成田「第2の開港」粉砕を 「経済発展、投資促進」叫び住民生活破壊 物流強化の目的は軍事転用だ

週刊『三里塚』02頁(1170号02面03)(2025/10/27)


成田「第2の開港」粉砕を
 「経済発展、投資促進」叫び住民生活破壊
 物流強化の目的は軍事転用だ

(写真 ばら色の未来を描く「第2の開港」イメージ図)

 「成田空港第2の開港プロジェクト」が、マスコミやネット記事で大宣伝されている。この事業の推進で、空港とその周辺地域が潤い、発展し、国際競争に勝つというようなキャンペーンが飛び交っている。
 10月下旬から来年1月にかけて、成田市、芝山町、横芝光町、多古町、茨城県稲敷市などで、住民向けの「第2の開港」の対話型説明会が開かれようとしている。

「戦略特区」指定

 政府は6月に千葉県全域を「国家戦略特区」に指定しており、成田を核にして茨城県の一部を含め、企業の投資を大々的に呼び込もうとしている。それは結局は空港とその一帯を有事の際に軍事物資を移動する兵站(へいたん)・出撃拠点にするものとして計画は進んでいる。だが、反対同盟を先頭に不屈に闘えば、この計画を挫折させ粉砕できる。
 元々の成田機能強化策(①第3=C滑走路新設、②B滑走路延伸、③飛行時間の延長)を前提としながら、「第2の開港」は、空港とそれにまつわる企業、周辺自治体に「発展」のバラ色の夢をふりまくが、実態は危機と矛盾に満ちている。
 4本柱とされるのが、①旅客ターミナル集約、②貨物施設の整備、③空港アクセスの強化、④地域との共生だ。
 ①は、現在3つに分かれている旅客ターミナルを、老朽化が進んだことも理由に建て替えて一つにするという構想。最先端技術を導入し、乗り継ぎの利便向上を図るというが、実際の移動や手間がどれだけ軽減されるかは疑問の声がある。藤井直樹社長は10月の日経新聞のインタビューで1ターミナル化について「案はあるが、あくまで構想だ」などと、発言を後退させている。
 ②は、空港内に新貨物地区を整備し、企業が運営する敷地外の大型貨物施設と連携して、成田を航空貨物の拠点として強化するというもの。C滑走路に隣接する多古町に不動産企業グッドマングループを誘致し、また空港から10㌔近く離れた成田市下福田地区に同じくヒューリック社を誘致して、大型物流施設を造ることが進められている。
 特に、半導体、精密機械、航空宇宙などの戦略物資の流通に注力することが「経済安保」の観点から明記されている。まさに成田は戦争に直結する物流の拠点・集積地として位置づけられている。特に航空宇宙産業は軍需産業そのものだ。
 この①と②でかかる費用は8000億円とされ、第3滑走路など直接の空港拡張にかかる6700億円を上回る。
 ③のアクセス問題、特に鉄道問題は深刻だ。成田空港に乗り入れるJRと京成電鉄はともに最後の9㌔を単線区間として並走し、上下線がすれ違うことすらできない。これを複線化しようというわけだが、工事の費用負担を誰がするかで一向に結論が出ない。
 ④の「地域共生」は、地域破壊を押し隠すための心にもないスローガンだ。NAAは実際「空港周辺は優良農地が広がり、民間事業者による開発の制約となっている」などと農業への敵意をむき出しにしている。
 以上の4本柱の上に、「農林水産物・食品の輸出強化を図る」「イノベーション促進を通じた新事業創出をめざす」などと、際限なくいかがわしい発展構想を空港拡張に関連付けてふれまわるのが「第2の開港」だ。そしてさらに、空港を中心として首都圏・北関東を巻き込む広域経済圏にまで拡大・発展させようというもくろみが、「エアポートシティ」構想と呼ばれるものだ。
 年間発着枠を30万回から50万回に増加し、空港敷地面積を2倍の2297㌶に拡張し、午前5時から深夜1時まで飛行機を飛ばして、住民の生活をとことん破壊しつくした上に展開されるこの巨大計画に、怒りを抑えることはできない。

国際競争背景に

 背景には、東アジア地域と世界の旅客・物流の航空需要をめぐる、生き残りをかけた激烈な争奪戦がある。昨年末に韓国首位の大韓航空が2位のアシアナ航空を買収し、ANA、JALを上回る規模となったことは日本を震撼(しんかん)させた。深刻な労働力不足問題、財政問題を抱えながら、日本帝国主義は航空網の争奪と空港の存続をめぐる国際競争にのめり込んでいる。その計画がどれほど破綻的だろうと支配階級は、反対同盟をつぶし軍事空港を建設するためならば糸目をつけずに金を投じるのだ。
 労働者・農民・人民の生きる道は、「国益」の犠牲になることではなく、戦争を阻止し帝国主義を倒すことにある。
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