ZENSHIN 2002/07/29(No2063
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週刊『前進』(2063号1面1)
有事法の継続審議粉砕へ 7・26全国結集で国会デモを
革共同集会を大成功させ党建設−今秋決戦へ進もう
今国会も後10日を残すだけとなり、いよいよ大詰めの攻防となった。日帝・小泉は、有事3法案を衆議院での継続審議に持ち込もうとしている。この攻撃を打ち破り、継続審議粉砕・廃案への闘いを猛然と強めなければならない。残り10日間、とりわけ今週一週間が勝負だ。国会に押し掛け、「継続審議を絶対粉砕するぞ」という叫びを上げよう。そして、反戦共同行動委員会の呼びかける7・26の昼、夜の闘いに全国のすべての力を総結集しよう。戦闘的国会デモを打ち抜こう。それと一体の闘いとして、国鉄決戦に全力投球し、闘争団除名阻止へ闘おう。7・28関西―8・4東京の革共同集会に大結集し、党建設と8月反戦反核闘争−今秋決戦へ進撃しよう。
第1章 北朝鮮・中国侵略戦争切迫との対決
この間、4、5、6月の大衆的な闘い、特に6・16の20労組を中心とする6万人の労働者人民の大決起、そして、沖縄における6・8県民大会や6・23小泉を迎え撃った闘いなどによって、有事立法攻撃を大きく押し返してきた。「二度と侵略戦争の道を許さない」という怒りが広く人民の中に存在していることを日帝・小泉に強力に突き付けてきた。だが、重大な勝負の時は今である。
与党3党幹事長は、16日会談し、有事法制関連法案の特別委員会採決を目指すことを確認した(その後の与党理事懇談会では「採決見送り」で継続審議を決めた)。小泉や自民党幹事長の山崎らは、明白に有事法制の強行突破に政権の浮沈をかけている。鈴木宗男や田中真紀子や加藤紘一らのさまざまな疑惑と政治腐敗に揺れ続けた小泉政権として、このままなすすべなく会期末を迎えたら、後がなくなるのだ。
それは一小泉内閣の問題ではなく、米帝の北朝鮮・中国侵略戦争の切迫をにらんで、それに対応できる法整備を早急にしなければならないという、日帝としての国家的な絶体絶命の危機の問題である。だからこそ、小泉は凶暴なのである。委員会採決・継続審議の策動を絶対粉砕し、有事立法の火だねを断ち切るために闘おう。
バブル経済の全面的な崩壊、巨額の過剰債務の露呈、ワールドコムに示される粉飾決算問題の深刻化などを背景に、株価の下落、ドルの急落が起こり、米帝経済は29年型大恐慌の本格化に突入した。
(6面島崎論文参照)
大恐慌と米帝世界戦争路線
6月のカナナスキス・サミットは、各国帝国主義の利害が対立し、帝国主義間争闘戦が極限的に激化した結果、「共同声明」さえも発表されなかった。
米帝経済は、@企業の粉飾決算、スキャンダルの連続的表面化、A設備投資の落ち込み、個人消費の減退、企業収益悪化、Bバブル崩壊による銀行の不良債権の増大に伴う貸し渋り、C貿易赤字・経常赤字の一層の深刻化、D財政の大幅な赤字基調化、Eこれらの結果として、対米投資の縮小、世界マネーの「米国離れ」が起きている。それは現実に、ドル急落、ドル暴落を不可避とする過程に突入している。
米帝の世界戦争路線の背景にはこのような米経済の大恐慌の本格化がある。このもとで、日本経済の恐慌と不況はさらに破滅的に再激化しようとしている。
カナナスキス・サミットを転機に、イラク攻撃が切迫している。米中央軍はイラク攻撃計画をまとめた。ブッシュ政権はイラクへの侵略戦争を基本路線として決定し、来年初めにも、中東情勢の進展次第で開戦しようとしているのだ。
特にこのサミット時、6月25日に日米首脳の秘密会談が行われた。有事法案について、「これは対テロで有益かつ重要な方策で、日米同盟を強化するものだ」と確認した。また、ブッシュは「日本はできるだけ早期に成立させるべきだ」と迫った。秘密会談をもって今国会での有事立法成立を確認したことは重大だ。
黄海での南北朝鮮軍の衝突という重大事態が起こり、さらに北朝鮮の軽水炉問題、「不審船」引き揚げ問題、よど号グループの帰国問題など、北朝鮮に対する米日帝の戦争重圧が強まり、一触即発の危機が高まっている。
また、米国防総省は、7月12日、議会に中国の軍事動向に関する年次報告を提出した。これは昨年9月のQDR(4年ごとの戦力見直し)に対応するもので、中台問題と中国の軍事力増強問題を詳細に分析し、中国への露骨な「脅威論」と牽制(けんせい)・恫喝を加えた文書である。
あらゆる動きが、米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争の切迫を示しており、それが日帝・小泉の有事立法攻撃を促進している。福田官房長官は、3日の衆院特別委員会で、有事の際に報道機関が自主的に報道を控える「報道協定」について、「状況に応じ、人命尊重の立場から必要な場合はお願いすることはあり得る」と述べ、戦時の報道制限に踏み込んだ答弁を行った。
田中康夫長野県知事に対する県議会の不信任決議、それに続く大田正徳島県知事に対する問責決議の本質は、有事立法反対を表明した知事を暴力的に引き下ろし排除するという日帝の有事立法攻撃の一環である。横浜市議会の「日の丸」掲揚阻止を闘った2議員に対する除名決議も同じだ。
このような反動を打ち破って、今国会における有事3法案の委員会採決・継続審議のたくらみを許さず、廃案を断固かちとる闘いを強力に展開しよう。
日本共産党は、「有事立法後景化」のマスコミ宣伝と符節を合わせて、有事立法への言及を減らし、運動の第一テーマから外してしまった。これを打ち破ってなんとしても7・26全国総決起集会と国会デモの渾身(こんしん)の大爆発をかちとり、継続審議を絶対粉砕しよう。
第2章 核先制攻撃許さず8月反戦大闘争へ
8・6広島―8・9長崎反戦闘争は、有事立法粉砕の一大決起であり、北朝鮮・中国侵略戦争阻止の闘いであり、何よりも米帝の核先制攻撃と日帝の核武装化を絶対に許さない闘いである。米帝ブッシュは、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、この3国を含む7カ国に対する核攻撃を具体的に計画しているのだ。これまでになく核戦争の敷居が低くなっていることを危機感をもってとらえ闘おう。さらに日帝は、福田や安倍の非核3原則否定発言に示されるとおり、核武装に踏み出そうとしており、この面でもきわめて重大な事態が到来している。
今年の8・6―8・9はかつてない戦争危機のもとでの闘争だ。大勝利をかちとろう。
有事立法闘争において、沖縄闘争はとりわけ大きな位置をもっている。この間の本紙上での沖縄の闘う諸人士のインタビューを見よ。宜保幸男さん、平良修さん、まよなかしんやさん、桑江テル子さん、有銘政夫さん、宮良ルリさん、崎原盛秀さん、新崎盛暉さん、知花昌一さん、宮城康博さん。沖縄人民の不屈の闘いの先頭に立っているこれらの人びとから、重大な危機感をもって、「今言わないでいつ言うのか」と、『前進』に声を寄せていただいた。有事立法は沖縄戦の道だ、二度と戦争を繰り返してはならない――これが沖縄からの声の最大公約数だ。絶対にこの声に答え、有事立法3法案を粉砕しなくてはならない。名護新基地建設を阻止しよう。9・8沖縄統一地方選に勝利しよう。
殺人的騒音下で闘う敷地内農民を守り、三里塚反対同盟との血盟にかけて暫定滑走路粉砕まで闘おう。
北富士農民の不屈の決起にこたえ、演習場撤去へ闘おう。
住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の8・5稼働開始を絶対に阻止しよう。
国労闘争団の除名を許すな
国鉄決戦は、決定的な攻防戦に突入している。それは、有事立法決戦と一体の、侵略戦争参戦情勢のもとで戦闘的労働運動を一掃してしまおうという攻撃との闘いである。7月4日の国労全国代表者会議で本部は、「定期大会は解決水準を議論し批准する大会としたい。一部闘争団の扱いについては、統制処分の対象にする」と報告したが、大会日程を決められなかった。つまり甘利の言うとおりに「8月大会で除名決定」を確認していながら、それを貫徹できない姿をさらけだしたのだ。ゼロ回答しかない中で、「解決案を出させ、批准できる大会にする」などというのはまったく空論なのだ。
だが7月10日、国労本部は鉄建公団訴訟原告団と最高裁第三者参加申立人の闘争団員を査問委員会に送致した。ついに本部は闘争団員を除名する暴挙に手を掛けたのだ。争議組合が、当該の組合員を自ら首切りするという断じて許せない行為に踏み出したことは、誰が見ても許しがたい反労働者的暴挙だ。これに対して、「国家的不当労働行為と闘う組合員を組合の名で首を切るのか」ということを争点に全力で対決して、真っ向から反撃し闘おう。
JR総連カクマルは、この国労本部の惨状につけ込んで、「それみたことか」という態度をとり、分割・民営化に率先協力した自分たちの大裏切りの「正当性」が立証されたかのごとく触れ回っている。こんな極悪の裏切り者に言いたい放題言わせておいていいのか。国労本部、チャレンジ、反動革同を打倒し国労の戦闘的再生をかちとろう。
世界大恐慌の本格化のもと、激化する資本攻勢と真っ向から対決する戦闘的労働運動の正念場として国鉄決戦があるのだ。
国鉄決戦を先頭に、有事立法賛成と春闘解体の連合を打ち破り、労働者の壮大な反戦決起をかちとろう。
第3章 革共同の党勢倍増と機関紙の拡大を
7・28関西―8・4東京の東西革共同集会を圧倒的に成功させよう。
革共同は昨年前半に第6回大会を行い、その大会路線をもって9・11―10・7情勢に立ち向かい、今年前半の闘いを主導的に闘いぬいてきた。日帝の侵略戦争参戦の攻撃の激化に対して、今や闘いの中核となる革命党、労働者党を強力に建設することが急務だ。革命党建設は、すべての労働者階級人民の共同の階級的事業である。その第一歩として、東西の革共同集会にすべての党員と先進的労働者人民のみなさんが総結集されることを訴えたい。
夏期一時金カンパの革共同への熱烈な集中を心からお願いする。また、『前進』を定期購読し、ともに闘うことを訴える。社民党・日本共産党に代わる本物の革命的労働者党を今こそ強力に建設しよう。
6回大会報告決定集(上・下巻)、清水丈夫選集第5巻序文、基本文献学習シリーズ『ドイツ・イデオロギー』、『共産主義者』133号などを主体化し、自らの武器としよう。
長期獄中同志奪還へさらに力を注ごう。酷暑の中で、病気と向き合いながら不屈に闘う同志たちに思いをはせ、なんとしても10万人署名、1億円基金を集めるために奮闘しよう。
権力・カクマルの攻撃粉砕を
戦争国家づくりをめざす日帝の、国内における最大の攻撃は治安弾圧体制の強化である。国家権力は、本紙編集・発行人に対する呼び出し攻撃を始めとして革共同弾圧に全力を挙げてきている。警察庁は「過激派集団中核派/隠されたその正体」なるカラーパンフを作成し、地域への配布を開始した。中核派が「広範な支持層の拡大を目指している」のが許せないと叫んでいるのだ。戦争絶対反対派である革共同を攻撃することで、人民の一切の抵抗と反戦闘争を抑圧しようとしているのである。
また、6・16闘争の大高揚にダメージを受けたことではファシスト・カクマルも同じである。彼らは、真っ青になって革共同に対する反革命攻撃と大衆運動の破壊を強めてきている。カクマルは「中核派分裂」デマをか細く書き立てているが、それはカクマル中央派とJR総連カクマルとの大分裂という自らの姿を投影したデマゴギーにすぎず、笑止千万だ。
またカクマルは、「北朝鮮・中国侵略戦争ない」論をあらためて言いだした。これは有事立法攻撃の核心を否定するものであり、米日帝の侵略戦争翼賛の極致である。さらに、われわれが「カクマルは日共以下の対米従属論」と的を射た批判をしたことに動転しダメージを受けている。
カクマルの敵対を粉砕し、中央派とJR総連カクマルをもろともに打倒し、革共同の党勢倍増と強化・発展をかちとろう。
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週刊『前進』(2063号2面1)
闘争団除名を許さず国労再生へ
甘利に従い査問委送致を決定 国労執行部に怒りの反撃を
国労本部は7月10日の中央執行委員会で、闘争団員を査問委員会に送致することを決定した(前号既報)。自民党副幹事長・甘利の指令に全面的に従い、ついに闘争団に対する除名処分発動へと踏み切ったのだ。断じて許すことはできない。国労本部は、あくまでも解雇撤回闘争を闘う被解雇者に、その不屈の闘いを理由として、除名処分という労働組合がとりうる最高の「刑罰」を科そうとしているのだ。国労本部のこの決定こそ、天人ともに許さざる不正義であり、大罪である。そして自らの労働組合に死を宣告する行為である。この決定を強行した高嶋・寺内・久保ら本部執行部に烈火の怒りをたたきつけ、徹底弾劾・打倒しよう。
本部こそ組合目的に反する行為の張本人
国労本部が高嶋委員長名で査問委員会の田中議長(本部副委員長)あてに送付した「査問委員会への送致について」という文書によると、中央執行委員会の決定内容(要旨)は次のようなものだ。
第一に、統制処分対象者を、@最高裁判所、採用差別事件第三者参加申し立て闘争団・組合員、A鉄道建設公団、地位保全、賃金等の支払い訴訟原告闘争団・組合員とする。
第二に、統制処分理由として、これらの対象者の行為が「採用差別事件の解決を妨害する行為」だとか「国労の『団結と統一』を踏みにじる結果となっている」などと難癖をつけた上で、「国労規約第32条(組合員の権利・義務)3項に違反し、第33条(処分)2項・3項に該当すると判断する」。
断じて許すことのできない反労働者的な決定である。不当解雇撤回闘争を不屈に闘うことが、どうして「組合の目的に著しく違反した行為」(第33条2項)なのか! 何が「組合員としての義務に違反する行為」(同3項)なのか! 闘争団こそが、労働組合の本来の目的に沿って解雇撤回闘争の先頭に立っているのではないか。闘争団こそが、採用差別事件が発生して以来の国労の方針を実践しているのではないか。
そもそも、首を切った当事者である自民党に命じられ、その言いなりになって闘争団を処分することが、労働組合のすることなのか。統制処分とは本来、「すべての労働者の生活と地位の向上」(国労規約第2条)という労働組合の目的に反し、資本や権力の手先になった裏切り者に対してなされるべきものなのだ。そうやって闘う団結を守りぬくために、労働組合は統制処分を規定しているのだ。
国労本部のやっていることこそ、反組合的な団結破壊行為そのものなのだ。
しかも、処分理由のひとつとして、「統制処分対象者の勝手な行動が、国労組織に対する不信が増大され、一部ではあるがそのことを大きな理由として脱退者が出るという事象」を挙げている。
チャレンジの元中執・新井や秋田地本元書記長・今井らの脱退・新組合結成のことを言っているのだが、組合財産をぶんどり、組織をずたずたにした連中の行為をも、闘争団のせいにしているのだ。だいたい今井や新井らは、闘争団を切り捨てて国労を丸ごとJR連合に持っていこうとしていたのだ。それが4党合意による「解決」の破産によって行きづまったから、国労を脱走したのだ。そもそも彼らに対する統制処分はどうなったというのだ。
規約も無視し全員除名狙う
第三に、「処分量定」について統制処分者を、「中心的役割を担っている者」や「原告となっている者」などの4ランクに分けて、「国労規約第33条(処分)の4項を量定とする」としている。規約によれば「除名」「組合員権3年以内の停止」「組合員権の一部3年以内の制限」のいずれかということになる。
だが、甘利が要求しているのは、取り下げない闘争団員は全員除名にしろということだ。国労本部は、これに全面的に応じて全員を除名しようとしていることは明らかなのだ。
しかし、中央執行委員会には「処分量定」を決める権限などない。だが寺内書記長は5・27臨大直後の公益企業レポート(6・15付)で「中央執行委員会が速やかに処分の対象者と量刑を確定させて、査問委員会に送致をします」と明言していた。もともと1月に鉄建公団訴訟が提訴される前から、本部は「除名処分だ」と公言してきた。何がなんでも闘争団を切り捨てることしか考えていない寺内らにとって、規約も何も関係ないのだ。
寺内が「対象者がかなりの数に上ることが予想され、その全員に弁明・弁護の機会を与えなければなりませんから、正直言ってこれから何カ月かかるか見当がつきません」(公益企業レポート)と言っているとおり、規約に基づいてやれば、次期全国大会までに査問委員会が結論を出すことなど不可能なのだ。
だが彼らにとっては、定期全国大会で除名を決めて、国鉄闘争を終結させ、闘争団を切り捨てて国労解散―JR連合合流まで一気に突っ走ってしまえば、それが後で規約違反だと問題にされようが関係ないということなのだ。そこで除名処分の決定に必要な3分の2の代議員を確保するために、なりふり構わず突っ走っているのである。断じて許してはならない。
追いつめられた本部のあがきに断くだせ
だがこれは闘争団の不屈の闘いに追いつめられた国労本部の最後の絶望的あがきである。いまだに定期大会の日程も決められず、次期大会は「解決水準を議論し批准する大会」などという大ウソをついている。彼らは、闘争団除名に完全に踏み切っていながら、「闘争団除名を決定するためだけの大会」にすることに対する組合員の怒りの爆発を恐れているのだ。だから「条件整備」を7月いっぱい行うなどというのだ。
7月11日、国労本部・高嶋委員長らと闘争団・家族が自民党・甘利副幹事長への要請を行った。それに対して甘利は、闘争団・家族の面前で「何千万円の解決金や、全員の雇用などと幻想を言われても困る。執行部にはゼロプラスアルファという現実の中で選択をしてほしいと言ってきた」とゼロ回答以外にあり得ないことを突きつけ、また「反対者が組織に残っていることはあり得ない」と、露骨に闘争団除名を迫ったといわれる。この大暴言に動揺しなかったのは、賛成派闘争団・家族の中でも確信犯で日本共産党員の札幌闘争団・牧田夫妻だけだったという。
国労本部は、賛成派にはいまだに「解決案が出る」とウソをつき続けている。だが次期大会が闘争団除名だけを決定する大会になることは明らかだ。このことを全組合員に訴え、「闘争団の除名を許すな」という一点で、組合員の怒りを総結集し、代議員選―定期大会決戦勝利へ攻め上ろう。
7月4日、東日本エリア本部は、「全組合員が訴訟参加者にハガキで説得活動をする」なる指示を出した。組合員に踏み絵を迫るようなこの方針に、JR本体組合員の怒りが猛然と高まっている。組合員に対して自らの人生の否定を迫るようなものだからだ。
他方で、鉄建公団訴訟は、訴訟費用支払い猶予の決定に続いて、9月26日に第1回口頭弁論が東京地裁103号法廷(大法廷)で開かれることが決まった。
闘争団を守り、国労再生と有事立法阻止決戦下での日本労働運動の階級的再生をかけて、夏から秋へ全力で国鉄決戦を闘おう。
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週刊『前進』(2063号2面2)
カクマルとJR総連の大分裂〈下〉
共倒れ回避へあがいた松崎はファシスト労働運動化の極致
告訴の取り下げと「坂入帰宅」を取引
坂入の「自己批判」文書の後、これと符節を合わせるように、坂入の妻・操子が昨年8月9日付で「捜索願」と「告発状」の取り下げを行った。同時に、JR総連も取り下げた。そして、翌10日にJR総連・小田と坂入操子らによってカクマル本部・解放社に対する「抗議行動」が行われ、以後、坂入拉致に関するJR総連の側からの動きはまったくなくなった。
8月9日の坂入操子文書は以下のように書かれていた。
@「私の夫、坂入充が革マル派に『拉致・監禁』されて9カ月が経過しました。彼らの蛮行は絶対に許すことはできません。しかし、事態は一向に解決に向かわないばかりか、むしろ被害者であるJR総連および加盟組合への警察による捜査ばかりが目に付きます」
A「また、最近では坂入本人が組合員宅を訪ねるなどの行動をしていることも伝えられています」
B「にもかかわらず、夫は今日も救出に至っていません」
C「これ以上JR総連や加盟組合の皆さまに対する警察からの介入などのご迷惑はかけられません」
D「したがいまして、本日『捜索願』と『告発状』につきましては、取り下げました。どうぞご理解いただきたいと思います」
坂入が依然としてカクマルによって身体的に拘束され続けていることを認めながら、「取り下げる」というのだ。これは明らかに先の6月29日付坂入自己批判文書をふまえてのカクマル中央とJR総連カクマル(松崎)との政治的取引を示す文書にほかならない。8月9日をもって、カクマル中央派とカクマルJR総連派は、根本的な分裂について何ひとつ解決しないまま、共倒れを避けるために、分裂下の一定の政治的取引関係のもとでの双方の生き残りの道へと移行したのである。
分裂は、まずカクマル・黒田にとってカクマルの最大実体の喪失という事態の固定化にとどまらず、残存部分も削り取られていくという致命的な危機である。一方、JR総連・松崎にとっては、カクマルとのゲバルト的緊張関係は、資本とJR総連の矛盾の激化の中でダメージとなる。
しかし、政治的取引関係と言っても、実にアクロバット的だ。カクマル中央派は、松崎が松崎イズムでJR東資本との協力体制を推進し、ファシスト労組として延命するために好き勝手に動いていくことを認めざるをえなくなったのだ。
カクマルとしては正面からJR総連またはJR総連カクマルを全面的に批判することはしないと約束し、JR総連内にカクマル組織を建設する活動の余地を確保する道を選択せざるをえなくなったのである。そうして、JR総連を連合の中ではよりまともな労働組合と礼賛しつつ、JR総連内の細胞活動再建に励むというコースを選んだのだ。
だが、この関係は分裂を深化させるのみである。双方とも危機的状態にあえぐことは必至である。そしてその緊張と危機のゆえに、JR総連カクマルもカクマル中央派もともに反革命策動を強めることになる。
JR総連カクマル(松崎)の場合、カクマル中央派との緊張関係は、第一に資本・権力へのより一層のすり寄りとなる。第二に逆にそのことを塗り隠すためにもペテン的「反戦」闘争などに力を入れる。
しかし思想的には「テロ根絶」問題では百パーセント反革命的破産に陥ってしまう。だから、結局はさしあたって動員戦の強化に総力をあげて、セクト的な実力を誇示して自己を維持しようとする。
しかし、資本との関係で、それも一定までしかできず、ますます危機を深めることは不可避である。
カクマルとの関係説明せよ
今年4月13日に、坂入充が自宅へ帰って来たことが報道された(4・16付埼玉新聞、毎日新聞埼玉版)。カクマル中央派による拉致・監禁から1年5カ月ぶりである。同15日、JR総連は「坂入氏の解放に対する見解」を発表した。25日、坂入は吉川署に出頭した。警察の事情聴取に対して、「自分は拉致されたのではない。告訴は自分がしたことではない」と答えたという。これは、坂入が解放される時の中央派との確認に基づくものであり、したがって自己防衛である。
15日のJR総連「見解」は、坂入の妻からのJR総連への「連絡」を伝えるという形をとっている。そして、「現在は本人が心身ともに衰弱していることや、これまでの夫人の心労を察し、まずは健康の快復が第一と判断しています」として、「とにかくそっとしておいてくれ、騒がないでくれ」という態度をありありと示している。
だが、JR総連カクマルとして、坂入が「心身ともに衰弱している」という一言で幕引きするのは、あまりにも無責任である。
第一に、坂入が自ら「拉致監禁ではない」と言っていると伝えられることについて、何と説明するのか。
第二に、一昨年12月8日にカクマル中央派が開いた集会に坂入が参加し発言したとされることについて、何と説明するのか。
第三に、昨年6月の坂入「自己批判」文書について、どう説明するのか。
第四に、昨年6月ころ、九州で坂入が出没したという事実は何だったのか。
これらについて、JR総連として、組合員に対して説明する責任があるではないか。特に、JR総連指導部がカクマルとの関係を絶つと決定したことは、それまで深い関係を持ってきたことを自ら表明しているのであり、「5億円の滞納踏み倒し」も、JR総連とカクマルのこれまでの関係の密接さを証明している。こういうことについて、納得のいく説明をしてみよ。
「テロ根絶」を叫ぶ松崎の北海道講演
ところで、99年末以来のJR総連とカクマル中央派との分裂と対立の激化について、一方の頭目である松崎はどういう態度をとってきたのか。
前回見たように、九州労大量脱退問題を始め、JR総連の行ったすべての行動の最高責任者は松崎だ。主犯中の主犯である。
だが、松崎は表向きはこれらにまったく関与していないかのように振る舞っている。一の子分である坂入が中央派に拉致・監禁されているというのに、松崎が一言も発しないのは、どうしてなのか。この一事だけで松崎がJR総連カクマルの中心人物であること、したがって中央派との取引も松崎によるものであることが証明されていると言えるのだ。
実際、松崎がJR総連の特別顧問となり、本を次々出版し、マスコミ登場の頻度を増やしていることなどは、カクマル中央派と一定の政治的取引をした上で、完全に分裂を確定して、「松崎党」的な一個の政治勢力として再び前面に登場する意思表示である。
そのような意味で、@毎日新聞社発行『鬼の咆哮』(01年12月)、A『サンデー毎日』の5回にわたる連載(今年1・2〜2・17)、B2月24日の「JR北海道労組結成15周年記念講演」などは、JR総連の新たなファシスト的方向性を示すものである。
ここではBの講演の内容を検討しよう。
第一に、@Aと同様、9・11反米ゲリラ戦〜10・7アフガン空爆開始という情勢への反革命的反応を強烈に押し出している。
ここでも松崎は、「テロ弾劾」を憎しみを込めて叫んでいる。「あの憎むべきテロ、このテロを素晴らしかった、歴史的な出来事だった。そうだそうだと言っている党派があるんだそうですよ」
松崎・JR総連にとって世界の被抑圧民族人民の帝国主義支配に対する闘いはけっして受け入れられないということを強調しているのだ。松崎は一貫して帝国主義的抑圧民族の立場からアフガニスタンへの救援運動なる資金提供を行っている。これは反戦運動でも平和運動でもない。帝国主義が収奪した超過利潤によって買収された意識そのままの、被抑圧民族人民の闘いへの敵対以外の何ものでもない。
JR総連という大きなファシスト労組(帝国主義的労働運動のファシスト化したもの)の持つ巨大な資金のほんの一部を、オコボレ的に〃帝国主義的”に散布することによって、格好をつけるというペテン的ボランティア路線でしかない。
しかし、そこで終わらないのが松崎のファシストたるところである。松崎は言う。「とりあえず5年、10年はやるべきだと思っています」「かの地(アフガニスタン)に事務所を開設いたしました」「もうおそらく延べ1億円程度の金を出していますよ。そして既に、30人ほどの人が現地に行ってます」
明らかに松崎は、日帝・小泉のアフガニスタン復興計画と一体となって、復興事業の侵略政策を担おうとしている。まさに唾棄(だき)すべき存在である。
「子ども平和基金」の立ちあげと運動化、アフガニスタン復興運動(チャリティコンサート)、中国への小学校寄贈、ドングリ(植林)運動など。
これらは、どれ一つとっても帝国主義の矛盾や不正義を暴き、それと闘うのではなく、帝国主義的「慈善運動」なのである(いわば民間ODAを担うものだ)。
しかも、アフガニスタンへの献金運動は、米帝ブッシュと同じ「テロ弾劾」を組織するものとして行われている。松崎はこれを反戦平和運動とごまかすが、どこに反戦があるのか。戦争協力そのものではないか。
第二に、松崎講演は、いかにも反戦闘争を一貫して闘ってきたかのように自己を押し出している。しかしそれは、JR総連=東労組こそJR東会社(権力・資本)との「労使協力」路線で突っ走ってきたこと、資本攻勢に屈服しその手先となってきたことを百パーセント塗り隠している。
例えば松崎は言う。「自殺者が3万人。圧倒的多数はその(資本)の犠牲者ですよ。身につまされますね、わたしは労働運動のリーダーだから。……労働運動は自殺する人を救えない。これは罪ではないですか。大労組幹部の犯罪じゃないですか」などと一見労働者の味方であるかのようである。語るに落ちるとはこのことだ。
ここでは自分が国鉄の分割・民営化の先兵になって200人以上の国鉄労働者に自殺を強要した当事者であることなどすっかり棚に上げているのだ。血塗られた松崎こそ労働者の敵である。労働者の味方面して、実は労働者を地獄に落とし込む張本人が松崎だ。それは第二の分割・民営化を再び松崎が行うということである。こういうペテン的言辞を恥ずかしげもなく平然と語れるところに松崎のファシストとしての反革命的神髄がある。
第三に、JR総連が独自の政治党派として議員を擁立しようとしていることを明らかにしている。
松崎は、かつて国労は最大時で27人の国会議員を擁していたことを例に出したり、過去の伊東秀子の推薦問題に言及しながら、次期衆院選では北海道から独自の候補を出すと言っている。これは、明らかにJR総連がファシスト党として名乗りを上げることを宣言したものである。
第四に、松崎がこの講演で絶叫していることは、「国労解体」である。松崎の最大のペテンと反革命性は、JR東会社と一体化して第二の分割・民営化的大資本攻勢を労働者に加えてきていることである。この対極で、動労千葉と国労の闘う労働者は団結した力で必死にこれと闘っているのであり、これこそ最も基本的な労働者にとっての反撃の仕方である。
国鉄闘争の永続化に松崎は恐怖しているのだ。国鉄決戦の勝利と永続化をもってカクマルJR総連打倒へ突き進もう!
第五に、有事立法攻撃への徹底的な敵対である。
松崎は、日帝の有事立法攻撃の激しさを知りながら、これへの反対の闘いを組織することなどまったく考えていない。「有事立法またやるでしょうねー。いろんな法律を作る。……有事立法を通すんでしょ……」。ここには組合員に対する闘争への檄(げき)など一言もない。政府は何でもやれることを前提とした話し振りだ。憲法違反でも何でも政府はできるのだと強調し、権力の強さの宣伝をしているにすぎない。
労働組合員に向かって「決起してもムダ」とオルグしているのだ。これを「労働組合の指導部の責任」をうんぬんしながら語っている松崎とは何者なのか。その正体は明らかだ。
成立前提にペテン的な有事立法論評
JR総連カクマルのファシスト労働組合としての姿は、有事立法反対闘争の過程でますます明らかになってきている。
有事立法決戦が大爆発する情勢にあって、JR総連カクマルはなんとか20労組陣形など反対運動の一角に潜り込もうと画策している。しかし彼らの有事立法闘争を見る場合、重要なことは、99年のJR総連15回定期大会で決定した「戦時下の労働運動」論に立った運動だということだ。
「『新ガイドライン関連法』の成立は参戦法の成立であり、日本が戦争態勢に突入したことを意味し、……戦争態勢に反対したり、反戦・平和を闘う団体・個人等を弾圧または統括・管理するための法律なのである。……これからの労働運動、民主運動等は、戦時下として展開を余儀なくされる」(柴田委員長=当時=あいさつ)
「5月24日を区切りに日本の政治軍事の態勢は戦時下に突入した、そういう認識をまずはっきりさせる必要がある」(JR総連組織共闘部長の答弁)
要するにJR総連は、99年5月24日の新ガイドライン関連法の成立で、「もはや戦時下だから反対運動はできないし、するべきでない」ということを確認した労働組合なのである。
したがって彼らの有事立法反対闘争も、組合員の生命や身体に危険が及ぶような戦争に反対するという、生き方をかけた必死の阻止闘争では断じてなく、「すでに反対してもだめな時代に入っている」「どうせ成立するのだ」ということを前提とした反対のポーズのための行動に過ぎない。
労働組合として他の陸・海・空・港湾労組20団体が、自らが侵略戦争の担い手になることも、それによって被害者になることも拒否するという階級的立場に立って闘っているのに対し、JR総連カクマルは、軍事輸送に協力することを前提にして運動に介入しようとしているのだ。
彼らの大衆動員は、一定の組織力を示すことでむしろ運動に圧力をかけ破壊するためのものであり、運動が勝利し目的を達することに敵対するものである。
今こそ、カクマル中央派とJR総連カクマルを打倒し、ファシスト労働運動の根を断ち切ろう。
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週刊『前進』(2063号6面1)
米粉飾会計と大恐慌の本格化
巨額の過剰債務と会計不信・ドル不信で米経済は急没落へ
島崎光晴
アメリカ資本主義を代表するような米大企業の粉飾会計が次々、明るみに出ている。米企業はバブル崩壊後、過剰資本・過剰債務状態に陥ってきたが、それを粉飾会計で隠してきた。粉飾会計の露呈とは、過剰資本・過剰債務の表面化、つまり企業部門での恐慌の始まりだ。しかも粉飾会計によって、米企業と米金融市場に対する不信は、もはや拭いきれないものとなった。米経済の没落の画期をなす歴史的事態であり、9・11と並ぶ米帝への大打撃だ。この会計不信からドル信認も急低下している。米帝がどうあがこうと、米経済恐慌の全面化とドル暴落は避けられない。〈29年大恐慌を上回る世界大恐慌〉の到来と世界戦争に対決して闘おう。
利益水増しし債務を子会社に飛ばし
ニューヨーク・ダウ平均株価は7月10日、今年最大の下げ幅を記録し、昨年9月下旬以来の安値水準となった。ハイテク株の多いナスダック(米店頭株式市場)指数、幅広い企業を含むS&P500種株価指数は、すでに97年以来の安値となった。つまり、00年のバブル崩壊後の最安値をつけている。株価急落の最大の要因は、米大企業の粉飾会計が次から次に明るみに出ていることにある。
では、米企業の粉飾会計とはどのようなものか。まず、昨年12月に経営破綻(はたん)したエンロンの実態を見よう。
エンロンはエネルギー大手で、売上高で全米第7位の巨大独占企業である。ところがバブル期も含めて利益を上げていなかった。「90年代半ば以降、エンロンは水道や石炭、光ファイバー、天候デリバティブ(金融派生商品)、新聞印刷まであらゆる事業に巨額の投資をした。だが、その多くは、ほとんど利益を上げないか赤字の事業だった」(ニューズウィーク1・23)。にもかかわらずエンロンは「米国で最も革新的な経営」ともてはやされてきた。それは、会計を操作してもうかっているかのように欺いていたからだ。
では、エンロンの粉飾会計の手口とは、どのようなものだったのか。
(1)利益の水増し。エネルギー関連に限っては、将来見込める利益を現在の利益に算入することが認められていた。しかも、将来の利益の見込み方に基準はなく、なんとエネルギー会社の自由裁量だった。利益の水増しは自由自在となった。この方法は米国財務会計基準で認められた合法的なものである。好き勝手な利益の水増しが、合法的にできたという点に深刻さがある。
(2)損失や債務を特別目的会社に飛ばし。エンロンは3000社以上の特別目的会社という子会社を作っていた。ほとんどがペーパーカンパニーだ。米国では、子会社の資本の3%以上を第三者が出資していれば、その子会社は連結決算の対象にならない。つまりエンロングループの決算に含まれない(いわゆる簿外取引)。エンロンはこの子会社に本社の損失や債務を次々に移し替え、本社の経営状態を表向き好調に見せかけていた。この方法だけで、97年の利益は75%も増えたという。97年はバブルの真っただ中。バブル下ですでにこういう操作がやられていたのだ。この特別目的会社への損失や債務の〃飛ばし”も、米国の会計基準では合法的である。
(3)ウォール街総ぐるみでの粉飾会計。エンロンの主取引銀行はJPモルガン・チェースで、アメリカ金融資本の代表格。特別目的会社への〃飛ばし”を手助けしたのは、ほかならぬこのトップバンクである。さらに、米国では企業財務に対する会計士の監査が義務づけられている。エンロンの財務を監査していたのは、5大会計監査事務所の一つであるアーサー・アンダーセン。しかしアンダーセンは監査役というより逆に、この粉飾会計の指南役だった。また、メリルリンチなどの証券会社のアナリスト(分析専門家)は、エンロンの株を買うことを推奨しづつけてきた。このように銀行も会計事務所も証券会社も、エンロンからばく大な報酬を得ることで完全に癒着していたわけである。
(4)ブッシュ個人およびブッシュ政権との結びつき。エンロン会長レイとエンロン社は00年大統領選でブッシュに献金したが、その額は個人としても会社としても大統領選史上最高だった。エンロンは献金の見返りとして、自分に都合のいいエネルギー政策や会計基準が公認された。エンロンによるブッシュの買収だ。レーニンが『帝国主義論』で指摘した〈金融寡頭制〉そのものである。ウォール街だけでなくアメリカ帝国主義総ぐるみの粉飾会計と言える。
ハイテクでは12兆円も粉飾
このほかにもさまざまな会計操作の手口がある。
6月にはワールドコムの粉飾決算が明るみに出た。同社は01年、02年1−3月期の5四半期に38・5億j(約4700億円)の利益を水増ししていた。本来なら通信網の維持・管理費(営業費用)として計上すべきものを、設備投資と見なして計上していた。通信網の維持・管理費は、売上高の40%を超えるほど巨額だ。それを完全にゼロと粉飾することで黒字決算にしていた。実際、この粉飾分を外すと、01年も02年1−3月期も赤字に転落した。
この手口は米国の会計基準に反している。本来なら、営業費用は損益計算書に、設備投資は貸借対照表に計上する。ところが前者に計上すべきものが後者に付け替えられていた。実に単純な粉飾だ。ワールドコムはAT&Tに次ぐ米長距離通信2位で、世界の電子メールの伝送の半分を受け持っている。それほどの超巨大企業で、単純な粉飾がいともたやすく行われ、長期間にわたって隠されつづけていた。エンロン以上に深刻だ。
また、「実質利益」という手法もある。例えば、A社がB社を買収したとする。B社の株価が下がると、A社が保有するB社の資産評価は減損する。本来であればそれを会計に計上しなければならない。しかし、こうした評価損などを除外して、勝手に「実質利益額」をはじき出すやり方がまかり通ってきた。「見積もり会計」と言われる。これもなんの基準もなく、各企業の恣意(しい)的な操作が認められている。
ハイテク企業では、こうした手法が「創造的会計」と称賛されてきた。ナスダック上場の100社の01年第1〜第3四半期の「見積もり会計」での収益は191億jだったが、SEC(証券取引委員会)への報告(日本の有価証券報告書)では823億jの損失だった。わずか9カ月分で約1000億j、日本円にして12兆円の粉飾だ! 日本の3月期決算では金融を含む全産業で2兆円弱の赤字となったが、この額と比べても米企業の粉飾額はケタ外れだ。
9・11に並ぶ米帝への歴史的大打撃
以上、粉飾会計の実態を詳しく見てきた。では、なぜこれほど粉飾会計が続出しているのか。それは、バブルが崩壊し、売り上げ・利益の激減と債務の急増に直面した米企業が、なんとか生き延びるために粉飾に走ったからだ。
90年代後半の米経済は、IT(情報技術)バブルにまみれていた。米IT業界は膨大な借金をしながら、過大な設備投資を重ねた。98年から01年の4年間で米企業が増やした負債は、1・4兆j(約170兆円)に上る。うちIT業界が6800億jで全体の半分を占めた。その借金でIT関連設備を中心に投資を急増させた。
しかし、バブルが崩壊してしまうと、過剰設備と過剰債務に転じた。米国内の光ファイバー網の稼働率は今でもわずか5%にすぎない。全産業の設備稼働率は今年初めに74・2%と、約19年ぶりの低水準となった。そして、主要500社の昨年10−12月期の利益は前年同期比22%減と、約10年ぶりの大幅減となった。つまり、生産能力の過剰による利潤率の低落という過剰資本状態に陥っている。その一方で、バブル下の巨額債務がのしかかっている。昨年9月末の非金融法人部門の債務残高は約4・9兆j(約580兆円)、日本の年間GDPをも上回る額だ。
この過剰債務とその根っこにある過剰資本が露呈するのは時間の問題だった。もうけが悪くなり(利潤率が下がり)、しかも債務の重圧が強まれば、債務返済不能から経営破綻が続出せざるをえない。しかし、それがいったん粉飾会計によって引き延ばされた。利益の水増し、損失や債務の〃飛ばし”は最後のあがきだった。そんなことがいつまでも続けられるはずがない。粉飾会計の露呈という形をとって、米企業の過剰資本・過剰債務問題がついに噴出しはじめたのだ。
今後、ワールドコムのように粉飾をやめたとたん赤字決算となり、巨額債務の重圧で倒産するケースが激増する。あるいは、エンロンのように粉飾会計への不信から株が急落し、資金繰りが困難となって破綻するケースも増える。過剰資本と過剰債務の大きさからして、米企業が強いられる倒産・資本整理は、29年大恐慌をも上回る膨大かつ長期なものとなるだろう。これは大恐慌そのものである。ついに企業部門で恐慌が本格化しはじめたのだ。
「米国標準」の実態は詐欺だ
粉飾会計はこれにとどまらない歴史的意味を持つ。粉飾会計はアメリカ資本主義、アメリカ金融市場に対する内外の不信を固着させずにはおかない。米経済と米帝の没落の画期をなす歴史的な事態だ。
90年代には、「公正で透明なアメリカ企業の会計システム」「世界的な見本となるアメリカの企業統治(コーポレート・ガバナンス)」「透明で模範的なアメリカ金融市場」などと言われてきた。97年のアジア通貨・金融危機のあと、グリーンスパンFRB議長は、「アジア危機の結果、西側の市場資本主義、特にアメリカ型の資本主義が優れていることがますます分かってきたと思う」などと自慢していたほどだ。これに対し日帝は、対米争闘戦の観点からこの「アメリカン・スタンダード(標準)」を「グローバル・スタンダード」と見立てて、金融ビッグバンや会計ビッグバンを実施してきた。
ところが、その「アメリカン・スタンダード」の実態は粉飾だらけで、SECの言い方をすると「詐欺」だったのだ。それも一企業のことではない。ウォール街のすべての構成者を含めた、しかもブッシュ政権を後ろだてにした「詐欺」だった。当然にも、米企業会計、米企業統治、米金融市場のすべてが不信をもって見られざるをえない。しかも一過性のことではなく、不信が長期にわたって固着するのは必至だ。
このような事態は、29年大恐慌の時にもない。米経済の没落の画期点となった71年の金ドル交換制廃止、80年代半ばの債務国への転落の際にもなかった。米企業と米金融市場にこれほどの根本的不信がつきつけられるのは、アメリカ資本主義史上初めてのことだ。米帝はバブル崩壊過程で、〃ブルジョア的信頼”という米経済の基礎を自ら打ち砕いてしまったわけだ。あらゆる予測を超えて、米経済に対する歴史的な打撃となるだろう。空前のバブルとその崩壊は、米帝の歴史的没落を急促進するほどの破壊力を持っているのだ。
エンロン破綻の際に米政府内から、「9・11以上のショック」という声が上がった。9・11が米帝の軍事・外交における世界支配に対する決定的なダメージとしてあったとするなら、ほぼ同時期に起きたエンロン破綻は米帝の経済面での大没落を象徴する画期となった、と言える。
財政・貿易の赤字急増でドル暴落へ
このような粉飾会計の続出と米経済の没落の中で、ついにドル信認が低下しつつある。すでに長期のドル暴落過程に入っている可能性もある。
4月以降、明白なドル不信を伴ったドル安局面を迎えた。7月には1ユー ロ=1jの「等価」となり、2年5カ月ぶりのドル安ユーロ高となった。やはり会計不信がボディブローのように効いている。
より重大な構造的要因として、財政赤字と経常赤字(貿易赤字とその他)が過去最大規模に膨張している。02年度(01年10月〜02年9月)の財政収支(社会保障基金を含む)は、5年ぶりに赤字に転落する。経常赤字も00年、01年と連続して約4000億jになった。90年代は財政が一定の改善を示すなかで、経常赤字だけが増加していた。しかし現在は、この両方が同時に膨張するという、80年代以来の事態を迎えている。これはドル信認を劇的に低下させずにはおかない。
すでに、米への資金流入構造も変化しつつある。この間は、米国外の資金が社債や株式などに投資され、その資金流入によって巨額の経常赤字が補填(ほてん)される、という構造だった。しかし、昨年から直接投資ではすでに米からの流出超となり、証券投資でも米への流入が激減している。「九五年のドル高転換という無理な枠組みのもとでバブル化してきたため、ドル体制崩壊と米バブル崩壊が一体で生じざるをえない構図になっている」(6回大会報告決定集上巻441n)。それが現実になりつつあるのだ。
米への資金流入が細まる中で、世界金融恐慌につながる重大な兆しが表れている。日本に続いて米欧の金融機関も資産内容が劣化しているため、リスクの強い資産を圧縮しはじめた。特に欧州系の保険会社が内外の株式を売却しており、これが最近のドル安・米株安の一因になっている。今後、米株価が一段と急落し、ドル信認が一層低下していく時、世界中でリスク回避の動きが強まらざるをえない。98年秋には世界金融恐慌が瀬戸際で食い止められたが、今回は米バブルが吹き飛び、会計不信が噴出し、ドル信認も崩れている。世界金融恐慌の危機は一段と深まっているのだ。
バブル崩壊で次は不良債権が大激増
00年4月の株価暴落で米バブル経済が崩壊しはじめてから2年強。昨年春〜夏に、消費バブルの頭打ちによっていったんは恐慌に陥りつつあった。そこに9・11の大打撃が加わった。
これに対してブッシュ政権は恐慌対策と言うべき措置を発動してきた。金利の大幅引き下げ、大幅減税、9・11後の400億jの緊急政府支出などは、恐慌対策そのものだった。また、自動車のローン金利をゼロにして、需要を先食いする形で自動車販売を維持してきた。さらに、住宅価格がなお上がっているため、住宅ローンを借り増して消費を増やす傾向も続いてきた。国防支出の増大は景気への刺激ともなった。これらによって、恐慌の深化はかろうじて食い止められた。
しかし、粉飾会計と会計不信を転回点として、ついに米経済は本格的な恐慌とドル暴落の局面に入りつつある。今後、何よりも消費バブルが全面崩壊するのは必至である。特に住宅価格が下落に転じると、その逆資産効果は株下落より大きくなる可能性が強い。米家計の債務は資本主義史上でも前例のないほど巨額になっており、この過剰債務問題が噴出するのは間違いない。
企業と家計の過剰債務問題が噴出すると、不良債権問題も露呈せざるをえない。米企業だけでなく米銀も特別目的会社を設けて、簿外で大規模に貸し付けている。大手米銀ですでに、「危機的状況に陥った簿外貸付」が全貸付の3分の1から4分の1になっている。さらには、この特別目的会社を通じたりして、債権を他に転売している。転売の相手は、内外の銀行、年金基金、保険会社、投資信託、企業、ヘッジファンドなど。これらが保有する債権が今後、不良化するのだ。日本では不良債権は銀行に発生したが、米国では不良債権は銀行だけでなく広範囲に及ぶだろう。
すでに現在、粉飾会計を機に過剰資本と企業の過剰債務問題が噴出している。これだけでも、米経済と世界経済は大激震している。今後さらに家計の過剰債務問題、不良債権問題が加わるのだ。企業と家計の債務の大きさからして、米帝の不良債権問題は日本の比ではない質・量をもって爆発せざるをえない。〈29年大恐慌を上回る世界大恐慌〉というのは誇張でもなんでもない。まさに今、そこに突っ込みつつあるのだ。
世界革命勝利へ決起する時
ついに世界大恐慌の本格的爆発が始まりつつある。早ければ夏から秋にかけて、タガが外れるだろう。帝国主義の基本矛盾が爆発するのだ。
それは、米帝の帝国主義的侵略戦争−世界戦争の路線をますます凶暴なものとせずにはおかない。帝国主義間争闘戦は、従来のそれを〃前史”とするほどに激烈化する。すでに米帝は保護主義を強めつつあり、世界経済のブロック化も急進展していく。世界危機の世界戦争への転化はいよいよ加速されるのだ。
米経済恐慌の本格化と世界大恐慌の全面的爆発は、日本の恐慌をさらに破滅的に激化させるものとなる。日本の恐慌はこれからが〃本番”だ。それは日帝を恐るべき危機と没落に引きずりこむ。日帝は現在、米帝の戦争路線に食らいついて共同的に、同時に競合的に参戦しようとしているが、日帝にとってこれはますます死活をかけたものとなる。さらには、労働者人民に対する資本攻勢と犠牲転嫁も、恐慌本番突入によって大拍車がかかる。
今や、〈革命的情勢への端緒的突入〉という情勢が急テンポで進みつつある。革共同は第6回大会で、「21世紀の早い段階で反帝国主義・反スターリン主義世界革命−日本革命の課題を達成する」と宣言した。その勝負の時がやって来ているのだ。
この課題を達成するために、当面の決戦に勝ち抜かなければならない。有事法案廃案へ7・26国会決戦に総決起し、正念場を迎えた国鉄決戦に絶対に勝たなければならない。世界戦争と世界大恐慌が現実化しはじめた今、それに見合った大決起をかちとろう。
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