ZENSHIN 2001/06/25(No2010
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週刊『前進』(2010号1面1)
けしば候補当選へ全力を
〈介護・くらし・教育〉を掲げ、戦争・リストラの政治と対決
警察の選挙妨害はねのけ進撃 教育改革3法の衆院通過弾劾
都議会議員選挙は、十五日告示され、最後の本番に突入した。都政を革新する会のけしば誠一候補は、気迫に満ちて出陣した。あと一週間、都政を革新する会と固く連帯して、全党のすべての力を振り絞って、最後の最後まで奮闘し、必ず当選をかちとろう。日本帝国主義の絶望的な体制的危機の中で戦争国家化と労働者人民への犠牲転嫁、リストラ・首切り、大増税、中小零細企業切り捨て、福祉切り捨ての攻撃に乗り出した小泉反革命政権、およびその先兵・石原都政と真っ向から対決し、労働者人民の闘いの先頭に立つ候補はけしば候補以外どこにもいない。日本革命の突撃路を開く闘いとして、今次都議選決戦に何がなんでも勝利し、当選をかちとろう。
第1章 都議選攻防は一大階級決戦
日帝・国家権力は、けしば誠一氏の進撃に恐怖し、都政を革新する会に対する大弾圧を加えてきている。
警視庁は、都革新に対して今年すでに四回も不当捜索に入った。六月六日には、早朝六時すぎに上高井戸事務所を襲撃した。そして半日間も活動を妨害し、都政政策を発表したビラや、資料作成に不可欠なパソコンまでをも押収した。また、捜索をマスコミが大々的に報道した。これは、都議選への選挙妨害そのものである。
日帝権力は、けしば氏にさまざまなところから多くの支持が寄せられていることに打撃を受け、この勢いで石原都政下の都議会にけしば氏が堂々と登場することを、なんとしても阻止しようとしてきているのだ。日帝・小泉とその先兵・石原の指令のもとに行われている選挙妨害の政治弾圧なのである。
ただちに国賠訴訟や記者会見などをもって反撃は開始された。また、選挙妨害への怒りをバネにして、当選をめざす運動が一層強まり広がっている。
これらの弾圧は、都議選決戦、杉並でのけしば候補の闘いが日本階級闘争の中心になっていることを表している。全力でけしば氏の当選を阻もうとしている権力の理不尽な弾圧を打ち破り、けしば氏を通すことがわれわれの回答であり、人民の正義の実現である。まさにけしば選挙の勝敗こそが、小泉反革命、ファシスト石原との闘いの成否を決し、今後の日本の階級闘争の帰すうを決するのだ。
第2章 小泉、石原と唯一闘う候補
杉並では、六議席をめぐって十人の候補が激しく競い合っている。自民党は「小泉人気」に便乗し「変えよう自民党」「石原知事とともに改革断行」と記された小泉のアップ写真のポスターを張り巡らし、石原慎太郎、石原伸晃行革担当相の親子が介入し、現職と新人の二人の当選をもくろんでいる。公明党・森田、民主党・田中、共産党・吉田の三人の現職がおり、さらに現職の自治市民93・福士と、生活者ネット・藤田、新人の自由党・西村の三人が立っている。文字どおり激戦であり、他陣営も必死である。これらの有力候補と並んで、けしば候補は当選圏内突入をめざして最後の奮闘を続けている。
藤田、福士は女性の立場、女性の味方であるかのように振る舞っているが、本当にそうなのか。まったく否である。介護保険の問題では、藤田は賛成、福士も制度には賛成した上で「使える制度に」と言うのみだ。学校給食の民間委託では、藤田は賛成した。高齢者のバス料金を無料にしていたシルバーパスの有料化では、藤田も福士も賛成に回り、高齢者の首を絞めている。何が女性の味方かということだ。
「つくる会」教科書問題では、藤田は「歴史認識がおかしい」と言い、福士は「きちんと修正すべき」と言いながら、「つくる会」が東京・杉並を焦点に採択の突破口を開こうとしているのに、なんら反対していない。地元選出の議員が何も言わず何もしないことは、採択を容認するに等しい。
日本共産党は、教科書問題を都議選と参院選のテーマとせず、検定合格と採択の動きを容認している。そもそも共産党は、石原ファシスト都政にも「いいところはある」「是々非々」と言って石原与党に成り下がっているのだ。
けしば候補だけが、真に労働者民衆の立場に立って〈介護・くらし・教育〉を主要政策として訴え、小泉・石原の戦争・リストラの政治と全面的に闘っている候補である。三十年余にわたって反戦を貫き、杉並区議三期十年を区民のいのちとくらしと平和のために闘ってきた、唯一の候補である。(3面参照)
第3章 国会終盤での大きな攻防戦
一方、国会では二十九日の会期末に向かって、反動諸法案の成立の策動が続いており、また月末の日米首脳会談に向かって日米安保強化、沖縄新基地建設の攻撃が強まっている。
教育改革関連法(学校教育法、地方教育行政法、社会教育法)の改悪案は、十四日衆院本会議を通過、参院に送付された。「不適格教員」の名で教員の免職・追放を図り、子どもの出席停止処分の制度化、「奉仕活動」の強制を図るなど、改憲と戦争に向かっての重大な攻撃であり、絶対に粉砕しなければならない。
また、公共事業と軍事基地のための土地収用のために、人民の抵抗権を圧殺する土地収用法改悪の攻撃が三里塚反対同盟などの国会闘争を踏みにじって衆院通過し、参院に送られた。
教育改革関連法改悪、土地収用法改悪の参院成立阻止の闘いに立ち上がろう。
さらに、十一、十二日、「つくる会」教科書の検定合格白紙撤回、採択阻止の国際連帯行動が闘いとられた。「つくる会」教科書に抗議する南朝鮮・韓国の労働者人民の呼びかけで、十二日、東京、ソウルを始め全世界七十一カ国、百二十五都市で一斉に日本大使館・領事館に対する抗議行動が闘われた。東京には韓国からの代表六十五人を始め三百人が集まり、文部科学省と国会に対する抗議闘争が闘われた。十一日には文部科学省を五百人の「人間の鎖」が包囲した。
実に重大な歴史的国際連帯闘争である。日本労働者階級人民の七・七自己批判の立場、階級的血債がここで真正面から問われているのである。
まさに、この闘いにこたえて、六月十三日の杉並区議会最終日の闘いがかちとられた。けしば氏は、区議として最後の闘いを、統一協会の協力者である大蔵雄之助を教育委員から罷免する闘いに立ち、杉並で画策されている「つくる会」教科書の採択を粉砕する闘いとして貫いた。これは「つくる会」教科書に反対する父母や教育労働者の闘いと呼応するものだ。杉並は、小泉・石原・山田の採択攻撃の焦点であると同時に、それと真っ向から闘うことで日本の闘いの中心として国際的にも認識された。
また、六月八日に行われた沖縄・名護新基地建設のための代替施設協議会で、政府側が三工法八案を提示したことは、きわめて重大な攻撃である。工費と建設期間の面でリーフ(さんご礁)内の埋め立て案が最も「現実的」であるとする方向に誘導するものであり、当初案よりも倍も大きな二千六百bの巨大軍事基地を新設する攻撃であることが明らかになった。六・二三「慰霊の日」の小泉の訪沖攻撃、六・二九小泉訪米に対して、沖縄を先頭とする怒りと弾劾をぶつけよう。
これら一切の課題に対して、あと一週間、すべてを杉並で勝利することにかけて、都議選決戦に集約して闘おう。けしば氏の都議選出が、朝鮮・中国・アジア人民との連帯闘争の上でも、沖縄人民との連帯の上でも、決定的に有利な情勢を切り開くのだ。
第4章 小泉「改革」で倒産と大失業
都議選決戦は、小泉の新たな極右的ファシスト的な「国家改造計画」に対する労働者人民の総反撃の闘いであり、小泉の先兵・ファシスト石原都政と真っ向から闘う議員を登場させる闘いである。
小泉政権は、「改革」を掲げて登場し、政治腐敗と恐慌過程のもとで変革と生活改善を求める労働者人民の幻想的支持をさしあたり受けている。しかし、小泉政権がやろうとしていることは何なのか。金融独占資本を救済するために、不良債権を処理するとして中小企業倒産と膨大な失業者をつくりだすことだ。他方で、日本経済はさらに減速し、不良債権は増加する。小泉のやり方は、労働者人民に犠牲をすべて転嫁する一方で、この労働者人民の根底的な怒りを民族主義、愛国主義、国家主義に向かってあおりたて、ブロック化、勢力圏再分割のために
戦争国家化と戦争の道を突っ走ろうとするものだ。
小泉の登場は、日本帝国主義の路線と違うところから現れたのではない。それは、没落帝国主義・日帝の絶望的危機の中から、それ以外に日帝が延命する道はないものとして出てきた。また、石原の「東京から日本を変える」というのも、この小泉の先兵として日帝の危機を救うものである。だから、この小泉、石原との真っ向対決は、日帝の基本路線との対決でなければならない。
小泉が就任以来扇動しているウルトラ反動を許してはならない。小泉は、憲法改悪を公然と打ち出し、その狙いが九条改憲にあることを隠そうともしない。さらに「まず首相公選制を」と言っているのは、九条改憲の突破口であると同時にそれ自体が独裁政治を敷くものだ。
また、「集団的自衛権の発動」とはアメリカとともに自衛隊が侵略戦争に乗り出すことであり、本当に戦争をやろうというものだ。靖国神社公式参拝は、朝鮮・中国・アジアに対する侵略と侵略戦争の歴史を居直り、「国のために死んだ」死者を「英霊」としてたたえ、新たな戦争を準備するものだ。このように小泉の言動は、絶対に今、粉砕しなければならない戦争国家化の大攻撃である。
さらに、石原は小泉に輪をかけた破天荒さで、反米国粋主義と排外主義を扇動している。石原自身が「つくる会」の賛同人であり、杉並での採択を推進している。戦争賛美と皇国史観の教科書を進めるファシストが、東京を牛耳り、小泉と組んで日本を戦争国家につくり変えようとしているのだ。それを「革命だ」「改革だ」と称しているのだ。とんでもないことである。
けしば候補だけが、この「小泉・石原ノー」という旗を鮮明に掲げて闘っている。他の候補はすべて「改革は賛成」とか「一緒に改革」だと言って全面屈服しているのだ。けしば候補を都議会に送りだすことが絶対必要だ。ここで勝利すれば、小泉・石原反革命に対する労働者人民の闘いの強力な拠点がつくれるのだ。
第5章 必要なすべてをやりぬこう
最後の一週間、けしば氏当選に必要なことを何でも実行し、絶対に勝利をもぎりとろう。
今回の都議選は、大衆闘争の力と街頭宣伝の力で支持を拡大し、区民の自主的な決起を生み出しつつ前進してきた。特に、街頭宣伝に青年学生の若い力が爆発的に発揮され、他候補にはない清新な風を巻き起こしている。
終盤で女性の決起が圧倒的迫力でかちとられている。けしば候補こそ、女性とともに、日帝とその先兵・石原の女性差別攻撃に反対して闘う議員である。
何よりも〈介護・くらし・教育〉を主要政策として掲げ、子どもと親と女性と高齢者の立場に立って闘う議員である。
また、労組の力、労働者の力の結集がかつてなくめざましい。けしば候補は国鉄、都労連を始めとする闘う労働者の代表である。労働者へのリストラ攻撃と闘う候補はただ一人、けしば氏だけである。
介護保険廃止をめざす「住民の会」の闘い、学校給食民間委託反対の闘い、「つくる会」教科書の採択反対の闘いなどの大衆闘争の発展が、けしば候補をここまで押し上げてきた。それらは住民の自主的な決起である。けしば氏はこの力と結びつきその先頭で闘う議員像を明確にしてきた。
杉並区内外から、けしば候補を推薦する動きが沸き起こっている。弁護士から多数の推薦表明が寄せられている。沖縄からは、基地と沖縄差別に反対する切実な声に真に結びついて闘うけしば氏を応援する広範な運動が起きている。
本紙前号声明のとおり、都革新が決定した参院比例区での大田昌秀氏(社会民主党)、東京選挙区での新垣重雄氏(沖縄社会大衆党)の推薦を断固支持し、都議選でのけしば候補当選の闘いと結合して、参院選を闘うことを呼びかける。
選挙は何よりも労働者住民自身の政治選択であり、政治行動である。一人ひとりの区民が投票所に足を運び、「けしば」の名を記入し、投票する、その数が問われる。そこで、小泉と石原の反動と対決してけしば候補とともに闘う自らの意思表示を行うのだ。それは素晴らしい自己解放的決起である。しかし、数が足りなければその力はしぼんでしまうことも冷厳な事実だ。あと一週間、熱烈に訴え、区民大衆の中に自ら票を集める人びとを大量に生み出し、票を積み上げ、必ず当選圏内に突入しよう。
闘いの前進は必ず密集した反動を生み出す。それを打ち破って闘いぬいた時、初めて勝利することができる。最後の最後まで全力を尽くし頑張りぬこう。
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週刊『前進』(2010号1面2)
けしば候補 気迫こめて第一声 “小泉・石原と真っ向勝負”
東京都議会議員選挙がスタートした。六月十五日の告示日、都政を革新する会のけしば誠一候補は力強く第一声を上げて九日間の選挙戦に突入した。午前九時すぎ、高円寺の選挙事務所前で詰めかけた百人近くの支持者を前に第一声。直ちに高円寺駅前に移って最初の街頭演説を行った。
「今回の都議選は国政選挙並みの重大な選択の場となった。いま、石原都政、小泉政権に政治をゆだねていたらとんでもないことになる」。けしば候補はこう切り出して訴えを始めた。「小泉改革は、とんでもない偽物。リストラ・首切りと大失業、福祉はバサバサ切り捨てられ、果ては戦争という政治です。景気回復にならないことが今朝の新聞にも報道されている。痛みを伴うという痛みは、みなさんの痛みです」と小泉改革が民衆に犠牲を押しつけるものであることをきっぱりと断罪し、「みなさんと一緒に行うのが本当の改革。小泉の偽物の改革ではなしに、私たちの本当の改革を」と、政策の第一として小泉改革との闘いを訴えた。
第二に、「石原都知事は本当に民衆に冷たい人だ。福祉はばっさり切り捨てられている」と石原都政の福祉切り捨てを弾劾。「介護と福祉を要求する杉並住民の会が八百人の会員で自分たちの手に福祉を取り戻そうと勇気ある行動に立ち上がった」と、高齢者が自ら立ち上がった住民の会の素晴らしい運動を紹介し、「石原都知事の福祉切り捨てと対決し、福祉を取り戻します」と宣言した。
第三に、学校給食の民間委託化など子どもを犠牲にする政治を暴き、特に教科書をめぐる問題を提起し、「戦争を正しいと教える教科書は絶対に使わせない。これを推進している石原都知事に反対し都議会に立つ」と訴えた。
高円寺駅前では、三里塚から駆けつけた反対同盟の北原鉱治事務局長が応援演説を行った。「時代に逆行する政治を止めるのはけしばさん。福祉の問題も必ずやります。信念を貫く男です」と支持を訴えた。北富士忍草母の会の天野美恵事務局長は、「けしばさんは誠実で素晴らしい方です。北富士の演習場をなくし、ずっと平和でいられるように、けしばさんを当選させて下さい」と訴えた。
若者から高齢者まで、行き交う市民が手を振ってけしば候補を激励した。区民、支持者の大きな拍手に送られ、区内を駆けめぐる宣伝へと向かった。
駅前での演説に先立って高円寺事務所前で第一声を行った。まず都政を革新する会後援会の会長が、「小泉政権が八十数%の支持を受けているが、景気は悪化している。小泉改革と闘うために、けしばさんを都議会に送り出して下さい」と訴えた。介護と福祉を要求する杉並住民の会の代表は、「年寄りが社会のど真ん中に立つ」と高齢者切り捨てと闘う決意を明らかにし、「人間の世界を作り上げよう」と訴えた。
けしば候補が立候補のあいさつ。「熱い心で都政を革新する」と宣言した。
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週刊『前進』(2010号1面3)
都議選決戦の必勝へ 絶大な夏期カンパを
同志のみなさん! 『前進』読者、支持者のみなさん! 東京都議選はいよいよ最後の一週間となりました。二十四日まで残る一週間で勝利が決するところまで闘いは上りつめてきています。
けしば氏への投票を訴えて、全国のいたるところから、杉並の在住者、杉並に友人・知人をもっている人を探し出し、けしば氏への投票を訴えてください。
また、投票依頼者や関係者をもたない人も、ぜひ杉並まで駆けつけてください。そして、駆けつける時間のない人は、ぜひともけしば氏当選のためのカンパを革共同に集中してください。
けしば氏の選挙運動はすべて労働者人民の支援の力で成り立っています。ビラ一枚からポスター一枚まで、全国から寄せられたカンパとボランティアで成り立っています。最後のひと押しの力は全国から寄せられたカンパの額が決します。それは必ずけしば氏の一票に結びつくのです。
今回の都議選は、参院選と一体の選挙であり、都議選でその流れが決してしまうような重大な政治決戦となっています。
「改革断行」のかけ声のもと「痛みを伴う」と称して、実は中小零細企業を倒産に追い込み、労働者にリストラ・大失業を強制しようとしているのが小泉政権なのです。「構造改革」が、あたかも現在の日帝の危機と社会の閉塞(へいそく)感を打開するものであるかのような主張を掲げ、実は戦争のできる国家に向かって「国家改造」を推し進めようとしているのです。だから、小泉はファシスト石原や中曽根や森と連携し、その反動的な政策形成を図っているのです。
この反動連合に対して野党はマスコミの力をも動員した異常な「小泉人気」に完全に屈服し、「党首討論」などでも今や小泉の応援団に成り下がっているのです。恐るべき情勢です。
これに対する労働者人民の怒りをたたきつける場こそ都議選決戦でありけしば勝利なのです。
ファシスト石原は、都政を牛耳っていることをテコに小泉の先兵として「東京から日本を変える」と叫んでいます。戦後の労働者人民の営々たる闘いでかちとってきた社会福祉を切り捨て、「つくる会」の教科書を強引に採択させ、まさに小泉政権の先兵となって改憲への水路を開こうとしているのです。
このような石原と真っ向から対決できる唯一の候補であるけしば氏を、杉並から都議会に送り込み、石原都政に風穴をあけることこそ、現在の小泉政権との最も重要な闘いです。
闘いには資金が必要です。労働者人民とともにその先頭で闘いぬいてきたけしば氏の当選をかちとるために、ぜひとも、多額の夏期カンパを寄せてください。
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週刊『前進』(2010号2面1)
6・13杉並区議会 戦争賛美の「つくる会」教科書使わせぬ
“大蔵教育委員を罷免せよ” けしば議員が鋭く追及
区民の怒りの決起の先頭で
「大蔵委員の罷免しかない!」。杉並区議会の教育委員選任の議案に対して、けしば誠一議員は反対の質問に立ち、山田区長に鋭く迫った。傍聴席からも激しい弾劾の声がわき起こり、「つくる会」教科書を絶対に採択させない区民の決意をたたきつけた。都議選告示を目前にした六月十三日、杉並区議会の六月定例会の最終日に、欠員となっていた教育委員の人事案が提案された。山田区長は、教育委員会の欠員を補充することによって、「つくる会」教科書が「民主的に採択された」という装いをこらそうとしていたのだ。その意図は見え透いており、「『つくる会』教科書を採択させるな」と怒りに燃えて多くの区民が傍聴につめかけた。
居直る山田区長弾劾
午後一時から開かれた区議会は、二時過ぎには教育委員会人事案が提出されると見られていた。ところが区当局と与党会派が結託し、「つくる会」教科書採択を阻もうと立ち上がった住民の怒りをそらすために、議案採決の後に行うべき議長・副議長の選挙などの議事を次々と入れて教育委員の選任を大幅に遅らせた。こうすれば子ども連れの母親たちは夕方には帰らざるをえないと狙ったのだ。傍聴者の怒りは逆に高まるばかり。傍聴席からあふれた区民は、区役所ロビーのモニターテレビにくぎ付けになった。
山田区長が提案した教育委員の補充人事は、PTA連合協会の会長も務めた安本氏で、学校給食の民間委託にも反対した人だ。山田区長は、PTAも反対できないような人を教育委員に補充し、PTAの声も聞いたかのような形を装って「つくる会」教科書の採択を強行しようとたくらんでいるのだ。
質問に立ったけしば区議はまず、前日十二日に韓国の「日本の教科書を正す国際キャンペーン」の呼びかけで世界七十一カ国、百二十五都市で日本大使館抗議行動などが闘われ、日本でも文部科学省包囲の抗議行動が行われたことを明らかにし、全世界の平和を脅かす「つくる会」教科書採択の策動を弾劾した。そして今回の教育委員の人事が「つくる会」教科書採択のためにのみ行われることを暴き出した。「つくる会」に連なる大蔵雄之助氏を教育委員から罷免することが、新たな教育委員人事の前提だと突きつけた。
また、山田区長に教育行政の中立性、教育委員会の独立性についてどう考えるのかと質問した。山田区長は昨年十一月、三人の教育委員を解任し、統一協会系の三人を選任しようとたくらんだ。それ自身が地方教育行政法違反であり、教育行政を支配しようとする山田の策動を露骨に示すものだった。
大蔵氏は統一協会の機関紙「世界日報」の執筆者であり、自衛隊にクーデター決起を促して自殺した三島由紀夫をたたえる三島研究会発起人で、三島の遺志を継ぐ「憂国忌」発起人でもある。けしば議員は、この事実を突き出して大蔵氏が教育委員としてまったくふさわしくない人物であることを鮮明にした。大蔵氏を教育委員に任命した山田の狙いは、まさに勝共連合によって教育委員会を独占することにあったのだ。
けしば議員はさらに、昨年十一月の教育委員の入れ替えによって、教育委員会が崩壊に等しい状態に陥っていることを明らかにした。委員会を開いても何の論議もできず、行政の報告を受けるだけの不活発な事態が続いているのだ。
石原教育行政の反動性暴く
さらに石原都知事の教育行政の問題性を追及した。教育委員の任命権を持つ石原知事は、「つくる会」の賛同人に名を連ねている。このこと自身、教科書行政の公平性から大問題だとただした。石原知事は「つくる会」の藤岡信勝を東京都教育委員に任命しようとさえした。それはできなかったが、藤岡信勝、小林よしのりを石原の私的諮問機関「東京の問題を考える懇談会」に任命し、教育委員との懇談を行わせている。
けしば議員はまた、区の教科書採択要綱について追及した。学校票や絞り込みを禁止したことが、「つくる会」教科書を採択するためであったことを鋭く暴いた。
けしば議員の追及に山田区長はまともに答えられない。日帝が強制連行した日本軍軍隊慰安婦を「売春婦だった」と発言し、教育委員への選任にあたってその発言を糊塗(こと)するためにウソをついた大蔵氏を、「人格、識見の優れた人物」を選んだと言うにいたっては、黒を白と言いくるめるペテン以外の何ものでもない。
議長は当局側が質問に答えていないにもかかわらず議事を進行し、けしば議員と新城せつこ議員が激しい弾劾をたたきつけた。
けしば議員は怒りを倍加させて再質問に立った。戦後、教育を一般行政から独立させたのは、「国のために死ぬこと」を強制した教育への国家統制を排除するためであったと述べ、杉並区の「教育委員会は死んだ」と弾劾した。ウソを繰り返す大蔵氏は教育委員としてふさわしくないことを突きつけ、あらためて大蔵委員の罷免を要求した。また、具体的事実をもって大蔵氏のウソを指摘したにもかかわらず、区長は何も答えてはいないことを強く弾劾した。「つくる会」教科書を強引に採択し、強制しようとしている山田区長の策動は、再び戦争に突き進もうとするものだと語気鋭く迫った。
山田区長は、再質問に対してもまともに答えようとはしない。質問をはぐらかしてそそくさと逃げた。議長は、区当局が何もまともに答えていないにもかかわらず質問を打ち切り、採決に入った。
ここでもけしば区議は断固とした意見表明に立ち、大蔵氏の辞任がない限り教育委員の人事案に反対することを突きつけた。特に石原都政が産経新聞の悪らつなデマ報道を使って教員への処分を強行したことを弾劾し、そうしたやり方が「デマと暴力が支配することになる」と暴いて、あらためて山田区長の謝罪を要求した。
都革新、区役所にデモ
傍聴席からも激しい抗議が沸き上がり、「つくる会」教科書を強制しようとする山田区長の攻撃を労働者人民は絶対に許さないことをたたきつけた。議場が騒然となる中で議長は採決を強行した。この質疑と傍聴席の声に突き動かされ、共産党と無所属会派も都革新の側に立ち、議案に反対の意思を示した。
区議会終了後、けしば区議は傍聴に駆けつけた区民に、強行採決せざるを得なかったのは、傍聴席と一体の闘いが敵を追いつめたからだと語り、「勝利した」と感想を述べて、さらに「つくる会」教科書を粉砕するまで闘うことを表明した。「つくる会」教科書を絶対に許さないためにも都議選に勝利する決意を明らかにした。
区議会に先立って、都政を革新する会はけやき公園に百人近くが結集し、デモで区役所に押し掛け、「つくる会」教科書の採択を許さないと訴えた。「山田区長は『つくる会』教科書を強制するな!」「『つくる会』教科書を使わせないぞ!」のシュプレヒコールがこだました。
区役所前では、区の「つくる会」教科書採択の動きに危機感を燃やす市民団体が、署名やマイクでのアピールを行っていて、デモ隊の到着を拍手で迎えた。
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週刊『前進』(2010号2面2)
けしば候補当選へ 最後の最後まで
けしば誠一候補(杉並区)を押し立てた東京都議会議員選挙は、六月十五日に告示され、いよいよ二十四日投票へと、最後の激突局面に突入しています。
自民党支配の破綻(はたん)のどんづまりの危機の中から極右・小泉政権が誕生し、政局は極端に不安定で流動的な状況に入りました。
小泉−石原のもとにファシズムと戦争に向かうのか、労働者人民の生き生きとした闘いの時代に入るのか、二〇〇一年六月の凝縮された瞬間に二十一世紀の行方が決せられようとしています。都議選−参院選の政治過程は都議選で決まります。ここでの都革新の登場、けしば候補の当選は、政府支配階級に大打撃を与え、労働者階級人民を限りなく勇気づけるものになるでしょう。小泉−石原に対する確固たる対極として、けしば候補を都議会に送り込もうではありませんか。
都革新とけしば候補は「福祉、くらし、平和」の課題を掲げ、小泉−石原の「変革」の幻想のもとで実際の生活にのしかかってくる苦しみの一つひとつと対決して闘ってきました。介護保険で切り捨てられる高齢者と家族とともに具体的なケースごとに解決の方向を探り、みんなの問題として闘いを呼びかけ、先頭に立ってきました。
戦争賛美の教科書が教室に持ち込まれることに反対し、教育労働者、地域住民とともに学習を重ね、石原都政の「こころの東京革命」というファシズム運動から子どもたちを守る闘いをつくりあげてきました。
都議選必勝のためには、何よりも候補者けしば誠一さんの人となりを広範な区民に理解してもらうことが大切です。働く人びと、差別に苦しむ人びとと苦楽をともにし、どんな圧力にも屈せずに闘いの先頭に立つバイタリティーと政策力、清新な人柄を区議十年の実績を踏まえて訴えていくことです。
杉並は定数六人に対して十人が名乗りをあげている有数の激戦区です。その中で、都議選としては新人というハンディをのりこえて、「けしばなら何かやってくれる」「彼となら一緒にやれる」という区民の声が次々と寄せられるようになってきました。
このうねりと全国の『前進』読者の皆さんが結びついた時に、激戦を抜け出して勝機をつかむ可能性が出てきます。全国から杉並に力を集中し、けしば誠一候補の必勝に向けた闘いを訴えます。
(1)杉並区のお知り合いの方に声をかけてください。選挙は知人からの依頼が最も効果的です。特に組合の仲間と選挙の依頼で結びつくことは、組合の強化にもつながります。
遠隔の方は電話と手紙で依頼してください。電話と直筆の私信には制約はありません。
同窓会名簿などあらゆるつてを探ってください。また、職場の仲間、友人にも「杉並にお知り合いはいませんか」とたずねて「声かけ」を依頼しましょう。
同時に、その名簿を選対に集中してください。
(2)杉並区民の参加する集まりを教えてください。趣味の会や同窓会など、政治的な集まりでなくても会の合間に主催者の許可を得て支持を訴えることができます。そこでのあなたのお口添えも重要です。
(3)公選はがきを書いてください。選対からはがきを受け取って、宛て名とあなたのお名前を書いた上でもう一度選対に戻してください。直接投函することは違反になります。
(4)電話をかけてください。ご自分のお知り合いに電話するほか、選対と連絡して各種名簿の方への電話依頼にご協力をお願いします。
(5)カンパをお寄せください。皆さんの個人カンパ以外には資金はありません。一人ひとりの「勝ちたい」というお気持ちをカンパとして集中してください。
(6)ぜひ杉並に来てください。都革新の選挙はすべてボランティアによる闘いです。最後は現地に駆けつけてくださる人の力で決まります。
「勝手連」も大歓迎です。街頭演説や個人演説会に友人を誘って参加しましょう。
さまざまな方向からの波を、最後は巨大なひとつの力にまとめて劇的な勝利をかちとろうではありませんか。
最後は一票で決まります。最後の一瞬まで全力で闘いましょう。
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週刊『前進』(2010号2面3)
若者たちもけしば支持 生き生きした訴えが全世代の心をつかむ
私たち学生は六月九日、高円寺駅頭でライブ&リレートークの街頭宣伝を行いました。若者がギターを弾きながら介護保険や石原批判の歌を歌い、自分たちで作ったビラをまき、自分たちの言葉で訴えた素晴らしい宣伝でした。
既成政党が小泉政権や石原知事と真っ向から対決せず、民衆に政治への不信、絶望感をもたらしている中で、私たち若者が生き生きと「私たち民衆の力で政治を変えよう!」と真剣に訴えている姿が労働者の圧倒的注目と共感を呼びました。内容は、小泉政権や石原知事のこと、介護保険や沖縄のことなどです。
今までビラを受け取らなかったような若い世代がどんどんビラを受け取っていく情勢をつくり出しました。
二十代の男性は、街宣を見て「素晴らしいね。僕ら若い世代は政治にシビアだよ。小泉とかいいなんて思わないよ。石原慎太郎は危ない。頑張ってよ」と言ってくれました。
主婦・高齢者・労働者の反応も良くて、四十代の女性は「(ビラを)できるだけ多くの人に渡して。どんどん頑張って」と話しかけてきました。七十代の男性からも「若い人が頑張らないとね」という激励を受けました。
五十代の男性は「(けしば陣営は)こういうのなんだ」と若者が自己解放的に活動している様子に感心したようでした。若者が何を考えているのか非常に興味を持っているということもあり、立ち止まって私たちの訴えに聞き入る人もたくさんいました。
既成の政党とは絶対に違う! 住民と行動する議員というけしばさんのイメージを思いっきり押し出し、労働者の心をしっかりとつかむことができました。
街頭では、けしばさんと労働者の合流が始まっています。私たちは、さらにけしばさん当選のために全力で闘います。
(投稿/学生・佐藤絵理)
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週刊『前進』(2010号2面4)
資本攻勢&労働日誌 5月17日〜6月6日
●世帯所得が3年連続減少
●失業率4ヵ月ぶりに悪化
●中小の賃上げ率1・73%に
雇用破壊を宣言 産業構造改革雇用対策本部
●5月17日 99年の世帯当たりの平均所得額は626万円で、前年比4.5%減と3年連続マイナス。減少率は過去最大となった。厚労省の国民生活基礎調査で明らかに。
◇日経連の主要上場企業今春闘賃上げ最終集計によると平均賃上げ額6365円、賃上げ率1.93%で3年連続過去最低。56年に春闘が始まって以来、最低の水準となった。
●18日 雪印は今年度で1000人の希望退職を募るほか、静岡など3工場の閉鎖を明らかにした。
●23日 性別によって賃金に差があるのは不当だとして、岡山地裁は工業用ゴム製品メーカー内山工業に差額の支払いを命じる判決。
●25日 政府は産業構造改革・雇用対策本部会議を開き、「新市場・雇用創出に向けた重点プラン」(平沼プラン)を提起し、雇用破壊を宣言(要旨別掲)。連合は29日反対声明を発表したが、その中で政労使雇用対策会議の開催を求め、屈服路線を明確にした。
●28日 いすゞ自動車は、全従業員の26%にあたる9700人削減と2005年の川崎工場閉鎖を発表。
●29日 総務省発表の4月の完全失業率は前月と比べて0.1ポイント上昇し4.8%となり、4カ月ぶりに悪化した。厚労省発表の有効求人倍率は前月より0.01ポイント増の0.62倍となり、4カ月ぶりに改善した。
●30日 「四党合意」反対の闘争団と支援者らが、「JRの不当労働行為は許さない! 国労闘争団共闘会議準備会」を結成。東京で結成総会を開き約3000人が参加。
◇王子製紙は、転籍制度を労働協約の中に明文化。住友金属工業も現在約1万人いる出向者を原則転籍に切り替える方針。(朝日)
●31日 第9回経済財政諮問会議が開かれ、平沼プランを含め小泉構造改革の基本路線が出された。
◇福田官房長官は連合の笹森事務局長と政労使雇用対策会議の再開を確認。小泉のメーデー出席に次ぐ連合取り込み策動。
●6月1日 政府は公務員制度改革で焦点となっている公務員のスト権(争議権)回復については、6月にまとめる制度改革の基本設計案に盛り込まない方針。(朝日)
●2日 教科書問題で日本マスコミ文化情報労組会議と韓国言論労働組合連盟が「教科書問題日韓共同シンポジウム」を開き、韓国側の22人を含めて160人が参加。
●4日 JR総連は5日まで定期大会を開いた。委員長小田は、「闘争団の分裂で(政治解決は)ますます厳しくなっている。ごね得を許さない」などと述べた。
●5日 鉄鋼労連と造船重機労連、非鉄連合の3産別が2003年秋に組織統一する見通し。3産別委員長が記者会見を開いて発表。
●6日 日経連集計の全国中小企業の労使交渉状況では、回答額平均は4498円、アップ率は1.73%。昨年実績と比べ、金額で46円、率で0.03ポイント下回った。
新市場・雇用創出に向けた重点プラン(平沼プラン)の要旨
■女性と高齢者への搾取・収奪強化
「女性が働き続けられる経済社会基盤の構築」「(高齢者が)年間可処分所得の20倍以上もの資産を使い切らないまま残している実態」
■修身雇用制の解体を宣言
「従来のいわゆる修身雇用が重荷になって、かえって雇用を手控える傾向がある」「修身雇用を前提とする制度を見直し」するとして、全労働者階級への不安定雇用化攻撃を打ち出して、以下3点を提起。
・有期雇用契約の早期見直し
・裁量労働制の早期見直し
・労働者派遣制度の早期見直し
■労働移動の円滑化=解雇の容易化
「雇用の流動化に対応した労働契約法制を検討」
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週刊『前進』(2010号2面5)
収用法改悪阻止へ
土地収用法改悪案の成立に向けて12日から集中審議を始めた国会の前で、三里塚反対同盟は改悪絶対阻止の決意を込めて12〜15日に座り込み闘争に決起した(6月12日 国会前)=記事次号
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週刊『前進』(2010号3面1)
けしば候補を都議会へ
民衆と共に闘う大きな政治家 他候補と比較にならない実績
熱い心で石原都政を革新する
都議選決戦は、六月二十四日の投票日まであと一週間、いよいよ最終盤の攻防に突入した。この一週間に本当に全力を挙げて闘い抜いたときに勝利がもぎ取れることをはっきりさせて、全党・全人民が総力を挙げて闘い抜かなければならない。けしば誠一候補は、他の政党の候補とは比べものにならない大きな政治家であり、力を持った政治家である。本当の意味で民衆の利益を貫き、民衆とともに行動し闘う議員だ。だからこそ、けしば候補は区議十年の中で真に民衆の利益となる成果をいくつも実現してきた。
介護保険で低所得者への利用料を助成
けしば候補の実績の第一は、介護と福祉を要求する杉並住民の会とともに闘い、介護保険の利用料の低所得者への助成措置を実現したことである。さらに十月からの六十五歳以上の保険料二倍化に反対して全力で闘っている。
杉並区は今年度から低所得者への介護保険サービス利用の利用料の助成を開始した。利用料の上限月額一万五千円を三千円に引き下げ、その差額を区が助成するというものである。これは、杉並住民の会が、粘り強く杉並区との交渉を行い、その中でかちとった成果である。けしば区議はこの住民の会とともに行動し、住民の会の区との交渉では窓口ともなってきた。一定基準の低所得者に利用料が助成されるという点では、全国的に見ても大きな成果である。
介護保険は、小泉が厚生相の時に、労働者人民に犠牲を転嫁する形で日帝の財政危機を解決しようとして導入した福祉切り捨て政策である。「介護の社会化」のうたい文句とは裏腹に、利用料が払えないために介護が受けられなくなり、家族(女性)の介護の負担が一層増えた。その一方で高齢者の介護にかかわる国家負担は半分に減らされたのである。しかも、保険料負担も深刻で、年金生活の高齢者は生活できないところに追いつめられている。
こうした中で杉並区では百十五人の高齢者が保険料の徴収をやめるように東京都介護保険審査会あてに不服申し立てを行った。それは六十五歳以上の人の介護保険料がこの十月から二倍になることを阻止するための行動でもある。
けしば区議はこの杉並住民の会の不服申し立てでも一緒にこれを推進した。また、区議会の中でも一般質問を始めとした議員としての活動の中で「介護は全額公費負担で。必要な人に必要な介護を」のスローガンを掲げて、介護保険廃止、保険料徴収反対のために闘い抜いている。
区民とともに戦争賛美の教科書阻止へ
けしば区議の実績の第二は、歴史を歪曲し、日本のアジア侵略戦争と太平洋戦争を賛美する教科書が使われようとしていることに対して全力でこれと闘ってきたことだ。特に山田区長が「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書の採択を狙って、教育委員五人のうち三人を「つくる会」に連なる人物に代えようとしたことに反対し、佐藤欣子について阻止したことである。
日帝はアジア各国からの激しい非難を無視して「つくる会」の中学歴史・公民の教科書を検定合格させた。しかも東京都は、「つくる会」の賛同者である石原都知事が、教育施策連絡会で市区町村の教育委員を集め、「つくる会」教科書を採択させようとする発言を行っている。石原は昨年三月、都の教育関係者三千人を対象とした「思想調査」とも言うべきアンケートを行った。
一方、山田区長は昨年十一月、杉並区の教育委員五人のうち三人を解任して、代わりに佐藤欣子や大蔵雄之助など統一協会や「つくる会」に連なる人物を教育委員に任命しようとした。この策動に対して、教育労働者や父母多数が闘いに決起した。けしば候補はこの人びとと一体で闘い、佐藤欣子はストップさせた。これは、「つくる会」教科書を採択しようとする山田区長の策動を打ち砕くための緒戦における大きな勝利だった。こうした中でいま、「つくる会」教科書の七月採択を阻止するために重大な局面に突入しているのである。
日帝のアジア侵略戦争を居直り、朝鮮・中国を始めアジア人民二千万人を虐殺した歴史事実を隠ぺいし、歪曲して、日帝の侵略戦争を「正しかった」と教えようとするものである。特攻隊の美化や教育勅語を掲げていることに示されるように、再び、「国のために死ね」と教え込もうとするものである。
「つくる会」教科書を絶対に使わせてはならない。全世界で日本大使館抗議の闘いに決起したアジア人民と固く連帯し、日帝の侵略と戦争への策動を絶対に粉砕しよう。
リストラ反対で労働者と共に闘う議員
けしば区議の実績の第三は、リストラ・首切りに反対し闘い抜いてきたことである。JRの不当労働行為の責任を追及し、解雇撤回・地元JR復帰まで闘う国労闘争団を激励し、闘いを支援してきた。また、杉並障害者福祉会館運営協議会労働組合の解雇撤回、あるいは不安定雇用化の問題を議員活動の重要な課題として取り組んできた。
リストラに反対して闘うただ一人の議員である。
国労闘争団は、自民、公明、保守、社民の四党による千四十七人闘争の圧殺策動と闘い、国労本部の闘争団切り捨てと闘っている。そうした中で五月三十日には日比谷公会堂を埋め尽くす三千人の労働者が結集し、闘う闘争団を支え、ともに闘い抜くことを誓った。労働者階級の闘いが新たな高揚を開始したことを告げ知らせる大きな意義を持つ集会となった。
けしば候補はこの国労闘争団を支援し、国鉄闘争をともに闘ってきた。
小泉反動政権が「聖域なき構造改革」と称して、大資本を救済するために労働者階級に犠牲を転嫁し、首切り・リストラ、大失業の攻撃をかけてこようとしているときに、本当に闘う労働者の味方となる議員が絶対に必要だ。そして、闘う労働者とともに歩んできたけしば候補こそが労働者階級の本当の代表である。
学校給食の民間委託4月実施を阻む!
けしば候補の実績の第四は、杉並区の学校給食の民間委託化に反対し、父母や教育関係者、給食調理員や栄養士とともに闘い、四月に予定されていた実施をストップさせたことである。
学校給食の民間委託化は、子どもたちの安全でおいしい学校給食を犠牲にするものである。区の経費削減を名目として進められてきたが、民間委託化が決して経費の節減にならないことは、すでに導入された他区の例から見ても明らかである。例えば台東区では、十年間で委託費が十七・六倍に、生徒一人あたりの単価は三倍以上になっている。区財政への負担は逆に増えている。その本当の狙いは、昨年十一月に山田区長が「スマートすぎなみ計画」で打ち出した、区職員一千人の削減にある。その手始めが給食現場の労働者なのである。
この学校給食の民間委託化に対して、現場の給食調理員や栄養士、さらに父母などの市民が一体となって反対に立ち上がり、反対の署名は二万六千を超え、区議会への陳情は二十二本に上った。けしば区議はこうした人びとと一体になって区議会で強力に反対し、二月二十八日の文教委員会は審議打ち切りを強行せざるを得ない状況に追い込まれたのである。そしてこうした決起によって杉並区が当初予定していた今年四月からの実施は不可能となった。杉並区は九月から実施しようとさらに策動を強めているが、労働者や住民と闘う議員が一体となって反対すれば阻止できるという展望が開かれている。
住民無視と公害の大型道路建設を阻止
けしば候補の実績の第五は、放射五号線に反対する住民とともに闘い、延伸計画をストップさせたことである。
放射五号線は、住民の生活を犠牲にし、また自然環境を破壊する大型道路である。十七年前、地元富士見ヶ丘小学校の父母を中心に住民が供用開始反対の座り込みなどの闘いに決起して、その後、延伸計画をストップさせてきた。
ところが石原が都知事になって道路建設を再開しようとする策動を始めた。住民に立ち退きを強制し、しかも自然環境を破壊して建設が強行されようとしているのである。けしば候補はこれに真っ向から反対して闘い抜いている。
石原都知事はさらに、外郭環状道路の建設再開を打ち出した。外郭環状道路は、三十年も前に沿線住民や議会の反対などによって建設大臣が「凍結」を宣言せざるを得なかった。地下案を持ち出して建設を強行しようというのである。地下案によっても道路公害は何も解決しないばかりでなく、インターチェンジ設置部分では多くの住民が立ち退きを強制されることになる。けしば候補はこれにも真っ向から反対して闘い抜いている。
大型道路建設は、首都の軍事機能を強化しようというものに他ならない。これと真っ向から闘い抜いていける候補は、けしば候補しかいない。
高円寺北再開発ストップさせる
住民を犠牲にする攻撃との闘いという点では、高円寺駅北地区再開発を地元の商店街・住民とともに反対して闘い、建設をストップさせた。ライフやドン・キホーテなど、大型店出店に反対して闘い、騒音被害、交通渋滞、地元商店衰退など住民生活破壊、中小業者切り捨てと闘ってきた。
けしば候補はまた、浜田山駅のエレベーター設置、浜田山駅と阿佐ケ谷駅を結ぶ南北バス(すぎ丸)など、住民の生活と密接にかかわる問題でもその実現のために全力を挙げてきた。
こうした数々の実績に示されているように、けしば候補こそ本当に労働者住民の利益のために闘う議員である。
いまこそ労働者民衆の未来のために、「いのちとくらしを第一に」と訴えるけしば候補を都議会へ送り出そう。これから一週間の奮闘によって一切が決まる。この一週間を全力で闘い抜き、なんとしてもけしば候補の当選を実現しよう。
都議選をめぐるけしば誠一氏の見解と各党派の態度
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「つくる会」教科書に対する態度 |
学校給食民間委託化
(区議会での採決) |
介護保険制度に対する態度 |
シルバーパス有料化
(都議会での採決) |
都職員給与の賃下げ
(都議会での採決) |
外形標準課税導入
(都議会での採決) |
都政を革新する会
けしば誠一氏 |
採択絶対反対
区民とともに運動
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絶対反対
9月実施阻止へ
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廃止し全額公費負担
保険料・利用料減免
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絶対反対
手厚い高齢者福祉を
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絶対反対
唯一リストラ反対
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絶対反対
中小企業増税に反対
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自民党
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採択推進
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賛成
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賛成
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賛成
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賛成
|
賛成
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公明党
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厳正に検定されたとの見解 |
賛成
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賛成
|
賛成
|
賛成
|
賛成
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民主党
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検定の結果を尊重すべきとの見解 |
賛成
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賛成。導入を最も積極的に推進 |
賛成
|
賛成
|
賛成
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生活者ネット |
ふさわしくないが区の採択を問題にせず |
賛成
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賛成。老人福祉手当て削減にも賛成 |
賛成
|
賛成
|
賛成
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日本共産党 |
反対だが都議選政策には掲げず |
反対
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改善。減免を言うが制度には賛成 |
反対
|
賛成
|
賛成
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自治市民'93 |
ふさわしくないが都議選政策には掲げず |
―――――
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改善。使える制度にと制度には賛成 |
賛成
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賛成
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反対
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週刊『前進』(2010号3面2)
“歴史歪曲の教科書を正せ” アジア連帯の力で文科省包囲
六月十二日正午を期し、韓国の百十四団体で構成された「日本の教科書を正す国際キャンペーン」の呼びかけで、世界七十一カ国、百二十五都市で日本大使館・領事館に対する同時行動が展開された。アジアでは二十五カ国三十七都市で行動があり、ソウルでは光化門に集まった千人が日本大使館にデモ行進、釜山、済州でも日本領事館に抗議行動が闘われた。日本では十一日にアジア連帯緊急会議の呼びかけで文部科学省を「人間の鎖」が包囲、続く十二日の世界同時行動が同省を痛撃したのである。
韓国から65人が
六月十二日、東京・霞が関の文部科学省前には、南朝鮮・韓国から来日した六十五人を先頭に、三百人以上が集まった。
文科省はこの闘いに警官を多数配備し、強権的な規制に出た。「つくる会」教科書に対する文科省の姿勢がここにも貫かれている。怒りの座り込みを始めた。胸には「修正! 歴史教科書」「歴史の真実は一つ」「戦争を美化するな!」と書かれたゼッケン。大横断幕が広げられた。
正午、来日した小学校四年生の少女がマイクを握り「全世界の良心の名のもとに歪曲された日本教科書の修正を求める」との声明(別掲)を読み上げた。十歳の少女から民族服で正装した九十歳の長老、日本軍軍隊慰安婦とされたおばあさんたちまで世代をつなぐ人びとが聞き入った。
日本軍軍隊慰安婦とされた三人の女性たちも参加した。フィリピンからリラ・ピリピーナ代表のバージニア・ビラヌバさんは「私は日本軍によって被害者にされた歴史の証人としてここに立っています。『つくる会』の教科書を廃止するまで闘います」と語った。韓国の金順徳(キムスンドク)さんは「私は十七歳の時、日本に行って看護婦をするのだとだまされて中国に連行された。正しい歴史を若い人たちに教えてください」。姜順愛(カンスネ)さんの小さな体からは怒りが噴き出す。
十二時半過ぎ、六人の代表団を送り出した。たくさんの横断幕を連ねて全体が前に進む。繰り返されるシュプレヒコール。「歴史教科書を是正しろ! 戦争と植民地支配を美化するな!」。だが文科省の対応は「文科大臣に渡す」というおざなりなものだった。
杉並など地域で採択阻止を闘う運動体などからアジアの闘いに連帯して頑張りぬく決意が表明された。
声明文を読み上げた少女がほおを染めて語った言葉が忘れられない。「私は日本の子どもと仲良くなりたいのです。間違った歴史を教えないでください。正しい歴史を教えてください」
「人間の鎖」実現
十、十一日、東京で「歴史歪曲教科書を許さない! アジア連帯緊急会議」が開かれ、文部科学省を取り囲む「人間の鎖」が取り組まれた。韓国、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシアからの参加者、在日朝鮮人、外国人労働者、アイヌ民族など五百人を超える労働者民衆が共同闘争を展開した。
文科省周辺を大音響で徘徊(はいかい)する右翼の妨害をはねのけ、制服警官が過剰警備を敷く中、韓国からの抗議団は毅然(きぜん)として文科省前に登場した。さらにアジア連帯緊急会議の参加者が続々と結集、メッセージを書いた布テープが人と人をつなぎ、一気に鎖は長く伸びていく。午後五時半前にウェーブが起こされた。「つくる会」教科書ノー! の大波が文科省を包囲した。
ネットワークを
十一日夕、日本教育会館で「歴史歪曲教科書を許さない! アジア連帯緊急集会」が開かれ、大雨をついて七百人余が集まった。
アジア連帯緊急会議の報告があり、@短期的には「つくる会」教科書の採択を阻止するために闘うこと、A長期的には、この教科書問題が「小泉内閣の憲法や教育基本法改悪、靖国神社公式参拝などの動きに連動し、戦争のできる国家に向かうものであり……アジアの人々が国境を越えた協力で歯止めをかけないと、アジアに再び惨禍と災厄をもたらす恐れがある」(アジア連帯緊急会議宣言)との認識の上に、歴史教育アジアネットワーク(仮称)を形成することに合意したことが明らかにされた。
また日本政府が北朝鮮からの三人の参加者の入国を不許可としたことに対する抗議声明が決議された。
東大助教授の高橋哲哉さんが歴史認識の視点から「つくる会」を批判、「侵略戦争と植民地支配の歴史を直視し、批判的に克服していきたい。戦前の残滓(ざんし)を徹底的に解体して、別の日本をつくる努力をしていきたい」と報告した。次に弁護士で参院議員の福島瑞穂さんが「憲法と女性」をテーマに小泉政権を断罪。憲法調査会の動向に「小泉政権が憲法を殺そうとしている。そのターゲットは憲法九条だ。公を重視しろと、基本的人権を制限する有事立法として狙っている」と訴えた。
韓国、中国、台湾、フィリピン、マレーシア、インドネシアからの心を揺さぶる訴え、さらに闘う沖縄、アイヌ民族、在日朝鮮人からの問題提起があり、教科書問題と取り組む運動体からの報告が行われた。
慰安婦問題とは
韓国挺身隊問題対策協議会の金允玉(キムユノク)常任代表は「なぜ教科書に慰安婦問題が記入されなければならないか」と問い、「慰安婦問題を見ることにより天皇制に対する理解が異なってくる。女性差別や民族問題が導き出される。階級問題にも目が向くようになる。一つの国家が他の国家を侵攻し、占領し、その国の伝統や文化、経済的な土台までを破壊する植民地主義の問題などが見えてくる」と問題を整理した。だからこそ、日帝・文科省と「つくる会」は慰安婦問題を教科書から抹殺しようと躍起なのだ。
教科書問題を契機として新たな運動が力強くスタートした。私たち日本の労働者・学生・市民もともに闘った。この国際連帯の力で闘いを爆発させ、「つくる会」教科書の七月採択絶対阻止をかちとろう。
(室田順子)
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週刊『前進』(2010号3面3)
全世界71カ国、125都市で同時集会
全世界の良心の名のもとに 歪曲された日本教科書の修正を求める
過去の戦争と暴力の歴史を反省し、新たな平和の時代を創造するために努力することは、この間の世界的潮流と言うことができる。例えばドイツの場合、過去の歴史を徹底的に反省し、戦争被害者に対する謝罪と補償を実践している。だが、日本は歴史的真実を歪曲したまま、戦争と植民地支配を美化する歴史教科書を認めることで、平和を実現しようとする世界的潮流に真っ向から逆行している。
この間、日本の文部科学省は日本の植民地支配と太平洋戦争を徹底的に美化した教科書を検定教科書として通過させた。「新しい歴史教科書をつくる会」がつくったこの教科書は、はるか昔からすでに朝鮮に日本の植民地があったかのように主張し、一万七千人を超える義兵が日本の帝国主義に抗争して殺害された事実には目を閉ざしたまま、当時の一部の親日派による主張を根拠に、日本による植民地支配が望まれたものだったかのように主張している。またこの教科書は、二千万人以上の人々が犠牲となった太平洋戦争を解放戦争として美化している。軍や警察によって七千人の朝鮮人が殺害された関東大虐殺事件についても徹底的に事実を隠蔽(いんぺい)歪曲しており、国連からも戦争犯罪だと糾弾された日本軍「慰安婦」問題に対しても無責任な態度で一貫している。
だが、より大きな問題は、日本の歴史教科書歪曲が単に歴史的真実に対する隠蔽と歪曲に止まらないということにある。この歪曲が、この間、様々な形で行われている日本の軍国主義的戦略の拡大と結びついているからだ。最近、日本の首相は戦犯の位牌(いはい)が祭られた神社への参拝を当然視し、朝鮮半島有事時における自衛隊の派遣可能性を示唆するなど、アジアの平和を脅かす行動や発言をためらわずにいる。このままの事態が続くとしたら、今後日本が平和憲法を改め、実質的な権力を伴わせた天皇制まで復活させないと誰が保証できよう。このような状況においても、日本は反省することなく、韓国人による憂慮の表明を内政干渉とし拒否している。
したがって、私たちは日本の歴史教科書歪曲が決して日本の人々だけの問題だと捉えることができない。この問題は現在の韓日両国の親善を脅かす最大の問題であるばかりでなく、アジアの平和を脅かす重大事であり、全世界の平和をも脅かす事件である。それ故に、韓国人のみならず、全世界の平和を愛する全ての良心ある人々には、国際世論を最大限動員し、今回の教科書歪曲を阻止する責任がある。この度、「日本の教科書を正す国際キャンペーン」が誕生し、六月十二日を世界行動の日として定め、全世界数十箇所の国や都市において日本大使館と領事館の前で集会を開くに至った理由がここにある。
ここに、私たちは日本政府に向かって語りたい。
日本は、歴史の真実に反し、アジアと世界の平和に反する歴史教科書を修正せよ!
また、私たちは全世界の平和を愛する全ての良心ある人々に呼びかけたい。
日本の歴史教科書歪曲を世界平和に対する脅威と見なし、その是正のための行動に積極的に参加しようではないか。
私たちは今回の歴史歪曲に立ち向かって多くの良心的な日本の人々が抗議運動に取り組んでいることに大きく励まされている。私たちは彼ら良心的な日本の人々と共に歴史の真実と平和のための道徳的政治的圧力を、更に大きく組織化していくだろう。歪曲された歴史教科書の是正が実現するまで……。
二〇〇一年六月十二日
日本の教科書を正す国際キャンペーン
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週刊『前進』(2010号4面1)
小泉反革命と真っ向から対決せよ
人民に痛み強制し 戦争国家化を企む小泉の「聖域なき構造改革」
新型「国家改造計画」への全面批判
はじめに
自民党(日帝ブルジョアジーとその政治権力)は今、超不人気であった森政権に代えて小泉政権を登場させ、逆に驚くべき「小泉人気」を引き出し、一気に参院選と都議選をのりきろうとしている。
小泉は「聖域なき構造改革」なるスローガンを連発し、あたかもそれが世直しの大改革であるかのように見せかけようとしている。小泉の政策、「構造改革」なるものによって今日の日帝の危機が一気に解決され、労働者人民の利益も守られ増大するかのように、意識的に扇動しているのだ。マスコミもこぞって「小泉革命」などとはやしたてている。
だが、小泉政権の唱える「構造改革」なるものは、「痛みを伴うが我慢しろ」と言って労働者人民に徹底した犠牲を強制し、日本を戦争のできる国に変えようという新型の、極右的・ファッショ的な国家改造計画である。小泉による権力奪取が意味するものは、この日本において、まさにオーストリアのハイダーのような極右の主張を平然とまくしたてる人物が、「構造改革」というデマゴギッシュなスローガンを掲げて政権の座についたということだ。
これは恐るべきことである。事実上ファシスト石原とほとんど同じ主張の人物が、東京都どころか日帝の国家権力そのものを握ったということなのだ。そして改憲が望ましい、集団的自衛権は行使すべきだと言い、さらには日本の侵略と戦争の全歴史を真っ向から否定する「つくる会」の教科書を押し通し、国のために死んだ人びとは偉大だ、若い諸君もこれに続けとあおりにあおっている。
その反面では、大倒産、大失業などかまわない、金融独占資本が生き残り、帝国主義間争闘戦に勝つためには当然だと言い切っているのだ。
日本帝国主義の没落と危機が激しく進行する中で、民族主義・愛国主義・排外主義の扇動をとおしてこの危機を侵略と戦争の方向に転化する過程が今、音を立てて進行し始めたのだ。小泉政権の登場こそは、それがまさに国家権力の中枢そのものから帝国主義全体を覆うものとなっていく決定的事態なのである。
この小泉のデマゴギッシュな扇動政治と、万能薬のようにわめいている「構造改革」なるものの階級的本質を白日のもとに暴き出し、それへの煮えたぎるような怒りを爆発させて立ち上がらなければならない。小泉反革命に体当たりし、その仮面をひきはがし、正体を暴露し、闘う労働者人民の手で小泉を絶対にたたきつぶさなければならない。
何よりも、小泉反革命の最大最高の先兵である石原都政下の都議会に、小泉・石原の反革命と真っ向から対決して闘う議員として、けしば誠一候補を必ず当選させ送り込むことだ。ここが一切の闘いの突破口だ。ここに労働者人民の命運がかかっている。
第1章 金融独占資本の延命のため「痛みに耐えよ」と叫ぶ小泉
小泉は、日本の現状に危機感を持ち、あたかも自分の「構造改革」政策をもってすればその危機が打開されるかのように言っている。まず初めに、この小泉の主張自体がまったくでたらめなウソ八百でしかないことをはっきりさせよう。
今日の日帝の危機とは何か? それは帝国主義の政治・経済・社会そのもの、資本主義制度そのものの根本的な矛盾の爆発という危機だ。帝国主義は今や確実に未曽有(みぞう)の世界大恐慌に向かって突き進んでいる。本質的に一九二九年型の、またはそれ以上の史上空前の大恐慌と大不況に向かって突き進んでいるのである。このことはまた、帝国主義間争闘戦の激化、その戦争への転化の動きの激化となって現れてきている。
進行する米経済のバブル崩壊と世界大恐慌情勢の一層の深まり
何よりもまず、アメリカ経済の巨大なバブルの崩壊とその恐慌的大爆発、ドル暴落による世界大恐慌、長期にわたる果てしない大不況の到来が、いよいよ現実のものとなりつつある。
二〇〇〇年を区切りとして、米帝経済のバブルは大崩壊の過程に突入した。米の株式市場は二〇〇一年に入ってますます動揺的となり、三月中旬・下旬には急激な落ち込みを見せた。その後は若干揺り戻しているが、しかしこれは米FRB(連邦準備制度理事会)が急ピッチで大幅な金利の引き下げを強行したことや、ブッシュ政権の大減税法案が成立したこと、さらに超長期のバブルの余熱が一定続いていることによっている。また、日帝が三月中旬から再び超金融緩和政策に移行し、それによって日帝株式市場でも若干の揺り戻しが起きたことによっても支えられている。
しかし、長期の巨大バブルの崩壊はこうした動揺をくり返しながら、奈落(ならく)の底に落ち込んでいくものだ。実際には、以下の点で危機はさらに進行していると見るべきである。
@二〇〇〇年の米の株式時価総額は、きわめて短期の間に、二九年恐慌時や七四―七五年の石油危機時に匹敵するほどの大幅収縮を見せた。それが引き起こす逆資産効果は恐るべきものがある。
A企業は急激な減収・減益と赤字化に陥り、二〇〇一年一―三月期の米の主要五百社の決算は七%減益となった。
B株の下落で企業の資金繰りがひっ迫しつつあり、低金利政策をとってもいわゆる貸し渋りは避けられない。
Cバブル末期の過剰投資で、企業は今や過剰設備の重圧にあえいでいる。
D人員整理(レイオフ)は昨年十二月から五カ月連続で、月合計十万人を超えている。四月中に発表された人員整理の合計は十六万五千五百六十四人で、これは九三年の調査以降では史上最高である。また、実質的な非農業就業者数は四月に二十二万三千人も減った。九一年以来十年ぶりの大幅なダウンである。
E米銀行全体の昨年の不良債権総額は四百八十八億jで、一年間で二七%も増えた。今年の一―三月期には米の主要十九行の不良債権は昨年末より一一%増加した。貸し渋りがすでに発生し、拡大しているのだ。
したがって、米帝経済のバブル崩壊とそれによる景気の激しい後退という事態は、まだ始まったばかりである。何よりも米FRB自身が現状に危機感を持ち続け、四月に続いて五月にも利下げに踏み切っているのだ。
恐慌の再激化にあえいで国債の日銀引き受けにのめり込む日帝
日本経済についてはどうか。ここでも危機はきわめて深刻である。
九七―九八年の金融恐慌から経済恐慌への突入開始という危機的情勢は、日帝政府による前代未聞の恐慌対策と、米帝バブルの継続中という現実、とりわけ後者に決定的に依拠してひとまずその急激な進行が抑制され、慢性化した。しかしそれは実に脆弱(ぜいじゃく)なものでしかなかった。そのことは、昨年四月に始まり年末にかけて一気に具体化した米帝バブルのパンクの中で決定的に暴露された。
本年一―三月の日本経済の情勢は急激に悪化し、三月中旬にはほとんどパニック的な状況を呈するにいたった。日経平均株価は三月十三日には一万一八一九円まで一気に下落し、バブル崩壊後の最安値となった。
その後株価は若干回復し、五月には一万四〇〇〇円台まで戻している。しかしこれは単純な市場の「反発」などというものではまったくない。日帝は事実上、状況を恐慌的情勢と見て、再び「第二の恐慌対策」というべきすさまじい手段に訴えたのである。
まず第一に、これが決定的だが、日銀が再び超金融緩和政策に訴えたことである。いや実際には今回の「量的緩和」政策は、ゼロ金利政策以上の超緩和政策であり、デフレ状態の解消まで、すなわち消費者物価指数がプラスになるまで際限なく続けるというものである。つまり、銀行の日銀当座預金口座に常に五兆円を流し込み続けるというのである。
だが不良債権の重圧下で、銀行は、これによって本来の貸出業務に向かうのではなく、この供給された資金を国債の売買のために使ってもうけている。さらには部分的にではあれ株の売買にも参入してもうけようと動いているほどである。これが、いわゆる金融相場として、三月下旬から五月上旬の株価の二〇〇〇円アップに作用しているのだ。
第二に、また政府は明らかに、三月中旬〜下旬にPKO(プライス・キーピング・オペレーション、政府による株価維持政策)として、政府系の資金(郵貯資金や年金資金など)の株式市場への投入をしている。つまり人為的な株価維持政策を行っている。
第三に、「緊急経済対策」なるものが打ち出され、不良債権の「最終処理」と称してその実質的なオフ・バランス化を二〜三年以内に行うことが強調された。他方では本年四月からの時価会計制度導入のもとで株価急落から銀行を防衛するための、銀行保有株式取得機構の設立が打ち出された。これもきわめて重要である。しかもこれが、自民党の総裁選と連動して、いわゆる「構造改革」論の骨組みをなすものとして言いはやされ、これでいよいよ日本経済が不良債権の重圧から逃れられる方向が出てきたかのような幻想が生み出された。
第四に、このこととからんで、「構造改革」の断行を声高に叫んだ小泉の勝利が自民党総裁選の地方投票で決定されるという事態が生まれ、異常な小泉人気が発生したことである。
第五に、やはり米経済の株式急落が一息ついたという情勢によっても根底的に規定されている。
こうした三月下旬〜五月上旬的な株式市場(資本市場)の一時的揺り戻しは、きわめて脆弱な基盤によるもので、米経済などの世界情勢や日帝国内の政治動向などをめぐって変動が生じれば、たちまち三月中旬的なパニック的状況に舞い戻ることは不可避である。
ちなみに三月三十一日時点では、大手銀行十六行中、時価会計を取り入れていない十三行のうち十行までもが保有有価証券の「含み損」に陥り、その合計は九千二十四億円にも上っている。もちろん「含み益」を維持したところも大幅に削り落とされているのである。
また、日帝の実体経済の動向を示すデータは、本年一―三月に日本経済が急速に後退しつつあることをはっきりと示している。すなわち、実体経済はデフレ・スパイラル的様相をベースにして、悪化の一途をたどっているのだ。米帝経済の景気後退→日帝経済の輸出依存性の暴露→生産カット、人員整理、リストラ→失業率アップ(三月四・七%、四月四・八%)→不良債権処理などによる大量失業者の予想→雇用不安→消費支出ダウン→価格競争の激烈化と価格低下→利益の低下→減産→設備投資抑制・・等々、こうしたことが延々とつながっていく。
特に重要なデータとしては、消費者物価指数が三年連続のマイナスに向かって進んでいることだ。いまひとつは景気動向指数の急速な悪化で、三カ月連続して分水嶺(れい)とされる五〇%をはるかに下回っている。こうした中で、設備投資は新規の本格的な投資はほとんどなく低迷を続けている。リストラ計画のみが突出し、大がかりなものとなっている。
このように見てくると、三月中旬の日銀による金融の「量的緩和」政策の実施により、金融市場にありあまる資金がジャブジャブと流され続けていることで、かろうじて日帝経済が日々のやりくりをしていることが鮮明となる。
しかしこの「量的緩和政策」にもすでに問題が発生している。日銀がいかに銀行の日銀当座預金口座に五兆円の資金を投入しようとしても、手形や短期国債の買いオペへの銀行からの応募が少なく、五兆円を注ぎ切れないのである。今や、中長期国債の買いオペを拡大するしか道がなくなってきているというのである。
しかしこれがどんどん進めば事実上、銀行を媒介にする国債の日銀引き受けとなる。するとこうなる。すなわち、銀行が市場で国債を購入する→日銀が買いオペをする→銀行がさらに国債を購入する……とどこまでも展開していくことになる。このシステムが働き続けるか、うまくいかなくなるか、いずれにせよ日本経済は、次のようなコースをたどって破局に向かうことになる。
(α)ひとつは、国債暴落→国債バブル崩壊→大銀行が巨大損失→超デフレへの道である。
(β)もうひとつは、超インフレ→その天文学化→国家的破綻→軍需経済への傾斜→戦争化ということだ。
もちろん(α)もなれの果ては(β)となる。その瀬戸際に立っているのだということだ。
小泉の「構造改革」は倒産・失業・増税と社会保障打ち切りの宣言
小泉反革命―小泉「構造改革」はこの状況に対して何をもたらすのか。日本をどこへもっていくのか。
結論から言えば、小泉の経済・財政構造改革は、大銀行・大資本(金融独占資本)を延命させるため、労働者人民に大失業、生活苦、中小企業連鎖倒産、増税と収奪、社会保障カットなどを強制するのだ。「痛みを伴う」が我慢しろと言って! しかもそれは、経済回復にさえならない。むしろ、本格的経済恐慌への一層の突入を引き起こすものでしかない。
小泉の言う経済・財政の「構造改革」の実体は以下のようなものである。
(1)国家の全面バックアップのもとで、銀行の不良債権の実質処理を二〜三年で行うという。しかしこれはストレートに中小企業(一部の弱体大企業も含む)の倒産、連鎖倒産を引き起こす。失業率は七%になるとも言っている。口先だけ「雇用対策」を言うが、実質的には問題にならない。パート労働や短期契約の増加、いわゆる労働力の流動化なるものでしかない。運よく再就職できても賃金の大幅引き下げは当然といった具合だ。
(2)他方、銀行に対しては、不況激化、恐慌化に対応して銀行保有株式取得機構の設立も準備していく。ここでも公的資金をどんどん注ぎ込むつもりだ。そのつけは、最後は人民にしわ寄せされる。
(3)国と地方の長期債務合計が二〇〇一年度末に六百六十六兆円にもふくれ上がることを強調して、国債の発行を三十兆円以下にするという。また、国家予算で税収入と歳出をバランスさせ、国債発行は国債元利払いに対応する範囲にとどめるようにするという。歳出のカットは、社会保障(医療、年金、介護・福祉)の高負担・低サービス化以外の何ものでもない。また、中小企業の倒産と労働者の大失業化でしかない。
(4)歳入のアップは増税、それも消費税アップしかない。小泉は露骨に、参院選前は「増税なき財政再建」だがその後は別と言っている。小泉とその政権閣僚を含むすべての構造改革主義者は、消費税の一五%までのアップを言っている。
(5)また、小泉の行政改革も、郵政民営化の実体は大リストラ以外の何ものでもない。NTTによる十一万人中六万人のリストラ計画の発表は、郵政民営化の未来をも示す。また、公務員の労働者性解体の攻撃と一体のものだ。
(6)さらに、経済財政諮問会議は、「創造的破壊」と称する低生産部門の切り捨てや、「社会保障個人会計の創設」による戦後の社会保障の理念と制度の全面解体、地方自治の解体につながる市町村合併と地方交付税の大幅削減など、すさまじい大攻撃を相次いで打ち出している。
小泉の「構造改革」とはこういうものでしかないのだ。それは一言で言えば、大銀行・大企業―日帝金融独占資本の延命をひたすら求めることで、日本と世界を恐慌的危機へと一層絶望的にたたき込むものでしかない。実際には大失業、雇用不安を著しく激化させ、米帝経済のバブル崩壊の波及とあわせて日帝経済の不況化を一層激化させ、世界大恐慌へと発展させていくものとなるであろう。
小泉「構造改革」はとんでもない反革命であり、労働者人民は自らの生活と雇用を守るためには、こんな小泉の「改革」に髪の毛一本ほどの期待も寄せてはならないということだ。小泉反革命打倒! 労働者人民の生活は労働者人民自身の闘いで守り、かちとっていこう。これあるのみである。
第2章 極右的な主張を掲げて「国のために死ね!」とあおる小泉
小泉反革命の「聖域なき構造改革」がもたらすものは、日帝の経済危機のさらなる進展だけではない。その核心は、帝国主義がその基本矛盾を世界大恐慌と新たな世界戦争として大爆発させていく過程に突入した中で、労働者人民大衆に徹底して犠牲を強制しながら、それへの労働者人民の怒りの爆発を抑え、そらすために、帝国主義的民族主義・愛国主義・国家主義・国粋主義をあおりたてることだ。そして、すべての帝国主義が同時に行き詰まっている中で、世界のブロック化、勢力圏分割のために、結局侵略戦争と帝国主義間戦争への道を率先して突っ走ることだ。
小泉が「聖域なき構造改革」と言うとき、それは改憲も、集団的自衛権も、安保も自衛隊も、教育・教科書問題も、靖国神社問題も何もかも、かまわず「改革」するということを意味している。
ここで重要なことは、小泉は恐るべき帝国主義的タカ派的イデオロギーの持ち主であり、その主張は極右の主張、ファシスト石原の見解とほとんど変わらないということだ。
とりわけ小泉は「国のために命を捧げる」ことを限りなく美化し、強調して熱弁をふるっている。『ああ同期の桜』という特攻隊の本に涙を流して感動し、政治家としての自己の信条にしているという人物なのだ。中国侵略戦争も第二次大戦も、小泉にとっては「国のために命をかけて戦った」ものであって、なんら問題はないと言うのだ。
実際にはこの戦争は、日本帝国主義が、資本家階級のために、アジアを侵略し、じゅうりんし、何千万人もの人びとを殺したのである。この支配階級のための戦争で、日本の労働者人民も何百万人も殺され傷つけられたのだ。この原点を抹殺し、人民に向かって「国のため、日本民族のため」に「尊い犠牲」になられた方に頭を下げるのは当然とか、「自衛隊は命をかけている」がお前たちは命をかけていないのだから自衛隊に違憲などと失礼なことを言うな、などと言っていい気になっているのが小泉だ。
この小泉(および支配階級そのもの)に対して、労働者人民は今こそ腹の底からの怒りを爆発させなければならない。小泉が何の痛みも感じていない様子で、靖国神社参拝のどこが悪いと言っている姿を許しておくことは絶対にできない。
十五年戦争を美化し 憲法九条の破棄を課題として登場した政権
以下、小泉のこの間の主要な発言をとりあげて、徹底的に弾劾していこう。
まず、四月二十七日の首相就任後初の記者会見における許しがたい発言について見てみよう。ここで小泉は、改憲、首相公選制、集団的自衛権に関してきわめて挑戦的に発言している。
▼まず改憲について
(a)「憲法九条は、日本は戦争の後遺症が強いから、政治課題にのせるのは難しい」
(b)「だが、侵略されたとき命がけで戦う決意を示すのが自衛隊だ。『自衛隊は憲法違反』と議論させておくのは非常に失礼だ。命を捨てる覚悟で難しい訓練をしている」
(c)「そういう集団に敬意をもって接することができるような法整備、環境をつくるのが政治として当然の責務だ」
ここで小泉は、「憲法九条の改正」は当面は難しいからやめようと言っているのではない。労働者人民の抵抗が強いので困難な課題だが、その困難はぶち破る必要があると言っている。きわめて強固な改憲の意志を「国民」に対してたたきつけているのだ。このすさまじい帝国主義的な階級的「本音」「迫力」に、労働者人民は断じてひるんではならない。
まず、(a)での「日本は戦争の後遺症が強いから」という発言について断じて許してはならない。ここに、小泉の歴史観、戦争観がはっきりと表れている。小泉はわざと抽象化して言っているが、ここで言う戦争とは、言うまでもなく日帝が明治時代から一貫して繰り広げてきた戦争、とりわけ中国侵略戦争から第二次大戦に至る十五年戦争のことだ。すなわちアジアへの侵略戦争であり、アジアの支配をめぐる日米間の帝国主義戦争のことである。この戦争について、小泉は何と考えているのか。根本的に肯定しているのだ。否定する精神はひとかけらもない。
この戦争は、「国のため」「国家の存亡のため」として正当化されて遂行された。しかしこれは実際には、日帝がアジア諸国を侵略し、植民地化し、支配圏に組み入れるためのものであった。しかもそれは、帝国主義支配階級の利益のために、帝国主義の支配体制の危機をのりきるために行われた戦争でしかなかった。アメリカの行った戦争も、この点ではまったく同じ本質を持つものであった。
日本の労働者階級人民は、この十五年戦争をとおしてアジア諸国人民の反撃を受けるとともに、帝国主義の利益のためにアメリカの労働者人民とも殺し合いをさせられたのである。その中で膨大な戦死者を出し、戦争被害をこうむり、かつヒロシマ・ナガサキを経験することによって、日本政府や権力者の戦争宣伝というものを断じて軽信してはいけないということを痛切に思い知ったのだ。
確かに日本の労働者人民は、この戦争を帝国主義者のための侵略戦争、帝国主義戦争として階級的に明確に総括することはできなかったし、排外主義への自己反省も決定的に不十分だった。だがしかし、「国のため」とか「満蒙(中国東北部および北部)は日本の生命線」とかいうイデオロギーや政治が何かウソっぽいこと、実際にはそれは一部の階級のための他国への侵略戦争なのだということを、一定の階級的・大衆的本能でつかみとってきたのである。だからこそ反戦平和の意識を守り、憲法第九条を変えようとする動きを断じて許さず今日まで来たのである。
小泉の発言は、これとは正反対のものである。中国侵略戦争と第二次大戦は国のために戦ったもので、否定など絶対にされるべきではないということだ。後遺症はそろそろ捨て去るべきだとさえ言うのだ。だが明治以来の朝鮮・中国|アジアへの植民地支配と侵略戦争、第二次大戦を含む十五年戦争――これらすべては過去の問題ではない。現代の問題そのものだ。後遺症などと言っていいようなものでは断じてない。このことをあいまいにしようとする者は、必ず再び同じことをやるものなのである。
次に(b)について。労働者人民が真に自己の階級的利益を守りぬくためには、ここで展開されているイデオロギーを根底から打ち破らなければならない。
大きく分けて二つある。
ひとつには、「侵略されたとき」と、侵略というものがあたかも自然法則のように発生するものとして言われることのまやかしである。この世界は平等な同じような国家が平板に存在しているのではない。まず、資本主義のもとでは、大きく言えば資本家階級と労働者階級とが非和解的な利害対立をもって相対するという階級関係に置かれている。また、帝国主義の時代には、世界は帝国主義国と被抑圧諸国・諸民族という分裂した実体構造、重層構造を持ったものとして存在している。このことは労働者階級の立場に立って初めてはっきりするし、そう言い切れるのだが、現代史はすでに事実上、これらのことを歴史的、科学的事実としても確認していると言えるのだ。
したがって戦争とは、一般的な国家間の行き違いや、誤解や、一部の者の扇動の結果として起こるものではけっしてない。現代の帝国主義段階においては、戦争は基本的には帝国主義の侵略戦争および帝国主義間の支配圏の再分割戦争として発生する。戦後史の過程では、スターリン主義国家もまた侵略戦争の担い手となったし、これからも一定なりうる。
問題は、日本の場合はどうかということだ。日本は帝国主義国家である。つまり日本は帝国主義として、基本的に侵略する側の国家なのだ。もちろん、帝国主義国家間の戦争となれば、占領されることがあるのは第二次大戦を考えれば明白だ。しかしそれは、侵略する国家同士の戦争、強盗的悪党どもの間の世界支配をかけての戦争だ。しかも日帝は帝国主義国家であり、その内部は階級対立によって実際には非和解的に分裂している。
したがって、「国のため」「国益のため」というのは、実は帝国主義ブルジョアジーのためということ以外の何ものでもない。労働者人民はこういう反革命的階級のために戦争に動員されるのだ。このことは階級的・理論的な結論だが、現代史の血の教訓として歴史の中ですでに確定していることでもある。
ここにおいて労働者階級人民のとるべき態度は、被抑圧諸国・諸民族への侵略戦争にはまず絶対反対である。それは他国の人民の独立を奪い、民族的解放に敵対し、その生活や権利や生命その他一切を奪う残虐な不正義きわまる戦争であるからだ。反対しなければ、侵略戦争への協力者と同じになってしまう。他方、第二次大戦時の日米戦争のような帝国主義間戦争について見るならば、これはどちらの側から見ても不正義の強盗戦争である。帝国主義のために労働者同士が殺し合うのはまったく反階級的なことだ。
このように、帝国主義国日本の行う戦争は、徹底的に不正義の戦争であり、労働者人民は戦争に動員され、殺されるだけの存在だ。こうした場合、労働者階級の基本的な立場は「自国政府の敗北」の立場しかありえない。戦争への反対は、自国の敗北と不可分であり、むしろわれわれは、この戦争に反対する闘いを発展させて、自国政府の敗北の中で生ずる支配の危機を帝国主義打倒のプロレタリア革命に転化し、侵略戦争をしない国への転換をかちとるために闘わなければならない。
いまひとつには、小泉が「命がけで戦う自衛隊」という発言を繰り返すことの反革命性とも断固対決しなければならない。これは侵略戦争や帝国主義間戦争において、労働者人民は命を捧げて国のために戦えと言っていることに等しい。「国のため」すなわち帝国主義のために「死ね」「死ぬ覚悟を持て」と小泉は絶叫しているのだ。それができないものは裏切り者だ、卑怯(ひきょう)者だ、非国民だというわけだ。
労働者人民からすればとんでもないことだ。帝国主義のために「命を投げ出せ」とは何ごとか。われわれが命を投げ出す価値のあることは、帝国主義からの階級的解放と民族的解放の闘いの中にしかない! と断固として言い返してやらなくてはならない。
さらに、「命がけで戦う自衛隊」「自衛隊に失礼」という考え方、思想それ自身の問題である。これは本質的には、軍部が威張りくさったあの軍国主義の時代の復活につながるとんでもない思想である。ひっくり返して言えば、自衛隊でないものは「命がけ」ではないのだから死ぬまで働け、死ぬほどの苦しみと痛みに耐えよ、ということでしかないのだ。
次に(c)について。「そういう集団」とは「命がけで戦う集団=自衛隊」ということだ。これに「敬意をもって接することができるような法整備」とは、憲法第九条の改正以外の何ものでもない。つまり小泉はこの一連の言辞(a、b、c)をとおして、改憲、それも第九条の廃棄は正しいことだ、やるべきことだと、あらゆるデマゴギッシュな言い回しやエモーショナルな言い回しで全力をあげて扇動しているということだ。
この小泉=自民党超反動政権による恐るべき反革命的デマゴギーに満ちた扇動に、全身の怒りをたぎらせて決起し、激突して闘い、粉砕しなくてはならない。
▼集団的自衛権
小泉は上記の発言に続いて、集団的自衛権問題でも、これまでのどの首相もけっして言わなかったような激しさで、やはり反革命的な扇動を展開している。
(d)「集団的自衛権はあるが行使できないというのが今までの解釈だ。私は憲法改正が望ましいという考えをもっている」
(e)「国益に一番大事なのは日米友好だ。日本近海で共同行動をしている米軍が攻撃を受けたとき、日本が何もしないことができるのか」
(f)「すぐに憲法解釈を変えろということではないが、あらゆる事態を研究する必要がある」
この小泉の発言も断じて許せない。論法はここでも、歴史と現実そのもの、階級的本質の問題を一切塗り隠して、「共同行動をしている米軍が攻撃を受けたとき」に何もしないでいいのかといった情緒的な議論に持ち込む形で進められる。「このとき何もしないのは卑劣だ」「日本人はそんなに卑劣な人間に成り下がっていいのか」というわけである。
だがわれわれは、そもそも憲法第九条はどうして「戦争放棄」を定めているのかと真っ向から小泉に突き返さなければならない。それは、日帝の軍隊が侵略の軍隊そのものであった歴史を反省し、日本が再軍備をすれば必ずアジア諸国や世界に対して再び侵略戦争を始めると、圧倒的な人民が考えてきたからなのだ。
小泉はこともなげに、憲法を改正して集団的自衛権を行使できるようにすればよい、それがベストだなどと言っている。集団的自衛権とは何か。それは日本軍(自衛隊)が他国に攻め込んでいって戦争をするということだ。小泉は「米軍が攻撃を受けたとき」と言うが、その米軍は何をしているのか。アジア諸国を始め世界の被抑圧諸国・諸民族に対して侵略戦争をしているのだ。その米軍が攻撃されたら日本も参戦するというのは、日本も米軍と一体となって侵略戦争にのりだすということではないか。
総裁選の過程で小泉は江藤・亀井派と政策合意を行ったが、そこでも集団的自衛権の行使は重要課題としてとりあげられている。そこで亀井は、「韓国内で米軍が攻撃されれば、これを自衛隊が助けに行く」のも憲法解釈上正しいなどとぶちあげていたのである。
小泉は他方で「すぐ憲法解釈を変えろということではないが」などと言っている。これは、労働者人民が自衛隊の海外派兵=海外侵略=第二次大戦の繰り返しという歴史的現実的認識をもって、小泉のような見解をけっして許そうとしないからだ。だからこそ小泉は、自衛隊の侵略出兵は当然だがそれをストレートに言うと大反撃を受けるから、どうねじ伏せるかを「研究していく」「検討していく」と言っているのだ。
▼首相公選制
小泉はさらに首相公選制について、次のように言っている。
(g)「『憲法はこうすれば改正できる』と国民に理解されやすいのが首相公選制だ。ほかの条文は一切いじらない。具体的な改正で、改正手続きも鮮明になる」
(h)「首相公選制は総理を選ぶ権利を国会議員から一般国民に渡す政界の規制緩和と言える」
(i)「天皇が首相を任命すれば天皇制とも矛盾しない」
この小泉の主張も断じて見過ごせない。ここではまず何よりも(g)で述べている主張のとんでもない論理に注目する必要がある。憲法改正のペースに「国民」を引きずり込むのに、これが最もやりやすいのではないかと主張しているのだ。憲法改正とは本質的に九条破棄のことだ。これをやりやすくするためには首相公選制のための改正から始めるのがいいなどと、ふざけたことを言っている。
(h)で「総理を選ぶ権利を国会議員から一般国民に渡す」などと扇動しているが、これもデマゴギーそのものだ。首相公選制の主張の本質はむしろ逆だと言っていい。議会制民主主義というブルジョアジーに有利な統治形態でも、人民の怒りが積み重なって思うように支配階級の政治ができない現状を突破するために、首相公選制にしようというのだ。
これは一般的に言えば、有産階級であり、ありとあらゆる政治機構やマスコミ等々を牛耳っている支配階級が、扇動政治家をおしたてて大統領権限に近いものを持つ首相をつくり出し、巨大な権限を握って強引に反動政治をしようとするものである。いわゆるボナパルティズム的統治形態に接近するものだ。
今日の小泉の場合、この首相公選制をきわめて多重的な意味で提起している。ひとつは、根本的に小泉は、中曽根などと同様に、ボナパルティスト的・大統領的統治形態への志向を強く持っている。いまひとつは、改憲攻撃を直接間接に強化するために、改憲などタブーでもなんでもないという雰囲気をつくる絶好のテコとして持ち出していることである。
さらにいまひとつは、小泉の「構造改革」論のシンボルとして、小泉を世直しの「革命家」ででもあるかのような幻想を生み出す道具としても使っている。話が巨大なわりにさしあたっては人民大衆にとって「煙に巻かれるような話」である点も、この場合、小泉にとってメリットなのだ。いわば「構造改革」の反革命的具体性に踏み込むことは都議選と参院選の後までできるだけ引き延ばしつつ、首相公選制うんぬんの談義で「世直しムード」をかもし続けていこうとする面があるということだ。
▼有事法制
小泉はさらに、有事法制についてもどんどんやるべし、当然のことだといった扇動を行っている。
(j)「『治にいて乱を忘れず』は政治の要諦(ようてい)だ。平時に有事のことを考えるのが政治で最も大事だ」
(k)「いつの時点で法整備するかは今後の課題」
これは五月七日の所信表明演説でも繰り返されている文言である。また小泉は中谷防衛庁長官に対しても、就任早々、有事法制について「検討せよ」と特別に要請している。これはガイドライン関連法と一体のものとして、いよいよ自衛隊が実際に戦争する体制を打ち固めるために動き出すことを意味している。小泉の超反動性をいかんなく示すものだ。
小泉の靖国参拝と教科書攻撃は日帝のアジアへの再侵略宣言だ
教科書問題、靖国神社公式参拝、および教育改革についても小泉は、総裁選の過程や首相就任後の国会答弁などで、超反動的な発言をしている。
▼教科書問題
「つくる会」の歴史教科書について、小泉は言う。「日本の検定制度に合格した教科書に対して、中国や韓国が批判するのは自由だが、日本がそれに惑わされることはない」「大東亜戦争という呼称が当時のわが国での呼称だったことは歴史的事実」「審議を経て検定上認められたもの」「検定合格を取り消すことは考えられない」
ここには、小泉の帝国主義者、排外主義者としての本質・本音が全面的に表れている。重要なことは小泉には、戦前・戦中に日帝が朝鮮・中国(台湾)・アジア諸国に対して行った極悪きわまる植民地支配や侵略行為について、およそ「良心の痛み」のひとかけらもないということだ。自民党の政治家としても、この鈍感さは反革命的に突出している。
小泉の頭には、「国のため」「命をかけて戦った」日本軍ということしかないのだ。韓国併合が強制ではなく国際法的には「合法的」だったとか、日本の植民地支配にも「いい面もあった」とか、「歴史教科書は事実に誤りがないから合格した」などの言辞は絶対に許せない。
また、「皇民化政策」という言葉だけで、その内容が言語を奪い、姓名を奪い、文化を奪い、民族を奪うものであったことについて言及しないなどということが、歴史教育上許されるのか。日本軍軍隊慰安婦とされた女性が膨大に存在し、言語に絶する扱いを受けたことについて、ほおかむりする教科書でいったい真の教育が行われるとでも言うのか!
日本人―日本人民は、日帝の犯したこうした歴史的犯罪を直視し、それに加担させられてきた自己の歴史を学び、自己総括し、自己変革しようとせずに、どうしてアジア諸国人民と連帯することができるというのか。革共同は今こそ「七・七自己批判」の精神を鮮明にし、小泉反革命の打倒に革命党としての死活をかけて立ち上がらなければならない。
さらに、「大東亜戦争」の呼称の合理化にいたっては開いた口がふさがらない。その時代の公式の呼称だったことが合理化の理由になるのなら、当時は「聖戦」とも公式に言っていたのだ。小泉は、では十五年戦争・第二次大戦は「聖戦」だったと教科書に書いてもいいと言うのか。
「大東亜戦争」という呼称は単なる呼称ではなく、あの戦争が「大東亜共栄圏を建設するための聖戦であった」ということ、つまり正義に満ちた戦争だったと強弁するイデオロギーを表す呼称なのだ。小泉は結局、中国侵略戦争も第二次大戦もすべて肯定しているのだ。彼にとって問題なのは、ただ負けてしまったことでしかない。石原と百パーセント同一の思想である。
▼靖国神社参拝について
「首相になれば公式参拝する」
「尊い命を犠牲にして日本のために戦った戦没者たちに敬意と感謝の誠を捧げるのが政治家として当然」「いかなる批判があろうと必ず参拝する」
この小泉の言動を見過ごすことは断じてできない。「靖国神社」とは何か。日本の侵略戦争とその遂行のための国家神道的宗教機関であり、徹頭徹尾侵略の血にまみれた存在だ。この靖国神社への参拝とは、日帝が行った明治以来の戦争、十五年戦争、第二次大戦のすべてを「聖なるもの」として肯定すること以外の何ものも意味しない。
「尊い命を犠牲にして日本のために戦った」などという規定そのものが、アジア人民にとって、さらにまた日本人民にとってもけっして許すことのできない規定である。「日本のために」と称して実際には、アジア諸国人民を虐殺し、侵略し、植民地化する戦争が行われたのだ。「国のため」と言って実は、帝国主義ブルジョアジーのための戦争が行われたのだ。日本の労働者人民はそのために駆り出され、殺された。彼ら支配階級によって殺されたのである。
にもかかわらず、「尊い命を犠牲にした」と死者たちをまつりあげ、「英霊」化するのは、この帝国主義による戦争の犯罪的事実を隠蔽(いんぺい)し、あたかも「聖なるもの」であったかのようにひっくり返すものでしかない。
このことは、単に過去の問題ではない。過去をこのように扱うことは、これからも同じことをさらにくり返すことを狙っているということだ。要するに、これからの日本人は、あのときのように「命を犠牲」にして国のために戦えと言っているのだ。そして、そういう「国のため」の死をあたかも至高の価値があるもののように宣伝・扇動するのだ。
小泉の首相としての八・一五靖国神社公式参拝は、アジア諸国への再侵略宣言であり、日本人民への再度の総動員令の発動にほかならない。憲法第九条を破棄し、海外派兵をどんどんやる戦争国家に向かって国家の大改造を狙っているのが小泉にほかならない。
▼教育改革について
小泉は教育改革についてもきわめて反動的な主張を繰り出している。
「日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担う人材を育てるための教育改革に取り組む」「教育改革関連法の成立のために全力を尽くす」
小泉の教育政策の内容は、先に見た歴史教科書問題での超反動的発言にはっきり示されている。「つくる会」教科書で教育を行うべきだというのが小泉の本音である。また、小泉は徹底した国家主義者だ。戦後憲法に規定された基本的人権、個人の価値、市民的権利など、フランス革命以来のブルジョア的諸権利・諸価値についても小泉は一顧だにしない。小泉にあるのは「日本人」「日本人としての誇り」というものでしかない。
だが、「人間としての自覚と誇り」と対立的に強調される「日本人の誇り」とはいったい何か! 帝国主義的民族主義・愛国主義・排外主義・国粋主義以外の何ものでもない。侵略の歴史を隠蔽し、開き直って、「日本と日本人は偉大なり」としていくのが教育の目的だとは、とんでもないことだ。
日帝下の人民である日本人民にとって、最も重要なことは、こうした帝国主義的愛国主義・排外主義と必死に闘い、自己の排外主義的汚染を自覚的に反省し、変革し、「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱へ」の闘いの中で自己を階級的に形成していくことである。それ以外に、どんな人間的な道もない。
小泉の言う教育改革とは、帝国主義国家日本の「富国強兵」のためになるような、戦争国家日本のためになるような教育への「改革」にほかならない。小泉が教育改革関連法の今国会での成立強行に全力をあげていることに、怒りをたたきつけ、粉砕しよう。
第3章 都議選―参院選に勝利して 小泉・石原打倒へ進撃せよ
五月七日に行われた国会での小泉の所信表明は、こうした小泉反革命の全体像を表している。まず第一に小泉は、「新世紀維新の断行」をぶちあげ、「構造改革」という名の国家大改造計画に「恐れず、ひるまず、とらわれず」突き進むことを宣言した。「維新」とは戦後憲法体制の右側からの反革命的転覆を掲げる右翼のスローガンであり、「恐れず……」とは、労働者人民の怒りや反撃を恐れず、それを弾圧し圧殺して進むという意味以外の何ものでもない。
第二に、「構造改革なくして景気回復なし」と言い、経済・財政の改革、郵政事業民営化を含む行政改革、さらに「社会の構造改革」と称して教育改革と社会保障制度改革を打ち出している。経済・財政の改革とは、大倒産、大失業などかまわずにリストラを断行するということだ。「痛みを伴う」と言うが、痛み止めの対策など最初からない。
社会保障については「『給付は厚く、負担は軽く』というわけにはいきません」「年金、医療、介護については、『自助と自律の精神』を基本とする」と言っている。端的に言えば重負担・軽給付化だ。ブルジョアジーの言うリストラとはいつもこういうことなのだ!
第三に、外交・安保にはわざと少しの分量しか割かず、靖国神社参拝や集団的自衛権には直接言及していないが、これはペテンだ。日米関係については「日米安保体制が、より有効に機能するよう努めます」と言い、沖縄に対して「沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施」と言っている。これは米帝のこの間の対日政策からして、集団的自衛権発動への狙いをはっきりと秘めている。
また北方四島の帰属問題を前面化し、ナショナリズムと対ロシア政策のエスカレートを図っている。さらに、「いったん国家、国民に危機が迫った場合に、どういう体制を取るべきか検討を進めることは、政治の責任であると考えており、有事法制について、昨年の与党の考え方を十分に受け止め、検討を進めてまいります」とあえて強調している。
第四に、結びで「タウンミーティング」や「小泉内閣メールマガジン」など大衆扇動に訴える方針を打ち出し、「米百俵」の話を持ち出して人民に「痛みに耐えよ」とあらためて要求しているのだ。
扇動政治と対決し反革命の正体暴け
今日、わが革共同以外のすべての政治勢力が、小泉人気と小泉のむきだしの階級的イデオロギーの提示にたじろいでいる。この中で、われわれは断固として「小泉粉砕」を主張しきらなければならない。小泉反革命の暴露を真に階級的にやりぬくことに、今や日本階級闘争全体の命運がかかっている。
小泉反革命は、危機の帝国主義が帝国主義としてのイデオロギーを開き直り、振りかざして労働者人民に迫ってきていることにポイントがある。しかも「構造改革」という言い方、あるいは「維新」という言い方で、あたかもどでかい世直し運動のようにカモフラージュして! マスコミも賛美の大合唱をしている!
しかし、くり返して言うが、小泉の「構造改革」「維新」とは、第一に、経済と生活の面では大失業・リストラ・賃下げであり、権利の剥奪(はくだつ)であり、増税と社会福祉のカットである。小泉の言う「痛みに耐えよ」とは労働者人民への痛みの強制でしかない。
第二に、小泉のこの反革命は、世界大恐慌情勢の切迫の中で、実際には日帝の経済危機――不況、恐慌の激化、爆発をもたらすものでしかない。その結果、日帝はもっと徹底して経済・財政的にピンチになる。そして、労働者人民に対して一層凶暴化して襲いかかることになる。
第三に、これがある意味で決定的だが、小泉反革命はまさにこうした帝国主義の危機を戦争国家化へと大きくもっていくことに本質があるということだ。
それは以下の三つの理由から言える。
ひとつは、日帝の政治支配の危機、イデオロギーの危機、社会の危機の進行であり、日帝は結局のところ、帝国主義的民族主義(ナショナリズム)、愛国主義、排外主義をあおることでその突破を図る以外にないということである。
いまひとつは、不況の果てしない激化と日銀の超金融緩和政策に今日の経済危機の核心問題があり、超デフレか超インフレかの間で大動揺を引き起こしていることだ。ここから出てくるのは、結局は大土木事業や軍需産業でしかない。都知事・石原の「ミサイル開発論」や新たな「十兆円公共事業」のぶち上げは、その最先兵となるものだ。
さらにいまひとつ決定的なことは、帝国主義間争闘戦の激化と世界経済のブロック化が急進展し始めていることだ。また、その軍事化である。この点で、この間の米帝ブッシュ政権の動きは重大である。ブッシュは明白に米帝のブロック化政策を核心にすえて、EUを抑え、日帝を抑えて、その世界政策を進めようとしている。この間の中国に対する戦争挑発や対北朝鮮政策の見直し、ミサイル防衛計画のごり押し、中東での新たな侵略戦争政策の強行、通商政策での対日争闘戦の決定的エスカレーションなどは、そうした米帝の意思の露骨な現れだ。
したがって、小泉反革命の本質は、体制的危機・経済危機の泥沼にあえぐ日帝が、労働者人民に一切の犠牲を押しつけ、日帝の大銀行・大企業(金融独占資本)をなんとかして延命させようとするものである。しかもそうした小泉の経済・財政政策は、資本主義・帝国主義の基本矛盾の爆発としてある大恐慌的危機への突入と進行の中で、そのさらなる爆発的激化を引き起こすだけだ。結局は、他の帝国主義「大国」との争闘戦に勝ちぬくためとして、また経済危機のりきりのために、軍需経済と戦争への道に再び日本を引きずり込むものなのだ。
人民に犠牲を強制し、民主主義を破壊して、逆に国家主義をあおり、ついには再び侵略戦争、帝国主義戦争へと日本を引きずり込むことが、小泉反革命の本質であり、階級的使命である。小泉にだまされるな! 小泉反革命の本質を見抜け! 小泉打倒、小泉=石原打倒! 今こそこのことを、恐れず、ひるまず、すべての労働者人民に訴えて、ともに総決起しよう。都議選―参院選決戦勝利へ突き進もう。
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週刊『前進』(2010号5面1)
名護新基地 2600メートルの巨大軍事基地 リーフ内埋め立てが狙い
政府提示8法案弾劾する
普天間基地の代替施設の建設工法などを検討する政府と沖縄県との「代替施設協議会」が六月八日に首相官邸で開かれ、政府側が初めて八つの建設案を提示した。三工法八案という代替案は、いずれも名護市を始め沖縄に犠牲を集中することで巨大な新鋭基地を建設し、沖縄の永久基地化、固定化を進めるものである。
われわれは満腔(まんこう)の怒りをもってこれを弾劾し、地元沖縄の闘いと連帯して、名護新基地建設阻止の全国的な闘いを巻き起こさなければならない。
最大の問題は全長二千六百b、幅七百三十b、面積二百fという巨大な軍事基地であることだ。戦闘攻撃機が発着する米軍岩国基地、厚木基地に匹敵する規模である。これは、九七年に政府の普天間飛行場移設対策本部がまとめた「海上ヘリポート基本案」の「千三百bの滑走路」「撤去可能な海上ヘリポート」という案の倍の大きさだ。九七年十二月の名護市民投票では、この「千三百bへリポート」が圧倒的多数で否定されたのだ。今回の政府案はとんでもないものだ。
政府が示した八案とその工費、建設期間は次のとおりである。いずれも騒音や自然破壊で住民に大打撃を与えるものだ。
(a)埋め立て方式五案
@リーフ(さんご礁)内側、千四百億円、八年
Aリーフ上A、千八百億円、八・五年
Bリーフ上B、三千六百億円、九・五年
Cリーフ上C、二千六百億円、九・五年
Dリーフ外側、九千七百億円、十八・五年
(b)くい打ち桟橋方式二案
Eリーフ内側、四千八百億円、六年
Fリーフ外側、一兆円、七・五年
(c)ポンツーン(浮き桟橋)方式
Gリーフ外側、八千六百億円、九年
この提案にはそれぞれの案について「辺野古集落からの距離」「サンゴへの影響」や、建造後の「年間維持管理費」などが盛り込まれている。これらを検討すれば、政府の基本計画のうちの半数を占めるリーフ上か内側の埋め立て案が本命であることは明らかだ。
例えばサンゴや藻場の消失面積では@〜C案が約二十六〜六十一fであるのに対し、D〜G案では八十四〜百九十八fであり、維持管理費では@〜C案が約七〜八千万円なのに対し、D〜G案は一・三〜七・七億円にもなる。しかも埋め立て以外だと他に防食対策等更新費約四十〜四百四十億円が必要になる。何よりも地元土建業者を買収するためには埋め立て方式でないと意味がない。だが埋め立てとは半永久的な構築物であり、稲嶺知事などがペテン的に唱える「十五年期限」とも相入れない。圧倒的多数の住民の利害とは絶対に非和解なのだ。
この政府案の提示に沖縄人民の怒りが爆発している。ヘリ基地反対協の仲村善幸事務局長は「SACOの合意をはるかに上回る巨大軍事基地だ。半永久的な基地の押しつけが迫っている」と弾劾している。また基地賛成派からさえ「十五年問題が先決だ」との声や「子々孫々に引き継ぐリーフ内、リーフ上の建設はとんでもない。リーフは自然の宝だ。人間がつくれるものでもないし、復元もできない」(久辺地域振興促進協議会の安里治正会長)という声が上がっている。
こうした政府提示の八案のすべてが、名護市民投票の結果を二重三重に踏みにじるものであり、絶対に認められない。沖縄・名護の闘いと結んで、日本人民全体の課題として、新基地建設阻止へ闘いぬこう。
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週刊『前進』(2010号5面2)
2001年日誌 阻もう! 改憲=戦争への動き 6月6日〜12日
米帝北朝鮮政策見直しを完了
司法改革審議会が最終答申
●米大統領が北朝鮮政策見直しを発表 ブッシュ米大統領は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する政策見直しを完了し、核・ミサイル・通常戦力削減の問題で北朝鮮の全面屈服を要求する厳しい条件を突きつけ、米朝協議を再開する方針を示した。(6日)
●北朝鮮高官の入国を政府が拒む 外務省は「つくる会」教科書を批判する集会に参加するために滞在申請した北朝鮮労働党関係者の入国を拒否した。(6日)
●キャンプ・コートニーで鉛汚染 沖縄県具志川市の海兵隊基地キャンプ・コートニーで実弾クレー射撃による鉛汚染が確認されていたことが米軍内部資料で明らかになった。(7日)
●自民党国家戦略本部が初会合 自民党国家戦略本部が初会合を開き、戦争国家化を狙って「長期的視点で国家の戦略を考える」と小泉首相があいさつ、「内閣官房にも国家戦略を担当する中枢の設置を」(中曽根)などの意見が出た。同本部は財政再建、都市再生、国際貢献など五項目について年内に中間報告を出す。(7日)
●防衛庁長官が「PKF派遣」へ見解 中谷元・防衛庁長官はTBSの番組で、国連平和維持軍(PKF)本体業務への参加について「国連平和維持活動(PKO)参加五原則見直しができない場合は、ケース・バイ・ケースで派遣するしかない」と述べた。(7日)
●自民党幹事長「PKO5原則見直しを」 自民党の山崎拓幹事長は都内で講演し、PKO参加五原則について「与党三党間でまだ意見調整ができていないが、私は見直すべき時期が来たと考える」と発言した。(8日)
●名護新基地の政府案を提示 普天間基地の移設に伴う、代替施設協議会の第七回会合が首相官邸で開かれ、防衛庁は名護新基地について三工法八案を提示した。いずれも総延長二千六百bで、九七年に発表され名護市民投票で否定された「海上へリポート基本案」の二倍という巨大なもの。@埋め立て五案Aくい式桟橋二案Bポンツーン式一案だが、政府は埋め立て案を重視している。(8日)
●米が来月ミサイル防衛実験 米国防総省当局者はミサイル防衛構想の迎撃実験を七月後半に行う方針を明らかにした。ワシントン・ポスト紙によるとブッシュ政権はミサイル防衛網を二〇〇四年中にも配備する計画を進めている。(8日)
●首相が刑法改悪の意向
小泉首相はNHK番組収録で、大阪の校内児童殺傷事件について「法的な不備と医療の点で対応しなければならない問題が出ている」「至急、専門家の意見を聞きながら不備を正していかなければならない」と、保安処分の導入などを念頭に刑法や精神保健福祉法の改悪を検討する意向を示した。(9日)
●ミサイル防衛で日米高官協議を 米国防総省系のシンクタンク・ランド研究所はブッシュ政権が進めるミサイル防衛構想に関して日本国内での政治的コンセンサスが不十分であるとの懸念から、早期に日米高官協議の開催が必要との報告書を発表した。(10日)
●文科省が国立大の大幅削減 文部科学省は「大学の構造改革プラン」を公表し、競争原理を徹底し国公私立を問わず評価の高い三十大学に予算を重点配分していく方針を明らかにした。同プランはまた、国立大学の大幅削減を目指し、再編・統合を大胆に進めると強調している。(11日)
●国際連帯で文科省を包囲
日本、韓国、中国の市民団体など約五百人が「つくる会」教科書を検定合格させた文科省を「人間の鎖」で取り囲んだ。翌日には世界七十一カ国百二十五都市での一斉行動の一環として、文科省前や国会前で抗議が行われた。(11日)
●衆院憲法調査会会長「皇紀を明確に」 衆院憲法調査会の中山太郎会長は都内で開かれた会合で「日本は天皇家を誇りとし、統合の象徴としている。皇紀を明確にしないといけない」と述べた。(11日)
●海自が多国間掃海訓練に参加 海上自衛隊と米国、インドネシアなど十五カ国の海軍が参加する「第一回西太平洋掃海訓練」がシンガポールで始まった。アジアで大規模な多国間の掃海訓練が行われるのは初めてで、海自は掃海艦「やえやま」など三隻、隊員約二百三十人を派遣。(11日)
●司法改革審が最終答申
政府の司法改革審議会(会長・佐藤幸治近畿大教授)
が、@司法試験合格者数の三倍化A日本版ロースクール導入B刑事裁判への「裁判員制」の創設C弁護費用の敗訴者負担などを提案した最終意見書を小泉首相に提出した。政府は三年以内の法整備を目指し立法化作業に入る。(12日)
●法相が措置入院見直し
森山真弓法相は衆院法務委員会で、重大な罪を犯した「精神障害者」の処遇に関連し、措置入院制度の見直しを含めた精神保健福祉法の改悪が必要との考えを明らかにした。(12日)
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週刊『前進』(2010号6面1)
水嶋同志は百パーセント無実だ! 東京地裁の勾留決定弾劾
六月十一日、警視庁公安部は、五月二十二日に兵庫県警によって別件で不当逮捕・勾留されていた水嶋秀樹同志を再逮捕した。逮捕容疑は、一九八八年九月二十一日の千葉県収用委員会会長せん滅戦闘という百パーセントのデッチあげだ。六月十四日、東京地裁は不当にも水嶋同志の勾留を決定した。この暴挙を弾劾し、無実の水嶋同志を即刻釈放することを要求する。
水嶋同志は、「私は無実だ。九・二一とは何の関係もない。アリバイもある。私を写真特定したという『マサイ』なる人を私はまったく知らない」と無実を主張している。
警視庁は、水嶋同志を九・二一戦闘の「指揮者」であるとして九〇年三月以来、不当にも指名手配を続けてきたのである。しかし、戦闘に何ひとつ関与していない水嶋同志に、「証拠」などあるわけがない。
九・二一戦闘とまったく無関係の水嶋同志を指名手配するために、日帝・警視庁は何を行ったのか。
八九年十一月に別件で逮捕された正井利明が屈服・転向し、九・二一戦闘について自供した。その際、転向分子・正井は「共犯者」について「A」「丙」等という記号を用いた供述調書を作成したが、正井自身は、共犯者を氏名でも写真でも特定していないと証言している。写真特定に関する供述調書もない。もちろん「共犯者A」が水嶋同志であるという物証もない。
存在するのは、正井を取り調べた検察官・高田憲一(現在は弁護士)と警察官・根塚英樹の「正井がAと丙を写真で特定した」という伝聞供述のみなのだ。ここで検察官と警察官は、正井が写真で特定したかのように「写真特定」をねつ造し、「A」が水嶋同志、「丙」が神藤猛雄同志というデッチあげのためのデッチあげを行い、指名手配を行ったのだ。
このような違法な捜査が認められるならば、警察官が「犯人だ」と決めれば誰でも指名手配し、逮捕することができるのであり、絶対に許されない。
だから当然にも、水嶋同志と同じデッチあげ攻撃を受けて「共犯者」として逮捕された神藤同志は、東京地裁で無罪判決をかちとった。だが控訴審の東京高裁は、裁判の論理を踏み越えて「過激派に人権はない」という政治裁判を行い、逆転有罪判決を下した。人権を守るべき裁判官の権力犯罪として徹底的に断罪しなければならない。
「私は9・21戦闘と無関係だ。マサイなる人と面識はない」
@そもそも七四年一・二四カクマルせん滅戦闘の件で指名手配を受けていた水嶋同志が「九・二一事件」に関与しうるはずがない。さらに、水嶋同志はただの一度も正井に会ったことなどないのだ。その正井がどうして水嶋同志を写真特定できるというのか。正井を連れてきて水嶋同志に会わせてみよ。ことの真偽は一瞬で決着がつくのだ。
Aだから当然にも、正井の「供述」と現実の水嶋同志とは大きく食い違っている。正井の供述調書と神藤同志の一審裁判で証人として出廷した高田憲一元検事の証言によれば、「A」は「身長は百七十aくらい、骨太で筋肉隆々、がっちりとした体格、頭頂部が薄い、眼鏡をかけている」ということになる。
ところが、水嶋同志は、身長百六十五aであり、筋肉隆々とは対称的なやせ型であり、眼鏡をかけたことはない。頭頂部も薄くはないのだ。このように、正井の「供述」した人物と水嶋同志の身体的特徴は明らかに異なっており、別人であることは明らかである。
Bさらに正井は、八九年十二月十九日付の検面調書によると、「Aは、そのバッティングの様子を見る限りでは、力があって、当たればボールは飛ぶものの野球経験があるとは思えませんでした」と供述している。
水嶋同志は中学時代は野球部に在籍し、高校卒業後は神奈川県の郵便局に勤務したが、同じ職場の人たちが「水嶋さんは、よく野球をしており非常にうまかった」と証言しているのだ。
このように、正井が供述している「A」が水嶋同志ではなく、完全に別人であることは明らかだ。
水嶋同志は百パーセント無実だ。日帝・国家権力の不当弾圧を大衆的怒りで粉砕しつくし、水嶋同志を直ちに奪還しよう!
怒りの記者会見
六月十四日、革共同と革共同救対部が記者会見を行い、「水嶋同志は無実であり、事件には一切関与していない。アリバイもある。不当なデッチあげをやめ、直ちに釈放すべきだ」と要求した。さらに、東京地裁による勾留決定を弾劾し、無実の水嶋同志を全力で奪還するために総力で闘うことを宣言した。
集まった記者は、あらためて日帝・国家権力の不当弾圧の詳細な実態に触れ、驚きの声を上げた。活発な質疑応答が交わされた。
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週刊『前進』(2010号6面2)
橋本裁判 全面勝利の展望(上)
臭気選別のデタラメさが職権検証選別でも明白に
九三年四月の天皇訪沖に対する革命軍の火炎ゲリラ戦闘への報復的デッチあげ弾圧と闘う橋本利昭同志の裁判闘争は、ついに全面的勝利の歴史的展望を切り開いた。四月二十五日、控訴審第一一回公判は、本年三月二十二日実施の大阪高裁第二刑事部の職権による検証選別の結果に基づく、弁護側、検察側双方の弁論を行い、結審した。判決公判は八月三十一日(金)午前十時三十分開廷と決定した。日帝・小泉政権の反動的巻き返し策動を一切許さず、控訴棄却=無罪確定戦取へ全党の総決起を訴える。
訓練士の証言破綻の救済を狙い検証強行
昨年十一月十五日、第一〇回公判において大阪高裁第二刑事部は、弁護側の論理を尽くした控訴棄却の訴えを無視し、検察側証人の訓練士Tの証人尋問が全面破産したことを救済するために、訓練士Tおよび検察官が要求した検証選別を受け入れて、職権による検証選別実施を決定した。それ以降、実施方法などをめぐる攻防が続いたが、公判は検証選別結果を踏まえてということで、今回の四月二十五日、第一一回公判まで開廷されなかった。
この検証選別はその実施目的があいまいであることを始め、刑事訴訟法の規定を逸脱するやり方で、実務上も強引な方法での検証実施決定であった。
大阪高裁第二刑事部作成の検証調書によると、検証目的は、「一定の条件下での犬の臭気選別の威力を明らかにする」というものである。しかしながら、この検証に使役する選別犬は、原審選別に使役した犬とは犬種・年齢も違うまったく別のものである。さらに使用する臭気自体も原審選別とはまったく無関係なもので、裁判所によって作成されたものである。このようなものであるから、原審選別の当否を検証するものではまったくなかった。
したがって、この検証によっては、@検察官(京都府警・訓練士T)の「期待」どおりの選別結果が仮に出たとしても、「何ら原審選別の正当性を担保することができないもの」であった。A逆に、検察官の「期待」とは正反対の結果が出れば、「原審選別はいうに及ばず、訓練士T(および京都府警)の実施する選別はすべて信用性が存在しない」という性格を持つものとなったのである。
15回の選別でも一度も成功せず
検証選別は、当初予定の三月十五日の当日になって、訓練士Tの「降雨のために、選別条件が万全でない」という主張で、一週間延期された。三月十五日は、朝方若干の降雨があったが、実施予定時間の午前十時過ぎには雨は上がり、晴天となったけれども、大阪高裁第二刑事部は、訓練士Tの主張をいれて延期を決定したのである。
三月二十二日に行われた検証選別は、訓練士Tによる予備選別の結果、犬の体調および天候も良好であり、選別可能であるという申告に基づいて、実施された。
選別は、大阪高裁第二刑事部の裁判長が、臭気の組み合わせを事前に決定し、それをカードに記載し、封筒に密封した組み合わせに基づいて実施した。このために、検証に立ち会った裁判官、書記官、弁護人・被告人、および検察官・警察官(検察官の補助者として立ち会った京都府警公安三課員)、さらに訓練士Tと臭布の配列補助者としての京都府警本部刑事部鑑識課員などの誰もが、個別の選別結果をその選別時には、「対照臭」の性格や配置場所はもちろん、結果が成功かどうかの判断も不可能な形式で実施した。
十五回の選別を行い、その結果、犬は一度も臭布を「持来」(警察用語で、犬が布をくわえて訓練士の元に帰ることをいう)することができなかった。
この十五回のうちには、犬がいったん臭布をくわえたがすぐに落とし、結局何もくわえることなく帰ったというケースが四回ある。そのいったんくわえた布は四回とも「誘惑臭(布)」であった。また「対照臭(布)」のない、いわゆる「ゼロ選別」が三回あった。
以上の結果は、検察官(京都府警と訓練士T)の主張と期待に反する結果であった。臭気選別結果を警察権力の意のままに操作する方法として、われわれが原審以来主張し続けてきた、@「濃度コントラスト論」(注1)、A「指図・誘導論」(注2)、B「外部臭論」(注3)のすべてを裏付けるものだったのだ。
検事の証拠請求の却下かちとる
公判における弁論は、弁護側、検察側から行われたが、検察官は前記の検証選別の結果に大打撃を受けて、犬が一回も「持来」できなかったことに対する理由にならぬ弁解をするのみで、言うに事欠いて、自らが要求した検証を「無意味であった」と主張するなど支離滅裂であった。
弁護側弁論では、検証選別結果の分析を踏まえて、原審以来の弁護側主張の正しさが裏付けられたものとして検証結果の意味を全面的に明らかにした。犬の臭気選別を刑事裁判の有罪認定に使用できるとした八七年三月三日の最高裁第一小法廷決定が、もはや判例としての価値を有しないことを明らかにした上で、大阪高裁第二刑事部に対して、直ちに控訴棄却の判決を出すべきであると要求した。
この弁論を受けて、大阪高裁第二刑事部は、証拠整理を行い、検察官請求の「新選別」(原審判決後に検察側が行った実験選別のことで、これは刑訴法の精神に違反する証拠作成・請求である)に関する書証・ビデオなどの百二十数点に及ぶ証拠を含め、検察官が取り調べを請求していたすべての証拠請求を却下した。そして、結審を宣言し、判決期日を八月三十一日(金)の午前十時三十分開廷としたのである。
臭気選別=デッチあげ手段に最後的断
冤罪ねつ造のために臭気選別を使えなくなるという危機感から強行された検察官の控訴に対して、被告・弁護団、党(救対)は、徹底的に控訴の不当・不法性を明らかにした。特に刑事訴訟法の精神に反する新証拠(原審判決後に作成した「新選別」)の請求を弾劾し、証拠採用を阻止した。
訓練士のウソを科学的に粉砕
大阪高裁第二刑事部が検察官を救済する目的で採用した犬の訓練士Tに対する証人尋問は、控訴審における最大の決戦局面だった。
被告・弁護側は、訓練士Tの過去の言動を入手しうる限りすべて入手し、その分析を踏まえた攻勢的な尋問により、訓練士Tの証言のデタラメさ、自己矛盾性を全面的に暴き出した。その結果、訓練士Tは、口からでまかせの「(証言の矛盾は認めるが)選別を実地に見てもらえば、私の言っていることの正しさが分かります」という主張をするに至った。
この訓練士Tの主張を受けた検察官の検証選別請求に対して、われわれは、原審判決の地平と控訴審での訓練士Tに対する証人尋問の地平に立って、検証選別の不必要性を全面的に明らかにすると同時に、万一、大阪高裁第二刑事部が職権で検証選別を強行する場合には、クレバー・ハンス現象(注4)の回避と混合臭を原臭とすることの不可欠性を第二刑事部に突きつけ、いかなる逃げ道も許さない闘いを貫徹したのである。この結果、高裁第二刑事部にクレバー・ハンス現象の回避と原臭を混合臭とするという形式を検証選別の不可欠の前提として認めさせたのである。
これらのことは、検証選別を科学的に取り扱うならば、当然のことであるが、日本の現在の裁判所では、この当然のことがまったくと言っていいほど行われていないのだ。(つづく)
(注1)濃度のコントラスト論
橋本同志の持ち物のニオイを吸着させた布を「対照臭」としたと警察が称する選別では、警察は、「移行臭」を作成する際の同封期間を、橋本同志のものを「誘惑臭」より長くすることによって、濃度に違いをつけていた。同封期間は12倍から600倍も違っている。
「対照臭」とダミーの「誘惑臭」の濃度が違うと、イヌは五つ並べた臭布のうち一つだけ濃い「対照臭」を持来する。逆に、濃度を同じにすれば何も持来しない仕組みである。閾値(いきち)論から、ニオイの質の認知は困難であるが、ニオイの強さ・濃度の違いの識別は容易である。また、イヌの短期記憶はせいぜい十数秒とされている。数十秒間記憶を保持し、次々と新しいニオイと比較・同定し、その一つを「原臭」と同じものとして再認することはきわめて困難である。逆に、並んだ布を比較して、一つだけ異なったものを選別するほうがはるかに容易である。
本件の臭気選別の指導手である竹本昌生は、濃度コントラストによって選別させる方法でもっぱらイヌを訓練している。しかし事件選別を行わない訓練士が書いた論文には、訓練で濃度コントラストを手掛かりにすることの誤りと危険性が早くから指摘されていた。
(注2)指図・誘導論
指導手は、イヌが選別から帰ったところで、臭布の引っ張り合いをする。したがって、右手の「原臭布」をポケットに収納すれば、イヌがくわえている臭布で引っ張り合いを行うので持来せよの指示となる。収納行動をしなければ、「原臭布」で引っ張り合いをするので、今くわえている臭布は落とせの指示となる。収納行動があって初めてイヌは持来行動に移っている。他方、持来させたくない布をくわえたときはすべて、指導手は右手を下げたままにして、くわえた布をイヌに落とさせている。これには例外がないことがビデオの分析から証明された。
さらに、カメラのシャッター音、アングル、臭布の差しこむ深さ、固さ、布の広げかたで、「対照臭」と「誘惑臭」に差をつけること、および配列中イヌが振り返って見るカンニング(本件では99%の選別で起こっている)で、イヌおよび指導手に手掛かりを与えていることも、本件では証明されている。
(注3)外部臭論
遺留品や押収物には、化粧品・食料品・日用品あるいは物品そのもののニオイが付着している。またこれらを採取・保管する過程で、関与する捜査員、「ビニール」袋、およびダンボールなどのニオイが付着する。これにより、臭気選別の対象となる人のニオイ以外のニオイによる誤った選別が起きる。
イヌにとって、人の体臭に含まれる脂肪酸の構成比率のわずかな違いを嗅ぎ分けるよりも、外部臭の違いに反応するほうが容易である。「ビニール」袋の使い方によって脂肪酸の種類・濃度が変わり、選別の間違いの原因になるだけでなく、系統的なねつ造の手段にもなる。しかも本件では「対照臭」と「誘惑臭」の「移行臭」作成に、違った大きさ、規格の「ビニール」袋を使うことにより、イヌに「対照臭」を発見、持来させた可能性があることが明らかになっている。
(注4)クレバー・ハンス現象について
動物行動学・動物心理学・動物実験などで重視される、クレバー・ハンス現象の回避措置を取らない現行の臭気選別は、サーカスの学者イヌの芸や動物を使ったトリック・プレーと変わらない。クレバー(賢い)・ハンスとは、今世紀初頭、ひづめで床をたたいて、平方根・立方根の計算ができると有名になったウマである。当時のドイツの動物学者・心理学者・サーカスの団長・調教師の第一人者も、その秘密を解明できなかった。ところがプフングストという心理学者が、ウマと自分だけで部屋に閉じこもって、問題を書いたカードを、自分は見ずに、ウマに見せたところ、このウマは答えの数が来てもやめずに、延々と床をたたきつづけた。結局、ハンスは、飼い主や周りの人の動作・表情・呼吸の微妙な変化を察知して、そこで床をたたくのをやめていたのである。今日このことから、動物の行動実験では、答えを知った人間が動物の前に姿を見せて立ち会った動物実験には客観性、信用性は認められない。
ベッカーによるイヌの嗅覚実験でも、薄い肉汁入りの皿を二者択一で選ばせる実験で、実験者が答えを知っていると80%ないし88%であったが、答えを知らないと50%前後の正解率に下がるとの報告がある。
人の動きを手掛かりとした動物の反応と実験の偏りを防ぐためには、動物だけでなく、実験者自身が答えを知らないようにする二重の「目隠し実験法」が実施される。臭気選別で、飼い主または指導手の意識的行動だけを問題としてきた従来の「イヌの迎合性」論議は間違っている。なぜなら、@実験者の意識的のみならず無意識的な行動も、動物に対する合図となる、A飼主や訓練士など親しい者に限らず、観衆や聴衆など初めて出会った者の動作や表情からも動物は、影響を受ける、の2点が指摘されなければならないからである。今日の科学的な動物の行動実験では、訓練過程から試行中は人が一切動物の前に姿を現さず、刺激呈示も結果のモニターもすべて自動化・遠隔化して行う。
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週刊『前進』(2010号6面3)
迎賓館・横田爆取裁判
検察立証、破産し終了 裁判所が追加請求を却下
“保釈拒否もう許さぬ”
六月十一日、迎賓館・横田爆取デッチあげ裁判の第一五五回公判が開かれた。
今回の公判で、八八年九月の第一回公判以来十二年九カ月にわたる検察側立証がついに終了した。
検事は八七年、須賀武敏同志、十亀弘史同志、板垣宏同志を八六年の迎賓館と米軍横田基地へのロケット弾戦闘に関与したとしてデッチあげ起訴した。だが、この超長期の裁判によって三同志が両戦闘に関与したことが立証できたのか。断じて否である。
公判に先立ち裁判所は、九三年に公判開始後五年もたってから検事が追加請求した証拠、証人の取り調べ請求を全部却下した。この追加請求証拠は、被告・弁護団の「三同志と両戦闘を結びつけるものは何もない。どこに証拠があるのか」という追及に追い詰められ、岩手借家押収物のみでは立証の破綻(はたん)に陥ると危惧(きぐ)した検事が、迎賓館・横田事件とは何の関係もない「証拠」をかき集めて追加請求したものである。いわく「八五年に三人が金沢にいて砲弾の信管を製作していた」「八六年二月に静岡の山中で砲弾の発射実験を行った」「奈良県のアジトから発射実験に関するメモが発見された」等々、デッチあげの上塗りをするための、何の根拠もない代物である。だが裁判所は今日まで検事のこのデタラメな「立証計画」を擁護し、維持し続けてきたのである。
さらに、なんと九九年になって突然、押収関係の立証もなしに岩手押収物であるとして追加請求したメモとその筆跡鑑定書をも、当然ながら却下した。
同時に裁判所は、九八年以来審理が行われてきた鑑定書、実況見分調書等の証拠採用決定を行った。これらの鑑定書類は岩手押収物と事件現場の遺留物とが「一致する」とか、岩手押収物の中に信管作成等の残材が「存在する」など、デッチあげの根幹をなすものである。科捜研という権力機関が捜査側の注文どおりに「鑑定」した鑑定書類をそっくり証拠採用したことを怒りをもって弾劾する。
さらに、ウソが暴かれるのを恐れて幅田に「言いたくありません」と証言拒否の茶番を演じさせた「幅田供述調書」をも、「違法ではない」と強弁し証拠採用したのは怒りに耐えない。
被告・弁護団は、裁判所の証拠採用を弾劾し、同時に検事の立証崩壊を明らかにして、即時無罪判決を要求した。
「追加請求証拠について、検事はその証拠調べをやれば、ますますわれわれの無実の証明をすることになると恐れて投げ捨てたのだ。検察立証の最後的自己崩壊であり敗北宣言だ。われわれの無実・無罪は今こそ鮮明である。これ以上の勾留は一日も許されない」
「検事はいったい何を立証したのか。多数の者と共謀し……と言うが、相手のいない共謀は漫画だ。岩手と現場の鑑定による結びつけは不可能だ」
また、裁判所が却下した証拠に付随する証拠を間違って「採用」していることを指摘し、撤回させた。これもけっして小さなことではない。裁判所が証拠の内容を真剣に吟味せずに予断によって判断していることの自己暴露である。
続いて、採用した証拠の証拠調べの手続きが行われ、最後に、検事はこれからさらに立証するものはないと言明して、検察官立証の終了が確定した。裁判長は次回は弁護側立証とし期日は別途指定するとして閉廷しようとしたが、三被告は「待て!」とそれを押しとどめ、「検察官立証が終了した以上、もはやわれわれを勾留し続ける理由はどこにもない。本日この場で直ちに保釈を決定せよ」と断固として迫った。
検察官立証は終了した。しかし、岩手押収物では三同志と迎賓館・横田の両戦闘を結びつけることなど絶対にできないのだ。検事は立証の破産を覆い隠すために追加請求した証拠もはぎ取られ、九三年の危機の時点に舞い戻ったのだ。「直接証拠はないが状況証拠の積み重ねで立証する」と、いかにも審理を進めれば明らかになるかのような演出をして超長期の検察官立証を重ねてきた検事と、それを追認してきた裁判所の責任は重大である。その間三同志を勾留したまま、超長期の勾留は違法ではないと開き直ってきた検事、裁判所を許すことはできない。
今すぐ三同志の保釈奪還をかちとらなければならない。さらに今後開始される弁護側立証で徹底的に検察官立証を粉砕し尽くし、三同志の無罪奪還をかちとらなければならない。
「10万人署名」 即時保釈を地裁に要求
六月六日、「十万人保釈署名運動」が地裁刑事一一部に対する申し入れを行った。須賀、十亀、板垣同志が保釈請求をしてから実に七カ月がたった。家族を先頭に呼びかけ人、賛同人を中心に十五人が参加した。
応対した訟廷管理官に、「申入書」とともに保釈要望署名千二百六十三筆を提出した。家族は「裁判所は今こそ三人の即時保釈を決断すべきだ」「一切値引きせずに裁判長に伝えてほしい」と詰め寄った。
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