ZENSHIN 2001/03/12(No1996
p08)
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週刊『前進』(1996号3面1)
けしば区議の杉並区議会一般質問
侵略賛美の「教科書」を弾劾 学校給食の民託化は許さぬ
石原都政・山田区政を追及 介護保険 自己負担額助成の成果
二月二十二日、杉並区議会本会議で都政を革新する会のけしば誠一議員が一般質問に立った。けしば議員は九十分にわたる質疑で堂々の論陣を張り、支持率六・五%の危機にのたうつ森政権、その改憲・教育改革攻撃の先兵である石原慎太郎都知事を厳しく弾劾し、石原の同調者=杉並区政・山田宏区長を鋭く追及した。傍聴席に駆けつけた多数の区民、労働者とともに闘いぬいた、けしば議員の闘いをレポートする。
石原擁護の山田区長断罪 “憲法破棄訴える石原の教育政策は危険だ”
午前十時、本会議開会、けしば区議の一般質問が始まった。けしば議員の凛(りん)とした声が議場に響き、傍聴者は身を乗り出して聞き入った。(写真)
けしば区議はまず、KSD汚職、米原子力潜水艦による水産高実習船衝突・沈没事件などに対する日帝・森政権の対応を批判、「基地・軍隊、日米安保とガイドラインは民衆の生命を脅かし、簡単に奪い去るものであることが突き出された。一方、国会の憲法調査会に参考人として登場した石原知事は自治体の首長として憲法破棄を訴えた。山田区長の見解を伺いたい」と迫った。
さらに通常国会に提出されようとしている教育関連六法案の内容が、@奉仕活動の義務化、A能力主義の強化、B「不適格教員」の免職・転職制度などであると弾劾。石原知事が、一月一日付産経新聞のインタビューで「どうやってよい意味で周りから恐れられる国になるか、……他の子供は脱落しても構わないからすごいエリートを育てる……極めてすごい人材を作ろうと思ったら、子供の自由を束縛してもいい」と言い切ったことを紹介。「石原都政の『心の東京革命』に示された教育政策は、森政権の教育基本法改悪、教育の国家主義的統制を先導する危険な方向であるが、この点、区長の見解を伺う」と追及した。
さらに、けしば区議は戦争賛美の教科書採択を狙う山田区長が、三人の右翼的人物を教育委員に任命しようとして、おおもめにもめた昨年十一月区議会に言及、事前公表もなしという区長独断の問題性とその意図をあらためて追及した。
山田区長は、現在大問題になっている西尾幹二や藤岡信勝ら「新しい歴史教科書をつくる会」作成・扶桑社発行の検定申請用図書(白表紙本)を杉並区の教科書として採択させるために、右翼的な人物を教育委員として任命したのだ。
さらにけしば議員は、都教委からの二月八日付の教育長通知の教科書の調査研究の項目で、「『……わが国の文化と伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに、わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる』……等を最もよく踏まえている教科書を選定するなどの観点」と述べている点を指摘、「つくる会の教科書を採択せよとの通知と判断せざるを得ないが、区はどのように認識しているのか」とただした。
そして「このつくる会の教科書は、『歴史は科学ではない』として神話の神武天皇から歴史を記述し、大日本帝国憲法と教育勅語を賛美し、戦後憲法を否定している。『日本の戦争目的は、自存自衛とアジアを欧米の支配から解放し、そして゛大東亜共栄圏″を建設することであると宣言した』と記述している」などと具体的に追及した。
さらに「韓国併合は、日本の安全と満州の権益を防衛するために必要……国際関係の原則に則り、合法的に行われた」と朝鮮植民地支配を開き直り、南京大虐殺を否定したことに、南朝鮮・韓国や中国から激しい抗議声明が発せられていることを指摘し、区長と教育委員会の見解を迫った。
これに対し山田区長は、「憲法調査会等をつくって憲法を論議していこうという雰囲気の中で、石原知事が個人としてのお考えを述べたもの」と擁護し、石原への共感を示した。教育長、教育委員会事務局次長も、マスコミ報道は承知していると言いながら、作る会の教科書の内容については知らぬ存ぜぬの無責任な態度に終始し、杉並区と韓国の友好都市との関係には影響なしと居直った。
けしば議員は怒りを込めた再質問に立ち、「石原都知事にとって大事なのは一人ひとりの子どもたちではなく国家だ。どうやって周りから恐れられる国づくりをするのかがすべてだ。どうしてこれが『多様な価値観の尊重』『可能性にチャレンジする人づくり』なのでありましょうか!」「杉並区で、韓国併合は合法的であったという教科書を使って子どもたちに教えても、友好関係が損なわれないというのか!」と厳しく追及した。
介護は権利として公費で “保険料の負担軽減も一貫した重大な課題”
二月六日、杉並区は新年度から一定の条件を満たす低所得者に対し、介護保険サービス利用の自己負担額を助成することを決定したと発表した。保険料第一段階の老齢福祉年金受給者と「生活保護境界層」(利用料負担上限月額を一万五千円まで減額されなければ生活保護受給者となる人)に対して、四月から四年間、利用者負担上限月額を三千円に引き下げ、その差額を助成するという決定だ。
これは「介護と福祉を要求する杉並住民の会」が、杉並区との交渉を重ねてきた大きな成果である。
けしば議員は、介護保険制度がどれほど悲痛な現実を区民に強いているかを説いた上で、「この一年間四回にわたる区長への要請行動を行い、低所得者への利用料の負担軽減を粘り強く求めて来た『介護と福祉を要求する住民の会』の方たちは、大きな希望が与えられたと喜んでいます」と、一月二十五日の区交渉でかちとった大きな前進を確認した。
区との交渉ではさらに、介護保険制度によって、毎月四十五万円もの自己負担を強いられることになったBさん(せきつい損傷で下半身マヒ)の利用料を約十五万円減額させ、また、通院などの移動に寝台車による移送サービスが必要なCさんの問題では、「移送サービスの充実は課題」と改善を約束させた。
この前進を踏まえた上でけしば議員は、「利用料に加えた保険料の負担軽減も一貫した重大な課題です。一万五千円以上の年金から有無を言わさず強制徴収されることは深刻な問題だ」と追及し、「住民の会に、月々三万五千円の年金収入で生活する高齢者から『病院に行くことや食費を控えている』など、その厳しい状況が訴えられています。低所得者への保険料の減額・免除を行うべきだ」と要求、さらに障害者福祉施策のストレッチャー付きタクシーを増やすことなど区民の切実な具体的要求の一つひとつを区にぶつけた。
区の答弁は、利用料負担への助成の拡大については、「介護保険制度に係る問題点については、本来国において改善されるべきもの」と言いながら、「区といたしましては、制度を廃止することや全額公費負担での実施を国に要求することは考えておりません」と責任逃れに終始した。
けしば議員は、「介護保険制度のもとでは、負担のみを強いられ、必要な介護が保障されません。介護保険は直ちに廃止し、介護は権利として公費で負担すべきあり方へ転換することを国に要求すべきだ」と、毅然と要求した。
杉並行財政改革の反動性 “働く人の雇用を奪い子どもたちが犠牲に”
山田区長が、「行財政改革を着実に実行し、行政のあり方の見直しや区政の大転換を図る」として昨年十一月に発表した「スマートすぎなみ計画」。このもとで十年間に千人の職員削減が計画され、事業の委託化・民営化が推進されようとしている。
けしば議員は「この削減計画が対象としている学校、保育園、児童館、保健所、障害者福祉施設などの職場で働いている正規職員、嘱託員、パート職員が全体の職員数の中で占める割合はそれぞれどれくらいか」と質問した。総務部長の答弁によれば、正規職員で四五・七%、嘱託員で四八・七%、パートタイマーでは九一・九%。この数字を示した上で「いずれにしましても、職員の増減だけで施策の優劣を推し量ることはいかがなものか」とうそぶく総務部長。
けしば議員は「まさにこの職員の増減に施策の有り様が現れたわけです。『スマートすぎなみ計画』は明らかに、福祉・教育・区民生活という最も区民と直結した、必要な部門の切り捨てだ」と追及した。
けしば議員のこの指摘が最も鋭く突き出されているのが、学校給食の民間委託問題である。
昨秋九、十月に保護者に対する各学校での説明会開催に続く十一月八日、区は「保護者の理解を得られた」との一方的な判断を行い、学校給食調理業務の二〇〇一年度民間委託実施を決定した。直後の十日に開かれた文教委員会では、保護者の理解を得られていないことが全会派からも指摘され、決定の前提が崩されるという事態に至った。
けしば議員はこの経緯を示し、「労働組合は、これまでの労使合意を無視した区の一方的な決定に怒りを爆発させ、来年度実施の白紙撤回を求め、今も交渉継続中です。十一月八日の教育委員会決定は、山田区長の一方的な押しつけであり、決定自体が無効ではないのか」と追及した。
けしば議員は「学校給食は戦後五十年間、現場の栄養士や調理員の努力で現在の内容と質を保障してきたのであり、学校給食が教育の一環として子どもたちの成長やいのちを育んできたものだ」と、戦後民主主義教育を支えるものとしてかちとってきた給食の意義を強調、その給食業務を「営利目的の民間企業に委託し、そこに働く人の雇用を奪い、子どもたちを犠牲にするのはやめるべきである」と区に迫った。
区決定を無効だとする追及に対して区教委は、十二月のPTAアンケートを持ち出し、「半分の保護者から回答が得られて、そのうち概ね半数を超える方が理解をしていると分析しており、委託の実施は行える」と破綻(はたん)した答弁に終始した。
そもそもこのアンケートは、新年度から給食調理業務の民間委託を実施するとの決定を前提にした質問項目であるにもかかわらず、反対・不安だとする回答が九一%なのだ。「これでどうして過半数の支持を得た、理解は進んだと言えるのか!」
保護者・職員が力を合わせて闘えば、学校給食の民間委託は必ずやめさせることができる。けしば議員は「都政を革新する会は、『きょうもおいしかった』と言って学校から戻る子どもたちの笑顔を絶やさないために保護者の皆さん、調理員や栄養士さん、区に働く教職員の皆さんと手を携えて、学校給食民間委託の今年度実施を阻むため全力を尽くす」と宣言した。
石原都政−山田区政に対してやむにやまれぬ怒りが噴出している。労働者や住民とともに歩んできたけしば議員の闘いがいよいよ力を発揮する時を迎えている。石原都知事と対決する都議会議員をなんとしても実現しよう。けしば誠一氏を都議会へ送り出そう!
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