ZENSHIN 2000/03/27(No1950 p06)

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週刊『前進』(1950号1面1)

 介護保険4月実施は絶対中止を

 労働者人民の怒りを衆院選へ

 高額保険料は第二の消費税福祉奪い高齢者を殺す悪法

 介護保険推進の日共は許せぬ

 3・26全国から三里塚現地へ

 介護保険制度の四月一日実施予定を前に、「大増税と福祉切り捨ての介護保険制度絶対反対」の人民の声は日増しに高まっている。「介護の社会化」「福祉の一歩前進」などという宣伝文句とはまったく逆に、それが福祉の全面的切り捨てであり、介護をビジネス=営利事業にするものであること、家族に一層の介護の重圧を押しつけ、高齢者の生きる希望を奪い、死に追いやるものであることが日々明らかになっている。強行されれば、大混乱や悲劇が全国で起きることは不可避であり、四月実施はなんとしても中止させなければならない。介護保健推進の連合や民主党、日本共産党の屈服、大裏切りを粉砕し、介護保険反対の大運動を全国で爆発させよう。絶対反対を貫いて闘う長谷川英憲氏を国会に送ろう。三−四月衆院選闘争に総決起し、勝利しよう。

 第1章 40歳以上の全員が強制徴収の対象に

 介護保険に怒りと不安の声が渦巻いている。以下は杉並区民の声である。(都政を革新する会の住民アンケートから)。
 ▼「九十四歳の母がアルツハイマー症。特養ホームに入所していたが、相談員が来て『介護保険は受けられないので自宅に引き取ってくれ』と言われた」
 ▼「親戚が施設を追い出され、家族が困っている」
 ▼「母が要介護2で、負担はかなり重くなる。車イスを区から借りていたが、買い取るか返すか、どっちかにしてくれと言われた」
 ▼「少ない年金から強制的に毎月三千円の保険料を徴収すると言っているが、今でも節約に節約して何とか生活しており、大変だ。もし介護を受ける段になって自己負担金を支払ったら生活が大変。どうなるかと思っている」
 ▼「去年妻が死んで一人暮らし。年金が減って、これ以上保険料をとられたら困る」
 ▼「家人が要介護5に認定されたが、自己負担三万五千円は大変。金持ちと一緒にしないでほしい」
 ――このように、早くも施設からの追い出しが始まり、高齢者とその家族は、これからの負担増や福祉の切り捨てに不安を募らせている。
 介護保険制度は以下に見るように、大増税と福祉切り捨ての、戦後史を画する大攻撃だ。絶対に粉砕しなければならない。

 第1節 わずかな年金からも天引き

 介護保険は強制加入だから、四十歳以上の人は全員が、死ぬまで保険料の支払いを義務づけられる。被保険者は第一号被保険者(六十五歳以上)と、第二号被保険者(四十〜六十四歳)に分けられる。
 第一号被保険者の保険料は全国平均でおよそ月三千円だ。第二号被保険者の保険料の平均月額は、サラリーマンなどが加入する健保組合で二千円、政管健保で千五百円、国保で千三百円となる。保険料の半分は国保の場合は公費負担、組合健保の場合は事業主負担なので、実際の介護保険料はこの二倍である。
 六十五歳以上の保険料は所得段階別(五段階、基準額の〇・五倍〜一・五倍まで〇・二五倍刻み)となっていて、年金から天引きされる。基準保険料が月三千円だとすれば、月一万五千円程度の国民年金しか受け取っていない人からも強制的に千五百円(基準額の〇・五倍)を天引きし、逆に年収が一千万円以上ある人でも月四千五百円(同一・五倍)だ。
 このように、第一号被保険者の保険料は所得の低い人ほど負担が重い。きわめて逆進性が強いのだ。しかも、六十五歳になって第一号被保険者になると、保険料がはね上がる。とんでもない「高齢者いじめ」の制度だ。
 高齢者世帯では、年収が百五十万円未満でかつかつに暮らしている世帯が三割に達する。こうした高齢者から夫婦二人で年間七万円以上の保険料を強制的に取り立てるなど、どうして許せようか。しかも保険料は三年ごとに見直され、引き上げられていくのだ。
 第二号被保険者の健保加入者は賃金から天引きされる。中小零細や自営業の国保加入者は、保険料値上げ、失業・賃下げ・低賃金で、今でも保険料を払えない人がたくさんいる。介護保険料が上乗せされれば、払えない人が一挙に増えるのは確実だ。医療保険と一緒に徴収されるので、介護保険料を払わないで国保だけを支払うというわけにはいかない。介護保険料の滞納・未納は、そのまま国保の滞納・未納となってしまう。
 厚生省は、介護保険料を無理矢理取り立てるために、介護保険法の成立にあわせて国保法を改悪し、保険料滞納者から保険証をとりあげること(資格証明書を発行)を市町村に義務づけた。資格証明書では、医療費を全額支払わなくてはならない。介護保険の強行は、高齢者のみならず、保険料が支払えない貧困な労働者家庭の家族全員の医療をも奪うのである。
 総選挙での大敗を恐れた小渕政権は、昨年十一月に介護保険特別対策を打ち出した。それは第一号被保険者の保険料を最初の半年間は徴収せず、その後一年間は半額にするというものだが、制度の根幹に何ひとつ手をつけるものではなく、四月実施を強行するためのペテンでしかない。

 第2節 9割もの人が掛け捨てに!

 現在の医療保険なら、病気やケガをしたら誰でもすぐに保険で診察や治療が受けられるが、介護保険は、国や自治体の許可(要介護認定)がなければ保険による介護を受けられない。
 厚生省は、第一号被保険者二千二百万人のうち、要介護の人を約二百八十万人(施設介護七十万人、在宅二百十万人)としている。被保険者の約一三%にすぎない。しかも厚生省は「在宅サービスを利用するのはその四割」という勝手な前提で予算を組んでおり、残りの六割は保険料だけ取り立てながら、家族介護のままにうち捨てているのだ。
 また、第二号被保険者の場合は基本的に保険給付の対象外であり、「十五の特定疾病(基本的に老化が原因の病気)」で要支援、要介護状態と認定されたときにのみ給付が受けられる。交通事故やけが、他の病気で介護が必要になっても、保険給付は受けられない。保険料だけ取られ続けて、九九・七%の人がサービスを受けられないのだ。
 こうして約九割の人は、死ぬまで「掛け捨て」になってしまう。こんな保険制度はほかにない。これはまさに国家的詐欺である。その本質は、「保険」とは名ばかりの大増税であり、貧乏人や高齢者からも有無を言わせず取り立てる「第二消費税」なのだ。

 第2章 要介護認定で多くの人達が門前払い

 介護サービスを受けるためには、要介護認定を受けなければならない。
 市町村に申請すると調査員が訪問する。立ち上がれるか、寝返りをうてるか、排尿や食事はどうか、もの忘れはどうかなど八十五項目をチェックし、その結果をコンピューターにかけて判定を行う(一次判定)。さらに、一次判定と特記事項、主治医の意見書をもとに介護認定審査会が二次判定を行い、要介護5〜1と、施設を利用できない「要支援」、介護保険サービスをまったく受けられない「自立」の計七段階に判定される。
 こんなランクづけで、保険の受給資格や利用限度額を行政が一方的に決めるなどということは、まったく許せない。「障害」をランクづけするということ自体が、高齢者の人格を無視した乱暴なやり方である。必要な人には必要な介護を保障すべきなのだ。
 一次判定の調査方法、そしてその調査結果を入力して要介護時間をはじき出して判定するコンピュータソフトに根本的な欠陥がある。また二次判定の審査時間は、全国平均で四分程度で、多くの場合、一次判定を追認するだけになる。
 杉並では次のような声があがっている。
 ▼「デイケアを利用している九十三歳の母がアルツハイマー症で要介護1に判定された。これまで徘徊で二回も警察に保護された人がなぜ要介護1なのか」
 ▼「アルツハイマーの母を家族で看てきたが、言葉では尽くせないほど大変だった。症状には波があり、行政の人が面接に来ると不思議なもので、しっかりした態度をとったりする。だから、実際の介護と生活をともにしてみなければ、ちょっと接しただけではその大変さは理解できない」
 ▼「父が北九州にいる。今まで受けていたデイケアが週二回から週一回に、ホームヘルプサービスも減らされた。アルツハイマーだと判定が低く出るのは許せない」
 最大の問題は、身体介護の必要性だけで判定し、住宅事情や家族の事情、経済状況など、高齢者の生活全般をまったく考慮しないことである。そのために、これまで訪問介護を利用してきたのに、「自立」と判定されてサービスを打ち切られる高齢者が、全国で四万人にのぼると言われる。
 また特養ホームに入所している人のうち一万五千人が「要支援」「自立」と認定され、五年間の経過措置の間に施設を出ざるをえなくなる。病院や老人保健施設からも数万人が追い出される。すでに、制度の実施前から「追い出し」が始まっているのだ。
 本人や家族の間からは「もっと体が悪くなって、重い判定が出てくれればよかったのに」とか「経過措置の五年以内に死んでくれれば」といった悲痛な声が出ている。身寄りがなく、特養ホームで暮らしていたが、前途を悲観して自殺した高齢者がいる。
 認定制度の狙いは、保険利用者の増大を抑え、国家の財政負担を最小限に絞り込むための、一方的な介護切り捨てなのである。

 第3章 認定されても高額自己負担が払えず

 政府・厚生省は「措置から契約への転換」「選べるサービス」などと言っているが、実際には必要なサービスすら打ち切られ、また金がなければ利用できないのだ。まず、介護認定でふるいにかけられ、さらに認定を受けても要介護度ごとに支給限度額が決められていて(表1)、その枠内でしか保険が適用されない。これまでどおりのサービスを受けようとしたら、枠をこえる分は全額自己負担になってきわめて高額になり、結局受けるサービスを切り縮めるしかない。
 また、そもそも高額の保険料を毎月取られた上に、利用にあたってさらにサービス費用の一割を負担しなければならないこと自体が、低所得者層には大変な負担増だ。
 現在ホームヘルプサービスの利用料は所得に応じた負担となっているが、八割以上は低所得者(生活保護世帯か所得税非課税世帯)のため、無料となっている。しかし、介護保険が始まれば、これらの人も一割の自己負担を支払わなくてはならない。所得の高い人は現在より安くなるが、そうした人はわずか一割で、大部分の人は、今よりもはるかな負担増となる。
 毎月千円で介護サービスを受けていた年金暮らしのAさんの場合、保険の枠内でも一挙に一万六千円になってしまう。(表2)
 東京・多摩地区のBさん(73)は、夫(79)と二人暮らし。アルツハイマー症が進み、身の回りのことがおぼつかない。要介護5と判定された。これまで地域のヘルパーを頼んで月十五万円以上かかっていたが、介護保険になれば、今までのサービスを利用し続けるためには四十二万円あまりを支払わなければならない(表3)。保険外負担が膨大になってしまうからだ。
 高齢のBさん夫妻が在宅で生活していけるのは、地域の医療・保健・福祉サービスがこれまで利用できたからだ。それでも十五万円の費用を取られていた。それが、介護保険のもとではもはや不可能になる。これからいったい、どうやって生活しろというのか!
 「排尿感があり自分で排せつできない高齢者の介護には一日五、六回の巡回が必要で、約四十四万円かかる。最重度でも三十七万円という限度額は簡単に超えてしまう」(枚方市の担当者、一・二二朝日新聞)
 また、関東で訪問看護ステーションを運営する団体が利用者千人を調べたところ、今のサービスを継続すると二割以上が限度額超過となり、超過額の平均は月十三万円になったという。とても自己負担できる額ではない。
 このように介護保険制度は、「障害」をもった高齢者が在宅で一人で、または夫婦で生活していくことをきわめて困難にするものだ。では施設に入所すれば安くいくのかといえば、まったくそうではない。それは次のCさんの例を見れば明らかだ。
 特養ホームに入居しているCさんは要介護5と判定された。今まで自己負担はほとんど無料だった(措置制度で公費負担)が、介護保険導入により、介護費用のほかに食費、日用品費、事務管理費なども徴収されることになり、月額十万円近くかかることになった。Cさんは、到底払うことはできず、どうしたらいいのか、途方に暮れている。自治体の施策がない限り、Cさんはいずれ追い出されてしまう。
 家族の介護者がいる場合はどうか。アルツハイマーのDさんは要介護2と判定された。Dさんは通所介護と訪問介護を毎日利用することで家族の負担が軽減されていたが、このままでは月十万円程度の負担増になる。到底これには耐えられず、通所介護を減らし家族が介護するしかない。介護をしてきた娘のEさんは、これまで続けてきたパートの仕事もやめなければならなくなった。
 このように介護保険のもとでは「介護の社会化」どころか、ますます家族介護の負担が増えるのだ。

 第1節 介護がビジネスにされる!

 介護保険制度のもとでは民間企業は常勤ヘルパーを最小限にとどめ、低賃金のパート労働者を多用するので、低賃金化、不安定雇用化がますます進む。資本による介護労働者の「使い捨て」が進む。ヘルパーが利用者と家族の心に寄り添うには経験が必要なのに、こうしたもとでは到底望めない。
 介護保険では在宅介護サービスの一回あたりの標準時間は一時間程度(巡回型は二十分程度)とされており、サービスの内容も、総合的な生活援助サービスから身体介護中心の細切れサービス、「駆け足介護」となる。東京都三鷹市の民間介護会社がすでに行っている例では、一人のヘルパーが平均三十人を担当。午後九時から翌朝九時の夜間帯に最高で十八人の高齢者宅を巡回する。
 介護を受ける高齢者の側から見ると、そのたびに別のヘルパーがやってきて、合計二十人のヘルパーに介護を受けるケースもある。これでは介護をとおした心の通い合い、人間的なふれあいも難しい。高齢者一人ひとりの状況をよくつかまないままの身体介護は危険ですらある。「おむつを強く締めすぎて傷ができた。申し送りを頼んだのに、次に来た人がまた強く締めた」(二・二七東京新聞)
 6面につづく〜1面からつづく
 特養ホームでは、すでに職員の賃金カット、ベテラン職員の解雇、パート化などが進んでおり、結果として職員の休憩や仮眠の時間がとれなくなるなど、労働条件の悪化が進んでいる。
 また、「寝たきりのままの方がもうかると思うときがある」とケアマネジャー(介護支援専門員)は言い、経営者は「死なない程度に重度のまま、長生きしてもらう」と言っている(三・二読売新聞)。リハビリや自立支援はやらないで「寝たきり」にしておく方が金になるというのだ。これでは高齢者は生きる希望も失って、体力も精神力も衰退していくしかない。
 これが今、強行されようとしている介護保険制度の正体だ。「介護の社会化」や高齢者の自立支援を実現するどころか、まったく逆の状況を生み出す。まさに「福祉の壊滅・解体」だ。完全なビジネス化=営利事業化である。
 だから今、介護機器の販売など周辺事業での利益追求を狙って、大手電機メーカーや鉄鋼資本が参入し、ホームヘルプ事業の指定基準が甘いために、暴力団も参入している。高齢者の生活資金や財産が食い物にされるのだ。

 第2節 福祉は権利、基本的人権だ

 以上見てきたように、介護保険制度の狙いは、@福祉への国の支出の大幅な削減、福祉の否定・解体であり、労働者人民の負担増大、収奪の強化であり、A家族介護の負担を一層増やすものだ。そして、B医療・福祉分野を営利事業化し、資本に利潤追求のための市場を提供するものである。さらに、C「社会保障構造改革」の突破口であり、年金、医療保険制度、国・地方の福祉施策の全面的改悪と一体のものである。断じて許せない!
 介護保険の強行にあたって、「介護の社会化」「高齢化社会に備えるため」などと宣伝されてきたが、それはまったくのペテンだ。介護保険は福祉を解体し、高齢者を死に追いやるとんでもない悪政である。
 福祉は権利であり、人民の命の要求だ。国家は当然にも基本的人権として福祉を保障する義務がある。
 こんなめちゃくちゃな攻撃がまかりとおっているのは、連合や民主党、日本共産党、社民党などの野党が自自公政権とまったく闘わなくなっているからだ。みな「財政危機論」「高齢化社会論」に屈服し、日帝の攻撃を助けてきたのだ。
 民主党・連合は介護保険の積極推進派であり、日本共産党は「一歩前進であり不備な点は徐々に改善していけばいい」などと言っている。絶対に許せない。介護保険は福祉の全面的解体・破壊であり、改善の余地などない。絶対に中止させるしかないのだ。

 第3節 「絶対反対」の大運動起こせ

 今こそ、こうした屈服を打ち破る労働者階級の総決起が求められている。こんな攻撃に黙っていたら、労働者人民の生活はめちゃめちゃに破壊され、貧困な労働者層や高齢者、「障害者」は殺されてしまう。さらにはアジア侵略戦争に駆り出されてしまう。
 フランスやドイツ、イギリスのように、政府の年金改悪や福祉切り捨てに労働者階級がゼネストなどで対抗する力を持てば、小渕・自自公政権の悪政をやめさせることは絶対にできる。
 そして、労働者の真の代表を国会に送り込もう。どんなに国会が翼賛化していても、労働者人民と結んで闘う国会議員が一人でもいれば、大きな嵐を巻き起こすことができる。「介護保険絶対反対」を掲げる唯一の候補、長谷川英憲氏の当選をかちとるために衆院選決戦に総決起しよう。
 「@介護保険制度の四月実施中止、A一切の自己負担をなくし、介護は全額公費負担で、B必要な人に誰でも必要な介護を。十分な介護制度の確立を」の要求を掲げて闘おう。労働者人民の怒りと危機感を結集して、全国的な大衆運動を巻き起こそう。衆院選決戦を全力で闘おう。ファシスト石原を打倒し、小渕・自自公政権を打倒せよ! 腐敗・不正を極める警察と国家公安委を解体せよ!
 三・二五小渕訪沖阻止羽田闘争、三・二六三里塚現地闘争に総決起しよう。
(表1)
 訪問・通所サービスの利用限度額
 要支援     6万1500円
 要介護1    16万5800円
 要介護2    19万4800円
 要介護3    26万7500円
 要介護4    30万6000円
 要介護5    35万8300円
 *月額、1割自己負担
 介護報酬単価の例
 ホームヘルパーの訪問
   身体介護中心  4020円
   折衷型     2780円
   家事援助中心  1530円
 訪問看護(医療機関)5500円
 (いずれも30分〜1時間未満)
 訪問リハビリ    5500円
 訪問入浴      12500円
(表2)負担が16倍になるAさん(要介護2と判定)
         現在の負担(月額)      介護保険実施後
訪問介護           0   402円×4時間×4週=6432円
 (週2回、身体介護各2時間)
訪問看護 (週1回)250円×4=1000円    1198円×4週=4792円
デイサービス(週1回)    0       473円×4週=1892円
保険料(月額)                     3000円
合計            1000円     →    1万6116円
(表3)27万円の負担増になるBさん(要介護5と判定)
             現在の負担(月額)  介護保険実施後
訪問介護=地域の非営利組織     12万8357円    46万9211円
 (週5回、身体介護1日6時間)
  ほかに登録料など          1617円
通所リハビリ=医療機関         7070円    9万4307円
 (週3回、各6時間)
通所介護(市の委託事業、昼食実費のみ)
 (週3回、各6時間)         5940円   11万6276円
短期入所費(市の委託事業、月7日)  1万500円    8万1536円
介護保険料(月額)=夫婦2人分             6400円
 合計               15万3484円 → ※42万1530円
 (※介護費用の総計は76万1330円。保険適用で3万7200円〔保険適
  用の上限〕。限度を超える自己負担分が38万4330円)
【注】
 デイサービス/デイケア
(通所介護) 日帰りでデイ
サービスセンターに通い、
入浴、食事、健康チェック
や機能訓練を行う
 ホームヘルプサービス(訪問介護) 家庭をホームヘルパーが訪問して介護・家事援助を行う

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週刊『前進』(1950号2面1)

 革共同政治集会 打って一丸衆院選決戦へ驀進

 天田書記長勝利へ基調報告

 杉並公会堂埋める熱気 ”党建設の新段階開く”

 三月十二日、東京・杉並公会堂で「本多書記長虐殺から二十五年、三・一四復讐戦貫徹・カクマル完全打倒! 三・一二革共同政治集会」が開かれた。集会には、千百四十人が結集した。天田三紀夫革共同書記長が基調報告を提起し、衆院選決戦・沖縄サミット粉砕決戦・労働運動の新潮流の大躍進を闘いとる三大決戦を軸に二〇〇〇年決戦の勝利に全力投入しようと訴えた。そしてこの決戦の渦中で、革共同は必ず、反革命カクマル=JR総連を完全打倒すると力強く宣言した。全参加者は、基調報告をわがものとし、総武装し、今後の五年間、十年間の階級闘争の帰趨(きすう)を決する二〇〇〇年決戦への総決起を誓い合った。

 第1節 熱い激励と連帯あいさつ

 集会には権力の弾圧を粉砕して続々と参加者が結集した。開会に先立って、正午からビデオ「長谷川英憲を国会へ」が上映された。ビデオには、ストップ介護保険杉並十万人署名運動の先頭に立ち、衆院選に打って出る都政を革新する会の長谷川英憲代表の闘いが映し出された。
 司会の同志が開会を宣言した。冒頭、都革新後援会会員が、自ら作詞・作曲した三曲を革共同への激励を込めて披露した。一曲目「ひたむきに生きる人たちへ」はすべての闘う人びとへのメッセージ。二曲目の「絆(きずな)」は、七一年沖縄返還協定批准阻止闘争戦士でデッチあげ無期懲役攻撃と闘う星野文昭同志と妻の暁子さんの闘いと深い愛情を歌った曲。最後に都革新の歌「Together」を歌った。万感の思いを込めた拍手が会場を包んだ。
 連帯のあいさつを、三里塚芝山連合空港反対同盟から北原鉱治事務局長と郡司とめ婦人行動隊長が、北富士忍草母の会から天野美恵事務局長が、部落解放同盟全国連合会から滝岡広治統制委員長が行った。
 北原さんは「再び戦争への道を許すのか、阻止するのか、重大な岐路に立っている。反対同盟は二〇〇二年にいたる暫定滑走路建設阻止決戦の臨戦態勢の中にある。長谷川さんを衆議院に送ろう。三・二六全国集会に総結集を」と、郡司さんは「市東東市さんの“闘魂ますます盛んなり”を肝に銘じて闘う」とあいさつ。天野さんは「私たちの国会での座り込みを取り上げた国会議員は誰一人としていなかった。石にかじりついても長谷川さんを国会に送り出してください。北富士での十一月米軍演習阻止にかけつけてください」と訴えた。滝岡さんは、解同全国連第九回大会の成功を報告し、「長谷川さんを国会への声は労働者人民の切実な声。全国連は組織を挙げて衆院選の闘いに決起する」と宣言し、「三・二七東京高裁に対する糾弾要請行動への決起を」とアピールした。

 第1章 日本革命への展望提起

 熱い激励と連帯の言葉を受けて、天田革共同書記長が「革共同の飛躍と日本革命への展望をかけ、衆院選決戦勝利・二〇〇〇年決戦勝利へ」と題して基調報告を提起した。
 まず初めに「三・一四反革命から二十五年。革共同はあらためてファシスト・カクマルを打倒して、必ず日本革命に勝利する」と戦闘宣言。「二〇〇〇年決戦の勝利を突破口に反帝・反スターリン主義世界革命の勝利を」と訴えた。そして「その最大の実践が、きたるべき衆院選への挑戦だ。自自公と石原都政の打倒を掲げ、長谷川さんを押し立て勝利しよう」と提起。さらに、沖縄サミット攻撃との闘いに全力で決起しようと訴えた。
 二〇〇〇年決戦を取り巻く情勢の特徴として、「帝国主義の危機の爆発と世界革命の現実性が明らかとなる時代の到来」という点を強調した。それは、@世界大恐慌への突入とさらなる深化、A日米争闘戦を背景とした米日帝の朝鮮・中国−アジア侵略戦争の歴史的切迫、Bそうした中で日帝の帝国主義としての存亡の危機の深まりと絶望的攻撃の激化||であり、これに対して、革命的祖国敗北主義を貫いて帝国主義を打倒する日本労働者階級人民の〈二つの連帯戦略と一つの打倒戦略〉に導かれた闘いこそが求められていると提起した。
 さらに、二〇〇〇年決戦を「衆議院選挙闘争への総決起と社・共に代わる労働者党建設の新段階を切り開くことで勝利しよう」と闘う方針を提起した。その課題は@介護保険制度絶対反対の闘いへの総決起をつくりだすこと、A自自公体制の手先=ファシスト石原都知事を打倒し、B介護保険制度を容認する日本共産党を打倒することであり、C衆院選決戦は戦後最大の政治決戦だと言明した。
 そして「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱に転化せよ」「米軍基地撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の総路線の推進を訴え、@七月沖縄サミット粉砕へ、岸本名護市長リコール闘争勝利、三・二五−二六小渕訪沖阻止闘争への決起、五・一五から六・二三へ前進しよう、A有事立法・改憲攻撃との闘いを強化しよう、Bガイドライン体制との闘いを強め、百万人民決起の闘いをねばり強く展開しよう、C三里塚暫定滑走路建設阻止決戦に勝利しよう、D北富士、関西新空港闘争、全国基地闘争の圧倒的強化をかちとろう、と訴えた。
 また、これらの闘いと一体で「階級的労働運動・労働組合運動の全面展開」に打って出よう、新潮流運動の躍進をかちとろうと提起した。「国鉄決戦を基軸に教労、自治体・都労連、全逓の四大産別決戦に勝利しよう」、「三労組共闘を支持し、その発展のために闘い、十一月労働者集会の圧倒的成功を実現しよう」と呼びかけた。
 さらに二〇〇〇年決戦の三大決戦の勝利と、危機を深めるファシスト・カクマル=JR総連の完全打倒のために、「革共同は今こそ全力を挙げる」と固い決意を表明した。
 最後に「二〇〇〇年決戦情勢の中で最も求められているのは、反スターリン主義・革命的共産主義の党としての登場だ。革共同は労働者人民の先頭で決起し、必ず勝利する」と力強く基調報告を締めくくった。
 内山佳久全学連書記長が決意表明を行い、革共同救援対策部の特別報告と長期獄中闘争を闘う同志の家族からの特別アピール、デッチあげ弾圧と闘う同志からのアピールに移った。

 第2章 ゛全獄中同志の奪還を”

 革共同救対部の同志は、「まず、一九七四年一・二四カクマル完全せん滅戦闘で二十六年間に及ぶ指名手配攻撃を受けていた同志たちが生還をかちとった」と報告。「だが今なお、多くの同志が日帝国家権力のデッチあげ指名手配攻撃と闘っている。すべての同志を守り抜こう」と訴えた。そして「革共同は国家権力の弾圧に対して完黙・非転向を貫いて勝利してきた。その中心には、長期にわたる獄中同志の闘いがある。全員を奪還する闘いを巻き起こそう」とアピールした。
 星野暁子さんは、「東京高裁による星野文昭の再審請求棄却は絶対に許されるものではありません。二〇〇〇年決戦の中で星野文昭にかけられている無期極刑弾圧を覆す力をつくりあげましょう」と訴えた。
 八六年迎賓館・横田ロケット弾戦闘への爆取デッチあげ弾圧と闘う須賀武敏同志の家族は「この十三年間日々敗北してきたのは権力、日々勝利してきたのは革共同。最後には日帝権力をうち倒す」と固い決意を語り、十亀弘史同志の家族は「爆取デッチあげ弾圧は、天皇制を守り、沖縄闘争を圧殺するため。党の誇るべき四同志の奪還を二〇〇〇年にこそ実現しよう」と訴えた。鎌田雅志同志の家族は「彼は十五年の獄中闘争を闘い抜き、来年、皆さんのもとに戻ってきます。弾圧は必ず粉砕できる」と勝利の確信を語った。
 千葉県収用委員会会長せん滅戦闘でのデッチあげ弾圧と闘う神藤猛雄同志は、東京高裁の逆転有罪判決を弾劾し、上告審闘争に勝利すると決意表明。カクマル完全せん滅戦闘でのデッチあげ弾圧と闘う富山保信同志は、再審闘争の勝利を訴えた。
 集会は、決戦勝利への決意とアピールに移った。

 第3章 長谷川英憲氏を国会へ

 長谷川英憲代表を先頭に都革新の人びとが登壇した。長谷川さんは、「介護保険四月実施阻止を掲げ、ファシスト石原と対決して闘う。総力を結集して衆院選に勝利しよう」と衆院選立候補の決意を明らかにした。続いて、都革新の代表二人が発言に立ち、「介護保険四月実施阻止の主張に区内に支援が広がっています。自自公を倒し、石原伸晃を倒すために一丸となって頑張ろう」「戦争への道が自自公政権によって加速されている今、この状況を切り開くのは長谷川勝利だ。スクラムを組んで勝利しよう」と革共同の奮闘に期待が寄せられた。

 第1節 新潮流運動の躍進を誓う

 次に、新潮流運動の躍進を誓う決意が表明された。
国鉄労働者は「JR総連=カクマル−JR資本の結託体制の危機を見据え、シニア協定の大裏切りを弾劾し、国鉄闘争の勝利をもってカクマルの息の根を止める。八月国労全国大会でチャレンジ、革同を執行部から引きずり降ろし、十一月労働者集会への大結集を実現する」と断言した。教育労働者は「『日の丸・君が代』強制との闘いは教育労働者運動の生命線。闘う教労運動を労働運動の階級的再生の一翼としてつくりだす」と鮮明に語った。
 自治体・都労連労働者は「石原の反革命的暴言は労働者の反発と怒りを生んでいる。石原の一方的な賃金削減案へのストライキを頂点とする闘いの先頭には常にわれわれが立った。反動の巣窟・国会に長谷川候補を送り、革命の展望をこじあけよう」と訴えた。
 全逓労働者は「生涯をかけて闘い抜いてきた対カクマル戦争に勝利しつつ今日を迎えた。来るべき激動と破局を革命に転化できる党の建設に全力を挙げる。十一月労働者集会には全逓から昨年の二倍化を実現する」と決意を述べた。

 第2節 大山全学連委員長が決意

 最後に大山尚行全学連委員長が立ち、「世界戦争か世界革命か、ファシズムか社会主義かの歴史選択が突きつけられている。この歴史選択に革共同こそ明確な回答を与えなければならない。全学連は名護決戦と沖縄サミット粉砕決戦の爆発をかちとり、日本革命−世界革命の突破口をこじ開ける」と鮮明に語り、「三・二五小渕訪沖阻止に全学連は羽田と沖縄で決起しよう」と提起した。
 二〇〇〇年決戦方針で満身武装した全参加者は、シュプレヒコールを上げ、インターナショナルを斉唱して決意を固めた。

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週刊『前進』(1950号2面2)

 国労

 闘争団・JR本体が総行動

 JR東・貨物・運輸省に攻勢

 三月国鉄闘争は、国労闘争団とJR本体の闘いが結合して高揚している。
 三月七日から上京行動を展開している闘争団の第四八次上京団は十三日から運輸省前で連日の座り込みに決起した。十三日には上京団の団長が「JR本体の組合員も歯を食いしばって頑張っている。ILO勧告の履行とともに、国労敵視の労務政策をやめさせる行動にしたい」とあいさつし、各闘争団の代表が「納得のいく解決は自分たちで決める」「ILO勧告に基づく解決まで闘い続ける」「営団地下鉄日比谷線の事故は、国鉄分割・民営化以降の合理化、規制緩和の中で起こっている。運輸省は安全に責任を持つべき。そのためにもJRに戻せ」と運輸省に向かって訴えた。
 この中で佐賀闘争団の代表は、二月二十二日に四十一歳の若さで亡くなった森田友彦さんを悼み、「分割・民営化がなかったらもっと長生きでき、家族と過ごせたはずだ。それを奪った採用差別は絶対に許せない」と発言した。
 十四〜十六日の三日間、国労東日本関東ブロック(新潟・高崎・水戸・千葉・東京・長野)の総行動には連日約四百人の組合員が決起した。午前十一時からJR東日本本社前で宣伝行動を行い、午後から闘争団の運輸省前座り込みに合流した。十四日、運輸省前で東京闘争団の代表は「運輸省案は認めるわけにはいかない。このようなあいまいな形ではなく不当労働行為問題を中心に闘いを進めるべきだと本部にも要請してきた。ILO勧告、闘争団の要求を前面に掲げて全力を挙げたい」と決意表明した。
 十四日の午後にはJR貨物本社前での行動が闘われた。昨年のベア百円、超低額の一時金に続いて今春闘でベアゼロを策す貨物会社に対して貨物労働者の怒りがたたきつけられた。

 第1節 国労解体狙う「シニア協定」

 国鉄労働運動はJR総連=カクマルを打倒して前進する決戦局面に入った。国鉄分割・民営化以来十三年間の国鉄労働者の不屈の闘いが、ついにJR総連=カクマルを断末魔の危機に追いつめ、カクマルとJR資本の結託体制を根底から揺るがしている。
 この間のJR総連とカクマルの「対立劇」は、三・一「シニア協定」という国鉄分割・民営化以来の大裏切りを強行するためのものだった。その狙いは、JR総連・東労組のカクマル過疎支配の崩壊的危機を打開し、JR資本との結託体制を修復し、資本のファシスト的先兵となって延命しようというものである。徹底弾劾しなければならない。
 三・一「シニア協定」は、本紙前号で暴露したように大裏切りである。
 「六十歳以上の雇用確保実現」などまったくのペテン、デマだ。JR東資本はJRでの雇用延長を拒否し、試験を受けさせて「国鉄改革を担ったシニア社員」にだけ関連会社への再就職をあっせんするというものだ。しかも、JR東労組=カクマルは「雇用を保障できるのは国鉄改革を担ったJR東労組組合員だ」などとキャンペーンし、国労・動労千葉つぶしの狙いを露骨にしている。
 さらに、「グループ会社等への鉄道事業業務等の委託」を一層推進し、運転と車掌、管理機構以外の駅業務や検修などの外注化を全面的に進め、関連会社に一年単位の有期雇用で二百万円前後の低賃金(ハーフタイムの場合、その半分)で六十歳以上の労働者をこき使おうとしているのだ。
 五十五歳以上の「在職条件の改善」もペテンであり、基本給の削減幅の若干の改善も、出向手当廃止と合わせれば賃下げなのだ。
 JR東労組はこれらを「第二の『雇用安定協約』」と称して、国労や動労千葉に対する組織破壊に利用しようとしている。かつて動労が分割・民営化協力と引き換えに国鉄当局との「雇用安定協約」を締結し、国労や動労千葉との協約が破棄されたことに比すべき歴史的な大裏切りだ。
 また、日経連の「総額人件費抑制」攻撃を最も悪らつに推進するものであり、これを資本と一体となって推進するJR東労組=カクマル松崎は、電機連合などの御用幹部をはるかに上回る資本の先兵なのだ。このカクマルの大裏切りと国労・動労千葉解体のファシスト的策動を打ち破って闘い抜くならば、必ずやJR総連=カクマルを打倒することができる。

 第2節 春闘スト放棄する国労中央

 ところで、こうした決戦情勢の中で、チャレンジ一派や革同上村派らの国労中央指導部は、現場の闘いの高揚の裏でより屈服を深めている。三月十六日からのILO理事会で出される予定の最終勧告が六月総会まで見送られるといわれているが、これをみすみす許し、むしろ最終勧告を前に反動的決着を図ろうとする策動を強めているのだ。
 国労中央は、各級機関からのストライキ要求を無視し、三月十日付の「指示第一〇八号」で、「解決に向けた『話合い開始』を実現するため、ヤマ場の戦術は、ストライキの行使でなく大衆行動を柱に全国統一行動を展開することとした」と、スト放棄の方針を打ち出した。採用差別問題の「話し合い開始」を口実にJR資本と闘わないというのだ。このような国労中央指導部のもとでは勝利をかちとることはできない。
 闘争団と固く連帯し、JR本体の総決起で旅客・貨物が一体となったストライキに立つべき時なのだ。
 中央本部総退陣、国労の階級的再生をかちとり、国鉄闘争勝利、JR総連=カクマル打倒、国労の組織拡大を実現しよう。

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週刊『前進』(1950号2面3)

 連合春闘集会にビラまき

 3・5大阪 

 三月五日、「連合大阪二〇〇〇春闘総決起集会」が大阪扇町公園で開かれた。関西反戦共同行動委員会と関西労組交流センターは、結集した一万人の労働者への革命的宣伝活動を行った。「ストライキと統一要求で闘う春闘を取り戻そう」との呼びかけは圧倒的な支持を受け、一時間あまりの宣伝活動で数千枚のビラが労働者に吸い込まれるように受け取られた。
 日経連の意を受け、春闘解体・賃下げ容認・ワークシェアリング推進をひた走る連合指導部への労働者の怒りは天を突くばかりだ。
 他方、春闘圧殺のためにのみ反革命的にビラまきに登場したカクマルは、戦闘的労働者の徹底的な弾劾を浴び、こそこそと逃げ帰った。

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週刊『前進』(1950号2面4)

 腐敗・不正の警察による一斉家宅捜索弾劾

 三月九、十日、日帝・警視庁公安一課は、九八年七・二九運輸省幹部宅に対する火炎攻撃を口実とした被疑者不詳の捜索令状で、都内二十一カ所一斉の家宅捜索を強行した。
 腐敗と不正の極にある警察権力のこの暴虐を徹底的に弾劾するとともに、四月衆院選決戦、沖縄サミット粉砕、闘う労働運動の新たな潮流の形成へ、三大決戦の爆発を革共同はあらためて宣言する。
 この弾圧は第一に、七・二一体制(沖縄サミット厳戒体制)のもとでの攻撃である。すでに警察庁は、沖縄県内を四分割し、各区域ごとに「特命本部」を設置するなどサミット警備体制を整え、治安訓練を繰り返している。そして三・二五−二六には小渕が訪沖し、あろうことか名護市辺野古にまで乗り込もうとしている。闘う沖縄人民、名護市民と連帯し、小渕訪沖阻止に立ち上がろう。
 第二に、三・一二革共同集会が杉並公会堂で予定され、長谷川英憲氏を先頭とする杉並区民が、大挙結集しようとしていることに対する衆院選決戦への弾圧として強行されたのだ。
 第三に、三・二六三里塚全国集会を前に、闘う労働者人民が三里塚に総結集することを妨害しようとする弾圧である。
 さらに第四に、三・一四復讐戦貫徹をかけた新たな対カクマル戦争の前進に対する弾圧である。三・五横浜国大でカクマルの襲撃を完全に粉砕した全学連の躍進とともに、危機にあえぐJR総連=カクマル打倒の闘いが大きく前進している。カクマル=JR総連打倒へ大攻勢に立とう。
 今回の弾圧の特徴は、介護保険絶対反対を闘う杉並区民、「日の丸・君が代」闘争を始め労働運動の新潮流運動を先頭で闘う労働者に集中していることだ。これは、わが革共同と闘う人民が革命的綱領を掲げて総選挙に登場することを日帝権力がいかに恐れているかを示している。
 追い詰められた敵の不当弾圧を、逆に腐敗と不正の極にある警察・国家公安委弾劾=解体の人民の大反乱に転化し、小渕・自自公とファシスト石原を打倒して、四月衆院選決戦勝利へ猛然と突き進もう。

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週刊『前進』(1950号3面1)

 介護保険は「条件」満たした一割の人しか利用できない

 推進派のウソとペテン暴く

 介護保険が四月一日に強行実施されようとしている。これを目前に、介護保険が恐るべき攻撃であることに気づいた労働者人民の怒りが噴出し始めている。「保険あってサービスなしだ」「四十歳から死ぬまでの保険料強制取り立ては『第二の消費税』だ」「国が責任を放棄し、福祉を解体して介護をシルバー・ビジネスに放り投げるものだ」「介護の必要な高齢者から介護を奪い、介護を劣悪化する制度だ」という声は日増しに高まっている。一方、政府・厚生省を始め介護保険推進派は、脅しとペテンで「制度をスタートさせてから」とか「文句があるのは今まで福祉の恩恵を受けてきた一部の人」「世間並みの人には有利な制度」などと言い始めている。制度推進派の論理のペテンを粉砕し、大衆的反撃をたたきつけよう。四月強行実施をストップさせる一大闘争を爆発させよう。

 第1節 高齢者から介護を奪う事実を隠ぺい

 ここでは、介護保険推進派の論理の典型的な例をいくつか挙げて、そのペテンとウソを暴きたい。
 推進派の論理の一つ目は、「現行措置制度は行政が福祉を決定し供給する制度だから、サービス供給量は予算で決まっていてニーズで決まっているわけではない。これに対して、介護保険は介護が必要なすべての高齢者に介護を提供する制度だ」というものだ。
 ここでのペテンとウソの第一は、措置制度の権力行使の側面だけを取りあげて、「措置制度は権利ではない」というペテンが使われていることである。今ある高齢者福祉制度は、老人福祉法による「措置制度」によって、行政がサービスを決定し、公費でサービスを供給している。しかしそれは、労働者人民の要求と闘い、それによって形成された権利意識が、政治的な力として「行政に強制」してきたものなのだ。
 第二に、「予算枠で供給量は決まっている」ということの大ペテンである。金融機関の救済に七十兆円もの金をつぎ込む国が、「福祉予算の枠は決まっている」などとして福祉をまったく不十分なものにとどめてきたことこそが問題なのだ。
 また、美濃部都政以来の地方自治体の福祉予算は、国の福祉政策の不足分を補完する役割を果たしてきた。石原都政は、介護保険実施を口実にそれも切り捨てようとしている。本来、国も地方自治体も、必要な福祉予算は優先して支出すべきなのだ。
 第三に、「介護保険は必要なすべての高齢者にサービスを提供する」などというのは真っ赤なウソである。介護保険制度がすべての高齢者に認めているのは、「保険料支払い義務」と「申請する権利」だけだ。九〇%の人は保険料を取られるだけで生涯掛け捨てになる。一定の厳しい「条件」を満たした一割の人しか利用できないのだ。
 申請した高齢者は「介護認定」のハードルをこえなければならない。心身や家庭の状況から介護を求めても、高齢者のかなりの部分は排除されてしまう。全国調査では、申請した人の六%が「自立」と認定され、排除されている。
 ペテンの第四は、被保険者は、たとえ要介護認定を受けても「介護を買う権利」を手にするだけだということだ。保険料や介護サービスの利用料を支払えなければ介護は受けられない。介護保険法は保険料滞納者への償還払いや給付差し止めなどの強行措置を規定している(第一四四条、第六六条〜六九条)。さらに、国民健康保険法まで改悪して健康保険証の取り上げを義務化するなど、徹底した厳罰主義の制度だ。
 保険料や利用料が支払えない高齢者のために、生活保護法が改定されて「介護扶助」制度がつくられた。だが、生活保護制度には「補足性の原理」(資産や能力の活用と他の法による扶助の優先)という厳しい壁がある。家を売り、貯金も使い果たし、生命保険なども解約して、すべて裸になって始めて扶助の対象になるのである。弱みにつけこみ、身ぐるみはぐような制度は、高齢者のプライバシーや自尊心を傷つけるものだ。それは、高齢者の生きる気力さえ奪うのだ。
 現行の福祉制度は、「応能負担」ということで、高齢者が低所得の場合は無料で福祉を受けることができる。その点だけでも、現行の老人福祉を取り戻さなければならない。

 第2節 福祉の不十分さは低所得者のせい?!

 推進派の論理の二つ目は、「介護保険は保険料負担とサービス給付の権利関係だから気兼ねなく利用できる」「現在の福祉では世間並みの暮らしをしている中間所得層よりも、収入が低く生活の苦しい人が優先された。取り残されたのは、中間所得層だ」などというものである。
 ここでのペテンとウソの第一は、「低所得者優先のせいで中間所得者に福祉が行き渡らない」と問題をすり替えていることだ。福祉行政の劣悪さを開き直り、労働者人民の中に差別・分断をもちこむ悪意に満ちたキャンペーンである。
 福祉と介護への切実な要求は、現在でもまったく不十分な高齢者福祉しか行わない行政への怒りに変わり始めている。特別養護老人ホームの利用申し込み者、待機高齢者の数は、全国で十万人を超えている。しかし、待機者が多いのは、すでに入所している高齢者のせいでは断じてない。
 そもそも、今まで十分に福祉が行き渡らなかったのは、福祉があまりにも不十分だったからではないか。
 ペテンの第二は、「世間並みの暮らしをする中間所得者」とは誰かということだ。「世間並み」の労働者人民が年金だけの生活になれば、だいたい低所得者になるのである。厚生省による九八年の国民生活基礎調査によれば、高齢者世帯の四一・四%が年所得二百万円未満である。単身女性世帯の場合だと、五〇%以上が年所得百五十万円未満だ。高齢者の七六%が住民税非課税の対象なのだ。統計上、「貧困層」と分類される年収百五十一万円以下の層は、六五歳以上の単身男性の約一〇%、単身女性の二三%にも上る。中間所得層であっても、今日の大失業と一大資本攻勢の中で、その所得が生涯保障されているわけではない。
 ペテンの第三は、生きる権利、人権としての介護を「市場の原理」で発生する権利にすり替えていることだ。介護は生きる権利であり、基本的人権だ。保険料を負担するから発生した権利ではないのである。
 しかも、権利だから「気兼ねなく利用できる」というのは明らかなウソだ。介護保険では、要介護認定のランクによってサービス利用権と利用量が制限される。利用料負担を考えると、とうてい「気兼ねなく」利用できるようなものではない。

 第3節 市場原理を賛美し福祉解体を正当化

 推進派の論理の三つ目は、「公的サービスのコストは高く、質も顧みられない。民間業者が市場参入して自由競争をすれば、ソニーの電気製品のように品質は良くなり、コストは低下する」などというもの。
 ここでのペテンとウソの第一は、「公費による福祉は、コスト高で質も顧みられない」とする、国鉄分割・民営化の時とまったく同じ悪質なキャンペーンを行っていることである。
 「コスト高」「質が悪い」というのは事実に反する。推進派はよく、所沢市の社会福祉協議会のホームヘルプ事業の一時間当たり費用九千二百円に対して、東京家政婦協会の家事サービス費用が同千八百円であることを、「民間業者はコストが安い」ことの具体例として挙げる。しかも、コストの差はヘルパーの人件費が原因だなどと非難している。だが、この比較の基礎にインチキがある。現実の介護は家事援助と切り離すことはできない。それを介護と家事援助を分けて、費用という面だけで比較することが間違っている。
 さらに、家政婦協会のヘルパー労働者が、社会福祉協議会のヘルパー労働者の五分の一以下の賃金しか払われていないとしたら、それはあまりに劣悪な労働条件である。そもそも、福祉、介護を「コスト」で計ってはならないのだ。
 ペテンの第二は、介護サービスをテレビなどの電気製品と同一視する市場原理万能論の犯罪性である。
 市場原理の美化は、福祉と介護の非人間的な劣悪化をもたらす論理だ。介護される主体である高齢者の意志を無視し、まるで品物のように高齢者をもうけの対象としていくことは、人権侵害と老人虐待を生み出すものとなる。現実に、ドイツの介護保険制度は、実施数年後には、福祉を破壊し、老人への虐待を続発させている。そもそも、市場原理が社会問題を不可避に発生させるからこそ社会保障制度ができたのである。介護を市場原理に投げ出してはならない。
 第三は、「自由競争になれば良い介護が残る」というペテンだ。現実には、この制度ではコスト安に成功した事業者だけが生き残る。事業者間の弱肉強食の競争は、介護をもはや介護とは言えない劣悪なものに変えてしまうのだ。
 介護は生きる権利である。介護を市場競争の対象にする介護保険制度は、絶対に廃止に追い込まなければならない。
 間近に迫った衆議院選挙の最大の争点は、介護保険制度を許すか否かである。「介護保険絶対反対」の労働者人民の怒りの声をたたきつけよう。「@介護保険制度の四月実施中止、A一切の自己負担をなくし、介護は全額公費負担で、B必要な人に誰でも必要な介護を! 十分な介護体制の確立を」を掲げて闘い、長谷川英憲氏(東京八区・杉並)の必勝をかちとろう。

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週刊『前進』(1950号3面2)

 ストップ介護保険

 現場の労働者に聞く 4

 月10万円もの利用料金払えなければ追い出し

 特養ケアワーカー Cさん

 第1節 夜勤もパート化

 もうひとつ、夜勤をパート化しようと言っています。反対したんですけど、すでに一人入れて三階の人をパートにしている。
 夜勤だけに来るのはすごく冒険なんです。昼間ずっと見ていないから、よくわからないわけです。お年寄りは慢性の病気をいくつも持っていて、突然亡くなってもおかしくないような人がいっぱいいる。私たち正職員だったら、昼間も見て、夜勤もするから、大体わかってやるじゃないですか。それでも私たちだって、二日休んだら夜勤をやるのはもう怖いですよ。いったいどうなっているんだろうと。
 うちは看護婦さんの夜勤がないんですよ。なにしろ何かが起こった時に判断を自分がしなければいけない。ものすごい重圧なわけです。だって知識がないのにそれを求められる。
 しかも救急車を呼んではいけないことになっている。園長に電話して、園長の奥さんが準看護婦なんですけど、その人が来るのを待って、それから対応するんですよ。そういうのはいやだって言うんだけど、システムは絶対に変えない。死んでもいいと思っているんですよ。
 だから、体制のない夜勤なんです。それをパートをもっと増やすというんだから。何かあった時に責任取れと言われたって責任なんか取りようがない。
 ――すごく危険な状態ですね。
 介護職員を減らした一方でサービスは向上させなきゃいけないということを職員会で言ったんです。利用者側が施設を選ぶ時代になるからサービス度を上げなきゃいけないと。園長が、「何が最低限できるか。みなさん寝間着に着替えさせてください」と提案した。みんな「ええっ。そんなことは無理です」と一斉に叫んだ。
 寝間着に着替えさせるのはものすごい労働量なんです。特養に入っている人で自分で着替えられる人は何人かしかいない。あとはほとんど介助です。それも重度の人は手足が硬くなってるんです。人間って筋肉の強く引っ張る状態で固まる。その人を寝間着に着替えさせるのは、ものすごく大変なことなんです。一日の仕事が寝間着着替えになってしまうくらいの大変さなんです。
 それをやれって言う。上の人は現実をちっとも知らないもんで、さっさとできると思ってる。信じられないですよ。ホームを経営していて。
 結局、主任クラスの人が「じゃあ一人からやってみましょう」と言って、利用者を誰か一人決めてやってみましょうということで折り合いがついた。
 そのほかにもあれこれ、サービス度を高めようと言って、いろんなことをさせようとしています。また、壁を塗り替えたりとか、設備費に金をかけて修理しています。病院のイメージを払拭するために掛け布団とシーツの色を変えるとかね。そういうこまごましたイメージアップ戦略をやってる。

 第2節 すべて営利優先

 ――入院した人のベッドはその人のために確保しておかないで他の人を入れることになりますか。
 そうです。結局どうやって満床にするかということですよ。今、入院したらその空きベッドをショートステイに使おうと言ってる。
 ショートステイは、本人負担は報酬単価の一割だけど、保険から施設に払われるのは、要介護度に応じて一泊につき九千四百八十円から一万千五百四十円になる。長期の入所に比べて一日あたり千五百円近く高い。この間、亡くなった人のベッドをあけたままにしているというのがあって、ショートにしようとしているんじゃないかということもうわさになっている。それでワンフロア全部ショートステイにしようとしているんじゃないかということも言われている。
 ――介護度によって、保険からでる金が違うわけでしょ。介護度の高い人を選んで取ろうとするでしょうね。
 それはそうですよ。要介護1で一日あたり七千九百六十円でしょ。要介護5だと九千七百四十円じゃないですか。全然収支が違いますよ。必死になって、重い人を取ろうとする。そうしないと経営が成り立たないとか言って。職員には負担がかかる一方です。
 この前、家族への説明会があって介護費用概算をだした。これは介護度5の人の例ですが、介護費用の自己負担金は一日あたり千五十円だけど、その他の食費やおむつ代、事務費などの費用も含めると一日あたり三千三百円以上になる。一月にすると九万九千四百円です。今までは所得に応じて払ってたわけじゃないですか。だから所得が少ない人は払わないで済んだ。低所得の人に家族の介護費用を十万円も払えと言われても払えないですよ。
 だけど、結局払わないと追い出される。契約書の案があるんですけど、ここに、「利用者のサービス利用料金の支払いが正当な理由なく二カ月以上遅延し、料金を支払うよう催告したにもかかわらず十日以内に支払われない場合」は契約を解約するとなっている。要するに金が払えないと追い出される。
 金がないと施設にも入れない。在宅だって、金がなけりゃなんにもしてくれない。今までの水準を維持するためには介護度が重ければいいって言うけど、それは金があって重ければいいってことであって、金がなくて重ければ悲惨。払う金がなければ介護を受けられない。本当にひどい世の中になる。家族は、うーん、って言ってたそうです。

 第3節 人事考課を導入

 ――労働条件という点ではどうですか。
 給料を引き下げようとしています。これまでは東京都にある施設は、東京都の補助で都の基準でやってる。それを東京都が補助を打ち切るというので、また引き下げようとしている。「補助がなくなるから民間並になります」と。
 公私格差是正のための給与調整費というのがあって基本給の一二%なんです。それをゼロにすると言っている。それから二十四時間勤務の特別業務手当がうちは一万五千円なんですが、それを五千円にすると言っている。
 その他、夜勤手当とかいろんな手当を減らして、その上で基本給に人事考課を導入すると言っている。評価システムは、今主任クラスが何と何で勤務評価をチェックするかという項目を作り上げたらしいんです。
 だからひどい職場になっちゃう。こういう職場ってチームワークなんですよ。お互いがフォローしあいながらやっていかないと、仕事が進まない。それをがんがん分断されて、もう働きにくくて仕方なくなる。
 みんなストレスがたまっているけど、利用者にかかわっていく中でエネルギーをくれるのね。話をしたりする中で結構返ってくるものがあるから、それでエネルギーを充填(じゅうてん)して頑張っている。今までは若い人もそれなりのポリシーをもって働いている。
 矛盾だらけですよ。福祉職場も終わりだね、もっと働きづらくなるね、もうやめようか、なんて話ばっかり。給料は下がるわ、労働はきつくなるわ、人間関係もぎすぎすするわだから。
 組合がないとダメですね。やっぱり、なんの力もない。組合がないので一方的にやられている。そこを何とかしたいですね。

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週刊『前進』(1950号3面3)

 全金本山

 結成20年迎え集会

 完全勝利へ新たな出発

 三月五日、仙台市の「ろうふく会館」で全金本山労働組合結成二十周年の記念集会とレセプションが八十一団体、二百五人の参加で盛大に開催された。
 記念集会では、冒頭に庄子副委員長があいさつし、「私たちの団結は『一人の首切りも許さない』『仲間は裏切れない』の二つでつくられている」と述べ、全国金属から統制処分され「『路なきところを踏み歩き道をつくりつつ』闘おうと」(結成趣意書)新労組を結成した三十二人の組合員の団結力を確認した。
 続いて、長谷委員長が「三十年前の青柳さんの不当解雇に対し、『守る会』に二百人が集まったが、会社は激しい切り崩しをかけた。その中で、解雇は一人ひとりの問題であるととらえ闘う執行部をつくった。新労組を結成してからの二十年は反動とのやり合いだった。労働組合の闘いは人間としての生き方をかけたものとなる。二十年前の全国金属の争議つぶしと統制処分、『別棟就労』に名を借りた争議収拾、解雇者の切り捨てに対し、佐藤光男君は『別棟は戦術の変更ではなく路線の変更だ』と言って、このろうふく会館で抗議の投身自殺をした。その思いは今も生きている」と二十年を振り返った。
 そして「今日の情勢下で、闘う労働運動をみんなでつくろう」と呼びかけた。
 青柳書記長の基調提起では、本山闘争が、闘う労組をつぶし変質させようとする資本や警察権力との闘いだったことが総括された。
 また、第二組合の分裂、暴力ガードマンの導入、ロックアウトなどのあらゆる攻撃を打ち破ってきたこと、とりわけ暴力ガードマンのテロルに対しスクラムデモなどで対決して団結を守り抜いたこと、港合同や光文社などの闘いに学び、暴力に負けない団結をつくったことが今日の原点であると確認された。
 そして、「ガイドライン反対の二十労組のように、上部をこえた決起が可能な状況になっている。ここに闘う労働運動の展望がある。職場・地域での闘いをつくりだそう」と訴えた。
 続いて、本山労組を一貫して支援してきた都職労の代表が、「昨年の一時間スト、座り込み闘争への大量報復処分をはね返し、石原都政と対決する。青年部のころ、門前闘争にも来た。本山労組のしっかりした闘いをつくりだしたものは、第一に路線が簡明でわかりやすいこと、第二に物資販売のていねいさ、第三に現場闘争に主軸を置いた闘いだと思う」と述べた。
 仙台の自治労の労働者は、「『一人の首切りも許さない』は私たちの労組の伝統的考え方でもある。リストラと侵略戦争に立ち向かう運動をつくろう」と訴え、「支援をするな」という文書が出される中でも、県内で支援を続けてきた闘いの意義を語った。
 「兄弟組合」の動労千葉からは布施副委員長がかけつけ、「動労千葉も本山に学んでここまで来た。原点に戻り、本物の労働運動をつくり出そう」と訴えた。
 全国金属機械港合同の代表は、「西の細川鉄工、東の本山」と言われた全金時代からの闘いを振り返り、JAMへの決別と、新たな闘いへの決意を述べた。
 不当弾圧と闘う東京の争議団の労働者は、組対法を先取りしたデッチあげ弾圧を打ち破ろうと訴えた。
 結集した組合員が演壇に並び、代表して小野東京分会長が決意表明。「完全勝利をかちとり、運動をとおして国を変えよう」と「二名の解雇撤回、全員の原職奪還」の決意を述べ、熱い拍手を浴びた。
 最後に菅原副委員長が「いろいろな立場をこえて大きな団結をつくろう」と訴え、長谷委員長の団結ガンバローで締めくくった。
 その後、会場を移してレセプションが行われた。三一書房労組を始め参加した争議組合が並び、自己紹介した。八重樫前委員長の音頭で乾杯、マンドリンの演奏や各地から駆けつけた労組の発言などが続いた。最後に家族の代表と組合員一人ひとりが決意を述べた。
 六日は六十人の参加で本山製作所のメーンバンクである富士銀行、七十七銀行前での宣伝活動、仙台地裁前から市内デモを打ち抜いた。本山製作所は就労闘争を恐れ、臨時休業とした。
 二十周年集会は、「一人の首切りも許さない」という労働組合の原則を守り、あらゆる組合つぶしを打ち砕いてきた勝利を確認する場となった。またそれは、二〇〇〇年を本山闘争の完全勝利の年とし、労働者階級の未来を切り開く闘う労働運動の新たな出発点をつくり出すものとなった。

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週刊『前進』(1950号3面4)

 資本攻勢&労働日誌

 3月1日〜15日

 ●組合費「天引き」禁止狙う

 ●会社分割法案を閣議決定

 ●鳩山が労組破壊の促進論

 金属大手史上最低水準の春闘回答

●1日 JR東日本は東労組とシニア協定を締結。東労組はこの裏切りをテコに国労、動労千葉解体を策す反革命方針をむき出しに。
◇国旗・国歌法が施行されて初めての卒業式が全国の多くの高校であった。各地で反対闘争。
●4日 新日本製鉄など鉄鋼大手の労資は60歳以降の従業員の雇用延長制につき継続して検討することで大筋合意。金属労協(IMF・JC)傘下の主要労組では自動車を除き雇用延長問題が「決着」。
●7日 自民党は企業が従業員の給与から労働組合費を天引きする「チェックオフ制度」を原則禁止する方針を固めた。自由、公明両党と調整し、労働基準法など関連法の改悪案を議員立法で今国会に提出する考え。(日経)
◇金属労協(IMF・JC)が日経連に対し賃上げ実施を求める異例の申し入れをした。
◇NTT、NTT東日本、NTT西日本の3社は2000年度の事業計画を発表した。両社合計で4400人の人員削減を予定。
◇労働省は、大手電機業界などが導入している裁量労働的なフレックスタイム制について「労働時間の自己申告制はサービス残業を生み出すおそれがある」と、労基法に基づき監督調査を行う方針。
●9日 「作業前の着替えや安全具の着用にかかる時間も労働時間に含まれる」とする最高裁判決。
◇マツダ労働組合は10日から正式な残業を拒否する「非協力宣言」を実施し、年間一時金回答が組合側要求に満たなかった場合、スト権確立に動くことを確認した。
◇富士重工業と三菱化学は、産業再生法の適用を申請する方針を決定。昨年10月の同法施行以来20社が認定を受けたが、産業再生法の主目的である「過剰設備の廃棄」を目的とした例は、まだ1社。
●10日 政府は閣議で、会社分割制度を創設するための商法改定案を決定した。分割に伴う労働関係のルールを定める「会社分割に伴う労働契約承継法案」も決定。
◇連合の鷲尾会長ら9人が日経連に「適正な賃上げを行うよう会員企業に周知してほしい」と申し入れ。春闘の大詰めで日経連に要請したのは連合発足以来初めて。
◇民主党の鳩山由起夫代表は「チェックオフ」制度禁止について「組合員一人ひとりの意志で組合費を徴収するのは時の流れで、むしろ自然」と述べ、賛成した。
●14日 電機連合は、ベースアップ要求の基準となる賃金モデルを見直す方針を明らかにした。技能職モデルと大卒モデルを並立させる案などが浮上。
◇三和銀行、東海銀行、あさひ銀行の都銀3行は臨時取締役会を開き、事業統合を正式決定。
●15日 金属労協(IMF・JC)への春闘の賃上げ要求への集中回答がなされた。史上最低の妥結水準となった。(表参照)
 表 2000年春闘での金属労協の妥結額
      回答・妥結額(カッコ内は昨年実績)    要求額
自動車総連                      定昇2%相当+2000
 トヨタ自動車 ベア相当分500(700)
 日産自動車  ベア相当分500(ベアゼロ)
電機連合    ベア500(500)             ベア2000
鉄鋼労連   (隔年春闘、98-99年度実績1500)      ベア3000
 新日鉄、川鉄、住金 2000年度ベア1000、2001年度ベアゼロ
 NKK、神鋼    2000年度ベアゼロ、2001年度ベア1000
造船重機労連  ベアゼロ(1300)            ベア2000

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週刊『前進』(1950号4面1)

 戦時型教育への転換狙う教育基本法改悪阻止せよ

 「教育改革国民会議」と対決を

 日帝・小渕は現在、内閣の最重要課題に教育改革−教育基本法の改悪を正面から掲げている。今月末には「教育改革国民会議」を発足させ、教育基本法改悪へと突き進もうとしている。教育基本法改悪攻撃は、憲法改悪攻撃と一体の攻撃であり、戦後的な階級関係の転覆と、社会全体の戦時体制への全面的転換をかけた攻撃である。教育労働者と学生を先頭に、全人民の決戦テーマとして闘おう。

 第1節 「国家に有用な人材」育成へ教育目的転換

 日帝・小渕は一月二十八日の施政方針演説で、「教育立国」「科学技術創造立国」を掲げ、「単に教育制度を見直すだけではなく、社会のあり方まで含めた抜本的な教育改革が求められている」と打ち出した。
 そのために「教育改革国民会議」を三月末に発足させ、最大の課題に教育基本法改悪を据えようとしている。座長には筑波大学長、中教審・大学審委員として教育改革の中で反動的な役割を担ってきたノーベル物理学賞受賞者・江崎玲於奈を据え、二十六人の委員も決定した。江崎は「教育基本法はそれなりの役目を果たしたが、時代とともに教育は変わる」と、基本法改悪の推進を表明している。また教育改革担当の首相補佐官に、元文相の町村信孝を就任させた。
 現在進められている教育改革攻撃とは、戦後的な教育のあり方総体の全面的な転換を狙うものである。
 教育改革のひとつの方向性は、伝統的とも言える国家主義的天皇主義教育の確立であり、「国のために命を捧げる」価値観を注入する教育への転換である。
 町村は「個人の権利や自由を主張するだけでなく、公共の福祉とのバランスをとるべきだ。現在は極端に『個』に傾き過ぎて、責任とか義務が軽んじられている」と、教育改革の狙いが“『公』に奉仕する人間”教育の復活であることをあけすけに語っている。
 自民党サイドではより露骨だ。自民党教育改革実施本部教育基本法研究グループの主査・河村建夫は「平成の教育勅語を念頭に議論する」と発言し、同本部顧問・麻生太郎は「教育勅語は、徳、忠、孝といった道徳や父母、兄弟、友、夫婦、国民との関係など社会で健全に生きていくための指針が示されていた。教育勅語も見直されるべき」と語り、戦前型天皇主義教育の復活を公言している。
 こうした中で、「日の丸・君が代」の強制の攻撃も一挙に激化している。
 また現在、日帝の体制的行きづまりと戦後教育政策の矛盾が、いじめ、自殺、「学級崩壊」、神戸事件、京都事件などとして全面的に爆発し、いわゆる「教育の荒廃」として大問題になっている。日帝は自らの体制と教育政策が生み出した矛盾をもまったく逆に利用して、「心の教育」という名の道徳教育・国家主義教育の前面化や、都知事・石原の「心の東京革命」といった攻撃の「バネ」にしようとしている。
 日帝・小渕の教育改革のもうひとつの方向性は、戦後の「平等主義」教育の解体である。競争原理を導入して階層的教育へと転換させ、戦後的な義務教育制度・公教育を解体し、一部の「創造的人材」「エリート」養成を選抜的に推進していくことである。
 教育をめぐる戦前と戦後の大転換のひとつに、「権利としての教育」という理念の確立がある。憲法二六条では「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と、“すべての子どもが平等に教育を受ける権利を持つ”ことが、形式的にではあれ掲げられた。今、この理念の解体が攻撃の焦点になっている。
 今年一月に「21世紀の日本の構想懇談会」が提出した報告は、「国家にとって教育とは一つの統治行為」「義務教育はサービスではなく、納税と同じ若き国民の義務であるという観念を復活」させよと、“能力のない人間には教育投資は不要”という論理で義務教育を週三日制に縮小することを打ち出した。
 他方で同報告は「先駆的な才能を持つ人々を国家が支援し、そのために財政的な支出を行うことは、それ自体が国益にかなうものとして国家の機能のうちに数えられる」と、“有用な人材育成のための教育投資”を強化せよと打ち出した。
 戦後の教育制度は日帝にとって、何よりも高度成長を支える均質な労働力を大量に養成するという意義を持っていた。しかし今や、そうした教育の「限界」が日帝に突きつけられている。@「平等主義」教育では激化する帝国主義間争闘戦を担う「創造的人材」、支配層たるエリートは養成できず、A財政危機に規定されて教育費削減が死活的であり、Bエリートと将来の不安定雇用化した労働力をより効率的に養成するためには戦後的な教育制度を打破することが必要だとして、攻撃している。

 第2節 基本法前文の理念を覆し愛国心復活図る

 日帝が今、教育改革の最大の焦点としているのが教育基本法改悪である。町村が首相補佐官就任にあたって「戦後の日本社会、教育界を貫いている理念の転換なくして教育改革は進まない」と述べたように、戦後教育の基本理念を解体しなければ、戦時型教育に転換できないという強烈な危機感を持っているのだ。
 焦点のひとつが前文だ。教育基本法前文には「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。(中略)われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」と、戦後憲法の理念を教育の基本に据えることが明記されている。この点を抜本的に改めようとしている。
 具体的には、前文に「国を愛する心」「歴史、伝統文化の尊重」「家族を敬う気持ち」を持った人間の育成、という文言を盛り込もうとしている。「歴史、伝統文化の尊重」とは、自由主義史観グループの掲げる「自虐史観からの脱却」、日帝の侵略戦争の歴史に“誇り”をもたせる教育への転換を意味する。愛国主義・国家主義、帝国主義的民族排外主義を教育の中心に据えるということだ。
 次に、第一条(教育の目的)に「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」とある。この教育の目的が十月の自自公合意で「二十一世紀を支える有為の人材を育成する教育を実現するため」と記したことが示すように、日帝にとって「有為な人材」の育成に転換しようとしている。
 第七条(社会教育)の「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」という規定の解体も狙われている。国や行政は直接教育事業を行わず、“社会教育の主体は国民自身である”とする、国民教化事業の復活が目指されているのだ。また第七条に「生涯学習」や「環境教育」を盛り込もうとしている。教育基本法改悪論者の言う「生涯教育」とは、資本が必要とする技術や能力を労働者に習熟させることに歪小化したものでしかない。
 また、戦前の国家神道への反省から定められた第九条(宗教教育)の「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」という規定を解体し、「宗教心の育成を図る」という文言を盛り込もうとしている。二月一日に参院本会議で自民党の村上正邦が「日本のルーツを解き明かす神話を学ぶことも大切」と訴え、文相・中曽根が「神話や伝承も含めて歴史を理解していくことが重要」と答えたように、宗教的情操教育を強化し、「皇国史観」と国家神道復活を狙うものだ。

 第3節 改憲への中央突破を狙う「教育改革」攻撃

 これまでもさまざまな教育改革攻撃がかけられてきたが、教育基本法改悪に手をつけることは、憲法改悪と同様に「タブー」であった。八〇年代の首相・中曽根康弘の「戦後政治の総決算」攻撃の一環としての教育改革で、臨教審設置の合意を取り付けるためには中曽根自身が「基本法を改正する考えはない」と表明しなければならなかった。
 しかし、町村が「臨教審は教育基本法に手をつけないということで始まったが、今回は制約がないので、自由に議論し結論を得ることは可能だ」と語ったように、今回の攻撃はまったく次元を異にする。ガイドライン体制下において、日本の社会の戦後的なあり方を一掃し、「戦争をする国家」に飛躍・転換するための攻撃なのだ。
 教育基本法改悪攻撃は、まさに憲法改悪攻撃と一体の攻撃だ。しかも日帝は、憲法改悪の中央突破を図るための突撃路として教育基本法改悪を位置づけている。「この種のものは一年でいいのではないか」(町村)として、わずか一年で基本法改悪を押し通すことを狙っているのだ。
 教育基本法改悪を貫徹する上で、日帝にとって最大の課題は、日教組運動−教育労働者運動の解体だ。
 一月三十一日に自民党幹事長・森は「教職員組合によって道徳教育が破壊されてきた結果、倫理観の乏しい人間が大量に生み出された。教師に大きな問題があったと言わざるを得ない」と、教育労働者運動を憎悪をもって罵倒(ばとう)した。「国家と天皇のために死ぬ」人間をつくる教育への転換は、「教え子を戦場に送るな」を掲げてきた戦後日教組運動の完全解体なくしてあり得ない。
 その意味で、最大の焦点は、教育委員会の職務命令による「日の丸・君が代」の強制、東京で導入されようとしている人事考課制度による愛国心教育の強制である。これは教育基本法第一〇条の禁ずる「不当な支配」そのものであり、従来の最高裁判決などの教育基本法解釈さえ踏み越える攻撃だ。
 しかし教育労働者は絶対に屈していない。この三月、法制化後初の卒業式を迎え、広島、東京、大阪など各地で、教育労働者と生徒、地域住民が一体となってかつてない広がりで「日の丸・君が代」闘争が闘われている。この力の中にこそ、教育基本法改悪攻撃を打ち破る力がある。
 二〇〇〇年決戦のただ中で、教育基本法改悪絶対阻止闘争の爆発に向け、闘いを準備し推し進めよう。
 〔大西 晶〕

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週刊『前進』(1950号4面2)

 広島卒業式

 生徒退場で「日の丸」撤去

 全県下で闘争爆発 世羅高は着席で抗議

 三月一日、広島県公立高校の卒業式が行われた。昨年、辰野教育長による「日の丸・君が代」の強制によって校長が自殺に追い込まれた世羅高校には全国の注目が集まった。式が始まり「国歌斉唱」の声がかかると十人の教職員が着席した。卒業生全員もそろって着席した。在校生のほぼ全員が続いて座った。誰も歌わない。ざわめき。「勝負あり」の瞬間だ。
 広島県の公立高校では、「国旗」掲揚・「国歌」斉唱に教職員のなんらの合意も得られないまま卒業式当日の朝を迎えた。新聞も、「十校は直前まで式次第すら決められない状態」と報じている。辰野教育長はその十校に攻撃を集中し、卒業式の直前までひっきりなしに「点検電話」をかけ、実施を強要しようとした。
 世羅高校でも、いよいよ式開始という時になって初めて生徒は式次第に「『国歌』斉唱」がこっそり書き込まれていることを発見した。しかも校長は生徒が提案した卒業祭も消していた。怒りは爆発した。
 世羅高校だけではない。広高教組は卒業式の「日の丸・君が代」強制反対に組織を挙げて決起した。マスコミ報道から多少の事例を紹介したい。
 全校生徒百九十五人全員の「君が代」反対署名を提出していた大崎海星高校では、教職員と卒業生の全員が着席して激しく足踏みして抗議した。「『日の丸・君が代』の強制で僕たちの思いが踏みにじられた」と送辞・答辞が述べられ、生徒たちは口々に「校長が聞き入れてくれず悔しい。天皇制につながる『君が代』は聞くだけでも怒りを感じる。曲を流すだけでも強制だ」と語った。保護者もこれに呼応した。
 府中東高校、尾道工業高校などでも教職員と生徒全員が着席。本郷工業高校では、「卒業は生徒が主役。強制は生徒と教職員が積み上げてきたものを吹き飛ばした」と立て看板が校門前に出され、ビラが配布された。どこも、決意と創意あふれる闘いである。
 「百パーセント実施」という県教委の発表は、何の実態、いや体裁すら伴わない「大本営」発表である。
 広教組を先頭に小中学校でも、卒業式闘争が闘われようとしている。広教組は二月十六日、臨時大会を開き「『日の丸・君が代』強制反対」と組織破壊・民主教育破壊を目的とした「『広域人事異動』反対」を絶対多数で決議し、闘いの布陣を固めた。
 三月十日、新市町立中央中学校では、初めて「日の丸」が三脚に掲げられた。しかし卒業生がマイクで「『日の丸』が撤去されなければ退場します」と宣言、卒業生・在校生がそろって退場を始めた。校長が「日の丸」を撤去し、ようやく卒業式が始まった。卒業生代表五人は「『日の丸・君が代』が法律にあることに怒りが込み上げてくる。これがなければ楽しく卒業できたのに」と答辞を批判の言葉でつないだ。
 広教組・広高教組・自治労・平和運動センターなどでつくる「豊かな教育と暮らしを確立する県民連合」は、十万人達成を目指し、二月十六日、辰野教育長の更迭要求署名六万五千三百五十九人分を県に提出。闘いは力強く前進している。
 広教組・広高教組には、全国から檄文が寄せられ、両教組は、闘いのさらなる前進をかちとりつつある。
 (投稿/O・S)

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週刊『前進』(1950号4面3)

 大阪

 「日の丸・君が代」拒否

 職場の団結の力

 前号1面既報の大阪の高校卒業式での「日の丸・君が代」闘争についての投稿です。(編集局)
 大阪府教委は今年一月五日に、府立高校学校長宛通達をだし、「日の丸・君が代」の完全実施を通知してきました。特に実施率の低い北摂地区(大阪第二学区)では、ヒアリングと称して校長が毎日、府教委に締め上げられ、「広島の世羅高校長へのやり方さながらの指導」(ある校長談)が行われたのです。
 この闘いは、同時に「大阪の教育を正す府民の会」(顧問はあの西村真悟前防衛政務次官)との闘いでもありました。この団体は、各高校に「見学」と称し、「日の丸・君が代」強制の圧力を加えてきました。
 しかし、これを敢然とはねかえす素晴らしい地域の闘いを実現したのです。
 一月に卒業式の式次第が職員会議で討議・決定されていきました。「日の丸・君が代」のない卒業式を職員会議参加者全員一致で決議していったのです。
 各校長は、この職員会議決定過程、ないしは決定以後、「日の丸・君が代」の実施を言い始めました。卒業式の主役である卒業生や生徒の意思などは完全に無視して、一方的に職員会議での決定をひっくり返そうとしてきたのです。
 式次第が決まって半月以上たってから突然「日の丸・君が代」の式をやると言いだすなど、教職員や生徒を完全に無視した卑劣なやり方で、強制しようとしてきたのです。
 多くの校長は、教職員が校長交渉を要求すると、「出張があるから」「忙しいから」と逃げ回りました。ある学校では、校長不在の日があまりにも多いので、いるときには毎日校長交渉をやっていました。
 この交渉で、校長は何ひとつ「日の丸・君が代」強行の理由を明らかにできなかった。最後には判で押したように「圧力があるから」「指導要領は法的拘束力があるから」を繰り返すのみで、教職員の意見に対応できない無様な姿をさらけだしました。
 ある高校長などは「文部省令の改正(今年四月実施)で、職員会議決定は意味がない。決定は校長である私の専決事項である」と口走って、より一層の怒りを買ったのです。
 こうした校長の対応に、教職員全体がより結束して、「日の丸・君が代」強制を許さない闘いを繰り広げました。職員会議で再度反対を確認し、校長交渉を行っていったのです。
 卒業式一週間前には、週三回も四回も校長交渉をねばり強く闘い、どこの職場でも校長を圧倒する闘いが展開されたのです。
 こうした職場全体の団結した力が、生徒や教職員、保護者の拒否の闘いをつくりだし、すべての高校で生徒が鮮やかに「日の丸・君が代」反対を態度表明した原動力なのです。
 決定的なのはこの闘いを中心的に担った高教組の闘いです。高教組は職場内では、少数派です。その組合が、すべての教職員の「日の丸・君が代」強制はいやという思いと結びついて、闘ったのです。
 「日の丸・君が代」強制に、かつてない地域からの闘いが巻き起こりました。
教育委員会や各学校長への申し入れが数多く行われています。高校に「日の丸・君が代」強制反対のビラ入れが行われました。リハーサル、卒業式本番でもビラがまかれました。現場の教育労働者とともに闘いぬいたのです。
 三月中旬からは小中学校での闘いが始まります。市教委は「日の丸・君が代」完全実施を言っています。高校での闘いを引き継ぎ、打ち破っていく決意です。
 最大の問題は、連合路線です。現場は闘いたい思いでいっぱいです。しかし組合執行部は、「広島のようにするな」「対決すれば処分がくる。だから闘うな」と脅しをかけているのです。教育労働者の良心ともいうべき「教え子を戦場に送るな」が踏みにじられ、再び天皇の手先になれという攻撃がかかっている時に、闘わずに屈服せよと言っているのです。さらに「校長交渉ではなく、市教委との統一交渉を」と言って現場での校長との闘いを抑え込んでおいて、市教委との交渉内容を組合員に教えないという許し難い態度をとっています。
 「文部省とのパートナーシップ」路線に教育労働者の未来はありません。現場から、連合路線をうち破って「日の丸・君が代」強制反対の闘いをつくる決意です。 (大阪/R・M)

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週刊『前進』(1950号4面4)

 橋本控訴審

 「犬の臭気選別」訓練士

 新選別」で強弁

 次回、攻めの反対尋問

 橋本裁判控訴審第三回公判が二月二十五日、大阪高裁で開かれた。
 橋本裁判は、日帝権力・京都府警による橋本利昭同志への火炎ゲリラ戦闘の「実行犯」としてのデッチあげ逮捕から始まった。京都地裁で、九八年十月二十二日、橋本同志・弁護団と党は、「犬の臭気選別」によるデッチあげを打ち砕き、完全無罪の判決を戦取した。これに対して京都地検は、九八年十一月三日に、この「犬の臭気選別」というデッチあげの手段をなんとしても護持するために、控訴を強行した。
 検察官は、控訴にあたって一審判決後に行った、別の犬・別人の臭いを使った、橋本裁判の事件とは、関係のない「実験選別」(以下「新選別」と記す)の結果を証拠請求してきた。そして前回公判で、検察は、この「新選別」を行ったT訓練士を証人として出廷させ、以下のような「証言」を引き出した。
 @「新選別」では、訓練士と犬は囲みの中にいて配布作業は見ていないから事前に答を知ることはできない、また答えを知っている立会人などが選別中は小屋の中に入っているから犬は純粋に臭気だけで選別している。A橋本事件選別の使役犬(マルコ、ペッツオ)も、「新選別」の使役犬(アルノ)も同等の訓練を受けた「完成された選別犬」である。Bしたがってこの新しい方式の選別(=「新選別」)でも、マルコ、ペッツオは、同等の結果を出すと確信する。C「新選別」でできるということは、たとえ橋本事件選別で訓練士や関係者が答えを知っており、指図・誘導や、クレバー・ハンス現象、カンニングのできる環境にあったとしても、使役犬はそういうものに惑わされずに、純粋に臭気の同一性だけで選別している、という論法だ。詭弁(きべん)としか言いようのない、ペテン師の「論理」である。
 検察官は、前回の珍妙な論法の補強のため、訓練士に、@(自分が)答の見える位置に行ったのはタバコを吸いに行っていたためであり、答を見ていない、A(問題となった)手の動きは、(自分の)自然な動作であり、指図・誘導していたのではない、B「営業上の秘密」として犬の訓練内容へのつっこんだ質問に答えなかったことに対して原審で批判されていることに、「そんなものはない、そう言ったのは被告に長々と演説されて意味もわからずに言ったことだ」と居直らせ、C原審で、カンニングや濃度コントラストを問題にされたことに対し、「犬について知らない人の言葉」とか、「(警察を疑うなんて)気の毒な方」と原審裁判長を罵倒させ、D訓練士は警察とはちがう「公平な第三者」と、言わせた上で、「警察を排除して裁判所の検証として選別実験をやったらどうか」と提案し、訓練士に、「『新選別』の使役犬(橋本事件選別の犬ではない)を私が使い、場所は慣れた私の所なら喜んでやらせてほしい」と証言させた。
 最後に検察官は、訓練士に「(原審判決で、自分は)名誉を著しく傷つけられた。犬の習性を知らない単なるコジツケの判決」などと好き放題の「証言」をさせて主尋問を終わった。
 いよいよ弁護側の反対尋問が始まった。塚本主任弁護人が尋問に立った。T訓練士は、検察側の尋問の時とは、うってかわって寡黙になり、断定的に返答したことに対して、そうでない事実を突きつけられると、とたんに「たくさんやっているもので……」とか「年をとると……」などと弁解を始めた。
 今回の反対尋問で、T訓練士の虚言を暴き出していくための準備が整った。
 このTなる人物は、警察など権力に貢献し認められることを生きがいとしている人物である。過去何度もデッチあげに加担して裁判で「証言」してきているが、何度もボロを出し、その都度平然と前言を翻してご都合主義的に言い逃れを繰り返してきた人物である。T訓練士は、裁判官が自分の担当する裁判のかかわりの中だけで判断することを逆手に取り、その場限りの口からでまかせを「犬の嗅覚(きゅうかく)はきわめて鋭敏である」という犬神話によって補強し、裁判官をたぶらかしてきた札付きの人物である。
 われわれは、T訓練士のかかわったすべての裁判の記録を検証する中で、都合が悪くなると平気で前言を否定し、その場逃れの方便を平然と駆使する人物であり、それゆえに警察に重宝されてきた人物であることをはっきりと暴き出す。
 次回公判から攻めの尋問を開始する。塚本弁護士の尋問に引き続き、橋本同志が反対尋問を行う予定である。犬による「臭気選別」を刑事裁判の証拠から葬り去り、デッチあげの手段を権力から奪い取るために、T訓練士を徹底的に追及する場となる次回公判への結集を訴えます。

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週刊『前進』(1950号4面5)

 ”北朝鮮を一撃で壊滅”石原が暴言!

 相次ぐ排外主義扇動許すな

 ファシスト都知事石原慎太郎がまたしても排外主義暴言を吐いた。三月七日の自民、自由両党参院議員の勉強会に講師として出席した石原が、「北鮮(ママ)なんて、ばか(ママ)なことを始めたら一撃で壊滅する」と述べたのだ。「北鮮」という北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国に対する差別的蔑称(べっしょう)を平気で使って、軍事力をもって北朝鮮を壊滅することを公言することを一私人ではなく首都の知事が行っているという恐るべき事態を、われわれは満身の怒りをもって弾劾しなければならない。
 また、十日の外国特派員協会での講演では、石原は「北朝鮮に拉致(らち)されている子どもを取り戻す術を政府は全然持っていない。もしアメリカの女の子を拉致して返さなかったら、アメリカは戦争を始めるだろう」と語った。「拉致事件」を口実に北朝鮮に対する侵略戦争を始めろと扇動しているのだ。
 同時に、新安保ガイドラインに言及し、「発効する時には無条件で協力する。羽田の空港、東京の港、何であろうと百パーセント国に協力する」と戦争協力宣言を行った。十日付の朝日新聞インタビューでは、「私は(新ガイドラインに)文句言わずに協力するといった唯一の知事だ」と自慢している。
 先に石原は、「中国を分裂させなきゃいけない。(そのために日本は)必要な軍事力を備えていく必要もある」(『諸君!』三月号)と、中国への侵略と侵略戦争を公然と唱えている(本紙一九四八号参照)。
 マスコミや都議会が誰もとがめない中でこういう暴言が繰り返されることは重大な事態である。オーストリアの極右自由党が政権入りしヨーロッパと世界に激震が走っているが、それに勝るとも劣らないことが日本の首都で起こっているのだ。怒りを込めて極右排外主義者石原を弾劾し打倒せよ。自自公と石原にノーをたたきつけよ!

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週刊『前進』(1950号4面6)

 全学連、東大赤門前で情宣

 中核派と全学連の白ヘル部隊は三月十日、東京大学合格発表での情宣のために、受験生でにぎわう赤門前に断固として登場した。
 白ヘルメットの闘う学生が、二〇〇〇年決戦、沖縄サミット決戦への決起を訴えるビラまき、アジテーションを行うや、多くの受験生、在校生が「中核派とはどういう思想をもっているのか」「沖縄の新基地建設は絶対反対だ」とどんどんと近寄ってくる。東大生との合流が開始されたのだ。
 この三・一〇東大登場は、三・六横国大での勝利の地平(前号既報)をひきつぐ、対カクマル武装自衛戦争としてかちとられた。わが部隊が喚声をあげて赤門前に登場するや否や、戦々恐々とレポを行っていたカクマル分子は、大きな悲鳴をあげて脱兎のごとく逃走。びっくり仰天したカクマル本隊は、慌てふためき、なけなしの情宣部隊をつっ立ったたせたまま放置して、身を寄せ合うのみ。早稲田大や中央大、横国大などから動員されたカクマルJACは、わが部隊の戦闘意志と迫力の前に圧倒され、カクマル特有のファシスト的虚勢もどこへやら、いつもの「尊大な」口ゲバの一つも行うことができず、百bも離れた場所で肩を寄せ合ってうちふるえているのみであった。
 わが部隊は、登場後一時間もたってから現れた警視庁公安一課の刑事どもの弾圧策動もまったく許さず、情宣を貫徹した。
 カクマルと警察権力の敵対をはねとばし、二〇〇〇年決戦の爆発へ、全国学生の総決起をかちとれ。

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週刊『前進』(1950号5面1)

 沖縄サミット攻撃を粉砕せよ

 名護ヘリ基地阻止闘争と結合し世界を揺るがす歴史的大闘争へ

 沖縄サミットは、日帝と米帝を始めとする国際帝国主義が、昨年のユーゴスラビア侵略戦争を上回るアジアにおける世界戦争級の侵略戦争−朝鮮・中国侵略戦争に向かって突進する大転回点となろうとしている。二九年恐慌を上回る世界恐慌情勢と日米争闘戦の展開の下で、帝国主義の頭目が集まって、全世界の富を分捕りあい、人民を搾取収奪し、「平和」と「人道」の名で侵略と戦争の体制を強化し、発動するために会合する、これが沖縄サミットだ。それがほかでもない、世界最大の米軍基地の島沖縄で、基地と戦争に反対する人民の声を踏みにじって強行されようとしているのだ。沖縄サミット粉砕の闘いは、日本の労働者階級にとっては、侵略戦争にかじをきり、全力で戦争体制に突入し始めた帝国主義国家・自国帝国主義との正面対決の闘いとしてやり抜かなければならない。七・二一サミット厳戒体制を粉砕して歴史的な大闘争をたたきつけることがわれわれの責務である。学生戦線を先頭に、労働者階級人民の総決起を作り出そう。名護のヘリ基地建設阻止の闘い、岸本市長リコールの闘いと結合し、世界を揺るがす戦闘的な大デモをたたきつけ、日帝と米帝クリントンを大破綻(はたん)に追い込もう。衆院選決戦で小渕を打倒し、サミット決戦に上りつめよう。
 銘刈淳一

 第1章 米日帝の朝鮮・中国侵略戦争への突入攻撃との全面対決

 まず、沖縄サミット攻撃を規定している世界史的条件を明確にしよう。
 八九年|九一年のソ連スターリン主義の歴史的破産・崩壊とその後の帝国主義の矛盾の全面的爆発は、約十年の展開を経て、一方では二九年恐慌を上回る世界経済恐慌爆発の瀬戸際に世界経済をたたき込み、他方では、世界経済の分裂化とブロック化を促進し世界市場の再分割戦・帝国主義間争闘戦の軍事化=戦争化を一気に推し進めた。
 昨年春の、米帝を先頭とする国際帝国主義のユーゴ・コソボ侵略戦争は、帝国主義が世界支配の破綻点となっている旧ソ連圏の大混乱を導火線として、世界戦争的なスケールで侵略戦争−世界再分割戦を展開する歴史的情勢に突入したことを示した。帝国主義の矛盾は、これからもっと拡大し、ついには第三次世界戦争として爆発する以外にない全面的なものである。米帝のバブル経済の崩壊が全世界の危機をその土台から、今の状態の何倍も激しいものとしてつき動かしていくのは確実である。

 第1節 世界戦争の発火点と化すアジア

 ヨーロッパでは、ユーゴ侵略戦争とその後の東欧・バルカン地域の混乱の進行と、チェチェン侵略戦争などロシア情勢のさらに一段と深刻な展開を背景に、ついにオーストリアにおいてナチスを賛美するファシスト政党(自由党)と保守党が連立政権を樹立するという情勢が生まれた。ドイツ帝国主義は、この衝撃の下で、国内における政治腐敗問題をもきっかけにして政治的な危機に突入している。エリツィンなきエリツィン体制であるプーチン体制下でロシアがさらに深刻な危機と混乱に突入することは必至であり、旧東欧諸国の矛盾も一層激烈に爆発する。こうした情勢がヨーロッパ社会を一九三○年代にラセン的に回帰させるような危機と階級的緊張にたたき込んでいる。
 米帝は、コソボを占領した後、ボンドスチール基地と名付ける大基地を建設し、中東からロシア、そして中央アジア地域までをカバーする侵略最前線拠点を建設している。米帝は、「唯一の軍事覇権国家」としてこれからも軍事力にかけて世界を支配し続けようとしているのである。
 さて、問題はアジアである。アジアはこうしたヨーロッパ・中東そしてロシアや中央アジアの戦乱とは違って平和な情勢下にあるのだろうか。とんでもない。実は、アジアこそが、二十一世紀の冒頭情勢で最大の世界危機の発火点となろうとしているのである。インドネシアの危機は国家解体的泥沼に入り込んでいる。北朝鮮の体制崩壊的危機は、米帝と日帝にとってはいつどのよう形で国家転覆的な戦争をしかけるかだけが問題という情勢で推移している。
 問題は、そうしたアジアの危機が残存スターリン主義大国中国の体制崩壊的な矛盾がつくりだす大乱情勢と結合していることである。米帝と日帝は、中国の体制的転覆と大乱情勢への突入を完全ににらんでいる。それがアジアにおける日米の帝国主義間争闘戦の激烈化と軍事化を規定する最大要因になってきている。そしてそれが、今現在においては、香港返還後の台湾問題と絡んで、米帝の中国に対する軍事重圧、中国の側からの対抗的な台湾に対する軍事的恫喝として展開されている。
 米帝は、台湾周辺に空母を派遣し、沖縄において、また沖縄とフィリピンを結んで激しい軍事演習を繰り返し、三月の台湾総統選から沖縄サミットに向かって軍事的緊張を極限まであおり立てていこうとしている。日帝は、サミット議長国として中国をペテン的に引き込もうとしたが、中国はそれを拒否している。とても応じられるような情勢ではないのである。

 第2節 自自公政権の危機と石原の突出

 こうしたアジアの情勢において、一番の緊張要因をなしているのは、じつは日帝の危機と凶暴化なのである。日帝の経済危機は九七年以来、恐慌状態といってもいい局面にあり、それを乗り切るための財政支出は天文学的な数字となって日帝の国家財政を破綻的危機にたたき込んでいる。それでも景気回復の兆しなどどこにもみられない。というよりそれは、基底的な過剰資本・過剰生産力状態をただごまかそうとする効果しかないのであって、景気の回復をもたらす条件などどこにもないのだ。財政危機は、大衆収奪の徹底化と超インフレの戦争経済によってしか収拾できないようなレベルにまできている。
 その中で不況下での大失業攻撃、リストラと賃下げ、労働組合の破壊、労働者の団結と権利破壊の攻撃、賃金や雇用にかかわるこれまでの制度を桎梏(しっこく)として破壊する攻撃が吹き荒れ、介護保険制度の導入や年金制度の改悪を始めとする社会保障と福祉の解体・切り捨ての攻撃、大衆収奪・大増税の攻撃がかけられている。ところが、連合は労働組合として労働者階級の利益を守る役割を投げ捨て、労働者を大資本と帝国主義国家のために動員する機関のようなものに成り下がっている。
 今の情勢そのものが米帝の対日争闘戦を決定的な条件として生起してきたものであるが、日帝はさらに激烈な本格的な米帝の対日争闘戦の展開に直面し、帝国主義国家として危急存亡の危機に入っている。
 小渕政権は、自自公連立で巨大与党を形成してこの危機をのりきり、経済を立て直し、新ガイドライン戦争体制=戦争のできる国家への転換を実現することを目指したが、課題のあまりの巨大さの前に、倒壊寸前の状態にたたき込まれている。そして、あらゆる水路から体制の腐敗が噴き出し、人民の怒りが爆発しつつある。
 日帝の危機は、根底的なものである。階級的な緊張の度合いは戦後の歴史が経験したことのない超激烈なものになってきている。
 小渕・自自公連立政権が破産するということは、五五年体制崩壊後の政治再編劇の一切が破産し、したがって日帝としては戦後の議会制民主主義の総破産に直面するということである。
 だからこそ、ファシスト石原が都政権力を拠点にして中央権力の弱体性を「攻撃」し、国家を揺さぶるような攻撃を先取り的に人民にしかけ、公然とファシスト政治運動のようなものを展開しているのである。石原は、意識的に国家権力を狙っている。自民党政治家の一部は、石原新党の結成を口にして石原の「人気」にあやかろうとしている。こうした「流れ」がすでに現実のものになっているということは恐るべきことである。石原はすでにオーストリアという一国家よりも大きな東京都の権力を握っている。そして、「中国を分裂させよ」「日本の領土を守らない安保は必要なのか」「障害者に人格はあるのか」などと公言し、好き放題をやっている。
 日本の政府がオーストリアにおけるファシスト政権(極右と保守の連立)の登場にはっきりと批判しないことが国際的に問題になっているが、自自公連立とそのファシスト的先兵石原の登場それ自体が、オーストリア以上に「危険」な情勢なのだ。石原は、日帝の帝国主義戦争を肯定し賛美し、そしてファシズムそのものをも肯定しているではないか。
 こうした情勢の根幹にあるのは、日本帝国主義が内外の情勢に突き動かされて、敗戦帝国主義として出発した戦後日本の体制を右から転覆して、戦争のできる国家、戦争をやる国家へと転換するため大攻撃に打ってでてきているということである。九六年の日米安保共同宣言と新ガイドラインでこの道に踏み出した日帝は、今、逆戻りできない戦争への道を突進している。だからこそ小渕は沖縄という基地の島で帝国主義サミットを開催することを決断したのである。
 したがって、われわれは、何よりも第一に、沖縄サミット粉砕の闘いを日帝のアジア侵略戦争への踏み切り、そして米帝の沖縄基地を拠点とした朝鮮・中国―アジア侵略戦争への突入との闘いとして、闘うアジア人民との連帯、国際的連帯をかけてやり抜かなければならない。特に、日帝の南京大虐殺開き直り、釣魚台略奪に対する怒りを爆発させている中国人民を先頭とする全世界の人民と連帯して全力で決起しなければならないのである。

 第2章 名護の闘いを守り発展させ新基地阻止の実力闘争へ

 第二に、沖縄サミット粉砕闘争を沖縄闘争の最大の決戦として勝ち抜かなければならない。
 沖縄サミットは、小渕が政権の維持延命のために設定したともいえるが、その根底には日帝の帝国主義としての戦略的決断と踏み切りがある。これまでの戦後の日米同盟関係を質的に転換させて、日帝が軍事と戦争の領域でも独自に力と意志をもって世界政治に登場するということだ。沖縄でサミットを開催するということ自体がそうした意味を持つのである。
 これに対して、米帝クリントンは昨年六月のケルンサミットの直後に、「普天間基地移設問題が解決されない状態で沖縄に行きたくない」と発言したが、これは、“日本は米帝の戦略的拠点としての沖縄の安定的な使用を完全に保証せよ”“それを態度で示せ”ということであった。沖縄は、そして日米安保そのものも米帝の世界戦略の展開であって、日本のためにやっているのではないということの露骨な表明であった。
 日帝は、この発言をも受けて、普天間基地の名護移設攻撃を激烈に促進し、沖縄の闘いをつぶすために全力を挙げた。日帝としてはもちろん、これらを米帝のためにやっているわけではない。日帝の力で沖縄基地問題の「混乱」を解決し、日帝の意志によって米軍基地の存在を保証しているという関係に転換しようとしているのである。日帝は、戦後の日米関係を根底的に転換しようとしつつ、現実には新たな形態での日米安保を展開する以外にないという矛盾の中にある。こうした構図そのものが、安保の犠牲と矛盾をこれまで以上に沖縄に集中することになる。日帝の沖縄への差別政策はますます露骨になるということである。現在のSACO計画(県内基地移設による「整理・統合」)と名護新基地建設攻撃は、そうした関係の集約的な表現である。
 日帝にとっては、「沖縄基地を全面的に撤去せよ」「大幅に縮小せよ」という沖縄人民の要求や「なぜ沖縄に七五%の米軍基地が集中しているのか」という怒りなどは頭から踏みつぶす対象でしかないのである。むしろ、沖縄サミットをテコに、沖縄という帝国主義の軍事的砦(とりで)=巨大な米軍基地の島がじつは日帝の政治的支配下にある島で、それは日帝の力によって保証されているのだと全世界に押し出そうとしている。
 日米安保と沖縄基地問題は、日帝の帝国主義としてのあり方そのものの矛盾の集中点である。日米関係が帝国主義間対立を深めれば深めるほど、そこが決定的な焦点となる。しかし、そのすべては必ず沖縄への徹底的な矛盾と犠牲の集中となる。日帝と沖縄はそのような関係にあるのだ。
 名護の新基地の「使用期限十五年問題」は完全なペテン、だましであることが暴かれている。米帝の立場は、「耐用二百年・運用四十年」なのである。米帝はこの件での「話し合い」すらも拒否し、日帝はこれを正式な交渉の議題にもしていない。このことが今年に入って明確となっているにもかかわらず、日帝は、国家の暴力で新基地建設を押しつけようとしているのである。
 日帝は、名護の闘争を押しつぶすためにサミット厳戒体制で締めつけ、三月二十五日に小渕の名護訪問をも強行しようとしている。小渕の名護訪問を阻止する怒りの決起をバネに名護の闘いの発展をつくり出さなければならない。そして名護の闘いを守り発展させ、ヘリ基地反対の実力闘争陣形および岸本リコール闘争と結合してサミット決戦の爆発を切り開かなければならない。
 この闘いは、ただ名護の現地における闘いとしてあるのではない。全国の労働者学生人民の闘いとしてあるのだ。全国の力で名護を支援し、そして沖縄サミット粉砕の大衆的決起をつくりだそう。全学連を先頭に渾身(こんしん)の力で決起しよう。

 第3章 7・21厳戒体制打ち破れ!カクマルの敵対を許すな

 第三に、沖縄サミット粉砕は、日本階級闘争の主体的な条件の変革つまり闘いの勢力地図を塗り替える決定的な闘いである。
 社民党や民主党はサミット賛成派だ。日本共産党も事実上のサミット賛成派に転落している。彼らは日帝の侵略戦争に反対を貫くことを放棄し、安保賛成派に転落したのである。
 連合の指導部は、昨年秋に決定した新政治方針で、これまで以上に露骨に日帝の戦争に協力する態度を打ち出した。それが沖縄でも貫徹されようとしている。このことへの怒りを爆発させよう。
 闘う労働者人民は、サミット粉砕を米帝と共同した日帝のアジアへの侵略戦争との闘いとして、祖国防衛主義・排外主義と対決し闘うアジア人民と連帯して、自国帝国主義の戦争政策との闘いを貫くものとしてやり抜かなければならない。
 さらに、沖縄サミットが沖縄の闘いを押しつぶし、基地の永久的固定化を強要する沖縄差別であることを徹底的にあばき、沖縄との連帯として決起しなければならない。それこそが、名護の闘いへの全重圧をはね返す最大の力である。
 反革命カクマルは、昨年の春、ガイドライン決戦から逃亡しながら、ヨーロッパの人民がユーゴ侵略戦争をやっている自国の政府を打倒する闘いに決起しないのは問題だなどと言って人民をごまかそうとした。しかし彼らは、侵略と戦争のための新ガイドライン体制との闘いを一切やらないし、沖縄サミット粉砕の闘いからも逃亡している。それどころか、カクマルは、JR総連の安保・自衛隊容認=戦争協力宣言を支持・推進している。
 カクマルのJR総連との「対立劇」は完全な茶番だ。カクマル自身が戦争協力のファシスト集団であり、国労と動労千葉の解体を叫び、反戦闘争と人民の決起に襲いかかる闘争破壊集団である。カクマル反革命をサミット決戦の中で粉砕しよう。
 衆院選決戦および三里塚と結合して、七・二一厳戒体制を打ち破り、三・二五小渕の名護訪問阻止の闘争から五・一五闘争へ、そして六・二三から七月本番へ全力で決起していこう。

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週刊『前進』(1950号5面2)

 全学連沖縄現地行動隊名護奮戦記

 分断つくりだす日帝に怒り

 富山大 A・S 

 今回、沖縄現地行動隊に参加して、非常に強く感じたことは、日に日に市民の反応が良くなってきているということです。そしてそれは、私たちが切り開いてきたものだということも同様に感じました。
 私は今までトラメガ使ったことがなかったし、署名もあまり取ったことがなかったけれど、初めてやってみると、非常にやりがいがありました。また、差し入れをもらったり、手を振ってもらったり、いろいろなことがありました。
 名護市民は基地誘致派と反対派に分断されているけれど、本当は皆反対であり、誘致派の人たちも経済を振興させたいからやむをえず賛成という人がほとんどです。そのような市民の分断をつくりだしているのはまぎれもなく日帝です。沖縄差別政策をとって、沖縄の経済を収縮させ、基地依存経済にしている張本人でありながら、さらにモノやカネの力で、沖縄県民の心を踏みにじり、市民の間で、さらには家族の間の中での対立という構造を作っている、そんな日帝が本当に許せません。盗人たけだけしいにもほどがある。
 このような中で、市民の怒りが高まってきています。沖縄の人は、心の中に本質的な怒りをもっています。それは、基地が存在するということに対する怒り、日帝の沖縄差別政策に対する怒りです。その怒りを私たちが引き出すことができれば、この闘いは必ず勝てるはずです。全国学友のみなさん! 今沖縄がアツいです! 直ちに現地行動隊に参加しよう!

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週刊『前進』(1950号5面3)

 2000年日誌 阻もう!戦争への動き

 3月8日〜14日

 防衛庁の省昇格へ立法策動

 コーエンが嘉手納立ち寄り

●ジュゴン保護へ移設の見直しを訴え 普天間飛行場代替施設問題で、日本自然保護協会、世界自然保護基金日本委員会、日本野鳥の会の三団体がジュゴン保護の観点から、名護市辺野古沖での基地建設と演習の見直しを日米両政府に対して働きかける。今年十月にヨルダンで開かれる国際自然保護連合(IUCN)総会に同趣旨の決議案を提出したもので、七月までに国内の運動で解決しない場合は、IUCN総会で決議案の採択を審議する。(8日)
●基地周辺利用法提出へ   
 自民党が国防三部会で、航空機騒音が特に激しい自衛隊や米軍の飛行場周辺の住民が移転した後の跡地利用について、周辺自治体による利用促進を図るため「基地周辺の移転跡地の利用促進特例法」(仮称)の制定を了承した。今国会に提出し、制定をめざす方針という。(8日)
●サミット前の決着狙う
 米政府当局者が在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)をめぐる日米交渉について、交渉は順調に進んでいると指摘、「七月の沖縄サミットまでの決着をめざしたい」との意向を表明した。(8日)
●「東アジア戦略概観2000」 防衛庁防衛研究所が中国、朝鮮半島などの軍事情勢を分析した「東アジア戦略概観2000」を発表した。北朝鮮について「弾道ミサイルの発射は一時凍結したが、ミサイルの開発、配備などは自制する姿勢を見せていない。金正日体制の存続に自信を持つまで、北朝鮮がミサイル・カードや核カードを放棄することは考えにくい」と分析している。(8日)
●防衛庁の省昇格へ今国会に法案提出 自民党国防関係三部会が防衛庁の省への昇格に向け、議員立法で今国会への法案提出をめざす方針で一致した。(8日)
●「人間の鎖」で基地包囲へ 沖縄平和運動センターが幹事会を開き、七月に開催される沖縄サミット期間中に米軍嘉手納基地を「人間の鎖」で包囲する行動を実施することを申し合わせた。具体的には、今後、各団体に呼びかけて実行委員会を発足させ、決めていく。サミット期間の中日にあたる七月二十二日が有力となっている。実現すれば、一九八七年、九〇年に続き三度目。(9日)
●「国防省」昇格でやっと一人前と陸幕長 防衛庁の磯島恒夫陸幕長が記者会見で、自民党国防三部会が防衛庁の「国防省」昇格の立法をめざす方針を決めたことに「『やっと一人前になったか』ということで(自衛隊)の士気が上がる」「『やっと列国並の普通になったか』という思いがする」と述べた。(9日)
●現行憲法は「押しつけ」と自自両党 衆院憲法調査会が古関彰一独協大教授、村田晃嗣広島大助教授を参考人として招き、憲法制定の経緯に関する意見聴取と質疑を行った。自民、自由の両党は「強制力を持って強いられた憲法だ」(自由党の中村鋭一)などと主張した。(9日)
●15年問題で反対協が県の態度表明迫る ヘリ基地反対協が幹事会を開き、「十五年使用期限問題」について、県の態度を明らかにするよう求める要請を行うことを決めた。(10日)
●「思いやり予算」に謝意 コーエン米国防長官がアジア歴訪前に、給油のため立ち寄った嘉手納基地内で会見し、在日米軍駐留経費負担について「日本政府の温かい支援に感謝を申し上げたい」と述べた。(10日)
●基地従業員数の上限を固定 政府が二〇〇〇年度に期限が切れる在日米軍駐留経費負担に関する特別協定改定の日米協議で、日本側負担の米軍基地従業員の人件費などを抑制する抜本的改革案を近く提示する方針を固めた。(10日)
●エネルギー政策見直し
 深谷隆司通産相が閣僚懇談会で、電力、石油などのエネルギー政策について原子力発電所の建設縮小も視野に入れ、抜本的に見直す方針を表明。(10日)
●辺野古区行政委に再度決議申し入れ 米軍普天間飛行場の移設先とされた名護市辺野古区の反対派住民らが、一月に実質的に移設容認へ踏み出す決議をした同区行政委員会(宮城利正委員長)と話し合い。住民らは「区民全体の命にかかわる大事な問題を区民の意思を聞くことなく決議したことはとうてい認められない」と申し入れた。宮城委員長は「移設容認ではない。過去の反対決議はまだ生きている」と返答した。(13日)
●銃刀法違反容疑で陸自一佐逮捕 自衛隊の銃を友人に貸し、試射させていたとして陸上自衛隊が陸自富士学校総合研究開発副部長で一等陸佐、秀島裕展と試射していた友人三人を銃刀法違反(所持)などの容疑で逮捕した。(13日)
●有事法制検討申し入れ
 与党三党の「安全保障に関するプロジェクトチーム」の久間章生座長らが与党政策責任者会議に出席、有事法制の具体化に本格的に着手するよう申し入れた。(14日)

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週刊『前進』(1950号5面4)

 患者移送制度4月実施阻止を

 「治療処分」推進発言を弾劾

 阻止共が厚生省追及

 一月二十六日「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議(阻止共)は、精神保健福祉法の昨年六月改悪によってもたらされようとしている、「精神障害者」の強制入院のための患者移送制度(車両搬送)を始めとする保安処分的強化の四月実施を阻止するために、「病者」先頭に四十人で厚生省を追及した。
 厚生省は精神医療の担当を自認する三觜(みつはし)精神保健福祉課長が一貫して逃亡をきめこみ、課長補佐の重藤(しげとう)らが出席した。当事者である「病者」からの批判をかわすためだけの居直りとのらりくらりとした対応を続ける厚生省を糾弾し、阻止共は三時間にわたって精神保健福祉法の反動性を弾劾した。
 追及は、まず厚生省が公衆衛生審議会の精神保健福祉部会で審議したという「移送に関するガイドライン案」から始まった。これは厚生省が三月中にも各自治体等に通知しようとしている患者移送のマニュアルだ。
 マニュアルは「家族や医者の説得をおこなっても入院を拒む患者」を想定し、この患者の抵抗を実力で押さえ込んで入院させるために車両搬送を行うというものだ。マニュアルには「都道府県知事が現場に派遣した職員(知事部局)を責任者とし、加えて呼び寄せた指定医の診察で車両搬送の要否を決める」と記してある。
 厚生省はこの移送制度を「家族が病院まで患者を連れていかなければならなかったこれまでの負担を軽減させ、行政・知事権限でルールを整えた良い制度」と美化してきた。このペテン性に「病者」の怒りがたたきつけられた。
 「家族の都合だけを聞き、収容される当事者の声はどうなるんだ」「むりやり行う車両搬送は拉致(らち)・監禁そのもの。無法の行動制限だ」「主治医を呼ぶことが『努力義務』でしかないのならそれは治療関係を引き裂くことになる」
 厚生省はこれらに対し「あくまで本人のためにやってる」「搬送自体は行動制限ではない。もし車両の中で患者を綿入り帯等で拘束するときは指定医を同乗させるから問題ない」「主治医との連絡を義務化すると時間がかかって搬送できなくなるからそうしない」と居直った。
 追及はさらに続いた。「車両自身が閉鎖空間だ。これに看護士など数名も乗せ羽交い絞めなどして運ぶことは逮捕・監禁と同じこと。これを『行動制限ではない』というのなら、暴力的なこともなんでも合法ということじゃないか」
 さらに、マニュアルは車両派遣費の行政負担を美化しながら、「車両内でおこなった医療行為の負担は原則本人負担」と記してある。結局、強制的搬送を行ったうえに、例えばそのための鎮静注射なども患者本人負担に帰すというのは「盗人たけだけしい」とその矛盾を指摘した。
 さらに、「『自分を傷つけ他人を害するおそれ』(自傷他害)が自明で措置入院が必要と職員が判断したときは、現場から指定医のいる場所まで車両搬送してもいい」というとんでもない法の抜け穴も発覚した。医者=指定医の判断もなく拘束的搬送を可能としているのだ。この「理由付け」をとおせばあらゆる抜け道が合法化されて搬送の民間業者委託とあわせて無法の車両搬送が横行する。絶対に許してはならない。
 警察官の精神医療への関与も追及した。厚生省の文書回答では「移送においては警察官は車両に同乗しない」と確認したものの車両同乗以外でのその関与を容認するペテン性を弾劾しぬいた。
 この移送制度自身が厚生省によれば「家族からの申し出によって行う移送」とある。まさに家族のみならず隣人、保健所などからの通報によって地域から「病者」を排除する保安処分的な役割を担っているのだ。このことも弾劾しぬいた。
 続いて、阻止共は昨年十二月の日精協(自民党寄りの民間精神病院団体)雑誌に掲載された三觜精神保健福祉課長の「これからの精神医療」と題する講演での「保安要員を配置した治療処分が必要」(九九年八月)という発言を徹底弾劾した。
 重藤らは結局、「厚生省としての公式見解ではない」と文書で確認したものの、「精神保健福祉法の改定時に国会で『犯罪を犯した精神障害者対策の検討』が付帯決議された以上、これからはタブーを設けることなく幅広く検討する」と居直った。そのうえ重藤は、「精神療法とか特別の治療を考えている。法務省とも連携していく」と完全に刑事政策と一体となった治療処分の導入を吐露したのだ。
 患者を特別病棟に閉じこめ、精神療法や電気ショックなどの多用による危険を承知での人格改造などが犯罪防止の名のもとに強行されようというのだ。まさに「処遇困難者病棟」づくりが画策されているのだ。
 阻止共は、精神保健福祉法の改悪とともに始まる保安処分導入の攻撃を絶対に許さない決意を厚生省にたたきつけた。戦後福祉の解体とともに強まる戦争体制構築のための「精神障害者」への隔離・抹殺攻撃を粉砕して闘おう。

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週刊『前進』(1950号6面1)

 レーニン『国家と革命』全面否定した不破

 「国家機構粉砕論はマルクス、エンゲルスから逸脱」と強弁

 「政権参加」狙って新たな転向

 日本共産党委員長の不破哲三が自著「レーニンと『資本論』」第五巻「一九一七年『国家と革命』」の中で“レーニンの『国家と革命』は根本的に誤っていた”と騒ぎ立てている。これは「理論」の形式をとった反革命宣言、新たな転向声明である。野党連立政権への参加のために反革命路線を純化させ、日帝の最後の番兵として延命を図る日共スターリン主義を打倒しなければならない。

 第1節 「レーニンは間違っていた」と騒ぎ立て

 日共・不破が一月三日付『赤旗』で「党綱領の革命の路線とレーニンが『国家と革命』で展開した理論とのあいだには、最初から深い矛盾があった」「彼(レーニン)が『国家と革命』で、マルクス、エンゲルスの国家論、革命論の誤った整理をおこない、『議会の多数をえての革命』という道を原理的に否定してしまったことは、その後の世界の共産主義運動に深刻な影響を与えた誤りでした」と述べ、二十世紀中にレーニンに決着をつけるとうそぶいた。一月十三日付『赤旗』は「レーニンはどこで道を踏み誤ったのか」という見出しで不破の会見記事を掲載した。(写真)
 不破は、『国家と革命』は原理的に議会主義的平和革命を否定し、暴力革命不可避論を結論づけているから間違っていると主張している。レーニンは根本的にナンセンスだというわけだ。不破は、もう『国家と革命』の否定はタブーではない、心おきなく反革命の道を進めと日共党員に号令しているのだ。
 不破の「レーニンは間違っていた」という新見解は、実践的には、日帝・国家権力・ブルジョアジーに対する日共の決定的な革命放棄宣言、転向・屈服、忠誠・恭順の誓約を意味する。日共が野党連立政権に参加したいのであれば「資本主義の枠内での民主的改革」路線を掲げるだけでなく共産主義綱領を放棄せよ、とつきつけるブルジョアジーや自民党、民主党への回答なのである。

 第2節 マルクスを「議会主義社」へとねじ曲げ

 日共は、一九五五年の六全協から六一年の第八回党大会にかけて議会主義的平和革命路線を確定してきたが、理論的にはレーニンの『国家と革命』の公然たる否定を控えてきた。六七年の「四・二九論文」で中国共産党からの批判に答える形で議会主義路線を深化させ、七三年の第一二回党大会で「プロレタリアート独裁」を「プロレタリアート執権」に用語変更した。七六年の第一三回党大会では「マルクス・レーニン主義」を「科学的社会主義」に換え、「プロレタリアート執権」そのものを綱領から引っ込めた。さらに、レーニンの独裁論の「問題点」なるものを挙げてレーニンの相対化を試みた。「社会主義国家」の政治形態としてパリ・コミューンやソビエトを一般化しない、レーニンの理論はロシアのような専制国家の打倒には有効だったかもしれないが、高度に発達した資本主義国で議会制民主主義体制の現代日本には適用できない、民主的共和制=議会制民主主義が適切な政治形態だというものだった。
 社・共が国会の多数を占めて「民主連合政権」を作るという日共の七○年代、八〇年代の路線は完全に破産してしまった。その上に八九―九一年、東欧・ソ連のスターリン主義が総崩壊し、日共自身も歴史的破産の危機に陥った。
 だが、日帝のバブル経済崩壊を背景に自社五五年体制も崩壊し、日共が国会に進出する政治的間隙が生じた。そこで日共は社民化=カウツキー主義化の道を選んだのだ。そこで不破は、九四年の第二〇回党大会で「資本主義の枠内での民主的改革」路線を新綱領として策定したのである。
 九八年に民主党などと連立するという「暫定政権構想」を打ち出し、その推進のために安保を容認するという大転向を行った。この中で九八年末、四百人の資本家たちの前で不破は「資本主義の枠内での改革です」「資本主義打倒などやりません」と誓った。
 こうした歴史的大転向の理論的なあかしとして、不破が九五年末から雑誌『経済』に「エンゲルスと『資本論』」の連載を始め、マルクス主義の解体を試みてきた。そして現在「レーニンと『資本論』」を書いてマルクス、エンゲルスを平和革命論者に仕立て上げ、レーニンとは違うという手口でレーニン主義の解体と再度のマルクス主義の破壊を図っているのである。
 そもそもマルクス、エンゲルスは、国家−ブルジョア国家を階級対立の非和解性の産物、社会から生まれ社会から自らを疎外していく権力、公的暴力、階級支配の機関と本質的に規定にして暴力革命論、国家死滅論を提起している。
 「近代的国家権力とは、全ブルジョア階級の共通の事務を処理する委員会にすぎない」「政治権力とは、本来の意味では、一つの階級が他の階級を抑圧するための組織された暴力である」(『共産党宣言』)
 したがって「共産主義者の当面の目的」は「階級へのプロレタリアートの形成、ブルジョアジーの支配の打倒、プロレタリアートによる政治権力の奪取である」(同)
 そして「革命によって支配階級となり、古い生産諸関係を暴力的に廃止するときに、プロレタリアートはこのような生産諸関係とともに階級対立の存立条件と階級そのものの存立条件を廃止し、それによって階級としての自分自身の支配を廃止する」(同)。これは本質的にプロレタリアート独裁論であり、国家死滅論である。
 さらに「階級と階級対立の存在する古いブルジョア社会のかわりに、一人ひとりの自由な発展が、すべての人びとの自由な発展の条件となるような協力体が登場する」(同)と共産主義社会像を提示している。
 レーニンの『国家と革命』は、@こうしたマルクス主義の国家論、革命論を正しく復権・継承し、A第二インターナショナル潮流、ドイツ社民党を代表するカウツキーやロシアのメンシェビキ、エスエルなどにある国家に対する日和見主義を粉砕し、Bロシア革命の勝利によって近く樹立されるべきプロレタリアート独裁の形態と政策への理論的基礎を与えるために書かれたのである。
 ところが、日共・不破は「レーニンと『資本論』」第五巻で、レーニンの『国家と革命』が明らかにしているマルクス主義の国家についての本質規定やブルジョア国家論をなんらまともに検討していないのである。ここに不破の議論のいんちきさがある。

 第3節 現代版の「国家に対する日和見主義者」

 (1)不破は今回、「レーニンは、ブハーリンや無政府主義者に屈服・譲歩し、パリ・コミューンをモデル化して国家機構粉砕論を唱え始め、これを転回点にして、暴力革命不可避論を原理的に結論づける誤りに陥った」と言うに至った。
 一八七一年、パリ・コミューンの闘いのさなか、マルクスは、『フランスにおける内乱』で「労働者階級は、できあいの国家機構をそのまま掌握して、自分自身の目的のために行使することはできない」と総括した。コミューンは旧国家機構にとって代わった。
 不破は、これを「国家機構粉砕論」ではなく「国家機構改造論」と規定すべきだなどと言っているが、要するにブルジョア国家機構を粉砕してはいけないと言いたいのだ。
 レーニンは、一九一七年初めにマルクス、エンゲルスの国家論、革命論を研究し直した時、ドイツ社民党のカウツキーが国家論において驚くべき日和見主義者だったことに気づいた。カウツキーは、第二インターナショナルを代表するドイツ社民党の指導者で、第一次大戦勃発(ぼっぱつ)時の裏切りに至るまでレーニンも依拠してきたマルクス主義の大御所だった。
 レーニンの『国家と革命』における「階級支配の機関」という国家の本質規定に基づく国家機構粉砕論、暴力革命論、国家死滅論は、プロレタリア国家にさえ反対する無政府主義への譲歩などではない。国家に対する日和見主義(帝国主義戦争に際して社会排外主義に転落した)への批判なのだ。
 この意味で日共・不破は、できあいの国家機構利用論に染まった現代版の「国家に対する日和見主義者」なのである。
 (2)次に不破は「資本主義社会における国家が、その政治形態(民主的共和制とか君主制とか)のいかんにかかわらず、支配階級に奉仕する階級的性格をもっているということから、その国家機構の粉砕が革命の不可欠の任務となり、強力革命の不可避性が論理的に引き出されるとすれば、それは、おのずから、すべての資本主義国に適用される革命運動の原則だということになり、よくよくの例外的な特殊事情でもないかぎり、革命の平和的発展は考えられない、ということになる」「これがレーニンの『国家と革命』の核心だ」と述べている。(「強力」は「暴力」の日共用語)
 そのとおりではないか。
 資本主義社会では、支配階級=ブルジョアジーが国家権力を握り、国家機構=暴力装置をもって被支配階級=プロレタリアートを支配・抑圧している。そうである以上、プロレタリアートは自らを解放するためには、ブルジョアジーから国家権力を奪取し、ブルジョアジーの国家機構を粉砕してプロレタリアート独裁を打ち立て、新たな支配階級となって古い生産諸関係を暴力的に廃止する以外にない。そして階級と階級対立、階級支配のない共産主義社会が生まれ出るのだ。
 ところが不破は「あれこれの革命の情勢分析からではなく、マルクス主義の国家論からの論理的な結論として強力革命必然論を提唱してはいけない」と言っている。レーニンの「強力革命必然論」は、パリ・コミューンやロシア革命にはあてはまっても普遍的な意味をもちえないという。
 これではマルクス主義的にものごとの本質を考えてはいけないと言っているに等しく、理論や社会科学は成り立たない。
 プロレタリア革命は本質的原理的に暴力革命として貫かれる。革命とは、支配階級に代わって被支配階級が社会の新たな支配階級となること、ある階級から別の階級に権力が移ることだからである。そのうえで、現実の革命の過程は、ブルジョアジーとプロレタリアートの階級的力関係(政治的・軍事的な)によってさまざまでありうる。不破は、こうした国家と階級闘争の本質をぬきにして、革命は議会主義的に平和的に発展しなければならないと主張しているのだ。
 (3)不破はさまざまな引用をもってマルクス、エンゲルスを議会主義的平和革命論者に仕立て上げようとしている。特にエンゲルスが晩年には完全にブルジョア議会制民主主義者になり、革命の後もその議会制民主主義を守っていくという思想に到達したという。
 それは全然違う。
 マルクスは『共産党宣言』とその直後の一八四八年の革命や一八七一年のパリ・コミューンなどの経験、『資本論』を踏まえ、一八七五年の『ゴータ綱領批判』で「俗流民主主義は、民主的共和制を千年王国だと考え、まさにこのブルジョア社会の最後の国家形態の中でこそ階級闘争は最後まで闘いぬかれるのだということには全然思いがおよばない」とドイツの労働者党を批判した。
 エンゲルスは一八九一年、『エルフルト綱領批判』をドイツ社民党に送り付けると同時に、隠されていた『ゴータ綱領批判』を十六年ぶりに公表した。この二つの文書は、エンゲルスの」『フランスにおける内乱』一八九一年版への序文」「『フランスにおける階級闘争』一八九五年版への序文」などと同趣旨だ。
 エンゲルスが『エルフルト綱領批判』で民主的共和制の意義を強調したのは、「ドイツ社民党の俗物」が敵階級との激突を恐れて権力奪取の問題を回避し、綱領草案で民主的共和制さえ要求しなかったからだ。
 エンゲルスはプロレタリアート独裁の形態として、ブルジョア的な議会制の民主的共和国ではなく、あくまでも「議会ふうの機関ではなくて、同時に執行し立法する行動的機関」としてのコミューン(徹底した民主的共和制=プロレタリア民主主義)を提起しているのだ。
 以上のように、不破こそがマルクス、エンゲルスの国家論、革命論を根本から歪曲し解体しているのだ。
 日共・不破による『国家と革命』の核心の破壊は、今日の日共の帝国主義への屈服とそのもとでの戦争協力路線、「資本主義の枠内での民主的改革」路線を合理化し、ブルジョアジーに革命の放棄を誓うための「理論活動」にほかならない。日共・不破のスターリニスト的反革命策動を粉砕し、マルクス主義を正しく継承し、現代によみがえらせ、レーニンとロシア革命によって開始された世界革命の完遂へ前進しよう。
〔藤沢明彦〕

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週刊『前進』(1950号6面2)

 排外主義と闘う 入管闘争の課題 3

 「朝鮮有事」を想定

 外登法改悪 あくまで常時携帯制度堅持

 昨年八月十三日、改悪外国人登録法(外登法)が、改悪入管法とともに国会で強行成立させられた。ガイドライン戦争国家体制づくりと一体のものとして強行された外登法・入管法の改悪は絶対に許せない。在日朝鮮人・中国人、外国人労働者と連帯し、指紋押捺(おうなつ)制度全廃をかちとった反外登法闘争の地平を発展させ、常時携帯制度・刑事罰撤廃、外登法・入管法―入管体制粉砕に向け、粘り強く闘おう。

 第1節 ついに指紋全廃

 今回の外登法改悪の内容には、指紋押捺拒否闘争がもぎり取った偉大な成果と在日人民を何がなんでも治安弾圧の対象とするという日帝の階級意志との激突が如実に反映されている。
 第一に、指紋押捺制度の全廃である。九三年に永住者と特別永住者に限って指紋押捺義務が撤廃されたが、今回、永住者と特別永住者以外の非永住者についても指紋押捺義務が全廃された。これ自体は、指紋押捺拒否闘争の切り開いた勝利の地平である。
 一九八〇年、在日朝鮮人の韓宗碩(ハンジョンソク)さんが新宿区役所で指紋の押捺を拒否した。“子どもに押させるわけにはいかない。私だけでも立ち上がり、人間として、民族としての生き方を示しておこう”との思いからだった。「たった一人の反乱」と呼ばれたこの決起を突破口に指紋押捺拒否闘争は全国に広がった。
 八四年には「指紋押捺拒否予定者会議」が在日朝鮮人二世・三世を中心に結成され、多くの人が外登証の切り替え期を迎える八五年を頂点に、実に一万四千人といわれる在日朝鮮人・中国人が指紋の押捺を拒否した。闘いは、デモ、ハンスト、署名運動など街頭闘争をもとおして全国を揺るがし、在日人民の階級的糾弾と連帯の呼びかけを受け、日本人労働者も闘いに合流した。
 日帝・法務省は、一定のペテン的法手直しと弾圧体制の強化でこれに応じた。
 外登証切り替え期間の三年から五年への延長、指紋押捺年齢の十四歳から十六歳への引き上げ―罰金の三万円以下から二十万円以下への引き上げ(八二年外登法改悪)、黒インク・回転指紋から無色薬液・平面指紋への変更―自治体に対する拒否者告発の義務づけ(五・一四入管局長通達)、拒否者の逮捕・刑事処罰、在留期間短縮・再入国不許可など、入管法を用いた弾圧である。日帝は、あくまでも指紋押捺制度を固持し続けたのである。
 八七年に外登法が手直しされ(八八年施行)、それまで外登証切り替えごとに強制されていた指紋押捺が一回だけとされ、外登証がカード化された。
 しかし、在日人民はあくまでも指紋全廃を求め、指紋転写(*)拒否、外登証切り替え拒否など全国で一斉に抗議行動を起こした。
(*外登証切り替え時に前の指紋を新しい外登証にコピーすることになった)
 九三年施行の改悪外登法では、先に触れたように永住者・特別永住者の指紋押捺義務が廃止されたものの、それに代わって署名・家族登録が義務づけられ、重い刑事罰が堅持された。
 在日人民は指紋全廃、署名・家族登録・刑事罰撤廃を要求して闘いを継続した。そして、ついに今回、指紋押捺義務の全面廃止をかちとったのである。

 第2節 「外登証見せろ」

 第二に、今回の外登法改悪では、指紋全廃の一方で外登証の常時携帯制度を堅持したことである。
 小渕首相は「常時携帯義務については不法入国者や不法残留者が多数存在する今日の状況では、これを廃止することはできない」と国会で答弁し、竹中入管局長も「入管法違反の疑いのある外国人に対してまずやることは、外登証の提示を求めること」と述べた。
 日帝は常時携帯・提示義務を堅持することで、在日に対する治安弾圧の継続・強化になんの変更もないことをあらためてはっきりさせ、入管法改悪と一体となって外国人労働者弾圧の強化を宣言したのである。
 第三に、常時携帯義務違反に対する罰則変更のペテン性である。

 第3節 「過料10万円」に

 これまで常時携帯違反には「一年以下の懲役もしくは禁固または二十万円以下の罰金」という重い刑事罰が科せられていた。それが今回、特別永住者が常時携帯義務に違反した場合は「十万円以下の過料」という行政罰に改められた。
 これは、@過料とはいえ「十万円以下」は他の行政罰に比べて重く、A植民地支配・強制連行という歴史的経緯をもつ特別永住者に限られており、B提示義務違反については従来どおりの重い刑事罰が残されている、などの点できわめてペテン的な内容である。特別永住者であっても、警察や入管から外登証を見せろと求められた時、それを拒否すればこれまでどおりの重罰が待ち受けているのだ。
 現在、在日朝鮮人・中国人が闘って築き上げてきた日帝との力関係により、常時携帯を拒否し、制度を実質的に無力化させる地平を切り開いている。
 しかし一九五二年の外登法施行以来、実にのべ五十万人以上もの在日が外登証不携帯で弾圧されてきたのだ。しかも刑事罰は、新規登録不申請、切り替え不申請、署名拒否など、多くの「違反」に対して依然として残されている。
 総じて今回の外登法改悪で、日帝は指紋全廃に追い込まれる一方で、常時携帯制度と重罰を存続させ、指紋に代わる署名・家族登録を強制することで、在日朝鮮人・中国人、アジア人労働者に対する弾圧法としての外登法の根幹を維持したのである。
 反外登法闘争の勝利の地平を断固確認すると同時に、外登法完全撤廃に向け闘いをさらに推し進めよう。

 第3節 侵略戦争阻止!

 九六年、当時の梶山静六官房長官は日経連セミナーの場で、「朝鮮有事が起きた時、大量の難民がやってくる。中には偽装難民もいて、日本で対立している韓国民団と朝鮮総連に武器を供給すれば内紛状態となり、市街戦あるいは局地的ゲリラ戦が始まる。そうなれば市街戦をやったことのない自衛隊はどう戦うか。有事立法しかない」と、朝鮮侵略戦争を想定し、在日朝鮮人民弾圧の意図をあけすけに表明した。
 今回の外登法・入管法改悪は、朝鮮・中国侵略戦争体制を構築しようとする日帝が、それに不可欠な入管体制の戦時的再編として強行したものだ。在日朝鮮人民を始めアジア人民は激しい危機感を抱いて、闘いの意志を鮮明にさせている。
 昨年の外登法改悪案の国会審議では、在日朝鮮人の参考人意見陳述を実現させるという画期的成果がかちとられた。
 辛淑玉(シンスゴ)さんは、国会で堂々と意見陳述し、常時携帯制度の廃止を求め、「もし日本と朝鮮半島の関係が何らかの形で悪くなったときに、(在日に対し)何でもやるだろうなという恐怖心がある。お目こぼしの中で許されているというよりも、そういった毎日の緊張感から解放されたい」と主張した。
 日帝のガイドライン発動策動のまっただ中で国家主義・排外主義があおられ、在日朝鮮人・中国人、アジア人民に弾圧が集中している。日本の労働者人民は階級的怒りを燃え立たせ、支援・防衛、外登法・入管法―入管体制粉砕の闘いに立とう。 (山口 修)

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