●資料
教育基本法改悪反対!12・23全国集会の報告
【解説】
03年12月23日、東京・日比谷公会堂で「子どもは『お国』のためにあるんじゃない!教育基本法反対!12・23全国集会」が開催され、全国の教育労働者を中軸に、5000人の労働者・市民・学生が参加した。
会場の日比谷公会堂には集会に来た人々の半分ほどしか入らないほどの予想をはるかにこえる大結集であった。
この集会は、自衛隊イラク派兵と憲法改悪攻撃の激化という情勢と完全に一体のものとして、教育基本法改悪が行われようとしていることに対する全国の教育労働者の危機感と怒りがいかに激しいものかを示した。
日教組傘下の教育労働者と全教傘下の教育労働者が上部団体の相違を越えて全国各地から一堂に会し、ともに手を組み、父兄、生徒を始め労働者・市民と団結して教育基本法改悪阻止に立ち上がったことは、連合結成以来初めての画期的できごとである。
この集会の大成功によって教育基本法改悪阻止の闘いの巨大な陣形が形成された。この陣形のうえにさらに教育基本法改悪絶対阻止の闘いを全国に広げていくことが今後の課題であろう。
集会は大きく3つの構成要素で組み立てられた。
一つは呼びかけ人として全国で講演活動を行って、教育基本法改悪反対の意義と全国集会の意義を訴えて回った大内裕和さん、三宅晶子さん、高橋哲也さん、小森陽一さんの4人の講演である。
それぞれが、教育現場の現状、愛国心教育、戦争と教育基本法改悪などのテーマを分担して、この攻撃との闘いの重要性を明らかにした。
二つには、全国各地で教育問題に関するさまざまな反動攻撃と闘っている教育労働者、子どもたち、保護者、市民、宗教者など23組の人たちによる「しゃべり場」=自由なトーク形式のパネル報告である。
それぞれの発言者は、約2分間という短い発言時間のあいだに闘いの現状と決意を生き生きと語った。
三つには、コント集団「ニュースペーパー」によるコント。教育現場や現在の政治情勢の鋭い風刺に道、さらにその上にそうした現実と闘う勇気を与えてくれる優れたコントだ。
これらの3つの内容に加えて、坪井節子さん(弁護士)、黒田昭八さん(退職教員)、斉藤貴男さん(ジャーナリスト)、川田龍平さん(人権アクティビスト・多彩な意見広告呼びかけ人)が、集会への賛同アピールを行った。
この資料では、呼びかけ人の発言内容についてはすべて収録した。「しゃべり場」での発言についてもすべて収録したかったが、紙数との関係で一部割愛した。
なおしゃべり場の全内容については以下の通り。
(1)教育現場の現状など
●ひらかた「君が代」訴訟=スミぬり裁判を進める会(大阪)
●東京都教育委員会の教育内容への介入・攻撃(東京)
●学校統廃合とたたかう生浜高校の生徒会(千葉)
●学校選択の自由化がもたらす重大な問題(東京)
●教育委員会による授業内容への介入と「不適格教員」の攻撃(東京)
●多摩教組への銃弾攻撃と国立の教育への行政介入と攻撃(東京・国立)
●「障がい」児学校の性教育への攻撃・七生養護学校(東京)
(2)心の教育、心への攻撃など
●「愛国心」を評価する通知票の問題(福岡)
●ジェンダーフリー教育・男女共同教育への攻撃
●30人以下学級実現を求める親の立場からの訴え
●教基法が改悪されたら…不登校経験者の立場から
●宗教者の立場からの訴え
●京都アヤシイ道徳教育など 在日の中学生から(京都)
(3)愛国心から戦争へ、これまでの運動、これからの運動
●地方議会での教育基本法を守り生かす意見書採択運動(高知)
●大学法人化問題と都立大の問題(東京)
●教育基本法と教科書問題
●平和都市ひろしまに戦争肯定の教科書はいらない(広島)
●「日の丸・君が代」強制反対の予防訴訟裁判(東京)
●イラク派兵、憲法改悪に反対する市民団体の活動
●イラク派兵反対署名に取り組む高校生平和ゼミの活動
●イラク派兵反対と広範な市民による教育基本法改悪反対の取り組み(北海道)
●教育と文化を世界に開く会
●子どもの声を国連に届ける活動 T 呼びかけ人発言
●大内裕和 教育の新自由主義批判。「個性」の国家支配批判。
こんにちは。今教育現場でなにがおこっているのか。今とてもおもしろいコントでやってもらいましたけれども、今日はそのことをお話したいと思います。それは一言で言うと、教育の新自由主義改革というものです。
新自由主義改革は、新しい格差と統制を生み出します。新自由主義という言葉は、どうも聞き慣れないという方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の教育状況を理解するうえで、とても重要な言葉です。
この新自由主義が提起されたのは、教育基本法の改悪をついこのあいだの引退までしつこくやりたがっていた中曽根康弘が首相の時に設置した臨時教育審議会でした。この臨教審で教育自由化、個性化という方向がうちだされました。当時学校現場は校内暴力、いじめ、不登校といった教育問題が、噴出していました。こうした教育問題の原因は、画一的な教育の在り方にあるから、それを自由化、個性化していけばよいということになりました。
この方向はそれまでの教育政策を転換する改革として宣伝されました。それはそうですね。政府による教育政策は、教科書検定制度にせよ、指導要領にせよ、管理統制を行うものばかりでした。しかし、この自由化、個性化が、教育現場の自由化や個性化につながったかというと、まったくそうではないでしょう。
新自由主義の自由とは、競争原理の自由、市場原理の自由です。自由競争と言い換えてもいいでしょう。この新自由主義によって、学校に競争原理が導入されました。具体的には小中学校における学校選択、高校選抜における学区の自由化、国立大学の法人化などです。この改革はこれまでの教育が画一的だ、それは公立学校や、教職員が国家・公に守られていることに原因があるから、それを市場競争にさらすこと、民営化することで打破しようという考えに基づいています。
こうした格差・統制を強める新自由主義改革は、学校現場を追い込んでいます。膨大な書類と評価にさらされ、教職員の多くは、日々の業務をこなすのに精一杯の状況に置かれています。
今日は教職員組合の皆さんが、多くいらっしゃっていると思いますが、今こそ教職員組合の役割が、問われているのではないでしょうか。競争と分断の新自由主義の論理に対して、連帯と協力の論理を対置し、労働者の権利を守る労働組合の運動が蘇ることが強く求められていると私は考えます。
教職員以外の市民のみなさんには、教育現場の自由を守り、平和や人権を大切にする教職員が攻撃にさらされている現状を理解して、そうした先生がたを是非応援していただきたいと思います。
組合の考えをもち、子どもに真摯に向かい合おうとしている教員が、現場に絶望して定年前に退職するということが多くなっています。彼らは不適格教員ではありません。この状況を放置してはならないと私は思います。
格差と統制を強める新自由主義の論理と軍事大国化の論理は、ひとつながりです。自衛隊のイラク派兵が多くの人々の反対を押し切って、強行されようとしている今、そのことはいっそう明確に見えてきました。
現場の状況は確かに苦しい。しかし、そのなかでも教育基本法の改悪は許してはならないという声が全国各地にあることを私は、今年の夏から今日に至るまで、痛切に知ることができました。
今日この集会を出発点にして力をあわせて教育基本法の改悪を阻止しましょう。まだ間に合います。一緒にがんばりましょう。
●三宅晶子(千葉大学)「心のノート」による心の支配、多数派「道徳」強制とファシズム
今、会場を埋め尽くす方々がいらっしゃっているんですが、この会場の外にも入りきれずにたくさんの方々が聞いてくださっているそうです。その方々にも届くようにお話をさせて頂きたいと思います。
昨年、文部科学省は「心のノート」というまさに国定教科書を自ら作成し、全国1200万人の小中学生に配布いたしました。さらには使用の強制まで今しようとしています。この事実はまさに教育基本法10条がすでに徹底的に空文化されていることをしめしているのではないでしょうか。
すなわち教育行政がフリーハンドで教育内容を作り、さらには教育方法の強制すらできるという実態をすでに示しています。しかもここで作られた教育内容とは、子どもの心の奥深くにまで介入し、9年間も操作し続ける心のプログラムであり、家庭や地域にまで規範を押しつけようとするものです。今進行しつつある教育改革の中で、そしてこの「ノート」のなかで作られようとしている「心」とは、端的にいうならば苛烈なサバイバル競争の中で、セルフコントロールできる、いわば「新自由主義的心」ともいうべきものではないでしょうか。
すでに教育労働者である先生もそして子どもも、激しい競争的環境のなかで、常に前向きであること、そしてまた与えられた課題に対して、意欲、関心、態度を示し続けること、上の者や社会の批判をせず、自己点検強化で自己責任を問い、他者評価を受け、差別・選別されてもそれを受け入れる「心」が要求されています。
このような「新自由主義的心」とでもいうものが、学校という強力な国家統治の場で小さいうちから作られていくならば、まさに自然に、とはすなわち無批判に、排他的に、そして自己中心的に「日本を愛する心」が作られていくということではないでしょうか。
そしてそれに同調しえない者は、愛国主義通知票、さらには「日の丸・君が代」を踏み絵として差別され、排除されていくのです。
たとえばこれはまさに良心の自由の侵害だと思うんですけど、この「ノート」の制作者の一人おしたによしお氏は、「このノートが良心を作るのだ」と言っています。こうなったら良心対良心の闘いです。国家を代弁する良心対、私たち一人ひとりの良心の闘いです。これを絶対に忘れてはいけません。 教育基本法の改悪を全力で阻止しましょう。そしてこの「心のノート」を消しましょう。
●高橋哲也(東京大学)
「愛国心」教育と教育基本法改悪、戦争する国への変貌を許さない
みなさんこんにちは。私は(コント集団「ニュースペーパー」の)小泉純一郎氏とこれで4度目の競演ということになります。つい先日も佐賀で一緒だったんですけども。いつもやりにくくて仕方がないんです。私が言うべきことを裏返して全部言ってしまわれているような感じでありまして。
今日は、それで反転攻勢ということを考えましてですね、小泉氏の愛国心通知票を出そうかと。
正確にいいますと小泉首相の、小泉純一郎君のですね、愛国心についての考え方を逆評価して、ABC3段階でつけてやろうかというふうに思ってまいりました。
私の考えでは彼の愛国心についての考え方は、そうですねABCどころではありません。限りなくZに近いYというふうに言いたいところですが、まあ小泉氏の頭文字、イニシャルをとってKとでも採点しておきましょうか。あの成績評価の暴力をここで行使するということですけれども、とにかくまったく間違っているというふうに思います。
愛国心は国を愛する心というふうに言いますと柔らかくなるそうですけれども、先ほどもありましたように国を愛したい、などというふうには思わないと言う人もいますし、小泉氏のように国を愛しなさいというふうに国家を代弁してですね、国民に主張する人がいるわけです。
私が何を愛するかということまでですね、国に決められるいわれはない。法律で定められるいわれはないというふうに断言したいと思います。
私は私の愛するものを愛する、それで十分だろうと思います。ところが中教審の答申をはじめとしまして現在、愛国心、教育基本法改悪を推し進めようとしている人々はこの愛国心を教育基本法の中に書き込むということを狙っているわけですけれども、もしそういうことになればですね、今日たびたび話題になっております「日の丸・君が代」「心のノート」あるいは「愛国心通知票」、さらには扶桑社版の「作る会」の教科書に至るまでですね、これらがすべて教育の憲法によって正当化され、またさらに本格的な国家主義教育、愛国主義教育がわれわれに押しつけられるであろう、というふうに考えられるわけですね。これは絶対に阻止しなければならないと思います。
そしてそのような愛国心教育を国家が、教育を通じて国民に注入しようとするとき、そこで想定されているのは間違いなく戦争の可能性であるということも強調しておきたいと思います。
最近のイラク攻撃に関する、イラク派兵に関する閣議決定の時の記者会見でも、小泉純一郎君は、国民の精神が試されているというふうに言っておりました。国民の精神が試されている、まさにそうなんですね。
そこで私たちが自分自身の自由というものをどこまで確保できるかということがここで試されているんだろうと思います。先ほど問題提起がありました宗教者の人々の在り方まで含めて、今私たちの心が試されている、ということです。
私は何としても皆さんと一緒に個人の尊厳そして平和というものを根本理念としているこの教育基本法の最良の部分をですね絶対に譲り渡さないために闘っていきたいというふうに思います。どうもありがとうございます。
●小森陽一(東京大学)憲法と教育基本法の重要な繋がり「改悪許さない」の一点で繋がろう
今日の集会はおそらく、今までにない本当に草の根からの教育基本法改悪反対の声を大きく全国から集める場になりました。まだ外にもたくさんの方がだんだん寒くなるなか、ともに集会に参加してくれています。まず最初にこの集会の成功を皆さんの拍手で確認したいと思います。
昨年来、全国各地で教育基本法改悪反対の集会が開かれ、呼びかけ人となった4人が発言者として招かれました。そうしたそれぞれの地域のなかで、具体的な運動の現場で出会った人たちが夏に合宿をしたなかで、是非とも大きな全国集会を自分たちの力で開催しようという声が強くあがりました。そしてこの集会の準備が始まったわけです。
正確に言えば私たちは、呼びかけ人というふうになっていますが、実は皆さんから呼びかけられた呼びかけられ人だと思います。この呼びかけ呼びかけられあうなかで、この集会が今開かれています。
昨日、12月22日、自民党の安倍幹事長は、中曽根(元)首相を訪れ、憲法改悪への全面協力を要請しました。中曽根(元)首相は73歳定年制で、小泉に首を切られたにもかかわらず、全力で協力すると表明した上で、教育基本法の改悪について助言した、と今日の産経新聞が報じています。
憲法第9条を中心とした憲法改悪をするには、しかし、最終的には国民投票をして過半数の国民に日本を戦争する国にするという投票をさせなければなりません。だからこそ中曽根元首相は、2001年11月にはっきりと憲法改悪の根を作るために、教育基本法を改悪しなければならないと発言したわけです。
私たちは憲法9条と教育基本法が密接不可分に結びついていることを改めて多くの人たちに明らかにしていく必要があります。国家のために人を殺すことが正しいことだということは、実は学校教育を通してしか子どもたちの心に刷り込むことができないんです。日本だけが1947年以降、このことをやっていないんです。戦争をする国に仕立てあげるために、「日の丸・君が代」の強制で、あるいは人事評価制度の強制で、まず公立学校が軍事組織のように変えられて、教育者であることを投げ捨てた行政の末端になってしまった管理職によって、東京都を中心としてファッショ政治の先行的な実験場に学校がさせられています。
まじめな先生ほど学校を辞めたいと思わされ、精神的な病に追い込まれるほどの厳しい状況です。けれどもこの間の運動のなかで、学校現場の先生たちは子どもたちと保護者と、そして市民と連帯して反撃に転じています。
石原・横山ファッショ体制の東京でも12月7日東京の高等学校の先生たちが、自分の名前をはっきり出して東京都の教育攻撃に闘い続けていくことを宣言しました。
また都立高校の今を考える全都連絡会は、東京都の中高一貫校で「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史公民の教科書を採択させない署名にすでに取り組んでいます。子どもたちに国のために人殺しをさせる教育に転換させようとしている人たちこそが、かつての侵略戦争を美化しようとしているのです。
東京だけではありません。今日皆さんの発言で明らかになったように、文字通り全国各地で、教育現場の攻撃を跳ね返す運動と、教育基本法反対の運動が、しっかりと結びつき始めています。今日のこの集会はあくまでも出発点です。来年の通常国会に教育基本法の改訂を上程させないために、今日の核心を一人ひとりが現場に持ち帰り全力で奮闘しましょう。
教育基本法と憲法第9条の改悪は許さないというこの一致点でそれぞれの現場で「きょうどう」を広げて行きましょう。共に同じと書く共同、これはふたり以上の者が力を合わせることです。協力の協に同じと書く協同は、ともに心と力を合わせて助け合って仕事をすることです。多くの皆さんにはなじみのない言葉だとは思いますが、響くという文字に胴体の胴と書く響胴という言葉があります。これはバイオリンや三味線の胴のことです。小さな音を振動で大きくする装置のことです。英語ではサウンドボディと言います。今日集まった皆さん一人ひとりの体を憲法9条改悪と教育基本法改悪反対の声のサウンドボディにしてください。
3つの「きょうどう」を全国に広げましょう。いっしょにパレードを成功させましょう。どうもありがとうございました。
集会への賛同アピール
●斉藤貴男(ジャーナリスト)
フリーライターの斉藤貴男です。先日東京の西荻窪で、この春にですね、公衆便所に落書きをした青年がつかまった事件で、東京地裁の公判でですね、検察側から懲役1年6カ月という求刑がでました。落書きで1年6カ月です。
なぜそうなったと言えば、彼はそこで「戦争反対」と書いたからなんですね。戦時中も落書きをして軍部や皇室批判をした人が片っ端から捕まっています。ところがただ実は当時は、けっこう厳重説諭とかですんでたりするんですね。もしかしたら今はそのころよりもひどいのかもしれません。
今日お見えの取材をされているテレビや新聞の記者さんたちいらっしゃると思いますが、私たちはそういう局面にさしかかっています。
自戒をこめて言いますが、このままでは私たちは史上最低の職業にされてしまいます。今日このニュースは是非大きく扱って頂きたいと思います。
そして教育問題です。私、あの3年ほど前に「機会不平等」という本を書きまして、そのなかで教育課程審議会の三浦朱門会長のコメントを紹介しました。かれはゆとり教育の意味についてこう語っています。
「今まで落ちこぼれのために手間と金をかけすぎたんだ。だからこれからはできん者はできんままで結構、そこで浮かせた手間と金をエリートに振り向ける。できん者、限りなくできない非才、無才はただ実直な精神だけを養っておいてもらいたい」と、こういうことをおっしゃっています。
これが教育改革の真実です。まあ私はその話しを聞いて、本にも書いたんですが、なんのことはない、前後して当時小渕内閣が作ったですね「21世紀日本の構想懇談会」というこういうまた別の審議会では、こういう報告をまとめています。
「義務教育というのは国民統治の手段である」とこれが第一義であるというふうにもうはっきり書かれているんですね。こういう教育の在り方を許してはいけないと思います。
ただ最後に私たちは、そうやってつい自分たちが戦場に連れて行かれる、あるいは自分たちが戦争に巻き込まれることを恐れてこういう集会を催すわけですが、それだけではない。その前に今の日本は、はっきりいって強いわけです。アメリカの家来として世界を支配していこうというのですから、北朝鮮にしろ、イランにしろ、イラクにしろ、まずわれわれが殺される前にそちらの人たちを殺す立場になってしまうということ、このことから思いをはせなければいけないと思います。ありがとうございました。
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枚方「君が代」訴訟=スミぬり裁判を進める会 松田(大阪)
私あの24、5年ぶりの東京なんですけど、本日の集会のためにやってまいりました。
今、枚方市民30人が(スライド、お願いします)、違法な思想調査に使った費用を返せという住民訴訟をやっています。ご覧下さいこれがですね、国歌斉唱時の不起立教職員の氏名と、起立しなかった理由を集めたスミぬり文書です。これは中学校の分です。次お願いします。これが小学校。去年の入学式の分なんですが、全部で42人の氏名と起立しなかった理由がここのスミの下に書かれています。完全な思想調査です。
次(スライド)お願いします。枚方市個人情報保護条例は思想信条に関する個人情報の収集を禁止しております。そこで市教委は何と言っておるかというと、これは思想・信条に関する個人情報を集めたんじゃなくって、職務状況の調査だと言い張っているんです。
しかし、ごらんください。これちょっとみにくいですが、部分公開決定通知書、私が請求したものです。職務状況の調査なら、個人情報である名前以外の起立しなかった理由部分というのは公開できるだろうと、そういうことで開示請求したんですけども、市教委は拒否しました。
開示できない、その理由がふるっております。ちょっとみにくいですけど、なんて書いてあるかといいますと、「起立しなかった理由は、思想・信条・信仰等に関する個人情報だから」と。そう書いています。自分でですね、集めたことを認めちゃってるんですよ。非常に苦しいところです。
そこで私たちは来年から実質審理に入りますので、教育長の証人尋問を目指してがんばっていきたいと思います。ともにがんばっていきましょう。
東京都教育委員会の教育内容への介入・攻撃(東京)
こうやって一年生の子どもたちと「ゆめのおはなしかい」、お父さん、お母さんが学校に来て、入れ替わり立ち替わり、読み聞かせやそれから語り、そして紙芝居をやってくれるそんな取り組みをやっているんです。
その他にも学校には、たくさんの地域の人たちが見えて戦争の話や、そして地域の移り変わりの話をしてくれます。
そして今杉並区もやっきになってやっているのが、入学式・卒業式などの実施指針、これ、東京都が出した後、いち早く杉並区は独自の実施指針を出しました。
この間教育委員会と交渉したんですけれども、通知はその通知は全て職務命令だと言っていました。本当に子どもたちのですね、子どもたちに君が代・日の丸を強制するものではない、というけれども、でも、式次第のなかに入れて、そして教職員に押しつけるということは、子どもたちにも強制することになると思います。
教育基本法を実質的にもそして名分的にも改悪させないように皆さんと取り組んで行きたいと思います。
学校統廃合とたたかう生浜高校の生徒会(千葉)
千葉県からきました生浜高校です。今、私たちは生浜存続という署名活動を行っております。目指せ10万人ということで、今実質2週間で5万人を達成することができました。
ロビーにもポスターが張ってあるんですが、署名用紙を持っている方は、1月の下旬までに生浜高校に送って下さい。教育委員会のやっていることに反対ということで、これからもずっとがんばっていきたいと思うので、よろしくお願いします。ロビーに私もこの後立っているので、是非時間がある方は、来て、いろいろ話したりしましょう。
学校選択の自由化がもたらす重大な問題(東京)
学校選択を全国で最初にやった品川から来ました。大変個性的な教員と一緒にやってまいりました。しかし、品川では、こういった個性がむしろ失われつつあります。
学校が選ばれるためにいろんな営業活動をし始めています。パンフレット作ったり、ホームページ作ったり、私たち教師が本来やるべきことからはずれて競争を強いられるという状況があります。
たとえば小学校では、国際理解教育をやろうということで例えば、朝鮮文化を学んだり、中国の文化を学んだり、アジアの文化を学ぼうとしたところ、ある学校が「うちは国際理解教育で英語をやります」。そのために英語の講師を教育委員会に申請しました。
そうしましたらすべての学校が「うちも英語の教師を、うちも英語の教師を」と、とうとう品川にある40校は、国際理解教育はすべて英語教育。何の個性も特色もない学校ができてしまう。これが学校選択の実情です。
地域で子どもたちや親といっしょに学校を作っていく、そういう運動を進めたいというふうに思っています。共に手を結んで教育基本法を活かす教育をしていきたいと思います。よろしくお願いします。
教育委員会による授業内容への介入と「不適格教員」の攻撃 根津 (東京)
こんにちは。先ほどの話にありました「不適格」「指導力不足」教員にされそうになった東京の中学校教員の根津です。それから私の攻撃に対して闘っている仲間たちです。
ことは2001年の2月から起こるんですが、その前に私は、前の学校ですでに3回「日の丸」で処分を受けています。それが下地にあっての攻撃でしたが、2001年2月、転勤1年目なんですが、3年生の家庭科の授業で「男女共生をめざして」というテーマで授業をしました。
その中で「従軍慰安婦」の問題をとりあげたところ、それに対して苦情が起こったということを発端に、校長、教育委員会が、ものすごく動きを作りだしました。
そのなかで最初に校長がこう言いました。「子どもたちに男女共生、従軍慰安婦、家庭科の指導要領のどこにあるのだ。根津は家庭科といいながら家庭科ではないことをやっているのだ」ということで苦情を起こし、それから次々にウソや何かを使って、いろいろな苦情を作り出しました。保護者や子どもたちの間に。
そうして半年後には、授業観察を保護者の要求があるからということで1カ月半続けまして、もちろんそこには、都教委も市教委も来ています。そういうなかで9月になって、私を指導力不足教員として、市教委、都教委に申請しました。
そういう動きのなかでそれから半年後、2002年の3月です、もうそれで1年1カ月すぎているのですが、とうとう私を指導力不足教員には、都教委は判定することができませんでした。やはりそれは本当に、私はそれを闘わなければ命がないと思ったから闘ったのですが、大勢の人たちが一緒に闘ってくれて、それからもう一つは弁護士さんがずっと私についてくれた。
というなかで勝利を勝ち取りました。でもそのなかでの職務命令違反ということで、減給処分を受けて、その時の減給処分の様子がこれです。教委の力の入れようがわかると思いますが。でも闘えば必ず道は開けるっていうふうに私はその時確信しました。
多摩教組への銃弾攻撃と国立の教育への行政介入と攻撃(東京・国立)
東京の国立から来ました伴です。国立2小の卒業式のことから始めます。
国立2小の卒業式の日は、全校の子どもたちと教職員の手作りの装飾で会場全体が飾られていました。新しい門出を祝う喜びと希望に満ちた明るい会場が私は好きでした。
2000年の卒業式の日、教職員が学校から締め出されて初めて日の丸が掲揚されました。子どもたちは卒業式後、なぜ日の丸が掲げられたのかを校長に質問に行きました。
そのことをマスコミが偏向教育の結果だとして大キャンペーンを張り、右翼が大量に国立に押し掛けてきました。4月の入学式、学校は警察に囲まれ、子どもたちの祝福の日が恐怖に包まれました。
そして8月、国立では17名の教職員が処分されました。その処分を口実に都教委は国立の教育に直接口出しをして、教育の管理強化を進めました。
あれから3年、今年の10月26日に、国立にある多摩教組の事務所に銃弾が撃ち込まれました。私もそのメンバーの一人です。多摩教組は反管理・反差別をモットーに、市民とともに活動してきました。私は現在国立2小のピースリボン着用などによる処分と、この処分を理由とする強制人事異動に異議を申し立てて裁判を行っています。
憲法と教育基本法をよりどころとして多摩教組は、同様の様々な裁判を支援し闘ってきました。今、銃弾の脅しに口をつぐんだら戦争への道を一歩歩むものだと思います。
「障がい」児学校の性教育への攻撃・七生養護学校(東京)
七生養護学校を支援する日野市民の会と東京都の養護学校教職員組合です。
全校をあげて保護者とともに作り上げてきた七生養護学校の心と体の授業を、一部都議と都教委が一方的に不適切と決めつけ、産経新聞が「まるでアダルトショップ」と書き立て、都教委は教材を没収し、教職員を犯罪者扱いの事情聴取を行い、さらには前校長を教員へ降格、1カ月の停職処分と半数近くの教職員を厳重注意処分にしたという前代未聞のできごとがありました。
(以下4行、保護者の発言)都教委は持ち去った教材を全部返してほしいです、子どもたちのもとに。保護者の会の……と申します。
前七生養護学校の校長は、私どもの組合に加入し、処分撤回を求める人事委員会に対する不服審査請求を行っています。「障がい」児教育の充実を求める保護者の数次にわたる要請行動と闘いは都教委を大きく包囲しています。
私たちは教育基本法の改悪の先取りを進める石原都政の教育行政の攻撃を断固跳ね返すとともに、教育基本法改悪を絶対に許さない闘いに全力をあげる決意です。
しゃべり場U 心の教育、心への攻撃など
「愛国心」を評価する通知票の問題 (福岡)
福岡では昨年度、69の小学校で愛国心が通信票で採点されるということがありました。これは抗議によって今年からは一応なくなったんですけれども、最初にこの愛国心を評価するなどということがおかしいと言ったのが在日コリアンの方だったということがあって、在日の方へのいやがらせがあいついだりするようなすごい大変なことがありました。
この経緯については、今日、愛国心通信票問題はなんであったのかという資料集を持ってきているのでロビーでよかったらご覧になって下さい。心を国家に支配され、採点され支配されるということは、国家よりも大切なものがあるということ、そばにいる人たちの小さな喜びとか悩みを一緒に感じていくことを奪われてしまうということです。
有事だからとか、国のためだからといって、誰かが犠牲になっているのに、気づかないふりをして生きて行かなくちゃいけないということです。
でも教育改革を進める官僚にも家族がいるし、愛国心だけが大事だと黒い街宣車でわーわー言っている人たちにも仲間がいるわけで、大切なものは大切だと言い続けること、その心を守るために、私たちは国家に心を教育されたり、採点されたりすること、管理されることを拒否しなければならないと思っています。
京都アヤシイ道徳教育など
在日の中学生から(京都)
こんにちは。中学3年の朴です。こちらはカラス団です。私は道徳教育発祥の地であるすごい先進的な京都で実際の教育を受けています。
だいたい週に2回くらいは必ず、「人づくり21世紀委員会」といういかにも怪しげな団体の報告書が配られたり、あと関西から「文化力 明日のために」という題の新聞が配られたりします。
私はこの「心のノート」を初めて見た時、妙な安心感を覚えました。この「心のノート」が求める像、いつも明るく、すこやかで、笑顔を絶やさず、感じることすらできなくなった日本人の姿には、私の入り込む隙間なんてないようだったからです。
朴という名前を持つ私のような日本人でない人々の姿なんて、「心のノート」にはこっけいに見えるほどのっていませんでした。だから安心しました。私は自分はこのくだらない教育にはくみ取られなかったと思いました。
でもその安心感はその後すごい激しい不快感にかわりました。朴という名前を持つ私は、「心のノート」「21世紀の教育」にはくみ取られませんでした。存在を消されたと感じました。
それでは私の隣の席に座っている日本国籍を持つ私の友達は存在を認められたのでしょうか。私は違うと思いました。「心のノート」にくみ取られた日本人は、存在を切り裂かれたと感じました。
私たちは絶えず常識というウソを押しつけられます。例えばうまく生きていけるのはこういう日本人ですよとか、疑問なんて持つのはやめましょう、そんなのめんどくさいだけですよとか、多数派っていうのはこういう人たちです。そして、多数派っていうのはいつも正しいんですって、押しつけられます。で、私たちはそれでもうどうしたらいいのかわからなくなってしまう時があるんですが、でも私は「そうですねー」って言ってその押しつけを受け入れることはできません。
私はくみ取られなかったからといって、消えてしまうっていうことはやっぱりできません。「心のノート」は言います、「わが国を愛しましょう」って。でも私は国家を愛することはできません。私はまだ勉強をしたいので学校に通いたいのですが、少数派が消されてしまうような場所には行きたくもないし、そんな場所には絶対したくもありません。
しゃべり場V 愛国心から戦争へ、これまでの運動、これからの運動
大学法人化問題と都立大の問題(東京)
現在、都立の大学では、異常な事態が続いています。都知事の威を借りた一部のメンバーで大学の決定を行い、一部の職員がそれをトップダウンで進めようという事態が進行しています。
今年の8月1日に都立の4大学の学長が、都知事の部屋に呼ばれ、そこで突然、これまで準備してきた新しい大学に向けた準備を全てご破算にしてまったく新しいタイプの大学を作ると、突然通達をされ、その1時間後に都知事からまったく違うタイプの大学が公表され、現在それが進められています。
そういったなかで例えば同意書という問題がでました。これは大学管理本部長あてに都立の大学の教員すべてが一人ひとり住所と氏名と捺印を押してこの決定に同意する、かつ口外をしない、という同意書を求められています。
しかしながら、教育基本法10条には、不当な支配に屈することなく、教育・研究が進められるべきことが規定されています。
私たちの都立の大学を考えるOBやあるいは関心をもっている全国の研究者あるいはその他の人々と共にですね、開かれた都立の大学の在り方を考える都民の会を11月の1日に発足しました。
そして2月の28日に、この会場で都民による都民のための大学をめざす集会を今企画中であります。大学の中にいると非常に厳しいのですが、しかしながら危機は希望だといわれている言葉を今私は研究しています。
いままで繋がりがなかった世界の人といろんなかたちでつながる。この場にこうした形で参加させていただいたこともその一つだと思っています。
「日の丸・君が代」強制反対の予防訴訟裁判(東京)
私たちは都立高校の教員です。東京都教育委員会は「日の丸・君が代」を徹底するために、新たにひどい実施指針を出しました。先ほどから話が出ていますが、「教職員は会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること」というものです。
そしてすぐ学校の周年行事に監視役を派遣し、「君が代」の間中うろうろしながら、教員のチェックをしました。立たない教員や退席した教員を犯罪者のように事情聴取をしています。
信じられないようなことが今学校で起こっています。これと同じことが全都の学校の卒業式で行われようとしています。
卒業式は生徒の晴れの門出、お祝いの席なのに担任が処分されるかもしれません。このような雰囲気の卒業式は生徒や保護者にとってもすごい圧力ですよね。
この命令は、教職員ばかりでなく、生徒や保護者の思想・良心の自由を侵害します。お互いの立場や考えを尊重しあうという、日頃の教育を壊してしまいます。
私たちは、基本的人権を侵害する憲法違反の命令に従う必要はないと思っています。処分するぞという脅しに対しては、裁判に訴えても闘う必要がある、と考えました。
私たちは君が代の時、起立・斉唱・ピアノ伴奏の義務がないことを確認する訴訟を起こします。12月6日に「日の丸・君が代強制反対、予防訴訟を進める会」を作りました。原告になる教職員が130人以上集まってきています。十数名の弁護団も決まりました。1月中には提訴の予定です。皆さん支援してください。
全国の皆さん、学校の自主性と私たちの心を守るために共に立ち上がりましょう。
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