ZENSHIN 2000/11/27(No1983 p06)

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週刊『前進』(1983号1面1)

自民党の時代は終わった!無力な野党もだめだ!
労働者階級の力で森政権打倒へ
 臨検法案参院裁決阻止を
 ら致・監禁・白色テロル繰り返す現代のナチス=カクマル打倒せよ

 二十一世紀を目前にして世界が大激動している。十二日に開かれた韓国・民主労総の全国労働者大会には三万人が結集、倒産・リストラ攻撃に対してヘルメットと角材、鉄パイプで武装した一万人の労働者が実力デモを闘った。フィリピンでは大統領弾劾の十万人行動が開催され、労働者のゼネストに向かっている。戦後世界体制の崩壊過程が深まり、全世界で労働者人民の闘いが爆発している。他方、米帝と日帝の政治危機、体制的危機が満天下にさらけ出された。米帝の基軸帝国主義としての力が急速に失われつつあり、二十一世紀が新たな戦争と革命の時代になることは間違いない。十一〜十二月の決戦を意気高く闘い、闘う労働者党の建設を推し進めよう。

 第1章 世界的激動の開始に革命党の飛躍を

 十一月七日に行われた米大統領選挙は、接戦の末に票の数え直しが行われるという異例の展開となった。いったんは共和党のブッシュ候補に当確がうたれたものの、勝敗の決め手となったフロリダ州で一位と二位の差が有効投票数の〇・五%以下となり、同州法に基づいて再集計が開始されたからだ。その後、投票をめぐる不正疑惑や集計もれが発覚、民主党のゴア候補支持者が大統領選挙の再度の実施を求めた訴訟を起こし、ブッシュ陣営からも手作業による再集計の中止を求める訴訟を起こすなど、混乱と応酬が続いている。
 この中で、黒人層の反発や怒りが高まった。「もう締め切られた」「用紙がなくなった」などの口実で、黒人有権者が投票所から追い返されたことが明らかになっている。抗議の座り込みや選挙のやり直しを求めてデモも起きている。
 今回の米大統領選が突き出したものは何か。一言で言って、蓄積されてきた国内階級対立・民族対立とその矛盾が噴出し、米帝の階級支配の危機、政治支配の危機が全世界に暴かれたということである。
 主な争点は減税、健保医療、社会保障、教育だった。最後の段階で最大の焦点となったのは社会保障・年金問題だった。ゴアはリベラリズムを強調し、ブッシュ・共和党は「思いやりのある保守主義」と打ち出して必死に労働者人民の取り込みを図った。
 この背景には、米バブル経済下で低賃金と大リストラに苦しみ、生きるために闘いに立ち上がる労働者階級人民の存在がある。また、強化される「弱肉強食社会」の中で激化する黒人差別・人種差別や、増加し続ける「社会問題」が大きく横たわっている。核心は、戦後の米帝体制の全矛盾が本格的に噴き出し始めていることにある。
 しかもアメリカの労働者階級人民は、自らを代表する政党をもっていない。
 米帝の国際的「権威」の失墜は著しい。どちらが当選しても、米帝の危機はまったく解決せず、米帝は軍事力を背景にして帝国主義間争闘戦と侵略戦争への動きを激化させるであろう。米帝の凶暴化は世界危機、世界戦争危機を必ず加速させるのだ。

 日帝政治支配の危機は深刻

 こうした中で、日帝・森政権の危機も激動的に進行している。加藤紘一元自民党幹事長が森首相の退陣を要求し、森退陣論が急速に噴出しつつある。
 これは、一時的な自民党内の危機ではない。首相を取り替えても、連立体制が強化されたり、自民党政治が根本的に回復するわけではない。戦後自民党政治の末期的危機、連立政治の危機を突き出され、小手先では解決できない日帝の政治支配、階級支配の絶望的危機性が浮き彫りになったということである。この認識は、十一、十二月から二〇〇一年の決戦を闘うにあたって非常に重要である。
 今回の危機は、直接には十数%という森政権の超低支持率と、公職選挙法改悪(非拘束名簿方式の導入)の強行にみられる次期参議院選挙への危機感から動き出した。しかしより本質的には、戦後の政権政党であった自民党が単独で議会政治を行えなくなって久しく、対米対抗と国内支配の両側面で現状を打破する確たる方針を出せないという問題が横たわっている。
 その根底的な要因は、九〇年代における米帝とのすさまじい争闘戦で、日帝が経済的にも政治的軍事的にも封じ込められ、瓦解(がかい)的危機に追いつめられたことにある。それは一方で日本発の世界恐慌過程への突入という形で現れたが、他方で小沢や橋本の安保防衛・外交政策も米帝によって粉砕され、破産するという結果となった。小渕内閣は、新ガイドライン関連法強行とそれをテコとする戦争国家化攻撃を激化させる道に突進してきたが、国内階級関係の反動的転覆を成し遂げなければならないという激しさと、政治的力のギャップの前に自自連立を解消せざるをえなくなり、小渕は倒れ、政治危機をさらに深めていった。
 この体制的危機の深まりは、危機の凶暴な打開を求めるファシスト石原を前面に引き出した。重要なことは、米帝との争闘戦で打ち勝つ道を当面失っている日帝が、その暴力的打開を求めて国内階級関係の反動的転覆、全面的な戦争国家化に突っ込んでいるということである。それが石原のようなファシスト的勢力の台頭として現れ、改憲衝動の強まりとなっているのだ。
 このような中でわれわれは、日帝との対決を鮮明にさせて懸命に闘いぬき、九七年、九八年、九九年、そして二〇〇〇年と、確実に階級闘争の地殻変動的情勢をつくりだしてきた。ガイドライン闘争しかり、国鉄闘争しかり、沖縄闘争しかりである。
 沖縄の那覇市長選で自公保の翁長雄志が勝利したことによって新基地建設が促進されるとマスコミは宣伝しているが、選挙結果は人民の反基地の強い意志を示しており、より激しい対決へと向かわざるをえない。日帝の側に展望などない。日帝は沖縄基地問題をまったく解決できないのだ。
 労働者学生人民自身の決起が日帝の戦争国家化攻撃を必死に押し返し、支配階級の分裂的危機を生みだしているのだ。このことに一層の確信を持ち、労働者階級の前衛党建設を軸にして十一〜十二月の決戦を意気高く闘っていこう。

 第2章 戦争法案=臨検法案阻止の国会闘争を

 当面する政治闘争方針の第一は、臨検法案・改憲阻止、森政権打倒を掲げて国会闘争に猛然と決起することである。
 反戦共同行動委員会は、臨検法案阻止の十一・二一国会闘争と首都圏緊急闘争(午後六時、宮下公園)を呼びかけている。また、石原都知事が参考人として出席する十一月三十日の憲法調査会が決定的な政治焦点となっている。森と石原をくし刺しにして打倒する闘いとして、有事立法と改憲を阻む新たな闘いに全力で決起しよう。
 「船舶検査法案」という名の臨検法案は、まぎれもなく戦争法案であり、自衛隊の実体的な参戦と戦争突入の道を開く有事立法そのものである。また、集団的自衛権を実質的に合法化するものである。ガイドライン関連法の「積み残し」だからこれまでと大差はないと考えたら大間違いだ。
 日米新安保ガイドライン体制にとって周辺事態法はいわば新ガイドライン基本法のような存在である。基本法では不完全であり、それを実戦的に補う法制が必要となる。周辺事態法には「日米協力四十項目」が記載されている。周辺事態の際に日米が協力する中身を四十の項目に分け、その例を挙げているのだ。
 しかしその全部が、ガイドライン関連法を含む現行法で許されているわけではない。米軍サイドから見ても、自衛隊サイドから見ても、法制化されていない項目は多い。
 その一つが自衛隊の「船舶検査」行動である。現行では、公海上または他国の領海内での臨検作戦に自衛隊が参加するのは自衛隊法には規定されておらず、違法行為なのだ。なぜ、自衛隊法で許されていなかったのか? 憲法が禁じる「武力による威嚇」だからであり、集団的自衛権の行使につながるからである。
 つまり、新ガイドラインの発動体制を有事法制の面から準備していく第一弾が臨検法案だといえる。臨検法が成立すれば、米軍の活動にかかわる項目を合法化する「米軍有事法」や、自衛隊の警備出動などを定める有事法制化に突き進むのは間違いないのだ。
 臨検法の制定は、自衛隊を国軍として扱い、海外での戦争に派兵することを意味する。武器使用の制限は基本的に取り払われ、他国の人民に絶えず銃を突きつける自衛隊になる。闘いの遅れを取り戻して、臨検法絶対阻止の行動に立とう。
 憲法調査会が参議院でも再開された。来年はテーマ別と称して憲法の条文の検討に入るといわれている。十一・三〇闘争の爆発を機に、憲法闘争の大衆的発展に向けて突き進もう。
 教育基本法改悪を柱とした教育改革攻撃との闘いの本格的準備を開始しよう。国立市の教育労働者への処分を粉砕する闘いを強めよう。全反動法案を暴露して二〇〇一年決戦を切り開く広範な闘いの陣形をつくりだそう。

 名護新基地建設阻止に立て

 当面する政治闘争方針の第二は、闘う沖縄人民との連帯を強め、名護新基地建設阻止の闘いを推し進めることである。
 九月にアジアを歴訪したコーエン米国防長官は、米軍の東アジア十万人体制維持を再度語り、名護新基地の「十五年使用期限」問題を拒否する姿勢を示した。他方、アーミテージ元国防次官補やナイ元国防次官補らは十月に「米国と日本―成熟したパートナーシップに向けた前進」という文書を発表、日帝に新ガイドラインの完全履行やPKF(国連平和維持軍)参加凍結解除などを要求した。米帝は、沖縄圧殺と新ガイドライン体制の強化を日帝に強く迫っているのである。
 こうした中で、政府・県・名護市の三者による「代替施設協議会」や日米間の「普天間実施委員会」が開催され、新基地建設への攻撃が強められている。十一月二十九日には代替施設協議会の第四回会合が首相官邸で開かれる。
6面につづく〜1面からつづく
 十一月十二日に行われた那覇市長選でわれわれは沖縄県党の同志を先頭に堀川美智子氏の勝利のために全力で決起した。自公保結託という厳しい条件のもとで堀川氏は大いに善戦したが、惜しくも敗れた。だが、新基地建設反対の民衆の意志はいささかも崩れてはいない。その人民の意志をまったくくみ上げることができない既成左翼の問題が突き出されたのである。
 すでに新たな闘いの高揚は始まっている。そのためにも十二・二三名護現地集会に決起し、名護新基地建設阻止の全国的高揚を切り開こう。
 当面する政治闘争方針の第三として、学生戦線の断固たる進撃を確認したい。
 この間、学生戦線は、臨検法案と教育改革・改憲攻撃に対するクラス討論や学内集会などを積み重ね、また、国立大学の独立行政法人化阻止の運動を全力で展開してきた。さらに沖縄闘争を継続的に担い続けてきた。その地平を高め、二〇〇一年を闘う学生運動の大爆発の年としよう。十一・二一東北大のスト決起を先頭に、十一〜十二月闘争の爆発をかちとろう。

 国鉄決戦の一層の強化を

 国鉄闘争の感動的前進と十一・五労働者集会の歴史的成功をふまえ、戦闘的労働運動の防衛と発展のために闘い続けよう。
 不屈の国労闘争団は、定期大会の続開大会に向けて新たな闘いを開始している。しかし政府と国労本部は何がなんでも「四党合意」をのませ、闘争団の闘いを圧殺しようと巻き返しを図っている。「JRに法的責任がない」という採用差別本州訴訟の東京高裁反動判決を絶対に許してはならない。政府と国労本部によってゆがめられたILO勧告が出されようとしているが、闘う国労闘争団の決意を押しつぶすことは絶対にできない。この間の闘いの息吹を全国鉄労働者に広げ、「四党合意」を完全に葬り去る定期大会続開大会決戦へ攻め上ろう。闘う新執行部を確立しよう。
 日帝は労働委員会闘争そのものを封殺しようと圧力をかけている。現在進められている、国労組合員が申し立てた各地の労働委員会闘争を全力で支援しよう。

 第3章 絶望的にあがくカクマル=JR総連

 われわれは、衆議院選挙闘争、沖縄サミット粉砕闘争、国鉄闘争と十一月労働者集会の、二〇〇〇年の三大決戦を闘う全人民とともに勝利的に貫徹してきた。残る一カ月余りの時間を労働者党建設の前進のために使い切ることが今や最も重要な課題となっている。
 この間の決戦につぐ決戦とりわけ九九年から二〇〇〇年の決戦をとおして、革共同は日本階級闘争に責任をとる基軸的勢力として登場した。二〇〇〇年の三大決戦をとおして党と階級は鍛えられ、他方で日共スターリン主義と反革命カクマルはその組織的危機を爆発させた。日共とカクマルは、日帝の排外主義と侵略戦争攻撃の最先兵と化している。排外主義攻撃に対して革命的祖国敗北主義を対置して闘う勢力は、わが革共同だけである。
 この現実は、カクマル=JR総連がなぜ危機を爆発させたかを見ていけばよりはっきりする。
 まず重要なことは、そもそも黒田=カクマルの「組織現実論」が前提としていた階級情勢には社・共が起こす大衆運動があり、カクマルはそれを「のりこえ」の対象とすることで左翼の仮面を被ることができたということである。
 しかし現実には、カクマルが全面的に加担することによって推進された国鉄分割・民営化によってカクマルだけが生き残ろうとした策動が完全に破産したのである。
 カクマルの思惑は、国鉄分割・民営化の推進によって九〇年代にはネオ・ファシズム体制が確立するはずだった。つまり、国家権力の破防法発動によってわが革共同が解体され、それによって動労千葉や国労も解体されて、カクマルが日帝の先兵でありながら左翼の仮面を被っていられる情勢が続くはずだったのだ。
 ところが事態はそのように進まなかった。わが革共同や動労千葉、国労闘争団の闘いで国鉄闘争が不屈に前進しているのを始め、きわめて鮮明な大衆闘争の高揚が始まったのである。
 この中でカクマルとJR総連は、一方でその大衆闘争にもぐりこんでわれわれをはじきだそうと試み、他方で連合を「左」から批判しているかのようなポーズをとろうとした。それが昨年のカクマル=JR総連の「連合新政治方針への対案」だった。
 しかし、その対案がJR総連の自衛隊容認、改憲派への転向宣言であることが暴かれ、直ちに破産してしまった。さらに高揚が始まった大衆闘争に潜入し闘いを破壊しようとする策動もわが革共同の存在と闘いと、それと密着あるいは共鳴しあった労働者階級人民の根底的決起で完全に粉砕された。
 カクマルとJR総連は、わが革共同と戦闘的大衆行動に決起した労働者人民の闘いによって反革命敵対分子であり、日帝の先兵であることが暴き出されるという絶望的破産状態に陥ったのである。カクマルとJR総連の正体はついに満天下にさらされてしまった。こうしてカクマルとJR総連は、組織的崩壊の危機を爆発させているのだ。
 JR九州労の大量脱退から始まったカクマル=JR総連の対立・亀裂・崩壊は、ついにJR総連カクマル最高幹部の拉致(らち)・監禁・内部テロという事態まで引き起こしている。今こそカクマル=JR総連の正体を全労働者人民の前に暴き出し、カクマル完全打倒へ進撃しよう。
 今や、革共同を労働者階級の政党として鍛え、建設することが待ったなしの課題である。そのかぎは機関紙の拡大にある。階級闘争の生きた現実を『前進』に書き表し、『前進』で労働者階級人民との生きた結合をかちとろう。十一〜十二月、機関紙拡大と財政闘争を全力で展開しよう。
 来年の都議選は、労働者政党への飛躍をかけた決戦である。ファシスト石原と正面から対決して二十一世紀の激動を切り開こう。

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週刊『前進』(1983号1面2)

北富士 実弾演習弾劾で決起 反戦共同行動委デモで母の会と合流

 十一月十二日、反戦共同行動委員会は、「米軍実弾演習阻止、山梨県による桧丸尾強奪粉砕、梨ケ原奪還」の北富士現地闘争に決起し、集会・デモを行った。北富士での米軍実弾演習は、日本全土で展開されている日米共同統合演習の一環の朝鮮侵略戦争に向けた実戦的演習であり、これまでの沖縄海兵隊の本土移転演習をさらにエスカレートさせたものだ。(全国の日米共同統合演習粉砕闘争記事は5面)
 この日、忍野村内を通って演習場入り口で米軍演習を激しく弾劾したデモ隊は、演習場入り口に大看板を立て座り込みを行っている忍草母の会、入会組合との感動的な合流を果たした。忍草母の会は、会長の渡辺喜美江さんを始め、事務局長の天野美恵さん、天野くま子さん、大森ふじえさん、天野まさ子さんが座り込みのテント前でデモ隊を出迎え、激励した。遠く四国の地から婦人民主クラブ全国協とともに参加した七十代の女性が母の会としっかりと握手を交わした。
 渡辺会長は、「九十四歳になったが、入会地を取り戻すまでがんばる」と力強くあいさつした。忍草入会組合の天野重知組合長は、「会長が九十四歳で私が九十三歳。まだようやく闘いの半ば」と不屈の決意を明らかにした。区会事務所裁判で「入会集団」ということを認めさせた意義を語り、「母の会の四十年はあらゆる闘いが実力行動だった。木によじ登り、地に伏し、弾の中をくぐった」「これから梨ケ原演習場の取り合い。これからが新しい闘い。永続の闘いをやる」と宣言した。全国の反戦・反基地闘争の中軸である北富士闘争が新たな進撃を開始したのである。
 デモに先立って忍野村内で反戦共同行動委員会の総決起集会がもたれた。発言に立った天野美恵さんは、「毎年一億二千八百万円の林雑補償は詐欺だ」と金で第二組合を買収する日帝を弾劾し、「米軍の大演習を日曜日にもやるとは何事か。許すわけにはいかない」と米軍演習に怒りをたたきつけた。
 特別アピールでは、全学連・反戦北富士現闘の代表が発言に立ち、「母の会を始とした忍草農民の闘争で入会地への日曜日の立ち入りを認めさせてきた。これを無視して演習を強行している。北富士闘争つぶしの攻撃だ」とその狙いを弾劾し、「私たちの力で北富士闘争の勝利を切り開こう」と呼びかけた。
 反戦兵士の小多基実夫さんは、日米共同演習での三沢のF16の投入は「相手のレーダーを破壊する切り込み隊であり、朝鮮侵略戦争計画5027の演習そのもの」と指摘し、「反戦運動が問われている。いまが正念場」と全力での決起を訴えた。動労千葉の代表は、十一・五労働者集会の成功と国労定期大会で四党合意を三度阻止した勝利を報告した。そしてJR総連=カクマルが中枢から大分裂している中で「動労千葉の組織拡大に向かって闘う」ことを表明した。
 婦民全国協代表の西村綾子さんは厚木基地視察の様子を報告し、「自衛隊が新たな軍隊になろうとしている」と事態の重大さに対する警告を発した。都政を革新する会の長谷川英憲代表は、四日の北富士の集会で渡辺会長が「命をかけて最後まで闘う」と決意を表明したことを「この反戦の決意こそ日本の民衆への闘いの檄。闘う意志は誰もつぶすことはできない」とその意義を明らかにした。
 全国沖縄青年委員会の代表が、大不況の中で沖縄出身者が差別で苦しんでいることを訴え、「労働者が主人公となる社会をつくろう」と呼びかけた。部落解放同盟全国連の代表は、東京高裁高橋裁判長が狭山異議審の棄却を狙っていることに警告を発し、「異議審段階で勝利する」ために決起することを呼びかけた。
 基調報告を全学連の大山尚行委員長が提起し、改憲阻止決戦への全力決起と、それに向かって船舶検査法粉砕や教育基本法改悪阻止など反動諸法案粉砕闘争への決起を訴えた。
 決意表明では東京労組交流センター、都留文大生協労組、全学連の各代表が力強く決意を表明した。
 決意を込めたシュプレヒコールをあげ参加者はデモに打って出た。演習場正門で、入会地を無断使用し、朝鮮侵略戦争に向かって実戦演習をくり返す米軍、自衛隊に激しい弾劾のシュプレヒコールを浴びせた。

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週刊『前進』(1983号1面3)

巨大な革命党建設へ年末一時金カンパを

 『前進』読者の皆さん。革共同は二〇〇〇年決戦を全力で闘い勝利したことを、胸を張って確認し報告することができます。そして二十一世紀冒頭に革命的共産主義運動のさらに飛躍的な前進をかちとるために、皆さんの決意のこもったカンパの集中を心からお願いするものです。
 かつて社共が「革新」として存在していた時代がありました。しかし、日本型社民の没落と帝国主義社民化、日共スターリン主義の屈服と変質によって、日本の労働運動を責任をもって指導する政党・政治勢力が「見当たらない」という状況が生まれてしまいました。
 革共同はそこに躍りこみ、労働者階級に責任を負う党として自己を変革する闘いを積み上げてきました。そして今年の衆院選への挑戦、沖縄サミット決戦、国鉄決戦などを全力で闘いぬきました。革共同はまだまだ弱くまだまだ小さい。それはその通りです。しかし周辺事態法=戦争法と対決して米日帝の朝鮮・中国侵略戦争を阻止する闘いや国労の解体を狙った日帝の攻撃と闘う国鉄決戦などを最先頭で闘いぬき、情勢決定勢力として労働者人民の闘いを牽引してきました。
 この四十年来、「新左翼」を自称していた諸党派が次々と没落し変質していく中で、首尾一貫して反スターリン主義・革命的共産主義の旗を守り、マルクス主義・レーニン主義の理論と実践を豊富化してきたのが革共同です。この党をこれから強く大きくしていくためには、本当に皆さんからの物心両面からの援助、特にカンパが絶対不可欠なのです。
 カクマルの、今日のJR総連をめぐる危機と混乱を見てください。「冬の時代だから労働者は闘うな」と叫び、他人をだまし、自分をだまし、白色テロをほしいままにしてきた連中が、分裂し、いがみ合い、ののしり合っているのです。
 まったく対照的に「闘う労働組合の全国ネットワーク」を呼びかけた十一月労働者集会が、今年は例年を上回る結集と高揚を実現しました。偶然ではありません。労働者が生きるためには真っ直ぐに頭を上げて、自らの要求を掲げて資本と闘い、日帝国家権力の侵略戦争への道と闘う、そうでなくては生きられない時代が訪れているのです。
 「マルクスは古くなった」どころか、マルクス主義にのっとり、オーソドックスに闘う左翼こそがもっとも現実的な存在としてあるのです。国家財政の破綻、日帝経済の恐慌への突入、首切り、賃下げなどの資本攻勢の激化の中で、皆さんの生活がより厳しく苦しくなっていることを、われわれは誰よりもわきまえています。そうであればこそ、一刻も早くこのような現状を打破し、侵略戦争によって延命するしかない日帝を打倒し、労働者階級が主人公となる社会を実現するために、従来の水準を超えるカンパを革共同に寄せていただくことを切にお願いするものです。
 ともに激動する二十一世紀に突入し、闘って勝利しましょう。

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週刊『前進』(1983号2面1)

JR総連打倒し、国鉄決戦勝利へ
東京地本の幹部を「ダラ幹」と罵倒するカクマル『解放』
 九州労問題の震源は東労組だ

 JR九州労の崩壊として公然化したカクマル=JR総連の深刻な組織的亀裂は、JR総連の崩壊の始まりにすぎない。JR総連全体とりわけJR東労組の危機、東京地本の危機としていよいよ爆発しようとしている。国鉄分割・民営化―総評解体・連合結成の過程をとおして、日本帝国主義がカクマル=JR総連をファシスト的極として労働者階級の支配を実現してきたことを見るならば、このカクマル=JR総連の組織的亀裂・危機の爆発のもっている意味は実に大きい。国鉄決戦は、分割・民営化―JR体制(カクマルとJR資本の結託体制)の崩壊の開始という新しい段階で闘われる。分割・民営化の先兵となって以来のカクマル=JR総連に対する国鉄労働者の積年の怒りを解き放ち、彼らを打倒する好機が到来したのだ。これは千四十七人の解雇撤回闘争にとっても絶好の情勢である。

 松崎と黒田からの離反が一層拡大へ

 カクマル=JR総連の危機の爆発が九州労にとどまらないことは、カクマル自身が反革命通信『解放』紙上でストレートに告白している。
 『解放』一六四二号(十月三十日付)は、「退職したJR総連OBメンバー(南雲)」が「『会長(松崎明)は過去の人だ」とか、『山本勝彦(黒田寛一)は変質した』とかいう言辞をふりまいている」「デマをでっち上げ、それをJR総連下部メンバーに注入し、もってJR総連下部組合員たちをダメにすることをみずからの仕事としている」のだと言う。この「南雲」なる人物は「従来のように『面従腹背』の態度をとってきた」のだが、今や公然とJR総連下部メンバーに松崎や黒田に対する「反感を植えつけるということをやっている」というのだ。
 JR九州労からの大量脱退という事態に動転したカクマルは、JR総連内カクマル組織の内情を自己暴露しながら、゛松崎や黒田を批判する者は許さない゜と恫喝し、JR総連内カクマル組織の亀裂拡大を抑え込もうと躍起になっている。
 だが、松崎は、九州労の大量脱退という事態に対してまったく指導力を発揮できない。今年二月以降まかれた『主張』(現代古文書クラブ発行)に掲載された松崎の昨年八月から十一月の講演では、「われわれを破壊するためにのみに蠢(うごめ)くような連中を許すわけにはいかない」などと息巻いていた。この松崎が、JR九州労の崩壊という事態に対して公然と発言できないのはいったいどういうわけなのか。無責任きわまりないではないか。
 この松崎講演を転載した『主張』は、カクマルが作成して配布したものであることを、『解放』一六四二号で自白している。カクマルは、゛松崎会長に学べ゜とわざわざ昨年の松崎講演を転載したビラをまいたのだが、逆に「会長は過去の人」という松崎批判がJR総連内に蔓延(まんえん)しているのである。
 松崎こそは、国鉄分割・民営化以来の大裏切り、ファシスト労働運動を推進してきた張本人である。JR総連の存在は、松崎抜きにはありえない。その松崎からの離反が公然化しているということは、いよいよJR総連の大崩壊が本格的に始まるということなのだ。
 松崎の゛おひざ元゜であるJR東労組でも、主要な幹部が「ダラ幹」化しており、カクマルが名指しで批判する事態が、九州労の崩壊に先立って起きている。

 東労組東京地本で深まる対立と分裂

 『解放』一六三一号(八月七日付)の吉田論文は、六月のJR東労組大会での東京地本代議員の発言をやり玉に挙げて、東京地本の「ダラ幹」に対する罵倒(ばとう)を繰り返している。これまでも『主張』や『進撃』(カクマル交運労働者委員会のビラ)で、東京地本書記長の鳴海らを名指しで批判してきたが、ここでカクマル吉田は、鳴海を含む執行部のほとんどが「ダラ幹」化していると、次のように弾劾している。
 「東京のある代議員は、『元支部委員長は、この十二年間の在任中、組合員のためではなく自分のために活動していたことがわかった。うちの支部には国鉄改革がなかった……』と発言した。彼はこの発言をもってあたかもおのれ自身の過去の活動を反省したかのように錯覚しているのである。度し難いにもほどがあるというものだ」
 「わが東京地本のダラ幹たちは、みずからの組織のなかにインフォーマル組織がつくられてしまっていたことにまったく気づかないほどまでにボケきっていたのだ」
 「東京地本のダラ幹たちは、組合員がインフォーマル組織に深く組織されていたことはもとより、御用組合であるJR連合の諸行事に組合員が組織化され参加していたことさえ、自分たちの組合活動を通じて把握することができなかったのである」
 そして、「それは彼らが『労使協力』ならぬ労使協調路線にドップリと浸りきっていたからにほかならない。゛JR東労組は動労時代のような対決型の労働運動はできないけれども、労働貴族のように労使協調路線はとらない。労使一体化を否定する運動を展開するのだ゜として、それをニアリイ・イコールの関係、つまり『労使協力型の運動』と規定してきたのではなかったのか」と言っている。
 要するに、カクマル吉田は、東京地本の「ダラ幹」どもが、松崎の提唱した「ニアリーイコール」論を正しく理解していないと弾劾しているのだ。だが、これこそ松崎が先頭で推進した、JR資本との結託体制がもたらした現実ではないか。
 問題は、「ダラ幹」どもが単に松崎路線からはずれているというだけではない。『解放』紙上でこれだけ公然と批判されるということは、彼ら「ダラ幹」どもと吉田らカクマル中央との決定的な亀裂・対立が進行しているということだ。九州労問題に続いて、いつ組織的分裂として爆発するかという問題なのである。

 分割・民営化推進の大裏切りこそ原点

 このようなカクマル=JR総連の亀裂と危機の根源は何か。それは、国鉄分割・民営化―JR体制でのファシスト的大裏切りとその反革命性がついに全面的に暴かれ、カクマル松崎=JR総連が決定的に破綻(はたん)に追い込まれたということである。
 この点で、カクマルが「一九八七年の国鉄の『分割・民営化』攻撃に抗して、労働組合組織の強化をかちとってきたことの教訓を、いまこそうち固めていかなければならない」(『解放』一六二八号、七月十七日付)などと、公然と分割・民営化の大裏切りを賛美していることは重大である。これまではJR総連を゛反戦や護憲を闘う当たり前の労働組合゜と押し出してきた(これ自体、とんでもないインチキだ!)が、ついに分割・民営化への協力は正しかった、この教訓に学べと言い出したのだ。ここでは、「国鉄の『分割・民営化』の嵐の中で、組合員の雇用を守るために北海道や九州などから首都圏や関西地域への広域採用に応じながら、苦難に満ち満ちた闘いを組織してきたJR総連とその傘下の各単組がうちだしている『国鉄改革の完遂』という闘争方針」を正しいとして、「国鉄改革の完遂」、すなわち国労・動労千葉の解体を貫徹せよと叫んでいる。
 われわれは、これに対してあらためて国鉄分割・民営化の先兵となったカクマルの反革命性を徹底的に弾劾しなければならない。
 国鉄分割・民営化とは、権力・資本が総評を解体し連合化させ、階級的労働運動を絶滅し、「戦後政治の総決算」と称して戦後体制の反革命的転覆と改憲攻撃への地ならしを狙う攻撃だった。そのために国労と動労そのものを解体しようとしたのである。
 これをめぐる攻防は、歴史的な一大階級決戦であった。カクマルは、これが国家権力との大激突となり、戦後史上でも未曽有の大闘争となって爆発することを恐れた。だから、当時動労中央本部を牛耳っていた松崎=カクマルは、「国鉄改革」=分割・民営化を受け入れることを決断したのだ。それは、黒田の「組織現実論」に基づいて、カクマル組織を温存しようというものだった。他の労働者を犠牲にして自分たちだけが生き残ろうなどということほど反労働者的なことはない。ここにカクマルの反革命的、ファシスト的本質がある。
 この過程で、動労カクマルは当局と一体となって「国労にいたら首を切られる」と国労組合員を攻撃した。動労の年配の組合員も「後進に道を譲れ」と辞めさせた。その上で、国労組合員らが差別・選別されて不採用にされ、八七年四月のJR発足時に七千六百人余が清算事業団に送られ、九〇年四月一日には千四十七人が清算事業団からも解雇されたのだ。この国鉄=JRによる採用差別―解雇の攻撃は、国家権力、国鉄=JR資本と動労=鉄道労連カクマルの結託がなければなしえなかったのだ。

 国労解体攻撃粉砕 闘う国労の拡大へ

 この反革命こそは、カクマルのファシスト的純化にとって決定的な分水嶺(ぶんすいれい)となった。
 今日、松崎=JR総連カクマルはこうした反革命を強行したものとして存在している。それは過去の一時の反革命行為ではなく、日々再生産されている現実である。彼らは自己の反革命的・反労働者的本質を隠ぺいするため、JR資本との結託体制のもとで合理化に協力し、国労・動労千葉の解体・絶滅のために全力を挙げてきた。千四十七人問題についても、国家権力やJR資本と同じ立場で、「解決済み」「ゴネ得を許すな」と叫んできたのだ。
 だが、国労闘争団を始めとする千四十七人の解雇撤回闘争が、動労千葉を先頭にJR資本の合理化攻撃との闘いが、不屈に闘い続けられている。このことが国鉄分割・民営化とJR体制を弾劾し続け、資本とカクマルの結託体制を危機に陥れてきた。ついにそれはJR九州労の崩壊からJR総連全体の崩壊へと発展する情勢を引き寄せたのだ。
 カクマルがこの間、「JR総連労働運動の炎を燃えたたせよ」とか「『動労型労働運動』を現在的に構築せよ」などと言っていることは、「国鉄改革」=分割・民営化の先兵となったファシスト的原点に立って、そのような大裏切りを再び強行するためのファシスト的組織強化を行え、ということである。
 国鉄分割・民営化時をはるかに上回る日帝危機―大資本攻勢の激化とJRにおける第二の分割・民営化とも言うべき大合理化攻撃は、カクマル=JR総連に対して、よりファシスト的に純化することを迫っている。だからカクマルは、分割・民営化時にも匹敵する大裏切りを決断し、そのためにファシスト労働運動をより決定的に純化しようとしているのだ。
 それは、一方での新安保ガイドライン体制に対する戦争協力路線と、連合新政治方針への「対案」に現れた改憲推進路線である。他方で、JR東日本の「シニア協定」とメンテナンス部門など鉄道業務の全面外注化―三千人の大合理化への協力に踏み込んだのだ。
 また、この間の日帝権力とのあつれき、JR東日本における大塚新体制の発足に対して、JR東労組の「ダラ幹」のように「労使一体化」して組合主義的に対応したのではダメだ、国鉄分割・民営化の時の松崎にならって、カクマル組織が生き残るためにはもっとファシスト化すべきだということなのである。
 この間のJR総連カクマル組織の亀裂は、こうしたファシスト的純化に向けたあがきの中で噴き出した矛盾の爆発でもある。
 だからこそ、千四十七人の解雇撤回闘争を先頭に、国鉄労働者が松崎=カクマルの国鉄分割・民営化推進の大裏切りを徹底弾劾し、「四党合意」による国労解体攻撃を粉砕し、カクマル=JR総連打倒、闘う国労の組織拡大に向けて闘うことこそ勝利の道なのだ。

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週刊『前進』(1983号2面4)

 カクマルがJR総連幹部を拉致・監禁!

 カクマルが、JR総連OBで『自然と人間』事務局の坂入充(六十歳、三鷹駅出身)を拉致・監禁したという内部テロの事実が明らかになった。坂入は、松崎に次ぐJR総連カクマルの幹部である。JR九州労の大量脱退に続く、いやそれを上回る、JR総連=カクマル組織内の決定的な対立・亀裂を意味する超重大事態だ。
 JR総連は十一月十三日付『JR総連通信』で事態を暴露、十六日の記者会見で埼玉県警に告発状を提出したことを明らかにした。
 それによると、坂入は十一月三日、奥多摩へのキャンプに行くために午前九時ごろに埼玉県吉川市の自宅を出たが、同僚らとの待ち合わせ場所のJR大宮駅前に到着する前に行方を絶った。そして、昼前に「浅野」と名のる男から「彼(坂入)と討論させてもらう。いずれ彼から連絡をしてもらう」と電話があり、妻が「帰してくれるのですね」と言うと、「それは……」と言って電話が切られた。この「浅野」は、十月九日、九州労本部に押しかけ、暴力・窃盗を行った三人のカクマルの一人だという。また、九州労本部から解雇通告された「小西書記」も関与しているという。これらからJR総連は「革マル派に拉致されたものと断定できる」としている。

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週刊『前進』(1983号2面2)

国家的不当労働行為を居直った高裁不当判決
 地労委闘争で総反撃に立とう

 十一月八日、東京高裁民事第九部(塩崎勤裁判長)は、JR採用差別本州事件で中労委と国労の控訴を棄却し、「JRに不当労働行為の責任はない」とする超反動判決を下した。九八年五・二八判決をなんとしても護持するという日帝の国家意思が、再度むき出しになったのである。
 闘争団を先頭とする国鉄労働者は、三度にわたって「四党合意」の機関決定を阻み、国労と日本労働運動の階級的再生に向けて不退転の歩みを開始した。国労定期全国大会での闘争団の人生をかけた渾身(こんしん)の決起は、権力とJR資本の手先と化した国労本部を総辞職の瀬戸際にまで追い込んでいる。この闘いは、JR体制の最大の支柱であったJR総連の対立と亀裂・崩壊の事態をも引き出しつつ、分割・民営化以来の日帝による労働者支配の根幹を揺るがしている。
 こうした巨大な勝利は、敵の密集した反動を引き寄せずにはおかない。日帝とそれに屈した国労本部は、闘争団の命がけの決起がつくりだした大流動を封じ込め、国鉄闘争を敗北に導こうとなおも反革命策動を続けている。闘いは今、さらなる激突局面に突入した。

 闘争団への憎悪むき出しの判決

 十一・八東京高裁判決は、「採用候補者名簿の作成はもっぱら国鉄の権限と責任にゆだねられたもの」「採用候補者名簿の作成に不当労働行為に該当する行為があったとしても、その責任は国鉄ないし清算事業団が負うべき」などというへ理屈で、JRの責任を免罪した。
 この判決は、闘争団の解雇撤回闘争そのものへの反動的憎悪をむき出しにしている点において、五・二八判決をはるかに踏み越える極反動的なものである。
 高裁は、「本件救済対象者は、いずれも採用候補者名簿に登載されておらず、JRが採用する余地はなかった」から、「JRは使用者に該当しない」と言い放った。つまり゛労働者を解雇した資本はもはや「使用者」ではないから一切の責任を負わなくていい゜ということだ。そして、中労委に対しても「『使用者』概念を不当に拡張し、本来『使用者』に当たらないJRを『使用者』として救済命令を発することはできない」「(中労委命令は)使用者の概念をあいまい、無限定にするものであって、法的安定性を害する」などという非難を投げつけている。こんな反動的暴論がまかり通れば、労働者が不当解雇を労働委員会で争う道は一切ふさがれてしまう。
 さらに許しがたいのは、国鉄が不当労働行為を行ったという厳然たる歴史的事実さえ、抹殺しようとしていることだ。判決は、「国鉄は労組法七条により不当労働行為を厳に禁止されている上、参議院特別委員会の付帯決議により『所属組合等による差別等が行われることのないよう特段の留意をすること』とされており、採用候補者名簿の作成にあたって不当労働行為をすることを特に厳重に禁止されているのであって、不当労働行為を行う可能性が高いとは言いがたかった」などとうそぶいている。だが、分割・民営化にあたって国鉄=JRがあらん限りの不当労働行為を行い、今も行い続けていることは、闘争団はもとより、すべての国労組合員の心身に刻み付けられた、絶対に消し去ることのできない事実である。高裁は尊大にも、紙の上の言葉でそれを否定し去ろうとしているのだ。
 それに加えて判決は、「国鉄改革法は、採用候補者名簿の作成等に関する不当労働行為の責任を国鉄ないし清算事業団に負わせることとしている」とまで言ってのけた。これは、゛国鉄の不当労働行為責任をJRに引き継がせないために国鉄改革法を作った゜と自白しているのと同じだ。国鉄分割・民営化が国家的不当労働行為であったことを自認し、開き直って、゛国労解体は国家意思だ。国家の意思には無条件で従え゜と絶叫しているのだ。
 体制的危機にのたうつ日帝は、このようにわめき散らす以外になくなった。
 この判決は、「使用者」概念さえ抹殺し、労組法や労働委員会制度を全面解体して、不当労働行為を野放しにしたいという敵階級の意思を露骨に押し出した。団結権を総否定して、資本攻勢をさらに激しく押し貫こうというのである。
 だが、それはまた、国鉄闘争が全労働者階級の総反乱を導き出そうとしていることへの、日帝の絶望的な恐怖と焦りを示している。
 五・二八反動判決以来、闘争団は幾多の試練をくぐりぬけて不屈の闘志を打ち固めてきた。国労本部をして闘争団への三度目の首切りを行わせようともくろんだ「四党合意」も、今や日帝の階級支配の破綻(はたん)点へと大きく転化しつつある。司法権力が闘争団にいかなる悪罵(あくば)を投げつけようと、それは追いつめられた者の悲鳴でしかない。
 日帝は、十二月十四日に判決を迎える北海道・九州採用差別事件でも反動判決を下し、闘争団に敗北感を強制して国鉄闘争を解体しようと狙っている。
 だが、どのような反動判決が出されようと、闘争団と国労組合員が団結を固め、大衆行動を展開して闘いぬけば、敵のもくろみを根底から打ち破ることはできるのだ。
 こんな高裁判決に恐れをなし、「判決が出たら解決の機は失われる」「今がラストチャンス」などと騒ぎ立てて「四党合意」受諾に突き進んだ宮坂・チャレンジ一派、革同上村一派の犯罪性もまた、明白だ。

 ILO勧告でも本部の大裏切り

 高裁判決と並ぶもう一つの攻撃は、十一月中にも出されるILO第二次勧告を反動的にねじ曲げようとする、日帝政府と国労本部の策動である。
 ILO理事会に提出・審議される勧告の原案には、「四党合意は当事者が早期に満足いく解決を達成できるように、JRと国労の間の交渉促進を目指してその条件を提示し、関係する労働者が公正に補償されることを保証したものであり、すべての関係者が受け入れるよう促す」という文言が入れられたことが明らかになっている。
 同時に、この勧告原案には「ILO九八号条約(団結権の保護)の中に盛り込まれている反労働組合的な差別行為に対する保護は、採用および雇用の終了時を含む雇用期間中のいかなる時点にでも保障されるという原則を確認する」という文章も盛り込まれている。
 この勧告案が、昨年秋の勧告からは大きく後退したものであること、採用差別は許されないとしながら、全関係者に「四党合意」の受け入れを求めている点において、きわめて矛盾した内容であることは明白だ。
 また、勧告に至った理由として、ILO結社の自由委員会が「国労が不採用となったのは、広域採用に応じなかったため」「反組合的差別が行われたとは言えない」などの見解を示す可能性もあるという。
 昨年秋のILO勧告に慌てふためいた日帝政府が、その内容を覆すために、この一年、ILOに対して猛然と工作を繰り広げてきたことは間違いない。だが、それだけではILO勧告がここまでねじ曲げられてしまうことはありえなかったはずである。
 こうした結果を招いた責任は、すべて宮坂・チャレンジ一派と革同上村一派にある。彼らは、自らの反労働者的裏切りへのお墨付きをILOからも取り付けようとたくらみ、機関を私物化し、申し立ての「当事者」面をして、「四党合意」受諾の勧告を出すようILOに迫ったのだ。
 昨年秋のILO勧告は、五・二八反動判決を真正面から批判して闘争団を勇気づけた。闘争団は、そこから再び不屈の闘志を燃え立たせた。ところが国労本部は、そのILO勧告を闘争団圧殺の刃に変えてしまうために全力をあげたのだ。
 これは、日帝政府の窮地を救う完全な利敵行為である。全世界の労働者をたぶらかし、国際的な労働者階級の連帯を破壊する許しがたい裏切りだ。誇り高い国労の名は、全世界の労働者の面前で泥まみれにされたのだ。
 宮坂・チャレンジと上村革同を、もはや一刻も早く国労本部から引き降ろさなければならない。

 団結権守りぬく鮮やかな闘い方

 日帝は、東京高裁の反動判決と歪曲されたILO勧告の発出によって、国鉄闘争を解体しようと狙っている。それは、全労働者から団結権を奪い取り、不当労働行為との闘いそのものを圧殺するための攻撃だ。
 これに対して、国労組合員は「四党合意」撤回の労働委員会闘争という新たな武器を手に、立ち上がっている。これは、団結権を守り抜くためのきわめて鮮やかな闘い方だ。敵階級が労組法も労働委員会制度も押しつぶそうとたくらみ、労働委員会自らがこの攻撃に屈服・加担しつつある現状に対して、労働委員会への申し立てという形をとった反撃が始まったのだ。
 この闘いをすべての国労組合員の闘いに拡大し、その支援運動を全労働者の闘いとして発展させよう。「四党合意は新たな国家的不当労働行為だ」という叫びを、今こそ全国、全世界にとどろかせよう。
 敵権力とそれに屈した者たちの不正義性を暴き出し、確信も固く現局面の闘いを推し進めよう。

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週刊『前進』(1983号2面3)

闘争団支え集会 「当たり前の労働運動」を実感 愛媛 

 十月十五日、松山市内で開かれた「がんばれ! 国労闘争団 十・一五愛媛集会」に参加しました。国労愛媛地区本部による制動をはね返して、県下の労働者が多数集まりました。
 「一人ひとりが闘う労働運動を構築する決意で闘争団を支えよう」と呼びかけ人があいさつし、七・一国労臨大のビデオが上映されました。「四党合意」撤回の地労委闘争に立った国労組合員からもメッセージが寄せられました。
 大きな拍手の中、九州から駆けつけた闘争団の仲間が登壇しました。
 「中曽根・国家権力は、総評をつぶし、憲法に代えて天皇を据えるために国労差別をやってきた。首を切った犯人が『人道的』という言葉で自分の犯罪を免罪するのが四党合意だ」「歯を食いしばって国労に残っている組合員と、再度直接結びつきたい」「定期大会に向け、提案させない、採決させない闘いを全力でやる。再々度、社会文化会館を取り囲もう」という訴えに、全員が拍手でこたえました。
 各産別の労働者が決意を述べ、「これまで『連帯する会』で頑張ってきたつもりだったが、ともに闘う姿勢で新たに始めよう」というまとめの提起が行われ、「裁判で勝てるか負けるかが労働運動じゃない。破産法をめぐる闘争で、弁護士は『勝ち目はない』と言ったが、街頭に打って出て勝利した。許せないから闘うのが労働運動だ」という訴えのもと、団結ガンバローが会場を揺るがしました。
 「うれしくて涙があふれそうだった」と後日感想を語ると、「これが当たり前の労働者の闘いだ」と労働運動の先輩に言い返されました。こうした闘いが、四国の地からも力強く芽を伸ばそうとしています。
(投稿/愛媛 民間労働者S)

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週刊『前進』(1983号3面1)

「アメリカ式プラグマティズム教育が荒廃の原因」と叫ぶ黒田
 反米民族主義で教育改革の先兵に

 JR九州労の大量脱退問題を皮切りに、カクマル=JR総連の組織的な対立・亀裂・崩壊が激烈に進行している。カクマルは今、三十数年前に革共同から脱落・逃亡して以来の最大の危機に突入しているのである。こうした中で、反革命通信『解放』九月十八日付号に「十七歳の暴発に思う」(辰野一平)と題する、明らかにファシスト頭目・黒田寛一の肉声と断定できる文章が掲載された。黒田を先頭にカクマル中枢は、JR総連以上に惨状を呈しているカクマル教労メンバーを上から恫喝し、子どもたち・少年たちと対決して治安管理的立場で抑圧せよと公言している。その意味でこれは、カクマルが日帝の教育改革−教育基本法改悪攻撃、改憲攻撃の先兵となることを宣言したものである。カクマル・黒田の反米民族主義を丸出しにしたファシスト的「教育論」を徹底弾劾し、カクマル=JR総連打倒、教育改革−教育基本法改悪阻止、改憲阻止の歴史的決戦に総決起していこう。

 「神戸謀略」デマ運動の惨めな破産で教労組織が大混乱

 辰野署名のこの文章は、黒田寛一の肉声そのものであり、黒田のファシストとしての本性をあからさまに示しているものである。
 まず論文の題名を「十七歳の暴発に思う」としていること自身、カクマルの反革命的な感性と思想を体現している。カクマルにとっては、少年たちの現実は「暴発」として非難し憎悪し敵意をもってののしる対象でしかないのだ。
 カクマル辰野の主張を結論的にまとめてみると、゛十七歳の暴発の原因は、戦後アメリカに押しつけられたプラグマティズム教育だ。戦後教育はもともと根本から間違っている。したがって教育労働者は、結束して荒れた子どもたちから自分の身を守るべきだ゜ということである。この主張は、カクマルが、日帝・森、石原らの教育改革攻撃のファシスト的先兵に転落していることの証拠だ。
 なぜ今、カクマルはこのような主張をまき散らし始めたのか。その背景には、JR総連=カクマル組織の大崩壊と一体の、カクマル労働者組織、とりわけ教育労働者組織における大動揺と大混乱がある。
 カクマルは九七年五月に神戸で起きた小学生殺害事件に対し「CIAによる謀略」なるデマ宣伝を行い、子どもたちを追いつめているのは帝国主義の根本的な矛盾がもたらす社会的危機そのものであるという階級的真理を否定してきた。そうすることで、子どもたちの現実を見据えることから逃げまわり続けてきた。
 しかし、「神戸謀略」デマ運動は大破産をとげた。『解放』九八年新年号では「来たるべき二十一世紀に向けた反権力闘争のひとつのメルクマール」と天まで高く掲げた「神戸謀略」デマ運動が、今や『解放』紙上には一行たりとも登場しない。とりわけ「神戸謀略」デマ運動の先頭に立ったカクマル教育労働者組織は、現場から浮きあがり、みじめに大破産をとげた。
 他方、深刻化していく少年事件の中でカクマルは、神戸事件の時のように「十四歳の少年にできるはずがない。CIAの謀略だ」と破廉恥なデマを流布し続けることができなくなってしまった。とりわけカクマル教労組織は、必死に目をそらそうとしてきたにもかかわらず目の前にある「学級崩壊」や不登校、いじめ、自殺などにまったく対応不能になり、混乱を深め、揺れに揺れて「カクマル性」を崩壊させていった。それを示したのが『新世紀』と右翼反共雑誌風に改題したエセ『共産主義者』一八七号(今年七月発行)の「特集 教育の反動的再編を許すな」であり、「『学級崩壊』をどうする?」などの諸論文であった。
 この惨状に驚いた黒田がカクマル教労組織にタガをはめるために教育問題に言及したのが、辰野論文だ。そこで黒田がわめいているのが「教育の荒廃の原因は戦後のアメリカ式プラグマティズム教育だ」という主張なのである。その思想は、戦後憲法を「マッカーサー憲法」と呼び「自主憲法制定」を要求する天皇主義右翼と寸分たがわない。
 黒田は、昨年二月の『解放』矢久安仁論文で「新ガイドラインこそは……日本をば、ハワイにつぐ『アメリカの第五十一番目の州』たらしめようとしているヤンキー権力者の意図を軍事的に露出させた」ものと言って、反米民族主義むき出しの主張を満展開した。この矢久論文を教育問題に適用し、「戦後のアメリカ式プラグマティズム教育が人間性を破壊した」として、「『心の教育』『愛国心の涵養(かんよう)』(が必要だ)」と唱え始めたのが、辰野の論文なのだ。
 『解放』紙上では、辰野の論文掲載後、立て続けに『新世紀』一八七号の巻頭言や掲載論文に対する批判と疑問や、それに対する弁明の駄文が掲載されている。黒田の指示にもとづいて、カクマル組織内部で批判と恫喝が繰り広げられているのだ。
 JR総連に続き、教労組織においても、カクマルの組織的な大混乱と危機が噴出している。危機にあえぐカクマルをさらに追撃し、JR総連=カクマル打倒、教育改革攻撃粉砕・改憲阻止の闘いに総決起しよう。

 カクマルの主張は中曽根・森・石原の教育論とウリ二つ

 問題は第一に、今起きている少年事件の原因は何か、ということである。
 辰野は「教育の荒廃は、根本的には、戦後のプラグマティズム教育が半世紀にわたって推進されてきたことによって蓄積されてきた」「戦後民主教育なるものは、アメリカ帝国主義の強力な統制・規制のもとに、アメリカ式プラグマティズム教育を導入して強行的に推進してきたことによって形成された」と言う。そして「五十年間の蓄積として『努力・辛抱・根性』が死語と化す社会がつくりだされてきた」「躾(しつけ)どころか人を人とも思わない現在のキレたり暴れたりする子供たち……これこそがアメリカ式プラグマティズム教育の必然的帰結なのだ」と非難する。
 この主張は、翌号の山岡署名の投稿では「教育荒廃の根拠は、一九八〇年代の中曽根式『教育改革』にあるのではなく、アメリカ式プラグマティズム教育だ」とさらに露骨に強調されている。まさに日帝・森や中曽根、石原らの主張との酷似に驚くばかりである。
 辰野の言辞を、以下の文章と比べてみてほしい。「(教育基本法は)アメリカが日本を解体するという目的のもとにつくった。それが今日の教育の崩壊の一つの原因」「アメリカ式プラグマチズムと英国流の功利主義とフランス流の個人主義、そのような要素がいまのような秩序のない国家をもたらした原因」。これは、中曽根康弘の著書『二十一世紀日本の国家戦略』からの引用である。黒田と中曽根の主張は、何ひとつ違わない。
 日帝は今、「日本の伝統や愛国心を否定する戦後教育が、教育の荒廃を生み出した」なるデマで「戦後教育」を攻撃している。このとき、同じ反米ナショナリズムの立場から「戦後教育」を攻撃しているのがカクマルなのだ。
 さらに「努力・辛抱・根性」「躾」を徹底せよと叫ぶにいたっては、「子どもを叱れ」「がまんを教えよ」「体罰も必要」と叫ぶファシスト石原慎太郎の「心の東京革命」とまったく一緒である。
 そもそも労働者人民にとって「戦後教育」とは何か。その核心中の核心は、戦前・戦中の「天皇と国のために死ぬことのできる国民」づくりのための侵略教育との決別である。そして今、日帝中枢から噴き出している教育改革の衝動は、教育の戦後的なあり方を全面的に解体し、再び天皇と国に命を投げ出す「国民」をつくる教育へ大転換させようとしているものだ。その核心が教育基本法改悪−憲法改悪攻撃である。
 このときカクマルは、日帝と同じ立場から教育基本法と戦後教育を攻撃し、その改悪の先兵へと成り下がったのである。

 「13歳までに母語身につけよ」

 さらにカクマルが、日帝の「心の教育」を尻押しする立場から「日本語教育の徹底」を求めていることを弾劾しなければならない。
 辰野は言う。「いかに『心の教育』『愛国心の涵養』をうたってみても、教師も子供も、それを身につける感性的精神的土台をすでに喪失している」と。
 注目すべきは、「心の教育」に反対しているのではなく、゛『心の教育』『愛国心の涵養』を推進すべき゜という立場から、゛しかし今の子どもには、その感性的精神的土台がすでに喪失されている゜と嘆いている、ということである。
 さらに続けて「次つぎにうちだす教育施策はこの人間的土台をますます破壊する。その典型が英語教育の進行であり低学年への導入である」と言い、黒田の著書『実践と場所』から引用して「子供は十三歳までに母語(母国語)をキチンと身につけなければ思考力ができない」「母語(注・日本語のこと)における述語論理を身につけることなく、主語論理としての英語を便宜的に使うことによって結果解釈的思考や機能主義的発想によって思考力や思弁力が破壊されてしまう。英語教育の低学年への導入などというプラグマティックな政策は、『心の教育』そのものの土台をより一層ほりくずしていく」
 黒田は排外主義をむき出しに、「日本人は、母語である日本語の述語論理を身につけることで、思考力、思弁力を身につけることができる」と言い、これに対して日本語を母語としない人は「結果解釈的思考や機能主義的発想によって思考力や思弁力が破壊され、感性的精神的土台を喪失し、人間的土台が破壊される」と言うのだ。
 昨今支配階級の中でさかんに叫ばれている「英語の公用語化」論自体は、帝国主義間争闘戦にかちぬくために打ち出された、非常に反人民的なものである。しかし黒田の主張は、これにファシスト的・反米民族主義的に反発する保守反動勢力の愛国主義的な反対論とまったく同一の代物だ。

 「暴発」「異様」憎み 「荒廃」「無法者」と人民総体を罵倒

 問題の第二は、カクマルの徹底したファシスト的人民蔑視(べっし)と、少年たち、子どもたちへの憎悪・敵視である。
 カクマル辰野は、少年事件について、「十七歳の暴発」「その異様性」「数の多さと形態のむごたらしさ」「動機の不可解さ異様さ」「人を殺すことへの罪悪感がまったくない」と非難する。さらにそれが子ども総体の問題であるとして、「子供たちの精神的荒廃と心の冷ややかさ」「子供総体の感性も心もすさんでいる」「無法者の如(ごと)くふるまう学級崩壊の子供たち」と言う。
 しかしカクマル辰野においては、問題は子どもだけにとどまらない。「五十歳前後から下の親や教師もまた、社会的主体としての人格的基盤が欠損したピーターパン人間」「親も教師もこの十七歳少年の厚い基盤をなしていることを肝に銘ずるべき」と言って、労働者人民総体を、ファシスト的不信感をもって罵倒(ばとう)しているのだ。
 少年事件について、その少年個人の人格や家庭環境など個人的な問題にその根本的原因を求める立場と、われわれはまったく無縁である。起きている事態は、社会の現実に対する違和感と拒否感を申し立てている必死の人間的な叫びであり、問題にされなければならないのは、こうした事態にまで少年たちを追い込んでいる帝国主義社会の末期的な危機にこそあるのだ。起きている事態の原因を個々人の問題に求める主張はすべて、帝国主義社会の危機と矛盾を弁護するための論理にほかならない。
 教育労働者はもちろん、苦闘の極みに追い込まれている少年たちもその親も、人間的に生きることを否定されている現実の中で、必死に人間的に闘っている存在である。そしてこの現実の変革を求めている存在−解放の主体なのである。このことを否定しては教育など成り立たないのだ。
 カクマルが、帝国主義社会が引き起こす矛盾を帝国主義者と同じ立場で擁護して、少年たち、その親、教育労働者を敵視し罵倒していることを、徹底的に弾劾しなければならない。

 「教育労働者は結束して荒れる子供たちにたちむかえ!」

 問題の第三は、教育労働者は何をなすべきなのか、という問題である。
 カクマル辰野は、実践方針を提起している最終章に「教育労働者は結束せよ!」という見出しを立てている。では何に向かって「結束する」のか? 「荒廃した子供たちによって蹂躙(じゅうりん)されている職場にたちむかう」「暴走する子供たちにたちむかう」ために、である。
 ここにはまず、カクマル教労メンバーの絶望的・内面崩壊的な孤立が前提にある。「現場の教育労働者たちの多くは、よるべき組織も仲間もなく、背後には厳しい鞭(むち)と監視の目を感じながら、殺伐とした教室に通いつづけている」と辰野は書いている。まさに「神戸謀略」デマ運動の大破産で大混乱し、茫然(ぼうぜん)自失に陥っているカクマルの心情が吐露されているではないか。
 だからこそ辰野は、「教育労働者は暴走し荒廃した子供たちにたちむかえ」と絶叫するのだ。
 ここで、「団結せよ!」という労働者的な言葉ではなく「結束せよ!」となっていることにも大きな意味がある。カクマルの言う「結束」とは、支配階級を打倒するために教育労働者を始め労働者階級が団結して闘うこととは、まったく正反対の意味なのだ。支配階級に対して団結して闘うのではなく、「暴走する子供にたちむかう」ための「結束」なのだ。結局この結論は゛荒れた子どもたちから教育労働者がわが身を守るために、学校を正常化しろ゜ということであり、支配階級の教育改革に全面協力し、管理体制の強化と愛国心教育の最悪の先兵と化していくということだ。
 排外主義と反米民族主義に染まりきったファシストどもが教育労働運動に「左翼」面して登場することなど、絶対に許してはおけない。カクマルの本性を暴きつくし、カクマル打倒の闘いを教育労働運動の中からも広範に発展させよう。
 日帝の教育改革−教育基本法改悪攻撃、改憲攻撃、そのための教育労働者に対する管理強化、団結破壊・教組破壊の攻撃に対して、教育労働者が団結して真っ向から闘うことこそ、起きている「教育矛盾」の唯一の解決の道である。
 教育改革攻撃の先兵=カクマルを粉砕して、教育改革−教育基本法改悪阻止の全人民的な大闘争を巻き起こそう。二〇〇一年「日の丸・君が代」決戦に決起しよう。教育労働者はその最先頭で闘おう。
〔上原祐希〕

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週刊『前進』(1983号3面2)

教育改革国民会議 新潟で公聴会弾劾 傍聴者からも憤りの声

 十一月四日、新潟県労働組合交流センターは、ホテル新潟で行われた「教育改革国民会議」公聴会を弾劾する闘いに立った。
 全国四カ所で行われた地方公聴会の最後であり、教育改革国民会議が十二月に提出する最終答申のためのセレモニーでしかない。これを受けて日帝・森政権は来年の通常国会を「教育国会」として教育改革−改憲へ突き進もうとしている。
 新潟駅前の街頭宣伝後、会場前に登場し、公聴会参加者にビラを手渡した。「改憲と戦争動員のための教育改革反対」の鮮明な主張が注目を集めた。ほとんどの人が受け取り、じっくりとビラを読んでいた。タクシーで会場にきた参加者も降りるとすぐビラを受け取りに来た。傍聴した労働者も「実質的な論議がない。委員の大宅映子の質問は改革必要の誘導尋問でしかない。セレモニーそのもの」と憤りを表していた。
 森・中曽根は教育改革攻撃により、教育労働者の闘いを圧殺し、「国家のために命を投げ出せ」という教育に変えようとしている。
 既成の政治勢力が教育改革を容認しているため、ビラを手にして教育改革の中身を知り、驚いている人が多い。「国民会議」が進めようとしている教育改革の内容をもっともっと暴露することが必要である。教育労働者の闘いも始まっており、これと連帯して反撃の闘いをつくりだそう。
 なお当日、公聴会弾劾の声をあげた勢力は、労組交流センター以外にいなかった。JR九州労問題で組織的危機を深めるファシスト・カクマルはこの闘いから完全逃亡し、反労働者性を示した。 (Y・S)

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週刊『前進』(1983号3面3)

資本攻勢&労働日誌 10月31日〜11月10日
 ●失業率3カ月ぶりに悪化
 ●自民が公務員制度改悪へ
 ●国立教労に賃金返還要求
 潜在失業者412万人に 労働力特別調査

●10月31日 総務庁の発表では、9月の完全失業率は前月より0・1ポイント高い4・7%となり、3カ月ぶりに悪化。完全失業者数は、前年同月比3万人増の320万人で5カ月ぶりの増加となった。労働省の発表では、有効求人倍率は、前月から横ばいの0.62倍であった。
◇総務庁が8月労働力特別調査結果を発表した。(要旨別掲)
◇経済企画庁は「IT化が生産性に与える効果について」と題するレポートを発表。「高い生産性を得るためにはIT化を行うだけでなく、組織のフラット化を進める必要がある」と、ITリストラ・合理化を資本に促した。
●11月1日 連合は1、2の両日2001春季生活闘争中央討論集会を開いた。「゛上げ幅春闘は終わった゜という人もいるが、中小からすれば上げ幅、賃上げ原資を(企業から)いくら取るかが問題だ」と賃闘否定への反対意見が出た。
◇労働省は近畿ブロックと沖縄県に対する緊急雇用創出特別奨励金の発動期間を9カ月間延長した。
●2日 JC(金属労協)が2001年闘争シンポジウムを開いた。電機連合・鈴木は、「一時的な景気回復があっても安心できる状況ではない」と賃上げを否定。日経連・成瀬が講演。「日本のホームレスに栄養失調者がいない」などと暴言を述べ批判が広がっている。
●7日 自民党行政改革推進本部は、公務員制度改革について、国家公務員法などで定められた公務員の身分保障の廃止も視野に取り組む方針を固めた。(朝日夕刊)
●8日 全労連や純中立労組でつくる2001年国民春闘共闘委員会が発足。「賃金の底上げ・最低規制」重視の方針に、「大幅引き上げの平均要求を掲げるべきだ」(建交労)という意見が出た。
◇全国私教連(全労連系)発表の私立高校・中学の学費滞納調査によると、不況やリストラの影響で私立高校1校あたり13.4人が学費を滞納していることがわかった。
◇韓国の大宇自動車が、事実上倒産した。全体の2割にあたる約3500人の人員削減などをめぐり労資の意見が折り合わなかった。
●9日 国立市の小中学校の教育労働者91人が「正規の手続きを取らずに勤務時間内に組合活動を行った」として、都教委は賃金返還を要求することを決めた。
●10日 電機連合は「派遣労働者に関する実態調査」を発表。常用型派遣労働者では81.2%が、登録型派遣労働者では82%が今後2〜3年の雇用について不安を感じている実態が明らかとなった。
◇来春卒業予定の大学生の就職内定率は63.7%。過去最悪だった前年同期を0.1ポイント、高校生の就職内定率は42.5%で、最悪だった昨年同期の41.2%を1.3ポイントそれぞれ上回ったものの依然厳しい状況にあることが労働省・文部省の調査でわかった。

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週刊『前進』(1983号3面4)

10・21沖縄県民大会に参加して 新聞の的外れな論評に怒り
 東北 学生 月山詩野

 十月二十二日のある新聞では、゛かつての熱気どこへ゜などと、沖縄の闘いの現局面が消極的なとらえ方で書かれていました。しかし、この見方は絶対に間違っていると思います。
 演説された方が゛サミット以後、米軍の訓練が強化されている゜と訴えていました。戦争会議=サミットが終わった今、サミット景気の大破綻(はたん)をとおして振興策が幻想であることが暴かれている中で、基地建設を強行しようと、沖縄人民に凶暴に襲いかかっています。ますます強まる闘争圧殺・生活破壊攻撃、朝鮮侵略戦争準備体制に突入しているがための軍事演習強化の中で、沖縄人民が立ち上がることの困難性は極まっています。闘うという意志表示自体が、とてつもない攻撃を受けることを意味します。しかも振興策という攻撃により、沖縄人民は分断され、団結を奪われています。
 しかしそんな中でも、しかも選挙も近く、各地で催し、または、仕事のある土曜に重なったにもかかわらず、二千人あまりの人びとが大会に集い、デモまで貫徹したことの意義は、本当に大きいと思います。
 実際に参加している人は基地撤去を強く訴えあい、闘うという熱意に満ちあふれていました。人民の根底からの決起が、大会で表面化していると感じました。
 ある参加した方が、「大きな動きがおこれば、いつでも集まれる力が県民にはある。(参加人数が少ないことを)心配していない」と話したそうです。これは当然の真実であって、新聞はまったく的のはずれた視点で沖縄闘争をとらえていると思います。
 私は全学連沖縄現地行動隊への決起をとおして、賛成派住民の流動化を確かに感じ取りました。直接には現れていなくても、現実のものとして沖縄闘争が膨張しているということだと思います。
 沖縄人民と連帯し、その闘いを指導する勢力として登場するという立場において、県民大会を勝利的に総括することが必要だと思います。そして沖縄人民の闘いの爆発を支え、ともに闘う本土における労働者人民の運動を組織することが、今こそ私たちに求められていると思います。
(写真は10・21沖縄県民大会の最前列の名護住民)

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週刊『前進』(1983号4面1)

米バブル経済の崩壊の始まり
 ハイテク株が1日で2割暴落景気減速と原油高で収益鈍化
 島崎光晴

 九月から十月にかけて、米ハイテク部門を代表する企業の株価が次々暴落し、米株価全体も急落した。米経済で大型優良銘柄が一日に二〜三割も暴落するのは二九年恐慌以来のことだ。四月の史上最大幅の株価暴落ですでに景気は減速しており、それに加えて原油価格の高騰とユーロ安が米企業収益を鈍化させつつある。株安による逆資産効果や不良債権化の兆しも出始めている。四月暴落と九−十月急落で、すでに米経済バブルの本格的崩壊が始まっている可能性もある。世界大恐慌の本格化がいよいよ目前に迫った。

 4月暴落に次ぐ10月の急落 優良銘柄総崩れは29年以来

 米株価は九月半ばから十月にかけて急落を繰り返し、十月にはダウ平均が一万ドルの大台を割り込んだ。一万ドル割れは三月以来のこと。十一月になっても、大統領選の得票再集計、新大統領の権威の低下などに対する不信から依然として不安定な動きを続けている。
 特に重大なのは、九月と十月にハイテク大企業の株価が暴落したことだ。九月にはインテル株が一日だけで約二〇%も下落した。十月にはヤフー株が二日間で三〇%近く下がった。アメリカ・オンライン(AOL)株も一日で一七%も下落した。さらにIBMも一日だけで一時は二〇%も下がった。
 十月半ば時点で、九月初めの高値に比べてインテルは約五〇%、ソフト大手のオラクルが三〇%、シスコシステムズが二五%も暴落している。すべて米ハイテク部門を代表する企業だ。
 九七年のアジア通貨・経済危機以降、米株価は何度も急落している。しかし今回は従来とはまったく違う。一日だけでハイテク大企業の株が二〜三割も暴落したのは初めてだ。しかもハイテク株の中でも゛最優良銘柄″が暴落しているのだ。まさに二九年恐慌以来の事態である。米経済はまったく新しい局面に入ったと見なければならない。
 なぜハイテク大型株が暴落したのか。直接には七−九月期の企業収益、あるいは収益予想が下方修正されたからである。たとえばIBMの場合、七−九月期決算は売上高が前年同期比三・〇%増、純利益が同一一・四%増だった。しかし事前の予測を下回ったため、決算発表の翌日にはIBM株が暴落、ダウ平均は市場が開いてわずか十五分間で四〇〇ドルも急落した。他の企業でもまったく同じように、収益の下方修正で株が暴落している。
 収益が赤字になったわけではない。依然として売上高も収益も増加している。ところが若干の下方修正だけで、暴落しているのだ。普通ならありえない。

 ネットバブルの後の投機も瓦解

 なぜこのような事態になったのか。少し時期をさかのぼって考えてみよう。
 米株価は九五年からバブル化した。九八年秋にはロシア経済危機、ヘッジファンドの経営危機から株価は急落し、金融恐慌寸前に至った。このパニックに対して政策金利が引き下げられたが、それはバブルの再膨張を招いた。そうしたバブルの再膨張、バブルの引き延ばしの中心になったのが、九九年のインターネット関連株の投機的な高騰だった。ネット企業は、ストックオプション(自社株購入権)という報酬を最大関心事にしているため、赤字覚悟、赤字無視の経営を基本にしている。にもかかわらず、株高期待が続く中で集中的に買われた。このため、ハイテク株や新興株の多いナスダック(米店頭株式市場)の株価は、九九年に八五・六%も上昇した。
 しかし、このネットバブルは、今年三月から動揺し、四月十四日の暴落によって基本的に崩壊した。ネットで書籍の注文を受けるアマゾン・ドット・コムなどの大赤字が問題視されるようになったからだ。四月暴落以降、新興ネット企業の株は相手にされなくなり、一転してネット企業の淘汰が進んでいる。アマゾンの株価は十月には、昨年末の最高値から八割も暴落している。
 一方で、この四月暴落の後も株式市場への資金流入が続いた。一−八月に株式投資信託には累計で二千五百億ドルもの新規資金が流れ込んだ。すでにネットバブルは崩壊していたため、この資金が向かったのはハイテク大型株だった。たしかにそれまではハイテク大企業の収益は二割を超す増益を続けてきており、一段の増益が続くとの期待から株が買われた。しかし実際は、将来の収益を過大に評価したものだった。だから、九月以降に収益が下方修正されると、たちまち暴落することになったのだ。
 特に、ナスダックはわずか数社の株価が暴落するだけで、全体も急落する状態にある。十月初めの時点で、ナスダックの株式時価総額は約四兆八千億ドルに上るが、うち三割が時価総額上位五社の合計で占められている。インテル、シスコシステムズ、マイクロソフト、オラクル、サン・マイクロシステムズの五社だ。ナスダックは九月初めから十月初めまでで約一兆ドルの時価総額が吹き飛んだが、うち半分は上位五社の株価暴落による。

 利上げと株安で景気が減速 ハイテク市場も頭打ち傾向

 では、なぜ企業収益が鈍化したのか。
 第一に、米景気自体が減速している。七−九月期の鉱工業生産の伸び率は年率二・八%で、九九年一−三月期以来の低水準に落ち込んだ。同じく七−九月期の実質GDP伸び率は前期比年率二・七%に減速した。特に民間設備投資は前期の一四・六%増から六・九%増と、急減速した。自動車販売は五月から前年比でマイナスに転じ、住宅着工も五月から前月比マイナスになっている。
 景気減速の主な要因は三つ。まず、インフレ圧力の強まりに対して、昨年から政策金利が六回にわたって引き上げられたことである。五月の利上げで、フェデラルファンド(FF)金利も公定歩合も、九一年以来の高さになった。
 また、四月の株価暴落で、株高に依存した個人消費の伸びが鈍化している。ただし貯蓄率はマイナスであり、依然として貯蓄を取り崩し、借金をしながら消費を拡大している。個人消費にはなお巨大なバブル的要素があるわけだ。
 さらに重大なのは、ハイテク部門の拡大を支えてきた市場に変化が起きている。パソコン出荷台数が昨年までの二割増のペースから勢いが衰えている。パソコン普及率はすでに全世帯の六割に達しており、市場が飽和化しつつある。「今のところインターネットを利用していない米国民の五七%が今後もネットを利用する意思がない」との世論調査もある。さらに世界の携帯電話需要の予測も秋になって下方修正された。
 このため、半導体の株価指数は九、十月の二カ月足らずで四四%も暴落した。製造業の生産高は、ハイテク分野を除くと昨年秋から停滞したままである。ハイテク分野が頭打ちになると生産はマイナスに転じざるをえない。

 原油価格が3倍以上に高騰 ユーロ安で対欧輸出も打撃

 企業収益鈍化の第二の背景は原油高である。原油高は石油製品価格の上昇、卸売物価の上昇をもたらし、インフレ圧力になるとともに、企業のコスト増加、収益押し下げにつながる。
 原油価格を原油先物価格のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で見ると、九八年には一バレル一一・三ドルまで低下していた。それが九九年から上昇し、今年九月には三七ドル台までになった。実に三倍以上もの高騰だ。この上昇度合いは、第一次石油危機の四・五倍には及ばないものの、第二次石油危機の二・七倍、湾岸戦争の際の二・一倍を上回っている。OPEC(石油輸出機構)による増産の実施や、九月の米帝による国家備蓄の放出にもかかわらず、依然として高値にある。
 では、なぜ原油価格が高騰しているのか。まず需給関係。今年上半期には、中国の石油消費量が日本と肩を並べ米国に次ぐ規模に膨らんだ。原油価格が安かった八〇年代後半から九〇年代にかけて、アジア諸国は石油多消費産業を膨れ上がらせた。それが歴史的には原油価格を押し上げている。とはいえ、「今春から世界的に原油供給が需要を上回っている」との統計もある。需給関係が値上がりの最大要因とは見れない。
 最大要因は、原油取引に投機的資金が入っていることにある。ニューヨーク市場での原油の取引量は一日で一億五千万バレルで、世界全体の需要の二倍にも及ぶ。実際の石油需要による取引は全体の三割にも満たないとされ、投機的取引が支配している。このニューヨークでの原油先物相場が世界の現物の原油取引の相場を決める構図になっている。
 ところが、このニューヨーク原油先物市場に、今年になってヘッジファンドなどを含めて大量の資金が流れこんだ。米株式市場が頭打ちになる中で、新たなもうけ先を求めて、株式市場から原油市場に投機的資金が移ったわけだ。米株式市場の時価総額は約二十兆ドルに対し、原油先物の契約残高は百億ドル強、資金が少しシフトするだけで原油価格は跳ね上がる。
 要するに末期的な株バブルが、資金の原油市場へのシフト、それによる原油価格の上昇と米企業収益の鈍化をもたらし、その結果としてハイテク大型株が暴落したのである。これはもはや゛株バブルの自家中毒″と言うしかない。
 さらに、米国の石油精製能力の低下、在庫の減少がある。精油所はピーク時の三百カ所から半減し、給油所も二十万カ所から半減している。それは、八〇年代にレーガン政権が石油価格への国家規制を撤廃し、完全な自由市場としたからである。しかも九〇年代には、大リストラによって不採算設備が廃棄された。九〇年代半ばからは、株式市場での評価が第一義的になり、目先の収益を上げるために在庫がぎりぎりまで減らされてきた。かつて四十日分あった在庫は、今では一カ月を下回っている。
 つまり、規制緩和・撤廃、大リストラ、株高追求という、まさに八〇年代−九〇年代の米経済のあり方こそが、現在の原油高を引き起こしてしまったのだ。米経済のどうしようもない行き詰まりが現れている。

 「強いドル」政策がついに限界に

 企業収益鈍化の第三の背景はユーロ安である。ユーロ安・ドル高は、米企業の欧州向け輸出の競争力を低下させてしまった。輸出依存の企業であるほど、さらにはヨーロッパに直接投資をしている企業であるほど、ユーロ安が打撃となっている。
 欧州単一通貨ユーロは、昨年一月に導入された。当初の予想以上にもろさが目立ち、下落基調をたどってきた。九月には欧米日がユーロ下落を阻止するために協調介入を実施した。米欧日の協調介入は、九五年のドル高転換の際の円売り・ドル買い介入以来五年ぶりのこと。しかしユーロの下げは止まらず、十月には対ドル相場で最安値を更新した。十月末時点で、ユーロ導入以来の下落率は約三割にも達している。
 ユーロはなぜこれほど下げているのか。もともと通貨の基盤をなす財政政策と金融政策が不安定であるからだ。゛通貨の番人″と言われるECB(ヨーロッパ中央銀行)も、国際的な信認を受けていない。
 さらに米帝が、ユーロをたたくための争闘戦を陰に陽に不断に仕掛け、ドルに対抗できないようにしている。昨年のユーゴスラビア爆撃もそうした狙いを含んでいた。つまり、争闘戦としてユーロ弱体化政策を展開した結果、めぐりめぐって米企業収益の鈍化につながってしまったわけだ。
 その上で、実際にも欧州から米に資金が流出している。正確には、米から欧州への資金流出より、欧州から米への資金流出の方が多い。欧州↓米という流れは、ユーロを売ってドルを買うことになり、ユーロ安・ドル高をもたらす。欧州から米への資金の流れは、米株式・債券市場への流入という形と、欧州企業による米企業の買収・合併という形の両方がある。この資金の流れこそ、米経常赤字を補てんして、ドル高と株高の最大の支えとなってきた。国外からの資金流入と株高は表裏一体の関係にある。
 ところが、そうした資金の流れによるユーロ安が、米企業収益を鈍化させて株価を暴落させるに至った。九五年以来の「強いドル」政策が、ユーロ安をつうじて米企業の打撃として跳ね返ってきたのだ。かといって「強いドル」政策をやめれば米株価は大暴落する。「強いドル」政策はついに自縄自縛に陥りつつある。

 株安の「逆資産効果」始まる 銀行などに不良債権の兆し

 以上のように、企業収益の鈍化からハイテク大型株が暴落した。しかし、一日で二〜三割もの暴落は、単に収益鈍化だけでは説明しきれない。これほどの暴落は、市場における投資家心理が激変したことを背景にしている可能性がある。この数年、株価は何度も急落したが、そのつど再上昇してきた。そこには「株価はまた上がる」という長期的な期待が働いていた。しかし今回は、この期待が崩れた可能性がある。
 もしそうであるなら、四月暴落が分岐点だったことになる。つまり、四月暴落をもって米株バブルの本格的崩壊が始まっているということだ。四月暴落による景気減速、景気減速に加えた原油高・ユーロ安による収益鈍化、それによる株価の一層の急落という過程をたどっている、と見ることもできる。
 日本経済の場合、バブル崩壊は九〇年初めの株価暴落をもって始まったが、九〇年秋には株価が持ち直すこともあった。しかし九一年になると景気の減速から株価がさらに暴落、その時点でバブルの崩壊であることが歴然とした。すでに米経済は、そうした過程に入っている可能性もある。
 特に注目すべきなのは、日本のバブル崩壊後と同じような問題が起きつつあることだ。一つは株安による逆資産効果である。すでに株価の下落で、ストックオプションの権利が行使できなくなっている。自社株買いを大量に繰り返してきたため、抱え込んだ株価に含み損が発生してもいる。株安による逆資産効果は今後、個人、企業、金融機関、国家財政収入などすべてで発生せざるをえない。
 もう一つは、銀行に不良債権が生じる兆しが出てきた。銀行は個人・企業に直接貸し出しているだけでなく、ノンバンク経由で消費者ローンを増加させており、これが不良債権化するのは必至である。日本でそうだったように、投機が崩壊して初めてその恐るべき実態が表面化するのだ。また、金融機関はネット新興企業向けのベンチャーファンドにも出資しており、ネット新興企業のパンクで、これも不良債権化する。
 今後、インフレ圧力の強まりに対して政策金利を引き上げるなら、株価はさらに急落していく。逆に、株価維持のために政策金利を引き下げても、株価と景気に対してそれほどの刺激とはならないだろう。むしろ、金利引き下げでも株価が反応しなくなった時こそ、株価は大幅で持続的な暴落に向かうにちがいない。日本の場合も、九〇年代前半に金利を引き下げても株価がいっこうに回復しなかったが、同じようになるだろう。
 さらに今年の米の経常赤字は、貿易赤字の増加によって四千億jを超える。過去最大だった昨年を二七%も上回る。もはやいつドル不信に転じてもおかしくない状況にある。ユーロ安・ドル高による米企業収益の鈍化に見られるように、「強いドル」政策にも限界が現れ始めている。ドル暴落と米株価暴落とが一体で進むのは避けられない。
 かつて二九年に大統領に就任したフーバーは、たちまちにして大恐慌に見舞われた。新大統領がゴアであれブッシュであれ、いずれにしろ「第二のフーバー」の道が待っているだけだ。
 このような米経済の影響を受けて、日本経済の危機はさらに深まりつつある。
 まさに世界大恐慌の本格化は指呼の間に迫った。プロレタリア世界革命の現実化する情勢が目前に到来しつつある。確信も固く二十一世紀に向かおう。

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週刊『前進』(1983号4面2)

けしば杉並区議レポート
3団体が呼びかけ厚生省へ申し入れ介護保険料、利用料の減免要求
 「家族はないのか」と本音 介護の社会化のうそ明白
 全国ネット結成誓う

十一月六日に介護と福祉を要求する杉並住民の会と大阪・高槻市の健診介護要求者組合、東大阪・国保と健康を守る会介護要求者部会の呼びかけによる厚生省への申し入れ行動が行われた。
 この行動には全国二十の団体の百二十人が参加した。十月一日からの第一号被保険者からの保険料徴収開始にあたって全国の自治体に抗議が殺到したように、介護保険に対する怨嗟(えんさ)の声が全国で高まっている。そうした高齢者が介護保険でどんなに苦しめられているかという怒り、介護現場の怒りを厚生省に直接たたきつけたことによって厚生省を徹底的に追いつめた。交渉で厚生省は現場の苦しみについて何も知らず、具体的な事実を突きつけられてまともに答えられないことが浮き彫りにされた。この現場の怒りの爆発で介護保険は必ず廃止に追い込むことができるという確信を強めた。

 午後一時からの交渉には、厚生省からは熊木介護保健課課長補佐をはじめとした三人の若手官僚が出席した。まず三団体からの厚生大臣あての要望書を読み上げ手渡した。
 要望に対する厚生省の最初の回答は保険料の徴収の減免はしない、利用料の減免もしないということを始め、完全な居直りであった。「保険料を負担して、その代わり給付を受けるというのが介護保険の趣旨。保険料は払わないけどサービスを受けたいというのはいまの考え方ではない」という厚生省の回答に会場から一斉に怒りの声があがった。
 医療福祉労働者が、保険料の五段階の設定が所得の少ない高齢者に著しく重い負担になっていることを追及した。厚生省の答えは、「高い水準であれば払えない人も出てくるけど、介護保険はわずか月額三千円という水準だ」「所得の高い人からもっと多くの保険料を取るべきだというのは理解を得られない」というものだ。
 これにたいして会場の怒りが沸騰した。「月額三千円が払えないんだ」「高齢者の所得は年金しかない。いままで税金でやっていたのに、なぜ保険料を払わなければならないのか。この上保険料を取られてどうして生きていけるのか」。激しく弾劾する高齢者に厚生省の役人は顔面蒼白(そうはく)で何も答えることができない。
 東大阪の介護現場の労働者が実例を挙げて追及した。「ある人は保険料を取られるようになって食費を切り詰めてカップラーメンを食べて、翌日は一番安いパンを買ってきて、カップラーメンの汁につけて食べている。またある人は、週三回医者にいかなくてはならなくて、今度介護保険の保険料を取られるようになって食事を一日一回に減らした。こういうお年寄りをどうするのか。この介護保険の保険料と一割の利用料で、お年寄りを生きていけなくする制度だ。お年寄りを殺してるんだ。どう責任をとるのか」
 この追及に対して厚生省は何も答えることができない。「少しでもいいから高齢者の方も払って」と、苦し紛れの逃げ口上を言おうとするが、すかさず「払えないから言っているんだ」「強制的に天引きしているではないか」と厳しい追及が飛んで絶句した。
 厚生省は、「払えないと言うけれど、息子や娘がいる場合は家族が払うべきだ」と開き直った。「息子も娘もおらん。どうしてくれるんだ」「あんたの話は人の情けが何もないではないか」という高齢者の弾劾に答えられない。介護保険の「介護の社会化」がペテンであり、家族に負担を負わせるものであることを自己暴露した。
 答えに窮する厚生省の役人に対して、「みんなが言ってることがわかったのか。なぜこういう話が出てくるのか、介護保険そのものが間違っているからだ」と八十歳の男性にさとされる役人。「こんな制度はもうアウトだ。だけども廃止になるまで待っていられない。待ってたら死んでしまう。だから減免しろと言っているんだ。その心がわからないのは人間じゃない」とさらに畳みかける。
 私が、上荻のBさんの事例をあげて追及したことに対して、厚生省の役人はまったく理解できない。介護の現実を本当のところは何も知らないのだ。他の施策があるかのようなペテン的な言い逃れを図ったが、介護保険の中でそうした施策が打ち切られてきていることを突きつけられて、それも破綻(はたん)した。
 高槻市議の小西弘泰さんが、自治体の保険料や利用料の減免について追及したところ、厚生省は「自治体の減免は認められない。一般財源を繰り入れるべきではない。非課税世帯の減免について一律にやるのは良くない。個別のケースについては個別に見るべきだ」と回答した。これに対し「個別に各市町村が必要であると判断した場合は減免措置を取って良いということですね」と追及したら、「個別についても減免をするのは良くない」と言うのだ。
 続いて小西さんが、要介護認定の問題について一次判定プログラムを作成した学者自身が「要介護認定一次判定方式の基礎となった統計モデルの妥当性」と題する評価レポートを作成し、その中で一次判定ソフトが使い物にならないものであることがはっきりと出ていることを追及した。厚生省は一次判定ソフト検討委員会に出された他の資料は公開しているにもかかわらず、この報告を「取り扱い注意」として公開していないのだ。厚生省は「専門家でないので答えられません」と完全に答えに窮し、後ほど文書で回答するということ、さらにこの交渉の中で出された現場の声をどう考えるのかを、併せて文書で回答することを約束せざるをえなかった。
 最後に東大阪の住民が、「高齢者はいま、死ぬか生きるかの瀬戸際にある。それなのに何も回答しないとは何事か。利用料が払えなくて介護が受けられない人がたくさんいる。そういう人たちに何も答えを出さないとはどういうことか」と鋭く追及し、必ず文書で回答することを確約させた。

 厚生省交渉を終えて総括の会議がもたれた。高槻の小西さんが「きょうの行動を一回限りで終わらせず全国に広げるために、各地で行われている闘いを介護保険に異議あり全国ネットワークという形で横に結んで、その力で今後闘っていきたい」と提案した。さらに介護保険に対する違憲訴訟を起こそうということ、また要介護認定審査会に対する異議申請を集団で起こすことを追求することが提案された。この提案は圧倒的な拍手で承認された。
 総括会議で杉並住民の会の代表は「老人は世直しの先頭に立たなければならない。この思いはきっと全国の人に通じ、広がっていくと思っている」と発言した。私は、杉並が先頭になって介護保険に反対する全国的な大衆運動を起こしていく決意を述べた。都政を革新する会の長谷川英憲代表が「きょうの熱気を全国に持ち帰って、もっともっと運動を広げよう」と訴えて、力強い団結ガンバローで誓い合った。
 杉並住民の会は、杉並三十六町の代表五十人、八百人の会員をもって六月三日に結成された。介護が必要となった高齢者が生きる希望を取り戻し、笑顔を回復する、そのための介護を保障させる。それができる政治をつくるために住民が団結した。その闘いが高槻、東大阪、相模原など全国のネットワークに広がろうとしている。
 私自身その先頭で介護保険の廃止に向けて闘い、またそのためにもファシスト石原都知事打倒へと闘っていきたい。

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週刊『前進』(1983号5面1)

臨検法案の成立絶対阻止せよ 衆院での可決強行弾劾
 朝鮮侵略戦争準備の大攻撃

 日帝・森政権による船舶検査=臨検法案の強行成立の動きが急ピッチで進んでいる。日帝は新安保ガイドライン体制の確立を急いでいる。日帝の侵略戦争国家への転換を労働者階級人民に押しつけようとしているのだ。こんなことをけっして認めるわけにはいかない。国会では、すべての政党が日米安保体制を承認している。船舶検査=臨検法案を阻止するために闘う政党はひとつもないありさまだ。衆院での強行可決に怒りを燃やし、参院での可決・成立を許さない闘いに総決起しよう。

 実質審議も行わずスピード可決狙う

 日帝・森政権は十月二十七日、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律案」(船舶検査=臨検法案)を閣議決定し、国会に提出した。そして、十一月九日に衆院安全保障委員会で虎島防衛庁長官が趣旨説明を行った。この趣旨説明は、たったの三分間で済まされた。その後、十日と十四日のわずか二日間の審議で、十六日には安保委員会で強行可決された。十七日には衆院本会議で強行可決され、参院に送付された。この暴挙を怒りを込めて徹底的に弾劾する。
 日帝・自公保政権は、労働者人民の怒りが燃え上がらないうちに、臨検法案を何がなんでも強行成立させることに全力をあげているのである。森・自公保政権を構成する公明党や保守党は、臨検法案強行成立の推進者となった。それに加えて、衆院安保委員会の委員長の座をを占める民主党が臨検法案に賛成し、積極的推進者となったことで、この実質審議なしのスピード可決が可能となったのだ。
 安保堅持の社民党や安保容認の日本共産党は抵抗らしい抵抗を行うこともなく、この臨検法案の衆院での強行可決を容認した。
 日帝支配階級は、臨検法案を強行成立させることをとおして、新ガイドライン体制を確立・強化し、侵略戦争国家体制づくりを急速に推し進めようとしている。二九年型世界大恐慌過程への突入と帝国主義間争闘戦の激化、とりわけ日米争闘戦の果てしない激化の重圧によって、日帝は帝国主義としての存亡の危機にたたき込まれている。日帝は、朝鮮・中国−アジアへの侵略と侵略戦争をもって、「危機からの脱出」「国難打開」を行おうとしている。それを労働者階級人民に押しつけ、道連れにしようとしているのだ。
 九九年ガイドライン闘争に立ち上がった労働者人民は、今こそ臨検法案の強行成立阻止の声を上げなければならない。国会内野党の屈服と無力を突き破る、労働者人民の嵐(あらし)のような革命的大衆行動を巻き起こさなくてはならない。急速に戦列を整備し、参院での臨検法案強行成立を阻止するために全力で決起しよう。

 「安保の効果的運用」をうたう

 ところで、今国会に提出された臨検法案の狙いはどこにあるのか。
 まず、臨検法案がガイドライン関連法の一部を構成しているということだ。臨検法案の付則に、周辺事態法と自衛隊法の改悪案が同時に盛り込まれている。周辺事態法の「対応措置」の中に、「後方地域支援」や「捜索救助活動」と並んで「船舶検査活動」を加えることが規定されている。このことによって、周辺事態法は、九八年四月に国会提出された周辺事態法の政府原案に完全に戻るということだ。九九年ガイドライン国会での「修正協議」なるものが、いかにペテン的なものであったかを示して余りあるということだ。
 さらに臨検法案では船舶検査活動=臨検を自衛隊が実施すると規定している。このため自衛隊法第一〇〇条の一〇第一項に自衛隊の任務として臨検任務を加えようとしている。
 次に、臨検法案第一条(目的)で、船舶検査活動=臨検は「周辺事態法と相まって、日米安保条約の効果的運用に寄与」するとしていることだ。このことは周辺事態法第一条(目的)で、「周辺事態に対応して我が国が実施する措置」を定める、としていたことと比較すると、明らかにエスカレートしている。臨検法案では、露骨に「日米安保条約の効果的運用」をうたっているのだ。この臨検法案を周辺事態法の中に取り込み、周辺事態法そのものを「日米安保条約の効果的運用」のためのものとしてしまうことを狙っているのである。まさしく゛新安保ガイドライン″のための法案なのだ。
 それは、臨検法案第三条で、自衛隊が船舶検査活動=臨検を行うことと「(自衛隊が行う)船舶検査活動に相当する活動を行う日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対して後方地域支援」を行うことを一体のものとして規定していることからも明らかだ。米軍が行う船舶検査活動とは臨検そのものだ。対象船舶を武力で制圧し、「積み荷や書類」を検査するのだ。これは戦争行為そのものである。
 これと同じことを自衛隊が行うのだ。そのために、海上自衛隊に特別警備隊を新設し、舞鶴基地にヘリコプター部隊を新設した。さらに、高速ミサイル艇を導入し、護衛艦に機関銃を装備しているのだ。
 臨検法案は、「安保条約の効果的な運用」のために、自衛隊が臨検=武力行使することを合法化しようとするものなのだ。
 それは、臨検法案第六条の武器使用の規定を見れば明らかだ。安保委員会での答弁で虎島防衛庁長官は、自衛隊が船舶検査=臨検を行うのは「国連で決まった場合とか旗国の承諾がある場合であるから……武器の使用ということは想定しにくい」と言っている。ではなぜ武器使用が条文に盛り込まれているのか。
 それは、旗国が承諾しない場合でも、その国の船舶を臨検することを想定しているからだ。そうした船舶を「不審船」と決めつけ、武力で脅し、制圧して臨検しようとすれば、当然、反撃もある。それに応戦するために「武器の使用」を合法化しているのだ。

 有事立法・改憲の攻撃に大反撃を

 このように臨検法案は、新安保ガイドライン関連法の一部をなすものであり、周辺事態法を「安保条約の効果的運用」のための法律とすることを明示するものである。それは日帝・自衛隊が、新安保ガイドラインの発動によって米軍と一体となって武力行使し、侵略戦争に突入することを合法化する戦争法案である。
 臨検法案は、戦争法案、侵略戦争法案であるから、当然にも有事立法の一環をなすものである。日帝の有事立法制定・憲法改悪の動きは実に急ピッチで進行しているのだ。
 日帝は、歴史的没落過程に突入し、帝国主義として存亡の危機に直面している。そこからの脱出をかけて、朝鮮・中国−アジアへの侵略と侵略戦争への道を突進し始めた。日帝は経済危機が深まれば深まるほど、政治危機が深刻になればなるほど、「国家存亡の危機」を絶叫し、侵略と侵略戦争にのめり込んでいくのだ。そのために、侵略戦争国家体制づくりと軍事大国化の攻撃を次々と繰り出してきている。それが、有事立法・改憲攻撃なのだ。
 だが、こうした日帝の侵略戦争国家化=有事立法・改憲攻撃こそ、戦後史上最大の階級決戦を爆発させずにはおかない。日本の労働者階級は十一・五労働者集会で、「労働者人民の我慢も限度に達している」「資本主義体制の危機は、社会と政治の根本的変革の条件を成熟させている」「二十一世紀を労働者が主人公となる時代、闘う労働運動の輝かしい勝利の時代にしよう」と訴え立ち上がった。
 有事立法阻止・改憲策動粉砕の歴史的階級決戦は、すでに始まっている。新安保ガイドライン体制の確立・強化のための臨検法案の衆院強行可決を徹底的に弾劾しよう。臨検法案の強行成立の攻撃に対して、今一度怒りと危機感を新たにし、参院での強行成立阻止のために総決起しよう。

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週刊『前進』(1983号5面2)

軍報速報 空港公団幹部宅に爆破戦闘 11・8川崎市 

 革命軍は以下の軍報を発表した。

 革命軍は、一一月八日午前三時一〇分、神奈川県川崎市中原区上平間一四〇二にある新東京国際空港公団運用本部運用管理部管理役の吉沢裕の自宅に対して、爆破戦闘を決行した。この威力絶大な戦闘によって、吉沢宅の玄関のドアを噴き飛ばし、家中の窓ガラスを粉々に叩き割った。
 吉沢は空港公団幹部として、農地強奪=農民殺しだけを目的とする暫定滑走路計画を推進してきた。昨年一二月三日の工事着工以後、「軒先工事」を強行し、敷地内にフェンスを張り巡らせて包囲し、強制収容所のようにしてきた張本人である。そして、敷地内農民に対して警察権力を差し向け、検問と尾行を繰り返して営農と生活を妨害し、敷地内農民を二四時間監視する暴挙を行わせてきた。怒りの鉄槌を下して当然の極悪人である。
 革命軍は、一一・八戦闘を八・二六戦闘、九・一三戦闘を引き継ぎ、これをさらに発展させる戦闘として連続的に勝ち取った。革命軍は、日帝・政府・運輸省、空港公団、千葉県、警察権力の暫定滑走路建設強行を絶対に実力で阻止する。一年間決戦を宣言し、新たな闘いに決起している反対同盟との血盟を貫き通して断固として立ち上がる。さらに強力なゲリラ・パルチザン戦闘を連続的に叩きつけることを宣言する。
 二〇〇〇年一一月八日
 革命軍

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週刊『前進』(1983号5面3)

ガイドライン演習許すな! 全国で日米共同演習に反撃

 二日から十八日まで全国で、日米共同統合演習が強行された。この演習は、「在外日本人の輸送」や「米兵の捜索救難活動」などを行うガイドライン演習であり、三日まで行われた米韓合同演習フォール・イーグルと一体の朝鮮侵略戦争演習だ。これに対して全国各地で粉砕闘争が闘われた。

 対ゲリラ戦・陣地構築の実戦演習 関西・あいば野

   関西反戦共同行動委員会の労働者・学生百六十五人は十二日、滋賀県のあいば野現地闘争に立った。
 あいば野演習場で行われた共同演習では、米軍機から武器などを落として敵地に陣地を構築する「物料投下演習」や迫撃砲を使った夜間実弾射撃訓練を行った。さらに「対ゲリラ・コマンドウ」訓練も行い、朝鮮・中国侵略戦争の意図をむき出しにした演習だ。
 住民の頭上を米軍機が低空飛行し、地元住民から怒りの声があがった。
 集会では代表の入江史郎さんが「世界で始まった民衆の決起と連帯し、闘う」と決意を述べ、東灘区住民の会の山本善偉さんは「神戸港でも軍艦を入れる動きがある。北富士と連帯して闘う」と発言した。
 全学連の西本吉伸副委員長が基調報告。侵略演習を阻止し、改憲阻止決戦を爆発させようと訴えた。また十一月三十日の憲法調査会へのファシスト石原の出席粉砕を呼びかけた。
 続いて関西合同労組、部落解放同盟全国連、泉州住民の会、全国沖青委、婦民全国協、全学連が力強く決意表明した。さらに国賀祥司泉佐野市議がまとめを提起し、この闘争を出発点に改憲阻止決戦をつくり出すことを訴えた。
 今津駐屯地は警備の自衛官が棍棒を持ち、いつになく緊迫した構え。「侵略演習をただちに中止せよ」と基地内に向かってシュプレヒコールをしながら、基地を一周するデモを行った。最後に駐屯地前で「演習を中止せよ」の申し入れを貫徹した。人民の怒りで侵略演習を包囲する、勝利感あふれる闘いだった。

 演習中止せよと基地包囲のデモ 中四国・岩国

   中四国反戦共同行動委員会は七日、日米共同軍事演習の「非戦闘員退避訓練」会場となった岩国基地に対し、断固たる抗議行動に決起した。
 岩国基地正門前に結集した中四国地方の労働者・学生は、「日米共同軍事演習を中止せよ!」「朝鮮人民虐殺の軍事演習を許さないぞ!」と力強いシュプレヒコールをたたきつけた。
 上空では米軍機FA18ホーネットなど、演習に参加している戦闘機が低空飛行を繰り返している。耳をつんざく激しい爆音の中で、演習中止を求める申し入れ行動を行った。
 基地内では、迷彩服を来た米軍兵士が軍用犬を配置させている。また転び公妨のデッチあげを狙う警察に対して、米軍の警備隊が「今、接触がありました」などとアピールした。
 この米軍当局、海上自衛隊当局に、さらに激しい怒りをたたきつけ、緊張した雰囲気の中で、広島大学の学生が、申し入れ書を読み上げた。
 「『非戦闘員退避』訓練なる演習は、朝鮮半島への強襲揚陸作戦、敵陣の軍事制圧、そして空爆作戦といった朝鮮侵略戦争のための実戦演習にほかならない。この侵略軍事演習をただちに中止せよ。われわれは南北分断打破を求めて闘う朝鮮人民と連帯し、そして闘う沖縄県民と連帯し、日米帝国主義による侵略戦争を絶対に阻止する」。
 申し入れを貫徹した労働者・学生は、ただちに岩国基地を包囲する戦闘的デモに決起。基地全体が見渡せる今津川の河岸まで約三`のデモを行い、滑走路直下での集会を行って、この日の行動を締めくくった。
 職場で抗議の座り込み闘争などに決起した労働者の先頭で、反戦共同行動委員会は闘い抜いた。

 「戦死出る」公言の自衛隊に怒り 福岡・築城

   福岡県椎田町の航空自衛隊築城基地正門前で六日、「京築住民の会」の主催で日米共同統合演習に反対する集会が開催され、反戦共同行動・福岡の労働者や学生も参加した。
 集会では、「京築住民の会」事務局が「六日深夜の午前二時五十分頃、築城基地周辺を、飛行機がすさまじい爆音をまき散らして低空飛行し、その後F15戦闘機が四機飛び立った」と怒りを込めて報告した。
 他の発言者も、今回の日米演習が新ガイドラインに基づく初めての実動演習であることや「周辺事態」が発生すれば自衛隊が米軍とともに戦争を開始することを暴露・弾劾し、朝鮮半島や中東への自衛隊の派兵を許さないために闘おうと訴えた。
 七日には、空自と米軍の輸送機と輸送ヘリが避難者役の私服姿の自衛隊員二百人と米兵五十人を山口県の岩国基地から築城基地まで輸送する「非戦闘員退避訓練」が行われ、避難者の集結地点とされた岩国基地では、完全武装した誘導隊が「避難者に紛れたテロリストの身柄を拘束する」という訓練を行った。
 九日には北九州市沖の海上で、撃墜された米兵を海自ヘリで捜索・発見・救助する「後方地域捜索救難訓練」が行われた。今回の演習について、自衛隊幹部は「米国と敵対している国に、救助している自衛隊を攻撃するなと言っても無理。自衛隊に戦死者が出るだろう」と発言している。
戦争突入を作戦化しているのだ。
 今回の日米共同演習は、朝鮮侵略戦争計画「5027」に基づく軍事演習として実戦さながらに行われたのだ。

 「おおすみ」強襲揚陸訓練と対決 長崎・佐世保

   佐世保基地では十、十一日に、強襲揚陸艦「おおすみ」を動員して「避難民退避訓練」が行われた。
 長崎県佐世保市島瀬公園では六日、佐世保地区労主催で「日米共同統合演習反対集会」が開催された。反戦共同行動・長崎の労働者も参加し、五百枚のビラをまききった。
 全国からかき集められた学生カクマルは、JR九州労の分裂問題を追及されるのを恐れ、会場の隅で肩を寄せ合うのみで、惨めな姿をさらけ出した。

 日米演習と一体の空自演習弾劾 石川・小松

   富山大学学生自治会と北陸労組交流センターは十二日、石川県の航空自衛隊小松基地への抗議闘争に立った。
 小松基地所属の第六航空団も、二日から行われた日米共同統合演習に参加した。同時に、六日からは、那覇基地所属のF4ファントム戦闘機とともに航空自衛隊総合演習を強行した。
 今回の演習は日本全国を戦争体制にたたき込む、新ガイドライン体制の発動そのものの侵略戦争の実戦演習だ。しかし、日本共産党も地元金沢大学のカクマルも完全に闘争を放棄した。
 富山大学の学生と北陸労組交流センターの労働者は、怒りを込めて空自小松基地へ抗議の申し入れを行った。小松基地の渉外室長は「(空自総合演習は)あくまで通常の防空のための演習」と言い訳をしたが、「今回の総合演習は日米共同演習と一体ではないか」と厳しく追及されると「全体としてはそうかもしれない」などと開き直った。参加者は一時間にわたって徹底的に弾劾した。また激しい爆音被害に対する抗議も行った。

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週刊『前進』(1983号5面4)

連載 2000年日誌 阻もう!戦争への動き 11月8日〜14日
 原発建設の促進へ振興法案 建設省が収用法改悪を表明

●特殊警備船を3海保に配備 昨年三月の「不審船」への「海上警備行動」事件を口実に海上保安庁が導入を決めた高速特殊警備船の一番艦「つるぎ」の進水式が川崎市の日立造船神奈川工場で行われた。来年二月に新潟海上保安部に配備、同三月には金沢海保に「のりくら」、舞鶴海保に「ほたか」が配備される。高速警備船は約二百二十dで、四十ノット以上のスピードが出せる。また二十_機関砲や赤外線捜索監視装置などを備えている。(9日)
●日米が「捜索救助活動」訓練 自衛隊と在日米軍が新ガイドライン関連法の「周辺事態」での協力項目である「後方地域捜索救助活動」訓練を行った。「米軍機が洋上に墜落」との想定で、福岡県の航空自衛隊芦屋基地の救難機や海上自衛隊、米空軍の救難ヘリなどが参加。芦屋基地の北約六十`の海域で遭難者役の米軍パイロットを見つけ救助。山口県の米海兵隊岩国基地に搬送し、米軍の医療隊に引き渡した。(9日)
●与党3党が原発振興特措法案提出の方針 自民、公明、保守の与党三党が「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法案(原発振興特措法案)」を今臨時国会に提出する方針を固めた。同法案は、原発建設促進のために、原発が立地する自治体の公共事業に対する国の補助率を、通常の五〇lから五五lにかさ上げするほか、自治体の地方債発行に特例措置を設ける。(9日)
●船舶検査法案が審議入り
 船舶検査法案が、衆院本会議で審議入りした。また民主党は、「次の内閣」会議で、同法案に賛成する方針を決めた。(9日)
●建設相が土地収用法改悪を表明 森喜朗首相の諮問機関である「産業新生会議」の会合で、扇千景建設相が、「道路整備など物流効率化を進めるため」として、公共事業用地の収用手続きの迅速化などを柱とする土地収用法改悪案を来年の通常国会に提出する方針を表明した。土地収用法の改悪は一九六七年以来の抜本改悪となる。(9日)
●佐世保で「在外日本人」救出訓練 自衛隊と在日米軍が、海上自衛隊佐世保基地(長崎県)で、非戦闘員を艦船とヘリコプターで救出する輸送訓練を行った。同基地の海に面した佐世保教育隊を「混乱する外国の港湾」に見立て、基地内の体育館を現地の大使館やホテルなどに想定し、自動小銃を構えた陸自第一空挺団の「誘導隊」約四十人が救出作業を「護衛」した。(10日)
●空自ヘリが緊急着陸 航空自衛隊那覇基地那覇救難隊のV107ヘリコプター一機が、エンジントラブルのため那覇空港に緊急着陸した。(10日)
●民主党が憲法論議本格化を正式決定 民主党は党内憲法調査会総会を開き「国際・安保」「統治制度」など五つの作業部会で憲法論議を本格化させることを正式に決めた。(10日)
●那覇市長選で堀川氏惜敗
 任期満了に伴う那覇市長選挙が投票・即日開票され、無所属新人で前市健康福祉部長の堀川美智子氏(社大、社民、共産、民主推薦、自連支持)は六万六千三百六十二票で、前自民党県連幹事長の翁長雄志(自民、公明、保守、無所属の会推薦)の七万三千五百七十八票に約七千票の差で敗れた。沖縄県知事、那覇市長がそろって保守系になるのは復帰後初めて。(12日)
●日米共同演習で米軍2機が墜落 北海道・奥尻島南約四十`の日本海で、米空軍三沢基地(青森県)所属のF16戦闘機二機が墜落した。二機は十一月二日から実施されている日米共同統合演習に参加しており、現場は日本海上の訓練空域で、日本側から二十四機、米側から十二機の戦闘機が参加して攻撃チームと守備チームに分かれて防空戦闘訓練を行っていた。二機は訓練中に空中接触し、そのまま墜落したと見られる。(13日)
●軍港移設へ積極姿勢 那覇市長選で当選した翁長雄志がマスコミのインタビューなどで、浦添市への移設を条件に返還が合意されている那覇軍港について、「SACO(日米特別行動委員会)合意を進めることが基地の整理・縮小を確実に進める。この時期を逃しては厳しい。浦添に積極的に働きかけていきたい」と述べた。(13日)
●小6・中3・高3で奉仕活動 森首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が、小・中・高への導入を求めていた奉仕活動を実施する学年について、「小学六年、中学三年、高校三年」との内容を最終報告に盛り込む方針を固めた。(14日)
●「自衛官募集業務」受託へ 那覇市長選挙に当選した翁長雄志が、「私は基本的に自衛隊を了解している。前向きに考えたい」と話し、那覇市が本土復帰の一九七二年以来拒否している自衛官募集業務の受託に応じる考えを示した。沖縄県内では現在、十三市町村が拒否している。(14日)

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週刊『前進』(1983号6面1)

司法審路線は日弁連の死 改憲阻む”人権の砦”守ろう
 葉山岳夫弁護士に聞く

 国会における憲法調査会の動きと並行し、十一月二十日には司法制度改革審議会の中間報告が出されようとしている。司法審路線を強行しようとする日弁連執行部を批判し、「司法改革」=憲法改悪・戦争国家化攻撃と闘う葉山岳夫弁護士(第二東京弁護士会)に、攻防の焦点を語っていただいた。(文責・編集局)

 臨時総会での激しい攻防

 十一月一日に開かれた日本弁護士連合会(日弁連・久保井一匡会長)臨時総会で日弁連執行部は、司法制度改革審議会の意を体し、中坊公平氏の強力な影響下に司法審路線を強行しようとしました。
 弁護士の年間三千人増員(司法試験合格者を年間三千人程度に増やす)、ロースクール(法科大学院)構想などを盛り込んだ「法曹人口、法曹養成制度並びに審議会への要望に関する決議案」をめぐる激しい攻防を、終日闘いぬきました。
 十一月二十日に出される司法審の中間報告に合わせて、その前にともかく日弁連執行部は、司法審の路線に忠実であることを示そうとした。「国民の信頼を決定的に損なってしまう」、大政翼賛会の「バスに乗り遅れてしまう」と言うわけ。そのために大々的に委任状を取る攻勢をかけてきた。その圧倒的な委任状で臨時総会をのりきろうとしたわけです。
 したがって、これに対する反対も非常に強くて、人権派の弁護士から筋の通った反論が多数出ました。しかし結局、議論そのものが十分に行われないままに、強引に動議を出させて、採決を強行しようとした。
 これに抗議して議長不信任、次いで副議長不信任の動議を提出。その不信任に対して、特に議長が勝手に指名した仮議長の強硬な議事運営に対して壇上で抗議をするという事態になったわけです。
 議案採決の結果は、賛成七四三七票、反対三四二五票だった。当日、会場に来ていた人間のうちでは、大体六対四、賛成本人出席五百八十三人に対して、反対本人出席三百六十二人だった。あとは委任状。特に遅れてきた二弁(第二東京弁護士会)の弁護士は十階の控室に入れられていて、そこでは圧倒的多数が反対だったということだ。
 討論打ち切り動議の時に、おそらく発言通告はまだ七十通以上あった。それを強引に打ち切って採決をした。審議はまったく尽くされていない状況であった。
 これは人権の砦(とりで)としての日弁連の、言うなれば死を意味するほどの大変な事態です。

 懲戒請求許すな

 その抗議に立っていた弁護士三人に対する懲戒請求が、「刑事弁護ガイドライン」推進派の弁護士らから出された(十一月八日付ほか)。その理由は、要するに「大声でヤジ、不規則発言を行った」「演壇に駆け上がって、議長団に詰め寄った」ことなどが、「著しく品位を損なう」ということ。ついに弁護士会内部で、弁護士の生命とも言うべき弁護権を奪うという反動的攻撃が開始されたということです。
 これに対しては全国の弁護士が総決起して、この懲戒請求攻撃を粉砕しなければいけない。そういう闘いをしていく。

 「司法改革」狙いは弁護士

 司法改革については当初、一九九四年の経済同友会の「現代日本社会の病理と処方」における司法改革の提唱から始まり、九五年十二月に行政改革委員会の第一次提言の中で司法改革が提唱され、そして経団連が一九九八年に司法改革についての意見を出す。さらにアメリカ政府が九八年十月、日本政府に対して規制撤廃要望書の一環として、四つほど提案している。一番目は弁護士人口の増加、二番目に隣接職業との提携の完全自由化、三番目に弁護士法人化の許容、四番目に広告の完全自由化など、弁護士業務の自由化措置を要求してきたという経過があります。
 この狙いは何かということですが、これはアメリカ財界、言うならばアメリカ帝国主義の外圧の問題と、その外圧を対抗的にとらえなおした日本独占資本主義そのものが「司法改革」と称して弁護士自治を突き崩し、弁護士及び弁護士会を徹底的にビジネス化という方向に変質させようとする動きです。その機関として昨年七月に司法審が設置されました。
 司法審は、「司法改革」を各種改革の一環のものとしてとらえている。では、国鉄改革とは何かというならば国労をつぶして総評を解体する、それを主たる狙いとした。政治改革とは小選挙区制を導入して憲法改悪をたくらむということの一環であった。行政改革は省庁の統廃合、再編成であり、いずれも日本政府およびその背景にある日本独占資本主義の意向に沿ったものでした。
 今回の「司法改革」の狙いは、弁護士および弁護士会が、憲法改悪を阻むところの人権の砦、護憲の砦であるという状況を突き崩すことが根本にある。その意味で「司法改革」は、各種改革と並んで日本の体制を根本的に変質させようとする一大反動攻勢だ。
 その尖兵(せんぺい)化している司法審のもとで、弁護士人口の大量増員を図り、そして本来規制緩和、自由競争になじまない人権擁護活動の領域に規制緩和、自由競争を持ち込み、そこで人権派の弁護士を駆逐し、ビジネス弁護士そのものに変質させる。そういう状況をつうじて人権の砦を崩壊させようとするたくらみです。
 司法改革という限りは、現在の司法の問題点、要するに人権擁護意識のきわめて薄い司法官僚のもとにある司法制度、現在の裁判制度について徹底的に解剖しなければならない。
 特に裁判官会議が形骸(けいがい)化している問題。裁判官の増員問題。それから最高裁事務総局を頂点とする、人事における官僚支配ですね。最高裁事務総局ににらまれた場合には裁判官の将来がないと言われる、官僚的な人事支配体制そのものを変革しなければならない。
 司法改革というのであればまず第一は、裁判所改革問題のはずだ。それを一切ネグレクトして、「司法改革」と称する攻撃を弁護士および弁護士会にしぼってきた。

 弁護士の大増員

 弁護士人口の増大というのは、一般的には何か聞こえがいいようですが、事柄はそう生易しいものではないということです。企業内弁護士、つまり企業に雇われて働く弁護士を大量につくる。それから公益と称して、政府あるいは地方自治体、その他、権力機関に働く弁護士を大量につくり出す。そこでの競争は誰が企業や体制にとって役立つかです。そうやって弁護士を体制側に引き寄せる。
 弁護士人口を増大させると、現在の弁護士の養成機関である司法修習所では決定的に不十分であるということで推進されているのがロースクール構想です。あくまで大量の弁護士をつくり出すことを意図しています。その結果もたらされるものは、弁護士自治の破壊です。人権擁護的な弁護士を駆逐する狙いがそこには貫かれています。
 「自由競争」と称する競争に打ち勝つのは、ビッグビジネスにほかならないわけです。弱者はますます圧迫され、強者が一人勝ちする、弱肉強食的な競争社会がより強まる。
 さらに弁護士の大幅増員によって、弁護士そのものの生活が危機に瀕(ひん)します。それは、生き残りをかけた競争意識を一層駆り立て、経営至上主義的なビジネス活動をつくりあげていく。要するに金もうけ第一主義ですね。その結果、弁護士の人権擁護意識や社会正義感、在野精神は、衰退せしめられる。

 戦前の弁護士は

 「司法改革」攻撃を前に「新たな戦前の開始だ」と問題を提起すると、アナクロニズムだと非難する弁護士もいますが、では戦前・戦中はどうだったのか。
 治安維持法と前後して弁護士資格が大幅に緩和された歴史があります。弁護士人数が数年の間に倍増するという中で、弁護士が窮乏化する。その弁護士が何を要求したのか。
 旧「満州国」の公務員には弁護士をあてろなどという要求です。これは、まさに侵略の尖兵です。
 さらに、弁護士会代表者が中国大陸に「天皇の軍隊」の慰問に出向いた。それから弁護士会として戦闘機をカンパするということまでして、帝国主義侵略戦争に協力をしていったわけです。
 来年二月九日に再度の日弁連臨時大会を用意している。その中で、弁護士事務所を法人化し、支店を設けることなどを認可することを決めようと狙っている。
 この弁護士会社化は、ビジネス弁護士化に拍車をかけることは明らかだ。東京の大事務所が地方都市に進出し、全国の大きな事件を手中におさめるという動きが加速されるだろう。同時に、地方の弁護士事務所を駆逐していくという動きでもある。

 弁護士の国家管理化図る

 さらに「司法改革」の一環として、恐るべき攻撃が進んでいます。
 その一つが、「刑事弁護ガイドライン」の動きとして現れている被疑者、被告人の公的弁護制度を導入するという動きです。公的弁護制度の運営主体は、法務省と連携し、最終的には法務省の管轄下に置かれる可能性もある。その運営主体の意に沿わない弁護人については、弁護活動そのものが排除される可能性が十分にある。
 これは弁護士の国家管理化を図る危険な動きです。例えば一九四一年に改悪された治安維持法の場合、司法大臣の指定する弁護人しか治安維持法事件を弁護できなかった。
 この「刑事弁護ガイドライン」で、特に推進側が譲らない点がいくつかあります。一つは、共同被告人の弁護について、本来は被告人一人について弁護人が一人であるべきだと打ち出している点です。被告団そのものをバラバラに解体することが狙いです。
 松川事件、あるいは三里塚闘争裁判や破防法裁判など、統一公判という闘いが非常に大きな成果をあげてきた。そのことによって松川事件では、デッチあげが暴露されました。
 デッチあげや冤罪(えんざい)との闘い、国家権力と真っ向から闘う人民の裁判でとりわけ威力を発揮してきたのが統一公判の闘いです。それに徹底的な敵意を示して、これを阻止しようとしている。裁判闘争を否定しようという意味で根底的な問題がある。
 それから、裁判記録の謄写・閲覧について、刑事裁判で使うためだけに制約する。真実を広く社会に訴え、大衆運動をつくって裁判闘争を闘おうとする場合に証言調書などを使わせないように非常な制約を課そうということです。
 かつて破防法裁判の証言集を出版しようとした時、中山善房裁判長が弁護人に非常に強硬に圧力をかけてきた。これを日常化しようという攻撃です。
 現在、こういう形で刑事弁護に対する恐るべき攻撃が「司法改革」の一環としてかけられてきている。

 全人民的反撃のチャンス

 政党が軒並み翼賛化する状況の中で、破防法も組対法も、昨年ガイドライン関連法を始めとする一連の反動法案に対して、弁護士たちも先頭に立って、アクティブな反対運動を展開してきました。それはつまり、一番に法的な側面で攻撃がかかってきているからです。憲法の理念に相反することを弁護士が敏感に察知して、そこで立ちはだかっているという構図です。
 まさに、憲法調査会の動きと相まって、攻撃は加速されています。そうしなければ今の体制が持たない、戦争をしなければ生き残れないというのなら、そういうものにはノーと言わざるを得ない。全人民的な対決の情勢が迫ってきている。
 つまり「司法改革」というのも、国鉄改革を含めて一連の攻撃ですよね。「四党合意」を飲ませようという動きと根っこはひとつなんです。そこを根底においてとらえた上で、全体をよく見渡し、全人民的な連帯の中で闘うことが、非常に必要になっている。
 それが端的に、十一月五日の労働者集会で示されました。私も公安刑事の弾圧を許さないために監視弁護にあたりました。公安刑事が「(警察の)中に入れて絞めてやろうか」なんてことまで口走る。闘う労働者人民に対する憎悪がむき出しです。
 こういう人権に対する攻撃を見過ごしてはならない。今回の懲戒請求攻撃を大々的に訴えて粉砕していかなければならない。弁護士にとって弁護権は命。その弁護士生命を奪うという、攻撃はそこまで来ている。これは重大な事態であり、絶対に許すべからざることです。安田弁護士の時や寺西裁判官の時もそうだったが、全国の弁護士が一斉に決起しなければならない状況だ。
 日弁連総会で決議が上がったからといって終わりではまったくない。むしろ闘いは始まりだ。弁護士法第一条に掲げられたところの人権擁護、弾圧・治安強化に抵抗する弁護士、これを擁護する弁護士会。それが憲法改悪を許さない砦となっている。だからそこを崩さなきゃいかんという攻撃がきている。
 そういう意味では広い、全人民的な反撃を組織するチャンスだ。向こうも余裕があってやってきていることではない。迫られてやってきている。ここが敵の弱点だ。だから、全人民的な連帯の中で闘うことの中に明るい展望があります。

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週刊『前進』(1983号6面2)

連載 部落解放運動−その課題と展望 第10回 広がる同住連の闘い
 対政府の本格的な闘争へ 同和住宅家賃値上げ反対

 全国十数万戸にわき上がる怒り

 三年前、政府、自治体は全国各地の同和住宅にたいして一斉に家賃値上げを開始した。部落解放同盟全国連合会は、これとの対決を日帝の部落解放運動解体、同和対策事業全廃との最大の決戦として、唯一、絶対反対を呼びかけた。
 九八年五月には、同和住宅家賃値上げ反対全国連絡協議会(略称・同住連)がスタートし、兵庫、大阪、奈良、広島、山口、福岡などで反対組合が続々と結成された。
 同住連の人びとの主張は何か。
 「同和住宅は、その辺の空地に建てた公営住宅とはわけが違う。もともとは、長年住み慣れた自分たちの土地や家があった。それを同和対策事業への協力のために、二束三文で役所に譲って同和住宅にかえさせたのだ。だから最初は、役所は『家賃などは取れません』と言っていた。それを今ごろになって、役所は『一般並みに家賃を取ります。払わなければ明け渡せ』と言ってきた。これこそ詐欺だ。いまさらそんなことを言うなら、もとの土地と家を返せ」
 「役所は、ただ住宅を建てて住民を押し込んだだけで、三十年間、いくら要求してもまともな修理ひとつもせずに放置してきた。そのくせ、家賃だけはこれから毎年上げると言う。民間の不動産屋でも、こんなひどいことはしない。役所は部落民を、まるで虫けらとしか思っていない」
 こうした住民の声は、どこの部落にも存在する。まさに、全国十数万戸といわれる同和住宅の住民全体の叫びである。

 一律低家賃は当然の権利だ!

 同和住宅の家賃が、一律で他の公営住宅に比べて安いのには理由がある。部落大衆は、住宅の建設、その入居、家賃の決定とその方法をめぐって、長年の血と汗の大闘争を展開してきた。部落ぐるみ団結し、鍋釜(なべかま)もって役所と何日も徹夜交渉する、何波にもわたって全国行進し、政府におしかける――そうした闘いで獲得した権利そのものである。この部落の闘いは、戦後の公営住宅全体を、政府、資本の収奪の意のままにさせない大きな影響を与えてきた。
 そこには、政府、自治体の恩恵などはひとつもない。部落大衆の徹底的な実力闘争によって、部落差別を温存してきた国の責任を認めさせ、せめてもの国家賠償として、一律低家賃を獲得してきたのだ。
 ところが、政府は九六年の公営住宅法の改悪にともない、世帯全員の収入に応じて家賃を決定する「応能応益制」を同和住宅にも適用してきた。応能応益制の適用は、同和住宅の家賃を二倍から六十倍にもつり上げるばかりか、部落民の闘いと権利意識を根こそぎ解体するためのものである。
 同和住宅の家賃を決定する原理は唯一、部落差別の現存である。部落差別が現存するかぎり、同和住宅は一律低家賃でなければならない。応能応益制は、部落差別の現存など、そもそも考慮に入れていない。あるのは、住民の収入の高低だけである。したがって、応能応益制の同和住宅への適用は、部落問題を最初から無視している。家賃の考え方を、その原理からひっくり返すものである。したがってまた、その一方的強制は、部落解放運動の暴力的な根絶、一掃としてしかない。絶対に許すことのできない部落差別攻撃なのだ。 
 これにたいして、解同本部派、日共全解連の態度はどうか。応能応益賛成、家賃値上げ万歳なのだ。各地の住民は、「値上げ反対」の声を発するやいなや、たちまちこの連中の激しい妨害に直面した。同住連運動は、本部派、全解連との激突をくぐり、自ら団結することによって初めて公然と登場した。

 「応能応益」白紙撤回をかちとれ

 同住連運動は、「家賃値上げ反対」「これまでの一律低家賃にもどせ」という、部落大衆の素朴な要求から出発した。その自分たちの要求が、同和住宅住民全体の要求であり、まったく正当な権利であることをつかみ、各地に反対組合という新たな団結を創造してきた。
 それはまた、各地の対自治体闘争に始まって、政府・建設省との大衆交渉に発展している。これにたいして政府国家権力は、自治体をけしかけ、住民を裁判に訴えるとともに、警察による弾圧をしかけるなど、同住連への恐怖をつのらせている。
 同住連の勝利の方向は何か。第一に、日帝との非和解的対決の思想である。日帝は、住宅家賃値上げ攻撃の中に、部落解放運動の根絶、一掃の狙いを込めている。「部落差別など金輪際問題にさせない」「部落民の権利主張など一ミリも認めない」ということである。その上に、あと一年足らずで奨学金の打ち切りなど、文字どおりの同和対策事業の全廃が控えている。さらに加えて、介護保険料をまきあげ、医療費をつり上げる。部落大衆は、飯も食えない状態に追いやられようとしている。
 住宅家賃値上げ反対の闘いは、これらの攻撃を許すのか否かの一切をかけた、天王山の決戦である。この決戦から引き下がることは、部落民自らの生存を否定することに等しいのだ。
 第二に、日帝による部落民への虫けら同然の扱いにたいする、差別糾弾闘争として闘うことである。応能応益制の適用は、もはや部落民の事情など一顧だにしない、部落民が死のうが生きようが知ったことか、ということだ。それは、日共を始めとする差別者どもを密集させけしかける、部落にたいする一大差別キャンペーンそのものである。
 住宅家賃値上げ反対闘争を、狭山闘争と結合し、こうした差別攻撃にたいする三百万部落民の差別徹底糾弾闘争として、根底からの爆発をかちとらなければならない。裁判闘争もまた、差別糾弾の場として闘おう。
 第三に、建設省を始めとした対政府闘争として本格的に発展させることである。
 日帝は、日米争闘戦の激化と世界大恐慌の危機にのたうち回りながら、ブルジョアジーの延命のための戦争国家化に死活をかけている。また、労働者へ資本攻勢をしかけ、戦後的諸権利を無慈悲に解体する攻撃に手を染めている。ここに、問題の根源がある。政府・建設省に応能応益の白紙撤回をせまる、数千、数万の大衆決起をまきおこそう。
 〔野山建作〕
 (シリーズおわり)

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