COMMUNE 2005/8/01(No.352 p48)

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8月号 (2005年8月1日発行)No.352号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 非正規職法案と激突する民主労総

□社会的交渉路線の執行部独走を現場の力阻む
□労働運動に新活力生み出す現場労働者の闘い
□資料/民主労総 組織現況

●翻訳資料1 AFL−CIO既成指導部の分裂
●翻訳資料2 ロサンゼルスのホテル労組が勝利

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/凶暴な弾圧と闘う非正規職労−−室田順子

    都議選必勝へ

三里塚ドキュメント(5月) 政治・軍事月報(5月)

労働月報(5月)  闘争日誌(4月)

コミューン表紙

   靖国思想との激突

   「つくる会」教科書採択の情勢が緊迫している。「新しい歴史教科書をつくる会」が作成し文部科学省が検定合格させた中学校歴史・公民の教科書は、「万世一系の天皇」中心史観で日本史を描き上げ、日帝の侵略と戦争の歴史を全面的にねじ曲げ、賛美し、再び「お国のために命をささげる」国民をつくろうとし、明治憲法をたたえ、現憲法の改悪を推進する教科書だ。他の7社の教科書の内容と画然と違うものである。こんなものが教室に持ち込まれることは、教室から子どもを戦場に送るものとなる。横山教育長を副知事に起用した石原都政の新執行部は、「つくる会」教科書突破の陣容であり、これをもって杉並を突破口に東京で50%の採択率を狙い、全国を制圧しようとしているのだ。全力で最後まで粉砕の闘いを貫徹しよう。

 第2次世界大戦の終結から60周年にあたる今年6・23「慰霊の日」を前に、沖縄戦の歴史を塗り替えようとする動きが表面化してきた。「自由主義史観研究会」代表の藤岡信勝らが、「集団自決せよという軍の命令はなかった」という話をデッチあげようとしているのだ。渡嘉敷島と座間味島において、大量の集団死が発生したが、それが直接軍幹部の命令によるものかどうかという話に沖縄戦全体を切り縮めようとするとんでもないトリックである。「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓や、皇民化教育によって、住民は軍とともに死ぬこと以外の選択肢はないところに追い込まれていた。沖縄全体が集団死を強制されていたのである。沖縄における集団死を「お国に命をささげた愛国美談」にすり替えることは許されない。

 小泉は就任以来毎年靖国神社参拝を強行してきている。靖国神社参拝推進派は、今年こそ8月15日に小泉に参拝してほしいと訴えている。この問題は、敗戦60周年の8・15をめぐる解決されざる激突点である。なぜ、小泉は靖国参拝に固執するのか。それは新しい戦死者のためである。戦時に突入した中での靖国参拝だということだ。国に命をささげた「英霊」としてたたえることが不可欠なのだ。この点では、日本のプロレタリアーには、敗戦帝国主義(自国帝国主義)を打倒する戦後革命の敗北以来、未解決のまま残してきた問題が、今再び提起されているのである。靖国神社という帝国主義戦争の総括にかかわる問題で、帝国主義権力の側と、労働者階級と被抑圧民族・被侵略国民族人民との間に和解の余地はないのだ。

 都議選後の情勢は、「つくる会」教科書採択阻止闘争の貫徹と、4大産別決戦の一層の強化、そして8・6広島、8・9長崎、8・15終戦の日の闘いが重大化する。靖国神社をめぐる闘いは、アジア人民の怒り、そして日本の労働者階級の戦争への怒りを爆発させ、激突的になっていく。そして、延長国会での郵政民営化法案粉砕の闘いが重大である。公務員身分の剥奪という形で、全逓労働運動にとどめを刺す攻撃を許すかどうかの決戦である。7月日教組、8月自治労大会での対決は、「自衛権を承認」して改憲勢力に転落していこうとしていることをめぐる日教組、自治労の戦闘的労働者と執行部との大決戦である。さらに、JR尼崎事故をめぐって、JR連合、JR総連、さらに国労西日本本部の裏切り的のりきりを粉砕し、動労千葉が展開している安全運転行動を守り、11月国際労働者連帯集会へ前進しよう。  (た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

  AFL-CIO既成指導部の分裂

 村上和幸訳

【解説】

 先月号に続いて、アメリカのナショナルセンター、AFL−CIOの大流動情勢に関する資料を掲載する。
 @Aは、古参の戦闘的な労働運動家、ハリー・ケルバー氏のAFL−CIO分裂策動に対する批判である。
 Bは、「チェインジ・トゥー・ウィン連合」という組織の発足と同時に発表した文書である。
 6月15日、AFL−CIOの約3分の1の勢力を持つ5つの大労組の執行部が集まり、「チェインジ・トゥー・ウィン連合」を設立した。これは事実上、別のナショナルセンターへの移行組織だと見られている。
 これまで脅しとして繰り返し語られてきたAFL−CIOからの脱退を具体的に実行に移す段階に入ったのだ。
 今回の連合を形成する5つの労組は、
◇サービス従業員国際労組(SEIU)、約170万人
◇チームスターズ(トラック運転手を中心に広範な産業部門を組織している労組)、約140万人
◇食品商業労組(UFCW)、約140万人
◇レイバラーズ(土木建設部門などの労組)、約80万人
◇縫製・繊維/ホテル・レストラン労組(UNITE HERE)、約44万人
 いずれも巨大労組だ。AFL−CIO内の100万人以上の4労組のうち、3つまでが今回のチェインジ・トゥー・ウィン連合に入っている。
 こうした動きは、1955年のAFLとCIOの合併以来の歴史的な大再編過程への突入といえるであろう。
 この大規模な分裂・再編の動きが出てきたのは、ひとつにはBの資料で5労組連合が述べているように、労組の組織率が毎年低下し、労働運動として存立の危機に陥っているということがある。だがそれだけではない。他方で、既成労働運動指導部の統制を突破して、現場労働者の新たな闘いが高揚しているのだ。5労組の動きには、新たな組織的体制を作って、現場労働者への統制を再強化しようという狙いがある。
 Aのケルバー氏の文章にあるように、5労組連合のチームスターズ、レイバラーズなどは、マフィアと癒着して犯罪行為をしてきたことで悪名が高く、それを口実に米司法省から介入を受けてきた組合だ。チームスターズでは、90年代にチームスターズ民主化同盟の力で新たな戦闘的な執行部が確立し、世界最大の小荷物業者であるUPSでの大ストライキを闘うなど、労働運動再生への道を開いた。だが、従来からマフィア支配で悪名高かったチームスターズは、司法省の介入支配を受けるという法的位置に置かれていたために、UPSストの後で、司法省は、マフィアとは正反対の戦闘的執行部を排除していったのだ。
 5労組のうち、SEIU以外の労組は、一方で多かれ少なかれマフィアと癒着して現場労働者を抑圧し、他方で、司法省の介入によって戦闘的潮流の台頭を弾圧してきたのだ。
 SEIUは、アメリカ労働運動の中では、戦闘的な労働組合といわれてきたが、このかん、いくつかの地方で、現場労働者の自主的な闘いに対して中央執行部が介入し、支部や分会の執行権を一方的に停止・接収したり、支部・分会の労働者の意見も聞かずに一方的に吸収・合併を強行したりしてきた。労働者が自分たち自身の力で決起することに、SEIU指導部も恐怖しているのだ。
 AFL−CIOのスウィーニー現執行部と5労組連合の争いは、労組官僚の間での争いにすぎない。
 その証拠に、双方とも労働者のもっとも切実な問題は、争点にしていない。イラク侵略戦争では、労働者・労働組合員やその家族が派兵されて戦死・負傷している。戦費によって、社会保障費、教育費等が圧迫されている。イラク戦争を口実にして、国内治安弾圧が強化され、労働運動弾圧が画歴史的に激化している。そしてこれは国際的な労働者階級への大攻撃だ。だが、両者の論争には、「イラク」「戦争」の一語も登場しない。ブッシュ政権による民営化攻撃についても触れない。民営化が労働組合破壊であり、社会保障破壊、教育破壊であるとして、現場労働者が必死になって闘っているのに。
 こうした分裂・大流動は、既成労働運動が従来のままではやっていけなくなったから発生したのだ。
 アメリカ帝国主義、アメリカ企業は、生産拠点の海外移転、民営化・外注化を近年ますます激化している。既成労働運動の存在基盤は次々に掘り崩されている。
 しかも、こうした労働者への攻撃は、既成指導部の統制を超えた労働者の反撃を呼び起こしているのだ。
 ケルバー氏もいうように、たしかに5労組連合の分裂策動は、労働者の団結を破壊する犯罪的なものである。だが、こうした既成指導部内の分裂・抗争で統制力に隙間ができることをもついて、階級的労働運動の新たな潮流は、前進していくであろう。そして、AFL−CIOと5労組連合の帝国主義労働運動を打倒し、本当に闘う労働者階級の団結を築いていくしかない。

 @AFL−CIOが分裂したらどうなる? 組合間戦争が勃発したら?

  2005年6月8日、ハリー・ケルバー 

 労働運動は、危機に直面している。それは、悲劇でもあり喜劇でもある。以下に述べることは、AFL−CIOの中で、いったい何が起こっているのかということである。
 まず、ジョン・スウィーニーAFL−CIO会長について見てみよう。彼は、1995年に「改革派」候補として選出された。彼には官僚的な指導スタイルが骨の髄まで染み付いているから、彼の問題解決の方法は、新たな戦略立案チームを作り、研究委員会を作り、新たな役職を作るということにすぎなかった。反対派の組合員の提案は無視した。
 このような手の込んだことをやっても、新規労働者の労組への組織化は、何度となく失敗を繰り返した。そしてこうした失敗は、組合員には隠されてきた。しかし、スウィーニーは、彼が会長をつとめてきたこの10年近くの間に、アメリカの労組組織率が低落したことを隠すことはできない。彼が就任した時には、14・2%あった組織率が、今では12・5%だ。民間部門ではわずか7・8%だ。労働組合が巨額の資金を使って行った労働者家族の利益のための労働立法推進活動も、重要な立法は、まったくかちとれなかった。
 スウィーニーの支持者でさえ、彼の公開の場での発言は、ダメだということを認めている。彼は、たまには全国ネットのトークショーに出演することもあるが、面白みのないキャラクター、一本調子のしゃべり方で、全米の視聴者が興味をもってきくようなことはほとんど言わない。機知も魅力もない。きつい質問に、皮肉やジョークで言い返すということもできない。彼は、敵に対しても、労働者家族に対しても、うまくコミュニケーションができないのだ。労働運動の立場について公衆に知らせる多くの機会を避けているのは、こういうことが原因だと思われる。
 AFL−CIOのホームページでの彼の声明は、官僚的な言葉ばかりで難解だ。ユーモアはほとんどない。彼の言葉の中には、偉大な哲学者も、科学者も、詩人も、画家も、あるいは歴史的な人物も、その影さえもまったく見えない。スタッフの報告書とメモ以外には、何も読んでいないのではないかという印象を受ける。彼には、文化に興味をもっているのだろうか。彼は、そういう興味を示したことはまったくない。
 だが、スウィーニーは、自分がさらに今後4年間のAFL−CIO会長の任期をつとめる資格があると思っている。彼は、大会で必要とされる50%の票をすでに獲得していると言っている。つまり、各々が数百、数千票をもっている大労組の8人ないし10人の委員長が、彼を支持していて、勝利を保証しているということだ。
 一般の組合員は、もちろん、大会での発言権をもっていない。全米で投票したとすると、スウィーニーは3%の票も得られるかどうかというところだ。というのは、彼は、ランク・アンド・ファイル(一般組合員)によく知られてもいないし、好かれてもいないからだ。
 注目すべきことは、少なくとも今のところは、こうしたスウィーニーの欠点をすべて知りながらも、誰一人として対立候補に立たないということだ。一時は、反対派の労組委員長グループは、彼らのうちの一人、UTITE HERE(繊維・ホテル労組)のジョン・ウィルヘルム委員長を立てたが、票読みの結果、35%ほどしかとれないことが分かって、降りてしまった。
 スウィーニーが再選されるという見通しであることは、アンディー・スターンにとっては、もう我慢の限界だった。彼は、AFL−CIOから脱退するという脅しを数か月間にわたって続けてきた。今や、彼が新たなナショナルセンターに出来る限り多くの組合を誘ってAFL−CIOから脱退することは、ほぼ確実になってきている。
 スターンが最近獲得した同盟者、50万人の組合員を擁するカーペンターズ友愛会のダグラス・マカラン委員長は、彼に合流するであろう。マカランは労働運動の中で最悪の独裁的な指導者であることは、周知の事実だ。
 スターンが、もっと良い、もっと強力な労働運動を作れると考えてAFL−CIOを脱退しようとしているのなら、彼の野心的なプランを灰燼に帰しかねない危険なギャンブルをしようとしているということだ。彼がAFL−CIOから脱退すれば、2つのライバルのナショナルセンターの間での内乱が勃発することは、ほぼ確実だ。新たな労働組合員を募るための資金、エネルギー、時間は、ほとんど残らなくなるであろう。反労組的な経営者は、労組設立キャンペーンをつぶすために、いっそう有利な立場に立つことができるようになる。
 スターンは、労働者の生活を改善すると約束しているのだが、その当の労働者の困窮と苦しみを引き起こすことになるさまざまな事態が、スターンの行動によって誘発されるであろう。SEIUと他の反対派労組の一人当たり分担金が支払われなくなれば、AFL−CIOは数百人のスタッフをレイオフせざるをえなくなる。AFL−CIOが効率的に機能するための能力に、深刻な打撃になる。
 スウィーニーは、スターンがAFL−CIOから脱退することを予想して、すでに先制的な措置をとっている。彼は、AFL−CIO各州連盟や中央労組評議会に対して、SEIUと他のAFL−CIO傘下から抜ける労組のメンバーを、それらの役職から排除するように指令した。もしも、この指令が守られるなら、伝統的に労働運動の経済的・政治的キャンペーンを主導してきた州連盟と労組評議会は混乱し、機能停止に陥るであろう。
 しかも、2004年の大統領選のときに完全に示されたような、労働運動の政治的な団結は、なくなってしまうであろう。スターンは、労働運動の政治戦略については別の考えをもっており、次期の選挙では、スウィーニーの第二バイオリンをひく可能性は低い。
 客観的にみれば誰でも、労働運動の未来は深刻な危険にさらされていると判断せざるを得ないであろう。シカゴで7月25〜28日に行われる大会の時までに賢明な解決策を見出せないならば、AFL−CIOは、労働運動の歴史の中のエピソードになってしまうであろう。
 あなたは、諸労組中央のリーダーたちが、労働運動の統一を維持しつつAFL−CIOを再編する実行可能なプランを見出すことを期待しているかもしれない。また、彼らが、AFL−CIO傘下の1300万人の労組員がそのプランを支持して、それに参画するように、手を差し伸べてくると期待しているかもしれない。また、労組の組合員は、こうした困った事態についての情報を与えられるものと想定しているかもしれない。だが、そうした期待、想定は誤りだ。
 もっとも大きな25の労組のホームページを調査した結果、労働運動が直面しているこの危機について何らかの言及をしているのは、4つの組合しかなかった。(SEIU、チームスターズとレイバラーズは、スウィーニーの提案に対する彼らの反対について説明するための文章を載せている。AFSCMEは、SEIUのAFL−CIOからの脱退の計画についてのシカゴ・トリビューン紙の短い記事を載せている)
 他の21の労組は、労働運動内で何が起こっているのかについて、自分たちの組合員に対して語ることを意識的に避けている。日常業務をそのまま続けるというやり方だ。労働組合員は、この危機の深さについて知らされないままだ。あたかも、それは指導者の問題であって、組合員にはまったく関係ないことだと言わんばかりだ。21のホームページのほとんど全部が、「最近の出来事」欄にも、「AFL−CIO」という言葉さえ登場させていない。
 州連盟と中央労組評議会の指導者たちの間でも、この問題で興奮したり苦悩したりしている兆候はほとんど見られない。彼らは、ほとんどが、自分自身の問題で忙殺され、スウィーニー派とスターン派の間の破滅的な争いに介入しようという意志は、まったく示されていない。
 また、全国の労働運動活動家にも、この大会での自殺的な争いを予防しようというプランをもって声を上げている者は見当たらない。なぜ、『レーバー・ノーツ』は、大会前の協議会を開いて、彼らの数百の支持者を結集させ、労働運動の分裂を防止するためには何をすべきかを討議するようにしないのであろうか。なぜ、チームスターズ民主化同盟などのランク・アンド・ファイル運動は、労働運動の未来にとって極めて重要なこの闘いに関与しないのか。
 われわれの怠慢のために労働運動が破壊されることを許してしまっていて良いのだろうか。大会で、大量の労働組合員の怒りを爆発させなくて良いのであろうか。

 AAFL−CIOから脱退するか否か、 組合員が投票権すべきだ

 2005年6月15日、ハリー・ケルバー 

 サービス従業員国際組合(SEIU)は、アンディー・スターンやSEIU本部執行委員会の67人のメンバーの私有財産ではない。それは、組合員のものだ。組合員が、SEIUを作り上げ、SEIUの組合がある職場で労働し、組合費を払ってSEIUを支え、SEIUの政策決定に最終的な権限を持っているのである。
 しかし、スターンと他の4つの労組の委員長は、自分たちの組合の組合員を無視して、新たな労組ナショナルセンターを作るという計画を進めている。そして、彼らは、それがAFL−CIOよりも良いもの、強いものになると保証するというのだ。
 スターンとSEIUの他の役員たちは、本部執行委員会で、「必要ならば、AFL−CIOから脱退する」権限を公式に認められた。
 また、スターンは、SEIU組合員の70%を代表するローカル(支部)が、スターンに脱退する権限を与える決議を承認したと述べた。
 しかし、ローカルでは、発声採決もされず、投票用紙による採決もされていない。また、AFL−CIOの脱退に反対する者に十分な意見発表の機会を与えることもしていない。AFL−CIO改革が必要なことは明らかだが、別の改革案を発表する機会も与えられていない。
 AFL−CIOからの脱退は、小さな問題ではない。それは、組合員の健康保険証や年金についての労働協約による保護を脅かす可能性もあるし、労組の団体交渉における力を弱める可能性もある。SEIUの組合員が、権利の問題として、この問題で脱退賛成・反対の両方の意見を聞いてから投票することは許されるべきではないというのであろうか。
 もしスターンが、組合員の圧倒的多数が彼を支持しているということにそんなに確信があるのなら、なぜ、この問題で全国的な投票を行わないのであろうか。それをやって、強力に支持を受ければ、彼のポジションが強化されるのだ。だとすると、なぜ彼は、それをやらないのかが疑問なのだ。
 少なくともスターンは、組合員の支持があることについて、いつくかの証拠を示そうとしている。しかし、スターンのナショナルセンターに合流しようとしている他の5人の委員長は、どうなのか。5人とは、チームスターズ〔トラック運転手等の組合〕のジェームズ・ホッファ、レイバラーズ〔土木・建設等〕のテレンス・オサリバン、UNITE HEREのジョン・ウィルヘルムとブルース・レイナー、国際食品商業労働組合のジョゼフ・ハンセンである。
 彼らは全員、あたかも自分たちが組合を所有しているかのように、計画を立てている。彼らには、組合員にAFL−CIOから脱退すべきか否かの投票をさせるつもりはまったくない。それは彼らがもう決めてしまったことだから。
 このようにして、この労働運動指導者たちの私的な会合が、自分たちだけで、AFL−CIOを潰すことができるというわけだ。彼らは、合計500万人の組合員に代わって発言しているのだと主張しているが、何の証拠も示されていない。
 スターンの連合のうち、3つの組合(チームスターズ、レイバラーズ、ホテル労組)では、組合員投票を組織するには、何の困難もないであろう。米国司法省は、彼らの間に犯罪者がいるとして、何年間も、彼らに全国的な投票を行うことを強制してきたのだ。〔マフィアとの癒着のこと〕
 スターンの新たな同盟者、カーペンターズ統一友愛会〔建設部門〕のダグラス・マカランは、3年前にAFL−CIOを脱退したが、組合員には何の相談もなかった。マカランは、新たなナショナルセンターに合流する見通しだが、スターンと違って、組合民主主義を実践しているという見せかけさえも作ろうとしていない。
 AFL−CIO執行委員会は、労働組合がAFL−CIOから脱退しようという時は、全労組員の投票を行い、賛成を得た場合にのみ脱退することができるという新規約を作るべきだ。必要ならば、組合員の権利が侵害されていることを主張して、仮処分申請をすべきである。

 Bもっと強力な労働運動を建設する

 05年6月15日発足した「チェインジ・トゥー・ウィン連合」のホームページより

 労働者は、この数世代の中で、雇用・賃金・医療保険・退職後の保障について、最悪の攻撃をうけている。
 アメリカの労働者の3人に1人が組合員だったころは、労働組合運動は、すべての労働者の生活水準を上げる強さを持っていた。 今日、民間部門の労働者の12人に1人しか労働組合員ではない。政府は、グローバルな大企業が、何のチェックもされずに1世紀間の進歩を逆転することを助けている。
 AFL−CIO本部の役員たちが最近だした提案は、労働組合がすでにやっていることをもっとやって、政治家に出す金をもっと増やせば、われわれは労働者の中での組合員の比率が毎年下がって力を失いつづけているという傾向を逆転できることを前提にしている。
 しかし、多くの組合員は、組合が変わる勇気を持っていれば、労働者は、力を再建してアメリカン・ドリームを回復できると確信している。
 「アメリカン・ドリームの回復」という提案は、すでに500万人の労働者を代表する労働組合に支持されている。その内容は、次のようなものである。
◇ 数百万人が労働組合を作ることを助け、アメリカでの労働に報いるための強力な運動を建設していくことを、われわれの第1の優先課題とする。
◇ 同一産業で働くすべての労働者の力を統一し、すべての労働者の利益のために、今日の巨大なグローバルな大企業と交渉することができるようにする。
◇ 今日の労働人口の変化にみあった多様性を反映する。
◇ 政党ではなくて、経済に基づいて、労働者の独立した声を増大させ、政治に反映させていく。
◇ AFL−CIOの戦略、構造、優先課題を近代化し、AFL−CIOがこうした変化が可能となるようにする。
 このプログラムを実行することによって、労働組合員は、次のことを行い得る力を持った、アメリカの新たな草の根の運動を建設するために、コミュニティー・グループと協力することができる。
1 すべてのアメリカ人が安価な医療保険と尊厳をもった退職を入手できるようにする。
2 アメリカの雇用のウォールマート化〔注〕を阻止し、世界のウォールマートにそこから利益をあげているコミュニティーに対して、説明責任を求める。
 グローバルな大企業の反労働者戦術によってもっとも打撃を受けた、女性労働者、有色労働者を始めとする労働者に、新たな希望を与える。
 労働者が新たな力を得ることができるかどうかの決定は、現在から7月末のAFL−CIO全国大会の間に行われることになるであろう。
 アメリカの労働者の未来がかかっている。
(注) 「ウォールマート化」――最大手の世界的小売業者であり、アメリカ最大の雇用者であるウォールマートは、労働組合結成に対する徹底した妨害と、過酷な労働条件によって急成長した。同社の労務管理は、さまざまな資本の労働者への攻撃のモデルになっている。

 

翻訳資料

 翻訳資料-2

 ● ロサンゼルスのホテル労組が勝利

 05年6月11日 UNITE HERE本部ホームページ

 村上和幸訳 

【解説】

 6月11日、カルフォルニア州ロサンゼルスのホテル労働者の組合が、スト・ロックアウトを含む長期闘争のすえ、勝利した。
 組合は、闘争長期化の重圧に屈せず、6月9日に西ハリウッドのハイアットホテルで新たなストに突入した。経営側は、ストを中止しなければ他ホテルでもロックアウトすると通告した。全ホテルの労働者は団結を保って闘争を貫徹し、ロックアウト開始期限がぎりぎりまで迫った早朝、ついに経営側が組合の要求をいれた協約に合意したのだ。
 経営側は昨年、7月の労働協約の更新期限を前にして、協約の大改悪を提案してきた。特に医療保険の経営者負担分のカットは、特に新規移民の低賃金労働者が多いホテル労働者にとって生きる権利を奪われる重大な攻撃だった。
 UNITE HEREローカル11(縫製・繊維/ホテル・レストラン労組第11支部)は、04年4月から協約闘争に入っていった。
 ローカル11は、新協約の更新期限を他地域の期限に合わせることを協約闘争の要求の中心軸にすえた。巨大ホテル資本と対決するためには、他地域の労働者と団結して、一斉に闘争することがもっとも重要だという理由からだ。全米的な団結の強化によって、賃金、医療保険などの要求も本格的に貫徹できるということだ。
 経営側は、闘争の長期化につれて、医療保険自己負担分を勝手に引き上げて賃金から差し引くなど不当労働行為を乱発した。ブッシュ政権によって反動化させられた全国労働関係委員会(NLRB)さえ、50件以上の不当労働行為を認定している。
 だが、ローカル11は、協約の期限を闘争の軸とするという路線を最後まで守り抜いた。
 そしてこの重大な協約闘争のさなかに、ロサンゼルスで行われたイラク反戦闘争や百万人労働者行進組織化のための地域集会などを積極的に担っている。今年3月19日のイラク開戦2周年闘争にも、マリア・エレナ・ドゥラーソ委員長を先頭に決起した。労働者階級全体の団結を強化することによって、ローカル11の団結も強化することになったのだ。
 ローカル11のピケには、地域の他労組の労働者が多数、支援にかけつけた。またホテル・ボイコット運動にも、地域、全米の労働運動が協力した。
 翻訳資料本文に出てくるビラライゴーサ次期市長は、03年の都市交通ストの時には、市議会議員として闘争を裏切った張本人だが、今回は、地域の労働運動全体の団結力を前にして、ホテル労働者の要求をほとんど全部いれた斡旋案を作らざるを得なくなったのだ。
 要求の軸である協約期限は、ニューヨーク、ホノルル、シカゴ、サクラメント、モンテレー、トロントなどと同じ2006年になった。ニューヨークなどの4月に対して、ロサンゼルスは11月になったが、このかんの全米的なホテル労働者の闘争長期化の傾向の中では、闘争期間が重なることは明らかだ。不当労働行為によって労働者が被った損害は、利子つきで賠償される。実質的には全面勝利といえる。
 翻訳資料1で述べられているように、UNITE HERE指導部は、AFL−CIOの既成指導部内の抗争の一方の当事者だ
 ローカル11にみられるような、ランク・アンド・ファイル(現場労働者)の闘いは、既成指導部に底知れぬ恐怖を与えている。既成指導部は、労働組合を名のっている以上は、医療保険の破壊などに対する労働者の闘いを推進する建前を取らざるを得ない。だが、闘いが本格的に爆発することは、官僚的統制がきかなくなること、それどころか自分たちの存在基盤そのものがなくなることを意味するのだ。
 なお、昨年10月の動労千葉の訪米団は、ローカル11と同様にスト/ロックアウト闘争に突入していたUNITE HEREのサンフランシスコの支部(ローカル2)と交流した。その後、動労千葉を始めとする闘う新潮流は、サンフランシスコのホテルの経営者である国際興業本社に対する闘争を行ってきた。資本は、国際的に展開しており、労働者階級の団結も国際的に強化されていくのだ。
 ローカル11の勝利は、同じ資本と闘っているローカル2の労働者、全米・全世界のホテル労働者、そして全産業の労働者を激励している。
【〔 〕内は訳者による】

………………………………………

 本日〔11日〕午前5時、ロサンゼルスの選挙されて間もないアントニオ・ビラライゴーサ次期市長は記者会見を開き、UNITE−HEREローカル11(全米縫製・繊維労組/ホテル・レストラン労組第11支部)とロサンゼルス・ホテル雇用者協議会が暫定合意に達したことを発表した。経営側は、ロサンゼルスのもっとも有名な7つのホテルから2500人の労働者をロックアウトするという期限を設けていたが、その期限ぎりぎりになって、この合意に達した。
 ビラライゴーサ次期市長は、「冷静に協議できたことを報告できることは喜ばしい。合意に達して、ロックアウトは回避された」「今後は、観光客とさまざまな大会がロサンゼルスにまた来てくれるように協力できるようになる。今日、われわれは世界に向かって『ロサンゼルスにようこそ』と言える」と語った。
 ボナベンチャー・ホテルの掃除係を8年間やってきたマリベル・バレンチェアさんは、大感激だと言っている。「私は、ロックアウトになると思って、朝の3時から起きていたんですから。でも、4時半に大ニュースが飛び込んできました。勝ったんだって。最初は信じられなかった。でも、今はお祝いをしている。誰か、私のほっぺたをつねってみて」
 ハイアット西ハリウッドホテルの清掃係、モレナ・エルナンデスさんは「他の労働者、市議会議員、今度の市長やコミュニティーの皆さんが私たちのストライキを支援してくれたことにたいへん感謝しています」と語った。
 暫定合意は、労働者による批准手続を経ることになる。合意の核心は、労働協約の有効期間中に渡って〔時間当たり〕0・65jの賃上げをすること、無料の家族健康保険給付、家族の病気に関して労働者が病欠を取ることができるという新条項、そして労働協約の期限切れ期日を2006年11月にしたことだ。労働者は、来週初めに批准投票を行う。〔15日、投票員投票で批准された〕
 この協約は、清掃係、ベルマン、フロント係、宴会場係、調理人など2500人の労働者をカバーする。対象となるホテルは、ハイアット西ハリウッド、ウェスティン・ボナベンチャー、シェラトン・ユニバーサル、レージント・ベバリー・ウィルシャー、ウェスティン・センチュリー・プラザ、ウィルシャー・グランド、ミレニアム・ビルトゥモアだ。
 UNITE−HEREローカル11のマリア・エレナ・ドゥラーソ委員長は、「ロサンゼルスの素晴らしい日です。雇用と諸手当が良ければ、家族とコミュニティーが強くなります。新市長、組合員、雇用者協議会に感謝します。われわれは、ロサンゼルスをもっと良くしていくでしょう。この協約によって労働者も、ホテルの顧客も、必要とするものを得られるようになるのです」と語った。