ZENSHIN 2000/07/31(No1967 p06)

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週刊『前進』(1967号2面1)

 「4党合意」打ち返したことは歴史的壮挙

 国鉄闘争の現局面と展望 7・15動労千葉を支援する会総会での提起

 続開大会中止に原則にもどろう

 中野洋動労千葉委員長が語る

 七月十五日、「動労千葉を支援する会」は二〇〇〇年度の総会を開いた。竣工なった「DC会館」に動労千葉組合員と支援の労働者ら百人が集まり、動労千葉と国鉄闘争を支援する運動の強化を誓い合った。総会では、国労闘争団の労働者が連帯のあいさつを行い、七月一日の国労臨時大会を受けて「闘争団は意気軒高だ。ともにスクラムを組んで闘う」と訴えた。これを受けて、動労千葉の中野洋委員長が「国鉄闘争の現局面と展望」と題して動労千葉からの報告を行った。中野委員長は、闘争団を先頭とした臨大の闘いを支持し、ともに闘う立場から、国労に問われていること、勝利の展望を明らかにした。以下、その要旨を紹介する。(編集局)

 第1章 「7月1日」に誰がダメージを受け誰が元気になったか

 二〇〇〇年七月一日、東京のど真ん中で、二十一世紀の日本の労働運動の命運を決する出来事が起こりました。それが、いわゆる「四党合意」を受諾するのか否かの、国労臨時大会をめぐる攻防です。
 何はともあれ反動派の、敵のもくろみをいったん粉砕したわけだから、大変な勝利の地平を切り開いたと大胆に総括すべきだと思います。これで国鉄労働組合という日本の戦後労働運動のしにせの労働組合が首の皮一枚でつながったということだけではなくて、日本の労働運動が闘う労働組合を新しくつくりあげる大きなきっかけをつくった。あわせて二〇〇〇年にかけた支配階級のもくろみを粉砕することに成功したのではないか。そのくらいでかい意味があると思います。
 七月一日に起こったことは、五月三十日に与党三党と社民党がつるんで「JR不採用問題」つまり千四十七名問題の「打開案」をまとめ、この「四党合意」を国労本部だけでなく国労全体の方針にするために臨時大会が招集されたことに端を発します。
 「四党合意」の中身は、「JRに法的責任がないことを認める」ことです。国労もわれわれも国鉄改革法のもとに差別・選別され、多くの仲間が解雇された。これを国家的不当労働行為と断罪して闘ってきた。「JRに法的責任がないことを認める」とは、明らかに国労の全面的な屈服に等しい。「国鉄改革法承認」を九九年三月十八日に臨時大会を開いて決めているから、政府にも責任がない。JRにも責任がない。そういう方針を国労中執が臨大で提案すれば大変なことになる。国労の在り方を根本的に転換させることになるから、当然、国労内外で大変な動きがある。
 問題はそれにとどまるのか。明らかにこの攻撃は、階級的な、つまり資本に対して闘おうというものを日本労働運動の中から完全に奪ってしまう攻撃です。この攻撃と、国労臨大をめぐって激突した。日本の労働運動に計り知れない影響を与えざるを得ない。
 ですから当日、国労組合員だけでなくて、国労を支援してきた多くの労働組合・労働者が集まった。異例のことだ。みんな直感的に、国鉄闘争の終止符が打たれたら日本の労働運動はどうなるのかと考えた。連合支配下で権利を奪われ、好き勝手に首を切られ、なんとかしようと思っている労働者は日本中に無数にいる。そういう労働者を、大きな幹に結集した時に巨大な力を発揮する。国労はそういう存在になっている。
 敵の側は、与党、社民党、JR資本、JR連合、そしてちょっとスタンスは違うがJR総連カクマル。その意を受けた国労本部、チャレンジグループ、日本共産党・革同の上村グループ。これに闘争団を先頭として猛然と反発する勢力が存在している。機関では少数派だが、国労二万八千の勢力全体では多数派だ。
 つまり、敵の攻撃と、それを国労内で手引きする連中と、それに反対する闘争団を先頭とした現場組合員、その勢力の中には動労千葉や国鉄闘争を支援する労働者・労働組合も存在している。そういう構造の激突が七月一日、朝八時半から夜九時すぎまで十三時間にわたって続いた。
 結果として、闘争団の諸君たちを先頭に最後は「演壇占拠」を敢行した。そこまで行ったのは、朝からの闘い、「四党合意」が出て一カ月、特に大会前一週間ぐらいの闘い、家族会の訴えなど、いろんな要素が「演壇占拠」という形でシンボライズされた。全体の総和の闘いが「演壇占拠」として実現されている。その「演壇占拠」で「四党合意」が粉砕されたわけです。
 形式的には「休会」ですから続開大会をいつでも開ける。だけど、この国家権力あげての攻撃を一応打ち返したことは、歴史的な壮挙です。
 もし「四党合意」が「多数決」で押し切られたら、今ごろ国労本部は裁判をどんどん下ろす状況に入っている。JR総連の組織攻撃は一気に火を噴くだろう。やはりここで押し返したことは非常に重要な意味を持っていると私は見ている。
 現象的には「休会」になりましたけれど、「四党合意」を葬り去ったことの意義を、国労組合員だけじゃなくて、日本の労働者たちは拍手喝采(かっさい)しています。
 このことによって決定的にダメージを受けたのは誰なのか。一番消耗しているのは野中(自民党幹事長)であり、運輸省です。
 一番元気になっているのは闘争団でしょう。労働者は負けることが多いけれど、やはり勝つことが大事なんだ。国鉄労働組合は久方ぶりに勝ったんじゃないですか。だから、大衆的には必ず活性化します。国労を取り巻く労働組合や文化人たちもホッと胸をなで下ろし、「よーし、これで行けるんじゃないか」という感じになっている。この構図を見れば、誰が勝ったか、誰が正しいかもはっきりしている。これほど正義のある闘いはないし、これほど正当性のあるものはないと思います。
 この緒戦の勝利を確信し、この次やるなら二千、三千決起する。そうするためにどうするかが当面の大きな課題だと思います。
 「四党合意」をめぐる国労サイドの議論を聞いておかしいと思うのは、これを「解決案」と考えていることです。たてまえは「JR不採用問題の打開について」という形をとっているけれど、「解決案」でも何でもない。これは明らかに闘争団を解体する、国労を変質・解体する敵の攻撃であることをはっきりさせることが大事だ。

 第2章 首切り容認派と絶対反対派の対立は非和解的な関係だ

 なぜならば、この「四党合意」を受諾することは、首切りを承認することになるんです。だから、七月一日は、首切りを認める側と首切りを認めない側との闘いだったわけです。これは非和解的関係である。労働組合は大衆組織ですから、いろんな考え方をもっている勢力がいて、一つの方針を形成するために何回も討論することが大事です。しかし、首切りを認めるか認めないかはイデオロギーの違いだとは思わない。首切りを認めるサイドに立つのなら、労働組合の外に出てもらわなければならない。
 「JRに法的責任がないことを認める」とは、現に千四十七名が整理解雇されているんだから、それを認めることになる。この方針をあえて採って全国大会を招集するということは、国労は分裂してもいい、亀裂が生まれてもいいということを前提としない限りできないですよ。
 仮に組織的分裂まで行かなくたって、埋めがたい溝ができることははっきりしている。そういうことをやるのは労働組合の指導者としては愚の骨頂ですね。労働組合とは団結がすべてです。すべての闘いは団結を強化するためにやる。団結なんかぶっ壊れていいと考えるんだったら、労働組合ではないですよ。
 こういうことをやるということは、何らかの別の意図=利害があるということです。国労の団結を考えたらこんなことはできない。七月一日当日、社会文化会館に行った人は分かると思うけど、国労組合員同士が憎しみあっている。党派対立があって、それがぶつかることはわれわれも経験している。そうではない。現場の組合員と機関役員の対立なんです。続開大会をやったらもっと増幅されますよ。これはもう、労働組合とは別の立場に立っている人以外にはできない。
 しかも、今度の臨時大会は、権力側に要請されたわけだ。国鉄労働組合が自主的に主体的に招集した大会じゃないんです。
 だから夕方まで大会を開けなくて、「中止」だとか出ましたけど、国労本部は絶対に中止できない。なぜなら裏にスポンサーがいるから。自分たちの判断でやめるとかできない。この一点をとっても不正義きわまりない。
 だから現場の組合員が、この大会を中止しろ、延期しろというのは当たり前。労働組合は自らの判断で方針を決める。それが労働組合です。他人に言われて決めるような労働組合は、自らが労働組合ではないことを認めたということでしょう。認めたいやつらは、国労はもう国労でなくなってもいいと思っているからやったんです。JR連合と一緒になって連合に行けばいいと思っているからやった。
 いまひとつ、日本共産党・革同の上村グループがこの急先鋒(せんぽう)です。ただ、全労連も真っ二つです。共産党も「四党合意」をめぐって見解をいまだ出していない。だけど、国労内の共産党は最強硬派です。
 全労連だけでなくて、あらゆる戦線で、国労の態度をめぐってどういう立場をとるのかで分岐が起きている。そのくらい国労の存在、去就が重大な意味を持っていることを、特に国労の組合員は認識しなければならない。そういうことが分からない幹部を吹っ飛ばさなければダメだ。そうじゃないと国労は前進しないですよ。
 七月一日以降、「演壇占拠」を「暴力行為」とするキャンペーンが国労の中で出ています。中央執行委員会の声明やエリアの機関がさかんに言っている。自分たちの組合員に「暴徒」という言葉を吐いている。

 第3章 「演壇占拠」は国労を紙一重で守った正義の闘いである

 労働者大衆が自分の生き死にがかかったことに黙っていていいのか。権力を持っている側は何をやってもいいのか。権力を持った連中が無法なことをやることに対して、ささやかに抵抗する。それを「暴力」だと言って軍事力を発動する。ベトナム戦争しかり、ユーゴスラビアだってそうだ。やらざるを得ないところに追い込んで、「暴力」だと言う。これは帝国主義者の論理なんだ。
 国労の中央本部の権力を握っている者たちは、闘争団の三分の二以上も反対しているのを承知しながら大会を強行して、それに反対したら、これを「暴力」だと言う。彼らは機動隊まで導入して会場に入ろうとした。それで組合員がパクられている。そういうことをやって、闘争団が演壇に殺到したことを「暴力行為」なんて言う権利がどこにあるんだ。
 「だけどやっぱり暴力はまずいよ」と言う客観主義者がいる。「本部も悪いけど、あの暴力も悪い」と。そんな言い方はない。どっちかに立つしかないんです。本部が悪いからこういうことが起こったんです。
 私は、「演壇占拠」は、全体の行動の総和だから、これは正義であると断々固として宣言することが必要だと思います。臨大強行こそ、巨大な暴力である。これを弾劾しなければならない。

 闘争団こそ「国労の宝」だ

 闘争団を先頭とした国労の諸君は、国労を紙一重のところで守ったんです。
 もう一つ、僕は見ていてやっぱり国労組合員の底力はすごいと思った。僕は本当に感動したね。組合員たちがあそこまで体を張る。こういう組合員がどのくらいいるかによって、その労働組合の力は決まる。さすが国労だ、国労の現場は腐ってないと思ったんです。
 それとやっぱり、闘いは活動家、リーダーをつくりあげるなと思った。家族だってそうです。闘争団の人たちを見ても、本部に来て執行部が務まるような人がどんどん輩出されている。そういう活動家を生み出してくる闘争団は、「国労の宝」じゃないですか。
 次に展望をはっきりさせて闘わなければならない。「四党合意」を粉砕したことによって、「解決水準」が上がっている。本質的にそういうことなんです。
 今の国労のやり方は、労働組合の基本的在り方を逸脱している。今度は間違った、迷ったということが、組合員大衆の声、力で分かったわけだ。そしたら原則に戻らなければならない。これが一番問われている。具体的には続開大会をやらないことです。大会代議員選挙をやって、定期大会で決着をつける。誤りを犯したわけだから、総辞職するのが当たり前だと思うけれど、少なくともまずそれが必要だということです。
 それから、敵の弱点を見極めること。今、困っているのはどっちなのか。向こうの方が困っているんだ。「完全民営化」の法律が出されると言われているけど、千四十七名闘争という国鉄分割・民営化反対闘争が残っていたら、「完全民営化」は成り立たない。敵は困っている。だから国労幹部の屈服ぶりを見据えて、「四党合意」まで来たんです。
 JRだって貨物は赤字で、三島もそうだし、何よりも列車がまともに動かない。向こうの中に十何年間かの矛盾が集中している。今、敵の最大の弱点はJR東日本です。

 第4章 「四党合意」を粉砕したことで「解決水準」上がっている

 もう一つ、誰に依拠して闘うのか。政府・自民党に依拠してはダメだ。労働組合が依拠するのは組合員、支援してくれる労働者。ここに依拠する以外にない。
 労働者の要求は、力関係によって決まるということです。「四党合意」粉砕は国労が自分たちの力を発揮した初めてのことなんです。国労の組合員が団結して、指導部がちゃんとした方針を出せばあらゆることができる。支援組織も大きくしていったら無限大の力を発揮する。その時に初めて敵は譲歩するんです。そういう意味で「四党合意」粉砕は「解決水準」を上げると言っているんです。
 何はともあれ、国労が闘う指導部を形成するということです。「八・三〇申し入れ」以前の九六年の状態からもう一回出発した方がいい。この四年近い歳月は、国労の屈服の歴史です。これを元に戻す。最低でも昨年の臨大の「改革法承認」の前の状況に戻す。それをやったら、あと数年、遅くとも五年以内にもう一回山場が来る。そういう立場から闘う執行部を形成することはまったく可能であると思っています。

 闘う労働運動の形成と一体

 最後に、動労千葉の闘いですけれど、新「DC会館」をつくりました。ここを拠点に二十一世紀に羽ばたいていく。JR総連を解体して、若い労働者を結集したいと思っています。
 その上で、国鉄闘争の勝利は、闘う労働運動をどう形成していくのかという運動と表裏一体です。その運動の前進に応じて国鉄闘争の勝利の度合が決まる。国労や動労千葉が中心となった運動がどんどん広がることが敵に脅威になるわけだから。そういう意味で、十一月の動労千葉と全国金属機械港合同、全日建運輸連帯関生支部の三組合が呼びかける集会に、今年はなんとしても五千人を集めたいと思っています。
 

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