「国・NAAの人権軽視にNOを」 多古町住民が騒音被害を陳述 成田夜間飛行差し止め行政訴訟
「国・NAAの人権軽視にNOを」
多古町住民が騒音被害を陳述
成田夜間飛行差し止め行政訴訟


成田空港夜間飛行差し止め請求行政訴訟の第9回口頭弁論が12月2日、千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で開かれ、傍聴しました。
この裁判は、成田市、横芝光町、芝山町、多古町、茨城県稲敷市の住民が国を相手取って成田空港の深夜早朝(午後9時から午前7時)の離着陸禁止を求めているものです。
冒頭、多古町で陶芸を生業としている住民Aさんが意見陳述に立ちました。Aさんの家は、B滑走路南端から南東に10㌔に位置し、C滑走路新設による移転対象地区の境界から10㍍しか離れていません。わずか10㍍で騒音に違いがあるはずもなく、線引きの不合理さを日々感じています。
「広い土地と豊かな自然と向き合いながら自由に陶芸をやろうと32年前に引っ越してきたのに、朝6時に飛行機の音で目が覚め、夜は11時を過ぎても飛ぶことがあるため思う通りの時間に寝ることができない」「本来の飛行コースから外れ自宅の真上を通過する飛行機もある。この9月中旬からはさらに高度が低くなった。国・NAAから知らされていない。住民に直接知らせるのが誠意ある対応ではないか。国の発展のためと言うかも知れないが、私も国民だ。誰のための何のための発展か」
さらに機能強化による被害がどの程度になるかを調べるためにA滑走路で実験した結果について述べました。
「ジェット機の窓が見分けられる近さにびっくりした。たとえ車の窓を閉めていてもラジオが聞こえなくなった上に振動も感じた。陶芸家としての仕事を続けることは難しくなるのではないか」
最後に、航空機騒音からくる日常的なストレス、自身の健康被害について明らかにし、「日中の飛行機の騒音だって私のような自宅で仕事をしている人たちの仕事を妨げ、ラジオや読書などの息抜きを邪魔している。最低限の要求として夜間飛行をやめるよう求めている」「国・NAAによる人権を軽視した方針に対して、この裁判ではっきりとNOを突きつけて」と裁判所に迫りました。傍聴席から拍手が沸き起こりました。
今回国は、前回の弁護団と裁判所からの「国はどのように事業計画の許認可を行っているのか」という求釈明に応える準備書面を出してきました。ところが、その内容は驚くべきことに「騒音について具体的な審査基準はなく、審査もしていない」というものでした。また、環境影響評価書の騒音レベルの環境基準エル・デン57でさえ約35%の地点で満たしていない基準違反であること、具体的な騒音対策が何もないことなども明らかになりました。
さすがの裁判所もこれでいいとはならず、「最高裁判決でも、どういう被害が予想されるのか、時間帯の変更、回数などについて比較考量してなどと言っている」と指摘し、国に再検討を促しました。
さらに原告に対しては、「エル・ナイトを基準にした被害だけでなく、エル・デンでもどの程度被害が出るかの議論は必要」として準備を求めました。弁護団は、「国の騒音コンターには疑義がある。実際の騒音を測定した上で示したい」として、調査中であることを明らかにしました。
次回期日を2月17日(火)午前11時、次々回を5月15日(金)11時と確認し、閉廷。
千葉県弁護士会館で裁判報告会が開かれ、全体で裁判が勝利的に進んでいることを確認し、しっかり立証して勝負をかけたいと弁護団からも決意が述べられました。
(土屋栄作)