International Lavor Movement 2009/05/01(No.393 p48)

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2009/05/01発行 No.393

定価 315円(本体価格300円+税)


月刊『国際労働運動』(393号1-1)(2009/05/01)

羅針盤

 羅針盤

▼世界大恐慌にのたうち回る最末期帝国主義は、今や自国の利益だけを確保する保護主義を強め、軍事力に訴えて資源や市場を奪い合う侵略戦争・世界戦争に突き進んでいる。米帝オバマは、イラク戦争から完全撤退などできない。逆にアフガニスタンへの増派に加え、パキスタンやイランへの戦争衝動を激化させている。日帝・麻生は、ソマリア沖侵略派兵で露骨な軍事的突出を始めた。
▼民主党代表・小沢の秘書の逮捕は、55年体制が崩壊し世界大恐慌が激化する中で、日本帝国主義が新たな政治支配体制を確立できず、支配階級が分裂し、腐敗と反動的な抗争を激化させていることを突き出した。その中で、道州制導入を日帝の唯一の延命策として、田母神的な戦争衝動をたぎらせた右翼勢力も今や台頭しようとしている。日本階級闘争も1930年代型の激突に入った。革命を真っ向から掲げ労働運動をよみがえらせて闘えば労働者が勝利する時代が来たのだ。
▼そのためにも、連合や全労連、日本共産党やJR総連カクマル松崎など体制内勢力との闘いが決定的だ。日本共産党委員長の志位は、「わが党の立場は、大企業の役割を否定したり、ましてや敵視するものでは決してありません。大企業に力にふさわしい社会的負担と責任を求めるということであります。経営者の中からも、わが党の主張への共感が寄せられている」と公言している。この奴隷根性! まさに資本主義の最後の救済者。
▼資本家に依拠し、資本家の発展を願う日本共産党は、打倒あるのみだ。今こそ労働運動と革命に人生をかけよう。職場で資本家と闘おう。労働者の団結の力で資本家に奪われたものを取り戻そう。

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月刊『国際労働運動』(393号1-2)(2009/05/01)

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 韓国

 政権打倒へ5・1ゼネスト方針

 “非正規職法改悪案を撤回せよ”

 韓国・民主労総は2月28日、MB(李明博=イミョンバク)悪法阻止全国労働者大会を開き、本格的な対政府闘争に突入することを宣言した。3万人の労働者、学生、市民を前に民主労総非常対策委員会のイムソンギュ委員長は「経済破綻の全責任を労働者に押しつけるイミョンバク政権を5・1ゼネストで退陣させよう」と訴えた。
 その後、民主労総組合員らは龍山殺人鎮圧第6次汎国民大会に結集し、集会を禁止し戦闘警察を差し向けたイミョンバク政権と激突して闘いぬいた。
 龍山殺人鎮圧事件とは厳寒の1月20日、都市再開発地域で強制撤去が行われ、ビルに立てこもって抵抗した住民たちにテロ鎮圧部隊が襲いかかり、攻防中の出火で住民5人が死亡した大惨事だ。この事件の真相究明と謝罪、責任者処罰と補償を求める怒りは、街を埋めるキャンドルデモとなった。これは労働者と都市撤去民の「生きさせろ!」の叫びであり、昨年、韓米FTA(自由貿易協定)反対を叫んでイミョンバク政権に退陣を迫った100万人デモへと再び発展する闘いが始まったのだ。
 民主労総執行部が女性組合員への性暴力事件で総辞職し非常対策委員会体制となって1カ月、組織された労働者の力で「生きさせろ!」ゼネストを実現する正念場だ。
 民主労総非常対策委員会の委員長はイムソンギュ公共運輸連盟委員長(ソウル地下鉄労組出身)、執行委員長はナムテッキュ金属労組首席副委員長。2月9日の執行部総辞職後の空白を埋め、次期委員長選出(4月8日までに選挙を行う)まで民主労総を率いる。3月13日に民主労総の性暴力事件真相究明特別委員会が、「被害者の主張は事実」とする最終調査結果を発表し、「性暴力事件の組織的な隠蔽助長行為があった」として5人の懲戒勧告を行った。

 □MB悪法、国会提出へ

 3月12日、イヨンヒ労働部長官は、経済界が要求する大幅な規制緩和を進める「非正規職法改正案」を13日に発議すると発表した。期間制労働者と派遣労働者の使用期間をこれまでの2年から4年に延長するとともに、派遣可能な業種を現行32業種から拡大するというのだ。
 「非正規職保護法」が07年7月に施行されてから2年、正規職転換どころか、イミョンバク政権は「このままでは7月に97万人もの非正規職が解雇される」と危機説を垂れ流し、だから期間を4年に延長するのがいいとうそぶいている。どこまで行っても非正規職拡大、全労働者を非正規職化しようという攻撃だ。絶対阻止あるのみだ。
 民主労総は「政府は今年7月に97万人の非正規職が解雇されると危機説を強調しながら、さらに非正規職を拡大しようとしている」「政府は5人以上300人未満の50万社が、非正規職を正規職に転換した場合、事業主が負担する4大保険料の50%を2年間支給すると言うが、非正規使用が4年に延びるのにあえて月13万ウォンを受け取って正規職転換を選ぶ事業主はいない」と非難し、「すべての労働者を低賃金・貧困・非正規職にする非正規職法改悪案を撤回しろ」と要求した。
 翌13日、「期間制および短時間勤労者保護などに関する法律」「派遣勤労者保護などに関する法律」改悪案を官報に掲載し、4月国会提出に向けて動き出した。
 こうした中、社内下請け労組を襲撃し、民主労総から除名された現代重工業労組が労使共同宣言の道をひた走っている。現代重工業の筆頭株主・チョンモンジュンは今年2月の終値で1兆6420億ウォンを超える株式を保有している。この現代重工業で「現代重工業を見習え、譲歩して犠牲になれ」と労働者にイデオロギー攻勢をかけている。何が「経済危機の苦痛の分担」だ!

 □階級協力か階級闘争か

 御用組合を批判する現代重工業社内下請け支会のチョソンウン支会長は、「オジョンセ現代重工業御用労組委員長は、臨時代議員大会開始から5分、全員一致で無交渉・無争議方針を確定した。恐慌期に資本と政府は、労働者譲歩論(ストライキ自制、賃金凍結→雇用保障)で民主労組を攻撃する。労働者譲歩論は、金属労組指導部をも巻き込んでいる。部品メーカーの非正規職労働者が切られ、組合員賃金の40%が削られるのに『仕事を分け合うためにズボンのベルトを引き締める覚悟』というチョンガプトゥク金属労組委員長の正規職譲歩論はイデオロギー的武装解除であり、資本への奴隷的屈従だった」と指摘する。
 「階級協力か、階級闘争か。『すべての権力を労働者協議会へ!』のスローガンを掲げ、雷のように闘争する日が必ず来るだろう。今は生存権死守闘争が政治権力闘争の出発点になる革命の時代だからだ。恐慌期の資本のイデオロギーに対して階級的な立場が提出され、革命的展望が説明されなければならない。現代重工業の階級闘争を指導する元請・下請け共同の現場指導力が建設されなければならない。ことはすでに進行中だ」と結んだ。危機にかられた敵の攻撃の中に革命のチャンスはある。
 今春、韓国の闘う労働者とともに革命をつかもう!
 (室田順子)

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月刊『国際労働運動』(393号1-3)(2009/05/01)

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 ■動労千葉結成30周年を祝い

 民主労総ソウル地域本部が参加

 3月8日、DC会館。全国から450人が駆けつけた動労千葉結成30周年記念レセプションには、動労千葉と国際連帯のきずなを結んでいる米韓のゲストも駆けつけた。
 アメリカの運輸労働者連帯委員会のスティーブ・ゼルツァーさんとともに韓国・民主労総ソウル地域本部の同志たちが参加。2月に首席副本部長に就任したパクスンヒさん、前本部長のイジェヨンさん、前々本部長のコジョンファンさん(キア自動車労組)、公務員労組のパクソンニョルさん、そして昨年11月、漢江のほとりで高空籠城中だった金属労組ハイテックRCDコリアのキムヘジン支会長の5人。パクスンヒさんとキムヘジンさんの発言を紹介する。

 労働者の反撃の好機 民主労総ソウル本部 首席副本部長 パクスンヒさん

 ソウル本部15万人を代表して動労千葉結成30周年にお祝いを申し上げます。動労千葉と私たちの連帯の中で、私たちが何か差し上げたというより、動労千葉から大きな力をもらってきました。
 韓国はいま経済危機で、構造調整、賃金削減など非常に厳しい状況にあります。労働者、市民、農民、撤去民、学生が「イミョンバクOUT(アウト)!」を叫んで闘っていますが、現場の組合員は、力強く闘いを展開できていない現状にあります。
 しかし、私たちは絶望していません。危機はチャンスです。社会がグラグラになっているのは政権の危機であり、労働者にとっては反撃する絶好の機会です。単にイミョンバクを政権から引きずり下ろすためだけでなく、労働者が政権を握るために闘いたい。現場の一つひとつの小さな闘いを一つひとつつくっていくことが私たちの
課題です。
 海を越え、これほどの同志愛を感じることができて幸せです。業種、地域、国境を越え、労働解放、反戦平和、性の平等のために闘いましょう。

 動労千葉の思想で闘う 金属労組ハイテック RCDコリア支会長 キムヘジンさん

 皆さん、こんにちは。先ほど三里塚の同志からお話をうかがって、深く感動しました。
 動労千葉の同志たちの闘いが農民との連帯、それから国際的な連帯をとおして帝国主義に反対する闘いを労働者の分断を許さずに行っていることに深く感銘しました。
 世界大恐慌の時代を迎えていて韓国でも厳しい状況にありますが、イミョンバク政権は皮肉にも資本の投機によってこれをのりきろうとしています。再開発地域のヨンサンで強制撤去が行われて、警察、特攻隊が投入されて5人の住民が死ぬという事態が起こりました。この問題は南韓で起こっている根本的な問題を表しています。
 これは資本主義が腐敗した状況の中で経済危機に陥って、その矛盾を民衆に転嫁しようとして起こったことです。こうした問題の本質を理解している人たちは力強く闘いに立ち上がろうとしています。けれども動労千葉が三里塚との連帯を契機にして動労本部から分離した、そういう選択を韓国の労働者はまだできていません。問題は世の中の変革、労働解放、民衆解放という思想にまで労働者が至っていないところにあると思います。
 けれどもこの場に来て、動労千葉の同志たちが闘いの先頭に立っている姿を見て、動労千葉の30年間の闘いの原則を韓国に持ち帰って、韓国の場で実践して、韓国の解放をかちとっていきたいと思っています。
 全世界の労働者が動労千葉のような信念をもって闘えば、必ず労働解放の世の中、世界を変える闘いが行えると思います。この闘いを最後まで貫きます。
 トゥジェン(闘争)!

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月刊『国際労働運動』(393号1-4)(2009/05/01)

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 ヨーロッパ

 資本攻勢と闘う独伊の自動車労働者

 体制内労働運動との激突が不可避

 □決起する自動車労働者

 世界大恐慌の激化のなかで、破産の危機にあえぐ世界の自動車資本は、延命のために、公的資金援助を要求している。そして、それを国家権力に承認させる条件として、労働条件の極限的引き下げを要求し、体制内労働運動指導部を引き込んで、首切り・賃下げ・工場閉鎖の攻撃をかけてきている。
 米ビッグ・スリーを先頭とする自動車資本のこの攻撃に対し、全世界で労働者が決起を開始しつつある。帝国主義の牙城であった自動車産業のもっとも悪質な労働組合官僚=体制内労働運動の腐敗した指導部との闘いなしに、労働者は殺されてしまう、ということが、日々全世界的に明らかになりつつある。
 以下、焦点となっているドイツとイタリアについて、闘いの現状を検討する。

 □西欧GM工場での闘い

 2月26日、GM傘下のヨーロッパ全工場所在地で、親会社GMによるヨーロッパ工場の閉鎖・人員削減計画に反対する集会がもたれた。破産にひんしたGMは、米政府からの公的援助を引き出すためのリストラ計画として、世界で4万7000人、そのうちアメリカ以外の工場で2万6000人の人員削減と、いくつかの工場の閉鎖を計画していることが明らかになっている。
 抗議行動は、GMのヨーロッパ拠点であるドイツのオーペル会社の中心工場であるリュッセルスハイム(フランクフルト近郊)における中央集会をはじめ、全欧各地で統一行動日として行われた。
 中央集会には、本工場の1万人の労働者を中心として、オーペル社のその他四つのドイツ工場をはじめ、GMのイギリス子会社ボークザール社の労働者も参加した。

 □体制内派の制動

 しかし、主催のIGメタル(金属労組)の代表と、オーペルの工場委員会代表は、「オーペル社の危機は、すべてGM本社のせいだ」「アメリカGMの支配から独立して、ヨーロッパ自動車資本の統一的な経営を確立すべきだ」「そのためには労働者の犠牲が必要だ」と述べて、労働者を反米排外主義・欧州資本との協調=屈服の道に引きずりこもうとしたのであった。これは、「オーペル危機救済全欧ミニ・サミット」という「政労資」の緊急会議を呼びかけているEU産業委員会の統一方針を後押しするものである。
 集会に、政府・政党からの唯一の参加者として発言した社民党のシュタインマイヤー副首相・外相は、「オーペル社に代表される自動車産業はドイツの誇りだ」「その担い手である諸君、労働者とともにアメリカ資本と闘う」「そのために労働者の金融参加を期待する」という反労働者的路線を恥知らずにも展開した。
 オーペル社は、ドイツ政府に救済を要求しており、その条件が労働者への「譲歩」の強制なのだ。「賃金カット反対」や「人員削減反対」の主張などひとかけらもない。ましてや、苦闘するアメリカ自動車労働者には、だれも一言もふれない。
 このような組合指導部と政権党=社民党の演説に対して、オーペル労働者の反応は、ビデオをみても、さめたものだった。集会場に出された立て看板のなかには、オーペル労働者の資本への怒りが書き付けられているものもあった。
 この中央集会以外に、ドイツ国内の他の三つのオーペル工場、GM子会社のある諸国、イギリス、フランス、ベルギー、オーストリア、スペイン、スウェーデン、ポーランド、ハンガリア、ロシアでもデモ、集会が行われた。
 しかし、これを主催した各国自動車労組の方針は、EU労働者の自動車資本に対する階級的反撃を、EU内はもちろんアメリカの労働者へも呼びかけて、国際的連帯行動として組織することとはかけはなれていた。彼らの政策は、「GMからの分離」「ヨーロッパ独自の自動車コンツェルンの設立」「各国政府への財政援助」を要求する運動、すなわち、ヨーロッパ自動車資本の危機からの救済のために労働者の犠牲を求めるという運動にねじまげようとするものであった。

 □体制内派打倒の闘い

 GM傘下の工場は全ヨーロッパで、5万5600人の労働者(そのうち2万6000人がドイツ)を雇用しており、部品製造など関連産業を含めると40万人の職が影響を受けるという。こうした自動車労働者が、工場・企業・国境をこえて、賃下げ・工場閉鎖・首切りに絶対反対の統一行動をかちとったならば、ヨーロッパ労働運動に新たな展望が切り開かれるであろう。そのためには、この数十年にわたって自動車資本の手先として労働者に低賃金・労働強化・権利の剥奪・非正規雇用の拡大などに協力してきた体制内労組指導部を打倒せねばならないことは明らかである。

 □ドイツ労働者の怒りの声

 これに対する労働者の怒りの一端を、インタビュー記録とブログから拾ってみよう。
 「IGメタルの組合本部は企業みたいになってしまった。1984年以来、まともなスト一つやったことがない」
 「組合費をマネーゲームに使っている」
 「この工場(独リュッセルスハイム)の労働者は数年前には4万8000人いたのが、今では1万8000人、しかもその半分以上は非正規雇用の労働者だ」
 「おれは、オーペルで18年も働いてきた。会社はわれわれを人間としてあつかえ。おれたちは、取り外し自由の機械じゃない」
 「われわれはこの数年間、分裂させられてきたために敗北したのだ。今こそ国境をこえて、団結して闘うときだ」
このように、国鉄1047名闘争における「4者・4団体」のような「政労資交渉」への屈服路線との闘いが、全世界で始まっている。

 □フィアット労働者のスト

 

時を同じくして、翌2月27日、イタリアのポミリアーノ(ナポリ近郊)フィアット工場で、5300人の正規雇用労働者と1万人の非熟練労働者が、操業短縮(工場の一時閉鎖)に反対して、ストライキを行った。労働者は構内デモを貫徹した後、ストライキ連帯集会に出発した。
フィアット社は昨年9月以来、19週にわたる操業短縮(実働時間は、この間5週間のみ)を行い、労働者を「賃金共済金庫」依存においこみ、ポミリアーノ工場の労働者の賃金は月額でわずか750ユーロ(約9万5000円)に引き下げられていた。自動車産業の危機を突破するための労働者への攻撃に対する怒りが爆発したのだ。
スト連帯集会には、2万人が結集。ストに決起した当該工場の製造部門・事務部門の労働者に、イタリア全土のフィアット工場の労働組合代表が組合旗をかかげて合流し、さらにナポリ地方の労組地区組織、そして学生たちも大挙参加した。市内の商店の大多数が閉店ストで連帯をあらわし、地方議会議員や司教さえも登場し、ポミリアーノ全市をあげてのゼネスト状況がかちとられた。自動車労組の加盟する金属労組本部・地域本部、その他、CIGL、CISL、UIL、FISMIC、UGLなどの全国組織(注)も参加した。集会後、大デモが市内を行進。

【注】イタリアの労働組合

CIGL(イタリア労働総同盟/旧共産党・社民系/500万人)
CISL(イタリア労働組合同盟/旧キリスト教民主党系=中道左派/300万人)
UIL(イタリア労働同盟/中道左派・右派/150万人)
UGL(イタリア労働総同盟/右翼労組)
FISMIC(金属自立労組)
(注)数字は組合員数の相対的目安〔1992年の数字〕

 □工場閉鎖、レイオフ攻撃

 フィアット社は、ヨーロッパ自動車産業のトップであるドイツのフォルクスワーゲンに次ぐフランスのルノー・プジョー=シトロエン(PSA)とならぶイタリア第一の企業である。フィアット社の生産は、イタリアのGDPの12%を占めるという位置をもっているが、世界大恐慌のなかで、5万8000人の労働者にレイオフ攻撃をかけ、さらにポミリアーノをふくむ二つの工場(もうひとつはシチリアのイメレーゼ工場)の閉鎖を計画している。
 今回のストに先立って、1月、2月と引き続いて、フィアットの拠点工場のあるミラノやトリノなどイタリア各地で、時間短縮・工場の一時閉鎖攻撃に反対するスト・デモが続いていた。2月5日、ポミリアーノ工場の労働者は、会社側が操業短縮の期限を延長したことに抗議して、工場前で抗議集会を行ったのちに、街頭デモを敢行、さらにローマ・ナポリ間の高速道路で座り込み闘争を展開した。これに対し機動隊が襲撃、激しい闘いとなった。

 □イタリア労働者の怒りの声

 このフィアット・ポミリアーノ工場のストライキによせられた連帯の声をブログから拾ってみよう。
 「デモに決起したすべての労働者に熱烈な挨拶を送ります。さまざまな職種、職場から、みな、労働者の誇りをもって参加していた」
 「車を作ったこともない奴らが、工場閉鎖だと! ふざけるな。毎朝5時起きで働きにでるおれたちの気持ちがわかるか。恐慌になってみんなが大変だという。だけど結局払わされるのはおれたちではないか。おれたちが労働者だからだ」
 「イタリアでもドイツでも、海外で生産している車の方が多い。ポーランドのフィアット工場の現実を知って驚いた。労働者が奴隷のようにあつかわれている! 国際的団結が必要だ」

 □体制内派の屈服

 労働者はこのように闘おうとしているが、自動車労働者が加盟している金属労組を始め労働組合のナショナルセンターの状況は、ガタガタだ。そもそも、このような操業短縮攻撃を現在まで許してきたのは、ほかならない体制内労働運動指導部だ。すでにいくつかのナショナルセンターの一部、CISL、UIL、UGT(注参照)は、政労資協定に署名している。さらに政府のスト禁止法立法攻撃にも屈服しているのだ。
 その中でCGILは、これに反対し、4月4日に全国行動を呼びかけている。それにいたる過程で、すでに2月13日、CGIL系の金属労組・公務員労組がストを行い、3月18日には教員組合が続く。
 しかし、当のCGILのこの15年間の基本路線が「社会契約」「社会的パートナーシプ」の名による労資協調路線であり、ベルルスコーニ首相とイタリア経団連に敗北と屈服を続けてきたのだ。しかし、現在の資本のより踏み込んだ攻撃、すなわち恐慌下のスト禁止、労働協約制度そのものの解体=労資の個別交渉への分断という攻撃に直面して、闘争のポーズだけでもとらざるをえなくなっているのだ。
□階級的労働運動の復権を
 激烈に開始されつつある労働運動内部の分岐を、職場での闘いにふまえて、階級的労働運動の復権、戦闘的な労働運動のあらたな潮流をかちとっていく闘いが、イタリアでも、そしてドイツでも急務となっている。
 (川武信夫)

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月刊『国際労働運動』(393号1-5)(2009/05/01)

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 中国

 恐慌下でストライキに決起する労働者

 景気刺激策で激化する階級対立

 景気の落ち込みと財政出動の総動員

 中国経済は世界金融恐慌の波及を受け、昨年から景気後退に入り、08年第4四半期にはGDP成長率6・8%にまで落ち込んだ。沿海部(特に東南部=珠江デルタや長江デルタ)の労働集約型の輸出企業が倒産の嵐に襲われ、さらに大型企業(国有企業や外資企業)も生産調整に入った。人員削減や賃金カットが行われ、農民工2000万人が春節(旧正月)前に相次いで帰郷する異常事態となった。09年に入っても、輸出はさらに減少しており、旧正月明けで都市に戻った農民工のうち1100万人は職がない状態におかれている。
 中国スターリン主義体制はこうした事態に衝撃を受け、8%成長保持をスローガンに、昨年11月段階で4兆元(約57兆円)に上る景気刺激策を打ち出し、景気刺激に大童の状態だ。雇用問題の解決を「社会の安定」のためとして押し出しつつ、財政出動の総動員によって8%成長保持に総力を挙げる構えだ。これに地方政府も便乗して独自計画を立て、18兆元もの財政投入を計画している。
 4兆元の景気刺激策は全人代での決定を若干手直しして、以下のようなものとなっている。

 4兆元景気刺激策は雇用問題を解決できない

 ▽社会保障性を持つ住宅建設など4000億(2800億)(括弧内は11月発表時点のもの、単位=元)▽農村民生(飲料水・電力網・道路・ガス・住宅など)3700億(3700億)▽インフラ建設(鉄道・国道・空港・水利など)1兆5000億(1兆8000億)▽社会事業(教育・衛生・文化など)1500億(4400億)▽省エネ・環境改善・生態建設など2100億(3500億)▽構造調整・技術改造など3700億(1600億)▽四川大地震復興支援1兆(1兆)
 これを見ても、「内需拡大」という触れ込みにもかかわらず、基軸的には人為的市場形成による企業救済という性格が明らかで、それに失業による打撃のカバーと消費拡大を一定フォローする人民慰撫的化粧をすこし分厚くしたものといってよい。これらは同時に失業対策の意味も込めて行われるもので、鉄道建設で600万人の雇用を生み出すとしているが、一時しのぎの性格を免れないものだ。
 雇用問題について言えば、仲大軍(『中国は世界恐慌にどれだけ耐えられるか』)によれば、「80〜95年のGDP年平均成長率が10・3%で、その間の就業成長率が年平均6・18%であったのに対し、95〜05年のGDPの年平均成長率は9・1%で、同期間の年平均の就業成長率が2・55%でしかなかった」というから、たとえ8%成長が達成できたとしても、まったく解決できないものなのだ。

 財源問題の危機性

 またこの刺激策の財源問題は危機性を孕んでおり、それも階級対立の激化を促進するものとなる。中央政府は1・18兆元投入する計画であるが、すでに全人代で打ち出された今年度予算において、9500億元の赤字を予定するものとなっている。重大なのは税収が激減し前年比8%増レベルでしかなくなっていることだ。これは企業からの税収が急激に落ち込んだためであるが、外需の長期落ち込みが今や完全に不可避となっている以上、さらに赤字国債への依拠の度合いが強まっていくことになる。
 地方政府はさらに深刻で、中央に依存するか銀行融資に頼るか、あるいは従来の方策であった土地使用権の譲渡益に再度依存するかしかない。中央そのものの財政の覚束なさから中央依存は増えず、結局は銀行融資と土地使用権の譲渡益への依拠となっていく。それは97年のアジア通貨危機のときに採った景気刺激策の結果が示すように、不良債権問題を再浮上させるとともに、土地収用問題の再度の激化=農民暴動の再爆発を引き起こすものとなっていく可能性が高い。

 □スタ支配体制下での経済発展構造の問題性

 中国の30年にわたる経済発展は、典型的な格差拡大を進行させ、二極分化した社会をつくりだしたが、それは構造的問題があるからだ。端的に言えば、第一に外需依存の大きさ・内需の少なさ(とくに消費)、第二に労働力の安さ・環境犠牲に依拠した競争力、第三に分配において家計(賃金)収入が少なく、政府収入と企業収入が多いという問題である。その上、外需と固定資産投資で経済を発展させてきたために、中国産業の各分野はほとんどが生産過剰状態だ。外需が激減したために、デフレが浮上する危険さえある。
 こうした問題はスターリン主義支配体制のもとで労働者・農民に犠牲を強いながら社会を建設するという構造の上に、改革・開放政策による新自由主義政策が吹き荒れた結果起きているのである。この構造がある限り、一時的なバラマキ(中央の「家電下郷」政策(注)や各地方政府の消費券配布など)などでは、「消費拡大」が軸になることはない。結局、景気刺激策としては、公共事業を始めとする固定資産投資に頼るしかなく、それはこれまでの構造的問題性を深めるだけなのだ。

【注】 家電下郷政策 内需拡大のために、特定の家電製品を購入する農村部の消費者に対し一律13%の補助金を出す政策
 第6章  失業者・失地農民の激烈な

  失業者・失地農民の激烈な

  増大と階級的激突の激化   増大と階級的激突の激化
 いまや、スターリン主義による改革・開放政策が雇用問題の決定的爆発+失地農民の増大という形で、その破産性が徹底的に暴かれる過程に入っている。
 失業率では、労働集約型輸出企業の労働力吸収があった段階でも、4%(実質は12%近く)であったが、刺激策の中で失業対策を強めても4・6%に上昇するという。実質15%近くの失業率となるのだ。しかも失対事業を含んでのもので、一種の矛盾先延ばし策以上のものではない。
 他方で、企業の危機を救うために(「雇用を拡大する」との触れ込み)、労働契約法の規制の緩和や最低賃金規定の一時停止が各地で始まっている。企業による危機を振りかざした搾取の強化がすでに進行している。また鉄道用地のための農地取り上げなどがすでに始まっており、景気刺激策の本格化の中で、農民に対する土地収用の波が襲う事態となっていく。
 中国労働者階級・農民階級の改革・開放政策(本質はスターリン主義の下での新自由主義政策)に対する生きんがための反撃が巨大な規模で始まる情勢に入っているのだ。すでにそれは導火線に火のつく事態となっている。

 タクシー労働者と教育労働者のスト

 中国ではますます争議件数が激増しており、この中でタクシー労働者のストライキ(08年11月)と教育労働者のストライキ(11月から1月)が起きた。それらは労働者や農民工の生きんがために闘う道を浮き彫りにしている。
 タクシー労働者の闘いは11月3日の重慶市1万台のタクシーのストライキから始まり、11月いっぱい中国の11の省市20カ所で打ち抜かれたものである。彼らの要求は企業による営業請負金の減額や白タク取締り要求であったが、何よりも決定的なことは、企業を超えた工会建設の抑圧や企業内の工会支配(工会があるところでも経営陣が工会を握っている)を突き破ってストライキという実力行使をやりぬいたことだ。
 警察の弾圧に対して、仲間を売らないという団結を貫いて闘い、政府の企業に対する譴責や請負金の減額指導をかちとり、さらに自分たちの「(闘いの)組織」を手にする意義を実践的に自覚する地平を切り開いたのだ。
 こうした闘いに鼓舞されたかのように、11月から1月にかけて教育労働者が四川省や重慶市を皮切りに全国で70カ所もの地域で授業放棄=ストライキに立った。
 この闘いは地方政府による教育(教員)への予算配分の差別的扱い(当地公務員と同等の待遇という法律的規定になっているが、実質的には半分以下の状態)に対する長年の怒りが爆発したもの。工会的統制や地方政府の脅しにもかかわらず、何万という労働者が決起したのだ。これらはいずれも、経済危機の下で生きんがための要求が怒りの爆発となったものだ。ストという労働者の実力闘争の力強さを実感することによって、労働者階級としての自己の力を確信させるものとなったのである。

 総工会支配の打破の切り口を開いたストの力

 中国の労働組合センターの総工会は、企業や資本による労働者や農民工の解雇が相次ぐ中で、中国共産党の「社会の安定」政策に相和している。総工会は、副主席の孫春蘭が「国内外の敵対勢力が農民工の隊伍に浸透し破壊しようとしているので厳しく防げ」と発言しているように、企業や資本と闘うのではなく、体制の護持に躍起となっている。
 だが今や、総工会の実態が労働者(農民工)の前にがんがん暴かれている。総工会はスト権を認めないスターリン主義体制の支柱そのものであることが暴露され、スト阻止の役割を担っていながら、農民工の道路封鎖の闘いやタクシーや教員のストをもはや抑止できない状態なのだ。
 総工会は確かに労働契約法の制定に参画した。だがそれは、労働者の新自由主義政策への怒りに押されて体制を揺るがすものに発展しないように、労働仲裁や裁判で権利を主張すれば、一定の権利が認められるとして、労働者の不満のガス抜きをするものに位置づけられているに過ぎないのである。それ自体は労働者自己解放を抑止する総工会支配の危機を乗り切るためのものなのだ。

 人民内部にたぎるスターリン主義支配への怒り

 昨年12月初めに中国の一党独裁反対、民主化要求の「08憲章」が出された。その中身はともかく、弾圧されても異議申し立てをする(弁護士や人権活動家や学者や党の長老)という人々の存在が相当の規模で中国内に増えつつある状況に中国は入っている。
 重要なのは、「08憲章」署名者の中には、89年天安門闘争の指導部がかなり入っていることだ。こうした人々が、経済発展政策の破綻の中で、スターリン主義支配の持つ問題性を自覚しつつ、最も犠牲を受けている労働者・農民階級と結合して、階級の力となることによって、闘いの条件がさらに拡大していく可能性が強まっているのである。
 だい10章 中国労働者人民との結合は世界の労働者の責務
 今日、帝国主義列強は「中国頼み」の願望にのめりこんでいる。帝国主義はもともと新自由主義の展開の決定的環として中国を資本の満展開の場として引き込んだことによって、延命の条件を確保してきた。それは中国スターリン主義による労働者・農民への犠牲の集中による「発展」の期待が本質なのだ。その上で、こうした「中国頼み」はスターリン主義の国内支配における権力側の攻勢の圧力となり、企業救済の一方で失業問題や失地農民問題への高飛車な攻勢となっていく。つまり、新自由主義の破綻は同時にスターリン主義支配の破綻であるが、「中国頼み」はそのスターリン主義の矛盾の爆発を抑え込むための力として使われていく。その限りでは帝国主義とスターリン主義は一致しており、中国労働者階級人民の闘いはスターリン主義の重圧の下で帝国主義の重圧をも受けるという構造のなかにある。
 だから逆に国際プロレタリアート人民は、中国労働者階級と連帯することによって、新自由主義に対する大反撃を開始していく必要がある。スターリン主義支配の下での彼らの苦闘と連帯する闘いをつくり出そう。世界各国に中国人労働者はいる。具体的結合はまったく可能だ。恐慌情勢下で、苦闘して新たな情勢を開きつつある中国プロレタリアート人民の闘いを包摂してこそ、世界革命の展望が大きく開かれるのである。
 (賀山宏)

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