COMMUNE 1997/11/01(No.267 p48)

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11月号 (1997年11月1日発行)No.267号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  組対法は現代の治安維持法

●翻訳資料 アメリカ政府による盗聴の方法と実態

    海上決起で空母に肉薄

三里塚ドキュメント(8月) 内外情勢(8月)

日誌(7月)

翻訳資料

●翻訳資料

 アメリカ政府による盗聴の方法と実態

松永洋訳 

アメリカ市民的自由同盟 96年2月24日

 【解説】

 組対法のモデルは、アメリカのRICO法と盗聴法である。
  米帝は、恒常的戦争国家であり、国内での階級的搾取と社会的差別の過酷さ、麻薬問題に示される社会的な腐敗・崩壊状態は著しい。RICO法と盗聴法は、この米帝の戦争体制維持と体制的延命のためのあがきである。日帝は、米帝との争闘戦を激化させながら、新ガイドライン、朝鮮−中国・アジア侵略戦争の貫徹のため、米帝にならい、それ以上の治安体制を作ろうとしている。
  RICO法は、Racketeer Influenced and Corrupt Organizations laws 「組織犯罪に影響され腐敗した組織に関する法」の略語であり、マフィアなどの市民社会への浸透に対抗する法律だと宣伝されて作られた。だが実際は、人民の弾圧のために使われている。
  組対法の「暴力団、総会屋、オウム対策」の建前のインチキさは、アメリカの先例を見れば一目瞭然だ。RICO法があるアメリカで、ますますマフィアや麻薬がはびこっているではないか。
  米帝中枢は、マフィアにある程度の圧力を加えつつも、基本的にはもちつもたれつの関係にある。マフィアのマネーロンダリング=資金洗浄を行っているのは中小金融機関や他国の銀行だけではない。ほかならぬシティバンクを始めとする米帝金融資本の中軸が資金洗浄の大部分を担っている。世界の麻薬取引総額五千億jのうち半分はアメリカの金融機関を通過している(OECDによる見積り)。中南米で麻薬精製に使われる化学薬品の九〇%を輸出しているのは、米帝大化学資本である。その一方で「麻薬取締り」を口実に、米帝は、民族解放闘争にすさまじい軍事的弾圧を加えている。
  米帝は、チームスター(トラック労働者を中心にした産別全国組織、百四十万人)など多くの労組にマフィアを浸透させ、その暴力で労働者を支配してきた。むろん、労働者階級は、この暴力支配に甘んじてはいない。労働者の激しい闘いによって、九一年、ついにチームスターのマフィア支配は崩壊寸前に追い詰められた。そこで、米帝国家権力は、委員長選挙を主催して労組内部に直接に介入した。さらに、今年八月のUPS社の二週間スト【本誌前号参照】の準備過程とスト後の過程では、前回委員長選挙の選挙違反を名目に権力が再度労組選挙という形で組織介入を深めている。
  アメリカ盗聴法は、合州国法規集の二十nも占める長大な法律で、RICO法と一体となって、人員のあらゆる闘いに対して網をかけている。盗聴捜査の対象「犯罪」には、原子力エネルギー法違反、サボタージュ(破壊活動)、国家反逆、そして労組への資金提供制限への違反、RICO法違反が掲げられている。革命の防止、侵略戦争の貫徹、階級闘争圧殺のための法律である。
  以下に紹介する文書は、アメリカ市民的自由同盟(ACLU)が発表したものである。ACLUは、アメリカの国家権力による人民の権利侵害に反対する運動団体である。この文書から、アメリカの盗聴社会の実態とそのエスカレーションの方向を読み取ることができる。
  なお、本文中の「18 U.S.C. §2511」等は、合州国法規集第十八編(刑法・刑事訴訟法にあたる)の第二五五一条等を意味する。18 U.S.C. § 2510 〜2522が盗聴法である。8 U.S.C. 同法規集第八編は、国籍・移民・出入国管理関連の諸法規である。「Katz v. U.S. (1967) 」等はKatz対米政府の裁判で一九六七年に出された判例を意味する。最後の表は合州国裁判所事務局の資料による。

【<1> 等は原注。〔 〕内の補足、ゴシックは訳者】

………………………………………

【アメリカ政府による盗聴の方法と実態】

 下院は、一週間で二つの盗聴関連法案を議題にするという。「一九九五年移民・国益法案」と「一九九五年効果的死刑及び反テロリズム法案」である。これは米国人民の私的な会話を聞く政府の権限を著しく拡大し、今まで以上に多数の違法な盗聴をまねき、捜査機関の盗聴に対する裁判官の監督の権限を制限するものである。この二法案は、事件に関係ない会話の捜査員による傍受の数を著しく増加させ、プライバシーの権利を急激に減少させる。すでに、無実の会話が、あまりにも多く・・昨年は約二百万件・・捜査機関のワイヤタップや他の形の電子監視によって傍受されている<1> 。下院は、盗聴の減少こそめざすべきである。拡大などとんでもない。

●現行の盗聴法

 現行の連邦法では、口頭コミュニケーション<2> 、有線コミュニケーション<3> 、及び電子通信<4> の傍受は、特別に許可された場合以外は禁止されている(18 U.S.C. § 2511)。電子監視は極度に〔プライバシー〕侵害的な捜査手法であり、憲法修正第四条の捜査・押収の要件に従わなければならない(Katz v. U.S. (1967) )。電子監視を行うためには、FBIあるいは他の捜査当局は、ほぼ確実な理由に基づいて裁判所の命令を得る必要がある。連邦捜査員は、特定の連邦犯罪についての捜査にのみ関連した口頭または有線コミュニケーションの傍受の命令を得る(18 U.S.C. § 2516 )。
  18 U.S.C. § 2515 は、違法に設置された電子監視装置によって傍受された会話は、法廷で証拠として使用できず、またいかなる立法手続や管理手続の中でも使用できないという憲法的要件を法律化したものである。この成文法上の排除規定が、捜査機関に裁判所の命令を守らせている。そして、電子監視を行うにあたっての恣意的な捜査・押収に対する憲法修正第四条の保護を廃止することを抑制させることになっている。また現行法によれば、裁判官は、捜査機関が盗聴を継続する必要性について定期的に弁明し、かつ盗聴器が犯罪証拠を集めている事実、今後も集めるであろうという事実を示すことを要求する権限を持っている(18 U.S.C. § 2518 (6) )

●下院移民法案と盗聴

一九九五年移民・国益法案第二〇一条は、ワイヤタップや他の形の電子監視を行う法的権限を拡大している。電子監視令状を交付しうる連邦犯罪のリストが次のものにまで拡大されている。
1.18 U.S.C. § 1028 の重大な違反(虚偽の身分証明書類の作成)<5>
2.18 U.S.C. § 1542 (虚偽のパスポートの発行)<6>
3.18 U.S.C. § 1542 (パスポート受給のための故意の虚偽申告、または不正に受給したことを知ったパスポートの使用)
4.18 U.S.C. § 1543 (パスポートの使用目的での不正変更または模造・偽造。偽造もしくは変造されたパスポートまたは期限切れ等で無効となったパスポートの故意の使用)
5.18 U.S.C. § 1544 (他人のパスポートの故意の使用。パスポート記載の条件もしくは制限またはパスポート発行を規制する法に従って定められた規則に故意に違反したパスポート使用)
6.18 U.S.C. § 1546 (虚偽のビザまたは越境カードまたは合州国への移民もしくは合州国内での労働の許可書類の作成または使用。虚偽の身分証明書類が労働許可を示す目的で違法に発行されたことを知っている理由がある場合のその使用)
7.8 U.S.C.§ 1324 (証明書不所持の者を故意に合州国に入国させ、または建物に蔵匿し、またはかかる者の隠匿を企て、またはかかる者が輸送の時点で法律に違反しておりその輸送がさらにその法律違反を進める事実を不当に無視して輸送し、または外国人が法律に違反して合州国に来ることを促進もしくは誘導すること)
8.8 U.S.C.§ 1327 (重大犯罪人として合州国入国を拒絶すべき外国人の不法入国の故意の援助)
9.8 U.S.C.§ 1328(売春など不道徳的目的での外国人の導入)
  このような犯罪について電子監視が許可されたことは、未だかつてない。これらの犯罪捜査の対象はアメリカ人である(外国人だけではない)。米国移民法違反とは何の関係もない行動についての捜査も含まれる。さほど重くない犯罪に、盗聴許可を拡大する。この法案で、政府が盗聴できるようになる会話は、次のようなものが含まれる。(〓)夫を誘拐され、民族浄化で殺されたボスニアのある女性に一人の米軍兵士が同情し、ボスニアでの平和維持活動からの帰国後に彼女に電話して、彼女自身の安全のためには許可なしでも米国に来るほうがよいと勧めるという場合。(〓)あるアメリカ人が証明書を持っていない人に力を貸し、その人がある町で仕事を探せるように、そこまで運ぶことに電話で同意する場合。(〓)子どもが未成年の友達に電話して、自分が手に入れたニセの州運転免許証について話し、それを郵便で送る場合。(〓)レバノン系アメリカ人がレバノンにいる祖母に電話し、米国のパスポートの使用禁止を破ってレバノンに入国すると話した場合。
盗聴は極度に〔プライバシー〕侵害的で、ほぼ無差別的な監視形態でり、もっとも重大な犯罪を制するためだけに限定して許可されるべきものである。右のようなタイプの行動にまで盗聴を拡大することは、この事実を無視している。盗聴拡大によって、人民は、「ビッグブラザー」に盗聴されている、しかもいつ聞かれるのか分からないという嫌な感じの中で暮らさなければならなくなる。

●下院テロリズム法案と盗聴

 下院テロリズム法案の第三〇五条は、捜査機関の盗聴についての法的な排除規定の重大な穴をさらにとめどなく拡大し、違法な盗聴の著しい増加に道を開いている。この第三〇五条は、違法に盗聴した捜査員が「誠意をもって」行動したことを裁判官に示しさえすれば、盗聴器で違法に収集された証拠を法廷で使うことを承認する。これは、憲法修正第四条を放棄する憲法違反である。
  この法案によれば、18 U.S.C. § 2515 は修正され、「通信を傍受し、または傍受したものから証拠を収集した捜査員が、自分たちの行動が盗聴法に合致しているという妥当な客観的信念を持っている」ときは、証拠の排除は適用しないと規定されることになる。
  違法に獲得した証拠の使用を新たに承認することがなぜ必要なのか、FBIは、まったく説明していない。それが、テロリズム法が表向きの目的にしているもの、つまりテロリズムと闘う必要性と関係があることは、まずありえない。そもそも、テロリズムに通常関連している犯罪に関する事件についての盗聴許可の申請は、きわめて少ないのである。<7>
  ACLUは、この第三〇五条は、恐るべき 、反憲法的なものであり、違法な盗聴を増加させるものだと考えている。たしかに最高裁は、憲法修正第四条に違反して得られた証拠を排除する規定にある程度の制限を加えることを、近年表明してきた。しかし、第三〇五条は捜査機関の不正行為を丸ごと免罪するのであり、最高裁が許容したものをはるかに越える。U.S. v. Leon (1984) では、誠意をもって依拠した捜査令状に欠陥があったために憲法に違反して執行された捜査から得られた証拠を法廷に提出することを最高裁は許可した。同様に、最高裁のArizona v. Evans (1995) の判例は、令状が未執行だったという、誤りではあったが、合理的に誠意をもって信じられたことにもとづいて行われた違法な捜査に対しては排除規定は適用されないという。
  しかし現在も最高裁は、令状なしの捜査の場合には排除規定を守りつづけている。だが、下院法案三〇五条は、裁判所の許可を申請していない場合でさえ、その憲法違反の捜査で得られた証拠の提出を承認しようとしているのである。捜査・押収の憲法違反についての状況証拠は、当然、捜査員が持っているのであって、捜査員が自分は誠意をもって行動したと主張するなら、被告にとっては、そうでなかったことの立証は極度に困難となる。このように、捜査員の行動が憲法違反であっても証拠が法廷で有効だとされる場合が多くなれば、それは捜査員を、憲法すれすれの所で盗聴活動を行うよう仕向けるものになる。これは、排除規定によって良心的、憲法的な行動を促そうとしていたこととは正反対の動きである。したがってわれわれは、この三〇五条の規定を憲法違反として退けることを裁判所に求めるものである。
  そのうえ、この法案の三〇七条は、捜査機関が盗聴を継続する必要性について定期的に弁明することを要求する権限を裁判官に与える法的規定を廃棄しようとしている。現行法下で裁判官の持っている権限によれば、裁判官は、特定の盗聴器を許可する命令の中に、「裁判官が必要と認める期間ごとに」裁判官に報告を提出し、許可された盗聴器の目的の達成状況および傍受の継続の必要性について知らせることを命じることができる。この権限によって、裁判官は盗聴を監督し、盗聴器が犯罪の証拠を発見しておらず、発見の見込みもない場合には、それが設置されたままにならないようにすることができる。この法案の三〇七条は、傍受開始の十五日後にたった一回裁判官に報告するだけにしている。盗聴器の三十日の使用期限ごとに政府が裁判所に延長を申請するまで、裁判官にとって、盗聴器を停止させるべきかどうかを判断する機会はなくなることになる。このように裁判官から権限を奪うことがなぜ正当なのか、説明はまったくない。現行法の規定を裁判官が乱用しているというような論拠も示されていない。捜査機関にこの極度に侵害的な監視用具の使用について裁判官への定期的な弁明を要求することは費用がかかりすぎるというような論拠も示されていない。この〔報告〕義務を廃止することは、事実上、捜査機関の盗聴で今まで以上に多数の無実の会話を傍受させるということに等しい。

●盗聴増加はアメリカ人のプライバシーの制限

 ACLUは、盗聴を申請できる犯罪リストを急激に拡大し、違法な盗聴を招き、裁判官から捜査機関の盗聴を監督する法的権限を奪う、これらの条項のすべてに反対する。下院の中には、アメリカ人のプライバシーを犠牲にすることが、証明書なしの移民やテロリズム関連の犯罪への対処として許容できると考える者がいる。こういうことが言われているのは、盗聴権限を拡大するためであり、下院移民法案で提案されている身分証明システムを支持するためであり、また下院テロリズム法によって、テロリズムやスパイに対するFBIの捜査に関係する米国内の人間の電話記録・旅行記録を犯罪事由なしに入手する権限を拡大するためである。いずれにしても、ACLUは、この見解には同意できない。
  法の執行への挑戦・・証明書なしの移民であれ、麻薬使用であれ、テロリズムであれ、・・への回答は、連邦〔政府〕の盗聴権限の拡大ではない。
  ワイヤタップや他の形態の電子監視は、侵入的であり、高価であり、膨張するものであり、効率が落ちていくものである。電子監視傍受は、短期的な〔プライバシー〕侵害ではない。一九九四年の数字によれば、連邦および州の電子監視装置が一度設置されると、二〜三日どころか、平均四〇日間置いておかれる<8> 。一件の装置設置当たり、平均二一三九回の会話が傍受される。また、平均八四人の会話が傍受される<9> 。この人々の多くは、自分の会話が捜査員に傍受されたことをまったく知らされない<10>。
  盗聴は高価である。九四年の連邦のワイヤタップの一件当たり費用は、六六、七八三jであった<11>。九四年に終了した連邦の可動ワイヤタップの一件当たり費用は一〇〇、〇〇〇jであった。
  盗聴は膨張する。連邦の電子監視傍受件数は、一九八四年〜九四年にほぼ二倍になった<13>。捜査機関の傍受装置一件当たりの平均傍受会話数は、八四年〜九四年に、一、二〇九回から二、一三九回に増えた<14>。
  最近FBIは、ワイヤタップと他の形態の電子監視を拡大する意図を明らかにしている。FBIが言っているところによれば、電話会社に対して、関連する電話設備を変更してFBIが全米の大都市間で交わされる会話について、常時、百回に一回を盗聴できるようにするように要求したいということである(九五年十月十六日)。FBIは、その計画の実施のために電話会社に支払うための基金として、少なくとも五億jの予算を獲得しようとしている。この計画は、下院の前会期の最終日に採決された電話通信のデジタル化措置をも、はるかに超える。
  そして、一番重要なことは、盗聴が、ますます非効率的になっていることである。連邦と州の電子監視装置を一度設置するごとに一、七七五回の無実の(「犯罪と関係ない」)会話が傍受される<15>。九四年には、約一、九四二、六〇〇回の無実の会話が捜査機関の傍受装置によって傍受された<16>。八四年〜九四年に約千百万回の無実の会話がこのような装置によって傍受された<17>。これは、あまりにも巨大なプライバシーの犠牲である。八四年〜九四年に連邦の電子監視装置の設置は倍増したが、その間、電子監視によって傍受された全会話のうちの犯罪に関係したものの比率は、二五%から一七%に下落した<18>。つまり、逆に言えば、電子監視傍受装置が設置されるごとに、傍受された会話の八三%が犯罪と無関係なのである。
  下院移民法案のそれぞれの新たな盗聴事由についてワイヤタップ設置が仮に年に五回ずつ行われるとだけだとしても、またそれらの新たなワイヤタップのコストが金銭的にもプライバシーの点でも他のワイヤタップと同じだとしても、移民法案第二〇一条は、納税者に三百万jの負担をかけ、プライバシーの「コスト」の面でも、米国内において約八万回の無実の会話が傍受されることになる。

●結論

 バッグとワイヤタップは、きわめて侵害的な捜査手法であり、われわれすべてが大切にしている個人的プライバシーを脅かすものである。だから、盗聴は好まれないのである。この二十年間、毎年、「あらゆることを考慮した上のでことですが、あなたは盗聴を承認しますか、しませんか」というアンケートが行われ、調査対象の約七五%が承認しないと答えている。政府は、〔盗聴〕権限の膨張がもたらすプライバシーに対する脅威よりも盗聴の必要性のほうがなぜ重要なのか説明していない。それどころか、なぜ〔盗聴〕権限拡大が必要かについてさえ、説明がない。また政府は、裁判官が捜査機関に定期的に盗聴器継続使用の弁明を要求する権限を奪うことばなぜ必要なのかも説明していない。違法な盗聴によって収集された会話を法廷で使用する必要性によって、なぜ法的な排除規定を廃止することが正当化しうるのかも説明していない。下院移民法案第二〇一条および下院テロリズム法案第三〇五条・第三〇七条の中の盗聴権限拡大の諸条項は、削除するべきである。
  さらに詳しい情報については、ACLUのGregory T. Nojeim 202/544-1681までお問い合わせ下さい。

【原注】

<1> 電子監視傍受には、ワイヤタップ〔電話局内あるいは中継箱内の端子と線で接続して盗聴すること。またはその器具。電話会社の協力を得て行われる〕、口頭での会話を傍受する「バッグ」と呼ばれる電子聴取装置、ポケベル送信や携帯電話の会話、電子メール、そして以上のさまざまな組み合わせの傍受がある。ワイヤタップは、捜査機関の電子監視傍受の約七〇%を占める。
  「ワイヤタップ」という用語は、すべての形態の電子監視を指して用いられることもある。

<2> 「『口頭コミュニケーション』とは、傍受されないことが予期しうる状況下で、その予期を示している者が発するすべての口頭コミュニケーションを意味する」18 U.S.C. § 2510 (2)

<3> 「『有線コミュニケーション』とは、ワイヤ、ケーブルまたは類似の結合によってコミュニケーションを送る施設を全面的または部分的に使ったすべての音声伝達を意味する」同右§2510 (1)

<4> 「電子通信」とは、「有線、無線、電磁的システム、光通信システム、またはフォト・オプティカル・システムによって全体的または部分的に送られる合図、信号、文書、画像、音、資料、またはあらゆる性格の情報」のことであり、〔前項2.3.の〕口頭コミュニケーションまたは有線コミュニケーションは除く。〔呼び出し音のみのポケベルおよび追跡装置からの発信も除く〕同右§2510 (12)

<5> 紙幅が足りないため、これらの法文についてのカッコ内の説明では、それが禁ずるすべての行為を全面的に網羅できなかった。法文自体を参照してほしい。

<6> クリントン政権は、この連邦の盗聴権限の拡大案を支持している(九五年六月七日のケント・マーカス検事総長補代行のシンプソン上院議員宛て書簡)。下院司法委員会を通過した移民・国益法案二〇一条一〇は、連邦の盗聴権限を、18 U.S.C. §1425〜1427を除き、それらの犯罪事項に拡大することになる。

<7> 合州国裁判所事務局『一九九四一月一日から九四年一二月三十一日のワイヤタップの報告』(九五年四月)二一n(以後『ワイヤタップ報告』と呼ぶ)。現在は、設置された傍受器の使用期間は以前よりはるかに長い。一九七〇年には、電子監視傍受器の平均設置期間は、二〇日間未満だった。

<8> 同右書五n、二一n。これらは九四年の数字。一九八四〜九四年に、ワイヤタップ一個当たり一一七人の電話が傍受された。

<9> 18 U.S.C. § 2518 (8)(d) は、電子監視を許可する裁判官は、有線または口頭コミュニケーションの傍受期間についての監視結果の内容を報告させると定めている。この条項は、傍受された会話を、「裁判上の利益のために」他のいずれの当事者にも報告させる裁量権を裁判官に与えている。

<10>『ワイヤタップ報告』 6n、16n

<11>同右A2〜A43

<12>同右 21

<13>同右

<14>同右 5n、21n

<15>同右 21 。平均傍受会話数と平均の犯罪構成傍受会話数の差と設置された盗聴器の積((2,139 −373 )×1,1100)

<16>同右。右と同様に計算

<17>同右 5n、21n

<18>次のように計算した。5個のワイヤタップ×12の法的盗聴事由=年間60個のワイヤタップ。連邦のワイヤタップ一個当たり66,783j。無実の会話の傍受は一個当たり一七七五回

<19>合州国司法省司法統計局『刑事司法統計資料集』一九九四年表2・41 173 n

  (おわり)