
翻訳資料-1
米食品スーパーのストライキ
村上和幸訳
【解説】
翻訳資料の@は、昨年秋から今年冬にかけ南カリフォルニアの7万人の労働者が闘った史上最大のスーパーマーケット長期ストおよびロックアウトとの闘いと、新たな労働協約についての『レーバーノーツ』誌のスタッフによる記事、Aは、今年の夏から秋にかけて労働協約の改定期を迎える北カリフォルニアの食品スーパーの労働者の闘いの課題についての労組の現場活動家の投稿だ。
@は、UFCW(国際食品商業労働組合)の指導部が締結した労働協約の裏切り性の暴露が中心になっているが、それを理解する前提として、南カリフォルニアのストが空前の長期大ストライキだったことをみておこう。
ストは2月末まで続いたが、すでに12月末の段階で、多くの労働者が食費にも事欠き、家賃を払えずに住居を追い出されるという困難に直面した。食うために、夜間のアルバイトとピケラインを毎日往復し、過労で交通事故死した労働者もいた。しかし、労働者は2月末まで不屈にピケラインを守りつづけたのだ。
彼らの合言葉は、「1日でも長く」だった。会社側より長く闘い続けることで勝利しようということだ。ストは、会社が賃金・諸手当の体系を二層化しようとしていること、そして店舗の陳列棚管理を、低賃金の労働者に行なわせようとしていること、そしてこれまでに闘い取ってきた年金、健康保険の権利を破壊しようとしていることに対して闘われた。
このストには、ILWU(国際港湾倉庫労組)を始めとする地域の労組の組合員が大挙して支援にかけつけた。ピケラインにともに立ち、炊き出しをし、買い物のボイコットを組織した。スーパーストは、地域全体の労働運動の活性化に火をつけたのだ。多くの住民が、ピケを尊重してスト対象の店舗での買い物を止めた。
だが、一般組合員の不屈の決起にもかかわらず、UFCWの指導部は、全国的な闘いを組織せず、南カリフォルニアだけの闘いに限定しようとして必死に制動をかけた。UFCW指導部による地域住民へのスーパーボイコットの呼びかけも、UFCWの近隣の支部さえこのストのピケラインを守るたたかいに決起させないことを隠蔽するアリバイ方針でしかなかった。ILWU第10支部は、スト支援集会で、「港湾や倉庫にピケを張ってくれ。ILWU組合員はピケを越えない。そうすればスーパーへの商品納入は大幅にカットされる」と呼びかけた。だが、こうした労組間の共闘の呼びかけも、UFCW指導部は無視した。住民との共闘は重要であるが、あらゆる地域のUFCWの組合員全体を決起させること、そして、他の労組との団結を強化することという労働組合運動の軸をおろそかにして行なわれる住民へ呼びかけは、本当の労働運動ではない。
UFCW指導部は、資本に屈服した条件で労働協約を結んでストを終わらせた。
こうしたUFCW幹部の裏切りにもかかわらず、一般組合員は戦闘力を保っている。だが、労組の団結の根幹にかかわる屈服的な労働協約を飲まされたことも事実だ。UFCW労働者の闘いが壊滅的打撃をこうむるか、それとも圧倒的な戦闘的な高揚を勝ち取ることができるかは、今後の闘いにかかっているといえよう。
その意味で、この夏と秋に労働協約改定を迎える北カルフォルニアのUFCWの諸支部の闘いは、非常に重要だ。
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@食品スーパー労働協約の二層化に怒りと疑問
北カリフォルニアの諸支部は抵抗を誓う
『レーバーノーツ』04年4月号レヌカ・ウタパ(同誌スタッフ)
2月29日、南カリフォルニアの食品スーパーチェーン、フォンズ/パビリオン(セイフウェイが所有)、アルバートソンズ、ラルフズのスト中の労働者とロックアウトされていた労働者は、闘争を終了させた。
新たな二層化された協約とUFCW指導部のストへの対応は、多くの一般組合員の怒りをかっている。一般組合員は、協約の有効期間である3年間の間に多額の出費を強いられることになる。それ以降もおそらくそれが続くことになる。しかし、こうした悔しさから、組合員は、もっと積極的に組合にかかわらねばならないと感じだしている。
ロサンゼルスのハリー・ブリッジス研究所とコミュニティー労働センターの所長、シャノン・ダナトは、「なぜ、全国的なキャンペーンがもっと早くからやられなかったのか。誰がそれを妨害してきたのか」と言っている。
ミネソタ州のUFCW第789支部の元委員長、ビル・ピアソンは、このストを注意深く見てきたが、彼によれば、会社側は、店舗の二層システム化について、2001年のUFCWの本部委員長と100の支部の委員長、そしてセイフウェイ、アルバートソンズ、クローガーの代表が参加した会合ですでに明らかしていたという。
「各支部の委員長は、『ノー』といっていた。本部委員長は、2年前からストになることを知っていたわけだ。なぜ、組合大会でそれを議題にしなかったのかが問題だ」
成功?
妥結直後に辞任したUFCWのダグラス・ドリティー前委員長は、このストを「歴史上、もっとも成功したスト」だと言った。これには、組合員から疑問の声があがっている。
ベーカーズフィールドの第1036支部の一般組合員、ロニー・ハーディーは、「彼らは二層化に成功した。われわれが反対していたものを全部、彼らは獲得した。5カ月間のストは、何かしらは獲得したい、現在持っているものは失いたくないと思ってやったのに」と言っている。
健康保険の二層化
おそらく、もっとも重要なことは、この協約が賃金・諸手当の体系に二層システムを導入したことであろう。
具体的には、
▽初めて、労働者が健康保険の保険料を支払うことになる。支払いは、協約有効期間の第3年目に始まることになる。独身者は週に5j、子持ちは週に10j、配偶者と子どもがいると、週に15jだ。
▽組合と共同で管理される健康保険基金への会社の拠出には、上限が設けられる。もしも医療費が高騰すると、労働者が医療を受ける時の自己負担が増えることになる。長期労働者が、新たに雇用された労働者で置き換えられていくと、健康保険基金はさらに劣化していく。
▽会社は、現在雇用している労働者には3・80jを拠出するが、新規雇用の労働者には1・10jしか拠出しない。新規雇用者が医療を受けると、会社側拠出分の20%相当額を、自己負担しなければならない。
▽現在の労働者については、会社の年金基金への拠出額が35%カットされる。新規雇用者については、65%カットされる。
▽現在の「熟練食品クラーク」は、時間当たり17・10jが最高賃金だが、新規雇用の「熟練食品クラーク」は、初任給が時間当たり8・90jで、昇給しても15・10jにしかならない。
▽下の層の労働者は、昇進を受ける場合に、どんな職種へも自動的に「昇進」されることになる。
これまでの協約では、「食品クラーク」とされた労働者だけが陳列棚の商品の入れ替え、補充をすることができたが、新たな協約では、「食品クラーク」より時間当たり4j賃金が少なく、勤務年数も少ない「一般商品クラーク」がこうした商品の入れ替え、補充をすることができる。
北カリフォルニアの第588支部の組合員、スコット・シュレーダー(25)は、これを聞いて、「新協約は、われわれ長期労働者をターゲットにしているということだな」と語った。
組合の影響
ドナトは、自分の店舗での組織化を決意した労働者がいると語ってくれた。ストや組合について語る集会を開催しているという。組合の集会に初めて参加する労働者もいる。「この攻撃は、それを経験した労働者を、良い組合員にした。彼らは、会社の従業員だという考え方を捨てて、労働運動の一員なのだと思うようになった」
UFCW第1442支部のキャサリン・ローワンは、「ストの前は、組合費を払うほかは、組合に入っていないようなものだった。今は、組合がやることに大いに関心がある。私の払った組合費がどういう行動に使われているのか関心がある」
第1036支部のハーディーは、「組合役員は、ストをちゃんと準備していなかったと思う。彼らは、ストが長期になることを知っていた。会社が彼らにそう言っていたはずだ」と語った。
別の組合員ウィルソンは、「組合は、われわれを売った。交渉にあたった役員に『役員はわれわれのために何もしてくれなかった。われわれは役員を解任し、別の役員を入れたい』という手紙を書き、それへの同意署名を集めるために各職場委員に会いに行く計画を立てている」という。
第588支部のシュレーダーは、「みんな組合が自分たちのためになることをやってくれると、楽観しすぎていた。われわれが参加しないかぎり、大変なことになる。私は、職場で、この現実を直視するように大声で訴えている」という。
A北カルフォルニアのスーパー労組の課題
『レーバーノーツ』04年5月号 ビンセント・バーバーグ
サンフランシスコ湾岸地域の食品スーパー労組支部は、南カルフォルニアで行われた譲歩を避けるためには、ハードルを越えねばならない
南カリフォルニアのストライキの余韻がまだ残っている中で、UFCWの北カリフォルニアの8つの支部の店員たちは、来る9月11日の労働協約の期限切れの日を最後の審判の日として迎えようとしている。
北カリフォルニアの別の2万1000人の店員は、第588支部に所属しているが、別の労働協約を結んでいて、7月17日が期限切れになる。会社からの圧力は強く、UFCW本部の幹部からの屈服しろという圧力も強い。
闘いの準備
湾岸地域の諸支部は、アメリカ全土の小売業を襲ったコンセッション(労働者側からの資本への「譲歩」という名の大後退、屈服)の波に従う必要はないと思っている。湾岸連合(BAC――8つの支部の連合)は、この数年間、今われわれが直面している厳しい交渉環境のために、前倒しで計画を立てるために大きな役割をはたしてきた。
BACは、協約期限切れのはるかに前から、経営側との対決的な戦略を練ってきた。資金を蓄積し、オルガナイザーと対企業キャンペーンの専門家を雇い、組合員の中に厳しい闘いへの覚悟を作ってきた。
宗教団体と労組の組織との連合によって、雇用主との公正な交渉をする力と能力が増大してきた。
BACの戦略の他の側面は、全国的に更新期に入っている多くの労働協約を、強力な交渉の武器にしていくということだ。これまでBACは、UFCW本部を説得することにはあまり成功してこなかったが、本部との来月の会合は、ロッキー山脈以西の労働協約を一緒にしていくことが効果的であると示すことができるであろう。
湾岸地域の組合の連合は、かつては強力であったが、年ごとに弱体化してきた。1990年代は、協力する能力が著しく衰えた。この衰退の原因はUFCW本部の上級副委員長、ジャック・ラボールが権力を握ったことだと思っている者は多い。
ラボールは、1984年にカリフォルニアのUFCW第588支部を握り、他の支部の合併・吸収によって、この支部を2万2000人まで拡大した。彼のこうしたやり方は、高圧的だとも受け取られている。
弱体化した交渉力
ラボールは、90年代にBACを押しのけて、北カリフォルニアのUFCWのスポークスマン、団体交渉のトップとなることができた。彼は、湾岸地域のすべての諸支部の集団的な意見を求めるという通常の手続なしに、労働協約について交渉することができた。
95年の8日間のストは、ラボールによる交渉で、労働協約の大後退という結果に終わった。ピケを担った労働者たちは、こんなにストが成功したのに、何も成果が得られないのは何故だと悩まねばならなかった。
97年の食品産業での交渉は、ほとんど始まる前に終わってしまった。セーフウェイとラッキーの店舗とのラボールの密室協議で決着したのだ。
97年には、賃金、手当の改善について交渉された。だが、それはわれわれの年金基金をとりくずして支払われたにすぎない。雇用者側は、何年間も年金資金への拠出をまぬかれることになった。
拠出の延期は、会社側と労働者側がそれぞれ行なうことになった。会社側がその85%、労働者側がその15%を得たのだ。
ラボールは、われわれの膨大な健康保険・福祉のための積立基金を雲散霧消させてしまうことを容認した。この積立金は、それまで医療コストの高騰を相殺する役割を果たしてきた重要なものだったのだ。彼は、3万5000人の湾岸地域の組合員の団結の力を無視し、すでにずっと前からわれわれが獲得してきたものを、自分の交渉の手柄にしている。
2001年の協約交渉でも、ラボールは交渉し、湾岸の諸支部より先に妥結した。
BACは、「第588支部による協約の締結が、北カリフォルニアのスーパーの交渉の結果を決めるものではない。それは、われわれ3万5000人の組合員の経済的要求やその他の要求に応えるものではない。組合員の優先課題に応えていない」と語った。
9月11日の事件が発生し、それがバランスを覆した時、湾岸の諸支部は団結し、共に賃金交渉をした。BACは、スト権投票で61%の賛成票しか得られなかった。多くの組合員が、この国全体のムードにおびえていたのだ。だが、それにもかかわらず、BACは労働協約の文言の22個の重要な改善を勝ち取ることができた。
もう交渉ずみ?
今日の現状では、予測不可能だ。BACの一部のリーダーは、ラボールは経営側とすでに交渉しており、また湾岸の諸支部を出し抜くのではないかと考えている。
再び、組合員からかけ離れた組合幹部によって、われわれの力が浪費されるかもしれない。また、全国的な強力な労働契約を結ぶチャンスが失われるかもしれない。そうしないためには、組合員、支部が、効果的で強力なキャンペーンをしなければならない。
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