COMMUNE 2005/5/01(No.349 p48)

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5月号 (2005年5月1日発行)No.349号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 戦後世界が激変 拡大EUの発足

□単一通貨圏・25の主権国家・4億5千万の人口
□世界経済の分裂とブロック化を推進するEU
□戦争・大失業・組合破壊と闘うEU労働者階級

●翻訳資料 ブッシュの一般教書演説 村上和幸訳

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/4・1ゼネスト・非正規職闘争勝利へ−−室田順子

    3・20国際共同行動

三里塚ドキュメント(2月) 政治・軍事月報(2月)

労働月報(2月)  闘争日誌(1月)

コミューン表紙

   石原打倒へ全力を

 米英日帝のイラク侵略戦争開戦から2年目の3・20国際共同行動は、全世界で巻き起こるイラク撤兵の闘いと連帯して、東京・日比谷野外音楽堂に6000人の労働者人民を全国から結集して大高揚をかちとった。アメリカでは、ニューヨークでMWM(百万人労働者行進)ANSWERが呼びかけて2万人の集会を行い、サンフランシスコではILWU(国際港湾倉庫労働組合)ローカル10が主体となって港湾作業をストップして闘った。ロンドンでは15万人の大闘争となった。米帝ブッシュのイラク侵略戦争の行き詰まりと泥沼化の中で国際反戦闘争が新たな発展を遂げ始めたのだ。日本の闘いは、陸・海・空・港湾労組20団体を軸に、イラク撤兵と改憲阻止を大きなスローガンに闘われ、改憲阻止闘争の展望も同時に開いた。
 それに先だって、今年はファシスト石原都政のもとでの「日の丸・君が代」強制に対する3月卒業式闘争が東京の教育労働者とそれを支援する労働者学生によって大爆発をかちとった。学校現場での「日の丸・君が代」の押しつけは、戦争への動員の攻撃であり、これを打ち破ることは戦争協力拒否の最前線の闘いである。まさに「戦争は学校から始まる」のだ。都高教本部の屈服方針にもかかわらず、現場の労働者の中には労働者としての誇りにかけて職務命令を拒否する労働者が存在する。これを支持し防衛する闘いとして連日の校門前のビラまきが闘われた。権力がビラまきに対して2度も逮捕の弾圧を加えてきたが、広範な怒りの闘いによって勾留を許さず奪還した。闘いの正しさとその広がりがそこに集中的に示されている。
 また、春闘の中で闘われた動労千葉ストライキは、教育労働者の決起を引き継ぎ発展させ、3・20国最反戦闘争に階級的な心棒を入れる重大な闘いだった。それ自身が戦争協力拒否宣言であり、日帝・小泉=奥田に対する最も先端における対決であった。3月17〜19日の3日間、72時間ストライキを闘い、昨年を上回る270本の運休を出す闘いだった。また、15〜19日には、全本線運転士を対象とした安全運転闘争に決起し、レール破断の続発に対する安全対策の実施を求めて闘った。団結こそが社会を変える力だ、労働組合の力強い闘いの中に労働者の未来があることを、事実の力で全社会に示す偉大な闘いだった。そこには小なりとはいえ、階級的労働運動を全力で切り開き、帝国主義と真っ向から対決する前衛部隊が存在する。
 3月卒業式闘争で示されたように、石原ファシスト都政との対決は、日帝・小泉=奥田路線との闘いの最も重大な軸をなしており、戦争への動員攻撃との闘いの突破口をなしている。石原は日帝の中で異端をなしているのではなく、小泉がやろうとしていることの先端を切り開こうとしているのである。これを侮ることは、30年代ドイツ階級闘争の敗北の二の舞いをもたらす。逆にここで石原の階級的本質をしっかりと見極め、全力で立ち向かって勝利することは、日帝打倒の突破口をこじ開けることになるのだ。まさに6月都議選闘争(7月3日投票)は、石原を打倒する政治決戦となった。既成の政治勢力が石原の前に屈服している中で、石原こそ日帝の危機の現れであり、最弱点であると見破って闘いを集中する中に、勝利の展望が切り開かれる。都政を革新する会の長谷川英憲氏を押し立て、全力で勝利しよう。(た)

 

 

翻訳資料

  翻訳資料

 ブッシュの一般教書演説

 2005年2月2日

 
村上和幸訳  

【解説】

 ここに掲載する一般教書演説は、第2期ブッシュ政権の方針を包括的に発表したものである。

 第2期人事は世界戦争宣言

 この演説が何を意味しているかもっとも分かりやすい事実は、第2期政権の陣容だ。
 ライスは、独仏などの反対を押し切ってイラク戦争に突入した時の強硬論者だったが、そのライスが、独仏などとの外交の最高責任者である国務長官になる。最初から、独仏などに「喧嘩を売っている人事」だと言われている。
 新国連大使、ボルトンは、以前から、「国連などというものは存在するのか」と罵倒してきたことで有名な人物だ。
 国連などでの外交場では、平時には、帝国主義列強同士が、それなりに交渉し、相手と利権を分け合ってきた。そこでは、厳しい対立があっても、表向きは外交辞令が支配してきた。だが、今はボルトンのようなむき出しの激突をする人物をアメリカ帝国主義が求めているのだ。
 そして国内での弾圧のために、ゴンサレスを司法長官に任命した。法律などに縛られる必要はないとして、アブグレイブの拷問を推進した人物だ。
 また、CIAやFBI、軍諜報部などすべての諜報を統括する機関を新設した。9・11直後に国土安全保障省を新設したが、今度また、さらに新たな治安機関を作ったのだ。軍を含めて、政府機関の徹底的な民営化・削減を行いながら、治安機関だけは次々に増設している。そして、今度の新機関の長官はネグロポンテだ。彼は、中南米で暗殺部隊を指揮し、昨年は駐イラク大使として、占領支配の事実上の最高責任者を務めた。アメリカ帝国主義は、国内の労働者階級の闘いを、もっとも恐れているのだ。
 世界銀行の総裁には、国防副長官のウォルフォウィツが指名された。彼は、イスラエルの極限的なパレスチナ民族抹殺を支持し、イラク侵略戦争を推進してきた、いわゆる「ネオコン」の代表格だ。もともと世銀は80年代以来、国際通貨基金(IMF)とともに、新植民地主義体制諸国のいわば破産管財人の立場にたち、構造調整政策を強要してきた。再植民地化を進め、公共部門の破壊・民営化によって人民を窮乏に陥れてきた。この総裁にウォルフォウィッツをすえたことは、他の帝国主義を激烈に押しのけて排他的に再植民地化を進めることを意味する。
 このように、第2期ブッシュ政権の配置は、アメリカ帝国主義がきわめて激烈に現状を破壊しようとしていることを示している。

 大国も転覆する

 一般教書演説に先立つ1月18日、新国務長官就任にあたってライスは、上院外交委員会指名承認公聴会で行った演説で、キューバ、ビルマ(ミャンマー)、北朝鮮、イラン、ベラルーシ、ジンバブエの6カ国を、「圧政の拠点」と呼んだ。日本では「拠点」という報道が多かったが、原文では「アウトポスト」すなわち「前哨」「前進基地」である。つまり背後に本丸があると言明しているに等しい。
 ブッシュが02年の一般教書演説で「悪の枢軸」と決め付けた、北朝鮮、イラン、イラクが今後もターゲットになっていく。そのうえで今回は、さらに踏み込んで、中国やロシアまで狙っていくことを明らかにしたということだ。
 ブッシュの1月20日の大統領就任演説では、「テロ」という言葉も、「大量破壊兵器」も「イラク」も一言もなかった。その理由は、一つには「大量破壊兵器」という開戦の口実に根拠がなかったことを米政府当局さえ認めざるをえなくなったほど、°ブッシュ政権のウソ″が全世界に定着してしまったことだ。また、占領軍に対するイラク人民の解放闘争が激化し、ファルージャの大虐殺にもかかわらず、占領支配がますます危機に陥り、解放区・半解放区が拡大していることだ。特に、1月30日に強行しようとしていた暫定国民議会選挙がどの程度できるか、自信が持てなかったのだ。
 だが、このイラク占領の危機にもかかわらず、就任演説は、イラクからの撤退どころか、むしろ全世界に戦争を拡大していくことを宣言している。就任演説では、「この世界から圧制をなくす」「世界中での自由を拡張する」と強調されている。歴史的にアメリカ帝国主義は、「民主主義」や「自由」を掲げて、第2次大戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争などを戦ってきたのだ。
 また、「対テロ戦争」などの規定がないということは、従来のアメリカの戦略の流れから見て、むしろ重大なエスカレーションを意味する。90年代初めから、アメリカ帝国主義は、「同時に2つの大規模地域紛争(戦域戦争)を戦う能力」を基準とする戦略をとってきた。つまり、中東で戦争をしながら、同時に朝鮮半島でも戦争をする能力ということだった。この場合、戦争の相手は、地域的な中小国家や非国家的なゲリラを想定してきた。米軍とはまったく違った戦い方をする相手との戦争という意味で、「非対称的な戦争」という用語が使われた。
 ブッシュ政権の登場とともに、「2つの戦域戦争」戦略を破棄していく動きがでてきたが、それでも、「対テロ戦争」という規定の仕方は、「非対称的な戦争」だという規定だ。「2つの戦域戦争」戦略をまだ引き継いでいたのだ。
 だから、今回の大統領就任演説で「対テロ戦争」に言及しなかったことは、大国間の戦争を示唆したものと受け取られている。ロシアなどが激しい反応を示したのも当然であろう。

 所有者社会

 また就任演説では、国内に対して、教育改革、「オーナーシップ(所有者)社会の建設」が強調されている。「自由」「自己責任」の名のもとに、公教育の民営化や公設民営化を推進し、教育格差を歯止めなく拡大し、そして財産所有者だけが生き残る社会にしようというのだ。
 そして、一般教書演説では、特に個人年金勘定の創設による年金制度の破壊、裁判を受ける権利などアメリカ建国以来の制度の転覆もあえて行うことを明らかにした。また金持ち優遇減税をさらに推進することも強調している。
 また、シリア・イランへの言及は、戦争拡大の衝動を具体的に示しているといえる。エジプト、サウジアラビアへの言及の仕方も重要だ。アメリカ帝国主義に協力してきた反動的な諸国さえ、もっとアメリカ資本に自由を与えろと脅迫されているのだ。
 世界戦争の放火者となっている米英日枢軸を打倒しよう。
【〔 〕内は、訳者による補足】

………………………………………

 議長、チェイニー副大統領、連邦議員、国民のみなさん、
 新たな連邦議会が召集され、われわれ、選挙された公務員はみな、大きな特権をもっている。われわれは、われわれが奉仕する人民の投票によって官職につけられたのである。そして今夜は、アフガニスタン、パレスチナ自治区、ウクライナ、そして自由で主権をもったイラクの新たに選挙された指導者たちと、この特権を共にしているのである。
 2週間前、私は連邦議会で、すべてに自由をという理想を導くわが国の誓約を改めて示した。今夜は、この理想を国内と全世界で推進するための政策を述べる。
 今夜は、経済が健全で成長しており、ますます多くのアメリカ人が仕事に復帰しており、わが国が世界における善のための積極的な力となっていることから、わが連邦の状態は自信が持てるものであり、強力であると述べる。
 われわれの世代は祝福されている。機会が拡大し、医学は進歩しており、われわれの親たちの犠牲によってあがなわれた安全保障があるのであるから。今、鏡を見ると、少々白髪、いや多くの白髪(笑い)があるが、子どもたちは成人期に入りつつある。この時にあたって、次のような問いを発してみよう。「彼らにとってのわが国の状態はどのようになっているであろうか」という問いである。議員の皆さん、われわれが共に行う選択が、この問いへの答えになる。今後数ヶ月、あらゆる問題において、アメリカ人が今まで常に行ってきたことを行っていこう。そして、われわれの子どもたちや孫たちのために、より良き世界を作っていこう。
 第一に、われわれは、わが国経済を良く管理し、膨大な数の国民が依存しているこの偉大な諸機構を更新していかねばならない。アメリカの経済は、他のいかなる工業諸国よりも急速に成長している。過去4年間、われわれは、所得税を払っているすべての人に減税を実施し、景気後退を克服し、海外の新たな市場を開放し、企業犯罪を訴追し、歴史上最高の持ち家率まで高めた。そして去年だけで、米国は230万の新たな雇用を増やした。行動が必要な時は、議会がそれを与えてきたので、国民はそれに感謝している。
 今、われわれは、これらの成功に新たな成功を付け加えねばならない。この経済をさらに柔軟にし、さらに革新的にし、さらに競争力を高めることによって、アメリカは世界の経済のリーダーでありつづけることができる。
 アメリカの繁栄のためには、連邦政府の支出への欲を抑制することが必要である。私は、両党が歳出の抑制に熱心であることを歓迎している。私は、議会に、裁量的支出をインフレ率よりも低くし、減税を恒久化し、2009年までに赤字を半分に減らすというコースに踏みとどまる予算案を提出するつもりである。この予算案は、成果をあげていなかったり重複があったり不可欠の優先課題でなかったりする150の政府事業を廃止ないし大幅削減するものである。ここにおける原則は鮮明である。納税者が払った税金は、賢明に支出するか、さもなければ全く使わないかだということである。
 わが国の経済を強化し、さらにダイナミックにしていくためには、これからの世代が21世紀の仕事を遂行するように準備しなければならない。「ノー・チャイルド・レフト・ビハインド法〔「どんな子どもを置いてきぼりにしない」法〕の下では、基準は高められ、テストの得点は上昇し、マイノリティーの生徒の成績差を縮めていく。今こそ、われわれは、高校にもっと良い成績を求めねばならない。高校卒業証書が、〔人生の〕成功への切符になるようにしなければならないのである。職業訓練制度を改革し、アメリカの専門学校を強化して、職業訓練コースに参加する労働者を20万人増加させる。ペル奨学金の規模を大きくして、大学教育を受けることがもっと容易になるようにしていく。
 経済を強化し、競争力を増すためには、アメリカは企業家の努力や夢を罰するのではなく、それに報いねばならない。小企業は、とくに、女性とマイノリティーにとっては、前進への道である。したがって、われわれは小企業を不必要な規制から解放し、正直な雇用創出者をくだらない裁判から守る必要がある。司法はねじ曲げられている。そしてわが国の経済は、無責任な集団代表訴訟や不真面目なアスベスト賠償請求によって阻害されている。私は今年、議会に、司法改革を要請していく。
 経済を強化し、競争力を増すためには、われわれは医療をもっと安価にし、アメリカの世帯に家族に良好な健康保険をもっとたやすく手に入れられるようにすべきである。私は、議会に、税控除によって低所得労働者の保険の購入を助ける、包括的な健康保険の取り組みを進めるように、そして、すべての貧しい所にコミュニティー医療センターを設け、医療過誤と不必要なコストを防止するための情報技術の改善、小企業とその従業員のために健保預金口座が拡張された「アソシエーション・ヘルス・プラン(AHP)」〔1〕、及び医療過失責任改革〔2〕を行うことによって、医療費を低下させ、患者が必要とする医師と医療を手に入れられるようにする。
訳注〔1〕アソシエーション・ヘルス・プラン(AHP)―― 小規模雇用主が州を超えて結合し、健康保険を提供するというシステム。ブッシュ政権は、AHPの創設・維持が難しくなっているのは、州の規制のためだとして、医療、医療保険の規制緩和政策推進のテコとしてAHP問題を使っている。
〔2〕医療過失責任改革――医療過誤などに対して患者側からの損害賠償訴訟を起こすことを制限する立法案。上記司法改革での、企業に対するクラス・アクション(集団代表訴訟――危険な製品の被害者、公害の被害者などは、原告でない人も損害賠償がもらえる)の禁圧と並ぶ、裁判を受ける権利という民主主義の根幹を破壊する、歴史的反動政策。
 わが国の経済を成長させつづけるためには、低廉な、環境的に責任あるエネルギーの信頼性ある供給が必要である。4年近く前、私は、環境保護、資源代替、送電網の近代化、国内エネルギー生産の増強――安全でクリーンな原子力エネルギーを含む――を促進する包括的エネルギー戦略を提出した。私のクリア・スカイ(晴天)立法は、発電所による汚染を削減し、市民の健康を改善していくであろう。私の予算は、水素燃料自動車からクリーンな石炭、エタノールなどの再生産可能な資源に至る先端技術に、多くの資金をつぎこむものである。4年間討論すれば、もう十分である。私は議会に、アメリカをより安全にし、外国のエネルギーへの依存をより少なくする立法を通過させるよう求める。
 これらすべての提案は、経済を拡大し、新たな雇用を創出するために不可欠である。しかし、これらは、われわれの任務の開始にすぎない。将来の世代の繁栄を築くためには、われわれは、以前の時代に適するように創られた諸機構を更新しなければならない。年を追うごとに、アメリカ人は、古色蒼然たる、一貫性がない連邦税法が重荷になっている。私は、税法を全面的に検討する超党派の委員会を任命した。この委員会の勧告が出されたら、議会と私が協力して、民間主導の開発方式による、分かりやすい、皆に公平な税法を作っていく。
 アメリカの出入国管理制度も、時代遅れになっている。わが国の経済上の必要性に適合しておらず、またわが国の価値観に適合していない。自分たちの家族を養いたいことだけを願っている勤勉な人々を罰し、意欲的な勤労者が事業をすることを拒み、国境に混乱をもたらしている法律に、われわれは満足していてはいけない。今こそ、アメリカ人が就職しない就職口を埋める臨時的な移民労働者に許可を与え、恩赦を拒否し、誰が入国し、誰が出国しているかを把握し、麻薬取引者とテロリストには国境を閉ざす移民政策を実現すべき時である。
 世代間の信頼の象徴であり、アメリカでもっとも重要な制度の一つも、賢明で効果的な改革を必要としている。社会保障(公的年金)は、20世紀の偉大な道義的成功であったし、われわれはその偉大な目的をこの新たな世紀において称えるべきである。しかしながらこのシステムは、現在の道筋においては、破産に向かっている。したがってわれわれは、力をあわせて、社会保障を強化し救うべきなのである。
 現在、4千5百万人以上のアメリカ人が社会保障給付を受けている。そして数百万人以上が退職間近になっている。彼らにとっては、社会保障制度は、まだ健全で財政力がある。私は、55歳以上のアメリカ人すべてにメッセージを送る。「誰だろうと、あなた達を間違った方向に導かせない。あなたたちの社会保障制度は、いかなる意味でも変えられない」と。もっと若い労働者にとっては、社会保障制度は、深刻な問題をかかえており、時とともに悪化していく。社会保障は、数十年前に、非常に異なった時代のために、創設されたのである。その当時においては、人びとは、そんなに長くは生きなかった。給付は現在よりもはるかに低かった。半世紀前には、1人の給付を受ける人に対して、約16人の勤労者が社会保障システムに納付していた。
 われわれの社会は、社会保障の創設者たちが予見できなかったふうに変わってしまった。現在の世界では、長生きするから、給付も長く受ける。このような給付は、今後数十年にわたって劇的に上昇することになっている。16人の勤労者が1人の被給付者に支払いをするということから、現在は、3人の勤労者がそれを払うというように変わっている。数十年で、被給付者1人当たり、たった2人の勤労者が支払うというようになるであろう。1年経過するごとに、より少ない勤労者が、増大する退職者の高まる給付を、支払うようになるのである。
 こうしたことから、次のような結果が出てくる。現在から13年後、2018年には、社会保障は、収入よりも支出が多くなる。そしてその後は、年々、前年より大きな欠損が生じるようになる。たとえば、2027年には、政府は、2000億jの上積み支出をしなければ、制度を維持できなくなる。そして2033年には、年間赤字は、3000億j以上になる。2042年には、システム全体が費消され、破産する。もしも、こうした結果を防止する対策がとられないならば、それへの解決策は、劇的な増税、大量借り入れ、あるいは社会保障給付や他の政府施策の急激で厳しい削減しかなくなるであろう。
 2018年や2042年が、遠い将来だと思われることについて、私は承知している。しかし、こうした日は、それほど遠くはないことは、あなたたちの親が教えてくれる通りである。もしも、あなたが5歳児を持っているなら、13年後に大学授業料をどのようにして払うのか、すでに心配していることと思う。もしも、20代の子どもたちを持っているのなら、社会保障が彼らの退職前に壊れてしまうという思いも、小さな問題ではないであろう。米国議会にとっても、これは小さな問題ではありえない。あなたも私も責任をもっている。われわれは、社会保障の財政的問題を一挙に解決する改革を通過させるべきである。
 社会保障を手直しして恒久なものにするためには、さまざまな選択肢のオープンな、率直な見直しが必要である。1990年代、私の前任者クリントン大統領は、退職年齢の引き上げを提案した。ジョン・ブロー元上院議員は、社会保障給付の早期受給の意欲を失わせるようにすることを提案した。故ダニエル・パトリック・モイニハン上院議員は、給付の算定方法の変更を勧めた。これらのアイデアはすべて討議される。
 これらの改革がどれも容易なことではないことは承知している。しかし、わが子らの退職後の社会保障は、党派的政治より重要なのだから、われわれは、勇気と誠実さをもって、前進しなければならない。私は、議員たちと協力して、もっとも効果的な改革の組み合わせを見出していくつもりである。良いアイデアを提供してくれる人には、誰でも、耳を傾けるつもりである。しかし、いくつかの基本的な原則には従わねばならない。社会保障は、恒久的に健全にしなければならない。その仕事を先延ばししてはならないのである。経済の強さを、社会保障税(ペイロールタックス)の増税によって悪化させてはならない。低所得者が、退職にあたって尊厳と心の平和を得る助けになるように保障しなければならない。すでに退職した者と退職が近づいているものとの間に、変化がないように保証しなければならない。制度の変化は、若い労働者が自分の将来の計画を立てる時間があるように、いかなるものでも、段階的に行わねばならない。
 社会保障を手直しするにあたって、われわれは、若い勤労者にとってもこの制度が得なものであるようにする責任がある。この目標を達成する最良の道は、任意個人退職年金である。この案は、つぎのような仕組みである。現在は、稼いだ金のうち、給与から差し引かれる部分は、現在の退職者への給付に当てられている。若い勤労者の場合、こうした金の一部を自分の退職年金勘定に入れておいて、それを自分の将来のための虎の子にしておけるようにすべきだと、私は信じる。
 個人退職年金勘定は、次の理由で得なのである。金は、時と共に増えてゆく。その増え方は現行のシステムよりも高い率である。そして、個人年金勘定は、退職後に社会保障から受け取る年金よりも多くの金を提供することになる。その上、個人勘定に貯めた金は、望むならば、自分の子や孫に引き継がせることもできる。そして、もっとも良いことは、その勘定にある金は、あなたのものであって、政府は決してそれを取り上げることができないことである。
 目標は、退職後の保障を大きくすることである。だからわれわれは、個人年金勘定については、慎重なガイドラインを設定していく。金が、債券と株式ファンドの堅実な組み合わせにのみ行くことを確保していく。金が、取引所の隠された手数料に食いつぶされないようにしていく。退職間際に突然に市場が動揺することから投資を守れるように、良好なオプションが存在するようにしていく。個人年金勘定がいっぺんに空にならないように、伝統的な社会保障給付と併せて、長期的に給付されていくようにする。そして、このプランが財政的に責任を持ったものにするために、個人退職年金勘定を段階的に開始し、年間の拠出限度を長期的に上げてゆき、最終的にはすべての勤労者が自分の社会保障税の4パーセントポイント〔3〕を自分の勘定に入れることができるようにする。
訳注〔3〕アメリカでは現在、社会保障税(ペイロールタックス)は年収の12・4%(労資折半)。労働者が負担する6・2%のうち、4%分を個人勘定に拠出できるようにするというもの。
 個人退職年金勘定は、連邦職員には馴染んだものであろう。というのは、連邦職員はすでに、定期積立プランと呼ばれる、似通ったものをすでに持っているからである。定期積立プランは、自分の給与の一部を広い基盤を持つ5つの異なった投資信託のいずれかに寄託するというものである。今や、若いアメリカ人に、同じ保障、選択、オーナーシップを広げるべき時である。
 われわれの子や孫たちへの2つめの大きな責任は、自由社会を支える価値観を尊重し、それを受け渡していくことである。われわれの世代の多くが、長い旅路のはてに、家庭と信仰に帰り、責任感のある、道徳的な子どもたちを育てる決心をしている。政府は、こうした価値観の源泉ではないけれども、政府は、けっしてそうした価値観を掘り崩すものではない。
 結婚は神聖な制度であり、社会の基礎であるから、活動家的な判事によって再定義されるべきではない。家族、子ども、社会の利益のために、私は、結婚制度を守るために、憲法改正を支持する。
 社会は、それが弱者や傷つきやすい者をいかに扱うかによって評価されるのであるから、われわれは命の文化を築くように奮闘しなければならない。医学的研究は、命を救い、障害の克服を助けることによって、この目標への到達を助けることができる。私は、議会が国立衛生研究所の予算を倍増したことに感謝する。命の文化を築くために、われわれはまた、科学の進歩が、ある命を他の命の利益のために使うのではなく、常に人間の尊厳に奉仕するということを確保しなければならない。われわれは全員、いくつかの明確な基準に合意することができるはずである。私は、議会と協力して、人間の胎児が、実験のため、あるいは人体の部分を培養するために創られたのではないということを、守るようにさせていく。アメリカは、野心的、積極的、そして常に倫理的な医学研究において今後とも世界をリードしていく。
 裁判所は、偏らない正義を与えねばならないのであるから、判事たちは、判決によって法律を作るようなことをすべきではなく、法律を誠実に解釈する義務を負っているのである。大統領として、私は、わが国の民主主義における裁判所の役割を理解し、法廷での任務を行う教育訓練を受けた男女を任命する責任を負っており、私はその責任を果たしてきた。憲法は、上院にも、その責任を与えている。司法の被任命者は、投票にかけられる。
 わが国のもっとも深いところにある価値観は思いやりであるのだから、アメリカが与えるチャンスから隔絶されていると感じているいかなる市民に対しても背をそむけてはならない。われわれの政府は、厳しい所に希望をもたらす、信仰を基礎にしたグループやコミュニティー・グループを支えつづけていく。今、若者、特に都市の若い男性に無気力、ギャング、あるいは監獄よりも良い選択肢を与えることに重点を置く必要がある。今夜は、若者をギャングから遠ざけ、女性を尊重し暴力を拒む大人の男らしさの理想を若者に示し、諸組織を援助する3カ年プログラムを提案したい。ギャング生活への取り組みは、識字からスポーツにいたる取り組みによって、両親、牧師、コーチ、コミュニティーのリーダーなどが落ちこぼれの恐れのある若者に広範に手を差し伸べていくことの一部である。私は、この全国的な取り組みのリーダーが、ファースト・レディーのローラ・ブッシュであることを誇りに思っている。
 HIV、エイズは、非常に多くの生命に苦難と恐怖をもたらしているのであるから、予防を推進し、この病気の患者を治療・看護するためにライアン・ホワイト法を再承認するようお願いする。そして、この重要な法律をアップデートしつつ、われわれは、新規患者がもっとも高い率ででている仲間、すなわちアフリカ系アメリカ人の男女に重点を置いていく必要がある。
 われわれの国家的統一の主要な源泉の一つは、平等な司法への信頼であるから、すべての人種、背景を持つ国民が、このシステムが正義をもたらすことを確信できるようにする必要がある。アメリカにおいては、自らが関与していない犯罪によって誰一人逮捕されることが絶対にないようにしなければいけない。従って、間違った判決を防ぐためにDNA鑑定を劇的に拡大して使用するようにする。まもなく私は議会に、死刑事件における被告側弁護人を特別に訓練するために資金を拠出するように提案する。なぜならば、死刑になるかもしれない罪で公判中である人々には、有能な弁護士が横にいないといけないからだ。
 将来の世代に対する第3の責任は、危害から安全であり、平和によって守られたアメリカを彼らに残してやることである。われわれが有するあらゆる自由を子どもたちに受け渡していこう。その自由の中で、主要なものは、恐怖からの自由である。
 2001年9月11日から3年半、われわれはアメリカ人を守るために未曾有の活動を遂行してきた。政府に国土を守るための新たな省を作り、FBIの焦点をテロ防止とし、諜報書記官の改革を開始し、全国でテロの小集団を粉砕し、生物・化学攻撃に対する防衛の研究を拡大し、国境の安全を改善し、即応要員として50万人以上を訓練してきた。警察と消防、航空隊、研究者や他の多くの人々が毎日、わが国の国土をより安全にするために働いている。われわれは彼らすべてに感謝している。
 わが国は、同盟国・友好国と協力しつつ、決然とした、効果的な、持続的な諸措置によって海外の敵とも対決している。わが国を攻撃したアルカイダのテロ・ネットワークは、いまだに指導者を有している。しかし、そのトップの司令官たちの多くは、除去された。いまだに多くの政府がテロリストを援助し、かくまっている。しかし、そういう政府の数は減少してきている。いまだに、大量破壊兵器を追求している体制が存在する。しかし、それらは、もはや注目を引かずにはすまず、またそれらが重大な損害をこうむらずにはすまなくなっている。わが国はいまだに、多数を殺害し、われわれ皆を脅迫しようとしているテロリストの標的になっている。しかし、われわれは彼らに対する攻勢を戦いが勝利する時まで保っていくであろう。
 われわれの敵を追及することは、テロに対する戦いの死活的義務である。そして私は、議会がわが軍とそれが必要としている諸資源をそのために提供してくれたことに感謝している。この戦時の間、われわれは、わが軍を支え、それに勝利のための手段を与えねばならない。
 世界中の諸国民がわれわれと共にある。アフガニスタンにおいて、国際部隊が治安を助けている。イラクでは、28カ国が現地に部隊を送っており、国連とEUが選挙のための技術的支援を提供し、NATOがイラク人将校の訓練を援助する任務の先頭に立っている。われわれは、大量破壊兵器拡散防止計画(PSI)において、危険な物質の移転を察知し、阻止するために60カ国の政府と協力している。北朝鮮が核の野心を放棄するよう説得するために、アジアの諸政府と密接に協力している。パキスタン、サウジ・アラビアと他の9カ国は、アルカイダ・テロリストを捕らえ、あるいは勾留している。今後4年間、私の政権は、この時代の危険を打破する連合を建設しつづけていく。
 長期的には、われわれが追求している平和は、過激主義と殺人のイデオロギーを培う条件を無くすことによってのみ達成される。世界のすべての地域が絶望したままであり、憎悪が増大していくならば、それはテロリストを徴募する土台になり、そのテロはアメリカと他の自由諸国を何十年も脅かすであろう。圧制とテロの台頭を阻止し、憎悪を希望で取り替えるに十分な唯一の力は、人間の自由の力である。われわれの敵はそれを知っている。だからこそ、テロリスト・ザルカウイは最近、民主主義の「悪の原則」と彼が呼ぶものに対する宣戦布告をしたのである。そしてわれわれは、われわれ自身の意図を宣言してきた。すなわち、アメリカは、自由の同盟国とともに、中東などにおける民主主義運動を支え、最終的には世界の圧制を終わらせる目標を持っているということである。
 合州国は他の誰に対しても、われわれの政府形態を押し付ける権利、願望、意図を持っていない。それらはわれわれと敵との間の主要な違いの一つである。彼らは、一握りの残虐な、自ら任じた支配者グループがあらゆる生活のあらゆる領域をコントロールする抑圧の帝国を押し付け、膨張させようとしている。われわれの目的は、自国の市民に応え、自分たち自身の文化を反映した、自由で独立した諸国の共同体を建設し、保持しようということである。民主主義国は、自国の国民と隣国を尊重するのであるから、自由の前進は平和をもたらしていくのである。
 この前進には大きなはずみがついている。アフガニスタンの選挙では女性が投票している。パキスタン人は新たな進路を選択している。ウクライナの人民は、自分たちの民主的権利を主張し、大統領を選出した。われわれは自由の歴史の上で画期的な諸事件に遭遇しているのである。そして今後の年月の中で、こうした歴史に新たなページを加えていくであろう。
 パレスチナ自治区における改革と民主主義の開始は今、暴力と過ちの古いパターンを打ち破る自由の力を示している。明朝、ライス国務長官がイスラエルと西岸に向けて出発し、シャロン首相、アッバス議長と会合する。彼女は、彼らと、パレスチナ人民がテロを終わらせ、平和で、独立した、民主主義国家の機構を建設することを、わが国と同盟国がどのように助けることができるかを討議する。民主主義を推進するために、私は議会に、パレスチナの政治・経済・安全保障改革援助資金として3億5千万jを要請する。2つの民主主義国家、イスラエルとパレスチナが平和に隣同士が生活するという目標は、手の届く所まできた。アメリカは、このゴールを達成することを援助していく。
 広範囲な中東〔拡大中東圏〕〔4〕で、平和と安定を推進していくために、米国は、この地域の友好国と一緒に、高い水準の自由を促進しつつ、共通の脅威であるテロと闘っていく。モロッコからヨルダン、バーレーンに至る弧の中で、希望に満ちた改革がすでに根付いている。サウジ・アラビアの政府は、その人民が彼らの将来を決定する役割を拡大することによって、この地域におけるそのリーダーシップを示すことができる。そして、偉大で誇り高い国であるエジプトは、中東で和平への道を示してきたが、今や、中東における民主主義への道を示すことができる。
訳注〔4〕北アフリカ(モロッコ、モーリタニア、アルジェリア、チュニジア、リビア)を含む中東
 広範囲な中東での平和の推進のために、われわれは、テロリストをかくまいつづけ、大量破壊兵器を追求しつづけている諸体制と対決しなければならない。シリアは、いまだにその領土とレバノンの一部がこの地域の和平のあらゆるチャンスを破壊しようとしているテロリストに使用されることを許している。米国議会は、シリア説明責任法を通過させ、米国政府は、それを適用している。われわれは、シリア政府がテロに対する支援をすべて停止し、自由に門戸を開くことを期待している。今日、イランは、世界の主要なテロ支援国家でありつづけている。自国民が求める自由を奪いつつ、核兵器を追求しているのだ。われわれのヨーロッパの同盟国と協力して、イランの体制がそのウラン濃縮計画とすべてのプルトニウム処理を放棄し、テロ支援を終結させることを明確にするよう求めている。そして、イランの人民に対しては、私はここで、あなたたちが自分たちの自由のために立ち上がるならば、アメリカはあなたたちと共にある、と述べる。
 われわれの世代の自由の推進は、特に、中東に関しては、現在、イラクでテストされており、栄誉を受けている。イラクは、テロとの戦いの死活的な前線である。それが、テロリストたちが抵抗しているゆえんなのである。わが軍の軍人たちは、われわれがテロリストと米国において遭遇しなくてもすむように、テロリストとイラクで戦っているのである。イラクにおける自由の勝利は、テロとの戦いでの新たな同盟者を強化し、ダマスカスからテヘランにいたる民主主義的改革者を奮起させ、困難な地域に希望と進歩をもたらし、そうしたことによって、われわれの子どもたちや孫たちの生活から恐るべき脅威を取り去るのである。
 われわれは成功するであろう。なぜならば、イラク人民は、このあいだの日曜に世界に示したように、彼ら自身の自由を重んじているからである。イラク全土で、しばしば大きなリスクを犯して、数百万の市民が投票に行き、新たな臨時国民議会で彼らを代表する275名の男女を選んだ。バグダッドの一人の若い女性は、投票日の朝、砲声で目覚めて、投票に行くのは危なすぎるのではないかと迷ったという。彼女は、「爆音を聞きながら、私は、反乱者は弱い。彼らは民主主義を恐がっている。彼らは負けつつある。だから私は夫も、両親にも言って、みんなで一緒に投票に行きました」と語った。アメリカ人は、自由を持っているから、自由の精神をわかっている。いかなる国でも、投票は市民の責任である。何百万人ものイラク人にとって、それはその個人の勇気ある行動でもあり、またそれをわれわれ皆が尊敬している。
 サフィア・タレブ・アルフハイスは、イラクの指導的な民主主義・人権活動家の一人である。彼女は自分の国について「われわれは35年間サダム・フセインに占領されてきた。本当の占領だった。犠牲を払ったアメリカ人民、特に、兵士には感謝する」と語っている。バグダッドで11日前、サフィアはついに彼女の国のリーダーたちに投票することができた、われわれは、彼女が今夜ここに来ていることを栄誉に思う。
 テロリストと反乱者は、民主主義に暴力的に反対しており、それを攻撃しつづけていくであろう。しかし、テロリストのもっとも有力な神話は破壊されつつあるのだ。全世界は、自動車爆弾と暗殺者が連合軍と戦っているだけではなく、自由選挙に示されたイラク人の希望を破壊しようとしていることを見ている。そして全世界が、今や過激派の少数グループはイラク人民の意思を覆せないことを知っている。
 われわれは、イラクにおいて成功するであろう。なぜならば、イラク人は、自分自身の自由のために戦い、自分自身の歴史を書く決意をもっているからである。アラウィ首相が昨年9月の議会で言ったように、「一般のイラク人は、わが国の治安の任務をできるだけ早く担っていくことを熱望している」のである。それは独立国の自然な熱望であり、また、われわれのイラクにおける連合が明らかにしている任務なのである。イラクにおける新たな政治情勢は、イラクでのわれわれの仕事の新たな段階を開いている。
 現地の司令官たちの勧告およびイラク政府との協議に基づき、われわれはイラク治安部隊の能力向上の援助にもっと重点を置くようにしていく。イラク治安部隊は、熟練した将校と指令機構を有するものとする。このような部隊が、もっと自立的になり、もっと多くの治安任務を受け持つようになることによって、アメリカとその連合パートナーは、もっと支援的な役割にまわるようになるであろう。最終的にはイラク人は自分たちの国を守ることができるようになる。そして、われわれはこの誇り高い、新たな国がその自由を守ることを助けていくようになる。
 最近あるイラク人通訳がジャーナリストに「アメリカに、われわれを見捨てないように言ってください」と語っている。彼も、他のイラク人も安心してよい。わが軍の戦略は状況に適応していっているが、われわれの制約は固く守られており、普遍的である。われわれは、イラクの友人たちの自由のために闘っており、イラクにおける自由はアメリカの今後の諸世代をより安全にする。われわれは形だけのイラク撤退期日を設定しない。なぜならば、それはテロリストを励ましてしまうからだ。また、われわれが出て行くことを待つことができると彼らに信じさせてしまうからだ。われわれは、次のような成果を達成するためにイラクにいるのである。すなわち、民主的で、その人民すべてを代表し、その隣国に対して平和であり、自国を防衛できる国ということである。この成果が達成された時、イラクで勤務しているわが軍は、ふさわしい名誉をもって故郷に帰還するであろう。
 現在、米国軍人は、世界中で勤務しており、その多くが私の命令によって大きなリスクを負っている。われわれは、彼らに訓練と装備を与えている。そして彼らは、われわれに理想主義の模範と徳性を示している。それは、あらゆるアメリカ人の誇りである。わが軍の志願兵たちの戦いは不屈であり、忠誠心は確固としており、栄誉と礼譲は類まれである。日々彼らは、わが国をより安全にしている。わが軍人の中には、恐るべき負傷をした者もいるが、わが国は感謝し、彼らの快復を助けるために出来ることは何でも行っていく。そして、われわれの自由のために死亡した非常に優れた軍人たちに、別れを告げた。彼らの思い出を、この国は永遠に称える。
 われわれが称える名の一つは、テキサス州プリューガービルのバイロン・ノーウッド海兵隊軍曹である。彼は、ファルージャ攻撃の際に殺された。彼の母、ジャネットは、バイロンがいかに海兵隊を愛していたか、テロに対する前線にいることをいかに誇りに思っていたかを書いた手紙を私に送ってきた。彼女は、「バイロンが最後に家に帰ってきた時、私は、彼が生まれた時から守ってきたのと同じように、彼を守りたいのだと言いました。彼は、私をただ抱きしめ、『お母さんは自分の努めを果たしたよ。今度は僕がお母さんを守る番だ』と言ったのです」と書いてきた。皆さん、感謝に満ちた心で、自由の守護者を、そして今夜ここに出席されているノーウッド軍曹の母と父、ジャネット、ビル・ノーウッドに代表された軍人家族を称えようではないか。
 この4年間、アメリカは大きな諸事件の展開を経験してきた。われわれは、悲しみの時、不安の時、そして勝利の日々を経験してきた。この歴史のすべてにおいて、われわれが不一致であった時でさえも、われわれを団結させる目的の糸が見えていた。われわれの世界における自由への攻撃は、世界を変える自由の力への自信を再確認させた。われわれはすべて、偉大なベンチャーの一部である。すなわち、約束された自由をわが国において拡大すること、われわれの自由を支える価値観を新たにすること、そして自由がもたらす平和を広げることである。
 フランクリン・ルーズベルトが、かつてアメリカ人に思い起こさせたように、「それぞれの時代には死にゆく夢があり、生まれくる夢がある」。そしてわれわれは、もっとも大きな夢が生まれている国に住んでいる。奴隷制の廃止は単なる夢にすぎなかった――それが実現されるまでは。ファシズムからのヨーロッパの解放は、単なる夢にすぎなかった――それが達成されるまでは。帝国的な共産主義の崩壊は、単なる夢にすぎなかった――それが果たされるまでは。一つの世代は、自分たち自身の夢を持っており、われわれも自信をもって前進していく。〔神の〕摂理の道は平坦ではなく、予知できない。しかし、われわれはそれがどこに導いているのかは知っている。自由に導いているのである。
 ありがとう。神がアメリカを祝福されますように。

 (終り)