明日も耕す 「食権力」に立ち向かう ナチス飢餓計画の再来阻め
週刊『三里塚』02頁(1170号02面04)(2025/10/27)
明日も耕す
「食権力」に立ち向かう
ナチス飢餓計画の再来阻め

(写真 食権力の現代史 藤原辰史著 人文書院 2970円)
10月14日、オンラインで行われた「日本有機農業研究会シンポジウム2025」に参加した。シンポでは京都大学人文科学研究所教授・藤原辰史さんが、「食権力」をテーマに講演した。
藤原さんの講演タイトルは「食権力とナチスの飢餓計画」。食べ物を通じて人を統治するあり方の歴史を特にナチスを中心に解き明かされた。
藤原さんは「食権力とは食の余剰と食の技術の集中を根拠として、人間および自然を統治・管理する力の束のこと」と定義する。つまり食の支配によって人々を威嚇したり、屈服させたりする力のことだ。
砂時計のくびれ
藤原さんは食権力の構造を砂時計にたとえる。巨大な資金を持った人間が世界中の生産者から穀物を集め、世界中の消費者に売っていく。単に食料だけではなく農業技術、遺伝子組み換え技術、化学肥料技術、農薬技術が砂時計のくびれの部分に集中し、ここを握る者の言うことを聞かないかぎり、生産者も消費者も立ちゆかない、そういう権力のあり方だ。
あらゆる権力の根源には食権力がある。食べ物支配し、他の人々に配分する権力。近代では交通を握ることが世界の穀物を握ることになる。
ナチスは、第一次世界大戦のドイツの飢餓体験から食料自給自足政策をやろうとするが失敗する。そこで穀倉地帯のウクライナを占領して食糧をドイツにまわす、ロシアの住民3000万人を餓死させ、余剰作物でドイツ人を食べさせるという飢餓計画(フンガープラン)に乗り出した。
ナチスも砂時計のくびれとなってヨーロッパの穀物を集め、ドイツ人を優遇していたのだ。
現在世界第2位の穀物メジャー・ADMは、飢餓計画と深い関わりがあるテプファーというドイツ企業を吸収したもので、ナチスは決して遠い過去のことではない。
飢餓計画と同様なことを戦前の日帝も行っていたし、形を変えて今も続いているではないか。その最たるものがイスラエルのガザ大虐殺だ。
労農連帯の道を
藤原さんは食権力の歴史と現在をひも解きながら、巨大な食権力に対し、小さな食権力を握って自分たちの食のあり方を決めていく食の自治、これももうひとつの食権力だと言う。砂時計に穴を開けて直接消費者に食べ物を落としていくあり方、提携・産直運動のような自治的な食権力を巨大なものに対抗させることに、有機農業を進めていく意義が見えてくると説いた。
階級的に言うなら、戦時農政を打ち破り、企業の農業支配、流通支配を打ち破る労農連帯だ。そして砂時計そのものをぶち壊す日帝打倒こそがわれわれの進むべき道なのだ。
なお、今回の講演は藤原さんが9月に上梓した
『食権力の現代史―ナチス「飢餓計画」とその水脈』(人文書院)にもとづくものだ。ご一読をお薦めしたい。