COMMUNE 2006/07/01(No.362 p48)

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7月号 (2006年6月1日発行)No.362号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  大国主義を強めるプーチン

□米帝がイラン侵略戦争を狙ってロシアを挑発
□対米対抗姿勢を強めたプーチン年次教書演説
□エネルギー資源の輸出に頼る資本主義化政策
□世界最大の天然ガス企業・ガスプロムの動向

●翻訳資料 06年QDR(4年ごとの戦力見直し)(中)2006年2月6日米国防省

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/現代ハイスコで劇的勝利−−室田順子

    共謀罪阻止の闘い

三里塚ドキュメント(4月) 政治・軍事月報(4月)

労働月報(4月)  闘争日誌(3月)

コミューン表紙

   本格的な憲法闘争

 『前進』春季特別号の憲法闘争のアピールは、革共同としての憲法闘争の本格的爆発に向かっての戦闘宣言である。昨年の前進社刊『改憲攻撃と労働者階級』を学び、全力で憲法改悪阻止の闘いを進めよう。自民党新憲法草案は、何よりも9条2項の撤廃と、「内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する」という条項を新たに設けるところに核心がある。われわれはこの一点に集中して広範な闘いを巻き起こさなければならない。帝国主義者の側が宣伝する「どの国にも自衛権はある、それを憲法上明確にするだけだ」という論に対して、労働者階級の側は、「自衛権一般ではない。帝国主義日本の自衛権は認めてはならない。帝国主義の軍事力発動の手足を縛らなければならない」ということを正面から主張すべきである。
 つまり、日本帝国主義は明治以来侵略戦争を繰り返し、15年戦争においては2000万人の中国・アジア人民を虐殺し、日本人310万人の命も奪った。 このような世界史的な戦争犯罪を行った日本の帝国主義は徹底的に軍事力を封じなくてほならないのだ。今、白帯は、アメリカ帝国主義の世界戦争戦略と一体となって米軍再編を進め、自衛隊が米軍と一体となって作戦行動を展開する、北朝鮮・中国侵略戦争体制をつくろうとしている。そのために憲法を改悪し、集団的自衛権を発動しようとしているのだ。「自衛権はどの国にもある」とか「攻められたらどうする」という議論は、本末転倒している。現実は、日本の軍隊が米軍とともに侵略戦争に出ていこうとしているところにあり、これを絶対許してはならないということだ。

 今国会では、超反動法案が目白押しである。指紋を強制する入管法改悪が参院で可決・成立した。この排外主義の悪法と対をなすように、治安維持法以上の反動治安立法である共謀罪は、ぎりぎりの攻防でかろうじて採決を阻止し、押し返している。さらに、ついに教育基本法改悪案が閣議決定され、国会に提出された。与党案は、「我が国と郷土を愛する態度を養う」と愛国心を盛り込んだことを始めとして、これまでの教基法のあり方を百パーセント転換するものであり、改憲攻撃そのものである。絶対成立させてはならない。ところが、その成立を阻むという民主党の対案は、与党案以上に「愛国心」を前面化したものであり、与党内の右翼的部分に取り入ろうとするとんでもないものである。国会情勢はいよいよ緊迫している。

 5月19日、東京高裁・中川裁判長は、迎賓館・横田爆取デツチあげ裁判の判決で、一審無罪判決を破棄し、東京地裁に差し戻すという断じて許すことのできない逆転反動判決を行った。そもそも中川裁判長は、1月の控訴審初公判で、検察側の証拠申請をすべて却下し、即日結審した。これは、検察側証拠を検討するまでもなく控訴棄却するという以外の解釈のしょうがないものだ。ところが、中川は、一審が審理不尽であるとか、証拠の評価が間違っているなどと一方的な判断を並べて、一審判決を全面否定したのだ。一審が審理不尽なら、自ら公判を開いてきちんと吟味すればいいのだ。16年間の公判で審理を尽くして共謀の立証を粉砕し尽ぐしたにもかかわらず、初めに有罪ありきで 「共謀を推認しうる」などとこじつけていることはまったく許しがたい。これこそ、今国会で問題になっている共謀罪の先取りなのだ。(た)

 

 

翻訳資料

  QDR(4年ごとの防衛見直し)中

 2006年2月6日  米国防省 土岐一史訳 

 第1章 長い戦争を戦う

 2001年以来、米軍は絶えず戦争の渦中にあるが、その戦争は、過去の戦争とはまったく違う。われわれが直面する敵は国家ではなく、分散した非国家ネットワークである。多くの場合、戦闘は、数多くの大陸のアメリカの戦争相手国でない国で起こるに違いない。多くの人が戦争について抱いているイメージとは違い、この戦いは軍事力だけでは勝てない。いや、軍事力主導ですら勝てない。しかもそれは、来る数年間続くかもしれない戦いなのである。
 常時35万人近くもの米軍の男女が、約130カ国に展開、もしくは駐留している。彼らは過去4年間の戦闘で鍛えられ、この長い戦いの一環として自由の敵と戦っている。彼らは、わが国の条約上の義務と国際公約を守っている。彼らはアメリカの利害と価値を守り、発展させている。彼らは頻繁に、平和を守り、救済を与えることを求められている。彼らは正義の軍隊なのである。

 アフガニスタン

  9・11攻撃から数週間後に米国と同盟国は、アフガニスタンに密かに入り、地元のアフガニスタン人諸勢力と連携した。陸上軍は、わが航空力を活用して、タリバンの抑圧的神政独裁を迅速に転覆した。タリバンとその外国からの後援者――アルカイダのテロリストとその仲間――は、速やかに撃破された。アフガニスタンでの戦争は、世界大的な距離を越えて迅速に軍事力を投入すること、遠い内陸部で作戦を遂行すること、航空部隊・陸上部隊・特殊作戦部隊・海兵隊部隊を統合部隊として一体化させること、人道支援を提供すること、そして最小限の地元の基地支援によって作戦を継続することができる米軍の力を示した。アフガニスタンでの2001年の行動は、適応性、行動のスピード、統合作戦の一体化、戦力の節約、そして地元勢力と共通の目標の達成のために協力するという原則をさらに強めるものであった。
 01年から米軍は、アフガニスタン国軍の設立を助け、1世代の中で最初の自由選挙を支援し、アフガニスタンの持続的自由のための安全保障的諸条件を作ってきた。次のような国際的な貢献が、こうした結果の達成を助けてきたのだ。すなわち、03年からのNATO主導の9000人の軍人からなる国際治安支援部隊(ISAF)がカブールで活動し、またアフガニスタンでの活動地域を広げている。そして今年中にはさらに多くの州に活動領域を広げる予定である。ISAFの任務の一環として、文民と軍人の州再建チームが地方で活動し、地元のアフガニスタン人当局者と協力して再建プロジェクトを担い、中央政府の権威をカブールを越えて拡大し、その能力を長期的に築き上げていくことを助けているのだ。

 イラク

 アフガニスタン同様、イラクはテロとの長い戦争における決定的な戦場である。アルカイダとその関連団体は、イラクを現在におけるイスラム最大の戦いの地と認識している。自由と民主主義がイラクに根付いたら、イラクはこの地域の人民に、過激派へのメッセージとなる魅力的な対案を提起することになるだろう。安定した自由なイラクを建設することに成功することは、敵に壊滅的な打撃を与えることになるだろう。
 過去4年間にわたって、統合部隊は、長期間の非正規作戦の要求に適応してきた。
 イラク治安部隊は、軍隊・警察問わず、数においても能力においても成長し続けている。イラク多国籍安全保障暫定軍(MNSTC‐I)が、イラク軍の125個を超える大隊の創設に尽力し、それらが今やアメリカや他の連合国の部隊とともに、敵部隊を発見・掃討する作戦に従事している。この例は、未来へのモデルである。他者が自助能力をつけることを助けることが、長い戦争に勝利するうえで決定的なのである。
 米軍が直面する最大の課題の一つが、敵を発見し、その情報に基づいて速やかに行動することである。イラクでのこの課題に対処するため、本省はイラク戦域に統合諜報作戦センターを設置した。このセンターは、画像・信号諜報、人的諜報といったすべての情報源からの諜報を総合し、しかるのちにそうした情報を、立案や任務遂行機能に融合し、諜報を受け取ってから1時間以内、いや数分以内に行われる作戦に生かしていくものである。

 アフガニスタンとイラク を越えた戦闘

 テロリストのネットワークとの長い戦争は、イラクやアフガニスタンの国境をはるかに越えてひろがり、非正規戦闘――敵が国家の正規の軍隊でない作戦――という言葉で特徴づけられる数多くの作戦を含んでいる。近年では、米軍は多くの国で活動し、テロリストと戦い、パートナーが彼らの国の治安を維持し、国を統治することを助けている。そうした作戦で成功するためには、アメリカは多くの場合、間接的アプローチをとり、他者を強化し、他者とともに活動しなければならない。この間接的アプローチは、敵の最も強い場所を、あるいは敵が予測するようなやり方で攻撃するのではなく、物理的、心理的に敵の均衡を奪うことをめざすものである。「最小抵抗線」を突いて物理的に敵の均衡を奪い、ささいな脆弱性や感知した弱点につけこむ。「最も予測しなかった方法」を採用して心理的に敵の均衡を奪い、敵が結果的に敗北するような状況を作りあげる。今日、5大陸での大小の取り組みは、パートナーとともに、パートナーを通じて活動し、隠密行動をとり、不断の、しかし人目につかないプレゼンスを維持できることの重要性をしめしている。こうした取り組みは、長い戦争への間接的なアプローチの採用を代表するものである。
 東アフリカでは、アフリカの角合同統合任務軍(CJTF‐HOA)が現在、ケニヤ、エチオピア、ジブチで、受け入れ国の戦力を高めるために尽力している。
 サハラ砂漠以南の地方では、米欧州軍のテロリズム対策計画が、その地方の国家が自国の領土を警備するのに必要な独自の治安部隊と活動を発展させるのを援助している。この計画は、北アフリカや西アフリカのパートナーとの軍と民間の取り組みによって、台頭するテロリスト過激派の脅威に立ち向かっている。たとえばニジェールでは、後進的な国の東部が、国境をまたぐテロリストの安全地帯になるのを防ぐために、戦闘飛行教官の小チームが、ニジェール空軍が自分たちの技能に磨きをかけるのを援助してきた。

 人道的措置と初期予防的な措置

 米軍は地球上のあらゆるところで、人道支援や災害救助作戦を行い続けている。危機が悪化するのを防ぎ、苦難を軽減することは、アメリカの価値に合致する目標である。それはまた、アメリカの利益でもある。苦難を軽減し、早い段階で危機に対処することによって、米軍は、混乱がより広範な紛争や危機へと錐もみ降下することを防いでいる。
 過去4年間、米軍はまた、危機がより深刻な紛争になるのを防ぐ決定的役割を果たしてきた。03年リベリアでは、内戦と政府解体によって、秩序を回復し、本格的な人道的危機を防ぐ多国籍軍の介入が急務となった。米欧州軍の統合任務部隊が、一貫して西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の部隊とともに任務を遂行した。
 同様に、2004年初めのハイチにおける政治的暴力の増大への対応として、米統合部隊は、多国籍安定化部隊の一員として迅速に部隊を派兵した。
 米南方軍によるプラン・コロンビアの支援は、初期予防的行動のもうひとつの例である。アメリカはコロンビア政府とともに、違法薬物の生産や密輸と戦ってきた。
 合同統合作戦は太平洋でも、紛争を抑止し、安定を維持するうえで決定的な役割を果たしてきた。前方展開された米軍部隊と、柔軟な抑止作戦とが、潜在的な敵の意志をくじき、同盟国やパートナーを安心させることに成功してきた。03年春のイラクでの作戦中、地域的な抑止能力と統合部隊や精密兵器の地球規模の再配置が、朝鮮半島での休戦を維持するアメリカの決意とコミットメントを内外に示したのである。
 過去数年間に地球上のいたるところ――太平洋、インド洋、中央アジア、中東、コーカサス、バルカン半島、アフリカ、ラテンアメリカ――で行われた作戦は現地の状況に独特に合致した任務を行う小チームの重要性を示している。ほとんどの場合、権限、プロセス、実践のアップデートが、こうした分散した作戦への対処の統一性を確保するために求められてきた。しかし、アメリカ政府が最も費用対効果が高い方法で目標を達成できるようにするためには、協力するための政府の権限をさらに拡大せねばならないであろう。
 近年の作戦は、米軍がより高い言語技能と文化的理解をもつことをますます必要としている。米軍にとって、敵が活動する場所でその地域の言葉を話すことは有利である。04年、国防総省は「国防言語トランスフォーメーション・イニシアチブ」を立ち上げ、軍隊がもっと効果的に国際的パートナーと協働する能力を向上させてきた。陸軍省・海軍省・空軍省もまた、より集中的な文化・言語訓練を開始した。時とともに、文化的理解が深まった、言語能力の高い軍隊が生まれ、長い戦争において勝利をかちとる能力がさらに高まるだろう。本省は、言語を比較的軽視してきた伝統を克服し、各級――戦術的分隊から作戦司令部にいたるまで――に優れた言語能力を持った個人を配置する努力を強めつづけなければならない。

 国内における本省の役割

 今回の長い戦争では、米軍は国内でもより大きな役割を果たしてきた。9・11の攻撃の直後、米軍は本土の防衛を助けるよう要請された。大統領の指揮のもと、現役、予備役の部隊が空中警戒待機を行い、航路を守り、沿岸を守り、重要なインフラストラクチャーを守り、運輸保安局が設置されるまでの間空港などの運輸ハブを防衛した。
 2002年、本省は新しい統合軍、米北方軍を創設し、本土防衛任務を単一の司令部のもとに統合する責任を負わせた。その取り組みを統合し、本土防衛問題により重点を置くために、本省は、本土防衛担当国防次官補という新しい文官ポストを設置した。
 本省は、潜在的生物学的攻撃から防衛する医療対策の発展を加速させる国家的取り組み、「プロジェクト・バイオシールド」のためにワクチンの開発を援助している。「プロジェクト・バイオウォッチ」では、本省は他の連邦省庁と協力して、生物学的攻撃を摘発・鑑定する技術と手続きを向上させている。2004年に本省は、メリーランド州フォート・デトリックにおける「全米バイオディフェンス・キャンパス」の設置を指導した。キャンパスは、医学的・生物学的防衛の研究と開発に携わる複数の省庁が協力するための手段を提供している。
 州レベルでは、州兵が55の大量破壊兵器民生支援チームを出動させている――各州、準州、そしてコロンビア特別区に。州兵はまた、化学的、生物学的、放射線学的、核、大量爆薬の各攻撃に対処する12の高度反応部隊を創設した。有事や大きな公共行事における指揮・統制機能を高めるために、州兵は各州に統合部隊司令部を創設しつつある。

 学んだ作戦上の教訓

パートナーシップ能力をつくるための権限と資源をもつこと
 最近の作戦が示していることは、他者と共にそして他者を通じて取り組むための体制、そしてわれわれ自身が遂行することから、他者が出来るようにさせることへの重点の移行が決定的に重要だということである。それはまた、共通の目標へのより間接的なアプローチを採用することの重要性を強く示している。本省は、パートナーが自分たちの意図する役割や任務を遂行する能力を改善することを助けなければならない。それには、外国政府が自国の治安を維持し、自国民をより公正かつ効果的に統治することが含まれる。また国内的には、他の連邦省庁や州・地方政府が〔郡・市等〕含まれる。パートナーシップ能力をつくるための近年の取り組みはまた、司令官有事反応プログラム(CERP)などのプログラムを通じた資金への柔軟なアクセスやイラクやアフガニスタンでの作戦のための訓練・装備権限の重要性も示している。議会は、本省と協働して、テロとの戦争を戦うための安全保障上のパートナーシップを築くのに必要な権限をすべて与えることが求められる。最近施行された外国軍隊能力構築のための権限及び再構築・安定化担当省庁調整官の緊急支出権限の改正のほかに必要な権限は次の通り。指名された全世界の有事作戦のためにCERPを制度化すること。有事の際、最もよい立地条件にある連邦省庁に任務を課し、資源を配分するための大統領の権限を拡大すること。連合支援部隊への償還権限の拡大や、テロとの戦争でアメリカのパートナーとなっている他の諸国への兵站支援の拡大などである。もっとも良い立地条件にある連邦省庁に任務を課し、資源を配分するための大統領の権限を拡大すること、そして連合支援部隊への費用弁済の権限の拡大及び対テロ戦争で米国のパートナーとなっている他の諸国への兵站支援の拡大などが必要である。
 早期に予防措置をとること
 早期に予防措置をとるには、行動スピードの増大と、潜在的な敵が決断を下す方法を含めた状況の明確な理解が必要である。最近の多くの対テロリスト作戦では、テロリストの所在を知ってから捕捉するまでの時間は、分単位で測られてきたのである。米軍は、いくどとなく危機に迅速に対応する敏捷性を示してきた。しかしながら、戦士を支援するのに必要な広範な権限・プロセス・手続が、この作戦的敏捷性に相応するだけ十分には与えられていないのが現状である。最近の作戦では、権限の欠如によって、米軍部隊が迅速に行動する能力を妨げられている。また、適切な権限を得るまでのプロセスが数カ月もかかってる。
 行動の自由を拡大すること
 今回のQDRは、より間接的なアプローチ、隠密性、ねばり強さ、柔軟な基地使用や戦略的リーチを組み合わせることによって、戦略的にも作戦的にも行動の自由を拡大する措置を提言している。
 コストバランスを移行させること
 21世紀に直面する広範な安全保障上の課題に立ち向かうに当たっては、アメリカは絶えず、人命や富の面で自国の出費を最小限にする一方、敵に耐久不可能な出費を強制するよう努めなければならない。あらゆる潜在的競争者に対するアメリカの科学的、技術的優位を維持することは、将来の軍拡競争を断念させるわが国の能力に貢献するものである。

 第2章 戦略を実現する

 テロリストのネットワークを粉砕する

 テロリストのネットワークは、グローバリゼーションとその結果としての自由の拡大に反対している。しかし、皮肉なことに、彼らはまさにグローバリゼーションそのものを道具として利用する。すなわち、情報とアイデア、物資とサービス、資本、人間、テクノロジーの無制限の流れを、攻撃の手段として、好んで使うのである。
 アルカイダとその関連する運動は、80カ国以上で作戦をおこなっている。ニューヨークで、ワシントンで、ジャカルタで、バリで。
 彼らに対する勝利は、彼らの過激なイデオロギーが、自分達の拠点にしている国々の人々や無言の支持者たちから信頼されなくなった時にもたらされるであろう。つまり、彼らのイデオロギーが時代遅れとなり、共産主義やナチズムのようなもはや信用されなくなったような教義と同様に忘却の彼方に追いやられる時である。
 この戦争は、武器をもってする戦いであると同時に、イデオロギー闘争である。テロリストのネットワークと彼らの殺人的なイデオロギーに対する戦いである。

 本土を徹底的に防衛する

 グローバリゼーションは、小さなグループや諸個人にも力を与える。国家はもはや、暴力の破滅的な使用の独占権をもっていない。
 しかしながら、米本土への脅威はテロリストによるものだけではない。敵対的な国家も大量破壊兵器を使って米国への攻撃を行うこともありうる。大量破壊兵器は、ミサイルで運搬されることも、民間の船舶や航空機といった、それほど一般的でない方法で運搬されることもありうる。こうした諸国は、密かに代理を通じて攻撃することもありうる。遺伝子操作による生物兵器などの先進的な大量破壊兵器を入手しようとしている敵国もある。そうした兵器は、現在の防衛を突破しうる。また、こうした諸国の大量破壊兵器能力がテロリストの手に落ちるか、あるいは彼らに与えられ、米国攻撃に使用されることもありうる。

 戦略的岐路にある諸国の選 択に関与する

 巨大な新興勢力が、どのような選択を行うかは、米国と同盟国・パートナーの将来の戦略的位置に影響を与えるものである。米国は、これら諸国が、協力と相互の安全という利益を育むような選択を行うようにすることを追求する。しかし同時に、米国と同盟国・パートナーは、これらの巨大な新興勢力が、将来において敵対的な道を選択する可能性に対して、ヘッジしておく必要がある。排他的政策または強要的政策と米軍または連合部隊をターゲットとした高度な軍事能力の開発は、とりわけ懸念される。
 ヨーロッパとアジア太平洋地域以外では、中東、中央アジア、ラテンアメリカが、流動的状況にあり、新たな地政学的岐路を代表している。米国は、この地域の諸国の選択を方向付けるだけでなく、これら諸国に対して利害や野望をもつ、この地域外の諸国の選択に対しても方向付けすることを追求していく。
 中東の多くの諸国は、戦略的な岐路にある。この地域の多くの国が米国のパートナーとして、テロリスト・ネットワークと闘っている。確かに積極的な展開が見られてきているとはいえ、この地域はまだ急変しやすい。多くの国が国内的な安全保障の脅威に直面しつづけている。イランの大量破壊兵器入手への動きは、この地域の不安定化要因である。テロリストのネットワークが多くの国で今も活発であり、グローバル経済を破壊しようとして、地域のエネルギー供給に脅威を与える可能性がある。
 中央アジア諸国は、数十年の共産主義の支配から立ち上がってきたが、いくつかの諸国は、未だに基本的な政治的自由と自由市場の採用に向かうにはほど遠い。この地域の諸国はイスラム主義テロリストの脅威に直面している。地域のエネルギー資源は、経済発展の好機を提供するものであるとともに、外部勢力が資源に影響力を及ぼそうとする危険をもたらすものでもある。
 ラテンアメリカでは、この数十年間にわたって、絶えず政治的・経済的発展への前進が行われてきた。しかし、経済成長の遅さ、民主主義的機構の弱さ、持続的な経済的不平等の激しさのために、ベネズエラなどの諸国では、ポピュリスト的権威主義の政治運動が再興してきている。こうした運動は、これまでの成果を脅かしており、政治的・経済的不安定の源泉となっている。
 これらの地域を越えて、インド、ロシア、中国などの主要な、そして台頭しつつある強国が、どのような選択を行うかが、21世紀の国際安全保障環境を決定する核心的要因となるであろう。
 インドは、巨大な強国として、また枢要な戦略パートナーとして台頭してきている。2005年7月8日、米国大統領とインド首相は、米印関係をグローバルなパートナーシップへと転換する決意を宣言した。長期的な、多民族的な民主主義という共通の価値観が、持続的で拡大していく戦略的協力の基礎となり、両国にとっての大きな好機を示している。
 ロシアは、今も過渡期にある国である。冷戦期のソ連と同じ規模、強さの軍事的脅威を米国やその同盟国に及ぼすことはありそうもない。米国は、可能な領域では、大量破壊兵器の拡散への対抗、テロリズムとの戦い、薬物の密輸などの共通の利益においてロシアと協力していく。今も米国は、ロシアの民主主義の衰退、非政府組織(NGO)と出版の自由の縮小、政治権力の集中、経済的自由の制限を懸念している。国際的には、米国は、ロシアを建設的なパートナーとして歓迎しているが、他の諸国の政治的・経済的独立及び領土的一体性を危うくする破壊的兵器技術の外国への販売についての懸念を強めている。
 主要な台頭しつつある強国のうちでは、中国が、米国と軍事的に競争するもっとも大きな潜在力を持っている。中国は、もしも米国が対抗戦略を持たないならば長期的には米国の伝統的な軍事優位を無くしてしまいかねない妨害的軍事技術を配備する可能性がある。米国の政策は、中国がアジア太平洋地域で建設的・平和的な役割を演じ、テロリズム、拡散、薬物、海賊行為などの共通の安全保障上の課題に対処するパートナーとして動くように勧めることに重点を置きつづけている。
 中国は、国境を超えて戦力を投入する力を改善するために、軍に巨大な投資を行ってきた。特に、戦略兵器と戦略能力に投資してきたのである。1996年から、中国は2003年を除き毎年、実質価格で10%も防衛支出を増加させてきた。そのうえ、中国の安全保障問題のほとんどの側面は、秘密に包まれている。外の世界は、中国の軍事近代化の動機、意思決定あるいは核心的な能力について、ほとんど知らない。米国は、中国がその意思を明らかにし、軍事計画を説明することを勧めている。
 中国の軍近代化は、90年代中期・後期から、台湾に対して軍を使用するシナリオを作る中央指導部の要求にこたえて加速されてきたのである。中国は、中国軍が使用するために、そして世界的に輸出するために、次のものに重点を置いて巨額の投資を続ける可能性が高い。すなわち、高性能の、電子・サイバー戦に重点を置いた非対称軍事能力、対抗宇宙作戦、弾道ミサイルと巡航ミサイル、先進的な統合防空システム、次世代魚雷、先進潜水艦、近代的・高度な地上・海上システムから発射される戦略核攻撃力、及び戦域無人航空機などである。
 米国は、すべての主要な台頭しつつある強国が、建設的な主体として、また利害関係者として、国際システムに統合されるようにしていく。米国は、また、いかなる外国勢力も、地域的又は世界的な安全保障の諸条款を指図できないようにすることも追求していく。いかなる軍事的競争者も地域的ヘゲモニーを可能にするあるいは米国や他の友好国に対する敵対行為を行うことができるような、妨害的若しくは他の能力を開発しないように思いとどまらせるようにしていく。そして攻撃と強要を抑止することを追求していく。もしも抑止が出来なかった場合には、敵対国の戦略的、作戦的目標を阻止する。
 巨大な新興勢力の選択に関与していくさいには、バランスのとれたアプローチが必要である。一方では協力を追求しながらも、他方ではこれら諸国自身による協力関係の追求が、将来の紛争を排除することに失敗する可能性もあることを考えて、賢明なヘッジ策を立てておくことである。ヘッジ戦略を成功させるためには、パートナー諸国の力量を強化し、彼らの脆弱性を低めねばならない。これに関連して米国は、国際的パートナーの間での防衛システムのいっそうの統合を達成するように取り組み、いかなる敵の策動もパートナー諸国を分断できないようにしていく。諜報センサー、通信ネットワーク、情報システム、ミサイル防衛、海中戦闘・対地雷戦闘能力を統合するように、米国は、同盟国とパートナー諸国と協力していく。パートナー諸国の自衛能力を強化し、いかなる強圧的威嚇に対しても抵抗できるようにしていく。
 主要な台頭しつつある大国が地域の安定を脅かしうる能力を開発することを思いとどまらせるために、そして、紛争を抑止し、侵略を撃破するために、米国は、さらに基地配置態勢を多様化しつつある。国防省の「グローバル防衛態勢の見直し」(GDPR)にもとづいて、米国は、建設的な二国間関係を推進し、反アクセス脅威(米国が域に入ることを妨害する脅威)を軽減し、いかなる地域でも米国のアクセスを制限することを狙って行われる政治的強要の可能性を相殺するように、米国はグローバルな態勢を適応させていく。米国は、敵が複雑で多次元の困難に直面するように、そしてその攻撃立案を困難化するようにするために、米国の能力を開発していく。そうした取り組みには、枢要な戦略的、作戦的領域――継続的偵察、長距離攻撃、ステルス、作戦行動、空・海・陸上部隊の戦略的距離における持続、制空、海中戦闘など――における米国の優位を持続させるために投資することが含まれる。

 大量破壊兵器の入手と使用 の阻止

 潜在的な敵国で、大量破壊兵器を所持し、あるいは入手しようとしている国は、たくさんある。これら諸国にとって、大量破壊兵器、とりわけ核兵器は地域的なヘゲモニーを確保し、他国を脅迫する手段となるからである。彼らは、核兵器、化学兵器、あるいは生物兵器をふりかざして、体制の存続をはかり、米国が紛争地域へ立ち入ることを妨害し、あるいは他国が彼ら諸国に対して行動を起こすことを阻止しようとするであろう。こうした諸国が米国にとって、直接の軍事的脅威とはならない場合でも、テロリストに武器を供給するか、技術的な助言を与えることをつうじて、米国と同盟国に間接的な脅威を与えることはありうるのである。北朝鮮は、核兵器、化学兵器、および生物兵器を入手しようとし、みずから長距離ミサイルを含む兵器を開発し、問題ある国家にそれを販売しさえしてきた。イランが、核戦力を追求し、テロリズムを支持し、地域の近隣諸国を脅かすような声明を発していることは、イランの意図に同様の懸念を抱かせるものである。イランは急速に長距離運搬システムと核兵器製造を可能とする完結した核燃料サイクルを開発しつつある。
 紛争になった時には、大量破壊兵器を有する諸国は米国あるいはその同盟国に対して、先制的に、その紛争の最中に、あるいは紛争後の安定化の取り組みを遅らせるために、その兵器を使用しかねない。
 いくつかの他の大量破壊兵器所有国は、必ずしも米国に敵対的ではないが、国内的な不安定化に直面する可能性があり、その大量破壊兵器のコントロールを失う可能性がある。世界の多くの地域における統治の欠落は、大量破壊兵器の危険を助長しており、テロリスト組織が大量破壊兵器を獲得する、あるいはそれを隠匿する好機を与えている。
 米国の主要な目的は、敵対的な国家あるいは敵対的な非国家的勢力が、大量破壊兵器を入手するのを阻止することである。

 国防省戦時戦力構想の 練り上げ

 米軍は、引き続き前進地域で活動を展開しなければならないが、過去4年間の作戦上の要請によって明らかになったことは、われわれは地球上どこでも活動しなければならないということであり、2001年QDRが提起した4つの地域(ヨーロッパ・中東・アジア沿岸地帯・北東アジア)の中で活動する、あるいはこれらの地域から出動するだけでは不十分だということである。
 9・11後の世界では、不正規戦争が、米国と同盟国、パートナー諸国の直面する戦争の支配的な形となったのであり、したがって、指導方針が計算に入れなければならないのは、分散した形での長期の軍事行動である。それに含まれるのは、不正規戦争、外国の国内防衛、テロ対策、反乱対策、安定化活動、再建活動などである。
 こうした考察に基づき、国防省は戦力計画構想を次の3つの領域に分けることにした。本土防衛、対テロ戦争・不正規(非対称)戦闘及び正規の戦闘活動である。この全領域で国防省は、非対称的アプローチを用いる敵に対する作戦の遂行力を高めねばならない。
 本土を防衛する
  定常状態
 米本土に対する外部からの脅威を検知し、抑止し、必要とあらば撃破する。そしてパートナーが米国の国家安全保障に寄与できるように強化する。こうした活動の例は、他の連邦省庁・州・地方政府と共同の日常的な国土安全保障訓練、戦略的抑止〔核戦力のこと〕、沿岸警備隊とともに行われる日常的海上作戦、領空防衛作戦を含む北米航空防衛、ミサイル防衛、被害管理のための文民当局への支援の即応体制などである。
  緊急状態
 米国の大量破壊兵器攻撃への反撃及びその結果の被害管理に貢献する。あるいはハリケーン・カトリーナなどの破局的事件についても同様である。また、指示があれば、防衛即応体制のレベルをあらゆる領域(例えば空、海、宇宙、サイバースペース)で上げる。
 対テロ戦争での圧倒と非正規作戦の遂行
  定常状態
 外部の国境を越えたテロリスト攻撃を抑止し、防衛する。パートナーを統合安全保障プログラムを通じて強化し、多様な、世界的に分散した非正規作戦をさまざまな期間、持続する。
  緊急状態
 大規模な、長期になる可能性がある非正規戦闘――反乱鎮圧、治安、安定化、過渡期、再建活動を含む――を遂行する。非正規の緊急状態作戦の例は、イラクとアフガニスタンでの作戦に関連した、現在のレベルの取り組みである。
 通常の戦役の遂行と勝利
  定常状態
 前方配備部隊によって国家間の強要と侵略を抑止し、パートナーを戦域安全保障協力によって強化し、またプレゼンスの任務を遂行する。こうした活動には、日々の日常的なプレゼンスの任務、軍間の交流、合同演習、安全保障協力活動、各期ごとの対潜在敵国演習を通じた即応性の通常的な増強などが含まれる。
  緊急状態
 2つのほぼ同時の通常戦役(またはすでに大規模な非正規戦役が長期的に行われている時には、1つの通常戦役)を遂行し、同時に、機に乗じた侵略を抑止するための重点的抑止力増強を行う。2つの戦役のうち1つにおいて、敵対的な体制を取り除き、その軍事能力を破壊し、市民社会への過渡、あるいはその再建のための条件を整える。

 第3章 能力と部隊を新たに方向付ける

 統合地上部隊

 統合地上部隊は、今日の特殊作戦部隊が遂行していく任務をよりいっそう引き受けていくようにしていく。将来の部隊の構造は、すべてのレベルで、よりモジュール化され、ほぼ自立的な自己維持力を有し、伝統的編成においても、より小さな自律的部隊に分割した時でも作戦ができるものである。
 〔そうした部隊を実現するために〕陸軍の3つの構成要素すべてにおいて、モジュール型旅団を創設する。正規軍では117個(42戦闘チーム旅団と75支援旅団)、州兵では106個旅団(28戦闘チームと78支援)、予備役では58支援旅団である。即応戦闘力の46%増であり、また戦闘部隊/支援部隊バランスの改善となる。
 陸軍の部隊と司令部をモジュール型にトランスフォームする。
 航空統合戦術管理プログラムを人員の航空・地上作戦の統合訓練と無人航空機の使用によって拡張する。
 陸軍の最終的戦力を2011会計年度までに現役48万2400人、予備役53万3000人で安定させる。海兵隊の最終的兵力を同年度までに現役17万5000人、予備役3万9000人で安定させる。

 (つづく)