International Lavor Movement 2012/06/01(No.430 p48)

ホームページへ週刊『前進』季刊『共産主義者』月刊『コミューン』出版物案内週刊『三里塚』販売書店案内連絡先English

2012/06/01発行 No.430

定価 315円(本体価格300円+税)


第430号の目次

表紙の画像

表紙の写真 六ケ所村核燃料再処理工場抗議闘争(4月8日 青森)

■羅針盤 国鉄闘争全国運動の前進を 記事を読む
■News & Review 韓国
 現代自動車下請労働者が大法院で勝訴   不当解雇、不当労働行為の取り消し訴訟
記事を読む
■News & Review シリア
 「シリア人民は一つだ」掲げる巨大なデモ   アサド政権の新自由主義うち破る革命の道
記事を読む
■News & Review アフガニスタン
 駐留米兵が夜襲し村人16人を虐殺   一打逆転へ「精鋭部隊」送り込んだ米軍
記事を読む
特集   新自由主義・橋下の全員解雇攻撃許すな  
■討議資料 大阪市長・橋下徹の反革命語録  
■Photo News  
■世界経済の焦点 貿易赤字に転じた日帝
 電機・自動車の輸出競争力低下で脱落加速
 
■世界の労働組合 イタリア編   イタリア労働総同盟
 (Confederazione Generale Italiana del Lavoro:CGIL)
 
■国際労働運動の暦 6月4日   ■1989年天安門事件■
 大衆決起に血の弾圧   中国スターリン主義権力は労働者の階級的決起に恐怖して大虐殺
 
■日誌 2012 3月  
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 サンフランシスコの建物を占拠する青年たち(4月12日)

月刊『国際労働運動』(430号1-1)(2012/06/01)

羅針盤

■羅針盤 国鉄闘争全国運動の前進を

▼絶望的凶暴化を深める野田政権による消費大増税と原発再稼働の策動、ミサイル迎撃態勢突入=朝鮮侵略戦争体制構築の攻撃に、今や労働者階級人民の怒りは沸騰点に達している。これと真正面から対決する闘いと階級的労働運動路線の白熱的前進が、新たな階級闘争の時代を切り開きつつある。4〜6月決戦は、1〜3月の画期的な勝利の地平を打ち固め、国鉄決戦―国鉄闘争全国運動の発展を基軸にして、新自由主義の絶望的凶暴化を打ち破る歴史的な決戦である。
▼4〜6月決戦の本格的爆発を展望した時、あらためて3・11福島(郡山)大闘争と4・1外注化を阻止した動労千葉の闘い、これを頂点とする1〜3月決戦の感動的勝利の地平をがっちり確認することが決定的だ。その上で世界大恐慌の激化と3・11大震災―原発事故は何をもたらし、何を生み出したか。それは何よりも戦後体制下の一切の既成の価値観を崩壊させた。そして大破産した資本主義・帝国主義に代わる新たな社会の構築へと進む闘いの開始、プロレタリア革命の勝利へ総決起していく歴史的転機となった。
▼そして何よりも、国鉄闘争全国運動の前進と6・10国鉄大集会の成功をかちとり、2012年前半決戦の勝利を確定し、11月集会大結集への道を切り開くために闘おう。国鉄闘争全国運動をあらゆる職場・学園・地域に持ち込み、全国で6・10大結集運動を組織し、それを一切のベースに4〜6月決戦に総決起しよう。国鉄全国運動の発展と6・10大結集運動で原発再稼働、消費大増税、労働者全員解雇=非正規職化、戦争・改憲の日帝・野田政権を打倒し、2012年決戦の巨大な勝利へと進撃しよう。

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(430号2-1)(2012/06/01)

News&Reviw

■News & Review 韓国

現代自動車下請労働者が大法院で勝訴

不当解雇、不当労働行為の取り消し訴訟

 □2年以上は正規職

 2月23日、韓国大法院は現代(ヒョンデ)資本の提訴を棄却、蔚山(ウルサン)工場で下請労働者として働き、解雇されたチェビョンスン氏の不当解雇および不当労働行為の判定取り消し請求訴訟の勝訴が確定した。これは、現代自動車で2年以上働いた社内下請労働者は正規職と認めなければならないという趣旨の判決だ。これで、10年11月に現代車社内下請労働者1940人と、11年7月の起亜車社内下請労働者574人が各元請を提訴した「勤労者地位確認および賃金請求の件」も有利な展開が予想され、集団訴訟はさらに拡大しそうだ。
 続く2月29日、現代車(正規職)労組が「不法派遣判決!即刻正規職化しろ」と記者会見。チェビョンスン氏と同じ条件下にいる8000人の不法派遣該当者のための調査と、4月元下請連席会議の復元、6月元下請共同闘争を計画したと発表した。また起亜(キア)車支部と共同議題、共同交渉の展開を明らかにした。起亜車は現代資本の傘下だ。
 この日の午後、判決後最初の集会を蔚山工場本館前で非正規職支会とともに正規職化要求大会として開いた。「不法派遣を撤廃し鄭夢九(=現代車会長)を拘束しろ!」を掲げた。集会には勝訴したチェビョンスン氏も手配中にもかかわらず電話で発言した。正規職支部が起亜車支部と共同し、非正規職撤廃を非正規支会と共にするのは10年11月15日の非正規職組合員の工場占拠ストの時とは様変わりだ。1月上旬に正規職現場委員の焚身抗議など、相次ぐ現代資本への現場労働者の怒りが、正規職支部を突き動かしたのだ。
 現代車非正規職蔚山支会、牙山(アサン)支会、全州(チョンジュ)支会の3支会は昨年12月21日蔚山工場本館前で決意大会を開き、不法派遣非正規労働者の正規職化を要求した。また集会後臨時代議員大会を開き新しい非常対策委を構成した。3支会は本年1月10日〜15日、良才洞(ヤンジェドン)の本社前で集中闘争をした。
 そして3月2日、3支会は「すべての社内下請の正規職転換」を要求。資本側が「大法院判決は全体に拡大適用する判決ではない」とした資本の談話文に抗議し、10年7月から要求している不法派遣8要求≠確定して即刻交渉に応じろと要求した。
 4月4日、ついに蔚山の非正規職支会は、昨年2月の前執行部辞任から1年2カ月ぶりに支会の執行部を選出し、労組を正常化した。新たに選出されたのはパクヒョンジェ支会長、チョンウイボン事務長、カンソンヨン首席副支会長だ。投票者の95%の圧倒的賛成で選出された。
 「すべての非正規職を正規職に」は10年蔚山第1工場を25日間占拠した労働者の要求だ。その年の大法院の判決も今年2月の再上告審で確定した。パクヒョンジェ新支会長は「現場はとても崩れ、苦しむ組合員が多い」「支会組合員をさらに拡大し、非正規労働者を集める」とインタビューに答えた。そして現場の組合員の苦闘に「新執行部の考えは現場で生きよう≠セ。組合員と対話し、ともに悩み、闘いをつくる」と決意を述べた。最後に「われわれは全員の正規職化という目標を貫徹するために一生懸命に闘う。現代車非正規職の正規職化は、単にこの工場の中で終わる問題ではなく、大韓民国の非正規職に多くの影響を与えるだろう」と語った。
 歴史的な非正規職労働者の工場占拠闘争は現在このように、大規模懲戒の弾圧を乗り越え甦った。現代車と起亜車、双龍車は金属の大単産組合だ。民主労総が呼号する6月警告ゼネストも8月ゼネストも、現代車らの金属労働者、蔚山の労働者の闘い抜きには成り立たない。非正規職支会の新たな執行部誕生は、韓国労働者と民主労組運動に力強い拠点を形成する始まりだ。
(写真 当選した現代車蔚山非正規職支会のパクヒョンジン支会長【左】ら新役員【4月4日】)

 □言論労組、放送社労組、新聞社労組がスト

 言論労組は3月23日午後、ソウル駅前広場に2000人が集まり、「言論掌握のMB(李明博〔イミョンバク〕)審判総決起大会」を開いた。ストライキ中のMBC、KBS、YTNの放送3社と聨合ニュース、国民日報を始めSBS、CBSら言論労組支部、各地域支部が参加。金属労組、化学繊維労組、公共連盟も連帯し参加した。
 決起大会で言論労組のイガンテク委員長は「われわれはこの4年間の侮辱と羞恥に耐えられず出てきた。お前らは記者かという叱責、この政権とどこが違うのかという侮辱に耐えられない」「歴史は言論独立の新しい時代を開いたと評価するだろう」と話した。言論労組は「(李明博政権は)民間人査察文書でYTNとKBS内部を掌握し労組を無力化するために不法に介入した事実が明らかになった」とし、「忠誠心の高い人物」を落下傘社長に任命したと糾弾した。
 李明博政権の言論弾圧と統制に対抗し、落下傘社長の退陣を要求しているのだ。4月2日にはMBC労組のチョンヨンハ委員長とカンジウン事務局長が解雇され、現政権4年間で解雇されたジャーナリストは14人、懲戒は300人だ。MBC労組イヨンマ広報局長は「言論弾圧指数は現在14、弾圧指数がゼロになるまで闘い抜く」と、復職まで闘う決意を述べた。
 KBS新労組は4月4日、スト30日目を迎えた。キムインギュ社長を落下傘社長と規定し、公正放送回復を掲げて無期限の座り込みをしてストを続けているのだ。釜山(プサン)の国民日報は4月1日にスト突入から100日を越えた。言論労組のストは延べ200日を越えている。この言論ストは熱い社会的支持を受けている。YTN労組が3月8日にストに入り、史上初めて放送3社が合同ストとなって、共同集会を汝矣島(ヨイド)公園で開いた。ここで発表した3月16日のストライキコンサートには2万人が参加し、多くの民主労総組合員が現場を訪れた。
 言論スト勝利のための民主労総1日全面ストライキを発議する民主労総代議員たちは「言論ストが勝利すれば、民主労総と各産別連盟が計画する6月〜8月ストも弾みがつく」「これは鉄道労組のKTX民営化阻止闘争、貨物連帯の6月スト、金属労組の不法派遣正規職化闘争、労働時間短縮闘争に大きな刺激になる。清掃・看病・保育・学校非正規職など劣悪な環境で闘う労働者の士気に大きな影響を与える」「言論ストは政府と労働の勝負となった」と檄を飛ばした。
(写真 言論ストライキは熱い社会的支持を受け、ストライキコンサートには2万人が参加【3月16日】)

 □大学清掃非正規職労働者が複数労組制と対決

 国際婦人デーの3月8日午後、弘益(ホンイク)大正門前で生活賃金争奪のための女性非正規職共同闘争連帯≠ェ、「最低賃金大幅値上げ!生活賃金争奪!1万人宣言」突入を宣布した。公共運輸労組イスッキ弘益大分会長は「900万の非正規職労働者が最低か、それ以下の賃金だ。最低賃金ではなく、生活賃金を要求しなければならない」と劣悪な賃金の現実を弾劾した。
 記者会見の後、同所で民主労総公共運輸サービス労働組合が主催する「大学非正規職集団交渉ストライキ決意大会」が開かれた。決意大会参加者一同は決議文で「大学と資本は責任回避をやめ、学内非正規職問題を直接解決することを要求し、そのために強力なストライキ闘争を行うことを宣言する」とした。
 大学非正規職女性労働者は、複数労組制の下、交渉窓口単一化によって団体交渉が封鎖されているとし、闘争を宣布した。2月27日のソウル地方労働委員会の前で記者会見を開き「労働委員会が会社別窓口単一化手続きを要求して、労組の交渉権をはく奪している」と批判した。ソウル京畿(キョンギ)支部所属の弘益大、梨花(イファ)女子大、延世(ヨンセ)大、高麗(コリョ)大など六つの大学の清掃警備労働者は、昨年11月から14の業者と集団交渉を始め、2月7日の9次交渉を最後に交渉最終決裂を宣言した。
 決裂の主な原因は賃金交渉だ。労組側は5410ウォンを提示したが、使用者側は賃金凍結を宣言した。7日の交渉では4700ウォンを公式に提案したが立場の違いを狭められず結局交渉が決裂した。これにより、労組は今後ソウル地方労働委員会に争議調整申請をし、組合員の争議行為賛否投票をしてストなどの全面闘争に突入する。
 公共労組京畿支部を中心にした清掃・警備事業場の今回の闘争は、複数労組制の下での窓口単一化問題を解決する闘争に広がる方向だ。昨年7月1日から実施された複数労組窓口単一化で、京畿支部所属の弘益大、延世大、梨花女子大、慶煕(キョンヒ)大などでも使用者側が御用労組を設立し、現場の混乱が強まっていた。該当業者の管理者が組合脱退書を配るなど、組合脱退工作をした。清掃労働者の集団交渉にも赤信号がともった。
 3月8日の1万人宣言が宣布された。交渉窓口単一化に苦闘する労組は数多い。こうした攻撃と断固対決する、大学非正規職清掃、警備労働者の闘いが始まった。弘益大清掃労働者を先頭とする非正規職労働者が闘いの行方を握っているのだ。
(写真 弘益大、延世大、梨花女子大、高麗大など6つの大学の集団交渉が決裂、闘争局面に【2月7日】)

 □鉄道労組がKTX民営化と対決する定期大会

 全国鉄道労働組合は3月27日から2日間、忠南(チュンナム)牙山(アサン)市で定期代議員大会を開いて、全面ストを含む総力闘争を展開することを決めた。組織を争議対策委員会体制に転換し、政府がKTX民営化を強行すれば全面ストをする計画だ。▽KTX民営化阻止のためにストを含む総力闘争を展開する、▽百万人署名運動と汎国民対策委を拡大強化し、国民とともにする闘争で李明博政権とセヌリ党を審判する、▽争議対策委に転換し、4月18、19、20日にKTX民営化阻止の賛否投票を実施し、21日に3次総力決意大会を開く方針を全員一致で決めた。
 また定期代議員大会では▽解雇者復職、▽不足人員補充、▽職員福祉向上を目標とする12年賃金団体協議の核心要求も確定した。
 これに先立ち、鉄道労組はKTX民営化が大統領政務報告で出された昨年12月27日、ソウル駅広場で民営化阻止の幹部決意大会を開き、今年2月4日にはソウル駅広場で第1次総力決意大会を開き駅前を鉄道労組員が埋めた。1月18日には「KTX民営化阻止」汎国民対策委を民主労総と政党、社会団体など50の団体で発足させ、反対署名は1カ月で20万を超えた。
 鉄道労組は「人員削減(維持補修、整理業務に集中)により頻繁に事故が起きている」「5115人の定員削減による労働強化とストレスで11年に組合員の遺族への慰労は26件、1カ月に2人以上が死亡している」と弾劾した。また、4月までにKTXの事故はすでに4件発生している。鉄道労組は韓国労働運動の歴史を語る上で不可欠の存在であり、03年鉄道、ガス、発電ゼネスト以来何度もストに立ち上がり、激しい弾圧、解雇と懲戒を受けてもひるむことなく闘い抜いている。韓進重工業や現代自動車非正規職、双龍自動車労組など金属労組と並ぶ労働運動の要だ。KTX民営化阻止闘争は、韓国の労働者の闘いを新たな段階へ押し上げるだろう。
 (本木明信)
(写真 3月27日から2日間、忠南牙山市で開かれた鉄道労組の定期代議員大会】)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(430号2-2)(2012/06/01)

News&Reviw

■News & Review シリア

「シリア人民は一つだ」掲げる巨大なデモ

アサド政権の新自由主義うち破る革命の道

 シリア労働者人民の反乱は、アサド政権の残虐な人民せん滅的攻撃に抗し、同時に米帝・中東反動諸政権による反革命的介入策動をも拒否しながら、ねばり強く闘い続けられている。「停戦合意」にもかかわらず政府軍の砲撃が続く中、4月13日には、「アサド政権打倒」「シリア人民は一つだ」を掲げた巨大なデモが各地で行われた。
 エジプトでは、ムバラク打倒から1年になる現在、なおも反動勢力と労働者人民との間の権力をめぐる死闘が続いている。地中海の対岸では、ギリシャ労働者階級が度重なるゼネストをもって、EU帝国主義の緊縮政策と不屈に闘っている。日本、そして韓国、アメリカの労働者人民の闘いも、世界大恐慌のもとでの新自由主義との闘いという点で、全世界の労働者人民とともに、死の苦悶にあえぐ帝国主義という共通の敵と対決しているのだ。まさに、プロレタリア世界革命情勢だ。
 本誌前号に引き続いて、シリア反乱の中東=西アジア・北アフリカ革命・世界革命にとっての位置について考えていきたい。

 □IMF「構造調整」に基づく新自由主義政策

 現在のバシャール=アル=アサド政権は、2000年に死去した前大統領・父ハフェズ=アル=アサドを継いで成立し、新自由主義政策を強権的に遂行してきた。新政権は、登場するやいなや、首都ダマスカスの中央広場に掲げられていた巨大なハフェズ=アル=アサドの肖像画を撤去し、代わりになんとリプトン紅茶≠フ大きな広告の看板を立てた。このパフォーマンスの背景には、シリアへの外国資本の直接投資が〈表1〉のように、1997年以来、激増しているという現実がある。絶対額は別として、エジプトに次ぐ劇的な変化である。2005年、政権政党=バース党の大会は、あらためて「社会的市場経済」を政策的に宣言し、2008年には、「競争促進・反独占法」によって、民間銀行の設立を認可し、株式市場・不動産市場の開設を決定した。さらに、「私有財産保護法」を制定、「居住者・不動産法」改悪によって、家主の居住者に対する立場の強化を図るなどした。2009年には、貿易自由化によって、輸入の国家独占・農業生産物への関税などが廃止され、同時にエネルギー部門(ディーゼル、ガソリン、ガス、水道など)の民営化が行われた。
 実は、この新自由主義政策はすべて、IMFからシリア政府に対して行われてきた「構造調整」の提案〔実際は指示〕に基づいているのである。これは、IMF・世界銀行と米財務省の間で行われたいわゆる〈ワシントン合意〉で定式化され、中南米諸国やアジア諸国で実行されてきた途上国¢ホ象の「改革政策」の中東版である。【2008年10月には、IMF当局とシリア政府が共同報告と声明を発表した】

 □〈アラブ社会主義〉的経済発展の破産

 だがシリアにおける新自由主義攻撃は、すでに前政権=ハフェズ=アル=アサドのもとで、基本的に着手されていたのである。それは74〜75年世界恐慌の爆発によって強制された新植民地主義体制下の〈アラブ社会主義〉的経済発展の破産に起因している。
 ハフェズ=アル=アサドが、無血クーデターで権力を握り、〈アラブ社会主義〉を名乗るバース党を基盤に政権を確立した1970年は、第2次世界大戦後の戦後世界体制の一大転換期の始まりの時期であった。1971年のニクソン・ショック(ドルの金との兌換の中止=戦後的管理通貨制度の崩壊・変動相場制への移行)、1973年の石油危機(アラブ産油国による原油価格値上げ)、1975年の米帝のベトナム戦争敗北は、ヤルタ=ジュネーブ体制(米帝とソ連スターリン主義の平和共存¢フ制とそれを補完する新植民地主義体制)のもとでの戦後発展の終わりを示すものだった。
 74〜75年世界恐慌は、29年恐慌―第2次世界大戦によって、なんら解決していない過剰資本・過剰生産力の蓄積(帝国主義=資本主義の根本的矛盾)を、あらためて突き出し、世界の階級闘争の転機を告げた。
 中東では、エジプトで「アラブ社会主義」を呼号していたナセルを1970年に継いだサダトが、1973年に「門戸開放政策」を打ち出してアメリカ資本を呼び込み、同時に労働者・農民への抑圧政策を強化した。この新自由主義政策への転換は、イスラエルへの接近の開始を意味した。【サダトは78年、米大統領クリントン、イスラエル首相ベギンと握手し、〈キャンプ・デービッドの中東和平〉を誓い、パレスチナ人民の解放闘争を公然と裏切るに至った】
 シリアでは1970年以来、アサド政権が、1963年来のバース党政権で急進派≠ノよって進められてきた農地改革、私企業の規制、貿易の国家管理、社会福祉政策などを解体し、新自由主義的政策を開始した。それは同時に、〈アラブ社会主義〉の名の下で、国家と社会の二つの柱とされてきた労働者と農民(小農)に対し、民営化政策のもとで登場してきた新興ブルジョアジーと癒着した軍事独裁政権を強化し、一切の反対派、反対勢力を、〈対イスラエル戦争〉の口実による非常事態法のもとに粉砕していく過程であった。
 もともと中東戦争の軍事司令官出身であるアサドは、対イスラエルの急先鋒を装いながら、実はパレスチナ人民に対して裏切りを重ねてきた。1970年、隣国ヨルダン政府が、パレスチナからの避難民を大虐殺し、解放運動をせん滅する攻撃をかけた(ブラック・セプテンバー)際に、これを見殺しにした。また、1975年、イスラエル軍がパレスチナ解放勢力をせん滅するために侵攻したレバノンで、レバノンの極右勢力に対するパレスチナ解放勢力の勝利の直前にシリア軍が介入して、パレスチナ解放勢力を攻撃し、極右勢力によるパレスチナ難民虐殺を容認した。これを見たサウジなどの反動的湾岸諸国は、シリアに経済援助を与える決定をした。【また、アサド政権は、反米≠フ看板にもかかわらず199
1年の湾岸戦争を支持している】
 74〜75年世界恐慌の影響下で、76年に経済危機を迎えたシリアは、ますます新自由主義政策にのめりこんでいく。決定的なのは、1986年の為替危機に際し、「経済多元化宣言」を行い、投資の自由化、価格統制の緩和、補助金の廃止、外国貿易・為替相場の自由化に踏み切り、さらに1991年、新規投資への免税措置を法律化した。
 21世紀初頭の世界大恐慌切迫情勢の中で、新自由主義政策の強行を決定的な段階に押し上げたのが、現政権であった。その結果が、シリア人民の3分の1が、生存ライン以下の生活を強いられ、20%を超える失業率に苦しめられ、農民が土地から追い出されているという現実である。
(写真 シリア北西部のイドリブに集まった、バシャール=アル=アサド政権に反対するデモ参加者ら【4月13日】)

 □スターリン主義の決定的な裏切り

 アサド政権の政治的基盤をなしていたバース党は、そもそもロシア革命の影響下で社会主義を掲げ、中東における民族解放闘争の生成・高揚の中で生まれた。
 第2次世界大戦後、中東の人民は、アジアにおける民族解放闘争の勝利と呼応し、英仏帝国主義の支配を、人民の蜂起をもって崩壊させていった。その旗印となったのが、〈アラブ社会主義〉であった。戦中からの反仏蜂起で勝利し、1946年独立をかちとったシリア、そして52年に王政を打倒したエジプトは、ともに反植民地主義の旗手として、〈アラブ社会主義〉を掲げた。しかし、その実体は軍事独裁政権が、経済(産業・貿易・金融)の管制高地を、国有化の名の下に独占的に掌握し、労働者・農民を強権的に包摂していこうという抑圧体制であった。とりわけ、シリア・レバノン・イラク(大シリア≠ニ呼ばれる)にわたって勢力を持っていたバース党は、マルクス主義を唱える部分をかかえこんだ政党で、中東全域の〈アラブ社会主義〉への統合を主張し、ナセルのエジプトとともに、〈アラブ連合共和国〉(58〜61年)を結成する。しかし、この〈アラブ社会主義〉は、帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制を、労働者人民の自己解放の闘いで革命的に転覆する運動ではなく、国際政治の力関係の中でバランスをとって、結局は新植民地主義体制の内部で生き延びていこうという新興ブルジョアジーの軍事独裁体制の運動・国家であった。なぜ、そうなったのか。
 激動する戦後の中東情勢に、決定的なくさびを打ち込み、民族解放闘争を混乱させたのが、アメリカ帝国主義主導の「パレスチナ分割=イスラエル建国」とソ連スターリン主義によるその承認であった。米帝は、石油資源の決定的心臓部を、旧宗主国勢力=英仏帝国主義から奪い取り、同時に中東全域の民族解放闘争の分断を強行しようと、戦後まもなく1947年、中東のど真ん中に、軍事国家イスラエルをシオニストの軍事力でデッチあげ、パレスチナ人民を海外に追放したのである。第2次世界大戦で「反ファシズム」の名目で、米英帝国主義に加担したソ連スターリン主義は、戦後世界の分割でも米帝と協議して、帝国主義諸国の戦後革命、そして植民地諸国の民族解放闘争を裏切っていったのである。このソ連によるイラエル承認は、パレスチナ人民への背信行為、民族解放闘争の裏切りとして、中東における共産党の権威を破壊した。
 ソ連スターリン主義は、中東各国の共産党に「二段階革命戦略」を強制し、民族解放闘争が帝国主義打倒の世界革命に発展することを、全力で阻止しようとした。その結果、各国の共産党は、「植民地主義反対」をかかげる軍事独裁政権と協調することを路線とし、労働者人民の闘いを裏切っていったのである。
 ソ連は1956年、エジプトのナセル政権が、スエズ運河国有化を宣言した機会をとらえ、協力の手を差し伸べた。ナセルが、反共主義を掲げ、大量の共産党員を獄中に幽閉し、また土地を求める農民の運動を圧殺していることを容認したのである。
 ソ連スターリン主義崩壊を前後してのイスラム勢力の登場は、こうしたスターリン主義による民族解放闘争の裏切りから生じた空間を埋めるものとしてあった。

 □シリア反乱の未来を切り開く労働者人民

 西アジア・北アフリカの心臓部分におけるシリア反乱は、アサド政権の新自由主義的圧政にたいする全労働者・農民・人民の積年の怒りがついに爆発したものである。この闘いが、中東=西アジア・北アフリカを始めとするプロレタリア世界革命の勝利へ向けて前進するカギは、国境、民族、宗教を越えた階級的団結の回復と強化である。米帝や反動的中東諸国の承認・庇護、さらに武器援助によって、「ポスト・サダト」を狙っている「シリア国民評議会」や「自由シリア軍」ではなく、1年にわたるアサド政権の人民せん滅的な攻撃に抗して、職場で、学園で、地域で、そして街頭で、「アサド政権打倒でシリア人民は一つになっている」というスローガンを掲げて闘い続けている労働者・農民・人民こそが、全世界で新自由主義攻撃と闘っている労働者人民とともに、帝国主義を打倒して、未来を切り開くのだ。
 (川武信夫)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(430号2-3)(2012/06/01)

News&Reviw

■News & Review アフガニスタン

駐留米兵が夜襲し村人16人を虐殺

一打逆転へ「精鋭部隊」送り込んだ米軍

 アフガニスタン侵略戦争を続行する米軍は、今年に入ってから三つの重大な犯罪を起している。1月11日には、米海兵隊員4人が、タリバン戦闘員の遺体に放尿する場面を撮影した映像がインターネット上に流出する事件が起きた。1月20日に東部で、アフガン国軍兵士が銃を乱射し国際治安支援部隊(ISAF)のフランス軍兵士4人を射殺する事件が起きたが、乱射した兵士は、この遺体への放尿映像を見て決断したと供述しているという。
 2月20日には首都カブール北方のバグラム米空軍基地で、米兵らがコーランを含むイスラム教関連書籍を焼却しているのを基地で働くアフガン人労働者が目撃、焼却を止めさせ、燃えたコーランを手に基地外に飛び出し、兵士らの行為を非難した。
 イスラム教の聖典コーラン焼却に抗議する住民のデモがアフガン各地に広がった。24日もイスラム教の金曜礼拝後に抗議デモが起こり、首都カブールと西部ヘラートなどで少なくとも計10人が死亡した。米帝はオバマ大統領までが謝罪を表明したが沈静化の兆しは見えない。デモは4日連続。地元報道によると、24日までに住民ら30人近くが死亡した。
 23日には、東部ナンガルハル州でデモに加わっていたアフガン国軍兵が、ISAFの兵士に向けて発砲、米兵2人が死亡した。反政府武装勢力タリバンはこの日、コーラン焼却への報復として、駐留外国軍を攻撃するようアフガン国民らに呼び掛ける声明を出していた。25日には厳重な警戒にある内務省で米軍顧問2人が射殺された。タリバンが戦闘声明を発表している。
(写真 アフガニスタン東部のジャララバードで行われた反米デモで、星条旗を燃やす抗議者たち【2月24日】)

 □米兵が住民16人を虐殺

 コーラン焼却に対する抗議デモが続く3月11日には、南部カンダハル州で駐留米兵が基地から武器と暗視装置を持って外出し、民家3軒で銃を乱射し、子ども9人と女性3人を含む計16人を虐殺した。米兵は戻ってきたところを、無言のまま拘束されたという。
 この米兵はロバート・ベイルズという38歳の陸軍2等軍曹だった。
 オバマや米軍部は、ベイルズの行為は「アメリカ軍の価値観や態度を反映しているわけではない」とする公式声明を出した。ベイルズは例外だというのだ。
 このアメリカの公式声明に対して、アフガニスタンの村人やカルザイ大統領と国会下院が設置した調査委員会は、この虐殺は、単独の殺し屋の仕業ではなく、15人から20人もの米軍兵士によるものだと非難している。10年に及ぶイラク・アフガニスタン侵略戦争の中で日常茶飯事に起きた住民虐殺の一例だと弾劾している。
 アフガニスタン国会の調査員たちによれば、米軍は、タリバンによる数人の兵士を負傷させた爆弾戦闘に対する報復をするぞと警告していたと村人たちは証言している。

 □米軍の夜襲作戦

 アフガニスタン南部の住民にとって、今回のようなことは日常茶飯事のことだった。「アフガニスタン侵略戦争はオバマの戦争」と言われるが、オバマの米軍が最も多く実施している戦術が、夜襲だった。オバマは大統領就任以後、アフガニスタン侵略戦争を拡大し、大規模な兵力の増強を図ってきた。
 米軍は数万の海兵隊や特殊部隊を集中して南部の多くの村を占領し、タリバンを殺し、追い払うが、夕方には反撃を恐れて安全な基地に籠る。タリバンは夜になると村に戻り、村民と話し合い、村民が求めるもめごとや犯罪者の即決裁判をしたりして朝まで滞在することが多い。
 このため、米軍は、村や町を夜襲して、タリバンかもしれない男たちを捕まえ、少しでも抵抗すれば直ちに射殺する。村民は米軍の命令で夜は外出を禁じられ、モスクに祈りに行くこともできない。家の扉を厳重に閉ざしているが、米軍の夜襲の際には、扉を開けないと米軍は扉を破壊し、侵入して家人を拘束、家の中を滅茶苦茶にしてタリバン捜索をする。このため、今回の事件でも、襲われた家々では夜襲の時と同じように扉を開けたため、犯人は家々に侵入し、子どもや女性たちを射殺した。
 事件後、現場のパンジュワイ村に入った英BBCのアフガン人記者も、多くの村民は、犯人の単独犯行ではなく、米軍部隊の夜襲だったのではないかと疑っていると話している。ある女性は、午前2時ごろヘリコプターの轟音で起こされ、間もなく銃撃が始まり、1時間後に銃撃が鎮まったので、近くに住む兄弟の家に行くと、その一家の遺体が燃やされており、助けを求めて叫んだという。
 カルザイ大統領は、アフガン駐留米軍司令官に対して夜襲をやめるよう、再三、要請している。しかし米軍は一向に夜襲をやめない。米軍にとっては夜襲だけしかない。
 アフガニスタン人民が最も嫌悪し、憎悪する戦術にすがるしかないのは、まさに末期症状だ。
 オバマは、現在9万人の駐留米軍の大部分を2013年末までに撤退させると表明し、11年7月から部分的な撤退を開始しているが、今回の事件によって撤退を加速させることはないと発言した。米軍首脳部は、最後の大攻勢でタリバンに致命的な打撃を与えるため、精鋭の特殊部隊を増強中で、米軍撤退を急がないよう、大統領に強い圧力を掛けている。
 オバマ政権と米軍は、米軍・NATO軍に代わる40万人規模のアフガン国軍・警察の育成を達成しよう焦っている。しかし、BBCが2月に報じた英軍の秘密報告によると、国軍と警察の中にはタリバンと通じる兵士が増えつつある。コーラン焼却事件の後、米軍兵士6人以上が、タリバンに通じた国軍兵士と警察官によって殺された。

 □ベイルズ2等軍曹

 3月11日の虐殺の犯人とされたロバート・ベイルズは、01年9・11の反米ゲリラ戦争から数週間のうちに陸軍に入隊した。ITバブル崩壊後の株式市場の低迷で、短期間の投資家という職を辞めた後でもあった。
 ベイルズ2等軍曹は中西部オハイオ州で育ち、高校時代はアメリカンフットボールの有力選手として鳴らした。友人は「評判も良く正しいことを実行しようとする男だった」と話している。
 陸軍に入隊後、3度にわたりイラクに派遣され、戦闘中でも冷静に行動する模範的兵士として評価されていた。
 しかし、車両の横転事故などで2度負傷。軍隊内の昇進にも失敗した。次の赴任先としてドイツやハワイの基地を希望したが、4度目の戦地となるアフガン行きを命じられた時には「深く失望していた」(友人)。妻も離ればなれの生活を終わらせたいと望んでいたという。
 経済的困難にも直面。事件直前に西部ワシントン州の自宅を売りに出したところだった。ワシントン・ポスト紙などによると、夫を送り出した家族は請求の支払いや2人の子どもの養育に苦労の連続だったという。
 担当するブラウン弁護士は以下のように語っている。
 「彼はイラクで負傷した際に外傷性脳損傷(TBI)を患っており、彼が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていたのかどうかが、裁判になった際に重要問題になるだろう」
 「3月11日の事件の前日、基地の近くで、米軍の小隊が地雷に接触するという事件があった。特に戦友が足を吹き飛ばされたシーンを目撃したことが、自身の片足切断に至る最初の負傷、また車両横転と爆風に晒された2度目の負傷と重なる中で、精神的に激しく動揺して事件に至った」という可能性である。事件に関するベイルズの記憶はショックで失われている。
 ベイルズのこの状態は、アメリカ全員志願兵′Rに所属する何十万人もの兵士が、イラクとアフガニスタンで、10年間も、同時並行する戦争を戦った後に直面している状態を示している。米軍兵士たちは死ぬまでこき使われ、あげく使い捨てにされているのだ。
 米軍は昨年7月にアフガニスタンからの撤退を開始した。確かに兵員数は減少したが、精鋭部隊を送り込んで、一打逆転を狙っている。
 ところがその精鋭部隊の実体がベイルズ2等軍曹であった。肉体的にも精神的にもボロボロに疲弊しつくしていたベイルズを戦場に送った。米帝は、イラクやアフガニスタン人民に対するのと同じく米軍兵士をも人間扱いしていないのだ。
 タリバン兵の遺体に対する放尿事件、コーラン焼却事件、そして子ども9人を含む16人の住民虐殺は米軍と米帝の末期症状であり、新自由主義の侵略戦争の大破産を示している。

 □新自由主義の侵略戦争

 根底には米帝の侵略戦争、とりわけ新自由主義の侵略戦争という問題がある。
 米帝ブッシュは、「対テロ戦争」を宣言し、アフガニスタン侵略戦争に突入した。
 次にブッシュは、イラクのフセインが「大量破壊兵器を隠し持っている」とデッチあげて03年3月、イラク侵略戦争に突進した。しかしイラクには大量破壊兵器などなかった。ブッシュ政権中枢の全世界を巻き込んだ詐欺行為に基づく侵略戦争だった。
 イラク侵略戦争とは最末期帝国主義の絶望的延命をかけた新自由主義の戦争だった。新自由主義による民営化攻撃が行き着いた社会的腐敗の極致として、軍隊と戦争までが民営化され、営利目的になり「戦争ビジネス」が誕生し、恐慌下・大不況下での金融資本と軍事産業の莫大な金儲けの手段になっていた。戦争それ自身がビジネス、営利事業となったのだ。
 帝国主義者が侵略戦争に動員する時に使う、「国のため」「国民のため」という美辞麗句がはぎ取られ、戦争は「企業の金儲けのため」ということが恥ずかしげもなく国家(政府)によって公言されるに至ったのだ。つまり金のために公然と他国に押し入り、国土を破壊し、人殺しをやるということだ。これでは自分が強盗であることを宣言するに等しい。これでは戦争に正義も大義も人道もないことを自認するものである。兵士は何のために戦争をするのか、人を殺すのか。兵士の前にいるのはイラクの労働者人民なのだ。労働者の兄弟なのだ。納得できるわけがない。だから数十万人の兵士がPTSDに苦しんでいる。こんな戦争が長続きするわけがないのだ。米陸軍は疲弊の極に達して半ば崩壊したのだ。これが新自由主義のイラク・アフガニスタン侵略戦争だった。

 □数百人がPTSDの診断を覆される

 さらに米帝が米兵を人間扱いしていない事例が明らかになった。
 米陸軍のマクヒュー長官は3月21日、上院の公聴会に出席し、軍の精神医療施設が、治療費を考慮した診断を行うことがないよう調査を開始したことを明らかにした。
 同調査は、PTSDと診断されて治療を受けていた兵士数百人が、その後にワシントン州にある施設で診断を覆されていたことが判明したのを受けてのものだ。
 ある精神科医がシアトル・タイムズ紙に語ったところによると、けがや病気などが原因で退役した兵士1人当たり、150万j(約1億2500万円)の税金がかかるという。節約のためにPTSDの診断を取り消したのではないかというのだ。イラクやアフガニスタンで従軍したことのある兵士200万人以上のうち、約20%がPTSDを患っている可能性があり、40億〜62億jの治療費がかかるが、少しでも節約しようというのだ。
 戦場から生きて帰ってきた兵士がこうした取り扱いを受けている。軍需産業のためには数兆円もの利益を保障しながら負傷米兵からは医療をも奪うのだ。
 新自由主義の侵略戦争に対しては、イラク・アフガニスタンの労働者人民、そして米国の労働者人民、全世界の労働者人民が反対し、全世界で反戦闘争が巻き起こった。この波は、今日ではエジプト革命を皮切りにヨーロッパへ、アジア、アメリカ、全世界に革命の渦となって波及している。
 (宇和島 洋)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(430号A-1)(2012/06/01)

編集後記

■編集後記

 脱落日帝と野田政権は、大恐慌と原発事故から逃れられない。だから消費大増税、原発再稼働、そして戦争・改憲攻撃で突破しようとあがいている。しかし日帝には、帝国主義日本を再生する力がもはやない。
 3・11郡山での原発いらない∞再稼働やめろ≠フ1万6千人決起と全国各地での10万人決起は、労働組合と労働運動をめぐる闘いを基礎とした反原発闘争の歴史的高揚であり、巨大なうねりであった。
 国労郡山工場支部は国鉄を始め全国の仲間に、「労働組合と市民がひとつとなり、開成山公園に2万人が集まれば、政府・東電に責任を取らせる闘いや、原発をとめる闘いの大きな力になっていくはずです。組合旗を掲げて開成山球場に結集してください」とアピールを発した。この決意をさらに実践し発展させて4〜6月決戦を闘おう。

------------------------TOPへ---------------------------