ZENSHIN 2001/07/30(No2015 p06)

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週刊『前進』(2015号2面2)

「つくる会」教科書採択を覆す 栃木からの報告
 下都賀地区・住民が教委に抗議 “敵は一握り”と勝利を確信

 全国の皆さん! この間、栃木県・下都賀(しもつが)地区での「つくる会」教科書の採択をめぐる大攻防は、ほぼ勝利を手中に収めつつあります。
 この投稿を書いている現在、確かに一面ではいまだ予断を許さないところもありますが、下都賀地区内の二市八町のうち、ほぼ全部の教育委員会が「採択反対」もしくは「採択協議会での再審議を要望」となっています。この間の闘いによって、教育委員会の中には「文部科学省の指定する期限、八月十五日のぎりぎりまで反対を貫く」と言っている教委もあります。いわば絶対反対派です。こうした絶対反対派をも、この間の闘いは生み出しました。七月二十五日の再度の採択協議会では「反対」が多数を占めるのははっきりしてきました。
 私たちは、排外主義と愛国主義に満ち満ちた「つくる会」の戦争賛美本を「教科書」として持ち込もうとした小泉政権の大攻撃を、全国“初”の採択地区で、全国“初”に真正面から粉砕しつつあります。
 栃木県は一九六〇年代をとおして、勤評闘争などで生み出された教育労働者の闘いが、実に卑劣かつ熾烈(しれつ)をきわめた攻撃にさらされる中で次々と後退を強いられ、労働組合は破壊され、自民党のボスや保守反動が大きい顔をしてきました。教組は片隅に追いやられてきた感さえあります。
 しかし、教育労働者はもちろん、地域の労働者、子どもを抱えた母親たちなどが今、次々と闘いに立ち上がっています。その数は日を追うごとに、実に感動的に増えてきています。あの「保守王国」とさえ言われた栃木県で!
 七月十三日、この日の県内の朝刊には「栃木県で公立中初の採択」の文字が踊っていました。「こんなことがあっていいはずがない」「絶対にひっくり返してやる」「ひっくり返して採択阻止の全国への号砲としてみせる」……。そうして私たちの闘いは始まったのです。
 報道のあった十三日当日、私たちは朝から栃木市教委に押しかけました。そこには国内だけではなく、南朝鮮・韓国を始め国外のマスコミも駆けつけていました。また、栃木市のみならず下都賀地区内の各市・町の教育事務所には、すでに「抗議」と「採択するな」のFAXが押し寄せていました。
 何よりこれに度肝を抜かれたのは、当の栃木市や小山市、その他の町の教育委員、教育事務所の役員でした。教科書問題を開き直り、靖国参拝を傲然(ごうぜん)と強行しようとしている小泉内閣の「支持率八〇%」に安心しきっていた下都賀地区の自治体役員自身が、おろおろして「いったい何が起こったのか」というふうでした。「当然だ! それだけ重大でとんでもないことを決めようとしているんだ。自覚すべきだ」。要請行動の人びとからは、激しい怒りが噴出しました。
 週明けの十六日の石橋町教育事務所には、「つくる会」側が組織した「採択しろ」のFAXと、県内はもとより全国の心ある人びとからの「採択するな」のFAXの激しい応酬の中で、地元住民を先頭とした要請団が次々と押しかけました。職場を休んでかけつけた労働者、子どもを抱えた母親、在日の人たち、戦争体験をしてきたお年寄り……。さまざまな人びとが、それぞれの思いを胸に教育事務所(教育委員会)に思いの丈をぶつけにやってきました。その数は、十七日には、小山市一カ所でついに数十人に上りました。
 今回の下都賀地区での「採択」を工作したのは栃木市の教育長です。神道の宮司でありながら教育長であるというとんでもない人物です。彼は、利益誘導もちらつかせながら採択地区協議会で多数派工作を行い、候補にさえあがっていなかった「つくる会」本の「採択決定」を多数決で強行したのです。しかし、こうしたやり方こそ小泉政権の正体そのものです。
 こんな勝手な横暴を許してなるものか! 確かに、それは最初は少数の決意した人びとの声でした。ところが、実はこの怒りは下都賀地区住民・労働者の多くの思いだったのです。小山市を始め下都賀地区は、在日の人たちが多く生活する街でもあります。十三日の闘い以降、翌週には日に日に闘いが闘いを呼び、教育事務所に押しかける人の数が増えていったのです。
 この間の闘いによって下都賀地区が不採択を決めれば、栃木県内の八採択地区のうち、すでに五つの採択地区で不採択がはっきりしたことになります。小泉政権の「栃木県でまず採択。それを東京に、そして全国に波及させる」という思惑は、最初の段階で大きく粉砕されつつあります。
 皆さん! 勇気を持って立ち上がりましょう。実は敵はごく一握りだ−−私たちはこの間の闘いでそのことを深く確信しました。ともに闘い、右翼・小泉純一郎を打ち倒しましょう。それは可能なのです。
(投稿・栃木県 M)

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