ZENSHIN 2001/08/06(No2016 p06)

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週刊『前進』(2016号1面2)

 「つくる会」教科書

 杉並 区民の力が採択阻む 

 栃木 全国的反撃で決定覆す

 「やったぞ!」「扶桑社の教科書は不採択!」。七月二十五日午後二時過ぎ、杉並区役所六階の教育委員会室のまわりの廊下で、歓声と拍手がわき起こった。「不採択勝利!」と大書した紙を広げた市民団体の人びとの笑顔が輝く。
 杉並区教委の教科書採択審議が行われた二十四、二十五日の二日間の闘いは、息づまるような高揚と緊張の連続だった。二十四日の昼には、教職員組合や区職労の労働者、市民団体、在日朝鮮人ら五百五十人余が区役所前に集まり、゛人間の鎖″で区役所を完全包囲した。
 午後三時からの教育委員会では、小学校用教科書の審議が行われ、現場を知らないまったく無責任な審議に憤激の声が上がった。
 二十五日は朝十時から中学校教科書の審議が行われた。歴史教科書の審議では、昨年十一月に山田区長が差し替えた委員の一人、宮坂公夫は「扶桑社の教科書が最良のもの」と発言した。大蔵雄之助は、現在杉並で使われている日本書籍の教科書を「一揆(いっき)の記述が多すぎる。偏りがある」と攻撃。他方、二人の委員が「(扶桑社は)公正な記述でない」「中学生には難しい。扶桑社以外のものを」と発言。約一時間の審議を経て、丸田委員長が「帝国書院に」とまとめた。
 昼休み後、公民教科書の審議に入った。大蔵は日本書籍・教育出版の自衛隊、戦後補償に関する記述を攻撃、宮坂は「扶桑社が最良」と発言。他の委員が扶桑社に否定的意見を述べ、約三十分の審議を経て、丸田委員長が「東京書籍ですね」とまとめた。
 その後、残る十一教科の教科書の審議をたった三十分ほどで終え、全教科の採択教科書が確定した。
 最大の焦点となってきた東京・杉並で、ついに「つくる会」教科書の採択が阻止されたのだ。昨年十一月以来の闘い、とりわけ四月三日の検定合格以来百十六日間の闘いがかちとった勝利だ。区教委には「つくる会」教科書に反対する数百の請願が提出され、市民団体から一万二千筆を超える署名が提出された。区役所前では連日座り込みが行われた。地域住民と労働者、そして在日アジア人民、アジア人民との共同の闘いが勝利を切り開いた。
 しかし他方で、採択制度そのものの問題性も完全に浮き彫りになった。大蔵は区内の教師が寄せたアンケートを「偏見がある」と攻撃した。現場教師の声を完全無視してまったく勝手に決めていく採択制度を絶対に許してはならない。
 また大蔵、宮坂だけでなく他の委員も、日本書籍の教科書を「平和主義で意図的な編集」「反権力的表現が多い」と攻撃した。他社が日本軍軍隊慰安婦問題をほとんど抹殺した中で、唯一記述を残した日本書籍を排除することが、もう一つの狙いだったのだ。
 採択結果を受けて、ある区民は「いろんな人たちが集まって一つの大きな力となって、素晴らしい勝利をかちとることができました。でも闘いは続きます。日本の国民がこれから二つに分かれてぶつかっていく、そういう時代が来ていると感じます。『つくる会』教科書絶版まで、闘い続けます。教育委員会に教科書を採択させてはなりません。誇りを持って歩み続けます」と語った。
 また、七月十一日に公立校で初めて「つくる会」歴史教科書採択を決めた栃木県下都賀(しもつが)地区教科書採択協議会は、二十五日に再度協議会を開催し、十一日の決定を白紙に戻して、「中学用歴史は東京書籍」と決めた。労組、市民団体、在日の人びとなどの必死の闘いが、決定を覆して大きな勝利をかちとったのだ。

 国立でも阻止

 二十四日には、東京・国立市で「つくる会」教科書採択が阻止された。国立では右翼が「つくる会」教科書を推す展示会場アンケートを大量に寄せたが、これに対してただちに署名運動が取り組まれ、二十四日までの十日間で、九千筆を超える署名が集まった。
 二十四日は、午後一時から市役所で゛人間の鎖″を行った。右翼の妨害を打ち破って二百人あまりの労働者、市民が闘いぬいた。
 午後二時からの教育委員会には傍聴希望が殺到し、市教委が急きょ会場を変更、約百二十人が傍聴する中、歴史・公民とも「つくる会」教科書を阻んだ。
 さらに兵庫県宝塚市でも二十五日、市教委の反動を打ち破り、採択が阻止された。全国で採択が続々行われているが、「つくる会」教科書を採択した地区は一つもない。杉並、国立、栃木の勝利を全国に押し広げ、すべての地区で採択を阻もう。

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