COMMUNE 2006/08/01(No.363 p48)

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8月号 (2006年7月1日発行)No.363号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  特集結成10周年を迎えた民主労総

□労働運動の戦闘性解体に全力をあげる慮武鉉
□非正規職撤廃を要求し11−12月ゼネスト方針
□「私たちは人間だ!」−非正規職労組の闘い

●翻訳資料 06年QDR(4年ごとの戦力見直し)(下)2006年2月6日米国防省

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/民主労総が11月ゼネスト方針−−室田順子

    6・15法大集会

三里塚ドキュメント(5月) 政治・軍事月報(5月)

労働月報(5月)  闘争日誌(4月)

コミューン表紙

   教基法改悪阻止へ

 通常国会は、行革推進法、医療制度改革関連法、改悪入管法、北朝鮮人権法など、数々の反動立法を成立させて閉幕した。昨年の郵政民営化法を成立させたことに続き、「改革推進」を掲げて、戦争と民営化・労組破壊を強引に推し進める小泉の本質がそこには示されている。同時に、小泉政権は、教育基本法改悪案、共謀罪新設法案、改憲のための国民投票法案、防衛庁の「省」昇格法案などを提出したが、押し通すことができず、継続審議とした。共謀罪については、粘り強い反対の闘いが、次第に反対の世論をつくりだし、度重なる強行採決のたくらみを断念させた。また、教基法改悪についても、日教組の動員枠を超える多くの教育労働者が国会前に結集し、怒りと危機感をもった闘いで成立を阻んだ。この地平は貴重だ。

 改憲・教育基本法改悪に対する闘いは、いよいよこれからが決戦だ。何よりも、この闘いの先頭に、教育労働者、自治体労働者が立たなければならない。日帝権力は、日教組と自治労を改憲勢力化しないで、戦争の道を進めることはできない。逆に言えば、ここで勝ち抜けば連合の改憲勢力化を阻むことはできるし、日帝の戦争政策に根本的な打撃を与えることができる。職場から運転保安闘争を築き、戦争協力拒否を宣言して団結する動労千葉のような闘いが必要なのだ。改憲決戦とは、帝国主義の危機の中で、戦争によってその突破を図る道を許すのか、戦争によってしか延命できない帝国主義を倒すのかを問う大決戦だ。教育基本法改悪は、その改憲の中身を教育に貫こうとする攻撃だ。秋の臨時国会へ反対闘争の陣形を築き上げよう。

 一方で米軍再編をめぐる闘いもきわめて重要になっている。日帝は米帝と「共通戦略目標」を持ち、日米枢軸を強め、イラク侵略戦争の継続と北朝鮮・中国侵略戦争のために、日米共同司令部づくりに踏み出した。座間、横田、横須賀という首都圏に、陸海空軍の司令部が集中し、米軍と自衛隊が一体となって侵略戦争態勢を築くという重大な攻撃だ。その一環として、「沖縄の負担軽減」というペテンのもとに、沖縄人民の意志を踏みにじって差別的に新たな基地を辺野古につくろうとする攻撃があるのだ。日帝の改憲攻撃、とりわけ9条2項破棄の策動は、この米軍再編とまさに一体のものである。「北朝鮮から攻められたらどうする」という宣伝のもとに、世界最大の侵略戦争体
制がつくられようとしていることと対決しなければならない。

 法政大学では、3月14日の学生29人逮捕の大弾圧をはねのけ、闘いが爆発的に高揚している。国家権力に学生を差し出すという憲法も大学自治も踏みにじった大学当局に対する怒りが日を追って高まっている。そもそも看板もビラまきも禁止するという攻撃自体が違法だ。当局はデモをしただけの学生を権力と示し合わせて逮捕させた。文学部教授会は不起訴釈放の学生を退学処分にした(法学部は決定できず)。6月15日、法大学内集会と国会デモが計画されたことに対し、当局は検問体制をとり、抗議した学生4人をまたしても逮捕させた。これに法大生の怒りが爆発、1000人の学生が安東学生部長を追及した。この4人に勾留請求できず、釈放になると、今度は6月19日、学内にいた法大生(処分対象者)4人を、公安刑事20人が突入して逮捕した。ますます墓穴を掘る平林総長独裁体制打倒へ、怒りを集中しよう。(た)

 

 

翻訳資料

 QDR(4年ごとの防衛見直し) 下

2006年2月6日 米国防省  土岐一史訳

 特殊作戦部隊

 可視性が低い、持続的なプレゼンスの任務、及び世界的な非通常戦の軍事行動を遂行するための特殊作戦部隊(SOF)の能力をさらに高めていく。
 現役SOF大隊を(2007会計年度から開始して)3分の1増加させる。
 心理作戦部隊及び民政部隊を3700人(33%)増加させ、SOF及び陸軍のモジュール部隊への支援を提供する。
 2600人の海兵隊と海軍の人員で構成される海兵隊特殊作戦コマンド(MARSOC)を設立し、外国の軍部隊の訓練と直接の特殊偵察にあたらせる。
 SEAL〔海軍特殊工作部隊〕チームの部隊レベルを直接戦闘任務を遂行するように増大させる。
 SOFの無人機飛行隊を設立し、進入を阻害されている又はそれが争われている地域における敵の戦備の所在地を突き止め、ターゲットを設定する。
 戦略的距離から、進入を阻害されている地域へのSOFの投入とそこからの脱出を支援する能力を高める。

 統合航空能力のビジョン

 現有の爆撃戦力を近代化しつつ、新たな進入性がある陸上機長距離攻撃能力を2018年までに配備する。
 B52戦力を減らして56機にし、その節約分で世界的攻撃作戦を支援するためにB52、B1、B2を全面的に近代化する。
 統合無人戦闘航空システム(J−UCAS)プログラムを再構築して有効搭載量を高め、発進の選択肢を増やし、海軍の威力範囲と持続性を高めるために、空中給油能力を有し、射程外能力を高めた無人長距離艦載機を開発する。
 プレデター無人偵察機とグローバル・ホーク無人高高度偵察機の取得を加速して、無人機がカバーする能力をほぼ2倍化する。
 F22Aプログラムを再構築して、2010年度までの多年度購入契約によって生産を拡大し、ステルス能力の第5世代におけるギャップが生じないようにする。
 空軍を約86の戦闘航空団(例えば、戦闘機、爆撃機、諜報・監視・偵察/戦闘管理/指揮・統制、機動、航空作戦センター、戦場空軍部隊〔陸上部隊と直接に連携する空軍人員〕、他の任務、宇宙/ミサイル)に編成する。後方での前方情報把握能力を活用して前方展開の基地の最小化と戦力展開を迅速化をはかり、総戦力の削減とバランスさせて、空軍の最終的人員数をフルタイム換算で約4万人とする。

 統合海上能力のビジョン

 11の空母打撃群を始めとして、より大きな艦隊を作る。艦隊のトランスフォーメーションとその再利用とのバランスをとる。低価格性を進め、そして造船産業に安定性を与える。
 沿岸戦闘艦の調達を加速し、沿岸水域での戦力投射能力を高める。
 遅くとも2012年までに、攻撃潜水艦の定常建造率を年間2隻に戻し、1艦当たりの調達コストの平均20億jを達成する。

 個々の必要性に応じた抑止力/ 新たな戦略核3本柱のビジョン

 2年以内に精密誘導通常型弾頭の長距離トライデント潜水艦発射弾道ミサイルの初期能力を配備する。
 2007会計年度に、ミニットマンV弾道ミサイルを500基から450基に減らす。
 E−4B国家機上作戦センター航空機を退役させ、代替航空機として最新技術の任務を有するC―32を2機調達する。
 E−6Bタコマ指揮・統制機をアップグレードし、戦略核戦力との生存性のある機上リンクを持続させ、また国内の災害のために機上の携帯電話基地局を提供する。
 米戦略軍移動統合指揮所を2007会計年度に退役させ、核戦力に生存性と持続性を有する指揮・統制を提供する新たに配備された地上基地の通信システムに資金を与える。
 情報と国防省コンピューター・ネットワークを守るために、情報確保能力にさらに投資する。

 大量破壊兵器との戦いのビジョン

 国防脅威低減庁を、大量破壊兵器との戦いを統一し同期化する指導的な統合軍としての米戦略軍の初期戦闘支援機関に指定する。
 2007年までに陸軍の第20支援コマンド(CBRNE)の能力を拡張し、それを統合任務部隊として、緊急展開の能力を持ち、大量破壊兵器除去と現場探索の任務を指揮・統制できるようにする。

 ネット中心性のビジョン

 共通のデータ辞書、規格、構成、分類の開発を始めとして、データ戦略を強化し、情報共有と情報保証を改善し、それを諜報から個人システムにいたる多くの領域に拡大する。
 GIG(全地球情報グリッド)の実施、情報とネットワークの防衛・保護のための投資を拡大し、その保護のための研究開発を重点化する。
 連邦、州、市町村、及び連合国パートナーとの作戦の指針となるように、情報共有戦略を練り上げる。
 ネット中心的なアプローチを、各軍を焦点とした取り組みから、もっと国防省全体の事業へとシフトさせる。それには、分散共用地上システムの拡張も含まれる。
 TSAT(トランスフォーメーショナル衛星)計画を再構築し、その能力を「急開発」し、それに応じて打ち上げ計画を変えていく。宇宙ベースの中継能力を拡大するために資金を増加させる。

 第4章 防衛構想を再形成する

 長い戦争に勝利するには、国防総省は、戦闘員をよりよく支援し、脅威の環境に相応した方法で防衛構想を再形成しなければならない。今日、軍は非効率的な活動によって邪魔されている。本省の現在の構造とプロセスは、われわれが現在直面する、敏捷でネットワークを持った敵に対する長期の戦いにとって桎梏になっている。
 2001年のQDRは、人の面でもドルの面でも、本省の支援機能における非効率性によって資源の喪失が引きおこされていることを浮き彫りにした。
 近年の作戦上の経験は、国防支援インフラストラクチャーにおける敏捷性、柔軟性、横同士の一体化をさらに進める必要性を示してきた。本省はこの必要性に、組織と支援サービスにおけるいくつかの技術革新をもってこたえた。そうした技術革新を3つあげる。1つ目は統合簡易爆発物(IED)対策作業班、2つ目は統合迅速調達班、3つ目は補給線兵站の改善である。
 イラクでもアフガニスタンでも、テロリストが選ぶ兵器は、依然として簡易爆発物であり、通常路肩爆弾、自爆車両爆弾、様々な遠隔操作装置などの形をとっている。こうした兵器の脅威に対抗するために、本省は統合IED対策作業班を創設した。2005会計年度に、本省は13億ドル以上をIED対策イニシアティブに投資した。その中には電波で遠隔操作されるIEDに対する電子戦、IEDの探知、統合IED対策精鋭センター、爆破犯対策プログラム、分散したIEDの探知と無力化などがある。作業班はまた、作戦中の軍事部隊や、イラクやアフガニスタンで部隊と直接協働する専門家現地チームの訓練に資金を投入した。
 アメリカのイラクやアフガニスタンでの経験から生まれたもうひとつの技術革新が、統合迅速調達班(JRAC)である。本省の標準的な物資・兵站供給プロセスは、現場での部隊の即座の必要を満たすにはあまりにも遅く、煩雑なものだった。JRACは、隊員の主要な防護用具、たとえば最新鋭戦闘ヘルメット、軽量のGPS(全地球位置発見システム)受信機、改良型の弾薬箱、個人用兵器スコープなどを供給する取り組みを支援してきた。
 戦闘員への支援の改善は、兵站線の面でも起こった。本省は、多重的な分配プロセスの指導権を単一の組織、米運輸軍に与えた。米運輸軍は、自らの新しい役割を果たしながら、クウェートに派遣分配作戦センターを設置し、連合軍の作戦を支援するためのイラクやアフガニスタンへの物資の流れを速くした。

 新防衛構想に向けて

 本省の事業改革は、3つのビジョンによって導かれている。
 第1に、本省は利害関係者に敏感に反応しなければならない。本省は、民間と軍の機能をめぐる効率性を、効率性の向上の基礎として劇的に改善するために活動していく。
 第2に、本省は、時宜にかない、道理の通った決定に必要な情報や分析を提供しなければならない。横同士の一体化の向上は、本省の成功にとって決定的になるだろう。
 第3に、本省は、重複を減らし、事業プロセスの効率的な流れを保証するための改革を引き受けなければならない。
 こうしたビジョンを達成し、戦略に導かれた成果を上げるには、本省の役割と責任、その各構成団体の役割と責任が明確に描かれなければならない。国防総省内部の役割と責任は、大まかにいって3つのカテゴリーに分けられる。最高級レべルでは、指導者がガバナンスに関与している。戦略を定め、国防事業の取り組みを優先させ、責任や権限を割り当て、資源を配分し、ビジョンの共有についてコミュニケーションを交わしている。本省の上級指導者が定めた戦略的目標を達成するために、任務、人間、相互関係や技術を組織することに集中した管理的役割を担う成員もいる。このように、本省の人員の圧倒的多数は、幹部レべルで確立された戦略や計画を執行するために働いているのである。

 ガバナンスの改革

上級指導者の焦点
 成功の鍵となるのは、本省の上級指導部が、次にあげる役割をどれだけ満たすことができるかということである。
戦略的方向――本省のコンポーネントから彼らが予測する主要な出力――入力ではない――を判定し、それらを達成するための適切な短期、中期、長期の戦略を決定する。
アイデンティティー――技術革新や優秀さを養う組織的文化を確立する。本省の戦略、政策、組織的理念を、省内の従業員や省外の聴衆に伝える。
主要な調達とマクロの資源配分――本省による人員、装備、コンセプト、組織の大きな投資を、わが国の目標を最も効率的に達成するものに形作る。
組織的意思決定――迅速でよく整ったガバナンス、マネジメント、作業のプロセスを実行する。本省が決定を支えるプロセス、ツール、透明性のある分析を行えるようにする。
活動の査定――活動を監視して戦略的調整を保証し、活動に基づいて戦略的方向に向けた調整を行う。
部隊の使用――米軍をどれだけ活用するかを決定し、統合軍の日々の需要の見落としに対応する。
戦略的選択を報告する能力を養う
 統合部隊の戦闘員をよりよく支援するために、本省はいくつかのイニシアチブを立ち上げ、必要な能力を規定し、解決策を特定し、それらを満たすために資源を配分するプロセスを統合しつつある。次にあげる4つの相互に関連した改革は、情報共有と協力の改善の必要性を強調したものである。
 第1に、本省は、より透明で、開かれた、迅速な意思決定プロセスを実行していく。これを行うために、共通の権威筋の情報源を特定し、省レべルでの財政データベースを統合し、共通の分析方法を採用する。たとえば本省は、現存の資源を使って共通の能力一覧を提供できる多くのツールをテストし、データベースをプログラムしている。こうした試験的なプロジェクトの一つが、透明な統合空域・ミサイル防衛データベースである。
 第2に、本省は、統合軍戦闘員と調達・資源担当との協力を通じた投資決定を下していく。
 第3に、本省は、統合能力領域に従った予算の準備を始めていく。本省は、すでに米太平洋軍において、別個の作戦計画や任務に必要な資源を図示するオートメーションプロセスを開発・テストしている。史上初めて統合軍司令官が、動く標的を攻撃するといった具体的な能力に関連した資源の要求を確定することができるようになったのである。
 第4に、予算配分プロセスを責任をもって管理するために、国防副長官が主導する調達改革研究は、大調達プログラムのための「資本勘定」を確立するために本省が議会と協働するよう勧告した。
統合能力最適組み合わせを通じて権限と責任を調整する
 本省の資源のほとんどは、陸・海・空・海兵隊のそれぞれを通じて供給されている。この体制は往々にして、陸・海・空・海兵隊それぞれが他から供給される能力に依拠して組織するのではなく、各個に完璧な戦闘装備を調えようとする中で、能力領域内部でのずれまたは重複を生み出しがちである。調達部門では、本省はすでにいくつかの統合能力見直しを立ち上げている。これらの見直しは、具体的な能力セットの領域、たとえば統合空域・ミサイル防衛、地上攻撃兵器、電子戦などに必要な投資を査定する大規模な戦力プログラムに注意を向けている。
 本省は、任務、人、関係、技術、関連する資源を、本省の多くの活動のもとにより効率的に統合するこうした当初の取り組みをより発展させていく。……その第一歩として、本省は、能力最適組み合せの概念を使って、3つの能力領域を管理する。統合軍と統合統制、統合ネット中心作戦、統合宇宙作戦である。われわれが経験から学び、このアプローチに確信を深めたら、ほかの能力領域にもそれを拡大する計画である。
統合任務割り当てを管理する
 効率的なガバナンスを容易にするのは、管理レべルでの権限、責任、資源の明確な調整である。ガバナンスを脅かす最も困難な課題のいくつかは、統合マネジメントの配分が、陸・海・空・海兵隊や国防省庁の伝統的な、しばしば法で定められた権限構造と衝突したときに起こっている。 
 今回のQDRは、よりよい方法で任務成功に必要な権限、資源、明確な進捗予想に見合った任務割り当てを保証する統合活動を組織し、管理する必要性を強調している。……統合任務割り当てプロセスは、統合マネジメントの配分を中心的に割り当てて監督し、統合活動が本省の戦略的目標に向かって調整され、正しい権限、責任、資源をもって指定され、重複や欠落を最小限にするように構成され、責任の明確な線を確立し、成果や必要のために絶えず査定されるようにすることを保証することになる。
事業の変革を推し進める
 国防事業システム管理委員会(DBSMC)が、本省の事業変革の取り組みのガバナンスを改善するために設立された。DBSMCは、国防事業のすべての上級指導者を結びつけ、事業プロセスの変革を推進し、統合戦闘員への支援を改善する最上級で単一の決定メカニズムである。本省はまた、国防事業過渡プランを練り上げ、アーキテクチャーをまとめ上げて本省の事業の変革を指導した。DBSMCは、責任を確立し、上級指導部の指導を向上させることによって、国防事業過渡プランの執行を統括することになる。
 事業変革戦略によって調整を確実にするために、本省は、国防事業アーキテクチャーとは別に実績プログラムを評価するために投資見直し委員会を創設した。当該の担当官によって認定され、DBSMCによって本省のアーキテクチャーに準拠しているとして承認されない限り、いかなる事業システムへの投資も義務づけられることはない。
 つい最近には、集団レべルの事業システムやイニシアチブを統合し、監督するために、国防事業変革局(BTA)が創設された。BTAは、人的資源、財政管理、調達、兵站などの領域で本省全体での作業を統合することに責任を負うマネジメントの連絡組織である。
リスクを管理し、国防事業全体の作業を測定する
 2001年のQDRで、本省はリスク・マネジメントの枠組みを導入し、本省の上級指導部が、短期的な要求と将来への準備との間でよりよくバランスがとれるようにした。
その他のガバナンス改革
 本省は、5つの集団的焦点分野のそれぞれにおいてガバナンスを改善することをめざした、上記以外のイニシアチブを考えている。それらは次の通り。
 需要、調達、資源配分プロセスにおける本省の長期で統合された展望を練り上げるために、将来の統合軍のための単一の主要提唱者を指名すること。
 新しい水平的組織を創設し、戦略的コミュニケイションや人事戦略などの主要分野における本省の活動をよりよく結合させること。
 統治、管理、コンピューター支援といった支援機能のための省庁共有モデルへ移行すること。

 マネジメントと作業の改革

 今回のQDRは、ガバナンスのみならず、次のことにおいて、調達・兵站プロセスの継続的トランスフォーメーションができると主張するものである。
国防調達の成果を改善する
 調達プロセスをめぐっては、国防総省の上級指導部や議会の間に深刻な懸念があり、ますます拡大している。こうした信頼の欠如は、コスト、スケジュール、成果ではかられる主要調達プログラムの本当の状態を正確に判断できないところから生まれているのである。防衛〔予算執行〕計画が予測不可能な性格を有しているのは、元をただせば、広い意味での調達システムが不安定だからなのである。このシステムを根本的に作り直すことによって、国防省の主要な調達計画は、もっと予測可能になり、国民の税金をもっとしっかり管理することができるようになる。
 本省は、従来のコストに基礎を置いたアプローチから、リスクに基礎を置いた業者選択プロセスを採用することを考えている。業者選択の決定は、コストを別個の指標として扱うのではなく、むしろ技術・マネジメントのリスクに基礎を置いている。
供給線の兵站を管理する
 2001年QDRにこたえて、本省は、本省がより効果的かつ効率的に軍隊を移動・維持するイニシアチブを引き受けた。こうしたイニシアチブには、派兵プロセスを改善し、兵站の専有面積や関連コストを減らす取り組みが含まれる。本省はまた、常設統合部隊司令部に一体化された兵站の青写真を提供するために活動し、兵站決定支援ツールの創設・活用を加速させた。
 今回のQDRでは、本省は、供給線の兵站コストや成果の認知度を向上させ、持続的な成果の改善の基礎を築くことに焦点を置いている。こうした目標を達成する戦略は、供給線の兵站活動にかかる費用を理解するために、資源とそれらを結びつけることからはじまる。本省はまた、潜在的な成果目標として商業的供給線の評価指標を調査し、コストを削減し、必要な物品の配達を速めなければならない。集中的な兵站能力が資本投下とプロセスの改善向上の双方をうながすために、現実的で防衛力のある戦略的実践目標を練り上げる必要がある。
 本省は、供給線の目標を満たすことをめざして、数多くの具体的なイニシアチブを実行している。たとえば、能動的・受動的な無線周波数識別技術(RFID、微小な無線ICチップを使う技術)は、情報源の認知度やマネジメントの自動化を通じて、知識面で有能な戦闘員への兵站支援を実行するための本省のビジョンを達成するうえで重要な役割を果たすだろう。RFIDは、戦略的レべルから戦術的レべルにいたるデータを共有し、統合し、同期化することを可能にし、供給線ネットワークのすべての集積点にそれを伝えるものである。

 医療保健システム(MHS)の変革

 この保健と健康保険のトランスフォーメーションは、国防省の他のトランスフォーメーションと同様である。国防省の目標は、全国防省ファミリーと生涯にわたる関係を持ち、予防、健康、個人の選択と責任を最大化するということである。本省の事業に関連する他の分野と同様、QDRは、医療支援を登場しつつある統合部隊雇用コンセプトと提携させることを提言している。新たに購入した医療契約や地区のTRICARE〔米軍の医療健保システム〕運営機関の合理化といった近年の改善の上にたって、QDRは、市場本位の、成果ベースの投資プログラムへ転換し続けることを提言している。さらに、計画立案プロセスや情報の透明性を向上させる一方、最近立ち上げられた本省の電子健康記録システムを活用することを提言している。何よりも、本省の武官・文官の上級指導者たちは、そうした現役でない顧客のために、TRICAREの給付構造を近代化する必要性を支持している。その意図は、彼らとその家族のために自己責任を推奨することによって退役後のより長く、より健康な生活を推進することであり、より長く、より健康に、最低のコストで達成するための保健資源の使用を推奨することである。
 それをするためには、TRICAREプログラムのバランスを回復するように、また、医療貯蓄口座の権限を求めるように、法制とルールを変えて、TRICAREの費用分担の仕組みを調整する必要がある。

 第5章 21世紀の総戦力を開発する

 国防省は、世界最大の雇用者であり、300万人以上を直接に雇用している。国防省の総戦力――その現役と予備役の軍事要素やその文民公務員、そして請負業者――は、国防省の戦争遂行能力を構成するものである。総戦力のメンバーは、世界中の数千の場所で、広範な仕事を行って、決定的な任務を遂行しているのである。
 慎重な軍指揮官であれば誰でも、公平な戦いは望まず、狡猾さ、能力、献身において、敵に対して「圧倒的優勢」を追求するであろう。よく訓練された全員志願制の総戦力のメンバーの私心の無い貢献と英雄主義は、米国の戦略的な「圧倒的優勢」の第1の根源である。

 総戦力を再構成する

 イラクとアフガニスタンにおける最近の経験は、現役と予備役の間で、またその中で軍事技能のバランスを再編することが必要だということを示している。したがって、過去数年間、軍事省〔陸軍省、海軍省、空軍省〕は、現役と予備役の間で、約7万のポストをシフトし、移転し、あるいは無くして、バランスを回復してきたのである。国防省は、さらに5万5千人の人員に対して、2010年までにそうした措置をとっていく。
 適切な技能が現役と予備役の各々に適切な技能が確保されるように、各軍事省は同様な総戦力精査を行っている。
 長い戦争において、米国は、大規模有事及び小規模有事に直面すると予想される。その間隔は、予測不可能である。長い戦争を戦い、その他の将来の有事作戦を遂行するために、統合部隊指揮官は、総戦力へのもっと直接的なアクセスを持つ必要がある。とりわけ、予備役部隊は、予備役軍人を選抜し、部隊はよりアクセスしやすくなり、現在より即応的に展開できるようにして、実戦化される必要がある。冷戦期には、予備役部隊は、現役部隊に大規模作戦の期間に支援を提供し、「戦略予備」として適切に使用されてきた。現在の世界の情勢の中では、この概念はあまり適切ではない。したがって、国防省は、次のことを行いたい。
 予備役部隊に対するアクセスのための権限を追求する。大統領の予備役招集の権限を270日から365日に引き上げる。

 適切な技能を形成する統合訓練

 QDRは、各軍事省の統合訓練能力を査定し、比較してきた。確かに、軍事省は、これまで作戦的に実績があるプロセスと基準を確立してきた。しかし、将来の複雑な、多国間の、多省庁間の作戦への準備を整えるためには、さらに統合訓練・統合教育を推進することが緊急に必要であることは明白である。この目標のために、国防省は、次のことを行っていく。
 新たな任務領域、ギャップ、及び継続的な訓練トランスフォーメーションに対処するために、「統合訓練戦略」を練り上げていく。
 訓練トランスフォーメーション計画を見直し、非正規戦争、複雑な安定化作戦、対大量破壊兵器作戦、情報作戦を組み込む。
 訓練トランスフォーメーション・ビジネスモデルを拡張し、統合訓練を結合し、新たな台頭しつつある諸任務を優先し、ビジュアルな発展的な技術を利用する。

 言語と文化の技能

 国防省は、アラブ語、ペルシャ語、中国語などのカギになる言語に堪能な要員の数を劇的に増やす必要がある。こうした言語をあらゆるレベルの戦闘や決定――戦略的なものから戦術的なものに至るまで――において使用可能にしなければならない。冷戦期にソ連に関して行ったのと匹敵するレベルで、中東及びアジアに対する理解と文化的諜報を育成しなければならない。

 情報時代の人的資源戦略を 構想する

 民間部門の高資格人事と競争して総戦力を構築するためには、国防省は、近代的な「人材戦略」と募集・訓練・引き留めの権限の双方を持たねばならない。
 新たな「人材戦略」は、総戦力全体にわたって、人とスキルの適切な配合を図ることに重点を置くものである。国防省の「人材戦略」は、「能力を焦点」にし、また「成果ベース」のものとなると考えられている。各軍事省は、その部隊を構成する資格と成果の基準の構成図を作り、こうした標準を達成するための人材開発プロセスを査定し、改善していく。
 そうすると、昇進、勲章、給与は年功や勤続階級というよりも個人の成績とリンクすることができるようになる。これは、成果に対するより良い動機づけとなる。

 第6章 取り組みの統一性を達成する

 国際的同盟者、パートナーと 協力する

 長年の同盟関係は、今後とも、21世紀の安全保障の課題への統一的な対処の基礎になるものである。このような確立された関係は、浮上してくる新たな課題に対応しうるように進化しつづける。米国と同盟諸国が協力して世界環境に影響を与える能力は、テロリストのネットワークを撃破するための根本である。
 可能なところでは米国は常に、他者と共にあるいは他者を通じて取り組んでいく。同盟国やパートナーの能力を活性化させ、今日の複雑な課題のリスクと責任を共有するための能力を形成し、そのためのメカニズムを整えていく。
 米国の諸同盟関係は、共通の安全保障の課題に対処するための基礎である。NATOは今後とも、米欧の安全保障の要石であり、欧州と北米の民主主義諸国の戦略的連帯を示すものである。NATOは新たな7つの同盟国の加盟、「平和のためのパートナーシップ」、NATO即応部隊の創設、新たな変革連合軍〔ATC〕の設置、アフガニスタンの国際治安支援部隊でのNATOのリーダーシップ、イラクにおけるNATO訓練ミッションを通じて進化しつつある。しかしながら、欧州の同盟諸国の多くは、高齢化と人口減少によって、米軍とともに効果的な作戦を遂行するために必要な能力への防衛支出を制約するものになっている。太平洋では、日本、オーストラリア、韓国その他との同盟が、この地域における二国間、多国間の関与と共通の安全保障上の脅威に対処するための共同行動を進展させている。また、インドも大国として、そして枢要な戦略的パートナーとして浮上している。
 テロリズムとの長い戦争、そして大量破壊兵器の拡散防止や他の非伝統的な脅威に対する取り組みにおけるこれらのパートナーとの緊密な協力は、これらの同盟が今後とも必要であること、そしてその能力を改善する必要があることを示すものである。
 国防省は、攻撃に反撃することを強いられるのではなく、未然防止が必要だと強調する大領領に従っている。国家を越えた脅威を、それが差し迫ったものになる前に打ち破るためのアプローチを、同盟国と協力して、同盟国の国内法と適用される国際法にのっとって、共同で練り上げているのである。拡散に対する安全保障構想〔PSI〕に基づき、それを支持する70カ国以上の統一した取り組みを可能にしている構想・構成は、大量破壊兵器拡散以外の領域にも拡大すべきである。その優先課題は、サイバースペースなどである。
 この4年間の作戦の経験に基づいて、本QDRはテロリストと戦っている諸国と直接にパートナー関係を結ぶ力を、大幅に柔軟に米国政府に与えるように議会に勧告するものである。ある国々に対しては、パートナーシップは、その国の国境内の安定と治安のために、治安部隊に対する訓練、装備提供、助言から開始される。他の国々には、世界中の安定、安全保障、過渡・再建作戦における米国又はその同盟国と連合したメンバーとして参加できるように、兵站支援、装備提供、訓練、輸送などで、援助を提供する。
 最近の法制の変化によって、パートナーの自衛への援助へのいくつかの障害は除去された。しかしながら、さらに大きな柔軟性が緊急に求められているのである。国防省は、「防衛連合支援会計」の創設を求めている。これは、連合パートナーが使うヘルメット、防弾着、暗視装置などの日常的な防衛用品の備蓄のために、必要に応じて支出を行うための会計である。
 必要に応じて、米軍部隊とともに連合作戦ができるように、償還なしで同盟パートナーに兵站支援、供給、サービスを提供できる国防省の権限を拡大すること。
 米軍部隊とともに軍事作戦に参加する連合パートナーが使用する装備を貸与できる国防省の権限を拡大すること。
 外国の治安部隊が国内の対テロリズム作戦、対反乱作戦のためにもっとも適した訓練と装備をほどこせるように国防省の権限を拡大すること。
 これらの支援対象は、ある諸国では、軍以外の司法部隊あるいは他の部隊でありうる。
 アフガニスタンとイラクにおける作戦にのみ適用される法制を除けば、国際的パートナーを形成するためのこれらの手段のための立案・財政支出についての政府の現在の権限は、21世紀のダイナミックな外交政策に適応したものではない。

 戦略的コミュニケーション

 長い戦争の勝利は、究極的には米国と国際パートナーとの戦略的通信にかかっているのである。効果的なコミュニケーションのためには、味方にも敵にも、言葉と行動の双方における首尾一貫性・真実性・透明性を通じて、信ぴょう性と信頼を維持しなければならない。
 QDRは、広報、公開外交への国防省支援、軍外交、心理作戦を含む情報作戦という各分野における基本的能力のギャップを認識している。このギャップを埋めるために、国防省は、組織化、訓練、装備、基軸的コミュニケーション能力への資金投入を適切に行っていく。

 まとめ

 本報告書で論じた対テロ戦争の勝利や他の決定的な国家安全保障上の目標の達成は、軍事的手段のみではできない。連邦レベル及び同盟諸国と協力した統一的な国家統治法が決定的なのである。連合諸国、パートナー諸国に支援された戦闘と予防作戦とあいまって、同時に、一般住民との効果的な交流は、成功を達成するために必須なものとなるであろう。
 世界中で急速に変化している安全保障上の課題に対処するために必要な軍事能力のためには、国内的にも国際的にも、迅速で適応性がある政策、プロセス、制度ができるような権限を備えることが必須である。

(おわり)