翻訳資料-1
●討議資料
米英軍と一体で陸上自衛隊が軍事占領するイラク派兵法案
日帝・小泉は6月13日、「イラク復興支援特別措置法案」と、「テロ対策特別措置法」の2年間延長の改悪案を国会に提出した。このイラク復興支援特措法案は、目的、内容ともに、米英軍とともに自衛隊がイラクを軍事占領するための法律である。以下、〔目的〕、〔非戦闘地域〕、〔武器使用〕の3点に絞って批判していく。 米帝のイラク侵略を正当化
第1条〔目的〕で、「この法律はイラク特別事態を受けて」という。その「イラク特別事態」とは、「国連安保理決議678、687、1441並びに関連する決議に基づき国連加盟国によりイラクに対し行われた武力行使並びにこれに引き続く事態」と説明している。
安保理決議1441は、昨年11月、米帝ブッシュの世界戦争計画のもとで、最初からイラク戦争計画があり、その戦争の口実をつくるために国連にあげさせた決議である。戦争挑発も甚だしい決議であった。イラクが受け入れ難いもので、受け入れ拒否を狙ったものだ。だがイラクは受け入れ、査察が始まった。査察継続を求めるフランス・ドイツ・ロシアとイラクへの強盗戦争を決断していた米英の間で分裂が起こり、米英は問答無用で3・20イラク侵略戦争に突入していった。反対するなら他帝国主義をたたきつぶしてでもやるというものだった。
これが「特別事態」の内容だ。こんなものを認めることなど絶対できない。
決議1483の反動性
3・20に開始されたイラク侵略戦争は、4・20前後をメルクマールとして、米英両軍によるイラク軍事占領と植民地化政策の展開として継続・激化・拡大している。その中で5・22国連安保理での「イラク制裁解除決議」(決議1483)はきわめて重要な反革命的画期をなしている。
この決議の採択は帝国主義強盗戦争における勝者である米英帝が、イラクの占領継続と植民地化政策の全一的権限を掌握したことを示している。米帝は国連安保理決議という形で独・仏などの他帝国主義諸国やロ・中などの大国諸国に追認させたのである。
決議1483をもって、米帝はますます激しくイラク軍事占領の長期化を図り、石油資源をはじめとする帝国主義的全権益を独占的にむさぼっていくプロセスへと突入していく。
決議1483の内容は次のようなものである。
@決議は「イラク制裁解除決議」という名称だが、中身はそれにとどまらず、米英帝によるイラクの全面的な統治・植民地的支配の基本項目をすべて含んでいる。
A単純に戦後統治についての取り決めではないということだ。
「改善はされたがイラクの状況は依然として世界の平和と安全に対する脅威である」
「イラクが武装解除の責任を負うことを再確認する」
大量破壊兵器など発見されず、米帝の「戦争目的」のペテン性が天下に暴露されたことも開き直りつつ、米帝はイラク戦争が本質的にはまだ続いているという基本構図を継続・維持しようとしているのだ。これは米軍の占領の長期化を合法化し、イラク権益の帝国主義的独占をいっそう確実にしようとしているからだ。
B決議の前文では、
「米国と英国が統一司令部(『当局』)のもとで該当する国際法に基づき占領国として有する特定の権威と責任・義務を認識。占領国以外の国は『当局』の下で活動する」と、イラクの国家経済の統治にかかわることは米英が独占的に権力を掌握することが確認されている。国連はあくまでもそれを「支援」「協力すること」を任務とするにとどまっている。
さらに米英の『当局』のイラク統治の責任なるものは何の時限的規定もない。
「イラク国民を代表する政府が樹立されるまでは『当局』が責任を負う」とされている。「当局」は「過渡的行政としての暫定行政機構」の樹立を支援するとされているが、この段階では統治権は依然として米英のものとされている。
C貿易・経済・財政の面については、
「武器禁輸をのぞき、イラクとの貿易や金融、経済関係をめぐるあらゆる禁止措置をやめる」として、イラク制裁が解除されたことが重要である。これによって生じる石油代金等々はすべて新しく設定された「イラク開発基金」に振り込まれる。そして、この「イラク開発基金の運用は『当局』の監督のもとに置かれる」と明記されている。
この基金の具体的運用としては、「経済の再建とインフラの修復、武装解除の継続、文民行政の経費」などに使用されるとしている。つまり、軍事占領と植民地経営のための費用や、独占的に牛耳るつもりの石油施設などのための費用として使用されるのだ。
D現行の、国連下の「石油と食料のための交換計画」は6カ月後に終了するとされた。「最も費用対効果の高い方法によって」という意味ありげな条件がついているが、これはロシアなどを決議賛成に引き入れるための取り引き内容をさすとされている。しかし同時に、上記の「計画」の資金から10億jをイラク開発基金(=米英)に早急に送金することを確認している。さらに決議採択後の石油等の輸出の収益はすべて「開発基金に預けられる」ことも確認されている。
米英帝のイラク侵略戦争が、帝国主義的な強盗戦争以外のなにものでもなかったことが鮮明に示されている。
米帝は「占領国としての権威と責任と義務」と称し、戦争に勝った国の当然の権利というむきだしの主張を平然と押し出している。さらに「国際的に認知された国民を代表する政府が樹立されるまで」無制限に軍事占領を続けることを宣言し、イラクの政治・経済・財政・貿易その他を完全に独裁的に牛耳ること、つまりイラクの植民地支配を継続することを、帝国主義間争闘戦のさしあたっての敗者である独・仏やロ・中に認めさせ、国連の名においてそれを国際的に強制するに至ったのだ。
この決議全体を通じて、フセインの大量破壊兵器保有問題はほとんどかすんでしまった。結局、米英帝にとってはイラク戦争目的は石油国イラクを侵略し支配し牛耳ること、そしてそれをテコに中東全体を制圧し、帝国主義間争闘戦で決定的に他を圧倒しようとするもの以外のなにものでもなかったのである。
このイラク制裁解除決議案に独・仏そしてロ・中などが賛成したことは、今回のイラク戦争のプロセスで決定的となった米対EU(独・仏など)を軸とする帝国主義間対立、帝国主義世界体制の分裂が、修復されたとか、修復されつつあるとかいうことではない。帝国主義的強盗どもはさしあたって圧倒的な軍事力でイラクを軍事制圧した米帝の権益を決定的に認めたうえで、その枠内での自己の利益を少しでも図ろうとしているにすぎない。
この法案は、以上のような決議1483を「根拠」に、自衛隊をイラク植民地支配のための占領軍として、イラク人民の武装解放闘争を鎮圧するために派兵しようとしているのだ。人道復興支援活動や安全確保支援活動なるペテン的な表現をしているが、これはイラク人民に銃口を向け、ついには無差別虐殺に至るものである。侵略戦争そのものである。
「非戦闘地域」のペテン
自衛隊の活動領域は、「戦闘行為が行われていない地域」(第2条の3)という。これがペテンであることは明白だ。
米帝はことあるごとに「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上部隊の派遣)」を強調してきた。5月23日の日米首脳会談でもブッシュは「フット・ソルジャー(歩兵)を出してくれ」と求めたとされる。イラクでは米英両軍が展開し、占領が強行され、それに対してイラク人民の民族解放戦争、ゲリラ戦争が闘い抜かれている。それに対して米英軍は発砲し、虐殺を続けている。イラクはせん滅戦争が繰り広げられる戦場そのものである。どこまでが戦場でどこからが戦場でないのか、区別などできるはずがない。
しかし、第2条2には「対応措置の実施は武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない」とある。いうまでもなく憲法9条の規定だ。この大前提があるために、自衛隊は戦闘区域に存在することはできないとせざるを得ない。
つまり外務省高官が言うように
「戦闘とは武力行使の当事者が殺し合いをしていること」という基本的な認識がある。戦闘を認めると、武力行使を認めざるを得ず、それは憲法9条の規定とは逃れようもなく違反する。だから言葉の解釈で言い抜けようというのだ。
そこで出た政府解釈がこれだ。
「組織的行為でなければ、戦闘行為とみなされない」と。
政府内では、バクダッド周辺で頻発する自爆テロや砲撃、手投げ弾などの突発的な攻撃について「組織的でなければ、戦闘行為とみなさない」という解釈が有力になっているという(朝日新聞6月 12日)。
まったくデタラメな屁理屈だ。要するに、現に問題になっているイラク人民の自爆決起や砲撃、手投げ弾戦闘などのゲリラ戦争、抵抗闘争、民族解放闘争を「戦闘ではない」ことにするために、「組織的でなければ、戦闘行為とみなさない」と解釈をでっち上げたのだ。このデタラメな解釈の下で、イラク人民のゲリラ戦闘をそれは戦闘ではない、だからそこは戦闘が行われている区域ではないから自衛隊を派遣できるというきわめつきのペテンを押し通そうというのだ。
「戦闘区域ではない」とするところに派遣された自衛隊は安全確保活動として、米英軍に対する医療、輸送、補給などを行う。
自衛隊員が武器を使って守れる範囲は、PKO法では「隊員本人と、ともに現場に所在する隊員」に限定された。武器使用の判断をするのは「生命の危険にさらされた」隊員本人である。周辺事態法では、武器使用の範囲が自衛隊が保管する武器を守る場合にまで拡大された。武器、艦艇まで拡大された。テロ対策特別措置法では、防護対象をさらに「自衛官の管理下に入った者」にまで拡大した。
今回のイラク派兵法はテロ対策特別措置法と同じである。
「自己の管理下に入った者」とは、自衛隊の診療所で治療を受けた米軍兵士、米軍との連絡員、自衛隊が輸送している救難した米兵も含まれる。
自衛隊の管理下にある米兵(=米軍)が攻撃を受けた場合は、自衛隊員は武器使用できる。これは明らかに戦闘である。武力行使そのものである。しかも集団的自衛権の発動である。戦闘において米軍と自衛隊は完全に一体化している。
陸上自衛隊は、戦闘現場に登場することで、否応なく戦争にまきこまれていくことになるのだ。
さらに敵の攻撃をでっちあげて戦争挑発さえしていくのが帝国主義というものだ。戦前の日本軍の歴史はそうした例でいっぱいだ。
自衛隊がイラク人民の虐殺を「主体的に積極的に」担うものに必ずなっていく。自衛隊は恐るべき勢いでイラク侵略戦争のど真ん中に突入していくことになるのだ。絶対に許すことはできない。
「武力攻撃事態」もある
そして現在では、恐るべき侵略戦争法である有事3法が成立している。「武力攻撃事態」の認定について、福田官房長官はこのように述べている。
自衛艦や民間船舶などが公海上で攻撃された場合も武力攻撃事態と認定することもあり得る。他国の領域内にある自衛艦や在外公館への攻撃については
「基本的には(武力攻撃事態に)入らない」としたが、国際平和維持活動(PKO法)やテロ対策特別措置法などで活動中の自衛隊の攻撃については
「わが国への組織的、計画的な攻撃と認定されるかどうかだ」と述べ、完全に排除されないという認識を示した(02年5月8日衆院有事法制特別委)。
イラクに派遣された自衛隊が「組織的、計画的な攻撃を受けた場合」、「武力攻撃事態」と認定して、自衛権を発動し、本格的な侵略戦争にエスカレーションさせる道が開かれている。PKOだ、テロ対策特別措置法だ、そしてイラク新法だとさまざまな口実をつけて自衛隊が海外に展開することが、常に有事3法を発動する機会をつくり、日帝の本格的な侵略戦争を引き出していく。
戦前、柳条湖事件で中国東北部への侵略戦争を仕掛けた関東軍とは、もともとは日露戦争後の1906年に関東州租借地と満州鉄道付属地の警備に当たった陸軍部隊であった。それが、次第に位置を高め中国侵略の主役になっていった。この戦前の中国侵略の歴史を忘れることはできない。
ROEで「正当防衛」緩和
「自衛隊の武器使用について緩和しない」ということが言われている。それは法案の条文中だけのことであり、防衛庁は「部隊行動基準」(ROE)を策定し、武器使用を緩和する方針を打ち出した。
その核心は、「正当防衛」を拡大解釈することだ。武器の使用をめぐっては、人に危害を加える「危険射撃」は「正当防衛」と「緊急避難」以外は認められていない。防衛庁幹部は
「急迫不正の侵害が予想されれば、相手に撃たれなければ、こちらが撃てないわけではない」
と言って、「正当防衛」の範囲を拡大することを示唆した。
こうした考え方で、防衛庁は、イラク派兵法成立を前提に、自衛隊部隊が人民のゲリラ部隊に襲撃された場合を想定して、武器使用基準を具体的にマニュアル化した「部隊行動基準」(ROE)を策定して初適用するというのだ。
自衛隊は、政府が言うように自爆テロや砲撃や手投げ弾の戦闘を「組織的でないから戦闘でない」などとは言っていられない状況に突入していくのだ。それらが戦闘行為であることは余りにも明白だからだ。
それに対応する行為が「正当防衛」などではなく、戦闘行為であることも又明白である。だから「部隊行動基準」(ROE)なのだ。
ROEとは「交戦規則」である。「交戦権の禁止」を定めた憲法9条を意識してその用語を避け、「部隊行動基準」なる言葉を防衛庁が発明したのである。
交戦規則とは米統合参謀本部による「国防省軍事関連用語辞典」によると
「所管の軍当局によって交付された指令で、軍が遭遇した他の軍隊との戦闘交戦を開始および(または)継続しようとする際の状況と制限について叙述したもの」
である。つまり、戦闘をどのような手続きで開始するかを決めた規則である。
防衛庁は、「部隊行動基準」をつくり、その中で、@口頭で警告、A銃を構える、B威嚇射撃、C危害射撃−−と明示。人に危害を加える「危害射撃」には「正当防衛」として認められる具体例をあげるなど、一連の手続きについて法解釈の幅を広げ、武器使用基準を事実上「緩和」するという。
つまり、自衛隊は後方支援だとか、戦闘地域ではないところで活動するとかという政府の説明が通用しないことを確認し、戦争に行くこと、戦闘をすること、そのための部隊行動基準という名の交戦規則を決め、敵(イラク人民だ)の行動に対する先制的な攻撃を「正当防衛」の名の下で実施できるようにしようとしているのだ。
4年の時限立法というが、アフガニスタンの例をみるまでもなく、これは一旦始まれば永続的な泥沼的な侵略戦争へと発展せざるをえないのだ。アフガニスタン、イラク、イラン、北朝鮮そして中国侵略戦争から第3次世界大戦を不可避とする道程である。
帝国主義国の労働者階級人民と被抑圧民族人民が連帯し、帝国主義の侵略戦争を内乱へ、国際的内乱へ発展させ、反帝・反スターリン主義世界革命の達成をかちとることだ。それだけが全世界人民が目指す道である。
軍事占領するための、自衛隊のイラク派兵法案を阻止しよう。
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