International Lavor Movement 2013/10/01(No.446 p48)

ホームページへ週刊『前進』季刊『共産主義者』月刊『コミューン』出版物案内週刊『三里塚』販売書店案内連絡先English

2013/10/01発行 No.446

定価 315円(本体価格300円+税)


第446号の目次
 

表紙の画像

 

表紙の写真 朴槿恵政権打倒へ10万人ロウソク集会(8月10日 ソウル)
■羅針盤 9・15―25は最大の決戦だ 記事を読む
■News & Review 中国
核燃料工場建設に反対するデモ  福島第一原発事故への怒りが背景に
記事を読む
■News & Review 日本
憲法9条を停止する集団的自衛権の行使容認  海外侵略戦争が自衛隊の基本任務に大転換
記事を読む
■News & Review エジプト
開始されたエジプト第二革命  軍部による独裁支配体制の再建を許すな
記事を読む
■特集 闘う韓国労働者と連帯を
新自由主義と激突する韓国・民主労総の闘い
 
■Photo News  
■世界経済の焦点
アメリカ農業の歴史と現実  大規模経営促進と家族農業の零落
 
■世界の労働組合 韓国編  現代自動車非正規職労組  
■国際労働運動の暦 10月18日  ■1946年電産10月闘争■
戦後革命の高揚を牽引
資本主義生産の基盤をなす電力を労働者が掌握した停電ストの威力
 
■日誌 2013 7月  
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 ファストフード労働者のデモ(7月29日 ニューヨーク)

月刊『国際労働運動』(446号1-1)(2013/10/01)

羅針盤

■羅針盤 9・15―25は最大の決戦だ

▼8月22日、動労千葉と弁護団は東京高裁・難波孝一裁判長に、1047名解雇撤回を闘い鉄建公団訴訟控訴審の弁論再開申し立てと第3次署名提出行動を行った。申請したのは、国家的不当労働行為に直接関わった連中の証人採用と弁論再開だ。特に当初は採用候補者名簿に載っていた動労千葉組合員12人を名簿から排除した直接の犯人、葛西敬之だ。東京高裁・難波裁判長にこれらの真実を闇に葬り去る権限などない。弁論再開で葛西を法廷に引きずり出し、国鉄分割・民営化の真実を満天下で暴き出そう。
▼動労千葉の営々たる闘いに
よって26年目にして初めて、国鉄改革法の真実が白日の下に暴き出された。昨年6月29日、東京地裁・白石哲裁判長は、動労千葉組合員らを清算事業団送りにしたJR採用候補者名簿不記載基準について「不当に差別する目的、動機のもとに本件不記載基準を策定した」と認定した。この白石裁判長が今春、突然更迭されたのが「白石事件」だ。これは、国鉄闘争が政権中枢を震撼させる「暗部」を暴く最高に熱い闘いであることだ。この闘いは、階級本体を組織し日帝の改憲願望を打ち砕く最高の改憲阻止闘争である。そして動労千葉と動労総連合の、国労共闘の組織拡大をかちとろう。
▼動労水戸と国労郡山工場支部を結んだ被曝車両(K544編成)をめぐる被曝労働拒否の闘いは、労組の違いや労働者の世代による分断、支社間の分断、JR本体と出向先の分断を超え、日々闘い抜かれている。9・15国鉄大闘争へ全国から総結集し、「解雇撤回・JR復帰」の10万筆署名を集めよう。そしてこの力で動労千葉鉄建公団訴訟控訴審の9・25反動判決策動を
粉砕することだ。

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(446号2-1)(2013/10/01)

News&Reviw

■News & Review 中国

核燃料工場建設に反対するデモ

福島第一原発事故への怒りが背景に

 □中国史上初の大規模反原発デモ

 7月12日朝、広東省江門市で、1000人を超える核燃料工場建設に反対する大規模デモが起きた。これはおそらく、中国史上初の大規模な反原発デモであり、歴史的な大事件である。
 政府と中国核燃料グループは、今後200基の原発建設を推進しようとしている。このために400億元(約4800億円)をかけた核燃料加工工場建設プロジェクトを現在進めており、この巨額の利権をめぐって40都市が建設立地を争い、最終的に広東省江門市鶴山市が建設地に決定した。
 この核燃料工場建設計画の説明会が、4日より江門市内で開催されていたが、この席で政府側は「良い核燃料棒をつくれば、それは手で握ってもなんら放射線の影響はない」などと人を欺く許しがたい報告を行った。こうしたでたらめな報告で、危険極まる核燃料工場を建設しようとすることへの住民の怒りが爆発した。説明会は13日までであり、そこで建設計画が決まろうとしているのだ。さらにこの核燃料加工工場建設計画で、建設予定地ではすでに多くの農民の土地の強制収用が始まっている。こうした農地強奪への怒りも重なって大規模デモとなったのである。
 朝8時から江門市東湖広場に住民は集合し、署名を集め、核燃料加工工場建設反対を訴えた。警察はあらゆる手段を使って、住民たちを広場に封じ込めようとしたが、デモ隊はこの警察の包囲を突破し、メインストリートを堂々と行進、江門市政府の建物を包囲してしまった。警察はデモ隊が市政府に突入するのを防ぐのに精一杯だった。
 この大規模デモに恐怖した市政府は、13日に終了する予定の説明会をさらに10日間延長することを発表した。この発表を受けてデモ隊はいったん解散したが、午後になって再結集し、再び江門市政府へのデモが闘われ、「核燃料工場建設計画反対」のシュプレヒコールが連続的に市庁舎にたたきつけられた。そして14日にも大規模デモが呼びかけられ、呼応する動きが広まっていった。
 この労働者住民の連続的な決起に、市政府は完全に追いつめられた。そして13日午前中に、核燃料加工工場建設計画を撤回することを表明した。この建設計画撤回の発表は、労働者住民側の大勝利だが、ウソばかりつく政府を誰も信用していない。運動を沈静化させて、一挙に建設を強行するつもりであると見抜いた労働者住民たちは、やはり当初の計画通り14日に再び抗議行動に決起した。これに対して市政府は「あの声明は本れた」と、わざわざ再声明を
出すという事態にまでなった。
(写真 闘いを報道する香港紙)

 □200基の原発建設で核大国化をめざす中国

 現在中国政府は、すさまじいスピードで原発増設計画を推進している。現在中国ではすでに15基の原発が稼動しており、建設中の原発は30基ある(本年7月1日現在)。2020年までに、現在の5倍の5800万`ワットに原発の出力を拡大し、さらに30年までに2億`ワットにしようとしている。原子力発電の1基の最大出力は一般的に100万`ワットとされているから、これは中国政府は向こう17年間で現在の原発の200基相当分の原子力発電所を建設しようとしていることを意味する。また、2050年までに4億`ワットにまでするという構想もあり、なんと向こう37年間で約400基の原発を中国政府は建設しようとしているのである。
 原発建設は中国でも「金のなる木」とされ、膨大な利権を生み出す事業とされている。建設予定地の強制収用から始まって、その巨大プロジェクトがそもそも利権がらみであり、さらに電力事業そのものが、電力会社と癒着するスターリン主義官僚に膨大な儲けをもたらす。特に地方政府にとっては原発事業は、鉄道事業と並ぶドル箱であり、すさまじい官僚の汚職と腐敗を生み出すとともに、地方政府の経済的な延命をかけた政策になっているともいえる。
 また中国の「改革・開放」政策、それにともなう乱開発は、膨大なエネルギーの消費を生み出している。中国の現在の発電総量は、その7割以上が火力発電であり、中国は全世界で掘り出される石炭の半分近くを使用している世界最大の石炭消費国である。それが空前の大気汚染を発生させており、海を越えて日本にも影響を及ぼし、PM2・5問題となっている。こうした自分たちの政策による乱開発が生み出した現実をも口実にして、「クリーンなエネルギーへの転換」と称して原発政策を中国スターリン主義は推進しているのである。
 同時にこうした原発建設は、当然にも中国の核兵器開発と一体であり、中国をますます核大国化させ、米帝との対抗的な政治的軍事的経済的な世界政策を展開していく上での政策的な決定的な要にもなっている。世界政治の展開という観点からも、原発政策は中国スターリン主義にとって最重要な政策なのである。
 したがって中国での原発建設は、そのスターリン主義的な独裁政治のもとで、経済優先、政治優先で、津波の危険が危惧(きぐ)される沿岸地域や、地震多発地域にも次々と平気で建設されている。例えば遼寧省に建設されている紅沿河原発は、中国でも最も地震を引き起こしやすいとされている地震帯の上に建設されている。この原発建設地近くの唐山市では1976年には24万人の死者を出した「唐山地震」が発生しており、ここはしばしば大地震が起きている地域なのである。しかし中国政府は「中国の原発は福島事故の教訓も取り入れた最新型で、安全」と繰り返している。こうなれば、今後の大事故は不可避とさえいえる。
 また中国の原発では、原発1基あたりの年間の平均トラブル数が2件以上であり、そのトラブル数の多さも懸念されている。中国では経済が優先されることから、稼動しながらの修理も行われているといわれている。
(写真 「反核」と書かれたプラカード)

 □スターリン主義による核翼賛イデオロギー

 こうした驚くべき現実にもかかわらず、核に対する幻想というものが、スターリン主義の支配下にある中国では根強く存在してきた。それは「原子力開発は科学の進歩であり、科学の進歩は社会の進歩であり、これがマルクス主義である」というスターリン主義的なエセマルクス主義のイデオロギーから原子力開発が賞賛され、教育を通じて流布され、反体制的進歩的といわれる知識人層も含めて原子力開発を支持する傾向が一般的だからである。だから核開発に対する批判というものは表になかなか出てこなかった。
 さらに言えば、石炭労働者の悲惨な現実がある。世界最大の石炭消費国である中国では、連日のように炭鉱事故が起きており、炭鉱労働者が死んでいる。「改革・開放」政策の下で石炭は「掘れば掘るほど儲かる」産業となり、違法な民間のヤミの炭鉱が地方政府と結託・癒着してその庇護の下、あちこちで掘られるようになった。当然にも作業施設もお粗末で安全対策もでたらめである。中国政府の公式の発表によれば、2011年に炭鉱事故は1200件発生し、1970人が死亡したことになっているが、これは一日あたり3・3件の炭鉱事故が発生し、5人以上の労働者が連日死亡していることを意味する。実に異常な現実であるが、こうなるともうあまりに日常茶飯事な現実になってしまい、逆に新聞に事件としても載らなくなる。さらに公害対策などないままの炭鉱開発が生み出すすさまじい大気汚染・環境破壊、PM2・5問題である。
 こうした中国の炭鉱産業の状況、環境破壊と炭鉱労働者の悲惨な現実が、リベラルといわれる中国の良心的な知識人層まで、火力発電から原子力発電への転換を支持する現実的な理由となっていた面もあったのである。

 □福島原発事故が労働者の怒りを解き放った

 しかし、この中国の原発開発に対するイデオロギー的な状況が今、大きく変わろうとしている。そのきっかけとなったのが、やはり3・11福島原発事故である。
 3・11福島原発事故は、原発は一度事故が起きればその地が人も動物も住めない状況となる上、放射線被害が人体に対して半永久的に影響を及ぼし続けるという現実を中国の労働者民衆にも赤裸々に示した。原子力技術は人類の希望でもないし、ましてやマルクス主義の真理でもなく、逆に人類を破滅へと追い込みかねないものであることを事実をもって示した。「核と人類は共存できない」という現実に、中国の労働者民衆は気づいたのである。
 この7月12日の反原発デモが闘われる中で、ウェイポ(中国版ツィッター)で、次々と原子力開発を批判する書き込みが出てきた。
 「日本の元原発技師は血の涙を流して訴えている! 生涯最後の叫びを上げている! 信じがたい福島原発内部の現場の状況を暴露している。政府は、もはや目前の利益のために、人の命をもてあそんではならない! 政治家は原発事故が起きれば一部国外に逃亡できるかもしれないが、絶対に逃げ切ることなどできない」
 「(ここに核燃料工場が建設され、)一度何かあれば、100`内の人はすべて移動せざるを得なくなり、生物が住める状況ではなくなる。広州、仏山、珠海、雲浮はすべてこの範囲内だ。さらに江門や開平、新会など30`圏内が死亡地域となることはいまさら言うまでもない」
 フクシマの怒りは中国の労働者階級の怒りと結びつき、それが今、中国の労働者民衆の闘いとなって爆発し始めたのである。それが12日の反核デモであった。こうした意味でまさに歴史的な大事件なのである。中国での反原発闘争がフクシマと結合する中で、ついに始まったのである。開始された中国での反核闘争は、中国スターリン主義が急激に進めようとしている原発政策・核政策のもとで、燎原の火のように発展するのは必然である。この事件のネットでの書き込みは、政府当局によって次々と削除されたが、こんなことで闘いをつぶすことなどできはしない。
 中国では現在、労働者の多くが派遣労働という形での非正規労働者となっている。また労働者階級の暴動的な闘いは、こうした非正規労働への政治的な規制を強めさせてはいるが、逆に資本と政府は、外注化を生産現場にそのまま導入することで非正規労働を継続・拡大しようとしている。職場で労働者は徹底的に搾取・収奪され、「生きられなく」されている。こうした中国における新自由主義的な事態の進行と一体で、中国政府が経済と世界政治の両面から推進する原発政策・核大国化政策は、さらに労働者階級を原発事故と放射能汚染の危機にさらし、さらには核戦争に直面させようとしている。こうした意味でも中国の労働者は「生きられなく」なっているのである。
 そしてこの現実は、日本の労働者階級が直面している現実と完全に同じである。フクシマの怒りは、本質的に労働者階級の怒りであり、実際にも労働者階級の自己解放、革命によってしか解決の道はない。中国で開始された反原発の闘いも、本質的にスターリン主義政府と資本の攻撃に対して「生きさせろ!」と闘いぬき、解放を求める労働者階級の階級的怒りであり、スターリン主義打倒の新たな中国革命によってしか解決しえないのである。求められているのは、労働者の国際的団結である。その要になるものこそ「非正規職撤廃・外注化阻止」と「すべての原発の即時廃炉」のスローガンである。
 国鉄闘争を推進し、原発闘争を発展させ、原発・核に反対する中国の労働者、民衆との連帯をかちとっていこう!
 (河原善之)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(446号2-2)(2013/10/01)

News&Reviw

■News & Review 日本

憲法9条を停止する集団的自衛権の行使容認

海外侵略戦争が自衛隊の基本任務に大転換

 日帝・安倍は、8月5日、閣議で内閣法制局長官に外務省の小松一郎を任命した。小松は、第1次安倍政権下で発足した有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(以下安保法制懇と略)」がまとめた「集団的自衛権の行使容認」の報告書作成に関わるなど、これまでの「集団的自衛権の行使はできない」との政府解釈の見直しを主張してきた人物だ。
 安部の集団的自衛権の行使を認める超重大な改憲攻撃を絶対に許してはならない。

 □まず憲法9条を見よう

 憲法9条は・戦争の放棄・戦力の不保持・交戦権の否認・を定めている。
 「第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸空海軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
 憲法9条は縦横上下あらゆる方向から見ても徹底的に戦争を放棄している。これを戦争賛成と読み替えるいかなる方法もありえないように、徹底的な戦争放棄条項になっている。

 □憲法9条が生まれた訳

 戦前、日帝はアジア・太平洋戦争から第2次世界大戦に突入し敗北した(1945年8月15日)。世界大戦後、全世界で戦後革命が起きたが、アジアと日本でも同様であった。49年中国革命が勝利し、朝鮮半島でも南北分断を打破する革命が進んでいた。フィリピン、ベトナムでも民族解放闘争が闘い抜かれていた。 日本でも戦後革命が闘われた。先頭に労働者階級が立っていた。敗戦から1年後には組織労働者の99%、400万人が労働組合に結集していた。農民も土地闘争に決起していた。そして47年2・1ゼネストに向かっていた。米占領軍が介入し、日共スターリン主義が裏切り、戦後革命は敗北したが日帝支配者階級に大打撃を与えた。
 戦後革命に直面した日帝と米帝(米占領軍)は、プロレタリア革命を阻止するための予防反革命として、「戦後民主化」に踏み切った。労働者階級への大幅な譲歩と妥協であった。
 その最大の柱が、戦後憲法の制定によるブルジョア議会制民主主義への統治形態の大転換と憲法9条であった。
 憲法9条は、日帝の延命のために不可欠だった天皇の戦争責任の免罪と引き換えに導入されたものだ。
 憲法9条は戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた。これはブルジョア国家の憲法としてはあり得ない条項である。それは、戦争を二度と許さないと決起した日本の労働者階級の決起、何よりも日帝がアジアで繰り広げてきた極悪の戦争犯罪に対する朝鮮―中国―アジア人民の激しい怒りが、帝国主義者を締め上げ、強制したものだ。
 これは、戦後の日帝の憲法に戦争と内乱に対処する規定が存在しないという帝国主義にとって致命的な弱点を抱え込むものだった。
 そうした致命的弱点を補完したのが日米安保体制だ。9条を始めとする戦後憲法体制の帝国主義としての根本的な脆弱性を、日帝は日米安保という日米軍事同盟で補完してきた。そのために沖縄を米軍に売り渡し、日本全土を朝鮮、ベトナム、アジアへの侵略戦争の前線基地・兵站基地にしてきた。50年代に始まる日帝の再軍備、自衛隊の創設も、日米安保体制の一翼に組み込まれてきた。
 こうして戦争放棄の憲法9条と日米安保、自衛隊の存在は日帝の政治危機を絶えずつくり出してきた。60年安保、70年安保・沖縄闘争、そしてベトナム戦争、イラク・中東侵略戦争(湾岸戦争)、PKO派兵、アフガニスタン・イラク侵略戦争など日米安保と米軍の戦争体制、自衛隊の海外派兵、沖縄の米軍基地などは、戦争放棄の憲法9条を踏みにじる行為として大政治問題となった。

 □国連憲章51条に飛びつく

 1950年の米帝の朝鮮侵略戦争を契機に、米帝は日本の再軍備に走り、自衛隊という軍隊がつくられた。しかしこれはどこからどう見ても憲法9条に違反している。日帝はこの違憲の自衛隊の存在を合理化するために、憲法9条の上に国連憲章51条を置いた。憲法9条の戦争放棄条項の中に戦争の可能性を持ち込む帝国主義者どもの大ペテン、大トリックだった。
 国連憲章第51条〔自衛権〕に以下の文言があった。
「この国連憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」
 日帝はこれに飛びつき、以下のように主張した。
「国連は、主権国家に対して個別的自衛権と集団的自衛権は国家固有の権利として認めている、だから日本国家にも個別的自衛権と集団的自衛権がある、個別的自衛権が認められているから自衛隊の存在は認められる、ただそれは日本を防衛するために必要最小限度のものでなければならない、必要最小限度であれば、それは陸空海その他の戦力には当たらない」
 こうした大ペテンを使って憲法9条を踏みにじって戦争を正当化する論理を持ち込んだのだ。そして自衛隊を憲法9条違反ではないと言い張った。だが、労働者階級人民はそれに納得しなかった。
 自衛権とは、帝国主義国家の自衛権を指している。日帝ブルジョアジーの利益を守るという意味である。自衛権を発動する、自衛権を行使するということは、日帝ブルジョアジーの支配する国家を武力で守るということである。
 だから自衛権と戦争の放棄はまったく相いれない。戦争の放棄とは自衛権とは両立しえないものだ。
 だから自衛権の発動は、日帝の国家を守るというものから、日帝ブルジョアジーの利益の範囲の拡大に従って、アジア・太平洋から全世界に拡大していく。自衛戦争の範囲は自国に止まらず、世界戦争にまで発展していくのである。戦前の日帝の戦争がそうだった。 第4章 □憲法9条は集団的自衛権を根本的に否定
 次に集団的自衛権の問題である。
 これまで政府・内閣法制局は、集団的自衛権について、国会において以下のように答弁してきた。
 1981年の政府答弁書は次のようになっている。
 「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止をする権利を有しているものとされている。
 我が国が、国際法上、このような権利を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲に止まるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであり、憲法上許されないものであると考えている」 以上の集団的自衛権に関する内閣法制局の見解は、戦後60数年にわたって、憲法9条と集団的自衛権の関係について述べてきたものである。
 集団的自衛権はあるが、その行使は憲法9条の制約によって許されない、というのが政府解釈である。
 国連憲章51条にとびついて集団的自衛権はあるとまでしたが、憲法9条の戦争放棄の徹底性の前に、集団的自衛権の行使は憲法上できないとせざるをえなかった。
 改めて憲法9条と集団的自衛権の内容を比べて見る。
 憲法9条が徹底的に戦争を放棄しているのに対して、集団的自衛権とは、自国が攻撃されてもいないのに、密接な関係にある国(同盟国)が攻撃を受けた時に、自らも反撃できる(戦争する)権利である。憲法9条は、集団的自衛権(個別的自衛権も)を根本的に否定していることは自明のことである。

 □安倍の集団的自衛権行使の見直しの攻撃

 では、安倍が企む、これまでの集団的自衛権の行使に関する政府解釈の見直しとはいかなるものか。
 これまで内閣法制局がブルジョア政府なりに整合性を持たせようと積み上げてきた憲法9条と集団的自衛権の行使に関する論議を安倍は一方的に破棄して、集団的自衛権の行使を容認すると一方的に宣言した。
 つまりブルジョア民主主義的な手法を止めて、独裁的な政治決断をするということだ。内閣法制局が、憲法9条がある限り集団的自衛権の行使はできないというのを無視して、集団的自衛権の行使を容認すると一方的に宣言する。
 これは集団的自衛権を禁止する憲法9条の停止であり、破棄である。安倍は一片の宣言で憲法9条を無効にするのである。
 憲法9条は法律的には残っている。しかしその全内容は蹂躙されつくしている。墓場に突き落とされている。それが集団的自衛権の行使の容認の意味である。
 安倍は集団的自衛権の行使を容認させるために様々な策動を行っている。
 8月16日、「安保法制懇」の動きが報道された。それによると今秋にもまとめる報告書で、集団的自衛権の行使に関しては全面的に容認する一方、「地理」「国益」を尺度に一定の歯止めをかけることも提起すると言われている。また、法制懇のメンバーは、「自衛隊法をポジ(できること)リストからネガ(できないこと)リストに変える」と主張し、同法について「市民への加害」「捕虜虐待」など国際法で禁じられている行動以外は全部可能とするネガリストへの転換を図るという。つまり、9条があるから個別的自衛権の範囲を狭めるということなど、集団的自衛権の行使が容認されるという下ではあっさりと破棄され、自衛隊は無限の行動の自由を得ようとしているのだ
 8月21日、朝日新聞が山本前法制局長官との会見記事を掲載した。前半は、集団的自衛権の行使容認は難しいとしながら後半で以下のように述べた。
 「しかし最近、国際情勢は緊迫しているし、日本をめぐる安全保障関係も環境が変わってきているから、それを踏まえて、内閣がある程度、決断され、その際に新しい法制局長官が理論的な助言を行うことは十分あり得ると思っている」
 これは安倍の狙い・意図を代弁している。
 そしてその憲法違反の実行法(国家安全保障基本法、自衛隊法改悪)を国会の多数で暴力的に可決することなのだ。集団的自衛権の行使とは戦争である。海外侵略戦争である。無制限な侵略戦争である。自衛隊は、すでに集団的自衛権の行使の容認を前提とする海外侵略戦争を基本任務とする体制に大転換を開始している。
 こうした安倍の改憲攻撃の根底にあるのは、世界大恐慌と3・11情勢、そして新自由主義の大破産である。それが帝国主義間の争闘戦を激化させ、日帝に侵略戦争を強制している。こうした日帝の絶望的危機の全矛盾は労働者階級人民に押しつけられていくのだ。人民の反撃の闘いを抑圧しているのが民主党であり、連合などの体制内労働運動だ。先の参院選で、民主党は大凋落し、連合も大破産した。労働者階級人民は、体制内勢力を見限り、真に労働者の利益を代表し闘う勢力との結合を求めた。それが山本太郎さんへの66万票余の投票となった。展望は切り開かれた。
 安倍は、改憲手続きすることなしに憲法9条を完全に解体してしまうことを狙っているが、労働者階級人民をなめるんじゃない。山本太郎氏の当選は、安倍に大打撃を与えた。労働者階級のリーダーが登場した場合に、人民の怒りが百万人、1千万人の規模で大爆発するということだ。改憲阻止闘争においてはそれをはるかに上回る規模で生みだされることは確実だ。
 そして8月に一斉に行われたJP労組、自治労、日教組、国労の大会では、労働者の怒りが、不満が噴出する大会となった。そうした中で体制内執行部は、民主党から自民党への大転向を画策している。改憲勢力に転じようとしているのだ。今こそ、闘う労働組合を甦らせ、階級的労働運動の大発展を切り開く時がきた。
 日本の労働運動は、国鉄決戦を基軸に発展し、非正規職化、外注化、大幅賃下げとの公務員労働者、4大産別の労働者、全労働者の闘いに発展しつつある。
 (宇和島洋)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(446号2-3)(2013/10/01)

News&Reviw

■News & Review エジプト

開始されたエジプト第二革命

軍部による独裁支配体制の再建を許すな

 □ムルシ政権打倒の空前の決起

 ムルシ政権成立から1周年を迎えた6月30日、エジプト全土で1千万人を超える労働者階級のムルシ政権打倒の巨大なデモが展開された。英BBC放送は、「人類史上最大の政治行動」と報道した。タハリール広場とその周辺は再び100万人の労働者人民で埋まり、大統領宮殿も数十万人の労働者人民に包囲された。アレキサンドリアやスエズ運河地帯の諸都市では労働者が街頭を占拠した。ムルシ政権打倒の声は文字通り全国に満ちあふれ、警察は完全に対応不能に陥った。軍も直接弾圧に乗り出せない状態に追い込まれた。
 労働者階級は、この1年間のムルシの統治の下で、労働者の生活が改善どころか、ますます悪化したことに激しい怒りを燃やしていた。首切りや失業の増大、物価の上昇、貧富の格差の拡大は激化するばかりだった。ムルシが労働者の生活を改善する措置を何もとらなかったからだ。
 こうした状況に労働者階級が苦しんでいるにもかかわらず、さらにムルシがIMFからの48億jの融資と引き換えに労働者階級を地獄に突き落とす超緊縮政策を導入しようとしたことは怒りの炎に油を注いだ。ムルシ政権に対する労働者の当然の抗議行動も激しく弾圧され、ストライキは禁止された。ストライキ闘争で闘った多くの労組活動家は逮捕され、警察で拷問を受け軍事法廷に送られた。
 その一方でムスリム同胞団のメンバーは中央・地方の行政機関や国営企業などで有利な地位を与えられた。ムスリム同胞団系の資本家も様々な便宜を与えられ巨額の富を蓄積した。
 さらにその上に、ムルシ政権は、アメリカ帝国主義のシリアやイランに対する侵略戦争政策に全面的に協力したばかりか、イスラエル政府との協力を継続してガザのパレスチナ人民に敵対する政策を採り続けた。政権の危機突破のための極端な保守的イスラム化政策も労働者人民に押しつけられた。労働者階級はこうした現実の下で1年間生活する中で、もはやムルシの支配を打倒する以外に生きることができないことを学んだ。こうして労働者階級は13年の最初の5カ月間に5544件ものストライキとデモに立ち上がった。労働者階級は階級総体としてムルシ政権打倒の闘いに決起し始めたのであり、6月末には第二革命は不可避の情勢に突入した。
(写真 スエズ鉄鋼労働者のストライキを支持する独立労組連盟の労働者の集会【8月】)

 □予防反革命クーデターの陰謀

 こうした情勢に驚愕した米帝とエジプト軍部は、労働者階級によるムルシ政権の打倒という第二革命を阻止するためにクーデターに訴えた。軍部は事前に米統合参謀本部や米政府と綿密な計画を練り、十分な国内政治工作を行ったうえで7月3日、クーデターを行った。とりわけ、ムルシ打倒闘争を組織していた「タマルド」(反乱)という組織の指導部への工作は重要な意味を持った。
 13年4月に反ムルシ署名を集める運動として出発したタマルドは、米帝やエジプトのブルジョアジーと強い関係のあるエルバラダイ(元IAEA事務局長)の救国戦線、イスラム主義政党の「強いエジプト党」、かつてムルシの大統領選出を支持した小ブルインテリゲンチャの組織「4月6日青年運動」、ムバラク時代最後の首相、アーメッド・シャフィークを含む旧ムバラク派、さらにはトロツキストの一派である「革命的社会党=RS」などの実に奇怪な寄せ集め集団である。タマルドは2200万筆の反ムルシ署名を集め、ムルシ打倒運動の組織化の先頭に立ったが、それは、労働者革命を実現するためではなく、労働者人民のムルシへの怒りを利用して新たなブルジョア支配体制を再建するためであった。
 軍部はクーデターを前にしてタマルドの承認を取り付け、クーデターをムルシ打倒という「国民的要求」にこたえた軍の「民主主義的な」軍事介入に見せかけようとしたのだ。
 他方タマルドは米帝やEU政府とも密接な連絡を取りながら、軍の力を借りてムルシを打倒し、挙国一致政府を形成することで労働者革命を防止し、資本主義体制下でエジプトの再建と安定を図ろうとした。そしてこの一連の過程を「第二革命」と称している。
 このような陰謀に、トロツキストのRSが関与したのはなぜか。RSは現在の相争う諸政治勢力のどちらについたら労働者にとって有利になるかというふうにしか問題を立てない。労働者階級自身が権力を掌握するために労働者は今、どう闘うべきかという観点が完全に欠落しているのだ。これではブルジョアジーや小ブル急進勢力のしっぽに労働者階級をつなぎ止めることにしかならない。RSのエジプトにおける行動は、イギリスのSWP(社会主義労働者党=トニー・クリフ派)やアメリカのISO(国際社会主義者組織)などのトロツキストの大組織の支持を得ており、これらのトロツキスト組織の立場も徹底的に批判されなければならない。

 □暫定内閣の反革命的性格

 クーデター後、軍部は暫定内閣を樹立した。暫定大統領にはムバラク体制と深いつながりがあり、腐敗した司法体制を維持し続けてきたアドリ・マンスール最高憲法裁判所長官が就任した。首相には新自由主義者の経済学者で、IMFと連携した緊縮政策を全面的に推進する立場に立っているハゼム・エル・ベブラウィが任命された。外交担当副大統領にはエルバラダイが任命された。財務大臣は世銀所属の研究者であるアーメッド・ジェラルだ。副首相と国防大臣には、クーデターを指導した軍最高司令官のアル・シシ将軍が着任した。これを見れば分かるように、暫定内閣はブルジョアジーの内閣以外の何ものでもない。
 その上で、暫定内閣はエジプト革命の真っただ中で御用労組の支配を突き崩して戦闘的な労働運動を組織して闘い、今日245万人を組織する大組織に発展したエジプト独立労組連盟の委員長を労働・人的資源担当大臣に任命して、同労組の体制内への取り込みを狙っている。組合内からの多くの反対の声を排して入閣したこの元委員長は、暫定内閣の下でのストライキの抑制を呼び掛けた。独立労組連盟の現場労働者はこの呼び掛けに激しく反対し、暫定内閣の下でも闘いを継続することを宣言している。
 第4章□反革命的踏切りを決断した軍部
 軍のクーデター以降、軍やムバラク派資本家、政府官僚などの反革命勢力の巻き返しが猛然と開始されている。
 クーデターによるムルシ政権解体後、ムルシの釈放と復権を要求して抗議集会とデモを続けるムスリム同胞団と軍の対立が激化し続けた。軍はムスリム同胞団の抗議行動を「テロリズム」と規定して弾圧を強化し、7月8日と27日にムルシ派の集会やデモを襲撃し、合計120人以上を虐殺した。この弾圧にもかかわらず、ムルシ派が抗議行動を継続し、軍との衝突がエスカレートする中で、ついに8月14日、軍はムルシ派の抗議集会場に突入し、銃や催涙弾、棍棒などで激しい弾圧を行い、635人を虐殺した。以後8月18日までの間に800人以上が軍によって虐殺された。家族や友人も含めた軍の無差別的虐殺は徹底的に弾劾されなければならない。

 □労働者への軍事的恫喝

 こうした激しい弾圧を軍が強行した最大の目的は、第二革命を目指して突き進むエジプト労働者階級に対する軍事的恫喝のためだ。
 クーデター後のムスリム同胞団への弾圧と虐殺が激しくなればなるほど、軍に対する労働者人民の幻想は消失していった。こうして労働者人民の怒りの矛先が再び軍に向かいかねない状況が生じた。虐殺の激化の中で、軍を支持していた「タマルド」も分裂し、自由主義ブルジョアジーの代表であるエルバラダイや、4月6日青年運動、革命的社会主義者党は、軍を支持するムバラク派資本家と袂を分かって軍を批判し始めた(これ自体は軍のクーデターを支持した責任を深刻に総括しない無責任な態度だが)。このため軍は、ムスリム同胞団との対立に一気に決着をつけると同時に、軍に対する反乱行為が労働者人民にとっていかなる結果をもたらすかを思い知らせるために激しい軍事的弾圧に打って出たのだ。

 □強権的支配体制再確立めざす軍

 軍の目的は労働者階級との力関係を推し量りつつ、機を見て労働者革命をたたきつぶし、軍とムバラク派資本家の共同支配体制を再建することだ。軍は8月13日、全国27県のうち25県でムルシが任命した県知事を罷免し、新たに25人の知事を任命した。そのうち19人は軍の将軍であり、2人は元ムバラク派の裁判官である。その上で8月14日、定政府に1カ月間の非常事態宣言を出させた。ムバラク体制下で労働者人民を監視し、弾圧していた秘密警察も復活する計画も発表した。
 軍はIMFからの融資48億j導入と、食料や燃料の補助金廃止と大幅値上げで労働者人民を地獄にたたきこむ超緊縮政策を展開することで、大恐慌下で未曽有の危機に陥ったエジプト経済を再建するためには、ムルシ政権にとってかわって軍とムバラク派資本家による超強権的な政権を再確立し、労働者人民の反抗をたたきつぶす体制を強化する必要に迫られたのだ。

 □米帝のエジプト政策の破産

 米帝は、暫定内閣を成立させたクーデターを、クーデターと呼ばず、軍による民主主義的な介入であるとして、年間15億jの援助を継続することを明らかにした。さらには、米帝は湾岸の反動王政諸国にもエジプト支援を要請した。その結果サウジアラビアが50億j、アラブ首長国連邦が30億j、クウェートが40億jの支援を表明した。
 だがクーデター後、軍とムスリム同胞団の和解と安定的な政権の形成を追求していた米帝は、今日、軍のムスリム同胞団への徹底弾圧政策と軍部独裁体制の強化を基本的に容認せざるをえなくなった。米帝はエジプトのムスリム同胞団との関係が悪化すると、ムスリム同胞団との関係の強いトルコやカタール、チュニジアなどの政府との関係も悪化し、米帝のシリアやイランなどに対する侵略戦争政策に重大な影響を与えかねないと考えていた。だが、労働者人民による第二革命の切迫に対するエジプト軍部の恐怖と危機感は強烈であり、そうした米帝の中東政策に配慮する余裕はなかった。こうして米帝はエジプトおよび中東全域をめぐる政策を整合的に展開する力を失いつつある。

 □革命的前衛党の建設を

 第二革命をたたきつぶすための新たな軍部独裁体制の確立を目指す軍に対して労働者階級は労働組合の闘いのさらなる発展と前衛党の建設によって闘う以外ない。
 ところが今日、11年の2月革命以来の闘いを牽引してきた独立労組連盟の指導部は、暫定政府の労働大臣に就任した前委員長を始めとして多数派が軍のクーデターやムスリム同胞団の弾圧を支持する立場に立っている。
 だが、独立労組連盟が総体として軍を支持しているわけではない。14人の執行委員のうち5人が軍を支持せず、軍が呼びかける「反テロリズム集会」に参加することに反対した。多くの現場労働者も、執行委員会による暫定政府の統治期間におけるストライキ停止決議に反対して闘っている。たとえばスエズ鉄鋼工場の4200人の労働者は、未払い賃金の支払いを要求して3週間のストライキを行った。軍はこの工場を包囲し、スト指導部を逮捕したが、労働者は独立労組連盟所属の労働組合やマハラの繊維労働組合、人権団体の支援を得て不屈にストを継続している。エジプト各地の多くの現場労働者が軍部の超緊縮政策強制と弾圧、そして労組指導部の統制を打ち破って再び決起するのは不可避だ。
 問われているのは、革命と反革命の錯綜する困難な激動過程において、正しい路線の下に労働者革命を指導うる労働者の前衛党の建設だ。2年半のエジプト革命の中でさまざまな経験を積んだ労働者階級は必ずや労働組合の闘いの発展と一体で革命的前衛党を創設し、エジプト革命を完遂するだろう。
 (丹沢 望)

月刊『国際労働運動』(446号9-1)(2013/10/01)

編集後記

■編集後記

 8・15労働者と市民のつどいで、福島から駆けつけた佐藤幸子さんがあいさつした。その一部を紹介する。
 「事故から2年半、福島は声を上げられない状態にどんどんなってきています。一昨年の秋、チェルノブイリでツバメの調査をしてきた先生が、飯館のツバメは卵が産めなくなったと言っていました。その先生が今年『原発周辺に戻ってきているのはわずか10%』と発表したそうです。ツバメは毎年同じ所に戻ってきますが、もう戻ってこれなくなっているのです。こんなことを隠す福島県、政府、本当に許せません」
 「福島の現実を全国の皆さん、目をそらさずに自分のこととして見つめてください。もうこれ以上同じ過ちを繰り返してほしくないんです。そういう思いでやってきました。どんなバッシングにも負けません」

------------------------TOPへ---------------------------