International Lavor Movement 2011/03/01(No.415 p48)

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2011/03/01発行 No.415

定価 315円(本体価格300円+税)


第415号の目次

表紙の画像

表紙の写真 チュニジア革命に決起した労働者(1月14日 チュニス)

■羅針盤   菅改造内閣の危機と超反動 記事を読む
■News & Review 韓国
 年頭から激化する非正規職労働者の闘い
 弘益大が170人を解雇、占拠座り込みで闘う
記事を読む
■News & Review 中国
 急激なインフレ、暴動相次ぐ
 労働者階級の総反乱は必至の情勢
記事を読む
■News & Review 日本
 対中国戦争構えた新「防衛計画の大綱」
 沖縄とその島しょ部が自衛隊の最前線基地に
記事を読む
■特集 闘う春闘取り戻し青年部運動復権を  
■翻訳資料
 ウィキリークスが暴露した米軍秘密情報
 鵜川遊作 訳
 
■Photo News  
■世界経済の焦点
 外注化の推移と攻撃の狙い   JR・NTTが突破口/非正規職化の手段に
 
■世界の労働組合 イギリス編
 全英教員組合(National Union of Teachers:NUT)
 
■国際労働運動の暦 3月12日
 ■1984年イギリス炭鉱スト■   サッチャー改革と激突
 閉山・首切りにNUM(炭鉱労働者組合)が1年にわたるストを貫徹
 
■日誌 2010  
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 不当解雇を提訴した日航労働者(1月19日 東京)

月刊『国際労働運動』(415号1-1)(2011/03/01)

羅針盤

 ■羅針盤

 菅改造内閣の危機と超反動

▼1月14日、菅第2次改造内閣が発足した。これは日本経団連・米倉会長が全面支持を表明するように、大失業と戦争、消費大増税、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加を推進する超反動内閣だ。今まで口をきわめて民主党をののしってきた「たちあがれ日本」の与謝野を、経済財政担当相に据えた。経済産業相は、TPP推進派の海江田に替えた。また中野寛成に国家公安委員会委員長と公務員制度改革担当相を兼任させた。
▼そして11・23の朝鮮侵略戦争切迫情勢を受けた、「日米同盟の深化」による戦争政策である。昨年来の米・日・韓による軍事演習は、米軍の北朝鮮侵略戦争のシナリオ=「作戦計画5030」の発動だ。新年早々、前原外相が訪米しクリントン国務長官と会談、北沢防衛相も訪日したゲーツ国防長官と会談し、日米の共通戦略目標の見直しや朝鮮侵略戦争への臨戦態勢形成に向け「日米同盟の深化」を確認している。1月10日にはソウルでの日韓防衛相会談で、ACSA(物品役務相互提供協定)の締結交渉とGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の協議開始を確認した。
▼こうして日帝自身が、すさまじい戦争的反動的な突出を開始し、1月19日には朝鮮半島有事を想定した「周辺事態」において自衛隊による米軍支援を拡充する必要があるとして周辺事態法の改定の検討を表明し、今秋にも法案を国会に提出しようとしている。出口のない危機ゆえの凶暴化だ。菅は、ただただ日帝ブルジョアジーと日米同盟にすがりつき、労働者階級を圧殺し、どこまでも大失業・戦争の攻撃を激化させることで自己の延命をはかるという、まさに最悪のボナパルティスト政権としての姿をあらわにしている。

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月刊『国際労働運動』(415号2-1)(2011/03/01)

■News & Review 韓国

年頭から激化する非正規職労働者の闘い

弘益大が170人を解雇、占拠座り込みで闘う

 2011年も非正規職労働者と資本をめぐる攻防は激しく展開している。新年冒頭、1月1日に弘益大で働く約170人の清掃、警備、施設労働者が集団で解雇されるという事態が起きた。1月2日の朝、弘益大当局が解雇を通知したのだ。しかも何の説明さえもなしにだ。当局は「業者の契約放棄が主な原因」と言ったが、労働者は「当局が無理な契約条件を出して、契約放棄を誘導した」と言っている。労働者たちは3日朝から総長との面談を要求して本館6階で、占拠座り込みを開始した。
 弘益大清掃、警備、施設労働者は12月2日労働組合を結成した。公共労組ソウル京畿支部の弘益大分会だ。170人の労働者のうち、140人が労組に加入した。「学校側は、労組出帆式も学校の中でするなと妨害し、組合員を大量解雇しても労組との会話そのものを拒否しようとしている」とソウル京畿支部は主張した。
 問題は高齢の労働者の生計問題だ。長い人で10年も勤務してきた労働者らは50〜60歳を超える年齢層だ。大学当局は業者との再契約が不成立したことへの対策さえ行わず、代替人員を投入した。当局は、大学に直接雇用されていない非正規職という理由から、労働者との対話を拒否している。
 法定最低賃金は約86万ウォンだが、弘益大清掃労働者は夜明けに家を出て、朝の7時頃から午後4〜6時頃まで、長ければ11時間も働いて、受け取るのは75万ウォンだ。食事代は1日なんと300ウォンだ。公共労組ソウル京畿支部のパクミョンソク支部長は「学校当局は労組が賃金 70%の値上げを提示し契約が成立しなかったと言うが、分会が要求した時給は5180ウォンで、支部の所属する大学と同じ要求だった」と主張した。大学当局は代替労働者を清掃は日当6万5000ウォンほどで、警備は8、9万ウォン、時給8000ウォンで雇い投入している。これまでの清掃労働者の時給は3200ウォンだった。  法定最低賃金は約86万ウォンだが、弘益大清掃労働者は夜明けに家を出て、朝の7時頃から午後4〜6時頃まで、長ければ11時間も働いて、受け取るのは75万ウォンだ。食事代は1日なんと300ウォンだ。公共労組ソウル京畿支部のパクミョンソク支部長は「学校当局は労組が賃金 70%の値上げを提示し契約が成立しなかったと言うが、分会が要求した時給は5180ウォンで、支部の所属する大学と同じ要求だった」と主張した。大学当局は代替労働者を清掃は日当6万5000ウォンほどで、警備は8、9万ウォン、時給8000ウォンで雇い投入している。これまでの清掃労働者の時給は3200ウォンだった。
 1月6日午後、弘益大本館前に多くの連帯団体が集まって集団解雇第1次糾弾大会≠ェ開かれた。大学当局と総学生会は労働者の座り込みが民主労総という外部勢力によるものだと言って、総学生会執行部の学生が会場に押しかけたが、参加者が抗議した。総学生会は当局の主張をそのまま言っているだけだ。総学生会を批判する学生も多い。
 11日午後4時、正門前で集団解雇2次ソウル京畿支部全組合員集会≠ェ開かれ、雪と冷たい風の中、約1000人が弘益大清掃労働者との連帯のために集まった。各単科大学生会は連帯し、弘益大サポーター≠ェ労働者の座り込みに参加して当局に対策を要求している。集会は2時間以上続き、弘益大分会のほか、同徳女子大、徳星女子大、高麗大、延世大、誠信女子大、梨花女子大分会などと進歩政党、社会団体の会員らが連帯した。連帯と支持の訪問に、イスッキ弘益大分会長は「ありがたく感謝します。最近になって団結すれば生き、散れば死ぬという言葉が胸に迫る。皆さんと勝利の日まで闘争していく」と応えた。
 15日間の座り込みを続けてきた公共労組ソウル京畿支部は、1月17日、弘益大本館前で記者会見を行った。支部は雇用の継承と労組の認定を要求しているが、当局が労組幹部の告訴告発と一方的な用役従事者選定を進めている。業者選定入札会を行う前日の11 日、当局は、労組幹部5人とイスッキ分会長ら6人を業務妨害、建造物侵入、総長監禁などを理由に挙げ告訴告発した。労組は「学校が労組を瓦解させる長期的な闘いを誘導している」と批判した。19日には第3次の大会を開く。  15日間の座り込みを続けてきた公共労組ソウル京畿支部は、1月17日、弘益大本館前で記者会見を行った。支部は雇用の継承と労組の認定を要求しているが、当局が労組幹部の告訴告発と一方的な用役従事者選定を進めている。業者選定入札会を行う前日の11 日、当局は、労組幹部5人とイスッキ分会長ら6人を業務妨害、建造物侵入、総長監禁などを理由に挙げ告訴告発した。労組は「学校が労組を瓦解させる長期的な闘いを誘導している」と批判した。19日には第3次の大会を開く。
(写真 全員解雇の撤回求め本館で占拠座り込む弘益大の清掃労働者【1月3日】)

  □全北バスのストライキ

 前号で報道した全北バスストライキ闘争は、1月8日全州市庁前で民主労組死守、バス事業主拘束、バス全面ストライキ勝利のための全北地域総力決意大会≠開き、約1000人が集まった。幟を掲げて全北高速までデモ行進をし、棺を燃やす象徴儀式をした後、整理集会を開いた。インタビューでキムソンヨン組合員は「バス労働者のストライキが世の中を変えているということを全身で感じている」と話した。バス労働者たちは微塵の動揺も見せず闘いを続けている。
 13日午後4時半、ソウル地方雇用労働庁前に、ソウル大分会、弘益大分会、全北バス労組など約150人の労働者が集まった。
 労働庁がソウル大病院分会とソウル大病院との間の団体協約に、不当な是正勧告をしたことに抗議するためだ。五つの勧告条項中四つが労組活動に関して違法だというのだ。キムエラン医療連帯ソウル地域支部長始め労組側は「組合幹部の組合活動、交渉委員活動もタイムオフ限度と専従者活動に関するもので、労組が自主的に決め、使用者と自主的な協約で決めればよい」と抗議した。公共運輸労組準備委(仮)も労働庁に抗議を続けてきたが、労働庁は強制是正命令を施行するという立場を繰り返している。
 全北バス労働者も弘益大分会の労働者もこのソウル大分会への労組弾圧が他人事ではないと考えている。彼ら公共部門労組への弾圧が新年早々から始まっているからだ。

  □正規職化元年を宣言

 現代自動車非正規職支会は、1月5日午後5時半、現代自動車ウルサン工場本館前で不法派遣正規職化元年宣布決意大会≠開き、「20
11年は、現代自動車不法派遣撤廃と正規職化の元年にする」 と宣言した。「私たちの闘争は終わっていない。この闘争は正規職化争奪の日まで続く」「労働者の仲間たちの目はまだ輝いていて、現場の力は生きている」。そして新たに選出された代議員たちが決意を明らかにした。 11年は、現代自動車不法派遣撤廃と正規職化の元年にする」 と宣言した。「私たちの闘争は終わっていない。この闘争は正規職化争奪の日まで続く」「労働者の仲間たちの目はまだ輝いていて、現場の力は生きている」。そして新たに選出された代議員たちが決意を明らかにした。
 現代車非正規支会は、18日から組合員教育を行っている。18日はウルサン第1工場の夜間組、19日は第2工場の夜間組に教育を進めた。資料の中で「25日間の工場占拠ストライキ闘争は、支会が独自に現代車の生産に打撃を与えられることを確認し、闘争目標が明確なら闘争力が高まることを確認し、労組の自主性がいかに重要であるかを確認した」と評価した。
 パクソンナク代議員は「すべての社内下請を正規職化しろ≠ニいう8項目の要求を掲げて、第2次ストを準備しなければならない」「闘争は終わっていない。何の合意書も書いていない。2次ストライキは、労組の自主性を失ってはならない。これ以上(正規職)支部の思うままにさせてはいけない。正規職化の旗を掲げ、支会を中心に闘争を展開し現代車と勝負しよう」と話した。
 今年もGMデウ非正規職闘争は続いている。高空ろう城36日目、支会長断食突入17日目を迎えた1月5日、インチョン地域対策委員会は、新年闘争計画を宣布した。非正規職支会の継続的な交渉要求を拒否している使用者側を相手に強度の闘争を展開する計画だ。使用者側の選別的復職案を粉砕して、全員復職するまで闘い続けるのだ。「1月13日にはGMデウ車周辺で車両デモを行い、22日には富平駅で全国労働者大会を開く」予定だ。
 労組に加入したという理由で教師への契約を中止している才能教育社に対し、3年以上も闘争を続ける労働者らとの連帯闘争が行われた。
 民主労総ソウル本部、民主労働党とサービス連盟、進歩新党などが構成する才能闘争勝利、特殊雇用労働者労働基本権争奪のための京道対策委員会≠ヘ12月21日、才能教育本社前で記者会見を開き、才能教育社への不買運動を大々的に組織していくと明らかにした。ソウル大、梨花大、延世大初め40あまりの大学の470人あまりが参加している悪質資本・才能教育、入社拒否¥趨シ運動もさらに進めていく。夜7時からソウル市庁前の座り込み場で「才能闘争3年! 勝利のための闘争文化祭と送年の夜」を開いて勝利を誓った。

 □韓進重工業の闘い

 前年から攻防が続いていた韓進重工業との労働者の闘いは、ついに韓進重工業が1月 12日、労働部に290人の整理解雇を申告し、解雇通知を断行した。  前年から攻防が続いていた韓進重工業との労働者の闘いは、ついに韓進重工業が1月 12日、労働部に290人の整理解雇を申告し、解雇通知を断行した。
 民主労総釜山本部、金属労組釜梁支部、韓進重工業支会は当日午後記者会見し、「 整理解雇撤回」を要求して午後7時半に85号ジブクレーンの下で釜山梁山支部主催のキャンドル集会を開催した。1 週間前から85号クレーンに高空ろう城する釜山本部キムジンスク指導委員は、電話で組合員を激励し、団結して闘争するように訴えた。韓進重工業支会のチェウヨン事務長は「1月4日と5日の交渉で、支会は整理解雇を撤回すれば苦痛分担を受容すると言ったが、韓進資本は整理解雇の方針を曲げなかった。だが昨夜用役チンピラ400人がソウルを出発したという知らせで、全組合員を非常待機させた。未明に全組合員が正門に集まったので、驚いた会社側は用役を送り返した」「全組合員が生活館を死守し、48時間、組合員総団結闘争プログラムを進めている。これをとおして共同体意識を強める」と話した。  民主労総釜山本部、金属労組釜梁支部、韓進重工業支会は当日午後記者会見し、「 整理解雇撤回」を要求して午後7時半に85号ジブクレーンの下で釜山梁山支部主催のキャンドル集会を開催した。1 週間前から85号クレーンに高空ろう城する釜山本部キムジンスク指導委員は、電話で組合員を激励し、団結して闘争するように訴えた。韓進重工業支会のチェウヨン事務長は「1月4日と5日の交渉で、支会は整理解雇を撤回すれば苦痛分担を受容すると言ったが、韓進資本は整理解雇の方針を曲げなかった。だが昨夜用役チンピラ400人がソウルを出発したという知らせで、全組合員を非常待機させた。未明に全組合員が正門に集まったので、驚いた会社側は用役を送り返した」「全組合員が生活館を死守し、48時間、組合員総団結闘争プログラムを進めている。これをとおして共同体意識を強める」と話した。
 決意大会で金属労組ヤンドギュン副委員長は「11年の金属労組の闘争は韓進重工業から断固として始める。資本がいくら弾圧してもたった一人の解雇者もつくらないという覚悟と決意をしている。85号クレーンにろう城している死守隊の仲間と共に、キムジンスク指導委員を笑って出迎えるまで闘争する」と決意を表明した。韓進重工業支会のチャンガニン組合員は現場発言を申請して「私は入社して5年目だ。整理解雇が恐いが先輩たちを必ず守る。先輩たちも私たちを守ってくれ。この一言を言うために出てきた」と闘争を決意した。
 韓進重工業支会は12日、全面ストライキ指針を発表し、「全組合員は一緒に暮らそう≠ニいう闘争指針により現場に投入しないで全組合員は生活館で徹夜座り込み」を続けることにした。また、平日は85号クレーンの下で午後7時半にキャンドル集会を続け、14日には釜山市民対策委主催のキャンドル集会、19日には金属労組主催の全国金属労働者決意大会を開く予定も同時に発表した。

 □全国解雇労働者大会

  昨年12月13日、ヨイド国民銀行前で全国解雇労働者大会が1500人の解雇労働者を結集して開かれた。全国解雇者復職闘争委員会キムウニョン委員長は「本日の解雇労働者大会は、すべての解雇労働者の解雇撤回のための闘争をつくる場」と述べ、「いつも言葉だけだった共同闘争ではなく、実質的に共同闘争をつくっていく組織を構成して決意を表明する場、単一の解雇撤回闘争をつくろう」と力強く提案した。
 公務員労組のヤンソンユン委員長、民主労総のチョンウィホン首席副委員長も発言した。解雇者復職と非正規職正規職化を要求して座り込み闘争を続けているGMデウ非正規支会のシンヒョンチャン支会長も壇上に立った。学習誌労組解複闘のファンチャンフン委員長は才能教育を弾劾し、「解雇者全員が復職するまで力強く闘う」と表明した。
 この日の決意大会で△解雇労働者全国共同闘争委員会の拡大構成、△解雇者組合員の資格剥奪と民主労組弾圧への報復、△未組織、零細事業場解雇労働者の原職復帰闘争の支援と連帯、整理解雇、非正規職労働者と共同闘争のための連帯闘争の組織、△全体労働者次元の各撤廃闘争拡大を決意した。
 米帝の朝鮮侵略戦争情勢下で、韓国の労働者は非正規職労働者の闘争中心に激しく闘われている。他方でサムソン電子の労働者が「ストレスによるノイローゼ」から、寄宿舎の13階から飛び降り自殺をし、サンヨン自動車を希望退職した労働者も自殺している。労働者階級の闘いだけが世の中を変えられる、闘わなければ逆に殺されてしまうのだ。
 「戦争はまさにここウルサンで戦われている」と言った労働者の言葉どおり、労働者は闘っているのであり、11年冒頭から闘いは止むことなく年を次いで闘われている。国鉄1047名解雇撤回全国運動と、外注化阻止の闘いがこれに連帯するただ一つの闘いだ。動労千葉を先頭に2011年の闘いに勝利しよう。

  (本木明信)

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月刊『国際労働運動』(415号2-2)(2011/03/01)

■News & Review 中国

急激なインフレ、暴動相次ぐ

労働者階級の総反乱は必至の情勢

 □全国で頻発、住居、宅地、農地の強制収用

 今、中国各地で土地の強制収用が行われ、多くの労働者や農民、住民が住む家や宅地、農地を奪われる事態が、都市部や農村部を問わず異常なほど頻発している。
 労働者が仕事から帰ってきたら家が取り壊されて瓦礫の山になっていたり、保育園に突然ユンボが来て建物をぶち壊し始めたり、労働者の集合住宅が事前の話もないままにぶっつぶされてプレハブの宿舎に強制的に移住させられたり、農村では作物が植えてある農地が突然収用されたりしている。日常的に全国で行われている。抵抗すれば、すぐに逮捕である。
 また、大きな労働災害問題になっている塵肺症の労働者(多くは炭鉱労働者)が集中している住居地域を突然接収し、病気とその補償を政府と企業に訴えている労働者をその地域からたたき出すなど、明確な政治的目的を持って行われているところもある。
 中国はスターリン主義体制であり、その暴力的な支配体制を背景に、国家(中央と地方の行政権力)による労働者や農民の家屋・土地の収奪が横行している。
 そして昨年12月25日のクリスマスに、中国政府を揺るがす大事件が起きた。
 工場団地建設に伴う土地の収奪に反対していた浙江省楽清市蒲岐鎮塞橋村の村長・銭雲会さんが、数人の警察官に路上に押さえつけられ、工事用車両と言われる車に残忍にひき殺されたとされる事件が起きたのである。そしてその後、銭さんの家族や、事件を目撃した村民たちが「些細なことを口実にして」、次々と警察に逮捕された。
 公安当局はただちに単なる「交通事故」との見解を発表した。だが、銭さんは警察によって惨殺された≠ニの声が広がり、中国の一部マスコミも警察の発表に疑問を提示した。
 銭雲会さんは、1957年生まれの生粋の農民であり、「大躍進」政策期の大災害に耐え抜き、10年間の文革の嵐も生き抜いて、黙々と土地を耕して生活してきた。$粕N前に自分の村の土地が強制収用されることを知って以降、村人とともに6年間にわたって上訴を繰り返し、上訴しては逮捕され、投獄され、有罪とされる日々の連続であったという。
 村人たちの熱い支持を受けて村長となり、強制収用に先頭で反対して闘ってきた。またすでに奪われてしまった土地の農民への正当な補償も要求していた。こうした中でこの事件は起きた。
 車による轢殺の事件現場写真は、その残酷さが怒りをかった。また目撃者の逮捕は明らかに警察による権力犯罪の証拠抹殺である。事件後、村には警察官が部隊で配備され、村人たちは監視下におかれている。
 しかし1月1日、銭雲会さんが死んだ7日目には、村人たち数百人が銭雲会さんの小さな家の前に集まり、権力へ強い抗議の意志を示した。今も激しい抗議が全国で続いており、今年に入って警察発表に異議を唱える民間の事件調査書も作成されている。1月以降も全国で続いている労働者や農民の家や土地の強制収用に反対する各地の闘いのシンボルとなっている。
(写真 強制収用され排除された住民【12月17日】)

 □投機資本の流入で過熱するバブル、インフレ

 なぜ、今中国でこうした労働者や農民への強制収用が頻発しているのか?
 それは世界が大恐慌へと突入し、世界経済が停滞する中で、バブルにある中国に膨大な投機資金が流れ込み、それがさらにバブル経済を過熱させ、中央政府や地方政府による乱開発が一挙に拡大しているからである。バブルが崩壊の危機にあるからこそ、それを維持するためにもますます過熱している。それが都市部においても農村部においても、再開発のための土地や家屋の強制収用を日常的に生み出しているのである。
 これができる背景には、中国のスターリン主義体制の問題がある。一つは前提として、土地が国有であり私有ではないということ(より正確に言えば、共産主義社会としてあるべき「社会有」ではないということ)。一方でスターリン主義官僚が権力と特権を握っており、それが開発会社や不動産会社と結びついて、利権を拡大し私腹を肥やしながら、警察や裁判所を含む暴力的装置を利用して容易に土地を奪えるということ、である。
 こうしてスターリン主義官僚と資本家は癒着を深め、労働者や農民の生活を破壊して、バブル経済を維持し、破産に瀕している省政府の財政を補填し、そして自らの私腹を肥やすために、次々と「開発」の名による強制収用を行っている。また今日の「改革・開放」政策のもとでの新自由主義的な政策の展開は、中央対地方、地方と地方相互の間での経済競争を生み出しており、それがますますこの事態に拍車をかけている。
 「改革・開放」政策のもとの中国で、政府と資本による激しい攻撃が労働者と農民に対して襲い掛かっており、都市での労働者の闘い、農村での三里塚闘争のような闘いがあちこちで生まれようとしている。これは三里塚闘争が、中国の労働者・農民と連帯していく質を持った世界的な闘いであることも意味している。そして何よりも労農連帯によるスターリン主義打倒の闘いが、中国でも求められていることを示している。
 世界恐慌の中での投機資金の中国への膨大な流入は、もう一方で急激なインフレを生み出している。政府の公式発表によるインフレ率は年5%と言われ、これ自身大変な数値だが、実態ははるかにそれを超えている。特に食料の物価上昇は異常であり、野菜などでは1・5倍から2倍に上昇したものもある。
 上がっているのは食料価格だけではない。もっと深刻なのは住宅価格の異常な上昇である。上海や北京の住宅は、普通の労働者の収入ではとても手が出るものではなく、わずか2畳ほどのアパートに住んだり、それはまだよい方で、日の当たらない不健康な地下につくられた狭いアパートで共同生活する青年労働者や家族が出てきている。彼らは、ニートを指すアリ族に対して、モグラ族と言われている。これらの攻撃を真っ向から受けているのは、何よりも青年労働者である。とりわけ地方からきた農民工などの青年労働者の現実は深刻極まりないものとなっている。
 北京政府は今年2月から、この地下室を住居として賃貸することを禁止する政令を出した。だがこれに対して、「月1200元(約1万5600円)の給料で家族を養うのに地下室以外、どこに住めるというの」(30代の女性労働者)などの怒りの声が爆発した。昨年12月30日には、北京で青年を先頭に500人の労働者が集まり、この政令に抗議する無届集会が開催されている。集会は警察の解散命令に抗議しながら、1時間にわたって貫徹された。治安警備が厳しい北京でこのような労働者の無届集会が起きたのは極めて異例な事態であり、大恐慌下での中国の労働者の闘いの今後の爆発を予感させるものである。

 □頻発する労働者のストライキと暴動

 物価はドンドン上がるのに、唯一賃金だけが上がらない。食料と住居を失い、労働者の生活は急激に追い詰められている。
 こうして中国においては、本誌2011年2月号の中国特集に紹介されているように、労働者のストライキが激発している。労働者の賃上げ要求の闘いは、急激なインフレの中で、まさに死活をかけた闘いである。こうして使い捨ての非正規労働とされている農民工を中心とした青年労働者が、闘いの先頭に立っている。
 1月に入ってからも、ストライキは次々と起きている。1月10日から、鄭州でタクシードライバーがストライキに入った。11日には市内を走る1万台のタクシーの半数以上がストに入ったという。会社は警察を導入し、走っているタクシーに警察官を同乗させ、ストライキに合流しないように監視させた。ストライキでタクシーがつかまらず、1時間もたってタクシーを停めたら、警官が乗っていて客はびっくりしたという。
 また同じ10日に深?で、バスの乗務員が賃上げを要求してストライキを行った。これに対して会社は警察隊を導入し、ストライキをしている乗務員と激突。警察による暴行で、女性を始めとする数人の労働者が病院に運ばれることになった。
 労働者は賃金も上がらず物価高で生きる道を失いつつあるのに、官僚や資本家は、ますます肥え太っていく。
 昨年の中国のネット流行語のトップに選ばれたのは、「俺は李剛の息子だ」という言葉である。河北大学で学生が飲酒運転で車を暴走し、女性2人を轢き死傷させた事件で、警察官が現場で逮捕しようとすると「教えてやろう。俺は李剛の息子だ!」と父親の公安幹部の名前をあげて逮捕を逃れようとした。これが格差社会と官僚の腐敗を象徴する言葉となって大流行した。 こうした格差社会への怒りは、労働者を先頭に暴動的事態を生み出している。
 昨年12月5日に、吉林省長春市で、赤いマツダの高級車に乗った男が、女性を轢きそうになった。男は車から降りてきて、轢かれそうになった女性に対して「俺は金を持っている。おまえをどうにでも殴れるんだ」と暴言を吐いた。これに対して周辺の人びとは怒り、1000人がマツダの高級車を取り囲み、破壊してしまう事件が起きている。
 さらに昨年12月27日には、雲南省昆明市で、市の職員が老人をぶん殴った。これに怒った昆明市の住民は、市職員と激突し、市管理局の建物を包囲し、車をひっくり返して放火する事態になった。
 同じ12月27日に、首都北京で、行商人に市の職員が数人で暴行をふるったことに対して、市民数百人が彼らを取り囲み、徹底的に弾劾するという事態も起きている。12月30日に青年労働者を中心として北京で住宅問題での無届集会が開かれている。
 物価高、低賃金、住宅難、失業、そして強制収用、広がる格差という現実は、労働者の職場でのストライキや街頭での暴動という事態に発展している。何かで火がつけば、労働者の総反乱が起きる状況に、中国社会は今、確実に入りつつある。

 □米日帝の朝鮮・中国侵略戦争情勢に突入

 11月23日を大きな転機とする朝鮮半島情勢の激動は、米日帝による朝鮮侵略戦争が開始され、それが本格的に展開しようとしていることを告げ知らせている。12月に発表された日本の「新防衛大綱」に、中国の労働者は、日本帝国主義が中国への戦争体制構築を意図していることをを察知している。
 一方で1月15日に、中国は北朝鮮の経済開発区である羅先市に「港の防衛のために」軍隊を駐留させることを発表している。米日の朝鮮侵略戦争は、中国との戦争が不可避な情勢に入っているのだ。
 中国の労働者階級は、バブル経済(とその崩壊の危機)、そして急激なインフレの進行、家屋・土地の強奪という状況の中で、生きるためのストライキや暴動に次々と立ち上がっている。このスターリン主義の労働者階級(と農民)に対する攻撃の中で、新たな東アジアでの戦争の危機が深まっている。2011年は中国の階級闘争にとっても新たな段階に入る。
 中国スターリン主義は、労働者のストライキに対して、昨年の後半以降、明確に暴力的な弾圧方針を鮮明にしてきている。リコーやマツダのストライキ、1月の深?の交通労働者のストライキを、武装警官によって徹底弾圧した。「天安門型」の弾圧の本格化である。しかしこれは逆に労働者階級にとって、スターリン主義打倒なくして、自分たちの解放がありえないことを意味している。同じことは農民にも言える。
 問われているのは中国における「反帝・反スターリン主義、世界革命」綱領の党と階級的労働運動の組織化(団結の形成と拡大)の闘いであり、同時に、この戦争情勢の中で、国鉄闘争全国運動を軸に日本と中国、韓国、北朝鮮の労働者の国際連帯の闘いを実現していくことである。
 (河原善之)

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月刊『国際労働運動』(415号2-3)(2011/03/01)

■News & Review 日本

対中国戦争構えた新「防衛計画の大綱」

沖縄とその島しょ部が自衛隊の最前線基地に

 菅内閣は昨年12月17日、新「防衛計画の大綱」を閣議決定した。これまでの大綱にあった「基盤的防衛力構想」などを投げ捨て、「動的防衛力」の旗印のもとに日米同盟を強化し、北朝鮮・中国侵略戦争路線へ大転換した。周辺事態法の改悪などにも踏み込もうとしており、米軍との集団的自衛権行使に行き着くものだ。断じて許せない。

 □陸軍削減し空海大軍拡

 1月6日にゲーツ米国防長官は記者会見を開き、4万7千人の兵員削減と武器調達見直しで、国防費を14兆円減額すると発表した。削減は陸軍2万7千人、海兵隊1万5千人から2万人。イラクからの完全撤退と14年までのアフガン駐留米軍の大幅縮小を見込んでいる。
 圧縮した経費から1千億j(8兆3千億円)を「優先順位の高い分野への投資」に振り向けるとした。陸を削減し、その分でエア・シー・バトルで大軍拡をするということだ。具体的に以下を挙げた。
▼核兵器搭載可能な長距離爆撃機
▼沿岸戦闘艦
▼無人機
 「核兵器搭載可能な長距離爆撃機」は明らかに縦深性のある中国を想定したものだ。
 米帝はイラク、アフガンから大きく対北朝鮮・中国侵略戦争シフトへ舵を切ろうとしている。イラク、アフガン戦争で陸軍と海兵隊は敗退し、疲弊してしまった。陸軍での戦争を避け、空海戦闘で勝負しようという戦略が「ジョイント・エア・シー・バトル(統合空海戦闘)」構想だ。
 朝鮮侵略戦争においても陸戦は韓国陸軍に依存しようとしている。

 □ジョイント・エア・シー・バトル構想の日本版

 そして「ジョイント・エア・シー・バトル」構想は、日本では沖縄の自衛隊基地の強化となっている。新「防衛計画の大綱」の核心はそれにつきる。米軍と同じく陸を削減し空海を増強している。
 新防衛計画の大綱に基づく中期防衛力整備計画(中期防、2011〜15年度)では、東中国海に面した南西地域の島しょ部の防衛強化を柱に据えている。
▼南西地域の島しょ部に陸自の沿岸監視隊を配置し、配置場所としては台湾に隣接する与那国島を想定。
▼戦争の際に初動対応できる実戦部隊を置く。中隊(200人程度)以下の規模で複数の島に置くことを検討している。宮古島や石垣島が候補地になっている。
▼陸自第15旅団(沖縄県那覇市)の輸送力を向上。新型輸送機C1輸送機を投入。
▼陸上から中国艦船を迎撃する地対艦誘導弾を島しょ部に迅速に運び、発射できるように訓練する。これは近年、宮古島付近を通過して太平洋に抜け出る中国海軍の艦船を標的にしたものだ。
▼移動警戒レーダーを島しょ部に展開。
▼空自では、那覇基地の戦闘部隊を22機1個飛行隊から36機2個飛行隊に増強する。機種もF15に変える。青森・三沢基地の早期警戒管制機E2Cが南西地域で常時活動できるようにする。
▼海自でも潜水艦16隻から22隻体制に増強する。対潜ヘリ搭載護衛艦の大型化を進め、周辺海域での監視活動を強化する。
▼空海戦闘能力の強化と共に、ソ連の北海道侵攻を想定した北海道の陸自部隊を縮減し、部隊配置、装備、監視活動などの「対中国戦争」シフトを鮮明にした。
▼新戦闘機、新哨戒機、新輸送機を導入。
 すでに以下のことが進んでいる。沖縄本島の南西約300`にある宮古島の航空自衛隊宮古島分屯地には「フラフォー」と呼ばれる通信・電波・情報収集施設がある。東中国海沿岸や上空を飛ぶ中国航空機がどういう航空機か、何をしているのかを割り出す。この施設は全国で2番目で09年に運用を開始したばかり。
 糸満市にある航空自衛隊与座岳分屯地は弾道ミサイルの探知・追尾能力を持つ「固定3次元レーダー」、いわゆる「ガメラレーダー」を建設中だ。全国で4番目だ。
 九州・南西諸島では、空だけではなく海上、海中を含めて各種探知施設・装備の新設、更新が相次いでいる。
 中国の空海戦闘部隊を南西諸島で迎撃し、撃滅する戦略が新「防衛計画の大綱」なのだ。ジョイント・エア・シー・バトル構想の適用なのだ。

 □真の敵は日米帝だ

 日米軍事同盟にとって、沖縄は、対朝鮮、中国侵略戦争の最前線基地になった。これまでは米軍基地の島であった沖縄は、これからは自衛隊の基地の島にもされようとしている。沖縄本島を始め島しょ部の全部がそうされる。
 対米戦争において、沖縄が本土防衛の最前線とされることによって悲惨な沖縄戦が起きた。日米帝は、対北朝鮮、中国侵略戦争で真っ先に沖縄を戦火にたたき込もうとしている。
 その狙いは、沖縄の米軍基地撤去、沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒の闘いを圧殺することにある。労働者階級の真の敵は日米帝である。
 11・23情勢、新防衛計画の大綱、中期防策定によって、安保粉砕、沖縄奪還闘争はいよいよ重大な局面に入った。「侵略を内乱へ」を掲げて階級的労働運動路線で闘い抜こう。
 国鉄闘争全国運動を前進させることが勝利の最大のメルクマールだ。
 (宇和島洋)

月刊『国際労働運動』(415号A-1)(2011/03/01)

編集後記

■編集後記

 11・23、米帝の朝鮮侵略戦争が始まった。世界大恐慌がついに戦争となって爆発した。昨年の4・9反革命は、国鉄1047闘争を圧殺し、体制内的な労働運動の総屈服を強制し、動労千葉労働運動・階級的労働運動の壊滅を狙うものだった。動労千葉は、「国鉄労働運動の火を消すな」と立ち上がり、国鉄闘争全国運動を開始し、4・9反革命を跳ね返した。
 そして11・23情勢が始まった。戦争が始まった。4・9に総屈服した既成の労働組合の全部が11・23を皮切りに戦争賛成、戦争翼賛の立場に立ち、愛国主義・排外主義を振りまき、階級平和を唱え、階級闘争を圧殺して侵略戦争反対の声を反動的にたたきつぶす先兵になった。
 今こそ「侵略を内乱へ」を貫徹するために、労働組合をめぐる戦争翼賛派との権力闘争に勝利することが一切である。

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