COMMUNE 2002/1/01(No313 p48)

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1月号 (2002年1月1日発行)No313号

定価 315円(本体価格300円+税)

〈特集〉 戦争と大失業時代の司法改革

 ・戦時司法への転換提言した司法審最終意見書
 ・資本救済=労働運動破壊法追認の民事司法へ
 ・暗黒裁判に一変させる刑事司法の全面的改悪
 ・戦争協力と人民弾圧へ弁護士会の翼賛図る

●翻訳資料/「4年ごとの見直し」(QDR)〔中〕
 ・米国防省
             ニューズ&レビュー  南朝鮮・韓国/

     11・11全国労働者集会

三里塚ドキュメント(10月) 内外情勢(10月) 日誌(9月)

羅針盤 参戦阻止の大結集

  アフガニスタン情勢はますます泥沼化してきた。タリバンが首都カブールを放棄し、米英軍の援助を受けた北部同盟がカブールを制圧した。米帝は多国籍軍を展開して、タリバン軍のせん滅とアフガニスタン全土の制圧に乗り出そうとしている。米帝はこの間、燃料気化爆弾やクラスター爆弾をアフガニスタン人民の頭上に降り注ぎ、大虐殺を重ねてきた。ニューヨークの六千人の犠牲に対して「追悼」を叫ぶ帝国主義者やマスコミは、アフガニスタン人民のこのおびただしい殺りくに対しては追悼の言葉を吐かない。ここに帝国主義と被抑圧民族の関係が端的に示されている。「テロ根絶」論や「テロも戦争も反対」論が、結局問題の本質を覆い隠し、帝国主義の側に立って侵略戦争の遂行を容認する論であることは、今や明白になった。

 日帝は、「テロ対策特措法」など参戦三法を成立させ、自衛隊派兵の基本計画を策定する前に自衛隊艦隊の先遣隊をインド洋に出航させた。米英帝国主義などの国際帝国主義の侵略戦争に対して、何がなんでも自衛隊を出さなければ帝国主義間争闘戦に敗れる、と日帝は追い詰められ必死になっているのだ。戦時下に、自衛隊という軍隊(小泉は「自衛隊は戦力」と発言した)を戦場に送ることが何を意味するか。日本は参戦国、戦争当事国になったのだ。「国連による武力制裁」を容認した日本共産党も含めて、国会は総翼賛化しており、事態は実に危機的である。しかし、これで労働者階級人民が丸ごと戦争体制に取り込まれてしまったわけではない。戦争には反対だ、なんとかしなければ、と考える人びとが広範に存在しているのだ。

 その闘いの最大の結集点になったのが、新しい労働組合の全国ネットワークを呼びかける新潮流の11・11全国労働者総決起集会だ。日比谷野外音楽堂に3250人が集まった。何よりも米帝の侵略戦争と日帝の参戦に反対し、小泉の「聖域なき構造改革」を打ち破るという反戦・反失業の怒りの声をとどろかせた。今年で4回目を迎えるこの集会は、まさに戦争突入下に労働者階級の直面する課題に真っ向からこたえ、階級的・戦闘的に対決することで、すべての労働者人民に勝利の道を指し示している。また、それはJR総連松崎から離反され空前の危機に陥っているカクマルによる、権力と一体となった破壊攻撃をまったく寄せつけずに闘いとられた。戦闘的労働者が先頭に立って、国際反戦闘争の高揚をかちとっていく時である。

 このような帝国主義と労働者階級の対決の中で、沖縄闘争はきわめて重大なところにきている。沖縄米軍基地は戦後かつてない厳戒警備体制に入り、陸軍特殊部隊グリーンベレーを先頭に出撃した。基地沖縄が最も危険な地であることは内外に鮮明になった。沖縄経済を支える観光があいつぐキャンセルで壊滅的な打撃を受けている。基地との共存で経済が繁栄するどころか、まさに基地と人民は共存できないことが明白になった。米帝の側は、侵略戦争突入の迫力をもって、名護新基地に関する「15年期限」とか「軍民共用」は問題にもならないという態度を示している。人民の側の新たな闘いの体制を構築しなければならない。また、三里塚では、暫定滑走路の4月開港阻止する闘いが決戦化している。反対農家の頭上40bを飛行機を飛ばして追い出しを図る、という殺人的な攻撃を絶対に許すことはできない。  (た)

 

 

翻訳資料

  ●翻訳資料

 4年ごとの防衛見直し(QDR報告)〔中〕

 米国防省 2001年9月30日

 村上和幸訳 

【解説】

 米帝ブッシュ政権は、クラスター爆弾や燃料気化爆弾でアフガニスタン人民の大虐殺をしている。難民化・飢餓で強制された犠牲はさらにおびただしい。
 そして11月11日、国連の包括的核実験禁止条約(CTBT)発効会議に対しては、オブザーバー参加などで外交的摩擦を少なくするという選択肢さえ拒否し、完全にボイコットした。国防省は、「われわれが出ないのは、批准するつもりはないことを明示するため」と言い放った。「ボイコットによってCTBTの死滅を早めたい」(ワシントン・ポスト紙)と公然と言われている。
 米帝はBMD(弾道ミサイル防衛)開発でもCTBTボイコットでも、既存の国際的軍事関係を破壊している。世界大恐慌の危機の中で、帝国主義の基軸国が自ら既存のバランスを破壊し、帝国主義間争闘戦と侵略戦争を一挙にエスカレートしている。
 QDRは、地域的にも機能的にも、あらゆる領域で他者を追い落として米帝が独占的支配を強行する宣言だ。従来の2戦域戦争のアプローチにかわる「能力ベースのアプローチ」には、そういう意味がある。その一環として、《敵の領土の奧深くにある標的に、警告なしで遠距離から攻撃を加える能力》の形成まで論じている。対中戦争、世界大的戦争への突進だ。
 そして、沖縄を始めとする日本での空母艦隊、潜水艦の増強とその母港化、海兵隊訓練の増加、西欧や東アジア以外の所への基地増設と、西欧・東アジアの既存基地の中軸基地化などが述べられている。
【〔 〕内は、訳者の補足】

………………………………………

 戦略上の諸原則

 防衛政策の目標は、それぞれが相互に結びついている戦略上の諸原則に支えられている。これらの諸原則の一つひとつに十分な注意を払い、力を尽くしてこそ防衛政策の目標は達成できる。これらの諸原則は、米国の防衛戦略の神髄を含んでいる。

 リスク管理

 世界の変化のスピードはますます速くなっている。従来からある脅威が続いている一方で、たえず新たな挑戦が発生している。国防省は、一方で常にいかなる時にも現存の脅威に対しつつ、将来の挑戦に対して準備せねばない。この将来への準備と現在の要請との間には緊張があり、それぞれのリスクのバランスをとることが必要となる。資源は常に有限なのだから、従来よりも広範囲のリスクを考慮した、厳しい選択をしなければならないのだ。それらのリスクのうちには、大規模戦争の可能性などのなじみのリスクもあるが、大量の死傷者がでるテロリズムやサイバー戦、あるいはCBRNE〔強化高性能爆薬〕戦争の可能性などは、あまり理解されていない。QDRの過程をとおして国防省は新たな防衛戦略とリスク管理の枠組みを開発した。そして現在、米国が直面するリスク管理の改善と防衛政策の目標達成の双方のために、新たな実績評価基準を作っているところだ。

 能力ベースのアプローチ

 新防衛戦略は、「能力ベース」のアプローチへの移行という概念を軸にして組み立てられている。この概念は、どの国家、あるいはどんな諸国家や非国家団体の組合わせが米国や同盟国・友好国の死活的利害を脅かすことになるかは、十分な確証をもっては知りえないという事実を反映している。しかし、敵がその隣国に強要をしたり、米国の同盟国・友好国を防衛する行動を抑止したり、米国を直接攻撃したりする諸能力を予測することは可能だ。能力ベースのモデルは、誰が敵になり、どこで戦争が発生するかということより、敵がどのように戦闘するかということを焦点にしたもので、戦略の考え方を広げるものだ。このアプローチのためには、奇襲、欺騙(きへん)、非対称戦争を目標達成のために用いる敵を抑止し撃破するために必要な米国の軍事力を確定することが必要になる。能力ベースの戦力への移行のためには、アクセスを阻止し地域の利用を阻害する脅威を乗り越えるための先進的な遠隔探知、長距離精密打撃、変革された機動部隊・遠征部隊とそのシステムなどの諸能力が今後永く米軍にもたらしうる有利な条件を焦点にすることも必要だ。

 米国の防衛と米軍事力の海外投入

 攻撃からの米国の防衛は、戦略の基礎だ。悲劇的な9月のテロ攻撃が示しているように、潜在的な敵は、米国と同盟国・友好国の重心を脅かすことを追求する。米国の軍事力の遠距離投入力が増すにつれて、敵は米国本土の相対的な攻撃しやすさに着目するようになってきている。敵は、米国の作戦的優位性に対抗するために、直接に米国を脅かす能力の開発にますます重点をおくようになっている。したがって、防衛戦略の重点は米国とそこへの陸・海・空・宇宙の通路の防衛へと回帰している。国民の生活様式、政治制度、および決定的な軍事力海外投入能力の源泉の確保は不可欠だ。また逆に、軍事力の遠距離投入力は米国への脅威を抑止すること、そして必要とあらば、遠距離にある敵対勢力を混乱させ、無力化し、破壊することに役立つ。

 同盟とパートナーシップの強化

 米国の同盟・安全保障関係は、同盟国・友好国に保証を与え、敵を躊躇させる。こうした関係は、共通の目的に尽力する諸国の共同体を作っていく。われわれの防衛戦略は、同盟国関係とパートナーシップの強化と、新たな形の安保協力関係の形成を基礎にしている。米国がこれらの安全保障取り決めの遂行に尽力することによって、同盟国・友好国の安全保障が強化される。同様に、米国に対するテロ攻撃の際に明らかになったように、NATOの第5条発動は、米国のパートナーの集団的防衛の遂行への尽力を示しており、米国の安全保障を強化している。これらの安全保障関係の相互強化は文明諸国の繁栄の基礎になっている政治的安定を支えている。…
 同盟関係とパートナーシップの強化の必要性には、軍事特有の問題がある。戦時に米軍と同盟国・友好国が一緒に作戦するように、平時にも一緒に訓練し運用されなければならないのだ。それには、相互運用性の強化や共同作戦のための平時からの準備、統合訓練・合同訓練、実験への参加などが含まれる。〔「統合」とは「陸・海・空・海兵の各軍のうち2つ以上が一緒に」の意、「合同」とは「他国軍と一緒に」の意〕

 有利な地域的バランスの維持

 この戦略は、決定的な地域における有利な軍事バランスの維持にも重点を置いている。このようなバランスの維持によって米国は平和を保障し、自由を拡大し、同盟国・友好国に保証を与えることができる。またこれによって、潜在的な敵にとって、危険な形態の軍事対抗を追求する意志決定をするとコストが高くなる。潜在的な敵に、米国の利益に対する敵対行為がもたらす利点よりもそれによるコストと損失のほうがはるかに大きいと確信させうる。

 軍事諸能力の広範な組合せ

 軍事対抗の枢要な諸分野(たとえば軍事力投入、宇宙、情報など)すべてにわたって大幅にリードするには、現在の挑戦を圧倒し、将来の脅威に対してヘッジし、それを抑止する枢要な諸軍事能力のポートフォリオ〔異なる資産の組合せ〕を作り出し維持することが必要になる。このポートフォリオは、現在の米国の通常戦力の優位性を基礎にするが、情報作戦遂行の能力、遠隔地の戦域へのアクセスを確保する能力、米国と同盟国の領土への脅威に対する防衛能力および米国の宇宙資産を守る能力を含む。また、米国の高度技術革新におけるリード、比類なき宇宙能力・諜報能力、高度な軍事訓練、そしてきわめて分散した軍事力を高度に複雑な統合軍事作戦のために統一的に協力させる力を活用することも必要になる。

 防衛の変革

 また、この防衛戦略のためには、米国が軍と防衛機構の変革を継続的に行っていくことが必要となる。変革は、この新たな戦略アプローチの核心だ。国防省幹部は、新たな戦略の時代と米軍が直面してる内外の挑戦を考えるならば、「いつもどおりの仕事」を続けることはできないと認識している。変革しなければ現在の防衛プログラムはコストがふくらむだけだ。現在米国が利用できる多くのチャンスがつかめなくなってしまう。そして、今後の挑戦に米軍が対処する態勢ができない。だが、すべての戦力を一挙に変革することは無謀であろう。現在の脅威への対応の必要と長期的な戦力変革とのバランスが必要だ。したがって国防省は、目標を明確にして変革の持続的プロセスを遂行し、国防省の人員の中に革新精神を強化するとともに現存の脅威に対処する態勢を維持していくのだ。

 V 戦力立案のパラダイム・シフト

 国防省の文官・軍人幹部は、現在使えるものより豊富なさまざまな軍事的選択肢の長期的提供、そして奇襲された際に米軍がそれに適応していく手段を確保していく必要性を正確に把握して戦力立案にアプローチした。この新たな戦力規模決定の概念は、次のことのための戦力を形成していく。
◇米国を防衛すること、
◇決定的な諸地域で侵略と強要を前方抑止すること、
◇重なって発生する諸大規模紛争において、大統領にその一つで体制変革や占領を含む決定的勝利の選択肢を確保しつつ、それらの諸大規模紛争における侵略を速やかに撃破すること、
◇限定的な数の小規模有事作戦を遂行すること。
 このようにして、国防省は十分な戦力を生み出す力とリスクを軽減する戦略予備を維持していく。新戦略を支えるこの新たな概念の基礎は、次の4つだ。
 第1に、米国の防衛に関連する独特の作戦的要請に新たな重点を置き、米国の防衛を国防省の第一義的任務として復権させる。
 第2に、このアプローチは、米国の戦力立案の焦点を、2つの特定地域――北東アジアと南西アジア――での紛争のために最適化することから、あらゆる可能的な戦力要請のすべて――機能的かつ地理的に――にわたって強靭な諸能力のポートフォリオを形成することにシフトする。……
 第3に、この概念は、脅威ベースの2大規模戦域戦争概念に基づいて作られた現在の戦力から、変革された戦力への橋渡しをする。米国は、重なり合う期間における2つの決定的地域での侵略を撃破する力を維持して、南西アジア・北東アジアを含む全世界への関与を続行する。米国は、2つ未満の紛争のための立案することによって2つの紛争のための立案を放棄することはない。逆に、国防省は、あらゆる可能的紛争で勝利するために立案しており、概念を完全に変えているのだ。
 第4に、新たな概念は、現在軍にゆだねられている任務の数と性格を初めて考慮に入れた。これまでの戦力規模決定の概念とは違い、新たな概念は明示的に本土の防衛、前方抑止、戦争を戦う任務、および小規模有事作戦の遂行のための規模決定を求めている。その結果、この概念は、前方プレゼンスとローテーション問題によって必要となる戦力について、より明らかにすることができる。また、LD/HD(稀少/高需要)資産(輸送機など)への要求や現役戦力と予備役戦力の組合せ問題についても、よりよく対処することができる。

 米国の防衛

 米軍の優先順位の最高位は、あらゆる敵から米国を守ることだ。米国は、国内住民、領土、決定的な防衛関係インフラを国境外からの攻撃から守るために十分な軍事力を米国法にしたがって維持していく。米軍は、戦略抑止力、航空防衛、ミサイル防衛を提供し、NORAD協定〔北米航空宇宙防衛協定〕にもとづく誓約を守っていく。さらに国防省は、米国法により、文民当局を支援して領土内の自然災害、人為的災害、およびCBRNE関連事件に対処する。米軍は、米国と同盟国の領土で犯される国際テロ行為に決定的方法で対応する態勢を作っていく。
 米国市民の国内での安全確保は、本国の安全保障に責任を持つ多くの連邦省庁および州・地方の政府の間の効果的な協力によってのみ達成しうる。多くの組織、省庁の役割・任務・責任は、統一的省庁間作業によって明確に規定しなければならない。テロリズムから米国を守る包括的国家戦略を監督し調整する責任をもっている「国土安全保障局」が、この重要な統一的省庁間作業を指導する。
 何らかの事件に最初に対応する可能性が高いのは、その事件にもっとも近い者――地域の司法警察員および救急隊員だ。9月11日の世界貿易センターと国防省へのテロ攻撃にさまざまな諸機関が対応したことから明らかなように、国防省だけが国土安全保障に責任をもつわけではないしそれが可能であるわけでもない。国防省は、国土安全保障・本土防衛・民間支援に輪郭を与えて制度化し、国防省内の指揮関係と責任の問題に取り組まねばならない。それによって、さまざまな国土安全保障の役割を割り振り、そしてそれにあてる資源の問題を検討することができるようになる。……
 国土安全保障のための戦力の準備には、戦力構造と組織の変更が必要になりうる。たとえば、副大統領が担当して進めている国家態勢基準見直し作業と協力して、国防省は現役戦力と予備役戦力が米国の防衛を効果的に行いうるようにそれぞれの役割と責任の検討を続行している。沿岸警備隊を含む米国の戦力が、任務を遂行するためには、もっと効果的な手段、方法、組織が必要であることは明らかだ。この検討の一環として、複雑な省庁間問題に対処し軍事支援を焦点にした単一の軍事司令官にするために、新たに統一部隊司令官を作ることを考慮している。〔「統一部隊」とは、地理的あるいは機能的な管轄をもつ統一軍部隊で、国防長官・統合参謀本部議長から指揮・命令を受ける。現在、欧州軍・太平洋軍・中央軍・統合軍・南方軍・宇宙軍・特殊作戦軍・輸送軍・戦略軍の9つ〕
 世界的な米国の防衛活動の決定的基盤である米国の防衛は、国防省変革作業の決定的要素だ。防御メカニズム(防諜、安全保障、インフラ防御、情報確保など)のまとめ上げがカギになる。とりわけ、決定的なインフラ、特に石油・ガスの輸送と貯蔵、情報・通信、銀行・金融、電力、運輸、水道、救急、行政サービスを守る能力を強化しなければならない。

 前方での抑止

 グローバルな強国として米国は世界中に重要な地政的な利害をもっている。
 国防省の新たな立案概念は、同盟国・友好国に保証を与え、強要をはねのけ、米国とその部隊・同盟国・友好国に対する侵略を抑止するために欧州、東アジア沿岸地域、中東/南西アジアに展開して前方駐留している「地域に適合した戦力」を維持することを求めている。
 この戦略と戦力立案アプローチを実施していけば、米国の前方抑止態勢は強化されるだろう。同盟国・友好国と協力してわずかな増援だけで――必要な所では増派部隊のためのアクセスを確保して――攻撃を速やかに撃破できるように、有利な地域的バランスを維持するために、しだいに米国の戦力を地域にいっそう適合したものにしていく。米国の変革作業のひとつの長期的な核心的目標は、前方戦力の能力増強とそれによる抑止効果の改善および現在他の任務の増援用にあてられている部隊の再配置を可能にすることだ。
 安保協力は、国防省の戦略目的と同盟国・友好国の戦略目的を結合する重要な手段となる。国防省は、平時の海外活動の焦点を世界の決定的諸地域における軍事力の有利なバランスの形成への貢献と侵略と強要の抑止とする。国防省の安保協力活動の固有の目的は、一方で強要の脅威への対抗、侵略の抑止、米国に有利な戦争遂行という紛争前の選択肢を拡大しつつ、アクセス・相互運用性・諜報協力を確保することだ。

 大規模戦闘作戦

 米軍は、グローバルに大規模戦闘作戦を遂行する能力を維持し、さまざまな戦闘条件や地理的環境にわたって有効であるように訓練していく。その焦点は、挑戦を受けたときに迅速に反応できる力、そして大統領が選択する時・所・方法で決定的に勝利する力だ。
 立案の観点からいえば、米軍は、重なり合う期間におけるいかなる2つの戦域での作戦においても、同盟国・友好国への攻撃を速やかに撃破する能力を維持していく。戦闘作戦は、敵の攻撃能力を敵領土の奧深くにわたって排除し、有利な軍事状況をその地域に回復し、戦闘終了のために許容しうる政治状況を作り出すように組み立てていく。さらに米軍は、侵略者が通常手段ないしCBRNEを含む非対称的手段によって他国を強要する力をそぎ落としていく。また、戦域内部ないし外部からの長距離精密打撃能力や急速展開可能な作戦能力を含む即時使用可能な戦力をもって、前方抑止態勢から戦いはじめる。
 米軍は、大統領の指示に応じて、米軍が大規模戦闘作戦を行っている2つの戦域のうちの1つで米国の意志を課し将来ありうる脅威を取り除くように、敵を決定的に撃破する能力をもつようにする。この能力には、領土の占領あるいはその指示があった場合には体制変革の条件を課すことが含まれる。

 小規模有事

 新たな立案アプローチは、米国が平時に小規模有事作戦のための戦力を維持しその態勢をとっていくことが必要だとしている。それには同盟国・友好国との協力が望ましい。このような有事は、その継続期間、頻度、激しさ、そしてそれに必要な人員数がさまざまに異なるであろう。国防省は、利害が決定的な諸地域における長期間の有事関与を支えるために、大きな戦力の中から前方展開戦力を提供していくという、明確にローテーションベースの計画を立てていく。このような長期間の関与は、実際上、前方抑止態勢の一部になっていくのだ。
 また国防省は、小規模有事作戦への参加で戦力の諸要素に過重な負荷がかからないように、専門化された部隊の数を十分に確保していく。

 現有兵力

 今日の戦力構成――現役と予備役の双方――は、将来の変革された戦力をつくっていくためのベースラインだ。次ページの表に示されている現在の戦力構成を、新たな戦略にもとづくいくつかのシナリオの組合せの場合について、また戦力規模決定の概念について、評価した。そしてこの戦力の能力には、作戦上のリスクが少しあると判定された。ただし、ある種の戦闘と小規模有事シナリオの組合せの場合はリスクが高いとされた。
 かつて米軍が変革されてきたのと同じように、米軍の強みを持続させ、重大な作戦目標を達成し、将来の軍事的競争で優位を占めるための根本的変革が始まったのだ。……
 この戦略の支えとして、国防省は予備軍構成部隊を重視しつづける。予備軍構成部隊の適切な使用を確保するために、国防省は現役/予備役構成、組織、優先任務、および関連資源についての包括的な見直しに着手していく。この見直しは、米国の防衛・小規模有事・大規模戦闘作戦における予備役構成部隊の役割の増大を強調した最近の予備軍構成部隊問題査定書にもとづくものだ。

 W 米軍の世界的態勢の方向性の変更

 20世紀後半、米国は主にソ連の侵略を封じ込めるための海外軍事基地の世界的システムをつくってきた。米国の海外プレゼンスは、米国の利益とそれに対するありうべき脅威に密接に関連していた。しかし、この海外プレゼンスは、西欧と北東アジアに集中していて、米国の利益がグローバルであり世界の他の地域での潜在的脅威が台頭している新たな戦略環境には不十分になっている。
 この態勢の方向性変更は、新たな挑戦、特にアクセスが阻止されその地域の使用が阻害される脅威を考慮して行わねばならない。即時使用しうる前方駐留部隊・前方展開部隊、グローバルに利用できる偵察・打撃ならびに指揮統制資産、情報作戦能力、および作戦戦域の外部から到来しても急速展開可能で高致死〔殺傷力が高い〕かつ持久力ある部隊の新たな組合せには、前方駐留部隊の戦力を大きく倍増させる潜在力がある。これには、強行突入部隊が含まれる。世界的態勢の方向性変更の諸目標の一つは、前方部隊にわずかの増援を加えるだけで迅速に敵の軍事的・政治的目的を撃破できるようにすることだ。決定的に敵を撃破するためには、変革の後でも大きな増援が必要となるであろうが。
 米国の世界的な軍事態勢の変革は、紛争抑止の方法の革新から始まる。将来の抑止も、強行突入部隊を含む前方駐留・前方展開の戦闘部隊・遠征部隊および世界的に米軍が保有している急速使用可能な能力に大きく依存しつづける。米軍は、非対称的兵器で武装した敵を含む頑強な敵とも対決して戦略的・作戦的な目的を達成できる広い範囲の攻撃能力・防御能力を保有しなければならない。追求すべき新たな抑止手段は、敵の軍事力や他の貴重な資産をリスクにさらすだけでなく、危機に際して同盟国・友好国をミサイル防衛・防衛的情報作戦・反テロ作戦などの能力によってもっと大きく保護するものでなければならない。
 米本土と宇宙に立地する能力と部隊は、この新たな世界的態勢の決定的要素だ。長距離打撃航空機と特殊作戦部隊は、平時の抑止効果を達成する前方部隊の即時使用可能な補完となる。抑止の新たな形態は、米国の能力が敵に課す戦略的・作戦的効果を重視するもので、さまざまな距離にある移動標的・固定標的に迅速に打撃を与える、世界的に配置された能力と部隊で実現することができる。……
 国際的安全保障環境の変化、国防省の新たな戦略的アプローチ、そしてこの変革された抑止概念にもとづいて、米国の世界的な軍事態勢は次のように方向性が変更される。
◇西欧および北東アジア以外にも基地を追加することを重点にして、世界の決定的な諸地域における米軍の柔軟性を高めるように基地配置体制をつくっていく。
◇恒久的演習場や基地がない諸外国で米軍が訓練・演習ができるように、その国の諸施設への一時的アクセスを確保していく。
◇地域的な抑止の必要性にもとづいて、戦力と装備を再配分する。
◇大量破壊兵器や他の米国のアクセスを阻止する手段で武装した敵に対する遠隔戦域での遠征作戦を遂行するために、十分な機動性を確保する。それには、空輸、海上輸送、事前集積、基地インフラ、代替上陸地点、作戦の新たな兵站概念が含まれる。
 そのために、国防省は次のような決定をした。
◇陸軍長官は、前方駐留暫定旅団戦闘チーム(IBCT)を導入して抑止力を強化し世界的な米国の戦略的反応性の改善をさらに加速していく。欧州の同盟諸国と協議しつつ、米国はIBCTを欧州地域に2007年まで駐留させるつもりだ。陸軍長官はさらに、アラビア湾での地上軍の強化のための選択肢を検討していく。
◇海軍長官は、西太平洋における空母戦闘群のプレゼンスを増加させる。またこの地域において、これまでに加えてさらに3ないし4の水上戦闘艦の母港化、および誘導巡航ミサイル潜水艦の母港化という選択肢を検討していく。
◇空軍長官は、太平洋、インド洋、アラビア湾における有事基地設定の拡大計画を策定していく。また、アラビア湾や西太平洋地域での作戦を支援するための給油・兵站の中間諸地点インフラを確保していく。
◇海軍長官は、海兵隊のための海上事前集積、高速海上輸送、新水陸両用能力の新たな諸概念をつくっていく。中東での有事への反応性を高めるために海兵隊の洋上事前集積装備を地中海からインド洋とアラビア湾に移す選択肢を策定していく。同盟国・友好国と協議しつつ、海軍長官は海兵隊の西太平洋における沿岸戦争訓練遂行の実現可能性を検討していく。
◇国防省は、防衛戦略のなかでの新たな地域的重点に応じて特殊作戦部隊資産の世界的配置の変更も勧告していく。
◇米国は、西欧と北東アジアの決定的な基地を維持していく。それらは、これまでの役割に加えて、他の地域の将来の有事においてハブとしての役割もはたしうる。

 X 21世紀の米軍の創造

 防衛戦略の目標達成のためには、米軍の変革が必要だ。変革は、次のようなことの結果としておこってくる。すなわち、作戦概念・能力への新たなアプローチ、古いテクノロジーと新しいテクノロジーの使用、および組織の新たな形態の活用によって、新たなあるいはまだ発生しつつある戦略的・作戦的な難題や有利な条件がいっそう効果的に先取りされるようになることの結果だ。また、それらによって従来の戦争遂行方法が時代遅れになり、あるいは副次的なものになる結果だ。変革は、軍事作戦の形態の根本的変化もその規模の潜在的変化も含みうる。空、陸、海での戦争遂行の方法の根本的変化のような、あるひとつの戦争形態から他の形態への移行が起こりうる。また、新たな規模の戦闘空間をもった武力紛争などの、新種の戦争も台頭しうる。
 変革には、知的、社会的、技術的な広がりがある。変革をもたらすためには通常、戦争の概念化や組織の作風における根本的変化が必要になる。変革の初期には、戦力のごく一部しか変革されないのが普通だ。しかしながら、ごく一部の変革された部隊が決定的な先鋒としての能力をもち、部隊規模よりはるかに大きな戦略的効果を発揮することがある。変革というものには大きな経路依存性があるから、今日行われる選択は、明日の選択肢を制約したり拡大したりしうる。
 変革への取り組みを支え、革新と実験を推進するために、国防省は、国防長官・副長官に直接に報告する新たな部署として戦力変革局を設けることにした。局長は、各軍事省〔陸・海・空軍省〕の変革の取り組みを評定し、進行中の変革活動を集約していく措置を勧告して協力を推進していく。
 変革をさらに容易にしていくために、各軍事省と国防省諸機関は、次に述べる6つの決定的な作戦目標を達成するために必要な各軍〔陸・海・空・海兵〕独自の能力の策定のための時間表を定めた変革プラン図をつくっていく。

 作戦目標

 軍事能力のすべての変化が――別の理由から望ましい変化であっても――変革的であるわけではない。変革の目的は、戦略環境の極度の非連続的変化の可能性に対して米国の軍事的優越性を維持ないし改善することだ。したがって、変革が焦点にすべきものは、こうした挑戦によって生み出される戦略上・作戦上の難題ないし有利な条件なのだ。6つの決定的な作戦目標は、国防省の変革への取り組みに焦点を与えるものだ。
◇作戦の決定的基地を防御すること(米本土、海外部隊、同盟国ならびに友好国)およびCBRNE兵器とその運搬手段を撃破すること、
◇攻撃に対して情報システムを確保し、効果的な情報作戦を遂行すること、
◇さまざまな射程とあらゆる天候・地形における決定的な移動・固定標的に対する、継続的な監視、追跡、そして航空・地上能力の補完的な組合せによる大量の精密打撃による迅速な交戦によって、敵の聖域を奪うこと、
◇宇宙システムと支援インフラの能力と生存性を高めること、そして
◇情報技術を活用すること、相互運用性がある統合C4ISR〔指揮・統制・通信・コンピューター・諜報・監視・偵察〕構成・能力の開発のための革新的概念を活用すること。状況に合せて直しうる統合作戦認識を含む。
 米本土を攻撃から守ることは、米軍の最重要の責務であり、予備軍構成部隊の第一の任務だ。将来の敵は、米国を脅かすさまざまな新手段を用いることは明らかだ。テロの新たなテクニック、弾道ミサイルと巡航ミサイル、先進的生物兵器を含む大量破壊兵器、決定的な情報インフラに対する情報戦攻撃などの大量阻害兵器などの諸手段がありうることは明らかだ。9月11日の米国への攻撃で用いられたもののように、他に奇襲という手段もある。すでにある脅威やこれから台頭する脅威に対する防衛は、開発しなければならない。新たな脅威への早期警報の達成のための新たなアプローチには、高い優先順位を与えねばならない。
 社会と軍が先進的情報ネットワークにますます依存するようになっているために、攻撃に対する新たな弱点と新たな有利な条件が生まれている。潜在的な敵は、たとえばコンピューターネットワーク攻撃や指向性エネルギー兵器などの手段によって、これらの弱点を利用しかねない。これらの新たな戦争手段の発生は、米軍にも非運動的攻撃を利用する条件を与えている。
 将来の敵は、現在のわが国の海外への軍事力投入力の多くを無効化する手段を保有することになりかねない。弾道ミサイルと巡航ミサイルによる集中攻撃によって、米軍の海外の基地・飛行場・港湾へのアクセスが阻止され、あるいは遅延させられかねない。先進的な防空システムは、低識別性航空機〔ステルス機〕を除くあらゆる航空機の敵の領空へのアクセスを阻止しかねない。軍事的・商業的宇宙能力、視界外レーダーおよび低識別性無人飛行体は、広い範囲にわたって監視し、米国の部隊と資産を追跡し標的にする手段を潜在的な敵に与えかねない。対艦巡航ミサイル、先進的ディーゼル潜水艦、および先進的機雷は、米国の海軍と水陸両用部隊が沿岸海域で作戦する力を脅かしかねない。これらの脅威に対処するために、戦力投入の新たなアプローチをつくっていかねばならない。
 また、敵は、戦略的縦深性を利用する可能性も高い。移動弾道ミサイルシステムが、射程を長くして発射される可能性があり、それによってアクセス阻止・地域使用阻害という難題が加重される。地上基地レーザーなどの宇宙破壊能力は、敵の領土奥深くに立地させることができる。そのため、潜在的な敵の聖域をなくす手段を開発することが変革のひとつの枢要な目的になる。これは、継続的監視、精密打撃、および進入を阻害されている地域内のさまざまな奥深さの中での作戦を遂行する頑強な能力を開発し取得することが必要になる可能性が高い。
 さらに、将来の敵は、自己の目的のために宇宙を利用して、米軍の宇宙への無抵抗のアクセスの破壊をねらってくる可能性も高い。宇宙監視・地上基地レーザー・宇宙電波妨害の諸能力、および近距離マイクロ衛星は、ますます入手しやすくなっている。したがって、米国が宇宙を軍事目的に使用する力だけではなく、敵のそうした能力を阻害する能力も必要となるのであり、これが変革のひとつの枢要な目的となる。
 そして、新たな情報・通信技術は、高度に分散した統合・合同戦力をネットワーク化するために、またこうした戦力が状況認識――友軍と敵軍の双方についての――の改善を確保するために、従来の技術よりずっと役に立つであろう。情報技術には、米国軍人の大きな能力を最大限にする大きな潜在力がある。

 変革の柱

 変革は、終着点ではない。国防省の変革へのアプローチは、次の4本の柱のうえに立っている。
◇常設統合タスクフォース司令部、統合指揮・統制、統合訓練、統合部隊プレゼンス政策による統合作戦を強化すること、
◇発生しつつある挑戦とチャンスを焦点にした戦争ゲーム、シミュレーションおよび野外演習を通じて、戦争遂行、作戦概念、作戦能力および常設統合部隊などといった組織構成を実験すること、
◇多数の諜報収集資産、世界的な監視・偵察および宣伝活動強化によって、米国の諜報における優位性を活用すること、そして
◇広い範囲にわたる科学と技術の推進、選択的な調達増加および国防省内業務の革新によって変革能力をつくっていくことだ。

 統合作戦の強化

 将来の戦争遂行上の課題にいっそうよく対処するために、国防省は、わずかな前兆であるいは前兆なしに発生する事態に対して迅速に対応できる戦闘諸組織をまとめ上げる力をつくりだす必要がある。このような統合部隊は、統一部隊司令官が敵を抑止または撃破するのに適切な部隊を使えるように、タスクに対応したモジュール・ユニット〔規格化された隊を組み立てて出来た規格化単位で、さらに大きな隊の構成要素となるもの〕をもって組織され評価されるようになっていなければならない。こうした部隊は、統合指揮・統制によって高度にネットワーク化されていなければならず、また共同作戦のために現在の部隊より良くまとめあげうるようになっていなければない。
 これらの統合部隊は、危機管理、紛争予防および戦闘作戦に使用されることになる。軽快性、致死性、機動性、生存性、急速展開性を高め、統一的な仕方で使用されなければならない。分散的作戦を遂行できるだけではなく、アクセスを阻止され、あるいは地域の使用を阻害された環境の中で強行突入ができる必要もある。

 統合および合同の指揮・統制

 将来の軍事的対応には、迅速な運動と統合諸部隊や合同諸部隊のまとめ上げが必要になる。戦場でタイムリーに作戦し、持久し、部隊を守りうる柔軟性を確保するような、柔軟で信頼性があり効果的な統合指揮・統制構造が必要になる。
 このような統合指揮・統制構造は、統合指揮だけではなく、そうした部隊の構成要素である各軍〔陸・海・空・海兵〕作戦部隊にまで及んでいなければならない。この構造は、戦闘空間についての認識を共有するよう、ネットワーク化されていなければならない。また、適切なドクトリン、戦術、テクニック、手順と高度に訓練された作戦部隊によって支えられる必要がある。もっとも重要なことは、各軍の訓練と統合訓練およびプロフェッショナル教育プログラムの大きな課題である統合的なプロフェッショナルな作風の形成と強化だ。統合指揮・統制システム――その設備およびネットワークを流れる情報の双方――は、敵の情報作戦や他の攻撃から安全に守られていなければならない。
 米軍部隊には、その相互間だけではなく他の政府諸機関や同盟国・友好国とも意志疎通する力が必要だ。このような統合的・合同的相互運用性のためには、統合戦場作戦システム(指揮・統制・諜報・火力支援、兵站など)に直ちに「プラグ・イン」し、効果的に活躍できる部隊が求められている。これらの部隊には、相互運用的な標準、ドクトリン、戦術、テクニックおよび手順にのっとった互換性あるシステムが必要だ。
 統合および合同の指揮・統制を支援し、また戦闘空間についての共通の適切な作戦認識を実現するために、国防省は、立案と作戦のための末端部隊間に相互運用性あるコミュニケーションを強化していく。これらのコミュニケーションは、状況認識の共有や統合火力・機動・諜報の一体化をもたらす。それは、すべての部分の間で相互運用性がなければならず、また他の諸国との共同作戦のための適応性がなければならない。このネットワークとその応用がもたらす能力によって、急速反応部隊の立案と実行は、敵よりもすばやくなり、戦術的なチャンスがつかめるようになる。

 常設統合タスクフォース司令部

 統合作戦を強化するために、国防省は、今後数カ月のうちに常設統合タスクフォース(SJTF)司令部の雛形の設立を提案していく。目標は、地域統一部隊〔欧州軍・太平洋軍等〕ごとに1つのSJTF司令部を設立していくことだ。この司令部は、統一的標準的な作戦手順、戦術、テクニック、および技術的システム基準を定め、統一部隊内部で専門技術を移転する力をもつ。
 SJTF司令部は、標準化された統一C4ISR構成を持ち、統合部隊および合同部隊に戦闘空間についての共通の適切な作戦認識を提供していく。そして、反応性のある集約的兵站システムのためのメカニズムを持って、戦闘員にめんどうな輸送やインフラの要件なしに必要な支援へのアクセスを提供することになる。また、適応性のある任務立案ツールを用いて、部隊が敵の決定サイクル〔すべての指揮・統制システムに適用されるという意志決定のサイクル。観察→方向づけ→決定→行動→観察というサイクル〕より速く作戦することができるように、また戦闘空間の諸条件の変化に対応できるようにしていく。

 常設統合タスクフォース

 そしてまた、国防省は、常設統合タスクフォース(SJTF)の設立という選択肢についても検討する。SJTF組織は、とりわけ前述の決定的な作戦目標を焦点にしていく。SJTFは、米国の非対称的な軍事的優位性と統合戦力の相乗作用を利用する新たな概念を追求していく。そうした概念は、少ない総人員数のレベルで、きわめて大きな軍事能力を達成する可能性を考慮してつくられていく。
 ひとつの選択肢には、さまざなな奧深さに位置する固定標的・移動標的に対する、警告なしの遠距離からの通常攻撃のためのSJTFの計画も含まれる。このようなSJTFは、将来の決定的な作戦上の課題のひとつ――あらゆる射程にある移動標的を連続的に位置探知・追跡し、精密に迅速な攻撃を加える能力の開発――に対処するものとなるだろう。この課題の克服には、宇宙基地システムと人的諜報を含む諜報能力の強化、および移動標的を位置探知・追跡してその情報を打撃力資産に伝送できる航空機搭載システムが必要だ。また空、海、陸、宇宙、サイバースペースから警告なしに打撃を加える力が必要だ。そしてこれらの戦力は、それらを集めた効果が最大になるようにネットワーク化されなければならない。
 遠距離射程の無警告通常打撃のための常設統合タスクフォースの設立は、ネットワーク能力を達成するための組織的手段となる。常設統合タスクフォースは、将来の変革された軍の前衛としての役目を果たすことができよう。それは、あらたな技術が使えるようになる実験的実践を開始するものになれる。また、ただちに作戦的な利益を生むこともできる。(つづく)