさん、今年は史上最大の連帯闘争を爆発させよう。そして帝国主義を打倒しましょう。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号12,13面2)

獄中同志から新年アピール

 獄中で闘う同志から寄せられた新年アピールを紹介します。87年の迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧と闘う須賀、十亀、板垣、福嶋の4人の同志は、不当な超長期勾留を弾劾して不屈に闘っています。そして無期攻撃と闘う獄中28年の星野文昭同志を始めとする獄中同志が闘っています。昨年は、神藤猛雄同志が不当にも11月に下獄しました。国労5・27臨時大会弾圧で8人の同志が起訴され、12月のイージス艦派兵阻止闘争でも5人の学生が逮捕されています。すべての獄中同志の奪還へ、全力で闘おう。(編集局)

 現状変革の闘いへの決断・行動が歴史決す 東京拘置所在監 須賀武敏

 われら労働者人民の決断と行動が歴史を決する重大な分岐点に、われわれは立たされている。日本はいま「昭和大恐慌」の大乱前夜にある。このまま日本の進路を小泉政権に、既存の政党や組合官僚にまかせていたら、破局と破滅の二の舞いに絶望するだけだ。
 老年が知恵を出し、壮年が決断し、青年が行動を開始した時、世の中は一変する。現状変革の荒々しい闘いの決断と行動こそが、労働者人民の明日への希望と生きる活力を生み出すのだ。人民がいま一番恥とする点は、決断と行動が求められた時、ひるみ、尻ごみして現状を追認して貝になることだ。
 資本と小泉政権の傍若無人な攻撃に反対して闘わなければ、その最大の犠牲とツケを人民自身が生命をもって支払わなければならない。それがわが国の歴史に刻まれた惨劇だ。この残酷な生き様を再び繰り返すというのか。ノーなら、いま行動を開始すべきなのだ。
 飢えと戦火に苦悩するイラクとパレスチナの民衆と子どもたちを見殺しにするな! 有事立法粉砕を!
 この反戦の闘いの渦をまきおこし、十万人決起を実現したら情勢は一変する。労働者人民の秘めた底力はよみがえり、明日には百万人の隊伍になって街頭を、職場を、学園を埋めつくすであろう。現状変革の新しい革命的運動が主導権を握り、再びわれら労働者人民が歴史を決する主役に躍り出るであろう。その日を一日も早く実現するために力をあわせてがんばろう。(獄中17年)

 03年最初の大闘争で激烈で豊かな激動を 東京拘置所在監 十亀(そがめ)弘史

 侵略戦争とは、結局は、一国の金と権力のために無辜(むこ)の民衆を大量に虐殺するということです。一方、殺される側の民衆は、民衆として国境を持ちません。
 イラクの労働者は、私たちの同志であり、未来の同志です。イラクの人民は、地理的には遠く離れていても、いま最も身近な私たちの仲間でありきょうだいなのです。
 私たちは、私たちの仲間とその家族や子ども達を、絶対に殺させてはならず、殺すことに手を貸してはなりません。
 そのために資本と権力とその暴力機構に向けられる闘争では、どんなことでも許され、どんなことでもなし遂げなければなりません。
 先鋭さと大衆性は対立する概念ではありません。また、街頭における暴動的な闘争は、工場や学園における最も地道な活動と、相互に強化しあうのです。激しい闘いこそが、闘いを定着させ、新しい拠点を生みだし、闘いを拡大します。それこそが激動期なのです。
 私たち「爆取」の4人はすぐにも出獄しますし、出獄しなければなりません。しかし、私たちと入れ替わりに、火炎瓶(かえんびん)でズボンを焦がし、催涙ガスで目を真っ赤にした労働者や学生たち500人が獄中に入ってくるとしたら、それはすばらしい状況です。
 ベトナム反戦闘争以来のイラク反戦闘争とは、具体的にそういうことであるにちがいありません。
 03年の最初の大闘争で、激烈で豊かで、最も人間的な大激動を、断じてつくり出そう! 有事立法の粉砕も、選挙での確かな勝利も、まさにそのダイナミズムの中にこそあるのです。(獄中17年)

 保釈とまったき無実・無罪へともに闘おう 東京拘置所在監 板垣宏

 16年間もの未曽有の不当な未決勾留という人権を抹殺し、私たちの健康と命を奪い破壊する残虐な治安弾圧をはね返して闘われてきた迎賓館・横田爆取でっち上げ裁判闘争は、いよいよ検察官の論告(求刑)と被告・弁護側の最終弁論を残すのみで大詰めです。
 権力・検察は「立証」に12年半も費やしながら何一つ「証拠」を示せず、事件当時に私たちがどこで何をしていたかまったく「立証も主張も」できませんでした。特に公判終盤では警察官や技官らの偽証をくり返さざるを得ず、でっち上げは完全に崩壊しています。
 さらに、被告・弁護側立証では、反動裁判官に大幅に制限されながらも、ねじ切り痕(こん)や筆跡鑑定の非科学性・インチキ性をあばき、関東学院大教授の足立昌勝さんの証言で「爆取」の違憲性も明らかとなっています。
 つまり、私たちの無実、無罪性はあらゆる角度から見て明白なのです。十万人保釈署名運動を拡大し、保釈をかちとり、まったき無実・無罪判決をかちとることは、小泉政権の侵略戦争体制づくりのための司法改悪・戦時型治安弾圧と闘いぬく上で決定的に重要です。
 米帝のイラク侵略戦争、日帝の朝鮮(中国・アジア)への侵略戦争を阻止し侵略の歴史から学び、排外主義と闘い、生活と命を守る真の労働者党を建設しよう。全世界での反戦闘争・反帝闘争の大高揚とともに、闘うイスラム人民、アジア人民と連帯し、侵略を内乱へ! ともに闘わん!
(獄中17年)

 反戦闘争・労働運動と連帯して無罪戦取へ 東京拘置所在監 福嶋昌男

 2003年、革共同・中核派と日帝・権力との全面的な激突の幕が明けました。闘いは権力の10・7−29国労闘争団・支援者への弾圧で画歴史的な分水嶺に突入したのです。
 革共同の「労働者の中へ」の物質化が開始されたことに対し、日帝・資本家どもはこの団結力が日本階級闘争の大高揚に発展することに恐怖し、労働運動への反革命弾圧に踏み込んだのです。
 だが、11・10全国労働者総決起集会の力と闘う国労闘争団は日本階級闘争の地殻的変動をつくり出しています。この力は9・11反米ゲリラ戦争と、続くチェチェン人民の民族解放闘争を主体的に受け止める中でつくり出されていると確信できます。現下の有事立法攻撃−国家総動員態勢のもとで、すでに民間の労働者が自衛艦の修理を強制されています。
 しかし、労働者総決起集会の団結力は国際的な反戦闘争と連帯し、米帝のイラク侵略戦争への突入−日帝の参戦・治安弾圧を根底から粉砕する力として登場しているのです。
 福嶋裁判闘争はこの反戦闘争・労働運動のうねりと固く連帯し、2003年を闘いぬきます。権力の本件での「共謀の上」なるでっち上げの訴因は9年余の公判にもかかわらず、立証は破綻しました。救対のもと、私は十万人保釈署名運動・家族の闘いといっしょになって、無罪戦取にむけ闘います。ともにがんばります。(獄中10年)(画 福嶋昌男)

 無期との闘いで人間解放実現の力を獲得 徳島刑務所在監 星野文昭

 今、パレスチナ・イラク・イスラム諸国、朝鮮・中国を始めとした全世界と日本の労働者人民に襲いかかっている侵略・戦争、大失業・生活破壊、差別・抑圧などあらゆる攻撃を、全労働者人民の責任と力ではね返し、人間解放をかちとることが私たちに問われています。真に人間性、階級性、自己解放性に満ち満ちた運動と党をつくり出すことが問われ、そこに私たちとすべての労働者人民、人類の未来がかかっています。
 無期との闘いは、正しければ生へ、誤れば死へという形で掛け値なしに生か死かをかけて、正しいもの、人間的なもの、人間解放につながり実現するものを探り、その道すじとともに実現していく力を獲得していくものとしてありました。
 どのような、反動とあきらめが支配しているかのような現実の中にあっても、人間が人間であり、労働者人民が労働者人民である以上、人間であろうとし、あらゆる非人間的な支配・差別・抑圧・虐殺、搾取・収奪から人間的に解放されようとするからだ、という確信を深めるものでした。
 それらは、私と暁子が無期という極限的な分断・障害をのりこえ、どこまでもともに身を置き合い、すべてに立ち向かい未来を開くあり方・内容を積みあげて獲得したものです。
 私たちへの無期も、今日の階級的利害をむき出しにした攻撃の極限的攻撃として、獄中・家族と全労働者人民、その党にかけられたものとして、一体となった全体の責任と力で必ずはね返しましょう。再審をかちとり、また全獄中同志ともども、一日も早く釈放・取り戻す闘いに勝利しましょう。ともに闘いましょう。(71年11・14沖縄返還協定批准阻止・渋谷暴動闘争戦士。デッチあげ殺人罪で無期懲役、異議審闘争中。獄中28年)

 侵略参戦阻止の実力決起で連帯戦略貫け 横浜刑務所在監 倉持嘉之

 2003年は、米・日・欧帝国主義によるイラク侵略戦争突入、朝鮮侵略戦争切迫という事態を、全世界プロレタリアートと被抑圧民族の連帯した侵略阻止の決起で国際的内乱に転化して、反帝・反スターリン主義世界革命勝利の世界史的展望を切り開く年となる。
 帝国主義の最弱の環へと転落した日帝は、イラク侵略戦争−中東全域への侵略と支配の再編をめぐる争闘戦に参戦し、朝鮮侵略戦争の先兵となることで、帝国主義としての存亡の活路を求めている。日帝の侵略参戦・アジア再侵略戦争への突入という事態は、「連帯し、侵略を内乱へ」をストレートに実現すべき情勢そのものだ。
 この連帯戦略の最核心は、自国帝国主義の侵略参戦を労働者階級の決起を基軸とした巨万人民の実力決起で阻止する闘いを貫徹することだ。血債を実践的に貫徹していくことだ。
 そうした中から、世界各地で多様な形態で、また激烈に闘いぬかれているさまざまな傾向の民族解放闘争との連帯のあり方が創造されていくだろう。被抑圧民族人民と連帯し、世界戦争の危機を世界革命に転化しよう。
 03年を、イラク反戦闘争、有事立法粉砕闘争、国鉄闘争、そして統一地方選挙闘争の歴史的大高揚、画期的勝利をめざして闘いぬこう。
 この勝利を日本革命−世界革命を実現する革命党建設へ結合しよう。(90年10月武蔵野爆取デッチあげ弾圧元被告、74年1・24カクマル完全せん滅戦闘弾圧元被告、獄中13年)

 国際的内乱に革共同の世界史的な登場を 東京拘置所在監 水嶋秀樹

 われわれの目の前で進行している情勢の核心は、帝国主義が死滅しつつある資本主義だということであり、帝国主義打倒の国際的内乱が開始されているということです。
 03年は、文字どおり、世界革命か世界戦争かの転換点であり、全人類の未来のかかった年です。勝利できる路線は、6回大会路線だけです。闘うイスラム諸国人民と連帯し、米帝の世界戦争計画・イラク侵略戦争と全面的に対決し、ムスリム人民にとどく革命的実践・飛躍を実現し、03年を革共同の世界史的な登場の時としよう。
 国労5・27臨時大会弾圧は、情勢決定要因化しつつある革共同と国鉄決戦への大反動だ。全党一丸となって国労・労働者階級の中に入り、国労と労働組合運動の革命的再生をかちとろう。
 同時に、国労弾圧と爆取での4同志への超長期勾留は、戦時治安弾圧そのものです。弾圧の内容を聞いた労働者人民は、驚き、怒り、必ず立ち上がります。イラク反戦闘争、有事立法粉砕闘争と一体で、国労弾圧粉砕と4同志奪還を両輪にして反弾圧の大運動をつくり出し、戦時治安弾圧粉砕の突破口にしよう。私の裁判闘争もこの一環として闘い、03年を完全勝利の年とします。
 03年統一地方選闘争に勝利し、杉並に3人の区議団を登場させよう。勝利あるのみだ。新たな「激動の7カ月」の死闘を勝ち抜き、03年を世界革命・日本革命への扉を押し開く年にしよう。勝利しよう。(88年9・21千葉県収用委員会会長せん滅戦闘デッチあげ裁判被告、獄中2年)

 党的飛躍かけ革命的議員実現へ頑張ろう 東京拘置所在監 M同志

 9・11をもって世界は本当に一変しました。国連査察で事実上始まったイラク侵略戦争、北朝鮮に対する排外主義の嵐(あらし)。本当に一瞬も気を抜けない情勢です。基軸帝国主義・米帝が世界戦争に向かう時の破壊力。時代の回転速度が一気に上がりました。
 そして、イスラム諸国人民の命がけの闘いと、それに連帯する帝国主義国の労働者階級の闘い。「戦争か革命か」の時代の到来です。私たちも全力で闘いましたが、まだまだ時代の要請に応(こた)えられていません。党的飛躍が死活的に求められています。
 帝国主義による侵略戦争がますます激化する中で、革命的議員の存在は決定的です。アフガニスタン侵略戦争にただ一人反対したバーバラ・リーさんに私たちはどれだけ励まされたことでしょう。統一地方選必勝、区議3候補全員当選へ向け全力でがんばって下さい。そして01都議選でのデッチ上げ弾圧の“かたき”をとって下さい。
 裁判もいよいよ大詰めです。国労弾圧に見られるように、弾圧の質もエスカレートしました。私の私文書裁判も、「有罪」を許すなら今後、堤防決壊的な文書弾圧が予想されます。また、『前進』を使った思想・信条弾圧を許すわけにはいきません。絶対に負けるわけにはいきません。闘うムスリム人民、闘うアジア人民と連帯し、帝国主義の侵略戦争を反帝・反スターリン主義世界革命へ!! 2003年も全力でがんばりましょう。(私文書偽造弾圧裁判被告、獄中2年)

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号14,15面1)

世界戦争計画を強行する米帝 帝国主義経済は大恐慌に転落
 全世界で革命的情勢の急成熟へ
 島崎 光晴

 T 米帝のイラク侵略戦争で世界危機は一層爆発する

 (1) 9・11で米帝の中東支配と国内支配は大崩壊の危機に

 ついにアメリカ帝国主義が、世界戦争計画を実際に発動して、イラク侵略戦争に突入しつつある。ほぼ同時に、アメリカ経済が本格的な恐慌に入りはじめ、29年大恐慌を上回る世界大恐慌が爆発しようとしている。今や〈世界戦争と世界大恐慌>の過程に完全に突入した。それは全世界で革命的情勢を急速に成熟させずにはおかない。〈万国の労働者と被抑圧民族の団結>でプロレタリア世界革命を達成すること――それは綱領的確認にとどまらない、今現在の実践的課題そのものとなった。日本の労働者人民は、闘うムスリム人民と連帯し、大高揚しはじめた国際反戦闘争に連帯し合流して、その先頭に立たなければならない。
 米帝のイラク侵略戦争は、米帝の恐るべき危機と没落に根ざしている。そしてイラク侵略戦争は、その危機と没落をますます加速し、米帝と世界帝国主義を死の淵に引きずりこむものとなる。
 米帝は、特にソ連スターリン主義崩壊以降の90年代、世界で侵略戦争と殺りくを繰り返し、民族的抑圧と搾取・収奪を強めてきた。91年のイラク侵略戦争=「湾岸戦争」以来、94年の朝鮮戦争危機、96年の中台戦争危機、98−99年のコソボ介入=ユーゴスラビア侵略戦争と、侵略戦争を連綿と続けてきた。90年代だけをとっても、無数の被抑圧民族人民が虐殺されてきた。
 しかも帝国主義は90年代に、アジア、中南米などの新植民地主義体制諸国への投資を激増させ、低賃金で労働者を搾取し、帝国主義商品を押しつけて収奪してきた。さらには、中・東欧という崩壊したスターリン主義諸国、中国という残存するスターリン主義国にも資本を投下し、資本家の利益をあくどく追求してきた。帝国主義国内でも、労働者階級に対する資本攻勢と治安弾圧の嵐が襲いかかった。激化する帝国主義間争闘戦で優位に立つため、すべての帝国主義国が被抑圧民族人民への抑圧と絞殺、帝国主義国労働者階級への搾取と弾圧を競い合って強めてきた。これこそ、帝国主義者の言う「グローバリズム」の正体だった。
 他方、中東・イスラム諸国には、90年代に資本が投下されることはなかった。そこでは爆弾が投下されつづけていた。米帝は「湾岸戦争」の停戦後もイラクに対して25万回にも及ぶ空爆を加え、過酷な経済封鎖を実施してきた。それは戦争の継続そのものだった。そのためにサウジアラビアや湾岸諸国に巨大な空軍基地を作り、大量の米軍を駐留させ、そこからイラクに出撃を繰り返してきた。エジプトなど他の中東諸国に対しても、親米政権へのテコ入れを強め、人民を弾圧し圧殺することだけにきゅうきゅうとしてきた。そして何よりもパレスチナに対するイスラエルの侵略戦争を、はてしなくエスカレートさせてきた。米帝は中東石油資源を独占的に支配するために、とりわけ中東・イスラム諸国で侵略戦争と抑圧を恒常化させてきたのだ。90年代にかぎらず、第2次大戦後は一貫してそうだった。
 しかし、そうした侵略戦争と抑圧は、米帝の中東支配を一層崩壊させるものでしかなかった。そもそも「湾岸戦争」自体、中東支配が破綻(はたん)する中で、米帝が自ら直接に大規模な侵略戦争に乗り出したものだった。ベトナム革命勝利の世界的な波及、イラン革命の勝利をへて、もはやイスラエルの軍事力をもってしても中東を抑えることができなくなったからだ。しかし、米帝が直接に乗り出しても、支配の崩壊は押しとどめられなかった。パレスチナ人民は米帝の和平策動を打破して、インティファーダに立ち上がり、実質上の自己権力をうち立てるまでに至った。イラク人民は民族的誇りに燃え、米帝との妥協を拒否しつづけてきた。エジプトやサウジアラビアなどの人民も、親米政権の弾圧に屈せず、真の敵である米帝との闘いに立ち上がっていった。米帝自らが軍事力を直接投入したにもかかわらず、いや、むしろそれが反米の民族解放闘争をより激烈にする結果を招いたのだ。米帝の中東支配はここに、根底で大崩壊した。
 こうしたすべての結果として、9・11戦闘が起きたのだ。米帝の中東支配が大崩壊する中で、中東・ムスリム人民の積もりに積もった怒りが沸騰点に達し、特殊的・極限的な形で米帝にたたきつけられた。中東・ムスリム人民の民族解放闘争のうねりが、ついに米本土に押し寄せるに至ったのである。しかも、米本土にとどまらず世界中で米軍、米国人一般、さらには米帝に与(くみ)するものすべてが攻撃されかねないまでになった。アメリカ建国史上、これほどの危機はなかった。米帝支配者は中東・ムスリム人民の反米蜂起で、せん滅され打倒される恐怖に震え上がった。米帝の中東支配・石油支配、新植民地主義支配、世界支配が根底から大崩壊しつつあるだけでなく、9・11をもって米帝自身の恐るべき体制的危機にまで進展したのだ。

 (2) 植民地主義むきだしにして凶暴化する〈新帝国主義〉

 こうした危機の中で米帝は、アフガニスタンへの凶暴な侵略戦争と人民大虐殺に続いて、ついにイラク侵略戦争に突っこもうとしている。米帝は政権転覆と占領後の米軍による軍政、植民地化をも狙っている。イラク人民を大虐殺し直接に軍事支配することで、中東・ムスリム人民の戦い全体を力ずくで押しつぶそうというのだ。さらに米帝は、「サウジアラビアの王政改革」「パレスチナのヨルダン併合」「イランへの武力行使」などもたくらんでいる。全中東の地図と支配構造を軍事力で作り換えようとするものだ。まさに暴力的再編である。しかしそれは、中東・ムスリム人民の一層の怒りを引き起こし、より巨大な反米蜂起となって米帝に跳ね返るだろう。米帝の思惑とはまったく逆に、必ず中東と全世界を大動乱に引きこむことになる。
 イラク侵略戦争は、米帝の世界戦争計画の実際の発動である。米帝は01年のQDR(4年ごとの戦力見直し)や02年のブッシュ・ドクトリンをもって、中国スターリン主義の転覆を軸心にしつつ、日帝やドイツ帝など他帝国主義国の争闘戦的粉砕をも含めた世界戦争計画を固めてきた。特に、核攻撃を含む先制攻撃を基本戦略とした。第1次大戦や第2次大戦と比べても、最初から核戦争を構えている点で史上最も凶暴な戦争計画である。世界危機と大恐慌のもとで没落する米帝は、世界中を核戦争に引きずりこんでも自らが生き残ろうとする道を決断し、実際にそこに踏みこみつつあるのだ。
 ブッシュ政権は、この世界戦争計画の推進に伴って、第2次大戦後の世界政策を大きく転換させつつある。従来は、米帝主導のさまざまな国際機関や国際制度を使って、世界政策を展開してきた。しかし今や、°国際機関は妨害物″というスタンスをとり、国際協調を完全に二の次にした単独行動に突っ走っている。また、戦後の新植民地主義支配では、政治的独立を認めた上で経済的に支配するのが一般的だった。それを指してあたかも°帝国主義ではなくなった″かのように言われてきた。しかしブッシュ政権は、国家主権の無視抹殺、主権国家の転覆、占領による体制変更という路線に転換している。むき出しの植民地主義に回帰しているのだ。もともとパレスチナでは、古典的植民地よりもあくどい過酷な支配と抑圧が加えられてきた。ブッシュ政権は、それを全中東・イスラム諸国に、全世界に拡大しようというのだ。
 これこそ〈新帝国主義>である。帝国主義は今や第1次大戦以前の古典的帝国主義以上に、さらには19世紀末の世界分割の過程以上に、帝国主義史上最も凶暴な政策と行動に転じつつある。あらゆる意味で最末期に陥った帝国主義は、その本性をむきだしにして、絶望的に凶暴化するしかないのだ。

 国際反戦闘争と連帯した日本人民の決起

 すでに、第3次世界大戦の最初の段階が始まった。それは、帝国主義の基本矛盾の爆発そのものである。必ずや世界中に革命的情勢を引き起こさずにはおかない。1930年代以来、第2次大戦後の戦後革命期以来、ついに世界中で革命的情勢が到来するのだ。
 最も凶暴化した帝国主義は、世界の労働者と被抑圧民族人民の国際的内乱によって打倒されるしかない。レーニンは帝国主義を「プロレタリアートの社会革命の前夜」(『帝国主義論』)と規定した。帝国主義が新帝国主義としてその本性をむき出しにしつつある今、このレーニンの規定が鮮やかに蘇る。日本共産党やカクマルのように、この新帝国主義を直視せず、その絶望的凶暴さとそれゆえの世界革命の現実性から逃げようとする者は、歴史のくずかごに捨て去られなければならない。
 すでに帝国主義諸国の人民は、闘う被抑圧民族人民と連帯し、国内に存在するムスリム人民とともに巨大な規模の反戦闘争に立ち上がりつつある。しかも労働者階級が、侵略戦争に反対する闘いと資本攻勢との闘いとを一体にして、その先頭に立っている。9・11は、帝国主義国の労働者階級に対する糾弾であり、決起の呼びかけだった。世界の労働者人民はその衝撃を階級としての魂で受け止めて決起しつつある。今こそ、スターリン主義によって裏切られ圧殺されてきた国際主義と世界革命を復権する時だ。
 国際反戦闘争との連帯・合流へ、何よりも日本の労働者人民こそが立ち上がらなければならない。03年の冒頭からそれが問われている。

 U 家計・企業の巨額債務で29年上回る米経済恐慌に

 (1) 住宅ローン=借金を増やし消費にあてる最末期の状況

 米経済が03年に本格的な恐慌に突入するのは、もはや確実となった。
 米経済は90年代後半、資本主義史上最大のバブルに陥った。株式投機による株高、企業・家計の巨額債務を伴った投資・消費の増加、さらにはIT部門の投機的な急拡大など、どれをとっても日本のバブルの比ではない。しかし00年4月の株価暴落をもってついにバブルが崩壊しはじめ、01年春から実体経済も下降に転じた。そこに9・11による打撃が加わった。これに対しブッシュ政権は、さまざまな恐慌対策を発動した。1961年以来41年ぶりの低金利、自動車販売でのゼロ金利ローン、大減税、9・11後の政府緊急支出・軍需支出などだ。たしかに、これらによって恐慌の本格化はいったん食い止められてきた。
 しかし、01年末から02年春にかけて米企業の粉飾会計が噴出した。エネルギー大手のエンロン、通信大手のワールドコムなどの巨大企業が利益を水増しし、損失や債務を子会社に飛ばしていた。しかも、銀行・証券会社・会計事務所などウォール街総ぐるみの粉飾会計だった。02年夏から秋にかけて、米企業と米金融市場に対する信用は、国内外で一挙に失われた。
 この粉飾会計の続出を機に株価は02年夏から秋にかけて急落し、10月にはバブル崩壊後の最安値を更新した。S&P500種株価指数は、00年3月の最高値から49%も暴落した。上場企業の株式時価総額はピーク時から約8・5兆j(1000兆円強)が吹っ飛んだ。米GDPの8割分が消失したのだ。この株価急落を受けて夏から秋にかけて鉱工業生産が低下し、再び実体経済が落ちはじめた。
 今や、恐慌の本格化をかろうじて防いでいるのは、家計部門の借金による消費だ。家計の借金は住宅絡みが多い。住宅価格が値上がりすると、担保価値も高まり、それに合わせて住宅ローンを借り換えることができる。住宅ローン=借金を増やして、その一部を消費に充てるやり方だ。住宅価格の上昇で家計が得た値上がり益は、97年以降の5年間で計3・2兆j(約400兆円)。日本の年間GDPの8割に相当する。株下落による逆資産効果にもかかわらず消費が激減していないのは、住宅の資産効果が大きかったからだ。
 しかし、この最後のよりどころだった住宅バブルも限界に達しつつある。住宅価格の伸び率は02年になって鈍化した。住宅価格が下落に転じれば、借金による消費は激減するとともに、何百万人もが家を差し押さえられる。すでに、家や自動車を持っているにもかかわらず、失業などで公共の無料食糧サービスを受けざるをえない「新貧困層」が激増しつつある。州によっては住民の2割がこのサービスを利用しているほどだ。
 もはや、米バブルの一方の核である家計の債務問題が噴出するのは必至となった。米家計の債務残高は年間可処分所得の22年分にも及んでいる。所得500万円の家庭に1・1億円の借金がある計算だ。すでに02会計年度の個人破産は過去最高の150万件に達したが、まだほんの始まりにすぎない。

 粉飾会計の発覚で倒産続出 信用収縮とデフレも始まる

 他方、米バブルのもう一つの核である企業の過剰債務と過剰資本は、すでに深刻な恐慌状態を招きつつある。
 90年代のバブルは、米企業の膨大な債務を伴っていた。金融関連を除いた米企業の債務残高は約4・9兆j=600兆円弱(01年9月末)に上り、過去最高を更新しつづけている。日本の年間GDP500兆円を上回る借金だ。最も債務を増やしたのはIT関連企業で、通信業界の債務は1兆jを超えた。その借金で光ファイバー網などに投資したが、今でもその利用率は2・6%にとどまる。29年大恐慌の際、米国の鉄鋼業の稼働率は最低でも19%だった。前例のない過剰設備=過剰資本となっている。
 借金は過大な投資に充てられただけではなく、自社株買いに向けられた。自分の会社の株式を自ら買って、株価を押し上げる手法がごく日常化してきた。98年には自社株買いは2000億j(約24兆円)にも上った。自社株買いで株高が偽装されていたわけだ。しかもその元手は借金だった。
 さらに、この間明らかになってきたのは、粉飾会計が株高を助長してきたということだ。米企業はこの間、ストックオプション(自社株購入権)を報酬・賃金として支払ってきた。現金で支払うのに比べ決算上、利益を大きく見せることができる。99年〜00年の米企業の利益は大幅増とされてきたが、このストックオプションを企業の費用として計算すると利益減少となる。粉飾会計は一企業にとどまらず、米主要企業の利益統計全体を一変させるほどに大規模だった。
 要するに、借金で自社株買いをして株価を押し上げ、さらに粉飾会計による架空の利益を元に株価をもっとつり上げ、その株高をエサに国外から資金を集めてまた株価を上げ、その株高でストックオプションを行使する、という構図だった。バブル下の株高は、企業の債務と粉飾会計によって、つまり〈借金と詐欺>で成り立っていたのだ。
 今やこの構図が完全に崩れた。株が大暴落し、粉飾会計が明るみに出てしまえば、残るのはただただ膨大な企業債務だ。29年大恐慌を上回る企業倒産・資本整理に発展せざるをえない。すでに、倒産規模の歴代10位のうち、02年に破綻した企業が6社に上る。米長距離通信会社の上位20社のうち9社の経営が行き詰まってしまった。9・11による打撃で、世界第2位のユナイテッド航空を傘下に持つUALも破綻した。
 過剰債務にあえぐ米企業は02年春以降、債務を削減しはじめた。いわゆる「バランスシート」調整だ。バブルのツケに耐えかねて企業が債務圧縮を最優先すると、投資と生産は急縮小し、それが景気をさらに悪化させ、企業の債務負担は一層重くなる。こういう悪循環に入りつつある。米企業の過剰資本と過剰債務の大きさからして、29年大恐慌を上回る投資・生産の縮小となるだろう。

 簿外貸付が最も悪化不良債権100兆円にも

 このような企業の倒産の増加で、銀行の不良債権も増加の一途をたどっている。米銀の場合、さまざまな金融技術を使って債権を多数の特別目的会社に飛ばしている。銀行自体の帳簿には付いていない「簿外」の不良債権が多い。エンロンなどが特別目的会社を使って粉飾会計をやっていたように、銀行の不良債権の最大実体はここにある。「危機的状況にある簿外貸し付け」はシティグループ1700億j(20兆円強)、バンク・オブ・アメリカ1600億j(19兆円強)、JPモルガン・チェース1400億j(17兆円弱)にも上る(01年末)。この3行合計だけで、50兆円を超す。この「危機的状況の簿外貸し付け」は各行の全貸し付けの3分の1とか4分の1に及んでいる。これは、額としても貸し付けに占める割合としても、不良債権にあえぐ日本の銀行に匹敵する。
 さらに米銀は、債権を証券化して転売している。証券化された債権の残高は1兆j(120兆円)にも及ぶ(01年末)。保険会社、年金資金、投資信託、ヘッジファンドなどさまざまな会社がそれを保有している。すでにここで、最も高い比率で債権が不良化しはじめた。°これらすべての米金融機関の潜在的な不良債権は円換算で100兆円″という試算もある。
 不良債権増加に恐怖する米銀は、すでに貸し渋りを始めている。米銀の商工業向け貸し出しは前年比7・7%減(02年7月)、これは日本が金融恐慌に入った97年の4〜5%減より深刻だ。一方で米銀は、より安全な米国債を買っている。こうなると、いくら金融を緩和しても企業や株式市場に資金は向かわない。完全な信用収縮だ。銀行の貸し渋りと国債保有、金融緩和効果の喪失――これは日本の現状とまったく同じだ。ほとんど金融恐慌に近い状況に陥りつつあるのだ。
 こうした信用収縮をも機にして、米経済はついにデフレ=物価下落に転じつつある。日本の百円ショップにあたる「99セントショップ」がにぎわい、「上昇しているのは医療費と住宅費だけ」という状況だ。直接の要因は、需要不振による価格の下落、消費者の安値志向、安い輸入品の増加と米企業の対抗的な値下げなどにある。日本のデフレは、モノの価格下落→サービス価格の下落→消費者物価の下落という3段階をたどった。米国ではすでに第2段階に達している。FRB(連邦準備制度理事会)はデフレ阻止に躍起になっている。しかしいったんデフレに入れば、デフレ・スパイラルで恐慌の急坂を転げ落ちるしかなくなる。

 (3) ドル暴落の諸条件が充まん ますます戦争と軍需生産に

 米経済恐慌の本格化は、ドル暴落の危機を一段と高めつつある。ドル暴落は世界金融恐慌を引き起こし、世界大恐慌を全面爆発させるものとなる。
 ドル相場でみると、02年初めからドル安となっている。ユーロとの関係でも1ユーロ=1jと、ほぼ2年ぶりのドル安ユーロ高となった。明白にドルの信認が低下している。米株価が暴落している上、粉飾会計が露呈したためだ。ドル資産に投資することが敬遠されつつある。もともと米バブルと米への資金流入とは一体だった。バブルによる株高が国外資金を流入させ、それがドル高を促進し、そして資金流入がバブルを膨張させてきた。だからバブルが崩れれば、資金流入も細まってドル安とならざるをえない。しかも、経常収支赤字(貿易赤字など)が年間4000億jを超え、財政赤字も再膨張している。従来は、経常赤字を資金流入で補てんしてきた。しかし02年4−6月期には、資金流入額は経常赤字を大幅に下回った。米欧間では資金流出に転じた。
 米帝は95年以来、「強いドル」政策を取りつづけてきたが、それがついに限界に達しつつある。「強いドル」政策の結果、ドルはあまりにも過大評価となった。ドルの主要22通貨に対する実効相場でみると、1j=80円を突破した95年春時点より3割も高くなっている。ドル高は、米製造業の国際競争力を低下させてきた。米製造業界は02年に公然とドル是正を求めはじめた。米経済は80年代にもドル高に耐えられなくなったことがある。その時は、85年の「プラザ合意」でドル高是正の国際協調が図られた。しかし現在は国際協調によるドル安誘導の余地はなくなっている。
 国際金融面でもドル暴落の力が強まっている。米への資金流入を担ってきたのは、米欧日の金融機関だ。しかし、日本だけでなく米欧の金融機関がITバブル崩壊で資産内容を劣化させ、取り引き上のリスクがとれなくなっている。世界中で金融機関が危なくなるというのは初めてのことだ。しかも、米に大規模に流入していたサウジアラビアなどの湾岸マネーが、流出に転じている。さらに、日本の金融機関は大量の米国債を保有しているが、経営悪化や国有化を機に米国債を投売りする可能性もある。これらを導火線にしたドル暴落−世界金融恐慌が、いよいよ現実味を持ちつつあるのだ。

 戦費膨張で財政赤字の拡大は限界超える

 恐慌の本格化とドル暴落の危機という情勢の中で、米帝はいよいよ他の帝国主義をたたきつぶしてでも生き残るしかなくなっている。イラク侵略戦争をもって、そうした世界の暴力的再編に実際に突っこみつつある。そして、イラク侵略戦争は米経済危機を加速させると同時に、米帝をますます戦争と軍需依存へと駆り立てずにはおかない。
 イラク侵略戦争は、@何よりも個人消費と企業投資をますます減退させるだろう。かつての「湾岸戦争」がそうだった。その意味で、戦争の開始が恐慌本格化の引き金となる可能性が大きい。
 Aかりに原油価格が高騰すれば、消費と投資はますます弱まる。
 B戦争の長期化は連邦財政を一層悪化させる。すでに02会計年度(01年10月〜02年9月)の財政赤字は1500億j強と、5年ぶりの赤字に転じた。減税に加え、景気悪化で税収が落ち込む一方で、国防支出などの支出が急増したためだ。°戦争が長期化すると最高2000億j(24兆円)の戦費を必要とする″との予測がある。財政力を弱めている中での戦争突入は、財政を崩壊させかねない。
 C戦争は米軍需産業をますます膨張させる。すでにこの間、イラク開戦に向けてロッキード・マーチン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなどが兵器を増産してきた。ただし国防支出によっても、米経済全体を押し上げることはできていない。しかし、一方での恐慌の深化と他方での戦争の長期化は、軍需産業の野放図な拡大、戦争のエスカレーションへの衝動を必ず高まらせることになる。
 さらに、恐慌の本格化と戦争の長期化は、米労働者人民に対する一層の搾取と抑圧となって襲いかかるだろう。すでに11月の失業率は6%と、00年の1・5倍に上昇している。レーガン政権以来の不安定雇用化は今も加速しており、製造業だけで200万人の臨時雇用がいる。このような猛烈な資本攻勢に対し米労働者階級は不屈に闘い、今やムスリム人民との連帯をかけて立ち上がっている。

 V 不良債権の処理の加速策は恐慌激化と大失業を招く

 恐慌対策を何度発動しても過剰資本のために効果なし

 日本経済は97年秋の大手金融機関の破綻を機に恐慌に突入した。対米輸出の増加と恐慌対策の発動によって、99年初めから00年秋に若干の浮揚をみせた。しかし、米バブル崩壊に直撃されて01年には戦後最も深刻な恐慌に陥った。01年度の鉱工業生産は前年度比10%も低下した。下げ幅は1954年以来、つまり第2次大戦直後を除く最大の落ちこみとなった。01年度の生産指数は87年度以来の低さに逆戻りしてしまった。
 02年になって再び生産は若干上昇した。だが、これも輸出に依存したものでしかなかった。輸出は01年12月を底にして5カ月間で24%も増えた。99年初め〜00年秋の浮揚期を上回るペースだ。国内生産に占める輸出の割合は02年前半に、自動車が44・6%、工作機械が49・1%、粗鋼が36・3%にも及んだ。しかし、米経済が本格的な恐慌に向かいはじめたため、春から夏にかけて輸出も減少に転じた。97年の恐慌突入以降、一貫して日本経済の下支えとなってきた輸出が、ついに頭打ちになりつつある。
 90年にバブルが崩壊して、すでに13年になる。自民党・政府は、この間、累計140兆円もの景気対策を発動し、銀行救済のために23兆円弱の公的資金を投入してきた。さらに99年からのゼロ金利政策、01年からの金融の量的緩和によって、金融を超緩和してきた。前例のない財政・金融政策を使い、帝国主義史上で最大規模の恐慌対策を実施してきた。しかし、恐慌の進展を食い止めることはできなかった。むしろ、地価と株価の下落で資産価値が暴落しつづけ、デフレは深まるばかりだ。そして今、米恐慌の本格化に伴って、日本の恐慌は全面的に爆発しようとしている。
 このすべての根っこには、設備の過剰状態、つまり過剰資本状態がある。01年の製造業稼働率は65%を下回り、68年以来の最低を記録した。実に35%もの不稼働設備を抱えている。スーパーも大型店面積が90年から67%も増えており(01年末)、店舗の過剰にあえいでいる。

 基幹産業をなす電機と自動車が共倒れに

 日帝ブルジョアジーはこの間、ITを新規産業として育成し、過剰資本状態から抜け出そうとしてきた。しかし、それはミニITバブルを発生させ、通信会社と電機企業に大ダメージを与えた。たとえばNTTドコモは、欧米アジアの携帯電話会社5社に総額1・9兆円を投資してきた。しかし、それらの企業の株価が暴落したため、巨額の株式評価損で03年3月期には赤字に陥る。電機は02年3月期決算で2兆円近くの大赤字に転落した。過去の利益の蓄積である剰余金=内部留保は、電機大手5社で前年比1・6兆円減の2・7兆円となった。もう一度02年3月期のような赤字になると、剰余金が吹き飛んでしまう。日本経済を代表する電機産業が、大手銀行と同じように戦後の蓄積を失いつつある。
 このため、大手電機の株価は02年秋に急落した。NEC、富士通、日立製作所、東芝の株価は80年代初めの水準にまで下がった。そこには、電機の収益構造の行き詰まりがあるが、さらに国際競争力の低下もある。これは、銀行の不良債権問題が影響している。90年代に日本の半導体は世界一の国際競争力を持っていたが、「日本の銀行が高いリスクの事業に融資できなくなったため、その後の大規模投資が継続できずに競争力を失った」(NEC社長)ということだ。昨年新年号でも指摘したように、金融資本の根幹をなす銀行が不良債権の重圧で金融力を後退させてきたのに続いて、それが産業力の停滞にまで波及している。
 電機が崩れる中で唯一、自動車産業が高収益を維持している。しかしそれは、米自動車市場がゼロ金利ローンによって極限的に拡大していることに支えられている。トヨタは今や北米販売が国内販売を上回っており、営業利益の7〜8割を北米生産と対米輸出で稼ぎ出している。しかし今後、米自動車市場の急縮小は避けられない。トヨタも日産も、今の需要が続くと期待して北米で生産能力増強の投資を続けている。日本の自動車産業は早晩、電機産業よりもっと深刻なダメージを受けるだろう。

 銀行救済のための国有化は金融と全経済を破綻させる

 このように経済実体で恐慌が深まっている中で、小泉・竹中は「不良債権処理の加速」策に突っこみつつある。それは、政府・資本家のあらゆる思惑をも超えて、恐慌を本格的に爆発させることになる。
 今や不良債権問題は、資本主義にとってまったく解決不可能となってしまった。処理しても処理しても不良債権残高は増えつづけている。「問題債権」は100兆円を超す。にもかかわらず、銀行はすでに体力を消耗しきってしまった。従来は株式の含み益を吐き出して不良債権を処理してきたが、株価下落で02年3月期には株式含み損に転じた。そこで、自己資本の一部である法定準備金を取り崩して対応せざるをえなくなった。
 02年秋には、事態はさらに悪化した。10月には株価が19年ぶりに9000円を割り、バブル崩壊後の最安値を更新した。大手行の株式含み損は5兆円に膨らんだ。含み損の6割を自己資本から差し引かなければならず、自己資本は枯渇(こかつ)してしまった。日銀は9月に、銀行が保有している企業の株式を直接買い取ることを決めたが、市場への効果はなかった。UFJとみずほの株価は、50円額面に換算すると100円割れとなった。4大金融集団のうち2つまでもが、市場から破綻必至と見られるに至ったのだ。
 このような中で、小泉・竹中の「不良債権処理の加速」策が登場した。具体的には、銀行の持つ債権を厳しく査定して貸倒引当金を増額させる、繰り延べ税金資産の自己資本への算入方法を変更する、これらの措置で自己資本が不十分となった銀行は国有化して経営陣を更迭する、などの内容だ。要するに国家が全面介入して、不良債権の処理と過剰債務企業の淘汰(とうた)を強行しようとする政策である。もはや市場原理にまかせられなくなってしまったわけだ。放置するなら、株式時価総額を激減させたUFJやみずほが、米欧資本に買収されかねない。それほどの危機に直面して、いったん国有化という強硬策しかなくなってしまったのである。
 10月末の「総合デフレ対策」と「金融再生プログラム」では、竹中原案は一定手直しされた。しかし、11月末の再生プログラムの「作業工程表」では、国有化への枠組みが設けられた。特に、専門家による「金融問題タスクフォース」という監視チームを設け、公的資金を投入するかどうかを助言させるシステムにした。また、破綻していなくても「経営難や資本不足もしくはそれに類似した状況」に陥った銀行について、国有化するとしている。つまり、監視チームが資本不足と認定すればいつでも国有化できるようになった。
 ついに政府・資本家は、どんづまり状態の中で、大手銀行の国有化を余儀なくされつつある。あらゆる救済策も効果がなく、国有化という最後の非常手段に追いこまれようとしているのだ。しかし国有化は、金融恐慌を全面的に爆発させかねない。金融恐慌の再爆発となれば、ますます国有化以外になくなる。大銀行の国有化は、29年大恐慌の時の米国でもなかった。大パニックの中で国有化、国有化すると一段のパニックという、前例のない金融危機が爆発するだろう。
 政府は国有化を一時的なものと想定しているが、はたして可能なのか。これまで国有化された日本長期信用銀行と日本債券信用銀行は、その後に再民営化された。しかし、日本の金融恐慌が泥沼化するなら再民営化などできなくなる。国有化する銀行として筆頭にあげられているのは、みずほ銀行だ。みずほは、上場企業の7割と取り引きがあり、うち4割のメーンバンクである。国民の4人に1人がみずほの個人預金口座を持っている。みずほの国有化が長期化すると、これらの企業・個人のメーンバンクは国になってしまう。資本主義としての大破産だ。

 国債バブルの崩壊は銀行にトドメをさす

 さらに小泉政権は「産業再生機構」を設け、再建可能な企業を選んで、その企業向けの債権を銀行から買い取ろうとしている。しかし、再建可能であれば銀行の処理ですむはずだ。結局、「再生機構」は不良債権の長期塩漬け機関となる可能性が大きい。そもそも企業の過剰債務は過剰資本と表裏一体であり、小手先の対応でなんとかなるものではない。
 また、このような銀行国有化、「再生機構」での債権買い取りは、膨大な財政資金を必要とするため、国債バブルが崩壊しかねない。国債と政府借入金の残高のGDP比は120%(01年度末)に上っている。学徒動員のあった1943年の133%に迫りつつある。第2次大戦末期並みの水準なのだ。しかも02年度からは、借り換え債70兆円を含めると、市中消化の国債は年間100兆円を超えた。さらに財政支出を拡大するなら、国債増発の懸念から国債価格が暴落しかねない。この国債を買ってきたのは銀行と生保である。02年7月末の銀行の国債保有額は80兆円弱で、過去最高となった。国債が暴落すると、銀行の保有する債券も含み損に転じる。銀行救済のための財政措置がめぐりめぐって、銀行倒産の°最後のとどめ″になりかねない。

 銀行の貸しはがしで失業者は700万人にも

 以上のような「不良債権処理の加速」策のすべてが、恐慌を激化させ、企業の倒産ラッシュを引き起こして失業者を激増させるものとなる。これらの政策で銀行の自己資本はさらに減り、自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)は急低下する。国際業務を行う銀行の自己資本比率は8%以上なければならないが、それを割りこむ可能性が高まる。自己資本比率を維持するには、自己資本=分子の減少に見合って分母の資産=貸し出しを圧縮するしかない。貸出資金の回収、貸しはがしである。
 02年10月末の大手行の貸出残高は直近のピークの97年時から約106兆円も減少した。しかも、大企業向けが微減であるのに比して、中小・中堅企業向けが90兆円弱も縮小し、ピークの3分の2にまで減っている。そこに「不良債権処理の加速」策で、ものすごい貸しはがしが起きるのだ。「産業再生機構」にしても°再建できない企業″を際立たせることになる。ましてや銀行国有化となると、貸出先の企業は国家の強権でうむを言わさず大々的に整理されてしまう。今までとは比較にならないような倒産ラッシュがやってこようとしているのだ。
 「不良債権処理の加速」策は、新たに160〜330万人の失業者を生み出す。全失業者は700万人になる」との試算もあり、実質失業率は約15%にも跳ね上がる。労働者人民にとって、これこそ小泉「構造改革」の正体だ。
 そうした倒産と失業の激増の中で、今までとは次元を画す資本攻勢と大増税が襲いかかろうとしている。終身雇用制の解体、賃金水準の大幅な引き下げ、定昇などの賃金体系の破壊、労働法制の改悪、不安定雇用中心の労働市場への改変など、いずれもこの03年が最大の攻防の年となった。日帝・小泉は、ひたすら労働者人民を犠牲にして生き延びようというのだ。どんなことがあっても日帝・小泉政権を打倒しなければならない。

 W 米帝のイラク原油支配の戦争と帝間争闘戦の激化

 中央アジアパイプラインに続き中東石油の独占を狙う

 世界大恐慌がいよいよ本格化しつつある中で、これと相乗しながら帝国主義間争闘戦は激しいつぶし合いに進展している。米帝は他の帝国主義国を圧倒するかたちで、すでに先制的に帝国主義世界戦争の政治・軍事に踏みこんでいる。今や帝国主義間争闘戦での勝敗を決める最大要素は、軍事力の優劣になりつつある。ついに帝国主義は三たび、戦争によって権益と勢力圏を奪い合う時代に突入したのだ。
 01〜02年には、帝国主義間争闘戦を激化させる二つの歴史的事態が起こった。一つは、石油・天然ガス資源の争奪戦が帝国主義間対立の最大争点となったことである。レーニンは『帝国主義論』で、植民地主義の要因としてまず〈原料資源の独占的支配>をあげている。そうした帝国主義の本性が、再び歴史の前面に出てきているのだ。
 米帝のアフガニスタン侵略戦争は、カスピ海・中央アジアの石油・天然ガスの支配を狙ったものである。カスピ海沿岸諸国から産出される石油・天然ガスの輸送は従来、ロシアが独占してきた。これに対し米帝はロシアやイランを経由しないパイプライン・ルートを追求しつづけてきた。02年9月には、トルクメニスタン産出の天然ガスをアフガニスタン経由でパキスタンに送るパイプライン建設が決まった。ルートの大半はアフガニスタンを通る。また、カスピ海油田からトルコをへて地中海に至るパイプラインの建設も、9月に着工となった。いずれも米石油会社が主導しており、米帝の権益である。米帝はアフガニスタン侵略戦争と中央アジアでの米軍駐留をテコに、まさに力ずくで新たな資源権益をもぎとったのだ。
 そして米帝は今、イラク石油の独占的支配のために侵略戦争に訴えようとしている。イラク原油の確認埋蔵量は世界2位だが、探査されていない分を含めるとサウジアラビアを上回るとみられる。イラク石油資源は、世界石油市場を左右するほどの位置を持つ。ところが「湾岸戦争」後、米石油会社が排除され、フランス・ロシア・中国などがイラク原油の開発権益を得てきた。焦った米帝はこの間、イラク資源との関係を維持するため、イラク輸出原油の50%を米国に輸入してきた。米国内石油消費の8%がイラク原油で占められているほどだ。
 しかし、仏・露・中などの原油開発が進めば、イラクがイランのような反米産油国として台頭するのは必至である。しかも、サウジアラビアを抜くほどに原油を増産しているロシアが、イラク原油にも参入している。ロシア原油は低価格販売でも採算がとれるため、サウジアラビアに価格競争を仕掛ける動きもみせている。かりにもしロシア原油とイラク原油が組めば、世界の石油市場は一変し、米帝の石油支配は総瓦解しかねない。米帝はこれに対し、02年5月にロシアとエネルギーの包括協力に合意して、ロシアを取りこむ戦略に転換しつつある。また、ロシアやフランスともイラク原油利権の裏取り引きをした。その上で、中東・世界石油支配にとって最大のカギをなすイラク石油利権の奪取へ、侵略戦争に突っこもうとしているのだ。

 米帝が保護主義強め30年代的報復合戦へ

 もう一つは、米帝が実際の戦争突入という軍事的圧力を背景に、率先して保護主義を強めはじめたことだ。02年3月に米帝は、鉄鋼について緊急輸入制限(セーフガード)を発動した。鉄鋼主要14品目に関税を上乗せするという、戦後例のない包括的な輸入制限だ。その後、米帝が特定品目について輸入制限から外したため、日帝は対抗措置をとらなかった。しかしEU(欧州連合)は9月に報復措置として鉄鋼輸入制限を発動した。
 世界大恐慌が本格化していけば、30年代のような保護主義的措置の報復合戦が始まるだろう。世界経済のブロック化も歯止めが外れて進む。これこそ、帝国主義間争闘戦を非理性的で破滅的なものにしていく転回点とならざるをえない。

 アジア勢力圏化で敗退する日帝と侵略戦争参戦の攻撃

 日米争闘戦もますます激しくなっている。日帝をイラク侵略戦争参戦、北朝鮮侵略戦争策動に突き動かしているのは、この日米争闘戦である。
 まず、この10年間ほどの日米争闘戦を概括しておこう。70年代以降、日米経済対立は激化の一途をたどってきた。80年代半ばから、日帝は対アジア投資ラッシュをかけ、アジアを勢力圏にする動きを強めた。日米争闘戦の最大舞台は、アジアの勢力圏化をめぐる激突となった。日帝は経済的には、製造業の国際競争力の強化、貿易黒字の増大、対外投資と対外債権の急膨張の上で「円の国際化」を図ろうとした。ドル支配下にとどまるかぎり、どのような経済的伸長も最後は無に帰すからだ。これに対し米帝は、ソ連崩壊以降、日帝をたたきつぶすことを最優先戦略とし、経済と軍事とを混然一体とした対日争闘戦を繰り広げた。「湾岸戦争」や94年の朝鮮侵略戦争寸前情勢もその根底には米帝の対日争闘戦があった。日帝はアジアに経済的に満展開していながら、その権益を維持する外交・軍事では弱体であり、そこを突きまくられた。
 このため、日帝による「円の国際化」は挫折し、アジア勢力圏化は停滞した。逆に米帝は、97年のアジア経済危機以降、アジア諸国への経済的関与を強め、それをも拠点にして日本市場に攻めこみはじめた。日本市場自体が、米欧からの再分割攻勢を受けるに至ったのだ。つまり日帝は、敗戦帝国主義としての歴史的弱さから、アジア勢力圏化をめぐる激突で戦略的敗勢に追いこまれ、それを最大転機にして没落してきたのである。
 もはや日帝にとって唯一の延命の道は、戦争国家にのし上がるしかなくなった。96年の日米共同宣言=安保再定義と97年の日米安保新ガイドラインは、戦争国家化の大転機だった。現在の有事立法攻撃はこの流れの中で出てきているが、単なるその延長ではない。米帝が世界戦争路線を決断し、すでに戦争に突っこみはじめているからだ。日帝にとって大飛躍して自らも参戦する以外に、アジアで帝国主義として生き残ることはできない。実際には日米安保の強化という形をとっているが、米帝への戦略的敗勢を巻き返そうとする日帝の現実的戦略としてある。このような意味で日帝は米帝と共同的に、同時に競合的に参戦しようとしているのだ。
 その上で、現在の日米争闘戦の最大焦点は、アジアでの自由貿易協定をめぐる攻防にある。

 ASEANとの貿易協定で日米が争奪戦

 02年11月、中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は自由貿易協定を2010年までに完全実施することで合意して調印した。特に農産品などは先行して04年から関税を引き下げる。一方、日帝も11月に、ASEANと自由貿易協定の枠組み作りを03年から進めることで合意した。中国とASEANが超スピードで自由貿易協定を具体化しつつあるのに、日帝はようやく交渉の緒ついたばかりという状態だ。しかも日帝は、ASEAN全体とも交渉しつつ、それがうまくいかない場合を想定してASEAN各国とも自由貿易協定を交渉する、という動揺的な二重政策をとっている。
 ここに米帝が新たに割って入りつつある。02年4月、米帝は10年ぶりに米・ASEAN経済閣僚会議を開き、10月には「ASEAN行動計画」を発表した。ASEAN各国との間で二国間の自由貿易協定の締結を目指す、という戦略だ。すでに11月にシンガポールと自由貿易協定の締結に合意し、タイ・フィリピンとも近く交渉に入る。日帝はシンガポールとの間で経済連携協定を結んでおり、それが日帝にとって唯一の二国間協定であるが、そのシンガポールですら米帝が°横取り″しはじめた。
 要するに、日帝と米帝がASEAN各国を自分の側に囲いこもうとする激烈な抗争に突入しているのだ。そもそも自由貿易協定とは、参加していない国の商品には高関税を課す制度である。過去の経済的関与がどれほど強かったとしても、いったん自由貿易協定から排除されれば、投資・貿易は圧倒的に不利になる。その意味で自由貿易協定の行方こそが、アジア市場をめぐる日米争闘戦を決することになった。
 日帝にとっては、ASEAN市場と中国市場のどちらでも大後退しかねない事態だ。日帝は°百年の計″どころか°5年の計″も持たないで、ひたすら低賃金労働力を求めてASEANに、次には中国に投資を増やしてきた。その結果、日本経済にとってASEANと中国のどちらも、投資対象としても輸出入市場としても不可欠となっている。ところが米帝との抗争で負ければ、日本製品・日本資本がASEANからも中国からも締め出されかねない。それは日帝の経済的基盤の崩壊に直結する。まさに、たたきつぶされるということだ。日帝の没落はついにここまで進みつつある。だからこそ日帝は、ますます侵略戦争参戦の衝動をつのらせるしかないのだ。

 (3) 「第2の日本」と化す独経済 拡大EUめぐり米欧争闘戦

 米欧争闘戦も新しい展開をみせている。
 EU経済は、米経済の鈍化の影響を受けて不況色を強めてきた。特にユーロ圏のGDPの3分の1を占めるドイツ経済が、「第2の日本化」と言われるほどの危機に陥っている。
 90年の東西ドイツ統一後、旧東独で一大建設ブームが起き、その関連の銀行貸し付けも増えた。政府も91年以降の9年間で、旧東独の経済基盤建設などで5100億 (約60兆円)の財政資金を投入した。しかし実際の需要はそれほど伸びず、建設会社は過剰債務を抱えこみ、銀行の貸し付けは不良化してしまった。つまり「統一バブル」が発生していたのだ。そのバブル崩壊で銀行の不良債権が急増し、銀行の貸し渋りで大型倒産が続出している。02年には創業150年の建設大手ホルツマンが倒産した。株価は02年4月〜10月に50%以上も暴落した。年初からの下落率は日米より大きい。今やドイツ経済はデフレのがけっぷちにある。ドイツが恐慌に向かえば、EU全体も歴史的な大不況に突入するだろう。

 ドイツが経済・外交で米とは独自の動き

 深刻な経済危機に直面するドイツは、経済面でも政治・外交面でも「ドイツの道」(シュレーダー首相)、つまり独自の動向を強めつつある。ドイツ経済は日本と同じように、大銀行と大企業が株式を持ち合ってきた。近年はこの構造から脱却して、アメリカ型経営をモデルとしつつ、米銀に依存して資金を調達する傾向となった。しかし、その典型だったダイムラーは、買収したクライスラーの不調で本体自体が足を引っ張られる羽目になった。また、株式の60%を米英投資家に握られた鉄鋼大手のマンネスマンが、あわや国外から買収されそうになった。ここに至ってドイツは、企業を敵対的買収から守る「ドイツ買収法」を設け、従来のドイツ的経営に逆戻りした。
 さらに外交面でもドイツは、イラク攻撃への参加を基本的に拒否している。米帝の対独争闘戦に対して、必死で対応するものだ。なお流動的ではあるが、米帝が世界戦争路線に踏み切っている中で、ドイツがこのような独自外交を取れば歴史的なこととなる。米独関係がついにきしみはじめた可能性がある。しかもEUは°政治はフランス、経済はドイツ″という均衡で成り立ってきた。ドイツが外交で独自動向を強めると独仏関係も緊張する。
 実際、EUの東方拡大をめぐって米欧争闘戦が激しくなっている。02年12月の首脳会議で、中・東欧諸国とバルト3国などの10カ国のEU加盟が決まった。計25カ国となったことで、求心力が低下していかざるをえない。とはいえ、欧州帝国主義が崩壊したスターリン主義諸国を取りこんだ歴史的事態である。特にドイツは中・東欧諸国を製造業の生産拠点にしつつある。旧マルクの40%近くまでもが、中・東欧諸国など国外で流通していた。EUの東方拡大は、ドイツの東方侵略を一層加速するものとなるだろう。
 これに対して米帝は、新規加盟国との外交的・軍事的関係を強化して対抗している。11月には東欧4カ国とバルト3国のNATO(北大西洋条約機構)加盟も決まった。米帝は対イラク攻撃のためにこれらの国との軍事的関係を強化している。リトアニアなどは、ほとんどの将校が米国に留学し、費用は米国持ち、という親米路線で突っ走っている。ルーマニアの国防相が「米国は欧州の既加盟国よりも新規加盟国に魅力を感じているはずだ」と公言するほどだ。また、EU加盟候補のトルコをめぐって、米帝が軍事関係を強化する思惑から、トルコのEU加盟を域外から後押ししている。
 中・東欧とトルコという第1次大戦と第2次大戦の戦端が開かれたところで、またも帝国主義が激しく激突しているのだ。第3次世界大戦の火点がここでも出現しはじめた。

 結語

 03年は、世界戦争という点でも世界大恐慌という点でも画期をなす年になろうとしている。〈反帝・反スターリン主義世界革命の旗のもと、万国の労働者と被抑圧民族は団結せよ>のスローガンをまさに実践しなければならない。
 日本共産党は、資本家階級を救済する立場に階級移行して以来、反革命化を深めてきた。彼らは、9・11に対して「テロ根絶」を叫んでアフガニスタン侵略戦争−イラク侵略戦争に実質賛成し、日帝の北朝鮮に対する排外主義キャンペーンにも全面加担している。日本共産党を打倒し、真の労働者党を作りだそう。
 カクマルは、中央派とJR総連派に大分裂し、いずれも一層のファシスト化を強め破産を深めている。革共同は第6回大会で黒田哲学に対する死を宣告したが、黒田は一言も発せられず、完敗を満天下に明らかにした。JR総連派は、国鉄分割・民営化以来の労資結託体制の破産にあえいでいる。カクマル両派を追撃し、カクマル完全打倒をかちとろう。
 すべての労働者人民は革共同に結集して闘おう。かつてレーニンは、第1次大戦下の第2インターナショナルの崩壊に抗し、マルクス主義を復権し、ロシア革命に勝利して世界革命の突破口を切り開いた。第3次大戦への過程が始まった今、労働者人民に求められているのは、そのレーニンのように闘うことである。レーニン主義を真に継承し発展させえた者だけが、世界革命に勝利できる。03年をその跳躍台にしよう。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『前進』(2084号16面1)

『ドイツ・イデオロギー』をどう読むか
 マルクス主義を復権させ21世紀早期の世界革命へ
 仲山良介

新訳 ドイツ・イデオロギー学習シリーズ ドイデ 森尾誠著 昨年(02年)の前半、革共同は『ドイツ・イデオロギー』の本格的解説書を出しました。それは、革共同第6回大会での綱領的路線的な深化と表裏一体でかちとられた、マルク主義復権の闘いにおける大きな飛躍点と言えます。われわれがやったことは、議論の絶えない『ドイツ・イデオロギー』の編纂(へんさん)問題に革共同としての決着(独自の整理)をつけ、それを土台に、マルクス主義の形成過程における『ドイツ・イデオロギー』の位置を鮮明にし、『ドイツ・イデオロギー』においてマルクスとエンゲルスが実現したもの、その地平――実践的唯物論の立場からの、その貫徹としての歴史の唯物論的把握――を生き生きとつかみ取ったということです。当然ですがそれは、単なるマルクス主義訓詁(くんこ)学ではありません。われわれは、原『共産党宣言』ともいえる『ドイツ・イデオロギー』を、21世紀早期の共産主義世界革命の宣言の書として実践的によみがえらせる立場で読み返しました。『ドイツ・イデオロギー』を本格的に読むという作業そのものが、このようにして初めて成り立ったのです。その反響は今、次第に内外に広がりつつあります。

 マルクス主義形成の原点に革命的実践者の立場で肉薄

 古い岩波文庫や国民文庫などで『ドイツ・イデオロギー』を読んだ「大人たち」の中には、『ドイツ・イデオロギー』の「難しさ」に辟易(へきえき)しながらも、二度と忘れられないいくつかの鮮やかな断片を脳裏に刻みこんで、それを自分自身の生き方や闘争の支えとしてきた人も少なくありません。『ドイツ・イデオロギー』の断片には、それくらい強烈な、人の生き方を決定するような世界観的なテーゼがいくつも含まれています。
 だが、はっきり言って、『ドイツ・イデオロギー』の全体像を理解することはそう簡単なことではありませんでした。全体が相当長大であることに加えて、内容的に最も重要な第1巻第1章フォイエルバッハ批判のところが、いったい全体どういうつながりになっているのかよく分からないようにされていたということが大きな問題でした。しかもそれは、スターリン主義によって意識的に改ざんされてそうなっていたということに加えて、それを批判的に問題にする側においてもピントの外れた問題意識によって二重三重に混濁した状態がつくり出されていたのです。
 スターリン主義の歴史的破産がソ連崩壊というドラスティックな形で「われわれ」(広義の「われわれ」)すべてに突きつけられた時、この歴史的現実に立ち向かう拠点そのものを一挙に失ってしまうような混迷の中に突入していかざるをえなかった原因の一つはそこにあったとも言えます。
 われわれ(革共同)の読み方は、一言で言って、マルクスの原点に立ち返ったきわめてオーソドックスな読み方ということができます。簡単に言えば、マルクスとエンゲルスが『ドイツ・イデオロギー』の作業を共同で白熱的に推し進めていたその時の彼らの生の問題意識にストレートに迫ったということです。われわれはこの点で、大胆に問題の核心部に迫ったという達成感をもっています。
 何がどのようにマルクスとエンゲルスに『ドイツ・イデオロギー』を書かせ、そしてその後の『共産党宣言』への一気呵成(かせい)の前進から『資本論』への本格的な歩みを実現させていったのか。そしてそれが、どのように19世紀末から20世紀冒頭の歴史的転換点において、第2インターナショナルの日和見主義を打ち破るためのレーニンの闘いにつながっていったのか。そして、レーニンの歴史的課題をわれわれは今どのように自分自身の課題として引き継ぐのか。『ドイツ・イデオロギー』は、そのようなところにまでつながるマルクス主義者の「原点の問題意識」をよみがえらせるものです。
 もちろんこのような読み方は、ある一つの立場を前提にしています。それはどういう立場か。21世紀への転換点において生きかつ闘っている現代の労働者階級と被抑圧民族人民の、まさに今現在の闘いの立場に立ちきるということです。この立場からマルクスとエンゲルスの150年前の苦闘に迫る時、ある意味で手に取るように彼らの理論的思想的苦闘の核心に触れることができるのです。
 われわれは、若きマルクスとエンゲルスのその苦闘を、まさに現代に生きる労働者人民(われわれ自身)の現実の苦闘を照らし出す鏡としてとらえ返しています。われわれは何者であり、どこから来てどこへ向かっているのか。何をどのように変革することが必要なのか。求められているのは、このことに実践的回答を出すということです。
 この革命的現実的実践的立場――プロレタリアートの階級的人間的立場――に徹頭徹尾立ちきること。このことと歴史の真実をつかみ取ることとは完全に同じことなのです。それが、『ドイツ・イデオロギー』は「フォイエルバッハ・テーゼ」の実践的唯物論と一体であるという場合のその核心的な意味なのです。

 マルクス・エンゲルスの共産主義者への飛躍かけた決断

 マルクスとエンゲルスにとって、フォイエルバッハ批判にはヘーゲル左派の一員である自分自身との革命的自己決別の意味がありました。自分たちの立場の中途半端さを自己批判しつつ、そこまでにすでに獲得されていた立場を総括しながら、断絶的に飛躍・発展させていくこと。これが『ドイツ・イデオロギー』で目指されたのです。
 たとえば第1章の序文で「ドイツの外からドイツの現実をとらえる」という表現があります。それは、すでに本格的な展開をみせ始めているプロレタリア階級闘争の現実からとらえ返した時、ドイツの哲学者たちの思想的闘争の意味もよりはっきりしてくると言っているのです。
 マルクスもエンゲルスも、「ドイツの哲学者は思想(自分たちの批判)と物質的環境との関連を考えてみようともしない」と繰り返し問題を突きつけていますが、この物質的環境とは、単に自然界のことではなくブルジョア社会の歴史的現実のことです。だが、単に生産力が発展している、古い共同体は解体されている、というようなブルジョア社会の現実を言っているのではなく、そこにおけるプロレタリア階級闘争の現実そのものに照準が合わされているのです。
 マルクスとエンゲルスは、『ドイツ・イデオロギー』において、歴史を創造する(変革し創造する)人間の革命的実践=物質的実践をトータルに語ろうとしているのです。だからこそ、自分たちは実践的唯物論者=共産主義者であるという宣言がなされているのです。『ドイツ・イデオロギー』を論じて、そのことを正面から問題にしないような議論はまったくのまやかしです。
 われわれは、そのような意味で、フォイエルバッハ・テーゼ全体のまとめである第11番目の「哲学者たちは世界をさまざまに解釈してきたにすぎない。だが大切なのは、世界を変革することである」というテーゼが、『ドイツ・イデオロギー』全体を貫くマルクスとエンゲルスの基本的立場であることを確認することができます。これを一言で言うと、マルクスとエンゲルスは、ここで本当に自己批判的に労働者階級の立場に立ち、階級的組織的実践活動に入ることを人生をかけた自分の生き方として決断したということです。彼ら自身が、自分は何者であり、何でありえるのかへの実践的回答として、このような階級的立場に立ちきったのです。
 【この11番目のテーゼにおける「だが」はエンゲルスが後で挿入したもので、マルクスのもともとのテキストには「だが」という言葉はもちろん、ニュアンスもない、これこそはエンゲルスによるマルクスのわい曲であるというような議論が研究者たちの間でなされているが、それはあまりにもおかしい。この「だが」があるかないかで、スターリン主義との区別を立てようなどという試み――こういう試みも一部「論壇」にあるようだ――はまったく「成功」の見込みがない。テキストクリティーク(文献批判)は厳密であるべきだが、こじつけはよくない。マルクスのフォイエルバッハ・テーゼ全体が内容的に「だが」というニュアンスに貫かれているのは明白だ。エンゲルスが補いの「だが」を入れたのは、この場合には完全に正解だった。ここはむしろ、ことさらに強調的に読みとっていくことが必要である。】

 『共産党宣言』『資本論』への道を開いた革命的管制高地

 『ドイツ・イデオロギー』でマルクスとエンゲルスがやったことは「実践的唯物論の具体的適用としての歴史の唯物論的把握」です。その意味で、唯物史観=史的唯物論の原型的骨格的な形成がそこにおいてなされたと言えます。
 マルクスは後(1859年)に『経済学批判』の序言で『ドイツ・イデオロギー』における自分とエンゲルスの共同作業を振り返って、そこで獲得された地平を簡潔にテーゼ的にまとめています。それが有名な「序言の唯物史観の定式」です。これは、あまりに公式化された形でこれまで読まれ、むしろ、この公式の側から、『ドイツ・イデオロギー』を公式主義的に読むという読み方が行われてきました。
 しかし、マルクスは『ドイツ・イデオロギー』で形成された管制高地から、一気にブルジョア社会の解剖学としての経済学=経済学批判を遂行する作業に入っていった(それが可能となった)のです。
 『哲学の貧困』(1847年)におけるプルードン批判とリカード価値論の内在的摂取は、『ドイツ・イデオロギー』の直接的結果とも言えます。『ドイツ・イデオロギー』における階級的歴史観的飛躍をとおして、マルクスは、『経済学・哲学草稿』(1844年)的に開始していた経済学批判の作業を全面的本格的に遂行する道筋をつかんだのです。このことは、プルードン的な「実践的立場」をどちらかというと擁護しながら国民経済学の没概念性を批判するスタンスをとっていたマルクス(エンゲルスもそうだった)が、プルードンの観念性を徹底的に批判し、古典派経済学の価値論を高く評価する立場に移行したことに最も端的に表現されています。つまり、『ドイツ・イデオロギー』において、世界史的・歴史的存在としてのプロレタリアートとその階級的革命的実践の歴史的意義が完全につかまれたことによって、古典派経済学を科学として内在的に把握し批判しきっていくこともまた可能となったということです。
 その成果が、早くも1847年には講演『賃金』(『賃労働と資本』)として結実し、それをテコに、『ドイツ・イデオロギー』のエッセンスは『共産党宣言』の形で簡潔にまとめられることになりました。マルクスとエンゲルスが『ドイツ・イデオロギー』で公然と行おうとしていた「実践的唯物論者=共産主義者」宣言は、現実の革命的労働者組織(プロレタリアの党)の綱領として提起されるまでになったのです。実際、『ドイツ・イデオロギー』のあちこちにある表現が『共産党宣言』の中に生かされていることをわれわれは確認することができます。その意味で、『ドイツ・イデオロギー』は原『共産党宣言』と言えるのです。
 『哲学の貧困』『賃労働と資本』で、初めて「生産関係」という概念がカテゴリー的に(はっきりした内容を持って)使用されています。『ドイツ・イデオロギー』では、「分業の本格的な発展にともなう生産力と社会状態と意識の三つの間の矛盾」とか「生産力と交通関係の間の矛盾」として展開されていたことが、古典派経済学批判(内在的摂取)の質的な深まりをとおして、ブルジョア的生産関係(資本主義的生産関係)として賃労働と資本の関係を具体的に把握し、それによって「生産力と生産関係の矛盾」が明確にカテゴリー化されていった。このような展開になっています。ですから、われわれは、このことをマルクスにおける「唯物史観を導きの糸とした経済学批判の前進」と呼ぶわけです。
 だがわれわれは、この「導きの糸」を、「現実の道」(ここでは科学的認識=理論の発展をさす)がたどられた後には無意味と化すようなものとしてとらえてはいません。この「導きの糸」は、一方では階級的実践的立場それ自身であり、歴史を変革し創造する人間の物質的活動における実践的展望そのものでもあるのです。それは、歴史的現実を根拠として、人間的実践そのものを導くものとして、それ自身豊かに発展させられなければならない。したがってまた、市民社会の解剖学にとっての「導きの糸」としての唯物史観=史的唯物論が、それ自身として理論的に彫琢(ちょうたく)され、発展させられなければならないのです。
 たとえば、次のようなことを考えてみて欲しい。マルクスは晩年、古代社会の研究に相当なエネルギーを注いでいました(そのことは死後にわかった)。それは、ロシアの土地問題の研究などと同じように経済学研究の完成のための問題意識から発展したものでもありますが、マルクスにとっては、それ以上のものでもあったのです。
 マルクスの『古代社会ノート』は、彼の死後、エンゲルスがそれを「発見」し、『家族、私有財産、国家の起源』としてまとめられました。それは、家族論(女性解放論)や国家の発生史的解明において多くの重要な展開を含んでいますが、なぜ、マルクスはそこにこだわったのでしょうか。単なる知的興味の世界なのか。もちろん、そうではありません。マルクスは、資本論的なレベルにまで到達した経済学批判(経済学研究)を拠点として、いわば『ドイツ・イデオロギー』で原型的・骨格的に形成された唯物史観=史的唯物論を、共産主義の必然性の解明という実践的問題意識に貫かれながら、モルガンらの研究を媒介に徹底的にやりとげようとしたのです。
 そこに、われわれは「経済学研究を拠点とした唯物史観の徹底的な深化」というもう一つの円環を見ることができます。それらは、結局のところ、マルクスにおいて、資本主義の転覆・打倒=共産主義への移行の実現という歴史的な革命的実践の一環をなすのです。
 われわれは、科学的理論がすべてでイデオロギーは無であるというような立場ではありません。人間の歴史的な実践を現実的な革命的実践として問題にする時、理論(科学)と階級的立場(思想)を対立させるようなレベルそのものがのりこえられなければならないことはあまりにも明白です。
 この意味でも、『ドイツ・イデオロギー』で強烈に出されている「物質的実践の立場」(フォイエルバッハ・テーゼで言う「主体的な感性的活動=革命的実践」)は、実に深い意味があります。逆説的な言葉の使い方になりますが、哲学的な意味がそこにはあるのです。歴史を創造する根源的な活動としての人間の物質的実践のトータルな把握をあくまでも軸においたマルクスの実践的唯物論の立場がそこにあるということです。

 労働者階級の革命的実践が共産主義の壮大な展望開く

 『ドイツ・イデオロギー』は、分業を軸に(それを動力として)人間社会史の発展を解明しています。社会的分業(労働の社会的分割)は、精神労働と肉体労働の分割によって本格的となるが、それは労働する者とその成果を享受する者への社会の分裂をもたらし、所有(本質的に言えば他人の労働力の支配)と階級社会を生み出す。つまり、「家族、私有財産、国家」が生み出される。人間が社会的な協働をつうじて生み出す生産力は、今では、人間たちの意志や統制を超え、それ自身ひとりでに運動する「よそよそしい力」となって人間たちを支配する。これは哲学者たち(ヘーゲルとヘーゲル左派)が疎外と名付けた現象そのものですが(とマルクスは言っている)、それは単に宗教などの観念的な疎外のことではない。物質的な生産活動そのものが「現実の疎外」として私有財産を生み、これが同時に社会の階級的分裂と闘争に伴う政治的・イデオロギー的な疎外の諸形態を生み出し、これと結びついて人間の精神的な活動におけるいろいろな疎外もまた生み出される。疎外とは、これまでの人間社会が階級社会であった限り、人間の歴史的発展そのもののことでもあります。
 (哲学者たちにも分かるように言うならば)このような分業がもたらす疎外を廃止することが、共産主義なのです。共産主義の社会とは、分業と私的所有が廃止され、人間たちが「自由な意志によって結合」して生産を営む社会のことです。階級社会は「自然発生的な力に強制された社会」であり、分業と私的所有が生み出す「よそよそしい力」が人間たちを支配する社会です。これに対して、共産主義(疎外の廃止)とは、人間が自分たちの「社会的な力を自分たちのもとにとりかえす」ということです。
 マルクスとエンゲルスは、ひとまずこのように共産主義をつかみ出した後、本文の本筋の流れとしては、「市民社会こそがあらゆる歴史の真のかまど」であり、歴史の動力をなす「現実の諸関係」はまさにそこにあるということを確認しています。(これは、市民社会の解剖学への本格的な踏み込みが必要であるということを提起するものですが、『ドイツ・イデオロギー』では、あくまで「われわれの歴史観」として全体が総括されていきます)
 だが、ここで、両者ともに、激しい勢いで@国家について、A共産主義革命の実践的な展望について、つまり、共産主義革命論=プロレタリア革命論的な内容での欄外注記を行っています。この注記の中には、『ドイツ・イデオロギー』というとまず思い出されるような有名な断片がいくつも書き記されています。本文の流れからいえば一見脱線とも思えるような「この二つの大きな注記」は、『ドイツ・イデオロギー』がマルクスとエンゲルスにとって、どのような実践的営みであったかをはっきりと示しています。 
 本文本筋の流れとしては、エンゲルスは「われわれの歴史観からの実践的結論」を、共産主義革命論の展開としてこの後で行っていますが、それを待ちきれず、両者はその前の「分業と疎外の廃止」の展開の中で、一気に革命論をほとばしらせているわけです。
 『ドイツ・イデオロギー』第1章「フォイエルバッハ」の本文は、この後、「歴史を思想の支配とみる観念論的見方への批判」(いわゆるB節)、「所有の近代的形態と共産主義」(いわゆるC節)へと続いていきます。この中で、特にC節の最後の方で、あらためて共産主義論が今度は分業の廃止という文脈ではなく、所有形態の歴史的段階的な発展論を基礎に、資本主義的生産の廃止としての共産主義論として展開されていきます。具体的には、人格的な自己実現論と世界的な生産力の獲得論として提起されています。またこのC節では、国家論も近代国家論(ブルジョア国家論)として展開されています。このC節はとりわけ、原『共産党宣言』としての性格が感じられますが、その詳細についてはここでは略します。

 革命の実践課題に向き合い国家の打倒・廃止を論じきる

 最後に、「『ドイツ・イデオロギー』の国家論は幻想的共同性論であって、それはレーニンの国家論(階級支配の機関説)と基本的に違っている」などと世間で言われてきたことについて、ここで一言しておきたい。
 レーニン『国家と革命』については、別の機会にあらためて全面的に論じたいが、結論的に言って、両者はおどろくほど内容的に一体です。よく言われるように、レーニンは『ドイツ・イデオロギー』を読んでいない。しかし、レーニンがロシア革命の実践的課題に必死で対応しようとする立場から、第2インターの日和見主義者どもと根本的に対決して、マルクスとエンゲルスをひもといて整理要約し、展開した国家論は、見事にマルクスとエンゲルスの国家論の核心をつかみきっています。われわれは、『ドイツ・イデオロギー』を本格的に読み解いた立場からレーニンの『国家と革命』に接する時、「さすがレーニン」と感嘆せざるをえません。
 しかし、それは当然のことなのです。マルクスは『ドイツ・イデオロギー』の国家論をもとに『共産党宣言』においてより具体的に国家の規定を行いました。したがって、レーニンが日和見主義者のわい曲からマルクス・エンゲルスの国家論を解放し、そのエッセンスを革命的に復権する立場から、基本的にそれと同じことを言ったのは、あまりにも当然なのです。『ドイツ・イデオロギー』の国家論をレーニン(あるいは『共産党宣言』)に対置して、それは幻想的共同性論だから階級支配の機関説とは違う、したがって国家を暴力的に打倒するというレーニン革命論そのものが誤りであるとするような次元の低い議論はそろそろ止揚されなければなりません。(こうした議論は、議論の道筋は違っても実践的内容としては日本共産党の不破哲三式「科学的社会主義」とまったく同じです)
 『ドイツ・イデオロギー』の国家論は、分業論からの展開として形式上、一般的な展開となっているA節の欄外注記の部分に限っても、国家を崇拝し神格化するような要素はみじんもありません。マルクスとエンゲルスは、国家が支配階級の階級支配の道具であること(国家は階級対立の非和解性の産物であり、支配階級が共同利害の名で階級的特殊利害を上からおしつける機構であり、被支配階級を上から弾圧し抑圧する機関であるということ)、したがって国家は打倒されなければならないし、廃止されなければならないということを誰よりも熱心に激しく主張しました。階級の存在そのものを廃止しようとする「共産主義革命」は、ブルジョア国家の打倒をもって始まるのです。レーニンはこれを完全に受け継いでいます。われわれは、あれこれのためにする議論によってこの基本線を否定する一切の日和見主義的議論を粉砕しなければなりません。『ドイツ・イデオロギー』の唯物史観の実践的な結論――最も重要な結論の一つ――は、そこにあります。
 われわれは、冒頭でも確認したように、『ドイツ・イデオロギー』をオーソドックスに読み解いたのですが、それは、革命論において、オーソドックスなマルクス的、レーニン的なプロレタリア革命論をこの21世紀冒頭の現代世界に全面的に(もちろんらせん的に)復権し、貫徹するということです。
 巨大な現代帝国主義国家に絶望して、もはや国家権力を打倒することは不可能であると口走ったり、近代国民国家はすでに歴史的役割を終えた存在であるから目くじらたてて闘う必要はないなどと言って白旗を揚げるようなイデオロギーを、われわれは全面的に批判しつくさなければなりません。
 確かに国家権力は強大です。だが、行きづまり、立ち往生し、あらゆる意味で人民に上から絶望的に戦争をしかける以外に生きられない現代の帝国主義国家を打倒することはまったく可能だし、絶対に必要です。労働者階級が被抑圧民族人民と連帯して立ち上がる時、それは完全に可能なことなのです。『ドイツ・イデオロギー』の国家=革命論はこのことの真理性と現実性を根本のところからわれわれに提起しているのです。唯物史観は実践的唯物論を内的に貫いたものとしてのみ成立するものですから、このことが実践的な結論となるのは当然のことでしょう。

------------------------TOPへ---------------------------