ZENSHIN 2002/11/11(No2077 p08)

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週刊『前進』(2077号1面1)

国鉄労働運動の不屈の前進で6人起訴攻撃を粉砕しよう

 新たに2人逮捕

 10月28日、日帝国家権力は、10・7国労弾圧でデッチあげ逮捕していた8人のうち闘争団員2人を含む国労組合員5人全員と支援1人の計6人を起訴する弾圧を加えてきた。
 さらに翌29日、国労組合員2人を新たに逮捕するという暴挙を働いた。
 完黙・非転向を貫いた8人の闘いは、日帝の凶暴な弾圧を根幹で打ち破り、国労組合員を先頭とする労働者人民の怒りの決起を引き出した。闘いの爆発に恐怖し、不屈の獄中闘争に追い詰められた権力が報復弾圧に打って出たものこそ、今回の2人に対する第2次逮捕攻撃なのだ。
 この攻撃は、だからこそ必ず粉砕できる。獄中の8人とともに猛然と怒りを燃え立たせて決起し、弾圧粉砕をかちとろう。
 10・7国労弾圧とは、警視庁公安部が、さる5月27日の国労第69回臨時大会での大会防衛隊宿舎前におけるビラまきと説得活動に対して「暴力行為等処罰に関する法律」違反の容疑をデッチあげたものである。
 10月7日は国労第70回大会(11月24〜25日)代議員選挙の告示日であった。「国労の選挙の立候補の当日に逮捕した。びっくりしただろう」と取り調べで言っていたように、権力はこの日を選んで、全国一斉に8人を逮捕したのである。
 4党合意と与党3党声明の首謀者である自民党副幹事長・甘利明が最高検察庁と警察庁を突き動かし、権力中枢の決断によってこの大がかりで計画的な弾圧が強行された。
 今回の弾圧は第一に、9・11反米ゲリラ戦争以降の10・7アフガニスタン侵略戦争突入、米帝のイラク侵略戦争―北朝鮮・中国侵略戦争の切迫と日帝・小泉政権の有事立法・戦争国家化攻撃という歴史的情勢のもとで強行された。世界侵略戦争―世界戦争への突入情勢下での労働運動解体の攻撃である。
 第二に、組合内部の路線対立から起きた事態に国家権力が不当に介入するのみならず、国労本部―東京地本酒田一派の屈服と全面的協力をとりつけ、4党合意反対派の組合員をデッチあげ逮捕するという類例をみない悪質な治安弾圧だ。
 闘う国労の中に息づく階級的な考え方とその運動・組織を根絶やしにするために、国労指導部を屈服・変質させ、権力の手先として使い切った攻撃に踏み込んできた、日本労働運動史を画期する一大弾圧である。
 この弾圧との闘いに、革共同の労働者党としての真価が問われ、その飛躍が迫られている。そして、闘う闘争団と国労組合員、戦闘的労組の指導者や組合員は、この弾圧に怒り、闘いに注目し、声援を送り、ともに闘おうとしている。
 この弾圧との闘いに勝利し、戦闘的労組・労働者との大合流をかちとろう。
 逮捕された8人は、権力の屈服と転向強要の攻撃と対決し、打ち破った。起訴された6人は今、新たな闘いに突入している。

 卑劣な取り調べ

 国労組合員5人は、労働者魂を発揮して連日7〜10時間の長時間の取り調べ、「国労の運動をやめろ」という屈服強要と対決して不屈の闘いを貫徹した。
 権力の攻撃は卑劣きわまりないものであった。弁護士接見を妨害する、弁護士を誹謗(ひぼう)中傷する、机をどんどんとたたき蹴飛ばし、大声でわめくなどの暴力を振るう、組織不信をあおる――などなどの取り調べの常套(じょうとう)手段を次々と繰り出してきた。
 加えて、子ども思いの労働者に向かって「子どもが小学校でいじめにあって泣いているぞ」とウソを繰り返し、労働者の不安をかきたて屈服を迫った。この労働者の妻子が宣伝カーで激励に来たことで、そのウソがばれると開き直り、「2人とも中核派構成員とみなして弾圧するぞ」ととんでもない脅しを加えてきた。
 また、Aさんには、Bさんが屈服したかのようなウソを言い、逆にBさんには「Aが『……』と言っているぞ」とAさんが供述を始めたかのようなデマを流すことで相互に分断し、屈服を誘おうとした。しかし、国労労働者の絆(きずな)と団結の前に、この卑劣な策動はあえなく破産した。
 それにとどまらず権力は、家族に襲いかかるという卑劣な攻撃に出てきた。
 たとえば、Cさんの自宅には夜の8時から10時に、切っても切っても電話をかけるという執拗(しつよう)な攻撃を加えた。その中で「起訴されたら何年も出られないぞ」と脅したり、権力が子どもに何をするかわからないという恐怖を抱かせようと策動した。
 また、Dさんの自宅を訪問した権力は「面会に来て『帰ってきて』と言えば、変わりますよ」と、家族を使って屈服を迫るたくらみをあらわにしてきた。
 家族は、夫を奪い去るだけでなく、自分と子どもの生活と人生をも平然と踏みにじろうとする権力に怒りをもって対決しはね返した。上京して、勾留理由開示公判の傍聴や激励行動、国労本部への申し入れ行動に立ち上がった。
 労働者魂を発揮した国労組合員の闘いと、その家族の愛情と信頼にあふれた闘いが一体となって権力の激しい攻撃を打ち破り、不屈・非転向の闘いが貫徹されたのである。
 第1次弾圧との闘いの勝利の教訓を踏まえ、第2次弾圧を絶対に粉砕しよう。起訴された6人の裁判を一大労働運動裁判として闘いぬき、6人とその家族を支え守り抜こう。早期の保釈奪還をかちとろう。
 国労弾圧への怒りを燃やし、11月労働者総決起と11月24―25日の国労大会決戦へ闘いぬこう。

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週刊『前進』(2077号1面2)

革共同の11月アピール
国労弾圧に怒りの大反撃を
全世界のイラク反戦闘争と連帯し 11月労働者総決起へ全力を
 戦争・恐慌・小泉改革と闘おう

 第1章 権力に加担し組合員売り渡した国労本部

(1)11月労働者総決起を目前にして、内外情勢は大激動し、緊迫している。米帝(国際帝国主義)のイラク侵略戦争の現実化、チェチェンの闘うムスリム人民の特殊的・極限的決起とそれに対するロシア・プーチン政権の反革命的大暴虐、日帝・小泉の有事立法攻撃と北朝鮮への戦争外交の激化、そして国鉄決戦をめぐる大弾圧と階級的激突の強まり、一大資本攻勢との闘い。これら一切の激動情勢に戦闘的に対決し、今こそ歴史的大闘争に立ち上がろう。その当面する最大の結集軸が11月労働者総決起である。全世界のイラク反戦闘争の爆発と連帯し、日本の労働者人民の決起を全力でつくり出そう。10・7と10・29の国労弾圧への怒りを爆発させ、大反撃に立とう。

 暴力行為等処罰法は戦前来の争議鎮圧法

(2)日帝・国家権力は10月28日、10・7弾圧で不当逮捕した8人のうち国労組合員5人と支援1人の計6人を、暴力行為等処罰法でデッチあげ起訴した。天人ともに許さざる暴挙である。
 5・27国労臨大の当日に、正当な組合活動としてビラをまき、闘争団除名や裁判取り下げはやめろと説得活動を行ったことが暴力行為等処罰法違反だというのである。説得活動やビラまきは、憲法28条や労働組合法第1条2項などでも認められた正当な組合活動であり、それを権力が弾圧すること自体が違法である。国家権力が、組合活動や4党合意をめぐる国労内の路線対立に介入することなど断じて許されない。こんなことがまかり通るなら労働運動など一切不可能になる。
 われわれは満腔(まんこう)の怒り、煮えたぎる怒りを抑えることができない。国労内外で大反撃を組織し、どんなことがあっても弾圧を打ち破り、6人を奪還し、国鉄決戦の巨大な発展に転化していくことを宣言する。
 不当逮捕された8人は不屈に権力と対峙し、完黙・非転向で闘った。分断攻撃も切り崩しも許さず、権力を追い詰め、根本的地点で勝利した。焦りにかられた権力は、裁判が維持できる展望さえないまま、でたらめな起訴を行った。だからこそ、10月29日には新たなデッチあげをたくらんで、またも2人の国労組合員を逮捕する暴挙に出たのである。
 われわれは、有事立法攻撃と一体のこの弾圧を絶対に許さない。弾圧への怒りと反撃の嵐(あらし)を巻き起こし、これを必ずや敵の墓穴に転化する。権力の国鉄労働運動解体攻撃を粉砕し、国労本部を打倒し、国労再生と階級的労働運動の大発展への歴史的転機としていく。そして敵に弾圧は大失敗であったと絶対に思い知らせるであろう。
 10・7と10・29の国労弾圧は、政府権力(自民党副幹事長・甘利明)と最高検の判断と決断をもって強行された大暴挙である。この間、日帝は4党合意のもとに国労本部を全面屈服させ、闘争団を切り捨て、国労を解体して、国鉄闘争を終結させようと必死になってきた。しかし、闘争団を始めとした闘う国労組合員と支援の不屈の決起によって攻撃は失敗し、4党合意は完全に破産した。追い詰められた権力は、このままでは国鉄闘争が戦闘的に発展していくという恐怖にかられて、組合運動に介入し、闘う組合員を不当逮捕・起訴する暴挙に訴えたのだ。これ自体がとんでもない不当労働行為である。
 弾圧の手段として戦前の治安維持法時代以来の争議鎮圧法である暴力行為等処罰法を持ち出してきたことに、今回の攻撃の本質は明らかだ。この法律は「団体」や「多衆ノ威力」を示して「暴行」「脅迫」「器物損壊」を行ったという口実で、特別に労働運動・組合運動を弾圧できるという極悪の治安法である。こんな悪法の存在と適用そのものを暴き出し、絶対に粉砕しなければならない。
 しかも今回の弾圧には、権力に投降した国労本部と東京地本・酒田一派が完全に協力・加担した。この極反動どもによる国労組合員売り渡しがなかったら、逮捕も起訴も成立しなかった。罪万死に値する。彼らは「国鉄改革法」を承認した99年3・18国労臨大以来、大会のたびに会場に機動隊を導入し、権力に依拠して4党合意を強行しようとしてきた。そうした労組にあるまじき「警察労働運動」の行き着いた先が、今回の組合員売り渡しだったのだ。
 われわれは、権力の恥ずべき先兵として今回の反階級的犯罪に手を染めた高嶋、寺内、久保ら国労本部執行部、5・27臨大の準備地本として直接の指揮をとった東京地本・酒田一派の悪行を絶対許さない。階級の裏切り者として必ず打倒・追放し、国労の戦闘的再生をかちとるであろう。
 これは逮捕・起訴された国労組合員だけにかけられた攻撃ではない。闘う闘争団、4党合意に反対するすべての国労組合員、国鉄闘争を闘い、資本攻勢と闘うすべての労働者と支援に向けられた攻撃である。
 国労内外で直ちに大反撃に決起しよう。起訴された6人を守り、早期奪還せよ。当局JR資本の解雇攻撃、国労の統制処分策動を絶対に粉砕せよ。何よりも国労内に4党合意反対派の強固な闘う砦(とりで)を築くことだ。そして、一大労働運動裁判にすることだ。戦闘的労働運動の大発展を切り開こう。
 弾圧への反撃をバネとして11月労働者総決起と11・24―25国労大会決戦の大爆発をかちとれ。極悪の裏切り者、チャレンジと反動革同、国労本部を打倒し、国労の再生と不抜の1047人闘争の発展を開こう。逮捕・起訴された国労組合員・支援と心を一つにして闘おう。

 第2章 プーチンの大虐殺と決起鎮圧を弾劾する

(3)10月23日、モスクワ中心部で、チェチェンのムスリム人民による劇場占拠戦闘が生起した。820人の人質をとって立てこもり、ロシア・プーチン政権に「チェチェン侵略戦争中止」の要求を突きつけた。壮絶な自爆的決起であった。
 われわれはこの事態をどう受けとめ、闘っていくべきか。
 第一に、これは9・11反米ゲリラ戦以後の情勢の中で必然的に起こった、闘うチェチェン人民の民族解放・革命戦争の特殊的=極限的形態としてあった。
 帝政ロシア―旧ソ連時代以来、200年にわたるチェチェン人民の民族解放の闘いは、プーチン政権の大ロシア主義のもとでの凶暴な民族抑圧と侵略戦争への不屈の激しい闘いを展開してきた。チェチェン人民の怒りは極限に達していた。今回の劇場占拠にはロシア軍との戦闘で夫を亡くした女性が二十数人も決起している。このことは闘いの重さ、壮絶さを示して余りある。チェチェンの闘うムスリム人民は侵略戦争の停止を要求し、プーチンの権力足下で9・11型の戦闘に決起したのである。
 第二に、これに対しプーチンは彼らの要求を真っ向から踏みにじり、「テロ鎮圧」の大暴虐を強行した。化学兵器としての特殊ガスを劇場に注入し、百数十人から二百人もの人びとを一瞬のうちに虐殺した。ガスで動けなくなったチェチェン人戦士のこめかみに銃を向け、ほぼ全員を射殺した。この残虐性・凶暴性は旧ソ連スターリン主義の崩壊の中から成立したプーチン体制の白色テロ性を示すと同時に、9・11以降の米帝ブッシュを先頭とした「テロ根絶戦争」の反革命性そのものである。徹底弾劾せよ。
 第三に、10・23はロシア・プーチン政権の民族抑圧と侵略戦争を許しているロシア・プロレタリアートおよび帝国主義国プロレタリアートへの厳しい糾弾であり、同時に決起の呼びかけである。ロシアを先頭とした全世界の労働者階級には、階級的自己批判をかけて、チェチェン侵略戦争阻止、プーチン体制打倒、反帝・反スターリン主義世界革命の一環としてのロシアにおける反スターリン主義の第2プロレタリア革命へと闘うことが、強く求められている。
 第四に、プーチンの「テロ鎮圧」の大暴虐は米帝ブッシュと国際帝国主義のイラク攻撃―世界戦争情勢を促進するということだ。ブッシュを始め帝国主義者どもは、9・11以後情勢の中でプーチンの対応を全面支持した。小泉も「テロは国際平和と安全への脅威」「果断な対応でテロリストの制圧に成功した」と称賛した。10・23が米帝の対イラク攻撃に一定の独自性を示してきたロシアの動向を含め、イラク侵略戦争情勢を促進することは不可避である。
 今こそ闘うチェチェン人民の壮絶な特殊的・極限的決起を受けとめ、それと連帯して、対イラク開戦阻止―米帝の世界戦争計画粉砕の大闘争に決起しよう。

 イラク侵略戦争の切迫は世界史的事態

(4)米帝(国際帝)のイラク侵略戦争の切迫、現実化は世界史的事態である。
 10・10―11の米上下両院決議(軍事力行使の権限付与決議)をもって、米帝ブッシュの対イラク攻撃開始は秒読み段階に突入し、国連決議をめぐる情勢も激変した。米英(日)と仏、ロ、中、独など諸帝国主義、諸大国間の攻防と駆け引きも新段階を迎えたが、米帝は基本的に国連決議なしでも、米(英)単独でも、何がなんでもイラク攻撃を強行しようとしている。ブッシュは10月26日にメキシコで「もし国連が機能せず、サダム・フセインが大量破壊兵器を廃棄しない場合、われわれは廃棄させるために先頭に立つ」と、単独攻撃をあらためて表明した。
 米帝のイラク侵略戦争は、昨年の9・11―10・7をもって開始された世界戦争過程の一層の現実化であり、01年QDR―02年米国防報告―9・20ブッシュ・ドクトリンに沿った世界戦争計画の凶暴極まる推進の攻撃である。唯一の世界帝国である米帝が圧倒的な国力、軍事力をもって行う一方的侵略戦争、イラク人民虐殺戦争である。1648年ウエストファリア条約以来の近代国際法の建前をもかなぐり捨てた先制攻撃突入であり、主権国家転覆の侵略戦争である。イラクがまだ大量破壊兵器など持たず、「テロ」の温床となっている何の証拠もなく、イラクから攻められてもいないのに、フセイン政権が米帝の思いどおりにならないからという理由で、先制攻撃をかけ転覆しようとしているのだ。しかもそれが「自衛」のためだ、「正義」だと、平然と合理化しようとしているのだ。
 イラクはサウジアラビアに次いで圧倒的な原油埋蔵量をもつ石油大国である。中東湾岸OPEC諸国には世界の原油の実に65・3%が存在する。米帝は現在、国内石油消費量の50%以上を輸入に依存し、特に中東石油への依存度は28・6%に拡大している。石油資源の確保は米帝(一般的には帝国主義)にとって一層死活問題なのだ。このイラク―中東―全世界の石油資源の米帝的確保、そのための中東支配、世界支配の米帝的再編、それがイラク攻撃の今一つの重大な動機である。帝国主義的強盗戦争そのものだ。
 9・11反米ゲリラ戦争は米帝に巨大な衝撃を与えた。それは、パレスチナ人民を始めとする中東―全世界のイスラム諸国人民、ムスリム人民の米帝への怒りがいかにすさまじいかを突きつけた。米帝は今や不断に繰り返し襲ってくる9・11的な反米ゲリラ戦を抱え込んだ国家、社会になった。米帝史上かつてない体制的危機、階級支配・政治支配・イデオロギー支配の危機だ。この没落への恐怖から、ブッシュ・ドクトリン、米帝の世界帝国としての延命をかけた世界戦争計画、それを暴力的に遂行する新帝国主義的な世界戦略が出てきたのである。
 米帝は今や帝国主義として、それがいかに強引であり、さまざまな反対動向や慎重論が国際的にも米支配階級の中にも一定あろうと、なおかつ世界戦争計画―イラク攻撃に突き進もうとしている。その階級的本質をしっかりつかみ、歴史的大闘争に決起しなければならない。
 現実の戦争準備も急ピッチだ。その象徴的な事態として、現在イラク・湾岸周辺にエイブラハム・リンカーン、ジョージ・ワシントンの2隻の空母が展開しているが、11月2日にコンステレーションが母港サンディエゴを出港する。12月にはハリー・トルーマンとキティホーク(横須賀が母港)がペルシャ湾に向かう。米中央軍の前線司令部が12月上旬までにカタールに設置される。年末か年明けにも攻撃が開始される情勢である。
 だがイラク侵略戦争の開始は、同時に国際的争乱の巨大な爆発を引き起こす。米帝経済、世界経済の危機が、石油争奪戦の激化と石油問題の爆発をも引き金として、本格的な世界大恐慌的状況へと転化する。こうしたとてつもない事態の展開は、一方で国際階級闘争、国際反戦闘争のまったく新たな地平を必ず生み出すものとなっていく。
 実際すでに対イラク開戦以前の段階で、ベトナム反戦を超える闘いが米英の足下で、全世界で爆発し始めている。10月26日には全米でワシントン20万人、サンフランシスコ10万人を先頭に大規模なイラク反戦デモが爆発した。これを前後してベルリンの3万人を始め世界10カ国で、一斉に集会・デモが闘われた。 
 これは日本階級闘争にも決定的影響をおよぼす。われわれは今この日本の地で、全世界の労働者階級、被抑圧民族人民と連帯し、ベトナム反戦闘争以来の巨大な闘いを組織化しなければならない。11月労働者総決起を全力で闘おう。

 小泉はブレアに次ぐブッシュの協力者だ

(5)日帝・小泉は英帝ブレアに次ぐ米帝ブッシュの協力者だ。日帝は米帝のブッシュ・ドクトリン―世界戦争計画に共同的=競合的に全力で対応しつつ、日帝自身が延命するために、自らの世界侵略戦争計画を実行していく決定的なステップとして有事立法攻撃に死活をかけている。そのためにイラク攻撃に協力し、次は米帝とともに北朝鮮(中国)侵略戦争を主体的に遂行しようとしているのだ。
 日帝はイラク攻撃に参戦するために、テロ対策特措法を再延長し(新テロ対策特措法も策動)、米帝の要請という形をとって、@米英だけでなくドイツ、フランス、カナダなどの艦船への給油作戦の拡大、AP3C哨戒機やイージス護衛艦の派兵に踏み切ろうとしている。これ自体が憲法第9条を解体し、対アフガニスタン・対イラクで集団的自衛権を発動する大攻撃だ。
 北朝鮮侵略戦争法案としての有事立法3法案と個人情報保護法案についても、小泉・山崎・中川(衆院国対委員長)を先頭に臨時国会での成立をあくまで追求している。そのために@武力攻撃事態の定義を2段階に変更して容易に「事態対処」が発動できるようにし、A武装不審船と大規模テロルを明示して対処するとし、さらにB10・29に「輪郭」が明らかになった国民保護法制では、有事体制下で国民に「協力」「支援」「通報」の義務を強制しようとしている。
 また改憲攻撃そのものとしての教育基本法改悪(中教審・中間報告素案)と、9条改憲への攻撃(衆院憲法調査会・中間報告素案)に踏み込んできている。
 さらに他方で小泉は、日朝交渉において、北朝鮮スターリン主義が戦後の日帝との戦争的関係の継続の中で反革命的反人民的政策として行った拉致問題を、核・ミサイル問題と結びつけて最大限あおり立て、それを口実・テコとして、北朝鮮侵略戦争への道を開こうとしている。また日朝交渉と一体で、米日韓を軸とした「核開発計画廃棄」要求の対北朝鮮の戦争重圧、包囲網を一気に激化させている。再び、米日帝は何十万、何百万の朝鮮人民を虐殺する侵略戦争をやろうとしているのだ。絶対に許すな。
 今こそ、排外主義を打破し、朝鮮人民・在日朝鮮人民と連帯し、米帝(国際帝)のイラク侵略戦争阻止、米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争反対、有事立法粉砕に総決起しよう。米帝ブッシュの世界戦争計画との対決を結合の環とし、イラク反戦と有事立法粉砕を一体で闘おう。

 第3章 恐慌・倒産・大失業強制する小泉と竹中

(6)11月労働者総決起の今ひとつの柱は、国鉄決戦への決起とその勝利を突破口として、日帝の一大資本攻勢、治安弾圧攻撃と闘いぬくことである。
 日帝経済の危機は、世界経済・米帝経済の29年型大恐慌への本格的突入情勢のもとで、デフレスパイラルと金融危機の一層の深刻化として分水嶺を越えようとしている。危機の反革命的突破のために小泉と竹中が「不良債権処理の加速策」として推進しようとする強硬路線は、銀行と与党の反対で一定後退した。だが竹中路線とは、一方で銀行に対して資産査定を厳格化し自己資本を充実化させ、公的資金再々注入も行って金融再編を進めること、他方で企業に対しては債権放棄などの金融支援で「再建」中の企業などはどしどし整理・淘汰(とうた)し、独占を強化することである。
 しかし独占と金融資本が延命するためのこうした政策は、倒産ラッシュを引き起こし、経済恐慌を再爆発させ、リストラ、大失業の嵐を不可避とする。一切を労働者に犠牲転嫁し、一部の大企業・大銀行が延命するための大攻撃である。今や労働者人民は生きるためには、「資本主義にノー」を突きつけ、資本攻勢との闘いに総決起しなければならない。
 資本攻勢の第一は、大失業である。9月の完全失業率は5カ月連続で5・4%、完全失業者数は18カ月連続で増加し365万人に達した。しかも男性の完全失業率は過去最悪の5・8%で、特に中高年の男性労働者がリストラ攻撃されている実態が浮き彫りとなっている。
 第二は賃下げ攻撃である。国税庁の調査でも民間労働者の平均給与は4年連続でダウン、特に昨年は年間7万円の減収で、下げ幅・率ともに過去最大であった。連合の春闘解体、ベア統一要求の放棄がこれを加速している。
 第三は、終身雇用制の解体と不安定雇用化である。これは95年の日経連「新時代の『日本的経営』」報告が本格的に打ち出したもので、一部の基幹的労働者、高度専門技術労働者以外の大多数の労働者を、パート、派遣、契約社員など不安定雇用化する大攻撃だ。これは首切り、賃下げ、団結破壊と一体のものである。
 第四は、アウトソーシング、業務の全面外注化の攻撃だ。JR東日本の「ニューフロンティア21」、郵政公社化と子会社化・業務委託化、NTTの大リストラがこの典型である。特にNTT型の攻撃はアウトソーシングで別会社(OS会社)に転籍させ、事実上の50歳定年制を強要し、同時に最大30%もの賃下げ攻撃が行われる。許しがたいことだ。
 第五は、労働法制改悪、商法や倒産法制の改悪と治安弾圧の強化であり、労働基本権・団結権を解体する攻撃である。
 第六は、戦後社会保障制度の解体、医療制度改悪、特に年金制度・企業年金制度を解体する攻撃である。
 だがこうした資本攻勢に対し連合、全労連、JR総連は全面屈服している。労働者は連帯し、団結し、転向と裏切りの指導部を打倒して、今こそ闘おう。国鉄決戦勝利を突破口に11月労働者総決起、03春闘への闘いで総反撃しよう。
 関西生コン、港合同、動労千葉の3労組の呼びかけにこたえ、11・10全国労働者総決起集会への大合流をかちとろう。
 全世界の労働者階級、被抑圧民族人民と連帯し、米帝の世界戦争計画粉砕、イラク侵略戦争反対、有事立法粉砕の大闘争に総決起しよう。

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週刊『前進』(2077号2面1)

組合員売り渡し許さぬ 国労本部を徹底追及 居直る高嶋委員長らに怒り

 10月28日、検察庁は10月7日に不当逮捕されていた国労組合員5人と支援1人を起訴する暴挙に踏み切った。他方、支援者2人は不起訴で釈放された。
 翌29日早朝には、西日本エリアの国労組合員2人が新たに不当逮捕された。これは、10月7日に逮捕された8人の仲間が、「国労運動をもうやめろ」「国鉄闘争にかかわるな」という警察・検察の執拗(しつよう)な転向強要に屈せず、完全黙秘を貫き闘い抜いたことへの報復だ。
 弾圧の口実とされた「暴力行為」など存在しなかったことは、権力が支援者2人を釈放せざるを得なかったことにも明らかだ。だが、権力はやみくもに弾圧を拡大することで国労と国鉄闘争を破壊しようとたくらんでいる。
 5・27臨大で、闘争団の除名を決めようとしていた国労本部に対し、説得活動を行った組合員の行動は正当な組合活動だ。逮捕・起訴されなければならない理由など何ひとつない。権力がこの弾圧を強行したのは、ひとえに国労本部と東京地本が組合員を売り渡したからにほかならない。
 29日、国労組合員と支援は、弾圧の拡大と起訴に対する抑えきれない怒りを燃え立たせて、国労本部への要請行動を行った。
 午前9時すぎ、国労組合員が国労本部に乗り込んだ。高嶋委員長、田中副委員長、大西執行委員が在室している。いずれも、チャレンジや反動革同の頭目として4党合意路線を突っ走り、それが破産するや組合員を権力に売り渡した唾棄(だき)すべきやからだ。
 組合員の姿を見るなり、彼らは一様に表情をひきつらせた。組合員が要請に来た旨を伝えると、高嶋はこれみよがしにソファーの上にふんぞり返った。自らが犯した階級的犯罪を追及されることにおびえながら、精一杯、虚勢を張るしかないのだ。
 組合員が「国労中央執行委員会として、国労組合員の不当逮捕に対する抗議声明を出してほしい」と理路整然と訴えた。だが、高嶋は「逮捕は機関の指示に基づく行動の中で起こったことではない。本部とは関係ない」と言い放った。今、現に組合員が獄中にとらわれている時に、これが組合執行部の吐く言葉か! しかも彼らは、4党合意賛成派の組合員を警察の事情聴取に応じさせ、「被害届」を出させた張本人なのだ。
 こみ上げる怒りを抑えながら、国労組合員はさらに言葉を重ねた。「被害者とされる警備係がお茶の水のホテルに泊まっていたのは機関の指示なのか。誰がそんな指示を出したのか」。これにも高嶋は、「準備地本でなければ分からない」としらを切った。賛成派を私的に集め、警備に当たらせていたことは徹底的に隠そうというのだ。
 組合員らは、あくまでも本部による抗議声明の発出を求め、「大会方針をめぐり、組合員同士が説得し合うのは当たり前の組合活動だ。そこに警察が介入することは不当だと考えないのか。法廷で組合員が組合員を『私を殴ったのはこの人です』などと名指ししなければならない事態が進んでいるのに、本部として何もしないのか」と厳しくただした。
 だが高嶋は「その時の状況が分からないから対応できない」と居直るだけだ。
 不当逮捕された闘争団員らの家族は、本部に「弾圧に加担するな」との要請書を出している。組合員は、この要請に誠実に対応するよう高嶋に要求した。だが、高嶋らは話も半ばに席を立って逃げ去った。
 夫や父親を獄中に奪われた家族の悲しみと怒りさえ無視するのか! 本部の卑劣な対応は、組合員の怒りを一層かき立てた。
 正午すぎ、国労組合員と支援は本部前で執行部に対する怒りのシュプレヒコールをたたきつけた。支援の労働者が、宣伝カーから「仲間を売り渡した国労本部は恥を知りなさい」と鋭い弾劾の声を突き刺した。

 起訴弾劾して記者会見開く

 国労本部前では、6人の起訴と2人の新たな逮捕を弾劾する記者会見が引き続いて行われた。急きょ駆けつけた佐藤昭夫弁護士が、この弾圧は団結権を保障し、労働組合の刑事免責を認めた憲法と労組法を踏みにじるものであることを全面的に解き明かした。
 集まった記者からは、「被疑事実とされる暴行は本当にあったのか」という質問が出た。だが、組合員が、賛成派の警備係の方が多数であり、説得のために立ち並んでいた被逮捕者らの人垣を突破しようと彼らの方から突っ込んできたことがもみ合いの原因であったことを説明すると、記者たちは真剣に耳を傾けた。
 国労組合員が、「組合内部のできごとに警察が介入したことなど今までなかった。分割・民営化の時も、意見対立の中で背広が破られるほどの激しいもみ合いはあったが、それで組合員が逮捕されたことなどない」と語ると、記者たちは一様にうなずきあった。佐藤弁護士は、警察が被逮捕者が国労組合員である事実を伏せていたことを挙げ、「警察の発表をうのみにせず、事実を正しく報道していただきたい」と訴えた。

 権力の手先を延命させるな

 弾圧への怒りは、国労と国鉄闘争支援陣形の中に奥深く広がっている。国労本部の高嶋、寺内、田中、久保、大西や東京地本の酒田らが警察のあやつり人形と化したことは赤裸々に暴かれた。組合員を売り渡した階級的犯罪によって墓穴を掘ったのは彼らの側だ。
 次期大会で腐りきった執行部を打倒せよ。不当逮捕された8人の仲間の即時釈放をかちとろう。弾圧を打ち砕く一大裁判闘争で、無罪奪還をかちとろう。

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週刊『前進』(2077号2面2)

盛大に団結まつり 国労・全動労・動労千葉が決意 1047名の解雇撤回へ

 10月27日、「STOP!戦争と首切り 10・27団結まつり」(同実行委員会主催)が東京・亀戸中央公園で開かれた。「1047名の不当解雇撤回! 国鉄闘争に勝利する共闘会議」と「レイバーネット日本」が協賛。秋晴れのもと、百以上の出店と1万人の参加者でにぎわった。
 国鉄闘争開始以来16回目の団結まつりで初めて、1047名の当事者である国労、全動労、動労千葉の被解雇者がそろって決意表明した。3人がステージに並ぶと「頑張れ!」と大きな声援と拍手が起こった。
 闘う国労闘争団は、「労働者は永遠に不滅だ。労働者が人らしく生きられる社会をめざさなければならない」と述べ、「一日も早い解決のために、いろんな団体の集まりの中で解決をめざしたい。解決の明るい兆しを生かそう。(相手は)国家権力です」と訴えた。
 全動労争議団は、24日の全動労JR採用差別事件の東京高裁判決について「JRの使用者責任を認めながら、全動労組合員が抵抗闘争を行ったことで、JRへの採用順位が低く見られてもやむを得ない、不当労働行為がなかったという結論だ。不当判決を許すわけにはいかない」と弾劾し、「政府・JRの責任でJR職場に戻させる」と語った。
 動労千葉争議団は「4党合意は破産し、1047名をつぶすことはできなかった。われわれが攻める番だ。首を切られた仲間はひとつだ。動労千葉は、02春闘で4日間のストを闘い、検修の外注化提案を阻止した。闘えば必ず展望は開ける」と意気高く訴え、「1047名闘争は、大失業と戦争の時代に対決し、闘う労働運動の再生をめざす、その先頭に立たなければならない。11・10労働者集会に結集を」と呼びかけた。
 主催者を代表して開会あいさつした共闘会議の二瓶久勝議長は「1047名の不当解雇撤回」の意味を「解雇者が団結する。組合的にも社会的にも大同団結を図ることだ」と強調。共闘会議がJR・政府に解雇撤回を迫ると訴えた。
 鉄建公団訴訟原告団は「白昼公然と行われた不当労働行為の責任を追及し、勝利をつかみとる日まで頑張る」と決意表明した。
 また、海外ゲストの訴えが注目を集めた。
 レイバーネット米国創設者のスティーブ・ゼルツアーさんは、ILWU(国際港湾倉庫労働組合)へのブッシュ政権の組合つぶしや、イラクへの戦争に対して、国際的な団結で闘うことを訴えた。
 韓国からは鉄道労組被解雇者とサンミ特殊鋼被解雇者の2人が、1047名の解雇撤回闘争への熱い連帯を表明し、「万国の労働者が団結しない限り新自由主義には対抗できない」「国際連帯闘争万歳!」と訴えた。

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週刊『前進』(2077号2面3)

動労千葉冬季物販に全力を 「闘う団結」の力訴えよう

 動労千葉は、02年冬季物販闘争を10月中旬から開始し、執行部を先頭に全組合員が全国を回り、動労千葉の闘いと物販闘争を訴えている。国鉄闘争が新たな局面に入っている中で、動労千葉の物販闘争の位置づけをあらためて明確にして、すべての職場を訪問し訴えよう。
 動労千葉は9月22日、全国物販担当者会議を開催し、取り組みの総括と方針について確認した。
 第一は、動労千葉の闘いから学びつくし、その闘いを具体的に全力で訴えることである。物販闘争の勝利は、動労千葉の組合員が労働者として誇りを持って生き生きと闘いぬいている姿を、どれだけ具体的に訴えられるかにかかっている。「闘う団結」の中に労働者の生きる道があることを全力で訴えよう。
 同時に、動労千葉の02春闘「3カ月決戦」―72時間ストライキを生き生きと訴えよう。動労千葉は1047名解雇撤回闘争を、JR資本とストライキで闘いぬき、第2の分割・民営化攻撃である保守部門の全面外注化を阻止している。動労千葉のように闘えば勝利できることを示している。
 第二は、国家的不当労働行為と国鉄労働運動解体の4党合意を、1047名を先頭とした闘いでついに破綻(はたん)に追い込み、前進していることを訴えよう。動労千葉の闘いは、その原動力となっている。そして国労闘争団、全動労争議団、動労千葉争議団が一体となって1047名の統一した闘いが新たに開始されている。
 その闘いに追いつめられた国家権力は、国労本部一部反動分子をそそのかし、国労闘争団員・組合員を不当逮捕するという団結権侵害の暴挙に打って出てきた。この国鉄労働運動に加えられた不当弾圧を全力で粉砕しよう。
 第三に、国鉄闘争支援の闘いは大失業との闘いであることを全力で訴えよう。
 今すべての労働者に倒産、首切り、賃下げ、諸権利はく奪の攻撃が襲いかかっている。年功制賃金と終身雇用制、そして年金―戦後社会保障制度が解体され、全労働者が失業と不安定雇用化に追い込まれる。まさに「闘わなければ生きていけない時代」に入っている。その焦点になっているのがNTT型と言われる攻撃である。NTTの11万人削減攻撃とは、50歳定年、転籍、賃金3割カットという大攻撃である。今この攻撃が全産業に吹き荒れている。それは失業者を膨大に生み出し、同時に不安定雇用労働者になることを強制するものだ。
 この攻撃と真っ正面から闘っているのが1047名解雇撤回闘争である。国鉄闘争の未来と全労働者の未来は一体なのである。
 第四は、イラク侵略戦争反対、有事立法阻止の反戦闘争への決起を全力で訴えよう。
 今、世界各地でイラク戦争反対の闘いが巻き起こっている。アメリカでは10月26日、ワシントン20万人デモを中心に全米で数十万人がデモに立ち上がった。イギリスでは9月に40万人デモが闘いぬかれた。ドイツ、イタリアでも反戦デモに立ち上がっている。「アメリカの言いなりにならないのは許さない」と民族皆殺し戦争に踏みきっているブッシュ政権に対し、世界各地で怒りの決起が巻き起こっている。世界各地の反戦闘争、イスラム諸国人民と連帯して立ち上がろう。
 有事立法は、労働者を侵略戦争に動員する攻撃である。小泉政権は、北朝鮮の拉致問題を口実に利用し、北朝鮮敵視の攻撃をかけてきている。「もの言えばくちびるさむし」の、真実や正しいことが言えない状況をつくり出し、その先に有事立法、改憲、侵略戦争を強行しようとしているのである。今臨時国会で、有事立法を廃案に追い込もう。
 11・10全国労働者総決起集会への大結集の訴えと結合し、動労千葉冬季物販闘争に総決起しよう。すべての職場に入り、動労千葉の闘い、1047名解雇撤回闘争を全力で訴えよう。

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週刊『前進』(2077号2面4)

国鉄闘争 3労組が登壇 東京西部のつどいに400人

 10月17日、中野ゼロ小ホールで「1047名の解雇撤回をめざす東京西部のつどい」が400人の結集で大成功した。百数十の団体・労組、個人の賛同のもとで、7月に行われた『人らしく生きよう』上映会の感動的成功を引き継いで、さらに発展させたものだ。
 集会のハイライトは、国労闘争団、全動労争議団、動労千葉争議団の3者が壇上に並んだ決意表明だ(写真)。「日本で初の国鉄闘争当該3労組の解雇者がそろった集会だ」と確認され、誇らしげに紹介した。国鉄闘争が「1047名闘争」というかたちで新たな出発を始めていることに、当該も、地域の労組部隊も、興奮して意気が高い。
 国労旭川闘争団は「相手は国家権力だ。生半可な闘いではない。一歩も引かずに闘う」と宣言した。全動労争議団は「国家的不当労働行為との闘いを1047名がひとつになって闘おう」と訴えた。動労千葉争議団は「動労千葉は、JRの中で闘い続け、今春のストと非協力闘争で、唯一外注化を阻止して、胸を張って闘い続けている。社会の変革が必要な情勢になっており、11・10日比谷集会に是非参加してほしい」と呼びかけた。3闘争団・争議団への拍手は特に大きかった。
 ジャーナリストの立山学さんが「国鉄分割・民営化15年は労働者・国民に何をもたらせたか」と題して、北海道の天北線(音威子府〜浜頓別〜南稚内間、89年4月廃線)の地域を歩いたルポを軸に、分割・民営化と今日の小泉構造改革を批判。また、特殊法人労連から、民営化攻撃の最先端で、特殊法人行革との闘いの報告と決意が明らかにされた。
 東京西部の各地域の労組役員が、開会、閉会、決議などを担った。ロビーでは物販やビデオ、書籍の売店が置かれ、参加した労組員たちもみな明るい。総評解体で分断された地域の労組・労働者が、1047名闘争をとおして、今再び大同団結を始めた。
 国鉄分割・民営化の狙いである国労―総評解体に対し、15年の闘いを経て、国労本部の屈服をのりこえて、闘争団・争議団を始め、闘う労働組合のネットワークの展望がいよいよ見えてきた。「人らしく生きる」ためには、団結して闘う以外ない。
 この日の集会には、10・7弾圧で不当逮捕された国労組合員の家族も、勾留理由開示公判を闘った後にかけつけ、弾圧のでたらめさを切々と訴えた。
 追いつめられているのは、権力・資本やJR総連であり、国労本部チャレンジ・反動革同たちだ。労働者は労組の上部団体が違っても、合流できるし、しなければ闘えない時代に入った。そうしたことを実感した集会だった。
 (投稿/N)

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週刊『前進』(2077号2面5)

国労の誇りかけ (8) ●インタビュー 国労闘争団
 筋を曲げなければ多数派に
 戦争・失業の時代に人として生き闘う国労を
  九州H闘争団 Bさん

 国労再生に恐怖

 ――定期大会に向けて、10・7弾圧がありました。
 B 今回の大会で4党合意を破棄して闘う方針を確立し、闘う国労の再生をかちとることに恐怖した政府・権力、それと自民党にひざまずいた4党合意推進派が一体になってしかけたデッチあげ弾圧です。
 そもそも5・27臨大は与党3党声明を受けて、裁判の取り下ろしと闘争団員を統制処分することを決定した大会です。闘争団員が要請や説得行動を行うのは当たり前です。僕らは解雇されているのですから。
 戦争と大失業の時代に、僕らが21世紀労働運動の荒々しい時代を切り開く、その瞬間での大弾圧だと思います。だからこそ、「人として生き闘う国労」を僕らの手でつくり出したいと思います。

不正選挙明らか

 ――そういう中で代議員選が行われましたが、九州では不正選挙があったと聞いています。
 B 1票差で反対派が落選ということだから、おかしいと思います。ある地区本部では実際の棄権票と選管の発表が違っているそうです。不正は明らかです。九州本部の賛成派執行部が関与していることは間違いないと思いますね。
 ――九州では、賛成派の闘争団が多いといわれていましたが。
 B 僕の地区では、賛成派と反対派の力が拮抗(きっこう)し、平場での論議になっている。「宮坂補強案」や「改革法承認」の時は僕だけが反対する状況だった。それがひっくり返るのは4党合意以降ですね。賛成派の執行部は「同時並行」だとか「解決案が出る」とか言う。だけど7・1臨大で解決案が出ず、臨大が吹っ飛ぶ。それから平場で激論が始まりました。
 地区本部が大会報告集会をやったのですが、糾弾集会でした。僕らの写真が張られて「これが臨時大会をつぶした連中だ」と。異様な雰囲気の中で、「責任をとれ」「暴力はひどい」とつるし上げる。大会の最後まで残っていたのは僕だけだったのに、大会にいなかった人も糾弾された。「反対派にいること自体がダメ。その場にいたか、いないかではない」と、袋だたきです。
 それから、反対派のグループができます。
 ――5・27臨大後の状況はどうですか。

 排除策動を粉砕

 B 臨大の後、7月に地区の闘争団の全員集会がありました。
 鉄建公団訴訟と最高裁第三者訴訟参加に名前が挙がっている闘争団員は5月から生活援助金を止められました。就労して得た賃金を納めて貸付金を受け取るプール制をとっていますが、2万5千円を減額されたら生活できないから、僕らはプール制を凍結することにした。しかし、カットされた貸付金よりも就労賃金が低い団員は、生活するためにプール制に残った。それに対して、賛成派は「安い賃金しか上げないのに、よけい出さなければいけない。反対派と一緒にプール制を組むことはできない」と言う。
 それで集会を「総会」に格上げして、反対派の全員をプール制から排除しようとしたわけです。それと、査問委員会への送致を前に、反対派の「罪状」を決めようとした。賛成派は「起訴状」を肉付けするような発言をする。「団結を破壊している」「解決の妨害をしている」「プール制度を破壊した」と。「裁判をするなら国労から出ていけ」とまで言う。しかし、何の規則もないから決定できるわけがない。
 僕らは激しく抗議し、発言の半数は反対意見です。執行部は「提案どおり集約する」と言う。だけと「総会」をデッチあげようとした不正義に対する怒りの前に、最終的に「総会は取り消す」と言わせ、完全に粉砕しました。賛成派も、自信をもって「解決できる」と言えるのは誰もいない。
 ――賛成派の人たちに言いたいことは。
 B 労働者の魂を売り飛ばし、自分の人生を自分で捨てる、そんな生き方をしていいのか。限りなくゼロに近い内容で解決しても生きていけないではないか。
 自民党は、国労の「こ」の字も残らないように、跡形もなく粉みじんに吹き飛ばしたい。反対派も賛成派も全部つぶすということです。「自分が悪うございました」と言っても許さない。やっぱりこれじゃあ認められないと思う。
 反対派は、みんな根性のある人たちです。活動家の数では反対派の方が多い。いつ多数派になってもおかしくない陣形です。
 僕がひとりで頑張っている時から、一挙に大転換です。やっぱり正しいことを正しいと言い続けることが重要だなと思っています。
 ただ、財政はきつい。闘争費も必要だし、助け合って共同体を運営していかなければならない。新しい組合をつくるぐらいエネルギーがいるんです。もう一回組織性をつくり直さなければいけないから。
 ――大会に向けては。
 B 九州で、もっと反対派を増やしたいですね。反対派として出られない団もあります。やっぱり、統制処分の問題は重いです。兵糧攻めもそうだけど、除名されたら、今まで生きてきた場所がなくなる。そういう中で鉄建公団訴訟に参加した。みんな清水の舞台から飛び降りるような決断だったんじゃないかな。
 今度の大会は結局、何も出ない中で闘争団を切るためだけの大会にしようとしている。それが組合の論理として通用するのか。
 有事法案が出され、リストラで多くの労働者が路頭に放り出されている。この時代に人として生きるためには闘うしかない。
 反対派として国労の旗を守ろうという人たちが出てきている。われわれが筋を曲げなければ必ず多数派になる。決定的な転換点が訪れたという気がします。

 ◎取材メモ
 九州では、闘争団の中で賛成、反対が激しくぶつかり合っている団が多い。その中でBさんたちは「われわれこそ国労なのだ。主流派なのだ」と踏ん張ってきた。その苦闘が花開く時は近い。このインタビューをまとめた後に10・7弾圧での起訴の報が入ったが、その確信は揺るがない。
 (聞き手/本紙・大沢康)

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週刊『前進』(2077号3面1)

マイナス人勧実施阻止、02春闘・有事立法決戦へ 今こそ自治労運動の新潮流を

 02秋季闘争は、公務員労働者に対するマイナス人勧を粉砕する一大決戦である。それは連合の賃下げ容認の「春闘方針」と対決し、官民一体となった03春闘への突撃路を開く闘いだ。11月19日に2時間のストライキを構えて闘われる都労連闘争(別掲)を先頭に、02秋闘に総決起しよう。今秋は同時に、イラク反戦・有事立法阻止闘争、国鉄1047名闘争の決戦の時である。自治体労働者はそれらの統一行動の先頭に立ち、11月労働者集会に大合流しよう。8月の自治労全国大会をもって開始した「1年間決戦」を闘おう。

 賃下げと公務員制度改革に正面対決を

 小泉内閣は9月27日、一般職国家公務員の給与について、1948年の人事院勧告制度創設以来、初のマイナス勧告の完全実施を決定した。また退職手当を引き下げるために次期通常国会に関係法の改正案を提出することを決定した。併せて「行財政改革を引き続き積極的に推進し、総額人件費を極力抑制する」との政府談話を発表した。
 勧告は、月額2・03%、7770円引き下げの俸給表改定に踏み切るほかに、一時金0・05カ月、扶養手当、退職手当など年間で平均2・3%の引き下げとなる。これは約2%といわれる定期昇給分をのみこみ、戦後初めての実質賃下げだ。(政令指定都市や都道府県の人事委員会も、月額2・06−1・68%、平均7997円引き下げ、年収15万4246円の減額を勧告した)
 さらにその実施にあたっては、4月からの年間給与で実質的な均衡が図られるように、12月の期末手当で4月まで遡(さかのぼ)る減額調整措置を打ち出した。なんとしても総額人件費を削減するための許しがたい方策である。
 かくして従来の「人勧完全実施」方針は、組合自らが賃下げを要求する、破綻(はたん)的事態となる。
 自治労、日教組など連合系労組の公務員連絡会は、同日に声明を発表し、「極めて遺憾だが、民間の実勢を正確に反映したものであれば受け止めざるを得ない」と容認した。ただか細く減額調整措置については反対すると言うのみである。ここに従来の人勧完全実施路線は終焉(しゅうえん)したのだ。公務員制度改革と全面的に対決することなしに、この攻撃を打破することはできない。
 1948年、マッカーサー書簡に基づき芦田内閣が公布、施行した政令201号によって、公務員の団交権、争議権がはく奪された。国家公務員法が改悪され、公労法が公布され、代償措置として人事院勧告が制度化されたのだ。戦後階級闘争の敗北の結果とはいえ、人勧体制打破・スト権奪還こそ公務員労働者の向かうべき道だった。だが、今や人勧にぶら下がらなければ賃闘もできない状態になっている。その行き着いた先が、組合が自ら賃下げを要求するというていたらくである。
 そもそも官民較差是正・不利益不遡及(そきゅう)の原則からすれば、人事院は勧告する必要はまったくない。本来なら今や公務員ゼネストを対置して闘う情勢なのだ。
 しかし、自治労は人勧制度など公務員制度改革攻撃に対して対案路線に走っている。人事院制度解体が図られている時、これと闘わずしての対案はあらかじめの敗北路線だ。労使の直接交渉というが、これは産別中央としての指導責任の放棄であり、「全国一律・統一賃上げ要求」方針の放棄である。

 イラク反戦と国鉄闘争貫き自治労再生へ

 闘いの方針は何か。
 第一に、イラク反戦・有事法制阻止闘争を全力で闘うことである。与党は10月25日、有事関連法案の修正案をまとめた。修正に応じようとする連合5・16見解をぶっとばし、有事法制廃案へ組合機関丸ごとの決起を実現しよう。戦後最大最高の政治決戦を爆発させよう。
 自治労全国大会では、「有事立法廃案」への闘いの声がわき上がった。この自治体労働者の叫びは、人勧制度などの公務員制度改革攻撃と対決し、粉砕する闘いと結びつき、大きなうねりとなろうとしている。
 第二に、02秋闘=03春闘への決起である。
 連合は10月3日の中央委員会で「03年春闘基本構想案」を提案し、統一要求を放棄し、“雇用”一本に特化した方針を打ち出した。賃下げを公然と容認したのである。02秋闘は03春闘そのものとして、連合の賃下げ春闘方針と全面的に対決して闘わねばならない。賃下げ勧告実施を阻止せよ!
 第三に、公務員制度改革攻撃との闘いである。一つは、公務員制度改革大綱に基づく改正法案の次期通常国会への提出阻止である。反対署名1046万筆、特に自治労518万筆という事実は、自治体労働者が先頭で闘いを切り開く責務があることを鮮明にさせた。
 二つは、公務員制度改革は戦争国家体制づくりに攻撃の核心があることを見抜き、住民基本台帳ネットワークシステム、国民保護法制、市町村合併による自治体の戦争体制づくりを粉砕することである。
 三つは、激しい行革リストラとの闘いである。業務委託、公設民営化や民間委託など多様な形態をとった現業切り捨て攻撃を、委託労働者との共闘で闘おう。
 公務員制度改革は、首切り・賃下げ・不安定雇用化の日経連路線を全労働者に拡大していく攻撃だ。全労働者への資本攻勢の激化を許さず闘い抜こう。
 差別・分断で団結を破壊しようとする成績主義、業績主義の導入を阻止しよう。市町村合併は大リストラ攻撃である。これとの闘いを強化しよう。
 四つに、特に石原都政との対決は決戦だ。清掃の区移管、交通、水道の業務委託、石原「人事白書」路線、時間内組合活動の制限(「ながら」条例廃止)と激突し、都労連ストに合流して闘おう。
 第四に、連合・自治労との対決を鮮明にさせ、新潮流を形成することだ。
 一つは、自治労中央の不正経理問題で暴かれた腐敗構造をえぐり出し、闘う自治労再生へ闘うことだ。定期大会で義救金30億円の社会的貢献への転用は阻止したものの、依然としてカネで解決しようとする体質は変わらない。自治労再生へ、来夏の大会での自治労新綱領「21世紀宣言」採択阻止の陣形を形成しよう。
 二つは、国鉄闘争の陣形を拡大することだ。4党合意路線の破産のもとで、国労闘争団、全動労争議団、動労千葉争議団の1047名の支援陣形を強化することは新潮流形成の環だ。
 三つは、最後の社民=平和フォーラム運動を批判しつつ、陸・海・空・港湾労組20団体のような大統一戦線に合流し、イラク反戦・有事法制阻止を労働運動として闘うことである。
 四つに、一切合切を当面、11月労働者集会へ集約しよう。国鉄決戦の水路、行革リストラと闘う水路、有事立法に反対する署名運動や統一戦線の水路など、一切を集約して5千人結集を実現しよう。

 1年間決戦へ連合指導部の打倒を鮮明に

 「9・11」によって世界は変わった。戦後55年にわたった階級関係は一変した。世界戦争の過程に突入し、世界恐慌は指呼の間にある。こうした認識に立った時、連合が5・16見解で有事法制に賛成したことに戦慄(せんりつ)し、なんとしても打ち破ることが問われた。特に、連合見解を主導的にまとめた自治労中央と徹底対決することが求められたのだ。
 われわれは有事立法阻止闘争や国鉄闘争において創造的で根底的な統一行動へ、連合見解や連合の制動をはねのけて結集する方針を強力に打ち立てた。この過程は文字どおり連合指導部打倒の旗幟(きし)を鮮明にさせて、自己変革的に組合内で自分を確立・再確立する闘いであった。
 自治体労働者委員会は、@プロレタリア革命運動の基軸的一環として、A6千万労働者階級全体を対象とした階級的団結の強化と拡大、B労働組合の防衛と階級的再生の闘い、Cファシスト労働運動、帝国主義的労働運動、スターリン主義労働運動との党派闘争をとおして階級的労働運動の戦略的拠点を形成し、拠点職場を守り抜くことを鮮明にさせた。
 組織のあり方を変革し、「1年間決戦」としてこの情勢に立ち向かう。
 〔マル青労同自治体労働者委員会〕

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週刊『前進』(2077号3面2)

都労連11・19ストへ 石原の「人事白書」路線と対決 「ダブル削減」攻撃許すな

 10月3日、東京都人事委員会は月額1・64%引き下げを勧告した。特別区人事委員会も同日、同様のマイナス勧告を出した。これに対して都労連は11月19日の2時間ストライキを配置して闘う方針を決定した。いよいよ都労連秋季賃金確定闘争の本番が到来した。
 今秋闘は、マイナス人勧と業績主義・成績主義導入との全面対決である。
 従来の「人勧完全実施」路線では秋闘は成立しない。人勧に依拠したあり方ときっぱり決別して、「人勧制度打破」の立場で闘うことが問われている。
 都当局は、都労連との交渉において、削減する前の給料表を基準にして、マイナス人勧を適用しようとしている。そのまま実施されれば「ダブル削減」となる。4%の時限的削減措置で平均1万4000円削減され、今回のマイナス人勧で平均7400円削減、合わせて2万1000円前後の削減となる。また、一時金も大幅削減となる。さらに、給料表改定によって退職金、年金も削減される。
 このとんでもない内容のマイナス人勧に都の労働者の怒りは爆発している。この怒りを闘いへと転化するために、「マイナス人勧粉砕―人勧体制打破、ダブル削減粉砕―4%削減撤回、4%削減延長阻止」を真正面から掲げて闘いぬこう。
 また、マイナス人勧と一体となった「級格付けの見直し」「定期昇給の見直し」の攻撃との全面的な激突となる。都当局は、業績評価がD、Eの下位において12月から15月に3カ月定昇を遅らせる改悪案を出している。これまで横一線であった都労連の給料表を根本から破壊して、業績主義・能力主義を定期昇給に導入しようとする攻撃である。これを認めたら、昇給をエサに組合の中に分断が持ち込まれ、組織はガタガタにされる。労働者同士がお互いに競争し合うことによって、結局「総額人件費の抑制」すなわち全体としての賃下げになるのだ。絶対に認められない。
 これは、教組における主幹制度導入や、現業部門において助役を配置して本体業務を外注化する攻撃と一体となった、組合つぶしの攻撃である。
 しかも許しがたいことに、今回のマイナス人勧は、都当局が8月に出した「人事制度白書U」の内容をことごとく反映している。それは「総額人件費の削減」「業績主義・成績主義導入」を車の両輪として、人事給与制度の改革をテコに大幅な職員定数削減と大幅賃下げを狙った極悪の反労働者的白書である。これが拍車をかけて、都の各部局は職場実態をまったく無視した定数削減計画を労働者に押しつけ、「都政リストラ」を推進しようとしている。

 4%削減延長の徹底総括を

 では、今秋闘をいかなる立場で闘うべきなのか。
 第一に、昨秋闘でいったん4%賃金カットの延長を当局に断念させながら、都議会の介入によって「労使合意」が白紙となり、1年延長を受け入れざるを得なかったことを徹底的に総括することである。
 「時間内組合活動」の労使協定・「ながら条例」をめぐって都議会の介入が問題となっており、予断を許さない。また、4%削減は来年7月までとされているが、来年もまた都議会が削減延長を求めてくることも大いにあり得る。
 今回の事態を単に「都議会の介入」として総括するならば、再び同じ轍(てつ)を踏むことになる。「都議会介入」という攻撃を、55年体制の戦後的な労働者支配が終わりを告げた事態ととらえる時代認識に立つことなしに、いかなる方針も成り立たない。9・11をもって、有事立法攻撃と終身雇用制解体攻撃の時代に突入したのだ。
 有事立法下の労働運動という時代認識に立ち、原則的に職場の団結を打ち固めて、労使交渉の破壊を許さない力関係をもう一度つくり直そう。闘う方針が提起されるならば、現場の労働者は必ず立ち上がる。問題はひとえに指導部にかかっている。
 第二に、03春闘を切り開く闘いとして、市町村、さらに民間労働者とも連帯して今秋闘を闘うことだ。
 都・区の人勧は、直ちに市町村の人事委勧告に波及する。また都の外郭団体を始め、関連する民間中小の給料表も都・区に準拠する。都・区の秋闘が03春闘相場を左右するのだ。都労連がマイナス人勧を許せば、それが堤防決壊となりかねない。逆に、粉砕すれば、それは03春闘の反転攻勢ののろしとなるのだ。
 自治体における民託化−民営化攻撃は、日経連の賃金破壊・雇用破壊・総額人件費抑制と社会保障制度解体の路線を激しく促進するものだ。これと徹底して闘わなければならない。
 政府・当局が「公務員はまだ民間に比べて甘い」とか「民間並みの効率化を」と唱えて公務員労働者と民間労働者の間に分断を持ち込み、公務員労働者と都労連の闘いを圧殺しようとする策動を打ち破ろう。国鉄闘争と有事立法阻止闘争を基軸に、産別を越えた固い団結を打ち固めよう。
 03春闘を切り開く労働者の総決起の場として、都の労働者は、11月労働者集会に総決起しよう。その力で11・19ストを貫徹しよう。

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週刊『前進』(2077号3面3)

資本攻勢うち破れ 11月労働者総決起へ 第4回

 「解雇ルールの明確化」 労働基準法改悪を狙う

 有期労働契約の拡大も

 11月労働者総決起へ、残された数日を全力で闘い抜こう。10・7国労弾圧を粉砕し、労働者の怒りの決起をつくり出そう。
 日帝は、終身雇用制解体を軸に労働者を不安定雇用に投げ込み、大幅に賃金を切り下げる一大資本攻勢を強めている。これを法制面から推し進めるため、小泉は来年冒頭の通常国会に労働基準法改悪案を提出する方針だ。その柱は、「解雇ルールの明確化」と有期労働契約の拡大だ。これらは大多数の労働者を有期雇用すなわち不安定雇用に突き落とし、資本に首切りの自由を与えるものとなる。
 今日すでに、パート、アルバイト、契約社員、派遣などの非正規雇用労働者は1407万人、全労働者の28・5%を占めるに至った。特に女性労働者のうち非正規雇用の割合は48・2%に達する。また、非農業雇用者のうち臨時雇い・日雇いなど有期契約で雇われている労働者は12・6%に上る。常雇いの労働者は一貫して減少する一方で、臨時・日雇い労働者は増え続けている。労基法改悪は、こうした不安定雇用化の流れを一挙に加速する。
 今年6月、小泉政権は総合規制改革会議の「中間とりまとめ」で、「解雇の基準やルールについて立法で明示する。解雇の際の救済手段として『金銭賠償方式』を検討する」と打ち出した。その具体化に向け、厚生労働省は労基法改悪案の策定作業を進めている。その主な内容は、表に掲げたとおりである。
 中でも「解雇ルールの明確化」と称して、就業規則に「雇用終了の条件」を明示させるとしたことは大変な意味を持つ。労基法は、賃金、労働時間などの労働条件明示を資本に義務づけている。これは労働者の権利を守るためのものだ。だが、「雇用終了の条件」明示は、労働者の闘いから資本を守るものになる。
 それは、解雇というこれまでの概念を抹殺するに等しい。解雇とは、資本の側の一方的な意思表示による労働契約の打ち切りだ。だが、就業規則に「雇用終了の条件」が明記されれば、あらゆる解雇は“労働者も納得した上でのこと”とされかねない。さらに、「解雇には正当な理由が必要」と労基法に明記することで逆に、解雇の「必要性」を大幅に認めようとしているのだ。また、裁判で解雇が不当とされた場合でも涙金の「金銭賠償」でことを済ませ、職場復帰は絶対に認めないというのである。
 有期労働契約の上限延長も、「解雇ルールの明確化」と完全に連動している。「雇用終了の条件」を最も単純な形で示したものこそ有期労働契約だ。
 日帝は、有期契約の上限延長をとおして、今なお大部分の労働者が期間の定めのない労働契約のもとにある現状を覆そうと企てている。アウトソーシングによる解雇−選別再雇用の攻撃が吹き荒れる中で、大半の労働者が有期雇用にされかねないのだ。そして、雇用期間満了に伴う雇い止め解雇は労働契約に基づく当然の処遇とされ、整理解雇4要件などの解雇規制は投げ捨てられようとしている。
 だが、労基法改悪の背後にあるのは、激発する解雇撤回闘争への恐怖である。どんなに法体系を改悪しようと、労働者の人間的怒りに根ざす闘いを根絶することなど絶対にできない。横暴極まる資本の解雇攻撃に対して労働者が団結して闘えば、必ずそれを破産に追い込むことはできるのだ。
 ここでの攻防こそが、法改悪そのものをも打ち破る最大の戦場なのである。

 国鉄闘争軸に反撃せよ

 国鉄闘争の不屈の発展は、このことをはっきりと指し示している。
 10・7国労弾圧に続き、国家権力は国鉄闘争への憎悪もむき出しに、新たな攻撃を加えてきた。10月24日、東京高裁は全動労JR採用差別事件で、中労委の救済命令を取り消す反動判決を下した。
 それは、採用手続きに不当労働行為があればその責任はJRに及ぶとしながらも、国鉄によって不当労働行為が行われたという事実さえ否定する、これまでにない極反動判決である。
 判決は、国鉄分割・民営化反対の行動によって全動労組合員が劣位に評価され、採用候補者に選定されなかったことは、「国鉄の再建という当時の特別な状況下における労働者の団結権の保障と企業の採用の自由との調和点として、不当労働行為に当たるとはいえない」と言い放った。
 東京高裁は、“リストラのためには組合つぶしも解雇も当然だ”と挑戦的に宣言したのだ。司法は、団結権を保障した憲法を自ら踏みにじった。まさに戦時下の労組絶滅攻撃だ。
 だが、国鉄闘争は98年5・28判決以来、4党合意以来の闘争圧殺攻撃との死闘を貫き、1047人闘争としての新たな発展を切り開いている。10・7国労弾圧は、これに対する敵の恐怖に駆られた反動だ。弾圧を粉砕し、戦後最大の解雇撤回闘争である国鉄闘争に勝利して、解雇の自由化を策す労基法改悪を打ち砕こう。11月労働者総決起へ進撃しよう。

 厚労省が検討中の労基法改悪案

 @「解雇には正当な理由が必要」と労基法に明記
 A解雇ルールを明確化するため、就業規則に「雇用終了の条件」について明記することを義務づける
 B裁判で解雇が無効とされた場合は、金銭賠償で「解決」できるようにする
 C有期労働契約の上限を原則1年から3年に延長
 D「高度な専門知識を持つ労働者」について、現在3年としている有期労働契約の上限を5年に延長
 E裁量労働制の適用対象拡大と、導入手続き簡素化
 〔長沢典久〕
 (おわり)

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週刊『前進』(2077号3面4)

関西合同労組 激闘の現場から
 階級的労働運動の飛躍かけ 解散・解雇、弾圧と闘う

 関西合同労組は阪神大震災が起きた95年に結成された。各地域労組交流センターに対応して支部を設けて未組織労働者の組織化、争議指導などにあたっている。深まる大恐慌情勢の中で倒産、会社解散、解雇攻撃が激しく加えられ、日々激しい闘いが続いている。

 突然の解雇にろう城で対抗

 大阪東部支部S分会の春闘は、会社側のいつも以上の抵抗で長引き、団交は10数回に及んだ。ところが夏の一時金交渉では、あっという間に会社が譲歩し、昨年プラスアルファで妥結した。その直後の6月末、社長が突然全社員を食堂に招集した。会社は解散するので、全員を7月15日をもって解雇するという無慈悲な通告だった。その場で解雇予告手当の支給さえ始めた。分会員は皆、協定に反すると受け取りを拒んだ。
 社長はすでに春闘交渉の中で会社解散・全員解雇を決断していたことが、後の団体交渉で明らかになった。会社と組合は、労働条件変更に関する同意約款のほか、解雇には組合の同意を要するという協定も結んでいた。この協定を武器に会社解散・解雇撤回闘争を闘う方針が決定された。
 7月9日、組合は労働委員会に不当労働行為救済申し立てを行った。12日にはストライキを通告し、会社食堂でのろう城戦に突入した。15日、会社は解雇を延期せざるを得なくなった。
 分会員が毎日交代で泊まり込み、各支部、地域交流センターの労働者もともに泊まり込んだ。会社は工場の敷地を売却しようとしていたが、それに対抗して争議終結まで約2カ月半、一日も休むことなく続けられたろう城戦は、争議の勝利を決するものとなった。
 さらに、会社解散・解雇は親会社が仕組んだ子会社の丸ごと切り捨てによる組合つぶしであるとして地労委に救済を申し立て、親会社を追及する門前ビラまきや各駅頭、社長宅周辺でのビラまき、街宣カーでの抗議行動など波状的な団交要求と門前座り込み闘争を貫いた。8月10日には100人のデモをたたきつけた。
 8月23日には、親会社への団交要求行動に対して警察権力が導入されたが、分会はひるまず断固とした抗議をたたきつけ、27日に親会社との交渉を実現した。
 この闘いは、争議突入から約3カ月をへて、労働委員会の場で勝利的な解決をかちとることができた。解決協定は、会社は協定違反を謝罪して「賠償金」を支払うという異例の内容となり、親会社もその解決協定に調印した。
 S分会闘争勝利の要因は、5人の分会員の団結を基礎にしながら、関西合同労組の各支部の力を結集したこと、とりわけ地域交流センターがこの闘いと結合し最後まで支えぬいたことにある。団交には、全支部と地域交流センターの労働者がかけつけ、30人を超える団交を何度も実現した。
 また争議をつうじ分会員が成長した。闘いの中で鍛えられ、『賃労働と資本』を学び、反戦闘争に参加した。親会社への団交要求や交渉において、本部の力を借りることなく堂々と五分にわたりあう力をつけていった。警察権力の導入は、分会自身のこうした闘いに資本が追いつめられたからであった。
 倒産・会社解散攻撃に対して、労働者の階級的な成長と地域団結の形成で対抗することができるのか。それがこの闘いの中で問われたのだ。

 自主生産破壊の弾圧許さず

 関西合同労組には、昨年以来5件の刑事弾圧が連続して襲いかかった。団結権の確保をめぐり階級闘争の荒々しい原野で、資本のみならず国家権力との激しい攻防に突入しているのだ。その頂点が、兵庫支部Y印刷分会に対する「雇用保険詐欺」の刑事弾圧だった。
 Y印刷分会は、黒字倒産を仕掛けて逃亡した資本に対抗し、管財人の承認も得て生産設備の譲渡を受け、自主生産を行っていた。ところが5月8日、兵庫県警は自主生産を分会長の「自営業」だとデッチあげ、分会長を逮捕したのだ。
 関西合同労組は、港合同の倒産攻撃との闘いに学び、ともに弾圧との闘いを築いていった。職場生産点を守りながら解雇撤回闘争を闘う自主生産は、争議行為、組合活動であって「自営業」や「就職」ではない。労働組合の団結権確保、解雇係争権の確保のために、雇用保険の仮給付制度が存在する。行政通達も、仮給付中の「生産管理」を認めているのだ。
 権力の弾圧は、大恐慌・大失業時代において「倒産争議を許さない」という凶悪な意図を持っていた。
 関西合同労組は、これに対して2度にわたる50人規模の裁判所包囲デモ、3度にわたる検察・裁判所・県警への抗議申し入れ行動を貫徹し、弾圧に対してひるまず、恐れず、真っ向から組合員を組織して闘った。弾圧を恐れず闘う組合づくりを意識的に追求し、階級的な労働組合への飛躍を成し遂げることこそ、刑事弾圧をのりこえる唯一の闘い方だ。ついに権力は起訴断念へと追い込まれた。
 関西合同労組は、戦争と大失業の攻撃の中で、未組織労働者・中小零細、失業労働者などの底の底からの団結を形成し、鍛え上げ、戦後労働運動の限界をあらゆる意味で突破して階級的労働運動への飛躍を実現しようと苦闘している。この苦闘をともにし、11月労働者総決起へ突き進もう。

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週刊『前進』(2077号4面1)

攻撃の階級的本質をしっかりつかみ 米帝のイラク侵略戦争阻止へ歴史的大闘争に立ち上がろう

 第1章 全世界のムスリム人民の怒りの爆発に恐怖し根絶狙う米帝

 米上下両院は、10月10〜11日、ブッシュの要請したイラク攻撃に関する決議を採択した。この決議の正式名称は「イラクに対する軍事力行使の権限付与」決議というものであり、単なる武力攻撃容認決議ではない。下院では賛成296(69%)、反対133(31%)、上院では賛成77(77%)、反対23(23%)であった。民主党は「反対」と伝えられたが、結果は下院では81対126で約4割が攻撃決議に賛成し、上院では29対21で過半数以上、約6割が賛成にまわった。
 このように上下両院で3分の2を超える賛成を得たこと、上院では民主党議員の過半数を超える賛成を得たことなどからみて、ブッシュ政権は米帝内的には「イラクに対する軍事力行使」の権限をついに獲得したと言える。しかも、この決議の内容をみればわかるように、その核心部分は、
 「大統領は、@米国の安全に対する脅威から守るため、Aイラクに関するすべての国連決議を履行するために、必要かつ適切と判断した場合には、米国の軍事力を行使する権限を与えられる」
 となっていて、新しい国連決議さえ必要とせず、いつでもブッシュ政権の判断によって軍事力行使に踏みきれることになっている。ベトナム戦争を本格化させるに至った「トンキン湾決議」以来の、軍事力行使にフリーハンドを与える決議だと言われている。
 われわれは、すでにブッシュの9月11日の全米テレビ演説や12日の国連演説をもって、米帝がイラク侵略戦争に決定的に踏みきったことを確認した。この判断を今秋以降、02〜03年の内外情勢を考える決定的土台としてきた。そして、これは9月20日に発表されたブッシュ・ドクトリン(「米国の国家安全保障戦略」)によって、戦略的にも、はっきりと裏づけられた。そしてさらに、ついに10月11、12日、上下両院決議という形でブッシュの恐るべきイラク攻撃=イラク侵略戦争の方針は、米帝の国家意志として確定することになったのである。
 米帝のイラク攻撃がついに米帝の国家意志とされるに至ったことをきわめて重要な事柄として確認する必要が、なぜあるのか。それは、今回の米帝ブッシュ政権のイラク侵略戦争が、あまりにも異常かつ異様であり、これまでの国際政治史上の常識を(少なくとも戦後をとってみても)はるかに超えるものだからだ。すでに昨年10月からのアフガニスタン侵略戦争自身がそうした面をもっていたが、対イラク攻撃はそれと比べてもさらに異様であり、あまりにも帝国主義丸出しで、超大国(スーパーパワー)としての軍事力をむき出しに振りかざして、一切の国際関係のルールは米帝が決める、といった論理をもって強行されようとしているからである。

 国家主権無視、先制攻撃も平然と合理化

 かのキッシンジャー(共和党系で、今回の攻撃に賛成)でさえ、「ウエストファリア条約(1648年)以来の国際社会の原則は修正されなければならない」と言ってイラク攻撃の破天荒ぶりを認めているほどである。つまり、国家主権などまるで歯牙(しが)にもかけず、自分が攻められもしないのに先制攻撃することが平然と合理化されているのである。
 キッシンジャーは、“大量破壊兵器とテロが結びつく時代には、こうしたブッシュ的政策もやむをえない”としている。だが、たとえそうした観点からみても、米英帝が対イラク戦を正当化するための「起訴状」としている諸報告をみても、明白な事実証拠はほとんど提示できていないのだ。
 @アルカイダとの関係の直接証拠はひとつもない。言っていることはアフガニスタンで捕らえられ、キューバで拷問的状況に置かれている兵士からの伝聞情報で、「イラクに逃げ込んだアルカイダ兵士がいたと言われている」というたぐいのものでしかない。
 Aまた、核兵器にいたってはほとんど「機械の搬入を試みた」「ウランを入手しようとした」というたぐいの情報でしかない。いずれも「搬入した」のでもなければ「入手した」わけでもない。はては、「国外から核分裂物質と必要機械を入手すれば1〜2年で核兵器の開発は可能と判断される」などと言っている始末だ。たしかに、イラクならずとも、これらのものを「備えられれば」、どこかの大学や大企業の研究所でさえ核兵器はできるだろう。
 B唯一もっともらしくみせているのは生物・化学兵器の問題であるが、これとても、一定の工業力や化学産業をもっている国家であれば、製造・開発することは可能だろう。しかし、これをもって即、問題だというなら、イラクならずとも一定の工業生産力をもつすべての国家を破壊するしかないだろう。
 ここで見ておくべきことは、イラク領土の北緯36度以南、38度以北は米英空軍が制空権を握り、たえず爆撃してきたことである。また、超高空偵察機や精密な通信衛星を使って、すべての建物がいつどこに建てられたかということまで調べ尽くされていること、さらに石油の輸出は制限され、かつ、その代金は国際管理下でのみ使用できるという状況にイラクは置かれてきたことである。
 したがって、「大量破壊兵器」とイラクを結びつけ、戦争を仕掛けることを正当化するというやり方では、どんなにしても全面戦争を合理化することはできないのだ。
 それでもなお、ブッシュ政権がイラク攻撃に突進するとすれば、結局イラク・フセイン体制そのものが悪であり、許されないということが、実は本当の理由なのだということである。つまり、「イラク・フセインは米帝の言いなりにならない、パレスチナを支持しイスラエルに敵対する反米政権だ、91年にあれほどたたいたのに依然として存続し、アメリカになびかない、91年以来の侵略に抗議し続けている」「将来にも大量破壊兵器を入手する危険があり、テロリズムと結合する危険があると推測される」――こういったことがあれば、主権国家であると否とにかかわらず、また現時点で攻撃をかけてきていようといまいと、今この段階で先制攻撃して政権を転覆しても構わない、いやそうする権利と義務があるというのである。米帝ブッシュ政権は、このような論理を振りかざし、それを実行に移そうとしているのである。
 米帝がこのようなイラク政策を強行しようとしているのは、パレスチナ人民、中東人民、イスラム諸国人民、ムスリム人民の米帝に対する怒りが全世界に充満していること、すさまじい民族解放・革命戦争のエネルギーが蓄積され、爆発し始めていることへの恐怖からである。昨年9・11反米ゲリラ戦争は、その最初の大爆発として展開されたということである。
 こうした状況下に中東イスラム世界のど真ん中に、イラク国家が反米的国家として、91年から10年以上たっても存在し続けていることそのものが、米帝にとってどんな危機を生み出していくか、このことに米帝は底知れぬ恐怖を抱き、おののいているのだ。それゆえ昨年9・11〜10・7アフガニスタン侵略戦争〜の流れに乗って、今ここで一気にイラク・フセイン体制を粉砕・一掃しようと必死になっているのである。「大量破壊兵器」うんぬんはまったくの口実だ。フセインの圧政うんぬんもまったくの口実である。

 開戦の口実のための米英の安保理決議案

 このことをまざまざと示すものが、10月2日に明らかにされた国連での米英の対イラク安保理決議案である。すなわち
 @イラクは決議採択後、国連事務総長が通告してから7日以内に諾否を表明しなければならない。
 A決議採択後30日以内に、核・生物・化学兵器やミサイルその他「あらゆる情報を含む申告書」を提出しなければならない。
 B国連監視検証査察委員会とIAEA(国際原子力機関)は無制限にイラク出入国が許され、大統領官邸を含むあらゆる施設の立ち入りが認められる。
 C査察団のイラク側関係者への事情聴取(国の内外を問わず)はイラク当局者の立ち会いなしで行える。
 D査察団は国連の治安部隊に護衛される。
 E査察団は禁止されている武器、部品、記録、関連物資の撤去・破棄などをする権限をもつ。
 Fイラクの申告に偽りや省略があった場合や、手続きに全面協力しなかった場合、加盟国が必要なあらゆる手段をとることを承認する。
 ――というものである。
 これでは、もはやイラクは占領されたも同然である。Dの治安部隊というのは米英帝の特殊部隊と同じだ。大統領府なども自由に出入りできる。つまり、これはもはや査察をやろうとして提案されている決議案ではない。フセイン政権にこの決議を拒否させるために提出されたものなのだ。また、万一イラクがこの決議を丸のみしても、Fの規定により必ず何らかの口実がつくられる。そして「あらゆる手段」=全面的軍事行動の発動が行われる。要するに、この決議を国連が採択すれば、自動的に米英帝のイラク攻撃を正当化するものとなる。つまり、最後通牒(つうちょう)ということだ。
 ところで、ブッシュの9・12国連演説を契機として、(98年以来イラクの拒否でストップしていた)国連によるイラク査察の再開がテーマ化し、イラクが無条件で再開に応ずるとしたことから、国連査察団をまず送るという方向が一定進むかにみえた。仏・独・ロシアなどの思惑がこれを促進したからである。
 ところが、これはパウエル米国務長官の「米は断じてこれを認めない」との言明によって阻止された。そうしておいて先に述べたように、米上下両院が〈新しい国連決議なしでも、米単独でもイラク攻撃を遂行する〉権限をブッシュに与えたことによって、国連決議案をめぐる情勢は激変した。これまでの方式の国連査察団の派遣は粉砕された。残っている道は、上記の米英の国連決議案と、その若干のデフォルメ(変形)としての仏の二段階決議方式をいかに米英の要求を満たす形でまとめるかという方向に一気に向かったと言える。

 独仏ロ、中国、日帝の争闘戦的な駆け引き

 米上下両院決議を契機として、諸帝国主義間、諸大国間の政治・外交・軍事上のかけひきと攻防は新段階に突入した。
(イ)米英は今や、ほとんど一体化しつつある。
(ロ)仏とロシアの動向が変化してきている。仏の二段階決議案は事実上、米英案の変形でしかなくなりつつある。
(ハ)ロシアは10月10日以降、プーチン・ブレア会談で新しい決議を認める方向へと変化しつつある。
(ニ)中国は、米英仏ロが一致する時は拒否権を行使できない(→棄権)。ただし、米英仏ロが政治的に一定の妥協をする時は、米英は多国籍軍方式をとることができる。江沢民はブッシュとの首脳会談で「イラクは国連決議を順守すべきだ」と言明した。
(ホ)日帝・小泉は9・12日米首脳会談以来、一貫して本質的にブッシュのイラク政策支持である。小泉はペテン的な逃げ口上(米のイラク攻撃反対とはけっして言わない)を確信犯として言い続けている。
(ヘ)ドイツは総選挙でシュレーダーが対イラク戦争反対で勝利した。全力で対米修復に動いているが、米独関係は歴史的きしみを示し始めたとみていいかもしれない。しかし、基本的には、最後は実質的に公約を破棄するであろう。
(ト)米帝の対イラン政策は意識的である。ブッシュ・ドクトリンでイランを名指し批判していない。対イラク戦への集中のためである。
(チ)米帝の対北朝鮮政策は、当面、対イラク戦に絞る方向で進められている。対北朝鮮政策をコントロールしつつ進めようとしている。日朝関係の展開は、米帝の対イラク戦争政策との関係の中で進められている。
(リ)イスラエルとパレスチナの問題について。米帝は対イラク戦に絞ろうとしているが、対立の激しさゆえに単純にはいかない。
 米上下両院決議は、米英同盟でイラク戦争に突入し、イラクの支配権を米英帝が牛耳ることがありうることを、諸帝国主義、諸大国につきつけた。したがって上記のイ、ロ、ハなどの各国の動向は、イラクをめぐる帝国主義的権益の争奪戦で敗北する危険を阻止しなければならない、という帝国主義的力学が、むき出しに働き始めたことを意味している。たとえば、ロシアはイラクの石油輸出の半分とかかわっている。のみならず鉱区開発権も含めて膨大な利益・権益を持っている。ソ連時代のイラクの対ソ債務も90億j以上もある。仏もイラクの石油輸出と深くからんだ権益を持っている。ひとつ間違えばロシアや仏はこれを失いかねない危機に立っているのだ。だから、イラクの戦後経営に一定のシェアでかみ込む密約などがあれば、ロシアや仏などは米帝に同調する方向で動いてしまう。

 第2章 世界再編へ一大侵略戦争突入宣言したブッシュ・ドクトリン

 米帝はなぜこれほどにも強引に、新帝国主義むき出しのイラク侵略戦争に全力をあげてのめり込んでいくのか。
 この点をつかみとる上で手がかりとなるのが、9月20日のブッシュ・ドクトリン(「米国の国家安全保障戦略」)である。以下、これについて若干分析する。

 「最強の軍事力で平和を拡大する」と宣言

 全体的にみると、やはり当面するイラク侵略戦争の強行を、戦略的に位置づけることに全力をあげている。
 まず初めに、米国は冷戦に勝利したが、二つの大きな問題にぶち当たっていることを吐露している。
 第一に、昨年9・11「同時多発テロ」によって米帝が重大なダメージを受けたことを認め、「軍縮、核不拡散、封じ込め、抑止といった冷戦時代の戦略は通用しなくなった」と表現し、全力で対応しようとしている。
 第二に、中国を明白に意識して、対中国戦略の強力な推進をうち出している。そのことによって間接的に他帝国主義諸国およびロシアとの争闘戦関係をうち出している。(対イラク戦を前にしているので、表現は抑制しているが)
 以下、内容の主な点を見ていこう。
 この政策文書の「序文」では、次のように言って、いわば米帝の新帝国主義宣言をしている。
 「米国は最強の軍事力と政治・経済的影響力を自国のためにのみ用いるのではなく、テロリストや独裁者の脅威から平和を守り、大国間の良好な関係を築き、自由で開かれた社会をすべての大陸に奨励することで、この平和を保ち拡大させる」「米国は平和を拡大する偉大な任務を指導する責任を歓迎する」
 これは、対イラク戦を前にして、イラク以外の諸国に対して米帝の戦略的狙いをペテン的・欺瞞(ぎまん)的表現で示したものである。だが、ここで米帝の軍事力を真正面に振りかざしての帝国主義的世界政策の遂行(世界戦争政策の遂行)をはっきりとうち出している。「最強の軍事力」を「政治・経済的影響力」より前にうち出し、軍事力の行使で「平和を拡大する偉大な任務を指導する」と傲然(ごうぜん)と宣言したのだ。
 「平和の拡大」とは、戦争による軍事制圧をさす帝国主義的常套(じょうとう)句である。そして、「テロリストや独裁者の脅威から平和を守る」というのは、イラク攻撃型の戦争をどしどし遂行するということである。また、「大国間の良好な関係を築く」というのは、前後からすれば「軍事力の行使によって」ということであり、イラク攻撃型戦争の遂行によって、ということである。つまり帝国主義間争闘戦や対ロシア・対中国の関係づくりを、軍事力と戦争を前面に押し出して行っていくと宣言したのだ。
 また、「自由で開かれた社会をすべての大陸に奨励することで、この平和を保ち拡大させる」というのは、一見あたりさわりのない表現のようだが、「自由で開かれた社会」に中国が入っていないことをはっきりとつき出している。要するに、ブッシュは01年QDR(4年ごとの戦力見直し)がうち出した世界政策=世界戦争計画を、「偉大な任務」という表現を用いて米帝の正式なドクトリンと宣言したのだ。

 9・11反米ゲリラ戦が与えた巨大な衝撃

 本文では、何よりも圧倒的に「地球規模のテロ撲滅」と「大量破壊兵器による脅威の防止」を強調している。そして、その一切を当面のイラク攻撃強行の正当化に絞り上げようとしている。
 まず、「地球規模のテロ撲滅」に関して次のような論理を言い立てている。
@「まず、地球規模で活動するテロリスト組織を妨害し、撲滅する」
A「当面の焦点は大量破壊兵器の入手、使用を試みるテロ組織あるいはテロ支援者だ」
B「脅威が米国の国境に達するよりも前に破壊する」
C「必要とあれば単独行動をためらわず先制する形で自衛権を行使する」
D「テロを推進するイデオロギーがどんな国家にも温床を見いだすことがないよう、とくにイスラム世界で穏健で近代的な政権を支援する」
 ここには、きわめて重大な内容がある。まず第一に確認すべきことは、昨年9・11反米ゲリラ戦が与えた衝撃である。米帝は9・11がけっして単発の事象ではなく、今後も繰り返し起こると認識していることである。
 すなわち、われわれの言葉で言い換えれば、米帝の戦後世界支配体制および新植民地主義体制、とりわけ中東・イスラム諸国をめぐる戦後支配の歴史的矛盾が爆発し、パレスチナ人民を始め全中東・イスラム諸国人民、全世界ムスリム人民の米帝(および国際帝国主義)への怒りが、いまや沸騰点に達していることである。その中で民族解放・革命戦争の蓄積された力が、(国際階級闘争がスターリン主義的歪曲・圧殺のくびきを脱しきれていない中で)ついに9・11型の特殊的・極限的な形態で突出するに至ったのである。これはパレスチナの極限的ゲリラ戦闘と結合して、帝国主義の世界支配、新植民地主義的支配、中東支配の体制を根底から揺るがすものとなっているということである。
 そして、9・11ゲリラ戦闘こそは、こうした全世界の新植民地主義体制諸国人民、とりわけ中東・ムスリム人民の民族解放闘争の大きなうねりが、ついに米帝本土国内にも波及し、燃え広がり始めたことを意味している。そして、それは米帝の国内支配体制、階級支配体制に巨大なインパクトを与え、米帝は今や不断に、繰り返し襲ってくる9・11型の大小のゲリラ戦争の爆発を抱え込んだ国家、社会に変貌(へんぼう)してしまったのである。
 全世界に展開している米国の軍隊、軍人、企業家、ビジネスマンさらには一般米国市民それ自身が、いつ何時9・11的、あるいはそれ以上の攻撃にさらされるか分からない状態になったということである。これは米帝史上かつてない体制的危機、階級支配・政治支配・イデオロギー支配の危機である。
 米帝とブッシュ政権が直面している現実とは、こういうものである。帝国主義者はこの現実に対して、なぜ19人ものイスラムの青年が自爆してまで9・11反米ゲリラ戦争をひき起こしたのか、なぜ3千人近い人びとを巻き込んでまで自爆テロルを実行したのか、それが米帝の新植民地主義的な中東支配・ムスリム人民圧殺の長い歴史の所産であり、帝国主義自身の行為の結果としてつきつけられたものではないかと考えることは、けっしてできないのだ。

 絶望的かつ無展望な果てしない侵略戦争

 したがって、ブッシュ・ドクトリンの論理は、悪の拡大再生産と破産の幾何級数的深化・拡大としてしか進まない。彼らにとっては、9・11の次に来るものは「大量破壊兵器」による巨大な「テロ」だということになる。そのためには「地球規模のテロ組織」を「撲滅」しなければならない。しかし、「テロ支援者」「テロ支援国家」が存在する限り「撲滅」できない。したがって、帝国主義者にとっては9・11的事態が発生してから、その「支援者」「支援国家」を探したり、攻撃したりするのでは遅いということになる。
 ここで、帝国主義者はとてつもない強引な超反革命的な飛躍をするしかなくなる。すなわち、将来生起しうる大規模な「テロ」に対して、それを支援するかもしれない国家をそれとして決めつけ、徹底的に攻撃し、体制を転覆するしかないということになるのだ。
 こうなってくると、米帝の世界支配、中東支配などに対して対立し、批判し、独自の道を行く国家は、まさに「対米的・反米的で、米帝の自由にならない」というだけで、あらゆる口実で「テロ支援国家、またはそうなる危険のある国家」ということにされる。攻撃の口実にあらゆることが動員される。かつて米帝の援助と支援のもとで行った悪行(たとえば化学兵器使用)も「犯歴」とされる。一定の工業力は、生物・化学兵器と結合しうるということで「大量破壊兵器」をひそかに確保している証拠とされる。こうした決めつけは、はっきり言って自由自在だと言える。
 こうして、反米的・対米的国家は、ただそれだけで、米帝の情報と判断で「テロ支援国家」または「大量破壊兵器入手の危険のある国家」として措定され、米帝はこれを自衛権によって攻撃する権利があるとされるのだ。しかも、先制攻撃の権利があるということになる。
 もはやこれは、生存権や「生命線」を唱えて世界分割・再分割戦争に突入していった帝国主義の論理とまったく同一のものである。いや、それ以上だ。自国民が一人殺されても、一大侵略戦争が合法化されるという論理と同じである。
 逆に言えば、そうなってくるからこそ、米帝の戦争計画と、他の諸帝国主義国や諸大国の帝国主義的・大国的利害との間にズレが生まれ、国際協調などの体裁がとれないことも生じる。米帝ブッシュ政権はこういう現実を見越して、「単独行動をためらわない」とあえて宣言したのである。
 このようにみてくると、今回のブッシュ・ドクトリンなるものは、米帝の戦後世界支配体制とりわけその新植民地主義体制が中東を焦点として完全に行きづまったこと、そして、その中で爆発した9・11反米ゲリラ戦で米帝は大打撃を受けたこと、そして米帝が9・11を口実としテコとして、新植民地主義体制諸国に向かって、世界再編のための新たな世界的規模の一大侵略戦争に突入していくことを宣言したものにほかならない。しかも、それはまず、イラク侵略戦争によるイラク支配、イラクの新植民地主義的軍事支配=新しい植民地国家化という形態で実施に移されつつあるのである(アフガニスタン戦を継続・激化させつつ)。
 この点で、あらためて注目すべきは、前記引用のDの項目である。
 「テロを推進するイデオロギーがどんな国家にも温床を見いだすことがないよう、とくにイスラム世界で穏健で近代的な政権を支援する」
 この文章は読めば読むほど大変な内容である。単にイラク攻撃を正当化するという内容をはるかに超えている。今日の「イスラム世界」そのものが「テロの温床」になっていると言っているのだ。「とくにイスラム世界で」というフレーズが入ることによって、イスラム世界には他の世界にもまして「テロの温床」となる体質があると言っているのだ。
 この文章から言えば、米帝が「悪の枢軸」と名指ししたイラク、イラン以外でも、「穏健で近代的な政権」と言える国家がどれだけあるだろうか。サウジアラビアは「近代的な国家」と言えるか。
 このことは、米帝がイラク戦争をとおして発生する中東諸国の内政危機や国際危機の爆発を予期していることを意味する。この意味で、米帝は危機にかられて、文字どおり絶望的で無展望な、果てしない中東−世界侵略戦争にのめり込んだのだ。米帝は今や、本質的には中東支配の暴力的再編成、それによって生じる石油争奪戦の激化と石油危機の大爆発という自己破滅的な世界史的局面へと、自らのめり込んだのである。
 9・11によって生じた米帝の国内危機と、世界支配の危機への帝国主義むき出しの反革命的対応への突入(跳躍)は、こうして地獄の釜の底を割ることになったのである。
 ブッシュ・ドクトリンはさらに「大量破壊兵器」に関して、イラクを化学兵器のみならず核兵器と生物兵器の入手を91年段階で「企てた」とした上で、北朝鮮についてきわめて強い敵対的内容をもって言及している。
 「北朝鮮はこの10年で世界の主要な弾道ミサイル供給源になり、より高性能のミサイル実験を行い、大量破壊兵器を開発している」
 「主要な弾道ミサイル供給源」という言い方はきわめて強い。また、「われわれは韓国とともに働き、北朝鮮の監視を続ける」とも言っている。イランへ具体名をあげた言及を避けている中で、イラクに次ぐ北朝鮮へのこの強い言及は重視しなければならない。イラク侵略戦争から北朝鮮・中国侵略戦争への道筋をつけているのだ。

 対中国戦略と帝間争闘戦の二重的な意味

 ブッシュ・ドクトリンで今ひとつ顕著で重要なことは、対中国戦略をいわばテロ撲滅、対イラク戦と並ぶ大きな柱として押し出したことである。これは01年QDRと同じであるが、対イラク戦シフトのために他の国々との対決を相対的にコントロールしている中で、なお対中国戦略については大きく鮮明な柱として押し出したのである。
 「中国は今なお時代遅れの道を歩んでいるが、やがて社会的・政治的自由のみが偉大さの源だと気づくだろう」
 これは「序文」での「自由で開かれた社会をすべての大陸に奨励する」という言及と一体であり、中国の体制転覆の問題を提起しているということである。
 さらに、「21世紀の国家安全保障政策」という項目では、
「米国は自分たちの意志をわが国と同盟国におしつけようとする敵のどんな企ても破る能力を維持する」(イ) 
「米国と同等かそれ以上の軍事力を築こうとする潜在的な敵を思いとどまらせるのに十分な強力な軍事力を持つ」(ロ) 
「米国は多様な社会に住む国民の技能と経済の活力、組織の復原力を力の源泉として国家の安全保障を築いていく」(ハ) と言っている。(イロハは引用者)
 これはまずもってすべて中国を意識して(事実上名指しして)言っているといえる。(イ) は中台問題を示唆しているとみることができる。(ロ) も「潜在的」ということで中国にあてはまる。(ハ) は「組織の復原力」という言い方に、旧ソ連解体=新ロシアの成立のプロセスの再来をにおわせている。いわば中国の体制変革の問題を示唆しているとみることができる。
 われわれとしては上記の言及を、以上のようにまず01年QDR的視点での対中国戦略ととらえるべきであろう。しかし、(ロ) などは、中国のみならずEU諸国とりわけドイツや日本についても、帝国主義間争闘戦の問題として、その軍事大国化の危険性をきわめて厳しく見ているということである。文章の意味を二重的に読み取るのが正しい。
 このほか、「各地域の主要国との協力活動」という項目で、日本がアフガニスタン戦争において「前例のない水準で補給支援を供与した」と強調していることは重要である。今次のイラク戦でも、米帝・ブッシュ政権はブレアに次いで、日帝・小泉政権の協力を強く当て込んで動いているのである。
 以上、ブッシュ・ドクトリンについて詳しく検討してきたが、これは米帝が何がなんでもイラク攻撃に突入しようとしているのは、いったいどうしてなのか、ということをしっかりつかむことが重要だからである。米帝は帝国主義である限り、さまざまな反対動向が諸国間や米支配階級の中にも一定あろうと、また、どんな恐るべき結果が予想されようと、強引に対イラク戦争に突入しようとしている。このことのいわば〈必然性>をしっかりとつかまないと、「ブッシュの個人的突出」とか、「米帝の支配階級の一部の突出」などという浅薄な議論に足をすくわれかねないからである。
 と同時に、米帝ブッシュ政権が対イラク戦争に突入する結果は、国際的争乱の巨大な発生へとつながり、また、米経済および世界経済の危機がまさに大恐慌的状況に完全に突入することになるであろう。そして、それは国際階級闘争、国際反戦闘争におけるまったく新しい地平を必ず生み出すものとなるだろう。このことを、しっかりと確認したかったからである。
 このような米帝のイラク侵略戦争の世界史的意義をがっちりとつかみとり、巨大なイラク反戦・有事立法阻止闘争の組織化に猛然と立ち上がろう。

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週刊『前進』(2077号4面2)

新刊紹介 コミューン 12月号 報道・言論規制法

 個人情報保護法案とは何か。第1章は、同法案が報道・言論規制法案として登場した政治過程を明らかにした。日帝は99年の住民基本台帳法の改悪時にその前提として個人情報保護法案を約束した。ところが日帝は個人情報保護を口実に、マスコミに法規制と監督の網をかぶせ戦争翼賛勢力化しようと報道・言論規制法に塗り替えたのだ。
 第2章は、個人情報保護法案の逐条批判。基本法・個別法・自主規制の3段階の規制を明確にし、5つの基本原則が適用されることで、権力・企業の汚職や腐敗の取材・暴露は事実上不可能になることを暴く。
 第3章では、人民のプライバシー権・個人情報保護の要求と住基ネット=国民総背番号制との闘争を歴史的に整理した。住基ネットとは究極の治安管理と戦争への国民動員を狙うものであり、人民のプライバシーを完全に踏みにじるものであることを明らかにした。
 翻訳資料は「02年米国防報告(上)」。この報告には、9・11の衝撃に大打撃を受けた米帝・国防省の次の観点が貫かれている。
 「米国が再び新たな敵の予期できない方法によって奇襲されることは不可避だ。……将来の奇襲攻撃は9月11日よりはるかに致死的になる。このように、奇襲と不確実性が、知られざる、見えざる、予測せざるものから今世紀国防省が国を守るために直面する課題を規定している」(国防長官のメッセージ)。イラク反戦闘争に不可欠な文献。

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週刊『前進』(2077号5面1)

DON'T ATTACK IRAQ 闘うムスリム人民 世界の人民と連帯して イラク石油の制圧狙う強盗戦争
 世界第2の埋蔵量 仏・ロ・中と争奪戦

 米帝のイラク侵略戦争は、直接には軍事力でイラクを侵略・占領し、そのことで中東を軍事制圧下に置くだけでなく、直接にイラクの石油を強奪することにも大きな狙いがある。

 石油依存度

 イラクの原油埋蔵量はサウジアラビアに次いで第2位であり、世界の埋蔵量に占める比率では、サウジアラビア25%、イラク11%、アラブ首長国連邦、クウェート、イランがそれぞれ9%で、この5カ国だけで63%を超えている。近年、カスピ海周辺諸国で新たな石油の埋蔵が確認されているが、それも当初期待されたほどは多くはないとも言われている。国際エネルギー機関(IEA)が昨年11月に発表した「世界エネルギー展望」では、上記の5カ国が世界全体で占める生産量は、1997年の26%から、2010年32%、2020年には41%に達するであろうと見積もられている。
 こうした中で米帝は、9・11以降、ロシアの石油もその統制下に置こうと石油・天然ガス開発計画への関与を増大させてきた。ロシアの石油生産は一時大きく落ち込んだが、すでに日量730万バレルまで上昇している。今後このロシアや中央アジア、アフリカが生産量を増加させるとしても、全体において中東湾岸諸国への石油依存度は高まりこそすれ、けっして低下することはない。
 米帝は、イラクの石油を直接の支配下に置くことで戦略的資源である石油に対する支配力を決定的に高めようと狙っているのだ。イラクの石油をめぐっては、フランスやロシア、中国が国連のイラク制裁の解除後に石油開発を行う契約をしており、このまま国連のイラク制裁が解除されれば米帝の石油支配にとっての決定的な破たんにつながる状況にある。米帝のイラク侵略戦争は、これを凶暴な戦争によってくつがえし、イラクの石油を米帝の支配下におこうとする略奪戦争であり、激しい帝国主義間の争闘戦である。

 石油の支配

イラクの油田と石油施設
 米帝ブッシュは、ブッシュ・ドクトリンで、「貧困や腐敗が弱小国をテロ組織に無防備にさせる。米国は平和を拡大する偉大な任務を指導する責任を歓迎する」と述べている。ここで抽象的に語られていることの真意は、「テロとの戦い」を口実に諸国に介入し、侵略・支配していくということである。
 イラクの石油を直接支配下に収めようとする米帝の策動は、中東湾岸諸国をはじめとした産油国が自国の資源である石油を帝国主義の支配から取り戻して国有化してきたことに対する決定的な巻き返しを狙うものである。石油は、その探査から開発、そして採掘が始まってからも輸送や精製、販売など多くの資金が必要である。そして帝国主義の侵略と植民地支配の中で国際石油資本の支配が確立されてきた。1951年にイランのモサデク政権が石油国有化宣言を行った際もアングロ・イラニアン石油をはじめとした石油資本がボイコットによってイランの石油収入を途絶させ、国有化の実質を奪い取った契約を強制した。さらにCIAのクーデターによってモサデク政権を倒した。
 米帝は、フセイン政権が大量破壊兵器で自国民を殺したと非難する。だがその化学兵器は米帝が与えたものだし、米帝自身がクルド人民の虐殺を容認してきたのだ。オスマン・トルコの解体に際してクルディスタン共和国建設を圧殺したのは、イギリス帝国主義であった。さらに英帝はクルディスタンにあるキルクーク油田を完全に自分のものにするためにこの地域をイラクとし、イギリスの統治下に置いたのである。
 70年代前半から各産油国が石油国有化を図っていった。イラクでは58年共和制革命以後何度も石油国有化を目指したが、ようやく72年に石油国有化が実現した。メジャーの市場支配の中で一定の限界を持ったものとはいえ、こうした新植民地体制諸国人民の苦闘の上に実現された石油国有化を米帝は再び転覆しようとしているのである。そのためにも米帝は何がなんでもイラクに侵略戦争を仕掛け、凶暴な人民虐殺戦争で他の産油国を屈服させようとしているのである。

 利権まみれ

 米帝のイラク侵略戦争・人民大虐殺が、こうした米帝の帝国主義としての国家利益のためであることを端的に示しているのが次の点である。すなわちブッシュ政権は、石油産業、軍需産業と直接結びついた人物たちで構成されているということである。
 ブッシュ自身は1979年にアーブスト・エネルギー社を設立し、石油ビジネスの世界に入った。以後石油資本と深々と結びついている。またチェイニー副大統領は世界最大手のエネルギー企業ハリバートン社の最高経営責任者だった。彼の妻は最大の軍需産業のロッキード・マーチン社の重役である。ラムズフェルド国防長官はロッキード・マーチン系のシンクタンクであるランド研究所の理事長だった。ライス大統領補佐官は石油メジャー、シェブロンの重役だった。エバンズ商務長官も石油メジャー、トム・ブラウン社の社長だった。ミネタ運輸長官もロッキード・マーチン社の副社長だった。
 このように戦争によって直接に利益を得、またイラクの石油強奪によって直接利益を得る者たちが権力を握り、侵略戦争を仕掛けようとしているのである。
 米帝の帝国主義的利益のために何十万人というイラク人民を虐殺する侵略戦争を絶対に許してはならない。劣化ウラン弾による白血病やガンに苦しむイラクの子どもたちの頭上に爆弾を落とさせてはならない。キャンパスから、職場から猛然と怒りの決起を巻き起こそう。
 (秋原義明)

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週刊『前進』(2077号5面2)

 陸海空港湾労組が国会闘争

10月23日昼、陸・海・空・港湾労組20団体、宗教者などが呼びかけた国会前行動に約250人が参加。集会では「有事法案が通ったら被害者になるだけでなく、加害者になってしまう。今頑張って廃案を」などの発言が続いた。同時刻、日弁連900人の有事法制廃案を求める請願パレードが到着し、熱いエールが交わされた。

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週刊『前進』(2077号5面3)

神戸 国会開会日にデモ “軍都の復活許さぬ” イラク反戦で145人

 臨時国会開会日の10月18日、神戸市私学会館で10・18有事立法反対集会兵庫県実行委員会主催の「イラク侵略戦争反対、有事立法阻止」の集会が行われ、兵庫県下から145人が集まりました。関西合同労組兵庫支部の各分会をはじめ、教育労働者、自治労、全逓、国労、部落解放同盟全国連、百万人署名運動兵庫県連絡会、各住民団体の人びとが集まり、「戦争絶対反対」の大きな団結体を形成する道を開いたのではないかと思います。
 集会は1時間ほどで短かったのですが、発言者はみな有事立法は許さないという決意にあふれていました。連帯のあいさつをした神戸市議は、神戸市に対して米総領事館の領事が接触してきていることを述べ、市がアメリカの要請を受けて軍事都市化していこうとしていると、県と市の姿勢を批判しました。
 石田勝啓関西合同労組委員長が基調報告し、「アメリカのイラクへの武力行使は、イラク人民を大殺りくし、フセイン政権を転覆してイラクの石油を独占を狙う侵略戦争です。10・26ワシントンをはじめ全米でのイラク反戦100万人集会に連帯していきましょう。
拉致問題での排外主義と労働組合こそ対決しなければならない。神戸港に米第7艦隊が寄港しようとしている。軍都神戸の復活を阻止しましょう」と檄(げき)を飛ばしました。
 自治労の労働者が、「5月31日、地域で有事法反対の集会とデモを17団体200人の参加でやりきった。廃案までともにがんばる」と発言。関西合同労組の分会からは「組合に入ってからも戦争なんて起きるはずない、景気も良くなると思ってたけど、考えが変わった。戦争のための法律が成立すること自体許せない」と、強い決意を述べました。最後に高校生の戦争反対の決意表明で集会を締めくくりました。
 集会後、元町から三宮を回るコースを午後8時というゴールデンタイムにデモし、注目をあびました。
 10月15日の被災地反失業総行動を反戦闘争として闘い、有事立法反対のこの日の集会とデモが成功したことで、連合や全労連に代わる新たな労働運動と反戦運動を作り出せるという確信を持ちました。
 (投稿/神戸 O・S)

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週刊『前進』(2077号5面4)

富山で反戦行動 国際連帯に決起

 10月20日、富山大学学生自治会と北陸労組交流センターは、10・21国際反戦デー統一行動に立ち上がりました。
 切迫するイラク侵略戦争の阻止・有事立法粉砕を掲げて富山駅前から、デモに出発。国会開会直後ということもあってか大きな注目を集めました。途中、県庁と市役所前では、「自治体は戦争協力するな! 住基ネットから離脱せよ」と呼びかけました。「今日この日に全世界で闘われているイラク侵略戦争阻止の一つの闘いとして行われている」と思いながら、絶対に戦争突入を許さないという決意をもって最後までデモを貫徹しました(写真)。
 デモに先立って街頭宣伝を行い、小一時間で120筆以上の署名と10・13三里塚闘争で逮捕された2人の学生へのカンパも寄せられました。在日のイスラム系の女性が、「DON’T ATTACK IRAQ」の文字とイラクの子供たちの写真を使ったゼッケンを自分の子供に示しながら「あなたにもパレスチナとかイラクのお友達がいるでしょう」と言って親子で署名をしました。
 訴えの締めくくりでは動労西日本の出口さんが「闘う国労闘争団と学生に弾圧が集中している。これこそイラク侵略戦争情勢と有事立法体制だ。小泉政権打倒へ今秋決起しよう」と呼びかけました。
 (投稿/M)

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週刊『前進』(2077号5面5)

『前進』ホームページ  メールから

 アメリカの要求で国連が動き、イラクへの核査察が始まろうとしている。
 イラクは、湾岸戦争以来ずっとアメリカ・イギリスの連合軍に監視され、爆撃を受けることもしばしばであり、幾多の市民が殺されている。これは戦地を訪れて写真に残している数多くの社会派カメラマンらが資料として残してもいる。
 日本はかつて沖縄−広島−長崎で莫大な戦争被害をこうむった。こうした戦争の被害をうけたものが、イラク空爆を、「いかなる理由」があろうが「帝国主義者の利害」だろうが、許してよいのか?
 絶対に、帝国主義者の思惑通りにはさせない! 帝国主義には従わないことを強く表明したい。戦争を阻止する闘い、「帝国主義侵略戦争を内乱へ!」転化させるソビエト運動を推進しなくてはならない。
 (男性)

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週刊『前進』(2077号5面6)

日誌 '02  10月23日〜29日
 米日韓が対北朝鮮共同声明
 伊江島で米軍の重量物落下

●武力攻撃事態、定義見直しへ 政府・与党は、有事法制関連3法案のうち、武力攻撃事態法案の「武力攻撃事態」の定義を「武力攻撃事態」と「予測事態」の2段階に分けた上で、「おそれ」の表現も修正することで大筋合意した。政府はこのほか、「国民保護法制」について、各省横断的な検討のために、閣僚で構成する「国民保護法制整備本部」を設置する方針を示した。(23日)
●名護新基地、環境影響評価へ 米軍普天間飛行場の代替施設に伴う環境影響評価(アセスメント)について、那覇防衛施設局は、環境アセスメントの具体的手法を示す「方法書」を作成する業者の選定に向けた手続きを25日から始めると発表した。早ければ2003年末にも海、陸上での現況調査が実施され、06年末頃に着工するという。(24日)
●テロ特措法の基本計画、再延長へ 政府は、テロ対策特措法に基づいてインド洋・アラビア海で米英軍に給油している海上自衛隊の派遣期間を、11月19日から6カ月間再延長する方針を固めた。同時に米英軍以外への燃料提供やイージス艦、P3C哨戒機の派遣など新たな支援内容の検討に入った。(25日)
●「憲法の枠内で、できるだけの自衛権」
小泉首相は参院予算委員会で、石破防衛庁長官が就任前に集団的自衛権の合憲論を主張していた問題で「今の時点で憲法改正は政治課題にのせない。現行憲法の枠内で、できるだけの自衛権を行使するとともに国際協調を果たしたい」と述べた。(25日)
●沖縄伊江村で米軍機から重量物落下 沖縄県伊江村の米軍伊江島補助飛行場近くの民間の牧草地に、米軍の輸送機から重量約60`のポリタンクと閉じたままのパラシュートが落下した。現場は民間地域で約50b離れた場所に農作業中の女性がいた。事故は嘉手納基地所属MC130特殊作戦機から投下されたタンクが施設区域外に落下したもの。28日、島袋伊江村長が米軍に抗議と訓練中止を要求した。同基地周辺での降下訓練で兵士や物資が目標をはずれて落下するミスは復帰後17件、うち8件が96年末のSACO合意以後に集中している。(25日)
●米日韓首脳会談 小泉首相とブッシュ米大統領、金大中韓国大統領が、メキシコ・ロスカボスで北朝鮮の核開発問題について会談し、共同声明を発表した。「迅速かつ検証可能な方法」で、北朝鮮に核開発計画の撤廃を要求していくことで合意、「平和的な解決」の道を探る方針を表明した。(26日)
●米、独自行動を再示唆 ブッシュ大統領は、「もし国連が機能せず、フセインが大量破壊兵器を破棄しない場合、われわれは廃棄させるために先頭に立つ」と述べ、国連安保理で報復措置を伴う対イラク決議が採択されない場合、軍事行動を含む独自の対応に踏み切る可能性を示唆した。(26日)
●日中会談、靖国参拝の中止求める 小泉首相と中国の江沢民主席がロスカボスで会談。江主席は小泉首相の靖国参拝について「この問題は13億の中国人民の感情に触れる問題だ」と、参拝しないように求めた。(27日)
●国民保護法制の輪郭示す 政府は国民保護法制の「輪郭」を示した。罰則について、緊急物資の保管命令のほか、原子力関連施設の被害防止措置命令に違反した場合や警戒区域への立入制限違反も盛り込まれた。国や自治体職員だけでなく、民間業者や一般国民も罰則対象となっている。また「国民の協力」として消火活動や負傷者搬送のほか、日常の避難訓練への参加も要請。放送事業者には「警報や避難指示の放送」を義務化。(29日)
●普天間爆音訴訟 米軍普天間飛行場の爆音に悩む周辺住民200人が、夜間・早朝の飛行差し止めと損害賠償を求めた訴えを那覇地裁沖縄支部に起こした。原告団長は島田善次さん。(29日)

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週刊『前進』(2077号6面1)

反戦自衛官 小多基実夫さんに聞く
アフガン・イラク人民に銃を向けるな 今こそ隊内に侵略に反対する仲間を

 ――自衛隊のインド洋派兵から1年を迎えます。
 アフガニスタンからイラクへと戦争が拡大されようとしています。場合によっては中東全域に戦乱が拡大する可能性もあり、泥沼の侵略戦争になる。
 アフガニスタン侵略戦争に参戦した自衛隊も、もはや撤収できない状況です。米国の同盟国として、撤収は裏切り・敵前逃亡になるから延長と拡大の一途をたどらざるをえない。15年戦争で、日本はずるずると侵略戦争を拡大・長期化させていきましたが、そういう状況が再現されている。相当思い切った反戦運動をやらないといけない。
 湾岸戦争で掃海艇艦隊を派兵してから11年になります。この10年余のPKO(国連平和維持活動)参加などで自衛隊は恒常的に海外展開する軍隊に変わった。それでも建前として「戦争ではない」「戦場ではない」と言ってきた。
 しかし昨年の9・11以後は、明白な戦場に行き、交戦国の一方として参戦している。以前の10年と比べてもまったく違う。イラク侵略戦争は、けた違いに大きい。今回の戦争では、政権転覆−かいらい政権の樹立を狙っている。イラクには巨大な軍隊もある。米軍は、首都バグダッドに踏み込み、長期にわたって占領軍として制圧しなければならない。大量の地上軍の投入が必要となります。
 だから、アフガニスタン戦争に参戦している自衛隊は今後、増強されることはあっても減ることはない。例えばアフガニスタンに展開してきた米軍の精鋭は今後、イラク攻撃の最前線に展開する。その後釜を自衛隊が担うという話もある。
 また米国は、日本に警戒監視のためのP3C哨戒機やイージス艦の派遣や米英軍以外の艦船への燃料提供を求めています。アフガニスタンの「治安維持」や医療・施設部隊も行くとの話もある。今以上に戦場に踏み込んでいくことになる。
 自衛隊では医療・施設部隊の隊員も武器は使えるが、戦闘が専門ではない。だから、こうした部隊を防衛するための戦闘部隊が必要になるはずです。例えば、91年の掃海艇派兵の時も、米の護衛艦が2〜3隻ずっとついていた。しかし今回のような大きな戦争では、自衛隊の「防衛」を自前でやることになる。そうやってアフガニスタンに展開する自衛隊はどんどん大部隊になっていく。事実上、自衛隊がアフガニスタンを制圧する地上軍の一部になる。つまり、自衛隊がアフガニスタン人民の前にいわば宗主国然として登場する。自衛隊兵士がアフガニスタン人民に直接、侵略の銃を向ける、いや殺すことになるのです。これは、自衛隊と戦後日本にとって深刻な転機です。
 ――自衛隊と日本はどう変わろうとしているのでしょうか。
 これまで自衛隊は、「専守防衛」と言ってきた。自衛隊は、日本列島とその周辺での戦争を想定してつくられてきました。地球の裏側での戦争は想定していない。自衛隊の編成や装備、イデオロギーも含めて全部そうです。
 しかし今日の事態はどうでしょうか。海上自衛隊の護衛艦隊とその指揮官に当たる司令4人のうち、国内には1人だけという記事(7・30付東京新聞)がありました。1人はインド洋へ。1人はインド洋から帰国途中。もう1人はハワイでの合同演習に参加。54隻の護衛艦のうち10隻が海外、約10隻は整備でドック入り。補給艦の運用はもうぎりぎりという。
 このようにして海自は、「専守防衛」型から外洋型の海軍に変貌(へんぼう)しようとしているのです。自衛隊が日本海で展開するのとインド洋で展開するのは、まったく違います。アフガニスタン侵略戦争に参戦して、自衛隊は1万`メートル以上の輸送力・補給力を持つ艦隊を運用する能力を持とうとしているのです。これを朝鮮・中国−東アジアに投入する時、独自性を持つ戦争国家になる。
 そして、これと一体なのが有事立法です。北朝鮮への侵略戦争を想定して、戦争放棄の戦後憲法を抹殺して、戦争を合法化し、国家総動員体制をつくろうとしているのです。

 自衛隊が主力の「市街戦」

 ――陸自が米軍と共同の対ゲリラ訓練をしたり、防衛庁と警察庁が両庁創設以来初めての「治安出動訓練」を実施しています。
 自衛隊は、朝鮮戦争(1950〜53年)の時に警察予備隊として創設されました。朝鮮半島に出撃した米軍の穴埋めで、日本国内の治安維持が目的だった。特に祖国を戦場にさせまいとする在日朝鮮人民が反戦闘争に決起するのを恐れ、その弾圧を目的につくられたと思う。自衛隊にとって°建軍の目的″とでもいうべきそのスタンスは今も変わらない。
 現在、自衛隊が準備している治安出動は、70年の時のデモ鎮圧のイメージではありません。
 2年前に、防衛庁と警察庁は「治安出動協定」を全面改定し、治安出動は自衛隊が主力になりました。
 警察は「逮捕」が基本で装備もそれ相応です。しかし自衛隊では逮捕術の訓練をやらない。警察とは武力の発動の仕方が全然違うのです。警察は逮捕して裁判にかけるのが基本。軍隊は「鎮圧」が目的です。軍隊はまず敵を包囲する。それで降伏しない時はせん滅する。だから自衛隊が主力となる治安出動とは「市街戦」を意味するのです。
 そういう意味で、自衛隊を警察よりも主力に据えたということは、政府が人民との関係を、刑務所に入れることから、殺す段階にエスカレートさせたことを意味します。
 自衛隊は最近、米軍と一緒にビル突入−制圧などの市街戦の演習をやっている。東京・練馬の第1師団も政経中枢師団として、市街戦を想定して、戦車よりも動きやすい装甲装輪車を、またヘリコプターの機動力を重視しているようです。

 兵士を戦場に送る有事法

 ――現実の戦争に直面する自衛隊の兵士の意識はどうなのでしょうか。
 これまで自衛隊は「専守防衛」が建前です。編成、装備を始め、有事立法で狙われている法制面、さらに兵士のメンタルの面も含め、外国で戦争をするには「壁」がある。
 確かに自衛隊は、帝国主義の軍隊として日本帝国主義とその利害を守るためにある。しかし、それを意識して入隊する人はまずいない。建前とはいえ、上から下まで「専守防衛」の自衛隊としてつくってきた。ところが今、海外で戦争するようになっている。自衛官は割り切れない気持ちになっています。
 その意味では、有事立法制定を許せば、「国民」の名で、自衛官に戦争を強要することになる。「労働者が自衛隊に協力させられる」と論議されますが、それは自衛隊を戦場に送り、自衛官に戦争をやらせるための「協力」なのです。
 自衛隊には米軍のような兵站など強力な後方支援能力がありません。民間動員や自治体動員など、すべてを動員しないと戦争ができない。それは63年の三矢研究でも明らかです。だから有事立法が必要なのです。
 したがって労働者が協力を拒否すれば、自衛隊だけではとても戦争などできない。労働者の戦争動員拒否は、自衛官を戦場に送らないことでもあるのです。
 過去5年間に300人以上の自衛官が自殺しています。いじめも増えている。矛盾が立場の弱い人へ転嫁され、自殺や病気、退職などに追い込まれている。海外に派兵されている護衛艦の乗組員などは、激務で矛盾が集中しています。
 PKO派兵は、北海道の部隊が多い。北海道の陸自は地元出身者が多い。北海道は過疎地が多くて仕事がない上、この不況です。そういう兵士たちに、「いやなら自衛隊辞めろ」と言わんばかりに海外任務をやらせている。北海道では在日朝鮮人3世の兵士が殴る蹴るの暴行を受けるという差別事件もあった。誰一人それを止めることができない空気がある。いじめる人間が1人いることよりも、止めに入る人間が1人もいない。このことこそが問題なのです。日本の社会の縮図なんです。そういう軍隊が海外に行って戦争をやる時、何をしでかすのか。
 すでに自衛隊は現実のアフガニスタン侵略戦争の戦場に送り込まれ、次はイラク侵略戦争、朝鮮侵略戦争に直面しているのです。
 自衛隊の中に戦争や排外主義に反対する仲間をつくっていかなければならない。普通の労働者の感覚を少しでも育てていくことが必要です。さしあたり少数でもいい。戦争の「最前線」にいる自衛官を想定して活動する反戦運動をつくる必要があると思います。
 街頭での署名に自衛官も応じています。「私も有事法制反対です」と。これは大事な動きです。自衛官も含めて同じ日本の労働者階級なのです。自衛隊に罵声(ばせい)を浴びせても侵略戦争の責任からは逃れられない。「戦争反対」と言う時、それは労働者階級の仲間である自衛官を一人も戦争に行かせないことでなければならないのです。
 (聞き手/本紙・水野慶太)

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週刊『前進』(2077号6面2)

有事立法徹底批判  (6)

 憲法の縛り外し新有事法に
 自衛隊法改正案@ 改悪につづく改悪

 現行も「有事法」

 自衛隊法は、自衛隊の任務、部隊の組織と編成、行動と権限、隊員の身分取り扱いなどを規定した法律だ。これが自衛隊が存在する法的根拠となっている。自衛隊法3条は自衛隊の主な任務を「日本の防衛」「国内の治安維持」と規定している。
 もちろん憲法9条は、戦争放棄を定め「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定している。自衛隊は「自衛権」行使のための必要最小限度の°実力″で°戦力″ではない−−この詭弁(きべん)が自衛隊法のカラクリである。
 自衛隊法も当然ながら有事(戦時)法である。というよりも「戦争放棄」を規定した戦後憲法体系のもとで唯一例外的な有事法として存在してきたのである。自衛隊法76条は、防衛出動命令を受けた自衛隊は「わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」と規定している。つまり防衛戦争という形式のもとで戦争ができると規定しているのだ。
 自衛隊法では防衛出動命令が発せられると、@武力行使、A公共の治安維持、B物資の収用や労働者の徴用、C海上保安庁の統制、D公共電気通信施設の優先利用、E航空法の適用除外、F予備自衛官、即応予備自衛官の招集、G統合部隊の編成、H罰則の強化などの規定が適用される。
 このように現行の自衛隊法自身がすでに決定的な有事(戦時)法として存在している。しかし自衛隊に防衛出動(と治安出動)を命じるだけで、戦争を遂行することはできない。政府全体の臨戦体制をつくり、国家の総力を戦争に動員しなければならない。しかし、そのための有事法制は、これまで自衛隊法しかなかったのだ。
 ここに有事3法案の反動的狙いがある。有事3法案は、武力攻撃事態法を基本法として、北朝鮮・中国侵略戦争を日帝の総力をあげて遂行するための法案だ。
 その中で自衛隊法は、実戦部隊発動の法規として、これらすべての有事法の土台になるものであり、今回の自衛隊法「改正」も一部改正にとどまるものではない。これまでは戦後憲法体系下で強力な縛りをかけられていた自衛隊法が、武力攻撃事態法という基本法と一体で改悪することによって、新たな有事(戦時)法として生命力を吹き込まれるのだ。

 90年代の大変容

 今回の自衛隊法改悪案を検討する前に、90年代から今日までの自衛隊法の改悪についてみておきたい。
 @PKO活動 日帝は、91年の湾岸戦争後、自衛隊掃海艇のペルシャ湾派兵を強行(91年4月)し、92年8月に「PKO(国連平和維持活動)協力法」を成立させた。自衛隊法には新たに100条の7が追加され、自衛隊に「国際平和協力活動を行わせ」ることになった。100条の7とPKO協力法に基づく自衛隊の海外派兵は、カンボジア(92〜93年)、モザンビーク(93〜95年)、ルワンダ(94年)、ゴラン高原(96年〜現在)、東ティモール(99〜00年、02年〜現在)に対して行われた。
 A在外日本人救出 在外日本人救出については、94年に100条の8の新設で外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して航空機で輸送ができるようにした。99年の改悪では輸送手段に船舶および搭載ヘリコプターで輸送することも可能になった。その際の武器の使用も合法化された。
 BACSA 96年10月に日米兵站支援物品役務相互提供協定(ACSA)に基づき、米軍に対して物品や役務が提供できるようになった(100条の9)。
 C後方地域支援 99年の周辺事態法と00年船舶検査(臨検)活動法で、「周辺地域」における後方地域支援としての物品と役務の提供などを可能とする100条の10が新設された。

 武器使用し鎮圧

 01年10月のテロ対策特措法の関連法として自衛隊法もD〜Gの改悪がされた。
 D警護出動 自衛隊や米軍の施設・区域の警護出動を新設した(81条の2)。
 E対テロ戦争支援 対テロ戦争を行う外国軍への物品・役務の提供などが可能になった(附則17、18)。その際の武器の使用も合法化されている。これによってインド洋へ派兵した。
 F武器使用権限強化 警護出動や海上警備行動、治安出動時などの武器使用権限が強化された(90条〜93条)。特に注目を要するのは、治安出動時に自衛隊は、相手が小銃、機関銃、砲、化学・生物兵器などの武器を所持している疑いがある時は、武器を使用して鎮圧できることになった(90条第3項)ことである。これまで治安出動時の自衛隊の権限は警職法を準用してきたことを考えると恐るべきエスカレーションである。また治安出動前に武器を携行した自衛隊部隊に情報収集を命じることができる規定(79条の2)も新設された。
 G防衛秘密保護のための罰則の強化 防衛秘密の指定範囲が大幅に拡大し、罰則も1年以下の懲役または3万円以下の罰金から5年以下の懲役に強化された。対象も大幅拡大し、自衛隊員、関係する国の職員、自衛隊と契約関係のある民間業者なども処罰対象になった。国家機密法の導入そのものである(96条の2、122条)。
 以上のように、91年湾岸戦争以降の自衛隊法の諸改悪で、自衛隊は恒常的な海外派兵を行うようになった。周辺事態法の制定で米軍との集団的自衛権の行使に完全に踏み込み、テロ対策特措法で、ついに戦時の戦場への自衛隊の展開を行うに至った(アフガニスタン侵略戦争)。さらに国家機密法の導入や治安出動時の権限の大幅な拡大を実現してきたのである。
 (つづく)
 (片瀬 涼)

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週刊『前進』(2077号6面3)

紹介 共産主義者 134号 イラク・有事法決戦論
 ●米帝世界戦争戦略と沖縄闘争 銘刈論文
 ●4同志奪還へ東京地裁包囲を 坂本論文

 今秋決戦の武器

 「イラク反戦闘争、有事立法大決戦」を特集とする本号を、大激動開始のただ中で全世界人民との国際的連帯を実現する闘いのための巨弾として送りたい。
 中央労働者組織委員会による巻頭論文「イラク攻撃阻止し階級的労働運動の創造へ」は、階級的労働運動の創造という戦略的課題を中心に、有事立法と国鉄決戦という労働運動の二大戦線をめぐる結合論・戦略論を展開している。
 前半では国鉄決戦方針の根底的形成のために、4党合意に行き着いた国労本部、チャレンジ・反動革同の「全面一括解決要求」路線という「政治決着」=「和解」路線を全面的に批判した。90年3月、清算事業団期限切れ時点にさかのぼってその屈服と敗北主義の原点をえぐっている。そしてこれとの対比で分割・民営化以来の動労千葉の闘争論を総括した。この論考は、国労の戦闘的再生論としてばかりでなく連合労働運動を打倒し、歴史的登場に挑戦する階級的労働運動論の核心に位置する。
 後半は、5・16「有事関連3法案に対する連合の見解」を全面的に批判し、侵略戦争突入情勢における連合の帝国主義的労働運動としての本質を徹底的に暴いている。
 特に「平和フォーラム」のイデオロギー的起源になっている「21世紀臨調」でいう「人間の安全保障」論の具体的な批判は、第2インター崩壊に等しい情勢を歴史的にのりこえる労働運動の実践的内容である。自治労を始めとする現場労働者にとって不可欠なイデオロギー的武器になるに違いない。
 小谷同志の「帝国主義的排外主義をうち砕け」は、いま帝国主義の侵略戦争切迫下で吹き荒れる排外主義との対決に焦点をあて、排外主義の階級的本質、労働者人民のこれとの闘いの死活性について打ち出した。
 本論文の核心的提起は、現情勢下でレーニンの革命的祖国敗北主義の実践をいかにかちとるかにある。レーニン帝国主義論を土台にした帝国主義国プロレタリアートの自己解放の立場に立った世界革命戦略と被抑圧民族人民との国際主義的連帯の貫徹ということである。そこには70年以来の「連帯し、侵略を内乱へ」の戦略的総路線の実践の地平、さらに9・11によって革共同が自己批判的に総括した7・7精神の再形成の意義を踏まえ、7・7路線貫徹の正念場を迎えていることの確認がある。その上に立って、米帝の「対テロ」、日帝・小泉の訪朝と有事立法でうたわれているキャンペーンを具体的に批判し、侵略正当化の論理を完膚なきまでにえぐっている。ここからまた、日本共産党スターリン主義とカクマルの訪朝問題、有事立法に対する主張の帝国主義の先兵ぶりを暴いている。排外主義と闘う労働者が求める絶好のテーマであろう。
 銘刈同志の沖縄闘争論は米帝の新世界戦略下における沖縄問題の新たな展開を踏まえて革共同第6回大会の沖縄闘争論を深化させている。
 本論文は、ブッシュの新帝国主義宣言=世界戦争計画の全貌(ぜんぼう)と、そこで狙われている中国の体制転覆と日米関係の変化をダイナミックにとらえ、日米帝の争闘戦的矛盾と対立の先鋭化を浮き彫りにした。このことは必然的に安保の再定義をもこえた新段階ということであり、日米帝双方から沖縄と米軍基地の新たな戦略的位置を転換させ、安保・沖縄問題を質的にまったく新しい局面にたたきこむものである。以上の論旨の基本軸を立てて有事立法闘争と沖縄闘争の一体性を確認している。03年沖縄闘争の戦略的展望を示す重要論文である。
 司法改革批判は、小泉構造改革のかなめとされている司法制度改革の批判。有事立法と一体の戦争国家への国家改造攻撃に迫った。民事・刑事の両面にわたって戦後司法体系を根本的に転換する反革命を簡明に暴いている。
 反軍闘争論は、侵略戦争突入下で自衛隊兵士がぎりぎりの状況に直面することを明確にし、日本階級闘争の核心点における兵士の獲得をめぐる攻防の切迫性を突き出し、これに対する革命党の緊急課題を訴えている。

 カクマルを痛撃

 カクマル批判は、今春カクマルが発行した『内ゲバにみる警備公安警察の犯罪』なるカクマル謀略論の残骸(ざんがい)の寄せ集め本への壊滅的批判。この本はこれまでの謀略論の大破産の墓標である。カクマルの組織的危機の現状を自己暴露するものとなっている。本論文は、このことを鮮明にし、あらためて彼らの反革命的狙いを踏みつぶした痛快な読みものだ。
 坂本論文は、迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧と闘う4同志奪還に向けた渾身(こんしん)のアピールである。未決勾留16年目に突入した無実の4同志奪還の闘いは、有事立法攻撃下で激化する治安弾圧との闘いの一環であり、その最先端の激突である。本論文は超長期未決勾留の非人間性・拷問的人権侵害の実態をつぶさに暴き、これと対決し日々勝利し続けている被告同志たちの苦闘が革共同と労働者人民自身の勝利であることを強烈に伝えている。この闘いに肉薄し、苦闘と決意を共有しなければならない。4同志奪還へ必読であることを強調したい。あわせて本誌131号特集「治安弾圧粉砕、長期獄中同志奪還へ」を全面的に活用してほしい。
 本号を学び、11−12月の攻勢で階級攻防の主導権を奪取し、03年春闘へ。

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週刊『前進』(2077号7面1)

プーチンの大虐殺を弾劾する
チェチェン人民10・23決起と連帯し米・ロの世界戦争を断固阻止せよ

 チェチェン人戦士は何を訴えたのか

 米帝ブッシュ政権によるイラク侵略戦争が超切迫している中で、21世紀世界の抱える諸矛盾の最大の噴火口の一つ、ロシアで重大な事態が勃発(ぼっぱつ)した。ロシア・プーチン体制によるチェチェン侵略戦争と真っ向から対決して民族独立を求めて闘っているチェチェンの地から五十数人のチェチェン人戦士男女が10月23日、すさまじいゲリラ的蜂起戦に決起したのだ。彼らは、プーチン体制の本拠であるモスクワに突入し、文化宮殿劇場を武装占拠した。
 チェチェン攻撃によって殺された兵士の妻たちを始めとする全員の自爆覚悟の決起、観客・劇場スタッフら820人のいわゆる人質化、死なばもろともという非常手段に訴えなければならないほど、彼らの苦しみと怒りが頂点に達していたことを、われわれは真っ向から受けとめなければならない。
 チェチェンの五十数人のゲリラ戦士たちの訴えは、「唯一の要求はチェチェンでの戦争を終わらせることだ」「ロシア軍は1週間以内にチェチェンから撤退を開始せよ」「われわれは祖国チェチェンでの戦争を止め、神のために死ぬためにロシアの首都にやってきた」というものであった。
 その闘いは、エリツィン―プーチンと続き、ますます激化する大ロシア主義の侵略と皆殺し戦争に対する、チェチェン人民の悲痛な怒りの大爆発である。それは、世紀を超えてチェチェン独立を求める被抑圧民族の誇りに満ちた解放戦争である。また昨年9・11反米ゲリラ戦をもって燃え上がるムスリム人民の全世界的な蜂起戦の一翼を担った闘いでもある。
 プーチン体制の懐に突入しての戦闘は、何よりも、ロシア人民および全世界人民にチェチェンの事態を懸命に告発し、連帯を切実に求めた決起であった。人質を取る代償に自らの命を投げ出して、停戦とロシア軍撤退という最低限の要求(独立の要求ではない)を掲げるという正義性に立脚した、かつ特殊的・極限的な形態をとらざるをえないぎりぎりのところからの蜂起戦であった。
 だが、ロシア・プーチンは、武装占拠が起こるや否や、特殊作戦の準備を開始し、同時に内外に「アルカイダと結びついた国際テロリスト」という宣伝を展開した。26日、「武装グループが人質を殺し始めた」という虚構を口実に、ついに連邦保安局特殊部隊による一方的な突入作戦を強行した。チェチェン人戦士たちが、ロシア軍がチェチェンから撤退を開始すれば占拠を解き人質を解放するという真剣な提案をしていたにもかかわらずである。
 チェチェンの戦士たちは毒ガスで一瞬のうちに倒され戦闘不可能となった状態で、銃でこめかみを撃たれ、とどめをさされて殺された。それは武装制圧下の処刑行為であり、とうてい許されない。プーチン政権の徹底した秘匿と報道管制により詳細は不明だが、使用された毒ガスは化学兵器禁止条約で禁止されているものである可能性が強い。
 その毒ガスは、劇場内にいたロシア人民・外国人をも無差別に大量に殺害した。その数は、なんと117人にのぼり、約650人が病院に運び込まれた。うち重体が45人もおり、30日現在2人が亡くなり、なお入院中が230人もいるという。プーチンは、人質とされた人民の生命をいささかも顧みず、どうせテロリストの自爆によって死ぬ運命だから、いっそのことせん滅作戦の犠牲にしてもかまわないと、特殊部隊に劇場内の空調設備で毒ガスを流させ、壁を爆破して突撃させたのである。
 その全体が、なんという暴挙か、なんという無法で残酷なことか!
 とまれ、この10月23日から26日にいたる「モスクワの4日間」は、全世界の労働者階級人民になんを突きつけ、なんを問うているのか。われわれは、米帝ブッシュ政権による世界戦争計画遂行―第3次世界大戦不可避の情勢と結びつけて、しっかりととらえ返さなければならないと考える。

 世界戦争の情勢がさらに加速された

 まず第一に、革共同は、チェチェン人戦士男女の命を投げ出した決起を体全体で受けとめ、プーチンによる10月26日の大虐殺を徹底弾劾するとともに、彼ら戦士への限りない連帯と哀悼の意を表明する。
 プーチンは、チェチェンの独立を認めず、マスハドフ大統領を排除し、ロシア直轄とし、ムスリム武装勢力への掃討作戦を強行し続けている。94年〜96年、99年から現在にいたる2度のチェチェン攻撃戦争―空爆によって、首都ジョハル(グロズヌイ)は廃虚と化し、第1次戦争で8〜10万人、第2次戦争で6〜8万人のチェチェン人民が死亡したと推計されている。民間人への無差別虐殺事件がいくつも暴露されている。80万人のチェチェン人民の20万人以上が難民となってチェチェン外に脱出し、迫害下に置かれている。
 だが、世界はチェチェンの事態を見殺しにしてきたのではなかったか。昨年9・11反米ゲリラ戦以降は、米帝を始めとする帝国主義諸国は、それまではプーチンのチェチェン戦争を非難するポーズを示していたのに、一転して、プーチンの戦争はテロとの闘いだから正義だ、支持するとしてきた。そのことがプーチンを励まし、チェチェン人民にさらに多大な犠牲を強いるものとなったのだ。
 今回のチェチェン人戦士たちは、“ロシア人よ、全世界の人民よ、チェチェンで起こっている惨劇を忘れるな、ともに虐殺戦争をやめさせるよう立ち上がってくれ”と必死の告発を行ったのだ。
 われわれは、チェチェンの民族独立を支持し、ロシアによるチェチェン虐殺戦争を阻止するために闘うことを厳粛に誓う。同時に、プーチンの毒ガス作戦の犠牲となったロシア人民の死の意味を受けとめ、これをのりこえるためにはどう闘うべきかをロシアの労働者階級人民とともに考え、ともにプーチン体制打倒・ロシア第2革命(1917年ロシア革命を引き継ぐ反帝国主義・反スターリン主義第2革命)へと進むことを決意する。
 第二に、世界は今、米帝のブッシュ・ドクトリンを軸に動いており、そこで勃発した「モスクワの4日間」は、ブッシュ・ドクトリンに反作用を及ぼし、イラク侵略戦争突入―世界戦争激化の情勢をさらに強く加速させたのである。
 ブッシュ・ドクトリンは、イスラム世界はテロの温床だ、今ある政権を代えなければならないと公言しているのだ。この米帝のイラク侵略戦争情勢の中で、チェチェン人戦士たちは猛然と決起した。この闘いは、イラク攻撃がフセイン政権転覆―バグダッド突入―イラク人民大虐殺として今まさに行われようとすることに対する、全世界のムスリム人民の怒りの反撃の一環でもある。
 米帝の世界戦争計画が、米帝の国益・国家目的から立てられ、実行されようとしているにもかかわらず、それは米帝の思惑を超え、コントロールを超えた事態を大きく生み出さざるをえない。米帝自身がどうにもならない泥沼にはまっていくことは明らかである。
 実際、プーチンは10・26劇場突入の直後から、チェチェンへの掃討作戦を強めている。難民キャンプを封鎖し、チェチェン軍事制圧、チェチェン民族皆殺しに向かって凶暴化を強めている。それはまた、チェチェンに接するカスピ海石油資源・パイプラインの確保のための拠点を握ろうというものでもある。そこには、石油争奪をめぐる、対米対抗の強盗戦争という性格がある。しかも、チェチェン人民の不屈の抵抗闘争に迎え撃たれる以上、それは、ますます泥沼化していくしかない。
 米帝は、それゆえますますイラク攻撃に全体重をかけ、フセイン後の米軍武装占領、中東石油の排他的支配に向けて、一層凶暴な侵略戦争をエスカレートさせようとする。米帝のブッシュ・ドクトリンは、恐るべき世界戦争という地獄の釜の底を割るものである。そして、ロシア―チェチェン問題の矛盾の爆発は、今一つの鋭い裂け目を開けるものなのだ。

 被抑圧民族と団結して国際的内乱を

 第三に、チェチェン問題は終わったのではなく、これから本格化するのであり、ロシア・プーチン体制打倒へ、チェチェン人民を始めとする被抑圧諸民族人民の総決起、そしてロシアの労働者階級人民の決起が新たに開始される情勢が切り開かれたのである。
 プーチンの強行作戦は高い支持率をはじき出したという。しかし、それをもてはやすのは浅薄な状況認識でしかない。チェチェン人戦士男女の悲痛な訴えは、ロシアの労働者階級人民の中にあるプーチンのチェチェン侵略戦争への疑問、その白色テロ的国内支配への不信に決定的に火をつけた。すでに、チェチェンに派兵されているロシア軍兵士の死者は2度の戦争で公式発表でも1万人を数え、中には厭戦(えんせん)気分が充満しつつあり、チェチェン人民の果敢な解放戦争をとらえ返すべきだという気運が起こり始めていた。今回人質とされた人びとの家族の中からは、劇場周辺で「チェチェン戦争をやめろ」という声が上がり、デモが行われた。プーチンは、ある意味で、チェチェン人戦士の決起以上にロシア人民の中からチェチェン人民への共感につながる契機が生み出されることに極度に恐怖したのだ。だからプーチンは、あれほど非人道的で一方的な強行作戦をゴーしたのだ。
 ソ連崩壊以後、今やブッシュ・ドクトリンで覆い尽くされるかのような世界にあって、ロシア問題は帝国主義の世界体系にとっては、帝国主義体制からはみ出していながら、帝国主義体制に組み入れられ、超反動的で逆行的な資本主義化政策に突き進む矛盾体として、巨大な破綻(はたん)点をなしている。17年革命によってかちとられた革命ロシアがスターリニストレジームという反革命体制に変質したそのまた再反革命体制として、エリツィン体制とそれをより徹底化したプーチン体制がある。プーチン体制は、資本主義化政策の系統的な遂行を狙い、その矛盾ののりきりを強権的国家権力の形成と大ロシア主義・排外主義・愛国主義とに求め、とりわけチェチェンへの攻勢的な侵略戦争で成立している体制である。そうしたロシアの絶望的危機性から発生する軍事的・政治的行動は世界危機を激成する要因となっている。ロシアの動きが帝国主義の侵略戦争の遂行上の絶好の契機と口実に転化される傾向はますます強くなるのである(革共同第6回大会第3報告Y章参照)。
 チェチェン人民の不屈の民族解放、民族独立の闘いは、モスクワ劇場武装占拠の死をかけた闘いをとおして、全世界のムスリム人民を鼓舞激励したばかりではない。ロシアの労働者階級人民の中に、大ロシア主義・排外主義を打ち破って、チェチェン問題をめぐる階級的分岐を確実につくり出すものとなった。虐殺されたチェチェン人戦士男女の痛切な怒りのアピールは、プーチンの逆行的資本主義政策の圧政に苦しむロシア労働者人民の階級的魂に間違いなくしっかりと受けとめられただろう。
 昨年9・11反米ゲリラ戦によって世界史的情勢が一変した中で、「モスクワの4日間」は、9・11情勢の一環として国際的内乱を爆発的に推し進めるものとなった。全世界のムスリム人民と帝国主義足下の労働者階級の団結した力で、この開始された国際的内乱をとことん推し進めよう。チェチェン人民の流血と血叫びに真っ向からこたえ、10・26モスクワ劇場大虐殺を徹底弾劾しよう。米帝・日帝−国際帝国主義およびロシア・プーチンによる「反テロ」を名目とする侵略戦争・被抑圧民族虐殺戦争をなんとしても阻止しよう。第3次世界大戦の地獄の道か、それとも反帝国主義・反スターリン主義世界革命の道か――そのどちらかしかない。日本の地からイラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕―北朝鮮侵略戦争阻止の旗を今こそ高く掲げ、戦後最大の反戦闘争を大衆的に大爆発させよう。

 チェチェン

 ロシア南部の人口約80万人、岩手県ほどの面積のムスリム(イスラム教徒)中心の共和国。首都ジョハル(グロズヌイはロシア側の呼称)。ソ連時代には年間400万dの石油を産出、石油精製基地があった。カスピ海から黒海へのパイプラインが通る。
 1859年、ロシアに征服される。1917年ロシア革命で自治を獲得、ソビエト政権側で革命戦争。36年、チェチェン・イングーシ自治共和国成立。44年、対独協力のかどで民族全体が中央アジア、シベリアへ強制移住。57年、帰還を許され、自治共和国再建。91年11月、ドゥダエフ大統領のもとに独立宣言。92年6月にイングーシ共和国が分離。
 94年12月、ロシア軍が侵攻。96年8月には和平協定を結んだが、5年間は地位を棚上げに。97年1月、ロシア軍が撤退完了、マスハドフ大統領を選出。97年3月にロシアと「特別な地位」を認めるとの協定を結ぶ。99年9月、ロシア軍が再侵攻。

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週刊『前進』(2077号7面2)

戦争と排外主義の先兵カクマル 米帝ブッシュ論で無残な破産
 工藤 俊夫

 米帝のイラク侵略戦争の切迫という重大情勢の中で、ファシスト・カクマルは今、深刻な政治的・思想的・組織的危機に陥っている。端的に言えば、9・11以後の現代帝国主義の歴史的危機の構造と米帝ブッシュの世界戦争戦略を直視することができず、綱領的・路線的崩壊とアリバイ的「反戦闘争」の底の浅さをさらけだしている。したがって、彼らはただ「戦争狂(ママ)ブッシュ」などという差別主義丸出しの言葉をもてあそぶことしかできない。政治党派としてカクマルは破滅の道へ今一歩踏み出したのだ。

 米帝ブッシュの世界戦争計画を全く見据えず

 カクマル反革命通信『解放』10月14日号に、「アングロアメリカン帝国主義のイラク侵略戦争を絶対に阻止せよ」というタイトルの「アフガン空爆開始一周年に際して全世界に訴える」なる声明が出された。見かけだけは大仰に、アメリカ、ヨーロッパ、「中洋・アラブ」、日本の人民に対して尊大かつ傲慢(ごうまん)に説教しているが、中身は差別主義と排外主義に満ちた、実に空虚で無内容な駄文である。カクマルはこの「アピール」を『解放』号外にして各地でばらまいている。
 「アングロアメリカン帝国主義」などという規定は、そもそもアメリカ帝国主義に対する階級的・科学的な規定ではなく、人種差別主義の用語であり、日独伊3国防共協定の立場を示すものである。カクマルは、米帝がなぜここまで激しく戦争をやろうとしているのかという理由を、こうした人種主義や「戦争狂(ママ)ブッシュ」という差別主義的規定で説明しようとしている。今やカクマルは、ブッシュが戦争が好きだから戦争をやろうとしているという説明しかできなくなっているのだ。
 われわれは、米帝が帝国主義であるかぎり、それ以外に選択の余地のない世界戦争に突進しているのだという、いわば帝国主義戦争の必然性、現代帝国主義の歴史的破綻と基本矛盾の爆発を明確にしなければならない。米帝ブッシュのイラク侵略戦争との闘いは、そうした次元で根本的に構えきらないかぎり、およそ闘えないものなのだ。この時に、カクマルは問題の本質をごまかし、一切をブッシュ個人の問題にすりかえようというのだ。
 カクマルは、昨年秋のQDR(4年ごとの戦力見直し)、今年のブッシュ年頭教書、国防報告、さらに9月20日に発表されたブッシュ・ドクトリンなどの恐るべき内容を真っ向から対象化することを避け続けている。ブッシュのイラク攻撃を語りながら、これらを無視するのは驚くべきことである。
 ブッシュ・ドクトリン(米国の国家安全保障戦略)は、米帝の「新帝国主義宣言」というべきものである。そこでは、「テロリストや独裁者の脅威から平和を守る」とか、「自由で開かれた社会をすべての大陸に奨励する」ということを掲げ、「必要とあれば、単独行動をためらわず、先制する形で自衛権を行使する」と宣言している。それは、ソ連崩壊後唯一の超大国となった米帝がその圧倒的な軍事力をもって全世界を制圧するということであり、米帝にたてつくものはどんな集団であれ、国家であれ、力をもってねじ伏せるということである。
 米帝ブッシュがイラク・フセイン政権に、「大量破壊兵器」や、「アルカイダとの関係」などをデッチあげ、何がなんでも戦争を仕掛けることをためらわないのは、中東石油の独占的強奪のために、イラクにかいらい政権を打ち建て、新たな植民地主義支配を開始しようとしているからだ。
 米帝をこうした行動に突き動かしているものは、9・11反米ゲリラ戦の世界史的衝撃である。米帝の戦後世界支配体制と新植民地主義体制の歴史的矛盾が爆発し、全世界のムスリム人民の米帝に対する怒りが沸騰点に達していること、それが特殊的・極限的ゲリラ戦闘として米本国内にまで波及した事実の前に、米帝は史上かつてない体制存亡の危機にたたき込まれているのである。
 ここから、全世界のあらゆるテロ勢力と見なしたもの、そしてその温床と見なした国へ、9・11型の攻撃を受ける前に先制攻撃を行ってでも壊滅しようとしている。しかも、米帝はそれを「自由で開かれた社会をすべての大陸に奨励する」と言って、中国を体制転覆する戦争へとエスカレートしようとしているのだ。したがって、それは無際限であり、泥沼の道であり、破滅的なコースなのである。
 カクマルには、米帝ブッシュのイラク攻撃がこうした世界戦争の第一歩であり、だからこそ国際反戦闘争の発展はこの米帝(国際帝国主義)との真っ向からの対決となるのだという核心がまるで座っていない。彼らの「国際アピール」なるものは、カクマルが反戦闘争に介入・破壊するための、そして左翼の仮面をかぶり続けるためのインチキきわまりないものだ。

 9・11「ジハード論」が破産して再び「謀略論」へ

 カクマル「反戦闘争」論のもうひとつの破綻点は、9・11以来の「ジハード自爆」論を後景化させ、またぞろ旧来の「謀略論」に舞い戻っていることである。
 9・11の時も、最初は「プーチンの謀略」と口走っていた。だが、カクマル頭目・黒田寛一は、「ジハード自爆への感動」を叫び、カクマル全体がこれに右へならえして、礼賛論を満展開してきた。
 黒田は『ヤンキーダム終焉(しゅうえん)の端初』という駄文を書き、その冒頭で次のように言う。
 「嗚呼(ああ)! 濛々(もうもう)たる黒煙に包まれ、紅蓮(ぐれん)の炎を吹きて、轟(とどろ)き崩れ落ちたり……夢ならず、擬似現実にもあらず。これ、うつつなる。げにもそは芸術なる!」
 なんとこれをカクマル内部では声に出して朗読する運動をやっているのだ。今この「ヤンキーダム終焉の端初」の感想文運動が『解放』紙上で続いている。「誰がやったのか、CIAかKGBかなどとつまらない解釈にうつつを抜かしていたのが私だ。誰がやったのかという問題は、さしあたりどうでも良いことではないか」(同10・7号)
 それにしても、「CIAがやったのかKGBかなどとつまらない解釈にうつつを抜かしてきた」のは誰なのか! 二十数年にわたって世の中のすべての事象を「謀略論」を基軸にねじ曲げて理解してきたのは黒田その人だったのではないか! ところが9・11後はグラグラの動揺を続け、「謀略論」的理解は「客観主義」で、「無感動」で、「つまらない解釈」であるということになった。黒田は、「帝国主義国プロレタリアートの主体性」の立場を根底から否定し、「イスラムジハード万歳論」に完全に移行したのだ。
 だが、実はこれではカクマルの延命策にはならなかった。なぜなら、カクマルの「被抑圧民族人民との連帯論」はまったくのまやかしでしかないからだ。
 9・11反米ゲリラは、ムスリム人民の戦いののろしであり、今後永続的に全世界で同様の闘いが繰り広げられていくことは必至である。9・11の1周年を前後して次々に闘いが巻き起こった。10月6日、イエメン沖でのフランス船籍の大型石油タンカーの爆発・炎上。10月12日、インドネシア・バリ島のディスコでの爆弾炸裂、200人近くが死亡した事件。これらに対して、カクマルは、イエメンの事件については「陰の主人公はアメリカ」(『解放』10・21号)、バリ島事件については「プーンと臭ってくるのは、例の極悪超大国の戦争屋どもの“体臭”」(同10・28号)と限りなく「謀略論」の世界に舞い戻っている。
 カクマルの10・20「反戦闘争」では、カクマル代表が「一連の爆弾テロルは、アメリカCIAならびに米軍特殊部隊がひきおこした一大謀略である」と断言した。米帝のイラク侵略戦争の切迫に対するムスリム人民の怒りの爆発と真っ向から向き合おうとはしていないのである。
 それは9・11に対するカクマルの議論のペテン性を逆に示している。
 カクマルは、遠いニューヨークやワシントンで起こったゲリラ戦争には、「ヤンキーざまあみろ」という反米民族主義丸出しで喝采を送るが、だんだん日本に近づいてくると、浮き足立ってくる。9・11は「ジハード自爆」で、バリ島の爆弾はどうして「ジハード」ではないと断定できるのか。確たる根拠はないではないか。旧態依然たる「謀略論」の推察、憶測にすぎないのだ。

 米日帝の北朝鮮侵略戦争を否定する犯罪的主張

 もうひとつ、カクマルの今日の惨状を表すものは、米帝の世界戦争計画のもとでの日帝の対北朝鮮外交に対するデタラメな議論である。カクマルは8月30日に小泉訪朝計画が発表された当初、判断停止に陥り、まったく反応できなかった。これには理由がある。
 カクマルは長年にわたって、「帝国主義の朝鮮侵略戦争など中核派の思い描いた空想だ」と言ってきた。有事立法という文字どおり朝鮮侵略戦争(北朝鮮・中国侵略戦争)を直接に意図した戦争立法に対しても、あくまでも朝鮮侵略戦争の切迫を認めないことをもってその党派性としてきた。したがってカクマルは、日帝・小泉が訪朝し、日帝の侵略外交を開始したことにまったく対応できなくなってしまったのだ。
 その後、ようやくカクマルが言ったことは、「金正日政権の捨て身の揺さぶり」「『謝罪』を武器にした対日平和攻勢」「プーチンは黒子として米・日離間政策を演出した」「金正日のバクチはまんまと成功した」「オメオメと(9・17ピョンヤン宣言に調印し)譲歩した小泉」(同9・30号)というものであった。
 カクマルは、事態を転倒させ、北朝鮮政権が事態のヘゲモニーを握っており、その前に小泉がほんろうされているように描いたのである。
 しかも、カクマルは拉致問題に関して、拉致議連とまったく同一の立場から小泉を非難・弾劾し始めた。カクマルの「日本人拉致は北朝鮮の国家的犯罪」というキャンペーンは、日帝内の最も悪質な排外主義者と同じ立場から、「北朝鮮への制裁」を要求する主張である。「国家的犯罪」→「制裁要求」→「戦争的手段による体制転覆」という論理以外の何ものでもない。それは北朝鮮スターリン主義=金正日の反人民的な行為を、朝鮮人民の民族解放闘争と連帯する立場から革命的に批判することとはおよそ無縁である。
 反スターリン主義・革命的共産主義の立場、7・7的な民族解放・革命戦争との連帯の立場からではなく、北朝鮮が日本(人)に迷惑をかけているのは許せないという性格のものでしかない。何よりも金正日が朝鮮人民の闘いを裏切り、南北分断打破=革命的統一の闘いに敵対していることが断罪点にのぼらない。そういう問題意識は皆無なのだ。
 しかもここでは、米日帝が北朝鮮の転覆をめざし、侵略と戦争の政治的軍事的重圧を加えていることは何も語られない。この核心点をあいまいにして「排外主義的ナショナリズムの流布」を許さないなどというのは、アリバイ的であり、米日帝の朝鮮侵略戦争攻撃を免罪するものである。
 結局、カクマルは、米日帝のイラク侵略戦争に対する闘いにおいても、それに対するムスリム人民の決起に対する態度においても、北朝鮮に対する侵略と戦争の攻撃に対する態度においても、いずれも帝国主義と真っ向から対決する(それは「連帯し侵略を内乱へ」「革命的祖国敗北主義」の闘い以外にありえない)のではなく、ただアリバイ的に、デタラメなおしゃべりをしている存在でしかないことを、さらけだしているのだ。
 9・11以後1年にして、カクマルの化けの皮は完全にはがれた。ファシスト・カクマルの介入と破壊の攻撃を粉砕し、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の大決起をつくりだそう。

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週刊『前進』(2077号8面1)

弾圧と闘う 16年もの未決勾留許すな
 十万署名運動と力を合わせ4同志即時保釈へ総決起を
  迎賓館・横田爆取デッチあげ裁判被告団事務局

 正念場迎えた闘い

 迎賓館・横田爆取デッチあげ裁判を闘う4同志の保釈奪還闘争は今まさに最大の正念場を迎えている。
 須賀武敏同志、十亀弘史同志、板垣宏同志への長期未決勾留は、1987年の逮捕以来、今秋10月でついに16年目に突入した。93年に逮捕された福嶋昌男同志への未決勾留も10年目に入っている。4同志は9月24日に日弁連の人権擁護委員会に人権救済の申立を行った。また須賀・十亀・板垣の3同志は同日、東京地裁刑事第11部に第6次の保釈請求を提出した。10月22日には、板垣同志への初の医療鑑定が実施され、長期拘禁こそ健康破壊の一切の原因であることがますます明らかになっている。
 他方で3同志の裁判は、昨年秋から始まった弁護側立証が最後の大詰めの段階を迎えている。デッチあげ弾圧を粉砕して無実・無罪の判決を文字どおり実力でもぎとるのか、極反動的な有罪判決を許すのかをかけた最高度に白熱した攻防が火を噴いている。ここにおいて16年もの未決勾留継続はそのあまりの不当性ゆえに、検事と裁判官を否応なくぎりぎりと土壇場に追いつめるものとなっている。
 今や、この11―12月が4同志の保釈奪還にとって掛け値なしに最大最高の決戦の場となった。4同志奪還の保釈署名運動の力は、それ自身が裁判の帰すうを決する。死力を尽くして、なんとしてもここで絶対に歴史的な勝利を切り開こう。
 すでに、「不当な長期勾留をやめさせるために! 十万人保釈署名運動」を推進する弁護士、学者、宗教者などの闘う諸人士が、被告家族とともに全力で保釈要求の闘争に立ち上がっている。11月23日には、十万人保釈署名運動の主催による「判決なしに16年・今すぐ4人をとりもどそう11・23集会」が東京都内で開催される。集会では、元裁判官からの発言も予定されている。4同志への違憲・違法な超長期未決勾留を有事立法攻撃と一体の重大な人権侵害事件としてとらえた多くの人びとが、思想的政治的立場をこえて、この前代未聞の弾圧を粉砕するという一点で結束して行動を開始しているのだ。
 十万人保釈署名運動の諸人士の呼びかけにこたえて、全党の同志が今こそ4同志奪還へ総決起しよう。党外の人士や大衆が、4同志への弾圧を「明日のわが身」とみなして続々と闘いを開始している時に、党そのものが先頭に立たないでどうするのか。闘う人民との共同の力で署名運動の飛躍的前進を切り開き、内外のあらゆる団体や個人に訴えて一大社会問題へと押し上げよう。11・23集会に結集し、その大成功をともにかちとろう。
 この闘いと結合して、1億円保釈金カンパの完全達成へさらに全力で奮闘しよう。岩をもうがつ執念で、無罪判決の獲得へ向かって攻めのぼろう。

 広がる社会的反響

 「判決なしに獄中16年」の現実は今や、人々の驚きと怒りをきわめて広範な規模で呼び起こすものとなっている。10月11日付の週刊『法律新聞』は4同志の人権救済申立を取り上げ、次のように論評した。
 「逮捕した人を一審判決も下さないまま、十五年間も拘置所に勾留し続ける国がある。こう聞けば、どこの『人権後進国』の話だと思う人もいるだろう。しかし残念ながら、紛れもなく、これはわが国で現在起きていることなのである」
 「『裁判が終わらないうちからの刑の先取り』と彼らは言う。ここにこのケースのもう一つの問題がある。彼らのような公安事件にみられる長期勾留は、政治的な社会隔離政策ともとれる一面があるからだ。……有事立法・改憲への動きと重なる、戦時体制としての政治犯に対する予防拘禁の復活。彼らの長期勾留は暗黒の未来への予兆にもみえる」
 またある憲法学者は、被告団と家族に寄せた手記の中で、「過激派の問題」として見すごそうとした自己への反省を込めて次のように語っている。
 「自分が好かない人たちだからと言って、その人達の人権が蹂躙(じゅうりん)されているのを見過ごすというのは、憲法学者である私には許される態度ではないと思い直した。……どんな思想・信条を持っている人であれ、この社会の一部の人に対して許されぬ暴力が加えられているということは、この社会のルールが壊れているということだ。人権保障に例外はない。例外を認めるなら人権はない」
 「16年もの未決勾留は、まともな裁判すら受けさせてもらっていない何よりの証拠だ。独房に入れられたり、医療も受けられず、このままでは虐殺されてしまうかもしれない。これが憲法上許されない拷問以外の何であろうか?」
 十万人署名運動が毎月行っている有楽町での街頭宣伝では、家族のマイクでの訴えを聞いて自分から署名をしに駆け寄ってくる人が増えている。先日の街宣では、「人権が奪われるとき戦争が始まる」という訴えに、軍需工場での徴用体験を振り返りながら「そのとおりだ。二度とあんな時代を繰り返してはいけない」と、財布に電車賃だけを残して有り金のほぼ全部をカンパした男性も現れた。
 これらの事例は、4同志がどんな状況に置かれているのか、その事実を知ればほとんどの人が闘いに立ち上がる決定的な情勢が訪れていることを示している。4同志の保釈を求める運動がまだ十万、数十万という規模に広がっていない現状は、ひとえに事実が多くの人にまだ知らされていないからにほかならない。

 全治安弾圧粉砕へ

 4同志への超長期勾留を打ち破り、その釈放をかちとることは、今日激化する日帝の戦時治安弾圧攻撃をその根幹から突き破っていく闘いである。この領域で本気の闘いが組織されるならば、巨大な統一戦線と爆発的な大衆決起の可能性が開かれる。
 日帝・小泉政権は、米帝のイラク侵略戦争の切迫の中で有事立法の制定と戦争体制づくりに死活をかけており、これに対する労働者人民の怒りの爆発を圧殺しようと大弾圧に出てきている。闘う国労組合員に対する10・7弾圧はそうした日帝と日本労働者階級との画歴史的な大激突の始まりだ。4同志の保釈奪還と無罪戦取への闘いは、10・7弾圧粉砕と並んで、この「上からの内乱」とも言うべき攻撃に真っ向から対決する闘いの最先端にある。
 4同志は無実だ。1986年の迎賓館と米軍横田基地に対するロケット弾戦闘にはまったく関与していない。日帝権力は4同志の無実を百も承知でデッチあげ逮捕し、証拠もないのに無理やり起訴した。爆取1条の死刑を含む重刑の脅しで党と人民を屈服させ、闘いを圧殺することがその唯一の狙いだった。
 だが4同志の不屈の闘いはそのもくろみを粉砕し、逆に検察立証に13年かけても「有罪」の決め手になる証拠を何ひとつ法廷に提出できないという大破産を敵に強制し続けている。異例の長期裁判とそれに伴う前代未聞の長期勾留が司法の重大な危機に転化する情勢を生み出している(『共産主義者』134号坂本論文と『コミューン』11月号を参照)。この闘いを、今こそ決定的な勝利をもぎとるところまで推し進め、全弾圧粉砕の突破口を切り開かなければならない。
 須賀・十亀・板垣3同志の次回公判(11月11日)では、爆発物取締罰則の違憲性に関する刑法学者・足立昌勝氏の証言が行われる。10月公判での数学者・木下信男氏に続く重要証言だ。傍聴席を満杯にして闘おう。霞が関を揺るがす東京地裁包囲のデモに立とう。十万人保釈署名運動の呼びかけにこたえて11・23集会に総結集しよう。

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週刊『前進』(2077号8面2)

部落解放と労働者階級 (2)

 「爆弾三勇士」の教訓 問われる侵略阻止の立場
  西村豊行

 中国侵略戦争の“シンボル”

 爆弾三勇士の問題は、日本帝国主義が、中国への全面的な侵略戦争と植民地支配を拡大してゆく上の、労働者や農民を動員するためのシンボルとして、徹底的に利用しつくしたところにあると言えよう。
 その場合に見落とせないのは、〈軍神>として爆弾三勇士を崇(あが)めて祭りあげ、徹底的に神格化してゆく一方で、「爆弾三勇士部落民説」を流布して部落差別をあおり、〈貴と賎>を巧妙にからめて戦争動員の反動的な武器としたことである。
 爆弾三勇士の墓は、京都・西本願寺大谷本廟(びょう)の境内に続く、広大な墓地の一角にある。墓碑の正面には、「肉弾三勇士の墓」と大きく刻まれ、右手に「日支事変」とあり、左手にそれぞれ院号のついた法名に続いて、陸軍工兵伍長勲八等功六級のそれぞれ同じ位階を附し、作江伊之助、北川丞、江下武二の順に並んでいる。
 裏面の碑文全文は、久留米12師団混成第24旅団工兵第18大隊所属の三勇士が真宗門徒であること、爆薬を抱いて鉄条網に突撃して身と共に爆破され、悲壮の戦死を遂げたことが天皇の知るところとなり、功六級金鵄(きんし)勲章を授与されたこと、宗門の栄誉として本願寺大谷祖廟が墓碑を建てて、偉功を刻んで顕彰するという内容である。
 さて当時(1932年)の新聞は、爆弾三勇士が「お国のために、身命を投げうって戦死した」と、センセーショナルに採り上げた。「『帝国萬歳』と叫んで/吾身は木端微塵/三工兵点火せる爆弾を抱き/鉄条網へ躍り込む」や、また「肉弾で鉄条網を撃破す/点火した爆薬を身につけて/躍進した三人の一等兵/忠烈まさに粉骨砕身」と見出しで書きたてた。
 「友軍の戦闘を有利に導いたが、その際自己の身体に点火せる爆弾を結びつけ身をもって深さ四メートルにわたる鉄条網中に投じ、自己もろ共にこれを粉砕して勇壮なる爆死を遂げ、歩兵の突撃路を開いた三名の勇士がある」と、「大阪朝日」32年2月24日付の爆弾三勇士についての第一報である。加熱した報道はこのあと、大キャンペーンとして展開されてゆくのである。「日本精神の極致−後世不滅の軍人模範」と外国人記者まで動員された。
 「陸軍省では往年の広瀬・橘両中佐の行為にもまさる軍事美談として教科書にその勇士を謳歌(おうか)し……師団葬、大隊葬を盛大に挙行するほか、……伝記にも編集して一般に配布するものとみられている」(「大阪朝日」2・25)。軍人美談は教科書に掲載、伝記も発行された。

 貫けなかった国際的な連帯

 日本帝国主義は、31年9月18日、「南満州鉄道」爆破デッチあげの柳条湖事件を発生させて、「満州事変」から始まる15年戦争を開始した。中国への領土略奪・植民地支配をさらに拡大するため、そのわずか4カ月後の32年1月28日、同じく日本僧侶殴打事件デッチあげを利用して上海侵略(事変)を強行してゆく。作江、北川、江下の三勇士が従軍して戦死した戦闘とは上海侵略だったのである。そして3月1日には、「満州国」のかいらい国家の建国宣言を内外に発し、中国全土への侵略戦争をさらに拡大していったのだ。
 しかし中国人民は、日本帝国主義が「満州」を侵略したことに抗議して、上海において激しい抗日運動をまきおこした。柳条湖事件直後の9月24日、10万人の学生が授業放棄に立ち上がり、埠頭(ふとう)の港湾労働者3万5千人が反日ストライキを敢行し、また日貨排斥運動も展開していったのである。日本帝国主義の上海侵略は、中国人民の民族解放をかけた蜂起を制圧する目的を明らかに備えた軍事行動であった。
 この時点では、階級政党や労働組合が日本帝国主義の中国侵略に反対して闘っており、全国水平社も「満州事変」直後の31年12月の10回大会で、「満蒙の野には帝国主義世界戦争の導火線がくすぶっている」と、「帝国主義戦争絶対反対」を「大会宣言」に掲げていた。こうした中で、侵略戦争に反対する階級的連帯を解体するために爆弾三勇士が利用されたのだ。

 階級的団結で日帝と闘おう

 爆弾三勇士の戦死は、中国への侵略戦争を「聖戦」として謳歌する歌舞伎や芝居、浪花節や映画となり、多くの伝記や小説が刊行された。『軍神江下武二正伝』と、「軍神」と崇める伝記まで出版された。「位階勲等のない一兵卒の身を以て…かくの如き光栄に浴したるものが他にあるであろうか」、一方では「社会的地位は揃(そろ)いも揃って低い人達ばかりである」と、江下武二が在籍した杵島(きしま)炭鉱庶務係長多々見茂平の証言にある。
 元坑夫仲間は、「江下伍長(死後二階級特進)殿の鉱葬について申上げたき事あり。偉い学者や金持ちのフロックや紋付袴の美麗なイデタチよりも我々のハッピ姿の会葬を江下さんよ、うけて下され…我々と共に採炭していた江下伍長殿が神様にまつられる。我々坑夫としてこの位肩巾の広い有難いことはありません」と、誇りにしていた。
 また、ある部落民は、「三勇士の中に部落の仲間がおるということを聞いたときは、鬼の首を取ったような気がしました。見てみよ。世間のやつら…おれたちの底力を思い知ったか。そう、大声で叫んで、日本中に知らせてやりたいような気持ちでした」と語ったという。
 そのまったく逆の真実とは、「部落民でもあれだけのことをやったのだ。おまえらが遅れをとってどうするんだ!」と、爆弾三勇士部落民説を巧妙に利用し、労働者や農民出身の兵士に部落差別をあおって中国侵略戦争に駆り立てていったということである。
 帝国主義の侵略戦争は、労働者を動員する上で、階級的団結と階級性そのものを解体しようと図り、挙国一致体制形成のために排外主義と差別主義を扇動する。
 それを根底的に打ち破る道は、労働者階級が民族解放戦争に連帯する立場をとり、帝国主義戦争に対して革命戦争を対置し、自国帝国主義打倒の闘いに勝利することである。このことが爆弾三勇士の今日の教訓ではないだろうか。
 (部落解放理論センター所長)

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週刊『前進』(2077号8面3)

資本攻勢&労働日誌 2002 10月10日〜23日
 厚労省 解雇保険全面破壊の攻撃
 解雇ルール法制化を提案/冬の一時金最大の減少

●10日 厚労省は労働政策審議会に、雇用保険全面破壊の改革案を提示した。(要旨別掲
◇連合傘下の化学やエネルギー関連の4産業別労組が新産別「日本化学エネルギー産業労働組合連合会」(JEC連合)を結成。組合員数は17万3千人。
◇沖電気工業は、今年度の人員削減を当初計画より500人多い1500人にすると発表した。
●12日 横河電機が、国内15工場の閉鎖を決めた。一度に15もの国内拠点を閉鎖するのは異例で地域経済への影響などが懸念される。
◇松下電器産業は来年1月のグループ再編に伴い、子会社への転籍制度を本格的に導入する。
●15日 厚労省は労働政策審議会・労働条件分科会で、これまで明記していなかった解雇ルールを法制化することを提案。解雇ルールを労基法改正案に盛り込み、来年の通常国会に提出する方針。
◇帝国データバンク発表の02年度上半期(4〜9月)の企業倒産状況(負債1000万円以上)によると倒産件数は前年同期比0.2%減の9642件で、上半期としては、01年度に次いで戦後4番目の高水準。
◇日本経団連は、「産業競争力の強化と経済の活性化にむけて」と題する2002年度の規制改革の要望を発表。雇用・労働分野では労働者派遣事業や職業紹介事業、有期労働契約、裁量労働制、財形制度など12項目の規制改革を要求。
◇みずほ証券発表の02年冬の一時金予想では、民間企業の1人当たり支給額は前年より4.5%少ない約43万円の見通し。減少は6年連続、減少率は91年以降で最悪。
●18日 厚労省は、02年民間主要企業の夏季一時金妥結状況を発表した。妥結額は74万9,803円、前年比で4.30%の減。
●19日 厚労省は全額事業主負担の労災保険について来年度から保険料率引き下げの方針を固めた。
●21日 北海道労働局は来春の高校卒業予定者の就職内定状況を発表。最も低い根室管内は4.1%と20人に1人も就職先がない状態。
●22日 厚労省は昨年10月の「個別労働関係紛争解決促進法」施行1年間で、個別労働紛争相談件数が8万9971件にのぼったことを明らかに。解雇が28.5%、労働条件引き下げが17.4%、退職勧奨が5.9%、いじめ・嫌がらせが5.3%。
●23日 大阪府人事委員会は、全国の都道府県で唯一、職員給与の引き上げを勧告した。99年4月より昇給を停止していたため。
◇NECは裁量労働制を約7000人を対象に今月から導入したことを明らかに。これほど大規模な裁量労働制導入は国内で初めて。
◇米国マサチューセッツ州ボストン市でSEIU(全米サービス従業員組合)に結集するビル清掃労働者が1カ月にわたってストライキを行い、30%の賃上げなどを盛り込んだ労働協約を獲得した。

 厚労省の雇用保険制度見直し案(要旨)

▽全面的な給付削減
@失業給付の給付率の引き下げ
 失業前6カ月の平均賃金の60〜80%を50〜80%に引き下げる。
A失業給付の上限の引き下げ
 上限を最大3割引き下げる。
B失業給付の給付日数の引き下げ
 一般離職は現行最長180日を150日に短縮する。
▽高年齢雇用継続給付の変更も提起
 現在は、60歳以上の労働者を再雇用した場合、60歳時点に比べ賃金額が15%以上低下する労働者に、新賃金額の25%を支給。見直し案では賃金額が25%以上低下した場合に限り、しかも給付は新賃金の15%。鉄鋼や電機、自動車などの雇用延長制度ではこの給付を折り込んで低賃金で再雇用している。それが破産する。

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週刊『前進』(2077号8面4)

 公判日程

☆迎賓館・横田裁判
須賀・十亀・板垣同志裁判
11月11日(月)午前10時
福嶋同志裁判
11月6日(水)午後1時15分
11月19日(火)午後1時15分
☆6・12私文書弾圧裁判
11月18日(月)午後1時15分
※いずれも東京地裁

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週刊『前進』(2077号8面5)

 訂正

本紙2074号(10月21日付)5面の10・27狭山闘争アピールで、浦和地裁占拠闘争が「1969年2月14日」とあるのは、同年「11月14日」の誤りです。

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