COMMUNE 2003/04/01(No326 p48)

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4月号 (2003年4月1日発行)No326号

定価 315円(本体価格300円)


〈特集〉 イラク侵略阻む国際反戦闘争

口緒戦からイラク人民の大虐殺を狙う米帝作戦
口アメリカ先頭に新時代を開いた国際反戦闘争
□反戦闘争を支えた各国階級的労働運動の前進

●翻訳資料1/ ブッシュ 一般教書演説
●翻訳資料2/ 『ショックと恐怖』作戦関連文書
● ニューズ&レビュー/ 南朝鮮・韓国/公企業売却がペダルホ氏を殺した--室田順子 

     アメリカ反戦運動と交流

三里塚ドキュメント(1月) 内外情勢(1月) 日誌(11-12月)

コミューン表紙

 石油のための戦争

 米帝ブッシュは何がなんでもイラクへの侵略戦争を強行しようとし、その開戦の日が切迫している。米帝の「ショックと恐怖作戦」と称する攻撃計画は、開戦48時間で3千発の爆弾とミサイルを撃ち込むというものである。これは首都バグダッドに対する広島・長崎の原爆を超える大攻撃、大量殺りくを意味している。イラクの「大量破壊兵器」を口実に米帝がやろうとしていることは、イラクとは比べものにならない規模と質の、文字どおりの大量破壊兵器による現実の大量殺人である。それも世界の人民の反対の声(2月15日には、世界60カ国600都市1千5百万人の人民がイラク侵略戦争反対のデモに立ち上がった)に逆らってだ。白昼公然、全世界が見ている中での大量殺人というこの史上類例のない残虐を絶対に許してはならない。

 イラクに対する米帝の攻撃が石油のための侵略戦争であることは、ますます明らかになっている。イラクの大量破壊兵器をどうやって破棄させるかを国際社会が検討しているかのような報道は、物事の本質を覆い隠すペテンである。全世界の人民はこの戦争の階級的本質を見抜き続々と決起しつつある。それは侵略戦争をやって世界を破滅させるほかに生き延びる道のなくなった帝国主義を、今こそ労働者人民の力で打倒しよう、という質を持った国際連帯行動である。ところが、日本共産党などは「イラクに対する査察の強化」をメインスローガンにして、イラク攻撃を強行する米帝との真っ向からの対決を回避している。明らかに日共は、全世界人民の国際的内乱の爆発、帝国主義打倒の闘いをこそ恐れ、おびえているのである。

 イラク攻撃ときびすを接して北朝鮮侵略戦争が策動されている。金正日スターリン主義政権の瀬戸際政策をえじきとして、北朝鮮政権転覆を明白に狙った攻撃が襲いかかろうとしているのだ。問題の焦点はどこにあるのか。第一に、北の「核」に原因があるのではなく、米帝ブッシュの北朝鮮侵略戦争策動こそが原因であるということ。第二に、金正日スターリン主義政権の反革命的・反人民的政策は断罪されなければならないこと、第三に、しかしそれを口実に反北朝鮮の排外主義をあおることは米日帝の北朝鮮侵略戦争策動を促進することである。何よりも、米軍の東アジア10万人体制(核武装、大量破壊兵器で武装されている!)の存在が、北朝鮮に対するすさまじい軍事重圧、脅迫そのものであることが根本問題なのだ。

 イラク・北朝鮮侵略戦争の切迫と現実化という事態は、日帝をギリギリと参戦に向かって駆り立てている。この中で、日帝はイラク参戦をイージス艦派兵などによって進めつつ、北朝鮮侵略戦争のための法律である有事立法3法案を今通常国会で今度こそ絶対に成立させようとしている。有事立法第4法案というべき個人情報保護法案も、修正して通そうとしている。イラク・北朝鮮の情勢は、有事立法阻止の必要さを待ったなしでつきつけているのである。3〜4月は、イラク・北朝鮮侵略戦争阻止、有事立法粉砕の大反戦闘争の爆発の時である。同時に、5・27国労臨大闘争弾圧粉砕の闘いを軸に春闘を闘い、そして杉並を始めとする統一地方選闘争(4・27)に勝利する――まさに二重三重の決戦である。帝国主義に対する燃え上がる怒りと、労働者人民の自己解放闘争に対する信頼をもってこの決戦を闘いぬこう。 (た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

 ●翻訳資料 1

 ブッシュ 一般教書演説

 03年1月28日

 村上和幸訳 

【解説】

 今回の演説は、徹底的に軍と国民を戦争動員する扇動だ。
 これまでのブッシュ演説と比べても、きわめて情緒的・感情的に煽り立てている。
 世界大恐慌の危機、世界支配の危機にあえぐ米帝の断末魔のあがき、世界再分割戦、特に石油資源の略奪への突進が始まった。
 一方国内では、徹底的に資本家優遇の減税政策をとる。「優先課題への集中」の名の下でかわいたタオルをさらに絞るように社会保障を全分野で破壊する。
 「米国の最も深刻な問題」は、貧困も病気も麻薬も、すべて当人が悪いのだから、対策は当人と慈善団体がやれ、と叫んでいる。麻薬患者に対する対策を教会に丸投げする政策の賛美も単にエピソードとして語っているのではない。医療としての医療の放棄、また、公的機関による対策の否定の宣言であり、レーガン政権以来の社会保障の原理的破壊の完成というべきものだ。
 演説のすべては、対イラク戦に集約されている。米国への攻撃が切迫していなくてもイラクを先制攻撃すると改めて言い、「決定的な時が迫っている」と近く開戦命令を出すと明らかにした。「いかなる勝利も悲しみなしではありえない」「服喪の日々」と米軍に多大な戦死者が出ることをあらかじめ明らかにした。大規模地上戦・イラク占領への覚悟を全軍・全国民に求めたのだ。
 この戦争は、イラク・中東人民に対して広島・長崎への原爆投下と同等の「ショックと恐怖」を与えるものとして計画されている〔翻訳資料2参照〕。この大罪に軍と国民を駆り立てるために、この演説はなされたのだ。帝国主義の体制的危機の絶体絶命性とそれゆえの凶暴化を正面から見すえ、なんとしても戦争を阻止しよう。
【小見出しは訳者による挿入】

………………………………………

 本年は、来るべき決定的な日々について深く自覚して、われわれは〔この議会に〕集まっている。
 米国は多くの難題に直面している。われわれは問題を否定したり、無視したり、次の会期、次の大統領、次の世代に先送りしたりしない。焦点を定め、明快に、勇気をもって立ち向かうのだ。
 この2年間、われわれが力を合わせるならどんなことが達成できるのかを経験してきた。公立学校の水準の引き上げのために、われわれは歴史的な教育改革を達成した。今それを、すべての学校、すべての教室で実施し、アメリカのすべての子どもが読むことができ、学ぶことができ、人生を成功させることができるようにしなければならない。わが国を守るために、われわれは政府を再編し、国土安全保障省を創設した。それは新たな時代の脅威に対する動員を行っている。経済を不況から脱出させるために、数十年間で最大の減税を発表した。アメリカのビジネスにおける誠実性を求めるために、われわれは強力な改革案を通過させ、企業犯罪者をつかまえて責任をとらせようとしている。

 減税による経済成長

 第一の目標は明確だ。すべての男女を雇用できるように経済成長を十分に高めることだ。不況、テロリストの攻撃、企業スキャンダル、株価低下から、わが国の経済は回復しつつある。たしかに、まだ十分な速度で、十分な力強さでは成長していないが。
 雇用は、経済成長で作り出される。経済成長は、国民が消費・投資をする金を持つことによって行われる。そして、国民がその金を持つようにするために最良かつ最も公正な方法は、それに初めから課税しないことだ。
 私は、2004年と2006年に行うとされていた所得税減税を恒久化するとともに、今年から実施することを提案している。法案に私が署名すればすぐ、この増えた金が労働者の給料に現れる。マリッジ・ペナルティ〔共働き世帯の相続税が高いこと〕を徐々に無くすというやり方ではなく、今やらねばならない。児童控除をゆっくりと1000にまで引き上げていくのではなく、今、米国の家族に小切手を送らねばならない。
 減税は、所得税を払う人すべてのもので、経済をただちに助ける。本年、9200万人の国民にとって、自分の金として平均1000j近くの金が増える。4万jの所得がある4人家族では、年間の連邦所得税が1178jから45jに低下する。この計画によって、2300万の中小企業の決算が改善する。
 われわれはまた、投資家を税法上平等に扱うことによっても、経済を強化すべきだ。企業の収益への課税は公正だ。だが、その同じ収益に対して、株主に再び課税するのは公正ではない。投資家の自信を高め、また配当所得を得ている1000万人近くの高齢者を助けるために、配当への不公正な二重課税をやめるように、私は議会に要請する。
 減税と投資拡大が経済拡大を促進する。雇用増加は納税者増加と政府歳入の増加を意味する。赤字への対処、バランスのある予算への最良の道は、成長の促進であり、また連邦政府のある種の支出抑制だ。
 わが国の最重要の優先課題にのみ支出するように協力していかねばならない。議会に提出した予算案では、次の年の裁量支出分は4%の増大だ。つまり、平均世帯所得の増加見込み分と見合った額だ。
 経済成長及び不可欠な優先課題への集中は、社会保障の将来についても決定的だ。社会保障を健全で信頼性のあるものとして維持していくためには、若い労働者に、自分がコントロールし自分が所有することになる年金口座に投資するようにさせねばならない。

 優先課題に集中した社会保障

 第二の目標は、すべての国民のための質の高い、手頃な価格の医療だ。アメリカの医療システムは技能と技術革新のモデルである。しかし、多くの人にとって、医療費は高すぎ、カバーされていない人も多い。こういう問題は、保険適用の範囲を指図したり医療を配給したりする国営保健制度によって解決できるものではない。
 そうではなくて、すべての国民が良い保険証を持ち、自分の医師を選択でき、高齢者と低所得者が必要な援助を受けられるようなシステムに向かっていかねばならないのだ。官僚、法廷弁護士、HMO〔保健維持機構〕ではなくて、医師・看護師と患者に米国の医療を返さねばならない。
 医療改革は、メディケア〔高齢者医療制度〕から始めねばならない。メディケアは、福祉社会の誓約、義務だ。米国の医療を変革しつつある予防医学と新たな薬品へのアクセスを高齢者に与えることによって、われわれはこの誓約を新たにしていかねばならない。
 次の10年間でメディケアを改革・強化するために4千億jの追加を私の予算は約束している。両党のリーダーは、何年間もメディケアの強化について議論してきた。私は、本年、この新しい議会が行動するよう要請する。
 わが国の医療制度を改善するためには、高コストの主要原因の一つ、すなわち医師と病院が不当に提訴される脅威に常にさらされていることに対処せねばならない。過剰な訴訟のために、皆が医療に余分に払っており、米国は良い医師を失っている。つまらない訴訟では、誰も病気が治るわけではない。

 エネルギーの独立性

 第三の目標は、環境を劇的に改善しつつわが国のエネルギーの独立性を強化することだ。エネルギーの効率向上、保全、クリーンな技術の開発、国内エネルギーの増産という包括的エネルギー計画を私は提出した。今後15年間で発電所からの排気ガス汚染を75%減少させる「クリアスカイ法案」を提出した。地域社会を荒廃させ、野生動物を殺し、貴重な森林を何百万エーカーも焼き尽くす大火災を防止するために「健全森林計画」を提出した。
 今世紀の環境問題の進歩は、はてしない訴訟や指示・統制の規制ではなく、技術革新によってもたらされる。今ここで、私はクリーンな水素動力の車の開発で世界をリードできるように12億jの研究費の支出を提案する。

 米国の最も深刻な問題

 第四の目標は、米国の最も深刻な問題への思いやりだ。わが国のきわめて多数の人びと――ホームレス、父親のない子ども、薬物常習の人びと――にとって、その必要性は大きい。しかし、アメリカ国民の善意と理想主義と信仰の中には、力が、奇跡的な力が存在するのだ。
 アメリカ人は、毎日、思いやりの行為を行っている。囚人を訪問し、殴られた女性に避難場所を提供し、孤独な高齢者に交友関係を提供している。これらの仕事は賞賛に値することであり、われわれの個人的な支援に値することであり、場合によっては連邦政府の支援に値する。
 私の信仰にもとづいた提案とともに、市民奉仕法も通過させ、思いやりの行為を激励し、心と魂を一つにしてアメリカを変革できるようにすることを要請する。
 あと一つの絶望の原因は、薬物常習だ。常習は、友人関係、向上心、道徳的信念を押しのけ、人生のあらゆる豊かさを単なる破滅的な欲望へと切り縮めてしまう。政府としては、供給の遮断と反薬物教育によって需要を減らして、非合法薬物と闘っていく。しかし、すでに常習になっている人に対しては、薬物との闘いは、彼ら自身の生命のための闘いだ。治療を求めているあまりに多くの国民がそれを受けられないでいる。したがって、今ここで私は、今後3年間でさらに30万人の国民が治療を受けられるように、新たな6億jのプログラムの実施を提案する。
 わが国には、おどろくべき成果をあげているすばらしい快復プログラムがある。そのうちの一つは、ルイジアナ州バトンルージュのヒーリング・プレース教会にある。そのプログラムの中にいるある男性は、「神が人間の生活に奇跡を起こしている。それがあなたにも起こりうるとは、思いもよらないでしょう」と言った。薬物常習と格闘しているすべての国民に、今ここで希望のメッセージを送ろうではないか。快復の奇跡は可能なのだ。それはあなたにも起こるかもしれないのだと。
 米国内でわれわれは勇気と思いやりを追求して奮闘しているが、それは海外での行動も規定する。米国旗は、わが国の力と利害以上のものを代表している。米国の建国者たちは、人間の尊厳、すべての人の権利、すべての人生の可能性に、この国を捧げたのだ。この信念がわれわれを世界に導き、苦しんでいる人びとを助けさせ、平和を防衛し、悪人の企みを暴くようにさせているのだ。
 アフガニスタンでは、われわれは抑圧された人びとの解放を助けた。中東では、安全なイスラエルと民主的なパレスチナの間での平和の追求を続行していく。地球上すべてで、米国は飢えた人びとを養っている。国際食糧援助の60%以上が米国からの贈り物だ。わが国が、部隊を動かし、世界をもっと平和にするように同盟を建設していくにあたって、われわれは、祝福された国としてのわが国の天命は、世界をより良くしていくことだということを思い起こさねばならない。
 今日、アフリカ大陸には15歳以下の子ども3百万人を含む3千万人近くがエイズ・ウイルスに感染している。4百万人以上が直ちに薬剤で治療を受ける必要がある。しかし、アフリカではエイズの犠牲者のうち5万人しか必要な医薬品を受け取っていない。
 エイズは予防できる。抗レトロウイルス剤は、何年も生命を延ばしうる。そうした医薬品の価格は、年間1万2千jから3百j以下に下がっている。
 これまでわれわれは自国内で、HIV/エイズに立ち向かってきたし、今後も立ち向かっていく。そして、海外での厳しく緊急の危機に対処するために、私は今ここでエイズ救援のための緊急計画を提案する。

 テロリズムとの戦い

 この国は、自然の災厄から罪なき人びとを守るために世界をリードできる。そして、人間が作った悪である国際テロリズムとの対決、撃破においても、世界をリードしている。
 国民が対テロ戦争のニュースを聞かない日はある。しかし、私が、次の脅威について聞かない日、作戦の進行についての報告を受けない日、あるいは殺人者の散開したネットワークに対する世界的戦争についての命令を下さない日はない。戦争は前進している。そして勝利しつつある。
 今日までに、アルカイダの多くの枢要な司令官を逮捕したり、他の方法でそれに対処してきた。そうした者たちには、9月11日の攻撃の兵站と資金の指示を行っていた男、東アフリカの大使館と駆逐艦コールの爆破を計画したアルカイダのペルシャ湾の作戦司令官、アフガニスタンの訓練基地の元責任者、欧州でのアルカイダ作戦隊のキーパーソン、イエメンのアルカイダの主要指導者が含まれる。全部あわせると、多くの国で、3千人以上のテロリスト容疑者が逮捕されている。他の多くの者は、別の運命にあった。それはつまり、彼らはもはや合州国とわが国の同盟国・友好国にとっての問題ではなくなったということだ。
 新たな攻撃を防ぐために、わが国は他の諸国と緊密に協力している。米国と連合諸国は、イエメンの米大使館、在シンガポール大使館、サウジの軍事基地、ホルムズ海峡及びジブラルタル海峡の艦船を標的にしたテロリストの策謀を発見し、阻止してきた。われわれは、ハンブルク、ミラノ、マドリッド、ロンドン、パリ、そしてバッファローやニューヨークでアルカイダの細胞を壊滅させてきた。
 われわれはテロリストを逃走させている。われわれは、彼らを逃走させつづける。一人また一人とテロリストは米国の司法の意味を知りつつある。
 この戦争を戦うにあたって、われわれはそれがどこで始まったのかを思い起こしていく。ここで、わが国自体で始まったのだ。現政府は、わが国民を守り、本土を防衛するためにかつてない諸措置をとっている。国境及び入国場所での保安を強化し、5万人以上の新たに訓練された連邦審査官を空港に配置し、部隊に天然痘に対する予防接種を行い、生物〔兵器〕攻撃を検知するセンサーによるわが国初の早期警報ネットワークを配備しつつある。そしてわれわれは本年、この国を弾道ミサイルから守るための防衛システムの初の配備を開始する。
 国民をバイオ・テロリズムから守るための大規模な研究や製造の作業、すなわち「バイオシールド・プロジェクト」と呼ばれるものを、将来の安全保障に付加することを私は要請する。予算案では、ほぼ60億jで、炭疽菌、ボツリヌス毒素、エボラ出血熱、ペストなどに対する効果的なワクチンを迅速に製造することを提案していく。敵が、これらの病気を兵器として使用することを想定すべきだ。その危険がわれわれに襲いかかる前に行動すべきだ。
 9月11日以来、わが国の諜報諸機関、司法警察諸機関は、テロリストを追跡し壊滅させるためにかつてなく緊密に協力するようになってきている。FBIは、諜報分析の力を改善し、新たな脅威に対処するために自己変革している。私は、FBI、CIA、国土安全保障省、及び国防省のリーダーにテロリスト脅威統合センターを設立するように指示している。わが国の政府は、可能な限り最良の情報を得る必要があり、それを用いてわが国の市民を守るために人材を適材適所に配置していくのだ。
 テロとの戦争は意志の争いであり、堅忍不抜こそ力だ。2つのタワーの廃墟で、国防省の西壁で、そしてペンシルベニアの野で、国民は誓いをたて、今また誓いを新たにしている。この闘いがいかに続こうと、いかに困難があろうと、われわれは人間世界のことに暴力の勝利を許しはしない。自由な人民が歴史の針路を決めるのだ。
 今日、テロとの戦争での最大の危険、米国と世界が直面している最大の危険は、核・科学・生物兵器を追求し、所有する無法国家体制だ。これらの体制は、そうした兵器を脅迫・テロ・大量殺人のために使いかねない。また、彼らは、それらの兵器を、同盟したテロリストに与えるか販売するかしかねない。テロリストたちは、それを少しも躊躇せず使うであろう。
 この脅威は新しいが、米国の義務は良く知られたものだ。20世紀を通じて、少数の人間の集団が大きな国の支配権を握り、軍と武力を建設し、弱体で恐怖した世界を支配しようとしてきた。そのすべてのケースで、彼らの残忍さと虐殺は限りがなかった。そのすべてのケースで、ヒットラー主義、軍国主義、共産主義は、自由な人民の意志によって、偉大な同盟の力によって、またアメリカ合州国の力によって撃破された。
 今、この世紀において、力と支配のイデオロギーが再び現れてきた。そしてテロの究極の兵器を得ようとしている。また再び、この国とすべての友好国はみな、平和な世界と混沌と恒常的恐怖の世界との間に立っている。再びわれわれは、わが国民の安全とすべての人類の希望を防衛するよう召されている。われわれは、この責任を引き受ける。
 アメリカは、こうした危険と対決する広範で決然とした努力を行っている。わが国は、国連に憲章を履行し、イラクを武装解除する米国の要求を支持するよう求めた。また国際原子力機関の世界中の核物質を追跡し管理する任務を強力に支援してきた。また、旧ソ連の核物質の安全確保や、ミサイル技術と大量破壊兵器の製造と出荷を禁止する世界的条約の強化のために、他の政府と協力してきた。
 しかしながら、これらすべての事業において、アメリカの目的は単なる手続以上のものである。結果を達成することだ。文明世界に対する恐るべき脅威を終わらせることだ。すべての自由な国は、突然の破滅的な攻撃の予防を分担するべきだ。われわれは、わが国への合流を呼びかけており、多くの国がそうしている。しかし、この国の針路は他の国の決定には依存しない。どのような行動が必要となろうとも、行動が何時必要であろうとも、私は、アメリカ人民の自由と安全を防衛していく。

 イラン

 異った脅威には、異った戦略が必要だ。イランでは、政府が今なおその国民を弾圧し、大量破壊兵器を追求し、テロを支援している。イランの市民は、脅迫を恐れず命をかけて、自由と人権・民主主義を公然と要求している。イラン人は、すべての国民と同じく、自分自身の政府を選び、自分の運命を決める権利をもっており、米国は彼らの自由の中で生きる熱望を支援する。

 朝鮮半島

 朝鮮半島では、抑圧的体制が支配し、人民は恐怖と飢餓の中で生きている。90年代を通して北朝鮮を核兵器獲得から遠ざけるために枠組み合意に依拠してきた。今われわれは、この体制が世界を欺き、こうした兵器を終始開発しつづけていたことを知っている。今日、北朝鮮の体制は、この核開発計画を使って恐怖をあおり、譲歩を引き出そうとしている。米国と世界は脅迫に屈しない。
 米国は、平和的解決を見いだし、北朝鮮政府に核兵器は孤立・経済停滞・困窮の継続しかもたらさないことを示すために、この地域の諸国――南朝鮮、日本、中国、ロシア――と協力していく。北朝鮮の体制は、核の野望から離脱する時にのみ世界の敬意を受け、その国民の再生が得られるであろう。

 イラク

 わが国と世界は、朝鮮半島の教訓を学び、イラクで朝鮮半島よりさらに大きな脅威の台頭を許さないようにする必要がある。見境のない侵略を行った経歴があり、テロリストと結びつき、潜在的な巨大な富を持つ残虐な独裁者には、死活的な地域を支配し米国を脅かすことを許さない。
 12年前、サダム・フセインは、自分が始め、敗北した戦争で、最後の死傷者となりそうになった。自分が助かりたいがために、彼はすべての大量破壊兵器の武装解除に合意した。それから12年間、彼は計画的にこの合意に違反してきた。化学・生物・核兵器を追求してきた。査察団がイラクに滞在していた間でさえそうだったのだ。現在まで、彼のこうした兵器の追求を抑えるものは何もなかった。経済制裁も、文明世界からの孤立も。軍事施設への巡航ミサイル攻撃でさえ、抑えられなかった。
 約3カ月前、国連安全保障理事会は、サダム・フセインに武装解除の最後の機会を与えた。だが彼は、国連と世界の世論を完全に侮辱した。108人の国連査察団は、カリフォルニアの広さがある国中に隠された物資を見つけだすために送り込まれたわけではない。査察団の仕事は、イラクの体制が武装解除していることの検証だ。禁止された兵器をどこに隠しているのかを示し、そうした兵器を世界に見せ、それらを指示通りに破壊することは、イラクにかかっているのだ。こうしたことは何も行われなかった。
 国連は99年に、2万5千g以上の炭疽菌――数百万人を殺すのに十分な量――を製造しうる生物兵器をサダム・フセインがもっているという結論をだした。彼は、この物資を説明していない。彼がそれを破壊した証拠は、出されていない。
 国連は、3万8千g以上のボツリヌス毒素――呼吸困難で数百万人を死に至らせるのに十分な量――を製造しうる物質をもっていたという結論を出したが、彼は、この物質について説明していない。彼は、それを破壊した証拠を出していない。
 わが国の諜報機関員は、サダム・フセインが5百dのサリン、マスタードガスおよびVX神経ガスを作れる物質を持っていたと見積もっている。これらの化学剤は、このような量では、数千人を殺すこともできる。彼は、こうした物質について説明していない。それを破壊した証拠を出していない。
 イラクからの3人の亡命者からわれわれが知ったところによると、90年代末にイラクはいくつかの移動生物兵器研究室をもっていた。それらは、細菌戦争用製剤の製造のために設計され、場所を移して査察団から逃れることができる。サダム・フセインはこうした施設について開示していない。それらを破壊した証拠を出していない。
 90年代に国際原子力機関は、サダム・フセインが先進的な核兵器開発計画をもっており、核兵器の設計を有しており、5つの違った方法による爆弾用のウラン濃縮法に取り組んでいたことを確認した。英政府は、サダム・フセインが最近、アフリカから大量のウランを入手しようとしていたことをつかんだ。わが国の諜報筋によれば、核兵器製造に適した高強度のアルミ管を購入しようと努めたという。サダム・フセインは、こうした活動について、信頼できる説明をしていない。彼が多くを隠しているのは明らかだ。
 たとえば、われわれが知っている諜報筋によれば、数千人のイラクの治安要員が文書や物資を国連査察団から隠す仕事をしており、査察対象になった場所から好ましくない物を取り除き、また査察団を監視している。イラクの治安要員は、証人を威圧するために、査察団に同行している。
 イラクは国連に要請されているU2偵察機の飛行を阻止している。イラク諜報部員は、査察団の聴取が予想される科学者になりすましている。本物の科学者は、何を言うべきかをイラク諜報部員に指示されている。諜報筋によれば、サダム・フセインは、国連査察団に協力する科学者は、その家族ともども殺せと命じたという。
 年毎にサダム・フセインは、ますます歯止めがなくなり、大量破壊兵器の製造と維持に大きなリスクを負いながら莫大な資金を投入してきた。それは、なぜだろうか。唯一の可能な説明、これらの兵器について彼が有している唯一の可能な使用法は、支配、威圧、あるいは攻撃だ。
 核兵器あるいは十分な化学、生物兵器があれば、サダム・フセインは中東征服の野望を再開し、その地域に致命的な大災厄をもたらしかねない。諜報筋の証拠、秘密の通信、及び現在拘留されている者の供述によって、サダム・フセインがアルカイダのメンバーを含むテロリストを援助・保護していることが暴かれている。彼は、秘密に、手を汚さずに、彼の隠された兵器をテロリストに渡すことができる。あるいは、テロリストが自分たちで開発することを助けることができる。
 9月11日以前には、世界の多くの人びとは、サダム・フセインを封じ込められると考えていた。しかし、化学剤、致死的ウイルス、影のようなテロリストのネットワークは、容易に封じ込めうるものではない。あの19人のハイジャッカーが他の兵器、他の計画をもっていたらと考えても見よ。今度は、サダム・フセインが与えた兵器によってだ。一つのビン、一つの缶、一つの箱がこの国に秘かに持ち込まれれば、誰も予想できない恐るべき日が来るであろう。われわれは、そういう日が絶対に来ないように、力の限りを尽くす。
 脅威が切迫するまで行動すべきではないという者もいる。だが、いつからテロリストや暴君が、攻撃する前に彼らの意図を丁重に通知してくるようになったのか。もしもこの脅威が突然に完全に台頭してくることを許してしまうなら、あらゆる行動、あらゆる言葉、あらゆる非難は、すでに時遅しということになってしまう。サダム・フセインの理性と自制を信じることは戦略とはいえない。選択肢ではない。
 世界でもっとも危険な兵器を作っているこの独裁者は、すでにそれを自国の村々に使用し、村中の人びと数千人が死亡、失明、負傷する事態を起こしている。イラク難民は、自白強要がどのようにして行われているか語っている。子どもに拷問を加える所を両親に見せつけるのだ。もしこれが悪でなければ、悪には意味がない。
 私は、イラクの勇敢な弾圧されている人びとにメッセージを送りたい。敵は、あなた方の国を取り囲んでいるのではない。敵は、あなた方の国を支配しているのだ。彼とその体制が権力から取り除かれる日は、あなた方の解放の日となるであろう。
 世界は、イラクが武装解除することを12年間待ってきた。アメリカは、わが国及び同盟国・友好国に対する深刻な脅威の増大を受け入れない。米国は、イラクの世界に対する挑戦の事実を審議するために2月5日に国連安保理を召集することを要請する。パウエル国務長官が、イラクの違法な兵器開発計画、こうした兵器の査察団からの隠蔽の試み、及びイラクのテロリストグループとの関係についての情報と諜報を提示する。
 われわれは協議する。しかし、誤解は与えない。サダム・フセインが完全に武装解除しないなら、わが国民の安全のため、そして世界の平和のために、われわれは連合を率いて彼を武装解除する。
 今ここに、私は、平和を維持していく男女、すなわち米軍のメンバーにメッセージを送る。諸君の多くは、中東に、あるいはその近くに集結している。前途には、決定的な時が迫っている。そうした時にあって、われわれの大義の成功は諸君にかかっている。訓練によって、諸君には準備ができている。栄誉が諸君を導くであろう。諸君はアメリカを信じている。アメリカは諸君を信じている。
 米国人を戦闘に送り出すことは、大統領が行える決定のうちで、もっとも重大なものだ。戦争の技術は変化してきた。しかし、戦争のリスクと苦難は変わらない。このリスクを負う勇敢な米国人にとって、いかなる勝利も悲しみなしではありえない。わが国は、不本意ながら戦う。なぜならば、われわれは犠牲を知っており、常に来る服喪の日々を恐れているからだ。
 われわれは平和を追求し、平和のために奮闘している。平和が守られねばならない時もある。恐るべき脅威の言いなりになって暮らす未来は、まったく平和ではない。もし戦争がわれわれに強制されるのなら、われわれは正しき大義において、正しき手段をもって――できるかぎりの方法で罪なき者への被害を抑えながら――戦う。そしてもし戦争がわれわれに強制されるなら、米国軍の戦力、実力を完全に出して戦う。そしてわれわれは勝利を得る。
 わが国と連合パートナーがアフガニスタンで行ったように、われわれはイラクの人びとに食糧と医薬品を提供し、そして、――自由をもたらす。
 多くの難題が、海外でも国内でも、一気に押し寄せた。2年間で、米国は難攻不落だという意識から危険の自覚へと移った。小さな事をめぐる激しい分裂から偉大な大義をめぐる静かな団結に移った。そしてわれわれは自信をもって前進する。なぜならば、この歴史の天命は、正しい国に来たからだ。
 米国人は、この時代のあらゆる試練から立ちあがった、決然たる人民だ。逆境によってわが国の気概が、世界にそしてわれわれ自身に啓示された。アメリカは強い国だ。そしてわが国の強さを名誉をもって用いていく。われわれは征服することなく力を行使し、他国民の自由のために犠牲を払う。
 米国人は、自由な人民だ。そして、自由はすべての人間、そしてすべての国の未来の権利であることを知っている。われわれが重んじる自由は、世界へのアメリカの贈り物ではない。神の人類への贈り物なのだ。
 米国人は、自分自身に信念を持っている。しかし、自分自身にだけではない。われわれは、知らない――神の摂理のすべての道を知っているとは主張しない。しかし、すべての生命の背後に、すべての歴史の背後にある慈愛ある神に確信を置いて、われわれはそれらを信頼することが出来る。
 神が今、われわれを導きくださるように。そして神が、アメリカ合州国を祝福しつづけられますように。
 〔終わり〕

 

翻訳資料

 翻訳資料-2

  『ショックと恐怖』作戦

【解説】

 今年1月のCBS放送への国防省のブリーフィングで、「ショックと恐怖」概念に基づいて対イラク戦争計画が策定されたことが明らかにされた。民間施設、市街地への攻撃をむしろ主目標にし、意図的に壊滅的破壊を行うという。しかも、広島・長崎への原爆投下をひきあいにだし、それと同等のことを行うと公言している。
 すさまじい悪逆非道だ。広島・長崎の再現を意図的に狙うなど、断じて許せない。米帝と日帝に対し、猛然と戦おう。
 CBSニュース、「ショックと恐怖」の概念を作り出した96年の国防大学の同名の研究報告書、ロサンゼルスタイムズの軍事アナリストの論説をあわせて訳出した。

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 イラク、米のミサイル大量集中攻撃に直面

 CBSニュース 03年1月24日

 彼らは、「Aデー」と呼んでいる。「A」とは ”airstrikes”〔空爆〕のことだ。あまりに破壊的な空爆で、サダムの兵士たちは戦えなくなり、あるいは戦う意欲をなくしてしまう。
 国防省が現在の計画のとおりに実行すると、3月のある日、空軍海軍が300から400の巡航ミサイルをイラクの中のターゲットに向かって発射することになる。CBSニュースのデービッド・マーチン通信員が言っているように、湾岸戦争の40日間に発射されたすべての巡航ミサイルの合計よりも多い量だ。
 その計画ではさらに、2日目にも300から400の巡航ミサイルを発射される。
 この計画のブリーフィングをした国防省担当官は、
 「バグダッドには安全な場所はなくなる」
 「その規模は、これまで無かったものだ。これまで考えられもしなかった」
と述べた。
 この戦闘計画は、国防大学で開発された概念に基づいている。それは、°ショック・アンド・オー〔「ショックと恐怖」または「ショックと畏怖」〕″と呼ばれ、敵の軍事力の破壊よりも戦闘意志の心理的破壊を焦点にしている。
 「ショックと恐怖」概念は、多数の精密誘導兵器に依拠したものだ。その概念の作者のひとりハーラン・ウルマンによれば、
 「われわれは、彼らに退去してもらいたい。彼らが戦わないことを望んでいる」「数日とか数週間とかではなく、広島での核兵器のように分単位での一斉的な効果を得る」
 湾岸戦争では、兵器の10%が精密誘導兵器だった。今度の戦争では80%が精密誘導になるだろう。
 空軍は、6000の精密誘導のキットをペルシャ湾に備蓄している。これは普通の非精密誘導弾を衛星誘導弾に変えるものだ。この兵器は、第一次湾岸戦争の時には存在していなかった。
 「あなたがバクダッドにいる将軍だとしよう。あなたの30個の師団司令部は瞬時に一掃される。町も解体される。電力、水がなくなってしまうのだ。2、3、4、5日で、彼らは肉体的、感情的、心理的に消耗してしまう」とウルマ
 前回は、機甲軍団がクウェートに浸透し、サダムのエリート部隊である共和国防衛隊の師団を破壊した。これが第二次大戦後の最後の戦車戦だ。今回のターゲットはイラク陸軍ではなく、イラクの指導部だ。そして戦闘計画はイラクの諸師団をできるかぎり迂回するように作られている。
 ブッシュ政権内の全員が「ショックと恐怖」が成功すると考えているわけではない。ある高官は、それはナンセンスの固まりだと言っているが、その概念に基づいて戦争計画が立てられていることは認めた。
 昨年、アフガニスタンでの「アナコンダ作戦」で、米国はアルカイダが死ぬまで戦う意志を持っていることに非常に驚いた。もしイラク人が戦うなら米軍は増援部隊を送らねばならず、旧来の方法で共和国防衛隊を壊滅させなければならない。それは双方の死傷者の増加を意味するであろう。

 イラクにおける核の選択肢 米国は最終兵器使用の敷居を下げた ウィリアム・アーキン〔軍事アナリスト〕

 ロサンゼルスタイムズ 03年1月26日

 ブッシュ大統領がイラク、イラン、北朝鮮に「悪の枢軸」のレッテルを貼ってから1年たち、米国は考えられないことを考えている。イラクに対する可能な核兵器の使用を準備している。
 オマハの米戦略軍(STRATCOM)および統合参謀本部の計画策定室の中では、新たな米国の「先制」ドクトリンにおいて核軍備に役割を与えるために、ターゲットのリストが精査され、諸選択肢、諸手続が検討されている。
 その作業に近いさまざまな筋によると、現在の計画策定は、核兵器の2つの可能な役割を焦点にしている。すなわち、
 通常〔兵器〕爆発物では透過できないほど地下深くに位置しているイラクの施設を攻撃すること、
 イラクの大量破壊兵器使用を叩くこと。
 核兵器は、最初に作られて以来、戦争計画策定にあたって討議されてきた諸兵器の一部であった。しかし、この兵器、特にイラクに対するいわゆるバンカーバスターの先制的使用の可能性を積極的に計画するというブッシュ政権の決定は、核の敷居の大幅引き下げを意味する。テロリズムとの戦いの名の下に、核戦闘の基本原則を書き換えるものだ。
 また、核兵器を、長い伝統のある特殊なカテゴリーから出して、心理作戦、秘密作戦及び特殊部隊から他の諸形態の空軍力に至る他のあらゆる軍事的選択肢と同列に置くものだ。
 米国にとって、核の敷居を低くし、核兵器と他のあらゆるものとを分ける隔壁の破壊は、少なくとも3つの理由で心配だ。
 第一に、米国が核の敷居を――たとえ可能性としてでも――低くすれば、他の諸国が自国の敷居を低くし、その国がより強力な軍事的打撃力が必要だというだけの状況の中で核兵器を使用する確率を高める。従来、米国は、核兵器を核攻撃に対する報復あるいは国家の生存に対する切迫した脅威に対する使用だけに保留してきた。これは、暗黙にだが世界中で広く受け入れられてきた基準だ。イラクがその種の危険を米国に及ぼしていると大統領が信じているとしても、彼は世界を、そして多くの米国市民を納得させることができていない。
 第二に、他の多くの選択肢の一つにすぎないものとして核兵器を考えようとする動きが、まさにテクノロジーがもっと良いさまざまな選択肢を提供している時に行われているということだ。米軍は、高度な空軍力・特殊作戦及び高出力マイクロウェーブ兵器やサイバー戦争などの21世紀型戦力の組合せによって、核のビンの蓋を開けることなく地下の基地をあるいは生物・化学兵器を使用不能にする能力をますます得てきている。
 第三に、STRATCOMは現在まで核戦闘の戦略問題――政策問題ではない――を厳密に焦点にしてきたのであって、このSTRATCOMというただ一つの軍司令部の中に核政策の見直しを集中していることには危険がある。戦略軍参謀は、核兵器の使用とその効果については並ぶ者のない専門家であるが、彼らの専門性は、なぜ核を使うのかという所までカバーするものではない。
 〔02年〕5月、ブッシュは、ありうべき大量破壊兵器の使用は、いかなるものも先制的に阻止するというドクトリンを公式に認める国家安全保障大統領指令第17号に署名した。
 「米軍及び適切な文民省庁は、大量破壊兵器の脅迫及び使用に対抗する全範囲に渡る能力を有すべきである」と、大統領は「大量破壊兵器と戦う国家戦略」の中で再度言及している。
 現在の核についての計画策定作業は、……オマハのSTRATCOM司令部、ワシントンの小さなグループ及びペンシルベニアにあるチェイニー副大統領の「秘密の居場所」で遂行されている。
 戦略軍は、以前は、核兵器のみに責任を持っていたが、その責任範囲が急膨張している。〔02年〕12月11日、国防長官はブッシュに、テロリスト国家及びテロリスト組織と戦うためにSTRATCOM司令官エリス提督に「戦略」戦争の諸選択肢のすべての範囲に渡る権限を与えるように要請する覚え書きを送った。
 ロサンゼルスタイムズが入手したその覚え書きは、外国の大量破壊兵器に対処するあらゆる責任の委譲を提言している。……この無害に見える責任は、その細目をみれば、厖大な範囲をカバーしているのだ。核兵器のあらゆる使用から非核打撃力、秘密作戦及び特殊作戦、サイバー戦…。
 今月初め、ブッシュはラムズフェルドの提案を承認した。表面的には、この新たな権限委譲は、その司令部に核のエスカレーションを避けるための広範な道具を与えるということだ。現実には、アメリカの核兵器使用の検討に、これまでよりはるかに広い入口を作ったということだ。米軍に対する生物ないし化学兵器による攻撃を、ロシアの核攻撃と同じものと見なすことがありうるのだ。もしも、イラクが米国との戦争の中で生物ないし化学兵器を使うならば悲劇的結果をもたらしかねないが、それは戦争の勝敗を変えるものではないだろう。他方、われわれがフセインを負かすために核兵器を使えば、政治的なまた全世界的な破滅を生み出す可能性がある。アラブ世界とイスラム世界を永遠にわれわれに対して戦わせるようにしてしまうということだ。
 今、ペンタゴンの内部であるいは公の場での討議がほととんどないままに、ラムズフェルドとブッシュは、この隔壁を倒してしまった。核兵器と通常兵器の分離をやめて、ラムズフェルドはそれらを一つの司令機構にまとめた。それは、次のようなあまりに単純な任務を持ったもので、不安は否めない。「もしあなたが、中心的テロリストの居場所または大量破壊兵器の集積所を見つけられたとして、それをターゲットとして攻撃するには時間的制約が厳しい場合、時間単位、日単位でなくて分単位の時しかない場合、あなたはどのようにして地球の裏側にあるわが国への脅威をたたき、それを無力化するのですか」。これがエリスが12月に言ったことなのだ。
 このエリスの問いへの回答は、彼の戦略軍の急速な改変をみれば明らかだ。9月11日以来、エリスと戦略軍には、新たな要請と任務が殺到している。第一に、…国防省の核態勢見直しは、軍に核能力の再活性化を指示している。STRATCOMは、その再活性化の先導的役割を担うことになる。
 とりわけ、核態勢見直し秘密報告では、「核兵器は非核攻撃に耐えうるターゲット(たとえば地下深くのバンカー〔掩蔽壕〕や生物兵器施設)に対して用いることができる」と述べている。
 見直し報告は、敵が米国やその同盟国に対して最初に核兵器を使用しなかった場合でさえ大量破壊兵器施設を攻撃するための「あらかじめ計画を練られ、訓練された作戦」の開発を軍に求めている。
 STRATCOMの文書とブリーフィングによれば、STRATCOMが新たに作った「戦域計画策定活動」は今、世界中の化学・生物及び核兵器施設を評価するあらゆる分野を受け持つようになっている。計画策定者たちは、7つの優先ターゲット国(「悪の枢軸」諸国及びシリア、リビア、中国とロシア)についての諜報収集と分析を焦点にしている。またあらゆる疑惑場所について入手可能な諜報データの詳細な分析を完了している。米中央軍筋によれば、イラクについての「戦域核立案文書」が、政権と中央軍のために作成された。……

  『“ショックと恐怖” ―“急速制圧”の達成』 (抜粋)

 “急速制圧”の目的は、“ショックと恐怖”の状況を課すことを通じて、われわれの戦略的な政策目的にかなうようにあるいはそれに対応するように敵の意志、知覚、理解に影響を与えることだ。明らかに、伝統的な軍事目的である、敵軍事能力の破壊、撃破、ないし無力化は、“急速制圧”の基礎的かつ必要な構成要素だ。しかしながら、われわれが言いたいことは、敵を無能力にするに十分な°ショックと恐怖″を引き起こすさまざまな諸能力を全面的に配備することだ。つまり、物理的かつ心理的効果が獲得されねばならないのだ。
 したがって、“急速制圧”は、即時に、作戦に関連する全地域および関連地域の内部及び周囲の環境――広く定義されたもの――を支配する力を提供するものだ。…
 “急速制圧”の「急速」の意味は、敵が反応するよりも速く動く力を意味する…。
 「制圧」は、敵の意志に物理的にも心理的にも影響を与え、支配する力を意味する。……
 理論的に、“急速制圧”のためには“ショックと恐怖”をどのくらい課すべきか、その巨大さは、というと、(極端な場合)広島と長崎に落とされた原子兵器が日本人に与えた衝撃に匹敵する、非核の物なのだ。日本人は、二つの核爆弾が使用されるまでは、自殺抵抗をする覚悟だった。これらの兵器の衝撃は、平均的日本市民の思考様式と指導部の展望の双方を、この“ショックと恐怖”の状況を通して変えるに十分であった。日本人は、ただ一つの飛行機によって運ばれた破壊力について全く理解できなかった。この理解不能が、オー〔畏怖、恐怖〕の状態を生んだのだ。
 同様に、新たなドクトリンと既存のテクノロジーの結合の革命的な潜在力は、このレベルの“ショックと恐怖”を生み出す力があるシステムを生産できると信じている。
 “ショックと恐怖”とは、一般の人びと、脅威になる社会、または指導者たちに、理解不能な恐怖、危険及び破壊を作り出す活動だ。竜巻、ハリケーン、地震、洪水、大火災、飢餓、病気という形をとった自然は、“ショックと恐怖”を引き起こす。“ショックと恐怖”の究極の軍事的適用は、第二次大戦における日本に対する二つの原子兵器の使用だ。これらの兵器の使用の結果である°ショックと恐怖″は、日本との戦争の(無条件降伏による)突然の終了をもたらしたばかりか、50年以上にわたってこれらの兵器の使用を抑止してきた。…たとえば、第二次大戦におけるドイツと米国による大量爆撃は、戦闘を終わらせるに十分なレベルの“ショックと恐怖”を作り出さなかった。原子攻撃によって作られた未知の恐怖は、その実際の破壊よりも、あの戦域において決定的な要因だった。