ZENSHIN 2002/05/06(No2052
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週刊『前進』(2052号1面1)
「武力行使法」「新自衛隊法」「首相大権法」粉砕!
5・24−26有事立法阻止へ
ジェニンの大虐殺 徹底弾劾!
小泉の靖国公式参拝を許すな 朝鮮・中国への侵略戦争阻止を
有事立法3法案(武力攻撃事態法案、自衛隊法改悪案、安全保障会議設置法改悪案)の国会審議が始まった。提出された3法案は、「日帝の武力行使法、新自衛隊法、首相大権法」と言うべき性格を持つ正真正銘の非常事態法案だ。かつての日帝のアジア侵略戦争と第2次大戦の歴史を繰り返してもいいのか! まさに慄然(りつぜん)とする事態が突きつけられている。すでに陸・海・空・港湾労働者を始めとして、多くの人民がもはや黙ってはいられないと続々と決起を開始した。同時にパレスチナでは、ジェニン難民キャンプでの大虐殺を始めとして、米帝の後押しを受けたイスラエル軍による暴虐の嵐が吹き荒れ、これに対するパレスチナ人民の徹底抗戦の決起が不撓(ふとう)不屈に続いている。闘うパレスチナ人民を始めとしたすべての被抑圧民族人民の血叫びにこたえ、日本のすべての労働者階級人民が国際主義的連帯をかけて、侵略戦争と国家総動員の有事3法案絶対阻止に総決起しよう。小泉の4・21靖国神社公式参拝強行を断じて許すな! 6千万労働者階級が根こそぎ決起すれば、翼賛国会を吹き飛ばし、3法案を阻止することは必ずできる。陸・海・空・港湾労組20団体など3団体が呼びかける5・24闘争と反戦共同行動委の5・26全国総決起闘争に総決起しよう。
第1章 日本が武力攻撃をやろうとしている
4月17日、国会に提出された有事立法3法案は、朝鮮・中国−アジアおよび中東の人民を虐殺する侵略戦争を発動し、すべての日本労働者人民を再び第2次大戦をも上回る世界的大戦争に総動員する大攻撃だ。日帝は一切の制約を取り払って、米帝との共同=競合関係のもと、北朝鮮や中国への略奪と破壊と虐殺の侵略戦争に全面的にのりだそうというのだ。そのために首相に明治憲法下の天皇大権の復活にも等しい絶対的権限を与えて、戦後の憲法や議会制民主主義を完全に破壊する独裁体制と国家総動員体制をつくり出そうとするものにほかならない。
第一に、日帝が今や本気で、戦後初めて、他国・他民族に直接武力を行使する侵略戦争に突入しようとしているということだ。
法案に言う「武力攻撃事態」とは何か。ここには「武力攻撃が発生した事態」だけでなくその「おそれのある場合」、さらには「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」がすべて含まれるとされている。しかも日帝は、周辺事態法=日米新安保ガイドラインでいう「周辺事態」が「その一つのケース」だと公言している(4・4中谷防衛庁長官の国会答弁)。明らかに米日帝による対中国・北朝鮮の侵略戦争発動を完全に想定しているのだ。
さらに小泉は、閣議決定時に発表した談話で「テロ」や「不審船」対策を声高に叫び、これらを含めた「国家の緊急事態」対処の全般を見直すとした。そして「武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処」をも「補則」として法案に盛り込んだ。この「緊急事態」という概念も、先の「おそれ」や「緊迫し……予測される事態」も、いくらでも拡張解釈できる実にでたらめなものだ。それは、あらゆる口実を設けていつ何どきでも「国家有事」を宣言し、侵略戦争に突入しようとしているからなのである。
だから、これらの事態への「対処の基本理念」として、自衛隊による武力の行使を公然と明記している。これは、憲法が禁止してきたはずの「国権の発動たる戦争」「国の交戦権」の公々然たる復活の宣言以外の何ものでもない。同時に日米安保条約に基づく米軍との協力が規定されている。集団的自衛権の全面的な行使への踏み切りだ。これは憲法第9条の事実上の完全破棄そのものだ。
すなわち、「日本への攻撃に備える」と称して実際には、危機に立つ日帝が憲法的制約をかなぐり捨て、米帝ブッシュがやっているような残虐きわまりない侵略戦争にどしどしのりだし参戦することこそ、この法案の目的である。米帝が北朝鮮に爆撃を加える、あるいはそうした情勢が切迫したという時点で、それを直ちに「日本有事」として日帝独自の戦闘行動に先制的に突入するということだ。
米帝は世界大恐慌と帝国主義の世界支配の絶望的危機の深まりの中で、昨年9・11以降、「対テロ戦争」を掲げて民族解放闘争絶滅と資源略奪、世界市場の再分割をかけた侵略戦争に打って出た。そして今日その矛先をアフガニスタンからパレスチナに拡大し、さらにイラク・イラン・北朝鮮へと広げることを狙っている。その先には対中国の世界的大戦争や、帝国主義間戦争、第3次大戦さえも想定しているのだ。日帝はこの米帝の世界戦争政策に必死で食い下がり参戦し、その中で米帝のようにむきだしの軍事力で他国を侵略し支配できる力を身につける以外に、帝国主義として生き残る道はないと決断しているのだ。
有事立法3法案に対して日本共産党のように、「アメリカの戦争に巻き込まれるから反対」などという誤った立場で臨むならば、この米日帝の反革命的必死さと凶暴さの前にはじき飛ばされてしまう。帝国主義の危機が新たな世界戦争を不可避とする時代がすでに完全に来ている。これに対して9・11や今日のパレスチナ情勢が突きつけているのは、あらゆる搾取と民族抑圧と殺りくの元凶である帝国主義を実力で打倒する闘いが、被抑圧民族人民の命がけの蜂起として始まったということだ。帝国主義国の労働者階級がこれと連帯して決起するのか否か、このことこそが今、本当に問われているのだ。
有事立法3法案絶対阻止の決戦を、巨大な革命的反戦闘争の爆発としてやりぬこう。不屈に闘うパレスチナ人民への熱烈な連帯闘争に決起しよう。米帝・イスラエルによるジェニンでの大虐殺を徹底糾弾せよ! 闘うアフガニスタン人民、中東・イスラム諸国人民、闘う朝鮮・中国・アジア人民との国際連帯を今こそ強めよう。
さらに在日朝鮮・中国・アジア人民、在日ムスリム人民に対する日帝の排外主義攻撃と治安弾圧の攻撃がますます激化している。彼らと連帯して有事立法3法案粉砕の決戦と一体で、4−5月入管闘争に断固として決起しよう。
第2章 戦争に「協力義務」 新たな国家総動員
第二に、日帝はこの新たな侵略戦争・世界戦争に突き進むうえで、戦後憲法体制を根底的に転覆し、再び戦前のような軍事独裁体制と国家総動員体制をつくり出そうとしていることだ。
その第一は、国・地方公共団体・指定公共機関の戦争協力を「責務」とし、「国民の協力」が義務であることをも法案に明記したことだ。かつての「国防の義務」の完全な復活である。このもとで、行政・金融・通信・放送・運輸・医療・電気やガスなどあらゆる機関とそこに働く労働者が戦争に総動員される。
その第二は、首相に一切の権限を集中し、そのもとに「武力攻撃事態対策本部」を設置して、国と地方自治体のあらゆる行政機関、公共機関、民間までもその指揮統制のもとに従わせようとしていることである。国会と議院内閣制を事実上解体し、首相と軍部首脳が実質的な権限を独裁的に握って軍隊や警察を自由に動かし、国家総動員体制を形成することを可能にするものだ。1930年代のナチス・ドイツの全権委任法やかつての明治憲法下の「天皇大権」と本質的にまったく同じものであり、憲法の全面停止である。
その第三は、戦争協力の義務化・強制と一体で、「憲法の保障する国民の自由と権利」に「制限を加える」ことを公然と宣言したことだ。制限は「必要最小限」と言うが、戦争の泥沼化や拡大に応じてどんどん広がり、最後は無制約となるのは明白である。私権を制限するための法整備を武力行使法の施行から2年以内に行うとしているが、ここで問題となるのはずばり言論統制であり、戒厳令と軍隊の治安出動であり、労働者人民の一切の基本的人権と政治的社会的諸権利の圧殺にほかならない。
その第四は、現行自衛隊法に課せられている憲法上・他の法律上のさまざまな制約を取り払い、自衛隊の〈侵略と内乱鎮圧の軍隊〉としての自由な戦闘行動を保障する諸規定が新たに設けられることである。社会生活のあらゆる面で自衛隊(と米軍)の作戦が一切に優先され、軍事最優先の社会に変わるのだ。
とりわけ重大なことは、土地・家屋の強制使用や物資の保管・強制収用に関し、軍の命令に従わない者や拒否して闘う者を処罰する規定が導入されることである。物資の保管命令に従わない者は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」、自分の土地への立入検査を拒んだ者は「20万円以下の罰金」だ。戦前型の徴発・徴用の攻撃である。
いったんこの3法案を通せば、後は政府(首相)の一存でどのようにもエスカレートしていくことが可能になっていく。そしてこの国家総動員体制の行き着く先を典型的に示すものこそ、第2次大戦末期の沖縄戦の地獄絵だ。日帝の「本土防衛」の盾として差別的に「玉砕の島」となることを強いられた沖縄は、土地も家屋も食糧もすべて日本軍に強奪され、戦闘の最前線に動員され、果ては日本軍による虐殺や「自決」を強いられた。
この歴史を二度と繰り返すなということを今こそ声を大にして訴え、とりわけあらゆる労働組合の中に持ち込んで、武力行使法・新自衛隊法・首相大権法という性格を持つ有事立法3法案を廃案に追い込む巨万人民の決起をつくり出そう。
再び“国のために死ね”と扇動
今や日本の政治情勢、階級情勢は一変した。
4月21日の小泉首相の靖国神社春季例大祭への公式参拝の強行は、日帝・小泉政権が本気で朝鮮・中国への再度の侵略戦争に踏み切ろうとしているその国家意思を、内外に公然と宣言したものだ。すべての朝鮮・中国―アジア人民に対する真っ向からの反革命的挑戦であり、日本人民に再び「お国のために死ね」と居丈高に要求してきたのだ。断じて許せない。
侵略帝国主義としての凶暴な牙(きば)をむきだしにした日帝に対し、アジア人民は激しい怒りに燃えている。日本人民の中からも、陸・海・空・港湾労働者を先頭に、戦争絶対反対を掲げた新たな決起が続々と始まっている。これと日帝との激突は不可避だ。まさに戦後最大の階級決戦が到来したことを腹の底から確認し、歴史を塗り替える巨大な闘いをつくり出そう。
沖縄、北富士、三里塚での決戦的闘いを貫き、5・24に決起し、5・26全国から首都に総結集して闘おう。極限的な自爆決起を闘うパレスチナ人民と固く連帯し、「武力行使法・新自衛隊法・首相大権法粉砕! 朝鮮・中国侵略戦争のための有事立法3法案絶対阻止!」を高く掲げて都心を揺るがす戦闘的大デモをぶちぬこう。決戦のただ中で5・19泉佐野市議選の絶対勝利をもぎとろう。
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週刊『前進』(2052号7面1)
パレスチナ人民蜂起と連帯を
朝鮮・中国侵略戦争絶対阻止へ 有事立法粉砕・小泉政権打倒を
カクマルの介入と敵対を粉砕せよ
マルクス主義学生同盟中核派
はじめに
パレスチナ人民虐殺を直ちにやめろ! 5―6月決戦の大爆発で「武力行使法」「新自衛隊法」「首相大権法」としての有事立法3法案の成立を絶対に阻止しよう! 5・20(大阪)―5・24と5・26全国総決起闘争への大結集を訴える!
第一に、帝国主義による被抑圧民族人民の大虐殺を絶対に阻止しなければならない。日帝・自衛隊が有事法制をもってついに朝鮮・中国人民、被抑圧民族人民を虐殺する武力行使に踏み切ることを日本の労働者人民は絶対に阻止しなければならない。
今、この瞬間も帝国主義が大虐殺を強行している。米帝は、最新の軍事兵器でアフガニスタン人民を大虐殺し、米帝に後押しされたイスラエル軍が、ジェニンのパレスチナ難民キャンプを襲撃し、破壊し尽くし、1000人以上の大虐殺を凶行した。さらに米帝は、連日イラクを空爆している上に「フセイン政権を転覆する」と公言して、明日にも大々的なイラク侵略戦争に突入しようとしている。
さらに、米帝は北朝鮮に対して核査察問題を口実にして追い詰めながら、大規模な侵略戦争を強行しようとしている。日帝はこの米帝の侵略戦争に、共同的=競合的に参戦しようとしている。断じて許してはならない。
第二に、有事立法3法案を絶対阻止しよう。自国帝国主義=日帝の武力行使=侵略戦争への決定的踏み切りを阻止する闘いに命がけで決起しよう。そして、闘う被抑圧民族人民と連帯して、ともに帝国主義打倒の展望を切り開くのだ。
第三に、10万、20万の労働者の国会包囲デモ、そして陸・海・空・港湾の労働者を先頭に戦争動員を拒否するゼネスト、60年、70年を超える労働者の大闘争を爆発させ、国会審議を止め、法案をなんとしても廃案に追い込もう。
侵略戦争への全面的突入と労働者の戦争動員が切迫する中で反戦闘争の巨大なうねりが始まった。4・19の陸・海・空・港湾労組20団体などが呼びかけた5000人集会は、10万人、20万人の実力決起に向かう巨大なうねりだ。
日本共産党スターリン主義の闘争破壊を打ち破って闘うことが必要だ。日共は、有事立法3法案について、「アメリカの戦争に協力するものだから反対」「日本が攻められる理由がない」などと言って、日帝が帝国主義的利害をかけて主体的に中国・朝鮮侵略戦争に突入するものであることを隠ぺいしている。それは、実は、米帝ブッシュ政権の「対テロ戦争」と称した現実にある侵略戦争にも、さらに新たに発動される侵略戦争にも、真に対決するものではないのだ。日共は、日帝との本格的な激突になることを恐れて闘いの発展を押しとどめようとしているからだ。
日共は昨年10月、参戦3法の一つである海上保安庁法の改悪に賛成し、この海上保安庁による12・22外国船撃沈=15人虐殺という日帝の露骨な武力行使=戦争挑発を何ひとつ弾劾もしていない。日帝自身の積極的・主体的な朝鮮・中国侵略戦争策動を免罪し擁護しているのだ。
このような日共の敵対を粉砕し、3・30春闘総行動によって切り開かれた地平の上に百万人民の大署名運動をもって有事立法決戦への労働組合の組織化に全力を挙げて闘おう。
学生運動の突出した闘いが今ほど求められている時はない。反スターリン主義・革命的共産主義運動が、学生運動として、荒々しく登場することが求められているのだ。一切は反戦共同行動委員会の5・26闘争における学生運動の大隊列の登場とその実力闘争にかかっている。学生が大隊列となって激しく闘うことが開始された反戦闘争のうねりを一挙に大爆発・大発展させることになるのだ。
有事立法3法案粉砕の闘いは、5月決戦の爆発にかかっている。全国で、集会やデモ、クラス決議や大署名運動などの行動で、大学・職場・地域から巨大な有事立法粉砕決戦のうねりをつくり出し、5・24と5・26全国総決起闘争への大結集で有事立法を粉砕しよう!
〔T〕米帝・イスラエルの大虐殺 国際反戦闘争で打ち破れ
パレスチナ人民は、帝国主義の世界支配の全体重をかけた包囲と皆殺し戦争と対峙し、壮絶な全人民蜂起に立ち上がっている。自らの身体をも武器とした自爆戦闘に次々と決起している青年たちの血叫びを見て、聞いて、われわれはどうするのか。この現実を座視していていいのか。われわれ一人ひとりが命をかける決意を打ち固め、パレスチナ連帯闘争の空前の爆発をかちとり、米帝打倒―シオニスト国家イスラエル解体をかちとろう。
ジェニンで1000人以上が虐殺された
ジェニンを始め全パレスチナ自治区で強行された未曽有(みぞう)の大虐殺を断じて許してはならない。パレスチナ人民の不退転の闘いに追いつめられたイスラエル軍は、「テロリストの基盤を破壊する」とパレスチナ人民を大虐殺し、家を破壊し、奪い尽くしたのだ。
1`四方に約1万5000人が暮らすジェニン難民キャンプは、イスラエル軍に包囲され、1週間にわたり昼夜を分かたず戦車と武装ヘリによる猛攻撃が加えられた。数百b四方が瓦礫(がれき)となり、徹底的に破壊された。キャンプ住民約1万5000人のうち、21日現在で523人の死亡が家族によって確認され、なお1600人が行方不明だという。
シャロンは、全パレスチナ人民を殺すか、全占領地から追放しなければイスラエルが本当に崩壊してしまうと思っている。そしてパレスチナ人民は、今ここで一歩でも引くことがすべてを失うことであり、パレスチナの地から追われ50数年にわたって難民生活を強制されてきた歴史の再来・永続化であることを知っている。だからこそ全パレスチナ人民が死を覚悟して自らの土地に踏みとどまり、イスラエル軍の全面攻撃と対峙し、全人民蜂起に突入しているのだ。それは87年インティファーダ(民衆蜂起)以来、不屈に培われてきた闘いと全組織力の発露であり、パレスチナに自己権力を打ち立てる闘いそのものなのである。
パレスチナ人民への抑圧と迫害の歴史
米帝とイスラエルは「テロリストの掃討」とか「テロの根絶」と称して、この民族抹殺的な大虐殺を合理化しようとしているが、こんなふざけきった話があるか! 全パレスチナ人民が革命的テロリストとなって極限的闘いに決起せずにはいられない現実をもたらしたのはいったい誰なのか。米帝であり、イスラエルではないか!
米帝=イスラエルは、パレスチナ―中東でいったい何をやってきたのか。シャロンがやったことは、実は戦後50数年にわたって米帝とイスラエルがやってきたことなのだ。
戦後米帝は、中東と石油の独占的支配、民族解放闘争の圧殺の拠点として、アラブ諸国のど真ん中にイスラエルという軍事基地国家の楔(くさび)を打ち込んだ。パレスチナ人民は、米帝によるイスラエル建国によって、家も土地も国までも奪われた。1967年第3次中東戦争以降は、全パレスチナを武力占領され、数百万人が難民生活を強制された。
占領地ではイスラエル軍政のもとで植民地的支配を強制されてきた。許可なく水をくむことも、作物を栽培することも、認可なき書籍を読むことも、許可なく移動することもイスラエル軍によって禁圧されてきた。すべての銀行が閉鎖させられ、民族資本は徹底的に破壊された。米帝の巨額の資金投入のもと、イスラエル製品がダンピング価格で出回り、占領地の96%がイスラエル製品によって占められている。軍の包囲の中で主要産業である農産物輸出が妨害され、あげくに農地そのものを軍が強奪してきた。地元産業だけでは食べていけずイスラエル領内への出稼ぎを強いられてきたパレスチナ人民は、イスラエル人労働者の半分以下の賃金で働かされ、賃金のさらに20%を税金として奪われてきた。
こうした一切の現実は、米帝が年間30億jもの財政投入と武器供与によってやらせてきたことだ。パレスチナ人民は、石を投げただけで射殺され、小銃で応戦すればミサイルを撃ち込まれ、F16戦闘機で空爆を加えられてきた。ゼネストに訴えれば、イスラエル軍は商店に火を放ち、何の理由もなく数万・数十万の人びとを逮捕・拷問し、虐殺し、数千・数万の家屋を問答無用に破壊してきた。こんなめちゃくちゃな暴虐が数十年にわたって続けられてきたのだ。
米帝は、このイスラエルを軍事拠点として、アラブ諸国への侵略戦争を4度も5度も繰り返し、中東石油を支配し民族解放闘争を圧殺してきた。これが現代世界の現実であり、帝国主義の新植民地主義支配なのだ。日帝の戦後発展や、われわれ自身の生活もまた、このパレスチナ―アラブ諸国人民の膨大な流血と民族抑圧の上に成り立っているのだ。
パレスチナ人民はこの現実の中から不屈の闘いに立ち、米帝とイスラエルに対する武装闘争、革命的テロリズムをたたきつけている。それは民族抹殺攻撃を受けてきた者の積もりに積もった怒りの爆発だ。「一人でもイスラエル兵をせん滅してやる」「絶対に報復してやる」という闘いに、自爆決起を頂点に全パレスチナ人民が挙族的に立ち上がっているのだ。これに対して、どうして「テロ反対」ということが言えるのか。諸悪の根源は、米帝の民族抑圧と侵略戦争にこそあるのは明白ではないか。独立と解放をかけて闘う主体であるパレスチナ人民の立場に立つのか、この民族解放闘争を大虐殺をもって根絶しようとしている帝国主義の側に立つのか、これがわれわれ一人ひとりに問われているのだ。
米帝の先兵=イスラエルの崩壊的危機
パレスチナ人民の不屈の闘い、全アラブ諸国と全世界で巻き起こるパレスチナ連帯、米帝―イスラエル糾弾の闘いが、米帝の世界支配―新植民地主義支配体制―中東・石油支配の支柱であるイスラエルを崩壊的危機にたたき込んでいる。
イスラエルとは、米帝の中東支配の先兵として膨大な軍事費と武器を注ぎ込まれてきた軍事基地国家だ。絶えざるユダヤ人入植と領土の外延的拡大、パレスチナ人民追放と民族解放闘争圧殺を国是とし、それを担うことを役割としてきた国家ならざる国家なのだ。それは「ユダヤ人の民族国家」などではない。米帝がデッチあげ、米帝が支えて初めて成り立つ人工的な軍事基地国家にすぎない。
このイスラエルが、パレスチナ人民の怒りの全人民蜂起の中で、国是的危機、崩壊的危機にたたき込まれている。兵役拒否、反戦運動が高揚し、厭戦(えんせん)主義が広がり、イスラエル兵の士気と規律は極度に低下している。外資の逃避、観光収入の激減、軍事支出膨大化などによって経済は極度の危機に陥り、イスラエル国家存立の生命線である移民流入も前年比で2割も減少している。こうしたかつてない危機の中で、シャロンは国家存立をかけた起死回生のかけとして、パレスチナ人民を大虐殺する究極の侵略戦争に踏み切ったのである。
しかしこのシャロンが強行した全面戦争に対して、パレスチナ人民は決死の徹底抗戦をたたきつけた。ジェニン難民キャンプには多くのパレスチナ解放戦士が、防衛戦を闘うためにあらゆる組織から結集し、「抵抗は予想をはるかに超えている」、(イスラエル軍将校)「悪夢だ」(イスラエル兵)とイスラエル軍を恐慌状態にたたき込んだ。
ジェニン大虐殺と1週間にわたる徹底抗戦は、全パレスチナ人民―全世界人民の魂を揺さぶり、鼓舞している。ジェニンは、ナチス・ドイツにとってのスターリングラードと同じように、必ずイスラエル解体―米帝の中東支配の全面的崩壊へと向かう歴史的な転換点になるのだ。
イスラエルの危機の中で、あらためて米帝が前面に引きずり出されてきた。だが、パウエルまで投入した民族解放闘争の圧殺を狙ったペテン的「仲介」策動は、パレスチナ人民のすさまじい自爆戦闘によって完全に粉砕された。米帝の威信と権威はガタガタになり、その没落と無力性を満天下に暴き出した。こうした中で米帝ブッシュは、あらためて「対テロ戦争」を絶叫しているが、ブッシュの戦争策動は、米帝の中東支配―新植民地主義支配のより巨大な破綻(はたん)を引き寄せるものだ。
米帝ブッシュ政権は、歴史的没落を極める中で基軸帝国主義として世界体制の暴力的再編に自らのむき出しの帝国主義的利害をかけ、現在の世界秩序の破壊に踏み込んでいる。とりわけ世界恐慌の全面的爆発、9・11反米ゲリラ戦争の爆発という世界支配の危機に対して新軍事戦略(01年QDR路線)を確立し、「対テロ戦争」を全面発動している。あらゆる「脅威」を口実に、米帝の側から先制的に侵略戦争を発動し、もって他帝国主義をたたき落とそうとしている。日本やドイツなどの帝国主義は、このブッシュ政権の世界戦争政策に食らいつき、画歴史的な戦争政策に激しく突進している。世界は第3次世界大戦を不可避とする過程に突入したのだ。
被抑圧民族人民と帝国主義国の労働者階級が連帯し、世界革命に同時に一体となって決起することが、現実の課題として提起されている。パレスチナ人民の血叫びと英雄主義に満ちた総蜂起になんとしてもこたえよう。日本の労働者階級・学生が、今こそ闘うパレスチナ・中東・ムスリム人民と連帯して世界史的決戦に立ち上がる時だ。
〔U〕「首相大権」のもと日帝が武力を行使する有事立法
米日帝のイラク・朝鮮・中国侵略戦争の切迫
米帝がアフガニスタンやパレスチナで行っている被抑圧民族人民に対する大虐殺を日帝が行おうとするものが有事立法3法案だ。これは朝鮮・中国侵略戦争法であり、武力攻撃法である。自衛隊の侵略実戦部隊化の新自衛隊法であり、首相大権法である。そういうものとして、戦後初の、侵略戦争と国家総動員のための非常事態法体系なのである。
日帝は、戦後一貫して超えられなかった「武力行使」の領域に一気に踏み込んできた。「守る」ためではなく「攻める」ためだ。米日帝の朝鮮・中国侵略戦争が激しく切迫し、日帝が主体的に参戦しようとしているからこそ、「武力の行使」を公然とねじ込んだ極悪の有事立法3法案を出してきたのだ。
日帝が米帝の新軍事戦略に必死に対応しながら、自国の帝国主義的利害をかけて侵略戦争に突進していることを徹底的に断罪しなければならない。
第一に、米帝がアフガニスタン・中東への大規模な侵略戦争を継続し、中国・朝鮮に対する世界大戦級の侵略戦争の発動に激しく突き進んでいることだ。
米帝ブッシュ政権は、01年QDR(9月発表)と02年1月一般教書演説において、米帝の新たな軍事戦略を打ち出した。米帝の新軍事戦略は、あらゆる「脅威」を口実に米帝の側から先制的に世界大的な戦争を発動するというものであり、とりわけ、中国スターリン主義を最大のターゲットとしたものだ。そして、ブッシュの強行している「対テロ戦争」とは、米帝の世界支配の破綻点から沸きおこる民族解放闘争や旧スターリン主義や残存スターリン主義が生み出す危機に対して、どんどん先制的に戦争を仕掛けて撃破するものだ。
重大なことは、米帝の新軍事戦略が、米帝の歴史的没落とその絶望的凶暴化に規定されていることである。もはや米帝は、歴史的没落の危機を世界戦争に転化する以外に方策がないのである。米帝の歴史的没落と日米対立の非和解化こそ、今日の世界戦争過程への突入と有事立法攻撃の核心問題なのだ。
第二に、米帝が中国スターリン主義を体制的に転覆する大規模な侵略戦争を強行しようとしていることである。米帝の対北朝鮮政策はその決定的な水路として行われている。米帝は、北朝鮮を「悪の枢軸」と決めつけ、核査察を要求して追いつめ、米帝にとって最も都合の良いタイミングを計って、朝鮮侵略戦争を発動しようとしているのだ。
そして北朝鮮に対しても新たな軍事作戦計画を策定したと報道されている。それは、「米韓作戦計画5027」を新安保ガイドラインや01年QDRなどに基づき、より実戦的にしたものに間違いない。「作戦計画5027」は、米軍50万人、空母5隻を含む艦船200隻、航空機1600機を動員する大戦争計画である。@その第一段階では、北朝鮮に攻撃の兆候が見えた段階で軍事境界線(38度線)に集結する北朝鮮軍部隊や北朝鮮国内の軍事的要衝に対して猛爆を加える。A第二段階では、北朝鮮内の軍事基地や主要施設に対する集中的な空爆を行う。B第三段階では、韓国軍や在韓米軍、さらに駐留海兵隊などの地上部隊を投入する。C第四段階では、首都・ピョンヤンを軍事制圧、北朝鮮政権を転覆して韓国主導の南北統一を実現する。在韓米軍のシミュレーションでは、「核兵器を使わない場合でも100万人の犠牲者が出る」と予測している。
「作戦計画5027」のような大規模な侵略戦争の発動は、日本全土を出撃基地とし、国家総動員体制を敷くことなしには成り立たない。有事立法とは、中国・朝鮮に対する米日帝の大規模侵略戦争のための総力戦体制・総動員体制確立のための法律なのだ。
第三に、没落帝国主義化にあえぐ日帝の体内から、帝国主義的排外主義と愛国主義、侵略戦争への絶望的衝動が噴き出していることである。4・21小泉の靖国神社参拝は有事立法と一体のものであり、アジア人民に対する宣戦布告であり、日本の労働者人民に対して「再びお国のために命を差し出せ。命がけで協力しろ」というものだ。日帝の没落帝国主義化の危機の激しさ、そこから噴き出す絶望的な戦争衝動こそ、有事立法攻撃の本質なのだ。
小泉の「国家の緊急事態への対処に関する首相談話」に明らかなように、日帝は「テロ・不審船・拉致事件」で北朝鮮への排外主義を扇動し、「テロ」や「不審船」を口実にして朝鮮侵略戦争に突入することを決断したのだ。
日帝が「外部から攻撃される」のではない。米・日帝国主義が北朝鮮スターリン主義に対して軍事重圧をかけ、体制転覆をかけた侵略戦争を発動しようとしていることが戦争の原因なのだ。日帝こそ、朝鮮や台湾を植民地支配し、中国や東南アジアに対して侵略戦争を行い、アジア人民を虐殺してきたのだ。アジアに侵略してきたのは常に日帝ではないか。戦後も帝国主義は、朝鮮半島を分割し、朝鮮人民を分断し、在日朝鮮人・中国人に入管体制という植民地主義的民族抑圧を継続してきたのだ。これに対して朝鮮人民は、民族統一を要求して、戦後の全過程を連綿と闘い続けてきたのである。
北朝鮮スターリン主義が問題なのは、この朝鮮人民の民族統一の要求と闘いを裏切ってきたことだ。そして、帝国主義の支配と戦争政策に対して、世界革命の一環としての南北分断打破=民族統一の闘いを放棄したところから、かつまた日本の労働者階級に日帝打倒を呼びかける立場を否定したところから、一国社会主義体制の防衛のための軍事力学的な対抗に終始していることだ。だが、このことをもって米日帝が侵略戦争を行うなど断じて許されない。朝鮮の未来は朝鮮人民自身が決めることだ。
日帝が北朝鮮スターリン主義の危機と反人民性につけこみ、侵略戦争を発動し、朝鮮人民を虐殺することを絶対に阻止しなければならない。
被抑圧民族を大虐殺するための有事立法
有事立法3法案とは何か。
第一に、日帝が帝国主義的利害をかけて中国・朝鮮侵略戦争に参戦し、自衛隊が被抑圧民族人民を虐殺する武力行使を行うものだということだ。
武力攻撃事態法案で「武力攻撃事態を終結させるために実施する措置」として、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」が明記されたことが超重大である。自衛隊が被抑圧民族人民を虐殺する武力行使を行い、軍事的に壊滅・制圧して「武力攻撃事態を終結させる」ことを真っ向から打ち出したのだ。「武力の行使」という文言をねじ込んだことに、日帝のすさまじい戦争意志と中国・朝鮮侵略戦争の切迫性がある。
憲法第9条の「戦争の放棄、戦力不保持、交戦権の否認」は、真っ向から否定されたのである。戦後、日帝が超えたくて越えられなかった一線である国権の発動としての戦争、武力の行使についに踏み切るというのだ。99年周辺事態法や01年テロ対策特別措置法でも「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」などと書かざるをえず、一貫して「日本は戦争をやらない」「戦場には行かない」「武力の行使はしない」「武力行使とは一線を画する」などとペテン的に言ってきたことを、すべて蹴破って正面から「自衛隊による武力の行使」を打ち出したのだ。まさに、自衛隊が帝国主義軍隊として魂を吹き込まれ、日帝が侵略戦争を遂行する戦争主体として登場しようというのだ。しかも、「武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。この場合において、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」(武力攻撃事態法案第3条)と言う。これは、相手を壊滅させて戦争を終結させるために無制限の武力行使を行うということだ。
米帝が最新兵器を使ってアフガニスタン人民を大虐殺している侵略戦争や、イスラエルがパレスチナ人民を大虐殺している侵略戦争を自衛隊がやるということなのだ。それは、日帝が南京大虐殺や三光作戦などで中国人民や朝鮮人民、アジア人民を2000万人以上も虐殺していった侵略戦争と植民地支配の歴史を再び繰り返すということなのだ。いったい憲法第9条とは何のために存在してきたのか。再び侵略戦争を繰り返さないためではなかったのか。
「武力攻撃事態」概念を拡大し侵略戦争へ
日帝が中国・朝鮮侵略戦争に主体的に参戦し、自衛隊の武力行使を発動するために「武力攻撃事態」という概念を打ち出してきたことを絶対に許してはならない。旧来の有事立法研究が対象とした日本有事とはまったく違うのである。
「武力攻撃事態」の定義は、「武力攻撃のおそれのある場合」「武力攻撃が予測されるに至った事態」ということに核心がある。日本が武力攻撃された場合に備えて有事立法が必要という問題ではない。日本が武力攻撃を受けるという「おそれ」や「予測」をもって「武力攻撃事態」を宣言し、日帝の側から早期に戦争に突入するのだ。中谷防衛庁長官の「周辺事態は武力攻撃事態のひとつ」という発言に示されるように、「武力攻撃事態」の概念を無限に拡大して中国・朝鮮侵略戦争に参戦しようとしている。こんな強引な解釈で日帝は侵略戦争をやろうとしているのである。
自衛隊法改悪で、出動待機命令の段階から自衛隊の陣地構築を可能としている点など、「予測されるに至った事態」から自衛隊の戦闘行動を開始するとしているのは、有事立法3法案全体の特徴である。まさに米・日帝の側から侵略戦争をしかけるという観点で、3法案が組み立てられているのだ。
それだけではない。武力攻撃事態法案では、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない」(第3条)として、日本に対して武力攻撃があったから反撃するというのでもなく、「武力攻撃が予測される」というだけで、敵の武力攻撃の発生を未然に防止するという理由で先制攻撃をもって相手を粉砕することまで打ち出している。新安保ガイドラインでは「自衛隊及び米軍は、密接に協力し調整して、弾道ミサイル攻撃に対応する」とあり、弾道ミサイルが発射されようがされまいが、相手の軍事基地を自衛隊が先制攻撃することも構想しているのである。
また、「武力攻撃事態以外の……緊急事態への対処」として、「テロ」「不審船」対策を日帝自身の対テロ戦争として高く位置づけ、日帝が「不審船」を撃沈することで「武力攻撃が予測されるに至った事態」をつくり出し、朝鮮侵略戦争に突入することまで狙っているのだ。
武力攻撃事態法案は、自衛隊が米軍と並ぶ戦争の主体となって日米(日米韓)統合作戦を担うという点で重大な飛躍がある。日帝は、「集団的自衛権は保有するが憲法上行使できない」としてきた政府見解を覆し、憲法を公然と踏み破って自らの帝国主義的利害をかけて中国・朝鮮侵略戦争に突入しようとしているのだ。日共の「アメリカの戦争に協力するための有事立法」という主張は、攻撃の核心を隠ぺいする主張である。
ナチスの全権委任法に等しい首相大権法
第二に、武力攻撃事態の宣言をもって首相に全権が集中されて憲法停止の非常事態法体制に移行するということだ。日帝が侵略戦争を遂行する戦争主体となり、国家を挙げての侵略戦争に突入するからこそ、首相独裁体制が必要となる。
武力攻撃事態法案では、首相が「対処基本方針」=戦争計画を閣議決定するだけで戦争に突入する。この国家の意思決定の過程に、国権の最高機関のはずの国会が介在する余地はまったくない。
「対処基本方針」は、安全保障会議に新たに設置される専門委員会が事前に戦争計画として準備していたものが出される。専門委員会は、自衛隊幹部、警察や外務省の幹部職員で構成されており、在日米軍との戦争計画の立案や国家総動員計画の作成を行う。
すでに、新安保ガイドラインの包括的メカニズムに基づいて、在日米軍と自衛隊幹部で構成される日米共同計画検討委員会(BPC)で戦争計画が準備され、関係省庁局長等会議で国家総動員体制が検討されている。今年2月に行われた日米共同統合指揮所演習では、在日米軍と自衛隊のほかに外務省、警察庁、海上保安庁、国土交通省、厚生労働省が参加した。安全保障会議とその常設機関である専門委員会は、在日米軍と密接にリンクしながら戦争準備を進めるのだ。
「対処基本方針」を閣議決定するや首相は、自らが本部長を務め、全閣僚で構成する「武力攻撃事態対策本部」を設置する。政府各省庁の権限のすべてが対策本部に委任され、その下に自衛隊の管区に合わせた全国6地方に区分けされた「地方対策本部」が設置される。自衛隊各方面隊の命令のもとに地方自治体が掌握され、首相直轄で自衛隊を中心に全国―地方を軍政・軍令のもとに組み敷く。
首相は、地方自治体や指定公共機関(独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社やNHK・民放、JR、NTT、電気・ガス会社など)に対して強大な「指示権」を行使する。その権限は、地方自治体の長や指定公共機関が拒否したり、ちゅうちょしたりした場合、頭越しに首相が代わって「自ら実施」させることができるという強権的なものだ。
まさに、立憲主義、議院内閣制を基本とする現行憲法体系が破壊され、首相独裁による戦争法体系に国の仕組みを大転換するのだ。有事を宣言し開戦を決定するのが首相ならば、戦争計画を決定するのも首相であり、自衛隊の最高の指揮監督権を有し、自治体や民間を統制するのも首相なのだ。首相に全権が集中される首相大権法と言うべきものだ。ナチスの全権委任法や明治憲法に等しい非常事態法体制構築を絶対に許してはならない。
国防を「国民の義務」とし総動員体制狙う
第三に、労働者人民の戦争動員を始めとした国家総動員体制を確立するということだ。
武力攻撃事態法案では、「武力攻撃事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない」(第3条)とある。戦争のために国家総動員体制が敷かれるということだ。そして、国、地方公共団体及び指定公共機関は、米軍や自衛隊を総力で支援=戦争協力する「責務」を持つことになる。
「国民は……必要な協力をするよう努めるものとする」(第8条)として労働者人民の戦争協力が明記され、基本的人権が大幅に制限される。また、「武力攻撃事態への対処において国民の協力が得られるよう必要な措置を講ずる」(第21条)と、より強い罰則規定で労働者人民を戦争動員しようとしている。
自衛隊法改悪案では、労働者人民が戦争協力させられ、自衛隊の行動の自由のために基本的人権が制限され、土地や家屋が強制収用されることが出されている。医師・看護婦、土木技術者・建築技術者、土木労働者・建築労働者、鉄道・道路・航空・船舶・港湾などの交通・運輸労働者、自治体、清掃、食品……などすべての労働者人民が戦争協力・動員され、自衛隊の軍事行動に協力させられるのだ。労働者人民は、自衛隊の軍事行動で必要となれば、土地や家屋、田畑などを強制的に提供させられる。
「生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置」(武力攻撃事態法案第2条)とあるように、自衛隊が必要とする物資が優先的に確保され、労働者人民は後回しとなる。戦中の配給制の復活も想定されている。自衛隊の物資の保管命令に違反すれば懲役刑に処されるのだ。
武力攻撃事態法案では、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」について、「これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のもの」(第3条)などと「自由と権利」を踏みにじることを打ち出している。
労働者人民の基本的人権を踏みにじり、国を中心にして地方公共団体や指定公共機関、民間業者から労働者人民まで戦争動員し、国家総動員体制を確立しようとしているのだ。
自衛隊の行動自由化し軍事最優先社会に
第四に、自衛隊の軍事行動に対する制約を取り払おうとしていることだ。
米軍が北朝鮮に空爆を開始する段階こそ、「武力攻撃が予測されるに至った事態」であり、自衛隊に出動待機命令が出される段階である。今回の自衛隊法改悪によって、日帝は、自衛隊の出動待機命令の段階であらかじめ陣地を構築するために出動させようとしている。米軍の動きと合わせて自衛隊を出動させようということだ。しかも、この段階において、自衛官が自己の判断で武器を使用することを可能としようとしている。
日帝は、攻撃した相手がゲリラなどで反撃することを想定し、あるいはキャンペーンして自衛隊を出動させ、首都を戒厳状態におき、政府や自治体の施設の警備、自衛隊基地や在日米軍基地の警備、原発警備や海岸防衛、海上警備行動や警戒監視などで、どんどん自衛隊を出動させ、自衛隊の軍事行動のために邪魔になるものは、破壊・変更し、法律を適用除外として、必要なところに陣地や基地をつくり、爆弾や燃料を満載した車両を夜間も無灯火で走らせようとしている。
まさに、自衛隊の存在自体を憲法と現行法制より上位に置き、自衛隊の武器使用を始めとするあらゆる行動に必要な人と物を総動員する攻撃だ。
「警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置」(武力攻撃事態法第2条)も、自衛隊の軍事行動(戦闘、陣地構築、通行、兵たん施設設置など)を円滑に行うという観点から、労働者人民を統制するための措置なのだ。
まさに、自衛隊は何をやっても許されるということであり、小泉の言う「命がけで戦う自衛隊」への協力を当然のこととして強制するというのだ。
戦時治安弾圧の強化と情報・言論の統制
第五に、戦時治安体制確立ということだ。すでに、組織的犯罪対策3法や団体規制法(新破防法)、国民総背番号制(今年8月から実施)など、治安弾圧立法の制定と労働者人民の管理・統制の攻撃は強まっている。昨年の自衛隊法改悪によって、国内諸施設の警護を名目として平時から自衛隊を展開配置することができるようになった。
有事立法3法案と一体のものとして個人情報保護法案など「メディア規制3法案」も今国会で成立が狙われている。マスメディアを始め情報・言論を統制し、戦前の大本営発表の体制を確立することを狙ったものであり、戦争国家体制=国家総動員体制の重大な攻撃だ。武力攻撃事態法案では、「社会秩序の維持に関する措置」(第22条)をあげ、戒厳令などの治安弾圧立法の制定も狙っている。
さらに、有事立法3法案と並んで入管法改悪が狙われている。武力攻撃事態法案の「避難の指示」とは、国家権力が労働者人民を統制することであるが、在日外国人に対しては「相手国の国籍を有する外国人の安否情報の管理及び提供」などと敵国人民として扱い、治安弾圧の対象として予防拘束・強制退去を行うことを狙っているのだ。
中国・朝鮮侵略戦争に反対する労働者人民の闘い、在日朝鮮・中国人民の闘いを圧殺する大攻撃である。
沖縄の最前線基地化=沖縄戦の再現許すな
第六に、沖縄に新たな基地強化=最前線基地化とすさまじい犠牲を押しつける攻撃だということだ。有事立法は、沖縄戦を再現する攻撃なのだ。
沖縄戦で行われたことは、有事立法が何をもたらすかを示している。沖縄戦で日本軍は陣地構築や飛行場建設に沖縄人民を動員する一方、沖縄人民を邪魔者扱いした。日本軍にとって、沖縄人民は守る対象ではなく、戦闘に動員し、働かせ、食糧や避難壕(ごう)を奪い、最後は米軍の捕虜となることを許さずに自決を強要する存在だった。そして、1945年には17歳から45歳の男性のほとんどを軍隊に召集し、沖縄全土を焼き尽くすような地上戦を強行し、当時の沖縄県民の3分の1の約20万人が殺されたのだ。
これが、有事立法の「避難の指示」「国民の協力」の実態だ。沖縄人民の「命どぅ宝」の叫びは、沖縄戦を再び絶対に繰り返さないということなのだ。
5・19沖縄復帰30年記念式典は、沖縄闘争を圧殺し、沖縄を戦争に動員する〈再びの沖縄戦〉への道である。沖縄人民と連帯して、式典粉砕の沖縄現地闘争を闘おう。名護新基地建設阻止を有事立法粉砕の最先端の攻防として闘おう。
闘う朝鮮・中国・アジア人民、在日・滞日人民と連帯し、闘うイスラム諸国人民と連帯して、5・20大阪・扇町公園、5・24明治公園、5・26全国総決起闘争(東京・芝公園)へ大結集し、5−6月決戦の大爆発をかちとろう。
「テロ根絶」「小泉改革を応援する」「自衛隊は必要」と叫ぶ松崎JR総連と、それを批判せずにすり寄るカクマル中央派。彼らの介入と敵対を断固粉砕して、有事立法3法案を絶対阻止しよう。
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週刊『前進』(2052号8面1)
ジェニンの大虐殺を許すな
闘うパレスチナ人民と連帯し 米帝・イスラエルの侵略戦争を国際的内乱の爆発で阻止せよ
イスラエル軍のパレスチナ自治区全面侵略の中で、またしても人民大虐殺が凶行された。ヨルダン川西岸北部の町ジェニンで、1000人を超えるパレスチナ人民が無差別大虐殺されたのだ。この暴虐を許せるか。これこそが、帝国主義とシオニズムの正体だ。米帝とイスラエルの凶暴きわまるパレスチナ・中東支配の現実なのだ。パレスチナ人民は、この筆舌に尽くしがたい暴虐に激しい怒りを燃やして、不屈に闘い抜いている。この闘いに連帯し、今こそパレスチナ反戦闘争と有事立法粉砕決戦に決起しなければならない。労働者人民の国際的反戦闘争で、イスラエルのパレスチナ人民虐殺を直ちにやめさせよう。シオニスト国家=イスラエルを打倒しよう。
サブラ・シャティーラ以来の戦争犯罪
この間のイスラエルによるパレスチナ自治区侵攻の中で何が起こったのか。
まず、ジェニンの大虐殺を徹底糾弾しなければならない。
イスラエル軍が報道関係者を入れさせないで凶行を働き、しかも事態が漏れ伝えられ始めるや、徹底した隠ぺい工作を行っていることにより、全容はいまだ明らかになっているわけではない。だが、イスラエル軍がジェニンのパレスチナ難民キャンプで行った人民大虐殺は、82年のサブラ・シャティーラの大虐殺以来の大犯罪である。
まず、具体的事実のいくつかを見てみよう。
ある親子は、イスラエルのブルドーザーによって難民キャンプの家を破壊されそうになり、逃げようとした。母親は子どもの一人を腕に抱えていた。親子が家から一歩外に踏み出した時、イスラエル軍のアパッチ攻撃ヘリから銃撃され、14歳の少年が殺された。
ある家では17歳の少年が家の外に出てイスラエル兵に頭を撃たれて殺された。家族が遺体を家に運び込んだところ、イスラエル軍に砲撃され、家は破壊された。イスラエル軍はその家をブルドーザーで踏みつぶしてがれきの山にした。一家8人は、全員ががれきの下敷きになった。
ある家では、娘が屋外に出てイスラエル軍に銃撃されて負傷し、娘を連れ戻しに出た母親も撃たれて傷を負った。母親が病院に行かせるように激しく抗議し、イスラエル軍が病院に連れて行くと言って2人は家を出たが、いまだに行方不明のままである。
さらに、イスラエル軍に拘束された武器を持たない男たちが壁際に並ばされ、一斉射撃で銃殺されたことが目撃されている。
こうした事態がジェニン難民キャンプの全域で展開されたのだ。
ジェニンには4月2日夜からイスラエル軍が侵攻した。イスラエル軍は戦車の前にパレスチナ人男性を立たせ、人間の盾として突撃を行った。電気、水道、電話などのライフラインを切断し、救急車にも銃撃を加えて動けないようにした。
街の中心部で最大の激戦が闘われ、イスラエル軍も23人が死亡している。シャロンが10日にジェニンを視察し現地部隊を激励した。その後、虐殺のための虐殺がさらに大規模に行われたのである。イスラエル軍が街を制圧して動くものすべてを銃撃し、住民が家から一歩も出られない状態をつくり出し、アッパチヘリからの爆撃とブルドーザーで家を破壊し、戦車で踏みつぶしていったのだ。
しかもこの虐殺は米国務長官パウエルがシャロンを「平和の人」とたたえ「停戦の仲介」と称してシャロンやアラファト議長と会っているさなかに行われた。
街は大地震が襲ったように破壊された。がれきの下からわき上がる死臭が立ちこめ、所々に手や足が突き出していた。がれきの下にはまだ生存者がいるかもしれないが、イスラエル軍によって重機の搬入が阻止され、がれきを撤去することもできない状態が続いた。23歳の青年は運良く助け出されたが、イスラエル軍は撤退後も街を包囲し、街につながる道路に土山を築いて車が入れないようにし、食料や水、医薬品の搬入を妨害している。
それだけではない。イスラエル軍がジェニンで大虐殺を行った事実が明らかになると、それを隠ぺいするため、がれきに穴を掘って、虐殺したパレスチナ人の遺体を埋め、その上を戦車で踏みつぶした。遺体を集めてトラックで運び出した事実も、あちこちで目撃されている。
1万5000人のジェニン難民キャンプの住民のうち、すでに死亡が確認された人は500人を超えている。まだ行方がわからない人は1600人に上る。
イスラエル軍は3月29日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区に対して全面的な侵攻作戦を開始した。29日にラマラに突入して凶暴な侵略戦争を拡大したのを皮切りに、30日にはヘブロン、ナブルス、ベイトジャラにも侵略戦争を拡大し、さらにカルキリヤ、ベツレヘム、トゥルカレム、ジェニンと西岸全域に侵攻、4月19日にはガザにも侵攻した。各地でパレスチナ人民虐殺を行ったのだ。
イスラエル軍は4月21日に西岸自治区からの撤退を発表した後も、ラマラのパレスチナ自治政府を厳重に包囲し、アラファト議長の殺害を狙っている。また、ベツレヘムの聖誕教会は、武装勢力がいるという口実で、200人の人びとが重包囲下に置かれたままだ。イスラエル軍は撤退発表の裏で次々と別の難民キャンプへの侵攻を繰り返している。
米帝はイスラエルに撤退を迫るかのように装う言動を重ねていた。だが、フライシャー報道官が「米国の言うことに敬礼して『かしこまりました』と言わなくても国民は驚かない」と発言したことに示されるように、米帝は表向きの撤退要求の陰で実際にはイスラエルにパレスチナ人民虐殺への承認を与えていたのだ。
国連安保理でジェニンへの調査団派遣が決議されたが、これに対してもイスラエルは調査団の人選に言いがかりをつけて引き延ばしている。あらゆる手段でジェニンの大虐殺を隠ぺいしようとしているのだ。
パレスチナ人民に加えられているこの暴虐、これこそがイスラエルによるパレスチナ侵略の歴史そのものであり、米帝の中東支配の現実なのだ。パレスチナ人民を次から次に大虐殺し、息もできないような軍事占領下に置き、最新鋭の兵器で重武装した軍事基地国家・イスラエルの存在によって恫喝し、アラブ人民の決起を抑えつけてきた。この現実を根底から転覆する以外に、パレスチナ人民の解放は実現されないのだ。
存立の危機に立つシオニスト国家
イスラエル・シャロン政権と米帝によるパレスチナ侵略戦争の凶暴な展開の根底にあるものは何か。
米帝は9・11ゲリラ戦闘への報復としてアフガニスタンへの無差別爆撃・人民大虐殺を展開してきた。それと一体となって、シャロン政権はパレスチナ人民の闘いを圧殺するために人民虐殺の凶暴な戦争を拡大してきたのである。29年型世界大恐慌過程が進行し、世界支配体制自身が根底的な危機を迎える中で、中東を始めとした民族解放闘争を根絶するために凶暴な侵略戦争を強行しているのだ。
この間、パレスチナ人民の不屈の決起によって、イスラエルは国家存立の危機に追いつめられている。パレスチナ人民への巨大な抑圧の上に成り立っているシオニスト国家イスラエルは、パレスチナ人民の不屈の闘いによって永遠にその支配の安定が得られない状態にある。経済的にも90年代前半は6%の成長率だったのに、00年は4・7%、01年は2・7%に落ちており、02年はさらに1・7%に後退すると見られている。01年1−9月の外国からの投資額は、前年同期に比べて70%も落ち込んだ。観光収入は65%減少し、業界全体で雇用の4分の1が失われた。失業率は、02年には10%に達する見込みだ。こうした中で、イスラエルからのユダヤ人の流出が過去最大になっている。
イスラエルは、もともとパレスチナの地とは縁もゆかりもないヨーロッパのユダヤ人を、シオニズム運動によってパレスチナに移住させることによって成立した。そのイスラエルにとって、こうした危機の深刻化は国家の崩壊につながる問題をはらんでいる。だからこそシャロン政権は、パレスチナ人民の闘いを圧殺しようと全面的なパレスチナ人民虐殺戦争に訴えているのだ。
シャロンは、こうしたイスラエルの国家存立の危機に直面し、政権に就く以前の00年9月にイスラム教の聖地アルアクサ・モスクをじゅうりんして、パレスチナ人民の闘いを暴力的にたたきつぶそうとする策動を開始した。そして、9・11ゲリラ戦闘とそれに対するブッシュ政権のアフガニスタン侵略戦争と一体となって、パレスチナ自治区への侵攻、パレスチナ人民を民族丸ごと抹殺する攻撃に踏み込んでいるのだ。
こうしたイスラエルの危機は、同時に米帝の中東支配体制の根底からの危機を意味している。米帝は、イスラエルを中東に打ち込んだくさびとして中東支配を貫いてきたのである。この危機をのりきり、アラブ・中東人民の決起を暴力的に抑えつけるために、米帝は何がなんでもイラク侵略戦争を強行しようと全力を挙げた策動を展開している。パウエル国務長官の中東訪問は、イスラエルのパレスチナ侵略戦争を支えると同時に、イラク侵略戦争突入に備えてアラブ諸国に屈服を迫ることが狙いであった。米帝は、自らがイラクへの凶暴な侵略戦争に突入することで、パレスチナ人民、イスラム諸国人民の闘いを解体しようと企てているのである。
だが、そうした米帝の策動は、シャロン政権のあまりにも凶暴なパレスチナ人民大虐殺に対し、全世界でパレスチナ人民と連帯しイスラエルを弾劾する闘いが巻き起こったことによって完全に行き詰まっている。
石油という戦略的資源を産出する中東は、米帝の全力を挙げた凶暴な支配のもとに置かれてきた。その支配を担う柱として軍事基地国家イスラエルが据えられているのである。米帝は毎年60億j近くの資金援助、武器援助を与えてイスラエルを支え続けてきた。したがって、パレスチナ人民の闘いは、本質的に帝国主義の全体重をかけた凶暴な支配との闘いとして闘われてきたし、それを打ち砕くことなしに勝利はないという関係にある。
パレスチナ人民の血叫び受け止めよ
われわれはパレスチナ人民の血叫びを受け止め、その怒りを、苦しみと悲しみを、そして何よりもパレスチナ解放にかけた熱い思い、血叫びを、新たな7・7自己批判をもってわがものとしなければならない。パレスチナ人民が置かれている現実と、パレスチナ人民の上に加えられた暴虐の歴史、それと必死に闘い抜いてきたパレスチナ人民の闘いの歴史をしっかりと学ばなければならない。
パレスチナ問題とは何か。パレスチナ人民は今、どのような現実の中で生き暮らしているのか。
イスラエルは、ヨーロッパで差別と迫害を受けてきたユダヤ人に「シオンの丘(エルサレム)に帰ろう」とあおるシオニストの運動を使って彼らをパレスチナに移住させ、そのことによってデッチあげられた国家である。そこに住んでいたパレスチナ人民は土地を追われて難民となり、イスラエルの凶暴な軍事支配のもとで言語に絶する迫害と抑圧を強いられている。
帝国主義は、このシオニストの運動を利用することによって中東侵略を進めてきた。特に米帝は、第2次世界大戦後、各国を暴力的に脅迫することによって47年国連でパレスチナ分割決議を強行した。それによって48年第1次中東戦争でシオニスト国家イスラエルがデッチあげられたのだ。そして56年第2次中東戦争、67年第3次中東戦争、73年第4次中東戦争、82年レバノン侵略戦争(第5次中東戦争)と侵略戦争に次ぐ侵略戦争を繰り返してきた。まさに米帝の中東支配とイスラエルの歴史は、パレスチナ人民虐殺の歴史そのものである。米帝の全面的なバックアップを受けたイスラエルの凶暴な侵略戦争で周辺アラブ諸国を脅迫し、米帝の中東支配に屈服させてきたのである。
ヨーロッパにおけるユダヤ人問題は、帝国主義がユダヤ人に対する差別・抑圧を使って人民を排外主義へと動員し、侵略戦争・帝国主義戦争に突入していったことによって激化し爆発した。まさにユダヤ人問題とは帝国主義の問題であり、帝国主義を打倒しない限り解決しない問題である。だが、帝国主義はこの帝国主義のユダヤ人への差別・抑圧によって起こったファシスト的なシオニズムの運動を利用することによって中東侵略を進めてきた。
パレスチナ人民は、半世紀以上たった今も450万人もの人びとがその土地を追われたまま、ヨルダンを始め、レバノン、エジプト、シリア、湾岸諸国などで難民生活を強いられている。100万近くの人びとがイスラエル領内で人種差別的な厳重な監視下の生活を強いられている。ヨルダン川西岸、ガザ地区では、それぞれ170万人、100万人の人びとがイスラエル占領軍の極限的な抑圧のもとに置かれている。
93年暫定自治開始以後もイスラエル軍の極限的な抑圧はなんら変わらず、パレスチナ人民が「アパルトヘイト」と呼んで弾劾する軍事監獄状態が続いている。イスラエルは67年第3次中東戦争で占領した地域からの撤退を要求した国連決議にもかかわらず、一方的に占領を続け、土地を奪って入植地を建設し、水資源も奪ってきた。ユダヤ人入植者は、パレスチナ農民のオリーブやオレンジの木を焼き払い、ブドウ園やイチゴ畑をブルドーザーで踏みつぶし、学校帰りの子どもたちをオノで襲ってけがをさせたりしてきた。
こうした軍事監獄状態が続く中、67年のイスラエル占領から20年を経て、イスラエル占領下で育った子どもたちが石でイスラエル軍戦車に立ち向かい、インティファーダ(民衆蜂起)の闘いを開始したのである。
民族解放闘争に命をかけた自爆決起
インティファーダは、極限的な抑圧状況に置かれたパレスチナ人民の根底からの怒りの決起であり、人間としての尊厳をかけた憤激の爆発であった。インティファーダの中で蜂起の統一指導部を形成し、イスラエルによる住民支配、経済支配を打ち破るために立ち上がった。この闘いは、いかなる強大な軍事力も、いかに凶暴な人民虐殺も、けっしてパレスチナ人民の決起を抑えつけられないことを突きつけたのである。
インティファーダへの決起に対してイスラエル軍は石を投げる少年たちに容赦ない銃撃を加え虐殺を繰り返してきた。インティファーダがあれば住民の家をブルドーザーで破壊し踏みつぶしてきた。さらにインティファーダに対する懲罰的措置として経済封鎖を行い、住民生活を極限的な危機に陥れてきたのである。
そして、89年アルアクサ・モスクでのパレスチナ人21人の虐殺という事態を契機にして、インティファーダの中での自爆決起が開始された。
93年暫定自治開始の幻想はすぐにはがれ落ちた。イスラエル軍とユダヤ人入植地に包囲されたパレスチナ自治区は、軍事監獄と変わらないものだった。イスラエルによって封鎖された経済は、一層イスラエルへの依存を強めざるを得なかった。そうした中で、ネタニヤフ政権の入植地拡大政策に対して第2次インティファーダが闘われ、さらにパレスチナ人民を民族丸ごと抹殺しようとするシャロン政権の登場に対して、一層激烈な第3次インティファーダが爆発するのである。
パレスチナ人民の自爆決起は、「決死の闘い」とか「死を賭(と)した決起」というレベルを超えている。パレスチナ人民は、自らの命を投げ出して闘う以外に一切の闘う手段すら奪われたような極限的な抑圧状況の中に置かれている。その中でなおかつパレスチナの解放のために、10代の若者が、高校生の女性が、20代の青年が再び生きて帰ることのない闘いに敢然と決起しているのだ。それは、極限的な抑圧の中で「将来がない」という絶望によるものでは断じてない。パレスチナ人民に加えられてきた暴虐の数々と、肉親を殺され、友達を殺された怒り、慟哭(どうこく)と血叫びの中で、民族の解放に自らの未来を見い出し、そのために自己を犠牲にする、「個に死して類に生き」ようとする必死の闘いなのである。
このパレスチナ人民の闘いと連帯して全世界で闘いが巻き起こっている。中東ではエジプト、レバノン、ヨルダン、シリア、イラク、イエメン、モロッコなどで連日のように万余のデモが闘われている。ヨーロッパでは、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスなどで10万人規模のデモが巻き起こっている。アメリカではワシントン、サンフランシスコを始め全国で20万人がデモに決起した。
そしてイスラエルでも、パレスチナ人虐殺を阻止するためのデモが闘われ、またイスラエル軍の包囲下に置かれたパレスチナ人民に食料や水、医薬品などを届けようとする闘いが起きている。そして、国際連帯を掲げる人びとがパレスチナ人民の虐殺を阻止しようとパレスチナの地で必死の闘いを繰り広げている。
われわれは、パレスチナ人民の必死の血叫びにこたえて、この日本の地でパレスチナ連帯の反戦闘争を爆発させなければならない。全世界のパレスチナ連帯の闘いと一体となって、日本におけるパレスチナ反戦闘争を全力で構築しよう。
パレスチナ人民のこの闘いは、イスラエル内においてもパレスチナ人民と連帯した運動を生み出し、若者の兵役拒否や予備役の軍務拒否の運動にまで広がっている。一方ではイスラエル兵を恐怖の中にたたき込み、イスラエルそのものを存立の危機へとたたき込んでいる。だからこそシャロン政権は、凶暴で全面的なパレスチナ人民虐殺戦争に訴えているのである。
これはパレスチナ解放闘争の決定的な局面である。いかなる犠牲をも恐れないパレスチナ人民の不屈の決起が米帝・イスラエルの侵略・抑圧を打ち砕くのか、米帝・イスラエルが実際にパレスチナ人民を抹殺してしまうのか。今や情勢はそこまで煮詰まっているのである。米帝・イスラエルによるこれ以上のパレスチナ人民虐殺を絶対に許してはならない。
石油資源の略奪のためにさらにパレスチナ人民を虐殺し続けるのか、それとも闘うパレスチナ人民と連帯してシオニスト国家イスラエルを打倒し、帝国主義の中東支配を打ち砕くのか。日本人民の血債をかけた決起が求められているのだ。
今こそパレスチナ反戦闘争と有事立法粉砕決戦に決起しよう。小泉政権を打倒し、米日帝の朝鮮・中国侵略戦争、中東侵略戦争を絶対に阻止しよう。
〔秋原義明〕
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週刊『前進』(2052号8面2)
メディア規制3法案粉砕を
有事立法と一体の戦時治安法「人権擁護」を掲げ報道を圧殺
日帝・小泉政権は、今国会で、有事立法3法案とともに個人情報保護法案、人権擁護法案および青少年有害社会環境対策基本法案のいわゆる「メディア規制3法案」の成立を図っている。この攻撃は、有事立法攻撃と一体の攻撃であり、テロ資金規制法案、保安処分新設立法などと並ぶ治安弾圧立法であり、戦前の治安維持法のような暗黒社会をつくりだす悪法である。
これらの法案が成立すれば、報道機関が戦後初めて内閣府や法務省の監督下に置かれる事態となり、報道の自由は圧殺され、戦時体制が敷かれることになる。有事立法3法案とともに、この3法案を真っ向から弾劾し、粉砕するために闘うことを呼び掛ける。
昨年3月に国会提出され、継続審議になっていた個人情報保護法案は、4月25日に衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、内閣委員会に付託された。また人権擁護法案は、今年3月に国会提出され、参議院先議となり、4月24日、参院本会議で趣旨説明と質疑が行われた。また、青少年有害社会環境対策基本法案は、自民党によってすでに条文化され、国会に提出されようとしている。いずれも今国会成立がめざされており、事態はきわめて緊迫している。
それぞれの法案の基本点を見れば、その問題点は明白である。
個人情報保護法案では、「個人情報を扱うすべての者が守るべき基本5原則」として、@利用目的の明確化、A適法、適正な取得、B正確性の保持、C漏えい防止などの安全確保、D本人が関与できる透明性、を守ることが義務づけられる。報道は罰則付きの義務規定からは外されたが、大きな制約になることは変わりない。また将来の罰則にまで発展するものである。
義務規定に違反した場合、主務大臣は勧告や改善命令を出すとされる。
個人情報保護法案は、プライバシーの保護やマスコミの過剰取材の抑制などを口実として掲げているが、報道・表現を権力によって規制するものであることははっきりしている。
取材対象の政府や権力を保護し、取材制限することで、政治家や官僚などの疑惑や権力犯罪を暴露させない効果が狙われていることは明白である。「適正な取材」などと言うのは、内部告発によって暴露することを妨害するものである。
また、人権擁護法はどうか。「人権擁護」というもっともらしい名のもとに設置される人権委員会は、法務省の外局であり、独立性はまったくない。その人権委員会が、報道機関の「過剰取材」などの判断権を持ち、規制するというものだ。
そもそも権力による人権侵害や抑圧を跳ね返すことが本来の人権擁護の意味ではないか。もともと国連規約人権委員会から日本に対して勧告があったのは、日本の代用監獄制度などを改善せよというものであった。監獄や警察の留置場や入管の収容所における非人間的な抑圧の現状は、世界的に見て劣悪なレベルにあるのだ。
ところが、この監獄や入管を扱っている当局である法務省が人権委員会を事実上取り仕切るのだ。身内を取り締まるわけがないし、また、拘置所などで被害を受けた人を法務省の機関が救済するはずもない。結局、権力機関および政治家、官僚の「人権」を守り、表現行為を圧殺するものとなるのだ。
青少年有害社会環境対策基本法案は、「青少年の性若しくは暴力に関する価値観の形成に悪影響を及ぼす……社会環境」への対策として、出版・表現に携わる事業者に、国および地方公共団体に協力することを義務づけるものだ。これも青少年対策を口実に、言論・出版・表現の国家統制を強めようとするものである。
これらはいずれも、朝鮮・中国侵略戦争のための国家総動員体制の構築を狙う有事立法攻撃と一体のものであり、戦争国家化に向かう攻撃である。99年の盗聴法、団体規制法以来の攻撃は一気にエスカレートすることになる。
事態はきわめて重大であり、切迫している。有事立法粉砕決戦の中に、このメディア規制3法案粉砕の闘いをしっかりと位置付けて、ともに粉砕し廃案に追い込むために闘おう。
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