COMMUNE 2003/12/01(No334 p48)

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12月号 (2003年12月1日発行)No334号

定価 315円(本体価格300円)


〈特集〉 教育基本法改悪阻止のために

口国旗・国歌法から激化した教基法めぐる攻防
 ・中教審最終答申までの動き
 ・教育基本法の成立とその特徴
 ・臨教審から90年代の教育攻撃
 ・教基法改悪攻撃下の教育攻防
 ・日教組本部の屈服路線打倒を

□侵略戦争と争闘戦に総動員の中教審最終答申
 ・「たくましい日本人の育成」論
 ・「教育の目的」を全面的に変更
 ・第10条(教育行政)の全面改悪
 ・最終答申・各条の改悪案批判

●討議資料 教育基本法見直しの中教審最終答申
国際労働運動 欧州/3日間の全欧港湾ストライキ 平岡 保

    10・12三里塚全国総決起集会

三里塚ドキュメント(9月) 政治・軍事月報(9月)

労働月報(9月)  闘争日誌(8月)

コミューン表紙

  小泉政権打倒掲げ

 第2次小泉改造内閣は、その顔触れの超反動的陣容にとどまらず、その打ち出している公約もすさまじく反動的だ。「小泉改革宣言」と題する公約は、郵政と道路公団の民営化、年金制度改革、国民保護法制の整備、教育基本法改正、改憲草案の策定など、「外への侵略戦争、内への階級戦争」を真っ向から打ち出し、そのもとに労働者人民を屈服させ、動員しようとする恐るべき攻撃である。これは日帝の体制的危機からの延命のための、日本経団連・奥田ビジョンに対応した、いわば「小泉・奥田路線」と言うべき凶暴な攻撃である。小泉は、10・17ブッシュ訪日・日米首脳会談で自衛隊の年内イラク派兵と15億jのイラク支援費拠出を約束した。日帝の共同的・競合的イラク侵略戦争への踏み込みである。事態は重大なところにきている。

 今回の総選挙にあたり、日本経団連が政党評価基準を打ち出してむき出しのブルジョア的要求を貫こうとしていることは重大である。彼らは、「法人税率引き下げなど企業の公的負担の軽減と消費税率の引き上げ」を突き付けている。これを基準にして、政党を評価し、「合格」なら企業献金するという形で、いわば自民党と民主党をハカリにかけている。というよりも、直接には民主党と連合に対して一層の帝国主義的転換を求めて恫喝しているのである。政権奪取を狙うなら、日本経団連の要求を体現した政策を実行せよ、ということである。企業に負担させるな、という露骨な要求である。民主党はこの突き付けに「消費税増税容認」をもってこたえている。菅代表は「日本経団連も民主党にかけてほしい」と哀願している。

 新民主党の登場の一方で、日本共産党の屈服と変質は一段と進んでいる。日本共産党は、大会を延期して総選挙にのめり込んでいるが、彼らの中心スローガンにはイラク派兵阻止も、大資本攻勢粉砕もない。戦後初めて日帝軍隊が他国の戦場に侵略派兵されようとしている時、これを選挙戦の最大の争点にしないで、何があるだろうか。「改憲と消費税」が対決点だと言うが、イラク派兵との闘いなしには、改憲と消費税そのものとの闘いもない。このように労働者の闘いに背を向け、敵対する路線では自民党と民主党に勝てるわけがない。社民党もまた、民主党の登場で見る影もなく、組織の消滅の危機である。今や、労働者、労働組合の闘いと離れてしまった社民党・日本共産党には、現状変革の何の望みも託することはできない。

 こうした中で、この総選挙の大反革命過程と対決する唯一の道は、11・9労働者集会の大結集以外にない。11・9労働者集会は、総選挙と同じ日となったが、まさにそれゆえに、日帝・小泉と真正面から階級的に対決し、労働者の自主的・主体的な大衆的総決起をもって巨大な隊列を登場させることが、この総選挙に対する真の革命的回答である。動労千葉の闘いに学び、続いて、3労組共闘の新しい潮流を全国で広め、日比谷野音に総結集することが必要である。11・9集会の6本のメインスローガンに、すべての労働者人民の要求と闘う意志が表現されている。このもとに既成の枠を越えた労働者の大結集をかちとることは可能である。「労働者の投票所は11・9日比谷野音だ」を合言葉にかつてない規模の大結集をかちとろう。イラク・朝鮮侵略戦争の攻撃に対して、日米韓の労働者の国際連帯で立ちはだかろう。  (た)

 

 

翻訳資料

 ●資料

 中教審最終答申

 新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について (答申)

 平成15年3月20日 中央教育審議会

 はじめに 

 中央教育審議会は、平成13年11月、文部科学大臣から「教育振興基本計画の策定と新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方」について諮問を受け、総会及びその下に設けた基本問題部会において審議を重ねてきた。
 審議会では、まず、教育改革国民会議の提言を踏まえながら、我が国の教育の現状と課題、これからの教育の目標、今後の教育改革の基本的方向について議論を行った上で、教育基本法と教育振興基本計画の在り方について審議を行った。そして、その間の審議経過をできるだけ国民に分かりやすく示すという観点から、平成14年11月に中間報告を取りまとめ公表した。
 中間報告公表後、平成14年11月から12月にかけて、東京、福岡、福島、京都、秋田において「一日中央教育審議会(公聴会)」を開催するとともに、有識者や教育関係団体等からの意見聴取、郵便等による意見募集など、幅広く国民各位からの意見を徴し、それらを参考に更に審議を深め、今回、答申を取りまとめた。
 この答申を機に、今後、教育改革に関する国民の関心が高まることを期待する。政府におかれては、国民の理解を深めるための取組を更に推進しつつ、本答申を基に、教育基本法の改正と教育振興基本計画の策定を進めていただきたい。

第1章 教育の課題と今後の教育の基本的方向について

1 教育の現状と課題

○昭和22年3月、民主的で文化的な国家を建設し、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする憲法の理想の実現を教育の力に託し、戦後における日本の教育の基本を確立するため、教育基本法が制定された。教育基本法の下に構築された学校教育制度をはじめとする教育諸制度は、国民の教育水準を大いに向上させ、我が国社会の発展の原動力となった。
○今日、我が国社会は、大きな危機に直面していると言わざるを得ない。国民の間では、これまでの価値観が揺らぎ、自信喪失感や閉塞(そく)感が広がっている。倫理観や社会的使命感の喪失が、正義、公正、安全への信頼を失わせている。少子高齢化による人口構成の変化が、社会の活力低下を招来している。長引く経済の停滞の中で、多くの労働者が離職を余儀なくされ、新規学卒者の就職は極めて困難となっている。
○このような状況を脱し、我が国社会が長期的に発展する礎(いしずえ)を築くために、戦後の我が国社会を支えてきた政治、行政、司法や経済構造などの基本的な制度の抜本的な改革が進められている。教育は、我が国社会の存立基盤である。現在あるいは将来の我が国社会が直面する様々な困難を克服し、国民一人一人の自己実現、幸福の追求と我が国の理想、繁栄を実現する原動力たり得るものは、教育をおいて他(ほか)にない。我が国社会が、創造性と活力に満ち、世界に開かれたものとなるためには、教育についても、これら一連の改革と軌を一にして、大胆な見直しと改革を推進していかなければならない。
○我が国の教育については、中央教育審議会、臨時教育審議会、教育改革国民会議等の提言に基づく改革をはじめ、様々な観点から不断の改革が行われてきた。しかしながら、関係者の努力による数々の取組にもかかわらず、我が国の教育は現在なお多くの課題を抱え、危機的な状況に直面している。
○青少年が夢や目標を持ちにくくなり、規範意識や道徳心、自律心を低下させている。いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在しており、青少年による凶悪犯罪の増加も懸念されている。
 家庭や地域社会において心身の健全な成長を促す教育力が十分に発揮されず、人との交流や様々な活動、経験を通じて、敬愛や感謝の念、家族や友人への愛情などをはぐくみ、豊かな人間関係を築くことが難しくなっている。
 また、学ぶ意欲の低下が、初等中等教育段階から高等教育段階にまで及んでいる。初等中等教育において、基礎的・基本的な知識・技能、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などの「確かな学力」をしっかりと育成することが一層重要になっている。
○科学技術の急速な発展と社会構造の変化に伴い、それを支える学問分野は高度に専門分化し、現実社会との乖(かい)離が問題視されるようになっている。同時に、学問領域の融合によって新たな分野も形成されつつある。大学・大学院には、基礎学力と分野横断的かつ柔軟な思考力・創造力とを有する人材の育成を目指した教育研究体制の構築と、教育研究を通じた社会への貢献が強く求められている。
 教育行政を含め、教育関係者はこのような現状を真摯に受け止め、これらの課題の解決に向けて今後一層の努力を重ねる必要がある。
○また、教育基本法制定から半世紀以上の間に我が国社会は著しく変化しており、その趨(すう)勢は今後も衰える気配がない。同時に、国際社会も大きな変貌(ぼう)を遂げ、その中で我が国の立場や果たすべき役割も変化し、世界の中の日本という視点が強く求められるようになった。我が国が、国際社会の一員としての責任を自覚し、国際社会において存在感を発揮し、その発展に貢献することが一層重要となっている。
 こうした国内的、国際的な大きな変化の中で、国民の意識も変容を遂げ、教育において重視すべき理念も変化してきている。
○現在直面する危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するためには、具体的な改革の取組を引き続き推進するとともに、今日的な視点から教育の在り方を根本までさかのぼり、現行の教育基本法に定める普遍的な理念は大切にしつつ、変化に対応し、我が国と人類の未来への道を拓(ひら)く人間の育成のために今後重視すべき理念を明確化することが必要である。そして、その新しい基盤に立って、家庭教育、幼児教育、初等中等教育、高等教育、社会教育等の各分野にわたる改革を進めていくことが求められる。
 国民一人一人が、国家・社会の形成者、国際社会の一員としての責任を自覚し、主体的に教育の改革に参画するとともに、社会全体での取組を推進することにより、新しい時代の教育の実現を目指す必要がある。

2 21世紀の教育が目指すもの 

○教育には、人格の完成を目指し、個人の能力を伸長し、自立した人間を育てるという使命と、国家や社会の形成者たる国民を育成するという使命がある。すべての人はそれぞれ多様な個性や特性を持つ。教育は、それを尊重し、生かし、育てることによって、多様な成長過程と人生を保障するものでなければならない。この基本的使命は、今後の時代においても変わることはない。
○一方、これからの教育には、少子高齢化社会の進行と家族・地域の変容、高度情報化の進展と知識社会への移行、産業・就業構造の変貌、グローバル化の進展、科学技術の進歩と地球環境問題の深刻化、国民意識の変容といった歴史的変動の潮流の中で、それぞれが直面する困難な諸課題に立ち向かい、自ら乗り越えていく力を育てていくことが求められる。このためには、一人一人が生涯にわたり学び続けるとともに、それを社会全体で支えていく必要がある。
○さらに、21世紀の社会の最も大きな課題の一つは、人間と自然との共生であり、様々な文化や価値観を持つ多様な主体がこの地球に共生することである。日本人が古来大切にしてきた、自然の美しさに感動し心を震わせる感性や、自然の本質を理解し、自然と人間との調和を重視する行動様式は、今後より一層重要な意義を持つものであり、我が国の文化として、教育においても大切に継承し、発展させていくべきである。
○教育の普遍的な使命と新しい時代の大きな変化の潮流を踏まえ、「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を目指すため、これからの教育は、以下の五つの目標の実現に取り組み、多様な個性や特性を持った国民を育成していく必要がある。 
@自己実現を目指す自立した人間の育成
  すべての国民は、一人の人間としてかけがえのない存在であり、自由には規律と責任が伴うこと、個と公のバランスが重要であることの自覚の下に、自立した存在として生涯にわたって成長を続けるとともに、その価値が尊重されなければならない。個人の能力を最大限に引き出すことは、教育の大切な使命である。一人一人が学ぶことの楽しさを知り、基礎的・基本的な知識、技能や学ぶ意欲を身に付け、生涯にわたって自ら学び、自らの能力を高め、自己実現を目指そうとする意欲、態度や自発的精神を育成することが大切である。 
A豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成
 豊かな心をはぐくむことを人格形成の基本として一層重視していく必要がある。社会生活を送る上で人間として持つべき最低限の規範意識を青少年期に確実に身に付けさせるとともに、自律心、誠実さ、勤勉さ、公正さ、責任感、倫理観、感謝や思いやりの心、他者の痛みを理解する優しさ、礼儀、自然を愛する心、美しいものに感動する心、生命を大切にする心、自然や崇高なものに対する畏敬の念などを学び身に付ける教育を実現する必要がある。
 また、健やかな体は、人間の心の発達・成長を支え、人として創造的な活動をするために不可欠なものである。子どもたちがたくましく成長し、充実した人生を送ることができるよう、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成するとともに、心身の健康の保持に必要な知識、習慣を身に付けさせることを一層重視していく必要がある。
B「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成
 これからの「知」の世紀においては、情報通信技術の進展等による教育環境の大きな変化も十分に生かしつつ、基礎・基本を習得し、それを基に探究心、発想力や創造力、課題解決能力等を伸ばし、新たな「知」の創造と活用を通じて我が国社会や人類の将来の発展に貢献する人材を育成することが必要である。特に大学・大学院の教育研究機能を飛躍的に高め、国際競争力を強化し、未来への扉を開く鍵(かぎ)となる独創的な学術研究や科学技術の担い手となる人材を様々な分野で豊富に育てていく必要がある。同時に、急速に進展する科学技術をめぐる倫理的な課題を理解し、的確に判断する力を国民一人一人が身に付けることも求められる。
C新しい「公共」を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成
 自分たちの力でより良い国づくり、社会づくりに取り組むことは、民主主義社会における国民の責務である。国家や社会の在り方は、その構成員である国民の意思によってより良いものに変わり得るものである。しかしながら、これまで日本人は、ややもすると国や社会は誰(だれ)かがつくってくれるものとの意識が強かった。これからは、国や社会の問題を自分自身の問題として考え、そのために積極的に行動するという「公共心」を重視する必要がある。
 近年、阪神・淡路大震災の際のボランティア活動に見られるように、互いに支え合い協力し合う互恵の精神に基づき、新しい「公共」の観点に立って、地域社会の生活環境の改善や、地球環境問題や人権問題など国境を越えた人類共通の課題の解決に積極的に取り組み、貢献しようとする国民の意識が高まりを見せている。個人の主体的な意思により、自分の能力や時間を他人や地域、社会のために役立てようとする自発的な活動への参加意識を高めつつ、自らが国づくり、社会づくりの主体であるという自覚と行動力、社会正義を行うために必要な勇気、「公共」の精神、社会規範を尊重する意識や態度などを育成していく必要がある。
 D日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成
 グローバル化の中で、自らが国際社会の一員であることを自覚し、自分とは異なる文化や歴史に立脚する人々と共生していくことが重要な課題となっている。このためには、自らの国や地域の伝統・文化についての理解を深め、尊重する態度を身に付けることにより、人間としての教養の基盤を培い、日本人であることの自覚や、郷土や国を愛し、誇りに思う心をはぐくむことが重要である。こうした自覚や意識があって初めて、他の国や地域の伝統・文化に接した時に、自他の相違を理解し、多様な伝統・文化に敬意を払う態度も身に付けることができる。このような資質を基盤として、国際社会の責任ある構成員としての自覚を持ち、世界を舞台に活躍し、信頼され、世界に貢献できる日本人の育成を目指す必要がある。

3 目標実現のための課題

○これからの教育の目標の実現のためには、教育基本法をはじめ教育関連法制の見直しまでさかのぼった教育改革が必要である。その中で、学校教育制度をはじめとする教育諸制度や諸施策を見直すとともに、学校教育のみならず教育の各分野にわたる具体の施策を総合的、体系的に位置付ける教育振興基本計画を策定することによって、実効性のある改革を進めていく必要がある。
○教育は未来への先行投資であり、今日の教育が、個人の明日をつくり、社会の未来をつくる。これからの教育の目標を実現するため、教育への投資を惜しまず必要な施策を果断に実行していく必要がある。現在の国、地方を通じた厳しい財政状況の下で、教育への投資の充実を図っていくためには、すでに実施している施策も含め、適切な政策評価を行い、その結果を反映させながら、施策の重点化・効率化を図ることが必要である。また、評価結果の積極的な情報公開に努め、幅広く国民の支持を得ることが重要である。 

第2章 新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について

1 教育基本法改正の必要性と改正の視点 

○戦後の我が国の教育は、教育基本法の精神に則り行われてきたが、制定から半世紀以上を経て、社会状況が大きく変化し、また教育全般について様々な問題が生じている今日、教育の根本にまでさかのぼった改革が求められている。
○このため、前章において明らかにした、教育の現状と課題と、21世紀の教育の目標を踏まえて、  
(T)現行の教育基本法を貫く「個人の尊厳」、「人格の完成」、「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は、憲法の精神に則った普遍的なものとして今後とも大切にしていくこととともに、 
(U)21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる以下のような教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正すること、 
が必要である。 
@信頼される学校教育の確立
 これからの学校教育においては、一人一人の個性に応じて、基礎的・基本的な知識・技能や学ぶ意欲をしっかりと身に付けさせるとともに、道徳や芸術など情操を豊かにする教育や、健やかな体をはぐくむ教育を行い、これらによりその能力を最大限に伸ばしていくことが重要であり、その視点を明確にする。その際には、グローバル化や情報化、地球環境問題への対応など、時代や社会の変化に的確に対応したものとなることが重要である。
A「知」の世紀をリードする大学改革の推進
 これからの国境を越えた大競争の時代に、我が国が世界に伍して競争力を発揮するとともに、人類全体の発展に寄与していくためには、「知」の世紀をリードする創造性に富み、実践的能力を備えた多様な人材の育成が不可欠である。そのために大学・大学院は教育研究の充実を通じて重要な役割を担うことが期待されており、その視点を明確にする。
B家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進
 家庭は教育の原点であり、すべての教育の出発点である。家庭教育の重要性を踏まえてその役割を明確にするとともに、学校・家庭・地域社会の三者が、緊密に連携・協力して子どもの教育に当たるという視点を明確にする。
C「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵(かん)養
 人は、一人だけで独立して存在できるものではなく、個人が集まり「公共」を形づくることによって生きていくことができるものである。このことを踏まえて、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成を図るため、政治や社会に関する豊かな知識や判断力、批判的精神を持って自ら考え、「公共」に主体的に参画し、公正なルールを形成し遵守することを尊重する意識や態度を涵養することが重要であり、これらの視点を明確にする。
D日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
 グローバル化が進展する中で、自らの国や地域の伝統・文化について理解を深め、尊重し、郷土や国を愛する心をはぐくむことは、日本人としてこれからの国際社会を生きていく上で、極めて大切である。同時に、他の国や地域の伝統・文化に敬意を払い、国際社会の一員としての意識を涵養することが重要であり、これらの視点を明確にする。
E生涯学習社会の実現
 時代や社会が大きく変化していく中で、国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会を実現することが重要であり、このことを踏まえて生涯学習の理念を明確にする。
F教育振興基本計画の策定
 教育基本法に示された理念や原則を具体化していくためには、これからの教育に必要な施策を総合的、体系的に取りまとめる教育振興基本計画を策定し、政府全体で着実に実行することが重要であり、そのための法的根拠を明確にする。

2 具体的な改正の方向

(1)前文及び教育の基本理念

(前文)
○教育理念を宣明し、教育の基本を確立する教育基本法の重要性を踏まえて、その趣旨を明らかにするために引き続き前文を置くことが適当。
○法制定の目的、法を貫く教育の基調など、現行法の前文に定める基本的な考え方については、引き続き規定することが適当。 
(教育の基本理念)
○教育は人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものであるという現行法の基本理念を引き続き規定することが適当。 
(新たに規定する理念)
○法改正の全体像を踏まえ、新たに規定する理念として、以下の事項について、その趣旨を前文あるいは各条文に分かりやすく簡潔に規定することが適当。  
・個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養 
・感性、自然や環境とのかかわりの重視 
・社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養 
・日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養 
・生涯学習の理念 
・時代や社会の変化への対応 
・職業生活との関連の明確化 
・男女共同参画社会への寄与 
(前文)
○教育基本法は、日本国憲法に基づく戦後の新しい教育理念を宣明するとともに、その後に続く教育関係諸法令制定の根拠となる教育の基本を確立する重要な法律であり、これを踏まえ、その趣旨を明らかにするために、特に前文が設けられたものである。
 このような教育基本法の教育法体系における位置付けは、今後とも維持していく必要があり、その重要性は変わるものではないことから、引き続き前文を置くことが適当である。
○法制定の目的、法を貫く教育の基調など、現行法の前文に定める基本的な考え方については、引き続き規定することが適当である。 
(教育の基本理念)
○  教育基本法は、「教育の目的」として、  
(T)教育は、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として、心身ともに健康な国民の育成を期して行うこと、 
(U)このような平和的な国家及び社会の形成者として、「真理と正義」、「個人の価値」、「勤労と責任」、「自主的精神」の徳目が求められること、 
を規定している。
 そして、この「教育の目的」を達成する上での心構え、配慮事項を、
「教育の方針」として規定している。
 このような現行法に定められた基本理念(教育の目的及び教育の方針)は、憲法の精神に則った普遍的なものであり、引き続き規定することが適当である。
(新たに規定する理念)
○さらに、制定から半世紀以上が経過した今日において、現在及び将来の教育を展望した場合、特に掲げて強調すべきと考えられる理念として、以下の事項があり、その趣旨を教育基本法に規定することが適当である。
○なお、現行法においては、教育の目的と教育の方針については、両者一体となって教育の基本理念を構成していること、以下の事項の中には現行法に既に類似の理念が規定されているものもあることに十分留意した上で、法改正の全体像を踏まえ、新たに規定する理念として、これらの事項について、その趣旨を前文あるいは各条文に分かりやすく簡潔に規定することが適当である。
(個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養)
○教育においては、国民一人一人が自らの生き方、在り方について考え、向上心を持ち、個性に応じて自己の能力を最大限に伸ばしていくことが重要であり、このような一人一人の自己実現を図ることが、人格の完成を目指すこととなる。また、大競争の時代を迎え、科学技術の進歩を世界の発展と課題解決に活(い)かすことが期待される中で、未知なることに果敢に取り組み、新しいものを生み出していく創造性の涵養が重要である。 
(感性、自然や環境とのかかわりの重視)
○美しいものを美しいものとして感じ取り、それを表現することができる力は、人の有する普遍の価値であって、文化の創造の基礎にある心であり、力である。特に、日本人は、古来より自然を愛(め)で慈しみ、豊かな文化を築いてきた。しかし今や、子どもの生育環境の中からは、自然が失われつつある。地球環境の保全が大きな課題となっている今日、自然と共に人は生きているものであり、自然を尊重し、愛することが、人間などの生命あるものを守り、慈しむことにつながることを理解することが重要である。 
(社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養)
○これからの教育には、「個人の尊厳」を重んじることとともに、それを確保する上で不可欠な「公共」に主体的に参画する意識や態度を涵養することが求められている。このため、国民が国家・社会の一員として、法や社会の規範の意義や役割について学び、自ら考え、自由で公正な社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神を涵養することが重要である。さらに、社会の一員としての使命、役割を自覚し、自らを律して、その役割を実践するとともに、社会における自他の関係の規律について学び、身に付けるなど、道徳心や倫理観、規範意識をはぐくむことが求められている。 
(日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養)
○グローバル化が進展し、外国が身近な存在となる中で、我々は国際社会の一員であること、また、我々とは異なる伝統・文化を有する人々と共生していく必要があることが意識されるようになってきた。そのような中で、まず自らの国や地域の伝統・文化について理解を深め、尊重し、日本人であることの自覚や、郷土や国を愛する心の涵養を図ることが重要である。さらに、自らの国や地域を重んじるのと同様に他の国や地域の伝統・文化に対しても敬意を払い、国際社会の一員として他国から信頼される国を目指す意識を涵養することが重要である。
 なお、国を愛する心を大切にすることや我が国の伝統・文化を理解し尊重することが、国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない。
(生涯学習の理念)
○今日、社会が複雑化し、また社会構造も大きく変化し続けている中で、年齢や性別を問わず、一人一人が社会の様々な分野で生き生きと活躍していくために、家庭教育、学校教育、社会教育を通じて職業生活に必要な新たな知識・技能を身に付けたり、あるいは社会参加に必要な学習を行うなど、生涯にわたって学習に取り組むことが不可欠となっている。教育制度や教育政策を検討する際には、これまで以上に学習する側に立った視点を重視することが必要であり、今後、誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができるような社会を実現するため、生涯学習の理念がますます重要となる。 
(時代や社会の変化への対応)
○教育においては、次代に継承すべき価値を大切にするとともに、年齢や性別を問わず国民一人一人が時代の変化や社会を取り巻く環境の変化に対応できる能力を身に付けることが重要である。グローバル化や情報化の進展、地球環境問題の深刻化や科学技術の進歩など、国民を取り巻く環境は大きく変貌を遂げており、教育も、これらの時代や社会の変化に常に的確に対応していくことが重要である。 
(職業生活との関連の明確化)
○職業は、一人一人の人生において重要な位置を占めており、人は働くことの喜びを通じて生きがいを感じ、社会とのつながりを実感することができる。しかし、経済構造が変化する中で、価値観の多様化が進んでおり、職業観・勤労観の育成がこれまでにも増して必要となってきている。また、若者の就職難が恒常化したり、年齢を問わず転職が一般化する中で、やり直しが可能となるよう必要な専門知識や技能を身に付けることが強く求められるようになってきている。さらに、我が国を支えてきた「ものづくり」の衰退が懸念される中で、その技術や能力を尊重する重要性が指摘されている。また、女性の人生における職業の位置付けも変化してきている。
 このため、これからの学校教育においては、子どもに的確な職業観・勤労観や職業に関する知識・技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力や態度をはぐくむための教育の充実に努めることが重要であり、また、社会においても生涯にわたり職業にかかわる学習機会を充実していくことが重要である。 
(男女共同参画社会への寄与)
○憲法に定める男女平等に関し、現行法は、「男女共学」の規定において男女が互いに敬重し協力し合わなければならないことを定めている。しかし、社会における男女共同参画は、まだ十分には実現しておらず、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、このような現行法の理念は今日においてより重要である。
 なお、現在では、男女共学の趣旨が広く浸透するとともに、性別による制度的な教育機会の差異もなくなっており、「男女の共学は認められなければならない」旨の規定は削除することが適当である。 

(2)教育の機会均等、義務教育

@教育の機会均等
○教育の機会均等の原則、奨学の規定は、引き続き規定することが適当。 
○教育の機会均等は、憲法に定める教育を受ける権利(憲法第26条第1項)、法の下の平等(同第14条)の規定を受け、その趣旨を教育において具体的に実現する手掛かりとして規定されたものである。これは、「個人の尊厳」を実質的に確保する上で欠かせない大切な原則であるが、これまでの教育がややもすれば過度の平等主義や画一主義に陥りがちであったという指摘にも留意した上で、教育の機会均等の原則や奨学の規定については、引き続き同様に規定することが適当である。
○また、憲法や教育基本法の精神に基づいて教育を行うに当たっては、障害のある子どもなど教育を行う上で特別の支援を必要とする者に対して、その必要に応じ、より配慮された教育が行われることが重要である。 
A義務教育
○義務教育期間9年間、義務教育の授業料無償の規定は、引き続き規定することが適当。 
○義務教育は、近代国家における基本的な教育制度として憲法に基づき設けられている制度であり、普通教育が民主国家の存立のために必要であるという国家・社会の要請とともに、親が本来有している子を教育すべき義務を国として全うさせるために設けられているものである。このように、国民に教育を受けさせる義務を課す一方、国及び地方公共団体は共同して良質の教育を保障する責任を有しており、義務教育の充実を図っていく必要がある。
○義務教育については、憲法の規定を受けて、義務教育期間を9年間と規定するとともに、国公立学校における授業料は無償とすることを定めているが、これについては、引き続き同様に規定することが適当である。 

(3)国・地方公共団体の責務

○教育は不当な支配に服してはならないとする規定は、引き続き規定することが適当。
○国と地方公共団体の適切な役割分担を踏まえて、教育における国と地方公共団体の責務について規定することが適当。
○教育振興基本計画の策定の根拠を規定することが適当。 
○教育行政の在り方については、現行法は、教育は不当な支配に服してはならないとの原則とともに、教育行政は必要な諸条件の整備を目標として行われなければならないことを定めている。前者については、引き続き規定することが適当である。
 教育行政の役割については、地方分権の観点から国と地方公共団体が適切に役割分担していくことが重要となっていることを踏まえて、教育における国と地方公共団体の責務について規定することが適当である。なお、「必要な諸条件の整備」には、教育内容等も含まれることについては、既に判例により確定していることに留意する必要がある。
○さらに、教育基本法に規定された理念や原則を実現する手段として、教育振興に関する基本計画を策定する根拠となる規定を、教育基本法に位置付けることが適当である。なお、教育振興基本計画の基本的考え方については、次章で述べることとする。 

(4)学校・家庭・地域社会の役割等 

@学校
○学校の基本的な役割について、教育を受ける者の発達段階に応じて、知・徳・体の調和のとれた教育を行うとともに、生涯学習の理念の実現に寄与するという観点から簡潔に規定することが適当。その際、大学・大学院の役割及び私立学校の役割の重要性を踏まえて規定することが適当。
○学校の設置者の規定については、引き続き規定することが適当。 
○現行法は、学校の役割については一切規定しておらず、学校教育法において、各学校種ごとの目的、目標が規定されている。
 教育の目的を実現する上で、今後とも学校教育は中心的な役割を果たすことが期待されている。特に、今後の学校には、基礎・基本の徹底を通じて生涯にわたる学習の基盤をつくり、共同生活を通じて社会性を身に付けていくこととともに、社会人の再教育など多様なニーズに対応した学習機会の充実を図ることが強く求められている。
 また、今後の教育を進めていく上で、学校・家庭・地域社会の三者の連携・協力をより一層強化することが求められており、そのためには、この三者の適切な役割分担が明確にされることが必要である。
 このため、学校の基本的な役割について、教育を受ける者の発達段階に応じて、知・徳・体の調和のとれた教育や、豊かな感性をはぐくむ教育を行うとともに、生涯学習の理念の実現に寄与するという観点から簡潔に規定することが適当である。
○大学・大学院は、我が国の教育において、高度で専門的な知識を備えた人材の育成を図るとともに、真理の探究を通じて、新たな知見を生み出し、これを活用して文芸学術の進展や社会の発展に貢献することなどにより、現代社会において欠くことのできない大変重要な役割を果たしている。このため、学校の役割について規定する際には、このような大学・大学院の役割の重要性についても十分に踏まえる必要がある。
○さらに、私立学校は、幼稚園から大学・大学院までの学校教育全体にわたって、我が国の公教育の重要な一翼を担っている。その果たしている役割の大きさにかんがみ、学校の役割について規定する際には、その重要性についても十分に踏まえる必要がある。
○現行法は、学校は「公の性質をもつ」ものとし、その設置者の具体的な範囲は学校教育法に委(ゆだ)ねている。学校には、国民全体のために教育を行うという公共性が求められること、また、その設置者には、一定水準の教育条件を確保するために運営の安定性や継続性を担保する能力が求められることを踏まえて、引き続き同様に規定することが適当である。  
A教員
○学校教育における教員の重要性を踏まえて、現行法の規定に加えて、研究と修養に励み、資質向上を図ることの必要性について規定することが適当。 
○学校教育の成否は、子どもの教育に直接に当たる教員の資質に大きく左右される。教員に対する評価の実施と、それに応じた適切な処遇の実施や、不適格な教員に対する厳格な対応とともに、養成・採用・研修や免許制度の改善等を通じて、教員の資質の向上を図ることは教育上の最重要課題である。
 このような、学校教育における教員の重要性を踏まえて、教育基本法において、国・公・私立学校の別なく、教員が自らの使命を自覚し、その職責の遂行に努めるという現行法の規定に加えて、研究と修養に励んで資質向上を図ることの必要性について規定することが適当である。
 また、このためには、教員の身分が尊重され、その待遇の適正を期すことが重要であり、引き続き同様に規定することが適当である。
○学校教育においては、子どもが自ら学習に取り組む主体的な存在として尊重され、子どもの学習意欲を引き出し、個性に応じて能力を伸ばすことができるよう教育上配慮されなければならない。同時に、子どもが学習する際には、規律を守り、真摯に学習に取り組むことが重要であり、教員は、子どもにそのような態度を身に付けさせることにより、安心して学習することができる環境を形成するよう努めることが重要である。 
B家庭教育
○家庭は、子どもの教育に第一義的に責任があることを踏まえて、家庭教育の役割について新たに規定することが適当。
○家庭教育の充実を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による家庭教育の支援について規定することが適当。 
○家庭は教育の原点であり、すべての教育の出発点である。親(保護者)は、人生最初の教師として、特に、豊かな情操や基本的な生活習慣、家族や他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的なマナー、自制心や自立心を養う上で、重要な役割を担っている。しかし、少子化や親のライフスタイルの変化等が進む中で、過干渉・過保護、放任、児童虐待が社会問題化するとともに、親が模範を示すという家庭教育の基本が忘れ去られつつあるなど、家庭教育の機能の低下が顕在化している。また、父親の家庭教育へのかかわりが社会全体として十分ではない。
○しかしながら、現行法においては、家庭教育について、社会教育の条文の中に、「家庭教育は……国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない」と規定されているにとどまっている。家庭教育の現状を考えると、それぞれの家庭(保護者)が子どもの教育に対する責任を自覚し、自らの役割について改めて認識を深めることがまず重要であるとの観点から、子どもに基本的な生活習慣を身に付けさせることや、豊かな情操をはぐくむことなど、家庭の果たすべき役割や責任について新たに規定することが適当である。なお、その際には、家庭が子どもの教育に第一義的な責任を負っているという観点に十分留意し、最小限の範囲で規定することが適当である。
○また、教育行政の役割としては、家庭における教育を支援するための諸施策や、国・地方公共団体と企業等が連携・協力して子どもを産み育てやすい社会環境づくりを進めていくことなどにより、家庭における教育の充実を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による家庭教育の支援について規定することが適当である。 
C社会教育
○社会教育は国及び地方公共団体によって奨励されるべきであることを引き続き規定することが適当。
○学習機会の充実等を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による社会教育の振興について規定することが適当。 
○心の豊かさを求める国民意識の高まりの中で、余暇活動をより豊かにしたり、ボランティア活動に参加するために、必要な知識・技能を身に付けるなどの学習への期待が高まるとともに、長寿化や産業・就業構造の変化の中で、生涯にわたる継続的な学習の重要性が高まっている。このため、社会教育は国及び地方公共団体によって奨励されるべきであることを引き続き規定することが適当である。
 あわせて、学習機会の充実等を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による社会教育の振興について規定することが適当である。 
D学校・家庭・地域社会の連携・協力
○教育の目的を実現するため、学校・家庭・地域社会の三者の連携・協力が重要であり、その旨を規定することが適当。 
○子どもの健全育成をはじめ、教育の目的を実現する上で、地域社会の果たすべき役割は非常に大きい。学校・家庭・地域社会の三者が、それぞれ子どもの教育に責任を持つとともに、適切な役割分担の下に相互に緊密に連携・協力して、教育の目的の実現に取り組むことが重要であり、その旨を規定することが適当である。
○なお、連携・協力を進めていく上で、これからの学校は、自らの教育活動の状況について積極的に情報提供するなど説明責任を果たしながら、保護者や地域の人々の積極的な参加や協力を求めていくことが重要である。 

(5)教育上の重要な事項 

@国家・社会の主体的な形成者としての教養
○自由で公正な社会の形成者として、国家・社会の諸問題の解決に主体的にかかわっていく意識や態度を涵養することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当。
○学校における特定の党派的政治教育等の禁止については、引き続き規定することが適当。 
○国民一人一人が、法や社会の規範の意義や役割を単に知識として身に付けるにとどまらず、自由で公正な社会の形成者として、国家・社会の諸問題の解決に主体的にかかわっていく意識や態度を涵養することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当である。
○また、現行法は、学校においては「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動」を行うことを禁止している。教育の政治的中立を確保するために、学校における特定の党派的政治教育等を禁止することは、今後の教育においても重要な原則として引き続き規定することが適当である。 A宗教に関する教育
○宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当。
○国公立学校における特定の宗教のための宗教教育や宗教的活動の禁止については、引き続き規定することが適当。 
○教育と宗教とのかかわりについては、大きく、「宗教に関する寛容の態度の育成」、「宗教に関する知識と、宗教の持つ意義の理解」、「宗教的情操の涵養」、「特定の宗教のための宗教教育」といった側面に分けてとらえることができる。
○憲法に定める信教の自由を重んじ、宗教を信ずる、又は信じないことに関して、また宗教のうち一定の宗派を信ずる、又は信じないことに関して、寛容の態度を持つことについては、今後とも教育において尊重することが必要である。
○宗教は、人間としてどう在るべきか、与えられた命をどう生きるかという個人の生き方にかかわるものであると同時に、社会生活において重要な意義を持つものであり、人類が受け継いできた重要な文化である。このような宗教の意義を客観的に学ぶことは大変重要である。
 また、国際関係が緊密化・複雑化する中にあって、他の国や地域の文化を学ぶ上で、その背後にある宗教に関する知識を理解することが必要となっている。
○しかしながら、現在、国公立の学校においては、現行法の特定の宗教のための宗教教育を禁止する規定(第9条第2項)を拡大して解釈する傾向があることなどから、宗教に関する知識や宗教の意義が適切に教えられていないとの指摘がある。このため、憲法の規定する信教の自由や政教分離の原則に十分配慮した上で、教育において、宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当である。
 また、国公立学校において、特定の宗教のための宗教教育や宗教的活動を行ってはならないことについては、引き続き規定することが適当である。
○人格の形成を図る上で、宗教的情操をはぐくむことは、大変重要である。現在、学校教育において、宗教的情操に関連する教育として、道徳を中心とする教育活動の中で、様々な取組が進められているところであり、今後その一層の充実を図ることが必要である。
 また、宗教に関する教育の充実を図るため、今後、教育内容や指導方法の改善、教材の研究・開発などについて専門的な検討を行うことが必要である。 

(6)その他留意事項 

(教育を受ける権利等)
○教育の機会均等に関して、現行法に「教育を受ける機会」と規定されているのを、憲法と同様に「教育を受ける権利」と改めてはどうかとの意見があったが、現行法の規定が、憲法上の権利を具体化してそれをより実質化するためには「教育を受ける機会」が確保される施策を進めることが重要である、との趣旨を表現したものであることに十分留意する必要がある。また、「生涯にわたり学習する権利」を規定してはどうかとの意見があったが、生涯学習については、教育全体を貫く基本的な理念として位置付けることが適当と考える。 
(義務教育制度の在り方)
○義務教育に関して、社会の変化や保護者の意識の変化に対応し、義務教育制度をできる限り弾力的なものにすべきとの観点から、  
(T)就学年齢について、発達状況の個人差に対応した弾力的な制度
(U)学校区分について、小学校6年間の課程の分割や幼小、小中、中高など各学校種間の多様な連結が可能となるような仕組み 
(V)保護者の学校選択、教育選択などの仕組み 
 などについて様々な意見が出された。
 これらの事項については、法制上は、学校教育法等において具体的に規定されている就学年齢、学校区分、就学指定等に関する事項であるので、今後、関係分科会等において検討し、実現可能なものについては、学校教育法等の改正などにより対応することが適当である。

3 教育基本法改正と教育改革の推進

○本審議会においては、教育の基本的な理念や原則を定める教育の根本法としての教育基本法の意義を十分に踏まえて、教育の諸制度や諸施策を個別に論じるだけでは取り上げにくい、教育の目的や方針、学校教育制度の在り方、家庭教育の役割など、教育の根本的な部分について審議を行い、その結果を取りまとめた。
○今後、政府においては、本審議会の答申を踏まえて、教育基本法の改正に取り組むことを期待する。法制化に際しては、国民に分かりやすい明確で簡潔なものとなるよう配慮する必要がある。
 また、教育基本法改正の趣旨が教育制度全般に生かされるよう、学校教育法、社会教育法、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律などに定める具体的な制度の在り方や、学習指導要領などの教育全般にわたって見直しを行うことが必要と考える。
 特に、学校教育法については、教育基本法改正に合わせて、各学校種ごとの目的、目標に関する規定などについて、見直す必要が生じると考えられる。
○また、本審議会においては、義務教育制度の在り方や、次章で述べる教育振興基本計画の具体的内容について、今後、関係分科会等において検討を深める必要がある。 

第3章 教育振興基本計画の在り方について 

1教育振興基本計画策定の必要性

○実効ある教育改革は、教育基本法の理念や原則の再構築とともに、具体的な教育制度の改善と施策の充実、さらに、教育に携わる者、教育を受ける者、国民一人一人の意識改革とがあいまって、初めて実現されるものである。
 近年、「環境」、「科学技術」、「男女共同参画」、「食料・農業・農村」、「知的財産」など、行政上の様々な重要分野について、基本法が制定されるとともに、それぞれの基本法に基づく基本計画が策定されている。これらの計画には、施策の基本方針や目標、各種の具体的な施策、施策を推進するために必要な事項等が、総合的・体系的に盛り込まれ、国民に分かりやすく示されており、閣議決定を経て政府全体の重要課題と位置付けられている。
○しかしながら、昭和22年に制定された教育基本法には、基本計画に関する規定が置かれておらず、現在まで、教育に関する政府全体の基本計画は策定されてこなかった。教職員定数改善計画、国立大学施設整備計画、コンピュータ整備計画、留学生受入れ10万人計画など、個々の施策の計画は策定されてきており、最近では「21世紀教育新生プラン」のように教育施策を体系化して国民に分かりやすく示す試みも行われている。しかし、これらは、文部科学省の施策の枠内で取りまとめられたものであり、政府全体として教育の重要性に明確な位置付けを与え、総合的に取り組む計画とはなっていない。
 政府として、未来への先行投資である教育を重視するという明確なメッセージを国民に伝え、施策を国民に分かりやすく示すという説明責任を果たすためにも、教育の根本法である教育基本法に根拠を置いた、教育振興に関する基本計画を策定する必要がある。
○このため、本審議会は、教育振興基本計画の骨格となる基本的考え方について以下のように提言する。また、教育基本法の改正後、政府において直ちに教育振興基本計画の策定作業に入ることができるよう、計画に盛り込むべき具体的な施策の内容について、今後、本審議会の関係分科会等においてより専門的な立場から検討を行うこととしたい。
 なお、計画のイメージをできるだけ分かりやすく示し、関係分科会等での検討に資するため、計画に関して本審議会において出された様々な意見を整理し、参考資料として「今後の審議において計画に盛り込むことが考えられる具体的な政策目標等の例」を添付する。また、中間報告に記述されている「教育振興基本計画に盛り込むべき施策の基本的な方向」や計画について寄せられた意見・要望についても、実際に計画を策定する際には十分参考にしてほしい。
 教育基本法改正後、同法の理念や原則を実現するために必要な諸施策の実施につき、関係府省に対しても幅広く協力を求め、政府全体として教育振興基本計画を速やかに策定されることを期待する。 

2 教育振興基本計画の基本的考え方 

(1)計画期間と対象範囲
○計画期間については、科学技術の進展や、社会や時代の変化が急速であることにかんがみて、あまり長期になることを避け、おおむね5年間とすることが適当であると考える。また、計画期間内に定期的に政策評価を実施し、その結果を踏まえ必要に応じ見直しを行うものとする。なお、従来の教育関係の個別の計画には5年間程度を計画期間とするものが多いが、それらとの整合を図る必要がある。
 計画の対象範囲は、原則として教育に関する事項とし、教育と密接に関連する学術やスポーツ、文化芸術教育等の推進に必要な事項も、この計画に含めるものとする。 
(2)これからの教育の目標と教育改革の基本的方向 
(これからの教育の目標) 
○教育振興基本計画では、教育の目標と、その目標を達成するための教育改革の基本的方向を明らかにする必要がある。「これからの教育の目標」については、第1章で述べたように、例えば以下のとおりとすることが適当と考える。 
@自己実現を目指す自立した人間の育成 
A豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成 
B「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成 
C新しい「公共」を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成 
D日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成
(教育改革の基本的方向)
 ○「教育改革の基本的方向」については、上記の教育の目標と第2章で述べた教育基本法改正の視点を勘案して、例えば以下のとおりとすることが適当と考える。 
@信頼される学校教育の確立 
・ 一人一人の個性・能力を涵養する教育の推進 
・ 豊かな心をはぐくむ教育の推進 ・ 健やかな体をはぐくむ教育の推進 
・ グローバル化、情報化等社会の変化に的確に対応する教育の推進 A「知」の世紀をリードする大学改革の推進 
B家庭の教育力の回復、家庭・学校・地域社会の連携・協力の推進 
C生涯学習社会の実現 

(3)政策目標の設定及び施策の総合化・体系化と重点化

○計画においては、これからの教育の目標と教育改革の基本的方向を踏まえて、中長期的に今後の社会の姿を見通しながら、今後おおむね5年間に重点的に取り組むべき分野・施策を明確にするとともに、具体的な政策目標と施策目標を明記する必要がある。これらの目標の策定に際しては、国民に分かりやすいものとすることが重要である。また、施策目標のうち可能なものについてはできる限り数値化するなど、達成度の評価を容易にし、施策の検証に役立つよう留意する必要がある。
○計画の策定に当たっては、施策の総合化・体系化、政策効果についての十分な検証を踏まえた施策の優先順位の明確化と施策の重点化、これまでの答申等における提言の実現状況等に十分留意しつつ、例えば、以下に掲げるような基本的な教育条件の整備について、その方向性を明確に示していく必要がある。
・「確かな学力」の育成
 国と地方の適切な役割分担の下、教職員配置の見直し等を通じた少人数指導や習熟度別指導など個に応じたきめ細かな指導の推進により、基礎的・基本的な知識・技能、学ぶ意欲や考える力などの「確かな学力」を育成する。 
・良好な教育環境の確保
 初等中等教育から高等教育までを通じた学校施設の耐震化・老朽化対策などの整備・充実等を通じ、良好な教育環境を確保する。 
・教育の機会均等の確保
 次代を担う意欲と能力のある人材を育成するため、奨学金制度の充実等を通じ、教育の機会均等を確保する。 
・私立学校における教育研究の振興
 我が国の教育において私立学校が果たす役割の重要性等にかんがみ、私学助成等を通じた良好な教育研究環境の整備を図り、特色ある教育を展開する私立学校の振興を図る。 ・良好な就学前教育環境の整備
 幼児期から「生きる力」の基礎を育成する環境を整備するため、幼稚園と小学校などとの連携・協力を推進するとともに、地域社会や家庭の多様なニーズに対応しつつ、就学前の幼児がそのニーズに応じた教育を適切に受けられるようにする観点から、幼稚園と保育所との連携・協力を推進する。 

(4)計画の策定、推進に際しての必要事項

(教育投資の充実)
○教育は、個人の生涯を幸福で実りあるものにする上で必須のものであると同時に、社会を担う人材を育成することにより、我が国の存立基盤を構築するものである。今後、我が国が国家戦略として人材教育立国、科学技術創造立国を目指すためには、計画に定められた施策を着実に推進していく必要がある。一方、現在の厳しい財政状況の下で、未来への先行投資である教育投資の意義について、国民の支持・同意を得るためには、今まで以上に教育投資の質の向上を図り、投資効果を高めることにより、その充実を図っていくことが重要である。そのためには、上記で述べたように、施策の総合化・体系化、また重点化によって教育投資の効率化に努めるとともに、政策評価の結果を適切に反映させる必要がある。 
(国と地方公共団体、官民の適切な役割分担)
○計画の策定に際しては、教育における地方分権、規制改革を一層推進するとともに、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持向上を図る観点から、国が責任を負うべき施策と地方公共団体が責任を負うべき施策とを明確に区別した上で、相互の連携・協力が図られるようにする必要がある。また、職業能力開発、高度専門職業人の教育訓練など関係行政分野との連携・協力に努めるとともに、行政と民間との間の適切な役割分担、連携・協力にも配慮することが大切である。 
(政策評価の実施)
○政策評価を定期的に実施し、政策目標や施策目標の達成状況、投資効果を明らかにするとともに、その結果を計画の見直しや次期計画に適切に反映させていく必要がある。また、国民に対する説明責任を果たすため、評価結果の積極的な公開を行うとともに、国民からの意見を計画に適切に反映させることが大切である。 
(参考)今後の審議において計画に盛り込むことが考えられる具体的な政策目標等の例

(1)信頼される学校教育の確立

@一人一人の個性・能力を涵養する教育の推進
○児童・生徒の学習到達度を調査するための全国的な学力テストを実施し、その評価に基づいて学習指導要領の改善を図る。「確かな学力」を育成し、国際的な学力調査(PISA/IEAなど)での上位成績を維持する。
○少人数指導や習熟度別指導など個に応じたきめ細かな指導を推進して、分かる授業を行い、学ぶ意欲を高めるとともに、楽しい学校生活を実現する。
○学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)等への教育的対応を含めた特別支援教育体制の構築を図る。
○当面、高等学校の通学範囲に少なくとも1校を目標に中高一貫教育校の設置を推進するとともに、小中一貫、幼小一貫など弾力的な学校種間連携等を積極的に推進する。
○教育委員会と大学の教員養成系学部との連携による教員養成や研修の効果的実施、教員の能力、実績を適切に評価するシステムの導入等を通じて、教員間の切磋琢磨を促し、教えるプロとしての使命感と能力を備えた優れた教員を育成・確保する。あわせて、学校職員の資質の向上を図る。
○学校施設の耐震化の推進など良好な教育環境の確保を進めるとともに、学校の安全管理の徹底を図る。
○私立学校における独自の建学の精神に基づく特色ある教育と多様な教育研究の振興を図る。 
A豊かな心をはぐくむ教育の推進
○地域の人材の活用や体験活動等を通じて、道徳教育の充実を図る。
○いじめ、校内暴力の「5年間で半減」を目指し、安心して勉強できる学習環境づくりを推進する。また、不登校等の大幅な減少を目指し、受入れのための体制づくりを推進する。
○学校、市町村、都道府県等の各段階における教育相談体制の整備を図り、子どもの心のケアを充実する。
○学校における司法教育の充実を図り、すべての子どもに、自由で公正な社会の責任ある形成者としての資質を育てる。
○宗教に関する教育について専門的な検討を行い、教育内容の改善、指導方法や教材の研究・開発の充実を図る。
○伝統文化や現代文化を鑑賞し、体験する機会の充実を図るなど文化芸術に関する教育の充実を図る。
○小学校就学前のすべての子どもが適切な幼児教育を受けることができるよう幼児教育体制の充実を図る。また、幼稚園・保育所と小学校以降の教育との連携の強化を図る。
○「職場体験学習」など、学校と職業生活との接続を改善し、将来の職業や働き方、生き方を考えさせる教育を、初等中等教育の各段階を通じて実施する。 
B健やかな体をはぐくむ教育の推進
○生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成するため、教員の指導力の向上、優れた指導者の確保、運動部活動の改善・充実を図る。
○子どもの体力や運動能力の低下に歯止めをかけ、上昇傾向に転じさせることを目標として、子どもの体力向上を推進する。
○子どもたちに生涯にわたる心身の健康の保持に必要な知識や適切な生活習慣等を身に付けさせるための健康教育を推進する。 
Cグローバル化、情報化等社会の変化に的確に対応する教育の推進
○高校卒業段階で英語で日常会話ができ、大学卒業段階では英語で仕事ができることを目標とした英語教育など、外国語教育の充実を図る。TOEFL等の客観的な指標に基づく世界平均水準の英語力を目指す。大学入試センター試験に平成18年度入試から外国語リスニングテストを導入する。
○教員の国際性を涵養するとともに、教員の国際教育協力の経験や異文化体験等を生かした教育を実践することにより、児童生徒の国際理解を促進する。
○知識社会・高度情報化社会を生きる子どもの情報活用能力の向上を目標とし、新しい教材・教育用コンテンツ(インターネットや電子媒体等における情報の内容)の充実を図るとともに、すべての学校の教室への校内LANの設置等による校内ネットワーク化、光ファイバー、ADSL等によるインターネットの高速化を行うなどにより、学校の情報通信環境の整備を推進する。
○生涯にわたり自立的な生活を全うすることができるよう、経済をはじめ広く社会の仕組みに関する学習の機会を充実する。 

(2)「知」の世紀をリードする大学改革の推進

○大学改革の流れを加速し、活力に富み国際競争力のある大学づくりを目指すため、国立大学の法人化など大学の構造改革を推進する。
○世界水準の教育研究成果の創出及び確保を目標として、大学等の施設整備を推進する。
○高等教育機関の活性化を図るため、各大学において具体的目標を定め、教員の公募制・任期制の導入の推進を図るほか、教員の自校出身者比率の低下や大学院入学者中の他大学出身者の割合の増加についての数値目標の設定など、各大学において具体的な目標を定め、教員・学生の多様性を高める。
○学校管理職への女性の登用や大学・大学院における女性教員比率等の飛躍的な向上を促進する。
○「留学生受入れ10万人計画」に続く新たな留学生政策を早期に策定し、高等教育の国際化及び国際競争力の強化等に資する留学生施策を推進する。
○奨学金の充実など学生支援の推進を図る。
○安易な卒業をさせないよう学生の成績評価を厳格化し、高等教育修了者にふさわしい学生の質(基礎的な教養、専門的な学力、人生観と世界観など)を保証する大学教育の実現を図る。
○優れた研究教育拠点形成等の重点的な支援とともに、博士課程学生、ポストドクター(博士課程修了者)支援の充実など優れた若手研究者の育成を推進する。
○国際的な通用性等を踏まえた高等教育機関の質を確保するための第三者評価システムの構築を推進する。○産学官連携を推進する。
○研究開発成果等の知的財産の創出、保護、活用等を推進する。
○大学・大学院等への社会人の受入れを拡大するため、社会人特別選抜制度や夜間大学院、昼夜開講制、長期履修学生制度の充実、サテライト教室の設置など、社会人の再教育を推進する。 

(3)家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の促進

○希望する保護者が全員参加できることを目指し、家庭教育に関する学習機会の提供や子育て支援ネットワークの形成等、家庭教育の充実のための環境を整備する。企業等に対して、雇用環境の整備など家庭教育の充実に向けた取組を要請する。
○学校の教育活動等に対する保護者や地域住民の参加・協力を促進する。
○小・中学校で全員が体験することを目指し、地域におけるボランティア活動や自然体験活動などの奉仕活動・体験活動の機会を充実する。
○すべての子どもが自主的に読書活動を行うことができるよう、家庭、地域、学校を通じた、子どもが読書に親しむ機会の提供、図書やその他の情報資料の整備などの諸条件の充実等、環境の整備を推進する。 
○青少年を取り巻く有害環境の問題について、関係業界に対する一層の自主規制の要請や経済団体に対する協力要請とともに、有害情報や情報活用能力の問題への取組を推進する。 

(4)生涯学習社会の実現

○地域の教育施設を活用した学習機会の提供等、社会・経済の変化や個人の学習ニーズに柔軟に対応し、生涯を通じ必要な時に必要な学習ができる環境づくりを推進する。
○学校、地域等あらゆる場面を通じて、男女共同参画社会の理念の理解とその実現に向けた学習機会の充実を図る。
○生涯にわたる学習活動の成果の評価・認証体制を整備する。
○生涯スポーツ社会の実現のために、住民が主体的に参画する地域のスポーツクラブの育成を促進し、それぞれの技術や体力に応じてスポーツに親しむことのできる環境を整える。